(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115906
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】振動エネルギー吸収装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/04 20060101AFI20230814BHJP
F16F 1/40 20060101ALI20230814BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
F16F15/04 P
F16F1/40
E04H9/02 331B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015820
(22)【出願日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2022017786
(32)【優先日】2022-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】597165629
【氏名又は名称】株式会社ノナガセ
(74)【代理人】
【識別番号】100104363
【弁理士】
【氏名又は名称】端山 博孝
(72)【発明者】
【氏名】長田 修一
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AA05
2E139AC19
2E139AC20
2E139CA03
2E139CA04
3J048AA01
3J048AD05
3J048BA08
3J048DA01
3J048EA38
3J059AB01
3J059BA43
3J059BC01
3J059BC06
3J059GA42
(57)【要約】
【課題】長時間地震動などの想定を上回る地震動等の外乱に対しても、安定した振動吸収能力を保持することが可能な免震装置などの振動エネルギー吸収装置を提供する。
【解決手段】複数枚の金属板12a、12b、13、13a、13bと、金属板13、13a、13b間に設けられ、2つの構造物間に生じる相対変位によりせん断変形するゴム部材14とを備えた免震装置10等の振動エネルギー吸収装置であって、少なくとも1枚の金属板12a、12bの内部と外周側との間に熱伝導部材16が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の金属板と、前記金属板間に設けられ、2つの構造物間に生じる相対変位によりせん断変形するゴム部材とを備えた振動エネルギー吸収装置であって、
少なくとも1枚の前記金属板の内部と外周側との間に熱伝導部材が設けられていることを特徴とする振動エネルギー吸収装置。
【請求項2】
前記振動エネルギー吸収装置は、複数枚の金属板と複数枚のゴム板とを積層してなる積層ゴム体と、この積層ゴム体の内部に積層方向に配置された柱状の塑性変形自在部材と、前記積層ゴム体の上下部に配置されて、前記2つの構造物に取り付けるための金属板からなる取付けフランジとを備えた免震装置である、請求項1記載の振動エネルギー吸収装置。
【請求項3】
前記塑性変形自在部材は前記積層ゴム体の中央部に該積層ゴム体を貫通して配置されていることを特徴とする請求項2記載の振動エネルギー吸収装置。
【請求項4】
前記熱伝導部材は前記取付けフランジにその中央部から外周にかけて複数設けられていることを特徴とする請求項3記載の振動エネルギー吸収装置。
【請求項5】
前記取付けフランジは熱伝導率が高い金属材料からなることを特徴とする請求項4記載の振動エネルギー吸収装置。
【請求項6】
前記取付けフランジは、前記塑性変形自在部材の上下端面に接触する中央部の接触部分が熱伝導率が高い材料からなることを特徴とする請求項4記載の振動エネルギー吸収装置。
【請求項7】
前記熱伝導部材の前記取付けフランジの内方側端部は折曲されて前記塑性変形自在部材に埋め込まれていることを特徴とする請求項4記載の振動エネルギー吸収装置。
【請求項8】
前記熱伝導部材は前記積層ゴム体内部の少なくとも1枚の前記金属板に、前記塑性変形自在部材に近接した部分から外周にかけて複数設けられていることを特徴とする請求項3記載の振動エネルギー吸収装置。
【請求項9】
前記積層ゴム体の少なくとも1枚の前記金属板は外周が前記積層ゴム体のゴム板外周から突出していることを特徴とする請求項8記載の振動エネルギー吸収装置。
【請求項10】
前記熱伝導部材が設けられている前記金属板は熱伝導率が高い金属材料からなることを特徴とする請求項8又は9記載の振動エネルギー吸収装置。
【請求項11】
前記塑性変形自在部材は前記積層ゴム体に複数配置されていることを特徴とする請求項2記載の振動エネルギー吸収装置。
【請求項12】
前記熱伝導部材は、前記取付けフランジ又は前記積層ゴム体内部の少なくとも1枚の前記金属板に、前記塑性変形自在部材に近接した部分から外周にかけて複数設けられていることを特徴とする請求項11記載の振動エネルギー吸収装置。
【請求項13】
前記積層ゴム体内部の前記金属板のうち、少なくとも1枚は前記塑性変形自在部材を上下に分割してその端面に接触する分割金属板であり、前記熱伝導部材は前記分割金属板に前記塑性変形自在部材との接触部分の近接部分から外周にかけて複数設けられていることを特徴とする請求項2記載の振動エネルギー吸収装置。
【請求項14】
前記振動エネルギー吸収装置は、複数枚の金属板と複数枚の高減衰ゴムからなるゴム板とを積層してなる積層ゴム体と、前記積層ゴム体の上下部に配置されて、前記2つの構造物に取り付けるための金属板からなる取付けフランジとを備えた免震装置であり、
前記熱伝導部材は前記積層ゴム体内部の少なくとも1枚の前記金属板に、その中央部から外周にかけて、かつ外周側端部が前記積層ゴム体の外方に突出するように設けられていることを特徴とする請求項1記載の振動エネルギー吸収装置。
【請求項15】
前記熱伝導部材の前記積層ゴム体からの突出端部にヒートシンクが設けられていることを特徴とする請求項14記載の振動エネルギー吸収装置。
【請求項16】
前記熱伝導部材が設けられている前記金属板は熱伝導率が高い金属材料からなることを特徴とする請求項14又は15記載の振動エネルギー吸収装置。
【請求項17】
前記振動エネルギー吸収装置は、建物の上部構造及び下部構造の一方に連結され、金属板からなる1対の第1可動板と、前記上部構造及び下部構造の他方に連結され、前記第1可動板間に配置された金属板からなる第2可動板と、前記第1及び第2可動板間に設けられた高減衰ゴムからなるゴム体とを備えた制震装置であり、
前記熱伝導部材は、前記第2可動板にその中央部から外周にかけて、かつ外周側端部が前記第1可動板間から外方に突出するように少なくとも1つ設けられていることを特徴とする請求項1記載の振動エネルギー吸収装置。
【請求項18】
前記熱伝導部材の前記第1可動板間からの突出端部にヒートシンクが設けられていることを特徴とする請求項17記載の振動エネルギー吸収装置。
【請求項19】
前記熱伝導部材はヒートパイプ、ピッチ系炭素繊維又は立方晶窒化ホウ素の熱移送速度の速い材料若しくは部材であることを特徴とする請求項1記載の振動エネルギー吸収装置。
【請求項20】
前記熱伝導部材が設けられている前記金属板には、前記熱伝導部材の長さ方向中間部外周に空所が形成され、この空所には断熱材が充填されていることを特徴とする請求項1記載の振動エネルギー吸収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、振動エネルギー吸収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地震動などの振動から建築物、構造物を保護するため、従来から振動エネルギー吸収装置が用いられている。振動エネルギー吸収装置の1つとして免震装置が知られ、代表的な免震装置としては、ゴム板と鋼板とを交互に積層した積層ゴム体を用いたものが知られている。この免震装置は、地震時において構造物に作用する振動を、ゴム材料のせん断変形により好ましく逃がし、かつ該ゴム板の材料特性により、または積層ゴム体に挿入した鉛プラグなどの塑性変形自在部材の塑性せん断変形により、早期に減衰させるようになっている。
【0003】
免震装置は、せん断変形するゴムの材料特性により振動を減衰するもの、又は塑性変形自在部材のせん断変形により振動を減衰するものいずれの場合も、地震動などの振動エネルギーを熱エネルギーに変換することで、振動の減衰を行っている。
【0004】
このようなことから、免震装置がせん断変形すると、ゴムの材料特性によるものも、塑性変形自在部材を有するものも、エネルギー吸収する部位は自己発熱する。特に長周期地震動のように、比較的長時間の揺れが継続する場合、積層ゴム体に用いられているゴムの材料特性により減衰を得る免震装置にあっては、ゴム材料自身の自己発熱により積層ゴム体の温度が上昇する。その結果、積層ゴム体は高温となって、抵抗力換言すれば剛性の低下、エネルギー吸収量の低下などの、性能変化が生じるおそれがある。
【0005】
また、鉛プラグなどの塑性変形自在部材により減衰を得る免震装置にあっては、塑性変形自在部材自身が発熱し、放熱できない場合高温となり、塑性変形自在部材の抵抗力換言すればせん断抵抗が低下し、エネルギー吸収量の低下などの、性能変化が生じるおそれがある。
【0006】
前記のような減衰機能付き免震装置は、ゴム材料の特性によるもの又は塑性変形自在部材によるもの、いずれも地震動のエネルギーを熱に変換して吸収し、これら免震装置に支持されている構造物への過大な振動の入力を防止し、構造物及び当該構造物内の人命・財産を守るという重要な役目を担っている。しかしながら、昨今懸念されているような長時間に及ぶ地震動が構造物に加わった場合は、地震動のエネルギーを熱に変換し続けることとなり、結果、エネルギーを吸収するゴム材料自体又は塑性変形自在部材の温度が上昇し、せん断抵抗力や減衰能力が繰返し変形により徐々に低下していくことが各種実験により報告されている。
【0007】
このようなことから、積層ゴム体に用いるゴム材料の発熱や、積層ゴム体に挿入される塑性変形自在部材の発熱を、いかに速やかに放熱させ、換言すれば熱移動させ、減衰性能や抵抗力を低下させずに維持させるかが、長時間の繰返し揺れが生じるような所謂長周期長時間地震動への対応として急務とされている。
【0008】
以上のような背景の下、現在、免震装置に関しては長時間繰返し実験により、その低下具合を考慮した免震設計を行うことが余儀なくされている。その結果、構造物の地震時の応答変形量が減衰力低下に伴って大きくなるために、構造物と地盤との間に設けているスペースを大きく取らざるを得なくなり、さらには、水平変形量が過大になるために構造物の安定的な支持の観点から免震装置を一回り大きくせざるを得ないケースや、大変形時に作用する変形防止用ダンパーやストッパーを別途追加設置するケースも散見される。
【0009】
特許文献1には、複数枚のゴム板と複数枚の金属板とが交互に積層された積層ゴム体において、金属板を積層ゴム体よりも面方向外側に突出して設置し、突出部で放熱するようにした免震装置が記載されている。しかしながら、この従来技術の場合、金属板として一般に用いられる鋼材の熱伝導率は比較的低く、熱伝達に時間がかかり大きな放熱効果が得られないおそれがある。
【0010】
特許文献2には、積層ゴム体に挿入される鉛プラグなどの塑性変形自在部材の周りに、熱伝導率の良い材料を配置して、鉛プラグなどの熱を伝達する免震装置が記載されている。しかしながら、この従来技術の場合、鉛プラグから周囲の円環状の熱伝導体への熱移動は良好であるが、円環状の熱伝導体から積層ゴム体外周部への熱伝達は特許文献1記載のものと同様時間がかかる結果、長周期長時間地震動に対する効果は充分とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011-202691号公報
【特許文献2】特許第6458516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の目的は、長時間地震動などの想定を上回る地震動等の外乱に対しても、安定した振動吸収能力を保持することが可能な免震装置などの振動エネルギー吸収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、複数枚の金属板と、前記金属板間に設けられ、2つの構造物に生じる相対変位によりせん断変形するゴム部材とを備えた振動エネルギー吸収装置であって、
少なくとも1枚の前記金属板の内部と外周側との間に熱伝導部材が設けられていることを特徴とする振動エネルギー吸収装置にある。
【0014】
前記振動エネルギー吸収装置は、例えば、複数枚の金属板と複数枚のゴム板とを積層してなる積層ゴム体と、この積層ゴム体の内部に積層方向に配置された柱状の塑性変形自在部材と、前記積層ゴム体の上下部に配置されて、前記2つの構造物に取り付けるための金属板からなる取付けフランジとを備えた免震装置である構成を採ることができる。
【0015】
上記免震装置において、前記塑性変形自在部材は前記積層ゴム体の中央部に該積層ゴム体を貫通して配置されている構成を採ることができる。この場合、前記熱伝導部材は前記取付けフランジにその中央部から外周にかけて複数設けられている構成を採ることができる。また、前記取付けフランジは熱伝導率が高い金属材料からなる構成を採ることができる。
【0016】
また、上記免震装置において、前記取付けフランジは、前記塑性変形自在部材の上下端面に接触する中央部の接触部分が熱伝導率が高い材料からなる構成を採ることができる。
【0017】
また、上記免震装置において、前記熱伝導部材の前記取付けフランジの内方側端部は折曲されて前記塑性変形自在部材に埋め込まれている構成を採ることができる。
【0018】
また、上記免震装置において、前記熱伝導部材は前記積層ゴム体内部の少なくとも1枚の前記金属板に、前記塑性変形自在部材に近接した部分から外周にかけて複数設けられている構成を採ることができる。この場合、前記積層ゴム体の全ての前記金属板は外周が前記積層ゴム体から突出している構成を採ることができる。また、前記熱伝導部材が設けられている前記金属板は熱伝導率が高い金属材料からなる構成を採ることができる。
【0019】
また、上記免震装置において、前記塑性変形自在部材は前記積層ゴム体に複数配置されている構成を採ることができる。この場合、前記熱伝導部材は、前記取付けフランジ又は前記積層ゴム体内部の少なくとも1枚の前記金属板に、前記塑性変形自在部材に近接した部分から外周にかけて複数設けられている構成を採ることができる。
【0020】
また、上記免震装置において、前記積層ゴム体内部の前記金属板のうち、少なくとも1枚は前記塑性変形自在部材を上下に分割してその端面に接触する分割金属板であり、前記熱伝導部材は前記分割金属板に前記塑性変形自在部材との接触部分の近接部分から外周にかけて複数設けられている構成を採ることができる。
【0021】
また、前記振動エネルギー吸収装置は、複数枚の金属板と複数枚の高減衰ゴムからなるゴム板とを積層してなる積層ゴム体と、前記積層ゴム体の上下部に配置されて、前記2つの構造物に取り付けるための金属板からなる取付けフランジとを備えた免震装置であり、 前記熱伝導部材は前記積層ゴム体内部の少なくとも1枚の前記金属板に、その中央部から外周にかけて、かつ外周側端部が前記積層ゴム体の外方に突出するように設けられている構成を採ることができ、さらに本構成を複数設けることもできる。この場合、前記熱伝導部材の前記積層ゴム体からの突出端部にヒートシンクが設けられている構成を採ることができる。また、前記熱伝導部材が設けられている前記金属板は熱伝導率が高い金属材料からなる構成を採ることができる。
【0022】
また、前記振動エネルギー吸収装置は、建物の上部構造及び下部構造の一方に連結され、金属板からなる1対の第1可動板と、前記上部構造及び下部構造の他方に連結され、前記第1可動板間に配置された金属板からなる第2可動板と、前記第1及び第2可動板間に設けられた高減衰ゴムからなるゴム体とを備えた制震装置であり、
前記熱伝導部材は、前記第2可動板にその中央部から外周にかけて、かつ外周側端部が前記第1可動板間から外方に突出するように少なくとも1つ設けられている構成を採ることができる。
【0023】
上記制震装置において、前記熱伝導部材の前記第1可動板間からの突出端部にヒートシンクが設けられている構成を採ることができる。
【0024】
上記振動エネルギー吸収装置において、前記熱伝導部材が設けられている前記取付けフランジを含む前記金属板には、前記熱伝導部材の長さ方向中間部外周に空所が形成され、この空所には断熱材が充填されている構成を採ることができる。
【0025】
前記熱伝導部材は、鉄に比べて熱移送速度が高い部材が良く、一般的に高い熱伝導率を示す材料又は部材が好ましい。この熱伝導部材としては、ヒートパイプ、ピッチ系炭素繊維、立方晶窒化ホウ素などを用いることができる。
【0026】
上記免震装置などの振動エネルギー吸収装置において、一般的に、金属板は軟鉄(SS400、SPHC)を使用する。軟鉄の熱伝導率は約51[W/(m・K)]であるが、ヒートパイプの見掛けの熱伝導率は少なくとも1000[W/(m・K)]を超え、一般的に用いられるものは約40000[W/(m・K)]程度であり、軟鉄の約784倍を示す。これは最も熱伝導率の良い金属である銅の熱伝導率約400[W/(m・K)]の100倍にあたる。積層ゴム体に用いるゴム材料の発熱や、積層ゴム体に挿入される塑性変形自在部材の発熱を外部へ放熱するため、前記熱伝導部材はヒートパイプが好ましく、該ヒートパイプを設ける金属板の枚数や、ヒートパイプの設置数は、放熱能力の設定により適宜選択される。
【0027】
また、ヒートパイプを設ける金属板は軟鉄より熱伝導率の良い銅やアルミニウム(熱伝導率約200[W/(m・K)])を使用するとなお良く、より早く内部の熱、換言すればゴム材料の発熱や塑性変形自在部材の発熱を外周部に熱移動させることが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、長時間地震動などの想定を上回る地震動等の外乱に対しても、安定した振動吸収能力を保持することが可能な免震装置などの振動エネルギー吸収装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】この発明を免震装置に適用した実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は鉛直方向断面図である。
【
図2】この発明を免震装置に適用した別の実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は鉛直方向断面図である。
【
図3】この発明を免震装置に適用したさらに別の実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は鉛直方向断面図である。
【
図4】この発明を免震装置に適用したさらに別の実施形態を示し、(a)は鉛直方向断面図、(b)は(a)のA-A線矢視断面図である。
【
図5】この発明を免震装置に適用したさらに別の実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は鉛直方向断面図、(c)は(b)のA-A線矢視断面図である。
【
図6】この発明を免震装置に適用したさらに別の実施形態を示し、(a)は鉛直方向断面図、(b)は(a)のA-A線矢視断面図である。
【
図7】この発明を免震装置に適用したさらに別の実施形態を示し、(a)は鉛直方向断面図、(b)は(a)のA-A線矢視断面図である。
【
図8】この発明を免震装置に適用したさらに別の実施形態を示す平面図である。
【
図9】この発明を免震装置に適用したさらに別の実施形態を示し、(a)は鉛直方向断面図、(b)は分割金属板の水平方向断面図、(c)は(b)のA-A線矢視拡大断面図である。
【
図10】(a)は
図9に示した実施形態における上下部取付けフランジの平面図、(b)は(a)のA-A線矢視拡大断面図である。
【
図11】この発明を免震装置に適用したさらに別の実施形態を示し、(a)は鉛直方向断面図、(b)は(a)のA-A線矢視断面図である。
【
図12】ヒートパイプが設置された熱伝導プレートを破断して示し、(a)は丸形のヒートパイプを設置した状態、(b)は平形のヒートパイプを設置した状態を示している。
【
図13】この発明を制震装置に適用した実施形態を示し、(a)は立面図、(b)は(a)のA-A線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
この発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、この発明を免震装置に適用した実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は鉛直方向断面図である。免震装置10は、2つの構造物間、例えば地盤に設置された基礎構造物と建物との間や、橋梁における橋脚や橋台等の下部構造物と橋桁等の上部構造物との間に設置される。
【0031】
免震装置10は、積層ゴム体11と、その上下部に配置されて2つの構造物に取り付けるための上下部取付けフランジ12a、12bとを備える。積層ゴム体11は複数枚の金属板13と、複数枚のゴム板14とを積層し加硫接着して形成される。
【0032】
上下部の金属板13a、13bは厚肉に形成され、積層ゴム体11はこれらの上下部金属板13a、13bを介して、図示しないボルトにより上下部取付けフランジ12a、12bに固定される。金属板13、13a、13bは、いずれも従来と同様に軟鉄等の鋼板からなっている。
【0033】
積層ゴム体11の中央部には、積層方向に貫通して形成された孔に柱状の塑性変形自在部材15が配置されている。塑性変形自在部材15は鉛又は錫等の減衰材料からなり、一般に鉛プラグ(鉛製の場合)又は錫プラグ(錫製の場合)と称されている。
【0034】
地震動などにより2つの構造物間に設置された免震装置10に振動が作用すると、積層ゴム体11が水平方向にせん断変形し、これに伴って塑性変形自在部材15もせん断変形する。この塑性変形自在部材15のせん断変形により振動エネルギーを吸収するのであるが、振動エネルギーは熱に変換され、塑性変形自在部材15が発熱して積層ゴム体11の中央部(塑性変形自在部材周辺)の温度が上昇する。
【0035】
この発明は上記免震装置10のような振動エネルギー吸収装置のエネルギー吸収を担う部材の温度上昇を抑制し、振動エネルギーの吸収能力を保持するためになされたものであり、その具体的手段が
図1以下の実施形態に示されている。
図1の実施形態では、塑性変形自在部材15の上下端面が直接接している上下部取付けフランジ12a、12bが、熱伝導率の高い金属材料、例えばアルミニウム、銅等で作られた熱伝導プレート50からなっている。
【0036】
上下部取付けフランジ12a、12bの内部には、中央部から外周にかけて複数のヒートパイプ16が放射状に設けられている。これら複数のヒートパイプ16を設けるために、上下部取付けフランジ12a、12bを構成する熱伝導プレート50には、
図12に示すように、その中央部から外周にかけて挿入孔17又は取付溝18が形成されている。挿入孔17は熱伝導プレート50の外周で開口している。
【0037】
ヒートパイプ16としては丸形のもの、あるいは平形のものを用いることができる。
図12(a)に示すように、丸形のヒートパイプ16aを用いる場合は、ヒートパイプ16aは挿入孔17に熱伝導プレート50の外周開口から挿入される。同図(b)に示すように、平形のヒートパイプ16bを用いる場合は、ヒートパイプ16bは取付溝18に配置されて、ボルト等で固定されるホルダー19によって保持される。
【0038】
挿入孔17及び取付溝18の長さ方向中間部にはヒートパイプ16a、16bの外周に空間を形成する適宜長さの空所20が設けられ、この空所20にはゴムや樹脂等からなる断熱材21が充填されている。このヒートパイプ16a、16bは、例えば免震装置10の中央部側が
図12において右側とすれば、断熱材21の一方側(
図12では右側)が受熱部(高温)、他方側(同図では左側)が放熱部(低温)となる。
【0039】
再び
図1を参照し、地震等により免震装置10が水平方向に繰返しせん断変形することにより、塑性変形自在部材15に発生する熱は、その直上及び直下の上下部取付けフランジ12a、12bに伝達され、さらにフランジ12a、12bの中央部側のヒートパイプ16の受熱部に伝達される。そして、ヒートパイプ16に伝達された熱はその作用によりフランジ12a、12b外周側のヒートパイプ16の放熱部から速やかに放熱される。これにより、塑性変形自在部材15の温度上昇が抑制され、免震装置10の振動吸収能力を安定保持することができる。
【0040】
図2は、この発明を免震装置に適用した別の実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は鉛直方向断面図である。免震装置10の基本構成は、
図1に示した実施形態と同様であり、同じ構成部材には同一の符号を付してある(
図3以下の各実施形態についても同じ)。この実施形態では、上下部取付けフランジ12a、12bは、塑性変形自在部材15に接触する接触部分22が他の部分と別体に作られている。
【0041】
接触部分22は上記例示した熱伝導率の高い金属材料で作られ、他の部分は軟鉄等の普通鋼で作られている。接触部分22は他の部分に嵌め込まれて一体化されている。そして、上下部フランジ12a、12bの内部には、接触部分22から上下部フランジ12a、12bの外周にかけて複数のヒートパイプ16が設けられている。なお、接触部分22は、強度が求められない場合は、熱伝導率の高い金属以外の材料でもよく、例えば炭素繊維が含まれる高分子材料などが挙げられる。
【0042】
この実施形態の場合、塑性変形自在部材15に発生する熱は、直上及び直下の接触部分22を経てヒートパイプ16の受熱部に伝達される。ヒートパイプ16に伝達された熱は、上記実施形態と同様にフランジ12a、12b外周側のヒートパイプ16の放熱部から速やかに放熱される。
【0043】
図3は、この発明を免震装置に適用したさらに別の実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は鉛直方向断面図である。この実施形態では、上下部フランジ12a、12bにその中央部から外周にかけてヒートパイプ16が複数設けられているが、これらヒートパイプ16の上下部フランジ12a、12bの内方側端部は折曲されて、塑性変形自在部材15に埋め込まれている。
【0044】
この実施形態によれば、塑性変形自在部材15の熱が直接ヒートパイプ16に伝達されるので、大きな放熱効果を得ることができる。上下部フランジ12a、12bは、従来と同様の鋼板で構成してもよいし、熱伝導プレート50で構成してもよい。なお、ヒートパイプ16の塑性変形自在部材15に埋め込まれる長さは、積層ゴム体11の水平方向せん断変形で生じる塑性変形自在部材15のせん断変形により損傷しないように、金属板13a、13bの板厚を超えない程度が好ましい。
【0045】
図4は、この発明を免震装置に適用したさらに別の実施形態を示し、(a)は鉛直方向断面図、(b)は(a)のA-A線矢視断面図である。この実施形態では、積層ゴム体11内部に配置された内部金属板13cが上記例示した熱伝導率の高い金属材料で作られた熱伝導プレート50からなり、他の金属板13、13a、13bや取付けフランジ12a、12bは従来と同様に鋼板で作られている。
【0046】
金属板13cは積層ゴム体11内部の他の金属板13よりも厚肉に形成されている。この金属板13cの内部には、塑性変形自在部材15に近接した部分から外周にかけて複数のヒートパイプ16が放射状に設けられている。
【0047】
この実施形態の場合、塑性変形自在部材15に発生する熱は、金属板13cの内周を経てヒートパイプ16の受熱部に伝達される。ヒートパイプ16に伝達された熱は、金属板13cの外周側のヒートパイプ16の放熱部から速やかに放熱される。ヒートパイプ16は1枚の金属板に設けるに限らず、複数枚の金属板に設けるようにしてもよい。
【0048】
図5は、この発明を免震装置に適用したさらに別の実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は鉛直方向断面図、(c)は(b)のA-A線矢視断面図である。この実施形態は、
図1に示した実施形態と
図4に示した実施形態とを組み合わせたものである。すなわち、上下部取付けフランジ12a、12b及び積層ゴム体11内部に配置された内部金属板13cは、熱伝導プレート50からなっている。
【0049】
そして、これら上下部フランジ12a、12b及び内部金属板13cには、
図1、
図4に示した実施形態と同様に複数のヒートパイプ16が設けられている。積層ゴム体11内部の複数の金属板を熱伝導プレート50で構成し、ヒートパイプを設けるようにしてもよい。
【0050】
図6は、この発明を免震装置に適用したさらに別の実施形態を示し、(a)は鉛直方向断面図、(b)は(a)のA-A線矢視断面図である。この実施形態では、積層ゴム体11を構成する内部金属板13、13c及び上下部金属板13a、13bの全てが、それらの外周が積層ゴム体11のゴム板外周から外方に突出している。また、内部金属板13、13cのうち、内部金属板13cが厚肉に形成された熱伝導プレート50からなっている。他の金属板13、13a、13bや上下部取付けフランジ12a、12bは従来と同様に軟鉄等の鋼板で作られている。
【0051】
内部金属板13cの内部には、
図4に示した実施形態と同様に、塑性変形自在部材15に近接した部分から外周にかけて複数のヒートパイプ16が放射状に設けられている。この実施形態によれば、塑性変形自在部材15に発生した熱がヒートパイプ16により放熱されることに加えて、塑性変形自在部材15に内周が接する内部金属板13、13c及び上下部金属板13a、13bの外周が積層ゴム体11のゴム板外周から外方に突出しているので、放熱が促進される。
【0052】
図7は、この発明を免震装置に適用したさらに別の実施形態を示し、(a)は鉛直方向断面図、(b)は(a)のA-A線矢視断面図である。上記各実施形態では、積層ゴム体11の上下部にフランジ12a、12bを連結するための厚肉の上下部金属板13a、13bを有する免震装置10が示されている。
【0053】
免震装置10には
図7に示すように、上下部金属板13a、13bを有せず、上下部フランジ12a、12bが積層ゴム体11の最上面、最下面に配されたゴム板14と加硫接着される態様を採るものもある。この実施形態は、このような免震装置10において、この発明を適用した例である。
【0054】
例えば、
図4に示した実施形態と同様に、内部金属板13cを熱伝導プレート50で構成し、複数のヒートパイプ16を設けることができる。ヒートパイプ16は内部金属板13cに限らず上下部取付けフランジ12a、12bに設けることもでき、また取付け態様も、上記各実施形態で示したような種々の態様を採用することができる。
【0055】
図8は、この発明を免震装置に適用したさらに別の実施形態を示す平面図である。上記各実施形態では、塑性変形自在部材15を積層ゴム体11に1つのみ設けた免震装置が示されているが、塑性変形自在部材を複数設けた免震装置もあり、この実施形態はこのような免震装置にこの発明を適用した例である。
【0056】
図8に示す実施形態は、複数(図示では4つ)の塑性変形自在部材15が貫通する内部金属板13cを熱伝導プレート50で構成し、この内部金属板13cにヒートパイプ16が設けられている。ヒートパイプ16は、各塑性変形自在部材15に近接した部分から内部金属板13cの外周にかけて複数設けられている。さらに、ヒートパイプ16間においても付加的にヒートパイプ16が設けられている。
【0057】
この塑性変形自在部材15を複数有する免震装置においても、ヒートパイプ16は内部金属板13cに限らず上下部取付けフランジ12a、12bに設けることもでき、また取付け態様も、上記各実施形態で示したような種々の態様を採用することができる。
【0058】
図9、
図10は、この発明を免震装置に適用したさらに別の実施形態を示し、
図9(a)は鉛直方向断面図、(b)は分割金属板の水平方向断面図、(c)は(b)のA-A線矢視断面図、
図10(a)は上下部取付けフランジの平面図、(b)は(a)のA-A線矢視断面図である。
【0059】
上記各実施形態では、塑性変形自在部材15が積層ゴム体11を貫通している免震装置が示されている。この実施形態では塑性変形自在部材15は積層ゴム体11を貫通することなく、積層ゴム体11内部の金属板13のうち金属板13dによって上下の塑性変形自在部材15a、15bに分割されている。以下、金属板13dを分割金属板とも称する。
【0060】
分割金属板13dは上記例示した熱伝導率の高い金属材料で作られた熱伝導プレート50からなり、また積層ゴム体11内部の他の金属板13よりも厚肉に形成されている。分割金属板13dは、この実施形態では積層ゴム体11の積層方向中央位置に配置され、上下面には分割された塑性変形自在部材15a、15bの端部を嵌め込むための凹部41が形成されている(
図9(c)参照)。凹部41に嵌め込まれた塑性変形自在部材15a、15の端部は分割金属板13dに常時接触している。
【0061】
分割金属板13dの内部には、直上及び直下に塑性変形自在部材15a、15bがそれぞれ位置することとなる中央部から外周にかけて複数のヒートパイプ16が放射状に設けられている。なお、この実施形態では、積層ゴム体11を構成する内部金属板13、13d及び上下部金属板13a、13bの全てが、それらの外周は積層ゴム体11のゴム板外周から外方に突出している。
【0062】
この実施形態では、上下部取付けフランジ12a、12bにもヒートパイプ16が設けられており、その取付け形態の一例を
図10を参照して、より具体的に示すこととする。上下部取付けフランジ12a、12bは熱伝導プレート50からなり、その内面(積層ゴム体11側の面)には、厚肉の上下部金属板13a、13bが嵌め込まれる深さが浅い凹部42が形成されている。
【0063】
凹部42の底面には中央部に円形又は多角形の凹部43が形成され、さらにこの凹部43の周壁から凹部42の周壁にかけて複数の取付溝18が放射状に形成されている。凹部43にはホルダー45が嵌め込まれて図示しないボルト等によって固定されている。
【0064】
ホルダー45には複数の孔46が放射状に形成され、これらの孔46にヒートパイプ16の端部が挿入されている。ヒートパイプ16は平形のものであり、ホルダー45から出ている部分は取付溝18に収容され、図示しないボルト等によって固定されたホルダー19によって保持されている。
【0065】
上記実施形態によれば、塑性変形自在部材15a、15bに発生した熱は、分割金属板13dの中央部からヒートパイプ16の受熱部に伝達され、分割金属板13dの外周側の放熱部から放熱される。その際、分割金属板13dは積層ゴム体11の積層方向中央にあって塑性変形自在部材15a、15bに直接接触しているので、該接触部に近接して配されているヒートパイプ16は塑性変形自在部材15a、15bに発生する熱を、最も蓄積しやすい免震装置の中心位置から効率よく受熱することとなる。
【0066】
また、上下部取付けフランジ12a、12bに設けられたヒートパイプ16によっても塑性変形自在部材15a、15bに発生した熱が受熱・放熱される。なお、分割金属板13dを具備する本構成は他の実施形態に示すようなヒートパイプ16を配した内部金属板13cと組み合わせることもできる。更に塑性変形自在部材15を免震装置上面視において複数配してもよい。
【0067】
図11は、この発明を免震装置に適用したさらに別の実施形態を示し、(a)は鉛直方向断面図、(b)は(a)のA-A線矢視断面図である。この実施形態で示されている免震装置10は、振動エネルギーを吸収して減衰させるための手段として塑性変形自在部材ではなく、ゴム板14のゴム材料として高減衰ゴムが用いられている。このような免震装置10は積層ゴム体11の繰返しせん断変形によって発熱し、免震装置10の内部に熱が籠もる状態となる結果、せん断抵抗が低下し、エネルギー吸収量の低下などの性能変化が生じる。
【0068】
免震装置10の発熱による温度上昇を抑制するために、複数の内部金属板13cを厚肉の熱伝導プレート50で構成し、これらの内部金属板13cに複数のヒートパイプ16が中央部から外周にかけて放射状に設けられている。そして、ヒートパイプ16の内部金属板13cの外周側の端部は、積層ゴム体11の外周から突出している。
【0069】
このヒートパイプ16の内部金属板13cからの突出端部である放熱部には、ヒートシンク25が設けられている。このようなヒートシンク25を設けることにより、積層ゴム体11に発生した熱の放熱が促進される。なお、
図11ではヒートパイプ16を具備する内部金属板13cを複数(3枚)としたが、放熱効果を考慮し、枚数は放熱能力の設定により適宜選択される。
【0070】
図13は、この発明を制震装置に適用した実施形態を示し、(a)は立面図、(b)は(a)のA-A線矢視断面図である。この実施形態で示される制震装置30は、建物の上部構造と下部構造との間、例えば木造建物の上下部の梁間に設置される。制震装置30は、上部構造に連結金具31を介して連結される1対の金属板からなる上部可動板32、32と、下部構造に連結金具33を介して連結され、上部可動板32、32間に配置された下部可動板34とを備える。
【0071】
上部可動板32、32と下部可動板34との間には高減衰ゴムからなるゴム体35が設けられている。地震等により上部構造と下部構造との間に相対変位が生じると、ゴム体35がせん断変形して上下部構造間での振動伝達を抑えるとともに、ゴム体35が振動エネルギーを吸収して減衰させる。この振動エネルギーの吸収によりゴム体35が発熱して温度上昇する。
【0072】
ゴム体35の温度上昇を抑制するために、下部可動板34を熱伝導プレート50で構成し、この下部可動板34に複数のヒートパイプ16が設けられている。ヒートパイプ16は、下部可動板34の高さ方向の中心線近傍から水平方向両外周にかけて、複数段になるように設けられている。これらヒートパイプ16は端部が下部可動板34の外周から突出し、突出端部にはヒートシンク36が設けられている。
【0073】
ヒートパイプ16の取付けは、例えば
図12(a)に示したように、下部可動板34の外周端に開口する挿入孔を設け、この挿入孔にヒートパイプ16を挿入する態様を採ることができる。なお、上部可動板32、32及び下部可動板34は上下が逆となる構成とすることもできる。
【0074】
上記各実施形態は例示にすぎず、この発明は種々の態様を採ることができる。
(1) 免震装置に関しては、上記実施形態では積層ゴム体が円柱形、上下部フランジが円形としたものが示されているが、これに限らず、積層ゴム体が角柱、上下部フランジが方形のものについても、この発明を適用できる。
【0075】
(2) ヒートパイプを設置する金属板は、熱伝導プレートで構成することが望ましいが、従来と同様の軟鉄等の鋼板で構成してもヒートパイプによって放熱効果は得られ、この発明はヒートパイプを設置する金属板を熱伝導プレートに限定するものではない。また、ヒートパイプを設置する内部金属板を他の内部金属板と比べて厚肉としたが、ヒートパイプが内部金属板の板厚の範囲に収まれば良いのであり、その限りで他の内部金属板の板厚と同一であっても構わない。
(3) ヒートパイプはこれが設置される金属板の内部と外周側との間にあればよく、この発明はヒートパイプの端部が金属板の外周に達している態様のみを包含するものではない。すなわち、ヒートパイプの端部は放熱が可能な金属板の領域であれば、外周から内部側に適宜長さ入り込んだ領域にあってもよい。
(4) この発明は、上記実施形態で示した免震装置等以外にも、例えば強風や交通振動等に対する斜張橋における斜材ケーブルの制振対策として、ケーブルと桁との間に設置される高減衰ゴムダンパーにも適用できる。この高減衰ダンパーはケーブルに連結される金属板と桁に連結される金属板との間に高減衰ゴムからなるゴム体を配置したもので、金属板にヒートパイプを設ける事によりゴム体の温度上昇を抑制することができる。
【符号の説明】
【0076】
10:免震装置
11:積層ゴム体
12a:上部取付けフランジ
12b:下部取付けフランジ
13:金属板
14:ゴム板
15:塑性変形自在部材
16:熱伝導部材
17:挿入孔
18:取付溝
19:ホルダー
20:空所
21:断熱材
22:接触部分
25:ヒートシンク
30:制震装置
32:上部可動板
34:下部可動板
35:ゴム体
36:ヒートシンク