(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115918
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】吸収式冷凍機の遠隔監視システム
(51)【国際特許分類】
F25B 15/00 20060101AFI20230814BHJP
F25B 49/02 20060101ALI20230814BHJP
F25B 49/04 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
F25B15/00 306Z
F25B49/02 A
F25B49/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018266
(22)【出願日】2023-02-09
(62)【分割の表示】P 2022018139の分割
【原出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石崎 修司
(72)【発明者】
【氏名】増渕 佑太
(72)【発明者】
【氏名】柳原 敬志
(72)【発明者】
【氏名】吉野 魁人
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 篤
【テーマコード(参考)】
3L093
【Fターム(参考)】
3L093AA01
3L093BB11
3L093BB22
3L093DD04
3L093EE12
3L093EE14
3L093EE17
3L093EE28
3L093GG02
3L093HH02
3L093JJ06
(57)【要約】
【課題】本開示は、COPの低下を常時監視し、COP低下の原因分析を行うことができる吸収式冷凍機の遠隔監視システムを提供する。
【解決手段】高温再生器5、低温再生器6、蒸発器1、凝縮器7および吸収器3を備え、これらを配管接続して吸収液および冷媒の循環経路をそれぞれ形成してなる吸収式冷凍機100を備え、サーバ用制御部57を備え、サーバ用制御部57は、COPが低下しているか否かを判定し、COPが低下していると判定した場合、COPが低下している原因を分析処理し、COPが低下している原因を分析処理した結果、COPが低下している原因を特定できない場合、COPの向上対応制御を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温再生器、低温再生器、蒸発器、凝縮器および吸収器を備え、これらを配管接続して吸収液および冷媒の循環経路をそれぞれ形成してなる吸収式冷凍機を備え、
制御部を備え、
前記制御部は、COPが低下しているか否かを判定し、COPが低下していると判定した場合、COPが低下している原因を分析処理し、
COPが低下している原因を分析処理した結果、COPが低下している原因がない場合、COPの向上対応制御を行う
吸収式冷凍機の遠隔監視システム。
【請求項2】
前記制御部は、現在のCOPと想定COPとの偏差を求め、現在のCOPと想定COPとの偏差が所定の閾値以上の場合に、COPが低下していると判定する
請求項1に記載の吸収式冷凍機の遠隔監視システム。
【請求項3】
前記制御部は、COPが低下している原因を分析処理した結果、COPが低下している原因がある場合、COPの低下原因の整備提案を作成する
請求項1に記載の吸収式冷凍機の遠隔監視システム。
【請求項4】
前記吸収式冷凍機に、クラウドサーバと通信可能なクラウドアダプタを接続し、
前記制御部は、前記クラウドサーバのサーバ用制御部または前記クラウドアダプタのアダプタ用制御部である
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の吸収式冷凍機の遠隔監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収式冷凍機の遠隔監視システムに係り、特に、凝縮器おける熱交換効率の低下を正確に判断するようにした吸収式冷凍機の遠隔監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、制御装置が、複数の冷房負荷の近傍で、安定条件である冷水設定温度と冷水出口温度との差が所定範囲内にあるか、および冷却水出口温度が所定範囲内にあるかをそれぞれ判断し、安定条件が所定時間継続した場合に、想定濃液濃度が所定値以上低い場合、稀吸収液ポンプのインバータ周波数を低下させるように制御する補正処理を行う吸収式冷凍機を開示する。
特許文献2は、冷房運転時に、COPを算出するとともに、この算出されたCOPと想定COPとからCOP増減率を算出し、1ヶ月間の平均COP増減率が、所定以下であると判断した場合、メンテナンス指示の予報発報を行う制御装置を備えた吸収式冷凍機を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-190708号公報
【特許文献2】特開2018-169075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、COPの低下を常時監視し、COP低下の原因分析を行うことができる吸収式冷凍機の遠隔監視システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本開示の吸収式冷凍機の遠隔監視システムは、高温再生器、低温再生器、蒸発器、凝縮器および吸収器を備え、これらを配管接続して吸収液および冷媒の循環経路をそれぞれ形成してなる吸収式冷凍機を備え、制御部を備え、前記制御部は、COPが低下しているか否かを判定し、COPが低下していると判定した場合、COPが低下している原因を分析処理し、COPが低下している原因を分析処理した結果、COPが低下している原因がない場合、COPの向上対応制御を行う。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、制御部により、COPの低下を常時監視して、COP低下の原因分析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態1に係る吸収式冷凍機の概略構成図
【
図4】冷水流量と冷水流量出力との関係を示すグラフ
【
図5】ガス流量とガス燃料弁の開度との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0008】
(発明の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、吸収式冷凍機において、安定運転時に吸収液の濃度に基づいてCOPを判定したり、1ヶ月ごとにCOPの増減率を監視する技術があった。
しかしながら、このような吸収式冷凍機においては、COPの低下を常時監視するものではなく、また、COPが低下した場合に、COP低下の原因の分析やこの分析に基づくCOP向上制御などをシステム化することができないという課題を発見し、その課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
そこで、本開示は、COPの低下を常時監視し、COP低下の原因分析を行うことができる吸収式冷凍機の遠隔監視システムを提供する。
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0010】
(実施の形態1)
以下、図面を用いて、実施の形態1を説明する。
[1-1.構成]
[1-1-1.吸収式冷凍機の構成]
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る吸収式冷凍機の概略構成図である。吸収式冷凍機100は、冷媒に水を、吸収液に臭化リチウム(LiBr)水溶液を使用している。
【0011】
吸収式冷凍機100は、
図1に示すように、蒸発器1と、この蒸発器1に並設された吸収器2と、これら蒸発器1および吸収器2を収納した蒸発器吸収器胴3と、ガスバーナ(加熱手段)4を備えた高温再生器5と、低温再生器6と、この低温再生器6に並設された凝縮器7と、これら低温再生器6および凝縮器7を収納した低温再生器凝縮器胴8とを備える。
また、吸収式冷凍機100は、低温熱交換器12と、高温熱交換器13と、冷媒ドレン熱回収器17と、稀吸収液ポンプ45と、濃吸収液ポンプ47と、冷媒ポンプ48とを備え、これらの各機器が吸収液管21~25および冷媒管31~35などを介して配管接続されて循環経路が構成されている。
【0012】
蒸発器1には、蒸発器1内で冷媒と熱交換したブラインを、図示しない熱負荷(例えば、空気調和装置)に循環供給するための冷水管14が設けられており、この冷水管14の一部に形成された伝熱管14Aが蒸発器1内に配置されている。
吸収器2および凝縮器7には、吸収器2および凝縮器7に順次冷却水を流通させるための冷却水管15が設けられており、この冷却水管15の一部に形成された各伝熱管15A、15Bがそれぞれ吸収器2および凝縮器7内に配置されている。
【0013】
吸収器2は、蒸発器1で蒸発した冷媒蒸気を吸収液に吸収させ、蒸発器吸収器胴3内の圧力を高真空状態に保つ機能を有する。この吸収器2の下部には、冷媒蒸気を吸収して稀釈された稀吸収液が溜る稀吸収液溜り2Aが形成され、この稀吸収液溜り2Aには、稀吸収液ポンプ45を有する稀吸収液管21の一端が接続されている。稀吸収液管21は、稀吸収液ポンプ45の下流側で分岐する分岐稀吸収液管21Aを備える。
この分岐稀吸収液管21Aは冷媒ドレン熱回収器17を経由した後に、稀吸収液管21の低温熱交換器12の下流側で再び稀吸収液管21に合流する。この稀吸収液管21の他端は、高温熱交換器13を経由した後、高温再生器5内に形成された熱交換部5Aの上方に位置する気層部5Bに開口している。
稀吸収液管21は、低温熱交換器12の下流側で第2分岐管21Bに分岐され、第2分岐管21Bは低温再生器6内に開口している。
【0014】
高温再生器5は、シェル60内にガスバーナ4を収容して構成され、このガスバーナ4の上方に当該ガスバーナ4の火炎を熱源として吸収液を加熱再生する熱交換部5Aが形成されている。この熱交換部5Aには、ガスバーナ4で燃焼された排気ガスが流通する排気経路40が接続され、この排気経路40には、排ガス熱交換器41が設けられている。また、ガスバーナ4には、燃料ガスが供給されるガス管61と、ブロワ62からの空気が供給される吸気管63とが接続され、これらガス管61および吸気管63には、燃料ガスおよび空気の量を制御する制御弁64が設けられている。
【0015】
熱交換部5Aの側方には、この熱交換部5Aで加熱再生された後に当該熱交換部5Aから流出した中間吸収液が溜る中間吸収液溜り5Cが形成されている。この中間吸収液溜り5Cの下端には第2中間吸収液管23の一端が接続され、この第2中間吸収液管23には高温熱交換器13が設けられている。この高温熱交換器13は、中間吸収液溜り5Cから流出した高温の中間吸収液の温熱で第1中間吸収液管22を流れる吸収液を加熱するものであり、高温再生器5におけるガスバーナ4の燃料消費量の低減を図っている。
第2中間吸収液管23の他端は、低温再生器6と吸収器2とを繋ぐ濃吸収液管25に接続されている。また、第2中間吸収液管23の高温熱交換器13上流側と吸収器2とは開閉弁V1が介在する吸収液管24により接続されている。
【0016】
低温再生器6は、高温再生器5で分離された冷媒蒸気を熱源として、低温再生器6内に形成された吸収液溜り6Aに溜った吸収液を加熱再生するものであり、吸収液溜り6Aには、高温再生器5の上端部から低温再生器6の底部に延びる冷媒管31の一部に形成される伝熱管31Aが配置されている。この冷媒管31に冷媒蒸気を流通させることにより、伝熱管31Aを介して、冷媒蒸気の温熱が吸収液溜り6Aに溜った吸収液に伝達され、この吸収液が更に濃縮される。
低温再生器6の吸収液溜り6Aには、濃吸収液管25の一端が接続され、この濃吸収液管25の他端は、吸収器2の気層部2B上部に設けられる濃液散布器2Cに接続されている。濃吸収液管25には濃吸収液ポンプ47および低温熱交換器12が設けられている。この低温熱交換器12は、低温再生器6の吸収液溜り6Bから流出した濃吸収液の温熱で稀吸収液管21を流れる稀吸収液を加熱するものである。
【0017】
また、濃吸収液管25には、濃吸収液ポンプ47および低温熱交換器12をバイパスするバイパス管27が設けられている。
濃吸収液ポンプ47の運転が停止した場合には、低温再生器6の吸収液溜り6Aに溜った吸収液は、濃吸収液管25およびバイパス管27を通じて吸収器2内に供給される。
【0018】
前述のように、高温再生器5の気層部5Bと凝縮器7の底部に形成された冷媒液溜り7Aとは、冷媒管31により接続される。この冷媒管31は、低温再生器6の吸収液溜り6Aに配管された伝熱管31Aおよび冷媒ドレン熱回収器17を備え、この冷媒管31の伝熱管31Aの上流側と吸収器2の気層部2Bとは開閉弁V2が介在する冷媒管32により接続されている。
また、凝縮器7の冷媒液溜り7Aには、この冷媒液溜り7Aから流出した冷媒が流れる冷媒管34の一端が接続され、この冷媒管34の他端は、下方に湾曲したUシール部34Aを介して蒸発器1の気層部1Aに接続されている。
蒸発器1の下方には、液化した冷媒が溜る冷媒液溜り1Bが形成され、この冷媒液溜り1Bと蒸発器1の気層部1Aの上部に配置される散布器1Cとは冷媒ポンプ48が介在するに冷媒管35により接続されている。
【0019】
また、冷却水管15には、冷却水管15を流れる冷却水の入口側の温度を検出する冷却水入口温度センサ36および冷却水の出口側の温度を検出する冷却水出口温度センサ37が設けられている。
冷水管14には、冷水管14を流れる冷水の入口側の温度を検出する冷水入口温度センサ38および冷水の出口側の温度を検出する冷水出口温度センサ39が設けられている。
【0020】
また、本実施形態の吸収式冷凍機100は、抽気装置70を備えており、抽気装置70は、タンク71を備えている。タンク71の上部には、吸収器2の気層部2Bに連通する抽気管52が接続されている。タンク71の底部には、吸収器2の下方に連通する戻り管73が接続されている。さらに、タンク71の上部には、エジェクタポンプ74介して稀吸収液管21に接続される吸収液管75が接続されている。
そして、エジェクタポンプ74を駆動することにより、吸収液管75を介して稀吸収液管21の稀吸収液をタンク71に取り込む。吸収液管75により流れ込んだ稀吸収液により、タンク71の内部が負圧となり、これにより、吸収器2の上部に貯留されている不凝縮ガスのみならず冷媒蒸気、気化した吸収液などが抽気管72を通ってタンク51の上方に導かれる。
【0021】
タンク71に導かれたガスのうち、冷媒蒸気と気化した吸収液は、タンク71の下方に溜まっている吸収液に溶け込んで吸収されるが、不凝縮ガスは吸収液に溶け込むことができないので、タンク71の上方に溜められる。そして、タンク71の下方に溜まった吸収液は、戻り管73を通って吸収器3に戻される。
【0022】
[1-1-2.制御構成]
次に、本実施形態の制御構成について説明する。
図2は、本実施形態の制御構成を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態の吸収式冷凍機100は、コントローラ50を備えており、コントローラ50は、冷凍機用制御部51を備えている。冷凍機用制御部51は、吸収式冷凍機100の各部を中枢的に制御するものであり、演算実行部としてのCPU、このCPUによって実行可能な基本制御プログラムや所定のデータ等を不揮発的に記憶するROM、RAMなどのメモリその他の周辺回路などを備えている。
また、冷凍機用制御部51には、冷却水入口温度センサ36、冷却水出口温度センサ37、冷水入口温度センサ38、冷水出口温度センサ39の検出信号がそれぞれ入力されるように構成されている。
【0023】
コントローラ50の冷凍機用制御部51は、吸収式冷凍機100のガスバーナ4の燃料制御弁64を制御することで、ガスバーナ4による燃焼制御を行うとともに、稀吸収液ポンプ45、濃吸収液ポンプ47および冷媒ポンプ48の駆動制御を行うように構成されている。さらに、コントローラ50の冷凍機用制御部51は、稀吸収液ポンプ45、濃吸収液ポンプ47および冷媒ポンプ48のインバータ制御を行うことで、稀吸収液ポンプ45、中間吸収液ポンプ46、濃吸収液ポンプ47および冷媒ポンプ48による流量制御を行うように構成されている。また、冷凍機用制御部51は、各弁28,V1,V2の開閉制御を行うように構成されている。
【0024】
また、コントローラ50には、クラウドアダプタ52が接続されており、クラウドアダプタ52には、コントローラ50の冷凍機用制御部51が取得した各種冷凍機データが送られるように構成されている。
クラウドアダプタ52は、アダプタ用制御部53を備えており、アダプタ用制御部53は、演算実行部としてのCPU、このCPUによって実行可能な基本制御プログラムや所定のデータ等を不揮発的に記憶するROM、RAMなどのメモリ、その他の周辺回路などを備えている。
ここで、冷凍機データとしては、例えば、冷水入口温度、冷水出口温度、高温再生器温度、凝縮温度、冷却水入口温度、冷却水出口温度、吸収液温度、吸収液濃度、冷媒温度、制御弁開度など各種データが含まれる。
クラウドアダプタ52は、クラウド55のクラウドサーバ56と通信を行うアダプタ用通信部54を備えている。
【0025】
クラウドサーバ56は、サーバ用制御部57を備えており、サーバ用制御部57は、演算実行部としてのCPU、このCPUによって実行可能な基本制御プログラムや所定のデータ等を不揮発的に記憶するROM、RAMなどのメモリ、その他の周辺回路などを備えている。
本実施の形態においては、サーバ用制御部57は、本開示の制御部としての機能する。
クラウドサーバ56は、クラウドアダプタ52と通信を行うサーバ用通信部58を備えている。
クラウドサーバ56のサーバ用制御部57は、サーバ用通信部58によりクラウドアダプタ52から送られる冷凍機データを取得し、この冷凍機データに基づいてCOP低下の判断、COP低下の原因分析、COPを向上させる対応などを行うように構成されている。
【0026】
[1-2.動作]
次に、本実施形態の動作について説明する。
冷房などの冷却運転時においては、冷水管14を介して図示しない熱負荷にブライン(例えば、冷水)が循環供給される。冷凍機用制御部51は、ブラインの蒸発器1の出口側温度(冷水出口温度センサ39にて検出される温度)が所定の設定温度、例えば7℃になるように吸収式冷凍機100に投入される熱量が制御される。
具体的には、冷凍機用制御部51は、全てのポンプ45,47,48を起動し、かつ、ガスバーナ4におけるガスの燃焼制御を行うことで、冷水出口温度センサ39が計測するブラインの温度が所定の7℃となるようにガスバーナ4の火力を制御する。
【0027】
この場合、吸収器2からの稀吸収液は、稀吸収液管21を介して稀吸収液ポンプ45により低温熱交換器12および高温熱交換器13または排ガス熱交換器41を経由して加熱され高温再生器5に送られる。
高温再生器5に送られた吸収液は、この高温再生器5でガスバーナ4による火炎および高温の燃焼ガスにより加熱されるため、この吸収液中の冷媒が蒸発分離する。高温再生器5で冷媒を蒸発分離して濃度が上昇した中間吸収液は、高温熱交換器13を経由して濃吸収液管25に送られ、低温再生器6を経由した吸収液と合流する。
【0028】
一方、低温再生器6に送られた吸収液は、高温再生器5から冷媒管31を介して供給されて伝熱管31Aに流入する高温の冷媒蒸気により加熱され、さらに冷媒が分離して濃度が一段と高くなり、この濃吸収液が高温再生器5を経由した上記吸収液と合流し、濃吸収液ポンプ47により低温熱交換器12を経由して吸収器2に送られ、濃液散布器2Cから散布される。
【0029】
低温再生器6で分離生成した冷媒は、凝縮器7に入って凝縮して冷媒液溜り7Aに溜る。そして、冷媒液溜り7Aに冷媒液が多く溜まると、この冷媒液は冷媒液溜り7Aから流出し、冷媒管34を経由して蒸発器1に入り、冷媒ポンプ48の運転により揚液されて散布器1Cから冷水管14の伝熱管14Aの上に散布される。
伝熱管14Aの上に散布された冷媒液は、伝熱管14Aの内部を通るブラインから気化熱を奪って蒸発するため、伝熱管14Aの内部を通るブラインは冷却され、こうして温度を下げたブラインが冷水管14から熱負荷に供給されて冷房などの冷却運転が行われる。
そして、蒸発器1で蒸発した冷媒は吸収器2に入り、低温再生器6より供給されて上方から散布される濃吸収液に吸収されて、吸収器2の稀吸収液溜り2Aに溜り、稀吸収液ポンプ45によって高温再生器5に搬送される循環を繰り返す。
【0030】
次に、本実施形態による制御について、
図3に示すフローチャートを参照して説明する。
図3は、本実施の形態の動作を示すフローチャートである。
本実施形態においては、アダプタ用制御部53は、安定化した冷凍機データを取得し(ST1)、吸収式冷凍機100が冷房運転または暖房運転で運転している状態で、現在のCOPを算出する(ST2)。
現在のCOPは、COP=冷凍能力÷ガス燃焼熱量、で求められる。
冷凍能力は、(冷水入口温度-冷水出口温度)×冷水流量、で求められる。
冷水入口温度は、冷水入口温度センサ38により取得することができ、冷水出口温度は、冷水出口温度センサ39により取得することができる。
【0031】
図4は、冷水流量と冷水流量出力との関係を示すグラフである。
このグラフは、吸収式冷凍機100の設置時に、作業者が差圧センサを使用して計測することで、あらかじめ生成されるものである。
冷水流量出力は、冷水差圧センサを設けることで取得することもできるが、本実施の形態においては、
図4に示すグラフを用い、冷水流量の出力を計測することで、冷水流量出力から冷水流量を算出する。
冷水流量出力は、例えば、吸収式冷凍機100の制御状態を監視することで、取得することが可能である。冷水流量出力は、冷凍機用制御部、アダプタ用制御部53またはサーバ用制御部57のいずれが取得するものであってもよい。
【0032】
このように冷水入口温度センサ38および冷水出口温度センサ39から冷水入口温度および冷水出口温度を取得するとともに、グラフを用いて冷水流量を取得することで、冷水差圧センサを設けることなく冷凍能力を算出することができる。なお、冷水差圧センサを設けて冷凍能力を算出するようにしても構わない。
【0033】
次に、ガス燃焼熱量は、ガス燃焼熱量=単位ガス発熱量×ガス流量、で求められる。
図5は、ガス流量とガス燃料弁の開度との関係を示すグラフである。
このグラフは、吸収式冷凍機100の設置時に、作業者がガス流量計を使用して計測することで、あらかじめ生成されるものである。
ガス燃料弁の開度は、例えば、吸収式冷凍機100の制御状態を監視することで、取得することが可能である。ガス燃料弁の開度は、冷凍機用制御部、アダプタ用制御部53またはサーバ用制御部57のいずれが取得するものであってもよい。
単位ガス発熱量は、あらかじめ決まった値である。そして、グラフからガス燃料弁の開度に基づいてガス流量を算出することで、ガス流量計を設けることなくガス燃焼熱量を算出することができる。なお、ガス流量計を設けてガス燃焼熱量を算出するようにしても構わない。
冷凍能力とガス燃焼熱量とを算出することができれば、現在のCOPを取得することができる。
【0034】
アダプタ制御部は、算出された現在のCOP情報をクラウドサーバ56に送信する(ST3)。
クラウドサーバ56のサーバ用制御部57は、クラウドアダプタ52から送られた現在のCOPと基準となる想定COPとを比較して現在のCOPと想定COPとの偏差を求め(ST4)、COPが低下しているか否かを判定する(ST5)。
サーバ用制御部57は、現在のCOPと想定COPとの偏差が所定の閾値以内であれば、COPが正常であると判定する。一方、COPの偏差が所定の閾値より高い場合には、COPが低下していると判定する。
サーバ用制御部57は、吸収式冷凍機100の運転状態が安定した状態で、複数回(例えば、10回)の現在のCOPと想定COPとの偏差を求め、現在のCOPと想定COPとの偏差が、例えば、10%より高い場合には、COPが低下していると判断する。
サーバ用制御部57は、COPが低下していると判定した場合には、原因分析処理を行う(ST6)。
【0035】
図6は、原因分析処理の工程を示す説明図である。
図6に示すように、サーバ用制御部57が行う原因分析処理としては、冷却水汚れ判定、真空度低下判定、冷水ハンチング傾向判定、高温再生機液面発停傾向判定、燃焼発停傾向判定、冷却水温度高判定、抽気性能点検、高温再生器温度上昇傾向判定が行われる。
なお、これらの原因分析処理の各処理の順番は、
図6に示す順番に限定されるものではなく、任意の順番に行うようにしてもよいし、同時に行うようにしてもよい。
【0036】
冷却水汚れ判定は、凝縮器の冷却水出入口温度と、凝縮冷媒温度から汚れ係数を算出する。
汚れ係数(ACOND)は、汚れ係数=(dTc-dTc0)×100÷dTc0、で算出することができる。
dTcおよびdTc0は、以下の式で算出することができる。
dTc=凝縮温度-(冷却水出口温度-冷却水中間温度)
dTc0=1.0021×(冷却水出口温度-冷却水中間温度)
そして、汚れ係数が90以上の場合、冷却水の汚れがあると判定される。
【0037】
真空度低下判定は、吸収式冷凍機100の「真空度低下」の予知予報が発報されたか否か、吸収式冷凍機100の「真空度低下」の予知予報が直近で10回/月発報されたか否か、室圧力(不凝縮ガス貯蔵タンク圧力)変化≧1.5[kPa/H]となったか否かで判定される。室圧力の変化が1.5[kPa/H]以上に変化する場合は、想定される変化の約3倍程度となる。
このような状況となった場合には、インヒビター(腐食抑制剤)が不足している傾向が確認される。
【0038】
冷水ハンチング傾向判定は、外乱の影響によりCOPが低下したかの判定を行うものである。
冷水ハンチング傾向判定は、冷水出口温度が、±0.2℃/分以上が60分間継続したか否かで判定される。
【0039】
高温再生機液面発停傾向判定は、溶液循環量の調整が不足していることによりCOPが低下したかの判定を行うものである。
高温再生機液面発停傾向判定は、液面発停が、5回/時間以上が3時間継続したか否かで判定される。
【0040】
燃焼発停傾向判定は、バーナの燃使用不具合や外乱の影響によりCOP低下したかの判定を行うものである。
燃焼発停傾向判定は、燃焼発停が、2回/時間以上で、かつ、冷凍能力比40%以上が3時間継続したか否かで判定される。
【0041】
冷却水温度高判定は、冷却塔の性能不足によりCOP低下したかの判定を行うものである。
冷却水温度高判定は、冷却水温度高の予報発報が行われたか否かで判定される。
【0042】
抽気性能点検は、抽気装置での不凝縮ガスの回収不足によりCOPが低下したかの判定を行うものである。
抽気性能点検は、抽気性能点検の発報が行われたか否かで判定される。
【0043】
高温再生器温度上昇傾向判定は、高温再生器の温度が過剰に上昇したことによりCOPが低下したかの判定を行うものである。
高温再生器温度上昇傾向判定は、高温再生器の温度が162℃以上となったか否かで判定される。
【0044】
サーバ用制御部57は、これらのCOP低下原因分析を行った結果、いずれかに該当していると判定した場合は、該当する判定に基づいて整備提案を行う(ST10)。
整備提案は、例えば、月初に前月の稼働状況のレポートをメールで、例えば、遠隔監視センターなどに送付することにより行われる。レポートには、該当すると判断したCOP低下原因を記載する。これにより、メンテナンス作業者は、COPの低下原因および整備の指標を得ることができる。
サーバ用制御部57は、COP低下原因分析を行った結果、いずれにも該当しておらず、COPが低下している原因を特定することができないと判定した場合は、COP向上対応制御を実施する(ST8)。
【0045】
COP向上対応制御を行う場合、サーバ用制御部57は、吸収液の現在の濃度と、想定濃度との偏差を求める。
吸収液の現在の濃度は、高温再生器温度と低温再生器冷媒出口温度とを温度センサで取得し、取得した温度を所定の式に当てはめることで算出することができる。
サーバ用制御部57は、このように算出された吸収液の現在の濃度と想定濃度との偏差に基づいて、稀吸収液ポンプ45の駆動周波数を変更するように制御する。
【0046】
駆動周波数の制御は、以下の通り行われる。想定濃度-現在濃度=0.1~1.0の場合、駆動周波数は-3Hzに制御される。想定濃度-現在濃度=1.1~1.5の場合、駆動周波数は-5Hzに制御される。想定濃度-現在濃度=1.6~2.0の場合、駆動周波数は-8Hzに制御される。想定濃度-現在濃度=2.1以上の場合は、駆動周波数の変更を行わずに点検を指示する。
【0047】
サーバ用制御部57は、COP向上対応制御を行った後、COP向上対応制御の効果確認を行う(ST9)。
効果確認は、サーバ用制御部57は、COP向上対応制御を行った後、COP向上対応制御後のCOP偏差を求め、COP向上対応制御前のCOP偏差と比較することにより行う。
サーバ用制御部57は、COP向上対応制御後のCOP偏差が、COP向上対応制御前のCOP偏差+2%より大きい場合、すなわち、COP向上対応制御を行ったにも関わらず、COPがより悪化したと判断した場合には、COP向上対応制御を中止し、稀吸収液ポンプ45の駆動周波数を元に戻す。
サーバ用制御部57は、その後、吸収式冷凍機100の停止までの間、COP向上対応制御は実施しない。
【0048】
サーバ用制御部57は、効果確認とともに、過剰制御時の安全対応を行う。
過剰制御時の安全対応は、吸収液の濃液濃度演算値が第1の閾値(例えば、64wt%)以上、または高温再生器の温度が第2の閾値(例えば、158℃)以上のいずれかの条件を満たす場合、運転停止されるまでCOP向上対応制御を中止し、稀吸収液ポンプ45の駆動周波数を元に戻す。
サーバ用制御部57は、その後、吸収式冷凍機100の停止までの間、COP向上対応制御は実施しない。
なお、上記で説明した第1の閾および第2の閾値は、吸収式冷凍機100を停止させる条件よりも小さい値に設定することとする。例えば、吸収式冷凍機100を停止させる条件を、吸収液の濃液濃度演算値が65.5wt%以上、または、高温再生器の温度が165℃以上として、第1の閾値として64wt%、第2の閾値として158℃とする。このように異常発生に備えた閾値を段階的に設定することで、吸収式冷凍機100は、異常発生時にまずCOP向上対応制御を中止し、それでも異常が解消しない場合に停止するという、段階的な対応を行うことができる。
【0049】
[1-3.効果等]
以上説明したように、本実施形態においては、高温再生器5、低温再生器6、蒸発器1、凝縮器7および吸収器3を備え、これらを配管接続して吸収液および冷媒の循環経路をそれぞれ形成してなる吸収式冷凍機100を備えている。サーバ用制御部57(制御部)を備え、サーバ用制御部57は、COPが低下しているか否かを判定し、COPが低下していると判定した場合、COPが低下している原因を分析処理し、COPが低下している原因を分析処理した結果、COPが低下している原因を特定できない場合、COPの向上対応制御を行う。
これによれば、サーバ用制御部57により、COPの低下を常時監視して、COP低下の原因分析を行うことができ、COPが低下している原因を特定できない場合に、COPの向上対応制御を行うことで、COPが低下した場合に、COPを向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態においては、サーバ用制御部57(制御部)は、現在のCOPと想定COPとの偏差を求め、現在のCOPと想定COPとの偏差が所定の閾値以上の場合に、COPが低下していると判定する。
これによれば、現在のCOPと想定COPとに基づいて、COPが低下しているか否かを判定することができる。
【0051】
また、本実施形態においては、サーバ用制御部57(制御部)は、COPが低下している原因を分析処理した結果、COPが低下している原因がある場合、COPの低下原因の整備提案を作成する。
これによれば、COPの低下原因がある場合に、低下原因の整備提案を作成することで、メンテナンス作業者は、COPの低下原因および整備の指標を得ることができる。
【0052】
また、本実施形態においては、吸収式冷凍機100に、クラウドサーバ56と通信可能なクラウドアダプタ52を接続し、制御部は、クラウドサーバ56のサーバ用制御部57またはクラウドアダプタ52のアダプタ用制御部53である。
これによれば、クラウドサーバ56のサーバ用制御部57またはクラウドアダプタ52のアダプタ用制御部53によりCOPの低下の有無、COPの低下原因の分析処理などを行うことができる。
【0053】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0054】
図2に示した各部は一例であって、具体的な実装形態は特に限定されない。つまり、必ずしも各部に個別に対応するハードウェアが実装される必要はなく、1つのプロセッサがプログラムを実行することで各部の機能を実現する構成とすることも勿論可能である。また、上述した実施の形態においてソフトウェアで実現される機能の一部をハードウェアとしてもよく、或いは、ハードウェアで実現される機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。
【0055】
また、実施の形態1では、制御部として、クラウドサーバ56のサーバ用制御部57を用いた例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、クラウドアダプタ52のアダプタ用制御部53を用いるようにしてもよい。
さらに、冷凍機用制御部にアダプタ用制御部53と同様の機能を持たせ、制御部として冷凍機用制御部を用いるようにしてもよい。
【0056】
また、実施の形態1では、サーバ用制御部57により、現在のCOPと基準となる想定COPとを比較し、現在のCOPと想定COPとの偏差に基づいて、COPが低下しているか否かを判定するようにしているが、本開示はこれに限定されない。
例えば、現在のCOPと想定COPとの偏差が所定の閾値以内である場合でも、現在のCOPが想定COPよりも少し低下していれば(例えば、2%)、整備提案で吸収式冷凍機100のメンテナンスを提案するようにしてもよい。このとき、COP低下原因分析処理やCOP向上対応制御は行わない。
【0057】
また、実施の形態1では、サーバ用制御部57により、COPの低下原因を特定できない場合に、必ずCOP向上対応制御を行うようにしているが、COPの低下原因を特定できない場合、COP向上対応制御を実施するか否かをユーザー、吸収式冷凍機100の設置物件、または、吸収式冷凍機100の設定によって切り替えるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示は、COPの低下を監視して、COPが低下した場合に、COP低下の原因分析を行うことのできる吸収式冷凍機に適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 蒸発器
2 吸収器
3 吸収器
4 ガスバーナ
5 高温再生器
6 低温再生器
7 凝縮器
12 低温熱交換器
13 高温熱交換器
14 冷水管
15 冷却水管
17 冷媒ドレン熱回収器
21 稀吸収液管
36 冷却水入口温度センサ
37 冷却水出口温度センサ
38 冷水入口温度センサ
39 冷水出口温度センサ
41 排ガス熱交換器
45 稀吸収液ポンプ
46 中間吸収液ポンプ
47 濃吸収液ポンプ
48 冷媒ポンプ
50 コントローラ
51 冷凍機用制御部
52 クラウドアダプタ
53 アダプタ用制御部
54 アダプタ用通信部
55 クラウド
56 クラウドサーバ
57 サーバ用制御部
58 サーバ用通信部
64 燃料制御弁
70 抽気装置
100 吸収式冷凍機
V1 開閉弁
V2 開閉弁