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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115925
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】脱水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/143 20190101AFI20230815BHJP
   C02F 11/121 20190101ALI20230815BHJP
   B01D 29/00 20060101ALI20230815BHJP
   G01P 3/68 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
C02F11/143
C02F11/121
B01D23/02 A
G01P3/68 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018338
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舩石 圭介
(72)【発明者】
【氏名】館野 覚俊
【テーマコード(参考)】
4D059
4D116
【Fターム(参考)】
4D059AA01
4D059AA02
4D059BE02
4D059BE04
4D059BE13
4D059BE15
4D059BE46
4D059BE55
4D059CB06
4D059CB07
4D059CB27
4D059CC03
4D059EA01
4D059EA20
4D059EB01
4D059EB02
4D059EB11
4D059EB20
4D116BB01
4D116BC07
4D116BC25
4D116BC27
4D116BC45
4D116BC48
4D116DD01
4D116DD06
4D116KK01
4D116KK04
4D116QA24D
4D116QA24G
4D116QB50
4D116QC20A
4D116QC22
4D116QC22A
4D116QC50
4D116TT02
4D116TT07
4D116VV12
(57)【要約】
【課題】脱水前の汚泥が脱水に適しているか否かの判定を単純な処理により自動で行うことによって、全体の制御を自動化することができる脱水処理システムを提供する。
【解決手段】脱水処理システム1は、凝集槽23と、濃縮装置3と、速度計測装置4と、判定装置61と、脱水装置5とを備える。凝集槽23は、汚泥および凝集剤が供給されることによって、汚泥が凝集した凝集フロックCFを生成する。濃縮装置3は、凝集フロックCFを流下させて、凝集フロックCFを濃縮する。速度計測装置4は、濃縮装置3を流下する凝集フロックCFの流下速度を計測する。判定装置61は、速度計測装置4が計測した凝集フロックCFの流下速度が、濃縮基準値以下であれば、濃縮された凝集フロックCFが脱水に適していると判定する。脱水装置5は、濃縮された凝集フロックCFを脱水する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を濃縮して脱水する脱水処理システムであって、
前記汚泥および前記汚泥を凝集する凝集剤が供給されることによって、前記汚泥が凝集した凝集フロックを生成する凝集槽と、
前記凝集フロックを流下させて、前記凝集フロックを濃縮する濃縮装置と、
前記濃縮装置を流下する前記凝集フロックの流下速度を計測する速度計測装置と、
前記流下速度が、前記濃縮装置で濃縮された前記凝集フロックにおける脱水に適しているか否かの基準値である濃縮基準値以下であれば、前記濃縮された凝集フロックが脱水に適していると判定する判定装置と、
前記濃縮された凝集フロックを脱水する脱水装置と
を備える、脱水処理システム。
【請求項2】
前記速度計測装置は、
前記濃縮装置を流下する前記凝集フロックを撮影する少なくとも1つの撮像機と、
前記撮像機が第1時刻に撮影した第1画像、および、前記撮像機が第2時刻に撮影した第2画像に基づいて、前記濃縮装置を流下する前記凝集フロックの流下速度を算出する速度算出機と
を有し、
前記速度算出機は、
前記第1画像に基づいて、前記第1時刻における前記凝集フロックの第1位置を定義し、前記第2画像に基づいて、前記第2時刻における前記凝集フロックの第2位置を定義する位置定義部と、
前記第1位置から前記第2位置までの距離を算出する距離算出部と、
前記第1時刻から前記第2時刻までの経過時間を算出する時間算出部と、
前記第1位置から前記第2位置までの距離、および、前記第1時刻から前記第2時刻までの経過時間に基づいて、前記濃縮装置を流下する前記凝集フロックの流下速度を算出する速度算出部と
を有する、請求項1に記載の脱水処理システム。
【請求項3】
前記位置定義部は、
前記第1画像において、前記凝集フロックおよび前記凝集フロック以外の境界上に複数の点で構成される第1点群を設定することによって前記第1点群の位置を前記第1位置と定義し、
前記第2画像において、前記凝集フロックの流下方向に沿い、かつ、前記第1点群を構成するそれぞれの点の下流側に位置する前記凝集フロックおよび前記凝集フロック以外の境界上に複数の点で構成される第2点群を設定することによって前記第2点群の位置を前記第2位置と定義する、請求項2に記載の脱水処理システム。
【請求項4】
前記速度算出機は、前記撮像機が撮影することによって得られた互いに時刻の異なる複数の画像に基づいて、一の凝集フロックにおける複数の時刻での流下速度、複数の凝集フロックの流下速度、または、前記一の凝集フロックにおける複数の時刻での流下速度および複数の凝集フロックの流下速度を算出し、
前記判定装置は、
前記速度算出機の算出した複数の流下速度の平均値または最大値を算出する判定用数値算出部と、
前記判定用数値算出部の算出した前記複数の流下速度の平均値または最大値が前記濃縮基準値以下であれば前記濃縮された凝集フロックが脱水に適していると判定する判定部と
を有する、請求項2または請求項3に記載の脱水処理システム。
【請求項5】
前記濃縮装置は、
前記凝集フロックを流下させながらろ過により濃縮する傾斜スクリーンを有し、
前記傾斜スクリーンは、
前記凝集フロックが流入する流入部と、
前記凝集フロックが流出する流出部とを有し、
前記傾斜スクリーンは、前記流入部よりも前記流出部が下方に位置するように傾斜し、
前記判定装置は、前記流入部から前記流出部までの範囲のうち、前記流出部から、90%以下の部分の少なくとも一部での前記凝集フロックの流下速度に基づいて前記濃縮された凝集フロックが脱水に適しているか否かを判定する、請求項2から請求項4の何れか一項に記載の脱水処理システム。
【請求項6】
前記流入部から前記流出部までの範囲のうち、前記流出部から、90%以下の部分の少なくとも一部での前記凝集フロックの流下速度に基づいて、前記濃縮された凝集フロックを脱水した脱水汚泥に含まれる水分量である脱水汚泥含水率を推定する推定装置と、
前記脱水処理システムを構成する機器を制御するシステム制御装置と
をさらに備え、
前記システム制御装置は、前記推定装置が推定した前記脱水汚泥含水率に基づいて、前記脱水汚泥含水率が、前記脱水汚泥を十分に脱水できたか否かの基準値である脱水基準値以下となるように前記機器を制御する、請求項5に記載の脱水処理システム。
【請求項7】
前記凝集槽に前記汚泥を供給する汚泥供給ポンプをさらに備え、
前記システム制御装置は、前記推定装置が推定した前記脱水汚泥含水率に基づいて、前記脱水汚泥含水率が、前記脱水基準値以下となるように、前記汚泥供給ポンプが前記凝集槽に供給する前記汚泥の流量を制御する、請求項6に記載の脱水処理システム。
【請求項8】
前記凝集剤を前記凝集槽に供給する凝集剤供給ポンプをさらに備え、
前記システム制御装置は、前記推定装置が推定した前記脱水汚泥含水率に基づいて、前記脱水汚泥含水率が、前記脱水基準値以下となるように、前記凝集剤供給ポンプが前記凝集槽に供給する前記凝集剤の流量を制御する、請求項6または請求項7に記載の脱水処理システム。
【請求項9】
前記システム制御装置は、前記推定装置が推定した前記脱水汚泥含水率に基づいて、前記脱水汚泥含水率が、前記脱水基準値以下となるように、前記脱水装置の脱水量を制御する、請求項6から請求項8の何れか一項に記載の脱水処理システム。
【請求項10】
前記濃縮装置に堆積した前記凝集フロックを洗浄する洗浄装置と、
前記洗浄装置を制御する洗浄制御装置と
をさらに備え、
前記洗浄制御装置は、前記速度計測装置が計測した前記凝集フロックの流下速度が、前記洗浄装置における前記凝集フロックを洗浄する基準値である洗浄基準値以下であれば、前記洗浄装置が前記濃縮装置に堆積した前記凝集フロックを洗浄するように、前記洗浄装置を制御する、請求項1から請求項9の何れか一項に記載の脱水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥を濃縮して脱水する脱水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
し尿処理施設または浄化槽等から発生する汚泥は、施設内の焼却設備または他のごみ処理施設等で助燃材として使用するために脱水処理がなされる。汚泥の脱水処理は、汚泥の凝集工程、凝集した汚泥の濃縮工程、および濃縮した汚泥の脱水工程を順に行うことでなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-146614号公報
【特許文献2】特許第4238983号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
汚泥の脱水処理を行う脱水処理システムでは、脱水工程前に濃縮された汚泥が、脱水に適しているか否かの判定を行っている。そして、この判定結果は、脱水処理システムを構成する機器の制御に使用されている。しかしながら、濃縮された汚泥が脱水に適しているか否かの判定は、脱水処理システムの作業者による目視の判定が必要となるため、脱水処理システムの制御の自動化が難しいという問題があった。
【0005】
特許文献1および特許文献2に開示されている発明は、濃縮された汚泥の大きさを計測し、その計測結果に基づいて、濃縮された汚泥が脱水に適しているか否かを判定している。しかしながら、濃縮された汚泥の大きさに基づく判定は、濃縮工程中に汚泥の形状が変化するといった理由、または、濃縮された汚泥の大きさを算出する処理が複雑といった理由等で、当該判定全体の処理が複雑になるため、脱水処理システムの自動化が難しいということに変わりない。
【0006】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、汚泥を濃縮して脱水する脱水処理システムにおいて、脱水前の汚泥が脱水に適しているか否かの判定を単純な処理により自動で行うことによって、全体の制御を自動化することができる脱水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面によれば、脱水処理システムは、汚泥を濃縮して脱水する脱水処理システムであって、前記汚泥および前記汚泥を凝集する凝集剤が供給されることによって、前記汚泥が凝集した凝集フロックを生成する凝集槽と、前記凝集フロックを流下させて、前記凝集フロックを濃縮する濃縮装置と、前記濃縮装置を流下する前記凝集フロックの流下速度を計測する速度計測装置と、前記流下速度が、前記濃縮凝集フロックにおける脱水に適しているか否かの基準値である濃縮基準値以下であれば、前記濃縮された凝集フロックが脱水に適していると判定する判定装置と、前記濃縮された凝集フロックを脱水する脱水装置とを備えることを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の脱水処理システムによると、脱水前の汚泥が脱水に適しているか否かの判定を単純な処理により自動で行うことができるため、脱水処理システムの制御を自動化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態における脱水処理システムの概略を示す図である。
図2】実施形態における脱水処理システムの濃縮装置の詳細を示す図である。
図3A】実施形態における撮像機が撮影した第1画像を示す図である。
図3B】実施形態における撮像機が撮影した第2画像を示す図である。
図4】実施形態における傾斜スクリーンの上面と直交する方向から、当該傾斜スクリーンの上面を視た図である。
図5】実施形態における、脱水装置で脱水された脱水汚泥の含水率と、濃縮装置を流下する凝集フロックの流下速度との関係を示すグラフである。
図6】実施形態における、凝集槽への高分子注入率と、濃縮装置を流下する凝集フロックの流下速度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面に記載された同一または相当部分については、同一の参照符号を付す。同一の参照符号が付された部分についての説明は繰り返さない。
【0011】
図1および図2を参照して、実施形態の脱水処理システム1の概略について説明する。図1は、実施形態における脱水処理システム1の概略を示す図である。図2は、実施形態における脱水処理システム1の濃縮装置3の詳細を示す図である。
【0012】
図1に示す脱水処理システム1には、汚泥が供給される。脱水処理システム1は、供給された汚泥に対して脱水処理を行う。
【0013】
脱水処理では、第1に、脱水処理システム1に供給された汚泥を凝集する凝集工程が行われる。凝集工程にて凝集された汚泥を「凝集フロックCF」と称する。第2に、脱水処理では、凝集フロックCFが濃縮される濃縮工程が行われる。濃縮工程では、凝集フロックCFが濃縮スクリーンを流下することによってろ液と分離し、凝集フロックCFが濃縮する。最後に、脱水処理では、濃縮された凝集フロックCFを脱水する脱水工程が行われる。脱水工程にて脱水された凝集フロックCFを「脱水汚泥」と称する。
【0014】
脱水汚泥は、例えば、焼却設備またはごみ処理施設等での助燃剤として使用される。このため、脱水汚泥に含まれる水分量である「脱水汚泥含水率」は、用途に応じて定められた基準以下とする必要がある。具体的には、焼却設備またはごみ処理施設等での助燃剤として使用する場合、脱水汚泥含水率の基準は70%となる。脱水汚泥含水率は、濃縮工程で濃縮された凝集フロックCFが脱水に適している場合に、基準以下となる。したがって、濃縮工程で濃縮された凝集フロックCFが脱水に適しているか否かを判定することによって、脱水汚泥含水率が基準以下となるか否かを当該判定結果により把握することができる。さらに、脱水処理システム1を構成する機器が、濃縮工程で濃縮された凝集フロックCFの状態に基づいて制御されることで、脱水に適した状態の凝集フロックCFを濃縮することによって生成することができる。
【0015】
図1に示すように、脱水処理システム1は、汚泥および脱水助剤が供給される混和槽21と、混和槽21内の汚泥を送り出す汚泥供給ポンプ22と、汚泥供給ポンプ22に送りだされた汚泥が供給される凝集槽23と、凝集槽23に凝集剤を供給する凝集剤供給ポンプ24と、凝集槽23の汚泥に凝集剤が供給されることによって生成される凝集フロックCFを濃縮する濃縮装置3と、濃縮装置3で濃縮された凝集フロックCFを脱水する脱水装置5とを備える。混和槽21と、汚泥供給ポンプ22と、凝集槽23と、凝集剤供給ポンプ24とは、凝集工程を行う。濃縮装置3は、濃縮工程を行う。そして、脱水装置5は、脱水工程を行う。
【0016】
混和槽21は、汚泥および脱水助剤が供給される混和タンク211と、混和タンク211に供給された汚泥および脱水助剤を攪拌する混和攪拌機212とを有する。混和タンク211に供給された汚泥および脱水助剤を混和攪拌機212が攪拌することにより、汚泥および脱水助剤は混和される。脱水助剤と混和した汚泥は、脱水助剤と混和しない汚泥と比較して凝集しやすくなる。脱水助剤は、例えば、繊維材、無機凝集剤、pH調整剤、および木粉を含む。
【0017】
汚泥供給ポンプ22は、混和槽21で脱水助剤と混和した汚泥を凝集槽23に送り出すポンプである。これにより、汚泥は凝集槽23に供給される。
【0018】
凝集槽23には、汚泥供給ポンプ22を介して混和槽21から汚泥が供給される。また、凝集槽23には、凝集剤供給ポンプ24から凝集剤が供給される。凝集剤供給ポンプ24は、凝集剤を凝集槽23に送り出すポンプである。凝集剤は、汚泥に添加することで汚泥を凝集する高分子である。凝集剤の高分子は、有機高分子または無機高分子を含む。
【0019】
凝集槽23は、汚泥および凝集剤が供給される凝集タンク231と、凝集タンク231に供給された汚泥および凝集剤を攪拌する凝集槽用攪拌機232とを有する。凝集タンク231に供給された汚泥および凝集剤を凝集槽用攪拌機232が攪拌することよって、汚泥および凝集剤は混和される。これにより、凝集フロックCFが生成される。凝集タンク231で生成された凝集フロックCFは、凝集タンク231内に分散し流動する。
【0020】
図2に示すように、濃縮装置3は、凝集槽23で生成された凝集フロックCFが流入する濃縮装置入口配管31と、濃縮装置入口配管31に接続する傾斜スクリーン32と、傾斜スクリーン32に接続する濃縮装置出口配管33とを有する。
【0021】
濃縮装置入口配管31は、両端が水平方向に向かって開口する配管である。濃縮装置入口配管31の一方端は、凝集タンク231の上部に接続している。また、凝集タンク231の内部、および、濃縮装置入口配管31の内部は連通している。濃縮装置入口配管31の他方端は、傾斜スクリーン32に接続している。
【0022】
前述のように、凝集タンク231で生成された凝集フロックCFは、凝集タンク231内に流動分散している。凝集タンク231に汚泥を連続的に供給することで、凝集タンク231内の汚泥の液面が上昇する。凝集タンク231内の汚泥の液面が濃縮装置入口配管31の位置まで上昇することによって、汚泥の液体成分、および、凝集フロックCFは濃縮装置入口配管31の内部に流入する。汚泥の液体成分、および、凝集フロックCFは、濃縮装置入口配管31の内部に流入した後、傾斜スクリーン32に向かって流れる。
【0023】
傾斜スクリーン32は、凝集フロックCFが流入する流入部と、流入部に流入した凝集フロックCFが流出する流出部とを有する。また、傾斜スクリーン32は、流入部よりも流出部が下方に位置するように傾斜する。ここで、流入部のうち、最も上流側を流入端32Aと称する。また、流出部のうち、最も下流側を流出端32Bと称する。
【0024】
傾斜スクリーン32に向かった汚泥の液体成分、および、凝集フロックCFは、流入端32Aに流入する。流入端32Aは、前述の濃縮装置入口配管31の他方端の下部に接続される。なお、流入端32Aは、傾斜スクリーン32に向かった汚泥の液体成分、および、凝集フロックCFが流入すれば、濃縮装置入口配管31に接続しなくともよい。
【0025】
傾斜スクリーン32は、汚泥の液体成分、および、凝集フロックCFを流下させながらろ過するスクリーンである。汚泥の液体成分、および、凝集フロックCFは、流入端32Aに流入した後に、傾斜スクリーン32の上面に流入する。傾斜スクリーン32の上面に流入した汚泥の液体成分、および、凝集フロックCFは、傾斜スクリーン32の上面を流下する。汚泥の液体成分は、傾斜スクリーン32の上面を流下する際に、傾斜スクリーン32の上面から下面に向かって傾斜スクリーン32を通過して傾斜スクリーン32の下側に落ちる。傾斜スクリーン32を通過する汚泥の液体成分を「濃縮ろ液」と称する。
【0026】
一方で、傾斜スクリーン32の上面に流入した凝集フロックCFは、傾斜スクリーン32を通過することなく傾斜スクリーン32の上面を流下する。凝集フロックCFは、凝集フロックCFが傾斜スクリーン32の上面を流下することで、凝集フロックCFから汚泥の液体成分が分離され、濃縮される。濃縮された凝集フロックCFは、流出端32Bから流出する。流出端32Bから流出した凝集フロックCFは、濃縮装置出口配管33に向かう。
【0027】
濃縮装置出口配管33は、両端が鉛直方向に向かって開口する配管である。濃縮装置出口配管33は、流出端32Bから流出した凝集フロックCFが濃縮装置出口配管33の上端に設けられた開口を通って濃縮装置出口配管33の内部に流入するように配置されている。また、濃縮装置出口配管33の上端は、傾斜スクリーン32の流出端32Bに接続している。濃縮装置出口配管33の下端は、脱水装置5に接続している。なお、濃縮装置出口配管33は、流出端32Bから流出した凝集フロックCFが濃縮装置出口配管33の内部に流入すれば、流出端32Bに接続しなくともよい。また、実施形態では、流入部として流入端32Aを説明したが、流入部は、凝集フロックCFが流入する部分であれば、流入端32Aに限らない。同様に、流出部も、凝集フロックCFが流出する部分であれば流出端32Bに限らない。
【0028】
濃縮装置出口配管33に向かった凝集フロックCFは、濃縮装置出口配管33の内部に流入する。濃縮装置出口配管33の内部に流入した凝集フロックCFは、脱水装置5に流入する。
【0029】
脱水装置5は、濃縮装置3で濃縮された凝集フロックCFを脱水して、濃縮された凝集フロックCFの液体成分である「脱水ろ液」と、脱水汚泥とを分離し、脱水汚泥を生成する。脱水装置5は、例えば、スクリュープレス脱水機等である。
【0030】
図2から図6を参照して、実施形態の脱水処理システム1における濃縮装置3で濃縮された凝集フロックCFが脱水に適しているか否かの判定と、濃縮装置3で濃縮された凝集フロックCFの状態に基づいて脱水処理システム1を構成する機器のそれぞれに対して行う制御とについて詳細に説明する。図3Aは、実施形態における撮像機41が撮影した第1画像M1を示す図である。図3Bは、実施形態における撮像機41が撮影した第2画像M2を示す図である。図4は、実施形態における傾斜スクリーン32の上面と直交する方向から、当該傾斜スクリーン32の上面を視た図である。図5は、実施形態における、脱水装置5で脱水された脱水汚泥の含水率と、濃縮装置3を流下する凝集フロックCFの流下速度との関係を示すグラフである。図6は、実施形態における、凝集槽23への高分子注入率と、濃縮装置3を流下する凝集フロックCFの流下速度との関係を示すグラフである。
【0031】
図2に示すように、脱水処理システム1は、濃縮装置3を流下する凝集フロックCFの流下速度を計測する速度計測装置4と、速度計測装置4の計測結果に基づいて濃縮装置3で濃縮された凝集フロックCFが脱水に適しているか否かを判定する判定装置61と、速度計測装置4の計測結果に基づいて脱水汚泥含水率を推定する推定装置62と、推定装置62の推定結果に基づいて脱水処理システム1を構成する機器のそれぞれを制御するシステム制御装置63とをさらに備える。
【0032】
速度計測装置4は、傾斜スクリーン32の上面を撮影できるように配置される少なくとも1つの撮像機41と、撮像機41の撮影した画像が入力される速度算出機42とを有する。速度計測装置4は、傾斜スクリーン32の上面を流下する凝集フロックCFの流下速度を撮像機41の撮影した画像から算出する。この結果、濃縮装置3で濃縮された凝集フロックCFが脱水に適しているか否かの判定、および、脱水処理システム1を構成する機器の制御に、凝集フロックCFの流下速度の情報を使用できるようになる。
【0033】
撮像機41は、傾斜スクリーン32の上面を流下する凝集フロックCFを撮影する。撮像機41は、例えば、ビデオまたは写真等の画像を記録するカメラである。
【0034】
図3Aおよび図3Bに示すように、撮像機41が撮影した画像には、撮像機41が撮影した時刻に関する情報が含まれている。以降、撮像機41が第1時刻に撮影した画像を第1画像M1、撮像機41が第2時刻に撮影した画像を第2画像M2、撮像機41が第N時刻(Nは3以上の整数)に撮影した画像を第N画像と称する。
【0035】
速度算出機42は、撮像機41が第1時刻に撮影した第1画像M1(図3A)、撮像機41が第2時刻に撮影した第2画像M2(図3B)、および撮像機41が第N時刻に撮影した第N画像のうちの2つの画像に基づいて、傾斜スクリーン32の上面を流下する凝集フロックCFの流下速度を算出する。速度算出機42は、例えば、MPU(Micro Processing Unit)、および、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサと、ROM(Read Only Memory)、および、RAMのようなメモリとを有する端末である。速度算出機42は、ROMに記憶された速度算出プログラムをプロセッサが実行することにより、凝集フロックCFの流下速度を算出する。このような構成は、後述する判定装置61、推定装置62、システム制御装置63、および洗浄制御装置72においても同一である。
【0036】
速度算出機42は、第1画像M1、第2画像M2、および第N画像における凝集フロックCFの位置を定義する位置定義部421と、位置定義部421の定義した凝集フロックCFの位置に基づいて凝集フロックCFの流下した距離を算出する距離算出部422と、撮像機41から入力された第N画像に記録された撮影時刻に基づいて凝集フロックCFの流下に伴って経過した時間を算出する時間算出部423と、距離算出部422の算出した凝集フロックCFの流下した距離、および、時間算出部423の算出した凝集フロックCFの流下に伴って経過した時間に基づいて凝集フロックCFの流下速度を算出する速度算出部424とを有する。
【0037】
図3Aに示す第1画像M1、および、図3Bに示す第2画像M2を参照して、速度算出機42による凝集フロックCFの流下速度の算出について説明する。以降、説明の便宜上、図3Aおよび図3Bに示す図の下方向を下流方向と称する。下流方向と反対の方向を上流方向と称する。下流方向に直交する方向を左右方向と称する。図3Aおよび図3Bにおいて、凝集フロックCFは、上流方向から下流方向に向かって流下する。また、第1画像M1および第2画像M2における任意の位置は、上下流方向、および、左右方向の直交座標系により表現する。具体的には、第1画像M1に任意の点P11を定義した場合、P11の左右方向の位置をX1で表現し、P11の上下流方向の位置をY11で表現する。同一の文字で表現された座標は、それぞれの方向において同一の位置を示す。
【0038】
位置定義部421は、図3Aに示すように、第1画像M1に基づいて、第1時刻における凝集フロックCFの第1位置を定義する。第1位置は、凝集フロックCFおよび凝集フロックCF以外の境界上に複数の点で構成される第1点群を設定することによって定義される。具体的には、第1点群としては、点P11、点P12、および点P13が定義される。それぞれの点の位置は、点P11が(X1、Y11)、点P12が(X2、Y21)、点P13が(X3、Y31)である。このような第1点群の位置が第1位置と定義される。
【0039】
位置定義部421は、図3Bに示すように、第2画像M2に基づいて、第2時刻における凝集フロックCFの第2位置を定義する。第2位置は、凝集フロックCFの流下方向に沿い、かつ、第1点群を構成するそれぞれの点の下流側に位置する凝集フロックCFおよび凝集フロックCF以外の境界上に複数の点で構成される第2点群を設定することによって第2点群の位置を定義する。具体的には、第2点群は、点P11の下流側に定義される点P21、点P12の下流側に定義される点P22、および点P13の下流側に定義される点P23によって構成される。第2点群を構成するそれぞれの点の位置は、点P21が(X1、Y12)、点P22が(X2、Y22)、点23が(X3、Y32)である。このような第2点群の位置が第2位置と定義される。
【0040】
ここで、凝集フロックCFは、上流方向から下流方向に向かって流下し、左右方向への移動はわずかである。したがって、以上のように、位置定義部421が、第1位置および第2位置を定義することで、第1画像M1で設定した凝集フロックCFの任意の点について、それらの点のそれぞれと対応する点を第2画像M2において定義することができる。この結果、流下に伴って形状が変化する凝集フロックCFであっても、それらの位置の変化を単純な処理で正確に定義することができる。
【0041】
図2に示す距離算出部422は、位置定義部421の定義した第1位置および第2位置に基づいて、第1位置から第2位置までの距離を算出する。第1位置から第2位置の算出は、第1点群を構成する点のそれぞれから、第1点群を構成するそれぞれの点と対応する第2点群のそれぞれの点までの距離を求めることによって算出される。
【0042】
時間算出部423は、第1時刻および第2時刻に基づいて、第1時刻から第2時刻までの経過時間を算出する。
【0043】
速度算出部424は、距離算出部422で算出した第1位置から第2位置までの距離を、時間算出部423で算出した第1時刻から第2時刻までの時間で除することにより、凝集フロックCFの流下速度を算出する。速度算出部424の算出した凝集フロックCFの流下速度は、速度計測装置4の計測した計測値として判定装置61、および、推定装置62に出力される。
【0044】
速度算出機42は、撮像機41が撮影することによって得られた互いに時刻の異なる複数の画像に基づいて、一の凝集フロックCFにおける複数の時刻での流下速度、複数の凝集フロックCFの流下速度、または、一の凝集フロックCFにおける複数の時刻での流下速度および複数の凝集フロックCFの流下速度を算出する。したがって、速度算出機42は、流下速度を複数算出する。よって、濃縮装置3で濃縮された凝集フロックCFが脱水に適しているか否かの判定、および、脱水処理システム1を構成する機器の制御に使用できる凝集フロックCFの流下速度の情報が複数になり、当該判定の精度、および、当該制御の精度が向上する。
【0045】
判定装置61には、速度計測装置4の計測した凝集フロックCFの流下速度の計測値が入力される。判定装置61は、流下速度の計測値に基づいて算出する後述の判定用数値が濃縮基準値以下であれば、濃縮装置3で濃縮された凝集フロックCFが脱水に適していると判定する。ここで、濃縮基準値とは、濃縮装置3で濃縮された凝集フロックCFにおける脱水に適しているか否かの基準値である。判定装置61が、判定用数値および濃縮基準値を比較するという単純な処理を行うことで、作業者が当該判定をする必要がない。よって、当該判定は、単純な処理により自動で行われる。
【0046】
判定装置61は、流入端32Aから流出端32Bまでの範囲のうち、流出端32Bから、90%以下の部分である範囲Rの少なくとも一部での凝集フロックCFの流下速度の計測値に基づいて濃縮された凝集フロックCFが脱水に適しているか否を判定する。図4に示すように、範囲Rは、傾斜スクリーン32の長手方向における流入端32Aから流出端32Bまでの長さである全長FL、および、流出端32Bに基づいて定められる。全長FLを100%とすると、範囲Rは、流出端32Bから、全長FLに対して90%の範囲基準位置RPまでに含まれる部分である。当該範囲Rでは、汚泥の液体成分、および、凝集フロックCFの表面の乱れが少なく安定している。結果として、汚泥の液体成分、および、凝集フロックCFの表面の乱れに起因する凝集フロックCFの流下速度の計測誤差による判定等への影響を低減することができる。
【0047】
また、図2に示す判定装置61は、範囲Rのうち、以下の部分での凝集フロックCFの流下速度の計測値に基づいて判定することが好ましい。第1に判定装置61は、範囲Rのうち、流出端32Bから、全長FLに対して80%の範囲設定位置RP1までに含まれる第1部分R1での凝集フロックCFの流下速度の計測値に基づいて判定することが好ましい。第2に、判定装置61は、範囲Rのうち、流出端32Bから、全長FLに対して50%の位置である中間位置IPを基準に、前記流出端32Bから一定の部分を除く、可能な限り広い第2部分R2での凝集フロックCFの流下速度の計測値に基づいて判定することが好ましい。第3に、判定装置61は、範囲Rのうち、凝集フロックCFが一定程度以上ろ過された第3部分R3での凝集フロックCFの流下速度の計測値に基づいて判定することが好ましい。第1から第3にて説明した第1部分R1、第2部分R2、および第3部分R3は、範囲Rのうち、当該第1部分R1、第2部分R2、および第3部分R3以外の部分と比較して汚泥の液体成分の量が少ない。したがって、液体成分、および、凝集フロックCFの表面の乱れが、より小さくなる。結果として、液体成分、および、凝集フロックCFの表面の乱れに起因する凝集フロックCFの流下速度の計測誤差による判定等への影響を、さらに低減することができる。
【0048】
図2に示すように、判定装置61は、速度計測装置4から入力された流下速度の計測値に基づいて判定用数値を算出する判定用数値算出部611と、判定用数値算出部611が算出した判定用数値に基づいて、濃縮装置3で濃縮された凝集フロックCFが脱水に適しているか否かの判定を行う判定部612とを有する。
【0049】
判定用数値算出部611は、速度計測装置4から入力された複数の計測値について、それら計測値の平均値または最大値といった判定用数値を算出する。したがって、個々の凝集フロックCFごとの差、または、速度計測装置4の計測誤差等の影響により、速度計測装置4から入力された複数の流下速度の計測値に幅があった場合においても、それらの影響が少ない判定用数値を判定に使用することができる。よって、当該判定を精度良く行うことができる。
【0050】
図5に示すように、判定部612は、判定用数値算出部611の算出した判定用数値が濃縮基準値以下であれば、濃縮装置3で濃縮された凝集フロックCFが脱水に適していると判定する。このように判定するのは、脱水に適した凝集フロックCFが濃縮装置3から得られる場合、傾斜スクリーン32での凝集フロックCFの流下速度が一定以下となる傾向があるためである。濃縮基準値は、傾斜スクリーン32を流下する凝集フロックCFの流下速度、および、当該凝集フロックCFを脱水したときの脱水汚泥含水率を試験によって求め、当該試験結果を考慮して設定される。なお、速度計測装置4が判定装置61に入力した流下速度の計測値が単一の場合、判定部612は入力された単一の計測値に基づいて、濃縮装置3で濃縮された凝集フロックCFが脱水に適しているか否かを判定する。
【0051】
濃縮装置3で濃縮された凝集フロックCFが脱水に適しているか否かの判定について、図5を参照して具体的に説明する。図5においては、脱水汚泥含水率(%)を横軸に表し、傾斜スクリーン32を流下する凝集フロックCFの流下速度(m/分)を縦軸に表す。図5のグラフは、前述のように脱水汚泥を助燃材として使用する場合の判定について表している。助燃材として脱水汚泥を使用する場合、脱水汚泥が十分に脱水できたか否かを判定するための脱水汚泥含水率の基準は70%であり、脱水汚泥含水率が70%以下の脱水汚泥が要求される。以降、脱水汚泥が十分に脱水できたか否かを判定するための脱水汚泥含水率の基準を「脱水基準値」と称する。
【0052】
図5より、脱水汚泥含水率が70%以上となる凝集フロックCFは、その凝集フロックCFの流下速度が4m/分以上となる場合がある。したがって、脱水汚泥を助燃材として使用する場合、濃縮基準値は、4m/分に設定される。凝集フロックCFの流下速度が、4m/分以下のみの場合、濃縮装置3で濃縮された凝集フロックCFは、脱水に適していると判定される。
【0053】
図2に示すように、推定装置62には、速度計測装置4の計測した凝集フロックCFの流下速度の計測値が入力される。推定装置62は、判定装置61と同様に、流入端32Aから流出端32Bまでの範囲のうち、流出端32Bから、90%以下の部分である範囲Rの少なくとも一部での凝集フロックCFの流下速度の計測値に基づいて、脱水汚泥含水率を推定する。ここで、判定装置61の場合と同様に、推定装置62は、範囲Rのうち、第1部分R1、第2部分R2、および第3部分R3での凝集フロックCFの流下速度の計測値に基づいて推定を行うのが好ましい。その理由は、判定装置61にて説明した通りである。推定装置62が当該推定を行うことによって、脱水処理システム1を構成する機器の制御に、当該推定の結果を使用することができる。
【0054】
推定装置62は、流下速度の計測値に基づいて、後述する推定用数値を算出する推定用数値算出部621と、推定用数値算出部621が算出した推定用数値に基づいて、脱水汚泥含水率を推定する推定部622とを有する。
【0055】
推定用数値算出部621は、複数の流下速度の計測値に基づいて、複数の流下速度の計測値の平均値、最小値、最大値、最小値および最大値の差、標準偏差などのばらつき、またはそれらの組み合わせなどといった推定用数値を算出する。したがって、個々の凝集フロックCFごとの差、または、速度計測装置4の計測誤差等の影響により、複数の流下速度の計測値に幅があった場合においても、それらの影響の少ない推定用数値を脱水汚泥含水率の推定に使用することができる。よって、当該推定を精度良く行うことができる。
【0056】
推定部622は、推定用数値算出部621の算出した推定用数値に基づいて、脱水汚泥含水率を推定する。脱水汚泥含水率の推定の一例について、図5を参照して説明する。
【0057】
図5に示すように、例えば、脱水汚泥含水率が72%以上の範囲にある場合、脱水汚泥含水率が大きい程、流下速度の計測値の最大値が大きい。つまり、脱水汚泥含水率と、推定用数値の一種である流下速度の計測値の最大値との間に相関関係がある。したがって、推定部622は、当該相関関係に基づいて、推定用数値算出部621の算出した流下速度の計測値の最大値に対応する脱水汚泥含水率を推定する。
【0058】
なお、図5を参照して説明した脱水汚泥含水率の推定では、脱水汚泥含水率と、流下速度の計測値の最大値との間の相関関係に着目し、流下速度の計測値の最大値を推定用数値として用いた。しかしながら、図5を参照して説明した脱水汚泥含水率の推定は一例であって、脱水汚泥含水率の推定に用いる推定用数値は、流下速度の計測値の最大値に限らず、脱水処理システム1の使用条件、仕様等に応じて適宜変更することができる。例えば、脱水汚泥含水率と、複数の流下速度の計算値の平均値、最小値、最小値および最大値の差、または標準偏差などのばらつきとの間に相関関係があるような場合、それらを推定用数値としてもよい。また、上記にて、流下速度の計測値である場合について説明したが、流下速度の計測値が単一の場合、推定装置62は当該単一の計測値に基づいて、脱水汚泥含水率を推定する。
【0059】
図2に示すように、システム制御装置63には、推定装置62の推定した脱水汚泥含水率の推定値が入力される。システム制御装置63は、推定装置62の推定した脱水汚泥含水率の推定値に基づいて、脱水汚泥含水率が脱水基準以下となるように、汚泥供給ポンプ22、凝集剤供給ポンプ24、脱水装置5、またはそれらの組み合わせを制御する。したがって、汚泥供給ポンプ22、凝集剤供給ポンプ24、または脱水装置5の制御は、作業者の手を介さず行われる。よって、脱水処理システム1の制御を自動で行うことができる。
【0060】
システム制御装置63は、推定装置62の推定した脱水汚泥含水率の推定値に基づいて、汚泥供給ポンプ22の送り出す汚泥の流量を調整する制御する。システム制御装置63は、例えば、推定装置62の推定した脱水汚泥含水率が脱水基準値よりも大きい場合、汚泥供給ポンプ22の送り出す汚泥の流量を下げるように、汚泥供給ポンプ22を制御する。
【0061】
システム制御装置63は、推定装置62の推定した脱水汚泥含水率の推定値に基づいて、凝集剤供給ポンプ24の送り出す凝集剤の流量を調整する制御する。
【0062】
図6を参照してシステム制御装置63の凝集剤供給ポンプ24に対して行う制御について説明する。図6は、高分子注入率(%)を横軸に示し、傾斜スクリーン32を流下する凝集フロックCFの流下速度(m/分)を縦軸に示す。高分子注入率は、一定の汚泥量に対して供給される凝集剤の量の割合を示す。高分子注入率が大きいほど汚泥に供給される凝集剤の量が多い。すなわち、凝集剤供給ポンプ24の送り出す凝集剤の流量が大きい。
【0063】
図6のグラフより、凝集フロックCFの流下速度が大きい場合、高分子注入率が小さい。一方で、凝集フロックCFの流下速度が小さい場合、高分子注入率が大きい。したがって、凝集フロックCFの流下速度が大きい場合、図2に示すシステム制御装置63は、凝集剤供給ポンプ24の送り出す凝集剤の流量を上げるように、凝集剤供給ポンプ24を制御する。
【0064】
システム制御装置63は、推定装置62の推定した脱水汚泥含水率の推定値に基づいて、脱水装置5の脱水量を制御する。脱水量は、脱水装置5が、濃縮装置3で濃縮された凝集フロックCFから脱水する水分量である。例えば、スクリューを有するスクリュープレス脱水機の場合、スクリューの回転数の変更等によって脱水量を制御する。システム制御装置63は、例えば、推定装置62の推定した脱水汚泥含水率が脱水基準値よりも大きい場合、脱水装置5の脱水量を上げるように、脱水装置5を制御する。
【0065】
好ましくは、脱水処理システム1は、傾斜スクリーン32の上面を洗浄する洗浄装置71と、洗浄装置71を制御する洗浄制御装置72とを備える。
【0066】
傾斜スクリーン32の上面には、凝集フロックCFの濃縮を行うことによって、徐々に凝集フロックCFが堆積する。洗浄装置71は、傾斜スクリーン32の上面に堆積した凝集フロックCFを水等により洗い流す装置である。傾斜スクリーン32の上面に堆積した凝集フロックCFが洗浄装置71により洗い流されることで、速度計測装置4は、傾斜スクリーン32の上面を流下する凝集フロックCFのみの流下速度を計測することができる。よって、判定装置61の行う判定の精度が向上する。さらに、推定装置62の行う推定の精度も向上する。これにより、システム制御装置63は、脱水処理システム1を構成する機器のそれぞれに対し、汚泥含水率が脱水基準以下の脱水汚泥を生成するために適した制御を行うことができる。
【0067】
洗浄制御装置72には、凝集フロックCFの流下速度の計測値が速度計測装置4から入力される。洗浄制御装置72は、入力された流下速度の計測値が洗浄基準値以下であれば、洗浄装置71が傾斜スクリーン32に堆積した凝集フロックCFを洗浄するように、洗浄装置71を制御する。洗浄基準値は、速度計測装置4が傾斜スクリーン32の上面に堆積した凝集フロックCFの速度を計測した場合に、傾斜スクリーン32に堆積した凝集フロックCFの速度の計測値として速度計測装置4が出力すると想定される速度である。
【0068】
洗浄制御装置72が、洗浄装置71の洗浄を制御することで、作業者の手を介することなく傾斜スクリーン32の洗浄が行われる。よって、判定装置61の行う判定の精度、および、推定装置62の行う推定の精度を、脱水処理システム1を自動で制御するのに適した水準に、作業者の手を介することなく維持することができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態に限られるものではなく、濃縮工程における凝集フロックCFの流下速度に基づいて、濃縮装置3で濃縮された凝集フロックCFが脱水に適しているか否かの判定を行うという本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【0070】
また、同様に、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態に限られるものではなく、濃縮工程における凝集フロックCFの流下速度に基づいて、脱水汚泥含水率を推定し、その推定結果を使用して脱水処理システム1を構成する機器の制御を行うという本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 脱水処理システム
3 濃縮装置
4 速度計測装置
5 脱水装置
22 汚泥供給ポンプ
23 凝集槽
24 凝集剤供給ポンプ
32 傾斜スクリーン
32A 流入端
32B 流出端
41 撮像機
42 速度算出機
61 判定装置
62 推定装置
63 システム制御装置
71 洗浄装置
72 洗浄制御装置
CF 凝集フロック
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6