(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115933
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】車載型トイレおよび仮設トイレ搭載車両
(51)【国際特許分類】
E04H 1/12 20060101AFI20230815BHJP
E03D 11/00 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
E04H1/12 301
E03D11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018350
(22)【出願日】2022-02-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 展示日 :令和3年11月5日~令和3年11月6日 展示会名:関東グランドフェア2021 主催者名:やまずみ会
(71)【出願人】
【識別番号】513049480
【氏名又は名称】株式会社ハマネツ
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】金子 大佑
(72)【発明者】
【氏名】吉村 隆充
【テーマコード(参考)】
2D039
2E025
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AA04
2E025BA05
2E025BB01
2E025BC05
(57)【要約】
【課題】開かれた戸板が階段を昇降する使用者の邪魔にならず、ハウジングの内部で倒れた使用者を救助者が容易に救助できる、車載型トイレおよび仮設トイレ搭載車両を提供する。
【解決手段】仮設トイレ搭載車両12は、車両14と、荷台16に載置される車載型トイレ10とを備える。車載型トイレ10は、階段32を介して使用者が使用するものであり、第1壁板46と第1壁板46と同一面内に設けられた出入口50とを有するハウジング20と、戸板22を有する引戸24と、ハウジング20に設けられた戸当たり部26と、便器とを備える。引戸24は、戸板22が出入口50を塞ぐ「閉状態」と戸板22が第1壁板46に沿って配置される「開状態」とを選択的に取り得るように、戸板22がスライド可能に構成される。戸板22は、車両14の進行方向に対して平行となるように設けられ、出入口50は、第1壁板46よりも進行方向の前側に設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷台に載置されてこの荷台の高さまで上るための階段を介して使用者が使用する車載型トイレであって、
板状の第1壁板と前記第1壁板と同一面内に設けられた出入口とを有し、前記車両の前記荷台に載置されるハウジングと、
前記出入口を塞ぐための板状の戸板を有し、前記戸板が前記出入口を塞ぐ閉状態と前記戸板が前記第1壁板に沿って配置される開状態とを選択的に取り得るように、前記戸板がスライド可能に構成された引戸と、
前記ハウジングに設けられ、前記引戸が前記閉状態にあるとき、前記戸板の戸先部が当たる戸当たり部と、
前記ハウジングの内部に設けられた便器とを備える、車載型トイレ。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記出入口を挟んだ前記第1壁板の反対側で前記戸板と同一面内に設けられた板状の第2壁板を有し、
前記戸当たり部は、前記第2壁板における前記出入口側の側端面に設けられる、請求項1に記載の車載型トイレ。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記第1壁板に対して直角をなすように繋がる板状の第3壁板を有し、
前記便器は、小便用の便器として構成されて前記第3壁板に設けられる、請求項1または2に記載の車載型トイレ。
【請求項4】
前記引戸は、前記ハウジングに設けられたレールと、前記レールに走行可能に取り付けられて前記レールから前記戸板を吊り下げる複数のランナーとを有し、
前記戸板の下端面およびこれに対向する前記ハウジングの床面の一方には、前記戸板が移動する方向へ延びる溝状のガイド溝が設けられ、
前記戸板の下端面およびこれに対向する前記ハウジングの床面の他方には、前記ガイド溝に対して移動可能に嵌め合わされる突起状のガイド突起が設けられる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車載型トイレ。
【請求項5】
前記引戸は、前記ハウジングに設けられたレールと、前記レールに走行可能に取り付けられて前記レールから前記戸板を吊り下げる複数のランナーとを有し、
前記戸板の下端面およびこれに対向する前記ハウジングの床面の一方には、前記戸板が移動する方向へ延びる突起状のガイド突起が設けられ、
前記戸板の下端面およびこれに対向する前記ハウジングの床面の他方には、前記ガイド突起に対して移動可能に嵌め合わされる凹状のガイド凹部が設けられる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車載型トイレ。
【請求項6】
前記引戸が前記開状態にあるとき、前記戸板は、前記第1壁板の外側に配置される、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車載型トイレ。
【請求項7】
前記戸板は、主として発泡樹脂で構成される、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の車載型トイレ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の車載型トイレと、
前記車載型トイレが載置される荷台を有する車両とを備える、仮設トイレ搭載車両。
【請求項9】
前記車載型トイレは、前記戸板が前記車両の進行方向に対して平行となるように前記荷台に載置され、
前記出入口は、前記第1壁板よりも前記車両の進行方向の前側に設けられる、請求項8に記載の仮設トイレ搭載車両。
【請求項10】
前記車載型トイレは、前記戸板が前記車両の進行方向に対して平行となるように前記荷台に載置され、
前記出入口は、前記第1壁板よりも前記車両の進行方向の後側に設けられる、請求項8に記載の仮設トイレ搭載車両。
【請求項11】
前記車載型トイレは、前記戸板が前記車両の幅方向に対して平行となるように前記荷台に載置される、請求項8に記載の仮設トイレ搭載車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の荷台に載置されて使用される車載型トイレおよびそれを備える仮設トイレ搭載車両に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示された従来の車載型トイレは、車両の荷台に載置されるハウジングと、ハウジングの内部に設けられた便器と、使用者が荷台の高さに上がるための階段とを備えている。ハウジングは、使用者が出入りするための出入口を有しており、出入口には、開き戸が設けられている。この車載型トイレを使用するとき、使用者は、階段を使って荷台の高さに上がり、開き戸の戸板を回動させて出入口を開く。つまり、開き戸が「外開き」の場合、使用者は、戸板を外側へ回動させて出入り口を開き、開き戸が「内開き」の場合、使用者は、戸板を内側へ回動させて出入り口を開く。そして、使用者は、出入口からハウジングの内部に入った後、開くときとは反対の方向へ戸板を回動させて出入口を閉じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された車載型トイレにおいて、開き戸が「外開き」の場合には、開かれた戸板が階段を昇降する使用者の邪魔になるという問題があった。一方、開き戸が「内開き」の場合には、使用者がハウジングの内部で倒れたときに、外部の救助者によって内側へ回動される戸板が使用者に当たるため、出入口を大きく開くことができず、救助活動が困難になるという問題があった。
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためになされたものであり、その目的は、開かれた戸板が階段を昇降する使用者の邪魔にならず、ハウジングの内部で倒れた使用者を救助者が容易に救助できる、車載型トイレおよび仮設トイレ搭載車両を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る車載型トイレの特徴は、車両の荷台に載置されてこの荷台の高さまで上るための階段を介して使用者が使用する車載型トイレであって、板状の第1壁板と前記第1壁板と同一面内に設けられた出入口とを有し、前記車両の前記荷台に載置されるハウジングと、前記出入口を塞ぐための板状の戸板を有し、前記戸板が前記出入口を塞ぐ閉状態と前記戸板が前記第1壁板に沿って配置される開状態とを選択的に取り得るように、前記戸板がスライド可能に構成された引戸と、前記ハウジングに設けられ、前記引戸が前記閉状態にあるとき、前記戸板の戸先部が当たる戸当たり部と、前記ハウジングの内部に設けられた便器とを備えることにある。
【0007】
この構成によれば、引戸が開状態にあるとき、戸板はハウジングの第1壁板に沿って配置されるため、階段を昇降する使用者の邪魔にならず、使用者は、車載型トイレを使い易い。また、使用者がハウジングの内部で倒れたときに、救助者は、戸板を内側へ移動させる必要がなく、戸板をスライドさせることによって、救助活動を容易に行うことができる。
【0008】
本発明に係る車載型トイレの他の特徴は、前記ハウジングは、前記出入口を挟んだ前記第1壁板の反対側で前記戸板と同一面内に設けられた板状の第2壁板を有し、前記戸当たり部は、前記第2壁板における前記出入口側の側端面に設けられることにある。
【0009】
この構成によれば、戸板が強く閉められた際に、戸当たり部に加わった衝撃を第2壁板の側端面で受け止めることができる。したがって、車両の急発進、急ブレーキ、急ハンドルまたは衝突事故などで戸当たり部に過大な衝撃が作用した場合でも、ハウジングは損傷し難い。
【0010】
本発明に係る車載型トイレの他の特徴は、前記ハウジングは、前記第1壁板に対して直角をなすように繋がる板状の第3壁板を有し、前記便器は、小便用の便器として構成されて前記第3壁板に設けられることにある。
【0011】
この構成によれば、第1壁板に対して直角をなすように繋がる第3壁板に便器が設けられるので、出入口が開かれているときでも、外部から便器へ向かう通行人の視線を戸板および第1壁板によって遮断(目隠し)できる。
【0012】
本発明に係る車載型トイレの他の特徴は、前記引戸は、前記ハウジングに設けられたレールと、前記レールに走行可能に取り付けられて前記レールから前記戸板を吊り下げる複数のランナーとを有し、前記戸板の下端面およびこれに対向する前記ハウジングの床面の一方には、前記戸板が移動する方向へ延びる溝状のガイド溝が設けられ、前記戸板の下端面およびこれに対向する前記ハウジングの床面の他方には、前記ガイド溝に対して移動可能に嵌め合わされる突起状のガイド突起が設けられることにある。
【0013】
この構成によれば、戸板は、複数のランナーを用いてレールから吊り下げられるので、戸板の下端面とハウジングの床面との間に隙間を確保できる。したがって、この隙間に塵埃などが溜まった場合でも、作業者は、その塵埃などを除去し易い。また、ガイド溝とガイド突起とが嵌め合わされることによって、戸板の厚さ方向への振動を抑制できるので、車両の走行時やトイレの使用時にハウジングが振動した場合でも、戸板のバタつきを抑制できる。
【0014】
本発明に係る車載型トイレの他の特徴は、前記引戸は、前記ハウジングに設けられたレールと、前記レールに走行可能に取り付けられて前記レールから前記戸板を吊り下げる複数のランナーとを有し、前記戸板の下端面およびこれに対向する前記ハウジングの床面の一方には、前記戸板が移動する方向へ延びる突起状のガイド突起が設けられ、前記戸板の下端面およびこれに対向する前記ハウジングの床面の他方には、前記ガイド突起に対して移動可能に嵌め合わされる凹状のガイド凹部が設けられることにある。
【0015】
この構成によれば、戸板は、複数のランナーを用いてレールから吊り下げられるので、戸板の下端面とハウジングの床面との間に隙間を確保できる。したがって、この隙間に塵埃などが溜まった場合でも、作業者は、その塵埃などを除去し易い。また、ガイド突起とガイド凹部とが嵌め合わされることによって、戸板の厚さ方向への振動を抑制できるので、車両の走行時やトイレの使用時にハウジングが振動した場合でも、戸板のバタつきを抑制できる。
【0016】
本発明に係る車載型トイレの他の特徴は、前記引戸が前記開状態にあるとき、前記戸板は、前記第1壁板の外側に配置されることにある。
【0017】
この構成によれば、第1壁板の内面にコート掛けや荷物置き棚などの物品を取り付けることができる。
【0018】
本発明に係る車載型トイレの他の特徴は、前記戸板は、主として発泡樹脂で構成されることにある。
【0019】
この構成によれば、引戸に作用する衝撃を発泡樹脂で緩和できるとともに、引戸を軽量化できる。
【0020】
上記目的を達成するため、本発明に係る仮設トイレ搭載車両の特徴は、上記のいずれかの車載型トイレと、前記車載型トイレが載置される荷台を有する車両とを備えることにある。
【0021】
この構成によれば、上記車載型トイレが奏する効果をそのまま奏することができる。
【0022】
本発明に係る仮設トイレ搭載車両の他の特徴は、前記車載型トイレは、前記戸板が前記車両の進行方向に対して平行となるように前記荷台に載置され、前記出入口は、前記第1壁板よりも前記車両の進行方向の前側に設けられることにある。
【0023】
この構成によれば、引戸が閉状態にあるとき、戸板は、戸当たり部に対して後方から当たるので、走行している車両が、衝突事故や急ブレーキで急停止または急減速した場合には、戸板に作用する慣性力で戸板が戸当たり部に強く押し当てられる。このとき、戸板が戸当たり部で確実に受け止められるので、戸板が外れることを防止でき、安全を確保できる。
【0024】
本発明に係る仮設トイレ搭載車両の他の特徴は、前記車載型トイレは、前記戸板が前記車両の進行方向に対して平行となるように前記荷台に載置され、前記出入口は、前記第1壁板よりも前記車両の進行方向の後側に設けられることにある。
【0025】
この構成によれば、引戸を開状態にしたまま車両を発進させたとしても、戸板に作用する慣性力(その場にとどまろうとする力)で出入口を自動的に閉じることができる。したがって、道路工事現場のように、工事の進捗に応じて仮設トイレ搭載車両が頻繁に移動する現場では、出入口を閉じる作業者の手間を大幅に軽減できる。
【0026】
本発明に係る仮設トイレ搭載車両の他の特徴は、前記車載型トイレは、前記戸板が前記車両の幅方向に対して平行となるように前記荷台に載置されることにある。
【0027】
この構成によれば、車両の走行状況に関係なく、戸板が開いたり閉じたりするリスクを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】(A)は、第1実施形態に係る車載型トイレおよび仮設トイレ搭載車両の構成(走行時)を示す斜視図、(B)は、第1実施形態に係る車載型トイレおよび仮設トイレ搭載車両の構成(使用時)を示す斜視図である。
【
図2】(A)は、第1実施形態に係る車載型トイレの使用時の構成(閉状態)を示す斜視図、(B)は、第1実施形態に係る車載型トイレの使用時の構成(開状態)を示す斜視図である。
【
図3】(A)は、第1実施形態に係る車載型トイレの使用時の構成(閉状態)を示す上側から見た断面図、(B)は、第1実施形態に係る車載型トイレの使用時の構成(閉状態)を示す前側から見た断面図である。
【
図4】(A)は、ハウジングの枠体の構成を示す斜視図、(B)は、枠体に取り付けられる壁板および引戸の構成を示す斜視図である。
【
図5】引戸および戸当たり部の構成を示す断面図である。
【
図8】第2実施形態に係る車載型トイレおよび仮設トイレ搭載車両の構成(走行時)を示す斜視図である。
【
図9】(A)は、第3実施形態に係る車載型トイレおよび仮設トイレ搭載車両の構成(走行時)を示す斜視図、(B)は、第4実施形態に係る車載型トイレおよび仮設トイレ搭載車両の構成(走行時)を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る車載型トイレおよび仮設トイレ搭載車両の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる「上・下・左・右・前・後」の各方向は、車両の運転者から見た方向であり、図面において矢印で示す各方向と一致する。
【0030】
(仮設トイレ搭載車両12の構成)
図1(A)は、第1実施形態に係る車載型トイレ10および仮設トイレ搭載車両12の構成(走行時)を示す斜視図であり、
図1(B)は、車載型トイレ10および仮設トイレ搭載車両12の構成(使用時)を示す斜視図である。
【0031】
図1(A),(B)に示す車載型トイレ10は、イベント会場、工事現場および建設現場などで使用される可搬型の仮設トイレであり、
図1(A)に示すように、車両14の荷台16に載置されて現場に搬入され、
図1(B)に示すように、荷台16に載置されたまま使用される。つまり、車両14は、仮設トイレ専用車両であり、車載型トイレ10と車両14とが一体となって、仮設トイレ搭載車両12として使用される。
【0032】
図1(A),(B)に示す車両14は、軽トラック(軽自動車の規格に合わせて製造されたトラック)であり、荷台16の周囲に設けられた周壁部18は、外側へ倒れるように構成されている。
図1(B)に示すように、車載型トイレ10を使用可能な状態にするとき、周壁部18を構成する左壁部18aが外側へ倒されるとともに、使用者が荷台16の高さに上がるための階段32が車両14の左側に設置される。なお、車両14の種類は、軽トラックに限定されるものではなく、2トントラック(最大積載量2.0トン~2.9トンの小型トラック)などの荷台16を備える他の車両が用いられてもよい。
【0033】
図2(A)は、車載型トイレ10の使用時の構成(閉状態)を示す斜視図であり、
図2(B)は、車載型トイレ10の使用時の構成(開状態)を示す斜視図である。
図3(A)は、車載型トイレ10の使用時の構成(閉状態)を示す上側から見た断面図であり、
図3(B)は、車載型トイレ10の使用時の構成(閉状態)を示す前側から見た断面図である。
図4(A)は、ハウジング20の枠体44の構成を示す斜視図であり、
図4(B)は、枠体44に取り付けられる第1壁板46、第2壁板48および引戸24の構成を示す斜視図である。
図5は、引戸24および戸当たり部26の構成を示す断面図である。
【0034】
図2(A),(B)に示すように、車載型トイレ10は、車両14の荷台16(
図1(A),(B))に載置されてこの荷台16の高さまで上るための階段32(
図1(B))を介して使用者が使用するものであり、荷台16に載置されるハウジング20と、板状の戸板22を有する引戸24と、戸当たり部26とを備えている。また、
図3(A)に示すように、車載型トイレ10は、第1便器28と、第2便器30とを備えている。さらに、
図1(B)に示すように、車載型トイレ10は、上記の階段32を備えている。なお、使用者が荷台16の高さまで上るための階段(図示省略)が現場に存在する場合には、階段32は省略されてもよい。
【0035】
図2(A)に示すように、ハウジング20は、上方へ向けて開かれた開口部34を有する平面視で四角形の箱状の本体部36と、開口部34を塞ぐように本体部36の上端部に被せられる屋根38とを有している。
【0036】
図3(A)に示すように、本体部36は、四角形の板状の床部40と、四角形の板状の4つの壁部42a~42dとを有している。4つの壁部42a~42dのうち左方に向けられた左壁部42aは、枠体44と、板状の第1壁板46と、板状の第2壁板48と、第1壁板46と第2壁板48との間で第1壁板46と同一面内に設けられた出入口50とを有している。
図1(A),(B)に示す仮設トイレ搭載車両12において、車載型トイレ10は、引戸24の戸板22が進行方向に対して平行となるように荷台16に載置されている。
【0037】
図4(A)に示すように、枠体44は、4本の棒状の枠部材52a~52dで構成された四角形の枠本体54と、上側の枠部材52aと下側の枠部材52bとを繋ぐように鉛直方向へ延びて設けられた棒状の補強部材56とを有している。
図4(B)に示すように、第1壁板46は、四角形の板状部材であり、枠本体54(
図4(A))の後部にボルトおよびナットなどの接合部材を用いて接合されている。第2壁板48は、四角形の板状部材であり、枠本体54(
図4(A))の前部および補強部材56にボルトおよびナットなどの接合部材を用いて接合されている。したがって、
図1(A),(B)に示す仮設トイレ搭載車両12においては、第1壁板46よりも車両14の進行方向の前側に出入口50が設けられている。
【0038】
図4(B)に示す第2壁板48は、出入口50を挟んだ第1壁板46の反対側で、
図4(A)に示す前側の枠部材52cと補強部材56との間に配置されている。
図5に示すように、第2壁板48は、引戸24の戸板22と同一面内に設けられており、戸板22で出入口50を閉じると、戸板22の戸先部22aが補強部材56に当たる。つまり、本実施形態では、第2壁板48における出入口50側の側端面48aに、戸当たり部26として機能する補強部材56が設けられている。
【0039】
図3(A)に示すように、ハウジング20を構成する本体部36の後方に向けられた後壁部42dは、第1壁板46に対して直角をなすように繋がる板状の第3壁板58を有しており、後述する第2便器30は第3壁板58に設けられている。
【0040】
図2(A)に示すように、屋根38は、平面視で四角形の天井壁60と、天井壁60に対して垂直となるように天井壁60の周縁部から下方へ延びて形成された左板部62a、右板部62b、前板部62cおよび後板部62dとを有している。前板部62cおよび後板部62dは、右端から左端に向けて上下方向長さが徐々に長くなるように三角形に形成されており、左板部62aおよび右板部62bのそれぞれの下端面は、前板部62cおよび後板部62dのそれぞれの下端面と面一に形成されている。
【0041】
図3(B)に示すように、屋根38は、前板部62c(
図2(A))および後板部62dのそれぞれの右端部において、本体部36に対して回動軸64を介して取り付けられている。また、本体部36と屋根38とは、ガスダンパー66を介して繋げられており、ガスダンパー66によって屋根38の左端部が持ち上げられている。ハウジング20の高さを低くするとき、作業者は、屋根38の左端部を引き下げて、ガスダンパー66を収縮させながら屋根38を下方へ回動させ、その後、パッチン錠(図示省略)などを用いて、屋根38を本体部36に固定する。なお、
図1(A)に示すように、仮設トイレ搭載車両12の走行時には、屋根38が引き下げられた状態で固定され、
図1(B)に示すように、車載型トイレ10の使用時には、屋根38が持ち上げられる。
【0042】
図6は、引戸24の構成を示す断面図であり、
図7は、引戸24の構成を示す斜視図である。
図4(B)に示す引戸24は、戸板22が出入口50を塞ぐ「閉状態」と戸板22が第1壁板46に沿って配置される「開状態」とを選択的に取り得るように、戸板22がスライド可能なように構成された吊り戸であり、
図6に示すように、枠体44を構成する上側の枠部材52aと下側の枠部材52bとの間に設けられている。
【0043】
図4(B)に示すように、引戸24は、戸板22と、取手68a,68bと、戸板22を支持するレール70と、複数(本実施形態では2個)のランナー72と、ガイド突起74とを有している。
【0044】
戸板22は、出入口50(
図2(B))を塞ぐための板状の部材であり、主としてポリスチレン系発泡樹脂などの発泡樹脂で構成されている。戸板22の外周部には、アルミニウムなどからなる枠体76が設けられており、枠体76の戸先側の部分に取手68a,68bが取り付けられている。
【0045】
図6に示すように、レール70は、下方へ開いたC字状の断面を有する棒状に形成されており、枠体44を構成する上側の枠部材52aの下面にボルト78aおよびナット78bを用いて接合されている。つまり、レール70は、出入口50の上方においてハウジング20に設けられている。
【0046】
図6および
図7に示すように、ランナー72は、レール70に走行可能に取り付けられてレール70から戸板22を吊り下げる部材であり、レール70に引掛けられる4つの車輪80と、4つの車輪80を支持する支持体82と、支持体82と戸板22の上端部とを連結する連結部材84とを有している。
【0047】
図6に示すように、ガイド突起74は、戸板22の下端部を案内する突起状の部材であり、下側の枠部材52bの上面に配置される細長い板状の固定部74aと、固定部74aの幅方向一方端部から上方へ向けて逆U字状に湾曲された突起部74bとを有している。そして、固定部74aが、下側の枠部材52bの上面にボルト86を用いて接合されている。下側の枠部材52bの上面は、出入口50の下方に設けられたハウジング20の床面20aであり、ガイド突起74は、この床面20aに設けられている。
【0048】
図6および
図7に示すように、床面20aに対向する戸板22の下端面22bには、逆U字状の断面を有し、戸板22が移動する方向へ延びる溝状のガイド溝90が設けられている。このガイド溝90にガイド突起74の突起部74bが移動可能に嵌め合わされることによって、戸板22の下端部が、バタつくことなく前後方向へ案内される。引戸24が開状態にあるとき、戸板22は、第1壁板46の外側に配置される。したがって、第1壁板46の内面46aが戸板22で覆い隠されることはない。
【0049】
図5に示すように、戸当たり部26は、引戸24が閉状態にあるとき、戸板22の戸先部22aが当たる部分であり、ハウジング20に設けられている。上述の通り、本実施形態では、第2壁板48の出入口50側の側端面48aに補強部材56が設けられており、この補強部材56が戸当たり部26として機能する。つまり、補強部材56と戸当たり部26とは同一の部材である。
図3(A)に示すように、第2壁板48の内面には、使用者によって操作されるロック機構92が設けられており、これによって、閉状態における戸板22が開くことを防止できる。
【0050】
図3(A),(B)に示すように、第1便器28は、使用者が着座して使用する大小便兼用の便器であり、ハウジング20の内部で左壁部42aに沿って設けられている。第2便器30は、男性の使用者が立って使用する小便用の便器であり、ハウジング20の内部で後壁部42dの第3壁板58に設けられている。本実施形態の第2便器30は、後壁部42dの左右方向中央部よりも左側に設けられており、引戸24が開状態にあるときでも、第2便器30は出入口50から見え難い。
【0051】
図1(A)に示すように、階段32は、複数(本実施形態では3枚)の踏板94と、踏板94を支持する脚部96と、手すり98とを有している。本実施形態の階段32は、折り畳み可能に構成されており、仮設トイレ搭載車両12が移動するとき、階段32は折り畳まれて荷台16の空きスペースに載置される。車載型トイレ10を使用可能な状態にするとき、階段32が組み立てられて車両14の左側の地面に設置される。なお、階段32は、必ずしも折り畳み式である必要はなく、完成状態で荷台16の空きスペースに載置されてもよい。また、階段32は、1つの踏板94で構成された箱状の台であってもよい。また、階段32は、使用しない場合には、ハウジング20の内部に収容されてもよい。
【0052】
(仮設トイレ搭載車両12の作動)
イベント会場、工事現場および建設現場などで仮設トイレが必要になるとき、作業者(運転者)は、
図1(A)に示す仮設トイレ搭載車両12を現場に乗り入れる。続いて、
図1(B)に示すように、作業者は、階段32を荷台16から降ろして車両14の左側の地面に設置する。車載型トイレ10を使用するとき、使用者は、階段32を使って荷台16の高さに上がり、引戸24の戸板22を後方にスライド移動させて出入口50を開く。そして、出入口50からハウジング20の内部に入り、戸板22を前方にスライド移動させて出入口50を閉じる。その後、使用者は、
図3(A)に示すロック機構92を操作して戸板22をロックし、第1便器28または第2便器30を使用する。
【0053】
戸板22で出入口50を閉じた状態(閉状態)で仮設トイレ搭載車両12が走行しているとき、運転者が急ブレーキをかけると、戸板22に作用する慣性力によって戸板22が戸当たり部26に強く押し当てられる。このとき、戸板22が戸当たり部26で受け止められるので、戸板22が外れることを防止でき、安全を確保できる。
【0054】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態によれば、上記構成により以下の各効果を奏することができる。すなわち、
図1(B)に示すように、引戸24が開状態にあるとき、戸板22は、ハウジング20の第1壁板46に沿って配置されるため、階段32を昇降する使用者の邪魔にならず、使用者は、車載型トイレ10を使い易い。また、使用者がハウジング20の内部で倒れたときに、救助者は、戸板22を内側へ移動させる必要がなく、戸板22をスライドさせることによって、救助活動を容易に行うことができる。
【0055】
図5に示すように、戸当たり部26は、第2壁板48における出入口50側の側端面48aに設けられるので、戸板22が強く閉められた際に、戸当たり部26に加わった衝撃を第2壁板48の側端面48aで受け止めることができる。したがって、急発進、急ブレーキ、急ハンドルまたは衝突事故などで戸当たり部26に過大な衝撃が作用した場合でも、ハウジング20は損傷し難い。
【0056】
図3(A)に示すように、第1壁板46に対して直角をなすように繋がる第3壁板58に第2便器30が設けられるので、出入口50が開かれているときでも、外部から第2便器30へ向かう通行人の視線を戸板22および第1壁板46によって遮断(目隠し)できる。
【0057】
図6に示すように、戸板22は、複数のランナー72を用いてレール70から吊り下げられるので、戸板22の下端面22bとハウジング20の床面20aとの間に隙間を確保できる。したがって、この隙間に塵埃などが溜まった場合でも、作業者は、その塵埃などを除去し易い。また、ガイド溝90とガイド突起74とが嵌め合わされることによって、戸板22の厚さ方向への振動を抑制できるので、仮設トイレ搭載車両12の走行時や車載型トイレ10の使用時にハウジング20が振動した場合でも、戸板22のバタつきを抑制できる。
【0058】
図6に示すように、引戸24が開状態にあるとき、戸板22は、第1壁板46の外側に配置されるので、第1壁板46の内面46aにコート掛けや荷物置き棚などの物品を取り付けることができる。戸板22は、主として発泡樹脂で構成されるので、引戸24に作用する衝撃を緩和できるとともに、引戸24を軽量化できる。
【0059】
(変形例)
本発明の実施にあたっては、上記の第1実施形態に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、第2壁板48における出入口50側の側端面48aに戸当たり部26が設けられているが、第2壁板48および補強部材56が省略されて、枠本体54の一部に戸当たり部26が設けられてもよい。また、補強部材56が省略されて、第2壁板48における出入口50側の側端部が戸当たり部26として用いられてもよい。
【0060】
上記実施形態では、第1便器28が右壁部42bに沿って設けられ、第2便器30が後壁部42dの第3壁板58に設けられているが、第1便器28および第2便器30の位置は、適宜変更されてもよい。また、小便器である第2便器30は省略されてもよい。さらに、上記実施形態では、車載型トイレ10の出入口50が左方へ向けられているが、出入口50は、右方へ向けられてもよい。
【0061】
上記実施形態では、引戸24が開状態にあるとき、戸板22が第1壁板46の外側に配置されるが、この戸板22は、第1壁板46の内側に配置されてもよい。また、戸板22の主たる材料は、発泡樹脂に限定されるものではなく、例えば、木材や金属が用いられてもよい。さらに、引戸24は、戸板22を吊り下げない通常の引戸として構成されてもよい。
【0062】
上記実施形態では、ハウジング20の床面20aにガイド突起74が設けられるとともに、戸板22の下端面にガイド溝90が設けられているが、これとは逆に、ハウジング20の床面20aにガイド溝90が設けられるとともに、戸板22の下端面にガイド突起74が設けられてもよい。また、ガイド突起74は、戸板22の移動方向において間欠的に設けられる複数の突部として構成されてもよい。
【0063】
上記実施形態では、ハウジング20の床面20aにガイド突起74が設けられるとともに、戸板22の下端面にガイド溝90が設けられているが、ハウジング20の床面20aに戸板22が移動する方向へ延びる突起状のガイド突起が設けられるとともに、戸板22の下端面にガイド突起に対して移動可能に嵌め合わされる凹状の凹部が設けられてもよい。また、凹部は、戸板22の移動方向において間欠的に設けられてもよいし、連続する溝として構成されてもよい。これらの場合において、ガイド突起と凹部の位置関係は逆にされてもよい。
【0064】
図8は、第2実施形態に係る車載型トイレ100および仮設トイレ搭載車両102の構成(走行時)を示す斜視図である。
図9(A)は、第3実施形態に係る車載型トイレ104および仮設トイレ搭載車両106の構成(走行時)を示す斜視図であり、
図9(B)は、第4実施形態に係る車載型トイレ108および仮設トイレ搭載車両110の構成(走行時)を示す斜視図である。
【0065】
上記実施形態では、ハウジング20の出入口50が第1壁板46よりも車両14の進行方向の前側に設けられているが、
図8に示す第2実施形態に係る仮設トイレ搭載車両102のように、出入口50は、第1壁板46よりも車両14の進行方向の後側に設けられてもよい。
【0066】
第2実施形態によれば、引戸24が開状態にあるとき、戸板22は、出入口50よりも車両14の進行方向の前側に配置されるので、引戸24を開状態にしたまま、運転者が仮設トイレ搭載車両102を発進させたときには、戸板22に作用する慣性力(その場にとどまろうとする力)で出入口50を自動的に閉じることができる。したがって、道路工事現場のように、工事の進捗に応じて仮設トイレ搭載車両102が頻繁に移動する現場では、出入口50を閉じる作業者の手間を大幅に軽減できる。
【0067】
上記実施形態では、戸板22が車両14の進行方向に対して平行となるように設けられているが、
図9(A)に示す第3実施形態に係る仮設トイレ搭載車両106のように、戸板22は、車両の幅方向に対して平行となるように設けられてもよく、出入口50は、第1壁板46の左側に設けられてもよい。また、
図9(B)に示す第4実施形態に係る仮設トイレ搭載車両110のように、戸板22は、車両の幅方向に対して平行となるように設けられてもよく、出入口50は、第1壁板46の右側に設けられてもよい。
【0068】
第3実施形態および第4実施形態によれば、仮設トイレ搭載車両106,110の走行状況に関係なく、戸板22が開いたり閉じたりするリスクを低減できる。
【符号の説明】
【0069】
10,100,104,108…車載型トイレ、12,102,106,110…仮設トイレ搭載車両、14…車両、16…荷台、20…ハウジング、20a…床面、22…戸板、22a…戸先部、22b…戸板の下端面、24…引戸、26…戸当たり部、28…第1便器、30…第2便器(小便用)、32…階段、36…本体部、38…屋根、42a~42d…壁部、44…枠体、46…第1壁板、48…第2壁板、50…出入口、56…補強部材、58…第3壁板、70…レール、72…ランナー、74…ガイド突起、90…ガイド溝。