(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115948
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂原料キット、ポリウレタン樹脂、弾性成形体およびポリウレタン樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/10 20060101AFI20230815BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20230815BHJP
C08G 18/22 20060101ALI20230815BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20230815BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
C08G18/10
C08G18/75 010
C08G18/22
C08G18/65
C08G18/08 090
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018382
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】前川 和大
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA08
4J034CA03
4J034CA04
4J034CA05
4J034CA14
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(57)【要約】
【課題】厚い弾性成形体を製造する場合であっても、弾性成形体の内部欠陥を抑制できるポリウレタン樹脂原料キット、厚い弾性成形体を製造する場合であっても、弾性成形体の内部欠陥を抑制できるポリウレタン樹脂、そのポリウレタン樹脂を含む弾性成形体、および、厚い弾性成形体を製造する場合であっても、弾性成形体の内部欠陥を抑制できるポリウレタン樹脂を製造することができるポリウレタン樹脂の製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリウレタン樹脂原料キットは、イソシアネート基末端プレポリマーを含む主剤と鎖伸長剤を含む硬化剤とを備える。イソシアネート基末端プレポリマーはポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応生成物である。主剤および/または硬化剤は、有機金属触媒およびアセチルアセトンを含む。有機金属触媒の含有量に対して、アセチルアセトンの含有量が、4倍以上16倍以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基末端プレポリマーを含む主剤と、鎖伸長剤を含む硬化剤とを備える、ポリウレタン樹脂原料キットであり、
前記イソシアネート基末端プレポリマーが、
1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、マクロポリオールを含むポリオール成分との反応生成物であり、
前記主剤および/または前記硬化剤が、有機金属触媒を含み、
前記主剤および/または前記硬化剤が、アセチルアセトンを含み、
前記イソシアネート基末端プレポリマーおよび前記鎖伸長剤の合計100質量部に対する有機金属触媒の含有量に対して、
前記イソシアネート基末端プレポリマーおよび前記鎖伸長剤の合計100質量部に対するアセチルアセトンの含有量が、4倍以上16倍以下である、
ポリウレタン樹脂原料キット。
【請求項2】
前記イソシアネート基末端プレポリマーおよび前記鎖伸長剤の合計100質量部に対する、前記有機金属触媒の含有量が、25×10-6質量部以上である、請求項1に記載のポリウレタン樹脂原料キット。
【請求項3】
前記イソシアネート基末端プレポリマーおよび前記鎖伸長剤の合計100質量部に対する、前記アセチルアセトンの含有量が、4000×10-6質量部以下である、請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂原料キット。
【請求項4】
イソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤との反応生成物を含む、ポリウレタン樹脂であり、
前記イソシアネート基末端プレポリマーが、
1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、マクロポリオールを含むポリオール成分との反応生成物であり、
前記ポリウレタン樹脂が、有機金属触媒とアセチルアセトンとを含み、
前記ポリウレタン樹脂100質量部中の前記有機金属触媒の含有量に対して、
前記ポリウレタン樹脂100質量部中の前記アセチルアセトンの含有量が、4倍以上16倍以下である、
ポリウレタン樹脂。
【請求項5】
請求項4に記載のポリウレタン樹脂を含む、弾性成形体。
【請求項6】
厚みが5cm以上である、請求項5に記載の弾性成形体。
【請求項7】
1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、マクロポリオールを含むポリオール成分とを反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを合成する第1工程と、
鎖伸長剤を準備する第2工程と、
前記イソシアネート基末端プレポリマーおよび/または前記鎖伸長剤に、有機金属触媒を添加し、前記イソシアネート基末端プレポリマーおよび/または前記鎖伸長剤に、アセチルアセトンを添加して、主剤と、硬化剤とを調製する第3工程と、
前記主剤および前記硬化剤を混合する第4工程と
を備え、
前記イソシアネート基末端プレポリマーおよび前記鎖伸長剤の合計100質量部に対する有機金属触媒の含有量に対して、
前記イソシアネート基末端プレポリマーおよび前記鎖伸長剤の合計100質量部に対するアセチルアセトンの含有量が、4倍以上16倍以下である、
ポリウレタン樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂原料キット、ポリウレタン樹脂、弾性成形体およびポリウレタン樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、例えば、ポリイソシアネートおよびマクロポリオールの反応により形成されるソフトセグメントと、ポリイソシアネートおよび鎖伸長剤の反応により形成されるハードセグメントとを有している。
【0003】
このようなポリウレタン樹脂として、例えば、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび高分子量ポリオールの反応により得られるイソシアネート基末端プレポリマーと、活性水素基を含有する鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタンエラストマーが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。詳しくは、特許文献1のポリウレタンエラストマーの製造方法では、まず、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよびポリテトラメチレンエーテルグリコールを反応させてイソシアネート基末端プレポリマーを得る。次いで、イソシアネート基末端プレポリマーと、1,4-ブチレングリコール(鎖伸長剤)とを混合し、混合物を得る。次いで、混合物に、ジブチル錫ジラウレートを添加し、その混合物を成形型に注入し、硬化させて、ポリウレタンエラストマー(ポリウレタンエラストマーの弾性成形体)を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、厚い弾性成形体を製造する場合には、成形型に注入された混合物は、成形型(成形型の外枠)に近い部分から、硬化が進行しやすくなる。そうすると、混合物が成形型に近い部分に流動し、成形型から遠い部分が、成形型に近い部分に比べて、薄くなる(低密度になる)。そして、成形型から遠い部分は、得られる弾性成形体において、弾性成形体の内部に相当する。そうすると、弾性成形体において、内部が薄くなり、内部欠陥が生じるという不具合がある。
【0006】
本発明は、厚い弾性成形体を製造する場合であっても、弾性成形体の内部欠陥を抑制できるポリウレタン樹脂原料キット、厚い弾性成形体を製造する場合であっても、弾性成形体の内部欠陥を抑制できるポリウレタン樹脂、そのポリウレタン樹脂を含む弾性成形体、および、厚い弾性成形体を製造する場合であっても、弾性成形体の内部欠陥を抑制できるポリウレタン樹脂を製造することができるポリウレタン樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、イソシアネート基末端プレポリマーを含む主剤と、鎖伸長剤を含む硬化剤とを備える、ポリウレタン樹脂原料キットであり、前記イソシアネート基末端プレポリマーが、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、マクロポリオールを含むポリオール成分との反応生成物であり、前記主剤および/または前記硬化剤が、有機金属触媒を含み、前記主剤および/または前記硬化剤が、アセチルアセトンを含み、前記イソシアネート基末端プレポリマーおよび前記鎖伸長剤の合計100質量部に対する有機金属触媒の含有量に対して、前記イソシアネート基末端プレポリマーおよび前記鎖伸長剤の合計100質量部に対するアセチルアセトンの含有量が、4倍以上16倍以下である、ポリウレタン樹脂原料キットである。
【0008】
本発明[2]は、前記イソシアネート基末端プレポリマーおよび前記鎖伸長剤の合計100質量部に対する、前記有機金属触媒の含有量が、25×10-6質量部以上である、上記[1]に記載のポリウレタン樹脂原料キットを含んでいる。
【0009】
本発明[3]は、前記イソシアネート基末端プレポリマーおよび前記鎖伸長剤の合計100質量部に対する、前記アセチルアセトンの含有量が、4000×10-6質量部以下である、上記[1]または[2]に記載のポリウレタン樹脂原料キットを含んでいる。
【0010】
本発明[4]は、イソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤との反応生成物を含む、ポリウレタン樹脂であり、前記イソシアネート基末端プレポリマーが、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、マクロポリオールを含むポリオール成分との反応生成物であり、前記ポリウレタン樹脂が、有機金属触媒とアセチルアセトンとを含み、前記ポリウレタン樹脂100質量部中の前記有機金属触媒の含有量に対して、前記ポリウレタン樹脂100質量部中の前記アセチルアセトンの含有量が、4倍以上16倍以下である、ポリウレタン樹脂である。
【0011】
本発明[5]は、上記[4]に記載のポリウレタン樹脂を含む、弾性成形体を含んでいる。
【0012】
本発明[6]は、厚みが5cm以上である、上記[5]に記載の弾性成形体を含んでいる。
【0013】
本発明[7]は、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、マクロポリオールを含むポリオール成分とを反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを合成する第1工程と、鎖伸長剤を準備する第2工程と、前記イソシアネート基末端プレポリマーおよび/または前記鎖伸長剤に、有機金属触媒を添加し、前記イソシアネート基末端プレポリマーおよび/または前記鎖伸長剤に、アセチルアセトンを添加して、主剤と、硬化剤とを調製する第3工程と、前記主剤および前記硬化剤を混合する第4工程とを備え、前記イソシアネート基末端プレポリマーおよび前記鎖伸長剤の合計100質量部に対する有機金属触媒の含有量に対して、前記イソシアネート基末端プレポリマーおよび前記鎖伸長剤の合計100質量部に対するアセチルアセトンの含有量が、4倍以上16倍以下である、ポリウレタン樹脂の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリウレタン樹脂原料キットでは、イソシアネート基末端プレポリマーおよび鎖伸長剤の合計100質量部に対する有機金属触媒の含有量に対して、イソシアネート基末端プレポリマーおよび鎖伸長剤の合計100質量部に対するアセチルアセトンの含有量が、4倍以上16倍以下である。そのため、このポリウレタン樹脂原料キットを用いて、厚い弾性成形体を製造する場合であっても、弾性成形体の内部欠陥を抑制できる。
【0015】
本発明のポリウレタン樹脂では、ポリウレタン樹脂100質量部中の有機金属触媒の含有量に対して、ポリウレタン樹脂100質量部中のアセチルアセトンの含有量が、4倍以上16倍以下である。そのため、このポリウレタン樹脂を用いて、厚い弾性成形体を製造する場合であっても、弾性成形体の内部欠陥を抑制できる。
【0016】
本発明の弾性成形体は、本発明のポリウレタン樹脂を含む。そのため、内部欠陥を抑制できる。
【0017】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法では、イソシアネート基末端プレポリマーおよび鎖伸長剤の合計100質量部に対する有機金属触媒の含有量に対して、イソシアネート基末端プレポリマーおよび鎖伸長剤の合計100質量部に対するアセチルアセトンの含有量が、4倍以上16倍以下である。そのため、厚い弾性成形体を製造する場合であっても、弾性成形体の内部欠陥を抑制できるポリウレタン樹脂を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<ポリウレタン樹脂原料キット>
ポリウレタン樹脂原料キットは、主剤および硬化剤を備える。詳しくは、ポリウレタン樹脂原料キットは、主剤および硬化剤のそれぞれを独立して備えるキットであり、それらがセットとして準備される。そして、このポリウレタン樹脂原料キットを用いて、ポリウレタン樹脂および弾性成形体を製造することができる。また、詳しくは後述するが、このポリウレタン樹脂原料キットでは、主剤および/または硬化剤が、有機金属触媒を含む。また、主剤および/または硬化剤が、アセチルアセトンを含む。以下の説明では、主剤が、有機金属触媒およびアセチルアセトンを含む態様(硬化剤が有機金属触媒およびアセチルアセトンを含まない態様)について、詳述する。
【0019】
[主剤]
主剤は、イソシアネート基末端プレポリマーを含む。
【0020】
イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分との反応生成物である。
【0021】
ポリイソシアネート成分は、必須成分として、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含む。
【0022】
1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、立体異性体として、シス-1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと、トランス-1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとを有する。以下において、シス-1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを、シス1,4体と称する場合がある。また、トランス-1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを、トランス1,4体と称する場合がある。なお、トランス1,4体およびシス1,4体の総量は、100モル%である。
【0023】
1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンにおいて、シス1,4体の含有割合は、例えば、0.2モル%以上、好ましくは、1モル%以上、より好ましくは、4モル%以上、さらに好ましくは、10モル%以上、また、例えば、40モル%以下、好ましくは、30モル%以下、より好ましくは、20モル%以下、さらに好ましくは、15モル%以下である。
【0024】
また、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンにおいて、トランス1,4体の含有割合は、例えば、60モル%以上、好ましくは、70モル%以上、より好ましくは、80モル%以上、さらに好ましくは、85モル%以上、また、例えば、99.8モル%以下、好ましくは、99モル%以下、より好ましくは、96モル%以下、さらに好ましくは、90モル%以下の割合である。
【0025】
シス1,4体の含有割合、および、トランス1,4体の含有割合が上記範囲であれば、機械物性に優れたポリウレタン樹脂が得られる。
【0026】
また、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、例えば、市販品として入手可能である。また、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、公知のイソシアネート化法により、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから製造可能である。イソシアネート化法としては、例えば、冷熱2段ホスゲン化法、造塩法およびノンホスゲン法が挙げられる。
【0027】
また、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、変性体であってもよい。変性体としては、例えば、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン、ビウレット変性体、アロファネート変性体、ポリオール付加体、オキサジアジントリオン変性体、および、カルボジイミド変性体が挙げられる。
【0028】
1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの含有割合については、後述する。
【0029】
ポリイソシアネート成分は、任意成分として、その他のポリイソシアネート(好ましくは、ジイソシアネート)を含むこともできる。
【0030】
その他のポリイソシアネートは、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを除くイソシアネートである。その他のポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート(1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを除く。)、芳香族ポリイソシアネート、および、芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、および、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が挙げられる。脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、および、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)が挙げられる。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、および、ナフタレンジイソシアネート(NDI)が挙げられる。芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、および、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)が挙げられる。また、その他のポリイソシアネートは、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、上記した変性体であってもよい。
【0031】
その他のポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0032】
その他のポリイソシアネートの含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、機械物性の観点から、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、10質量%以下、とりわけ好ましくは、0質量%である。また、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、機械物性の観点から、例えば、50質量%以上、好ましくは、70質量%以上、より好ましくは、90質量%以上、とりわけ好ましくは、100質量%である。すなわち、とりわけ好ましくは、ポリイソシアネート成分は、その他のポリイソシアネートを含まず、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンからなる。
【0033】
ポリオール成分は、必須成分として、マクロポリオールを含む。
【0034】
マクロポリオールは、水酸基を分子末端に2つ以上有し、数平均分子量400以上、好ましくは、500以上、また、10000以下、好ましくは、5000以下、より好ましくは、3000以下の化合物である。
【0035】
マクロポリオールの平均官能基数は、例えば、2以上、また、例えば、3以下、また、好ましくは、2である。
【0036】
マクロポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、および、ビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。マクロポリオールとしては、好ましくは、ポリエーテルポリオール、および、ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0037】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。ポリオキシアルキレンポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレン(C2-3)ポリオール、および、ポリテトラメチレンエーテルポリオールが挙げられる。ポリエーテルポリオールとして、好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルポリオールが挙げられる。
【0038】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、縮合ポリエステルポリオールおよび開環ポリエステルポリオールが挙げられる。縮合ポリエステルポリオールとしては、例えば、アジペート系ポリエステルポリオール(例えば、ポリブチレンアジペート)およびフタル酸系ポリエステルポリオールが挙げられる。開環ポリエステルポリオールとしては、例えば、ラクトンベースポリエステルポリオールが挙げられ、より具体的には、ポリカプロクトンポリオールが挙げられる。
【0039】
マクロポリオールとして、引張強度を向上させる観点から、好ましくは、ポリエーテルポリオールが挙げられる。また、マクロポリオールとして、破断伸びを向上させる観点から、ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0040】
マクロポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0041】
マクロポリオールの含有割合については、後述する。
【0042】
また、ポリオール成分は、任意成分として、低分子量ポリオールを含むことができる。
【0043】
低分子量ポリオールは、水酸基を分子末端に2つ以上有し、数平均分子量40以上、また、400未満、好ましくは、300以下の化合物である。
【0044】
低分子量ポリオールとしては、例えば、2価アルコール、3価アルコール、および、4価以上のアルコールが挙げられる。2価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、および、ジプロピレングリコールが挙げられる。3価アルコールとしては、例えば、グリセリンおよびトリメチロールプロパンが挙げられる。4価以上のアルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトールおよびジグリセリンが挙げられる。また、低分子量ポリオールとしては、数平均分子量が400以下になるように、2~4価アルコールに対してアルキレン(C2~3)オキサイドを付加重合した重合物も挙げられる。
【0045】
低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0046】
低分子量ポリオールの含有割合は、ポリオール成分の総量に対して、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、1質量%以下、とりわけ好ましくは、0質量%である。また、マクロポリオールの含有割合は、ポリオール成分の総量に対して、例えば、90質量%以上、好ましくは、95質量%以上、より好ましくは、99質量%以上、とりわけ好ましくは、100質量%である。すなわち、とりわけ好ましくは、ポリオール成分は、低分子量ポリオールを含まず、マクロポリオールからなる。
【0047】
そして、詳しくは後述するが、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分とを反応させることにより、イソシアネート基末端プレポリマー(具体的には、イソシアネート基末端プレポリマーの反応液)を得る。
【0048】
また、主剤は、有機金属触媒を含む。
【0049】
有機金属触媒は、ウレタン化触媒である。有機金属触媒としては、例えば、有機錫化合物、有機鉛化合物、有機ニッケル化合物、有機コバルト化合物、有機銅化合物、および、有機ビスマス化合物が挙げられる。有機錫化合物としては、例えば、酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジメルカプチド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジメルカプチド、ジオクチル錫ジラウリレート、および、ジブチル錫ジクロリドが挙げられる。有機鉛化合物としては、例えば、オクタン酸鉛、および、ナフテン酸鉛が挙げられる。有機ニッケル化合物としては、例えば、ナフテン酸ニッケルが挙げられる。有機コバルト化合物としては、例えば、ナフテン酸コバルトが挙げられる。有機銅化合物としては、例えば、オクテン酸銅が挙げられる。有機ビスマス化合物としては、例えば、オクチル酸ビスマス、および、ネオデカン酸ビスマスが挙げられる。
【0050】
有機金属触媒として、好ましくは、有機錫化合物が挙げられる。有機金属触媒として、より好ましくは、ジブチル錫ジラウレートが挙げられる。
【0051】
有機金属触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0052】
有機金属触媒の含有量は、イソシアネート基末端プレポリマーおよび鎖伸長剤(後述)の合計100質量部に対して、例えば、25×10-6質量部以上、好ましくは、30×10-6質量部以上、また、例えば、500×10-6質量部以下、好ましくは、150×10-6質量部以下、より好ましくは、100×10-6質量部以下、さらに好ましくは、70×10-6質量部以下である。
【0053】
有機金属触媒の含有量が、上記下限以上であれば、詳しくは後述するが、主剤と硬化剤との相溶性を向上させることができる。その結果、厚い弾性成形体(例えば、厚み5cm以上、以下同様。)を製造する場合であっても、弾性成形体の内部欠陥を抑制できる。
【0054】
また、有機金属触媒の含有量が、上記上限以下であれば、詳しくは後述するが、主剤と硬化剤との硬化反応が過度に進行することを抑制できる。その結果、弾性成形体の全体(内部および外部)において、バランスよく硬化させることができる。これにより、厚い弾性成形体を製造する場合であっても、弾性成形体の内部欠陥を抑制できる。
【0055】
また、主剤は、アセチルアセトンを含む。
【0056】
アセチルアセトンは、有機金属触媒に配位して、有機金属触媒の活性を抑制する成分である。アセチルアセトンを配合することによって、有機金属触媒の活性を抑制し、硬化反応速度を抑制して、弾性成形体の全体(内部および外部)において、バランスよく硬化させることができる。
【0057】
アセチルアセトンの含有量は、イソシアネート基末端プレポリマーおよび鎖伸長剤(後述)の合計100質量部に対して、例えば、4000×10-6質量部以下、好ましくは、2000×10-6質量部以下、より好ましくは、1500×10-6質量部以下、さらに好ましくは、900×10-6質量部以下、とりわけ好ましくは、700×10-6質量部以下、また、例えば、100×10-6質量部以上、好ましくは、150×10-6質量部以上、より好ましくは、180×10-6質量部以上、さらに好ましくは、300×10-6質量部以上である。
【0058】
アセチルアセトンの含有量が、上記下限以上であれば、詳しくは後述するが、有機金属触媒の活性を十分に抑制することができる。その結果、弾性成形体の全体(内部および外部)において、バランスよく硬化させることができる。これにより、厚い弾性成形体を製造する場合であっても、弾性成形体の内部欠陥を抑制できる。
【0059】
また、アセチルアセトンの含有量が、上記上限以下であれば、詳しくは後述するが、有機金属触媒の活性を過度に抑制しない。その結果、弾性成形体を十分に硬化させることができる。これにより、厚い弾性成形体を製造する場合であっても、弾性成形体の内部欠陥を抑制できる。
【0060】
そして、イソシアネート基末端プレポリマーおよび鎖伸長剤(後述)の合計100質量部に対する有機金属触媒の含有量に対して、イソシアネート基末端プレポリマーおよび鎖伸長剤(後述)の合計100質量部に対するアセチルアセトンの含有量(以下、含有量の第1倍率と称する。)が、4倍以上、好ましくは、8倍以上、また、16倍以下、好ましくは、12倍以下である。
【0061】
含有量の第1倍率が、上記下限以上であれば、詳しくは後述するが、アセチルアセトンによって、有機金属触媒の活性が、過度に抑制されない。その結果、弾性成形体を十分に硬化させることができる。これにより、厚い弾性成形体を製造する場合であっても、弾性成形体の内部欠陥を抑制できる。
【0062】
一方、含有量の第1倍率が、上記下限未満であれば、詳しくは後述するが、アセチルアセトンによって、有機金属触媒の活性が、過度に抑制される。その結果、弾性成形体を十分に硬化させることができず、弾性成形体の内部欠陥を抑制できない。
【0063】
また、含有量の第1倍率が、上記上限以下であれば、詳しくは後述するが、硬化反応速度を抑制できる。その結果、厚い弾性成形体を製造する場合であっても、内部欠陥を抑制できる。
【0064】
一方、含有量の第1倍率が、上記上限を超過すると、詳しくは後述するが、硬化反応速度を十分に抑制できない。そうすると、内部欠陥を抑制できない。
【0065】
そして、主剤は、イソシアネート基末端プレポリマー(具体的には、イソシアネート基末端プレポリマーの反応液)に、有機金属触媒およびアセチルアセトンを添加することにより、調製される。
【0066】
[硬化剤]
硬化剤は、鎖伸長剤を含む。
【0067】
鎖伸長剤は、主剤(イソシアネート基末端プレポリマー)に対する硬化剤である。鎖伸長剤としては、例えば、複数(好ましくは、2つ)の活性水素基(水酸基、アミノ基)を含有する低分子量化合物が挙げられる。低分子量化合物として、より具体的には、上記した低分子量ポリオールおよび低分子量ポリアミンが挙げられる。鎖伸長剤として、好ましくは、上記した低分子量ポリオールが挙げられる。上記した低分子量ポリオールを用いることにより、優れた機械物性を有するポリウレタン樹脂が得られる。
【0068】
低分子量ポリオールとして、好ましくは、2価アルコールが挙げられる。低分子量ポリオールとして、より好ましくは、1,4-ブタンジオールが挙げられる。
【0069】
鎖伸長剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0070】
そして、鎖伸長剤を硬化剤として調製する。
【0071】
以上により、主剤および硬化剤がそれぞれ調製される。これにより、ポリウレタン樹脂原料キットが製造される。
【0072】
上記した説明では、主剤が、有機金属触媒およびアセチルアセトンを含む態様について説明したが、これに限定されない。詳しくは、主剤および/または硬化剤が、有機金属触媒を含み、かつ、主剤および/または硬化剤が、アセチルアセトンを含み、かつ、上記した含有量の第1倍率が、上記した所定の範囲であれば、その態様は限定されない。具体的には、上記した態様の他に、例えば、主剤が、有機金属触媒およびアセチルアセトンを含まず、硬化剤が、有機金属触媒およびアセチルアセトンを含む態様、主剤および硬化剤が、有機金属触媒およびアセチルアセトンを含む態様、主剤が、有機金属触媒を含まず、アセチルアセトンを含み、硬化剤が、アセチルアセトンを含まず、有機金属触媒を含まない態様、および、主剤が、アセチルアセトンを含まず、有機金属触媒を含み、硬化剤が、有機金属触媒を含まず、アセチルアセトンを含む態様が挙げられる。
【0073】
<ポリウレタン樹脂の製造方法>
以下の説明では、上記ポリウレタン樹脂原料キットを用いて、ポリウレタン樹脂を製造する方法について、詳述する。
【0074】
ポリウレタン樹脂の製造方法は、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分とを反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを合成する第1工程と、鎖伸長剤を準備する第2工程と、イソシアネート基末端プレポリマーおよび/または鎖伸長剤に、有機金属触媒を添加し、イソシアネート基末端プレポリマーおよび/または鎖伸長剤に、アセチルアセトンを添加して、主剤と、硬化剤とを調製する第3工程と、主剤および硬化剤を混合する第4工程とを備える。
【0075】
以下の説明では、第3工程において、主剤に、有機金属触媒および鎖伸長剤を添加する態様について詳述する。
【0076】
[第1工程]
第1工程では、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分とを反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを合成する。
【0077】
具体的には、上記したポリイソシアネート成分および上記したポリオール成分を混合して、反応させる。
【0078】
ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応させる方法としては、公知の重合方法(例えば、バルク重合および溶液重合)が選択される。
【0079】
溶液重合では、例えば、窒素雰囲気下、有機溶媒(溶剤)に、上記成分を配合して、反応させる。
【0080】
有機溶媒としては、イソシアネート基に対して不活性で、かつ、親水性に富む、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、および、N-メチルピロリドンが挙げられる。
【0081】
この反応において、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との配合割合は、ポリオール成分の水酸基に対して、ポリイソシアネート成分のイソシアネート基が過剰となるように、調整される。具体的には、ポリオール成分中の活性水素基(水酸基)に対するポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比R1(イソシアネート基/活性水素基)は、1を超過し、例えば、1.2以上、好ましくは、1.3以上、例えば、4.0以下、好ましくは、2.5以下である。このような場合において得られる反応生成物の末端官能基は、イソシアネート基である。つまり、イソシアネート基末端プレポリマーが得られる。
【0082】
反応条件として、反応温度は、例えば、20℃以上、また、例えば、80℃以下である。また、反応時間は、1時間以上、また、例えば、20時間以下である。
【0083】
また、上記反応において、未反応のポリイソシアネート成分を、例えば、蒸留や抽出などの公知の方法により、除去することもできる。
【0084】
これにより、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応生成物であるイソシアネート基末端プレポリマー(具体的には、イソシアネート基末端プレポリマーの反応液)が得られる。
【0085】
なお、溶液重合によって、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応させる場合には、イソシアネート基末端プレポリマーは、イソシアネート基末端プレポリマーおよび有機溶媒を含む反応液として得られる。
【0086】
そして、イソシアネート基末端プレポリマーは、その分子末端に、少なくとも1つ(好ましくは、複数、さらに好ましくは、2つ)の遊離のイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーである。そのイソシアネート基の含有量(溶剤を除いた固形分換算のイソシアネート基含量、すなわち、イソシアネート基濃度)は、例えば、2.0質量%以上、好ましくは、3.0質量%以上、より好ましくは、5.0質量%以上、また、例えば、15.0質量%以下、好ましくは、10.0質量%以下である。なお、イソシアネート基の含有量は、公知の測定方法によって求めることができる。測定方法としては、例えば、ジ-n-ブチルアミンによる滴定法、および、FT-IR分析が挙げられる。
【0087】
[第2工程]
第2工程では、鎖伸長剤を準備する。
【0088】
[第3工程]
第3工程では、主剤に、有機金属触媒およびアセチルアセトンを添加する。
【0089】
有機金属触媒の配合割合、および、鎖伸長剤の配合割合は、上記した含有量の第1倍率が、所定の範囲となるように調整される。これにより、主剤が調製される。
【0090】
また、この方法では、上記鎖伸長剤が、そのまま、硬化剤として調製される。
【0091】
これにより、主剤および硬化剤を調製する。そして、主剤および硬化剤を備えるポリウレタン樹脂原料キットが構成される。
【0092】
[第4工程]
第4工程では、主剤および硬化剤を混合し、主剤および硬化剤の混合物を得る。そして、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを反応させ、ポリウレタン樹脂を製造する。
【0093】
イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤との配合割合は、鎖伸長剤中の活性水素基に対する、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基の当量比R2(イソシアネート基/活性水素基)が、例えば、1.01以上、好ましくは、1.04以上、また、例えば、1.30以下、好ましくは、1.20以下、より好ましくは、1.10以下となるように調整される。
【0094】
また、上記反応において、反応温度は、例えば、25℃以上、好ましくは、50℃以上、また、例えば、200℃以下、好ましくは、150℃以下である。また、反応時間は、例えば、5分以上、好ましくは、1時間以上、より好ましくは、8時間以上、さらに好ましくは、12時間以上、例えば、72時間以下、好ましくは、48時間以下、より好ましくは、24時間以下である。
【0095】
これにより、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを反応させ、ポリウレタン樹脂を製造する。
【0096】
また、この方法では、必要に応じて、ポリウレタン樹脂を、熱処理することができる。熱処理温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、80℃以上、また、例えば、200℃以下、好ましくは、150℃以下である。また、熱処理時間は、例えば、30分以上、好ましくは、1時間以上、また、例えば、30時間以下、好ましくは、20時間以下である。
【0097】
また、ポリウレタン樹脂を、エージングすることもできる。エージング温度は、例えば、10℃以上、好ましくは、20℃以上、また、例えば、50℃以下、好ましくは、40℃以下である。また、エージング時間は、例えば、1時間以上、好ましくは、10時間以上、また、例えば、50日間以下、好ましくは、30日間以下である。
【0098】
ポリウレタン樹脂は、必要に応じて、公知の添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、離型剤、顔料、染料、滑剤、フィラー、加水分解防止剤、防錆剤およびブルーイング剤が挙げられる。添加剤の添加量は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0099】
なお、添加剤を添加するタイミングは、特に制限されない。例えば、第1工程において、イソシアネート基末端プレポリマーを合成するとき、および/または、イソシアネート基末端プレポリマーを合成した後に、添加剤を添加することもできる。また、第3工程において、イソシアネート基末端プレポリマーおよび/または鎖伸長剤に、添加剤を添加することもできる。第4工程において、主剤および硬化剤の混合物に、添加剤を添加することもできる。
【0100】
得られたポリウレタン樹脂において、ポリウレタン樹脂100質量部中の有機金属触媒の含有量に対して、ポリウレタン樹脂100質量部中のアセチルアセトンの含有量(以下、含有量の第2倍率と称する。)が、4倍以上、好ましくは、8倍以上、また、16倍以下、好ましくは、12倍以下である。これにより、詳しくは後述するが、このポリウレタン樹脂を用いて、厚い弾性成形体を製造する場合であっても、弾性成形体の内部欠陥を抑制できる。なお、上記含有量の第2倍率は、上記含有量の第1倍率と対応(一致)する値である。
【0101】
上記した説明では、第3工程において、主剤に、有機金属触媒および鎖伸長剤を添加する態様について詳述したが、上記した含有量の第1倍率(上記した含有量の第2倍率)が、上記した範囲内であれば、上記の態様に限定されない。
【0102】
詳しくは、第3工程では、イソシアネート基末端プレポリマーおよび/または鎖伸長剤に、有機金属触媒を添加し、イソシアネート基末端プレポリマーおよび/または鎖伸長剤に、アセチルアセトンを添加することもできる。
【0103】
また、第1工程において、イソシアネート基末端プレポリマーを合成するときに、有機金属触媒を添加することもできる。このような場合には、上記第1工程に添加する有機金属触媒を含めた有機金属触媒の総量が、上記した含有量の第1倍率(上記した含有量の第2倍率)の所定の範囲を満足するように、第3工程において、有機金属触媒を添加する。
【0104】
そして、上記したポリウレタン樹脂は、弾性成形体の製造に好適に用いることができる。
【0105】
<弾性成形体>
弾性成形体としては、例えば、ポリウレタンエラストマーが挙げられる。ポリウレタンエラストマーとしては、TPU(熱可塑性ポリウレタン樹脂)およびTSU(熱硬化性ポリウレタン樹脂)が挙げられる。弾性成形体として、好ましくは、TSU(熱硬化性ポリウレタン樹脂)が挙げられる。
【0106】
弾性成形体は、公知の成形法でポリウレタン樹脂を成形することにより得られる。成形方法としては、例えば、注型成形、熱圧縮成形、射出成形、押出成形および紡糸成形が挙げられる。また、成形後の形状としては、例えば、板状、繊維状、ストランド状、フィルム状、シート状、パイプ状、ボトル状、中空状、箱状およびボタン状が挙げられる。
【0107】
弾性成形体は、好ましくは、注型成形により得られる。従って、弾性成形体は、好ましくは、注型ポリウレタンエラストマーである。このような注型ポリウレタンエラストマーは、例えば、上記した第4工程において、主剤および硬化剤の混合物を、必要に応じて脱泡し、予備加熱した成形型内に注入し、その後、硬化し、脱型することより得られる。
【0108】
そして、注型ポリウレタンエラストマーは、注型成形により得られる成形体(注型成形体)であり、目的および用途に応じた所定形状を単独で有する物品であって、被塗物に対して塗布されるコーティング剤とは区別される。
【0109】
弾性成形体は、上記ポリウレタン樹脂を含む。そのため、詳しくは後述するが、内部欠陥を抑制できる。
【0110】
弾性成形体の厚みは、例えば、5cm以上、好ましくは、7cm以上、また、例えば、50cm以下、好ましくは、40cm以下である。
【0111】
<作用効果>
上記ポリウレタン樹脂原料キットでは、イソシアネート基末端プレポリマーおよび鎖伸長剤の合計100質量部に対する有機金属触媒の含有量に対して、イソシアネート基末端プレポリマーおよび鎖伸長剤の合計100質量部に対するアセチルアセトンの含有量(含有量の第1倍率)が、4倍以上16倍以下である。そのため、このポリウレタン樹脂原料キットを用いて、厚い弾性成形体を製造する場合であっても、弾性成形体の内部欠陥を抑制できる。
【0112】
詳しくは、上記したように、弾性成形体は、主剤および硬化剤を含む混合物を、成形型に注入し、成形することにより得られる。
【0113】
一方、厚い弾性成形体を製造する場合には、成形型に注入された混合物は、成形型(成形型の外枠)に近い部分から、硬化が進行しやすくなる。そうすると、混合物が成形型に近い部分に流動し、成形型から遠い部分が、成形型に近い部分に比べて、薄くなる(低密度になる)。そして、成形型から遠い部分は、得られる弾性成形体において、弾性成形体の内部に相当する。そうすると、弾性成形体において、内部が薄くなり、内部欠陥が生じるという不具合がある。
【0114】
このような不具合を解消するためには、有機金属触媒の含有量を減らし、硬化反応速度を遅くすることが検討される。硬化反応速度を遅くすれば、成形型に近い部分の硬化反応速度と、成形型から遠い部分の硬化反応速度との差を小さくなり、上記内部欠陥を抑制できる。
【0115】
一方、有機金属触媒の含有量を減らすと、主剤と硬化剤との相溶性が低下する。そうすると、硬化反応が均一に進行されず、内部欠陥が生じるという不具合がある。
【0116】
これに対して、このポリウレタン樹脂原料キットは、有機金属触媒を含むとともに、アセチルアセトンを含む。
【0117】
上記したように、有機金属触媒が多いと、主剤と硬化剤との相溶性の低下を抑制できる一方、硬化反応速度が速くなり、内部欠陥が生じる。しかし、このポリウレタン樹脂原料キットは、有機金属触媒とともに、有機金属触媒の活性を抑制するアセチルアセトンを含むため、有機金属触媒の含有量が多くても、硬化反応速度を遅くすることができる。つまり、このポリウレタン樹脂原料キットでは、有機金属触媒およびアセチルアセトンを併用することにより、上記した相溶性の低下、および、硬化反応速度を遅くできる。その結果、内部欠陥を抑制できる。
【0118】
一方、有機金属触媒に対して、アセチルアセトンが多すぎると、有機金属触媒の活性が、過度に抑制され、弾性成形体を十分に硬化させることができず、内部欠陥を抑制できない。また、有機金属触媒に対して、アセチルアセトンが少なすぎると、硬化反応速度を十分に遅くすることができず、内部欠陥を抑制できない。
【0119】
そのため、このポリウレタン樹脂原料キットでは、有機金属触媒に対するアセチルアセトンが所定の範囲に設定されている。具体的には、上記含有量の第1倍率が、4倍以上16倍以下に設定されている。これにより、有機金属触媒およびアセチルアセトンを適度な割合で併用し、内部欠陥を抑制できる。
【0120】
また、上記ポリウレタン樹脂では、ポリウレタン樹脂100質量部中の有機金属触媒の含有量に対して、ポリウレタン樹脂100質量部中のアセチルアセトンの含有量が、4倍以上16倍以下である。そのため、このポリウレタン樹脂を用いて、厚い弾性成形体を製造する場合であっても、弾性成形体の内部欠陥を抑制できる。
【0121】
また、上記弾性成形体は、上記ポリウレタン樹脂を含む。そのため、内部欠陥を抑制できる。
【0122】
上記ポリウレタン樹脂の製造方法では、イソシアネート基末端プレポリマーおよび鎖伸長剤の合計100質量部に対する有機金属触媒の含有量に対して、イソシアネート基末端プレポリマーおよび鎖伸長剤の合計100質量部に対するアセチルアセトンの含有量が、4倍以上16倍以下である。そのため、厚い弾性成形体を製造する場合であっても、弾性成形体の内部欠陥を抑制できるポリウレタン樹脂を製造することができる。
【0123】
そして、上記ポリウレタン樹脂および上記弾性成形体は、内部欠陥が抑制されている。そのため、これらは、各種産業分野において、好適に使用される。具体的には、透明性硬質プラスチック、防水材、ポッティング剤、インク、バインダー、フィルム、シート、バンド、ベルト、シュープレスベルト、チューブ、ローラ、ブレード、スピーカー、センサー、アウトソール、糸、繊維、不織布、化粧品、靴用品、断熱材、シール材、テープ材、封止材、太陽光発電部材、ロボット部材、アンドロイド部材、ウェアラブル部材、衣料用品、衛生用品、化粧用品、家具用品、食品包装部材、スポーツ用品、レジャー用品、医療用品、介護用品、住宅用部材、音響部材、照明部材、防振部材、防音部材、日用品、雑貨、クッション、寝具、応力吸収材、応力緩和材、自動車内装材、自動車外装材、鉄道部材、航空機部材、光学部材、OA機器用部材、雑貨表面保護部材、半導体封止材、自己修復材料、健康器具、メガネレンズ、玩具、パッキン、ケーブルシース、ワイヤーハーネス、電気通信ケーブル、自動車配線、コンピューター配線、工業用品、衝撃吸収材、半導体用品および橋梁支承が挙げられる。
【実施例0124】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0125】
<成分の詳細>
1,4-H6XDI:1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン
PTMEG:ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量(Mn)1000
PBA1000:アジペート系ポリエステルポリオール(ポリブチレンアジペート)、数平均分子量(Mn)1000
PCL1000:ポリカプロクトンジオール、数平均分子量(Mn)1000
1,4-BD:1,4-ブタンジオール
DBTDL:ジブチルスズジラウレート
【0126】
<1、4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの合成>
製造例1
国際公開WO2019/069802号公報の製造例3の記載に準拠して、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,4-H6XDI)を得た。1,4-H6XDIの純度を、ガスクロマトグラフにより測定した結果、99.9%であった。また、APHA測定による色相は、5であった。また、13C-NMR測定により測定したトランス体およびシス体比は、トランス体86モル%であり、シス体14モル%であった。
【0127】
<ポリウレタン樹脂原料キットおよび弾性成形体の製造>
実施例1~実施例10、および、比較例1~比較例5
[第1工程]
ポリイソシアネート成分およびポリオール成分を、窒素雰囲気下、イソシアネート基濃度が表1~表2に記載の値に至るまで、80℃で5時間反応させた。なお、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分の配合割合は、ポリオール成分中の水酸基に対するポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比R1(イソシアネート基/水酸基)が、表1~表2に記載の値となるように調整した。これにより、イソシアネート基末端プレポリマーを合成し、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応液を得た。次いで、この反応液に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名イルガノックス1076、BASF製)0.5質量%および亜リン酸エステル系酸化防止剤(商品名JPP-100、城北化学工業製)0.3質量%を添加した。
【0128】
[第2工程]
鎖伸長剤として、1,4-BDを準備した。
【0129】
[第3工程]
第1工程で合成したイソシアネート基末端プレポリマーを含む反応液に、有機金属触媒(DBTDL)およびアセチルアセトンを、表1~表2に記載の配合処方に基づいて、添加した。これにより、主剤を調製した。
【0130】
なお、表1~表2に記載の有機金属触媒の含有量およびアセチルアセトンの含有量は、それぞれ、イソシアネート基末端プレポリマーおよび鎖伸長剤の合計100質量部に対する有機金属触媒の含有量、および、イソシアネート基末端プレポリマーおよび鎖伸長剤の合計100質量部に対するアセチルアセトンの含有量を意味する。
【0131】
また、上記鎖伸長剤を、硬化剤とした。
【0132】
これにより、主剤および硬化剤を調製した。そして、主剤および硬化剤を備えるポリウレタン樹脂原料キットを製造した。
【0133】
[第4工程]
主剤および硬化剤を混合し、主剤および硬化剤の混合物を得た。主剤および硬化剤の配合割合は、鎖伸長剤中の水酸基に対する、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基の当量比R2(イソシアネート基/水酸基)が、表1~表2に記載の値となるように調整した。
【0134】
次いで、主剤および硬化剤の混合物を、成形型内に注入し、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを、表1~表2の反応条件に基づいて、反応(硬化)させ、その後、脱型した。これにより、弾性成形体を製造した。
【0135】
詳しくは、後述する各評価(内部欠陥の観察を除く)に用いる弾性成形体は、110℃に温度調整した金型に注入した。また、内部欠陥の観察に用いる弾性成形体(厚み5cm)は、60℃に温度調整した金型に注入した。
【0136】
<評価>
[A硬度]
各実施例および各比較例の弾性成形体のショアA硬度を、JIS K 7312(1996)に準拠して測定した。その結果を表1および表2に示す。
【0137】
[引張特性]
各実施例および各比較例の弾性成形体の引張特性を、万能引張試験機(インテスコ社製 205N)により、JIS K 7312(1996年)に準拠して測定した。すなわち、弾性成形体を切断し、3号ダンベル試験片を得た。そして、引張速度500mm/分の条件で、100%~300%モジュラス(MPa)、引張強度(MPa)および破断伸び(%)を測定した。その結果を表1および表2に示す。
【0138】
[反発弾性率]
各実施例および各比較例の弾性成形体の反発弾性率を、JIS K 7311(1995)に準拠して測定した。その結果を表1および表2に示す。
【0139】
[低発熱性(損失係数:tanδ)]
低発熱性の指標として、各実施例および各比較例の弾性成形体の損失係数(tanδ)を算出した。より具体的には、弾性成形体の動的粘弾性スペクトルを、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御株式会社製、型式:DVA-220)を用いて、測定開始温度-100℃、昇温速度5℃/min、引張モード、標線間長20mm、静/動応力比1.8、測定周波数10Hzの条件で、測定した。そして、60℃での損失係数(tanδ)を算出した。その結果を表1および表2に示す。
【0140】
[内部欠陥の観察]
各実施例および各比較例の弾性成形体について、内部欠陥を観察した。具体的には、株式会社リガク社製CT Lab GX130を用いて、5cm角立方体の成形体内部をX線観察により内部欠陥の有無を確認した。X線観察条件は、以下の通りである。
管電圧:130kV
管電流:300μA
FOV:72mm
撮影モード:High Resolution
撮影時間:14min
焦点:L
内部欠陥について、以下の基準で評価した。その結果を表1および表2に示す。
○:内部欠陥が観察されなかった。
△:直径0~1.0mm未満の内部欠陥が観察された。
×:直径1.0mm以上の内部欠陥が観察された。
【0141】
【0142】