(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115951
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】翼付き掛け鈎
(51)【国際特許分類】
A01K 91/06 20060101AFI20230815BHJP
【FI】
A01K91/06 C
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018398
(22)【出願日】2022-02-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】517215353
【氏名又は名称】松江 孝
(72)【発明者】
【氏名】松江 孝
【テーマコード(参考)】
2B307
【Fターム(参考)】
2B307GA13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】掛け鈎を常に垂直に保つことにより野鮎の鈎掛かりをよくし、水流による水の抵抗が少なく、緩い川の流れでも掛け鈎が水中に浮遊することができる、鮎の友釣り用の翼付き掛け鈎を提供する。
【解決手段】鮎鈎1にハリス通し用金具19と翼2を一体化し、ハリス通し用金具19のハリス通し用受け部に掛け鈎用ハリスを通し、掛け鈎用ハリス上を翼2が付いた鮎鈎1が自由に回転するように形成され、川の水流を翼2に受けることにより、水中に浮遊する鮎の友釣り用の翼付き掛け鈎。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鮎鈎に翼を設けることにより水中を浮遊させる翼付き掛け鈎において、
前記翼と前記鮎鈎の軸部とハリス通し受け部を一体に固定し、
前記翼が水流によって浮遊し前記軸部が略水平になった状態において、前記翼の中心部の下方に前記軸部が位置し、かつ、前記中心部の上方に前記ハリス通し受け部が位置するとともに、
前記翼は前記中心部を中心として左右対称であり翼面の両側端が上方に上がっており、
ハリスを前記ハリス通し受け部に貫通させるとともに、前記ハリスの端部に抜け止め部を設けた翼付き掛け鈎。
【請求項2】
前記翼は、翼面が円弧形状をなしていることを特徴とする請求項1に記載の翼付き掛け鈎。
【請求項3】
前記翼は、前部が狭く、後部に行く程翼幅が広くなることを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の翼付き掛け鈎。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鮎の友釣り用に使う翼付き掛け鈎に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鮎釣りにおいては、鮎竿の先端から道糸を介して囮鮎の鼻に鼻カン等を介して逆さ鈎用ハリスを取り付ける。その囮鮎の尻鰭の近くに逆さ針及びハリス止め、掛け鈎用ハリスを介して掛け鈎を取り付け、囮鮎を川に泳がせる。
【0003】
その囮鮎を野鮎の縄張り内に誘導することで、野鮎の縄張りを守る習性を利用し、野鮎は縄張りに侵入した囮鮎を縄張りの外に追い出す排撃攻撃してくる。野鮎を掛け鈎に引っ掛けて釣り上げる友釣りが行われており、その友釣りに用いる掛け鈎についても、様々な形態のものが提案されている。
【0004】
友釣りに用いる掛け鈎には、3本錨仕掛け、4本錨仕掛け、またヤナギ仕掛けが従来多く使用されている。
【0005】
この種の鮎の友釣り用仕掛け鈎として、翼付き掛け鈎が既に提案されている(特許文献1及び特許文献2)。特許文献1の翼付き掛け鈎は、大鈎軸と小鈎軸との間に水中翼を設けた形態のものであり、その水中翼付2段鮎釣り鈎仕掛けの大鈎は通常使用する鮎鈎より大きく、その小鈎は通常使用する鮎鈎と同じサイズである。特許文献1の水中翼付2段鮎釣り鈎仕掛けは囮鮎が前に進むと必ず翼下面に水流力が作用して浮き上がって、野鮎を引っ掛けるものである。
【0006】
同様の鮎の友釣り用仕掛け鈎は特許文献2にも開示されており、この仕掛けは鮎鈎の取り付け部(軸部)に翼片を取り付けたものであり、翼片が合成樹脂製で翼の主要部分は軸部にあり、ハリスと鮎鈎に翼片を接着剤で取り付けた構造のものである。この仕掛けは重量も軽く、翼片を使用して鈎先を下方にして水中を水平に泳行する様にしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実登第3003553号広報
【特許文献2】実開平4-136075号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
鮎の友釣りでは水中で鉛直に向いている鈎にしか野鮎は掛からないことが知られており、背景技術には以下のような改善すべき点がある。背景技術に示されたような翼付きの友釣り用掛け鈎は、掛け鈎を鉛直に向けて取り付けることが難しく、翼が付いた掛け鈎を囮鮎に逆さ鈎で取り付けるときに翼が斜めのまま取り付けられると鈎が鉛直に向かずに浮遊する。友釣り用掛け鈎は、鈎数が多いと仕掛けが重く、川の流れが緩やかになると友釣り用掛け鈎は浮遊しにくくなり、鉛直に向いている鈎は石ずれを起こして根掛かりを生じやすく針先が鈍くなる欠点があり、水流による水の抵抗も大きくなることから、囮鮎に負担がかかり、囮鮎が弱るという問題がある。
【0009】
本発明は囮鮎に友釣り用掛け鈎を取り付ける際に鮎鈎の鈎先を考慮せずに取り付けられ、1本の鮎鈎を常に鉛直に保つことができる。鮎鈎が1本であるため川の流れが緩やかでも友釣り用掛け鈎が水中を浮遊することができ、水の抵抗が小さい翼付き掛け鈎を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、鮎鈎に翼を設けることにより水中を浮遊させる翼付き掛け鈎において、翼と鮎鈎の軸部とハリス通し受け部を一体に固定し、翼が水流によって浮遊し軸部が略水平になった状態において、翼の中心部の下方に軸部が位置し、かつ、中心部の上方にハリス通し受け部が位置するとともに、翼は中心部を中心として左右対称であり翼面の両側端が上方に上がっており、ハリスをハリス通し受け部に貫通させるとともに、ハリスの端部に抜け止め部を設けたものである。
【0011】
また本発明の翼は、翼面が円弧形状をなしていることを特徴とするものである。
【0012】
また本発明の翼は、前部が狭く、後部に行く程翼幅が広くなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る鮎の友釣り用の翼付き掛け鈎は、囮鮎に友釣り用の翼付き掛け鈎を取り付ける際に鮎鈎の鈎先を考慮せずに取り付けられ、鮎鈎を常に鉛直に保ことができ、翼付き掛け鈎は水の抵抗が少なく、川の流れが緩やかでも水中を浮遊することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例1に係る翼付き掛け鈎の斜視図
【
図2】本発明の実施例1に係る翼付き掛け鈎の正面図
【
図3】本発明の実施例1に係る翼付き掛け鈎の縦断面図
【
図5】本発明の実施例1に係るハリス通し用受け金具の斜視図
【
図6】本発明の実施例1に係る翼付き掛け鈎の使用状態図
【
図7】本発明の実施例1に係る翼付き掛け鈎が川の流れにより浮上する様子を示した軌跡図
【
図8】本発明の実施例1に係る翼付き掛け鈎を付けた囮鮎に対して野鮎が攻撃を加える状況を示した平面図
【
図9】本発明の実施例1に係る翼付き掛け鈎に野鮎が掛かる状況を示した側面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例1に係る翼付き掛け鈎30は、
図1に示すとおり、鮎鈎1、翼2、ハリス通し用受け金具19に設けられたハリス通し用受け部(前)3、ハリス通し用受け部(後)4、掛け鈎用ハリス5、抜け止めガラスビーズ6から構成される。
【0016】
1は、U字型をした形状の鮎鈎である。2は、左右対称で両側端が上に上がっており、翼面が円弧形状で前部が狭く、後部に行き程翼幅が広くなる形状の翼であり、
図4及び
図5に示すように翼2の中心線上にハリス通し用受け部(前)3、ハリス通し用受け部(後)4を通す為の、受け部穴(前)17、受け部穴(後)18が設けられている。
【0017】
図4に示す通り、翼2の製作には1cm程度にカットしたポリプロピレン樹脂パイプ16(直径6mm、厚さ0.08mm)を翼2の形に切断することにより製作した。当該直径は3~10mm、当該厚さは0.03~0.2mm程度が、一般的な鮎鈎1とバランスする翼2を製作する上で好ましいことが分かった。
【0018】
図2に示すように、翼2は仮想鉛直線F―F'を中心として左右対称に製作されており、翼2の材質はポリプロピレン樹脂またはプラスチック樹脂で製作する。
【0019】
19は、ハリス通し用受け金具でステンレス線をコの字型に曲げ、両端を折り返し二重になり折り返し部が円形を成している形状である。3はハリス通し用受け部(前)であり、ハリス通し用受け金具の前部にある円形部である。4はハリス通し用受け部(後)であり、ハリス通し用受け金具の後部にある円形部である。
【0020】
図5に示す通り、ハリス通し用金具19の製作は、ステンレス線(約直径0.3mm)をコの字型に曲げて折り返し、折り返し端部を円形に曲げ加工して行う。ハリス通し用金具19の一端にはハリス通し用受け部(前)3が設けられ、他端にはハリス通し用受け部(後)4が設けられている。
【0021】
5は、1本のナイロン糸からなる掛け鈎用ハリスである。6は、外径が約1mmで内径が約0.5mmの丸形のガラスビーズである。また、掛け鈎用ハリス5の端部には団子結び7が設けられ、ハリスが抜けることを防止している。
【0022】
図2を用いて、鮎鈎1とハリス通し用受け金具19の構成を説明する。鮎鈎1の軸部20にハリス通し用受け金具19を根巻き糸8で巻き付け固定する。
図2に示すとおり、ハリス通し用受け金具19に設けられたハリス通し用受け部(前)3及びハリス通し用受け部(後)4と鮎鈎1の鈎部21が
図2を紙面に垂直な方向から見たときに同一平面(F―F')になるように、鮎鈎1の軸部20とハリス通し用受け金具19を根巻き糸8で巻き付け固定する。
【0023】
これにより、鮎鈎1の鈎部21とハリス通し用受け金具19に設けられたハリス通し用受け部(前)3及びハリス通し用受け部(後)4は、仮想鉛直線F―F'上に位置する。
【0024】
次に、
図2を用いて翼2の固定方法を説明する。翼2の受け部穴(前)17にハリス通し用受け部(前)3を通し、翼2の受け部穴(後)18にハリス通し用受け部(後)4を通し、翼2の上部の両端を結んだ仮想線E―E'と翼2から鮎鈎1の鈎部21に向いて設けた仮想鉛直線F―F'が直角になるように、ハリス通し用受け金具19と翼2を接着剤で一体化する。
【0025】
前記翼付き掛け鈎30は、
図3に示すとおり、翼付き掛け鈎30に掛け鈎用ハリス5の後端部に団子結び7を施し、前記掛け鈎用ハリス5に抜け止めガラスビーズ6を通して、ハリス通し用受け部(後)4及びハリス通し用受け部(前)3に掛け鈎用ハリス5を通すことより構成されている。
【0026】
ハリス通し用受け部(前)3、ハリス通し用受け部(後)4の円形は内径が約0.5mm程度にする。ハリス通し用受け部(前)3、ハリス通し用受け部(後)4の受け部の形状は円形または、楕円形とするが形状は特に特定しない、掛け鈎用ハリス5が動きやすい形状とする。
【0027】
翼付き掛け鈎30は、鮎鈎1の種類、サイズ、鈎の重さにより、翼2の大きさを変更することにより、浮遊力を調整し、それぞれ翼付き掛け鈎30を製作する。また、ハリス通し用金具19は鮎鈎1の軸部20の長さにより、ハリス通し用受け部(前)3、ハリス通し用受け部(後)4の間隔を広げて製作をする。
【0028】
図6に示すように、鮎竿に接続された道糸9が鼻カン11を介して囮鮎10に装着され、鼻カン11に逆さ鈎用ハリス15が結ばれ、逆さ鈎用ハリス15に逆さ鈎12とハリス止め13が取り付けられるのが一般的な仕掛け構成である。
【0029】
掛け鈎用ハリス5は、逆さ鈎12によって位置が決められたハリス止め13に取り付けられている。これにより、
図6に示すように、掛け鈎用ハリス5の後端部にある翼付き掛け鈎30は、囮鮎10の後方の所定位置に設けられることになる。
【0030】
ハリス止め13に掛け鈎用ハリス5を取り付け、逆さ鈎12で囮鮎10の尻鰭付近に引っ掛ける。囮鮎10が川の中に入ると翼付き掛け鈎30は翼2の作用により、川の流れを受けて水中を浮遊する。囮鮎10が上流側にいるので、翼付き掛け鈎30は囮鮎10に引かれており、鮎鈎1の鈎先を常に川の上流に向けて翼付き掛け鈎30は浮遊する。
【0031】
掛け鈎用ハリス5がハリス通し用受け部(前)3、ハリス通し用受け部(後)4に通っており、ハリス通し用受け部(後)4とガラスビーズ6が接触しているため摩擦抵抗が小さくなり、掛け鈎用ハリス5を中心に、翼付き掛け鈎30は回転自在に動くことが出来る。
【0032】
図7に示すように、囮鮎10に取り付けられた翼付き掛け鈎30は次のような動きをする。G―G'の線は逆さ鈎12を起点に翼付き掛け鈎30に向いた仮想線であり、翼付き掛け鈎30は、川の流れを受けて垂れ下がった状態から、流速が速くなるのに伴って、軌跡Jを描きながら仮想線G―G‘上まで浮上して浮遊する。
【0033】
翼付き掛け鈎30が浮上する際、翼2は前部が狭く、後部に行く程翼幅が広くなる形状であり、後部の広い部分が浮遊する力が強く、その真下に鮎鈎1の重心Cがあるので、水の流れが緩やかでも少しの力で浮上することが出来る。
【0034】
囮鮎10が左右に動くと翼付き掛け鈎30も追随して左右に動くが、翼2の形状が左右対称であり両側端が上に上がっているため、翼2の左立ちあがり部A及び右立ち上がり部Bに水の抵抗を受け、翼付き掛け鈎30の方向を水の流れの方向に向けなおす力が働く。
【0035】
翼付き掛け鈎30の翼2は
図2に示すように翼面が円弧形状をしているので、円柱体から容易に製作できるとともに、変形しにくい形状である。但し、翼2の形状が左右対称の2等辺三角形形状または、四角形形状でも同様の効果が得られる。
【0036】
翼付き掛け鈎30は、川の流れが緩やかでも浮遊することができ、囮鮎10が上下、左右に進路を変えても、速やかに追随して動くことができ、鮎鈎1を常に鉛直に保っている。
【0037】
図8は、翼付き掛け鈎30を付けた囮鮎10に対して野鮎14が攻撃を加える状況を示した図である。翼2の前側の翼幅が小さいので野鮎14が翼2に触れることが少ないため、野鮎14が掛かりやすい仕掛けが実現できる。
【0038】
図9は、野鮎14が掛かる状況を示した側面図である。囮鮎10に取り付けられた翼付き掛け鈎30の鮎鈎1の鈎先は川の上流側を向いていることが多く、囮鮎10に野鮎14が排撃攻撃をしてきたとき、鮎鈎1が野鮎14に掛かる確率が高くなる。
【0039】
囮鮎10に翼付き掛け鈎30の仕掛けを取り付ける際に、鮎鈎1が鉛直になることを考えずに取り付けられ、仕掛けを早く交換することができ、鮎の友釣りの循環動作を速く行うことが出来る。
【0040】
翼付き掛け鈎30は川の流れにより浮遊しており、石ずれが少なく、根掛かりも起こさないので、鮎鈎1の鈎先が痛むことが少なく、翼付き掛け鈎30の交換頻度を少なくすることができ、囮鮎10に係る負担を軽減することができ、囮鮎10を弱らすことが少ないので、鮎の友釣りの釣果を向上することができる。
【0041】
本発明の翼付き掛け鈎30は、2個または3個を1本のハリスに取り付けることができ、2本鈎チラシ仕掛けまたは3本鈎チラシ仕掛けにも使用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 鮎鈎
2 翼
3 ハリス通し用受け部(前)
4 ハリス通し用受け部(後)
5 掛け鈎用ハリス
6 ガラスビーズ
7 団子結び
8 根巻き糸
9 道糸
10 囮鮎
11 鼻カン
12 逆さ鈎
13 ハリス止め
14 野鮎
15 逆さ鈎用ハリス
16 ポリプロプレン樹脂パイプ
17 受け部穴(前)
18 受け部穴(後)
19 ハリス通し用受け金具
20 軸部
21 鈎部
30 翼付き掛け鈎
E―E' 翼の上部の両端を結んだ仮想線
F―F' 翼から鮎鈎の鈎先に向いて仮想鉛直線
G―G' 逆さ鈎を起点に翼付き掛け鈎に向いて仮想線
A 左立ち上がり部
B 右立ち上がり部
C 鮎鈎重心
J 軌跡