(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115958
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】微粒子サンプリング装置、微粒子サンプリング方法、及びそれを用いた空気調和設備
(51)【国際特許分類】
C12M 1/26 20060101AFI20230815BHJP
B03C 3/10 20060101ALI20230815BHJP
B03C 3/40 20060101ALI20230815BHJP
B03C 3/78 20060101ALI20230815BHJP
G01N 1/02 20060101ALI20230815BHJP
G01N 1/22 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
C12M1/26
B03C3/10 Z
B03C3/40 A
B03C3/78
G01N1/02 A
G01N1/22 S
G01N1/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018411
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】成畑 晃希
【テーマコード(参考)】
2G052
4B029
4D054
【Fターム(参考)】
2G052AA04
2G052AA05
2G052AA36
2G052AA40
2G052AB01
2G052AB11
2G052AB16
2G052AB27
2G052AC02
2G052AC12
2G052AD15
2G052AD26
2G052AD35
2G052AD49
2G052BA05
2G052BA17
2G052BA21
2G052FD09
2G052GA09
2G052HA12
2G052HC06
2G052HC28
2G052HC32
2G052HC42
2G052JA06
2G052JA08
4B029AA09
4B029BB01
4B029BB13
4B029CC01
4B029GA08
4B029GB05
4B029GB10
4D054AA20
4D054BA01
4D054BC28
4D054BC31
4D054DA06
4D054DA11
4D054EA08
4D054EA30
(57)【要約】
【課題】サンプリング対象の活性を維持しつつ、少ない溶液量で効率よく微粒子をサンプリングできる微粒子サンプリング装置、微粒子サンプリング方法、及びそれを用いた空気調和設備を提供する。
【解決手段】微粒子サンプリング装置10は、筒状で内部にサンプリング空間69を有する第1電極22と、筒状における長さ方向に沿ってサンプリング空間69内に設けられる第2電極24と、第1電極22と第2電極24との間に電圧を印加する電圧印加部26と、サンプリング空間69内において長さ方向に沿って設けられる回転軸を中心に第1電極22を回転させる駆動部32と、サンプリング空間69に液体68を供給する供給部28と、サンプリング空間69に貯留された液体68を回収する回収部30と、を備え、第1電極22は、サンプリング空間69側の表面に液体68を導く螺旋状流路91を有する微粒子サンプリング装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状で内部にサンプリング空間を有する第1電極と、
前記筒状における長さ方向に沿って前記サンプリング空間内に設けられる第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加する電圧印加部と、
前記サンプリング空間内において前記長さ方向に沿って設けられる回転軸を中心に前記第1電極を回転させる駆動部と、
前記サンプリング空間に液体を供給する供給部と、
前記サンプリング空間に貯留された前記液体を回収する回収部と、を備え、
前記第1電極は、前記サンプリング空間側の表面に前記液体を導く螺旋状流路を有する微粒子サンプリング装置。
【請求項2】
前記螺旋状流路は、
前記表面が親水性である親水性螺旋部を備える請求項1に記載の微粒子サンプリング装置。
【請求項3】
前記螺旋状流路は、
前記表面が疎水性である疎水性螺旋部を備える請求項1に記載の微粒子サンプリング装置。
【請求項4】
前記螺旋状流路は、
前記表面が親水性である親水性螺旋部と、
前記表面が疎水性である疎水性螺旋部と、を備える請求項1に記載の微粒子サンプリング装置。
【請求項5】
前記親水性螺旋部と前記疎水性螺旋部とが隣接して形成される請求項4に記載の微粒子サンプリング装置。
【請求項6】
前記螺旋状流路は、
前記表面に形成された螺旋状の凹部を備える請求項1に記載の微粒子サンプリング装置。
【請求項7】
前記液体は、前記駆動部による前記第1電極の回転によって、前記第1電極の一端から他端に送水され、
前記螺旋状流路は、
前記筒状における前記サンプリング空間側の表面を少なくとも2周するように設けられ、
前記液体の送水方向下流側では、上流側に対して、前記長さ方向における同一直線上において、前記上流側で当該螺旋状流路に隣接する他螺旋状流路と前記下流側で当該螺旋状流路に隣接する前記他螺旋状流路との距離が短い請求項1から6のいずれか一項に記載の微粒子サンプリング装置。
【請求項8】
前記親水性螺旋部は、前記疎水性螺旋部よりも前記表面の占有割合が大きい請求項4、5または7のいずれか一項に記載の微粒子サンプリング装置。
【請求項9】
前記供給部は、
前記螺旋状流路に前記液体が残っている状態で、当該螺旋状流路に隣接する前記他螺旋状流路の前記上流側に、当該液体とは異なる他液体を供給する請求項7または8に記載の微粒子サンプリング装置。
【請求項10】
前記駆動部は、
前記液体が、前記筒状における前記長さ方向において前記第1電極の一端から他端に送水されるように前記第1電極を回転させる順駆動と、
前記液体が、前記筒状における前記長さ方向において前記第1電極の前記他端から前記一端に送水されるように前記第1電極を回転させる逆駆動と、を行う請求項1から8のいずれか一項に記載の微粒子サンプリング装置。
【請求項11】
筒状で内部にサンプリング空間を有する第1電極と、前記筒状における長さ方向に沿って前記サンプリング空間内に設けられる第2電極と、前記第1電極における前記サンプリング空間側の表面において液体を導く螺旋状流路と、を備える微粒子サンプリング装置の前記サンプリング空間に前記液体を供給する供給ステップと、
前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加する電圧印加ステップと、
前記サンプリング空間内に前記長さ方向に沿って設けられる回転軸を中心に前記第1電極を回転させる駆動ステップと、
前記サンプリング空間に貯留された前記液体を回収する回収ステップと、を備える微粒子サンプリング方法。
【請求項12】
請求項1から10のいずれかに記載の微粒子サンプリング装置を備える空気調和設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子サンプリング装置、微粒子サンプリング方法、及びそれを用いた空気調和設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微粒子のもつ慣性や遠心力を利用した装置を用いて、気体中の微粒子をサンプリングする装置および方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、および特許文献3を参照)。特許文献1には、メンプレンフィルターを介して空気を吸引することにより、空気中に浮遊する微生物をメンプレンフィルター上に捕捉する方法が開示されている。特許文献2には、吸引部より吸入した空気を培地に衝突させることにより、空気中の浮遊菌を培地に付着させて捕集する空中浮遊菌サンプラーが開示されている。特許文献3には、吸引された空気の旋回により発生する遠心力により、捕集対象物を空気から分離して捕集する装置が開示されている。
【0003】
なお、微粒子、浮遊菌、捕集対象物はいずれも本願における微粒子に該当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-161143号公報
【特許文献2】特開2009-11265号公報
【特許文献3】特開2012-52866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の構成では、吸引空気中から分離されたエアロゾル等の微粒子は、乾燥状態で堆積していく場合が多く、溶液中への取り出しといった、分析への更なるステップを要してしまう。また、サンプリング対象の微粒子が生物であった場合に、活性を維持したまま捕集することができないという課題がある。
【0006】
また、これらを解決するために液中へ回収することを目的としたものであっても、高い濃度を得るためには溶液量の多さからサンプリングに多くの時間を要してしまうことや、吸引による大きな圧力損失や大きな騒音を生じるという課題がある。
【0007】
加えて、その捕集性能は、装置の形状や大きさ、吸引速度や対象エアロゾルの大きさ等といった要因によるものが大きく、効率よく捕集ができないという課題がある。
【0008】
本開示は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、サンプリング対象の活性を維持しつつ、少ない溶液量で効率よく微粒子をサンプリングできる微粒子サンプリング装置、微粒子サンプリング方法、及びそれを用いた空気調和設備を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、この目的を達成するために、本発明に係る微粒子サンプリング装置は、筒状で内部にサンプリング空間を有する第1電極と、筒状における長さ方向に沿ってサンプリング空間内に設けられる第2電極と、第1電極と第2電極との間に電圧を印加する電圧印加部と、サンプリング空間内に長さ方向に沿って設けられる回転軸を中心に第1電極を回転させる駆動部と、サンプリング空間に液体を供給する供給部と、サンプリング空間に貯留された液体を回収する回収部と、を備え、第1電極は、サンプリング空間側の表面に液体を導く螺旋状流路を有する。
【0010】
また、この目的を達成するために、本発明に係る微粒子サンプリング方法は、筒状で内部にサンプリング空間を有する第1電極と、筒状における長さ方向に沿ってサンプリング空間内に設けられる第2電極と、第1電極におけるサンプリング空間側の表面において液体を導く螺旋状流路と、を備える微粒子サンプリング装置のサンプリング空間に液体を供給する供給ステップと、第1電極と第2電極との間に電圧を印加する電圧印加ステップと、サンプリング空間内に長さ方向に沿って設けられる回転軸を中心に第1電極を回転させる駆動ステップと、サンプリング空間に貯留された液体を回収する回収ステップと、を備える。
【0011】
また、この目的を達成するために、本発明に係る空気調和設備は、微粒子サンプリング装置を備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様に係る微粒子サンプリング装置、微粒子サンプリング方法、及びそれを用いた空気調和設備は、サンプリング対象の活性を維持しつつ、少ない溶液量で効率よく微粒子をサンプリングできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る微粒子サンプリング装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の微粒子サンプリング装置の外観を示す側面図である。
【
図6】
図6は、第1電極の内面を示す展開図である。
【
図7】
図7は、
図1の微粒子サンプリング装置の動作の一例を示すフロー図である。
【
図8】
図8は、
図1のIII-III線断面図であり、
図1の微粒子サンプリング装置が行う動作の一例を説明するための説明図である。
【
図9】
図9は、実施の形態2に係る第1電極の拡大断面図である。
【
図10】
図10は、実施の形態3に係る第1電極の拡大断面図である。
【
図11】
図11は、実施の形態4に係る第1電極の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本開示に係る微粒子サンプリング装置および微粒子サンプリング方法は、以下に説明する実施の形態や図面に記載される構成に限定されることを意図せず、それらと同等な構成も含む。以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。また、以下において、平行及び垂直などの要素間の関係性を示す用語、及び、円筒形状などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表すのではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する。以下の各図において、X軸およびY軸は、水平面上で互いに直交する軸である。Z軸は、水平面に垂直な軸である。Z軸において、正の向きは鉛直上向きを表し、負の向きは鉛直下向きを表す。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る微粒子サンプリング装置10の外観を示す斜視図である。
図2は、
図1の微粒子サンプリング装置10の外観を示す側面図である。
図3は、
図1の微粒子サンプリング装置10の内観図であり、
図1のIII-III線断面図である。
図4は、
図1のIV-IV線断面図である。
図5は
図3の第1電極22の拡大図である。
図1から
図5を参照して、実施の形態に係る微粒子サンプリング装置10について説明する。
【0016】
図1に示すように、微粒子サンプリング装置10は、微粒子を液体中にサンプリングする装置である。具体的には、微粒子サンプリング装置10は、気体中の微粒子を液体68(後述)中に捕集することによって、微粒子を液体68中にサンプリングする装置である。例えば、微粒子は、真菌、細菌、ウイルス、およびエアロゾル等を含む。
【0017】
図2及び
図3に示すように、微粒子サンプリング装置10は、ダクト12と、第1フランジ部材18と、第2フランジ部材20と、第1電極22と、第2電極24と、電圧印加部26と、供給部28と、回収部30と、駆動部32とを備える。
【0018】
微粒子サンプリング装置10は、回転する第1電極22と、第1電極22の中心部に配置されている第2電極24とを、ダクト12と第1フランジ部材18と第2フランジ部材20とで囲んで構成されている。
【0019】
微粒子サンプリング装置10の内部に、微粒子サンプリング装置10を挿通するような方向(
図2の矢印Aで示すような方向であり、筒状における長さ方向)で、空気等の気体を通す。例えば、直接、ポンプ(図示せず)等によって微粒子サンプリング装置10内に空気を引き込んで、微粒子サンプリング装置10内に気体を通しても良い。また、例えば、空気等の気体の流れがある空気調和設備、例えば、エアコン、空気清浄機、風導管、換気扇または換気口等に微粒子サンプリング装置10を設置して、微粒子サンプリング装置10内に空気を引き込んで処理しても良い。このように、気体の流れを発生させる装置やそれらに接続される配管に、微粒子サンプリング装置10を取り付けることによって、気体の流れを発生させるためのポンプ等を微粒子サンプリング装置10に組み込む必要がなく、小型、静音、および低圧力損失である装置を容易に実現できる。これによって、比較的場所を選ばず様々な場所に設置、組み込み可能である。
【0020】
以下、微粒子サンプリング装置10の各構成について、
図3を用いて説明する。
図3は、
図1の微粒子サンプリング装置10の内観図であり、
図1のIII-III線断面図である。
【0021】
ダクト12は、筒状であり、ダクト12の内方において、第1電極22を回転可能に支持する。ダクト12は、ダクト本体42と、第1支持部44と、第2支持部46とを有する。ダクト本体42、第1支持部44、および第2支持部46は、絶縁性を有する。つまり、ダクト12は、絶縁性を有し、後述する第1電極22が人体や周辺の部材と電気的に接触し、意図しない通電が起きてしまうことを抑制する。
【0022】
ダクト本体42は、円筒状であり、ダクト本体42の軸心方向の一端部および他端部は、開口している。なお、軸心方向とは、
図2の矢印Aで示すような方向であり、筒状における長さ方向である。ダクト本体42は、後述する第1電極22が人体や周辺の部材と電気的に接触し、意図しない通電が起きてしまうことを抑制する。
【0023】
第1支持部44は、ダクト本体42の軸心方向の一端部からダクト本体42の径方向の外方に突出しており、ダクト本体42と一体的に形成されている。第1支持部44は、ダクト本体42の径方向の外方に突出し、かつ、略U字状である。第1支持部44は、ダクト本体42の軸心方向から見たとき、環状である(
図1参照)。第1支持部44の内方には、第1ベアリングシール14が配置されている。第1支持部44は、第1ベアリングシール14を介して、第1電極22を回転可能に支持している。また、第1支持部44は、第1ベアリングシール14を介して、第1電極22が人体や周辺の部材と電気的に接触し、意図しない通電が起きてしまうことを抑制する。
【0024】
第1ベアリングシール14は、第1支持部44と第1外鍔部58(後述)との間において気体が漏れないように、第1支持部44と第1外鍔部58との間を密閉している。
【0025】
第2支持部46は、ダクト本体42の軸心方向の他端部からダクト本体42の径方向の外方に突出しており、ダクト本体42と一体的に形成されている。第2支持部46は、ダクト本体42の径方向の外方に突出し、かつ、略U字状である。第2支持部46は、ダクト本体42の軸心方向から見たとき、環状である(
図1参照)。第2支持部46の内方には、第2ベアリングシール16が配置されている。第2支持部46は、第2ベアリングシール16を介して、第1電極22を回転可能に支持している。また、第2支持部46は、第2ベアリングシール16を介して、第1電極22が人体や周辺の部材と電気的に接触し、意図しない通電が起きてしまうことを抑制する。
【0026】
第2ベアリングシール16は、第2支持部46と第2外鍔部60(後述)との間において気体が漏れないように、第2支持部46と第2外鍔部60との間を密閉している。
【0027】
第1フランジ部材18は、筒状であり、ダクト12に接続されている。第1フランジ部材18は、第2電極24が人体や周辺の部材と電気的に接触し、意図しない通電が起きてしまうことを抑制する。また、第1フランジ部材18は、必要に応じて外部の風導管や換気扇のフランジ等に固定され、上流から流れてきた空気の全量または一部をサンプリング対象空気として第1電極本体56の内部に導入する。第1フランジ部材18は、第1フランジ部材本体48と、フランジ50とを有する。
【0028】
第1フランジ部材本体48は、円筒状であり、第1フランジ部材本体48の軸心方向の一端部および他端部は、開口している。第1フランジ部材本体48の軸心方向の他端部は、ダクト12の軸心方向の一端部に接続されている。第1フランジ部材本体48は、第2電極24が人体や周辺の部材と電気的に接触し、意図しない通電が起きてしまうことを抑制する。
【0029】
フランジ50は、第1フランジ部材本体48の軸心方向の一端部から第1フランジ部材本体48の径方向の外方に突出しており、第1フランジ部材本体48と一体的に形成されている。フランジ50は、第1フランジ部材本体48の軸心方向から見たとき、環状である。フランジ50は、必要に応じて外部の風導管や換気扇のフランジ等に固定され、上流から流れてきた空気の全量または一部をサンプリング対象空気として第1電極本体56の内部に導入する。
【0030】
第2フランジ部材20は、筒状であり、ダクト12に接続されている。第2フランジ部材20は、第2電極24が人体や周辺の部材と電気的に接触し、意図しない通電が起きてしまうことを抑制する。また、第2フランジ部材20は、必要に応じて外部の風導管や換気扇のフランジ等に固定され、第1電極本体56の内部を通過した空気の全量または一部を下流に導く。第2フランジ部材20は、第2フランジ部材本体52と、フランジ54とを有する。
【0031】
第2フランジ部材本体52は、円筒状であり、第2フランジ部材本体52の軸心方向の一端部および他端部は、開口している。第2フランジ部材本体52の軸心方向の一端部は、ダクト12の軸心方向の他端部に接続されている。第2フランジ部材本体52は、第2電極24が人体や周辺の部材と電気的に接触し、意図しない通電が起きてしまうことを抑制する。
【0032】
フランジ54は、第2フランジ部材本体52の軸心方向の他端部から第2フランジ部材本体52の径方向の外方に突出しており、第2フランジ部材本体52と一体的に形成されている。フランジ54は、第2フランジ部材本体52の軸心方向から見たとき、環状である。フランジ54は、必要に応じて外部の風導管や換気扇のフランジ等に固定され、第1電極本体56の内部を通過した空気の全量または一部を下流に導く。
【0033】
第1電極22は、電圧が印加された場合に、内壁に微粒子を集塵する。第1電極22は、筒状であり、第1電極22の軸心方向の両端部は開口している。第1電極22は、第2電線76(後述)等を介して、グランドに接続されている。
【0034】
第1電極22は、第1電極本体56の軸心Bが水平方向と平行な姿勢で設置されている。第1電極22は、第1電極本体56の軸心B周りに回転可能に支持されている(
図4の矢印C参照)。言い換えると、第1電極22は、自転可能に支持されている。第1電極22は、第1電極本体56の内面66上において、液体68を貯留している。具体的には、第1電極22は、第1電極本体56の軸心B周りの方向(
図4の矢印D参照)における内面66の一部に、液体68を貯留している。貯留されている液体68は、第1電極本体56の軸心BのZ軸方向下方に位置している。液体68は濡れ性に劣る疎水性螺旋部93に弾かれ、濡れ性に優れる親水性螺旋部92において第1電極本体56のX軸方向に濡れ広がる形で貯留される(
図5参照)。第1電極22は、第1電極本体56と、第1外鍔部58と、第2外鍔部60と、第1内鍔部62と、第2内鍔部64とを有する。例えば、第1電極本体56、第1外鍔部58、第2外鍔部60、第1内鍔部62、および第2内鍔部64は、SUS等のステンレス鋼を用いて形成される。
【0035】
第1電極本体56は、円筒状であり、第1電極本体56の軸心方向の一端部101および他端部102は、開口している。第1電極本体56の軸心方向とは、第1電極本体56の軸心Bが延びている方向(X軸方向、筒状における長さ方向)である。第1電極本体56は、第1電極本体56の外周面において、ギア86(後述)の外歯(図示せず)と噛み合う外歯(図示せず)を有する。第1電極本体56内には、サンプリング空間69が形成されている。第1電極本体56の内面66(サンプリング空間69側の表面)には、螺旋状流路91が設けられている。ここで螺旋とは、ダクト本体42の円筒状における内周に沿って、当該ダクト本体42が一回転するごとにダクト本体42の延伸方向に決まった量だけ移動する線である。また螺旋状流路91とは、螺旋に沿って配置され所定の幅をもった流路であるが、詳細は後述する。
【0036】
サンプリング空間69は、第1電極本体56の内部に形成される空間であり、微粒子を集塵する空間である。サンプリング空間69内には、第2電極24が設けられる。また、サンプリング空間69には、供給部28により液体68が供給され、供給された液体により微粒子が捕捉され、回収部30により回収される。
【0037】
ここで、
図6を用いて螺旋状流路91について説明する。
図6は、第1電極22の内面66を示す展開図であり、
図4に示す点αにおいて第1電極22をY軸方向(
図4の奥行方向)に切り開いた展開図である。
【0038】
螺旋状流路91は、第1電極本体56の内面66を一端部101から他端部102まで螺旋状に液体68を導く流路である。具体的には、螺旋状流路91は、円筒状の内面66において、軸心方向における一端部101から他端部102に向けて、軸心方向つまりX軸方向に軌道をずらしながら少なくとも2周以上、内面66を周回するように形成される。言い換えると、螺旋状流路91は、円筒状の内面66の軸心方向の一端部101から他端部102に向けて、少なくとも2周以上周回し、螺旋状となるように形成される。
【0039】
螺旋状流路91は、少なくとも2単位以上の複数の構成単位98が連通することにより形成される。言い換えると、構成単位の一つである構成単位98aは、疎水性螺旋部93の幅方向における中点を結んで設けられる境界線97を介して別の構成単位である構成単位98bと隣接し、それらは互いに螺旋の周回により連通している。螺旋状流路91の構成単位及び境界線97の詳細は後述する。
【0040】
螺旋状流路91は、螺旋状流路91と並行する親水性螺旋部92と疎水性螺旋部93を備えて形成される(
図5参照)。
【0041】
親水性螺旋部92は、親水性を有し、液体68が貯留または送水される部位であり、流路と言い換えることができる。親水性螺旋部92は、疎水性螺旋部93と隣接している。親水性螺旋部92は、内面66に螺旋状のパターンで親水処理を行うことにより形成される。親水処理とは、内面66の一部分の水に対する親和性を高め、水を主成分とする液体68が濡れやすくする処理である。例えば、親水処理は、プラズマ処理によって行われる。また、例えば、親水処理は、水酸化カリウム(KOH)を用いたアルカリ処理や、親水性シリカや酸化チタンを用いた無機系コーティングや、親水性シランカップリング剤やアニオン性ポリマーやカチオン性ポリマーを用いた有機系コーティングによって行われる。
【0042】
疎水性螺旋部93は、疎水性を有し、親水性螺旋部92と、隣接する別の構成単位に属する親水性螺旋部92と、を隔てる部位である。疎水性螺旋部93は親水性螺旋部92と隣接している。疎水性螺旋部93は、内面66に螺旋状のパターンで撥水処理を行うことにより形成される。撥水処理とは、内面66の水に対する親和性を抑制し、水を主成分とする溶液が濡れにくくする処理である。例えば、撥水処理は、疎水性シリカを用いた無機系コーティングよって行われる。また、例えば、撥水処理は、疎水性シランカップリング剤やワックスやフッ素系ポリマーを用いた有機系コーティングによって行われる。
【0043】
ここで、螺旋状流路91の構成単位98について説明する。
図6に示すように、螺旋状流路91は、少なくとも2つ以上の複数の構成単位98(構成単位98a、構成単位98b、構成単位98c、構成単位98d)を有して構成される。構成単位98aと隣り合う別の構成単位である構成単位98bとは、境界線97(
図6の一点鎖線)によって隔てられている。
【0044】
疎水性螺旋部93は、X軸方向における幅の中央に、仮想の線である境界線97を備える。
【0045】
境界線97は、螺旋状流路91の構成単位を決定する。螺旋状流路91の構成単位の1単位は、境界線97が第1電極本体56の内面を一周した始点(
図6の点H)から終点(
図6の点H’)までの領域とする。つまり、構成単位の1単位は、領域L(
図6の黒色領域)に相当する。座標を用いて言い換えると、1単位の始点Hを(X,Y,Z)=(x,y,z)とすると、1単位の終点H’は(X,Y,Z)=(x+G,y,z)と表すことができる。ここで、長さGは、構成単位のX軸方向における長さであり、螺旋の巻き方(境界線97の傾きθ)によって決定される。
【0046】
境界線97の傾きθにより、構成単位のX軸方向の幅Gが決定される。例えば
図6において、境界線97のXY平面における傾きθの絶対値が大きくなると幅Gは小さくなり、傾きθの絶対値が小さくなると幅Gは大きくなる。つまり、傾きθの絶対値が大きくなると螺旋状流路91を構成する構成単位は増加し、傾きθの絶対値が小さくなると螺旋状流路91を構成する構成単位は絶対値が大きい場合と比較して減少する。螺旋状流路91は、2単位以上の構成単位によって形成されるため、第1電極本体56内部のX軸方向における長さをa、Y軸方向における長さをbとすると、境界線97のXY平面における傾きθの絶対値は、2b/a以上となるようにする。
【0047】
ここで、
図5を参照して、螺旋状流路91の構成単位について、構成単位98bを一例として説明する。構成単位98bは、親水性螺旋部92と、疎水性螺旋部93とを備える。構成単位98bは、上流側において隣接する構成単位98aと境界線97により隔てられており、下流側において隣接する構成単位98cと境界線97により隔てられている。なお、
図6では例示的に螺旋状流路91が4つの構成単位によって構成されているとしたが、この限りではなく、前述のとおり、少なくとも2つ以上の構成単位が連通するように構成されればよい。
【0048】
図3に戻る。第1外鍔部58は、第1電極本体56の軸心方向の一端部から第1電極本体56の径方向の外方に突出しており、第1電極本体56と一体的に形成されている。第1外鍔部58は、第1電極本体56の軸心B周りに環状である。すなわち、第1外鍔部58は、第1電極本体56の軸心方向から見たとき、環状である。第1外鍔部58は、第1ベアリングシール14の内方に配置されている。第1外鍔部58は、その外表面で第1ベアリングシール14と接し、内表面で第1内鍔部62と接している。
【0049】
第2外鍔部60は、第1電極本体56の軸心方向の他端部から第1電極本体56の径方向の外方に突出しており、第1電極本体56と一体的に形成されている。第2外鍔部60は、第1電極本体56の軸心B周りに環状である。すなわち、第2外鍔部60は、第1電極本体56の軸心方向から見たとき、環状である。第2外鍔部60は、第2ベアリングシール16の内方に配置されている。第2外鍔部60は、その外表面で第2ベアリングシール16と接し、内表面で第2内鍔部64と接している。
【0050】
第1内鍔部62は、第1電極本体56の軸心方向の一端部から第1電極本体56の径方向の内方に突出しており、第1電極本体56と一体的に形成されている。第1内鍔部62は、第1電極本体56の軸心B周りに環状である。すなわち、第1内鍔部62は、第1電極本体56の軸心方向から見たとき、環状である。第1内鍔部62は、第1電極本体56の内面66の一部に貯留された液体68が、第1電極本体56の軸心方向の一端部からこぼれないように、液体68を保持している。
【0051】
第2内鍔部64は、第1電極本体56の軸心方向の他端部から第1電極本体56の径方向の内方に突出しており、第1電極本体56と一体的に形成されている。第2内鍔部64は、第1電極本体56の軸心B周りに環状である。すなわち、第2内鍔部64は、第1電極本体56の軸心方向から見たとき、環状である。第2内鍔部64は、第1電極本体56の内面66の一部に保持された液体68が、第1電極本体56の軸心方向の他端部からこぼれないように、液体68を保持している。
【0052】
第2電極24は、線状であり、第1電極22の第1電極本体56の軸心方向に延びる。第2電極24は、第1電極22の第1電極本体56の径方向の内方を挿通しており、第1電極本体56の内方に位置している。第2電極24は、第1電極本体56の軸心方向において、第1電極本体56の一端部101よりも外方に突出しており、第1電極本体56の他端部102よりも外方に突出している。これにより、第1電極22の回転を阻害することなく、第2電極24を固定可能となる。第2電極24は、第1電極22の第1電極本体56の内面66と間隔を空けて配置されており、第1電極22の中心近傍に配置されている。第2電極24は、サンプリング空間69内に配置されている。本実施の形態では、第2電極24は、第2電極24の軸心が第1電極22の第1電極本体56の軸心Bと一致する姿勢で設置されている。例えば、第2電極24は、タングステン等によって形成されている。
【0053】
電圧印加部26は、第1電極22と第2電極24との間に電圧を印加する。電圧印加部26は、第1支持体70と、第2支持体72と、第1電線74と、第2電線76とを有する。
【0054】
第1支持体70は、第1電極22の回転を阻害しないよう、ダクト12の端部よりX軸方向外側に設けられる第1フランジ部材18に固定されており、一端部が第1フランジ部材18の内方に位置し、他端部が第1フランジ部材18の外表面から突出している。第1支持体70は、一端部が第2電極24の軸心方向の一端部に接続されており、第2電極24を支持している。
【0055】
第2支持体72は、第1電極22の回転を阻害しないよう、ダクト12の端部よりX軸方向外側に設けられる第2フランジ部材20に固定されており、一端部が第2フランジ部材20の内方に位置し、他端部が第2フランジ部材20の外表面から突出している。第2支持体72は、一端部が第2電極24の軸心方向の他端部に接続されており、第2電極24を支持している。
【0056】
第1支持体70および第2支持体72は、導電性を有し、第2電極24と電気的に接続されている。
【0057】
第1電線74は、第2支持体72を介して、第2電極24に電気的に接続されている。
【0058】
第2電線76は、ギア86等を介して、第1電極22に電気的に接続されている。
【0059】
電圧印加部26は、第1電極22と、第1電極22の中心付近に設置した第2電極24とに、第1電線74および第2電線76を通して任意の大きさおよび波形の電気を流すことが可能である。これによって、微粒子サンプリング装置10は、微粒子の電気集塵を行う。
【0060】
なお、第2電極24の構造は、線状でなくてもよく、板状のものや針状のもの等でもよく、構造や設置位置に限定はなく、不平等な電界を形成することが可能であればよい。例えば、電圧印加部26は、コンバータ等を含む電源回路等によって実現される。また、例えば、電圧印加部26は、6[kV]の直流電圧を印加する。例えば、電圧印加部26は、第2電極24側が第1電極22側よりも高電位となるように、第1電極22と第2電極24との間に電圧を印加する。これによって、サンプリング空間69内において、第2電極24から第1電極22に向かって電界が発生する(
図4の矢印E参照)。
【0061】
供給部28は、第1電極22内に液体68を供給する。供給された液体68は、第1電極22の軸心B周りの方向における内面66の一部に貯留される。言い換えると、供給部28は、第1電極22の軸心B周りの方向における内面66の一部に液体68を貯留させるために、第1電極22内に液体68を供給する。供給部28は、タンク78と、注入部80とを有する。
【0062】
タンク78は、第1電極22内に供給するための液体68を保持している。
【0063】
注入部80は、タンクに保持された液体68を第1電極本体56の内面66に供給する。つまり、タンク78に保持された液体68は、ポンプ(図示せず)等によって注入部80から吐出され、第1電極22の第1電極本体56内に供給される。注入部80から供給された液体68は内面66に配置された螺旋状流路91の内面66のうち比較的濡れ性が高い親水性螺旋部92に速やかに局在し、第1電極22の回転により螺旋状流路91に沿って移動する。注入部80は、第1電極22の軸心方向についていずれの位置に設置されても良いが、第1電極22が一方向にのみ回転するよう制御される場合には、注入部80は、液体68が螺旋状流路91上で液体68が移動する上流側の第1電極22の端部付近に配置されることが好ましい。このようにすることで、液体68が第1電極22内を往復せず一方向に送水される場合でも、第1電極22の一端部から他端部(あるいは他端部から一端部)まで液体68を供給することができる。したがって、第1電極22の内面66に付着した微粒子を広範囲にわたって回収することができる。
【0064】
このように、インフルエンザウイルスセンシング用の捕集液等の液体68をあらかじめ溜めておくためのタンク78が設置されており、注入部80を通して、第1電極22の内部に液体68が供給される。本実施の形態では、供給部28は、微粒子の分析のための液体を、液体68として供給する。例えば、微粒子の分析のための液体とは、分析に用いられる液体、分析のために微粒子に含まれる標的物質の活性を維持する液体、分析のために微粒子に含まれる標的物質に標識等を付与する液体、分析のために微粒子に含まれる標的物質を保護する液体、または、それらの任意の組合せを意味する。例えば、標的物質がインフルエンザウイルスである場合、液体68として、生理食塩水、PBS緩衝液、EDTA緩衝液、重炭酸緩衝液といった溶解および保存を目的とした液体、またはウイルスに特異的に結合して磁性や蛍光を発する物質を含む液体等を用いることができる。なお、液体68は、微粒子の分析のための液体でなくてもよく、例えば、純水や水道水であってもよい。なお、標的物質は、インフルエンザウイルスに限定されない。例えば、標的物質は、コロナウイルス等の他のウイルスであってもよく、ウイルス以外の生体(例えば菌)であってもよい。また、標的物質は、生体でなくてもよく、環境汚染物質またはアレルゲン等であってもよい。
【0065】
回収部30は、第1電極22の軸心B周りの方向における内面66の一部に貯留された液体68を回収する。回収部30は、タンク82と、抽出部84とを有する。
【0066】
タンク82は、第1電極22内を送水された液体を保持する。
【0067】
抽出部84は、第1電極22内の液体68を回収し、タンク82に送水する。
【0068】
つまり、第1電極22の軸心B周りの方向における内面66の一部に貯留された液体68は、ポンプ(図示せず)や液体68の自重等によって抽出部84から吸引され、タンク82内に保持され、回収される。このように、微粒子が蓄積された捕集液等の液体68は、抽出部84を通して吸引され、タンク82に保持される。抽出部84は第1電極22の軸心方向についていずれの位置に設置されても良いが、第1電極22が一方向にのみ回転するよう制御される場合には、抽出部84は液体68が螺旋状流路91で液体68が移動する下流側の第1電極22の端部付近に配置されることが好ましい。このようにすることで、液体68が第1電極22内を往復せず一方向に送水される場合でも、第1電極22の一端部から他端部(あるいは他端部から一端部)まで送水された液体68を供給することができる。したがって、第1電極22の内面66に付着した微粒子を広範囲にわたって回収することができる。
【0069】
駆動部32は、第1電極22を、第1電極22の第1電極本体56の軸心方向に延びかつ第1電極22内を通る回転軸線周りに回転させる。本実施の形態では、当該回転軸線は、第1電極本体56の軸心Bと一致している。すなわち、本実施の形態では、駆動部32は、第1電極22を、第1電極22の第1電極本体56の軸心B周りに回転させる。本実施の形態では、駆動部32は、液体68が、第1電極22の一端から他端に送水されるように第1電極22を回転させる順駆動を行う。駆動部32は、ギア86と、ギア86を回転させるためのモータ88とを有する。
【0070】
ギア86は、第1電極22の外歯(図示せず)と噛み合う外歯(図示せず)を有する。モータ88によってギア86が回転(
図4の矢印F参照)することによって、第1電極22は、第1電極本体56に軸心B周りに回転する(
図4の矢印C参照)。このように、第1電極22は、モータ88によって駆動されたギア86によって回転する。
【0071】
以上が微粒子サンプリング装置10の構成である。
【0072】
次に、以上のように構成された微粒子サンプリング装置10の動作について、
図7及び
図8を用いて説明する。
図7は、微粒子サンプリング装置10の動作の一例を示すフロー図である。
図8は、
図1のIII-III線断面図であり、微粒子サンプリング装置10の動作の一例を説明するための説明図であり、微粒子サンプリング装置10の内部での、ウイルスが実際に回収されるまでの当該ウイルスの動きを示す図である。
【0073】
図7および
図8を参照して、本実施の形態における、インフルエンザウイルスの捕集、インフルエンザウイルス1の液中回収、および液体68の回収の流れを含む、微粒子サンプリング装置10の動作の一例について説明する。ここでは、空気感染が起こると考えられているインフルエンザウイルス1を、センサ等で分析可能な液体サンプルとして回収することを目的として、微粒子サンプリング装置10による液中捕集を行う。
【0074】
まず、供給部28は、第1電極22内に液体68を供給し、第1電極22の軸心B周りの方向における内面66の一部に液体68を貯留させる(供給ステップ:ステップS1)。
【0075】
第1電極22の第1電極本体56内に液体68が供給されると、第1電極22の第1電極本体56の軸心B周りの方向における内面66の一部に液体68が貯留される。この時、液体68は軸心Bの下方の比較的濡れにくい疎水性螺旋部93を避け、濡れやすい親水性螺旋部92に局在する。液体68は、疎水性螺旋部93により隣接する別の構成単位である螺旋状流路91に漏れることを防がれる一方で、親水性螺旋部92のX軸方向には十分に濡れ広がる(
図5参照)。
【0076】
次に、電圧印加部26は、第1電極22と第2電極24との間に電圧を印加する(電圧印加ステップ:ステップS2)。電圧が印加されると、矢印A方向への空気の流れによって微粒子サンプリング装置10の内部であるサンプリング空間69へと導入された気体中のインフルエンザウイルス1は、まず、高電圧が印加された第2電極24の放電により放出されるイオン2によって正負どちらかに荷電される。
【0077】
ここでは、インフルエンザウイルス1が、正に荷電される場合について説明する。帯電(荷電)状態となったインフルエンザウイルス1は、第2電極24と第1電極22との間に略Z軸方向に形成された電界(
図4の矢印E)によって、軌跡3のように移動し、第1電極22の内面66へと集塵される。このように、インフルエンザウイルス1は、第1電極22の内面66に付着し、内面66上に捕集される。なお、軌跡3は、例えば第2電極24から第1電極22へと向かう指数関数的な曲線の軌跡である。
【0078】
次に、駆動部32は、第1電極22を、軸心B周りに回転させる(駆動ステップ:ステップS3)。第1電極22は、第1電極22の第1電極本体56の軸心B周りの方向における内面66の一部に液体68を貯留した状態で、軸心B周りに回転する。なお、この回転は、駆動部32による順駆動の結果起こる回転であり、この回転により、液体68が第1電極22の一端から矢印J方向に送水され、他端まで送水される。詳細には、この操作によって、第1電極22の内面66のうち親水性螺旋部92は、順次、貯留されている液体68に接触する。言い換えると、液体68は、螺旋状流路91の特に親水性螺旋部92上を周回する。親水性螺旋部92は内面66の軸心方向の一端部101から他端部102までを連通するため、液体68は内面66の軸心方向の一端部101から他端部102までの広範囲を移動する。親水性螺旋部92に集塵されたインフルエンザウイルス1は、第1電極22の第1電極本体56内に貯留されている液体68で回収される。具体的には、親水性螺旋部92に付着したインフルエンザウイルス1は、親水性螺旋部92のX軸方向に濡れ広がった液体68に接触することによって、内面66から離れ、液体68中に回収される。
【0079】
なお、液体68はステップS1において親水性螺旋部92の構成単位一単位のX軸方向に濡れ広げられる最小量が供給されていればよく、親水性螺旋部92の構成単位一単位のX軸方向の幅Gが狭いほど、すなわち螺旋状流路91及び親水性螺旋部92の周回数を増やすほど液体68の供給量を減らすことができる。そのため、液体68の供給量が多い場合と比較し、サンプリングに要する時間の短縮や、吸引による圧力損失や騒音を低減できる。
【0080】
なお、内面66のうち疎水性螺旋部93に集塵されたインフルエンザウイルスは液体68で回収することが困難であるため、親水性螺旋部92の占有面積は疎水性螺旋部93の占有面積より大きいことが好ましい。また、第1電極22と第2電極24との間に電圧を印加する前に、第1電極22を軸心B周りに回転させておき、第1電極22を軸心B周りに回転させた状態で、第1電極22と第2電極24との間に電圧を印加してもよい。
【0081】
最後に、回収部30は、貯留されている液体68を回収する(回収ステップ:ステップS4)。例えば、液体68はモータ88の回転により、
図8のX方向について抽出部84に十分近づけられ、抽出部84を通して回収部30(タンク82)へと回収可能であり、気体中から分離されたインフルエンザウイルス1が含まれる液体サンプルを得ることができる。
【0082】
このようにして、微粒子サンプリング装置10では、気体中の微粒子を液中へ回収する。
【0083】
以上、本実施の形態1に係る微粒子サンプリング装置10によれば、以下の効果を享受することができる。
【0084】
(1)微粒子サンプリング装置10は、筒状で内部にサンプリング空間を有する第1電極22と、筒状における長さ方向に沿ってサンプリング空間内に設けられる第2電極24と、第1電極22と第2電極24との間に電圧を印加する電圧印加部26と、サンプリング空間内に長さ方向に沿って設けられる回転軸を中心に第1電極22を回転させる駆動部32と、サンプリング空間に液体68を供給する供給部28と、サンプリング空間に貯留された液体68を回収する回収部30と、を備え、第1電極22は、サンプリング空間側の表面に液体68を導く螺旋状流路91を有する。このような構成とすることにより、第1電極22の回転時に液体68は螺旋状流路91に導かれて第1電極22表面の広範囲を移動することができる。したがって、第1電極22の表面の広範囲に捕集された微粒子を少量の液体68で回収することができ、サンプリングに要する時間の短縮や、吸引による圧力損失や騒音の低減ができる。また、微粒子が生物やウイルスであった場合にも、活性を維持したまま液体68中に回収することができる。
【0085】
(2)微粒子サンプリング装置10は、螺旋状流路91が、表面が親水性である親水性螺旋部92で構成されている。このような構成とすることにより、第1電極22の下部に貯留された液体68を親水性螺旋部92の表面に選択的に局在させ、第1電極22を回転させた際に液体68を親水性螺旋部92に沿って移動させることができる。したがって、第1電極22を回転させた際に液体68をより確実に螺旋状流路91に沿って移動させることができ、少量の液量で微粒子を回収することができる。
【0086】
(3)微粒子サンプリング装置10は、螺旋状流路91が、表面が疎水性である疎水性螺旋部93で構成されている。このような構成とすることにより、第1電極22の下部に貯留された液体68を疎水性螺旋部93で挟まれた部分に選択的に局在させ、第1電極22を回転させた際に液体68を疎水性螺旋部93に沿って移動させることができる。したがって、第1電極22を回転させた際に液体68をより確実に螺旋状流路91に沿って移動させることができ、少量の液量で微粒子を回収することができる。
【0087】
(4)微粒子サンプリング装置10は、螺旋状流路91は、表面が親水性である親水性螺旋部92と、表面が疎水性である疎水性螺旋部93と、を備える。このような構成とすることにより、液体68が親水性螺旋部92の外部に漏出しても、疎水性螺旋部93の撥水効果により隣接する親水性螺旋部92にまで漏れ出すことを防ぐことができる。したがって、第1電極22を回転させた際に液体68を螺旋状流路91に確実に沿って移動させることができ、少量の液量で微粒子を回収することができる。
【0088】
(5)微粒子サンプリング装置10は、親水性螺旋部92と疎水性螺旋部93とが隣接して形成される。このような構成とすることにより、液体68が親水性螺旋部92の外部に漏出することを疎水性螺旋部93の撥水効果によりより抑制でき、液体を親水性螺旋部上に留めることができる。したがって、第1電極22を回転させた際に液体68を螺旋状流路91に確実に沿って移動させることができ、少量の液量で微粒子を回収することができる。
【0089】
(6)微粒子サンプリング装置10は、親水性螺旋部92は、疎水性螺旋部93よりも表面の占有割合が大きくてもよい。このような構成とすることにより、螺旋状流路91上に集塵された微粒子について、疎水性螺旋部93上に集塵される微粒子の量に対し、親水性螺旋部92上に集塵される微粒子の量を多くできる。疎水性螺旋部93は撥水性を有し、親水性螺旋部92は親水性を有しているため、親水性螺旋部92上の微粒子の量を多くすることで、少量の液量で多くの微粒子を回収することができ、回収効率を向上させることができる。
【0090】
(7)微粒子サンプリング装置10は、空気調和設備の一部としてもよい。このような構成とすることにより、空気等の気体の流れがあるエアコン、空気清浄機、風導管、換気扇または換気口等に微粒子サンプリング装置10を設置して、微粒子サンプリング装置10内に空気を引き込むことができる。したがって、微粒子サンプリング装置10に気体の流れを発生させるためのポンプ等を組み込む必要がなくなる。
【0091】
(実施の形態2)
以下、
図9を用いて、実施の形態2の微粒子サンプリング装置10bを説明する。本実施の形態の微粒子サンプリング装置10bと実施の形態1の微粒子サンプリング装置10とは、多くの点で、同一の構成を有している。そのため、以下においては、本実施の形態の微粒子サンプリング装置10bと実施の形態1の微粒子サンプリング装置10との異なる構成について主に説明する。本実施の形態の微粒子サンプリング装置10bは、疎水性螺旋部93を有していない点において、実施の形態1の微粒子サンプリング装置10と相違している。
【0092】
本実施の形態の微粒子サンプリング装置10bは、螺旋状流路91Bを備える。螺旋状流路91Bは、親水性螺旋部92と未処理螺旋部94とで構成されている。未処理螺旋部94は、内面66のうち親水処理も撥水処理も施されていない部分であり、親水性螺旋部92と隣接している。未処理螺旋部94は、X軸方向における幅の中央に、仮想の線である境界線97を備える。境界線97は、螺旋状流路91Bの構成単位を決定する仮想線である。境界線97の詳細は、実施の形態1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0093】
供給部28により内面66に導入された液体68は、第1電極22の下部において比較的濡れやすい親水性螺旋部92に局在する。この状態で、第1電極22を回転させると、液体68は、螺旋状流路91Bの構成単位98の特に親水性螺旋部92上を、隣接する構成単位98に漏れることなく周回する。例示すると、構成単位98eの親水性螺旋部92上の液体は、隣接する構成単位98fに漏れることなく周回する。これは、未処理螺旋部94よりも親水処理が施されている親水性螺旋部92の方が液体との親和性が高いためである。これにより、第1電極22の内面66のうち親水性螺旋部92は、順次、貯留されている液体68に接触する。親水性螺旋部92に集塵されたインフルエンザウイルス1は、第1電極22の第1電極本体56内に貯留されている液体68で回収される。具体的には、親水性螺旋部92に付着したインフルエンザウイルス1は、貯留されている液体68に接触することによって、内面66から離れ、液体68中に回収される。
【0094】
以上、実施の形態2に係る微粒子サンプリング装置10bによれば、実施の形態1の効果(1)、(2)、(6)、(7)に加え、以下の効果を享受することができる。
【0095】
(8)微粒子サンプリング装置10bでは、螺旋状流路91は、表面が親水性である親水性螺旋部92と、未処理螺旋部94と、を備える。このような構成とすることにより、液体との親和性の違いにより、液体68はより親水性である親水性螺旋部92上に局在する。したがって、第1電極22を回転させた際に、液体68が親水性螺旋部92上を流通し、第1電極22内部を螺旋状に流通するため、少ない液量で微粒子を回収することができる。
【0096】
(実施の形態3)
以下、
図10を用いて、実施の形態3の微粒子サンプリング装置10cを説明する。本実施の形態の微粒子サンプリング装置10cと実施の形態1の微粒子サンプリング装置10とは、多くの点で、同一の構成を有している。そのため、以下においては、本実施の形態の微粒子サンプリング装置10cと実施の形態1の微粒子サンプリング装置10との異なる構成について主に説明する。本実施の形態の微粒子サンプリング装置10cは、親水性螺旋部92を有していない点において、実施の形態1の微粒子サンプリング装置10と相違している。
【0097】
本実施の形態の微粒子サンプリング装置10cは、螺旋状流路91Cを備える。螺旋状流路91Cは、疎水性螺旋部93と未処理螺旋部94とで構成されている。未処理螺旋部94は、内面66のうち親水処理も撥水処理も施されていない部分であり、疎水性螺旋部93と隣接している。疎水性螺旋部93は、X軸方向における幅の中央に、仮想の線である境界線97を備える。境界線97は、螺旋状流路91Cの構成単位を決定する仮想線である。境界線97の詳細は、実施の形態1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0098】
供給部28により内面66に導入された液体68は、第1電極22の下部において比較的濡れにくい疎水性螺旋部93を避け、未処理螺旋部94に局在する。この状態で、第1電極22を回転させると、液体68は、螺旋状流路91Cの構成単位98の特に未処理螺旋部94上を、隣接する構成単位98に漏れることなく周回する。例示すると、構成単位98gの未処理螺旋部94上の液体は、隣接する構成単位98hに漏れることなく周回する。これは、撥水処理が施されている疎水性螺旋部93よりも未処理螺旋部94の方が液体との親和性が高いためである。これにより、未処理螺旋部94は、順次、貯留されている液体68に接触する。未処理螺旋部94に集塵されたインフルエンザウイルス1は、第1電極22の第1電極本体56内に貯留されている液体68で回収される。具体的には、未処理螺旋部94に付着したインフルエンザウイルス1は、貯留されている液体68に接触することによって、内面66から離れ、液体68中に回収される。
【0099】
以上、実施の形態3に係る微粒子サンプリング装置10cによれば、実施の形態1の効果(1)、(3)、(6)、(7)に加え、以下の効果を享受することができる。
【0100】
(9)微粒子サンプリング装置10cでは、螺旋状流路91は、表面が疎水性である疎水性螺旋部93と、未処理螺旋部94と、を備える。このような構成とすることにより、液体との親和性の違いにより、液体68はより親水性である未処理螺旋部94上に局在する。したがって、第1電極22を回転させた際に、液体68が未処理螺旋部94上を流通し、第1電極22内部を螺旋状に流通するため、少ない液量で微粒子を回収することができる。
【0101】
(実施の形態4)
以下、
図11を用いて、実施の形態4の微粒子サンプリング装置10dを説明する。本実施の形態の微粒子サンプリング装置10dと実施の形態1の微粒子サンプリング装置10とは、多くの点で、同一の構成を有している。そのため、以下においては、本実施の形態の微粒子サンプリング装置10dと実施の形態1の微粒子サンプリング装置10との異なる構成について主に説明する。本実施の形態の微粒子サンプリング装置10dは、第1電極22の内面66に形成された螺旋状凹部95と螺旋状凸部96が螺旋状流路91を形成している点が、実施の形態1の微粒子サンプリング装置10と相違している。
【0102】
本実施の形態の微粒子サンプリング装置10dは、螺旋状流路91Dを備える。螺旋状流路91Dは、螺旋状凹部95と螺旋状凸部96とで構成されている。
【0103】
螺旋状凹部95は、螺旋状凸部96と比較して、Z軸方向の厚みが薄い部位である。
【0104】
螺旋状凸部96は、螺旋状凹部95と比較して、Z軸方向の厚みが厚い部位である。螺旋状凸部96は、X軸方向における幅の中央に、仮想の線である境界線97を備える。境界線97は、螺旋状流路91Dの構成単位を決定する仮想線である。境界線97の詳細は、実施の形態1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0105】
螺旋状凹部95と螺旋状凸部96とは、互いに隣接している。
【0106】
供給部28により内面66に導入された液体68は、第1電極22の下部において高さが比較的高い螺旋状凸部96を避けて存在し、高さが比較的低い螺旋状凹部95に局在する。この状態で、第1電極22を回転させると、液体68は、螺旋状流路91Dの構成単位98の特に螺旋状凹部95上を、隣接する構成単位98に漏れることなく周回する。例示すると、構成単位98iの螺旋状凹部95上の液体は、隣接する構成単位98jに漏れることなく周回する。これは、螺旋状凸部96が壁となり、構成単位98iの螺旋状凹部95と構成単位98jの螺旋状凹部95とを隔てるためである。これにより、第1電極22の内面66のうち螺旋状凹部95は、順次、貯留されている液体68に接触する。螺旋状凹部95に集塵されたインフルエンザウイルス1は、第1電極22の第1電極本体56内に貯留されている液体68で回収される。具体的には、螺旋状凹部95に付着したインフルエンザウイルス1は、貯留されている液体68に接触することによって、内面66から離れ、液体68中に回収される。
【0107】
以上、実施の形態4に係る微粒子サンプリング装置10dによれば、実施の形態1の効果(1)、(6)、(7)に加え、以下の効果を享受することができる。
【0108】
(10)微粒子サンプリング装置10dの構成単位98dは、表面に形成された螺旋状凹部95を備える。このような構成とすることにより、表面処理や表面コーティングを必要としない簡素な製造工程で螺旋状流路91Dを形成することが可能となる。また、第1電極22の回転時に、液体68は、螺旋状凹部95に流れ、螺旋状流路91Dに導かれて第1電極22の表面の広範囲を移動することができる。したがって、第1電極22の表面の広範囲に捕集された微粒子を少量の液体68で回収することができる。
【0109】
(実施の形態5)
本実施の形態の微粒子サンプリング装置10eと実施の形態1の微粒子サンプリング装置10とは、多くの点で、同一の構成を有している。そのため、以下においては、本実施の形態の微粒子サンプリング装置10eと実施の形態1の微粒子サンプリング装置10との異なる構成について主に説明する。本実施の形態5に係る微粒子サンプリング装置10eは、液体68が回収部30に回収される前に、供給部28によって次のサンプリングに用いる別の液体68aが供給される点で、実施の形態1と異なる。
【0110】
まず、供給部28により、液体68が第1電極22の内面66に供給される。以降では、一例として、液体68が構成単位98aに供給された場合について説明する。構成単位98aに供給された液体68は、第1電極22の回転により、第1電極22内を流通し、構成単位98bへと送水される。供給部28は、液体68が構成単位98aから構成単位98bへと送水されたタイミングで、液体68とは異なる液体68aを構成単位98aに供給する。言い換えると、供給部28は、先に供給した液体68が供給時の螺旋状流路91とは異なる螺旋状流路91に送水されたタイミングで、新たな液体68aを供給時の螺旋状流路91に供給する。構成単位98aに存在する液体68aと構成単位98bに存在する液体68とは、疎水性螺旋部93の撥水性により、混合が抑制される。これにより、第1電極22の内面66に集塵された微粒子を順次供給される液体68によって速やかに回収する運転が可能になる。したがって、第1電極22の内面66に集塵された微粒子を長時間乾燥に曝すことなく回収可能であるため、微粒子の劣化を抑制することができる。また、液体68及び当該液体とは異なる液体68aとを混合することなく回収可能である。なお、液体68は、第1電極22内を流通し、構成単位98b、構成単位98c、構成単位98d、・・・、構成単位91nと、回収部30付近まで送水される。したがって、供給部28が液体68aを供給するタイミングは、必ずしも液体68が構成単位98aから構成単位98bへと送水されたタイミングでなくてもよく、例えば液体68が構成単位98cに存在するタイミングであってもよいし、構成単位98dに存在するタイミングであってもよい。螺旋状流路91の構成単位の数によってnは変化する。
【0111】
以上、実施の形態5に係る微粒子サンプリング装置10eによれば、実施の形態1の効果(1)~(7)に加え、以下の効果を享受することができる。
【0112】
(11)微粒子サンプリング装置10eは、供給部28は、螺旋状流路91に液体68が残っている状態で、当該螺旋状流路91に隣接する他螺旋状流路91の上流側に、当該液体68とは異なる他液体68aを供給する。このような構成とすることにより、集塵された微粒子が液体68に取り込まれるまでの時間を短くすることができる。したがって、微粒子が乾燥状態に曝されて劣化することを抑制できる。
【0113】
(実施の形態6)
本実施の形態の微粒子サンプリング装置10fと実施の形態1の微粒子サンプリング装置10とは、多くの点で、同一の構成を有している。そのため、以下においては、本実施の形態の微粒子サンプリング装置10fと実施の形態1の微粒子サンプリング装置10との異なる構成について主に説明する。本実施の形態5に係る微粒子サンプリング装置10fは、駆動部32が、順駆動だけでなく逆駆動も行う点で、実施の形態1と異なる。
【0114】
駆動部32は、第1電極22を、第1電極22の第1電極本体56の軸心方向に延びかつ第1電極22内を通る回転軸線周りに回転させる。本実施の形態では、当該回転軸線は、第1電極本体56の軸心Bと一致しているため、駆動部32は、第1電極22を、第1電極22の第1電極本体56の軸心B周りに回転させる。駆動部32は、液体68が第1電極22の一端から他端に送水されるように第1電極22を回転させる順駆動と、液体68が第1電極22の他端から一端に送水されるように第1電極22を回転させる逆駆動とを行う。駆動部32は、ギア86と、ギア86を回転させるためのモータ88とを有する。
【0115】
駆動部32は、液体68が第1電極の一端から他端に送水されるように第1電極22を一方向(順方向)に回転させる順駆動を行う。順駆動により、液体68は、螺旋状流路91を流通し、供給された端部とは逆側の端部に送水される。この操作によって、液体68は、螺旋状流路91の特に親水性螺旋部92上を流通する。親水性螺旋部92は内面66の軸心方向の一端部から他端部までを連通するため、液体68は内面66の軸心方向の一端部から他端部までの広範囲を移動する。
【0116】
駆動部32は、任意のタイミングで回転を順駆動から逆駆動へと切替える。逆駆動とは、順駆動とは逆方向に第1電極22を回転させる運転状態である。逆駆動により、液体68は、螺旋状流路91を流通し、下流側から上流側へと送水される。なお、上流側とは駆動部32の順駆動により液体68が送水される場合の上流側を示し、下流側とは駆動部32の順駆動により液体68が送水される場合の下流側を示す。また、順駆動と逆駆動とを切替えるタイミングとしては、例えば、液体68が螺旋状流路91の一端あるいは他端に到達したタイミングとすればよい。
【0117】
順駆動と逆駆動とを切替えることにより、注入部80の配置は送水方向の上流側に限定されることなく、また、抽出部84の配置は送水方向の下流側に限定されることなく、それぞれ任意の位置に配置する設計が可能になる。また、長さ方向(X軸方向)における往復回数を自在に設定できるようになり、第1電極22の内面66に集塵された微粒子を長時間乾燥に曝すことの無い運転が可能になる。
【0118】
以上、実施の形態6に係る微粒子サンプリング装置10fによれば、実施の形態1の効果(1)~(7)に加え、以下の効果を享受することができる。
【0119】
(12)微粒子サンプリング装置10は、駆動部32は、液体68が、筒状における長さ方向において第1電極22の一端から他端に送水されるように第1電極22を回転させる順駆動と、液体が、筒状における長さ方向において第1電極22の他端から一端に送水されるように第1電極22を回転させる逆駆動と、を行ってもよい。このような構成とすることにより、液体68を筒状における長さ方向のどちらの方向にも移動させることが可能になる。したがって、液体68が供給されてから抽出されるまでの液体の長さ方向における往復回数を自在に設定できるようになる。
【0120】
以上、本発明に関して実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されているところである。
【0121】
上述した実施の形態では、螺旋状流路91及び境界線97が第1電極22の内面66を螺旋状に周回する間隔は、一定であるとしたが、これに限られない。例えば、特に第1電極22が一方向にのみ回転するよう制御される場合には、X軸方向における同一直線上において、液体68が送水される下流側の螺旋状流路91間の間隔は、上流側における螺旋状流路91間の間隔よりも短くすることが好ましい。言い換えると、
図6に示す幅Gの値は、上流側である構成単位98aよりも、下流側である構成単位98dで小さくなることが好ましい。幅Gが小さくなることにより、親水性螺旋部92に広がるための液体68の必要量を低減可能である。したがって、液体68が送水される間に蒸発等により液量が減った場合においても、少ない液量でも狭い親水性螺旋部92内で濡れ広がることができるため、液体68が接触しなくなる螺旋状流路91の面積を減らすことができる。
【0122】
上述した実施の形態では、第1電極22の第1電極本体56が、円筒状である場合について説明したが、これに限定されない。例えば、第1電極の本体は、楕円筒、または多角筒等であってよい。このようにしても、少ない液体68によって、内面66に付着した微粒子を回収することができる。
【0123】
上述した実施の形態では、第1電極22が、第1電極本体56の軸心Bが水平方向と平行な姿勢で設置されている場合について説明したが、これに限定されず、第1電極22は、第1電極本体56の軸心Bが水平方向と平行な姿勢で設置されていなくてもよい。例えば、第1電極22は、第1電極本体56の軸心Bが水平方向に対して傾いた姿勢で設置されていてもよく、螺旋状流路91に貯留された液体68が隣の螺旋状流路91に流出しないように貯留できればよい。このようにしても同様に第1電極22の表面の広範囲に捕集された微粒子を少量の液体68で回収することができる。
【0124】
上述した実施の形態では、第2電極24が、第2電極24の軸心が第1電極22の第1電極本体56の軸心Bと一致する姿勢で設置されている場合について説明したが、これに限定されず、第2電極24は、第2電極24の軸心が第1電極22の第1電極本体56の軸心Bと一致する姿勢で設置されていなくてもよい。例えば、第2電極24は、第2電極24の軸心が第1電極本体56の軸心Bに対して傾いた姿勢で設置されていてもよく、少なくとも第1電極22の第1電極本体56の軸心方向に延びていればよい。このようにしても同様に第1電極22の内面66に微粒子を集塵することができる。また、例えば、第2電極24は、第2電極24の軸心が第1電極22の第1電極本体56の軸心Bと一致しておらず、第2電極24の軸心が第1電極22の第1電極本体56の軸心Bと平行となる姿勢で設置されていてもよい。このようにしても同様に第1電極22の内面66に微粒子を集塵することができる。
【0125】
上述した実施の形態では、第2電極24が、線状である場合について説明したが、これに限定されない。例えば、第2電極は、板状または針状等であってもよい。このようにしても同様に第1電極22の内面66に微粒子を集塵することができる。
【0126】
上述した実施の形態では、1個の第2電極24が、第1電極22内に配置される場合について説明したが、これに限定されない。例えば、複数の第2電極が、第1電極内に配置されてもよい。このようにしても同様に第1電極22の内面66に微粒子を集塵することができる。
【0127】
上述した実施の形態では、第2電極24が、第1電極本体56の一端部よりも外方に突出しており、第1電極本体56の他端部よりも外方に突出している場合について説明したが、これに限定されない。例えば、第2電極24の長さは、第1電極本体56の長さと同一でもよいし、第1電極本体56の長さより短くてもよい。このようにしても同様に第1電極22の内面66に微粒子を集塵することができる。
【0128】
上述した実施の形態では、駆動部32が、第1電極22を、第1電極22の第1電極本体56の軸心B周りに回転させる場合について説明したが、これに限定されない、例えば、駆動部は、第1電極を、第1電極の本体の軸心に対してやや傾いている回転軸線周りに回転させてもよい。このようにしても同様に第1電極22の表面の広範囲に捕集された微粒子を少量の液体68で回収することができる。また、駆動部は、第1電極22を、第1電極22の本体の軸心と平行な回転軸線周りに回転させてもよい。駆動部は、第1電極22を、第1電極22の軸心方向に延びかつ第1電極22内を通る回転軸線周りに回転させればよい。このようにしても同様に第1電極22の内面66に微粒子を集塵することができる。
【0129】
上述した実施の形態では、第1内鍔部62は、第1電極本体56の軸心方向の一端部から第1電極本体56の径方向の内方に突出しているとしたが、これに限られない。例えば、液体68が、第1電極本体56の軸心方向の一端部からこぼれないように、一端部が撥水処理されていてもよい。このようにしても同様に第1電極本体56の内面66の一部に保持された液体68が、第1電極本体56の軸心方向の一端部からこぼれないように、液体68を保持することができる。
【0130】
上述した実施の形態では、第2内鍔部64は、第1電極本体56の軸心方向の他端部から第1電極本体56の径方向の内方に突出しているとしたが、これに限られない。例えば、液体68が、第1電極本体56の軸心方向の多端部からこぼれないように、他端部が撥水処理されていてもよい。このようにしても同様に第1電極本体56の内面66の一部に保持された液体68が、第1電極本体56の軸心方向の他端部からこぼれないように、液体68を保持することができる。
【0131】
上述した実施の形態では、第2内鍔部64は、第1電極本体56の軸心方向の他端部から第1電極本体56の径方向の内方に突出しているとしたが、これに限られない。例えば、液体68が、第1電極本体56の軸心方向の他端部から下方に配置したタンク82に重力で落下できるよう、他端部に第2内鍔部を設けなくてもよい。このような構成とすることにより、抽出部84のポンプによる液体68の抽出が不要となり、より低コストな構造を実現できる。
【0132】
(本発明の概要)
本発明に係る微粒子サンプリング装置は、筒状で内部にサンプリング空間を有する第1電極と、筒状における長さ方向に沿ってサンプリング空間内に設けられる第2電極と、第1電極と第2電極との間に電圧を印加する電圧印加部と、サンプリング空間内に長さ方向に沿って設けられる回転軸を中心に第1電極を回転させる駆動部と、サンプリング空間に液体を供給する供給部と、サンプリング空間に貯留された液体を回収する回収部と、を備え、第1電極は、サンプリング空間側の表面に液体を導く螺旋状流路を有する。このような構成とすることにより、第1電極の回転時に、液体は、螺旋状流路に導かれて第一電極表面の広範囲を移動することができる。したがって、第1電極の表面の広範囲に捕集された微粒子を少量の液量で回収することができる。
【0133】
また、本発明に係る微粒子サンプリング装置では、螺旋状流路が、表面が親水性である親水性螺旋部を備えていてもよい。このような構成とすることにより、第1電極の下部に貯留された液体を親水性螺旋部の表面に選択的に局在させ、第1電極を回転させた際に、液体を親水性螺旋部上で移動させることができる。したがって、第1電極を回転させた際に、液体をより確実に螺旋状流路に沿って移動させることができ、少量の液量で微粒子を回収することができる。
【0134】
また、本発明に係る微粒子サンプリング装置では、螺旋状流路は、表面が疎水性である疎水性螺旋部を備えていてもよい。このような構成とすることにより、第1電極の下部に貯留された液体を疎水性螺旋部で挟まれた部分に選択的に局在させ、第1電極を回転させた際に、液体を疎水性螺旋部に沿って移動させることができる。したがって、第1電極を回転させた際に、液体をより確実に螺旋状流路に沿って移動させることができ、少量の液量で微粒子を回収することができる。
【0135】
また、本発明に係る微粒子サンプリング装置では、螺旋状流路は、表面が親水性である親水性螺旋部と、表面が疎水性である疎水性螺旋部と、を備えていてもよい。このような構成とすることにより、液体が親水性螺旋部の外部に漏出しても、疎水性螺旋部の撥水効果により、隣接する親水性螺旋部にまで漏れ出すことを抑制できる。したがって、第1電極を回転させた際に、液体をより確実に螺旋状流路に沿って移動させることができ、少量の液量で微粒子を回収することができる。
【0136】
また、本発明に係る微粒子サンプリング装置では、親水性螺旋部と疎水性螺旋部とが隣接して形成される。このような構成とすることにより、液体が親水性螺旋部の外部に漏出することを疎水性螺旋部の撥水効果により抑制でき、液体を親水性螺旋部上に留めることができる。したがって、第1電極を回転させた際に、液体をより確実に螺旋状流路に沿って移動させることができ、少量の液量で微粒子を回収することができる。
【0137】
また、本発明に係る微粒子サンプリング装置では、螺旋状流路は、表面に形成された螺旋状の凹部を備えてもよい。このような構成とすることにより、表面処理や表面コーティングを必要としない簡素な製造工程で螺旋状流路を形成することが可能となる。また、第1電極の回転時に、液体は、凹部に流れ、螺旋状流路に導かれて第1電極表面の広範囲を移動することができる。したがって、第1電極の表面の広範囲に捕集された微粒子を少量の液量で回収することができる。
【0138】
また、本発明に係る微粒子サンプリング装置では、液体は、駆動部による第1電極の回転によって、第1電極の一端から他端に送水され、螺旋状流路は、筒状におけるサンプリング空間側の表面を少なくとも2周するように設けられ、液体の送水方向下流側では、上流側に対して、前記長さ方向における同一直線上において、上流側で当該螺旋状流路に隣接する他螺旋状流路と下流側で当該螺旋状流路に隣接する他螺旋状流路との距離が短くなるよう構成されてもよい。このような構成とすることにより、上流側から下流側に送水される間に、液体の液量が蒸発等により減少した場合においても、液体が螺旋状流路に接触できない面積を減らすことができる。したがって、第1電極の表面の広範囲に捕集された微粒子を少量の液量で確実に回収することができる。
【0139】
また、本発明に係る微粒子サンプリング装置では、親水性螺旋部は、疎水性螺旋部よりも表面の占有割合が大きくてもよい。このような構成とすることにより、螺旋状流路上に集塵される微粒子について、疎水性螺旋部上に集塵される微粒子の量に対し、親水性螺旋部上に集塵される微粒子の量を多くできる。疎水性螺旋部は撥水性を有し、親水性螺旋部は親水性を有しているため、親水性螺旋部上の微粒子の量を多くすることで、少量の液量で多くの微粒子を回収することができ、回収効率を向上させることができる。
【0140】
また、本発明に係る微粒子サンプリング装置では、供給部は、螺旋状流路に液体が残っている状態で、当該螺旋状流路に隣接する他螺旋状流路の上流側に、当該液体とは異なる他液体を供給するようにしてもよい。このような構成とすることにより、第1電極の表面に集塵された微粒子が液体に取り込まれるまでの時間を短くすることができる。したがって、微粒子が乾燥状態に曝されて劣化することを抑制できる。
【0141】
また、本発明に係る微粒子サンプリング装置では、駆動部は、液体が、筒状における長さ方向において第1電極の一端から他端に送水されるように第1電極を回転させる順駆動と、液体が、筒状における長さ方向において第1電極の他端から一端に送水されるように第1電極を回転させる逆駆動と、を行ってもよい。このような構成とすることにより、液体を筒状における長さ方向のどちらの方向にも移動させることが可能になる。したがって、液体が供給されてから抽出されるまでの液体の長さ方向における往復回数を自在に設定できるようになる。
【0142】
また、本発明に係る微粒子サンプリング装置を用いて、微粒子サンプリング装置を備えた空気調和設備としても良い。このような構成とすることにより、空気調和設備の気流により微粒子サンプリング装置10内に空気を引き込むことが可能になる。したがって、気体の流れを発生させるためのポンプ等を微粒子サンプリング装置10に組み込む必要のない簡素な装置構成が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本開示は、空気等の気体中からエアロゾル等の微粒子をサンプリングする装置等に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0144】
1 インフルエンザウイルス
10、10b、10c、10d、10e、10f 微粒子サンプリング装置
12 ダクト
14 第1ベアリングシール
16 第2ベアリングシール
18 第1フランジ部材
20 第2フランジ部材
22 第1電極
24 第2電極
26 電圧印加部
28 供給部
30 回収部
32 駆動部
42 ダクト本体
44 第1支持部
46 第2支持部
48 第1フランジ部材本体
50、54 フランジ
52 第2フランジ部材本体
56 第1電極本体
58 第1外鍔部
60 第2外鍔部
62 第1内鍔部
64 第2内鍔部
66 内面
68、68a 液体
69 サンプリング空間
70 第1支持体
72 第2支持体
74 第1電線
76 第2電線
78 タンク
80 注入部
82 タンク
84 抽出部
86 ギア
88 モータ
91、91B、91C,91D 螺旋状流路
92 親水性螺旋部
93 疎水性螺旋部
94 未処理螺旋部
95 螺旋状凹部
96 螺旋状凸部
97 境界線
98、98a、98b、98c、98d、98e、98f、98g、98h、98i、98j 構成単位
101 一端部
102 他端部