(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115962
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】毛髪用組成物および毛髪処理方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20230815BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20230815BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
A61K8/34
A61Q5/00
A61K8/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018419
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(72)【発明者】
【氏名】草野 一眞
(72)【発明者】
【氏名】松本 洋平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正人
(72)【発明者】
【氏名】瀧野 雄介
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AC071
4C083AC092
4C083AC102
4C083AC331
4C083AC352
4C083AC471
4C083AC472
4C083BB13
4C083CC31
4C083DD23
4C083DD28
4C083DD31
4C083EE29
(57)【要約】
【課題】柔らかさの低下を抑えつつ破断強度の向上を実現できる毛髪用組成物および毛髪処理方法の提供。
【解決手段】毛髪用組成物は、液状油と、カテコール、ヒドロキノン、フェルラ酸、レスベラトロール、2以上の4-ヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、1又は2以上の3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、及び1又は2以上の3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールから選ばれた一種又は二種以上と、が配合されたものであり、この毛髪用組成物を使用して毛髪処理を行う。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状油と、
カテコール、ヒドロキノン、フェルラ酸、レスベラトロール、2以上の4-ヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、1又は2以上の3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、及び1又は2以上の3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールから選ばれた一種又は二種以上と、が配合された
毛髪用組成物。
【請求項2】
前記液状油として、液状エステル油、液状油脂、及び液状高級アルコールから選ばれた一種又は二種以上が配合された請求項1に記載の毛髪用組成物。
【請求項3】
液状又はクリーム状である請求項1又は2に記載の毛髪用組成物。
【請求項4】
非水系組成物である請求項1~3のいずれかに記載の毛髪用組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の毛髪用組成物を使用する毛髪処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪に塗布して使用される毛髪用組成物、及び当該組成物を使用する毛髪処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブラッシング、ハンドドライヤー、熱アイロンなどによる物理的処理、及び酸化染毛処理、パーマネントウェーブ処理などの化学的処理は、毛髪に損傷を与える。損傷した毛髪は、損傷を受ける前に比して、毛髪の感触(例えば、はり、こし、柔らかさ)、外観(例えば、艶、まとまり)、強度(例えば、引張りによる破断強度)などの毛髪物性が悪化したものとなる。
【0003】
従来から毛髪物性の向上のための提案が行われており、その例として、天然物由来ペプチドの毛髪用組成物への配合や、特許文献1に記載の所定の変性基を導入した変性ペプチドの配合が、公知となっている。
【0004】
また、本特許出願の出願人は、毛髪物性向上を目的とした、カテコール、ヒドロキノン、フェルラ酸、レスベラトロール、2以上の4-ヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、1若しくは2以上の3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、及又は、1若しくは2以上の3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールが配合され、pHが9.0以下である毛髪用組成物の使用を見出している(特願2021-122832参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のカテコール、ヒドロキノン、フェルラ酸、レスベラトロール、又は所定のポリフェノールを毛髪用組成物に配合すると、毛髪の破断強度が向上する一方で、毛髪の柔らかさが低下する。その破断強度の向上と柔らかさの維持は、相反する毛髪特性の探求であるため、柔らかさの低下を抑えつつ破断強度を高めることは、非常に困難を伴う。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、柔らかさの低下を抑えつつ破断強度の向上を実現できる毛髪用組成物および毛髪処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等が鋭意検討を行った結果、ヒドロキノン、フェルラ酸、レスベラトロール、又は所定のポリフェノールの配合が破断強度の向上と柔らかさの低下を生じさせ、液状油の配合が破断強度の低下を生じさせる知見がある状況において、ヒドロキノン、フェルラ酸、レスベラトロール、又は所定のポリフェノールと、液状油の双方を配合すれば、破断強度の向上と柔らかさの低下抑制を両立できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係る毛髪用組成物は、液状油と、カテコール、ヒドロキノン、フェルラ酸、レスベラトロール、2以上の4-ヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、1又は2以上の3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、及び1又は2以上の3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールから選ばれた一種又は二種以上と、が配合されたものである。
【0010】
本発明に係る毛髪用組成物は、前記液状油として、液状エステル油、液状油脂、及び液状高級アルコールから選ばれた一種又は二種以上が配合されたものが良い。この一種又は二種以上の液状油であれば、上記のカテコール、ヒドロキノン、フェルラ酸、レスベラトロール、及び所定ポリフェノールのから選ばれた一種又は二種以上の溶解性に優れるので、毛髪組成物におけるカテコール等の分散性が高まる。
【0011】
本発明に係る毛髪用組成物は、液状又はクリーム状であると良い。液状又はクリーム状であれば、毛髪内部に浸透し易く、毛髪の強度向上に好適である。
【0012】
本発明に係る毛髪用組成物は、非水系組成物であると良い。非水系であると、前記液状油の多量配合を容易に設定でき、毛髪の柔らかさの維持に好適である。
【0013】
また、本発明に係る毛髪処理方法は、本発明に係る毛髪用組成物を使用するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る毛髪用組成物によれば、液状油と、カテコール、ヒドロキノン、フェルラ酸、レスベラトロール、2以上の4-ヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、1又は2以上の3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、及び1又は2以上の3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールから選ばれた一種又は二種以上とが、双方配合されるので、毛髪の柔らかさの低下を抑えつつ破断強度の向上を実現できる。
【0015】
また、本発明に係る毛髪処理方法によれば、液状油と、カテコール、ヒドロキノン、フェルラ酸、レスベラトロール、2以上の4-ヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、1又は2以上の3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、及び1又は2以上の3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールから選ばれた一種又は二種以上とが、双方配合された毛髪用組成物を使用するので、毛髪の柔らかさの低下を抑えつつ破断強度の向上を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。
本実施形態に係る毛髪用組成物(以下、「毛髪用組成物」を単に「組成物」と称する。)は、液状油と、カテコール、ヒドロキノン、フェルラ酸、レスベラトロール、2以上の4-ヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、1又は2以上の3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、及び1又は2以上の3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールから選ばれた一種又は二種以上(以下、「カテコール、ヒドロキノン、フェルラ酸、レスベラトロール、2以上の4-ヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、1又は2以上の3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、及び1又は2以上の3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールから選ばれた一種又は二種以上」を、「カテコール等」と称する。)と、が配合されたものである。
【0017】
本実施形態の組成物に配合する液状油は、25℃で流動性を有する公知の油であり、液状エステル油、液状油脂、液状高級アルコール、液状シリコーン、及び液状炭化水素が該当する。本実施形態の組成物には、一種又は二種以上の液状油を配合すると良い。
【0018】
上記液状油として、液状エステル油、液状油脂、及び液状高級アルコールから選ばれた一種又は二種以上が本実施形態の組成物に配合されていると良い。この一種又は二種以上の液状油は、毛髪の破断強度の向上、毛髪の柔らかさ低下の抑制、カテコール等の溶解性の観点から好適であり、本実施形態の組成物において、液状エステル油、液状油脂、及び液状高級アルコールの総配合量は、3質量%以上が良く、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、25質量%以上が更に好ましく、50質量%以上がより更に好ましい。一方、その総配合量の上限は、特に限定されないが、例えば90質量%以下である。
【0019】
上記液状エステル油を本実施形態の組成物に配合する場合、一種又は二種以上の液状エステル油を配合すると良い。この場合の液状エステル油の配合量は、3質量%以上が良く、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、40質量%以上がより更に好ましい。一方、その総配合量の上限は、特に限定されないが、例えば90質量%以下である。
【0020】
上記液状エステルは、例えば、分枝脂肪酸と分枝高級アルコールとのエステル、分枝脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル、分枝脂肪酸と低級アルコールとのエステル、直鎖脂肪酸と分枝高級アルコールとのエステル、直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル、直鎖脂肪酸と低級アルコールが挙げられる。ここで、液状エステルを構成するための「分枝脂肪酸」とは、炭素数6以上かつモノカルボン酸に該当する分岐飽和脂肪酸を意味し、「直鎖脂肪酸」とは、炭素数6以上かつモノカルボン酸に該当する直鎖飽和脂肪酸を意味し、「分枝高級アルコール」とは、炭素数6以上かつ一価アルコールに該当する分岐飽和アルコールを意味し、「直鎖高級アルコール」とは、炭素数6以上かつ一価アルコールに該当する直鎖飽和アルコールを意味し、「低級アルコール」とは、炭素数5以下かつ一価アルコールに該当する直鎖又は分岐飽和アルコールを意味する。
【0021】
上記分枝脂肪酸と分枝高級アルコールとのエステルとしては、例えば、2-エチルヘキサン酸イソセチル、2-エチルヘキサン酸イソステアリル、イソノナン酸イソノニル、ジメチルオクタン酸2-ヘキシルデシル、ジメチルオクタン酸2-オクチルドデシル、イソパルミチン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリルが挙げられ、上記分枝脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステルとしては、2-エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸ヘキシルが挙げられ、上記分枝脂肪酸と低級アルコールとのエステルとしては、例えば、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピルが挙げられ、上記直鎖脂肪酸と分枝高級アルコールとのエステルとしては、例えば、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチルが挙げられ、上記直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステルとしては、例えば、ラウリン酸ヘキシルが挙げられ、直鎖脂肪酸と低級アルコールとのエステルとしては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピルが挙げられる。
【0022】
上記液状油脂は、脂肪酸とグリセリンとのトリエステルを主成分とするものであり、当該液状油脂を本実施形態の組成物に配合する場合、一種又は二種以上の液状油脂を配合すると良い。この場合の液状油脂の配合量は、3質量%以上が良く、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、40質量%以上がより更に好ましい。一方、その総配合量の上限は、特に限定されないが、例えば90質量%以下である。
【0023】
上記液状油脂としては、例えば、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、ククイナッツ油、コメヌカ油、コーン油、サフラワー油、パーシック油、パーム核油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、メドウフォーム油、ローズヒップ油が挙げられる。
【0024】
上記高級アルコールは、炭素数6以上の一価アルコールであり、当該高級アルコールを本実施形態の組成物に配合する場合、一種又は二種以上の液状高級アルコールを配合すると良い。この場合の液状高級アルコールの配合量は、3質量%以上が良く、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、40質量%以上がより更に好ましい。一方、その配合量の上限は、特に限定されないが、例えば90質量%以下である。
【0025】
上記液状高級アルコールとしては、例えば、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノールなどが挙げられる。
【0026】
本実施形態の組成物に配合するカテコール等は、上記の通り、カテコール、ヒドロキノン、フェルラ酸、レスベラトロール、2以上の4-ヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、1又は2以上の3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、及び1又は2以上の3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールから選ばれた一種又は二種以上である。このカテコール等の配合が毛髪の破断強度を向上させ、この強度向上は、毛髪の構成タンパク質における架橋がカテコール等により生じるからと考えられる。
【0027】
本実施形態の組成物における上記カテコール等の配合量は、特に限定されないが、0.001質量%以上5質量%未満が良く、0.003質量%以上1.0質量%未満が好ましく、0.005質量%以上0.5質量%未満がより好ましく、0.01質量%以上0.1質量%未満が更に好ましい。0.001質量%以上であると、毛髪の破断強度の向上に好適であり、5質量%未満であると、低コスト化に好適である。
【0028】
本実施形態の組成物に上記カテコール、ヒドロキノン、フェルラ酸、又はレスベラトロールを配合する場合、いずれかを含有する公知の植物エキスを配合しても良い。この植物エキスの例として、ヒドロキノンを含有するウワウルシ葉エキス、フェルラ酸を含有するコメヌカエキス、レスベラトロールを含有するブドウつるエキス、レスベラトロールを含有するブドウ葉/種子/皮エキスが挙げられる。
【0029】
また、上記の4-ヒドロキシフェニル基、3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、及び、3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールは、フラボノイド(フラボン、フラバナール、フラボノールなど)、クロロゲン酸類などに属する公知のポリフェノールとして知られており、植物エキスに含まれている。これら三種のポリフェノールの分子量は、毛髪の破断強度を向上させるために毛髪内部に浸透させる観点から、1000未満が良く、800未満が好ましく、600未満がより好ましく、500未満が更に好ましい。
【0030】
なお、上記2以上の4-ヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、1又は2以上の3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、又は、1又は2以上の3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールとしては、4-ヒドロキシフェニル基のみを有するもの、3,4-ジヒドロキシフェニル基のみを有するもの、3,4,5-トリヒドロキシフェニル基のみを有するもの、4-ヒドロキシフェニル基と3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するもの、4-ヒドロキシフェニル基と3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するもの、3,4-ジヒドロキシフェニル基と3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するもの、4-ヒドロキシフェニル基と3,4-ジヒドロキシフェニル基と3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するものが挙げられる。
【0031】
上記2以上の4-ヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールを本実施形態の組成物に配合する場合、当該ポリフェノールから選ばれた一種又は二種以上を配合すると良い。
この2以上の4-ヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールとしては、例えば、チリロシドが挙げられ、チリロシドを含有するエキスとしては、イチゴ種子エキスなどである。
【0032】
上記1つの3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールを本実施形態の組成物に配合する場合、当該ポリフェノールから選ばれた一種又は二種以上を配合すると良い。1つの3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールとしては、例えば、ルテオリン、カテキン、ケルセチン、クロロゲン酸、カフェオイルグルコース、クエルシトリン、ルチンが挙げられ、ルテオリンを含有するエキスとしては、シソ種子エキス、キク花エキスなどであり、カテキンを含有するエキスとしては、チャ葉エキスなどであり、ケルセチンを含有するエキスとしては、タマネギ根エキスなどであり、クロロゲン酸を含有するエキスとしては、ロブスターコーヒーノ木種子エキスなどであり、カフェオイルグルコースを含有するエキスとしては、サトザクラ花エキスなどであり、クエルシトリンを含有するエキスとしては、キウイ種子エキスなどであり、ルチンを含有するエキスとしては、ソバ葉エキスなどである。
【0033】
上記2以上の3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールを本実施形態の組成物に配合する場合、当該ポリフェノールから選ばれた一種又は二種以上を配合すると良い。2以上の3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールとしては、例えば、フキノール酸、チコリ酸、エキナコシド、ロスマリン酸が挙げられ、フキノール酸を含有するエキスとしては、フキ葉/茎エキスなどであり、チコリ酸を含有するエキスとしては、ムラサキバレンギクエキスなどであり、エキナコシドを含有するエキスとしては、シスタンチェツブロサ根エキスなどであり、ロスマリン酸を含有するエキスとしては、ローズマリー葉エキスなどである。
【0034】
上記1つの3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールを本実施形態の組成物に配合する場合、当該ポリフェノールから選ばれた一種又は二種以上を配合すると良い。1つの3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールとしては、例えば、没食子酸、デルフィニジン-3,5-グルコシドが挙げられ、没食子酸を含有するエキスとしては、メマツヨイグサ種子エキスなどであり、デルフィニジン-3,5-グルコシドを含有するエキスとしては、アリストテリアチレンシス果実エキスなどである。
【0035】
上記2以上の3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールを本実施形態の組成物に配合する場合、当該ポリフェノールから選ばれた一種又は二種以上を配合すると良い。2以上の3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールとしては、例えば、GHG(1,2-di-Galloyl-4,6-Hexahydroxydiphenoyl-β-D-Glucose)が挙げられ、GHG(1,2-di-Galloyl-4,6-Hexahydroxydiphenoyl-β-D-Glucose)を含有するエキスとしては、チャ葉エキスなどである。
【0036】
本実施形態の組成物には、上記液状油、カテコール等以外に、公知の毛髪用組成物に配合されている成分を任意成分として配合しても良い。この任意成分としては、例えば、水、固形油及び/又は半固形油(固形又は半固形の高級アルコール、固形又は半固形のエステル油、固形又は半固形の油脂、固形又は半固形の炭化水素、固形又は半固形のロウ、固形又は半固形のシリコーン)、脂肪酸、界面活性剤、多価アルコール、糖類、高分子化合物、アミノ酸、香料、防腐剤である。
【0037】
本実施形態の組成物に水を配合する場合、毛髪の柔らかさの低下を抑制するための上記液状油の多量配合を可能とする観点から、70質量%未満が良く、50質量%未満が好ましく、30質量%未満がより好ましく、10質量%未満が更に好ましく、5質量%未満がより更に好ましい。
【0038】
水を配合する場合の本実施形態の組成物のpHは、2.5以上9.0以下が良く、3.5以上8.5以下が好ましく、5.5以上8.0以下がより好ましく、6.0以上8.0以下が更に好ましい。pHが2.5以上であると、頭皮などの皮膚への刺激の抑制に好適であり、pHが9.0以下であると、毛髪の破断強度の向上に好適である。
【0039】
本実施形態の組成物は、非水系組成物、水中油型乳化組成物、油中水型乳化組成物の何れであっても良い。非水系組成物であると、上記液状油の多量配合を容易に設定でき、毛髪の柔らかさの維持に好適である。ここで「非水系組成物」とは、外相が油相組成物、及び水相を有さない組成物を意味し、非水系組成物は、水が無配合、又は3質量%未満(好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.5質量%未満)のものである。
【0040】
本実施形態の組成物の剤型は、液状、クリーム状、ワックス状、ゲル状など、特に限定されない。本実施形態の組成物が流動性を有する液状又はクリーム状の場合、毛髪内部に浸透し易く、毛髪の強度の向上に好適であり、液状がより好適である。当該液状である場合の本実施形態の組成物の粘度は、B型粘度計を使用して25℃、60秒後の計測値が、5000mPa・s以下が良く、3000mPa・s以下が好ましく、1000mPa・s以下がより好ましく、500mPa・s以下が更に好ましく、100mPa・s以下がより更に好ましい。当該クリーム状である場合の本実施形態の組成物の粘度は、B型粘度計を使用して25℃、60秒後の計測値が、例えば例えば10000mPa・s以上80000mPa・s以下である。
【0041】
本実施形態の毛髪処理方法は、本実施形態の組成物を毛髪に塗布する工程を有するものであれば、特に限定されない。また、その塗布後の毛髪を、水で洗い流しても良く、洗い流さなくても良い。
【0042】
上記毛髪処理方法で対象となる毛髪は、特に限定されない。物理的処理(例えば、ブラッシング)や化学的処理(例えば、酸化染毛処理、縮毛矯正処理、パーマネントウェーブ処理)により毛髪の破断強度が低下するので、このような強度が低下した毛髪を本実施形態の毛髪処理方法の対象とすると良い。上記の化学的処理では過酸化水素などの酸化剤による酸化反応を伴い、破断強度を低下させる損傷を毛髪が受けるので、本実施形態の毛髪処理方法では、酸化反応を伴う化学的な処理が行われた毛髪を対象にすると良い。
【0043】
また、本実施形態の毛髪処理方法は、本実施形態の組成物を、例えば、トリートメント(例えば、洗い流さないトリートメント、洗い流すトリートメント、整髪兼用トリートメント、多剤式トリートメントの一構成剤、パーマの前処理のためのトリートメント、パーマの後処理のためのトリートメント、カラーリングの前処理のためのトリートメント、カラーリングの後処理のためのトリートメント、ブリーチの前処理のためのトリートメント、ブリーチの後処理のためのトリートメント)、スタイリング剤として使用するものである。
【実施例0044】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0045】
実施例、比較例、及び参考例の組成物を使用した毛髪処理を行い、毛髪の破断強度の評価と、毛髪の柔らかさの評価を行った。詳細は、次の通りである。
【0046】
(組成物)
実施例、比較例、及び参考例の液状組成物を、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パーシック油、アンズ核油、コメヌカ油、オクチルドデカノール、ヒドロキノン、フェルラ酸、エタノール、及び水を使用して製造した。この製造における配合成分及びその配合量は、下記表1~3の通りである。
【0047】
(実施例1、比較例1a、比較例1b、参考例1の毛髪処理)
同一人から採取した酸化染毛剤による処理履歴がある毛束0.5gに対して、次の(1)~(4)の処理を3回繰り返し、実施例1などの毛髪処理とした。
(1)実施例1、比較例1a、又は参考例1の組成物0.5gを塗布した(比較例1bの毛髪処理では、毛束への組成物の塗布なし)。
(2)毛束に脱色剤(ミルボン社製「オルディーブ アディクシー ハイブリーチ」2gと、ミルボン社製「オルディーブ アディクシー オキシダン6.0」2gとの混合物)を塗布し、室温で30分放置。
(3)毛束を水洗し、シャンプー(ミルボン社製「グランドリンケージ ウィローリュクス シャンプー 0.1g」)を使用して更に洗浄。
(4)温風で乾燥。
【0048】
(実施例2a、実施例2b、実施例2c、比較例2の毛髪処理)
同一人から採取した酸化染毛剤による処理履歴がある毛束0.5gに対して、次の(1)~(2)の処理を3回繰り返し、実施例2などの毛髪処理とした。
(1)実施例2a、実施例2b、又は実施例2cの組成物0.5gを塗布した(比較例2の毛髪処理では、毛束への組成物の塗布なし)。
(2)実施例1の毛髪処理における(2)~(4)の処理と同じ。
【0049】
(実施例3、比較例3、参考例3a、参考例3bの毛髪処理)
同一人から採取した酸化染毛剤による処理履歴がある毛束0.5gに対して、次の(1)~(2)の処理を3回繰り返し、実施例2などの毛髪処理とした。
(1)実施例3、参考例3a、又は参考例3bの組成物0.5gを塗布した(比較例3の毛髪処理では、毛束への組成物の塗布なし)。
(2)実施例1の毛髪処理における(2)~(4)の処理と同じ。
【0050】
(毛髪の破断強度の評価)
毛髪処理後の毛髪について、測定した破断仕事量の平均値において基準を定めて「基準に対する破断仕事量の変動」を算出し、毛髪の破断強度の評価を行った。破断仕事量の測定条件、「基準に対する破断仕事量の変動」の算出式は、以下の通りである。
測定装置:実施例1、比較例1a、比較例1b、参考例1、実施例3、比較例3、参考例3a~3bは、Dia-Stron社製引張試験機「MTT686」を使用。実施例2a~2c、比較例2は、カトーテック社製引張り破断試験機「KES-G1SH」を使用。
測定数:実施例1、比較例1a、比較例1b、参考例1は、各25、実施例2a~2c、比較例2は、各20、実施例3、比較例3、参考例3a~3bは、各10
測定サンプル毛髪長:30mm
測定前処理:水に12時間浸漬
測定環境:水中
延伸速度:10%/min(3mm/min)
「基準に対する破断仕事量の変動」の算出式:(比較する破断仕事量―基準の破断仕事量)/基準の破断仕事量×100
【0051】
(毛髪の柔らかさの評価1)
実施例1、比較例1a、比較例1b、参考例1、実施例2a~2c、比較例2の毛髪処理後の毛髪について、測定した初期弾性率の平均値において基準を定めて「基準に対する初期弾性率の変動」を算出し、毛髪の柔らかさの評価を行った。
、基準に基づいて算出した。初期弾性率の測定条件、「基準に対する初期弾性率の変動」の算出式は、以下の通りである。
測定装置:カトーテック社製引張り破断試験機「KES-G1SH」
測定数:実施例1、比較例1a、比較例1b、参考例1は、各30、実施例2a~2c、比較例2は、各20
測定サンプル毛髪長:25mm
測定環境:空中
延伸速度:10%/min(3mm/min)
「基準に対する初期弾性率の変動」の算出式:(基準の初期弾性率―比較する初期弾性率)/基準の初期弾性率×100
【0052】
(毛髪の柔らかさの評価2)
実施例3a、実施例3b、比較例3の毛髪処理後の毛束について、官能評価による柔らかさの評価を行った。
【0053】
下記表1において、組成物に配合した成分及びその配合量と共に、「破断仕事量」、「初期弾性率」、毛束に組成物を塗布しなかった比較例1bを基準に算出した「基準に対する破断仕事量の変動」と「基準に対する初期弾性率の変動」の結果を示す。下記表1において、カテコール等(ヒドロキノン)を配合した実施例1及び比較例1aは、比較例1bよりも破断仕事量の変動が高まっており、破断強度の評価としては同程度の良い結果である。その一方で、液状油を配合しなかった比較例1bは、数値が高い程に柔らかさの低下を伴い易い初期弾性率の変動が大幅に下がっていたが、液状油(パーシック油、オクチルドデカノール)を配合した実施例1は、初期弾性率の変動の低下が抑制されていた。なお、参考例1の結果おいて、カテコール等を配合しない場合の液状油の配合は、破断強度評価を低下させたことを確認できる。
【0054】
【0055】
下記表2において、組成物に配合した成分及びその配合量と共に、「破断仕事量」、「初期弾性率」、毛束に組成物を塗布しなかった比較例2を基準に算出した「基準に対する破断仕事量の変動」と「基準に対する初期弾性率の変動」の結果を示す。下記表2において、上記表1と同様、カテコール等(ヒドロキノン)と液状油(パーシック油、オクチルドデカノール、パルミチン酸2-エチルヘキシル)の双方を配合した実施例2a~2cは、破断強度の良い評価を残しつつ、初期弾性率の変動の低下が抑制されていたことを確認できる。
【0056】
【0057】
下記表3において、組成物に配合した成分及びその配合量と共に、「破断仕事量」、毛束に組成物を塗布しなかった比較例3を基準に算出した「基準に対する破断仕事量の変動」の結果を示す。下記表3において、上記表1と同様、カテコール等(フェルラ酸)と液状油(アンズ核油、オクチルドデカノール)の双方を配合した実施例3は、破断強度の良い評価を残したことを確認できる。また、表3には示していないが、毛束の柔らかさの官能評価は、実施例3と比較例3が同程度であった。なお、参考例3a~3bの結果おいて、カテコール等を配合しない場合の液状油(アンズ核油、コメヌカ油)の配合は、破断強度を低下させる評価であったことを確認できる。
【0058】