IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社インテックの特許一覧 ▶ 株式会社フルテックの特許一覧

特開2023-115969図面解析方法、図面解析プログラム及び図面解析システム
<>
  • 特開-図面解析方法、図面解析プログラム及び図面解析システム 図1
  • 特開-図面解析方法、図面解析プログラム及び図面解析システム 図2
  • 特開-図面解析方法、図面解析プログラム及び図面解析システム 図3
  • 特開-図面解析方法、図面解析プログラム及び図面解析システム 図4
  • 特開-図面解析方法、図面解析プログラム及び図面解析システム 図5
  • 特開-図面解析方法、図面解析プログラム及び図面解析システム 図6
  • 特開-図面解析方法、図面解析プログラム及び図面解析システム 図7
  • 特開-図面解析方法、図面解析プログラム及び図面解析システム 図8
  • 特開-図面解析方法、図面解析プログラム及び図面解析システム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115969
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】図面解析方法、図面解析プログラム及び図面解析システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20230815BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
G06Q50/08
G01N21/88 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018431
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】391021710
【氏名又は名称】株式会社インテック
(71)【出願人】
【識別番号】515196539
【氏名又は名称】株式会社フルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】金山 健一
(72)【発明者】
【氏名】範 雋偉
(72)【発明者】
【氏名】青木 功介
(72)【発明者】
【氏名】古村 崇
(72)【発明者】
【氏名】四津 敬子
【テーマコード(参考)】
2G051
5L049
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB02
2G051AB03
2G051CA04
2G051EC01
2G051ED04
2G051FA01
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】構造物の表面状態を表した図面を基に、構造物の損傷の発生状況を容易且つ高精度に把握できる図面解析方法、図面解析プログラム及び図面解析システムを提供する。
【解決手段】表面観察図面αの解析対象エリアKTEの中から、各損傷の状況を示す損傷図形を抽出する損傷図形抽出ステップS11を備える。損傷図形抽出ステップS11で抽出された損傷図形を基に、解析対象エリアKTEに発生している損傷の種別を認識する処理、及び損傷の特徴を示す損傷特徴量を抽出する処理を行う損傷状況解析ステップS12を備える。損傷状況解析ステップS12の解析結果を統合し、テキストデータで成る損傷情報を作成する損傷情報作成ステップS13を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の表面状態が作画された表面観察図面を解析し、当該構造物の損傷の発生状況をテキストデータで表した損傷情報を作成する方法であって、前記表面観察図面が入力されたコンピュータシステムにより実行される図面解析方法において、
前記表面観察図面の解析対象エリアの中から、各損傷の状況を示す損傷図形を抽出する損傷図形抽出ステップと、
前記損傷図形抽出ステップで抽出された前記損傷図形を基に、前記解析対象エリアに発生している損傷の種別を認識する処理、及び損傷の特徴を示す損傷特徴量を抽出する処理を行う損傷状況解析ステップと、
前記損傷状況解析ステップの解析結果を統合し、テキストデータで成る前記損傷情報を作成する損傷情報作成ステップとを備えることを特徴とする図面解析方法。
【請求項2】
前記表面観察図面は、イメージデータ又はCADデータで構成される請求項1記載の図面解析方法。
【請求項3】
損傷状況解析ステップでは、前記損傷図形抽出ステップで抽出された前記損傷図形を基に、あらかじめ規定された判定基準に基づいて損傷の程度を判定する処理を行う請求項1又は2記載の図面解析方法。
【請求項4】
前記損傷状況解析ステップでは、前記解析対象エリアを複数個に分割した小エリア毎に前記処理を行う請求項1乃至3のいずれか記載の図面解析方法。
【請求項5】
前記表面観察図面は、コンクリート部材の表面状態が作画されたものであり、ひび割れ、漏水、遊離石灰、うき、剥離及び鉄筋露出の少なくとも1つを含む複数の損傷が、互いに異なる前記損傷図形で表す請求項1乃至4のいずれか記載の図面解析方法。
【請求項6】
ひび割れを示す前記損傷図形は、ひび割れの軌跡を表した曲線又は直線と、ひび割れの幅寸法を表した文字とで構成され、
前記損傷図形抽出ステップでひび割れを示す前記損傷図形が抽出された場合、
前記損傷状況解析ステップでは、当該ひび割れを示す前記損傷図形を基に、ひび割れ密度、最小ひび割れ間隔、最大ひび割れ幅及びひび割れ形状の中の少なくとも1つを前記損傷特徴量として抽出する請求項5記載の図面解析方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか記載の図面解析方法をコンピュータシステムに実行させるための各ステップ実行用プログラムから成る図面解析プログラム。
【請求項8】
構造物の表面状態が作画された表面観察図面を解析し、当該構造物の損傷の発生状況をテキストデータで表した損傷情報を作成する図面解析システムにおいて、
前記表面観察図面の中の解析対象エリアから、各損傷の状況を示す損傷図形を抽出する損傷図形抽出部と、
前記損傷図形抽出部で抽出された前記損傷図形を基に、前記解析対象エリアに発生している損傷の種別を認識する処理、及び損傷の特徴を示す損傷特徴量を抽出する処理を行う損傷状況解析部と、
前記損傷状況解析部の解析結果を統合し、テキストデータで成る前記損傷情報を作成する損傷情報作成部とを備えることを特徴とする図面解析システム。
【請求項9】
前記表面観察図面は、イメージデータ又はCADデータで構成される請求項8記載の図面解析システム。
【請求項10】
損傷状況解析部は、前記損傷図形抽出部で抽出された前記損傷図形を基に、あらかじめ規定された判定基準に基づいて損傷の程度を判定する処理を行う請求項8又は9記載の図面解析システム。
【請求項11】
前記損傷状況解析部は、前記解析対象エリアを複数個に分割した小エリア毎に前記処理を行う請求項8乃至10のいずれか記載の図面解析システム。
【請求項12】
前記表面観察図面は、コンクリート部材の表面状態が作画されたものであり、ひび割れ、漏水、遊離石灰、うき、剥離及び鉄筋露出の少なくとも1つを含む複数の損傷が、互いに異なる前記損傷図形で表されている請求項8乃至11のいずれか記載の図面解析システム。
【請求項13】
前記損傷図形抽出部でひび割れを示す前記損傷図形が抽出された場合、
前記損傷状況解析部は、当該ひび割れを示す前記損傷図形を基に、ひび割れ密度、最小ひび割れ間隔、最大ひび割れ幅及びひび割れ形状の中の少なくとも1つを前記損傷特徴量として抽出する請求項12記載の図面解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の表面状態を表した図面を基に構造物の損傷の発生状況を把握するための図面解析方法、図面解析プログラム及び図面解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁やトンネル等のインフラ構造物は、損傷状況を定期的に点検することが求められており、点検が行われると、点検調書の1つとして損傷図が作成される。構造物がコンクリート製の道路橋の橋脚(構造物10)だとすると、代表的な損傷の種別として、ひび割れ、漏水・滞水、遊離石灰、剥離、鉄筋露出等が挙げられ、構造物10の損傷図は、例えば図8図9に示すような手順で作成される。
【0003】
点検担当者は、構造物10が設置されている現場に出向き、目視やハンマリング等を行って損傷に関する情報を収集するとともに、構造物10の表面状態をカメラで撮影する。カメラによる撮影は、構造物10の表面にチョーク等で必要事項を書き込んだ後で行う場合がある。例えば、図8(b)に示すように、構造物10の表面にひび割れHWが発生している場合に、ひび割れHWの位置を示す目印(矢印等)や、ひび割れHWの幅寸法の値(実測値)等を書き込む。ひび割れHWの幅寸法の値を書き込むのは、カメラで撮影した画像から幅寸法を正確に検出するのが容易ではないからである。
【0004】
現場での情報収集とカメラによる撮影を終えると、点検担当者は事務所等に戻り、撮影した画像を基に、CADで構造物10の表面状態を作画する。作画する時は、ひび割れ、漏水、滞水、遊離石灰、剥離、鉄筋露出等の症状を明確に認識できるように、各損傷を互いに異なる損傷図形を用いて表記する。各損傷をどんな損傷図形で表記するかは自由であるが、図9(a)に示すCAD図面αでは、漏水RSを、漏水RSが発生している領域を太線で囲んで目の粗いハッチングを付した損傷図形RSZで表記し、鉄筋露出TRを、鉄筋露出TRが発生している領域を太線で囲んで目の細かいハッチングを付した損傷図形TRZで表記している。また、ひび割れHWは、ひび割れHWの軌跡を表した曲線又は直線HWZ-1と、ひび割れの幅寸法を表した文字HWZ-2とで構成される損傷図形HWZで表記している。
【0005】
その後、点検担当者は、カメラで撮影した画像、現場で収集した情報及び自己の経験を基に各損傷の程度を判定し、判定結果をCAD図面の中に表記する。例えば、図9(b)に示すCAD図面βでは、各損傷の程度をレベルA~Eの5段階で判定し、「ひび割れ-C」「漏水・滞水-E」等と表記している。
【0006】
一般に、損傷図とは、CAD図面βのような内容の図面(構造物の表面状態が作画され、さらに損傷の程度が表記された図面)のことを言うが、CAD図面αのような内容の図面(構造物の表面状態が作画され、損傷の程度が表記されていない図面)も損傷図と呼ばれる場合がある。また、損傷図は、CAD図面ではなく、紙図面として作成される場合もある。
【0007】
その他、特許文献1には、損傷図の作成を支援する技術が開示されている。特許文献1の損傷図編集装置は、点検対象の構造物をカメラ等で撮影した画像が入力され、入力された画像を鏡映反転させて鏡映画像を作成し、鏡映画像の中から、ひび割れ、剥離、鉄筋露出等の損傷画像を抽出する。そして、編集部が、検出された損傷画像に対応する損傷図形を生成し、自動的に又はトレース操作により図面に付記し(CAD図面αを作成し)、さらに外部から入力された点検結果情報を図面に付記して損傷図を作成する(CAD図面βを作成する)。点検結果情報とは、点検担当者が判定した損傷程度等の情報である。また、この編集部は、鏡映画像に基づいて損傷特徴量(ひび割れの幅、長さ、間隔等)を計測又は算出し、損傷図に追加する機能も備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開2017/221706号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の損傷図編集装置は、構造物を撮影した画像(又は鏡映画像)を解析して損傷特徴量を計測又は算出するが、構造物を撮影した画像は、構造物の表面状態をリアルに表しているが、損傷の発生状況の解析に直接関係しないノイズ情報が多く含まれている。そのため、損傷特徴量を高精度に計測又は算出するためには、フィルタリング処理や統計処理等の複雑な処理が必要になる。
【0010】
また、図8図9に示す従来の損傷図の作成方法では、損傷の程度が点検担当者の主観で判定されるため、点検担当者の熟練度や技術力によって判定結果がばらついてしまう可能性がある。これは、特許文献1の損傷図編集装置においても同様である。
【0011】
橋梁の損傷の程度は、通常、国が定めた橋梁定期点検要領に規定された一定の評価区分に従って判定される。しかし、例えば床版ひび割れの評価区分を見ると、「最大ひび割れ幅は0.2mm以下が主」等の条件に該当すればレベルD、「ひび割れ幅は0.2mm以上が目立つ」等の条件に該当すればレベルEとされており、点検担当者は、点検中の床版のひび割れの状態が、レベルDの「・・・が主」に該当するか否か、レベルEの「・・・が目立つ」に該当するか否か、ということを自分の主観で判定することになる。
【0012】
このように、損傷の程度は、一定の評価区分に従って判定されるとしても、評価区分の規定に曖昧な部分がある場合に点検担当者が主観で判定することになり、判定結果にばらつきが生じてしまう。
【0013】
また、近年、インフラ構造物の老朽化による重大事故が何件か発生しており、早急に点検を行うべき構造物が各地に多数存在しているので、今後、点検担当者の作業量が膨大になることが予想され、損傷の程度を判定する時にヒューマンエラーによる判定ミスが発生しやすくなることも懸念される。したがって、点検作業の省力化を図ることや、ヒューマンエラーの発生を防止することが課題になっている。
【0014】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、構造物の表面状態を表した図面を基に、構造物の損傷の発生状況を容易且つ高精度に把握できる図面解析方法、図面解析プログラム及び図面解析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、構造物の表面状態が作画された表面観察図面を解析し、当該構造物の損傷の発生状況をテキストデータで表した損傷情報を作成する方法であって、前記表面観察図面が入力されたコンピュータシステムにより実行される図面解析方法において、
前記表面観察図面の解析対象エリアの中から、各損傷の状況を示す損傷図形を抽出する損傷図形抽出ステップと、前記損傷図形抽出ステップで抽出された前記損傷図形を基に、前記解析対象エリアに発生している損傷の種別を認識する処理、及び損傷の特徴を示す損傷特徴量を抽出する処理を行う損傷状況解析ステップと、前記損傷状況解析ステップの解析結果を統合し、テキストデータで成る前記損傷情報を作成する損傷情報作成ステップとを備える図面解析方法である。
【0016】
前記表面観察図面は、イメージデータ又はCADデータで構成される。また、損傷状況解析ステップでは、前記損傷図形抽出ステップで抽出された前記損傷図形を基に、あらかじめ規定された判定基準に基づいて損傷の程度を判定する処理を行う構成にすることが好ましい。また、前記損傷状況解析ステップでは、前記解析対象エリアを複数個に分割した小エリア毎に前記処理を行う構成にすることが好ましい。
【0017】
前記表面観察図面は、コンクリート部材の表面状態が作画されたものであり、ひび割れ、漏水、遊離石灰、うき、剥離及び鉄筋露出の少なくとも1つを含む複数の損傷が、互いに異なる前記損傷図形で表す構成にすることができる。この場合、ひび割れを示す前記損傷図形は、ひび割れの軌跡を表した曲線又は直線と、ひび割れの幅寸法を表した文字とで構成され、前記損傷図形抽出ステップでひび割れを示す前記損傷図形が抽出された場合、前記損傷状況解析ステップでは、当該ひび割れを示す前記損傷図形を基に、ひび割れ密度、最小ひび割れ間隔、最大ひび割れ幅及びひび割れ形状の中の少なくとも1つを前記損傷特徴量として抽出する構成にすることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、上記の図面解析方法をコンピュータシステムに実行させるための各ステップ実行用プログラムから成る図面解析プログラムである。
【0019】
また、本発明は、構造物の表面状態が作画された表面観察図面を解析し、当該構造物の損傷の発生状況をテキストデータで表した損傷情報を作成する図面解析システムにおいて、
前記表面観察図面の中の解析対象エリアから、各損傷の状況を示す損傷図形を抽出する損傷図形抽出部と、前記損傷図形抽出部で抽出された前記損傷図形を基に、前記解析対象エリアに発生している損傷の種別を認識する処理、及び損傷の特徴を示す損傷特徴量を抽出する処理を行う損傷状況解析部と、前記損傷状況解析部の解析結果を統合し、テキストデータで成る前記損傷情報を作成する損傷情報作成部とを備える図面解析システムである。
【0020】
前記表面観察図面は、イメージデータ又はCADデータで構成される。また、損傷状況解析部は、前記損傷図形抽出部で抽出された前記損傷図形を基に、あらかじめ規定された判定基準に基づいて損傷の程度を判定する処理を行う構成にすることが好ましい。前記損傷状況解析部は、前記解析対象エリアを複数個に分割した小エリア毎に前記処理を行う構成にすることが好ましい。
【0021】
さらに、図面解析システムにおいて、前記表面観察図面は、コンクリート部材の表面状態が作画されたものであり、ひび割れ、漏水、遊離石灰、うき、剥離及び鉄筋露出の少なくとも1つを含む複数の損傷が、互いに異なる前記損傷図形で表されている構成にすることができる。この場合、ひび割れを示す前記損傷図形は、ひび割れの軌跡を表した曲線又は直線と、ひび割れの幅寸法を表した文字とで構成され、前記損傷図形抽出部でひび割れを示す前記損傷図形が抽出された場合、前記損傷状況解析部は、当該ひび割れを示す前記損傷図形を基に、ひび割れ密度、最小ひび割れ間隔、最大ひび割れ幅及びひび割れ形状の中の少なくとも1つを前記損傷特徴量として抽出する構成にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の図面解析方法、図面解析プログラム及び図面解析システムによれば、構造物の表面観察図面を基に、取り扱いが容易なテキストデータで成る損傷情報(損傷の種別/損傷特徴量/損傷の程度等)が作成されるので、損傷情報を受けて次の処理を実行する後段の機能ブロックを容易に構成することができる。後段の機能ブロックとは、例えば、損傷情報を基に各損傷の原因を解析するブロックや、損傷情報を基に構造物の健全度を判定するブロック等のことである。
【0023】
また、本発明は、構造物を撮影した画像ではなく、構造物の表面状態が作画された表面観察図面を解析するという特徴があり、表面観察図面は、構造物の損傷状況がシンプル且つ明瞭に作画され、ノイズ情報がほとんど含まれていないので、損傷状況の解析を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の図面解析システムの一実施形態を示すブロック図(a)、本発明の図面解析方法の一実施形態を示すフローチャート(b)である。
図2】エリア分割のイメージを示す図である。
図3】損傷特徴量「最小ひび割れ間隔」の抽出方法を示す図(a)~(d)である。
図4】損傷特徴量「ひび割れの方向」の抽出方法を示す図である。
図5】損傷特徴量「ひび割れ形状」の抽出方法を示す図である。
図6】特定の損傷が複数の小エリアに跨る場合の処理の例を示す図(a)、(b)である。
図7】損傷情報の具体例を示す図表である。
図8】従来の損傷図の作成方法を順に示す図であって、点検対象の構造物の初期状態を示す正面図(a)、必要事項が書き込まれた状態を示す正面図(b)である。
図9】従来の損傷図の作成方法を順に示す図であって、構造物の表面状態が作画されたCAD図面を示す図(a)、損傷程度の判定結果が付記されたCAD図面を示す図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の図面解析方法、図面解析プログラム及び図面解析システムの一実施形態について、図1図7に基づいて説明する。なお、本明細書において、「図面」は「図面データ」の概念を含んでいる。
【0026】
この実施形態の図面解析システム12は、図1(a)に示すように、損傷図形抽出部12a、損傷状況解析部12b及び損傷情報作成部12cを備えたコンピュータシステムであり、点検対象の構造物の表面状態が作画された表面観察図面αを解析し、構造物の損傷の発生状況をテキストデータで表した損傷情報を作成する。ここでは、点検対象の構造物は、図8(a)に示すコンクリート製の橋脚(構造物10)で、表面観察図面αは、図9(a)に示すCAD図面αである。損傷情報は、損傷の種別、損傷の程度、損傷特徴量等であり、具体的な内容は後で説明する。
【0027】
この実施形態の図面解析方法は、図1(b)に示すように、損傷図形抽出ステップS11、損傷状況解析ステップS12及び損傷情報作成ステップS13で構成され、各ステップS11~S13は、損傷図形抽出部12a、損傷状況解析部12b及び損傷情報作成部12cによって各々実行される。また、この実施形態の図面解析プログラムは、この図面解析方法を図面解析システム12に実行させるための、各ステップ実行用プログラムから成る。以下、損傷図形抽出ステップS11、損傷状況解析ステップS12及び損傷情報作成ステップS13の内容を順に説明する。
【0028】
<損傷図形抽出ステップS11>
損傷図形抽出ステップS11では、表面観察図面αの解析対象エリアKTE(構造物10が作画されているエリア)の中から、各損傷の状況を示す損傷図形を抽出する。図9(a)に示す表面観察図面αの場合、漏水・滞水RSを示す損傷図形RSZ、鉄筋露出TRを示す損傷図形TRZ、ひび割れHWを示す損傷図形HWZ(HWZ-1,HWZ-2)が抽出される。
【0029】
<損傷状況解析ステップS12>
損傷状況解析ステップS12では、損傷図形抽出ステップS11で抽出された損傷図形を基に、解析対象エリアKTEに発生している損傷の種別を認識する処理、損傷の特徴を示す損傷特徴量を抽出する処理、及びあらかじめ規定された判定基準に基づいて損傷の程度を判定する処理を行う。
【0030】
この損傷状況解析ステップS12は、解析対象エリアKTEを複数個に分割した小エリア毎に行う。小エリアの個数は8~16程度であることが好ましく、図2の例では、解析対象エリアKTEを16個の小エリアE1~E16に分割している。小エリア毎に解析するのは、構造物10の損傷状況を構造物10の部位毎に把握するためである。また、特定の損傷が発生している小エリアの数(例えば、「ひび割れ-C」が発生している小エリアの数)を小エリアの総数で割り算することによって、構造物10の総面積に対する特定の損傷の面積比率を容易に概算することができる。小エリアの形状は、正方形に近い四角形であることが好ましい。
【0031】
損傷状況解析部12bは、小エリアE8,E9の解析で、損傷図形HWZ(HWZ-1,HWZ-2)を基に、ひび割れに関連する特徴量を抽出する。具体的には、損傷図形HWZ-2を基に、最大ひび割れ幅を抽出し、損傷図形HWZ-1を基に、ひび割れ密度(単位面積当たりのひび割れ長さ)、最小ひび割れ間隔、ひび割れの方向、ひび割れの形状等を計測又は算出する。
【0032】
最小ひび割れ間隔は、図3(a)、(b)、(c)に示すように、互いに隣接するひび割れの最も近い部分の間隔を計測又は算出する。この時、図3(d)に示すように、2つのひび割れがほぼ直角に配置されている箇所(例えば、交差角が90±10度の範囲内の箇所)の間隔は、ひび割れ間隔としないルールにするとよい。
【0033】
ひび割れの方向は、構造物10が橋脚なので、橋梁の橋軸方向X、水平方向であって橋軸直角方向Y、及び鉛直方向Zを基準にする。例えば図4に示すように、損傷図形HWZ-1がYZ平面とほぼ平行で、且つ、損傷図形HWZ-1の両端を結ぶ仮想直線の、橋軸直角方向Yに対する角度θが非常に小さい場合(例えば、θが10度以下の場合)、ひび割れの方向が橋軸直角方向Yであると判定し、損傷特徴量を、橋軸直角方向Yであることを示す値(例えば、2)とする。
【0034】
ひび割れの形状については、例えば図5(a)に示すように、複数個の多角形が順に連続し、3本のひび割れの交差点におけるひび割れ同士の角度θ1,θ2,θ3がほぼ均等である(例えば、θ1,θ2,θ3が120±20度の範囲内である)等の条件を満たす場合に、ひび割れの形状が亀甲状であると判定し、損傷特徴量を、亀甲状であることを示す値(例えば、1)とする。また、図5(b)に示すように、4本のひび割れに囲まれた四角形の4つの内角θa,θb,θc,θdがほぼ直角である(例えば、θa,θb,θc,θdが90±15度の範囲内である)等の条件を満たす場合に、ひび割れの形状が格子状であると判定し、損傷特徴量を、格子状であることを示す値(例えば、2)とする。
【0035】
さらに、損傷状況解析部12bは、損傷図形HWZから抽出した情報(損傷特徴量等の情報)を、あらかじめ規定した判定基準に照らし合わせることによって、ひび割れの程度をCやD等と判定する。勿論、判定基準は、コンピュータである損傷状況解析部12bが明確に判定可能な内容に規定する。
【0036】
同様に、損傷状況解析部12bは、小エリアE1の解析で、損傷図形RSZを基に漏水・滞水RSに関する損傷特徴量を抽出するとともに、当該損傷特徴量等の情報を所定の判定基準に照らし合わせることによって、漏水・滞水の程度をE等と判定する。また、小エリアE16の解析で、損傷図形TRZを基に鉄筋露出TRに関する損傷特徴量を抽出するとともに、当該損傷特徴量等の情報を所定の判定基準に照らし合わせることによって、剥離・鉄筋露出の程度をD等と判定する。
【0037】
その他、特定の損傷が複数の小エリアに跨る場合、この複数の小エリアの中の、損傷面積が小さい小エリアは、「損傷が発生していない。」と判定するようにしてもよい。「損傷が発生している。」と判定される小エリアの数が過剰にならないようにするためである。
【0038】
例えば、図6(a)に示すように、鉄筋露出TRを示す損傷図形TRZが4つの小エリアE11,E12,E15,E16に跨っている時、損傷図形TRZの面積Stの中の、小エリアE11,E12,E15,E16に掛かっている部分の面積S11,S12,S15,S16を各々算出し、S16が最も大きい場合に「この鉄筋露出は小エリアE16だけに発生している。」と判定する方法がある。あるいは、図6(b)に示すように、各小エリアの面積Seに対する比率S11/Se,S12/Se,S15/Se,S16/Seを各々算出し、比率S12/SeとS16/Seが規定値以上の場合(例えば、40%以上の場合)に「この鉄筋露出TRは小エリアE12及びE16に発生している。」と判定するようにしてもよい。
【0039】
<損傷情報作成ステップS13>
損傷情報作成ステップS13では、損傷状況解析ステップS12での解析結果を統合し、テキストデータで成る損傷情報(損傷の種別/損傷特徴量/損傷の程度)を作成する。損傷情報をどのような形式で出力するかは自由であり、図7の例では、小エリア毎に、当該小エリアに発生している損傷の種別、損傷特徴量及び損傷の程度を表し、さらに、解析対象エリアKTE全体に関する情報も表している。全体に関する情報は、解析対象エリアKTEにおける最大ひび割れ密度や、解析対象エリアKTEの面積に対する特定の損傷の面積比率(例えば、「ひび割れ-A」の面積比率)等である。
【0040】
以上説明したように、この実施形態の図面解析方法、図面解析プログラム及び図面解析システム12によれば、構造物10の表面観察図面αを基に、取り扱いが容易なテキストデータで成る損傷情報(損傷の種別/損傷特徴量/損傷の程度等)が作成されるので、損傷情報を受けて次の処理を実行する後段の機能ブロックを容易に構成することができる。
【0041】
また、構造物10を撮影した画像ではなく、構造物10の表面状態が作画された表面観察図面αを解析するという特徴があり、表面観察図面αは、構造物10の損傷状況がシンプル且つ明瞭に作画され、ノイズ情報がほとんど含まれていないので、損傷状況の解析を容易に行うことができる。
【0042】
また、損傷の程度は、コンピュータシステムが一定の判定基準に基づいて自動判定するので、判定のばらつきや判定ミスが発生するのを確実に防止することができる。また、構造物10の表面(解析対象エリアKTE)の損傷状況を小エリア毎に把握して損傷情報が作成されるので、複雑な内容の損傷情報を分かりやすく整理して提供することができる。
【0043】
なお、本発明の図面解析方法、図面解析プログラム及び図面解析システムは、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図7に示した損傷情報(損傷の種別/損傷特徴量/損傷の程度)は、あくまでも説明を分かりやすくするための例であり、損傷情報の項目や内容は自由に設定することができる。
【0044】
上記実施形態では、表面観察図面αとしてCAD図面α(CADデータ)を使用しているが、例えば、CAD図面αと同じ内容の紙図面をスキャナで読み込む等して作成されたイメージデータを使用してもよい。
【0045】
本発明の対象となる構造物の種類や素材は、橋梁やコンクリート部材に限定されない。例えば、構造物が鋼部材であれば、表面観察図面に表記される損傷図形は鋼部材に特有の図形となり、コンピュータシステムが、その損傷図形を基に鋼部材に特有の損傷の種別を認識し、鋼部材に特有の損傷特徴量を算出し、鋼部材に特有の判定基準を基に損傷の程度を判定する構成にすればよい。
【符号の説明】
【0046】
10 構造物(コンクリート製の橋脚)
12 図面解析システム
12a 損傷図形抽出部
12b 損傷状況解析部
12c 損傷情報作成部
HW ひび割れ
HWZ ひび割れを示す損傷図形
HWZ-1 ひび割れの軌跡を表した直線又は曲線
HWZ-2 ひび割れの幅寸法を表した文字
KTE 解析対象エリア
RS 漏水
RSZ 漏水を示す損傷図形
S11 損傷図形抽出ステップ
S12 損傷状況解析ステップ
S13 損傷情報作成ステップ
TR 鉄筋露出
TRZ 鉄筋露出を示す損傷図形
α 表面観察図面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9