(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115972
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】鉄道用座席
(51)【国際特許分類】
   B60N   2/42        20060101AFI20230815BHJP        
   B60N   2/68        20060101ALI20230815BHJP        
   B61D  33/00        20060101ALI20230815BHJP        
【FI】
B60N2/42 
B60N2/68 
B61D33/00 A 
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018437
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391039173
【氏名又は名称】株式会社JR西日本テクノス
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋  良規
(72)【発明者】
【氏名】中井  一馬
(72)【発明者】
【氏名】榎並  祥太
(72)【発明者】
【氏名】楢原  誠一
(72)【発明者】
【氏名】斉木  博之
(72)【発明者】
【氏名】北本  雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】八代  祐太
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087CD03
3B087DB03
3B087DB04
3B087DB10
3B087DE05
(57)【要約】
【課題】列車衝突時に乗客が2次衝突した場合であっても、下肢部への傷害を軽減させることができる鉄道用座席を提供する。
【解決手段】座面と背面を備える鉄道用座席において、前記座面は、奥行方向の端部に設けられている衝撃吸収部と、奥行方向の略中央部に設けられている支持部と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図3
 
【特許請求の範囲】
【請求項1】
  座面と背面を備える鉄道用座席において、
  前記座面は、
  奥行方向の端部に設けられている衝撃吸収部と、
  奥行方向の略中央部に設けられている支持部と、
  を有することを特徴とする鉄道用座席。
【請求項2】
  請求項1に記載する鉄道用座席において、
  前記衝撃吸収部は、
  低剛性金属からなる衝撃吸収フレームと、
  前記衝撃吸収フレームに対し奥行方向内側に設けられる衝撃吸収空間と、
  からなることを特徴とする鉄道用座席。
【請求項3】
  請求項1に記載する鉄道用座席において、
  前記衝撃吸収部は、樹脂材料からなる芯材であることを特徴とする鉄道用座席。
【請求項4】
  請求項2に記載する鉄道用座席において、
  前記衝撃吸収フレームは、断面形状が略コの字形のチャンネルによってスライド自在に支持され、
  前記チャンネルの内部には、樹脂材料からなる芯材を備えることを特徴とする鉄道用座席。
【請求項5】
  請求項2に記載する鉄道用座席において、
  前記低剛性金属は、アルミニウム合金であることを特徴とする鉄道用座席。
【請求項6】
  請求項3又は4に記載する鉄道用座席において、
  前記樹脂材料は、ウレタンであることを特徴とする鉄道用座席。
【請求項7】
  請求項1から6のいずれか1項に記載する鉄道用座席において、
  前記背面は、奥行方向にスライド可能に取り付けられていることを特徴とする鉄道用座席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、鉄道用座席に関する。
【背景技術】
【0002】
  自動車業界においては、シートベルトやエアバッグ等の安全装備を例として、事故時の搭乗者の被害軽減に配慮した設計思想に基づいた技術が、広く普及している。
【0003】
  特許文献1には、自動車の前部座席の後面に装着可能な、ゲル状素材が被覆された衝撃吸収シートが開示されている。急ブレーキや衝突事故等の状況において、後部座席の搭乗者が前のめりになり、前頭部等を前部座席にぶつけたとしても、衝撃吸収シートによって衝撃力を吸収して受け止め、搭乗者の安全を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
  一方で、鉄道業界においては、このような事故時の乗員乗客の被害軽減といった設計思想に基づいた技術は、これまで一般的ではなかった。
【0006】
  例えば、従来の鉄道用座席においては、
図1に示すように、列車衝突時に乗客が車内で投げ出された場合、前方の座席に衝突(以下、2次衝突という。)することで、下肢部への傷害が発生する可能性がある。
 
【0007】
  そこで、本発明は上記の事項に鑑みてなされたものであり、列車衝突時に乗客が2次衝突した場合であっても、下肢部への傷害を軽減させることができる鉄道用座席を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
  この発明は、上記課題を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0009】
  本発明に係る鉄道用座席は、座面と背面を備える鉄道用座席において、前記座面は、奥行方向の端部に設けられている衝撃吸収部と、奥行方向の略中央部に設けられている支持部と、を有することを特徴とする。
【0010】
  本発明に係る鉄道用座席において、前記衝撃吸収部は、低剛性金属からなる衝撃吸収フレームと、前記衝撃吸収フレームに対し奥行方向内側に設けられる衝撃吸収空間と、からなると好適である。
【0011】
  本発明に係る鉄道用座席において、前記衝撃吸収部は、樹脂材料からなる芯材であると好適である。
【0012】
  本発明に係る鉄道用座席において、前記衝撃吸収フレームは、断面形状が略コの字形のチャンネルによってスライド自在に支持され、前記チャンネルの内部には、樹脂材料からなる芯材を備えると好適である。
【0013】
  本発明に係る鉄道用座席において、前記低剛性金属は、アルミニウム合金であると好適である。
【0014】
  本発明に係る鉄道用座席において、前記樹脂材料は、ウレタンであると好適である。
【0015】
  本発明に係る鉄道用座席において、前記背面は、奥行方向にスライド可能に取り付けられていると好適である。
【0016】
  上記発明の概要は、本発明に必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0017】
  本発明によれば、列車衝突時に乗客が2次衝突した場合であっても、下肢部への傷害を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
            
            【
図2】本発明の実施形態に係る鉄道用座席を示す斜視図
 
            【
図3】本発明の第1の実施形態に係る座面を示す分解斜視図
 
            【
図4】本発明の第2の実施形態に係る座面を示す分解斜視図
 
            【
図5】本発明の第3の実施形態に係る座面を示す分解斜視図
 
            
            【
図7】従来の実施形態、並びに本発明の第1及び第3の実施形態に係る衝撃試験の結果を示す荷重変位曲線
 
            【
図8】人体ダミーを用いたスレッド試験の概要を示す参考図
 
            【
図9】従来の実施形態、並びに本発明の第1及び第3の実施形態に係る傷害軽減効果を示すグラフ
 
            【
図10】従来の実施形態に係る座面を示す分解斜視図
 
          
【発明を実施するための形態】
【0019】
  以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
[共通構造]
  図2は、本発明の実施形態に係る鉄道用座席を示す斜視図である。本明細書において「幅方向」、及び「奥行方向」とは、
図2における矢印に示す方向と定義する。
 
【0021】
  本発明に係る鉄道用座席1a、1b、1cは、
図2に示すように、座面2a、2b、2c、背面3、脚部4及び転換リンク5を備える。鉄道用座席1a、1b、1cは、座面2a、2b、2cの幅方向が列車の進行方向に対して交差する方向となるように、車体に固定されている。
 
【0022】
  背面3は、転換リンク5を介して脚部4に取付けられている。また、背面3は、転換リンク5によって、座面2a、2b、2cに対して奥行方向にスライド可能に取り付けられている。本実施形態において、座面2a、2b、2cは、奥行方向の中央を対称面とした、対称構造を有する。そのため、鉄道用座席1a、1b、1cは、列車の進行方向の前後どちらに向かっても使用することが可能となる。
【0023】
  本発明の第1から第3の実施形態に係る鉄道用座席1a、1b、1cは、構成部品のうち座面のみが異なる構造を有する。したがって、後述する各実施形態の説明においては、座面2a、2b、2cについての説明を行う。また、座面2a、2b、2cは、奥行方向に対称な構造であることから、奥行方向の構造については一方側のみの説明を行い、他方側の詳細な説明は省略する。
【0024】
[第1の実施形態]
  本発明の第1の実施形態に係る鉄道用座席1aは、座面2aを備える。
【0025】
  図3は、本発明の第1の実施形態に係る座面2aを示す分解斜視図である。座面2aは、支持部10、衝撃吸収部15、及び座部51を備える。なお、座面2aには、使用時において、図示しないシートカバーが取り付けられている。
 
【0026】
  支持部10は、乗客が着席した際、乗客の質量を支える構造を有し、
図3に示すように、基礎フレーム11及び天板41を備える。
 
【0027】
  基礎フレーム11は、
図3に示すように、一対の第1フレーム11aと一対の第2フレーム11bによって構成される。
 
【0028】
  第1フレーム11aは、座面2aの幅方向の両端部に位置し、奥行方向に伸びる。また、第1フレーム11aの両端部は、後述する衝撃吸収フレーム12の端部に接続され、一対の第1フレーム11aと一対の衝撃吸収フレーム12とが四辺となって座面2aの外形を形成する。第1フレーム11aと衝撃吸収フレーム12の接続部は、既知の締結部材や溶接等によって強固に接続されている。
【0029】
  第2フレーム11bは、奥行方向の両端部に位置する衝撃吸収フレーム12に対し、奥行方向の内側に位置し、衝撃吸収フレーム12との間に隙間を形成するように配置される。また、第2フレーム11bは、幅方向に伸び、一対の第1フレーム11aを連絡するように接続される。第1フレーム11aと第2フレーム11bの接続部は、既知の締結部材や溶接等によって強固に接続されている。
【0030】
  本実施形態において、第1フレーム11a及び第2フレーム11bは、断面が中空正方形の角形鋼管等からなり、例えば、機械構造用角形鋼管(STKMR材等)が好適に用いられる。また、第1フレーム11a及び第2フレーム11bの断面の外形寸法及び肉厚については、乗客の質量を支えるのに十分な強度が得られるように、適宜設定される。
【0031】
  天板41は、
図3に示すように、一対の第1フレーム11a及び一対の第2フレーム11bの上に架け渡されるように取り付けられる。天板41は、鋼板からなり、例えば、冷間圧延鋼材(SPCC等)が好適に用いられる。
 
【0032】
  衝撃吸収部15は、2次衝突が発生した際、衝撃を吸収する箇所であり、衝撃吸収フレーム12、及び衝撃吸収空間13を有する。
【0033】
  衝撃吸収フレーム12は、
図3に示すように、座面2aの奥行方向の両端部に位置し、幅方向に伸びる。衝撃吸収フレーム12の両端部は、第1フレーム11aの両端部と接続され、前述したように、第1フレーム11aと共に、座面2aの外形を形成する。また、衝撃吸収フレーム12は、乗客の着席時において乗客の膝裏となる場所に位置する。
 
【0034】
  衝撃吸収フレーム12は、第1フレーム11a及び第2フレーム11bの材質(例えば、一般構造用角形鋼管とする。)に対して、剛性の低い金属(以下、低剛性金属という。)からなる。なお、本明細書において、低剛性金属とは、第1フレーム11a及び第2フレーム11bの材質と比較して、同じ力を加えた場合に大きなたわみが生じる金属とする。本実施形態において、衝撃吸収フレーム12は、断面が中空正方形の角パイプ等からなり、例えば、低剛性金属として、アルミニウム合金(A6063等)が好適に用いられる。また、衝撃吸収フレーム12の断面の外形寸法及び肉厚については、乗客の着席時の下肢を支えるのに十分な強度が得られるように、適宜設定される。
【0035】
  衝撃吸収空間13は、衝撃吸収フレーム12と第2フレーム11bとの間に形成された幅方向に伸びる隙間である。衝撃吸収フレーム12に衝撃荷重が負荷され、衝撃吸収フレーム12がたわんだ場合でも、その変形量は衝撃吸収空間13の中に収まり、衝撃吸収フレーム12と第2フレーム11bとの干渉を防ぐことができる。衝撃吸収空間13の奥行方向の長さは、想定される衝撃吸収フレーム12のたわみ量により適宜決定される。
【0036】
  座部51は、支持部10の上部に取り付けられる。座部51は、クッション性のあるウレタン等の素材からなり、幅方向及び奥行方向の大きさは、第1フレーム11aと衝撃吸収フレーム12により形成された外形と同等の大きさとなる。座部51の厚みや上面の形状等については、座席が取付けられる車両の仕様によって適宜設定される。
【0037】
[第2の実施形態]
  以上説明した第1の実施形態では、剛性の低い金属からなる衝撃吸収フレーム12が、座席使用時に乗客の膝裏となる位置に配置される座面2aを備える鉄道用座席1aについて説明を行った。次に説明する第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる構造の座面2bを備える鉄道用座席1bについて説明を行う。なお、上述した第1の実施形態と同一または類似する構成については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0038】
  本発明の第2の実施形態に係る鉄道用座席1bは、座面2bを備える。
【0039】
  図4は、本発明の第2の実施形態に係る座面2bを示す分解斜視図である。座面2bは、支持部20、衝撃吸収部となる芯材22及び座部51を備える。なお、座面2bには、使用時において、図示しないシートカバーが取り付けられている。
 
【0040】
  支持部20は、乗客が着席した際、乗客の質量を支える構造を有し、
図4に示すように、基礎フレーム21及び天板41を備える。
 
【0041】
  基礎フレーム21は、
図4に示すように、一対の第1フレーム21aと一対の第2フレーム21bによって構成される。
 
【0042】
  第1フレーム21aは、座面2bの幅方向の両端部に位置し、奥行方向に伸びる。第2フレーム21bは、座面2bの奥行方向の両端部よりも内側に位置し、幅方向に伸びる。第1フレーム21aと第2フレーム21bとは、互いの端部同士が接続され、幅方向に長手を持つ長方形の外形を形成する。第1フレーム21aと第2フレーム21bの接続部は、既知の締結部材や溶接等によって強固に接続されている。
【0043】
  本実施形態において、第1フレーム21a及び第2フレーム21bは、断面が中空正方形の角形鋼管等からなり、例えば、機械構造用角形鋼管(STKMR材等)が好適に用いられる。また、第1フレーム21a及び第2フレーム21bの断面の外形寸法及び肉厚については、乗客の質量を支えるのに十分な強度が得られるように、適宜設定される。
【0044】
  芯材22は、
図4に示すように、基礎フレーム21の奥行方向外側に位置し、乗客の着席時において乗客の膝裏となる場所に位置する。芯材22は、発泡させた樹脂材料からなる部材であって、上述したように乗客の膝裏となる場所に位置するため、乗客の下肢を支えることができる強度を有する。本実施形態において、芯材22は、例えば、ウレタンフォーム等が好適に用いられる。なお、ウレタンフォーム等からなる芯材22は、金属材料からなる第1フレーム21a及び第2フレーム21bに対して、剛性が低い部材である。また、芯材22の奥行方向の長さは、衝突荷重が負荷された際に想定される芯材22の変形量により適宜決定される。
 
【0045】
[第3の実施形態]
  以上説明した第2の実施形態では、座席使用時に乗客の膝裏となる位置に、ウレタンフォーム等からなる芯材22を備える鉄道用座席1bについて説明を行った。次に説明する第3の実施形態では、第1及び第2の実施形態と異なる構造の座面2cを備える鉄道用座席1cについて説明を行う。なお、上述した第1及び第2の実施形態と同一または類似する構成については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0046】
  本発明の第3の実施形態に係る鉄道用座席1cは、座面2cを備える。
【0047】
  図5は、本発明の第3の実施形態に係る座面2cを示す分解斜視図である。座面2cは、支持部20、衝撃吸収部31及び座部51を備える。なお、座面2cには、使用時において、図示しないシートカバーが取り付けられている。
 
【0048】
  衝撃吸収部31は、2次衝突が発生した際、衝撃を吸収する箇所であり、衝撃吸収フレーム12、芯材32、チャンネル33及び衝撃吸収空間13を有する。
【0049】
  チャンネル33は、断面がコの字形のチャンネルであって、
図5に示すように、座面2cの幅方向の両端部に位置し、第1フレーム21aに接続され、奥行方向外側へ向かって伸びる。チャンネル33は、図示しないガイド構造を有し、衝撃吸収フレーム12を奥行方向にスライド自在に支持する。また、チャンネル33の内部には、芯材32を備える。
 
【0050】
  芯材32は、発泡させた樹脂材料からなる部材であって、例えば、ウレタンフォーム等が好適に用いられる。芯材32は、チャンネル33の内部に固定され、奥行方向外側の端部が衝撃吸収フレーム12に接続されている。
【0051】
  チャンネル33にスライド自在に支持された衝撃吸収フレーム12は、乗客の着席時において、乗客の膝裏となる場所に位置する。衝撃吸収フレーム12に接続する芯材32は、乗客の下肢の膝裏部分を奥行方向に支えるのに十分な強度を有しており、通常の使用においては、衝撃吸収フレーム12はスライドすることなく、芯材32によって奥行方向に支持されている。
【0052】
  このように配置される衝撃吸収フレーム12、芯材32及びチャンネル33によって、
図5に示すように、衝撃吸収フレーム12と第2フレーム21bとの間には、衝撃吸収空間13が形成される。
 
【0053】
  次に、従来の座面と、本発明の実施形態に係る座面2a、2cについて行った衝撃試験の結果を用いて、2次衝突が起きた場合に発生する反力荷重について説明を行う。
【0054】
  図6は、衝撃試験の概要を示す参考図、
図7は、従来の実施形態、並びに本発明の第1及び第3の実施形態に係る衝撃試験の結果を示す荷重変位曲線、
図10は、従来の実施形態に係る座面102を示す分解斜視図である。
 
【0055】
  まず、従来の実施形態に係る座面について説明を行う。
【0056】
  図10に示すように、従来の実施形態に係る座面102は、座枠111、天板112及び座部51を備える。座枠111は、四辺に配置されたフレームによって構成され、当該フレームは、中空パイプの一般構造用鋼管からなる。また、各フレーム同士の接続部は、既知の締結部材又は溶接等によって強固に接続されている。このように構成された座枠111の上に、鋼板からなる天板112と、クッション性のあるウレタン等からなる座部51が取り付けられる。
 
【0057】
  従来の実施形態に係る座面102と、本発明の実施形態に係る座面2a、2cを比較すると、従来の座面102には、本発明の実施形態のような衝撃吸収部を有していない点で相違する。
【0058】
  次に、衝撃試験の概要及び試験結果について説明を行う。
【0059】
  衝撃試験は、
図6に示すように、座面の奥行方向の端部に位置するフレームに、インパクタによって衝撃荷重を与えることにより行う。即ち、従来の実施形態に係る座面102については、鋼管により形成された座枠111に衝撃荷重が負荷される。また、第1及び第3の実施形態に係る座面2a、2cについては、低剛性金属からなる衝撃吸収フレーム12に衝撃荷重が負荷される。このときに発生する反力荷重と、フレームのたわみ変位量を計測し、各実施形態の構成の違いによる最大反力荷重を確認する。
 
【0060】
  図7のグラフによると、第1及び第3の実施形態は、衝撃吸収フレーム12が従来の座枠111と比較して、大きくたわんだことが確認できる。同時に、第1及び第3の実施形態は、従来の実施形態に対して、最大反力荷重が大幅に減少していることが確認できる。
 
【0061】
  なお、衝撃吸収フレーム12と第2フレーム11b、21bとの間には、衝撃吸収空間13が形成されているため、このように衝撃吸収フレーム12が大きくたわんだ場合でも、衝撃吸収フレーム12が第2フレーム11b、21bと干渉するおそれはない。
【0062】
  次に、人体ダミーを用いたスレッド試験の結果を用いて、2次衝突が起きた場合の下肢への傷害軽減効果について説明を行う。
【0063】
  図8は、人体ダミーを用いたスレッド試験の概要を示す参考図、
図9は、従来の実施形態、並びに本発明の実施形態に係る傷害軽減効果を示すグラフである。
 
【0064】
  スレッド試験は、
図8に示すように、スレッド上の前方となる位置に評価対象となる座面を設置し、後方となる位置に人体ダミーを着席させた座席を設置した状態で行う。このようなスレッドに、衝突状況を模擬した衝撃加速度を、前方から後方に向かって負荷し、人体ダミーを評価対象の座面に衝突させる。人体ダミーには、体の各部位に複数のセンサーが備わっており、これらのセンサーで計測した荷重等から算出される指標(以下、傷害値という。)により、乗客がどの程度の損傷を受けるのかを評価する。
 
【0065】
  上記のスレッド試験を、従来の実施形態の座面102、及び本発明の第1及び第3の実施形態の座面2a、2cについて実施した結果を、
図9に示す。なお、第3の実施形態の座面2cについては、芯材32の長さが異なる第3の実施形態A及びBの2通りの条件について試験を実施した。第3の実施形態Aの芯材32は、第3の実施形態Bの芯材32に対して長さが短く設定されている。
 
【0066】
  図9のグラフによると、本発明の第1及び第3の実施形態について、いずれの場合も、従来の実施形態に対して下肢傷害値が軽減されることが確認できた。特に、第3の実施形態については、大幅な下肢傷害値の軽減効果を得ることができ、芯材32の長さを伸ばすことで、さらに下肢傷害値の軽減効果を上げることが可能であることが確認できる。
 
【0067】
  このように、本発明の座面2a、2b、2cを備えた鉄道用座席1a、1b、1cは、衝撃吸収部を有することで、列車衝突時に2次衝突した発生した場合であっても、乗客の下肢部への傷害を軽減させることが可能となる。
【0068】
  なお、上記では、鉄道用座席1a、1b、1cは、背面3が奥行方向にスライド可能な、所謂転換クロスシートであるとして説明をおこなったが、鉄道用座席1a、1b、1cの種類はこれに限らず、座席を回転させることによって方向を変更する、所謂回転クロスシートであっても構わない。また、上記では、第1フレーム11a、21a及び第2フレーム11b、21bが、断面が中空正方形の一般構造用角形鋼管からなると説明を行ったが、第1フレーム11a、21a及び第2フレーム11b、21bの材質はこれに限らず、乗客の質量を支持するのに必要な機械的性質が備わっていればよく、断面形状及び材質等は適宜設定して構わない。また、上記では、第1フレーム11a、21a及び第2フレーム11b、21bは、別部品であって、お互いが強固に接続されるものとして説明を行ったが、第1フレーム11a、21a及び第2フレーム11b、21bの構成はこれに限らず、一体となった一つの部材であっても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0069】
1a、1b、1c  鉄道用座席、  2a、2b、2c  座面、  3  背面、  4  脚部、  5  転換リンク、  10、20  支持部、  11、21  基礎フレーム、  11a、21a  第1フレーム、  11b、21b  第2フレーム、  12  衝撃吸収フレーム、  13  衝撃吸収空間、  15、31  衝撃吸収部、  22、32  芯材、  33  チャンネル、  41  天板、  51  座部