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特開2023-115980樹脂組成物およびそれを用いたフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115980
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】樹脂組成物およびそれを用いたフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/04 20060101AFI20230815BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20230815BHJP
   C08F 212/14 20060101ALI20230815BHJP
   C08G 63/16 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
C08L25/04
C08L67/00
C08F212/14
C08G63/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018453
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 頌
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 研
(72)【発明者】
【氏名】松本 麻由美
(72)【発明者】
【氏名】坂本 純
【テーマコード(参考)】
4J002
4J029
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BC12W
4J002CF06X
4J002CF08X
4J002GP00
4J029AA03
4J029AB07
4J029AC01
4J029AC02
4J029AD01
4J029AD07
4J029AE04
4J029BA03
4J029BD04A
4J029CB05A
4J029CB06A
4J029CB06B
4J029CC05A
4J029HA01
4J029HB03A
4J029JA091
4J029JA251
4J029JB171
4J029JF541
4J029KB02
4J029KB05
4J029KC02
4J029KD01
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE06
4J100AB02P
4J100AB07Q
4J100BA02Q
4J100CA04
4J100DA01
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA19
4J100FA28
4J100FA30
4J100GC07
4J100GC17
4J100GC26
4J100HA61
4J100HB52
4J100HC71
4J100HE06
4J100HE14
4J100HE41
4J100JA32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複屈折率が低く透明性および靭性が良好なポリエステル樹脂組成物およびポリスチレン樹脂組成物からなる樹脂組成物および、その樹脂組成物からなるフィルムを提供する。
【解決手段】ポリエステル樹脂組成物Aと(化1)で示されるポリスチレン樹脂組成物Bを含む樹脂組成物であり、下記式(I)を満たす樹脂組成物。

(Rは酸素、硫黄のいずれかから選ばれる原子を含む置換基であり、Rは炭素数1~8の直鎖状または分岐状の炭化水素基)
ΔCOOH(eq/tоn)<150(I)
なおΔCOOHとは、樹脂組成物の末端カルボキシル基量COOHと、該樹脂組成物を窒素雰囲気下290℃で30分間溶融後の末端カルボキシル基量COOHの差COOH-COOHである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂組成物Aと(化1)で示される構造を有するポリスチレン樹脂組成物Bを含む樹脂組成物であり、下記式(I)を満たす樹脂組成物。
【化1】
(Rは酸素、硫黄のいずれかから選ばれる原子を含む置換基であり、Rは炭素数1~8の直鎖状または分岐状の炭化水素基)
ΔCOOH(eq/tоn)<150 式(I)
なおΔCOOHとは、樹脂組成物の末端カルボキシル基量COOHと、該樹脂組成物を窒素雰囲気下290℃で30分間溶融後の末端カルボキシル基量COOHの差COOH-COOHである。
【請求項2】
ポリスチレン樹脂組成物Bの数平均分子量(Mn)が、1.0×10≦Mn≦5.0×10である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
0.1≦n≦0.9である請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
0<m≦nである請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
ポリスチレン樹脂組成物Bがヒドロキシ基を有する請求項1~4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
300℃で5分溶融後、室温まで40℃/分で冷却し、引き続き20℃/分で昇温した際のガラス転移温度が30℃以上で1つ観察されるか、または複数観察される場合は最大値と最小値の差が20℃以内である請求項1~5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の樹脂組成物からなるフィルム。
【請求項8】
内部ヘイズが30%以下である請求項7に記載のフィルム。なお内部ヘイズは、水を溶媒とし、ヘイズメーターにて測定した値を100μmに換算した値である。
【請求項9】
二軸延伸フィルムである請求項7に記載のフィルム。
【請求項10】
厚み方向複屈折率の絶対値が0.05以下である請求項9に記載の二軸延伸フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂組成物およびポリスチレン樹脂組成物を用いてなる樹脂組成物および、その樹脂組成物からなるフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル樹脂は、機械特性、熱特性、耐薬品性、電気特性、成形性に優れ、様々な用途に用いられている。これらのポリエステル樹脂において、特に近年、フラットパネルディスプレイやタッチパネル分野において偏光板保護フィルム(偏光子保護部材)や円偏光板位相差フィルム(円偏光板部材)、透明導電フィルムなど各種光学用フィルムの需要が高まっている。その中でも、偏光板保護フィルム用途では、低コスト化を目的として従来のTAC(トリアセチルセルロース)フィルムから二軸配向ポリエステルフィルムへの置き換えが盛んに検討されている。しかしながら二軸配向ポリエステルフィルムは延伸時のポリエステルの配向に起因する液晶ディスプレイとして組み立てた際に発生する干渉色を十分に制御できておらず、画面表示をした際の品位が低下する。そのため、二軸配向ポリエステルフィルムおよびこれに用いるポリエステル樹脂は画面表示をした際の品位の観点からは、複屈折を低減することが好ましい。複屈折を低減する方法としては、延伸しないまたはわずかに延伸して結晶性や配向性を低下させる方法があるが、結晶性を低下させたポリエステルは加熱工程において熱結晶化により白化するため透明性が不十分であり、配向性を低下させると加熱工程などでフィルム変形などが発生し、偏光子保護フィルムなどの低複屈折が必要とされる用途での適用は困難であった。
【0003】
これに対して、正負逆符号の複屈折を有する樹脂を複合化することにより、すなわち、正の複屈折を有するポリエステル樹脂に対して、負の複屈折を有する樹脂を複合化することにより、分子配向が凍結残留しても原理的に複屈折を低減可能であり、以下のような提案がなされている。
【0004】
特許文献1には、芳香族ポリエステルとスチレン系重合体とをブロック共重合化することによって、透明で低複屈折な成形物が得られることを開示している。
【0005】
特許文献2には、ポリエチレンテレフタレート系樹脂とシンジオタクチックポリスチレン系樹脂を交互に積層することによって、透明で低複屈折なフィルムが得られることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63-178119号公報
【特許文献2】特開2008-137304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、ブロック共重合体が相分離構造を形成するため、透明性が十分ではなく、光学用途の応用が困難であった。
【0008】
特許文献2では、ポリエチレンテレフタレート系樹脂とシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の相溶性が十分ではないため、フィルムの延伸時の応力によって、ポリエチレンテレフタレート系樹脂とシンジオタクチックポリスチレン系樹脂との界面で剥離が発生し、層間剥離の発生や、空隙が形成されるため透明性が十分ではなく、光学用途の応用が困難であった。
【0009】
以上のように、従来技術では、透明性、低複屈折、機械特性を兼備したポリエステル樹脂とポリスチレン樹脂からなる光学樹脂材料を得ることは困難であった。
【0010】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を克服して、ポリエステル樹脂組成物およびポリスチレン樹脂組成物からなる複屈折率が低く透明性及び靱性が良好である樹脂組成物および、その樹脂組成物からなるフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく検討を行った結果、本発明により、複屈折率が低く透明性および靭性が良好なポリエステル樹脂組成物およびポリスチレン樹脂組成物からなる樹脂組成物および、その樹脂組成物からなるフィルムを見出した。
【0012】
すなわち、本発明の目的は以下の手段によって達成される。
(1)ポリエステル樹脂組成物Aと(化1)で示される構造を有するポリスチレン樹脂組成物Bを含む樹脂組成物であり、下記式(I)を満たす樹脂組成物。
【0013】
【化1】
【0014】
(Rは酸素、硫黄のいずれかから選ばれる原子を含む置換基であり、Rは炭素数1~8の直鎖状または分岐状の炭化水素基)
ΔCOOH(eq/tоn)<150 式(I)
なおΔCOOHとは、樹脂組成物の末端カルボキシル基量COOHと、該樹脂組成物を窒素雰囲気下290℃で30分間溶融後の末端カルボキシル基量COOHの差COOH-COOHである。
(2)ポリスチレン樹脂組成物Bの数平均分子量(Mn)が、1.0×10≦Mn≦5.0×10である(1)に記載の樹脂組成物。
【0015】
(3)0.1≦n≦0.9である(1)または(2)に記載の樹脂組成物。
【0016】
(4)0<m≦nである(1)~(3)に記載の樹脂組成物。
(5)ポリスチレン樹脂組成物Bがヒドロキシ基を有する(1)~(4)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(6)300℃で5分溶融後、室温まで40℃/分で冷却し、引き続き20℃/分で昇温した際のガラス転移温度が30℃以上で1つ観察されるか、または複数観察される場合は最大値と最小値の差が20℃以内である(1)~(5)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(7)(1)~(6)のいずれかに記載の樹脂組成物からなるフィルム。
(8)内部ヘイズが30%以下である(7)に記載のフィルム。なお内部ヘイズは、水を溶媒とし、ヘイズメーターにて測定した値を100μmに換算した値である。
(9)二軸延伸フィルムである(7)に記載のフィルム。
(10)厚み方向複屈折率の絶対値が0.05以下である(9)に記載の二軸延伸フィルム。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複屈折率が低く透明性および靭性が良好なポリエステル樹脂組成物およびポリスチレン樹脂組成物からなる樹脂組成物および、その樹脂組成物からなるフィルムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明におけるポリエステル樹脂組成物とは、ジカルボン酸成分とグリコール成分とを主原料として重縮合して得られるポリエステル樹脂組成物を指す。主原料とは、ポリエステル樹脂中のジカルボン酸成分およびグリコール成分から得られる構成単位が、合計で70モル%以上であることを示す。より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
【0020】
本発明におけるジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸類、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体が挙げられる。その中でも、ポリエステル樹脂組成物の耐熱性および加工性の観点から、芳香族ジカルボン酸成分であることが好ましく、ジカルボン酸成分として90mol%以上が芳香族ジカルボン酸成分であることが好ましい。その中でも、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸やこれらのエステル誘導体であることが透明性と加工性の両立の点から好ましく、耐熱性の点からテレフタル酸や2,6-ナフタレンジカルボン酸、そのエステル誘導体が特に好ましい。
【0021】
グリコール成分としては、脂肪族ジオール、脂環式ジオールや、芳香環式ジオールが挙げられる。また加工性を損なわない範囲で、ジオール以外にもトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多官能アルコールも用いることができる。特に、グリコール成分として90モル%以上が脂肪族ジオールおよび/または脂環式ジオールからなることが好ましい。その中でも、例えば、樹脂組成物をフィルムにした際の伸度および柔軟性といった機械的特性の観点からエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールが特に好ましい。
【0022】
なお、本発明の効果の範囲を損なわない程度に、他のジカルボン酸成分やヒドロキシカルボン酸誘導体、グリコールが共重合されていてもよい。
【0023】
本発明のポリエステル樹脂組成物Aの極限粘度(25℃のo-クロロフェノール中で測定)は、機械特性の観点から、0.4~1.2dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.5~0.8dl/gである。
【0024】
本発明のポリエステル樹脂組成物Aはマンガン元素、マグネシウム元素、カルシウム元素を含有してもよく、その総和含有量MAは、0.5~10mol/tであることが好ましい。より好ましくは0.7~3.0mol/tである。上記範囲を満たすことで、溶融混合および溶融成型時の熱分解を抑制することができる。なお、元素は原子と同義で用いる。
【0025】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物Aはリン元素を含有してもよく、その含有量PAは、0.5~5mol/tであることが好ましい。より好ましくは、0.5~3.0mol/tである。上記範囲を満たすことで、ポリエステルの重合反応性を損なうことなく、溶融混合および溶融成型時の熱分解を抑制することができる。
【0026】
本発明におけるポリスチレン樹脂組成物Bは、酸素、硫黄のいずれかから選ばれる原子を含む置換基を有するポリスチレン樹脂組成物であり、(化1)の構造を有する。また、ランダム共重合体でもブロック共重合体でも構わない。
【0027】
【化2】
【0028】
(Rは酸素、硫黄のいずれかから選ばれる原子を含む置換基であり、Rは炭素数1~8の直鎖状または分岐状の炭化水素基)
で示した置換基は、ポリスチレン樹脂組成物の親水性度を高め、ポリエステル樹脂組成物との相溶性が良好となり、透明性を高めることができる。
【0029】
スチレン環上の置換基の位置は、オルト位、メタ位、パラ位のいずれでも良く、単一または複数の置換位置が含まれても良い。特に好ましくはパラ位である。
【0030】
酸素原子を含む置換基としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基が挙げられる。ヒドロキシ基は、中和されても、中和されていなくても良い。中和するカチオンとしては、アルカリ金属カチオン(Li、Na、Kなど)、アルカリ土類金属カチオン(Mg2+、Ca2+など)、アンモニウムカチオン(NH )、有機アンモニウムカチオン、有機ホスホニウムカチオンなどが挙げられる。耐熱性、加工性の観点から有機アンモニウムカチオン、有機ホスホニウムカチオンが好ましく、さらに好ましくは4級アルキルアンモニウムカチオン、4級アルキルホスホニウムカチオンがあり、中でも、アルキルの炭素数が4以上であることで、耐熱性と加工性を向上させることが可能となる。
【0031】
硫黄原子を含む置換基としては、スルホン酸基やスルホニル基が挙げられる。スルホン酸基としては、スルホン酸エステルとして、直鎖状または分岐状の炭素数1~8の炭化水素基1つを有しても良い。スルホン酸基は中和されても、中和されていなくても良い。加熱によるスルホン酸基同士の縮合を抑制できる観点から、スルホン酸基は50モル%以上が中和されていることが好ましく、より好ましくは80モル%以上である。中和するカチオンとしては、アルカリ金属カチオン(Li、Na、Kなど)、アルカリ土類金属カチオン(Mg2+、Ca2+など)、アンモニウムカチオン(NH )、有機アンモニウムカチオン、有機ホスホニウムカチオンなどが挙げられるが、耐熱性、加工性の観点から有機アンモニウムカチオン、有機ホスホニウムカチオンが好ましく、さらに好ましくは4級アルキルアンモニウムカチオン、4級アルキルホスホニウムカチオンがあり、中でも、アルキルの炭素数が4以上であることで、耐熱性と加工性を向上させることが可能となる。
【0032】
本発明におけるポリスチレン樹脂組成物Bは、水素イオン指数(pH)が5以上7以下であることが好ましい。上記範囲を満たすことで、溶融混合および溶融成型時の熱分解を抑制することができる。水素イオン指数(pH)の測定方法は、実施例に示す。
【0033】
本発明におけるポリスチレン樹脂組成物Bの酸素、硫黄のいずれかから選ばれる原子を含む置換基による変性率であるnは、0<n<1であることが必要である。ポリエステル樹脂組成物との相溶性の観点から、下限としては0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.15以上である。また、靭性の観点から、上限としては0.9以下であることが好ましく、より好ましくは0.8以下である。
【0034】
本発明におけるポリスチレン樹脂組成物Bのアルコキシ基変性率であるmは、0<m<1であることが必要である。靭性の観点から、下限としては0.05以上であることが好ましく、ポリエステル樹脂組成物Aとの相溶性の観点から、上限としては0.5以下であることが好ましい。またnとmは0<m≦nであることがポリエステル樹脂組成物Aとの相溶性、靱性両立の点から好ましい。
【0035】
本発明におけるポリスチレン樹脂組成物Bのアルコキシ基置換基であるRは、直鎖状または分岐状の炭素数1~8の炭化水素基であることが必要である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基などである。
【0036】
本発明におけるポリスチレン樹脂組成物Bの数平均分子量(Mn)は1.0×10~5.0×10であることが好ましい。Mnが上記範囲内であるポリスチレン樹脂を用いることで、機械物性と、加工性を両立でき、成形加工に好適である。また、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比Mw/Mnは特に限定されるものではないが、概ね1.0以上5.0以下程度である。フィルムなどの延伸性の観点からは、Mw/Mnは2.0以上であると、機械物性が良好となり好適である。
【0037】
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物中のポリエステル樹脂組成物Aの含有量をW、ポリスチレン樹脂組成物Bの含有量をWとしたとき、重量比(W/W)として、10/90~90/10であることが好ましく、より好ましくは30/70~70/30である。W/Wが好ましい範囲であると、より効果的に複屈折率を低減できるとともに、機械物性が良好となる。W/Wが高まると、すなわちポリエステル樹脂の比率が高くなると比較的機械物性が良好となる傾向であり、一方、W/Wが低くなると、すなわちポリスチレン樹脂の比率が高まると比較的複屈折率の低減が大きくなる傾向である。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、酸化防止剤を含有していてもよい。酸化防止剤としては、種々の酸化防止剤を用いることができ、単一であっても、複数混合してもよい。
【0039】
具体的には、ホスファイト系酸化防止剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。ホスファイト系酸化防止剤としては、3,9-Bis(2,6-di-tert-butyl-4-methylphenoxy)-2,4,8,10-tetraoxa-3,9-diphosphaspiro[5.5]undecane、3,9-Bis(Octadecyloxy)-2,4,8,10-tetraoxa-3,9-diphosphaspiro[5.5]undecane、2,2‘-Methylene-bis(4,6-di-tert-butylphenyl)phosphite、Tris(nonylphenyl)phosphite、Trisisodecyl phosphiteなどが挙げられるが、これに限定されない。また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、Pentaerythritol tetrakis[3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propinate]、1,3,5-tris(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzyl)-1,3,5-triazine-2,4,6(1H,3H,5H)-trione、4,4’,4”-(1-methylpropanyl-3-ylidene)tris(6-tert-butyl-m-cresol)など挙げられるが、これに限定されない。その中でも、溶融加工における樹脂組成物の分解や得られたフィルムの脆化抑制効果が高く、靭性が良好となることからホスファイト系酸化防止剤が特に好ましい。
【0040】
酸化防止剤の含有量は、樹脂組成物に対し、0.01~5wt%であることが好ましく、より好ましくは0.1~2wt%である。上記範囲を満たすことで、透明性を損なうことなく、靭性を良好とすることが可能となる。
【0041】
本発明の樹脂組成物は、N下290℃で30分間溶融した際のCOOH末端基増加量が下記式(I)を満たすことが必要である。
【0042】
ΔCOOH(eq/tоn)<150 (I)
なおΔCOOHとは、樹脂組成物の末端カルボキシル基量COOHと、該樹脂組成物を窒素雰囲気下290℃で30分間溶融後の末端カルボキシル基量COOHの差COOH-COOHである。
【0043】
より好ましくは100未満であり、さらに好ましくは80未満である。上記範囲を満たすことで、脆化を抑制することができるため靭性が良好となり、延伸フィルム等に供しても問題のない樹脂組成物とすることが可能となる。
【0044】
本発明の樹脂組成物は、300℃で5分溶融後、室温まで40℃/分で冷却し、引き続き20℃/分で昇温した際(2nd Run)のガラス転移温度が1つ観察されるか、または複数観察される場合は最大値と最小値の差が20℃以内であることが好ましい。ガラス転移温度とは、JIS K 7121(1999)に準拠し、示差走査熱量計を用いて測定した補外ガラス転移開始温度と補外ガラス転移終了温度の中間点の値を用いる。ガラス転移温度が1つ観察されるか、または複数観察される場合は最大値と最小値の差が20℃以内であることで、成形加工における割れや欠けなどが少なく機械物性が良好となる。より好ましくはガラス転移温度の最大値と最小値の差が10℃以内であり、さらに好ましくは5℃以内、特に好ましくはガラス転移温度が1つだけ観察されることである。
【0045】
本発明の樹脂組成物を用いてなるフィルムの内部ヘイズは30%以下であることが好ましい。より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。なお、この内部ヘイズは、水を溶媒とし、ヘイズメーターにてフィルム厚み方向に測定した値を100μmフィルム厚みに換算した値である。上記範囲を満たすことで、偏光子保護フィルムなどに供しても問題のない、透明性の高いフィルムを得ることが可能となる。
【0046】
本発明の樹脂組成物を用いてなる二軸延伸フィルムの厚み方向複屈折率の絶対値は0.05以下であることが好ましい。より好ましくは0.02以下であり、さらに好ましくは0.01以下である。上記上限以下とすることで、例えば偏光子保護フィルムとして使用した際に偏光を乱すことなく、画質に優れたディスプレイを得ることができるため好ましい。
【0047】
次に、本発明の樹脂組成物の製造方法について記載する。本発明の樹脂組成物は、ポリエステル樹脂組成物Aと、ポリスチレン樹脂組成物Bからなり、これらを混合することで得ることができる。
【0048】
ポリエステル樹脂組成物Aにポリスチレン樹脂組成物Bを混合する時期は、ポリエステル樹脂組成物Aの重合前、例えば、エステル化反応前に添加してもよいし、重合後に添加してもよい。また、押出機を用いて混合する方法、粉砕器で混合成分を粉末状に粉砕した後に混合する方法、両者を溶媒に溶解し共沈させることにより混合する方法、一方を溶媒に溶かして溶液状とした後に他方に混合する方法なども挙げられるが、この限りではない。その中でも、混錬機による混錬が、溶融押出後に直接目的の形状へ成形でき、熱履歴が短く着色等が抑制される点で好ましい。
【0049】
ポリエステル樹脂Aとポリスチレン樹脂Bを混合する際に、酸化防止剤としての効果を有する化合物を添加してもよい。酸化防止剤としては、種々の酸化防止剤を用いることができ、単一であっても、複数混合してもよい。具体的な酸化防止剤の種類や含有量については、先に示したとおりである。
【0050】
本発明のポリエステル樹脂組成物Aの製造方法は、ジカルボン酸成分またはそのエステルとグリコール成分を主原料とし、エステル化反応またはエステル交換反応からなる1段階目の工程と、それに続く重縮合反応からなる2段階目の工程からなる。また製造方法として、バッチ重合、半連続重合、連続重合が適用できる。
【0051】
本発明のポリエステル樹脂組成物Aを製造する原料は、ジカルボン酸またはジカルボン酸エステルおよびグリコールを用いることができ、それぞれは1種類でも、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することも可能である。好ましいジカルボン酸成分やグリコール成分は先に示したとおりである。
【0052】
本発明のポリエステル樹脂組成物Aの製造方法において、エステル化反応に用いられる触媒は、マンガン、コバルト、亜鉛、チタン、カルシウムなどの化合物を用いても構わないが、重縮合反応段階での熱分解や異物の発生などを抑制する観点から、エステル化反応は無触媒で実施することが好ましい。エステル化反応は無触媒においてもカルボン酸の自己触媒作用によって、反応は十分に進行する。また、エステル交換反応に用いられる触媒としては、公知のエステル交換触媒を用いることができる。エステル交換触媒としては、有機マンガン化合物、有機マグネシウム化合物、有機カルシウム化合物、有機コバルト化合物、有機リチウム化合物などが挙げられ、具体的には、炭酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、酸化物、水酸化物などがあるが、これに限定されるものではない。
【0053】
本発明のポリエステル樹脂組成物Aの製造方法において、マンガン元素、マグネシウム元素、カルシウム元素を用いてもよく、その総和添加量MAは、0.5~10mol/tであることが好ましい。より好ましくは0.7~3.0mol/tである。上記範囲を満たすことで、溶融混合および溶融成型時の熱分解を抑制することができる。
【0054】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物Aの製造方法において、リン元素を添加してもよく、その添加量PAは、0.5~5mol/tであることが好ましい。より好ましくは、0.5~3.0mol/tである。上記範囲を満たすことで、ポリエステルの重合反応性を損なうことなく、溶融混合および溶融成型時の熱分解を抑制することができる。リン元素としては、先に示したホスファイト系酸化防止剤を添加してもよいが、リン酸やそのエステル、リン酸アルカリ金属塩、ジエチルホスホノ酢酸エチル等のリン化合物をエステル化反応後、エステル交換反応後、重縮合反応前、重縮合反応後に添加しても構わない。
【0055】
また、重縮合反応に用いられる触媒は、公知の重縮合触媒を用いることが出来る。例えば、アンチモン、チタン、アルミニウム、スズ、ゲルマニウムなどの化合物などが挙げられる。具体的には、前記金属元素を含む酸化物、水酸化物、有機酸塩、アルコラートやこれら化合物のグリコール溶液などを使用することができる。
【0056】
ポリエステル樹脂組成物Aの製造方法において、高分子量体を得るため、固相重合を行ってもよい。固相重合は、装置・方法は特に限定されないが、ポリエステル樹脂組成物を不活性ガス雰囲気下または減圧下で加熱処理することで実施される。
【0057】
本発明におけるポリスチレン樹脂組成物Bの製造方法としては、(化1)を満たすポリエスチレン樹脂組成物であればよく、製造方法に特に制限はない。
【0058】
【化3】
【0059】
(Rは酸素、硫黄のいずれかから選ばれる原子を含む置換基であり、Rは炭素数1~8の直鎖状または分岐状の炭化水素基)
酸素原子を含む置換基としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基が挙げられる。
【0060】
硫黄原子を含む置換基としては、スルホン酸基やスルホニル基が挙げられる。スルホン酸基としては、スルホン酸エステルとして、直鎖状または分岐状の炭素数1~8の炭化水素基1つを有しても良い。
【0061】
ポリスチレン樹脂組成物Bの製造方法としては、例えば、スチレン系のモノマーおよび変性スチレンモノマーに開始剤を加え、反応することで共重合ポリマーを得る方法、スチレン系ポリマーに変性剤を加え、反応することで変性スチレンポリマーを得る方法などが挙げられる。
【0062】
以下に、スチレン系のモノマーおよび変性スチレンモノマーに開始剤を加え、反応することで共重合ポリマーを得る方法について例示するが、本発明は以下の方法に限定されるものではない。
【0063】
ヒドロキシ変性スチレン系ポリマーの製造方法としては、スチレン系モノマーおよびアルコキシ変性スチレンモノマーに開始剤を加え、反応することで共重合ポリマーを得たのち、酸触媒によって一部のアルコキシ基を脱保護することで、ヒドロキシ変性スチレン系ポリマーを得る方法が挙げられる。
【0064】
スルホン酸変性スチレン系ポリマーの製造方法としては、スチレン系モノマーおよびスルホン酸変性スチレンモノマー、アルコキシ変性スチレンモノマーに開始剤を加え、反応することで共重合ポリマーを得る方法が挙げられる。
【0065】
重合方法は、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合のいずれであっても良い。分子量分布を狭くするために、リビング重合を用いても良い。分子量分布が比較的広いラジカル重合で得られる共重合ポリマーは機械物性が比較的良好であるため、好ましい。ラジカル重合は、バルク重合でも有機溶媒中での重合でもよい。
【0066】
有機溶媒としては、トルエン、ベンゼン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1-ブタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン及びこれらの混合物が挙げられる。
【0067】
開始剤としては、過硫酸カリウム、過酸化水素水、過酸化ベンゾイルなどの過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系化合物などを挙げることができる。
【0068】
反応液中のモノマー濃度は、モノマーの種類および有機溶媒の種類により適宜決定できるが、例えば、0.01~30重量%の範囲であることができる。反応液中の開始剤濃度は、モノマーの種類および濃度により適宜決定できるが、モノマー1モル当りのモル比で、例えば、0.01~10モル%の範囲であることができる。
【0069】
反応温度は用いるモノマーと開始剤の反応性によって適宜決定される。重合反応のための加熱は、分子量が比較的揃った重合物を得るためには、反応液に含まれるラジカル重合開始剤が一斉に開裂する条件下で行う。温度が低すぎると短時間では重合反応が完了せず分子量がブロードになり、また温度が高すぎると、生成した高分子のモノマーへの解重合が起こる。このような観点から反応温度は、ラジカル重合開始剤の種類を考慮して決定され、例えば、ラジカル重合開始剤の開始温度をT℃とした場合、反応温度はT℃~T+100℃の範囲とすることができる。
【0070】
重合反応後は、公知の方法で生成物を取り出せばよい。例えば、バルク重合の場合は、そのまま加熱溶融してストランド状に吐出し、ペレタイザー等でペレット状にカッティングして使用してもよい。また、有機溶媒を用いた場合は反応液にアルコール等の貧溶媒を加えて目的のポリマーを析出させた後、常法に従って濾過等により固液を分離し、必要に応じて水洗、乾燥等の処理を繰り返し行うことにより取り出すことができる。或いは、反応液と水とを混合し、反応溶媒を分液又は蒸留等により分離除去して得られたポリマーの水溶液又は分散液を得、その状態で使用するか、必要に応じて水を除去して固体状態で使用することができる。
【0071】
反応後の生成物は、アルカリ化合物を添加することで、中和化合物とすることができる。生成物が固体状態であれば、溶媒に溶かした後に、アルカリ化合物を所定量添加することで、中和反応させる。溶媒としては、生成物が溶解できれば良いが、アルカリ化合物も溶解できる溶媒を用いることで、効率的に中和反応できるが、例えば、トルエンやジクロロメタンとアルコールの混合溶媒を用いることができる。
【0072】
アルカリ化合物としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、有機アンモニウム化合物、有機ホスホニウム化合物などが挙げられる。具体的には、炭酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、酸化物、水酸化物などがあるが、これに限定されるものではない。耐熱性、加工性の観点から有機アンモニウム化合物、有機ホスホニウム化合物が好ましく、さらに好ましくは4級アルキルアンモニウム塩、4級アルキルホスホニウム塩があり、中でも、アルキルの炭素数が4以上である、テトラブチルアンモニウム塩、テトラヘキシルアンモニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩、テトラヘキシルアンモニウム塩が好ましい。
【0073】
アルカリ化合物の添加形態は特に制限はなく、水溶液やアルコール溶液として希釈して添加しても良い。
【0074】
アルカリ化合物はそれぞれ1種類単独でも、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0075】
中和反応終了後は、上述の重合反応終了後と同様に、公知の方法で生成物を取り出せばよい。
【0076】
本発明で得られたポリエステル樹脂組成物およびポリスチレン樹脂組成物からなる樹脂組成物は、公知の成形加工方法で成形することができ、フィルム、繊維、ボトル、レンズ、射出成形品など各種製品に加工することができる。
【0077】
本発明の樹脂組成物を各製品に加工する際に、本発明の効果を損なわない範囲で各種添加剤、例えば、顔料および染料を含む着色剤、滑剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、抗菌剤、核剤、可塑剤、離型剤などの添加剤を1種以上添加することもできる。
【0078】
本発明の樹脂組成物は、耐熱性、低複屈折性に優れることを活かし、フィルム、繊維、ボトル、レンズ、射出成形品など各製品として利用することができ、特に透明性が優れるため、フィルム用途に好ましく使用できる。
【0079】
フィルムの製造方法は、装置・方法は特に限定されないが、例えば、本発明で得られる樹脂組成物を、通常の押出機、Tダイにて溶融押出して膜状とし、次いで二軸延伸することによって所望の延伸フィルムを得ることができる。また、溶融押出時に2層またはそれ以上の層を設けることもできる。なお、上記積層フィルムとした場合、各物性や効果の評価は該当の層の樹脂組成物を削りだして実施する。
【0080】
本発明の樹脂組成物より製造された成形品は、耐熱性、低複屈折性、透明性に優れるため、農業用資材、園芸用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品、自動車用部品、光学用部品、電気・電子部品またはその他の用途として有用であり、特に偏光板保護フィルムとして好適である。
【実施例0081】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
【0082】
(1)ポリエステル樹脂組成物Aの固有粘度(単位:dL/g)
ポリエステル樹脂組成物A0.1gを0.001g以内の精度で秤量し、10mLのo-クロロフェノールを用いて100℃×30分間加熱して溶解した。溶液を室温まで冷却し、25℃の水槽中に設置したオストワルド粘度計に該溶液を8mL仕込み、標線を通過する秒数を計測した(A秒)。
【0083】
また、o-クロロフェノールのみ8mL用いて前記と同様に25℃の水槽中に設置したオストワルド粘度計で標線を通過する秒数を計測した(B秒)。
【0084】
固有粘度は次の計算式で計算した。
【0085】
IV=-1+[1+4×K×{(A/B)-1}]^0.5/(2×K×C)
ここでKは0.343,Cは試料溶液の濃度(g/100mL)である。
【0086】
(2)樹脂組成物中のポリエステル樹脂組成物、ポリスチレン樹脂組成物の含有量(単位:重量%)
樹脂組成物試料を重ヘキサフルオロイソプロパノール/重クロロホルム=1/1(体積比)混合溶媒に溶解し、H-NMR測定器にて1H-NMR観察し、各ピークを帰属し、その積分比から、ポリエステル樹脂組成物およびポリスチレン樹脂組成物の含有量(重量%)を求めた。
・装置:日本電子(株)製 “GSX-400”
(3)ポリスチレン樹脂組成物Bの変性率n,m
ポリスチレン樹脂組成物Bを重クロロホルム溶媒に溶解し、H-NMR測定器にてH-NMR観察し、各ピークを帰属し、その積分比から、スチレン繰り返し単位のモル数に対する変性率n,mを求めた。
・装置:日本電子(株)製 “GSX-400”
(4)ポリスチレン樹脂組成物Bの分子量測定
ポリスチレン樹脂組成物B30mgをテトラヒドロフラン(THF)20mLに溶解させた後(ただし、THFへの不溶分が存在する場合には、ろ過により該不溶分を除去した後)、下記に示す分析条件にてGPC法による測定を行い、この測定によって得られたチャートのポリスチレン樹脂によるピーク開始位置(本発明では、便宜上、分子量1.9×10位置を採用)を基準にして水平(横軸と平行)にベースラインを引き、標準ポリスチレンを用いて作成した標準較正曲線により、各分子量を計算する。
【0087】
使用機器:株式会社ジーエルサイエンス製GPC仕様高速液体クロマトグラフ
カラム:昭和電工株式会社製カラム、商品名Shodex GPC KF-806、同KF-805、同KF-803をこの順に直列に連結して使用
カラム温度:40℃
溶媒:THF
流速:1.0mL/分
濃度:0.15w/v%
注入量:0.2mL
検出器:株式会社ジーエルサイエンス製紫外可視検出器、商品名UV702型(測定波長254nm)
分子量分布の計算に用いた較正曲線の分子量範囲:5.4×10~1.9×10
(5)ポリスチレン樹脂組成物BのpH試験
ポリスチレン樹脂組成物B10mgをジメチルスルホキシド(DMSO)0.5mLに溶解させた後、pH試験紙をDMSO溶液に浸し、pH試験紙の変色からpHを決定し、以下のように判断した。
【0088】
〇:pH≧5.0
×:pH<5
(6)ポリエステル樹脂組成物A、ポリスチレン樹脂組成物B、樹脂組成物のガラス転移温度Tg(単位:℃)
JIS 7122(1987年)に準拠し、示差走査熱量計を用いて、窒素雰囲気中で3mgの樹脂を30℃から300℃まで20℃/minの条件で昇温した。次いで、300℃で5分保持した後、40℃/minの条件で30℃まで降温した。さらに、30℃で5分保持した後、30℃から300℃まで20℃/minの条件で昇温した。この昇温時に得られるガラス転移温度を下記式により算出した。
ガラス転移温度=(補外ガラス転移開始温度+補外ガラス転移終了温度)/2
ここで補外ガラス転移開始温度は、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度とした。補外ガラス転移終了温度は、高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度とした。なお、装置は以下のものを用いた。
・測定装置:セイコーインスツル製 “EXSTAR DSC6220”。
【0089】
(7)フィルムの内部ヘイズ(単位:%)
樹脂組成物から得られたフィルムの厚みを膜厚計にて測定し、膜厚をt(μm)とする。本フィルムを、水を溶媒としヘイズメーター(スガ試験機(株)製“HGM-2DP”)にて、測定した。測定したヘイズ値Htを以下の式で換算することで、100μm換算内部ヘイズを算出した。
【0090】
【数1】
【0091】
(8)樹脂組成物のCOOH末端基量(単位:eq/ton)
Mauliceの方法によって測定した。(文献M.J.Maulice,F.Huizinga,Anal.Chem.Acta、22、363(1960))。
【0092】
すなわち、樹脂組成物0.5gを0.001g以内の精度で秤量する。該試料にo-クレゾール/クロロホルムを7/3の質量比で混合した溶媒50mlを加え、加熱して内温が90℃になってから20分間加熱攪拌して溶解する。また混合溶媒のみもブランク液として同様に別途加熱する。溶液を室温に冷却し、1/50Nの水酸化カリウムのメタノール溶液で電位差滴定装置を用いて滴定をおこなう。また、混合溶媒のみのブランク液についても同様に滴定を実施する。
【0093】
樹脂組成物のCOOH末端基量は、以下の式により計算した。
【0094】
COOH末端基量(eq/t)={(V1-V0)×N×f}×1000/S
ここでV1は試料溶液での滴定液量(mL)、V0はブランク液での滴定液量(mL)、Nは滴定液の規定度(N)、fは滴定液のファクター、Sはポリエステル組成物の質量(g)である。
【0095】
(9)樹脂組成物のCOOH末端基増加量ΔCOOH(単位:eq/ton)
樹脂組成物7gを試験管に秤量し、90℃で24時間真空乾燥した。その後、N下、290℃で30分溶融処理を行い、処理前後のCOOH末端基量を測定することで、COOH末端基増加量ΔCOOHを算出した。
【0096】
なおΔCOOHとは、樹脂組成物の末端カルボキシル基量COOHと、該樹脂組成物を窒素雰囲気下290℃で30分間溶融後の末端カルボキシル基量COOHの差COOH-COOHである。
【0097】
(10)樹脂組成物の靭性
90℃24時間真空乾燥した樹脂組成物7gを、280℃に設定した加熱プレス機にて60秒間溶融し、その後280℃1.5MPaで10秒間プレスし、水槽に沈めて冷却することで、縦100mm×横100mm×厚み400μmのシートを作製した。作成したシートに対し、以下のように判断、「〇」または「△」であるとき脆化性が良好であるとした。
【0098】
〇:欠けがなく、シート化可能
△:多少欠けがあるもののシート化可能
×:シート化不可。
【0099】
(11)樹脂組成物の透明性
90℃24時間真空乾燥した樹脂組成物7gを、280℃に設定した加熱プレス機にて60秒間溶融し、その後280℃1.5MPaで10秒間プレスし、水槽に沈めて冷却することで、縦100mm×横100mm×厚み400μmのシートを作製した。作成したシートの外観を観察し、以下のように判断、「〇」または「△」であるとき透明性が良好であるとした。
【0100】
〇:濁りなく透明である。
【0101】
△:わずかに濁りはあるが、透明である。
【0102】
×:不透明である。
【0103】
(12)二軸延伸フィルムの作製
チップ状の樹脂組成物試料を、90℃で24時間真空乾燥し、押出機に投入し、280℃で溶融押出し、フィルターを経て口金に移送した。次に口金から押出されたシート状の溶融物を静電印加により、表面温度25℃の冷却ドラム上に冷却固化させたシート状の未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを延伸ロールにて、ガラス転移温度+5℃(ポリエステル樹脂およびポリスチレン樹脂のガラス転移温度の内、高い温度を採用した)で縦方向に3.3倍延伸し、一軸延伸フィルムを得た。さらにこの一軸延伸フィルムをガラス転移温度+5℃(ポリエステル樹脂およびポリスチレン樹脂のガラス転移温度の内、高い温度を採用した)の熱風雰囲気下で幅方向に3.3倍延伸して、二軸延伸フィルム状の樹脂組成物を作製した。なお、二軸延伸フィルムの厚みは40μmであった。
【0104】
(13)二軸延伸フィルムの複屈折率
上記(12)で作成した二軸延伸フィルムに対し、プリズムカプラにて長手方向の面内屈折率nMD、幅方向の面内屈折率nTD、厚み方向の屈折率nZDとして測定し、下記式にて厚み方向の複屈折率を算出し、以下のように判断し、複屈折率の絶対値が0.05以下であるとき、複屈折率が低く良好であるとした。
【0105】
〇:0.00≦|複屈折率|≦0.01
△:0.01<|複屈折率|≦0.05
×:0.05<|複屈折率|
複屈折率=|(nMD-nTD)/2-nZD|
・測定装置:SAIRON TECHNOLOGY,INC.製 PRISM COUPLER & LOSS MEASUREMENT SPA-4000
・測定波長:632.8nm。
【0106】
(参考例1)ポリエステル樹脂組成物A-1の合成
255℃にて溶解したビスヒドロキシエチルテレフタレート105重量部が仕込まれたエステル化反応器に、テレフタル酸86重量部とエチレングリコール37重量部(テレフタル酸に対し1.15倍モル)からなるスラリーを徐々に添加し、エステル化反応を進行させた。反応系内の温度は245~255℃になるようにコントロールし、反応率が95%に到達した段階でエステル化反応を終了とした。
【0107】
こうして得られた255℃のエステル化反応物105重量部(PET100重量部相当)を重合装置に移送し、リン酸0.01重量部(リン元素として0.9mol/t)を添加し、次いで三酸化二アンチモン0.01重量部(アンチモン元素として0.7mol/t)、酢酸マンガン4水和物0.02重量部(マンガン元素として0.9mol/t)を添加した。
【0108】
その後、重合装置内温度を徐々に290℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させた。固有粘度0.6相当の溶融粘度に到達した時点で、反応を終了とし、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置下部より冷水にストランド状に吐出、カッティングし、ポリエステル樹脂組成物A-1を得た。得られたポリエステル樹脂組成物A-1の物性を表1に示す。
【0109】
(参考例2)ポリエステル樹脂組成物A-2の合成
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル101重量部、エチレングリコール51重量部(ジカルボン酸成分の2.0倍モル)、酢酸マンガン4水和物を0.06重量部(マンガン元素として2.5mol/t)、三酸化二アンチモン0.01重量部(アンチモン元素として0.7mol/t)添加し、180℃で内容物を溶解させた。その後、240℃まで昇温しながらメタノールを留出させた。反応率95%相当量のメタノールが留出した後、リン酸0.01重量部(リン元素として0.9mol/t)を添加し、エステル交換反応を終了した。
【0110】
その後、重合装置内温度を徐々に290℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させた。固有粘度0.6相当の溶融粘度に到達した時点で、反応を終了とし、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置下部より冷水にストランド状に吐出、カッティングし、ポリエステル樹脂組成物A-2を得た。得られたポリエステル樹脂組成物A-2の物性を表1に示す。
【0111】
(参考例3)ポリエステル樹脂組成物A-3の合成
テレフタル酸ジメチル83重量部、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル18重量部、エチレングリコール62重量部(ジカルボン酸成分の2.0倍モル)、酢酸マンガン4水和物を0.06重量部(マンガン元素として2.5mol/t)、三酸化二アンチモン0.01重量部(アンチモン元素として0.7mol/t)添加し、150℃で内容物を溶解させた。その後、240℃まで昇温しながらメタノールを留出させた。反応率95%相当量のメタノールが留出した後、リン酸0.01重量部(リン元素として0.9mol/t)を添加し、エステル交換反応を終了した。
【0112】
その後、重合装置内温度を徐々に290℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させた。固有粘度0.6相当の溶融粘度に到達した時点で、反応を終了とし、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置下部より冷水にストランド状に吐出、カッティングし、ポリエステル樹脂組成物A-3を得た。得られたポリエステル樹脂組成物A-3の物性を表1に示す。
【0113】
(参考例4)ポリエステル樹脂組成物A-4の合成
テレフタル酸ジメチル86重量部、イソフタル酸ジメチル15重量部、エチレングリコール65重量部(ジカルボン酸成分の2.0倍モル)、酢酸マンガン4水和物を0.06重量部(マンガン元素として2.5mol/t)、三酸化二アンチモン0.01重量部(アンチモン元素として0.7mol/t)添加し、150℃で内容物を溶解させた。その後、240℃まで昇温しながらメタノールを留出させた。反応率95%相当量のメタノールが留出した後、リン酸0.01重量部(リン元素として0.9mol/t)を添加し、エステル交換反応を終了した。
【0114】
その後、重合装置内温度を徐々に290℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させた。固有粘度0.6相当の溶融粘度に到達した時点で、反応を終了とし、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置下部より冷水にストランド状に吐出、カッティングし、ポリエステル樹脂組成物A-4を得た。得られたポリエステル樹脂組成物A-4の物性を表1に示す。
【0115】
(参考例5)ポリエステル樹脂組成物A-5の合成
テレフタル酸ジメチル80重量部、5-ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル21重量部、エチレングリコール60重量部(ジカルボン酸成分の2倍モル)、酢酸マンガン4水和物を0.06重量部(マンガン元素として2.5mol/t)、三酸化二アンチモン0.01重量部(アンチモン元素として0.7mol/t)添加し、150℃で内容物を溶解させた。その後、240℃まで昇温しながらメタノールを留出させた。反応率95%相当量のメタノールが留出した後、リン酸0.01重量部(リン元素として0.9mol/t)を添加し、エステル交換反応を終了した。
【0116】
その後、重合装置内温度を徐々に290℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させた。固有粘度0.6相当の溶融粘度に到達した時点で、反応を終了とし、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置下部より冷水にストランド状に吐出、カッティングし、ポリエステル樹脂組成物A-5を得た。得られたポリエステル樹脂組成物A-5の物性を表1に示す。
【0117】
(参考例6)ポリエステル樹脂組成物A-6の合成
テレフタル酸ジメチル86重量部、エチレングリコール49重量部、1,4-シクロヘキサンジメタノール13重量部)、酢酸マンガン4水和物を0.06重量部(マンガン元素として2.5mol/t)、三酸化二アンチモン0.01重量部(アンチモン元素として0.7mol/t)添加し、150℃で内容物を溶解させた。その後、240℃まで昇温しながらメタノールを留出させた。反応率95%相当量のメタノールが留出した後、リン酸0.01重量部(リン元素として0.9mol/t)を添加し、エステル交換反応を終了した。
【0118】
その後、重合装置内温度を徐々に290℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させた。固有粘度0.6相当の溶融粘度に到達した時点で、反応を終了とし、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置下部より冷水にストランド状に吐出、カッティングし、ポリエステル樹脂組成物A-6を得た。得られたポリエステル樹脂組成物A-6の物性を表1に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
(参考例7)ポリスチレン樹脂組成物B-1の合成
フラスコに、原料としてスチレン47重量部、tert-ブトキシスチレン53重量部を入れ、溶媒兼連鎖移動剤として1-ブタノール125重量部に溶解し、開始剤として1,1’-アゾビスシクロヘキサン-1-カルボニトリル7.4重量部を加え、その後、撹拌しながら70℃に加熱して、6時間反応を行い、室温まで冷却した。
【0121】
得られたスチレンとtert-ブトキシスチレンの共重合ポリマー溶液をメタノール1000重量部に添加して、生成物を再沈殿してろ別した。得られた生成物をテトラヒドロフラン500重量部に溶解し、濃硫酸(97質量%)を5重量部添加し、撹拌しながら70℃に加熱して、8.5時間反応を行い、その後室温まで冷却した。
【0122】
得られた共重合体ポリマー溶液を、炭酸水素ナトリウム水溶液(25質量%)にて中和し、その後イオン交換水5000重量部に添加して、生成物を再沈殿してろ別し、さらにイオン交換水にて固形分を洗浄して、80℃×24時間真空乾燥してポリスチレン樹脂組成物B-1を70重量部(収率65%)得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-1の特性を表2に示す。
【0123】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-1は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=0.3、変性率m=0.1、ガラス転移温度115℃であった。
【0124】
(参考例8)ポリスチレン樹脂組成物B-2の合成
溶媒兼連鎖移動剤として1-ブタノールを50重量部とした以外は、参考例6と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-2を75重量部(収率70%)得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-2の特性を表2に示す。
【0125】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-2は、数平均分子量が5.0×10、変性率n=0.3、変性率m=0.1、ガラス転移温度120℃であった。
【0126】
(参考例9)ポリスチレン樹脂組成物B-3の合成
溶媒兼連鎖移動剤として1-ブタノールを10重量部とした以外は、参考例6と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-3を78重量部(収率73%)得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-3の特性を表2に示す。
【0127】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-3は、数平均分子量が1.0×10、変性率n=0.3、変性率m=0.1、ガラス転移温度130℃であった。
【0128】
(参考例10)ポリスチレン樹脂組成物B-4の合成
溶媒兼連鎖移動剤として1-ブタノールを255重量部とした以外は、参考例6と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-4を68重量部(収率63%)得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-4の特性を表2に示す。
【0129】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-4は、数平均分子量が1.0×10、変性率n=0.3、変性率m=0.1、ガラス転移温度113℃であった。
【0130】
(参考例11)ポリスチレン樹脂組成物B-5の合成
溶媒兼連鎖移動剤としての1-ブタノールを使用しなかった以外は、参考例6と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-5を80重量部(収率75%)得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-5の特性を表2に示す。
【0131】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-5は、数平均分子量が5.0×10、変性率n=0.3、変性率m=0.1、ガラス転移温度136℃であった。
【0132】
(参考例12)ポリスチレン樹脂組成物B-6の合成
溶媒兼連鎖移動剤として1-ブタノールを500重量部とした以外は、参考例6と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-6を65重量部(収率61%)得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-6の特性を表2に示す。
【0133】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-6は、数平均分子量が5.0×10、変性率n=0.3、変性率m=0.1、ガラス転移温度110℃であった。
【0134】
(参考例13)ポリスチレン樹脂組成物B-7の合成
溶媒兼連鎖移動剤としての1-ブタノールを使用せず、開始剤として1,1’-アゾビスシクロヘキサン-1-カルボニトリル2重量部とした以外は、参考例6と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-7を82重量部(収率76%)得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-7の特性を表2に示す。
【0135】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-7は、数平均分子量が1.0×10、変性率n=0.3、変性率m=0.1、ガラス転移温度138℃であった。
【0136】
(参考例14)ポリスチレン樹脂組成物B-8の合成
原料としてスチレンを73重量部、tert-ブトキシスチレン27重量部とした以外は、参考例6と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-8を75重量部(収率70%)得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-8の特性を表2に示す。
【0137】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-8は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=0.1、変性率m=0.1、ガラス転移温度100℃であった。
【0138】
(参考例15)ポリスチレン樹脂組成物B-9の合成
原料としてスチレンを使用せず、tert-ブトキシスチレン100重量部とした以外は、参考例6と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-9を69重量部(収率64%)得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-9の特性を表2に示す。
【0139】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-9は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=0.9、変性率m=0.1、ガラス転移温度170℃であった。
【0140】
(参考例16)ポリスチレン樹脂組成物B-10の合成
原料としてスチレンを80重量部、tert-ブトキシスチレン20重量部とした以外は、参考例6と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-10を76重量部(収率71%)得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-10の特性を表2に示す。
【0141】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-10は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=0.05、変性率m=0.1、ガラス転移温度98℃であった。
【0142】
(参考例17)ポリスチレン樹脂組成物B-11の合成
原料としてスチレンを使用せず、tert-ブトキシスチレン100重量部とし、濃硫酸を用いたtert-ブトキシ基の脱保護を15時間行った以外は、参考例6と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-11を63重量部(収率59%)得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-11の特性を表2に示す。
【0143】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-11は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=0.95、変性率m=0.05、ガラス転移温度172℃であった。
【0144】
(参考例18)ポリスチレン樹脂組成物B-12の合成
フラスコに、原料としてスチレン87重量部、tert-ブトキシスチレン13重量部を入れ、溶媒兼連鎖移動剤として1-ブタノール125重量部に溶解し、開始剤として1,1’-アゾビスシクロヘキサン-1-カルボニトリル7.4重量部を加え、その後、撹拌しながら70℃に加熱して、6時間反応を行い、室温まで冷却した。
【0145】
得られたスチレンとtert-ブトキシスチレンの共重合ポリマー溶液をメタノール1000重量部に添加して、生成物を再沈殿してろ別し、さらにイオン交換水にて固形分を洗浄して、80℃×24時間真空乾燥してポリスチレン樹脂組成物B-12を77重量部(収率72%)得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-12の特性を表2に示す。
【0146】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-12は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=0、変性率m=0.1、ガラス転移温度90℃であった。
【0147】
(参考例19)ポリスチレン樹脂組成物B-13の合成
原料としてスチレンを使用せず、tert-ブトキシスチレン100重量部とし、濃硫酸を用いたtert-ブトキシ基の脱保護を20時間行った以外は、参考例6と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-13を63重量部(収率59%)得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-13の特性を表2に示す。
【0148】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-13は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=1.0、変性率m=0、ガラス転移温度172℃であった。
【0149】
(参考例20)ポリスチレン樹脂組成物B-14
フラスコに、原料としてスチレン87重量部、tert-ブトキシスチレン13重量部を入れ、溶媒兼連鎖移動剤として1-ブタノール125重量部に溶解し、開始剤として1,1’-アゾビスシクロヘキサン-1-カルボニトリル7.4重量部を加え、その後、撹拌しながら70℃に加熱して、6時間反応を行い、室温まで冷却した。
【0150】
得られたスチレンとtert-ブトキシスチレンの共重合ポリマー溶液をメタノール1000重量部に添加して、スチレンとtert-ブトキシスチレンの共重合ポリマーを再沈殿してろ別した。フラスコに、スチレンとtert-ブトキシスチレンの共重合ポリマーを100重量部、溶媒としてテトラクロロエタンを1000重量部加え、スチレンとtert-ブトキシスチレンの共重合ポリマーを溶解させた。スルホニル化剤としてメチルスルホン酸無水物を102重量部、触媒としてトリフルオロメタンスルホン酸を14重量部加え、120℃に加熱して10時間溶媒を還流させて反応した。その後、50℃になるまで冷却し、氷水を加えてクエンチした。室温まで温度を降温し、スルホニル化ポリスチレン溶液を得た。得られたスルホニル化ポリスチレン溶液を分液ロートに移し、飽和食塩水1000重量部を用いて2回洗浄し、続いて飽和重曹水1000重量部で2回洗浄した。洗浄後のスルホニル化ポリスチレン溶液をイソプロパノール5000重量部に添加して、生成物を再沈殿して濾別し、さらにイオン交換水にて固形物を洗浄して、70℃×24時間乾燥して、ポリスチレン樹脂組成物B-14を得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-14の特性を表2に示す。
【0151】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-14は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=0.3、変性率m=0.1、ガラス転移温度151℃であった。
【0152】
(参考例21)ポリスチレン樹脂組成物B-15
メチルスルホン酸無水物を34重量部とした以外は、参考例19と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-15を得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-15の特性を表2に示す。
【0153】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-15は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=0.1、変性率m=0.1、ガラス転移温度127℃であった。
【0154】
(参考例22)ポリスチレン樹脂組成物B-16の合成
メチルスルホン酸無水物を306重量部とした以外は、参考例19と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-16を得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-16の特性を表2に示す。
【0155】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-16は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=0.9、変性率m=0.1、ガラス転移温度190℃であった。
【0156】
(参考例23)ポリスチレン樹脂組成物B-17の合成
メチルスルホン酸無水物を17重量部とした以外は、参考例19と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-17を得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-17の特性を表2に示す。
【0157】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-17は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=0.05、変性率m=0.1、ガラス転移温度115℃であった。
【0158】
(参考例24)ポリスチレン樹脂組成物B-18の合成
原料としてスチレン93.5重量部、tert-ブトキシスチレン6.5重量部を使用し、スルホニル化剤としてメチルスルホン酸無水物を323重量部とした以外は、参考例19と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-18を得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-18の特性を表2に示す。
【0159】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-18は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=0.95、変性率m=0.05、ガラス転移温度192℃であった。
【0160】
(参考例25)ポリスチレン樹脂組成物B-19の合成
原料としてtert-ブトキシスチレンを使用せず、スチレン100重量部とし、スルホニル化剤としてメチルスルホン酸無水物を340重量部とした以外は、参考例19と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-19を得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-19の特性を表2に示す。
【0161】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-19は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=1.0、変性率m=0、ガラス転移温度194℃であった。
【0162】
(参考例26)ポリスチレン樹脂組成物B-20の合成
スルホニル化剤としてブチルスルホン酸無水物を50重量部とした以外は、参考例19と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-20を得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-20の特性を表2に示す。
【0163】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-20は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=0.3、変性率m=0.1、ガラス転移温度143℃であった。
【0164】
(参考例27)ポリスチレン樹脂組成物B-21の合成
スルホニル化剤としてドデシルスルホン酸無水物を50重量部とした以外は、参考例19と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-21を得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-21の特性を表2に示す。
【0165】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-21は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=0.3、変性率m=0.1、ガラス転移温度128℃であった。
【0166】
(参考例28)ポリスチレン樹脂組成物B-22の合成
原料としてスチレン56重量部、tert-ブトキシスチレン44重量部とし、濃硫酸を用いたtert-ブトキシ基の脱保護を20時間行った以外は、参考例6と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-22を得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-22の特性を表2に示す。
【0167】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-22は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=0.3、変性率m=0.03、ガラス転移温度116℃であった。
【0168】
(参考例29)ポリスチレン樹脂組成物B-23の合成
原料としてスチレン27重量部、tert-ブトキシスチレン73重量部とし、濃硫酸を用いたtert-ブトキシ基の脱保護を5時間行った以外は、参考例6と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-23を得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-23の特性を表2に示す。
【0169】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-23は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=0.3%、変性率m=0.25、ガラス転移温度112℃であった。
【0170】
(参考例30)ポリスチレン樹脂組成物B-24の合成
原料としてスチレン60重量部、tert-ブトキシスチレン40重量部とし、濃硫酸を用いたtert-ブトキシ基の脱保護を20時間行った以外は、参考例6と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-24を得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-24の特性を表2に示す。
【0171】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-24は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=0.3、変性率m=0、ガラス転移温度117℃であった。
【0172】
(参考例31)ポリスチレン樹脂組成物B-25の合成
原料としてスチレン6重量部、tert-ブトキシスチレン94重量部とし、濃硫酸を用いたtert-ブトキシ基の脱保護を3時間行った以外は、参考例6と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-25を得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-25の特性を表2に示す。
【0173】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-25は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=0.3、変性率m=0.6、ガラス転移温度109℃であった。
【0174】
(参考例32)ポリスチレン樹脂組成物B-26の合成
原料としてスチレン55重量部、エトキシスチレン45重量部とし、濃硫酸を用いたエトキシ基の脱保護を12時間行った以外は、参考例6と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-26を得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-26の特性を表2に示す。
【0175】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-26は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=0.3、変性率m=0.1、ガラス転移温度113℃であった。
【0176】
(参考例33)ポリスチレン樹脂組成物B-27の合成
原料としてスチレン47重量部、n-ブトキシスチレン53重量部とし、濃硫酸を用いたn-ブトキシ基の脱保護を12時間行った以外は、参考例6と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-27を得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-27の特性を表2に示す。
【0177】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-27は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=0.3、変性率m=0.1、ガラス転移温度108℃であった。
【0178】
(参考例34)ポリスチレン樹脂組成物B-28の合成
原料としてスチレン30重量部、オクチルオキシスチレン70重量部とし、濃硫酸を用いたオクチルオキシ基の脱保護を12時間行った以外は、参考例6と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-28を得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-28の特性を表2に示す。
【0179】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-28は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=0.3、変性率m=0.1、ガラス転移温度105℃であった。
【0180】
(参考例35)ポリスチレン樹脂組成物B-29の合成
原料としてスチレン13重量部、ドデシルオキシスチレン87重量部とし、濃硫酸を用いたドデシルオキシ基の脱保護を12時間行った以外は、参考例6と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-29を得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-29の特性を表2に示す。
【0181】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-29は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=0.3、変性率m=0.1、ガラス転移温度100℃であった。
【0182】
(参考例36)ポリスチレン樹脂組成物B-30の合成
脱保護後に炭酸水素ナトリウム水溶液による中和を行わない以外は、参考例7と同様にしてポリスチレン樹脂組成物B-30を得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-30の特性を表2に示す。
【0183】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-30は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=0.3、変性率m=0.1、ガラス転移温度115℃であった。
【0184】
(参考例37)ポリスチレン樹脂組成物B-31の合成
フラスコに、原料としてスチレン100重量部を入れ、溶媒兼連鎖移動剤として1-ブタノール125重量部に溶解し、開始剤として1,1’-アゾビスシクロヘキサン-1-カルボニトリル7.4重量部を加え、その後、撹拌しながら70℃に加熱して、6時間反応を行い、室温まで冷却した。
【0185】
得られたポリスチレン溶液をメタノール1000重量部に添加して、生成物を再沈殿してろ別し、さらにイオン交換水にて固形分を洗浄して、80℃×24時間真空乾燥してポリスチレン樹脂組成物B-31を得た。得られたポリスチレン樹脂組成物B-31の特性を表2に示す。
【0186】
得られたポリスチレン樹脂組成物B-31は、数平均分子量が3.0×10、変性率n=0、変性率m=0、ガラス転移温度90℃であった。
【0187】
【表2】
【0188】
(実施例1)
表3に記載の通り、ポリエステル樹脂組成物A-1とポリスチレン樹脂組成物B-1を記載の配合比(50/50重量比)にてブレンドし、90℃で24時間真空乾燥した。その後、シリンダー温度を280℃、スクリュー回転数を150rpmとした二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX30α型)に供給して溶融混練した。ダイから吐出されたガットを、10℃に温調した水を満たした冷却バス中を10秒間かけて通過させることにより急冷した後、ストランドカッターによりペレット化し樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の特性を表3に示す。
【0189】
実施例1で得られた樹脂組成物は、靱性、透明性および複屈折率は良好であった。
【0190】
(実施例2~7)
ポリスチレン樹脂組成物の種類を表3に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の特性を表3に示す。
【0191】
実施例2、3で得られた樹脂組成物は、靱性、透明性および複屈折率は良好であった。
【0192】
実施例4で得られた樹脂組成物は、シート化した際に欠けが見られたが、透明性、複屈折率は良好であった。
【0193】
実施例5で得られた樹脂組成物は、シート化した際にわずかに濁りが見られ、複屈折率が高い傾向であったが、靭性は良好であった。
【0194】
実施例6で得られた樹脂組成物は、シート化した際に欠けが見られたが、透明性、複屈折率は良好であった。
【0195】
実施例7で得られた樹脂組成物は、シート化した際にわずかに濁りが見られ、複屈折率が高い傾向であったが、靭性は良好であった。
【0196】
【表3】
【0197】
(実施例8~11、比較例1、2)
ポリスチレン樹脂組成物の種類を表4に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の特性を表4に示す。
【0198】
実施例8で得られた樹脂組成物は、複屈折率が高い傾向であったが、靭性および透明性は良好であった。
【0199】
実施例9で得られた樹脂組成物は、シート化した際に欠けが見られたが、透明性および複屈折率は良好であった。
【0200】
実施例10で得られた樹脂組成物は、シート化した際にわずかに濁りがあり、複屈折率が高い傾向であったが、靭性は良好であった。
【0201】
実施例11で得られた樹脂組成物は、シート化した際に欠けが見られたが、透明性および複屈折率は良好であった。
【0202】
比較例1で得られた樹脂組成物は、シート化した際に欠けが見られ、濁りがあり複屈折率は測定できなかった。
【0203】
比較例2で得られた樹脂組成物は、脆くシート化はできなかったが、透明性、複屈折率は良好であった。
【0204】
【表4】
【0205】
(実施例12~18、比較例3)
ポリスチレン樹脂組成物の種類を表5に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の特性を表5に示す。
【0206】
実施例12、13で得られた樹脂組成物は、靱性、透明性および複屈折率は良好であった。
【0207】
実施例14で得られた樹脂組成物は、シート化した際に欠けが見られ、わずかに濁りがあり、複屈折率が高い傾向であった。
【0208】
実施例15で得られた樹脂組成物は、シート化した際にわずかに濁りがあり複屈折率が高い傾向であったが、靭性は良好であった。
【0209】
実施例16で得られた樹脂組成物は、シート化した際に欠けが見られ、わずかに濁りがあり、複屈折率が高い傾向であった。
【0210】
実施例17で得られた樹脂組成物は、複屈折率が高い傾向であったが、靭性および透明性は良好であった。
【0211】
実施例18で得られた樹脂組成物は、シート化した際に欠けが見られ、わずかに濁りがあり、複屈折率が高い傾向であった。
【0212】
比較例3で得られた樹脂組成物は、シート化した際に欠けが見られ、濁りがあり複屈折率は測定できなかった。
【0213】
【表5】
【0214】
(実施例19~24、比較例4、5)
ポリスチレン樹脂組成物の種類を表6に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の特性を表6に示す。
【0215】
実施例19で得られた樹脂組成物は、シート化した際に欠けが見られ、わずかに濁りがあったが、複屈折率は良好であった。
【0216】
実施例20で得られた樹脂組成物は、靱性、透明性および複屈折率は良好であった。
【0217】
実施例21で得られた樹脂組成物は、シート化した際にわずかに濁りがあり複屈折率が高い傾向であったが、靭性は良好であった。
実施例22、23で得られた樹脂組成物は、靱性、透明性および複屈折率は良好であった。
【0218】
実施例24で得られた樹脂組成物は、シート化した際にわずかに濁りがあり複屈折率が高い傾向であったが、靭性は良好であった。
【0219】
比較例4で得られた樹脂組成物は、脆くシート化できなかった。またわずかに濁りがあり、複屈折率が高い傾向であった。
【0220】
比較例5で得られた樹脂組成物は、シート化した際に濁りがあり複屈折率を測定できなかったが、靭性は良好であった。
【0221】
【表6】
【0222】
(実施例25~29)
ポリエステル樹脂組成物の種類を表7に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の特性を表7に示す。
【0223】
実施例25で得られた樹脂組成物は、複屈折率が高い傾向であったが、靭性および透明性は良好であった。
【0224】
実施例26~29で得られた樹脂組成物は、靱性、透明性および複屈折率は良好であった。
【0225】
【表7】
【0226】
(実施例30~33、比較例6、7)
ポリエステル樹脂組成物とポリスチレン樹脂組成物の配合比を表8に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の特性を表8に示す。
【0227】
実施例30で得られた樹脂組成物は、シート化した際に欠けが見られ、わずかに濁りがあり、複屈折率が高い傾向であった。
【0228】
実施例31、32で得られた樹脂組成物は、靱性、透明性および複屈折率は良好であった。
【0229】
実施例33で得られた樹脂組成物は、複屈折率が高い傾向であったが、靭性および透明性は良好であった。
【0230】
比較例6で得られた樹脂組成物は、複屈折率が高かったが、靭性および透明性は良好であった。
【0231】
比較例7で得られた樹脂組成物は、シート化した際に欠けが見られ、複屈折率が高かったが、透明性は良好であった。
【0232】
【表8】
【0233】
(実施例34、比較例8)
ポリスチレン樹脂組成物の種類を表9に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の特性を表9に示す。
【0234】
実施例34で得られた樹脂組成物は、シート化した際に欠けが見られたが、透明性および複屈折率は良好であった。
【0235】
比較例8で得られた樹脂組成物は、シート化した際に欠けが見られ、濁りがあり複屈折率を測定できなかった。
【0236】
(比較例9)
シード法によるジビニルベンゼン80質量%、エチルビニルベンゼン15質量%、スチレン5質量%からなるモノマーを吸着させる方法によって得た体積平均粒径0.3μmのポリスチレン架橋粒子(架橋度80%)の水スラリーを、ポリエステル樹脂組成物A-1に、ベント式二軸混練機を用いて含有させ、体積平均粒径0.3μmのポリスチレン架橋粒子をポリエステルに対し10質量%含有した樹脂ペレットとした。得られたペレットを、上記(11)の方法にて二軸延伸フィルムとした。なお、二軸延伸フィルム作製時の延伸温度は85℃、熱処理温度を230℃とした。得られた樹脂組成物の特性を表9に示す。
【0237】
比較例9で得られた樹脂組成物は、シート化した際に濁りがあり複屈折率が測定できなかったが、靭性は良好であった。
【0238】
【表9】