(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116006
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】茶葉摘採機
(51)【国際特許分類】
A01D 46/04 20060101AFI20230815BHJP
【FI】
A01D46/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018502
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000145116
【氏名又は名称】株式会社寺田製作所
(72)【発明者】
【氏名】雪丸 誠一
【テーマコード(参考)】
2B075
【Fターム(参考)】
2B075HA09
2B075HB01
2B075HC05
2B075HC11
2B075HD01
(57)【要約】
【課題】本発明においては、従来の問題を解決すべく、摘採した茶葉を物理的に収容手段へと移送する省エネルギー型の茶葉摘採機を提供することを目的としている。
【解決手段】 本発明の茶葉摘採機の第1手段は、
茶畝を跨ぐ門型フレームと、茶畝の左右の門型フレームに備えられた走行手段と、茶葉の摘採手段と、摘採した茶葉の収容手段と、前記摘採手段から前記収容手段へ茶葉を移送する移送手段とより構成し、該移送手段は、茶葉との接触面を稼働することによって物理的に移送をおこなう。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶畝を跨ぐ門型フレームと、茶畝の左右の門型フレームに備えられた走行手段と、茶葉の摘採手段と、摘採した茶葉の収容手段と、前記摘採手段から前記収容手段へ茶葉を移送する移送手段とより構成し、該移送手段は、茶葉との接触面を稼働することによって物理的に移送をおこなうことを特徴とする茶葉摘採機。
【請求項2】
前記移送手段は、電気モータにより駆動することを特徴とする請求項1記載の茶葉摘採機。
【請求項3】
前記移送手段には、送風を用いないことを特徴とする請求項1または2記載の茶葉摘採機。
【請求項4】
前記移送手段は、摘採した茶葉を後方の収容手段へ向けて移送することを特徴とする請求項1、2または3記載の茶葉摘採機。
【請求項5】
前記移送手段は、摘採した茶葉を幅方向へ向けて移送することを特徴とする請求項1、2、3または4記載の茶葉摘採機。
【請求項6】
前記走行手段は、電気モータによる駆動とすることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の茶葉摘採機。
【請求項7】
前記摘採手段が左右方向に複数存在し、左右方向の複数畝の収穫作業を同時におこなうことを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の茶葉摘採機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶葉を収穫する茶葉摘採機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在の茶園の多くは、1800mmの間隔で複数畝が平行して定植されており、R3000の扇状断面を持っている。現在の茶葉の収穫作業においては、収穫時には、5~20cmほどに成長した収穫対象となる茶枝葉の新芽を、茶樹の上面幅をカバーする長さを持つ摘採手段により刈り取ったのち、送風ファンにより発生された送風力を利用して、所定の収容袋やコンテナなどの収容手段へ移送をおこなっていた。(特許文献1参照)
【0003】
送風力を利用して茶葉を収容手段へ移送することは、構造が簡便となり、配置の自由度が高いことなどのメリットがあったため、茶葉の収穫作業には以前より利用されていた。
【0004】
しかし、次にあげるようないくつかの問題があった。送風ファンの稼働には大きな騒音が発生し、収穫作業中には会話ができないほどであった。そのため、収穫作業中には、近隣にも迷惑がかかり、騒音問題となるほどだった。次に、送風力を発生するための動力要求量が大きく、連続して安定した動力供給源を要求されるため、内燃機関を動力として用いる方法しか選択できなかった。
【0005】
また、同一茶園の場合でも茶葉の生育にはムラがあり、同じように収穫作業をしても、茶葉の移送量には大きなムラがあり、移送不良を避けるためには常に一定量の送風力を供給する必要があった。これは、移送量が少ないときには過剰な動力を消費、廃棄している状態であり、非常に無駄が多く、近年問題視されている低炭素化、省エネルギー化のニーズに反するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特に送風の為の要求動力が大きく、容易に解決するためには内燃機関を用いる他なく、電動化による省力化、環境適合、低騒音化の妨げとなっていた。本発明においては、従来の問題を解決すべく、摘採した茶葉を物理的に収容手段へと移送する省エネルギー型の茶葉摘採機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の茶葉摘採機の第1手段は、
茶畝を跨ぐ門型フレームと、茶畝の左右の門型フレームに備えられた走行手段と、茶葉の摘採手段と、摘採した茶葉の収容手段と、前記摘採手段から前記収容手段へ茶葉を移送する移送手段とより構成し、該移送手段は、茶葉との接触面を稼働することによって物理的に移送をおこなう。
本発明の第2手段は、前記第1手段において、
前記移送手段は、電気モータにより駆動する。
本発明の第3手段は、前記第1または2手段において、
前記移送手段には、送風を用いない。
本発明の第4手段は、前記第1、2または3手段において、
前記移送手段は、摘採した茶葉を後方の収容手段へ向けて移送する。
本発明の第5手段は、前記第1、2、3または4手段において、
前記移送手段は、摘採した茶葉を幅方向へ向けて移送する。
【0009】
本発明の第6手段は、前記第1、2、3、4または5手段において、
前記走行手段は、油圧や内燃機関の動力を使用せず、電気モータによる駆動とする。
本発明の第7手段は、前記第1、2、3、4、5または6手段において、
前記摘採手段が左右方向に複数存在し、左右方向の複数畝の収穫作業を同時におこなう。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、送風力を用いることなく収穫物である茶葉を移送することができるようになる。送風力を使わないことによって、送風ファンなどから発生していた騒音から解放され、オペレーターの負担軽減につながるだけでなく、周囲の住民に対する騒音公害の発生を防ぐことができ、粉じんなどの発生を抑制することができ、様々な公害や労働環境の改善を図ることができる。
【0011】
また、送風をやめることにより、要求動力が小さくなり、省エネルギー化、低炭素化が実現可能となり、要求動力により実現できなかった複数畝型の収穫作業機を実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は茶葉摘採機全体の斜視図である。(実施例1)
【
図2】
図2は
図1の門型フレームと走行手段を除いた斜視図である。(実施例1)
【
図4】
図4は摘採手段、移送手段の斜視図である。(実施例1)
【
図8】
図8は別の摘採手段の例の斜視図である。(実施例2)
【
図9】
図9は3畝同時に摘採する実施例の斜視図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明について、実施例を用いて説明する。
図1~7はバリカン刃で摘採する場合の実施例1、
図8は回転刃で摘採する場合の実施例2、
図9は複数畝(具体的には3畝)を同時に摘採する場合の実施例3である。
【実施例0014】
茶葉摘採機1は茶畝Tを跨ぐ門型フレーム2と門型フレーム2の下部に設けた走行手段3により、茶園を走行する。走行手段3は無端帯11を電気モータ12により駆動している。無端帯11の代わりに車輪でもよく、また、ガイドレールを備えてそのガイドレールに沿って走行するようにしてもよい。電気モータ12の代わりに油圧や内燃機関を利用することも可能である。この門型フレーム2には、茶葉の摘採手段4、茶葉の収容手段5、茶葉の移送手段6を搭載する。本実施例1の茶葉の摘採手段4は往復摺動式のバリカン刃15を採用しており、このバリカン刃15は油圧モータ16により駆動する。本実施例1の茶葉の収容手段5はコンテナであり、多量の茶葉を収容可能であるが、コンテナではなく、袋の収容手段でも同様である。
【0015】
本実施例1の茶葉の移送手段6は、移送手段A、移送手段B、移送手段C、移送手段Dを組み合わせている。移送手段Aは、回転体21とこの回転体21を回転させる電気モータ22とよりなり、この移送手段A(回転体21)はバリカン刃15のほぼ直上に設けられ、摘採した茶葉を後方に掃き出し、後方へ移送する。
【0016】
移送手段Bは、複数枚の羽根31をチェーンコンベヤ32に取付け、チェーンコンベヤ32を電気モータ33により水平方向に回転させる。羽根31は、摘採した茶葉を左右方向に移動させることができるように、取り付ける。本実施例では、チェーンコンベヤ32を左右に2ヶ設け、左右の茶葉を幅方向の中央へ移送する。
【0017】
移送手段Cは、電気モータ42で駆動するベルトコンベヤ41であり、表面には桟43を備えていて、茶葉を後方へ移送する。移送手段Dは、電気モータ52で駆動するベルトコンベヤ51であり、表面には桟53を備えていて、茶葉を後方へ移送する。いずれのベルトコンベヤ41、51ともに、始端より終端が上方になるように傾斜しており、移送手段Dのベルトコンベヤ51の終端は収容手段5の受入口に臨んでいる。
【0018】
本実施例1の茶葉摘採機1の動作を説明する。走行手段3を駆動して、茶畝Tへ茶葉摘採機1を移動する。茶畝Tへ差し掛かるところで、摘採手段4、移送手段5を駆動させ、茶葉の摘採を始める。バリカン刃15によって摘採された茶葉は、直上の移送手段Aの回転体21によって後方へ移送される。回転体21の後方へ移送された茶葉は、移送手段Bの羽根31に?き寄せられて、中央へ移送される。このとき、バリカン刃15の中央で摘採された茶葉は、移送手段Bで移送される必要はない。中央付近の茶葉は移送手段Cのベルトコンベヤ42によって、後方の上方へ移送される。この時、桟43により茶葉は滑ることなく、後方の上方へ移送することができる。その後、移送手段Dのベルトコンベヤ51により、茶葉を更に上方へ移送し、ベルトコンベヤ51の終端から茶葉を収容手段5へ投入する。これを茶畝Tが終わるまで、または、収容手段5がいっぱいになるまで続け、摘採をおこなう。これらの操作は、茶葉摘採機1に設けた運転席(図示しない)によりおこなうことができるが、リモートによってもおこなうことができる。
【0019】
茶畝TはR3000の扇状断面形状をしているため、本実施例1では、茶畝Tの両端の茶葉を後方へ移送するために、移送手段Bを利用したが、茶畝TがR3000の扇状断面形状でなく、水平である場合や、移送手段C、Dのベルトコンベヤ41、51の幅が摘採手段4の幅と同じである場合は、移送手段Bは不要となる。また、茶畝の両端の茶葉を移送手段Bにて幅方向の中央へ移送したが、移送手段C、Dとの組み合わせによっては、中央へ移送するとは限らない。チェーンコンベヤ32を1ヶとして、左右のどちらかへ移送することも考えられる。
【0020】
本実施例1では、都合により移送手段Cと移送手段Dと別の移送手段としたが、合わせて1本の移送手段としても、可能である。移送手段は、物理的な移送によって、茶葉を後方へ移送することができればよく、更には、高低差を解消して、最終的には収容手段5へ茶葉を移送することができればよい。
本実施例2の茶葉の摘採手段4はシリンダー式の回転刃18を採用しており、この回転刃18は電気モータ19により駆動する。実施例1のバリカン刃15を本実施例2の回転刃18へ替えることで、油圧モータを無くすことができる。本実施例2の移送手段6としては、実施例1で用いた移送手段B、移送手段C、移送手段Dを組み合わせて、茶葉を収容手段5へ移送する。回転刃18が実施例1で用いた移送手段Aの機能を持っているため、回転刃18によって茶葉を摘採すると、茶葉を後方へ移送することができる。