(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116051
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】電子部品ハンドリング装置、及び、電子部品試験装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/26 20200101AFI20230815BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
G01R31/26 J
G01R31/26 Z
H01L21/60 311T
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018594
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐也
【テーマコード(参考)】
2G003
5F044
【Fターム(参考)】
2G003AA07
2G003AC03
2G003AD03
2G003AG11
2G003AG12
2G003AH05
2G003AH07
5F044PP16
5F044PP19
(57)【要約】
【課題】応答性の向上を図ることができると共に、ヒータの損傷の防止を図ることができる電子部品ハンドリング装置を提供する。
【解決手段】DUT300をハンドリングするハンドラ3は、DUT300をソケット2に向かって押圧することで、DUT300とソケット2とを電気的に接続するプッシャ6を備え、プッシャ6は、DUT300の温度を調整する温度調整装置7を備え、温度調整装置7は、加熱源であるヒータユニット71を含み、ヒータユニット71は、面状ヒータ72と、面状ヒータ72の第1の主面721aに配置された第1の伝熱材73と、面状ヒータ72の第2の主面721bに配置された第2の伝熱材74と、を含んでいる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DUT、又は、前記DUTを収容したキャリアをハンドリングする電子部品ハンドリング装置であって、
前記DUT、又は、前記キャリアをソケットに向かって押圧することで、前記DUTとソケットとを電気的に接続する押圧装置を備え、
前記押圧装置は、前記DUTの温度を調整する温度調整装置を備え、
前記温度調整装置は、加熱源であるヒータユニットを含み、
前記ヒータユニットは、
面状ヒータと、
前記面状ヒータの一方の主面である第1の主面に配置された第1の伝熱材と、
前記面状ヒータの他方の主面である第2の主面に配置された第2の伝熱材と、を含む電子部品ハンドリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記第1及び第2の伝熱材は、前記面状ヒータからの熱を、前記面状ヒータの主面と平行な第1の方向に優先的に拡散させる電子部品ハンドリング装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記第1及び第2の伝熱材は、グラファイトシートである電子部品ハンドリング装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記ヒータユニットは、400μm以下の厚さを有するシート状の積層体である電子部品ハンドリング装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記面状ヒータは、
第1の樹脂層と、
前記第1の樹脂層に積層された第2の樹脂層と、
前記第1及び第2の樹脂層の間に挟まれた金属配線層と、を含む電子部品ハンドリング装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記面状ヒータは、ポリイミドヒータである電子部品ハンドリング装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記温度調整装置は、冷却源であると共に、前記ヒータユニットと接触しているクーラユニットをさらに備え、
前記クーラユニットは、冷媒を流通させる流通路を含む電子部品ハンドリング装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記押圧装置は、前記クーラユニットを前記ヒータユニットに向かって付勢する付勢機構をさらに備え、
前記クーラユニットは、前記付勢機構により付勢されていることによって前記ヒータユニットを押圧している電子部品ハンドリング装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記押圧装置は、前記DUT、又は、前記キャリアに接触するコンタクトプレートをさらに備え、
前記クーラユニットは、前記付勢機構により付勢されていることによって前記ヒータユニットを押圧し、
前記ヒータユニットは、前記クーラユニットにより押圧されることで、前記コンタクトプレートに接触している電子部品ハンドリング装置。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか一項に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記クーラユニットは、
冷媒を噴射する噴射口を有するノズル部材と、
前記噴射口と対向し、前記噴射口と離隔するように配置されていると共に、前記ノズル部材から冷媒を噴射されるコールドプレートと、を有し、
前記流通路は、前記ノズル部材と前記コールドプレートの間に形成されたエアギャップを含み、
前記噴射口から噴射された冷媒は、前記コールドプレートに到達した後に前記エアギャップの中を流通する電子部品ハンドリング装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記コールドプレートは、前記ノズル部材と対向する第1の対向面を有し、
前記ノズル部材は、前記コールドプレートと対向する第2の対向面を有し、
前記エアギャップは、前記第1の対向面と前記第2の対向面との間に形成されており、
前記第1及び第2の対向面は、いずれも平面である電子部品ハンドリング装置。
【請求項12】
請求項11に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記噴射口は、前記第2の対向面の略中心に配置されており、
前記第2の対向面は、前記噴射口から前記ノズル部材の径方向外側に延在する複数の溝を含み、
前記複数の溝は、略等間隔に設けられている電子部品ハンドリング装置。
【請求項13】
請求項12に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記溝の幅は、前記第2の対向面の中心に近づくに従って広くなっている電子部品ハンドリング装置。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記第2の対向面は、前記溝の外側に形成されていると共に、環状に延在している段差を含み、
前記段差の外側における前記第2の対向面の高さは、前記段差の内側における前記第2の対向面の高さよりも高くなっている電子部品ハンドリング装置。
【請求項15】
請求項10~14のいずれか一項に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記エアギャップの厚みは、1mm以下である電子部品ハンドリング装置。
【請求項16】
請求項10~15のいずれか一項に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記押圧装置は、前記DUT、又は、前記キャリアに接触するコンタクトプレートをさらに備え、
前記ヒータユニットは、前記コンタクトプレートに接触しており、
前記コールドプレートは、前記ヒータユニットに接触しており、前記ヒータユニットを前記コンタクトプレートに向かって押圧している電子部品ハンドリング装置。
【請求項17】
請求項16に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記コールドプレートの厚みと、前記ヒータユニットの厚みと、前記コンタクトプレートの厚みと、の合計は、2mm以下である電子部品ハンドリング装置。
【請求項18】
DUTを試験する電子部品試験装置であって、
請求項1~17のいずれか一項に記載の電子部品ハンドリング装置と、
ソケットを有するテスタと、を備えた電子部品試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路素子等の被試験電子部品(以下、単に「DUT」(Device Under Test)と称する。)の試験に用いられる電子部品ハンドリング装置、及び、電子部品試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品試験装置は、DUTを搬送するハンドラを備えている(例えば特許文献1参照)。このハンドラは、コンタクトアームによりDUTを吸着保持して、テストヘッドのソケットに押し付ける。こうしたハンドラのコンタクトアームの下部には、DUTをソケットに押し付けるためのプッシャが設けられており、プッシャの内部には、DUTの温度制御を行うための加熱器が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の電子部品試験装置における加熱器としては、一般的に、セラミックに発熱エレメントを内蔵したセラミックヒータが用いられている。しかしながら、セラミックヒータは、質量が大きいので熱容量が大きく、セラミックヒータの昇温速度が遅くなってしまう。このため、このセラミックヒータを用いた温度制御では、応答性が悪化してしまう場合がある、という問題がある。
【0005】
さらに、このようなセラミックヒータでは、発熱エレメントが急激に発熱した場合に、セラミックが局所的に熱膨張して歪むことにより、セラミックヒータが損傷してしまう場合がある、という問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、応答性の向上を図ることができると共に、ヒータの損傷の防止を図ることができる電子部品ハンドリング装置及び電子部品試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明に係る電子部品ハンドリング装置は、DUT、又は、前記DUTを収容したキャリアをハンドリングする電子部品ハンドリング装置であって、前記DUT、又は、前記キャリアをソケットに向かって押圧することで、前記DUTとソケットとを電気的に接続する押圧装置を備え、前記押圧装置は、前記DUTの温度を調整する温度調整装置を備え、前記温度調整装置は、加熱源であるヒータユニットを含み、前記ヒータユニットは、面状ヒータと、前記面状ヒータの一方の主面である第1の主面に配置された第1の伝熱材と、前記面状ヒータの他方の主面である第2の主面に配置された第2の伝熱材と、を含む電子部品ハンドリング装置である。
【0008】
[2]上記発明において、前記第1及び第2の伝熱材は、前記面状ヒータからの熱を、前記面状ヒータの主面と平行な第1の方向に優先的に拡散させていてもよい。
【0009】
[3]上記発明において、前記第1及び第2の伝熱材は、グラファイトシートであってもよい。
【0010】
[4]上記発明において、前記ヒータユニットは、400μm以下の厚さを有するシート状の積層体であってもよい。
【0011】
[5]上記発明において、前記面状ヒータは、第1の樹脂層と、前記第1の樹脂層に積層された第2の樹脂層と、前記第1及び第2の樹脂層の間に挟まれた金属配線層と、を含んでいてもよい。
【0012】
[6]上記発明において、前記面状ヒータは、ポリイミドヒータであってもよい。
【0013】
[7]上記発明において、前記温度調整装置は、冷却源であると共に、前記ヒータユニットと接触しているクーラユニットをさらに備え、前記クーラユニットは、冷媒を流通させる流通路を含んでいてもよい。
【0014】
[8]上記発明において、前記押圧装置は、前記クーラユニットを前記ヒータユニットに向かって付勢する付勢機構をさらに備え、前記クーラユニットは、前記付勢機構により付勢されていることによって前記ヒータユニットを押圧していてもよい。
【0015】
[9]上記発明において、前記押圧装置は、前記DUT、又は、前記キャリアに接触するコンタクトプレートをさらに備え、前記クーラユニットは、前記付勢機構により付勢されていることによって前記ヒータユニットを押圧し、前記ヒータユニットは、前記クーラユニットにより押圧されることで、前記コンタクトプレートに接触していてもよい。
【0016】
[10]上記発明において、前記クーラユニットは、冷媒を噴射する噴射口を有するノズル部材と、前記噴射口と対向し、前記噴射口と離隔するように配置されていると共に、前記ノズル部材から冷媒を噴射されるコールドプレートと、を有し、前記流通路は、前記ノズル部材と前記コールドプレートの間に形成されたエアギャップを含み、前記噴射口から噴射された冷媒は、前記コールドプレートに到達した後に前記エアギャップの中を流通すしてもよい。
【0017】
[11]上記発明において、前記コールドプレートは、前記ノズル部材と対向する第1の対向面を有し、前記ノズル部材は、前記コールドプレートと対向する第2の対向面を有し、前記エアギャップは、前記第1の対向面と前記第2の対向面との間に形成されており、前記第1及び第2の対向面は、いずれも平面であってもよい。
【0018】
[12]上記発明において、前記噴射口は、前記第2の対向面の略中心に配置されており、前記第2の対向面は、前記噴射口から前記ノズルの径方向外側に延在する複数の溝を含み、前記複数の溝は、略等間隔に設けられていてもよい。
【0019】
[13]上記発明において、前記溝の幅は、前記第2の対向面の中心に近づくに従って広くなっていてもよい。
【0020】
[14]上記発明において、前記第2の対向面は、前記溝の外側に形成されていると共に、環状に延在している段差を含み、前記段差の外側における前記第2の対向面の高さは、前記段差の内側における前記第2の対向面の高さよりも高くなっていてもよい。
【0021】
[15]上記発明において、前記エアギャップの厚みは、1mm以下であってもよい。
【0022】
[16]上記発明において、前記押圧装置は、前記DUT、又は、前記キャリアに接触するコンタクトプレートをさらに備え、前記ヒータユニットは、前記コンタクトプレートに接触しており、前記コールドプレートは、前記ヒータユニットに接触しており、前記ヒータユニットを前記コンタクトプレートに向かって押圧していてもよい。
【0023】
[17]上記発明において、前記コールドプレートの厚みと、前記ヒータユニットの厚みと、前記コンタクトプレートの厚みと、の合計は、2mm以下である電子部品ハンドリング装置。
【0024】
[18]本発明に係る電子部品試験装置は、DUTを試験する電子部品試験装置であって、上記の電子部品ハンドリング装置と、ソケットを有するテスタと、を備えた電子部品試験装置である。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る電子部品ハンドリング装置及び電子部品試験装置では、温度調整装置のヒータユニットが面状ヒータを有している。この面状ヒータは厚みが薄いため、面状ヒータの熱容量は、上述のようなセラミックヒータの熱容量と比較して小さくなる。このため、面状ヒータを使用したヒータユニットの昇温速度を向上させることができるので、応答性の向上を図ることができる。
【0026】
また、面状ヒータの第1及び第2の主面に第1及び第2の伝熱材を設けているため、面状ヒータを急激に発熱させた場合であっても、第1及び第2の伝熱材により面状ヒータから熱を逃すことができる。このため、面状ヒータの損傷の防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態における電子部品試験装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態におけるプッシャのDUTを吸着保持する前の状態を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態におけるプッシャのDUTを吸着保持した後の状態を示す断面図である。
【
図4】
図4(a)は
図2のIVa部の拡大断面図であり、
図4(b)は
図3のIVb部の拡大断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態におけるリテーナを下方から見た斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態におけるコンタクトプレート及び温度調整装置の拡大断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態のヒータユニットの構成の一例を示す平面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態におけるノズル部材を示す下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
図1は、本実施形態における電子部品試験装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2は、本実施形態におけるプッシャのDUTを吸着保持する前の状態を示す断面図であり、
図3は、当該プッシャのDUTを吸着保持した後の状態を示す断面図である。
図4(a)は
図2のIVa部の拡大断面図であり、
図4(b)は
図3のIVb部の拡大断面図である。
図5は、本実施形態におけるリテーナを下方から見た斜視図である。
【0030】
図1に示す本実施形態における電子部品試験装置100は、DUT300の電気的特性を試験する装置である。試験対象であるDUT300の具体例としては、SoC(System on a chip)、ロジック系のデバイス、又は、メモリ系のデバイスを例示することができる。
図2に示すように、本実施形態におけるDUT300は、基板301と、ICチップ302と、温度検出回路303と、モールド樹脂304と、複数の端子305と、を備えている。
【0031】
このDUT300では、基板301の上面にICチップ302及び温度検出回路303が搭載されており、このICチップ302及び温度検出回路303がモールド樹脂304によって覆われている。また、基板301の下面には、ICチップ302及び温度検出回路303と電気的に接続されている端子305が設けられており、これらの端子305は、後述のソケット2と接触して電気的に接続する。なお、本実施形態では、温度検出回路303をICチップ302と別体の電子部品として説明しているが、これに限定されず、温度検出回路303はICチップ302に含まれていてもよい。
【0032】
電子部品試験装置100は、
図1に示すように、DUT300を試験するテスタ1と、DUT300とテスタ1とを電気的に接続するソケット2と、DUT300を搬送しソケット2に押し付けるハンドラ3と、を備えている。
【0033】
テスタ1は、メインフレーム11と、テストヘッド12と、を備えている。メインフレーム11は、ケーブル13を介してテストヘッド12に接続されている。メインフレーム11は、テストヘッド12を介して試験信号をDUT300に送出してDUT300を試験し、当該試験結果に応じてDUT300を評価する。テストヘッド12は、ケーブル13を介してメインフレーム11に接続されており、DUT300の試験の際に、メインフレーム11から送出された試験信号をDUT300へ送出する。
【0034】
図3に示すように、テストヘッド12は、ソケット2を介してDUT300と電気的に接続される。このソケット2は、ソケット本体21と、接触子22と、を備えている。ソケット本体21は、テストヘッド12の上面に固定されている。このソケット本体21に接触子22が配置されている。接触子22は、特に図示しないが、テストヘッド12の上面に配置されたロードボード等と電気的に接続されていると共に、DUT300の端子305と接触することによって当該DUT300とも電気的に接続される。本実施形態では、接触子22としてポゴピンを用いているが、接触子22としてポゴピン以外のものを用いてもよい。例えば、カンチレバー型のプローブ針、異方導電性ゴムシート、又は、絶縁性膜にバンプを形成したメンブレンタイプの接触子を用いてもよい。
【0035】
図1に示すように、DUT300は、ハンドラ3によってソケット2に押し付けられる。このハンドラ3は、恒温槽4と、コンタクトアーム5と、プッシャ6と、冷媒供給部9と、を備えている。なお、本実施形態におけるハンドラ3が本発明における「電子部品ハンドリング装置」の一例に相当し、本実施形態におけるプッシャ6が本発明における「押圧装置」の一例に相当する。
【0036】
恒温槽4は、内部の雰囲気の温度を所望の温度に調整することが可能であり、DUT300に対して高温又は低温の温度を印加することができる。恒温槽4は、特に限定されないが、例えば、-55℃~+155℃の範囲で温度を調整可能である。この恒温槽4は、コンタクトアーム5と、プッシャ6と、を収容している。さらに、恒温槽4は、恒温槽4の底部に形成された開口を介してソケット2を収容している。なお、ハンドラ3は恒温槽4を備えていなくてもよい。
【0037】
コンタクトアーム5は、ハンドラ3が備えるレール(不図示)に支持されている。このコンタクトアーム5は、水平移動用のアクチュエータ(不図示)を備えており、レールに従って前後左右に動くことが可能となっている。また、このコンタクトアーム5は、上下駆動用のアクチュエータ(不図示)を備えており、上下方向に移動することができる。
【0038】
このコンタクトアーム5の下端に、プッシャ6が配置されている。
図2に示すように、このプッシャ6は、プッシャ本体61と、コンタクトプレート62と、リテーナ63と、吸着パッド68と、垂直ガイド69と、温度調整装置7と、付勢機構8と、を備えている。
【0039】
図2に示すように、本実施形態におけるプッシャ本体61は、複数(本例では2個)の第1の吸引孔611と、第1の冷媒供給孔612と、複数(本例では2個)の第1の冷媒回収孔613と、を有している。第1の吸引孔611は、プッシャ本体61の下面で開口する貫通孔であり、当該開口がリテーナ63の第2の吸引孔67(後述)と接続している。この第1の吸引孔611は、不図示の真空ポンプに接続され、第1の吸引孔611の内部は、この真空ポンプにより負圧とされる。
【0040】
第1の冷媒供給孔612もプッシャ本体61の下面で開口する貫通孔であり、この第1の冷媒供給孔612に冷媒ガイド77(後述)の供給側筒状部772(後述)が挿入されている。この第1の冷媒供給孔612には、ハンドラ3の外部に設けられた冷媒供給源200から冷媒が供給される。また、第1の冷媒回収孔613もプッシャ本体61の下面で開口する貫通孔であり、この第1の冷媒回収孔613に冷媒ガイド77(後述)の回収側筒状部773(後述)が挿入されている。この第1の冷媒回収孔613には、温度調整装置7で利用された後の冷媒が回収される。なお、上述の第1の吸引孔611、第1の冷媒供給孔612、及び、第1の冷媒回収孔613は、プッシャ本体61以外の部分に設けられていてもよい。
【0041】
図2に示すように、コンタクトプレート62は、下方に突出するように折り曲げられた凸形状を有するプレートである。
図3に示すように、コンタクトプレート62は、プッシャ6がDUT300を保持している状態において、DUT300と直接接触する部材である。また、このコンタクトプレート62を介して、温度調整装置7はDUT300を加熱又は冷却する。
【0042】
このコンタクトプレート62を構成する材料としては、表面に絶縁被膜を形成した金属等を用いることができる。具体的には、例えば、表面に陽極酸化被膜を有するアルミニウムなどを使用することができる。温度調整装置7からの熱をDUT300に伝えるためには、コンタクトプレート62は高い熱伝導性を有する金属材料から構成されていることが好ましい。また、絶縁被膜を表面に形成した金属を使用することにより、プッシャ6から生じる電磁的なノイズをDUT300に対して遮蔽することができると共に、プッシャ6をDUT300に対して電気的に絶縁することができる。なお、静電気放電(ESD)を防止するために、特に図示しないが、コンタクトプレート62をグランドに電気的に接続してもよい。
【0043】
このコンタクトプレート62は、接触部621と、側部622と、を有している。接触部621は、DUT300に対して略平行な方向に沿って延在している。この接触部621は、DUT300に接触する接触面621aを有している。本実施形態における接触面621aは、接触部621の下面であり、
図3に示すように、プッシャ6がDUT300を保持する際に、DUT300に接触して押圧する。また、上記の温度調整装置7は、この接触面621aを介して、DUT300に熱を印加する。
図4(a)に示すように、この接触部621の厚みT
1は、特に限定されないが、500μm~550μmとすることができる(500μm≦T
1≦550μm)。
【0044】
図2に示すように、この接触面621aの幅W
cは、下記(1)式のように、DUT300の幅W
Dよりも小さくなっていると共に、下記(2)式のように、リテーナの幅W
Rよりも小さくなっている。このように、コンタクトプレート62の接触面621aの幅が小さいことによって、接触部621の熱容量を小さくすることができる、温度調整装置7によるDUT300の温度制御時に接触部621の温度変化の速度を向上できる。つまり、プッシャ6による温度調整の応答性を向上することができる。
W
D>W
C … (1)
W
R>W
C … (2)
但し、上記(1)式において、W
DはDUT300の幅であり、W
Cはコンタクトプレート62の接触面621aの幅であり、上記(2)式において、W
Rはリテーナ63の幅である。
【0045】
コンタクトプレート62の側部622は、接触部621の外周端に接続していると共に、接触部621に対して略垂直な方向に沿って延在している。この側部622は、係止面622aと、側面622bと、を有している。本実施形態における係止面622aは、側部622の下面である。この係止面622aは、接触面621aを囲む環状形状を有する傾斜面であり、接触面621aから離れるに従ってコンタクトプレート62の幅が広くなるように傾斜している。
図2及び
図4(a)に示すように、この係止面622aはリテーナ63と接触する面である。また、側面622bは、係止面622aの上端に接続された側面であり、接触部621に対して略垂直な方向に沿って延在している。この側面622bは、リテーナ63から常に離隔している。
【0046】
リテーナ63は、コンタクトプレート62を保持する部材である。このリテーナ63は、
図2に示すように、プッシャ本体61の下面に配置されている。
図2及び
図5に示すように、本実施形態におけるリテーナ63は環状形状を有しており、コンタクトプレート62を囲んでいる。また、
図2に示すように、リテーナ63は、温度調整装置7と離隔しており、リテーナ63と温度調整装置7との間に空間Sが形成されている。この空間Sにより、温度調整装置7から生じた熱がリテーナ63に伝わり難いため、DUT300の温度調整を効率よく行うことができる。
【0047】
図5に示すように、このリテーナ63は、枠状部64と、保持部65と、複数の第2の吸引孔67と、を備えている。枠状部64は、環状形状を有している。
図2に示すように、この枠状部64は、プッシャ本体61の下面に固定されている。なお、特に限定されないが、ボルト等の留め具により枠状部64をプッシャ本体61に固定できる。
【0048】
図2及び
図5に示すように、この枠状部64の下面に、コンタクトプレート62に接触して保持する保持部65が形成されている。本実施形態における保持部65は、複数(本例では4個)の爪部66a~66d(以下、爪部66と総称することもある。)を備えている。
【0049】
爪部66は、枠状部64の下面から下方向に向かって突出している。この爪部66は、コンタクトプレート62の四方を囲むように配置されている。本実施形態では、一対の爪部66a,66bが相互に対向するように配置されていると共に、一対の爪部66c,66dが相互に対向するように配置されている。
【0050】
また、これらの爪部66a~66dは、相互に間隔を空けて配置されていると共に、コンタクトプレート62の環状の係止面622aに沿ってコンタクトプレート62を囲んでいる。このように、相互に間隔を空けて並べられている爪部66によってコンタクトプレート62を保持することで、保持部65とコンタクトプレート62との接触面積を小さくすることができ、コンタクトプレート62から保持部65へ熱が逃げ難くなる。よって、DUT300の温度調整を効率良く行うことができる。
【0051】
また、
図5に示すように、爪部66は、突出部661と、開口662と、を有している。本実施形態の突出部661は、
図4(a)に示すように、爪部66の下部に配置されていると共に、コンタクトプレート62に向かって突出している。本実施形態における突出部661は、保持面661aを有している。この保持面661aは、コンタクトプレート62の係止面622aに対向していると共に、コンタクトプレート62の係止面622aに略平行な傾斜面である。この保持面661aは、コンタクトプレート62がDUT300に接触していない時に、係止面622aを下方から支持することによりコンタクトプレート62を保持している。この際、コンタクトプレート62の係止面622aは、接着剤やねじ等によりリテーナ63の保持面661aに固定されておらず、コンタクトプレート62がリテーナ63に分離可能に保持されている。
【0052】
図5に示すように、爪部66a,66bは開口662を有している。この開口662は、爪部66a,66bを水平方向に貫通している。このような開口662により、コンタクトプレート62から爪部66a,66bへ熱が逃げ難くなると共に、リテーナ63の軽量化も図ることができる。
【0053】
第2の吸引孔67は、枠状部64及び爪部66c、66dを貫通している。この第2の吸引孔67の上端は、プッシャ本体61の第1の吸引孔611と接続している。この第2の吸引孔67は、第1の吸引孔611を介して、不図示の真空ポンプに接続されるので、第2の吸引孔67の内部は負圧となる。
【0054】
図3及び
図4(b)に示すように、この第2の吸引孔67の下端に吸着パッド68が配置されている。この吸着パッド68は、DUT300に当接することにより、吸着パッド68とDUT300に囲まれた空間を形成する。この空間は、第2の吸引孔67に接続しているので、爪部66c、66dの下端面66eにおいて、DUT300を吸着保持することができる。
【0055】
図4(b)に示すように、吸着パッド68がDUT300を吸着している状態では、コンタクトプレート62の接触面621aはDUT300と接触している。このとき、コンタクトプレート62の係止面622aは、リテーナ63の保持面661aに固定されていないため、コンタクトプレート62はDUT300によって上方に押し上げられ、コンタクトプレート62がリテーナ63から離れる。このように、コンタクトプレート62がリテーナ63から離れることにより、温度調整装置7によるDUT300の温度制御時にリテーナ63へ熱が逃げることを防止できる。つまり、温度調整装置7とDUT300の間に介在する部材の熱容量を小さくすることができるので、温度調整の応答性を向上することができる。
【0056】
図2及び
図3に示すように、このコンタクトプレート62の内側に温度調整装置7が配置されている。この温度調整装置7は、コンタクトプレート62を介してDUT300の温度を調整する。
【0057】
図6は、本実施形態におけるコンタクトプレート及び温度調整装置の拡大断面図であり、
図7は、
図6のVII部の拡大断面図である。
図8は、本実施形態のヒータユニットの構成の一例を示す平面図である。
図6に示すように、温度調整装置7は、加熱源であるヒータユニット71と、冷却源であるクーラユニット75と、を備えている。
【0058】
ヒータユニット71は、コンタクトプレート62の接触部621上に配置されている。ヒータユニット71は、面状ヒータ72と、第1の伝熱材73と、第2の伝熱材74と、を積層したシート状の積層体である。このヒータユニット71の厚みT2は、特に限定されないが、400μm以下となっている(T2≦400μm)。
【0059】
図6~
図8に示すように、面状ヒータ72は、面形状(シート形状)を有している。このような面状ヒータ72は厚みが薄いため、面状ヒータ72の熱容量はセラミックヒータ等の熱容量と比較して小さくなる。このため、温度調整装置7の昇温速度を向上させることができるので、応答性の向上を図ることができる。
【0060】
図6に示すように、このような面状ヒータ72の厚みT
3は、特に限定されないが、100μm~150μmとすることができる(100μm≦T
3≦150μm)。また、面状ヒータ72としては、例えば、ポリイミドヒータやポリエステルヒータ等の樹脂フィルムヒータを用いることができる。特に、面状ヒータ72として、ポリイミドヒータを用いることが好ましい。ポリイミドヒータは、樹脂を使用したヒータの中でも耐熱性に優れている。さらに、ポリイミドヒータは、セラミックヒータ等と比較して安価であるため、コストの低減を図ることができる。
【0061】
図8に示すように、面状ヒータ72は、ヒータ部72aと、引き出し部72bと、を有している。ヒータ部72aは、コンタクトプレート62を加熱する部分である。一方で、引き出し部72bは、ヒータ部72aから延在する帯状形状を有しており、面状ヒータ72に電力を供給するための電源との接続に用いられる部分である。
【0062】
図6及び
図8に示すように、この面状ヒータ72は、樹脂層721と、金属配線724と、端子725(
図8参照)と、を有している。樹脂層721は面状の層である。
図7に示すように、樹脂層721は、第1の樹脂層722と、第1の樹脂層722に積層された第2の樹脂層723と、を含んでいる。第1の樹脂層722及び第2の樹脂層723は、特に限定されないが、樹脂フィルムであり、不図示の接着剤等を介して互いに貼り合わされている。なお、第1及び第2の樹脂層722,723は、接着剤を介すことなく貼り合わされていてもよい。第1及び第2の樹脂層722,723は、例えば、ポリイミドやポリエステル等の樹脂材料から構成されている。特に、耐熱性の観点から、樹脂材料としてポリイミドを用いることが好ましい。
【0063】
第1及び第2の樹脂層722,723の間に金属配線724が挟まれている。この金属配線724は、例えば、ステンレス鋼等の金属から構成されている。
図8に示すように、金属配線724は、ヒータ部72aにおいて蛇行しており、引き出し部72bにおいて端子725に接続されている。この端子725は、上述の電源に電気的に接続される。
【0064】
図6~
図8に示すように、面状ヒータ72の第1の主面(上面)721aに第1の伝熱材73が配置されている。また、面状ヒータ72の第2の主面(下面)721bに第2の伝熱材74も配置されている。これらの第1及び第2の伝熱材73,74は、面状ヒータ72から発生した熱を面状ヒータ72から放熱する熱伝導性材料である。この第1及び第2の伝熱材73,74の厚みT
4,T
5は、特に限定されないが、50μm~100μmとすることができる(50μm≦T
4,T
5≦100μm)。
【0065】
このような面状ヒータでは金属配線が発熱するため、金属配線の近傍で局所的に温度上昇が生じてしてしまうことにより、金属配線の近傍で樹脂層の温度が局所的に高くなり過ぎてしまい、樹脂層が焼損してしまうことがある。一方で、本実施形態におけるヒータユニット71では、第1及び第2の伝熱材73,74により金属配線724の近傍以外の部分に熱を拡散することにより、金属配線724の近傍における局所的な温度上昇を抑制し、樹脂層721の焼損の発生の抑制を図ることができる。
【0066】
第1及び第2の伝熱材73,74としては、例えば、TIM(Thermal Interface Material)を用いることができる。TIMとしては、例えば、アルミニウムや銅から構成される金属箔、グラファイトシート、熱伝導性を有するフィラーを分散保持させたシリコーンゴムシート、カーボンナノチューブ(CNT)を含むシート、及び、熱伝導性を有するフィラーを分散させたジェル等を用いることができる。
【0067】
第1及び第2の伝熱材73,74は、面状ヒータ72からの熱を、面状ヒータ72の第1及び第2の主面721a,721bと平行な第1の方向(本例では水平方向)に優先的に拡散させることが好ましい。なお、熱を第1の方向に優先的に拡散させる伝熱材とは、所定の圧力で押圧されている状態で、第1の方向における熱伝導率が第1の方向に垂直な方向における熱伝導率よりも大きい伝熱材のことを言う。このような材料としては、上述のグラファイトシートや、第1の方向に沿って延在するCNTを束ねて製造されたシート等を用いることができる。
【0068】
図7に示すように、面状ヒータ72では金属配線724が発熱するので、第1の伝熱材73の金属配線724近傍に位置する第1の部分73aに熱が集中し易い。その一方で、第1の伝熱材73の金属配線724から離れている第2の部分73bには、比較的、熱が集中し難い。そこで、本実施形態のように、第1の方向に熱を優先的に拡散させる第1の伝熱材73を使用することにより、第1の部分73aから第2の部分73bに向けて熱を優先的に伝達することができるため、第1の部分73aが過度に加熱されることを抑制することができる。このため、面状ヒータ72の金属配線724近傍の部分が、局所的に高温となるのを効果的に抑制することができる。また、第2の伝熱材74についても同様の理由により、面状ヒータ72の金属配線724近傍の部分が、局所的に高温となるのを効果的に抑制することができる。
【0069】
図2及び
図6に示すように、ヒータユニット71上にクーラユニット75が配置されている。このクーラユニット75は、発熱中のヒータユニット71を冷却してヒータユニット71の温度を所望の温度に調整する。また、このクーラユニット75により、ヒータユニット71及びコンタクトプレート62を介してDUT300を冷却することもできる。
【0070】
図2及び
図6に示すように、このクーラユニット75は、コールドプレート76と、冷媒ガイド77と、ノズル部材78と、流通路79と、を備えている。コールドプレート76は、有底の筒状のプレートである。このコールドプレート76は、ヒータユニット71上に配置されており、ヒータユニット71に接触して冷却する部材である。このコールドプレート76を構成する材料としては、上述のコンタクトプレート62と同様に、表面に絶縁被膜を形成した金属等を用いることができる。
【0071】
コールドプレート76の厚みT6は、例えば、300μm~400μmである(300μm≦T6≦400μm)。また、コールドプレート76の厚みT6と、ヒータユニット71の厚みT2と、コンタクトプレートの厚みT1と、の合計T7は、2mm以下となっている(T6+T2+T1≦1mm)。このようにコールドプレート76とDUT300との間の距離を短くすることにより、温度調整の応答性を向上することができる。
【0072】
また、このコールドプレート76は、ノズル部材78と対向する第1の対向面76aを有している。この第1の対向面76aは、平面となっている。
【0073】
このコールドプレート76の上部の開口に嵌合するように冷媒ガイド77が配置されており、冷媒ガイド77がコールドプレート76の内部空間を密閉している。この冷媒ガイド77は、
図2に示すように、プッシャ本体61の第1の冷媒供給孔612から供給される冷媒をクーラユニット75の内部に導くと共に、冷却に使用した冷媒をプッシャ本体61の第1の冷媒回収孔613へ導くための部材である。
【0074】
図2及び
図6に示すように、この冷媒ガイド77は、押圧部771と、供給側筒状部772と、複数の回収側筒状部773と、を有している。押圧部771は冷媒ガイド77の本体であり、ノズル部材78を下方に押圧している。
【0075】
図2及び
図6に示すように、この押圧部771の上面の略中心に供給側筒状部772が配置されている。
図2に示すように、供給側筒状部772は、押圧部771の上面から上方に延在する筒状の部材であり、プッシャ本体61の第1の冷媒供給孔612に挿入されている。この供給側筒状部772の内部には、流通路79の一部を構成する第2の冷媒供給孔772aが形成されており、この第2の冷媒供給孔772aは、押圧部771の下面まで延在している。
【0076】
この押圧部771の上面に複数の回収側筒状部773が配置されている。
図2に示すように、回収側筒状部773は、押圧部771の上面から上方に延在する筒状の部材であり、プッシャ本体61の第1の冷媒回収孔613に挿入されている。この回収側筒状部773の内部には、流通路79の一部を構成する第2の冷媒回収孔773aが形成されており、この第2の冷媒回収孔773aは、押圧部771の下面まで延在している。
【0077】
図2及び
図6に示すように、ノズル部材78は、コールドプレート76と冷媒ガイド77との間に介在している。このノズル部材78は、コールドプレート76に冷媒を噴射する部材である。
図6に示すように、このノズル部材78は、貫通孔781と、噴射口782と、突起785と、を有している。貫通孔781は、冷媒ガイド77の第2の冷媒供給孔772aに接続している。貫通孔781は、流通路79の一部を構成している。この貫通孔781の下端面(第2の対向面78a)の略中心に噴射口782が形成されている。この噴射口782は、コールドプレート76から離隔しており、冷媒ガイド77の第2の冷媒供給孔772aから供給された冷媒をコールドプレート76に向かって噴射する。
【0078】
また、ノズル部材78は、コールドプレート76の第1の対向面76aに対向すると共に、第1の対向面76aから離隔する第2の対向面78aを有している。このため、第1の対向面76aと第2の対向面78aとの間にはエアギャップ791が形成されている。このエアギャップ791も流通路79の一部を構成しており、噴射口782から噴射された冷媒は、コールドプレート76の第1の対向面76aに到達した後にエアギャップ791の中を流通する。コールドプレート76上のエアギャップ791に冷媒を流通させることにより、第1の対向面76a上で冷媒を加速させることができるため、冷却速度を向上させることができる。このため、温度調整における応答性を向上できる。
【0079】
エアギャップ791を流通した冷媒は、ノズル部材78の側面とコールドプレート76との間の隙間と、ノズル部材78の上面と冷媒ガイド77との間の隙間と、を介して第2の冷媒回収孔773aに回収される。
【0080】
図9は本実施形態におけるノズル部材78を示す下方から見た斜視図である。第2の対向面78aは平面である。この第2の対向面78aは、複数(本例では4本)の溝783と、段差784と、を含んでいる。複数の溝783は、噴射口782からノズル部材78の径方向外側に延在している。このような溝783を設けることで、噴射口782から噴射された冷媒は、溝783に導かれて径方向外側に流通することができる。
【0081】
また、溝783の幅は、第2の対向面78aの中心に近づくに従って広くなっている。このため、溝783の先端においても冷媒を高速で流通させることができる。
【0082】
また、複数の溝783は、噴射口782を中心として、噴射口782の周方向に沿って略等間隔に並べられている。エアギャップ791において、冷媒を径方向外側に向かって均等に流通させることができる。
【0083】
この溝783の外側に段差784が形成されている。この段差784は、環状形状を有している。第2の対向面78aは、この段差784により区画されており、段差784の外側に位置する外側対向面78bと、段差784の内側に位置する内側対向面78cと、を含んでいる。
図6に示すように、外側対向面78bの高さH
1は、内側対向面78cの高さH
2よりも高くなっている。つまり、エアギャップ791の厚みは、外側対向面78bにおいて大きくなっており、内側対向面78cにおいて小さくなっている。このような段差784を設けることにより、第2の対向面78aの外周部において冷媒を加速させることができる。
【0084】
また、エアギャップ791の厚みT8は、供給される冷媒の圧力に応じて適宜設定できるが、例えば、1mm以下とすることができる(T8≦1mm)。エアギャップ791の厚みT8が1mm以下であれば、エアギャップ791を流通する冷媒を加速させることができるため、冷却速度を向上させることができる。このため、温度調整における応答性を向上できる。
【0085】
図6及び
図9に示すように、この第2の対向面78a上に複数の突起785が配置されている。この突起785は、第1の対向面76aと第2の対向面78aとの間に介在するスペーサであり、第1及び第2の対向面76a,78aを離隔している。突起785の先端は、コールドプレート76の第1の対向面76aに接触しており、上述したエアギャップ791を規定している。
【0086】
図2に示すように、付勢機構8は、プッシャ本体61と、温度調整装置7の冷媒ガイド77との間に介在している。この付勢機構8は、冷媒ガイド77を下方に向かって付勢することにより、クーラユニット75をヒータユニット71に向かって付勢している。本実施形態における付勢機構8は、コイルバネ等のばねである。なお、付勢機構8としては、ゴム等の他の弾性体であってもよい。また、付勢機構8はジンバル構造の一部を構成していてもよい。
【0087】
付勢機構8により付勢されたクーラユニット75のコールドプレート76は、ヒータユニット71をコンタクトプレート62に向かって常に押圧している。このように、コールドプレート76でヒータユニット71をコンタクトプレート62に向かって押圧することにより、第1及び第2の伝熱材73,74が面状ヒータ72に密着するため、面状ヒータ72の第1及び第2の伝熱材73,74への放熱を促進することができる。
【0088】
図2に示すように、垂直ガイド69は、リテーナ63の外側に配置されている。この垂直ガイド69は、プッシャ本体61の下面に固定されており、プッシャ本体61の下面から下方に延在している。なお、特に限定されないが、ボルト等の留め具により垂直ガイド69をプッシャ本体61に固定できる。
図3に示すように、この垂直ガイド69は、プッシャ6がDUT300を吸着保持する際にDUT300に当接することにより、垂直方向及び水平方向においてプッシャ6に対するDUT300の位置決めを行うことができる。
【0089】
図1に戻り、冷媒供給部9は、プッシャ6に冷媒を供給する。この冷媒供給部9は、接続部91と、バルブ92と、バルブ制御部93と、を備えている。接続部91は、電子部品試験装置100の外部に設けられている冷媒供給源200と接続されている。この冷媒供給源200の供給する冷媒としては、圧縮乾燥空気や液体窒素等である。冷媒供給源200が圧縮乾燥空気を供給する場合、冷媒供給源200は、例えば、外気を取り込み圧縮するコンプレッサと、圧縮した空気を乾燥するドライヤと、を備えていてもよい。或いは、冷媒供給源200は、圧縮乾燥空気を供給可能な既設の工場配管等であってもよい。冷媒供給源200が液体窒素を供給する場合、冷媒供給源200は、例えば、液体窒素を高圧で貯留している圧力容器、又は、液体窒素供給用の工場配管であってもよい。
【0090】
接続部91の下流にバルブ92が設けられている。このバルブ92は、冷媒供給源200から供給された冷媒の流量を調整する。このバルブ92を通過した冷媒は、
図2に示すように、プッシャ本体61の第1の冷媒供給孔612に供給される。
【0091】
図1に示すように、バルブ制御部93は、バルブ92の開閉を制御する。本実施形態におけるバルブ制御部93は、DUT300の温度検出回路303(
図2参照)の検出値を入力される。バルブ制御部93は、入力された検出値に応じて、DUT300の温度が所望の値になるようにPID制御を行う。なお、バルブ制御部93の制御方法は、PID制御に限定されることはなく、他の制御方法を用いてもよい。
【0092】
以上のような本実施形態における電子部品試験装置100であれば、温度調整装置7のヒータユニット71が面状ヒータ72を有している。この面状ヒータ72は厚みが薄いため、面状ヒータ72の熱容量は、セラミックヒータの熱容量と比較して小さくなる。このため、ヒータユニット71の昇温速度を向上させることができるので、応答性の向上を図ることができる。
【0093】
また、本実施形態における電子部品試験装置100では、面状ヒータ72の第1及び第2の主面721a,721bに第1及び第2の伝熱材73,74を設けている。このため、面状ヒータ72を急激に発熱させた場合であっても、第1及び第2の伝熱材73,74により面状ヒータ72が局所的に高温となってしまうことを抑制でき、面状ヒータ72から熱を逃すことができる。このため、面状ヒータ72の損傷の防止を図ることができる。
【0094】
また、本実施形態における電子部品試験装置100では、高重量となりやすいセラミックヒータを使わないため、プッシャ6の軽量化を図ることもできる。
【0095】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0096】
例えば、上記実施形態では、プッシャ6はDUT300を吸着保持しているがこれに限定されない。プッシャ6は、DUTを収容したキャリアを吸着保持してもよい。このようなキャリアとしては、特に限定されないが、例えば、特開2019-197012、及び、特開2013-79860等に記載されているキャリアを用いることができる。
【0097】
また、プッシャ6は、複数のDUT300を搭載したテストトレイに搭載された複数のDUT300を押圧するものであってもよい。この場合、ハンドラ3は、複数のプッシャ6を備えており、複数のプッシャ6がテストトレイに搭載された複数のDUT300をそれぞれ押圧する。この場合、全てのプッシャ6が、上記の本実施形態のような構成を有していてもよい。
【符号の説明】
【0098】
100…電子部品試験装置
1…テスタ
11…メインフレーム
12…テストヘッド
13…ケーブル
2…ソケット
21…ソケット本体
22…接触子
3…ハンドラ
4…恒温槽
5…コンタクトアーム
6…プッシャ
61…プッシャ本体
611…第1の吸引孔
612…第1の冷媒供給孔
613…第1の冷媒回収孔
62…コンタクトプレート
621…接触部
621a…接触面
622…側部
622a…係止面
622b…側面
63…リテーナ
64…枠状部
65…保持部
66(66a~66d)…爪部
66e…下端面
661…突出部
661a…保持面
662…開口
67…第2の吸引孔
68…吸着パッド
69…垂直ガイド
7…温度調整装置
71…ヒータユニット
72…面状ヒータ
72a…ヒータ部
72b…引き出し部
721…樹脂層
721a,721b…第1及び第2の主面
722,723…第1及び第2の樹脂層
724…金属配線
725…端子
73…第1の伝熱材
73a,73b…第1及び第2の部分
74…第2の伝熱材
75…クーラユニット
76…コールドプレート
76a…第1の対向面
77…冷媒ガイド
771…押圧部
772…供給側筒状部
772a…第2の冷媒供給孔
773…回収側筒状部
773a…第2の冷媒回収孔
78…ノズル部材
78a…第2の対向面
78b…外側対向面
78c…内側対向面
781…貫通孔
782…噴射口
783…溝
784…段差
785…突起
79…流通路
791…エアギャップ
8…付勢機構
9…冷媒供給部
91…接続部
92…バルブ
93…バルブ制御部
200…冷媒供給源
300…DUT
301…基板
302…ICチップ
303…温度検出回路
304…モールド樹脂
305…端子