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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116059
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】鋏
(51)【国際特許分類】
   B26B 13/28 20060101AFI20230815BHJP
【FI】
B26B13/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018610
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】515059865
【氏名又は名称】株式会社ミュウ
(74)【代理人】
【識別番号】100167276
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】堀 博明
【テーマコード(参考)】
3C065
【Fターム(参考)】
3C065AA03
3C065CB05
3C065CB14
3C065DA02
3C065FA02
(57)【要約】
【課題】鋏の切断性能の低下を抑制しながら、鋏の開閉操作を軽くすることができる技術を提供する。
【解決手段】鋏は、先端側に第1刃部を有し、後端側に使用者が指を掛ける第1指掛部を有する第1部材と、先端側に第2刃部を有し、後端側に前記使用者が指を掛ける第2指掛部を有する第2部材と、重ねて配置されている前記第1部材と前記第2部材のそれぞれの中央部を貫通して、前記第1部材と前記第2部材とを回動可能に締結する回動軸部と、前記第1部材と前記第2部材との間に配置され、先端部が前記回動軸部に支持され、後端部が前記回動軸部より後端側において前記第2部材に係止され、前記第2部材とともに前記第1部材に対して回動するとともに、前記後端部により、前記第2部材に対して、前記第1部材から離れる方向への力を付与する状態で配置されている中間部材と、を備える。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋏であって、
先端側に第1刃部を有し、後端側に使用者が指を掛ける第1指掛部を有する第1部材と、
先端側に第2刃部を有し、後端側に前記使用者が指を掛ける第2指掛部を有する第2部材と、
重ねて配置されている前記第1部材と前記第2部材のそれぞれの中央部を貫通して、前記第1部材と前記第2部材とを回動可能に締結する回動軸部と、
前記第1部材と前記第2部材との間に配置され、先端部が前記回動軸部に支持され、後端部が前記回動軸部より後端側において前記第2部材に係止され、前記第2部材とともに前記第1部材に対して回動するとともに、前記後端部により、前記第2部材に対して、前記第1部材から離れる方向への力を付与する状態で配置されている中間部材と、
を備える、鋏。
【請求項2】
請求項1記載の鋏であって、
前記中間部材は、前記先端部と前記後端部との間の部位の曲げ変形によって弾性力を発生する弾性部材によって構成され、前記弾性力により、前記後端部を通じて、前記第2部材に対して、前記第1部材から離れる方向に付勢する、鋏。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の鋏であって、
前記第2部材には、前記中間部材の前記後端部の下方において前記第2部材から突出し、前記後端部に固定される突出部が設けられており、
前記中間部材は、前記後端部により、前記突出部を介して、前記第2部材に対して、前記第1部材から離れる方向への力を付与する、鋏。
【請求項4】
請求項3記載の鋏であって、
前記突出部は、前記第2部材に設けられたねじ穴に螺合することによって前記第2部材に固定されており、
前記突出部の前記第2部材から突出している高さは、前記突出部が前記ねじ穴にねじ込まれる深さによって調整可能である、鋏。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の鋏であって、
前記中間部材の前記後端部は、前記第2部材の幅方向において、第2刃部の刃線を有する側端部とは反対側の側端部に寄った位置に配置されている、鋏。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の鋏であって、さらに、
前記第1部材と前記第2部材の間において前記回動軸部に取り付けられ、転動体によって前記中間部材の前記先端部を挟んで支持する一対のベアリングを備える、鋏。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の鋏であって、
前記第1部材と前記第2部材の少なくとも一方には、前記中間部材を収容する凹部が設けられている、鋏。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の鋏であって、
前記回動軸部は、前記回動軸部が挿通される前記第2部材の貫通孔内に設けられたねじ溝に螺合するねじ部を有しており、
前記回動軸部が挿通される前記第1部材の貫通孔内には、前記回動軸部を回動可能に保持する保持部材が配置されている、鋏。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、鋏に関する。
【背景技術】
【0002】
鋏の一態様としては、例えば、散髪等の理髪に用いられる理容鋏が知られている。理容鋏では、通常、「静刃」と「動刃」と呼ばれる2つの刃部の裏面同士の間の間隔が高い精度で調整されている。従来の理容鋏では、散髪の際に生じる静刃と動刃との間隔を広げる方向に働く力に対する反力が得られるように、理容鋏の回動軸よりも持ち手側に、互いに接触してこすれ合う「触点部」と呼ばれる部位が設けられていた。
【0003】
しかしながら、触点部同士を接触させると、その接触による抵抗により、理容鋏の開閉操作が阻害されてしまう可能性があった。近年では、こうした課題に対して、例えば、下記の特許文献1のように、そうした触点部が生じないように構成された理美容鋏が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-46769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、触点部を設けないようにした場合には、静刃と動刃との間隔が広がりやすくなったり、回動動作が安定しなくなったりする可能性がある。本願は、従来とは異なる方法により、鋏の切断性能の低下を抑制しながら、鋏の回動動作を円滑化できる技術を提供することを目的とする。本願が解決しようとする課題は、理容鋏に限らず、他の種類の様々な鋏に共通する課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の技術は、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本開示の技術の一形態は、鋏として提供される。この形態の鋏は、先端側に第1刃部を有し、後端側に使用者が指を掛ける第1指掛部を有する第1部材と、先端側に第2刃部を有し、後端側に前記使用者が指を掛ける第2指掛部を有する第2部材と、重ねて配置されている前記第1部材と前記第2部材のそれぞれの中央部を貫通して、前記第1部材と前記第2部材とを回動可能に締結する回動軸部と、前記第1部材と前記第2部材との間に配置され、先端部が前記回動軸部に支持され、後端部が前記回動軸部より後端側において前記第2部材に係止され、前記第2部材とともに前記第1部材に対して回動するとともに、前記後端部により、前記第2部材に対して、前記第1部材から離れる方向への力を付与する状態で配置されている中間部材と、を備える。
この形態の鋏によれば、中間部材の後端部によって第2部材に付与される力が、回動軸部より後端側における第1部材と第2部材との間隔を大きくし、第1刃部と第2刃部との間隔を小さくする方向に働く。よって、鋏の切断性能の低下を抑制しつつ、鋏の回動動作を円滑化でき、鋏の開閉操作を軽くすることができる。
【0008】
(2)上記形態の鋏において、前記中間部材は、前記先端部と前記後端部との間の部位の曲げ変形によって弾性力を発生する弾性部材によって構成され、前記弾性力により、前記後端部を通じて、前記第2部材に対して、前記第1部材から離れる方向に付勢してよい。
この形態の鋏によれば、弾性部材で構成された中間部材の弾性力により、回動軸部より後端側における第1部材と第2部材との間隔を大きくし、第1刃部と第2刃部との間隔を小さくする方向に働く力を簡易に発生させることができる。
【0009】
(3)上記形態の鋏において、前記第2部材には、前記中間部材の前記後端部の下方において前記第2部材から突出し、前記後端部に固定される突出部が設けられており、前記中間部材は、前記後端部により、前記突出部を介して、前記第2部材に対して、前記第1部材から離れる方向への力を付与してよい。
この形態の鋏によれば、中間部材と第2部材の突出部によって、回動軸部より後端側における第1部材と第2部材との間隔を大きくし、第1刃部と第2刃部との間隔を小さくする方向に働く力を簡易に発生させることができる。
【0010】
(4)上記形態の鋏において、前記突出部は、前記第2部材に設けられたねじ穴に螺合することによって前記第2部材に固定されており、前記突出部の前記第2部材から突出している高さは、前記突出部が前記ねじ穴にねじ込まれる深さによって調整可能であってよい。
この形態の鋏によれば、突出部の高さを調整することにより、中間部材の後端部から第2部材に付与される力を調整することができる。これにより、鋏の切断性能と開閉操作の軽さの調整を容易に行うことができる。
【0011】
(5)上記形態の鋏において、前記中間部材の前記後端部は、前記第2部材の幅方向において、第2刃部の刃線を有する側端部とは反対側の側端部に寄った位置に配置されていてよい。
この形態の鋏によれば、中間部材の後端部から第2部材に加えられる力は、回動軸部を支点として、第1刃部と第2刃部の刃線同士を接近させる方向に働く。よって、鋏の切断性能を高めることができる。
【0012】
(6)上記形態の鋏は、さらに、前記第1部材と前記第2部材の間において前記回動軸部に取り付けられ、転動体によって前記中間部材の前記先端部を挟んで支持する一対のベアリングを備えてよい。
この形態の鋏によれば、回動軸部に対する中間部材の先端部の支持性を高めながら、中間部材がより円滑に回動できるようにすることができる。よって、鋏の切断性能の低下を、より一層抑制することができるとともに、鋏の開閉操作をより軽くすることができる。
【0013】
(7)上記形態の鋏において、前記第1部材と前記第2部材の少なくとも一方には、前記中間部材を収容する凹部が設けられていてよい。
この形態の鋏によれば、中間部材が配置される部位における第1部材と第2部材の間の距離を低減することができる。よって、鋏が大型化してしまうことを抑制することができる。
【0014】
(8)上記形態の鋏において、前記回動軸部は、前記回動軸部が挿通される前記第2部材の貫通孔内に設けられたねじ溝に螺合するねじ部を有しており、前記回動軸部が挿通される前記第1部材の貫通孔内には、前記回動軸部を回動可能に保持する保持部材が配置されていてよい。
この形態の鋏によれば、回動軸部のねじ部が第2部材のねじ穴に螺合する深さにより、第1部材と第2部材の間隔を調整することができる。これにより、鋏の切断性能と鋏の開閉操作の軽さの調整が容易化される。
【0015】
本開示の技術は、理容鋏以外の種々の鋏において実現することが可能であり、鋏以外にも、例えば、鋏に用いられる中間部材や、中間部材を備える鋏の構造、鋏を備える種々の装置等の形態で実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】鋏が閉じている状態を示す概略平面図。
図2】鋏が開いている状態を示す概略平面図。
図3】第1刃部と第2刃部の概略断面図。
図4】第1実施形態の回動機構の構成を示す概略断面図。
図5】第2部材に配置されている中間部材を示す概略平面図。
図6】第1部材における中間部材の配置領域を示す概略平面図。
図7】第2実施形態の回動機構の構成を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.第1実施形態:
図1および図2は、第1実施形態の鋏10を、回動軸RXに沿って見たときの概略平面図である。図1は、鋏10が閉じた状態を示しており、図2は、鋏10が開いた状態を示している。
【0018】
本実施形態では、鋏10は、散髪に用いられる理容鋏である。本明細書において、「理容鋏」は、理髪用の鋏を意味しており、美容鋏や理美容鋏と同義、あるいは、それらを含む概念として用いている。鋏10は、第1部材11と、第2部材12と、第1部材11と第2部材12とを回動軸RXを支点として互いに回動するように連結する回動機構15と、を備える。
【0019】
第1部材11と第2部材12とは、先端側から後端側にかけて延びる長尺状の金属部材によって構成される。第1部材11は、先端側に第1刃部11fを有し、第2部材12は、先端側に第2刃部12fを有する。第1刃部11fと第2刃部12fのそれぞれの一方の側縁部は、鋭利に研がれた刃線BLを構成している。
【0020】
第1部材11と第2部材12の回動軸RXより後端側は、鋏10の持ち手部を構成する。第1部材11は、第1刃部11fの後端側に、使用者の指が掛けられる第1指掛部11rを有している。第2部材12は、第2刃部12fの後端側に、使用者の指が掛けられる第2指掛部12rを有している。
【0021】
第1部材11の第1刃部11fと第1指掛部11rの間の中央部と、第2部材12の第2刃部12fと第2指掛部12rの間の中央部とは重ねて配置されており、回動機構15が有する後述する回動軸部16は、その中央部を貫通し、第1部材11と第2部材12とを回動可能に締結している。なお、回動機構15は、第1部材11と第2部材12とを円滑に回動する状態で連結するために、第1部材11と第2部材12とが回動軸部16を支点としてごくわずかに互いに傾斜するように揺動することが許容される程度の遊びが生じるように構成されている。
【0022】
鋏10が閉じられているときには、図1に示すように、第1刃部11fと第2刃部12fとが、回動軸RXに沿った方向に重なり、第2指掛部12rに設けられたヒットポイント17が第1指掛部11rの外周縁部に接触して、第1部材11と第2部材12の回動を規制する。鋏10が開かれているときには、図2に示すように、第2指掛部12rのヒットポイント17が第1指掛部11rから離間し、第1刃部11fと第2刃部12fの刃線BL同士が、切断対象を挟みこめるように内側に向き合う。
【0023】
本実施形態では、第1部材11の第1指掛部11rは、薬指など、親指以外の指が掛けられるように構成されており、第1刃部11fは、散髪時の鋏の位置の基準となる、いわゆる静刃を構成する。第2部材12の第2指掛部12rは、親指が掛けられるように構成されており、第2刃部12fは、散髪時に静刃に対して回動する、いわゆる動刃を構成する。
【0024】
図3は、図1に示す3-3切断における第1刃部11fおよび第2刃部12fの概略断面図である。鋏10が閉じられているときに互いに向き合う第1刃部11fと第2刃部12fの裏面はわずかに湾曲して凹んでいる。第1刃部11fと第2刃部12fの裏面に形成された凹面は、「裏梳き」とも呼ばれる。第1刃部11fと第2刃部12fは、先端同士のみがわずかに接触し、それ以外の後端側の部位はわずかに離間して微小な間隙GPを形成するように回動機構15によって保持されている。
【0025】
図4は、図1に示す4-4切断における回動機構15の概略断面図である。図4に示されている矢印Fは、鋏10の先端側の方向を示しており、矢印Rは、鋏10の後端側の方向を示している。
【0026】
回動機構15は、第1部材11と第2部材12の回動軸RXを構成する回動軸部16と、回動軸部16を保持する保持部材21と、回動軸部16に締結されるナット部23と、保持部材21を固定する固定プレート25と、を備える。
【0027】
回動軸部16は、第1部材11の貫通孔18aと第2部材12の貫通孔18bとに挿通されている。回動軸部16の中心軸は、第1部材11と第2部材12の回動軸RXと一致する。回動軸部16の第2部材12の貫通孔18bに挿通される部位には、ねじ部16sが設けられている。第2部材12の貫通孔18b内には、回動軸部16のねじ部16sが螺合するねじ溝27が設けられている。
【0028】
回動軸部16のねじ部16sの一部は、第2部材12の貫通孔18bから第2部材12の表面側に延び出ている。ナット部23は、第2部材12の表面に配置され、ねじ部16sのその延び出ている部位に螺合する。ナット部23の締結により、第2部材12に対する回動軸部16の固定性が高められている。
【0029】
回動軸部16の第1部材11側の端部には、中心軸に直交する径方向に円盤状に広がっている頭部16hが設けられており、頭部16hより下方の部位が、第1部材11の貫通孔18a内に挿通されている。第1部材11の貫通孔18a内には、回動軸部16を回動可能に保持する保持部材21が配置されている。
【0030】
保持部材21は、環状のベアリングによって構成されており、回動軸部16は、その中央の開口部内に挿通されている。回動軸部16の頭部16hの外周縁は、保持部材21の内周縁に係止されている。詳細な図示及び説明は省略するが、保持部材21を構成するベアリングは、転動体を介して互いに相対的に回転可能な状態で一体化されている内輪と外輪とを有している。保持部材21の内輪は、回動軸部16の外周に嵌められ、外輪は、第1部材11の貫通孔18aの内周縁に係止されている。
【0031】
固定プレート25は、ビス26により、第1部材11の表面に固定されている。固定プレート25は、第1部材11の貫通孔18aの内周縁に係止されている保持部材21の外輪の外周縁部を、第1部材11との間に挟み込むことによって、保持部材21を第1部材11に固定する。固定プレート25により、第1部材11からの保持部材21の脱落が抑制されている。
【0032】
本実施形態の鋏10によれば、回動軸部16のねじ部16sが第2部材12の貫通孔18bに螺合する深さによって、第1部材11と第2部材12との間の間隔を調整することが可能である。これにより、第1刃部11fと第2刃部12fの間隔を調整でき、鋏10の切断性能を調整することが可能である。また、鋏10の開閉操作時の抵抗を調整することができる。さらに、本実施形態の鋏10によれば、回動軸部16が保持部材21によって、第1部材11に対して回動可能な状態で保持されている。これにより、回動軸部16が円滑に回動できるため、鋏10の開閉操作がより軽くなる。
【0033】
図4を参照しつつ、適宜、図5または図6を参照して、回動機構15が有する中間部材30について説明する。図5は、第2部材12の裏面の上に配置されている中間部材30を示す概略平面図である。図6は、第1部材11の裏面における中間部材30の配置領域を示す概略平面図である。図6には、鋏10を開いた状態の時と閉じた状態のときの中間部材30の配置領域が図示されている。
【0034】
図4を参照する。回動機構15は、さらに、中間部材30と、一対のベアリング41,42と、係止部材43と、複数の環状部材44,45と、を備える。中間部材30は、金属製の板状部材によって構成されている。後述するように、本実施形態の中間部材30は、厚み方向に変形して弾性力を発生する板バネによって構成されている。
【0035】
中間部材30は、第1部材11と第2部材12との間の間隙に配置されている。中間部材30の先端部31は、回動軸部16に対して、回動可能な状態で連結されている。図5に示すように、中間部材30の先端部31には、回動軸部16が挿通される挿通孔32が形成されている。図4に示すように、挿通孔32の内周面と回動軸部16の外周面との間にはわずかな隙間が形成されている。
【0036】
中間部材30の先端部31は、以下に説明するように、一対のベアリング41,42を介して、回動軸部16の所定の位置に支持されている。
【0037】
図4を参照する。中間部材30の先端部31は、一対のベアリング41,42によって挟まれている。一対のベアリング41、42はそれぞれ、環状の形状を有しており、中央の開口部に、回動軸部16が挿通されている。第1のベアリング41は、第1部材11側に配置され、第2のベアリング42は、第2部材12側に配置されている。第1のベアリング41の転動体は、中間部材30の先端部31における第1部材11側の面に接している。第2のベアリング42の転動体は、中間部材30の先端部31における第2部材12側の面に接している。
【0038】
係止部材43は、例えば、Eリングによって構成される。係止部材43は、回動軸部16のねじ部16sと頭部16hの間の所定の位置に設けられた、局所的に縮径されている括れ部16cに固定されている。複数の環状部材44,45は、回動軸RX方向に一対のベアリング41,42を挟むように配置されている。第1の環状部材44は、第1のベアリング41と保持部材21との間に配置されており、第1のベアリング41と保持部材21の両方に接している。第2の環状部材45は、第2のベアリング42と係止部材43との間に配置されている。
【0039】
一対のベアリング41、42は、第1の環状部材44を介して、保持部材21に係止され、第2の環状部材45を介して、係止部材43に係止されている。なお、本明細書において、「係止」との用語は、その対象物に接触することによりその接触方向への移動が規制された状態にあることを意味している。よって、「係止」されている状態には、その対象物に嵌り込んで固定されている状態までは求められない。
【0040】
中間部材30の先端部31は、一対のベアリング41,42に支持されることにより、回動軸部16に支持されている。本実施形態では、中間部材30の先端部31が、一対のベアリング41、42に挟まれて支持されていることにより、回動軸部16に対する中間部材30の先端部31の支持性が高められているとともに、中間部材30の回動軸RXを支点とする回動が円滑化されている。
【0041】
回動軸部16において中間部材30の先端部31が支持される位置は、係止部材43の位置と複数の環状部材44,45の厚みによって規定されている。中間部材30の先端部31と第2部材12との距離は、回動軸部16のねじ部16sが第2部材12に螺合する深さを変化させることにより調整可能である。
【0042】
中間部材30の後端部35は、回動軸部16より後端側において第2部材12に係止されている。中間部材30の後端部35には、中間部材30の厚み方向に突出している係留部36が設けられている。第2部材12の裏面には、回動軸部16より後端側に、係留部36が引っ掛かって係止される後端側孔部47が設けられている。図5に示すように、係留部36の両側面は、後端側孔部47の内周面に接している。これにより、中間部材30は、鋏10を開閉させたときに、図6に示すように、第2部材12とともに第1部材11に対して回動軸RXを支点として回動する。
【0043】
図4を参照する。以下に説明するように、中間部材30は、後端部35により、第2部材12に対して、第1部材11から離れる方向への力を付与する状態で配置されている。中間部材30は、外力が加えられていない状態では、先端部31と後端部35との間の部位が厚み方向に湾曲している。中間部材30の先端部31は、上述したように、回動軸部16において第2部材12から離れた所定の位置に支持されている。中間部材30の後端部35は後端側孔部47の内周縁に接する状態で配置されている。中間部材30は、後端部35が第2部材12に押し付けられ、先端部31と後端部35との間の部位が平坦に近づく方向に曲げ変形された状態で設置されている。これにより、中間部材30は、後端部35を通じて、第2部材12に対して、第1部材11から離れる方向に付勢する弾性力を付与する。
【0044】
中間部材30の後端部35によって第2部材12の回動軸部16より後端側の位置に付与される力は、第1部材11と第2部材12とを連結する回動軸部16を支点として第1部材11に対して、第2部材12を傾斜させる方向に働く。より具体的には、その力は、回動軸部16より後端側における第1部材11と第2部材12との間隔を大きくし、第1刃部11fと第2刃部12fとの間隔を小さくする方向に働く。この力は、鋏10の使用時には、切断対象によって第1刃部11fと第2刃部12fとの間隔が広がることを抑制し、鋏10の切断性能が低下することを抑制する方向に働く。また、回動軸RXより後端側において第1部材11と第2部材12とが接触することを抑制し、鋏10の開閉操作を妨げる抵抗の発生を抑制する方向に働く。よって、鋏10の切断性能の低下を抑制しつつ、鋏10の開閉操作を軽くすることができる。
【0045】
図5に示すように、中間部材30の後端部35および後端部35は、第2部材12の幅方向において、第2刃部12fの刃線BLを有する側端部とは反対側の第2刃部12fの峰部側の側端部に寄った位置に配置されていることが好ましい。この位置において中間部材30の後端部35から第2部材12に加えられる力は、回動軸部16を支点として、第1刃部11fと第2刃部12fの刃線BL同士がより接近する方向に働く。よって、鋏10の切断性能をさらに高めることができる。
【0046】
図1および図4を参照する。本実施形態の第1部材11では、第1刃部11fの刃線BLとは反対側の側端部に他の部位よりも厚みが大きい凸条部48が形成されている。また、第1部材11の第1刃部11fと回動軸部16の間には、第1部材11の幅方向に沿って溝部49が形成されている。第1部材11は、溝部60において局所的に厚みが小さくなっており、溝部49は、第1部材11において剛性が局所的に小さくなっている部位を構成している。そのため、第1部材11は、第1刃部11fに厚み方向の外力を受けたときに、溝部49において曲がるように弾性変形をしやすい。これにより、鋏10の使用時に、第1刃部11fと第2刃部12fとの間隔を広げる大きな力が生じても、第1部材11が溝部16で弾性変形するため、回動軸部16より後端側において第1部材11と第2部材12の間隔が狭くなりすぎることが抑制される。よって、鋏10の回動動作が阻害されることが抑制される。
【0047】
図4を参照する。第1部材11と第2部材12のそれぞれの裏面には、回動機構15を構成する各部品を収容するための凹部50が設けられている。第1部材11の裏面の凹部50は、第1凹部51と第2凹部52とを含む。第1凹部51は、回動軸部16の周囲に設けられ、中間部材30の先端部31を収容する。第2凹部52は、第1凹部51に連通し、中間部材30の後端部35を収容する。第1凹部51は、第2凹部52よりも深い。第2凹部52は、図6に示すように、中間部材30の回動を阻害しないように、中間部材30の回動方向に開口している。第2部材12の裏面の凹部50は、第1部材11の第1凹部51に面する領域に形成されている。
【0048】
本実施形態の鋏10によれば、少なくとも第1部材11に中間部材30を収容するための凹部50が形成されている。これによって、中間部材30が配置される部位における第1部材11と第2部材12の間の距離が低減されており、鋏10が大型化してしまうことが抑制されている。
【0049】
ここで、鋏の回動動作を補助するための部材を鋏本体の外側に追加すると、その追加した部材が、鋏を用いた作業を阻害してしまう可能性がある。例えば、理容鋏の場合、その追加された部材によって生じた隙間に頭髪が入り込んで絡まってしまい、理髪作業を妨げてしまう可能性がある。これに対して、本実施形態の鋏10によれば、中間部材30は、第1部材11と第2部材12の間に配置されている。そのため、中間部材30によって、理髪作業などの鋏10を用いた作業が阻害されてしまう可能性が低減されている。
【0050】
以上のように、第1実施形態の鋏10によれば、第1部材11と第2部材12の間に配置されている中間部材30が第2部材12に付与する力によって、切断性能を高めることができるとともに、その開閉操作を軽くすることができる。
【0051】
2.第2実施形態:
図7は、第2実施形態の鋏10Aが備える回動機構15Aの構成を示す概略断面図である。第2実施形態の鋏10Aは、第1実施形態の回動機構15の代わりに、第2実施形態の回動機構15Aを備えている点以外は、第1実施形態の鋏10の構成とほぼ同じである。第2実施形態の回動機構15Aは、以下に説明する点以外は、第1実施形態の回動機構15の構成とほぼ同じである。
【0052】
第2実施形態の回動機構15Aは、第1実施形態で説明した、板バネとして機能する中間部材30の代わりに、平板な板状部材によって構成された中間部材30Aを備えている。第2実施形態では、中間部材30Aは、撓みにくい剛性を有している。ただし、他の実施形態では、中間部材30Aは、第1実施形態の中間部材30と同様な構成の弾性部材によって構成されていてもよい。回動機構15Aは、第2部材12に設けられた突出部55を含む。突出部55は、中間部材30Aの後端部35の下方において第2部材12から突出するように設置されている。中間部材30Aの後端部35は、突出部55の上端部に支持されている。
【0053】
中間部材30Aの後端部35には、突出部55の上端部を収容する収容部38が凹部として形成されている。鋏10Aを開閉させると、中間部材30Aの後端部35の収容部38に突出部55の上端部が係止され、中間部材30Aは、第2部材12とともに第1部材11に対して回動軸RXを支点として回動する。
【0054】
第2実施形態では、中間部材30Aは、後端部35により、突出部55を介して、第2部材12に対して第1部材11から離れる方向への力を付与するように配置されている。この力は、回動軸部16より後端側における第1部材11と第2部材12との間隔を大きくし、第1刃部11fと第2刃部12fとの間隔を小さくする方向に働く。また、この力は、鋏10Aの使用時に、切断対象によって第1刃部11fと第2刃部12fとの間隔が広がることを抑制し、鋏10の切断性能が低下することを抑制する方向に働く。よって、鋏10の切断性能の低下を抑制しつつ、鋏10の開閉操作を軽くすることができる。
【0055】
突出部55は、第2部材12に設けられたねじ穴58に螺合することによって第2部材に固定されている。ねじ穴58は、第2部材12を貫通しており、突出部55は、第2部材12の表面側からねじ込まれて、第2部材12の裏面側に突出している。突出部55が、第2部材12から突出している高さは、突出部55がねじ穴58にねじ込まれている深さによって調整することが可能である。
【0056】
この構成によれば、突出部55の高さの調整により、中間部材30Aの後端部35から、突出部55を通じて第2部材12に付与される上記の力を調整することができる。よって、鋏10Aの切断性能と鋏10Aの開閉操作の軽さとが両立できるように調整することが容易にできる。また、上記のように、ねじ穴58が第2部材12を貫通するように形成されており、第2部材12の表面側から突出部55がねじ込まれている構成であれば、第2部材12の表面側から突出部55の高さを調整することがより一層、容易にできる。さらに、突出部55の高さの調整と、回動軸部16のねじ部16sによる第2部材12に対する中間部材30Aの先端部31の位置の調整と、を組み合わせることにより、鋏10Aにおける切断性能と開閉操作の軽さの調整を、よりきめ細かく行うことが可能である。
【0057】
以上のように、第2実施形態の鋏10Aによれば、平板で剛性が高い板状部材によって構成されている中間部材30Aによって、切断性能を高めることができるとともに、その開閉操作を軽くすることができるようにするための力を第2部材12に付与することができる。また、突出部55の高さを調整することにより、鋏10Aの切断性能と鋏10Aの開閉操作の軽さの調整が容易にできる。
【0058】
3.他の実施形態:
本開示の技術は、上述の実施形態の構成に限定されることはなく、例えば、以下のように改変することが可能である。以下に説明する他の実施形態はいずれも、上記の各実施形態と同様に、本開示の技術を実施するための形態の一例として位置づけられる。
【0059】
(1)他の実施形態1:
上記の各実施形態における中間部材30,30Aを備える回動機構15,15Aの構成は、例えば、刈り込み鋏やすき鋏などの様々な理容鋏に適用されてもよい。また、そのような理容鋏以外の様々な鋏に適用されてもよい。例えば、紙切り用の鋏に適用されてもよい。
【0060】
(2)他の実施形態2:
中間部材30,30Aは、板状部材によって構成されていなくてもよい。第1実施形態の中間部材30は、先端部32と後端部35との間の部位の曲げ変形によって弾性力を発生する弾性部材によって構成されていればよく、例えば、針金によって形成されたばね部材によって代用されてもよい。また、第2実施形態の中間部材30Aは、例えば、直棒状の部材によって構成されてもよい。
【0061】
(3)他の実施形態3:
上記の各実施形態において、第1部材11の第1刃部11fが動刃を構成し、第2部材12の第2刃部12fが静刃を構成していてもよい。
【0062】
(4)他の実施形態4:
上記の各実施形態において、一対のベアリング41,42や、複数の環状部材44,45、係止部材43、固定プレート25は省略されてもよい。中間部材30,30Aの先端部31は、挿通孔32を有していなくてもよい。この場合には、中間部材30、30Aの先端部31は、例えば、Eリングのように構成され、回動軸部16に設けられた括れ部に係止されることにより、回動軸部16に支持されてもよい。あるいは、中間部材30、30Aの先端部31は、回動軸部16の側面に接合により支持されてもよい。この構成であっても、回動軸部16が、第1部材11に対して第2部材12とともに回動可能な構成とされていれば、中間部材16を第2部材12とともに回動するように構成できる。また、上記の各実施形態において、保持部材21や回動軸部16のねじ部16sは省略されてもよい。
【0063】
(5)他の実施形態5:
上記の各実施形態において、中間部材30を収容する凹部50は、第1部材11にのみ設けられていてもよいし、第2部材12にのみ設けられていてもよい。また、中間部材30を収容する凹部50は、第1部材11と第2部材12の両方に設けられていてもよい。中間部材30を収容する凹部50は、第1部材11と第2部材12のうちの少なくとも一方に設けられていればよい。
【0064】
(6)他の実施形態6:
上記第2実施形態において、突出部55は、第2部材12に設けられたねじ穴58に螺合する以外の方法で第2部材12に固定されていてもよい。例えば、突出部55は、第2部材12に溶接されていてもよい。また、上記第2実施形態において、第2部材12に設けられたねじ穴58は、第2部材12を貫通していなくてもよい。突出部55は、第2部材12の裏面側から有底のねじ穴58にねじ込まれて固定されてもよい。この構成であっても、突出部55の高さの調整は可能である。
【0065】
(7)他の実施形態7:
上記の各実施形態において、回動軸部16は、ねじ部16s、ナット部23の代わりの構成によって、第1部材11および第2部材12を回動可能に締結してもよい。また、回動軸部16は、保持部材21以外の方法によって回動可能な状態で第1部材11の貫通孔18a内に保持されてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10,10A…鋏、11…第1部材、11f…第1刃部、11r…第1指掛部、12…第2部材、12f…第2刃部、12r…第2指掛部、15、15A…回動機構、16…回動軸部、16c…括れ部、16h…頭部、16s…ねじ部、17…ヒットポイント、18a,18b…貫通孔、21…保持部材、23…ナット部、25…固定プレート、26…ビス、27…ねじ溝、30、30A…中間部材、31…先端部、32…挿通孔、35…後端部、36…係留部、38…収容部、41…第1のベアリング、42…第2のベアリング、43…係止部材、44…第1の環状部材、45…第2の環状部材、47…後端側孔部、48…凸条部、49…溝部、50…凹部、51…第1凹部、52…第2凹部、55…突出部、58…ねじ穴、BL…刃線、GP…間隙、RX…回動軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7