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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116067
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02D 19/08 20060101AFI20230815BHJP
   F02B 19/10 20060101ALI20230815BHJP
   F02B 19/12 20060101ALI20230815BHJP
   F02B 19/16 20060101ALI20230815BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20230815BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20230815BHJP
   F02B 43/00 20060101ALI20230815BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20230815BHJP
   F02M 25/00 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
F02D19/08 C
F02B19/10
F02B19/12 Z
F02B19/16 F
F02M37/00 341D
F02B37/00 302G
F02B43/00 Z
F02M21/02 G
F02M21/02 N
F02M21/02 P
F02M25/00 F
F02M25/00 L
F02M25/00 R
F02M25/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018627
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 浩之
(72)【発明者】
【氏名】戸田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 壮太
(72)【発明者】
【氏名】村田 聡
【テーマコード(参考)】
3G005
3G023
3G092
【Fターム(参考)】
3G005DA06
3G005EA04
3G005HA05
3G005HA13
3G023AB01
3G023AC07
3G023AC08
3G023AD02
3G023AD21
3G023AD28
3G092AA18
3G092AB08
3G092AB09
3G092AB12
3G092AB19
3G092BB20
3G092DB03
3G092DE03S
3G092FA19
(57)【要約】
【課題】2種類以上の燃料を使用するエンジンについて、逆火によるエンジンの損傷を抑制することができるエンジンを提供する。
【解決手段】エンジン本体と、エンジン本体の燃焼室に接続する吸気ラインと、吸気ラインに接続し、第1燃料を吸気ラインに供給するように構成された第1燃料ラインと、吸気ラインにおける第1燃料ラインが接続する位置よりも下流側の位置に接続し、第1燃料よりも爆発下限界が低い第2燃料を供給するように構成された第2燃料ラインと、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン本体と、
前記エンジン本体の燃焼室に接続する吸気ラインと、
前記吸気ラインに接続し、第1燃料を前記吸気ラインに供給するように構成された第1燃料ラインと、
前記吸気ラインにおける前記第1燃料ラインが接続する位置よりも下流側の位置に接続し、前記第1燃料よりも爆発下限界が低い第2燃料を供給するように構成された第2燃料ラインと、
を備える、エンジン。
【請求項2】
前記吸気ラインを流れる空気を圧縮するためのコンプレッサを含む過給機を更に備え、
前記第1燃料ラインは、前記吸気ラインにおける前記コンプレッサよりも上流側の位置に接続し、
前記第2燃料ラインは、前記吸気ラインにおける前記コンプレッサよりも下流側の位置に接続する、請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記吸気ラインにおける前記コンプレッサと前記エンジン本体との間に設けられたエアクーラーを更に備え、
前記第2燃料ラインは、前記吸気ラインにおける前記エアクーラーと前記エンジン本体の吸気弁との間の位置に接続する、請求項2に記載のエンジン。
【請求項4】
前記吸気ラインにおける前記コンプレッサと前記エンジン本体との間に設けられたエアクーラーを更に備え、
前記第2燃料ラインは、前記吸気ラインにおける前記コンプレッサと前記エアクーラーとの間の位置に接続する、請求項2に記載のエンジン。
【請求項5】
前記第2燃料ラインは、前記エンジン本体のシリンダヘッドに形成された吸気ポートに接続する、請求項1乃至3の何れか1項に記載のエンジン。
【請求項6】
前記吸気ラインを流れる空気を圧縮するためのコンプレッサを含む過給機を更に備え、
前記第1燃料ラインは、前記吸気ラインにおける前記コンプレッサと前記エンジン本体の吸気弁との間の位置に接続し、
前記第2燃料ラインは、前記吸気ラインにおける前記第1燃料ラインが接続する位置よりも下流側の位置に接続する、請求項1に記載のエンジン。
【請求項7】
主燃焼室と、前記主燃焼室に連通する副燃焼室とを含むエンジン本体と、
前記エンジン本体の前記主燃焼室に接続する吸気ラインと、
前記吸気ラインに接続し、第1燃料を前記吸気ラインに供給するように構成された第1燃料ラインと、
前記副燃焼室に接続し、前記第1燃料よりも爆発下限界が低い第2燃料を前記副燃焼室に供給するように構成された第2燃料ラインと、
を備える、エンジン。
【請求項8】
前記吸気ラインを流れる空気を圧縮するためのコンプレッサを含む過給機を更に備え、
前記第1燃料ラインは、前記吸気ラインにおける前記コンプレッサよりも上流側の位置に接続する、請求項7に記載のエンジン。
【請求項9】
前記吸気ラインを流れる空気を圧縮するためのコンプレッサを含む過給機を更に備え、
前記第1燃料ラインは、前記吸気ラインにおける前記コンプレッサよりも下流側の位置に接続する、請求項7に記載のエンジン。
【請求項10】
前記吸気ラインにおける前記コンプレッサと前記エンジン本体との間に設けられたエアクーラーを更に備え、
前記第1燃料ラインは、前記吸気ラインにおける前記コンプレッサと前記エアクーラーとの間の位置に接続する、請求項9に記載のエンジン。
【請求項11】
前記第1燃料ラインは、前記エンジン本体のシリンダヘッドに形成された吸気ポートに接続する、請求項7又は9に記載のエンジン。
【請求項12】
前記第1燃料はメタンであり、
前記第2燃料は水素である、請求項1乃至11の何れか1項に記載のエンジン。
【請求項13】
前記第1燃料はアンモニアであり、
前記第2燃料はメタンである、請求項1乃至11の何れか1項に記載のエンジン。
【請求項14】
前記第1燃料はアンモニアであり、
前記第2燃料は水素である、請求項1乃至11の何れか1項に記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脱炭素社会に向けて水素等を燃料としたエンジンが提案されており、特許文献1には、燃焼室にて生成される比熱比の小さい生成物(例えば、二酸化炭素)を循環ガスから除去することにより、高い熱効率にて運転することが可能な作動ガス循環型水素エンジンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4682871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、2種類以上の燃料を使用する新規なエンジンを検討しており、このような新規なエンジンにおいて、逆火によるエンジンの損傷を抑制することが課題となっている。特許文献1に記載のエンジンは、2種類以上の燃料を使用するエンジンではなく燃料として水素のみを使用するエンジンであり、上述の課題を解決するための知見は開示されていない。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、2種類以上の燃料を使用するエンジンについて、逆火によるエンジンの損傷を抑制することができるエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係るエンジンは、
エンジン本体と、
前記エンジン本体の燃焼室に接続する吸気ラインと、
前記吸気ラインに接続し、第1燃料を前記吸気ラインに供給するように構成された第1燃料ラインと、
前記吸気ラインにおける前記第1燃料ラインが接続する位置よりも下流側の位置に接続し、前記第1燃料よりも爆発下限界が低い第2燃料を供給するように構成された第2燃料ラインと、
を備える。
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係るエンジンは、
主燃焼室と、前記主燃焼室に連通する副燃焼室とを含むエンジン本体と、
前記エンジン本体の前記主燃焼室に接続する吸気ラインと、
前記吸気ラインに接続し、第1燃料を前記吸気ラインに供給するように構成された第1燃料ラインと、
前記副燃焼室に接続し、前記第1燃料よりも爆発下限界が低い第2燃料を前記副燃焼室に供給するように構成された第2燃料ラインと、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、2種類以上の燃料を使用するエンジンについて、逆火によるエンジンの損傷を抑制することができるエンジンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の幾つかの実施形態に係るガスエンジンの概略構成を模式的に示す図である。
図2】比較形態に係るガスエンジンにおける逆火の影響が及ぶ範囲を模式的に示す図である。
図3】ガスエンジンにおける逆火の影響が及ぶ範囲の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0011】
(ガスエンジンの概略構成)
図1は、本開示の幾つかの実施形態に係るガスエンジン2の概略構成を模式的に示す図である。
【0012】
図1に示すように、ガスエンジン2は、エンジン本体4、吸気ライン6、排気ライン8、過給機10及びエアクーラー12を備える。
【0013】
図1に示す例では、ガスエンジン2は副室式のガスエンジンであり、エンジン本体4は、ピストン14とシリンダヘッド16との間に画定される主燃焼室18(主室)と、該主燃焼室18に連通する副燃焼室26(副室)とを備える。また、副燃焼室26は、シリンダヘッド16に設けられる副室形成部28および副室口金31の内部に形成された空間であり、副室口金31に形成された複数の噴孔30を介して主燃焼室18に連通する。
【0014】
吸気ライン6は、主燃焼室18に接続しており、少なくとも1種類の燃料ガスと空気との混合気(希薄予混合気)を主燃焼室18に供給するように構成される。吸気ライン6は、シリンダヘッド16に形成された吸気ポート32と、吸気ポート32に接続する吸気管34とを含む。吸気ポート32の一端は主燃焼室18に接続し、吸気ポート32の他端は吸気管34に接続する。吸気ポート32には、主燃焼室18と吸気管34との連通状態を制御する吸気弁36が設けられている。
【0015】
副燃焼室26への燃料ガス(以下、副室燃料と記載する。)の供給は副燃焼室26に接続する副室燃料ライン29により直接行われるようになっている。そして、副室形成部28に設置された着火装置(本実施形態では点火プラグ37)による副燃焼室26での燃料(副室燃料および主燃焼室18から流入する希薄予混合気)への着火によって燃焼火炎が生じ、この燃焼火炎が複数の噴孔30を介して副燃焼室26から主燃焼室18に噴出されることで、主燃焼室18内の燃料(希薄予混合気)が燃焼されるようになっている。
【0016】
排気ライン8は、主燃焼室18に接続しており、主燃焼室18で燃料が燃焼されることにより発生した燃焼ガスを主燃焼室18から排ガスとして排出するように構成される。排気ライン8は、シリンダヘッド16に形成された排気ポート38と、排気ポート38に接続する排気管40とを含む。排気ポート38の一端は主燃焼室18に接続し、排気ポート38の他端は排気管40に接続する。排気ポート38には、主燃焼室18と排気管40との連通状態を制御する排気弁42が設けられている。吸気弁36および排気弁42は不図示のクランク軸のクランク角度に応じて吸気ポート32及び排気ポート38をそれぞれ開閉する。
【0017】
過給機10は、吸気ライン6に設けられたコンプレッサ44と、排気ライン8に設けられたタービン46と、コンプレッサ44とタービン46とを接続する回転軸48とを含む。排気ライン8を流れる排ガスによってタービン46が駆動すると、タービン46の回転が回転軸48を介してコンプレッサ44に伝達されて、コンプレッサ44が吸気ライン6を流れる空気を圧縮する。
【0018】
エアクーラー12は、吸気ライン6におけるコンプレッサ44とエンジン本体4との間(コンプレッサ44と吸気ポート32との間)に設けられており、コンプレッサ44での圧縮によって昇温された空気を冷却するように構成される。
【0019】
(ガスエンジンの燃料ラインの構成例)
幾つかの実施形態では、上述のガスエンジン2は、2種類以上の燃料ガスを吸気ライン6に供給するように構成されていてもよい。この場合、ガスエンジン2は、図1に破線で示す燃料ライン50a~50dのうち2つ以上を備える。
【0020】
図1において、燃料ライン50aは、吸気ライン6におけるコンプレッサ44よりも上流側の位置Paに接続する。燃料ライン50bは、吸気ライン6におけるコンプレッサ44よりも下流側の位置Pbに接続する。位置Pbは、詳細には、吸気ライン6におけるコンプレッサ44とエアクーラー12との間の位置である。
【0021】
燃料ライン50cは、吸気ライン6におけるコンプレッサ44よりも下流側の位置Pcに接続する。位置Pcは、詳細には、吸気ライン6におけるエアクーラー12とシリンダヘッド16の間の位置である。燃料ライン50dは、吸気ライン6におけるコンプレッサ44よりも下流側の位置Pdに接続する。位置Pdは、詳細には、吸気ライン6におけるエアクーラー12と吸気弁36との間の位置であり、より詳細には、吸気ライン6における吸気ポート32の位置である。
【0022】
以下、ガスエンジン2が燃料ライン50a~50dのうち2つの燃料ラインを備える場合を例に幾つかの実施形態を説明する。
【0023】
以下で説明する幾つかの実施形態では、これらの2つの燃料ラインのうち吸気ライン6における相対的に上流側の位置に接続する燃料ラインを第1燃料ライン、吸気ライン6における相対的に下流側の位置(吸気ライン6と第1燃料ラインとが接続する位置よりも下流側の位置)に接続する燃料ラインを第2燃料ラインと定義し、第1燃料ラインから吸気ライン6に供給する燃料ガス(すなわち第1燃料ラインから吸気ライン6に供給するガスの主成分)を第1燃料、第2燃料ラインから吸気ライン6に供給する燃料ガス(すなわち第2燃料ラインから吸気ライン6に供給するガスの主成分)を第2燃料と定義すると、第2燃料ラインは、第1燃料よりも爆発下限界が低い第2燃料を吸気ライン6に供給するように構成される。すなわち、上記2つの燃料ラインのうち吸気ライン6における相対的に下流側の位置に接続する第2燃料ラインから吸気ライン6に供給する第2燃料の爆発下限界は、吸気ライン6における相対的に上流側の位置に接続する第1燃料ラインから吸気ライン6に供給する第1燃料の爆発下限界よりも低い。
【0024】
例えば、図1に示すガスエンジン2は、燃料ライン50aを第1燃料ラインとして備えるとともに、燃料ライン50b、燃料ライン50c又は燃料ライン50dを第2燃料ラインとして備えていてもよい。すなわち、ガスエンジン2は、燃料ライン50aを第1燃料ラインとして備え、燃料ライン50bを第2燃料ラインとして備えていてもよいし、燃料ライン50aを第1燃料ラインとして備え、燃料ライン50cを第2燃料ラインとして備えていてもよいし、燃料ライン50aを第1燃料ラインとして備え、燃料ライン50dを第2燃料ラインとして備えていてもよい。
【0025】
あるいは、図1に示すガスエンジン2は、燃料ライン50b又は燃料ライン50cを第1燃料ラインとして備え、燃料ライン50b、燃料ライン50c又は燃料ライン50dのうち吸気ライン6における第1燃料ラインと接続する位置よりも下流側の位置に接続する燃料ラインを第2燃料ラインとして備えていてもよい。例えば、ガスエンジン2は、燃料ライン50bを第1燃料ラインとしてとして備え、燃料ライン50cを第2燃料ラインとして備えていてもよいし、燃料ライン50bを第1燃料ラインとしてとして備え、燃料ライン50dを第2燃料ラインとして備えていてもよいし、燃料ライン50cを第1燃料ラインとしてとして備え、燃料ライン50dを第2燃料ラインとして備えていてもよい。
【0026】
また、上述の第1燃料と第2燃料は、例えば水素、メタン、プロパン、n-ブタン、一酸化炭素及びアンモニアのうち何れか2つであってもよい。すなわち、第1燃料は、水素、メタン、プロパン、n-ブタン、一酸化炭素及びアンモニアのうち何れかであってもよく、第2燃料は、水素、メタン、プロパン、n-ブタン、一酸化炭素及びアンモニアのうち第1燃料よりも爆発下限界の低い何れかであってもよい。例えば、第1燃料がメタンであり第2燃料が水素であってもよい。また、例えば、第1燃料がアンモニアであり第2燃料がメタンであってもよい。なお、水素、メタン、プロパン、n-ブタン、一酸化炭素及びアンモニアの爆発下限界は、それぞれ、4.0%、5.0%、2.1%、1.8%、12.5%、15.0%である。また、第1燃料ラインを流れるガスにおける第1燃料の濃度と第2燃料ラインを流れるガスにおける第2燃料の濃度は、例えばそれぞれ50%以上であってもよく、それぞれ80%以上であってもよい。
【0027】
ここで、吸気ライン6における相対的に下流側の位置に接続する第2燃料ラインから吸気ライン6に供給する第2燃料の爆発下限界を、吸気ライン6における相対的に上流側の位置に接続する第1燃料ラインから吸気ライン6に供給する第1燃料の爆発下限界よりも低くすることの技術的意義について説明する。
【0028】
第1燃料よりも爆発下限界が低い第2燃料は第1燃料よりも逆火を起こしやすいため、上記のように吸気ライン6における第2燃料ラインが接続される位置を吸気ライン6における第1燃料ラインが接続される位置よりも下流側とすることにより、逆火が起こった場合に吸気ライン6における逆火の影響が及ぶ範囲を小さくすることができ、逆火によるガスエンジン2の損傷を抑制することができる(この点については後でより具体的に説明する)。
【0029】
また、吸気ライン6の圧力は、コンプレッサ44上流のPaで最も低く、コンプレッサ下流のPbで最も高くなる。その後、エアクーラー12後のPc、給気ポート32内のPdで圧力損失の分、圧力が低下する。すなわちPb>Pc>Pd>Paの関係がある。したがって、燃料ラインにおける吸気ライン6に接続する位置がPaの場合は、燃料ラインを流れる燃料の圧力である燃料供給圧力を低くすることができ、燃料の昇圧に必要なエネルギーを節約することができる。このため、上記のように第1燃料と第2燃料のうち相対的に爆発下限界が高い第1燃料については、逆火を起こしにくいため、吸気ライン6における第1燃料ラインが接続される位置をPaとすることにより、逆火のリスクを抑制しつつ第1燃料の昇圧に用いるエネルギーを節約することができる。
【0030】
上記効果について、比較形態と対比して具体的に説明する。
図2に示す比較形態のように、爆発下限界が低い燃料(例えば水素等)を例えば燃料ライン50aから供給し、爆発下限界が高い燃料(例えばメタン等)を例えば燃料ライン50cから供給する場合には、吸気弁36が開いた際に高温の主燃焼室18内のガスから吸気ポート32の混合気に着火して火炎が吸気ライン6の上流に遡る逆火が発生すると、逆火は吸気ライン6における燃料ライン50aが接続する位置Pa(爆発下限界が低い燃料を含む混合気の存在する範囲の上流端)まで遡る可能性があり、燃焼する容積が大きく逆火の影響が広範囲に及ぶため、逆火によるガスエンジンの損傷が生じやすい。
【0031】
これに対し、図3に例示するように、爆発下限界が高い燃料(例えばメタン等)を例えば燃料ライン50aから供給し、爆発下限界が低い燃料(例えば水素等)を例えば燃料ライン50cから供給する場合には、逆火が発生しても逆火は吸気ライン6における燃料ライン50cが接続する位置Pcより上流側には遡りにくい。このため、図3に示すように、逆火による燃焼が起こる可能性がある範囲を図2に示す比較形態よりも狭くすることができ、逆火によるガスエンジン2の損傷を抑制することができる。また、燃料ライン50cから主燃焼室18に近い位置Pcに燃料を供給することによりガスエンジン2の応答速度を高めることができる。また、爆発下限界が高い燃料(メタン等)は逆火を起こしにくい燃料であるため、燃料ライン50aから吸気ライン6における圧力が低い上流側の位置Paに燃料を供給することにより、逆火のリスクを抑制しつつ燃料の昇圧に用いるエネルギーを節約することができる。
【0032】
以下、上述した幾つかの実施形態によって得られるその他の効果について説明する。
図1に示すガスエンジン2が、例えば燃料ライン50aを第1燃料ラインとして備えるとともに、燃料ライン50b、燃料ライン50c又は燃料ライン50dを第2燃料ラインとして備える場合には、第1燃料ラインは、吸気ライン6におけるコンプレッサ44よりも上流側の位置に接続し、第2燃料ラインは、吸気ライン6におけるコンプレッサ44よりも下流側の位置に接続する。このため、第1燃料と第2燃料のうち爆発下限界の高い(逆火のリスクの低い)第1燃料を吸気ライン6におけるコンプレッサ44よりも上流側の位置Paに供給することができるため、第2燃料を吸気ライン6におけるコンプレッサ44よりも上流側の位置Paに供給する場合よりも、コンプレッサ44に逆火の影響が及ぶことを抑制することができる。また、吸気ライン6においてコンプレッサ44による圧縮の前の比較的圧力が低い位置Paに第1燃料を供給することにより、第1燃料の燃料供給圧力を低くすることができ、第1燃料の昇圧に必要なエネルギーを節約することができる。また、第1燃料と第2燃料のうち爆発下限界の低い(逆火のリスクの高い)第2燃料を吸気ライン6に供給する位置をコンプレッサ44よりも下流側の位置とすることにより、コンプレッサ44に逆火の影響が及ぶことを抑制することができ、過給機10の損傷リスクを低減できる。また、吸気ライン6におけるコンプレッサ44よりも上流側の位置に接続する燃料ラインを有する既存のエンジンを改造して当該実施形態に係るガスエンジン2を製造することが可能である。
【0033】
また、図1に示すガスエンジン2が、例えば燃料ライン50aを第1燃料ラインとして備えるとともに、燃料ライン50c又は燃料ライン50dを第2燃料ラインとして備える場合には、第2燃料ラインは、吸気ライン6におけるエアクーラー12と吸気弁36との間の位置に接続する。このため、第1燃料と第2燃料のうち爆発下限界の低い(逆火のリスクの高い)第2燃料を吸気ライン6におけるエアクーラー12と吸気弁36との間の位置に供給することができるため、逆火が発生しても逆火の影響が及ぶ範囲を吸気弁36からエアクーラー12後までの範囲とすることができ、ガスエンジン2の損傷を抑制することができる。
【0034】
また、図1に示すガスエンジン2が、例えば燃料ライン50aを第1燃料ラインとして備えるとともに、燃料ライン50bを第2燃料ラインとして備える場合には、第2燃料ラインは、吸気ライン6におけるコンプレッサ44とエアクーラー12との間の位置に接続する。この場合、第2燃料ラインをエンジン本体4の外側で吸気ライン6に接続することができるため、第2燃料ラインから吸気ライン6への燃料の供給を行いやすい。また、上述したように、仮に逆火が起きてもコンプレッサ44まで火炎が遡ることがなく過給機10の損傷リスクを低減できる。
【0035】
また、図1に示すガスエンジン2が、例えば燃料ライン50aを第1燃料ラインとして備えるとともに、燃料ライン50dを第2燃料ラインとして備える場合には、第2燃料ラインは、吸気ポート32に接続する。このため、第2燃料に起因する逆火が生じた場合に逆火の影響がエンジン本体4の外部に及ぶことを抑制し、ガスエンジン2の損傷を効果的に抑制することができる。
【0036】
また、図1に示すガスエンジン2が、例えば燃料ライン50bを第1燃料ラインとして備えるとともに、燃料ライン50cを第2燃料ラインとして備える場合、燃料ライン50bを第1燃料ラインとして備えるとともに、燃料ライン50dを第2燃料ラインとして備える場合、又は燃料ライン50cを第1燃料ラインとして備えるとともに、燃料ライン50dを第2燃料ラインとして備える場合には、第1燃料ラインは、吸気ライン6におけるコンプレッサ44と吸気弁36との間の位置に接続し、第2燃料ラインは、吸気ライン6における第1燃料ラインと吸気ライン6とが接続する位置よりも下流側の位置に接続する。この場合、吸気ライン6におけるコンプレッサ44と吸気弁36との間の位置に接続する燃料ラインを有する既存のガスエンジンを改造して当該実施形態に係るガスエンジン2を製造することが可能である。
【0037】
(ガスエンジンの燃料ラインの他の構成例)
幾つかの実施形態では、図1に示すガスエンジン2は、副室燃料ライン29から供給する副室燃料とは異なる燃料を吸気ライン6に供給してもよい。この場合、ガスエンジン2は、図1を用いて説明した燃料ライン50a~50dのうち1つ以上を備え、副室燃料ライン29は、該1つ以上の燃料ラインから吸気ライン6に供給される燃料ガスよりも爆発下限界が低い燃料ガスを副室燃料ライン29から副燃焼室26に供給するように構成されてもよい。
【0038】
例えば、燃料ライン50a~50dのうち上記1つ以上の燃料ラインから吸気ライン6に供給する燃料は、水素、メタン、プロパン、n-ブタン、一酸化炭素及びアンモニアのうち何れかであってもよく、副室燃料ライン29から副燃焼室26に供給する副室燃料は、水素、メタン、プロパン、n-ブタン、一酸化炭素及びアンモニアのうち何れかであって、上記1つ以上の燃料ラインから吸気ライン6に供給される燃料よりも爆発下限界の低い燃料であってもよい。例えば、燃料ライン50a~50dのうち上記1つ以上の燃料ラインから吸気ライン6にメタンを供給し、副室燃料ライン29から副燃焼室26に水素を供給してもよい。また、例えば、燃料ライン50a~50dのうち上記1つ以上の燃料ラインから吸気ライン6にアンモニアを供給し、副室燃料ライン29から副燃焼室26にメタンを供給してもよい。
【0039】
主燃焼室18と副燃焼室26とを含む副室式のガスエンジン2では、副燃焼室26に燃料を供給する副室燃料ライン29には基本的には空気が存在しないためか存在しても微量であるため、上記のように吸気ライン6に供給する燃料ガスよりも爆発下限界が低く逆火を起こしやすい燃料を副室燃料ライン29から副燃焼室26に供給しても、逆火のリスクが生じにくい。また、上記のように、副室燃料よりも爆発下限界が高く逆火を起こしにくい燃料ガスを吸気ライン6に供給することにより、副室燃料と同じ燃料ガスを吸気ライン6に供給する場合よりも、逆火のリスクが生じにくい。したがって、逆火に起因するガスエンジン2の損傷を抑制することができる。
【0040】
以下、ガスエンジン2が燃料ライン50a~50dのうち1つの燃料ラインを備える場合を例に幾つかの実施形態を説明する。以下で説明する幾つかの実施形態では、燃料ライン50a~50dのうちガスエンジン2が備える1つの燃料ラインが第1燃料ラインに相当し、副室燃料ライン29が第2燃料ラインに相当する。また、燃料ライン50a~50dのうちガスエンジン2が備える1つの燃料ラインから吸気ライン6に供給する燃料ガスが第1燃料に相当し、副室燃料ライン29から副燃焼室26に供給する燃料ガスが第2燃料に相当する。
【0041】
一実施形態では、図1に示すガスエンジン2は上記1つの燃料ラインとして燃料ライン50aを備えていてもよい。この場合には、副室燃料ライン29は、燃料ライン50aから吸気ライン6に供給される燃料ガスよりも爆発下限界が低い燃料ガスを副燃焼室26に供給するように構成される。これにより、上述のように逆火に起因するガスエンジン2の損傷を抑制することができる。また、副室燃料よりも爆発下限界の高い(逆火のリスクの低い)燃料ガスを吸気ライン6に供給する位置をコンプレッサ44よりも上流側の位置とすることにより、副室燃料と同じ燃料をコンプレッサ44よりも上流側の位置に供給する場合よりも、コンプレッサ44に逆火の影響が及ぶことを抑制することができる。また、吸気ライン6においてコンプレッサ44による圧縮の前の比較的圧力が低い位置Paに燃料ガスを供給することにより、該燃料ガスの燃料供給圧力を低くすることができ、該燃料ガスの昇圧に必要なエネルギーを節約することができる。
【0042】
幾つかの実施形態では、図1に示すガスエンジン2は上記1つの燃料ラインとして燃料ライン50b~50dの何れかを備えていてもよい。この場合には、副室燃料ライン29は、燃料ライン50b~50dのうちガスエンジン2が備える上記何れかから吸気ライン6に供給される燃料ガスよりも爆発下限界が低い燃料ガスを副燃焼室26に供給するように構成される。
【0043】
これにより、上述のように逆火に起因するガスエンジン2の損傷を抑制することができる。また、副室燃料よりも爆発下限界の高い(逆火のリスクの低い)燃料ガスを吸気ライン6に供給する位置をコンプレッサ44よりも下流側の位置とすることにより、コンプレッサ44に逆火の影響が及ぶことを効果的に抑制することができ、過給機10の損傷リスクを効果的に低減できる。また、吸気ライン6におけるコンプレッサ44よりも下流側の位置に燃料ラインが接続する既存のエンジンを改造して製造することが可能となる。
【0044】
幾つかの実施形態では、図1に示すガスエンジン2は上記1つの燃料ラインとして燃料ライン50bを備えていてもよい。この場合には、副室燃料ライン29は、燃料ライン50bから吸気ライン6に供給される燃料ガスよりも爆発下限界が低い燃料ガスを副燃焼室26に供給するように構成される。これにより、燃料ライン50bをエンジン本体4の外側で吸気ライン6に接続することができるため、燃料ライン50bから吸気ライン6への燃料の供給を行いやすい。また、上述したように、仮に逆火が起きてもコンプレッサ44まで火炎が遡ることがなく過給機10の損傷リスクを低減できる。
【0045】
幾つかの実施形態では、図1に示すガスエンジン2は上記1つの燃料ラインとして燃料ライン50c又は50dを備えていてもよい。この場合には、副室燃料ライン29は、燃料ライン50c又は50dから吸気ライン6に供給される燃料ガスよりも爆発下限界が低い燃料ガスを副燃焼室26に供給するように構成される。これにより、逆火が発生しても逆火の影響が及ぶ範囲を吸気弁36からエアクーラー12後までの範囲とすることができ、ガスエンジン2の損傷を抑制することができる。
【0046】
幾つかの実施形態では、図1に示すガスエンジン2は上記1つの燃料ラインとして燃料ライン50dを備えていてもよい。この場合には、副室燃料ライン29は、燃料ライン50dから吸気ライン6に供給される燃料ガスよりも爆発下限界が低い燃料ガスを副燃焼室26に供給するように構成される。これにより、吸気ライン6に供給する燃料ガスに起因する逆火が生じた場合に逆火の影響がエンジン本体4の外部に及ぶことを抑制し、ガスエンジン2の損傷を効果的に抑制することができる。
【0047】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0048】
例えば、ガスエンジンは3種類以上の燃料を吸気ライン6に供給してもよい。この場合、3種類以上の燃料について、燃料の爆発下限界が低いほど該燃料を吸気ライン6に供給する位置を下流側の位置としてもよい。例えば、ガスエンジンは、吸気ラインに接続し吸気ラインに第1燃料を供給する第1燃料ラインと、吸気ラインにおける第1燃料ラインが接続する位置よりも下流側に接続し、吸気ラインに第2燃料を供給する第2燃料ラインと、吸気ラインにおける第2燃料ラインが接続する位置よりも下流側に接続し、吸気ラインに第3燃料を供給する第3燃料ラインと、を備えていてもよく、この場合、第2燃料の爆発下限界は第1燃料の爆発下限界よりも低く、第3燃料の爆発下限界は第2燃料の爆発下限界よりも低くてもよい。これにより、逆火によるガスエンジン2の損傷を抑制することができ、燃料の昇圧に用いるエネルギーを節約することができる。
【0049】
また、ガスエンジンは、副室式のガスエンジンでなくてもよく、ガスエンジンは副燃焼室を備えていなくてもよい。この場合、例えば、ガスエンジンは、エンジン本体の燃焼室に接続する吸気ラインと、吸気ラインに接続する第1燃料ラインと、該燃焼室に接続する第2燃料ラインとを備えていてもよい。この場合、第2燃料ラインは、第1燃料ラインから吸気ラインに供給する第1燃料よりも爆発下限界が低い第2燃料を燃焼室に供給してもよい。これにより、逆火によるガスエンジン2の損傷を抑制することができる。
【0050】
また、本開示は、ガスエンジンに限らず、例えばディーゼルエンジン等にも適用可能である。なお、上述した「爆発下限界」は、「可燃範囲の下限」又は「燃焼範囲の下限」に読みかえてもよい。また「爆発下限界が低い」は「爆発等級が高い」と読みかえても良い。なお爆発等級の高さは爆発下限界の低さよりも優先する。爆発等級が同じであれば爆発下限界で判定する。
【0051】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0052】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るエンジン(例えば上述のガスエンジン2)は、
エンジン本体(例えば上述のエンジン本体4)と、
前記エンジン本体の燃焼室(例えば上述の主燃焼室18)に接続する吸気ライン(例えば上述の吸気ライン6)と、
前記吸気ラインに接続し、第1燃料(例えば上述の水素、メタン、プロパン、n-ブタン、一酸化炭素及びアンモニアの何れか)を前記吸気ラインに供給するように構成された第1燃料ライン(例えば上述の燃料ライン50a~50dの何れか)と、
前記吸気ラインにおける前記第1燃料ラインが接続する位置よりも下流側の位置に接続し、前記第1燃料よりも爆発下限界が低い第2燃料(例えば上述の水素、メタン、プロパン、n-ブタン、一酸化炭素及びアンモニアの何れかであって、上記第1燃料よりも爆発下限界が低い燃料)を供給するように構成された第2燃料ライン(例えば上述の燃料ライン50a~50dの何れかであって、吸気ラインにおける第1燃料ラインが接続する位置よりも下流側の位置に接続する燃料ライン)と、
を備える。
【0053】
第1燃料よりも爆発下限界が低い第2燃料は第1燃料よりも逆火を起こしやすいため、上記(1)に記載のように吸気ラインにおける第2燃料ラインが接続される位置を吸気ラインにおける第1燃料ラインが接続される位置よりも下流側とすることにより、逆火が起こった場合に吸気ラインにおける逆火の影響が及ぶ範囲を小さくすることができ、逆火によるエンジンの損傷を抑制することができる。
また、上記(1)に記載のように第1燃料と第2燃料のうち相対的に爆発下限界が高い第1燃料については、逆火を起こしにくいため、吸気ラインにおける第1燃料ラインが接続される位置を吸気ラインにおける第2燃料ラインが接続される位置よりも上流側としても、逆火のリスクの増大を抑制できる。
【0054】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のエンジンにおいて、
前記吸気ラインを流れる空気を圧縮するためのコンプレッサ(例えば上述のコンプレッサ44)を含む過給機(例えば上述の過給機10)を更に備え、
前記第1燃料ライン(例えば上述の燃料ライン50a)は、前記吸気ラインにおける前記コンプレッサよりも上流側の位置(例えば上述の位置Pa)に接続し、
前記第2燃料ライン(例えば上述の燃料ライン50b、燃料ライン50c又は燃料ライン50d)は、前記吸気ラインにおける前記コンプレッサよりも下流側の位置(例えば上述の位置Pb、位置Pc又は位置Pd)に接続する。
【0055】
上記(2)に記載のエンジンによれば、第1燃料と第2燃料のうち爆発下限界の高い(逆火のリスクの低い)第1燃料を吸気ラインに供給する位置をコンプレッサよりも上流側とすることにより、コンプレッサに逆火の影響が及ぶことを抑制することができる。また、吸気ラインにおいてコンプレッサによる圧縮の前の比較的圧力が低い位置に第1燃料を供給することにより、第1燃料の燃料供給圧力を低くすることができ、第1燃料の昇圧に必要なエネルギーを節約することができる。
また、第1燃料と第2燃料のうち爆発下限界の低い(逆火のリスクの高い)第2燃料を吸気ラインに供給する位置をコンプレッサよりも下流側とすることにより、コンプレッサに逆火の影響が及ぶことを抑制することができ、過給機の損傷リスクを低減できる。
また、吸気ラインにおける前記コンプレッサよりも上流側に燃料ラインが接続する既存のエンジンを改造して製造することも可能である。
【0056】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載のエンジンにおいて、
前記吸気ラインにおける前記コンプレッサと前記エンジン本体との間に設けられたエアクーラー(例えば上述のエアクーラー12)を更に備え、
前記第2燃料ラインは、前記吸気ラインにおける前記エアクーラーと前記エンジン本体の吸気弁(例えば上述の吸気弁36)との間の位置に接続する。
【0057】
上記(3)に記載のエンジンによれば、逆火が発生しても逆火の影響が及ぶ範囲を吸気弁からエアクーラー後までの範囲とすることができ、エンジンの損傷を抑制することができる。
【0058】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)の何れかに記載のエンジンにおいて、
前記吸気ラインにおける前記コンプレッサと前記エンジン本体との間に設けられたエアクーラー(例えば上述のエアクーラー12)を更に備え、
前記第2燃料ライン(例えば上述の燃料ライン50b)は、前記吸気ラインにおける前記コンプレッサと前記エアクーラーとの間の位置(例えば上述の位置Pb)に接続する。
【0059】
上記(4)に記載のエンジンによれば、吸気ラインにおけるコンプレッサとエアクーラーとの間の位置はエンジン本体の外側であるため、第2燃料ラインから吸気ラインへの燃料の供給を行いやすい。また仮に逆火が起きてもコンプレッサまで火炎が遡ることがなく過給機の損傷リスクを低減できる。
【0060】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかに記載のエンジンにおいて、
前記第2燃料ライン(例えば上述の燃料ライン50d)は、前記エンジン本体のシリンダヘッドに形成された吸気ポート(例えば上述の吸気ポート32)に接続する。
【0061】
上記(5)に記載のエンジンによれば、逆火が生じた場合に逆火の影響がエンジン本体の外部に及ぶことを抑制し、エンジンの損傷を効果的に抑制することができる。
【0062】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のエンジンにおいて、
前記吸気ラインを流れる空気を圧縮するためのコンプレッサ(例えば上述のコンプレッサ44)を含む過給機(例えば上述の過給機10)を更に備え、
前記第1燃料ライン(例えば上述の燃料ライン50b、燃料ライン50c又は燃料ライン50d)は、前記吸気ラインにおける前記コンプレッサと前記エンジン本体の吸気弁(例えば上述の吸気弁36)との間の位置に接続し、
前記第2燃料ライン(燃料ライン50b、燃料ライン50c又は燃料ライン50dであって、吸気ラインにおける第1燃料ラインと吸気ライン6とが接続する位置よりも下流側に接続する燃料ライン)は、前記吸気ラインにおける前記第1燃料ラインと前記吸気ラインとが接続する位置よりも下流側の位置に接続する。
【0063】
上記(6)に記載のエンジンによれば、吸気ラインにおけるコンプレッサとエンジン本体の吸気弁との間の位置に接続する燃料ラインを有する既存のエンジンを改造する場合に容易に製造することができる。
【0064】
(7)本開示の少なくとも一実施形態に係るエンジンは、
主燃焼室(例えば上述の主燃焼室18)と、前記主燃焼室に連通する副燃焼室(例えば上述の副燃焼室26)とを含むエンジン本体(例えば上述のエンジン本体4)と、
前記エンジン本体の前記主燃焼室に接続する吸気ライン(例えば上述の吸気ライン6)と、
前記吸気ラインに接続し、第1燃料(例えば上述の水素、メタン、プロパン、n-ブタン、一酸化炭素及びアンモニアの何れか)を前記吸気ラインに供給するように構成された第1燃料ライン(例えば上述の燃料ライン50a~50dの何れか)と、
前記副燃焼室に接続し、前記第1燃料よりも爆発下限界が低い第2燃料を前記副燃焼室に供給するように構成された第2燃料ライン(例えば上述の副室燃料ライン29)と、
を備える。
【0065】
主燃焼室と副燃焼室とを含む所謂副室式のエンジンでは、副燃焼室に燃料を供給するラインには基本的には空気が存在しないためか存在しても微量であるため、上記(7)に記載のように第1燃料よりも爆発下限界が低く逆火を起こしやすい第2燃料を第2燃料ラインから副燃焼室に供給しても、逆火のリスクが生じにくい。
また、上記(7)に記載のように、第2燃料よりも爆発下限界が高く逆火を起こしにくい第1燃料を第1燃料ラインから吸気ラインに供給することにより、逆火を起こしやすい第2燃料を吸気ラインに供給する場合よりも、逆火のリスクが生じにくい。
したがって、逆火に起因するエンジンの損傷を抑制することができる。
【0066】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)に記載のエンジンにおいて、
前記吸気ラインを流れる空気を圧縮するためのコンプレッサ(例えば上述のコンプレッサ44)を含む過給機(例えば上述の過給機10)を更に備え、
前記第1燃料ライン(例えば上述の燃料ライン50a)は、前記吸気ラインにおける前記コンプレッサよりも上流側の位置(例えば上述の位置Pa)に接続する。
【0067】
上記(8)に記載のエンジンによれば、第1燃料と第2燃料のうち爆発下限界の高い(逆火のリスクの低い)第1燃料を吸気ラインに供給する位置をコンプレッサよりも上流側とすることにより、コンプレッサに逆火の影響が及ぶことを抑制することができる。また、吸気ラインにおいてコンプレッサによる圧縮の前の比較的圧力が低い位置に第1燃料を供給することにより、第1燃料の燃料供給圧力を低くすることができ、第1燃料の昇圧に必要なエネルギーを節約することができる。
また、吸気ラインにおける前記コンプレッサよりも上流側の位置に燃料ラインが接続する既存のエンジンを改造して製造することも可能である。
【0068】
(9)幾つかの実施形態では、上記(7)に記載のエンジンにおいて、
前記吸気ラインを流れる空気を圧縮するためのコンプレッサ(例えば上述のコンプレッサ44)を含む過給機(例えば上述の過給機10)を更に備え、
前記第1燃料ライン(例えば上述の燃料ライン50b~50dの何れか)は、前記吸気ラインにおける前記コンプレッサよりも下流側の位置(例えば上述の位置Pb、位置Pc、又は位置Pd)に接続する。
【0069】
上記(9)に記載のエンジンによれば、第1燃料と第2燃料のうち爆発下限界の高い(逆火のリスクの低い)第1燃料を吸気ラインに供給する位置をコンプレッサよりも下流側とすることにより、コンプレッサに逆火の影響が及ぶことを効果的に抑制することができ、過給機の損傷リスクを効果的に低減できる。また、吸気ラインにおけるコンプレッサよりも下流側に燃料ラインが接続する既存のエンジンを改造して製造することが可能となる。
【0070】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)に記載のエンジンにおいて、
前記吸気ラインにおける前記コンプレッサと前記エンジン本体との間に設けられたエアクーラー(例えば上述のエアクーラー12)を更に備え、
前記第1燃料ラインは、前記吸気ラインにおける前記コンプレッサと前記エアクーラーとの間の位置(例えば上述の位置Pb)に接続する。
【0071】
上記(10)に記載のエンジンによれば、吸気ラインにおけるコンプレッサとエアクーラーとの間の位置はエンジン本体の外側であるため、第1燃料ラインから吸気ラインへの燃料の供給を行いやすい。また仮に逆火が起きてもコンプレッサまで火炎が遡ることがなく過給機の損傷リスクを低減できる。
【0072】
(11)幾つかの実施形態では、上記(9)に記載のエンジンにおいて、
前記吸気ラインにおける前記コンプレッサと前記エンジン本体との間に設けられたエアクーラー(例えば上述のエアクーラー12)を更に備え、
前記第1燃料ライン(例えば上述の燃料ライン50d)は、前記エンジン本体のシリンダヘッドに形成された吸気ポート(例えば上述の吸気ポート32)に接続する。
【0073】
上記(11)に記載のエンジンによれば、逆火が生じた場合に逆火の影響がエンジン本体の外部に及ぶことを抑制し、エンジンの損傷を効果的に抑制することができる。
【0074】
(12)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(11)の何れかに記載のエンジンにおいて、
前記第1燃料はメタンであり、
前記第2燃料は水素である。
【0075】
上記(12)に記載のエンジンによれば、メタンのみを燃料として用いる従来のエンジンと比較して、水素を用いることにより二酸化炭素の排出量を低減することができる。また、水素はメタンよりも爆発下限界が低く燃焼速度も大きいが、水素をメタンよりも逆火が生じても影響範囲の少ない位置に供給することにより、水素に起因する逆火によるエンジンの損傷を抑制することができる。
【0076】
(13)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(11)の何れかに記載のエンジンにおいて、
前記第1燃料はアンモニアであり、
前記第2燃料はメタンである。
【0077】
上記(13)に記載のエンジンによれば、メタンのみを燃料として用いる従来のエンジンと比較して、アンモニアを用いることにより二酸化炭素の排出量を低減することができる。また、アンモニアはメタンよりも爆発下限界が高く燃焼速度は小さいため、アンモニアを吸気ラインにおけるなるべく上流側の位置に供給しても、逆火のリスクが増大しにくく、アンモニアの燃料投入位置をコンプレッサ44より上流のPaとすれば、第1燃料の昇圧に用いるエネルギーを節約することができる。
【0078】
(14)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(11)の何れかに記載のエンジンにおいて、
前記第1燃料はアンモニアであり、
前記第2燃料は水素である。
【0079】
上記(14)に記載のエンジンによれば、メタンのみを燃料として用いる従来のエンジンと比較して、アンモニアと水素を用いることにより二酸化炭素の排出量を低減することができる。また、アンモニアはメタンよりも爆発下限界が高く燃焼速度は小さいため、アンモニアを吸気ラインにおけるなるべく上流側の位置に供給しても、逆火のリスクが増大しにくく、アンモニアの燃料投入位置をコンプレッサ44より上流のPaとすれば、第1燃料の昇圧に用いるエネルギーを節約することができる。アンモニアは単独では着火が難しいため第2燃料として水素を用いることで着火の改善が可能となる。
【符号の説明】
【0080】
2 ガスエンジン
4 エンジン本体
6 吸気ライン
8 排気ライン
10 過給機
12 エアクーラー
14 ピストン
16 シリンダヘッド
18 主燃焼室
26 副燃焼室
28 副室形成部
29 副室燃料ライン
30 噴孔
31 副室口金
32 吸気ポート
34 吸気管
36 吸気弁
37 点火プラグ
38 排気ポート
40 排気管
42 排気弁
44 コンプレッサ
46 タービン
48 回転軸
50a,50b,50c,50d 燃料ライン
Pb,Pc,Pd 位置
図1
図2
図3