IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-エンジン及びエンジンの制御方法 図1
  • 特開-エンジン及びエンジンの制御方法 図2
  • 特開-エンジン及びエンジンの制御方法 図3
  • 特開-エンジン及びエンジンの制御方法 図4
  • 特開-エンジン及びエンジンの制御方法 図5
  • 特開-エンジン及びエンジンの制御方法 図6
  • 特開-エンジン及びエンジンの制御方法 図7
  • 特開-エンジン及びエンジンの制御方法 図8
  • 特開-エンジン及びエンジンの制御方法 図9
  • 特開-エンジン及びエンジンの制御方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116072
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】エンジン及びエンジンの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 19/08 20060101AFI20230815BHJP
   F02D 19/02 20060101ALI20230815BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
F02D19/08 C
F02D19/02 B
F02M21/02 G
F02M21/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018638
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 浩之
(72)【発明者】
【氏名】戸田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 壮太
(72)【発明者】
【氏名】村田 聡
【テーマコード(参考)】
3G092
【Fターム(参考)】
3G092AA01
3G092AA18
3G092AB08
3G092AB09
3G092DE10
3G092FA19
(57)【要約】
【課題】2種類以上の燃料を使用するエンジンについて、逆火によるエンジンの損傷を抑制することができるエンジンを提供する。
【解決手段】エンジン本体と、エンジン本体の燃焼室に接続する吸気ラインと、第1燃料を吸気ラインに供給するように構成された第1燃料ラインと、第1燃料よりも爆発下限界が高い第2燃料を吸気ラインに供給するように構成された第2燃料ラインと、第1燃料ラインに設けられた第1流量調整弁と、第2燃料ラインに設けられた第2流量調整弁と、吸気行程において燃焼室への第2燃料の供給よりも先に燃焼室への第1燃料の供給を行うように、第1流量調整弁と第2流量調整弁とを制御するよう構成された制御装置と、を備える。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン本体と、
前記エンジン本体の燃焼室に接続する吸気ラインと、
第1燃料を前記吸気ラインに供給するように構成された第1燃料ラインと、
前記第1燃料よりも爆発下限界が高い第2燃料を前記吸気ラインに供給するように構成された第2燃料ラインと、
前記第1燃料ラインに設けられた第1流量調整弁と、
前記第2燃料ラインに設けられた第2流量調整弁と、
吸気行程において前記燃焼室への前記第2燃料の供給よりも先に前記燃焼室への前記第1燃料の供給を行うように、前記第1流量調整弁と前記第2流量調整弁とを制御するよう構成された制御装置と、
を備える、エンジン。
【請求項2】
前記吸気行程における前記第1燃料を前記燃焼室に供給する期間を第1期間とすると、前記制御装置は、前記吸気行程における前記第1期間に連続する第2期間に前記第2燃料を前記燃焼室に供給するように、前記第1流量調整弁と前記第2流量調整弁とを制御するよう構成された、請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記吸気行程における前記第1燃料を前記燃焼室に供給する期間を第1期間とすると、前記制御装置は、前記吸気行程における前記第1期間から間隔を空けた第2期間に前記第2燃料を前記燃焼室に供給するように、前記第1流量調整弁と前記第2流量調整弁とを制御するよう構成された、請求項1に記載のエンジン。
【請求項4】
前記吸気行程における前記第1燃料を前記燃焼室に供給する期間を第1期間、前記吸気行程における前記第2燃料を前記燃焼室に供給する期間を第2期間とすると、前記制御装置は、前記第1期間よりも前記第2期間の方が長くなるように、前記第1流量調整弁と前記第2流量調整弁とを制御するよう構成された、請求項1乃至3の何れか1項に記載のエンジン。
【請求項5】
前記制御装置は、前記吸気行程において前記燃焼室への前記第1燃料の流量を時間が経過するにつれて減少させるとともに前記燃焼室への前記第2燃料の流量を時間が経過するにつれて増加させるように、前記第1流量調整弁と前記第2流量調整弁とを制御するように構成された、請求項1に記載のエンジン。
【請求項6】
前記第1燃料ラインは、前記吸気ラインにおける第1位置に接続し、
前記第2燃料ラインは、前記吸気ラインにおける前記第1位置よりも上流側に接続する、請求項1乃至5の何れか1項に記載のエンジン。
【請求項7】
前記第1燃料ラインと前記第2燃料ラインとは、合流してから前記吸気ラインに接続する、請求項1乃至5の何れか1項に記載のエンジン。
【請求項8】
前記第1燃料は水素であり、
前記第2燃料はメタンである、請求項1乃至7の何れか1項に記載のエンジン。
【請求項9】
前記第1燃料はメタン又は水素であり、
前記第2燃料はアンモニアである、請求項1乃至7の何れか1項に記載のエンジン。
【請求項10】
エンジンの制御方法であって、
前記エンジンは、
エンジン本体と、
前記エンジン本体の燃焼室に接続する吸気ラインと、
第1燃料を前記吸気ラインに供給するように構成された第1燃料ラインと、
前記第1燃料よりも爆発下限界が高い第2燃料を前記吸気ラインに供給するように構成された第2燃料ラインと、
を備え、
前記制御方法は、
吸気行程において、前記第2燃料ラインから前記燃焼室への前記第2燃料の供給よりも先に前記第1燃料ラインから前記燃焼室への前記第1燃料の供給を行うステップを備える、エンジンの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジン及びエンジンの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脱炭素社会に向けて水素等を燃料としたエンジンが提案されており、特許文献1には、燃焼室にて生成される比熱比の小さい生成物(例えば、二酸化炭素)を循環ガスから除去することにより、高い熱効率にて運転することが可能な作動ガス循環型水素エンジンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4682871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、2種類以上の燃料を使用する新規なエンジンを検討しており、このような新規なエンジンにおいて、逆火によるエンジンの損傷を抑制することが課題となっている。特許文献1に記載のエンジンは、2種類以上の燃料を使用するエンジンではなく燃料として水素のみを使用するエンジンであり、上述の課題を解決するための知見は開示されていない。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、2種類以上の燃料を使用するエンジンについて、逆火によるエンジンの損傷を抑制することができるエンジン及びエンジンの制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係るエンジンは、
エンジン本体と、
前記エンジン本体の燃焼室に接続する吸気ラインと、
第1燃料を前記吸気ラインに供給するように構成された第1燃料ラインと、
前記第1燃料よりも爆発下限界が高い第2燃料を前記吸気ラインに供給するように構成された第2燃料ラインと、
前記第1燃料ラインに設けられた第1流量調整弁と、
前記第2燃料ラインに設けられた第2流量調整弁と、
吸気行程において前記燃焼室への前記第2燃料の供給よりも先に前記燃焼室への前記第1燃料の供給を行うように、前記第1流量調整弁と前記第2流量調整弁とを制御するように構成された制御装置と、
を備える。
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係る制御方法は、
エンジンの制御方法であって、
前記エンジンは、
エンジン本体と、
前記エンジン本体の燃焼室に接続する吸気ラインと、
第1燃料を前記吸気ラインに供給するように構成された第1燃料ラインと、
前記第1燃料よりも爆発下限界が高い第2燃料を前記吸気ラインに供給するように構成された第2燃料ラインと、
を備え、
前記制御方法は、
吸気行程において、前記第2燃料ラインから前記燃焼室への前記第2燃料の供給よりも先に前記第1燃料ラインから前記燃焼室への前記第1燃料の供給を行うステップを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、2種類以上の燃料を使用するエンジンについて、逆火によるエンジンの損傷を抑制することができるエンジン及びエンジンの制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の幾つかの実施形態に係るガスエンジンの概略構成を模式的に示す図である。
図2】吸気ラインに燃料ガスを供給するための構成の一例を示す図である。
図3】制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4】ガスエンジンの1燃焼サイクル内における第1燃料及び第2燃料の各々を主燃焼室に供給するタイミングの一例を示す図である。
図5】ガスエンジンの1燃焼サイクル内における第1燃料及び第2燃料の各々を主燃焼室に供給するタイミングの他の一例を示す図である。
図6】ガスエンジンの1燃焼サイクル内における第1燃料及び第2燃料の各々を主燃焼室に供給するタイミングの他の一例を示す図である。
図7】ガスエンジンの1燃焼サイクル内における第1燃料及び第2燃料の各々を主燃焼室に供給するタイミングの他の一例を示す図である。
図8】ガスエンジンの1燃焼サイクル内における第1燃料及び第2燃料の各々を主燃焼室に供給するタイミングの他の一例を示す図である。
図9】ガスエンジンの1燃焼サイクル内における第1燃料及び第2燃料の各々を主燃焼室に供給するタイミングの他の一例を示す図である。
図10】吸気ラインに燃料ガスを供給するための構成の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0011】
(ガスエンジンの概略構成)
図1は、本開示の幾つかの実施形態に係るガスエンジン2の概略構成を模式的に示す図である。
【0012】
図1に示すように、ガスエンジン2は、エンジン本体4、吸気ライン6、排気ライン8、過給機10及びエアクーラー12を備える。
【0013】
図1に示す例では、ガスエンジン2は副室式のガスエンジンであり、エンジン本体4は、ピストン14とシリンダヘッド16との間に画定される主燃焼室18(主室)と、該主燃焼室18に連通する副燃焼室26(副室)とを備える。また、副燃焼室26は、シリンダヘッド16に設けられる副室形成部28および副室口金31の内部に形成された空間であり、副室口金31に形成された複数の噴孔30を介して主燃焼室18に連通する。
【0014】
吸気ライン6は、主燃焼室18に接続しており、少なくとも1種類の燃料ガスと空気との混合気(希薄予混合気)を主燃焼室18に供給するように構成される。吸気ライン6は、シリンダヘッド16に形成された吸気ポート32と、吸気ポート32に接続する吸気管34とを含む。吸気ポート32の一端は主燃焼室18に接続し、吸気ポート32の他端は吸気管34に接続する。吸気ポート32には、主燃焼室18と吸気管34との連通状態を制御する吸気弁36が設けられている。
【0015】
副燃焼室26への燃料ガス(以下、副室燃料と記載する。)の供給は副燃焼室26に接続する副室燃料ライン29により直接行われるようになっている。そして、副室形成部28に設置された着火装置(本実施形態では点火プラグ37)による副燃焼室26での燃料(副室燃料および主燃焼室18から流入する希薄予混合気)への着火によって燃焼火炎が生じ、この燃焼火炎が複数の噴孔30を介して副燃焼室26から主燃焼室18に噴出されることで、主燃焼室18内の燃料(希薄予混合気)が燃焼されるようになっている。
【0016】
排気ライン8は、主燃焼室18に接続しており、主燃焼室18で燃料が燃焼されることにより発生した燃焼ガスを主燃焼室18から排ガスとして排出するように構成される。排気ライン8は、シリンダヘッド16に形成された排気ポート38と、排気ポート38に接続する排気管40とを含む。排気ポート38の一端は主燃焼室18に接続し、排気ポート38の他端は排気管40に接続する。排気ポート38には、主燃焼室18と排気管40との連通状態を制御する排気弁42が設けられている。吸気弁36および排気弁42は不図示のクランク軸のクランク角度に応じて吸気ポート32及び排気ポート38をそれぞれ開閉する。
【0017】
過給機10は、吸気ライン6に設けられたコンプレッサ44と、排気ライン8に設けられたタービン46と、コンプレッサ44とタービン46とを接続する回転軸48とを含む。排気ライン8を流れる排ガスによってタービン46が駆動すると、タービン46の回転が回転軸48を介してコンプレッサ44に伝達されて、コンプレッサ44が吸気ライン6を流れる空気を圧縮する。
【0018】
エアクーラー12は、吸気ライン6におけるコンプレッサ44とエンジン本体4との間(コンプレッサ44と吸気ポート32との間)に設けられており、コンプレッサ44での圧縮によって昇温された空気を冷却するように構成される。
【0019】
(ガスエンジンの燃料ラインの構成例)
上述のガスエンジン2は、例えば図2に示すように、2種類以上(図示する例では2種類)の燃料ガスを吸気ライン6に供給するように構成されている。
【0020】
図2に示すように、ガスエンジン2は、第1燃料を吸気ライン6に供給するように構成された第1燃料ライン50と、第1燃料よりも爆発下限界が高い第2燃料を吸気ライン6に供給するように構成された第2燃料ライン52と、第1燃料ライン50に設けられた第1流量調整弁54と、第2燃料ライン52に設けられた第2流量調整弁56と、第1流量調整弁54及び第2流量調整弁56を制御するための制御装置58と、を備える。
【0021】
図2に示す一例では、第1燃料ライン50と第2燃料ライン52とは、合流してから吸気ライン6に接続している。すなわち、第1燃料ライン50は、第1流量調整弁54よりも下流側の位置Pにおいて、第2燃料ライン52における第2流量調整弁56よりも下流側の位置Pに接続(合流)しており、位置Pと吸気ライン6とを接続する共通ライン部55を第1燃料ライン50と第2燃料ライン52とが共有している。
【0022】
第1燃料は、第1燃料ライン50から吸気ライン6に供給される燃料ガスにおける主成分のガスであり、例えば水素、メタン、プロパン、n-ブタン、一酸化炭素及びアンモニアのうち何れかであってもよい。第2燃料は、第2燃料ラインから吸気ライン6に供給する燃料ガスにおける主成分のガスであり、例えば、水素、メタン、プロパン、n-ブタン、一酸化炭素及びアンモニアのうち第1燃料よりも爆発下限界の高い何れかであってもよい。例えば、第1燃料が水素であり第2燃料がメタンであってもよい。また、例えば、第1燃料がメタンであり第2燃料がアンモニアであってもよい。なお、水素、メタン、プロパン、n-ブタン、一酸化炭素及びアンモニアの爆発下限界は、それぞれ、4.0%、5.0%、2.1%、1.8%、12.5%、15.0%である。また、第1燃料ラインを流れるガスにおける第1燃料の濃度と第2燃料ラインを流れるガスにおける第2燃料の濃度は、例えばそれぞれ50%以上であってもよく、それぞれ80%以上であってもよい。
【0023】
図3は、制御装置58のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3に示すように、制御装置58は、例えばプロセッサ72、RAM(Random Access Memory)74、ROM(Read Only Memory)76、HDD (Hard Disk Drive)78、入力I/F80、及び出力I/F82を含み、これらがバス84を介して互いに接続されたコンピュータを用いて構成される。なお、制御装置58のハードウェア構成は上記に限定されず、制御回路と記憶装置との組み合わせにより構成されてもよい。また制御装置58は、制御装置58の各機能を実現するプログラムをコンピュータが実行することにより構成される。以下で説明する制御装置58における各部の機能は、例えばROM76に保持されるプログラムをRAM74にロードしてプロセッサ72で実行するとともに、RAM74やROM76におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0024】
図4図10の各々は、ガスエンジン2の1燃焼サイクルについて、吸気弁36と排気弁42の各々の開閉タイミングと、第1燃料及び第2燃料の各々を主燃焼室18に供給するタイミングの例を示す図である。図4図10の各々では、横軸にクランク角度(又は時刻)、縦軸に燃料流量又は吸気弁36と排気弁42の各々の有効開口面積を示している。
【0025】
幾つかの実施形態では、例えば図4図10に示すように、制御装置58は、ガスエンジン2の吸気行程において主燃焼室18への第2燃料の供給よりも先に主燃焼室18への第1燃料の供給を行うように、第1流量調整弁54と第2流量調整弁56とを制御する。
【0026】
従来のガスエンジンにおいて、吸気行程に吸気ラインから燃料ガスを主燃焼室へ供給する場合、吸気行程の後半に吸気ラインに供給される燃料ガスは、吸気弁を閉じた後に吸気ラインに残りやすい。このため、次の吸気行程で吸気弁が開くタイミング(例えば図4のタイミングA)で主燃焼室内のガスが吸気ラインに少し逆流することにより、吸気ラインに残る燃料ガスに着火して逆火が起こることがある。
【0027】
これに対し、図4図10に示した幾つかの実施形態では、上述したように、ガスエンジン2の吸気行程において第1燃料と第2燃料のうち爆発下限界が相対的に低い第1燃料を第2燃料よりも先に主燃焼室18に供給することにより、第1燃料を第2燃料よりも後に主燃焼室18に供給する場合と比較して、吸気行程が完了した時点(吸気行程において吸気弁36が閉じた時点)において爆発下限界が相対的に低く逆火を起こしやすい第1燃料が吸気ライン6に残る量を少なくすることができる。これにより、逆火のリスクを低減し、逆火によるガスエンジン2の損傷を抑制することができる。
【0028】
例えば、第1燃料が水素であり、第2燃料がメタンである場合には、メタンのみを燃料として用いる場合と比較して、水素を用いることにより二酸化炭素の排出量を低減することができる。また、水素はメタンよりも爆発下限界が低く燃焼速度も大きいが、水素をメタンよりも先に供給することにより、吸気弁36を閉じた後に吸気ライン6に残る水素の量を低減し、水素に起因する逆火によるガスエンジン2の損傷を抑制することができる。
【0029】
また、例えば第1燃料がメタンであり、第2燃料がアンモニアである場合には、メタンのみを燃料として用いる場合と比較して、アンモニアを用いることにより二酸化炭素の排出量を低減することができる。また、メタンはアンモニアよりも爆発下限界が低く燃焼速度も大きいため、メタンをアンモニアよりも先に供給することにより、吸気弁36を閉じた後に吸気ライン6に残るメタンの量を低減し、メタンに起因する逆火によるガスエンジン2の損傷を抑制することができる。
【0030】
一実施形態では、例えば図4に示すように、制御装置58は、吸気行程における第1期間T1に第1燃料を主燃焼室18へ供給し、吸気行程における第1期間T1に連続する第2期間T2に第2燃料を主燃焼室18へ供給するように、第1流量調整弁54と第2流量調整弁56とを制御してもよい。図4に示す一例では、吸気行程の前半の第1期間T1に第1燃料を主燃焼室18へ一定の流量で供給し、吸気行程の後半の第2期間T2に第2燃料を主燃焼室18へ一定の流量で供給している。
【0031】
一実施形態では、例えば図5に示すように、制御装置58は、吸気行程における第1期間T1に第1燃料を主燃焼室18に供給し、吸気行程における第1期間T1から間隔を空けた第2期間T2に第2燃料を主燃焼室18に供給するように、第1流量調整弁54と第2流量調整弁56とを制御してもよい。図5に示す一例では、吸気行程の前半の第1期間T1に第1燃料を主燃焼室18へ一定の流量で供給し、第1期間T1と第2期間T2との間の期間には、第1燃料及び第2燃料の主燃焼室18への供給は行わず、吸気行程の後半の第2期間T2に第2燃料を主燃焼室18へ一定の流量で供給している。
【0032】
図5に示す制御によれば、第1燃料と第2燃料のうち爆発下限界が相対的に低い第1燃料(すなわち逆火を起こしやすい燃料)を供給する期間T1の終わりと、爆発下限界が相対的に高い第2燃料(すなわち逆火を起こしにくい燃料)を供給する期間T2の終わりとの時間差を大きくとることが可能であるため、逆火のリスクを低減する効果を高めて、逆火によるガスエンジン2の損傷を効果的に抑制することができる。
【0033】
一実施形態では、例えば図6に示すように、制御装置58は、吸気行程において第1燃料が主燃焼室18に供給される第1期間T1よりも第2燃料が主燃焼室18に供給される第2期間T2の方が長くなるように、第1流量調整弁54と第2流量調整弁56とを制御してもよい。図6に示す一例では、吸気行程の前半の第1期間T1に第1燃料を主燃焼室18へ一定の流量F1で供給し、期間T1に連続する第2期間T2に第2燃料を上記流量F1よりも小さい一定の流量F2で主燃焼室18へ供給している。
【0034】
図6に示す制御によれば、第1燃料と第2燃料のうち爆発下限界が相対的に低い第1燃料(すなわち逆火を起こしやすい燃料)を供給する期間T1の終わりと、爆発下限界が相対的に高い第2燃料(すなわち逆火を起こしにくい燃料)を供給する期間T2の終わりとの時間差を大きくとることが可能であるため、逆火のリスクを低減する効果を高めて、逆火によるガスエンジン2の損傷を効果的に抑制することができる。
【0035】
幾つかの実施形態では、例えば図7図9に示すように、制御装置58は、吸気行程において主燃焼室18への第1燃料の流量を時間が経過するにつれて減少させるとともに主燃焼室18への第2燃料の流量を時間が経過するにつれて増加させるように、第1流量調整弁54と第2流量調整弁56とを制御してもよい。
【0036】
この場合、例えば図7に示すように、吸気行程の時刻t0から時刻t1において、主燃焼室18への第1燃料の流量を徐々に(図示する例では線形的に)減少させるとともに主燃焼室18への第2燃料の流量を徐々に(図示する例では線形的に)増加させてもよい。
【0037】
また、図8に示す例では、吸気行程の時刻taからtbまでの期間において第1燃料を主燃焼室18へ一定の流量で供給し、時刻tbからtcまでの期間において主燃焼室18への第1燃料の流量を徐々に(図示する例では線形的に)減少させ、時刻tcから時刻tdまでの期間において主燃焼室18への第1燃料の流量を0としている。また、吸気行程の時刻taからtbまでの期間において主燃焼室18への第2燃料の流量を0とし、時刻tbからtcまでの期間において主燃焼室18への第2燃料の流量を徐々に(図示する例では線形的に)増加させ、時刻tcから時刻tdまでの期間において第2燃料を主燃焼室18へ一定の流量で供給している。
【0038】
また、図9に示す例では、吸気行程の時刻taから時刻tdおいて、主燃焼室18への第1燃料の流量を時間が経過するにつれて段階的に減少させるとともに主燃焼室18への第2燃料の流量を時間が経過するにつれて段階的に増加させている。図9に示す例では、時刻taから時刻tbまでの期間において第1燃料を主燃焼室18へ一定の流量F1で供給し、時刻tbから時刻tcまでの期間において第1燃料を主燃焼室18へ流量F1よりも小さい一定の流量F2で供給し、時刻tcから時刻tdまでの期間において主燃焼室18への第1燃料の流量を0としている。また、時刻taから時刻tbまでの期間において主燃焼室18への第2燃料の流量を0とし、時刻tbから時刻tcまでの期間において第1燃料を主燃焼室18へ一定の流量F3で供給し、時刻tcから時刻tdまでの期間において第1燃料を主燃焼室へ流量F3よりも大きな流量F4で供給している。
【0039】
図7図9の各々に示す制御によれば、逆火のリスクを低減しつつ、主燃焼室18内での2種類の燃料ガス(第1燃料及び第2燃料)の混合不良による燃焼悪化のリスクを低減することができる。
【0040】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0041】
例えば、図2に示した例では、第1燃料ライン50と第2燃料ライン52とは合流した後に吸気ライン6に接続したが、例えば図10に示すように、第1燃料ライン50は、吸気ライン6における第1位置P1に接続し、第2燃料ライン52は、吸気ライン6における第1位置P1よりも上流側の位置P2に接続してもよい。
【0042】
この場合においても図4図9を用いて説明した第1流量調整弁54と第2流量調整弁56の制御(吸気行程において主燃焼室18への第2燃料の供給よりも先に主燃焼室18への第1燃料の供給を行う制御)を制御装置58によって同様に行うことにより、逆火のリスクを低減し、逆火によるエンジンの損傷を抑制することができる。また、第2燃料よりも爆発下限界が低い第1燃料は第2燃料よりも逆火を起こしやすいため、上記のように吸気ライン6における第1燃料ラインが接続される第1位置P1を吸気ライン6における第2燃料ラインが接続される位置P2よりも下流側とすることにより、逆火が起こった場合に吸気ライン6における逆火の影響が及ぶ範囲を小さくすることができ、逆火によるガスエンジン2の損傷を抑制することができる。
【0043】
また、ガスエンジンは3種類以上の燃料を吸気ライン6に供給してもよい。この場合、3種類以上の燃料について、爆発下限界が低い燃料から順に主燃焼室18に供給してもよい。これにより、逆火のリスクを低減し、逆火によるガスエンジン2の損傷を抑制することができる。
【0044】
また、ガスエンジンは、副室式のガスエンジンでなくてもよく、ガスエンジンは副燃焼室を備えていなくてもよい。
【0045】
また、本開示は、ガスエンジンに限らず、例えばディーゼルエンジン等にも適用可能である。なお、上述した「爆発下限界」は、「可燃範囲の下限」又は「燃焼範囲の下限」に読みかえてもよい。また「爆発下限界が低い」は「爆発等級が高い」と読みかえても良い。なお爆発等級の高さは爆発下限界の低さよりも優先する。爆発等級が同じであれば爆発下限界で判定する。
【0046】
また、図10に示す例では、第2燃料ライン52は、吸気ライン6における第1燃料ライン50が接続する位置よりも上流側の位置に接続したが、第2燃料ライン52は、吸気ライン6における第1燃料ライン50が接続する位置と吸気の流れ方向の同じ位置に接続してもよく、この場合、第1燃料ライン50と第2燃料ライン52とは吸気ライン6を構成する管の周方向において互いに異なる位置に接続すればよい。
【0047】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0048】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るエンジン(例えば上述のガスエンジン2)は、
エンジン本体(例えば上述のエンジン本体4)と、
前記エンジン本体の燃焼室(例えば上述の主燃焼室18)に接続する吸気ライン(例えば上述の吸気ライン6)と、
第1燃料(例えば上述の水素、メタン、プロパン、n-ブタン、一酸化炭素及びアンモニアの何れか)を前記吸気ラインに供給するように構成された第1燃料ライン(例えば上述の第1燃料ライン50)と、
前記第1燃料よりも爆発下限界が高い第2燃料(例えば上述の水素、メタン、プロパン、n-ブタン、一酸化炭素及びアンモニアの何れかであって、上記第1燃料よりも爆発下限界が高い燃料)を前記吸気ラインに供給するように構成された第2燃料ライン(例えば上述の第2燃料ライン52)と、
前記第1燃料ラインに設けられた第1流量調整弁(例えば上述の第1流量調整弁54)と、
前記第2燃料ラインに設けられた第2流量調整弁(例えば上述の第2流量調整弁56)と、
吸気行程において前記燃焼室への前記第2燃料の供給よりも先に前記燃焼室への前記第1燃料の供給を行うように、前記第1流量調整弁と前記第2流量調整弁とを制御するように構成された制御装置(例えば上述の制御装置58)と、
を備える。
【0049】
従来、吸気行程に吸気ラインから燃料ガスを主燃焼室へ供給する場合、吸気行程の後半に吸気ラインに供給される燃料ガスは、吸気弁を閉じた後に吸気ラインに残りやすい。このため、次の吸気行程で吸気弁が開くタイミングで燃焼室内のガスが吸気ラインに少し逆流することにより、吸気ラインに残る燃料ガスに着火して逆火が起こることがある。
これに対し、上記(1)に記載のエンジンでは、吸気行程において燃焼室への第2燃料の供給よりも先に燃焼室への第1燃料の供給を行うように、制御装置が第1流量調整弁と第2流量調整弁とを制御する。このように、吸気行程において、第1燃料と第2燃料のうち爆発下限界が相対的に低い第1燃料を第2燃料よりも先に燃焼室に供給することにより、第1燃料を第2燃料よりも後に燃焼室に供給する場合と比較して、吸気行程が完了した時点(吸気行程において吸気弁が閉じた時点)において爆発下限界が相対的に低く逆火を起こしやすい第1燃料が吸気ラインに残る量を少なくすることができる。これにより、逆火のリスクを低減し、逆火によるエンジンの損傷を抑制することができる。
【0050】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のエンジンにおいて、
前記吸気行程における前記第1燃料を前記燃焼室に供給する期間(例えば上述の期間T1)を第1期間とすると、前記制御装置は、前記吸気行程における前記第1期間に連続する第2期間(例えば上述の期間T2)に前記第2燃料を前記燃焼室に供給するように、前記第1流量調整弁と前記第2流量調整弁とを制御するよう構成される。
【0051】
上記(2)に記載のエンジンによれば、逆火のリスクを低減し、逆火によるガスエンジン2の損傷を抑制することができる。
【0052】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のエンジンにおいて、
前記吸気行程における前記第1燃料を前記燃焼室に供給する期間(例えば上述の期間T1)を第1期間とすると、前記制御装置は、前記吸気行程における前記第1期間から間隔を空けた第2期間(例えば上述の期間T2)に前記第2燃料を前記燃焼室に供給するように、前記第1流量調整弁と前記第2流量調整弁とを制御するよう構成される。
【0053】
上記(3)に記載のエンジンによれば、第1燃料と第2燃料のうち爆発下限界が相対的に低い第1燃料(すなわち逆火を起こしやすい燃料)を供給する第1期間の終わりと、爆発下限界が相対的に高い第2燃料(すなわち逆火を起こしにくい燃料)を供給する第2期間の終わりとの時間差を大きくとることが可能であるため、逆火のリスクを低減する効果を高めて、逆火によるエンジンの損傷を効果的に抑制することができる。
【0054】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかに記載のエンジンにおいて、
前記吸気行程における前記第1燃料を前記燃焼室に供給する期間(例えば上述の期間T1)を第1期間、前記吸気行程における前記第2燃料を前記燃焼室に供給する期間を第2期間(例えば上述の期間T2)とすると、前記制御装置は、前記第1期間よりも前記第2期間の方が長くなるように、前記第1流量調整弁と前記第2流量調整弁とを制御するよう構成される。
【0055】
上記(4)に記載のエンジンによれば、第1燃料と第2燃料のうち爆発下限界が相対的に低い第1燃料(すなわち逆火を起こしやすい燃料)を供給する第1期間の終わりと、爆発下限界が相対的に高い第2燃料(すなわち逆火を起こしにくい燃料)を供給する第2期間の終わりとの時間差を大きくとることが可能であるため、逆火のリスクを低減する効果を高めて、逆火によるエンジンの損傷を効果的に抑制することができる。
【0056】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のエンジンにおいて、
前記制御装置は、前記吸気行程において前記燃焼室への前記第1燃料の流量を時間が経過するにつれて減少させるとともに前記燃焼室への前記第2燃料の流量を時間が経過するにつれて増加させるように、前記第1流量調整弁と前記第2流量調整弁とを制御するように構成される。
【0057】
上記(5)に記載のエンジンによれば、逆火のリスクを低減しつつ、燃焼室内での第1燃料と第2燃料との混合不良による燃焼悪化のリスクを低減することができる。
【0058】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかに記載のエンジンにおいて、
前記第1燃料ラインは、前記吸気ラインにおける第1位置(例えば上述の位置P1)に接続し、
前記第2燃料ラインは、前記吸気ラインにおける前記第1位置よりも上流側の位置(例えば上述の位置P2)に接続する。
【0059】
上記(5)に記載のエンジンによれば、第1燃料ラインと第2燃料ラインが独立しているので、各燃料ラインの燃料供給量の制御が容易となる。
【0060】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかに記載のエンジンにおいて、
前記第1燃料ラインと前記第2燃料ラインとは、合流してから前記吸気ラインに接続する。
【0061】
上記(6)に記載のエンジンによれば、吸気ラインに燃料ラインの接続を一か所で行うことができる。
【0062】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかに記載のエンジンにおいて、
前記第1燃料は水素であり、
前記第2燃料はメタンである。
【0063】
上記(8)に記載のエンジンによれば、メタンのみを燃料として用いる従来のエンジンと比較して、水素を用いることにより二酸化炭素の排出量を低減することができる。また、水素はメタンよりも爆発下限界が低く燃焼速度も大きいが、水素をメタンよりも先に供給することにより、吸気弁を閉じた後に吸気ラインに残る水素の量を低減し、水素に起因する逆火によるエンジンの損傷を抑制することができる。
【0064】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかに記載のエンジンにおいて、
前記第1燃料はメタン又は水素であり、
前記第2燃料はアンモニアである。
【0065】
上記(9)に記載のエンジンによれば、メタンのみを燃料として用いる従来のエンジンと比較して、アンモニアを用いることにより二酸化炭素の排出量を低減することができる。また、メタンはアンモニアよりも爆発下限界が低く燃焼速度も大きいため、メタン又は水素をアンモニアよりも先に供給することにより、吸気弁を閉じた後に吸気ラインに残るメタンの量を低減し、メタンに起因する逆火によるエンジンの損傷を抑制することができる。
【0066】
(10)本開示の少なくとも一実施形態に係る制御方法は、
エンジンの制御方法であって、
前記エンジンは、
エンジン本体と、
前記エンジン本体の燃焼室に接続する吸気ラインと、
第1燃料を前記吸気ラインに供給するように構成された第1燃料ラインと、
前記第1燃料よりも爆発下限界が高い第2燃料を前記吸気ラインに供給するように構成された第2燃料ラインと、
を備え、
前記制御方法は、
吸気行程において、前記第2燃料ラインから前記燃焼室への前記第2燃料の供給よりも先に前記第1燃料ラインから前記燃焼室への前記第1燃料の供給を行うステップを備える。
【0067】
従来、吸気行程に吸気ラインから燃料ガスを主燃焼室へ供給する場合、吸気行程の後半に吸気ラインに供給される燃料ガスは、吸気弁を閉じた後に吸気ラインに残りやすい。このため、次の吸気行程で吸気弁が開くタイミングで燃焼室内のガスが吸気ラインに少し逆流することにより、吸気ラインに残る燃料ガスに着火して逆火が起こることがある。
これに対し、上記(10)に記載のエンジンの制御方法では、吸気行程において燃焼室への第2燃料の供給よりも先に燃焼室への第1燃料の供給を行うステップを備える。このように、吸気行程において、第1燃料と第2燃料のうち爆発下限界が相対的に低い第1燃料を第2燃料よりも先に燃焼室に供給することにより、第1燃料を第2燃料よりも後に燃焼室に供給する場合と比較して、吸気行程が完了した時点(吸気行程において吸気弁が閉じた時点)において爆発下限界が相対的に低く逆火を起こしやすい第1燃料が吸気ラインに残る量を少なくすることができる。これにより、逆火のリスクを低減し、逆火によるエンジンの損傷を抑制することができる。
【符号の説明】
【0068】
2 ガスエンジン
4 エンジン本体
6 吸気ライン
8 排気ライン
10 過給機
12 エアクーラー
14 ピストン
16 シリンダヘッド
18 主燃焼室
26 副燃焼室
28 副室形成部
29 副室燃料ライン
30 噴孔
31 副室口金
32 吸気ポート
34 吸気管
36 吸気弁
37 点火プラグ
38 排気ポート
40 排気管
42 排気弁
44 コンプレッサ
46 タービン
48 回転軸
50 第1燃料ライン
52 第2燃料ライン
54 第1流量調整弁
55 共通ライン部
56 第2流量調整弁
58 制御装置
72 プロセッサ
74 RAM
76 ROM
78 HDD
80 入力I/F
82 出力I/F
84 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10