(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116076
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】画像読取装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/191 20060101AFI20230815BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
H04N1/191
G06T1/00 430J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018644
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加治木 孝一
【テーマコード(参考)】
5B047
5C072
【Fターム(参考)】
5B047AA01
5B047BA01
5B047BB02
5B047BC23
5B047CA23
5B047CB22
5B047DB04
5C072AA01
5C072BA15
5C072CA05
5C072DA12
5C072DA25
5C072EA07
5C072NA01
5C072RA16
5C072WA02
(57)【要約】
【課題】異物が画像読取手段側に付着しているのか、基準色部材に付着しているのかを、検知ことが出来ないため、使用者はどちら側を清掃して良いのか分からず、使い勝手が良くなかった。
【解決手段】第1ユニットと、前記第1ユニットに対しヒンジ部を中心に回動可能に設けられ、第1ユニットとの間に搬送路を構成する閉状態と、前記搬送路を開放する開状態とを取り得る第2ユニットと、前記搬送路を挟んで互いに対向する位置に設けられた画像読取手段及び基準色部材とを備えた画像読取装置において、前記第2ユニットが閉状態から開状態までのそれぞれに異なる位置にある複数の状態において、それぞれ前記画像読取手段で読み取りを行って複数の画像データを取得し、前記複数の画像データに基づいて、前記画像読取手段または基準色部材に付着した異物を検知する異物検知手段を設けた。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ユニットと、
前記第1ユニットに対し、ヒンジ部を中心に回動可能に設けられ、前記第1ユニットとの間に搬送路を構成する閉状態と、前記搬送路を開放する開状態とを取り得る第2ユニットと、
前記搬送路に沿って原稿を搬送する搬送手段と、
前記第1及び第2ユニットの一方に設けられ、前記搬送路を搬送される原稿の画像を読み取る画像読取手段と、
前記第1及び第2ユニットの他方に、前記画像読取手段に対して前記搬送路を挟んで対向する位置に設けられ、原稿の読み取りを行わないときに、前記画像読取手段によって読み取りが行われる基準色部材と、
前記第2ユニットが閉状態から開状態までのそれぞれに異なる位置にある複数の状態において、それぞれ前記画像読取手段で読み取りを行って複数の画像データを取得し、前記複数の画像データに基づいて、前記画像読取手段または基準色部材に付着した異物を検知する異物検知手段と
を備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記異物検知手段は、前記画像データを閾値と比較し、前記閾値以上又は閾値以下となった部分の有無と、前記部分の出力値の前記複数の画像データ間における変化に基づいて、異物が前記画像読取手段及び基準色部材のいずれに付着しているかを判断することを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
更に、前記異物検知手段が異物を検出したとき、前記画像読取手段及び基準色部材のいずれに異物が付着しているかを、使用者に認識可能に報知する報知手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
更に、前記第1及び第2ユニットの他方に設けられた更なる画像読取手段を備え、前記画像読取手段及び更なる画像読取手段のそれぞれは、発光部と、前記発光部から発した光の反射光を受光するイメージセンサーとを有し、前記報知手段は、前記発光部を用いて使用者への報知を行うことを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記異物検知手段が異物を検知したとき、前記第1及び第2ユニットのうち、異物が付着している前記画像読取手段又は基準色部材と同じユニットに設けられた画像読取手段の発光部を発光させて、使用者への報知を行うことを特徴とする請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記発光部は、原稿の読み取りを行う際と、異物を検知する際と、使用者への報知を行う際とで、発光強度をそれぞれ異ならせることを特徴とする請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項7】
更に、前記報知手段によって使用者への報知を行った後、前記第2ユニットが閉状態に戻されるときに、前記異物検知手段で異物を検知することによって、異物が取り除かれたか否かを判断し、取り除かれていないと判断したときに、使用者に報知する更なる報知手段を備えたことを特徴とする請求項3~6のいずれか1項に記載の画像読装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送路を搬送される原稿の読み取りを行う画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送路に沿って原稿を搬送しながら、原稿の画像を読み取る画像読取装置が知られている。このような画像読取装置においては、搬送路に面してコンタクトガラスを配した画像読取手段が設けられている。画像読取手段は、発光部から発した光で原稿を照明し、原稿で反射された反射光を、コンタクトガラスを通してCIS(Contact Image Sensor)或いはCCD(Charge Coupled Device)等のイメージセンサーで受光することで原稿の画像を読み取っている。
【0003】
また、従来の画像読取装置は、搬送路を挟んで画像読取手段を対向する位置に基準色部材を備えている。そして、原稿の読み取りを行わないときに、画像読取手段でこの基準色部材を読み取って画像データを取得している。この画像データは、画像読取手段のシェーディング補正に用いられている。
【0004】
ところで、このような画像読取装置においては、コンタクトガラスや基準色部材の表面に紙粉やシールなどの異物(ゴミ)が付着することがある。コンタクトガラスに異物が付着した場合は、この異物が原稿と共に読み取られ、読み取られた画像に異物が副走査方向の線状に現れて、画像品質が低下する。また、基準色部材に異物が付着した場合も、シェーディング補正用の画像データに誤差が生じ、やはり画像品質が低下してしまう。
【0005】
これに対し、引用文献1には、原稿の読み取り動作前に、画像読取手段によって基準色部材を読み取ることによって画像データを取得し、この画像データに基づいて異物を検知する画像読取装置が記載されている。また、この画像読取装置においては、異物を検知した場合には、通知手段によって使用者にその旨を通知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の画像読取装置においては、異物の検知は出来ても、この異物がコンタクトガラスに付着しているのか、基準色部材に付着しているのかを、検知ことは出来なかった。そのため、通知を受けた使用者が清掃を行なおうとしても、どちらを拭いて良いのか分からず、使い勝手が良くなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するため、本発明の画像読取装置は、第1ユニットと、前記第1ユニットに対し、ヒンジ部を中心に回動可能に設けられ、前記第1ユニットとの間に搬送路を構成する閉状態と、前記搬送路を開放する開状態とを取り得る第2ユニットと、前記搬送路に沿って原稿を搬送する搬送手段と、前記第1及び第2ユニットの一方に設けられ、前記搬送路を搬送される原稿の画像を読み取る画像読取手段と、前記第1及び第2ユニットの他方に、前記画像読取手段に対して前記搬送路を挟んで対向する位置に設けられ、原稿の読み取りを行わないときに、前記画像読取手段によって読み取りが行われる基準色部材と、前記第2ユニットが閉状態から開状態までのそれぞれに異なる位置にある複数の状態において、それぞれ前記画像読取手段で読み取りを行って複数の画像データを取得し、前記複数の画像データに基づいて、前記画像読取手段または基準色部材に付着した異物を検知する異物検知手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、異物が画像読取手段(コンタクトガラス)に付着しているのか、基準色部材に付着しているのかを検知することができ、この検知結果を使用者に認識可能に報知することで、使い勝手の良い画像読取装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像読取装置の概略断面図。
【
図2】本実施形態の画像読取装置の上部ユニットが閉状態にあるときの概略断面図。
【
図3】本実施形態の画像読取装置の上部ユニットが開状態にあるときの概略断面図。
【
図5】本実施形態における表示部の表示の一例を示す図。
【
図6】本実施形態における画像読取ユニットの構成を示す概略断面図。
【
図7】本実施形態における制御部の構成を示すブロック図。
【
図8】本実施形態における画像処理の流れを示すブロック図。
【
図9】本実施形態において異物が付着した状態を説明する概略図。
【
図10】本実施形態における読取画像への異物の影響を示す概略図。
【
図11】本実施形態におけるイメージセンサーの画像データを示す図。
【
図12】本実施形態における異物が付着した場合のイメージセンサーの画像データを示す図。
【
図13】本実施形態における異物検知の流れを説明するフローチャート図。
【
図14】本実施形態における上部ユニットの開閉状態に応じた画像読取ユニットの位置関係を説明する概略断面図。
【
図15】本実施形態における上部ユニットの開閉状態に応じた画像データを示す図。
【
図16】本実施形態において異物の検知を使用者に報知する流れを説明するフローチャート図。
【
図17】本実施形態において異物の除去を確認する流れを説明するフローチャート図。
【
図18】本実施形態において異物の色が黒に近い場合のイメージセンサーの画像データを示す図。
【
図19】本実施形態において異物の色が黒に近い場合の異物検知の流れを説明するフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に関して、図面を用いて詳細に説明する。なお、全ての図面を通して、同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。また、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像読取装置の構成を概略的に示す部分断面図である。
図1において、画像読取装置Aは、搬送媒体Sの画像を読み取る装置である。ここで、載置台1に積載された一又は複数の搬送媒体Sは、1つずつ装置内に取り込まれ、搬送路RTに沿って搬送される。そして、搬送媒体Sは、搬送中にその画像が読み取られ、排出トレイ2に排出される。
【0013】
読み取る搬送媒体Sは、例えば、OA紙、チェック、小切手、名刺、カード類等の画像を担持したシートである。このシートは、厚手のシートであっても、薄手のシートであってもよい。カード類としては、例えば、保険証、免許証、クレジットカード等を挙げることができる。搬送媒体Sには、また、パスポートなどの冊子、傷つき易い原稿、薄くて破れ易い原稿、異形原稿なども含まれる。この場合、キャリアシート等のフォルダーに原稿を収容して載置台1に載置することで、その画像を読み取ることができる。以降、このような搬送媒体Sを総称して原稿Sと称する。
【0014】
<ユニットの構成>
画像読取装置Aは、各部材を収容する筐体としての下部ユニット(第1ユニット)104及び上部ユニット(第2ユニット)103を有している。上部ユニット103は、ヒンジ部105を中心に、下部ユニット104に対して回動可能に設けられている。
図2及び
図3は、上部ユニット103の開閉の様子を説明するための概略断面図である。
図2は、上部ユニット103が閉状態にあるときを、
図3は、上部ユニットが開状態にあるときをそれぞれ示す。
【0015】
図2に示すように、上部ユニット103が閉状態にあるとき、下部ユニット104と上部ユニット103との間には、原稿Sの搬送路RTが構成される(
図1参照)。一方、上部ユニット103が開状態のときには、搬送路RTは開放され、使用者が後述する画像読取ユニットの清掃等のメンテナンスを行うことができる。上部ユニット103の開閉状況は、
図3に示す開閉検知センサー200で検知することができる。
【0016】
開閉検知センサー200としては、フォトインタラプタやエンコーダ等を用いることができる。本実施形態においては、エンコーダを用い、上部ユニット103が、閉状態から開状態までの互いに異なる複数の位置にある状態のときに、検知信号を発し、位置の検知ができる構成とした。また、ヒンジ部105には、開閉トルクギア202と開閉ダンパー201とが設けられている。上部ユニット103の開閉時に、開閉トルクギア202に伝わるトルクを、開閉ダンパー201で比較し、その結果に応じて負荷をかけることで、開閉速度を安定させている。このことにより、上部ユニット103の開閉動作が滑らかになり、後述する異物検知精度を向上させることが可能となる。
【0017】
<給紙>
図1に戻って、画像読取装置Aの構成を説明する。画像読取装置Aには、原稿Sを給送する給送機構としての第1搬送部10が設けられている。第1搬送部10は、本実施形態の場合、送りローラー11と、送りローラー11に対向配置される分離ローラー12とを備える。この第1搬送部10は、載置台1上の原稿Sを搬送方向D1に一つずつ順次搬送する。送りローラー11には、モータ等の駆動部3から伝達部5を介して駆動力が伝達され、図中矢印方向(搬送路RTに沿って原稿Sを搬送する正方向)に回転駆動される。伝達部5は例えば電磁クラッチであり、駆動部3からの送りローラー11への駆動力を断続する。
【0018】
<伝達部>
駆動部3と送りローラー11とを接続する伝達部5は、例えば、本実施形態では、通常時において駆動力が伝達される状態とし、原稿Sの逆送の場合に駆動力を遮断する。送りローラー11は伝達部5において駆動力の伝達が遮断されると、自由回転可能な状態となる。なお、このような伝達部5は、送りローラー11を一方向のみに駆動させる場合には設けなくてもよい。
【0019】
<分離構造>
送りローラー11に対向配置される分離ローラー12は、原稿Sを1枚ずつ分離するためのローラーであり、送りローラー11に対して一定圧で圧接している。この圧接状態を確保するため、分離ローラー12を支持する支持部(不図示)を揺動可能に設けると共に、この支持部が送りローラー11へ向けて付勢されるように構成される。分離ローラー12は、トルクリミッタ12aを介して駆動部3から駆動力が伝達され、実線矢印方向(送りローラー11の正方向とは逆方向)に回転駆動される。
【0020】
分離ローラー12は、トルクリミッタ12aにより駆動力伝達が規制される。そのため、送りローラー11と当接している間は、送りローラー11と連れ回りする方向(破線矢印方向)に回転する。これにより、複数の原稿Sが送りローラー11と分離ローラー12との圧接部に搬送されてきた場合には、一つを残して2つ以上の原稿Sが下流に搬送されないようにせき止められる。
【0021】
なお、本実施形態では分離ローラー12と送りローラー11とで分離機構を構成したが、このような分離機構は必ずしも設けなくてもよく、搬送路RTに原稿Sを1つずつ順次給送する給送機構であればよい。また、分離機構を設ける場合においては、分離ローラー12のような構成の代わりに、原稿Sに摩擦力を付与する分離パッドを送りローラー11に圧接させて、同様の分離機能を持たせるようにしてもよい。
【0022】
<搬送手段>
第1搬送部10に対して、原稿Sの搬送方向の下流側には、搬送機構としての第2搬送部20が配置されている。第2搬送部20は、駆動ローラー21と、駆動ローラー21に従動する従動ローラー22とを備えている。第2搬送部20は、第1搬送部10によって装置内に取り込まれた原稿Sをその搬送方向の下流側へ搬送する。駆動ローラー21には、モータ等の駆動部4から駆動力が伝達され、図中矢印方向に回転駆動される。従動ローラー22は駆動ローラー21に対して一定圧で圧接し、駆動ローラー21に連れ回る。この従動ローラー22は、バネ等の付勢ユニット(不図示)によって駆動ローラー21に対して付勢された構成としてもよい。
【0023】
第2搬送部20に対して、原稿Sの搬送方向の下流側には、第3搬送部30が設けられている。第3搬送部30は、駆動ローラー31と、駆動ローラー31に従動する従動ローラー32とを備える。第3搬送部30は、第2搬送部20から搬送されてきた原稿Sを排出トレイ2へ搬送する。つまり、この第3搬送部30は排出機構として機能する。駆動ローラー31にはモータ等の駆動部4から駆動力が伝達され、図中矢印方向に回転駆動される。従動ローラー32は駆動ローラー31に対して一定圧で圧接し、駆動ローラー31に連れまわる。この従動ローラー32は、バネ等の付勢ユニット(不図示)によって駆動ローラー31に対して付勢された構成としてもよい。これら第1~第3搬送部が、原稿の搬送手段を構成する。
【0024】
排出トレイ2は、画像読取装置Aに対して回動可能なように、画像読取装置Aの下方に設けられたヒンジ101を介して軸支されている。また、排出トレイ2は、ヒンジ101に軸支された第1排出トレイ2aと、その先端側に接続された第2排出トレイ2bとから構成されている。第2排出トレイ2bは第1排出トレイ2aに対して回動可能に軸支されている。
【0025】
<画像の読み取り>
第2搬送部20と第3搬送部30との間には、画像読取ユニット(画像読取手段)70が配置されている。画像読取ユニット70は、原稿Sの下面の画像を読み取る第1画像読取ユニット70aと、原稿Sの上面の画像を読み取る第2画像読取ユニット70bとから構成される。この画像読取ユニット70が画像読取手段を構成し、搬送中の原稿Sに担持された画像を読み取る。この画像読取ユニット70の詳細な構成に関しては、後述する。
【0026】
画像読取ユニット70による読み取りの間、第2搬送部20及び第3搬送部30は原稿Sを定速で搬送する。このときの搬送速度は、常に第1搬送部10の搬送速度以上とすることで、先行原稿Sに後続原稿Sが追いついてしまう事態を確実に回避できる。例えば、本実施形態では、第2搬送部20及び第3搬送部30による原稿Sの搬送速度を、第1搬送部10による原稿Sの搬送速度よりも速くなるように速度制御するようにした。なお、第2搬送部20及び第3搬送部30による原稿Sの搬送速度と、第1搬送部10による原稿Sの搬送速度とを同一とした場合でも、駆動部3を制御して後続原稿Sの給送開始タイミングを間欠的にずらすことにより、先行原稿Sと後続原稿Sとの間に最低限の間隔を形成することも可能である。
【0027】
<重送検出>
第1搬送部10と第2搬送部20との間には、重送検出センサー40が配置されている。重送検出センサー40は、静電気等で紙などの原稿S同士が密着し、第1搬送部10を通過してきた場合(つまり重なって搬送される重送状態の場合)に、これを検出するためのものである。重送検出センサー40としては、種々のものが利用可能である。本実施形態では、超音波センサーを用いている。超音波センサーは、超音波の発信部41とその受信部42とを備えている。そして、紙等の原稿Sが重送されている場合と1つずつ搬送されている場合とで、原稿Sを通過する超音波の減衰量が異なることを利用して重送を検出する。
【0028】
<原稿検出センサー>
重送検出センサー40に対して、原稿Sの搬送方向の下流側には、原稿検出センサー50が設けられている。原稿検出センサー50は、第2搬送部20よりも上流側で、第1搬送部10よりも下流側に配置されている。原稿検出センサー50は、第1搬送部10により搬送される原稿Sの位置を検出する。詳細には、原稿検出センサー50は、その検出位置に関して、原稿Sの端部が到達又は通過したか否かを検出する。原稿検出センサー50としては、種々のものが利用可能であるが、本実施形態の場合には、発光部51とそれより発した光の受光部52とを備えた光学センサーを用いている。そして、原稿検出センサー50は、原稿Sの到達又は通過により受光強度(受光量)が変化することを利用して原稿Sを検出する。
【0029】
本実施形態の場合、原稿Sの先端が原稿検出センサー50で検出されると、原稿Sが重送検出センサー40により重送を検出可能な位置に到達しているように、各センサーの位置関係が設定されている。つまり、原稿検出センサー50は、重送検出センサー40の原稿Sの搬送方向の下流側であって、重送検出センサー40の近傍に配置されている。なお、この原稿検出センサー50は、上記の光学センサーに限定されず、例えば、原稿Sの端部が検知できるセンサ(イメージセンサー等)を用いてもよいし、搬送路RTに突出したレバー型のセンサーでもよい。
【0030】
更に、原稿検出センサー50とは別の原稿検出センサー60が画像読取ユニット70よりも上流側に配置されている。この原稿検出センサー60は、第2搬送部20よりも下流側に配置され、第2搬送部20により搬送される原稿Sの位置を検出する。原稿検出センサー60としては、種々のものが利用可能である。本実施形態の場合、原稿検出センサー50と同様に、発光部61と受光部62とを備えた光センサーを用いている。そして、原稿検出センサー60は、原稿Sの到達又は通過により受光強度(受光量)が変化することを利用して原稿Sを検出する。なお、本実施形態では、第2搬送部20の搬送方向上流側と下流側のそれぞれに原稿検出センサー50、60を配置したが、何れか一方だけでもよい。これらの各センサー、先に説明した画像読取手段及び搬送手段は、後述するように制御部80によって制御される。
【0031】
<読取動作の開始>
本実施形態の画像読取装置Aの基本的な動作について説明する。制御部80は、例えば画像読取装置Aが接続された外部PCから画像読み取りの開始指示を受信すると、第1搬送部10、第2搬送部20、第3搬送部30の駆動を開始する(
図1参照)。載置台1に積載された原稿Sは、その最も下に位置する原稿Sから1つずつ搬送される。また、外部PCからの読取開始の指示の代わりに、後述する操作部83に設けられた不図示のスタートキーもしくはタッチパネル83aからの入力等によって、画像読取指示を受け取って、画像読取動作を開始してもよい(
図7参照)。
【0032】
制御部80は、原稿検出センサー60の検出結果に基づくタイミングで、第2搬送部20により搬送されてきた原稿Sの、画像読取ユニット70a、70bによる画像の読み取りを開始する。また、制御部80は、読み取った画像を一次記憶して、順次外部PCへ送信する。画像が読み取られた原稿Sは、第3搬送部30により排出トレイ2に排出されてその原稿Sの画像読取処理が終了する。
【0033】
<重送時の制御>
搬送の途中で原稿Sは重送検出センサー40により重送の有無が判定され、重送が無いと判定されると搬送が継続される。なお、重送があると判定された場合には、搬送を停止するか、或いは第1搬送部10による後続原稿Sの取り込みを停止して、重送状態にある原稿Sをそのまま排出するようにしてもよい。
【0034】
<表示パネルの構成>
図4は、本実施形態に係る画像読取装置Aにおける、排出トレイ2を展開した状態の正面図である。より正確には、画像読取装置Aの正面側に傾斜して設けられた正面パネル90に対して、垂直な方向から見た図であり、装置を載置した状態における正面よりもやや上方から見た状態の図である。正面上部の正面パネル90には表示パネル93が設けられ、その内部には、後述する操作部83の一例としての電源ボタン122及び表示部94が設けられている。ここで表示部94はタッチパネル83a、表示装置83b等で構成される(
図7参照)。表示部94は、読取条件等の表示だけでなく、例えば
図5のように異常状態や、異物が付着した位置を具体的に報知させる手段としても利用可能である。
図5において、符号203は後述するイメージセンサー72bの模式的な画像を表示部94に表示した様子を示す。同じく符号204は、イメージセンサー72aの模式的な画像の表示の様子である(
図6参照)。
図5においては、星印の箇所に異物が付着していることを示す。
【0035】
<画像読取ユニットの構成>
図6は、本実施形態の画像読取装置における、画像読取ユニット70の構成を示す概略断面図である。先に説明したように、画像読取ユニット70は、第1画像読取ユニット70a及び第2画像読取ユニット70bから成る。第1画像読取ユニット70aは、発光部71a、イメージセンサー72a、基準色部材73a及びコンタクトガラス74aを有する。また、第2画像読取ユニット70bは、発光部71b、イメージセンサー72b、基準色部材73b及びコンタクトガラス74bを有する。基準色部材73a及び73bは、それぞれイメージセンサー72b及び72aと対向する位置に配置されている。つまり、基準色部材は、対応する画像読取手段が設けられた一方のユニットに対して、他方のユニットに設けられている。
【0036】
第1画像読取ユニット70aにおいて、発光部71aから発した光は、搬送路RTを搬送される原稿を照明する。そして、原稿からの光はコンタクトガラス74aを通してイメージセンサー72aで読み取られ、電気信号に変換されて、画像データとして出力される。また、原稿の読み取りを行っていないときには、基準色部材73bの画像がイメージセンサー72aで読み取られ、取得された画像データはシェーディング補正に用いられる。同様に、第2画像読取ユニット70bにおいて、発光部71bから発した光は、搬送路RTを搬送される原稿を照明する。そして、原稿からの光はコンタクトガラス74bを通してイメージセンサー72bで読み取られ、画像データとして出力される。原稿の読み取りを行っていないときには、基準色部材73aの画像がイメージセンサー72bで読み取られ、シェーディング補正用の画像データが取得される。
【0037】
発光部71a及び71bは、例えば発光ダイオード(LED)等から成り、白色一色や、赤、緑、青の複数色など、画像を読み取る際に必要となる波長成分を原稿に照射するように構成されている。また、イメージセンサー72a及び72bは、CISやCCD等から構成される。このイメージセンサーとしては、受光素子が一列に並んだ1ラインセンサー、またはそれぞれ異なる波長の光を受光する受光素子が3列に並んだ3ラインセンサーでも良い。基準色部材73a及び73bは、均一な色、例えば白や黒など単色で構成されており、画像処理する際のイメージセンサーの基準値として使用される。この基準値から濃度差のある画素は補正され、イメージセンサーのライン出力が均一になるよう調整される。
【0038】
本実施形態では、2つの画像読取ユニット70a及び70bが対向する位置に配置されているが、搬送路RTの片側に画像読取ユニットを配置して、原稿の片面のみを読み取る構成としてもよい。その場合も、イメージセンサーに対向する位置に基準色部材が設けられる。また、本実施形態では、2つの画像読取ユニット70a及び70bを、搬送路RTの両側に対向配置した構造としているが、例えば、搬送路RTに沿った原稿の搬送方向に間隔をあけて配置してもよい。その場合も、各イメージセンサーに対向した位置に、それぞれ基準色部材を設ける。
【0039】
また、2つの画像読取ユニット70a及び70bのうち少なくとも一方を、原稿の厚み方向に揺動可能に支持した構成であってもよい。例えば、
図6の構成では、第1画像読取ユニット70aは、下部ユニット104に固定され、第2画像読取ユニット70bは、上部ユニット103の中で、搬送面に対して垂直な方向に揺動可能に支持されている。そして、第2画像読取ユニット70bは、バネ75等で付勢され、第1画像読取ユニット70aに突き当てられる。この構成にすることで、原稿が通過するとき第2画像読取ユニット70bが原稿の厚さに応じてフロートするので、薄紙から厚紙までの画像読取が可能になる。
【0040】
<制御部の構成>
図7は、
図1に示す画像読取装置Aの制御部80の構成を示すブロック図である。制御部80は、中央処理ユニット(CPU)81、記憶部82、操作部83、通信部84、発光制御部160、画像処理手段170、異物検知手段172、画像比較部171、発光制御手段161、アクチュエータ86及び各種のセンサー87を備える。CPU81は、記憶部82に記憶されたプログラムを実行することにより、画像読取装置A全体の制御を行う(
図1参照)。記憶部82は例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read only memory)等から構成され、他には画像処理手段170から出力される画像データなども保存する。
【0041】
操作部83は、タッチパネル83aや表示装置83b等で構成され、操作者への情報表示と、操作者からの操作の受け付けを行う。通信部84は、外部装置との情報通信を行うインターフェースである。外部装置としてパーソナルコンピューター(PC)を想定した場合、通信部84としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)インターフェースやSCSI(Small Computer System Interface)インターフェース、イーサネット(登録商標)インターフェースなどを挙げることができる。また、このような有線通信のインターフェースの他、通信部84は無線通信のインターフェースとしてもよく、有線通信、無線通信の双方のインターフェースを備えていてもよい。
【0042】
アクチュエータ86には、駆動部3、駆動部4、伝達部5等が含まれる。また、センサー87には、重送検出センサー40、原稿検出センサー50及び60、画像読取ユニット70、開閉検知センサー200等が含まれる。発光制御部160は、画像読取ユニット70に実装された発光部71a、71bの発光タイミングや、発光間隔、発光強度などを制御し、それに応じた信号を発光制御手段161に伝達している。発光制御部160は、
図7では、CPU81の内部に構成されているが、この構成に限らず、CPU81とは別ユニットに発光タイミングを制御できるよう構成しても良い。発光制御手段161は、発光制御部160から受けた信号に応じて、発光部71a、71bの点灯制御を行い、例えばこれらの発光部がLEDの時は平均電流値などを増減させる働きも兼ねている。
【0043】
画像処理手段170は、画像読取ユニット70から得られた、1ラインごとのデータの画像処理を行っている。画像処理された画像データは、CPU81を介して記憶部82に記憶されるか、又は、通信部84からPCに送られる。画像読取ユニット70及び画像処理手段170を合わせた画像処理の流れを、
図8のブロック図で示す。画像読取ユニット70から出力された信号は、増幅回路301で所定のゲイン倍に増減されて、A/D変換回路302に入力される。そして、A/D変換回路302で、アナログ信号からデジタル信号に変換された画像データは、光量調整回路303において、光量調整が行われる。そして、オフセット補正回路において、後述する黒レベル補正としてオフセット調整が行われる。ここで光量調整とオフセット調整についてはこの順番に限らず、オフセット調整を最初に行っても良いし、オフセット補正後に再度光量調整を行っても良い。
【0044】
シェーディング補正回路305は、オフセット補正回路304の出力に基づきシェーディング補正を行う。具体的には同じ明るさの基準色部材を読んだ時に、一つ一つの画素から出力される濃度が均一になるよう、一つ一つの画素に対して補正係数を設けて調整する。シェーディング補正された画像データはCPU81又はCPU81を介して記憶部82に送られる。
【0045】
画像比較部171では、上部ユニット103が、閉状態から開状態までのそれぞれに異なる位置にある複数の状態において、それぞれ前記画像読取手段で読み取りを行う。そして、複数の1ライン分画像データを取得し、これらの画像データの変化量を比較する。画像比較部171で比較した結果をもとに、異物検知手段172は、複数の画像データをそれぞれ閾値と比較し、この閾値以上又は閾値以下となった領域(部分)の有無によって、イメージセンサー72a、72b上に異物が付着しているか否かを判断する(
図6参照)。また、異物検知手段172は、上記の領域(部分)の有無が複数の画像データ間で相違するか否かによって、異物が画像読取ユニット上、或いは基準色部材上のいずれに存在するか、異物の位置を判断する。そして、異物検知手段は、検知結果を表示装置83b、又は通信部84を介してPCなどで使用者(オペレータ)に通知する。
【0046】
異物検知手段172が異物位置を判断するための閾値は、閾値決定手段175で決定する。閾値は検討、評価によって予め絶対値を決定し、記憶部82に記憶させておいても良い。また、イメージセンサー72a、72bから出力される1ラインの画像データの平均値を基に、変動的な閾値を決定できるよう構成しても良い。更に、ある任意の画素の出力データから閾値を決定する手法を用いることも出来る。設置環境により調整できる機構とすることで、外光による影響や発光部71a、71bの経年劣化による出力変化などによる影響を吸収することができ、異物の検知精度を保つことが可能となる。
【0047】
本実施形態における異物検知方法や通知方法の詳細については、後述する。また、本実施形態においては、画像処理手段170、画像比較部171、異物検知手段172が、CPU81とは別の構成で記載されているが、これらの機能をCPU81の内部にモジュールとして構成しても良い。また、本体に実装していなくても、PC等の不図示の外部装置にこれらの機能を持たせても良い。この場合には、この外部装置を含めて、本発明の画像読取装置を構成することになる。
【0048】
<異物検知処理>
次に、本実施形態における異物検知処理に関して、図面を参照して詳細に説明する。以降では、第1画像読取ユニット70aを例として説明を行うが、第2画像読取ユニット70bにおいても、全く同様の異物検知処理が行われる。
【0049】
図6に示す符号P1及びP2は、イメージセンサー72aで読み取りを行う領域に付着した異物を示している。P2は、イメージセンサー72aの上側に異物が付着した様子を示し、P1は、基準色部材73bの上側に異物が付着した様子を示す。この状態を、第1画像読取ユニット70aを下にして真上から見ると、
図9(a)に示すように、イメージセンサー72a上に異物が付着している状態となっている。
図9(a)においては、イメージセンサー72aを四角が並んだ形状で示す。ここで、1つの四角が1画素を表しており、約4画素分の異物Pがイメージセンサー72a上に付着した状態となっている。
【0050】
ここで、異物がイメージセンサー72a上のコンタクトガラス74a上に付着していた場合を
図9(b)に示す。発光部71aから発した光Lは、基準色部材73bで反射し、イメージセンサー72aに入射する。ところが、基準色部材73bで反射した光の一部は、異物P2によって遮られ、イメージセンサー72aに入射されない状態となっている。このような状態で、原稿Sの読み取りを行うと、イメージセンサー72aによって取得される読取画像には、
図10に示すように、異物P2による影響で副走査方向のスジが出てしまう。
【0051】
先に説明したように、イメージセンサー72aの対向部には、均一の濃度で構成された基準色部材73bが配置されており、イメージセンサー72aの各画素の出力が一定となるように画像処理手段170によって調整されている(
図7参照)。本実施形態においては、基準色部材73bとして、白を基準にした基準色部材を使用しており、基準色部材73bの読取結果(センサー出力)が、
図11に示すような信号となる。
図11において、横軸がイメージセンサー72aの主走査方向の位置を示し、縦軸が出力濃度値(センサー出力)を示す。本実施形態では白を基準とした基準色部材を読み取っているので、全ての画素のセンサー出力値が高い濃度を示しており、全画素値が近い値となっている。
【0052】
ここで、
図9のようにイメージセンサー72aの読み取り領域に異物Pが付着すると、異物Pが付着している領域のセンサー出力値は、異物Pによって反射した光をもとに出力しているので濃度が低くなる。そのため、1ラインのセンサー出力値は、
図12のように画像データの濃度(センサー出力値)が閾値以下となる領域(部分)が現れる。ただ、この波形だけでは異物Pがイメージセンサー72a上にあるか、対向した基準色部材73b上にあるかを判断することはできない。
【0053】
本実施形態において、異物の存在を検出し、使用者(オペレータ)に報知するまでの流れを
図13のフローチャートを使用して説明する。ステップS400においては、
図6のようにカバーが閉まっている状態で基準色部材73bに光を当て、読み取った1ライン分の画像データを取得する。そして、ステップS401において、ある閾値以下の濃度の画素が存在するか否か、言い換えれば、画像データの閾値以下となった領域(部分)の有無を確認する。基準色部材73bは、ある基準濃度で均一に作られているので、著しく濃度が異なる画素は存在しないのが正常である。ある閾値より濃度の低い画素がない場合、つまりステップS401でNOの場合、異物はないので、正常動作として異物検知処理は終了する。
【0054】
一方、ステップS401において、
図12に破線で示す閾値より濃度の低い画素が存在した場合(判断がYESの場合)、その画素領域に異物があるとして、表示部94(
図4参照)などの報知手段を使用して、使用者に報知する。ここで使用する閾値は、予め評価し、決定した値を記憶部82(
図7参照)に保存しておき、判定時に読み出して使用する。また、周囲の環境から閾値を相対的に変動できる構成としてもよい。例えば、
図12において、四角で囲った領域の平均値からの差分Aを下回ったら、異物が有ると判断しても良い。
【0055】
異物があることを使用者に報知すると、ステップS403において、清掃のために上部ユニット(カバー)103が開放される、つまり開状態へ開き始めるのを待つ。先に説明したように、上部ユニット103は、下部ユニット104に対し、ヒンジ部105を支点として回動可能に取り付けられている。そのため、ヒンジ部105の動きを検知できる開閉検知センサー200を取り付けることで、上部ユニット103の開閉動作を検知することが可能となる。本実施形態においては、開閉検知センサー200として、ヒンジ部105にエンコーダが取り付けられている(
図3参照)。
【0056】
ステップS404において、上部ユニット(カバー)103の開放を検知すると(判断がYES)、ステップS405において、発光制御部160は発光制御手段161を制御し発光部71a、71bを発光させ、1ライン分のデータを取得する(
図7参照)。そして、取得したデータ(data_1)を
図7の記憶部82に保存する。この時の上部ユニット(カバー)103の開き量、つまり上部ユニット103の位置は、
図14(a)の状態となっており、閉状態(
図6参照)から少し開放されている。この時取得した1ライン分の画像データ(data_1)は、
図15(a)に示すように、異物P1及びP2が付着した数画素分の濃度が周囲と比較し下がっていることが分かる。言い換えると、画像データに閾値以下の領域(部分)が存在する。
【0057】
この時に、発光制御部160は、通常に画像の読み取りをする際に使用する第1の発光強度で、発光部71a、71bを光らせるよう、発光制御手段161を制御しても良い。また、第1の発光強度とは異なる第2の発光強度で、発光部71a、71bを発光させても良い。このように、発光強度を調整できるようにすることで、上部ユニット(カバー)103を開放した際に、発光部71a、71bから発した光により、人が眩しいと感じる煩わしさを与えることなく、異物検知を行うことが可能となる。
【0058】
図15(a)の画像データは、
図12と比較すると周囲の画素濃度も全体的に下がっているが、これは上部ユニット(カバー)103が完全に閉じた状態から少し開放されたためである。つまり、イメージセンサー72aと、それに対向する基準色部材73bとの位置が少し離れるため、基準色部材73bで反射して返ってくる光の量が減少していることが原因であり、異物の検知に影響はない。
【0059】
ステップS405で1ライン分のデータを取得すると、次にステップS406において、上部ユニット(カバー)103がある一定量(Step_2分の開き量)開放されるまで、開放状態の経過を待つ。つまり、上部ユニット103が、ステップS404における位置とは異なる位置にある状態となるのを待つ。このようにStep_2分の開き量となるのを待つ理由として、開き量に応じて、イメージセンサー72aから出力される画像データの変化量から異物P1、P2が付着した位置を検出するためである。
【0060】
本実施形態のように、開閉検知センサー200にエンコーダを使用した場合、上部ユニット103が開放されたことをトリガーとし、そこから出力されるエンコーダパルス数をカウントすることで開き量を算出できる。一方、開閉検知センサー200として、赤外線を使用したフォトセンサを用いた場合、上部ユニット103が開放されたことをトリガーとして、そこから赤外線受光量と比例したアナログ電圧値から、開き量を推測することが可能となる。ステップS406において、上部ユニット103の開き量が、Step_2の開き量まで開放されてない場合、開放されるまで待つ(判断がNOの場合)。
【0061】
ステップS406において、上部ユニット103が、Step_2の開き量まで開放されたことを検知すると、ステップS407において、1ライン分のデータを取得する。そして、取得したデータ(data_2)を
図7の記憶部82に保存する。この時の上部ユニット(カバー)103の開き量、つまり上部ユニット103の位置は、
図14(b)の状態となっている。また、取得した画像データ(data_2)は、
図15(b)に示すものとなる。
【0062】
図15(b)を見ると、異物P1とP2が付着した数画素分の濃度が、周囲と比較し下がっていることが確認できる。この領域に異物が付着していることは確実だが、まだこの時点でイメージセンサー72a上に付着しているか、基準色部材73b上に付着しているか、判断することはできない。また、上部ユニット(カバー)103の開き量に応じて、周囲画素の濃度値が更に下がっていることがわかる。これは先に説明したように、イメージセンサー72aと、それに対向する基準色部材73bとの位置が更に離れるため、基準色部材73bで反射してイメージセンサーに返ってくる光の量が減少し、暗い画像データとなっているためである。
【0063】
ここまでで、1ライン分のデータを2つ取得すると、次にステップS408において、上部ユニット(カバー)103が、更に一定量開放されるまで、開放状態の経過を待つ。つまり、上部ユニット103が、ステップS404及びS406における位置とは異なる位置にある状態となるのを待つ。カバーの開き量がStep_nの開き量まで開放されていない場合、開放されるまで待つ(判断がNOの場合)。ステップ数nの回数は、カバーの開き量に応じて、イメージセンサーから出力する画像データを取得するステップ数となる。そして、このステップ数は、上部ユニット103が開いていく過程において複数回データを取得し、異物が付着した位置を特定できるように決定する。異物の位置(画像読取ユニットと基準色部材のどちら側に異物が付着しているか)を判断できるデータが揃えば、確認回数に制限はない。そのため、評価や検討を繰り返す中で決定すれば良い。
【0064】
ステップS408において、上部ユニット(カバー)103が、Step_nの開き量まで開放されたことを検知すると、1ライン分のデータを取得する。
図7に示すCPU81は、取得したデータ(data_n)を記憶部82に保存する。この時の上部ユニット(カバー)103の開き量、つまり上部ユニット103の位置は、
図14(c)の状態となっている。また、取得した画像データ(data_n)は、
図15(c)に示すものとなる。
【0065】
次いで、ステップS410において、画像データn個分の変化量を算出すると、
図15(c)において、異物が付着していると予想していた領域の濃度に差がでていることが分かる。P2の画素領域については、
図15(a)、
図15(b)ともに、周囲の濃度より低かったが、
図15(c)においては、周囲の濃度より明るくなっていることがわかる。これは異物P2がイメージセンサー72aの真上に付着しているためである。つまり、発光部71aから発した光が異物P2によって反射され、イメージセンサー72aがその反射光を受光している状態である。
【0066】
一方で、P1の領域については、
図15(a)及び
図15(b)で周囲の濃度より低かったが、
図15(c)では周囲の濃度と同レベルの値となっていることが分かる。これは異物P1が、基準色部材73b上に付着しているためである。つまり、上部ユニット103が開放されるに伴い、発光部71aからの光が届かない位置に異物P1が移動したことによる。このように、
図14(c)のようにある一定量以上、上部ユニット103が開くと、イメージセンサー72aは異物P2の影響を受なくなる。
【0067】
図7に示す画像比較部171は、記憶部82に保存された画像データ(data_1、data_2、・・・data_n)の変化状況を比較し、特定した異物が存在する領域の画像データの推移から、異物が付着した位置を判断する。ステップS410において、データn個分の変化量を算出した後、ステップS411において、異物が付着した位置を判断する。つまり、上部ユニット103が徐々に開いていく過程において、異物が付着した領域の濃度と、その周囲の濃度との変化量がある規定値以上である場合、異物はイメージセンサー72a上に付着していると判断する。つまり、ステップS411で判断がYESの場合に、ステップS412に進む。
【0068】
一方、上部ユニット103がある開き量となったときに、異物が存在する領域の濃度と、その周囲の濃度とが同じ明るさとなった場合、異物は基準色部材73b側にあると判断する。つまり、ステップS411で判断がNOの場合に、ステップS413に進む。言い換えると、ステップS411における判断は、ステップS401において異物があると判断された部分の出力値が、複数の画像データ間において変化したか否かによって、異物の位置を判断しているものである。
【0069】
本実施形態においては、開閉検知センサー200の信号をもとに画像データを取得するタイミングを決定していたが、データの取得タイミングについてはこれに限定されるものではない。上部ユニット103の開き量が推測できる排他的なデータであれば、そのデータを用いて、
図13に示すフローチャートと同様の手順で画像データを取得してもよい。例えば、画像読取ユニット70のある任意の領域におけるイメージセンサーの受光量から、上部ユニット103の開き量が推測できれば、この受光量の変化に基づいて画像データを取得することも可能である。また、上部ユニット103の開放が開始された瞬間からの経過時間に基づいて、開き量を推測するようにしても良い。
【0070】
図16は、異物検知処理を行った後の、使用者(オペレータ)への報知の流れを説明するフローチャートである。ステップS501において、上部ユニット103が開放されたか否か(搬送路が開放されたか否か)を判断する。開放されていない場合(判断がNOの場合)には、処理を終了する。上部ユニット103が開放されると、ステップS502において、
図13のフローチャートで説明した異物検知処理と同様に、異物の位置を特定する。ステップS502で異物の位置が特定されると、ステップS503で発光させる色を決定する。異物が付着した位置を知らせる色なので、赤系や、黄色系が好適ではあるが、他の色でも良い。
【0071】
次にステップS504において、発光させる光源を選択する。本実施形態で説明している画像読取装置は、搬送する媒体の両面の画像を読み取るので、表面側、裏面側にそれぞれ光源(発光部71a、71b)が配置されている。そのため、ここでは、ステップS502で異物が付着したと検知した側の発光部を、点灯する光源として設定する。これにより、使用者は異物が付着した側のユニットを認識可能となる。発光させる光源が、LEDアレイや、ブロックごとに個別に発光制御できる光源の場合は、異物が検知された副走査方向の位置に対応するLEDやブロックの光源を設定する。ここで、検知された異物の位置(表面側、裏面側)に応じて、それぞれの光源(発光部71a,71b)の点灯色を変えて報知する構成にしても良い。この場合、使用者(オペレータ)が認知しやすい色で報知することが可能である。
【0072】
次に、ステップS505において、発光部71a、71bを発光させる際の光量を決定する。異物の位置を報知する際に使用する光量については、原稿を読み取る際の第1の光量と、異物を検知する際の第2の光量とは異なる、第3の光量で発光させることができる。このとき、第3の光量を、第1及び第2の光量より小さくすることによって、清掃する際に眩しいと感じるわずらわしさを軽減することができる。この後、使用者(オペレータ)は、ステップS507において、点滅、または点灯している側の画像読取ユニットを清掃する。その後、ステップS508で、上部ユニット(カバー)103を閉めて終了となる。
本実施形態においては、S506で異物が検知された副走査方向の位置を示す光源を点灯させているので、更に使用者の清掃作業が効率良く行える。
【0073】
本実施形態では、異物を検知した際の報知手段として、発光部71a,71bを使用する例を説明したが、
図5で示した表示部94を使用しても良い。この場合、先に説明したように、表面側及び裏面側のイメージセンサーの模式的な画像を表示部94に示し、異物が存在する側の画像に、副走査方向の異物の位置を示すような表示を行うことができる。
【0074】
図17は、異物の検知が報知された後に、異物が取り除かれたかどうかを確認する処理を示すフローチャートである。ステップS601において、清掃が終了した後、ステップS602において、上部ユニット103が閉位置に戻る(搬送路が閉まる)直前か否かを判断する。閉まる直前ではない場合(判断がNOの場合)、処理を終了する。閉まる直前であった場合(判断がYESの場合)は、ステップS603において、発光部を点灯させる。そして、S604で1ライン分の画像データを取得し、ステップS605で記憶部に保存する。
【0075】
次に、ステップS606において、異物位置が特定できる数のデータが揃ったかどうかを判断する。揃っていないと判断した場合(判断がNOの場合)、ステップS603~S605を繰り返し、上部ユニット103が異なる位置にある状態のときの複数の画像データをそれぞれ取得する。ステップS606で、データが揃ったと判断した場合(判断がYESの場合)、ステップS607に進む。ステップS607においては、
図13で説明した手順と同様に異物検知処理が行われる。ただ、この場合の画像データの変化は、上部ユニット103が徐々に開いていく場合と逆になる。つまり、異物がイメージセンサー側に付着した場合、異物が存在する位置の濃度は、上部ユニットが閉まるにつれて、周囲の濃度に対して高い状態から低い状態に変化する。一方、異物が基準色部材側に付着した場合、異物が存在する位置の濃度は、上部ユニットが閉まるにつれて、周囲の濃度に対して同等の濃度状態から、低い状態に変化する。
【0076】
図13で説明したように、既に異物の位置を検知しており、この位置を記憶部82に記憶している。そのため、ステップS608においては、開放時に検知した異物の位置と、閉じられる時に検知した異物の位置とを比較する。そして、ステップS609において、異物の清掃状況を確認、つまり異物が取り除かれたか否かを検知する。ここで、1ライン全ての画素データを確認しても良いが、処理が重くなるため、先に異物が検知された領域の周囲のみを検知領域としても良い。これにより、処理の負担を減少させ、検知速度を上げることができる。
【0077】
ステップS609で確認した結果、ステップS610において、異物が取り除かれたと判断した場合(判断がYESの場合)、処理を終了する。一方、ステップS610において、異物が取り除かれていないと判断した場合(判断がNOの場合)、表示部94或いは通信部84を使用し、異物が取り除かれていない状況を使用者(オペレータ)に報知する。ここで、これらの報知手段は、最初に異物検知を行った際の報知手段とは異なる、更なる報知手段と考えることができる。
【0078】
ここまで、付着した異物の位置検知に関する手法を説明してきたが、異物の色が黒に近い場合には検知が難しい場合がある。これは、異物が付着した領域の濃度と周囲の濃度との差が少ないという理由による。このような場合の処理について、
図18~
図20を用いて説明する。
図18は、付着した異物の色が黒に近い場合、上部ユニット(カバー)103を開放したタイミングに取得した画像データにおける、画像濃度の変化量を示した濃度分布図である。上部ユニット103が開いた瞬間において、イメージセンサー72aが出力する画像データは、
図18(a)のようになる。ここで、異物が付着した領域の濃度は、周囲の濃度と比較し大きく差があり、暗い出力となっている。これは、
図15(a)のP2の濃度分布と同じ傾向である。
【0079】
次に、上部ユニット(カバー)が、ある角度分だけ開放された、
図14(b)の状態における、画像データは
図18(b)のようになる。ここでは、異物が付着した領域の濃度が、周囲の濃度と比較し、差が出ていることが分かる。これは、
図15(b)のP2の濃度分布と同じ傾向である。
【0080】
次に、上部ユニット(カバー)が更に開き、
図14(c)の状態となったときの画像データは、
図18(c)のようになる。このとき、異物が付着した領域の濃度は、周囲の濃度と比較し、差がほとんどなくなってしまっていることが分かる。これは、異物の色が黒く、この異物で反射されてイメージセンサーに入射する光量と、開放された状態で入射される光量とが近いためであると予想できる。この状態になると、異物がイメージセンサー側に付着しているか、基準色部材側に付着しているかを判断することができない。
【0081】
このような場合に、異物が付着した位置を検知する方法を、
図19のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS801において、上部ユニット(カバー)を閉じた状態で、1ライン分の画像データを取得する。続いて、ステップS802において、濃度が閾値より低い画素があるか確認する。ここで使用する閾値は、上部ユニットが大きく開き、基準色部材で反射してイメージセンサーに入射する光の影響がなくなる状態の周囲の濃度より少し高い値に決定する。この値は、周囲の濃度平均値と近い値になっている。閾値よりも低い濃度の画素が無ければ、処理を終了する。
【0082】
ステップS802において、閾値より低い画素が存在した場合(判断がYESの場合)、ステップS803で上部ユニット(カバー)103が、Step_n分の開き量に達するのを待つ。ステップS804で、Step_n分の開き量に達したところで、ステップS805に進む。ステップS805では、発光部71a、71bを点灯させ、ステップS806において、1ライン分の画像データを取得する。取得した画像データから、ステップS802で閾値より低いと判断した画素の濃度を、周囲の画素の濃度と比較する。そして、ステップS808で、異物があると予想していた画素の濃度と、周囲の濃度がある規定値以上差があると判断した場合、ステップS810に進む。ステップS810において、先に
図13で説明した手順と同様にして、異物の位置を検知した後、処理を終了する。
【0083】
ステップS808で、異物があると予想していた画素の濃度と周囲の濃度が、ある規定値以上差がないと判断した場合には、ステップS809に進む。この状態の画像データは、
図18(c)のようなものとなる。ステップS809においては、オフセット調整を行う。つまり、
図13で説明した異物検知方法で使用した第1のオフセット調整値とは異なる、第2のオフセット調整値を設定することで、全体的な周囲の濃度を低下させる。この時の1ライン分の画像データの濃度分布は、
図20(b)のようなものとなり、一様に濃度が下がっていることがわかる。
【0084】
ステップS809において、オフセット調整をした後に、ステップS811において、発光制御部160は発光部71a、71bの発光量と点灯制御を変更する(
図7参照)。つまり、
図13で説明した異物検知において使用した光量値より、光量を増やして点灯制御させる。このことにより、異物によって反射される光量を増やし、異物が付着した画素において出力される画像データの濃度を上げる。光量を上げた際の出力画像は、
図20(c)のようなり、異物が存在する画素の濃度が光量を上げた分浮き出てくることが分かる。逆に周囲の濃度は光量を上げても反射されて返ってくる光がないため、大きく変化はない。ここで、光量の調整は光量を上げても良いし、発光部を点滅させている場合は、点灯期間を長くしても良い。
【0085】
図20(c)に示す画像データにおいては、異物が付着した画素と周囲の画素の濃度差に明らかな差がでている。そのため、ステップS812において、異物検知手段172は、異物の位置を検知することが可能となる(
図7参照)。
【0086】
以上、本発明の一実施形態の画像読取装置に関して説明したが、本発明においては、この実施形態に限らず、種々の変形、応用が可能である。例えば、先の実施形態では、画像データと閾値とを比較し、閾値以下となる部分があった場合に、異物が付着していると判断している。ただ、画像データの処理方法や異物の種類等に応じて、画像データにおいて閾値以上となる部分の有無によって異物を検知するようにしても良い。本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない限りにおいて、このような変形、応用を全て包含するものである。
【符号の説明】
【0087】
70a 第1画像読取ユニット
70b 第2画像読取ユニット
71a、71b 発光部
72a、72b イメージセンサー
73a、73b 基準色部材