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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116080
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】レーザー溶接用ワーク保持装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/70 20140101AFI20230815BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20230815BHJP
【FI】
B23K26/70
B23K26/21 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018652
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】大島 伸紀
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA02
4E168BA12
4E168BA16
(57)【要約】
【課題】円板状の箔からなるワークをレーザー溶接時に熱の影響を受け難くなるように保持可能なレーザー溶接用ワーク保持装置を提供する。
【解決手段】被溶接部材2に熱伝達可能に接触して被溶接部材2を保持する複数の保持具4を備える。被溶接部材2は、円板状の箔からなるワーク3がレーザー溶接によって溶接されるものである。被溶接部材2に重ねられたワーク3の外周部を被溶接部材2に押し付ける円環状の箔押さえ5を備える。保持具4は、被溶接部材2に嵌合する嵌合部と、チャック12の先端部に着脱可能に取付けられる取付部14とを有しているとともに、複数の保持具4が協働して被溶接部材2を挟んで保持するように構成されている。箔押さえ5の内周部には、複数の仮止め用切欠き26が形成され、箔押さえ5は、保持具4に着脱可能に取付けられている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の箔からなるワークがレーザー溶接によって溶接される被溶接部材に熱伝達可能に接触し前記被溶接部材を保持する複数の保持具と、
前記被溶接部材に重ねられた前記ワークの外周部を前記被溶接部材に押し付ける円環状の箔押さえとを備え、
前記保持具は、前記被溶接部材に嵌合する嵌合部と、チャックの先端部に着脱可能に取付けられる取付部とを有しているとともに、複数の前記保持具が協働して前記被溶接部材を挟んで保持するように構成され、
前記箔押さえの内周部には、複数の仮止め用切欠きが形成され、
前記箔押さえは、前記保持具に着脱可能に取付けられていることを特徴とするレーザー溶接用ワーク保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザー溶接用ワーク保持装置において、
前記箔押さえと前記保持具とは、各々の対向面において、一方に凹部が形成され、他方に前記凹部に嵌入される凸部が形成され、
前記凹部に前記凸部が嵌入されることで前記箔押さえと前記保持具とが結合されることを特徴とするレーザー溶接用ワーク保持装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のレーザー溶接用ワーク保持装置において、
前記複数の保持具は、同形状の3個以上の保持具からなり、各保持具は、前記嵌合部が前記箔押さえの円環状の外周に沿って隣接するよう設置されることを特徴とするレーザー溶接用ワーク保持装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか一つに記載のレーザー溶接用ワーク保持装置において、
前記被溶接部材は、円筒状に形成され、
前記保持具における前記被溶接部材と接する部分は、前記被溶接部材の外周面と嵌合する形状に形成されていることを特徴とするレーザー溶接用ワーク保持装置。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザー溶接用ワーク保持装置において、
前記被溶接部材の一端側には、前記ワークを挿入可能な内径のワーク挿入部が形成されているとともに、前記被溶接部材の他端側には、内径が前記ワークの外径より小さい厚肉部が形成され、
前記ワーク挿入部と前記厚肉部との境界には、前記被溶接部材の軸線とは直交する環状の平面が形成され、
前記箔押さえは、前記ワーク挿入部に嵌合する形状に形成されかつ前記環状の平面に重ねられた前記ワークを前記厚肉部と協働して挟む押圧部を有し、
前記押圧部を前記被溶接部材の周方向に均等に分割する位置に、前記仮止め用切欠きがそれぞれ形成されていることを特徴とするレーザー溶接用ワーク保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円板状の箔からなるワークをレーザー溶接時に熱の影響を受け難くなるように保持するレーザー溶接用ワーク保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体の圧力を検出する圧力センサは、例えば特許文献1に記載されているように、筐体内に密封された圧力室を有していることが多い。特許文献1に示す圧力室は、圧力センサの筐体に形成された凹部と、この凹部の開口部分を閉じるように筐体に溶接されたダイアフラムとによって形成されている。ダイアフラムの筐体への溶接は、凹部の開口部分にダイアフラムを重ねるとともに、このダイアフラムに更に溶接補助リングを重ね、溶接補助リングを電極によって筐体に向けて押しながら電極と筐体との間に通電してプロジェクション溶接によって行っている。
隔膜式の圧力センサなどにおいて、円板状の箔からなる薄板を筐体にレーザー溶接によって溶接してダイアフラムとする場合は、上述したような溶接補助リングなどを用い、見かけの薄板の厚みを部分的に厚くしてレーザー溶接を安定させることが行われている。
【0003】
ところで、円板状の薄板をレーザー溶接時に保持する従来のレーザー溶接用ワーク保持装置としては、例えば特許文献2に記載されているものがある。特許文献2に開示されたレーザー溶接用ワーク保持装置は、円環状の板によって形成された保持プレートで円板状の薄板(ワーク)の外周部を被溶接物に押し付ける構成が採られている。このワーク保持装置の保持プレートによって被溶接部材に押し付けられた薄板をレーザー溶接によって被溶接部材に溶接するときは、保持プレートの中央部の穴にレーザー光を通して行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-132886号公報
【特許文献2】特許第6223506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
厚み数十μmの支持ダイアフラムを使用するタイプの真空圧センサにおいては、上述したような溶接補助リングを用いると溶接に必要な投入エネルギーが大きくなり、その結果、支持ダイアフラムへの熱影響による不良につながってしまう。なお、溶接補助リングを使用せずに薄板のみでレーザー溶接を行うと、薄板の厚みが薄いことが原因で熱の影響を大きく受け、薄板の端部が浮き上がったり、薄板が反ったりすることがある。また、レーザー溶接に伴ってシワになる部分が発生することもある。このような浮き、反り、シワ等が発生した支持ダイアフラムは不良品になる。
【0006】
円板状の薄板をレーザー溶接によって溶接する際に浮きや反りが発生するという不具合は、特許文献2に開示されているように薄板を被溶接部材に押し付けながらレーザー溶接を行うことによりある程度は解消可能である。しかし、特許文献2に示すワーク保持装置では、円環状の保持プレートで薄板の外周部の上面を押すだけであるから、レーザー溶接時の熱の影響を低減させることは難しい。また、特許文献2に示すレーザー溶接用ワーク保持装置は、保持プレートがワークの周囲に拡がるように形成されているから、ワークが例えば円筒状の被溶接部材の中に嵌まるように挿入されて溶接される場合には使用することができない。
【0007】
本発明の目的は、円板状の箔からなるワークをレーザー溶接時に熱の影響を受け難くなるように保持可能なレーザー溶接用ワーク保持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明に係るレーザー溶接用ワーク保持装置は、円板状の箔からなるワークがレーザー溶接によって溶接される被溶接部材に熱伝達可能に接触し前記被溶接部材を保持する複数の保持具と、前記被溶接部材に重ねられた前記ワークの外周部を前記被溶接部材に押し付ける円環状の箔押さえとを備え、前記保持具は、前記被溶接部材に嵌合する嵌合部と、チャックの先端部に着脱可能に取付けられる取付部とを有しているとともに、複数の前記保持具が協働して前記被溶接部材を挟んで保持するように構成され、前記箔押さえの内周部には、複数の仮止め用切欠きが形成され、前記箔押さえは、前記保持具に着脱可能に取付けられているものである。
【0009】
本発明は、前記レーザー溶接用ワーク保持装置において、前記箔押さえと前記保持具とは、各々の対向面において、一方に凹部が形成され、他方に前記凹部に嵌入される凸部が形成され、前記凹部に前記凸部が嵌入されることで前記箔押さえと前記保持具とが結合されてもよい。
【0010】
本発明は、前記レーザー溶接用ワーク保持装置において、前記複数の保持具は、同形状の3個以上の保持具からなり、各保持具は、前記嵌合部が前記箔押さえの円環状の外周に沿って隣接するよう設置されてもよい。
【0011】
本発明は、前記レーザー溶接用ワーク保持装置において、前記被溶接部材は、円筒状に形成され、前記保持具における前記被溶接部材と接する部分は、前記被溶接部材の外周面と嵌合する形状に形成されていてもよい。
【0012】
本発明は、前記レーザー溶接用ワーク保持装置において、前記被溶接部材の一端側には、前記ワークを挿入可能な内径のワーク挿入部が形成されているとともに、前記被溶接部材の他端側には、内径が前記ワークの外径より小さい厚肉部が形成され、前記ワーク挿入部と前記厚肉部との境界には、前記被溶接部材の軸線とは直交する環状の平面が形成され、前記箔押さえは、前記ワーク挿入部に嵌合する形状に形成されかつ前記環状の平面に重ねられた前記ワークを前記厚肉部と協働して挟む押圧部を有し、前記押圧部を前記被溶接部材の周方向に均等に分割する位置に、前記仮止め用切欠きがそれぞれ形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、ワークを箔押さえによって被溶接部材に押し付けた状態で浮きや反りの発生を防ぎながら仮止めを行なうことができる。また、箔押さえを取外して本溶接を行うときには、溶接部の熱が被溶接部材から保持具およびチャックに伝達されるから、溶接部の温度を低く保つことができる。
したがって本発明によれば、円板状の箔からなるワークをレーザー溶接時に熱の影響を受け難くなるように保持可能なレーザー溶接用ワーク保持装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明に係るレーザー溶接用ワーク保持装置の斜視図である。
図2図2は、保持具、チャックおよび被溶接部材の使用形態を示す平面図である。
図3図3は、レーザー溶接用ワーク保持装置の分解斜視図である。
図4図4は、被溶接部材、ワークおよび箔押さえの斜視断面図である。
図5図5は、レーザー溶接用ワーク保持装置の斜視断面図である。
図6図6は、保持具とチャックの斜め下方から見た分解斜視図である。
図7図7は、レーザー溶接用ワーク保持装置の横断面図である。
図8図8は、保持具とチャックの縦断面図である。
図9図9は、箔押さえの平面図である。
図10図10は、レーザー溶接用ワーク保持装置の平面図である。
図11図11は、被溶接部材にワークを挿入する工程を説明するための断面図である。
図12図12は、被溶接部材に箔押さえを挿入する工程を説明するための断面図である。
図13図13は、仮止め工程を説明するための断面図である。
図14図14は、本溶接工程を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るレーザー溶接用ワーク保持装置の一実施の形態を図1図14を参照して詳細に説明する。
図1に示すレーザー溶接用ワーク保持装置1は、図1の中央部に位置する被溶接部材2とワーク3を後述するレーザー溶接時に保持するためのもので、被溶接部材2の周囲に配置された複数の保持具4と、図1において被溶接部材2の上方に描かれている円環状の箔押さえ5などを備えている。
【0016】
(被溶接部材とワークの説明)
被溶接部材2は、金属材料によって円筒状に形成されている。この被溶接部材2の一端側(上端側)には、図3に示すように、内径が他端側より大きいワーク挿入部2aが形成されている。この被溶接部材2には、一端側のワーク挿入部2aと、他端側にワーク挿入部2aより厚みが厚くなるように形成された厚肉部2bとが形成されている。ワーク挿入部2aと厚肉部2bとの境界には、図4に示すように、被溶接部材2の軸線Cとは直交する環状の平面6が形成されている。
【0017】
被溶接部材2は、この平面6に金属製の円板状の箔からなるワーク3(図3参照)がレーザー溶接によって溶接されるものである。ワーク挿入部2aの内径は、ワーク3の外径より僅かに大きく、ワーク3を挿入可能な径である。厚肉部2bの内径は、ワーク3の外径より小さい。
ワーク3は、被溶接部材2のワーク挿入部2aに上方から挿入され、環状の平面6に載置された状態でレーザー溶接によって溶接される。ワーク3の被溶接部材2への溶接は、詳細は後述するが、被溶接部材2を複数の保持具4で保持した状態で箔押さえ5を使用して行う仮止めと、上記の状態から箔押さえ5を外して行う本溶接とによって行われる。
【0018】
(保持具の説明)
複数の保持具4は、図2(A),(B)に示すように、被溶接部材2の周囲の3箇所に配置されている。図2(A)は被溶接部材が保持具4によって保持された状態を示し、図2(B)は、被溶接部材が解放された状態を示す。全ての保持具4は同じ形状である。また、これらの保持具4は、自動調芯チャック装置11のチャック12に着脱可能に取付けられている。自動調芯チャック装置11は、3個のチャック12を保持具4とともに互いに接近するように自動調芯チャック装置11の軸芯部Aに向けて進める前進方向と、3個のチャック12を互いに離間するように自動調芯チャック装置11の軸芯部Aから離間する後退方向とに移動させる。また、自動調芯チャック装置11は、軸芯部Aを中心にして3個のチャック12を回転させる機能も有している。
【0019】
自動調芯チャック装置11の軸芯部Aに被溶接部材2が配置された状態で3個のチャック12が保持具4とともに前進方向に移動することにより、図2(A)に示すように、被溶接部材2が3個の保持具4によって挟まれて保持される。また、図2(B)に示すように、3個のチャック12が保持具4とともに後退方向に移動して互いに離間することにより、被溶接部材2が解放される。
【0020】
保持具4は、図3に示すように、被溶接部材2と接する嵌合部13と、チャック12の先端部に着脱可能に取付けられる取付部14とを有している。嵌合部13は、被溶接部材2を載せるための平坦な載置面13aと、被溶接部材2の外周面に倣う形状の凹曲面13bとによって形成されている。すなわち、保持具4における被溶接部材2と接する部分(嵌合部13)は、被溶接部材2の外周面と嵌合する形状に形成されている。このため、保持具4の嵌合部13に被溶接部材2が嵌合した状態においては、保持具4が被溶接部材2に熱伝達可能に接触することになる。
【0021】
取付部14は、図6図8に示すように、チャック12が下方から嵌合する形状の凹部15と、凹部15の壁面に沿って上下方向に延びる複数の貫通孔16(図1参照)と、上方に向けて開口する複数の非貫通孔17(図5参照)などを有している。チャック12は、図6に示すように、移動方向の一端部(前進方向の端部)に形成された第1の連結用突起18と、この第1の連結用突起18と隣り合う第2の連結用突起19とを有している。第1の連結用突起18は、第2の連結用突起19より上方に突出している。
【0022】
取付部14の凹部15は、図8に示すように、第1の連結用突起18が嵌合する凹陥部15aと、第2の連結用突起19が嵌合する溝部15bとによって形成されている。図8の破断位置は、図2(B)中にVIII-VIII線によって示す位置である。溝部15bは、図6に示すように、チャック12の移動方向(図6においては左上と右下とを結ぶ方向)に延びるように形成されており、保持具4の後端面4aと下端面4bとに開口している。第1の連結用突起18が凹陥部15aに嵌合するとともに第2の連結用突起19が溝部15bに嵌合することにより、チャック12と保持具4とが一体となって前進方向と後退方向とに移動可能となるように連結される。
【0023】
取付部14の複数の貫通孔16は、図7に示すように、保持具4の取付部14を上下方向に貫通している。貫通孔16が形成されている位置は、チャック12の角部分と対応する位置と、凹陥部15aと溝部15bとの境界となる位置である。
取付部14の非貫通孔17は、嵌合部13と隣り合う2箇所にそれぞれ形成されている。これら2箇所の非貫通孔17は、被溶接部材2の周方向に所定の間隔をおいて互いに離間している。これらの非貫通孔17には、後述する箔押さえ5を保持具4に固定するためのタップ20(図5参照)の軸部20aが取付けられている。
【0024】
(箔押さえの説明)
箔押さえ5は、図4および図9に示すように、円環状のフランジ部21と、フランジ部21の内周部分から下方に延びる押圧部22とを有している。押圧部22は、詳細は後述するが、被溶接部材2のワーク挿入部2aに嵌合するように形成されている。箔押さえ5は、図5に示すように複数の保持具4によって保持された被溶接部材2に押圧部22を嵌合させて使用される。図5の破断位置は、図10中にV-V線によって示す位置である。
フランジ部21は、押圧部22が被溶接部材2に嵌合した状態で保持具4と対向する。この実施の形態においては、フランジ部21が箔押さえ5における保持具4と対向する対向面となる。また、保持具4の上面が保持具4における箔押さえ5と対向する対向面となる。
【0025】
フランジ部21には、複数の貫通孔24が形成されている。これらの貫通孔24は、被溶接部材2を保持した3個の保持具4のそれぞれの非貫通孔17と対応する位置に形成されている。これらの貫通孔24は、タップ20の頭部20b(図5参照)が嵌合する形状に形成されており、箔押さえ5における保持具4と対向する対向面に形成された凹部を構成する。一方、保持具4の非貫通孔17に取り付けられたタップ20の頭部20bは、箔押さえ5の凹部(貫通孔24)に嵌入される凸部を構成する。箔押さえ5の凹部(貫通孔24)に保持具4の凸部(タップ20の頭部20b)が嵌入されることによって、図5および図10に示すように、箔押さえ5が複数の保持具4にタップ20を介して着脱可能に結合される。この実施の形態による3個の保持具4は、嵌合部13が箔押さえ5の円環状の外周(フランジ部21)に沿って隣接するように配置される。
【0026】
箔押さえ5の押圧部22は、図5に示すように、被溶接部材2のワーク挿入部2aに上方から嵌合する形状に形成されている。詳述すると、図4に示すように、押圧部22は、フランジ部21から下方に延びる円筒25に複数の仮止め用切欠き26を形成した構造が採られている。円筒25の外周面は、ワーク挿入部2aに嵌合する形状に形成されている。仮止め用切欠き26は、円筒25の上下方向の両端に開口し、円筒25の内周面から外周面まで円筒25を径方向に横切るように形成されている。また、仮止め用切欠き26は、図9に示すように、押圧部22(円筒25)を周方向に均等に分割する位置にそれぞれ形成されている。
このように形成された箔押さえ5が上述したように保持具4に結合されることにより、被溶接部材2の環状の平面6に重ねられたワーク3の外周部を押圧部22が厚肉部2bと協働して挟むことになる。
【0027】
(溶接手順の説明)
次に、上述した保持具4と箔押さえ5とを使用して被溶接部材2およびワーク3を保持し、被溶接部材2にワーク3をレーザー溶接によって溶接する手順を説明する。
先ず、図2(B)に示すように3個の保持具4の間に被溶接部材2を位置付け、これらの保持具4をそれぞれ前進させて図2(A)に示すように3個の保持具4で被溶接部材2を挟んで保持する。このとき、被溶接部材2の外周面が保持具4の嵌合部13に嵌合し、被溶接部材2の外周面と保持具4の嵌合部13とが面接触の状態で接触する。そして、図11に示すように被溶接部材2のワーク挿入部2aに上方からワーク3を挿入し、被溶接部材2の環状の平面6にワーク3を載せる。図11図14の破断位置は、図10中にIX-XI線によって示す位置である。
【0028】
その後、図12に示すように、被溶接部材2に上方から箔押さえ5を接近させ、ワーク挿入部2aに箔押さえ5の押圧部22を挿入する。そして、箔押さえ5のフランジ部21に形成されている貫通孔24に保持具4のタップ20の頭部20bを嵌合させ、押圧部22がワーク3に当接するまで箔押さえ5を下げる。押圧部22がワーク3に押し付けられることにより、ワーク3が押圧部22と被溶接部材2の厚肉部2bとによって挟まれて保持される。このとき、ワーク3は、主に押圧部22から受ける箔押さえ5の重量によって厚肉部2bに押し付けられる。使用するワーク3の厚みが数十μm程度であれば、ワーク3を箔押さえ5の重量で十分に環状の平面6に押し付けることが可能である。
【0029】
このようにワーク3が被溶接部材2に重ねられている状態でレーザー溶接により仮止めを行う。仮止めは、図13に示すように、箔押さえ5の上方にレーザー溶接装置31のレーザー照射部32を位置付け、ワーク3の所定の仮止め位置にレーザー光33を照射して行う。仮止め位置は、ワーク3の外周縁より所定距離だけ内側の位置であって、ワーク3の周方向に所定の間隔をおいて並ぶ複数の位置である。この実施の形態においては、仮止め位置と対応する位置に箔押さえ5の仮止め用切欠き26が形成されている。図9に示すように仮止め用切欠き26の中にレーザー光33を照射することにより、仮止め位置で仮止めを行うことができる。仮止め用切欠き26の中で仮止めを行うことにより、仮止め位置の両側近傍が箔押さえ5の押圧部22によって厚肉部2bに押し付けられることになるから、ワーク3の仮止め部分が確実に厚肉部2bに密着する。
【0030】
仮止めは、レーザー光33を所定の間隔で間欠的に照射するとともに、レーザー光33の照射タイミングに同期するように自動調芯チャック装置11で3個の保持具4、被溶接部材2、ワーク3および箔押さえ5を回転させて行う。すなわち、レーザー照射部32の位置を変えることなく、ワーク3の仮止め位置がレーザー光33の照射位置に位置付けられるようにワーク3が回転する。このように仮止めをワーク3が箔押さえ5によって被溶接部材2に押し付けられた状態で行うことにより、ワーク3の浮きや反りが発生することを防ぐことができる。
【0031】
ワーク3の全ての仮止め位置に仮止めを実施した後、図14に示すように箔押さえ5を取り外し、この状態で本溶接を行う。本溶接は、レーザー光33を照射しながら自動調芯チャック装置11で3個の保持具4、被溶接部材2、ワーク3および箔押さえ5を回転させて行う。このとき、溶接に伴って生じる熱の大部分は、図14中に矢印で示すように被溶接部材2から保持具4およびチャック12に伝達される。保持具4に伝達された熱の一部は、貫通孔16内の空気にも伝達され、空気を介して保持具4の外に排出される。
【0032】
このため、本溶接時に熱がワーク3から被溶接部材2を介して保持具4やチャック12などに分散されるから、ワーク3の温度を低く保つことができる。このようにワーク3が過度に熱せられることがないことから、仮止め後のワーク3に僅かに反りや歪みが生じていたとしても、その反りや歪みが強調されるようなことを防ぐことができる。
本溶接が終了した後、3個のチャック12をそれぞれ後退させて被溶接部材2を保持具4から取り外すことにより、ワーク3の溶接工程が終了する。
【0033】
(実施の形態による効果の説明)
この実施の形態によるレーザー溶接用ワーク保持装置1によれば、ワーク3を箔押さえ5によって被溶接部材2に押し付けた状態で浮きや反りの発生を防ぎながら仮止めを行なうことができる。また、箔押さえ5を取外して本溶接を行うときには、溶接部の熱が被溶接部材2から保持具4およびチャック12などに伝達されるから、溶接部の温度を低く保つことができる。
したがって、この実施の形態によれば、円板状の箔からなるワーク3をレーザー溶接時に熱の影響を受け難くなるように保持可能なレーザー溶接用ワーク保持装置を提供することができる。
【0034】
この実施の形態による箔押さえ5と保持具4とは、各々の対向面において、一方(箔押さえ5)に凹部(貫通孔24)が形成され、他方(保持具4)に凹部に嵌入される凸部(タップ20の頭部20b)が形成されている。凹部に凸部が嵌入されることで箔押さえ5と保持具4とが結合される。このため、箔押さえ5を保持具4に確実に組み付けることができ、仮止め時にワーク3が被溶接部材2から離れることを防ぐことができるから、仮止めの信頼性が高くなる。
【0035】
この実施の形態による複数の保持具4は、同形状の3個の保持具4からなり、各保持具は、嵌合部13が箔押さえ5の円環状の外周(フランジ部21)に沿って隣接するよう設置されている。このため、被溶接部材2の周方向の全域から溶接時の熱が保持具4に伝達されるから、本溶接時のワーク3の温度をより一層低く抑えることが可能になる。
【0036】
この実施の形態による被溶接部材2は、円筒状に形成されている。保持具4における被溶接部材2と接する部分(嵌合部13)は、被溶接部材2の外周面と嵌合する形状に形成されている。このため、円筒状の被溶接部材2の外周面と保持具4とが面接触によって接触するようになるから、本溶接時の熱が被溶接部材2から保持具4により一層伝わり易くなる。
【0037】
この実施の形態による被溶接部材2の一端側には、ワーク3を挿入可能な内径のワーク挿入部2aが形成されているとともに、被溶接部材2の他端側には、内径がワーク3の外径より小さい厚肉部2bが形成されている。ワーク挿入部2aと厚肉部2bとの境界には、被溶接部材2の軸線Cとは直交する環状の平面6が形成されている。箔押さえ5は、ワーク挿入部2aに嵌合する形状に形成されかつ環状の平面6に重ねられたワーク3を厚肉部2bと協働して挟む押圧部22を有している。押圧部22を被溶接部材2の周方向に均等に分割する位置に、仮止め用切欠き26がそれぞれ形成されている。
このため、仮止めを仮止め用切欠き26の中にレーザー光33を通して行うことにより、仮止め位置の両側近傍が押圧部22によって環状の平面6に押し付けられた状態で仮止めが実施されるから、ワーク3の仮止め位置が環状の平面6(厚肉部2b)に確実に密着する。
また、この実施の形態によるレーザー溶接用ワーク保持装置1は、円筒状の被溶接部材2の中でワーク3を保持することが可能になる。
【0038】
上述した実施の形態によるレーザー溶接用ワーク保持装置1においては、保持具4に凸部としてのタップ20が設けられ、箔押さえ5に凹部としての貫通孔24が形成されている。しかし、保持具4に凹部としての穴が形成され、箔押さえ5に凸部としてのタップ20を設ける構成を採ることができる。
また、上述した実施の形態においては、レーザー溶接時にワーク3がレーザー照射部32に対して回転する例を示した。しかし、レーザー溶接を行うにあたっては、ワーク3を移動させることなく、レーザー照射部32が移動してレーザー溶接を行う構成でもよい。
さらに、上述した実施の形態によるレーザー溶接用ワーク保持装置1は、3個の保持具4を使用する構成が採られている。しかし、保持具4の数は3個に限定されることはなく、4個以上でもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…レーザー溶接用ワーク保持装置、2…被溶接部材、2a…ワーク挿入部、2b…厚肉部、3…ワーク、4…保持具、5…箔押さえ、6…環状の平面、12…チャック、13…嵌合部、14…取付部、20…タップ、20b…頭部(凸部)、22…押圧部、24…貫通孔(凹部)、26…仮止め用切欠き、31…レーザー溶接装置。
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