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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116091
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】乗物室内構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20230815BHJP
   B60R 5/04 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
B60R13/02 Z
B60R5/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018672
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉樹 幸祐
【テーマコード(参考)】
3D022
3D023
【Fターム(参考)】
3D022BA02
3D022BA06
3D022BA19
3D022BC08
3D022BC18
3D023BA01
3D023BB01
3D023BB07
3D023BD12
3D023BD17
3D023BD28
3D023BE03
3D023BE24
(57)【要約】
【課題】使用目的に応じて部品を所望の位置に取り付け可能であり、かつ、意匠性に優れる乗物室内構造を提供する。
【解決手段】乗物荷室構造1は、板状をなし、乗物2の室内意匠面を構成する板状部10と、第1部品本体部31と、第1部品本体部31から棒状に連なって延びる第1取付部32とを有する第1部品30と、板状部10に設けられ、第1取付部32を嵌入させて第1部品30を任意の位置に取り付け可能とする複数の孔部12と、孔部12に挿抜可能に取り付けられて孔部12を塞ぐ閉塞部材20と、を備え、孔部12はその内面から窪む係合凹部14を有し、閉塞部材20は、孔部12に挿入される閉塞部材本体部21と、閉塞部材本体部21の外面から突出して係合凹部14と係合可能な係合突部22とを有し、係合突部22が係合凹部14と係合することにより、孔部12に対する周方向の位置決めがなされる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状をなし、乗物の室内意匠面を構成する板状部と、
第1部品本体部と、前記第1部品本体部から棒状に延びる第1取付部とを有する第1部品と、
前記板状部に設けられ、前記第1取付部を嵌入させて前記第1部品を任意の位置に取り付け可能とする複数の孔部と、
前記孔部に挿抜可能に取り付けられて前記孔部を塞ぐ閉塞部材と、を備え、
前記孔部はその内面から窪む係合凹部を有し、
前記閉塞部材は、前記孔部に挿入される閉塞部材本体部と、前記閉塞部材本体部の外面から突出して前記係合凹部と係合可能な係合突部とを有し、前記係合突部が前記係合凹部と係合することにより、前記孔部に対する周方向の位置決めがなされる乗物室内構造。
【請求項2】
前記係合突部は、前記閉塞部材を前記孔部に挿入する挿入方向における前記閉塞部材本体部の先端面から角柱状に突出しており、
前記孔部は前記室内意匠面から底部を有して凹状に窪む凹部であって、前記係合凹部は前記底部から窪んで設けられている、請求項1に記載の乗物室内構造。
【請求項3】
第2部品を備え、
前記閉塞部材は、前記第2部品を乗物室内側から取り付け可能とする被取付部を有する請求項1または請求項2に記載の乗物室内構造。
【請求項4】
前記被取付部は、前記第2部品から延びる第2取付部を取り付け可能とする取付孔であって、
前記第2取付部は、その延出方向の先端側に位置する先端側部が、該先端側部より基端側に位置する基端側部の外周面から外側に張り出した形状のものとされ、
前記取付孔は、
前記第2取付部の前記先端側部を挿入可能な挿入孔部と、
前記挿入孔部の孔縁部に連なって形成され、前記基端側部が挿通可能とされるとともに、前記先端側部をその孔縁部に係止可能な係止孔部と、を備えている請求項3に記載の乗物室内構造。
【請求項5】
前記挿入孔部は円形をなし、前記係止孔部は、前記挿入孔部の中心から120度間隔で放射状に3つ配されており、
前記係合突部は、前記閉塞部材本体部における当該閉塞部材本体部を前記孔部に挿入する挿入方向の先端面から正三角柱状に突出しており、
前記挿入孔部の中心から前記係止孔部が配される方向と、前記係合突部の中心軸から当該中心軸に沿って延びる前記係合突部の3つの角部が配される方向とが一致している請求項4に記載の乗物室内構造。
【請求項6】
前記板状部は乗物の荷室の側壁を構成するデッキサイドトリムであり、前記第1部品は、互いに対向する前記デッキサイドトリムを架け渡す架橋部材である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の乗物室内構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、乗物室内構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物室内構造として、特許文献1に記載の技術が知られている。具体的に、特許文献1には、車両荷室の側壁をなす一対のデッキサイドトリムの間に一対の架橋部材を架設し、一対の架橋部材の間に可撓性を有する面状部材を張設することで棚部を形成する技術が開示されている。
【0003】
一方、乗物の室内意匠面に対して、室内から比較的に軽量かつ小型の部品を所望の位置に着脱可能に取り付ける技術が知られている。例えば特許文献2には、ドアトリムに複数の機能部品用取付孔を設け、機能部品から突出する突出部を取付孔に挿通させるとともにスライドさせて孔縁部に係止させることで、所望の位置に機能部品を着脱可能に取り付ける技術が開示されている。
【0004】
また、例えばドアトリムにライン照明を設け、車室内のデザイン性を高める技術も提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-188026号公報
【特許文献2】特開2020-157788号公報
【特許文献3】特開2019-085091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ユーザーの使用目的に応じて、より多様なレイアウトを実現可能な車室内構造が求められている。例えば、上述した棚部を使用目的に応じて所望の位置に付け替えられるようにするために、一対のデッキサイドトリムに架橋部材の両端部を取り付け可能な複数の架橋部材用取付孔を設ける構成が考えられる。一方、デザイン性も重要視されている。
【0007】
しかし、このような複数の架橋部材用取付孔をデッキサイドトリムに設けた場合には、デッキサイドトリムに上述した機能部品用取付孔やライン照明を設け難くなるという問題がある。具体的には、架橋部材用取付孔を設けた位置には機能部品用取付孔やライン照明を設けることができないため、それぞれの取付孔やライン照明の設置位置が制限されるという問題がある。つまり、多様なレイアウトやデザイン性(高い意匠性)の実現が阻害される。
【0008】
本明細書に開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、使用目的に応じて部品を所望の位置に取り付け可能であり、かつ、意匠性に優れる乗物室内構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される技術は、板状をなし、乗物の室内意匠面を構成する板状部と、第1部品本体部と、前記第1部品本体部から棒状に延びる第1取付部とを有する第1部品と、前記板状部に設けられ、前記第1取付部を嵌入させて前記第1部品を任意の位置に取り付け可能とする複数の孔部と、前記孔部に挿抜可能に取り付けられて前記孔部を塞ぐ閉塞部材と、を備え、前記孔部はその内面から窪む係合凹部を有し、前記閉塞部材は、前記孔部に挿入される閉塞部材本体部と、前記閉塞部材本体部の外面から突出して前記係合凹部と係合可能な係合突部とを有し、前記係合突部が前記係合凹部と係合することにより、前記孔部に対する周方向の位置決めがなされる乗物室内構造である。
【0010】
上記構成によれば、第1部品を使用する際に、複数の孔部のうちのいずれかを選択することで、第1部品を使用目的に応じて所望の位置に取り付けることができる。また、第1部品が不要である場合には、第1部品を板状部から取り外すことにより、乗物室内のスペースを広く利用することができる。また、第1部品が取り付けられていない孔部を閉塞部材で塞ぐことができるから、乗物室内の意匠性を向上させることができる。さらに、閉塞部材は孔部に対して周方向に位置決めされる構成であるから、閉塞部材がデザイン的に、あるいは、機能的に方向性を有している場合でも、各閉塞部材を正しい向きで板状部材に取り付けることができ、意匠性をさらに高めることができる。
【0011】
前記係合突部は、前記閉塞部材を前記孔部に挿入する挿入方向における前記閉塞部材本体部の先端面から角柱状に突出しており、前記孔部は前記室内意匠面から底部を有して凹状に窪む凹部であって、前記係合凹部は前記底部から窪んで設けられていてもよい。
【0012】
上記構成によれば、係合突部を閉塞部材本体部の径方向に突出させる構成とした場合と比較して、係合突部および係合凹部が乗物室内の意匠面に現れないため、意匠性が向上する。また、係合突部を本体部の径方向に突出させる構成とした場合、孔部の内面に径方向に窪む係合凹部が形成されるため、孔部に第1部品の第1取付部を取り付けた際に、第1取付部を周方向の全体で保持することができないが、上記構成によれば、第1取付部を周方向の全体で保持することができるから、第1部材の取付状態の安定性に優れる。
【0013】
第2部品を備え、前記閉塞部材は、前記第2部品を乗物室内側から取り付け可能とする被取付部を有していてもよい。
【0014】
上記構成によれば、孔部を閉塞部材で塞いだ状態で、閉塞部材に第2部品を取り付けることができる。つまり、取付部の形状が異なる第1部品と第2部品の2種類の部品を、用途に応じで板状部の所望の位置に取り付けることができる。
【0015】
前記被取付部は、前記第2部品から延びる第2取付部を取り付け可能とする取付孔であって、前記第2取付部は、その延出方向の先端側に位置する先端側部が、該先端側部より基端側に位置する基端側部の外周面から外側に張り出した形状のものとされ、前記取付孔は、前記第2取付部の前記先端側部を挿入可能な挿入孔部と、前記挿入孔部の孔縁部に連なって形成され、前記基端側部が挿通可能とされるとともに、前記先端側部をその孔縁部に係止可能な係止孔部と、を備えていてもよい。
【0016】
上記構成において、板状部に第2部品を取り付ける際には次のようにする。作業者は、乗物室内側から挿入孔部に対して第2取付部を挿入した後、第2取付部を係止孔部側にスライド変位させることで係止孔部に対して第2取付部の基端側部を挿通させる。この結果、第2取付部の先端側部が係止孔部の孔縁部に対して乗物室外側から係止する。これにより、板状部に対して第2部品を取り付けることができる。また、第2部品を取り外す際には、第2取付部を係止孔部から挿入孔部に変位させることで、挿入孔部から第2取付部を引き抜くことができる。このように、上記構成によれば、第2取付部を取付孔に対して挿抜することで、第2部品の着脱を容易に行うことができる。
【0017】
前記挿入孔部は円形をなし、前記係止孔部は、前記挿入孔部の中心から120度間隔で放射状に3つ配されており、前記係合突部は、前記閉塞部材本体部における当該閉塞部材本体部を前記孔部に挿入する挿入方向の先端面から正三角柱状に突出しており、前記挿入孔部の中心から前記係止孔部が配される方向と、前記係合突部の中心軸から当該中心軸に沿って延びる前記係合突部の3つの角部が配される方向とが一致していてもよい。
【0018】
上記構成のように、複数の取付孔を幾何学的な模様とすることで、意匠性をより高くすることができる。また、係止孔部の配置方向と係合突部の角部が配される方向とが一致していることにより、閉塞部材を孔部に対して取り付ける際、閉塞部材および孔部の周方向の向きを感覚的に合わせ易く、取付作業性に優れる。
【0019】
前記板状部は乗物の荷室の側壁を構成するデッキサイドトリムであり、前記第1部品は、互いに対向する前記デッキサイドトリムを架け渡す架橋部材であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本明細書に開示される技術によれば、使用目的に応じて部品を所望の位置に取り付け可能であり、かつ、意匠性に優れる乗物室内構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態1の車両の荷室構造を示す斜視図
図2】車両物の荷室においてデッキサイドトリムに架橋部材と収納部品を取り付けた状態を示す斜視図
図3】デッキサイドトリムおよび閉塞部材の斜視図
図4】デッキサイドトリムおよび閉塞部材の縦断面図
図5】デッキサイドトリムに架橋部材を取り付けた状態の一部拡大縦断面図
図6】収納部材を正面側から視た状態の斜視図
図7】収納部材を背面側から視た状態の斜視図
図8】突出部が挿入孔部に挿入された状態を示す縦断面図
図9】突出部が挿入孔部から係止孔部へ変位した状態を示す縦断面図
図10】取付孔を意匠面側から視た拡大図
図11】取付孔を蓋部の裏面から視た拡大図
図12】実施形態2の車両室内構造であって、支持部材をシートバックボードに取り付けた状態を示す斜視図
図13図12の状態から天板部材を取り付けた状態を示す斜視図
図14】他の実施形態の車両の室内構造を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態1>
実施形態1を図1から図11によって説明する。本実施形態では、乗物室内構造の一例として、自動車等の車両(乗物)2の荷室3を構成する荷室構造1について説明する。尚、矢印方向Rを右、矢印方向Lを左、矢印方向Uを上方、矢印方向Dを下方、矢印方向INを車室内側、矢印方向OUTを車室外側として各図を説明する。
【0023】
図1に示すように、荷室構造1は、車両2の室内において、後部座席4の後方に配された荷室3に設けられている。荷室3は、車両2の後部開口5からアクセス可能とされている。荷室3は、底を構成するデッキボード6と、デッキボード6の左右方向における両端部から立ち上がり、鉛直方向かつ車両前後方向に沿って延在する板状をなして荷室3の左右側の壁を構成するデッキサイドトリム10と、を備える。
【0024】
デッキボード6は、水平方向に沿って延在する板状をなし、取り外しや折り畳みが可能な構成とされている。デッキボード6上には、荷物を載置することができる。デッキボード6の下方には、工具等を収納することができる収納部が設けられている。
【0025】
デッキサイドトリム(板状部の一例)10は板状をなしており、前後方向及び上下方向に規則的に並ぶ複数の孔部12を備えている。孔部12は、デッキサイドトリム10の室内側の板面(意匠面)から円柱をくり抜いた形で凹状に窪んでおり(図3および図4参照)、奥側(車室外側)に円形をなして鉛直方向に延在する底部13を備えている。
【0026】
さらに底部13には、当該底部13から正三角柱をくり抜いた形で凹状に窪む係合凹部14が形成されている。係合凹部14は、その中心軸に沿って延びる2つの角部14Aが水平方向に並び、残りの1つの角部14Aがそれらの下方に配される向きに形成されている。つまり、正面視逆三角形状に形成されている。
【0027】
孔部12と係合凹部14とは、車室内外方向に延びる階段状をなしている。複数の孔部12は、車両2の前後方向に等間隔で並ぶ複数の孔部12の列(孔部群)が上下方向に複数段(本実施形態では2段)並ぶ形で配されている。また孔部12は、これら複数段並んだ孔部群の下方と、天井近くにも設けられている(図1参照)。
【0028】
これらの孔部12には、架橋部材(第1部品の一例)30が取り付け可能とされている。架橋部材30は全体として長尺な丸棒状をなし、その両端部をそれぞれ孔部12内に嵌入することにより、デッキサイドトリム10に取り付け可能とされる。つまり、図2に示すように、架橋部材30は、その長手方向を車幅方向に一致させた姿勢で一対のデッキサイドトリム10の間に架設され、デッキボード6の上方に配される。
【0029】
架橋部材30は、伸縮可能とされている。具体的には、架橋部材30は、丸パイプ状をなす棒状部(第1部品本体部の一例)31と、棒状部31の両端に外嵌され、一端が閉じた筒状をなす伸縮部(第1取付部の一例)32とを備える。伸縮部32の内部にはバネ33が設けられており(図5参照)、伸縮部32を棒状部31から離れる方向(延びる方向)に付勢している。
【0030】
架橋部材30がデッキサイドトリム10に取り付けられる際には、伸縮部32に配されたバネ33が圧縮され、架橋部材30は縮んだ状態とされる。一方、架橋部材30が孔部12内に嵌入された状態では、伸縮部32がバネ33により棒状部31から離れる方向(車幅方向の外側に伸びる方向)に付勢されることで伸びた状態とされ、架橋部材30が一対のデッキサイドトリム10,10の間に架け渡される。なお、伸縮部32の外径は、孔部12の内径より僅かに小さい寸法に設定されている。架橋部材30は、デッキサイドトリム10に取りつけられた状態において、その軸線周りに回転自在な状態とされている。
【0031】
架橋部材30には、例えばシートやフック等を引っ掛けることができる。また、デッキサイドトリム10に一対の架橋部材30を並んで架設した場合には、それらの上部に板状部材を載置したり膜体を張設することで、棚部が設置可能とされている(図2参照)。
【0032】
架橋部材30が取り付けられていない孔部12には、閉塞部材20が取り付け可能とされている。閉塞部材20は、中空の円柱状をなして上述した孔部12に嵌入される本体部(閉塞部材本体部の一例)21と、本体部21の底部23(孔部12の底部13と対向する底部23)から孔部12の奥方に向けて正三角柱状に突出する係合突部22と、を備えて構成されている。
【0033】
本体部21の外径寸法は、孔部12の内径寸法と同等あるいは僅かに小さい寸法に設定されている。また、係合突部22の外径寸法は、上述した係合凹部14の内径寸法と同等あるいは僅かに小さい寸法に設定されている。つまり、閉塞部材20が孔部12に挿入された状態において、閉塞部材20は全体がデッキサイドトリム10の孔部12および係合凹部14内にぴったりと嵌め入れられるようになっている(図4の破線参照)。なお、閉塞部材20が孔部12に嵌入された状態において、本体部21のうち係合突部22が設けられた底部23と反対側の底部(以下蓋部24とする)の外面は、デッキサイドトリム10の意匠面と面一となるように設定されている。
【0034】
上述した閉塞部材20の蓋部24には、例えば小物を収容する収納部品(第2部品の一例)40を取り付けるための取付孔(被取付部の一例)25が貫通して形成されている。以下、説明の便宜上、取付孔25に先立って収納部品40について説明する。
【0035】
本実施形態の収納部品40は、図6および図7に示すように、上方に開口42を有する略直方体形状の箱型の収納部41を備えている。収納部41のうちデッキサイドトリム10(閉塞部材20)に向けられる背面43には、例えば図7に示すように、デッキサイドトリム10に向けて延びる突出部(第2取付部の一例)45が設けられている。
【0036】
突出部45は、例えば図7に示すように、収納部41の背面43から外側に向けて略垂直方向に延びている。本実施形態において、突出部45は、収納部41の背面43おいて、長手方向の両端部の上方に2つ設けられている。これら2つの突出部45が一組となって、収納部品40および収納物の重量を安定して支持できるように構成されている。
【0037】
突出部45はそれぞれ、図9に示すように、基端側(背面43側)から順に基端部46と、中間部(基端側部の一例)47と、先端部(先端側部の一例)48と、を備える。これら基端部46と、中間部47と、先端部48とは、それぞれ円柱状をなしている。基端部46の直径D1は、中間部47の直径D2よりも大きいものとされ、先端部48の直径D3は、基端部46の直径D1よりも大きいものとされる。つまり、先端部48の直径D3は、中間部47の直径D2よりも大きいものとされる。
【0038】
収納部品40は、収納部41の開口42が上方を向き、背面43がデッキサイドトリム10に沿う(略平行となる)形で、突出部45により閉塞部材20の蓋部24に設けられた後述する取付孔25に対して着脱可能に取り付けられる。一組の突出部45は、それぞれが、複数の取付孔25のうちいずれか一つの取付孔25に対して選択的に挿入される。つまり、一組の突出部45を複数の取付孔25のいずれか2つに挿抜することで、収納部品40を孔部12に嵌入された状態の閉塞部材20(デッキサイドトリム10)に対して着脱することができる。そして、複数の取付孔25のうち、どの取付孔25を選択するかによって、収納部品40のデッキサイドトリム10に対する取り付け位置を変更することができる。
【0039】
次に、取付孔25について詳細に説明する。取付孔25は、閉塞部材20の蓋部24を貫通するように形成されており、図10に示すように、収納部品40の突出部45の先端部48を挿入することが可能な挿入孔部26と、挿入孔部26の孔縁部に形成され、挿入孔部26と連通すると共に突出部45の中間部47が挿入される係止孔部27と、を有する。なお、デッキサイドトリム10を裏面側(室外側)から視た図を図11に示す。
【0040】
挿入孔部26は円形状をなしており、係止孔部27は、挿入孔部26の中心を中心にして120度間隔で放射状に3つ配されている。係止孔部27は、挿入孔部26の径方向に沿って延びる細長い長孔である。挿入孔部26の中心から係止孔部27が配される方向と、上述した係合突部22の中心軸から該係合突部22の中心軸に沿って延びる3つの角部22Aが配される方向とは、一致するように設定されている(図10参照)。
【0041】
図10に示すように、挿入孔部26の直径B1は、先端部48の直径D3よりもやや大きい値に設定されている。このため、挿入孔部26に先端部48を挿通することが可能となっている。また、係止孔部27の幅B2は、中間部47の直径D2とほぼ同じであるか、または直径D2よりも僅かに大きいものとされる。つまり、中間部47は、係止孔部27内において、係止孔部27の長手方向に沿って変位可能となっている。また、係止孔部27の幅B2は、先端部48の直径D3よりも小さいものとされる。このことにより、先端部48(換言すれば突出部45)は、係止孔部27に変位された状態では室内側への抜け止めがなされる。
【0042】
デッキサイドトリム10の孔部12に閉塞部材20が取り付けられた状態において、係合突部22は、係合凹部14の配置に倣って、当該係合突部の22中心軸に沿って延びる2つの角部22Aが水平方向に並び、残りの1つの角部22Aがそれらの下方に配される向きで係合凹部14内に嵌入されている。すなわち、上述したように、挿入孔部26の中心から係止孔部27が配される方向と、係合突部22の3つの角部22Aが配される方向とは、一致するように設定されているから、閉塞部材20の蓋部24に設けられた取付孔25は、3つの係止孔部27のうちの2つが挿入孔部26から斜め上方に延び、残りの1つの係止孔部27が挿入孔部26から下方に向けて延びるY字型となるように、周方向の位置決めがなされている。
【0043】
また、デッキサイドトリム10の孔部12に閉塞部材20が取り付けられた状態において、複数の取付孔25は、車両前後方向に等間隔で並ぶ複数の取付孔25の列(取付孔群)が上下方向に複数段並ぶ形で配される。また取付孔25は、これら複数段並んだ取付孔群の下方と、天井近くにも設けられている。
【0044】
本実施形態では、図8に示すように、収納部品40の突出部45を閉塞部材20の蓋部24の挿入孔部26に挿入した後、図9に示すように、挿入孔部26の周囲にある3つの係止孔部27のうちいずれかの係止孔部27(本実施形態では、下方の係止孔部27)側にスライド変位させることで、中間部47が係止孔部27に嵌合されると共に、突出部45の先端部48が蓋部24における係止孔部27の孔縁部に対して裏面側(室外側)から係止する構成となっている(図9参照)。
【0045】
また、図11に示すように、蓋部24の裏面には、それぞれの係止孔部27の先端(最奥)付近の孔縁部において、係止孔部27を挟むように一対の突起部28,28が設けられている。係止孔部27の孔縁部に係止した突出部45の先端部48は、これらの一対の突起部28,28に対して裏面側(室外側)から当接するようになっている(図9参照)。したがって、突出部45が挿入孔部26から係止孔部27に変位すると、突出部45の先端部48は突起部28の表面に摺動しつつ突起部28に乗り上げる。そのため、ユーザが収納部41を手に持ち、突出部45が挿入孔部26が係止孔部27に変位するように収納部41をスライド変位させると、先端部48と突起部28との接触による節度感を得ることができる。これにより、ユーザは、室内側から突出部45を目視できない状態にあっても、突出部45が係止孔部27に変位して係止されたことを容易に知覚することができる。
【0046】
また、図8および図9に示すように、突出部45の基端部46には、円環状の軟質材49(ワッシャ)が装着されている。軟質材49は、基端部46よりも軟らかい材質の材料によって構成されている。これに限定されるものではないが、本実施形態の軟質材49は、シリコンゴム等の合成ゴムによって構成されている。軟質材49は、基端部46と蓋部24との間に介在されている。
【0047】
軟質材49は、図8に示すように、突出部45が挿入孔部26に挿入されている状態において、基端部46と蓋部24との間に自然状態で介在する厚さ寸法に設定されている。一方、図9に示すように、突出部45が係止孔部27に挿入され、突出部45の先端部48が突起部28に乗り上げた状態においては、軟質材49は、その厚さ方向(車幅方向)について自然状態よりもわずかに縮んだ状態で、基端部46と蓋部24との間に介在している。つまり、一対の突起部28,28と先端部48とは、軟質材49の弾性力により互いに押し当てられた状態とされており、突起部28と先端部48との間に生じる摩擦によって、先端部48が挿入孔部26側に変位する事態が規制されている。
【0048】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態の車両荷室構造1は、板状をなし、車両2の室内意匠面を構成するデッキサイドトリム10と、棒状部31と、棒状部31から棒状に連なって延びる伸縮部32とを有する架橋部材30と、デッキサイドトリム10に設けられ、伸縮部32を嵌入させて架橋部材30を任意の位置に取り付け可能とする複数の孔部12と、孔部12に挿抜可能に取り付けられて孔部12を塞ぐ閉塞部材20と、を備え、孔部12はその内面から窪む係合凹部14を有し、閉塞部材20は、孔部12に挿入される本体部21と、本体部21の外面から突出して係合凹部14と係合可能な係合突部22とを有し、係合突部22が係合凹部14と係合することにより、孔部12に対する周方向の位置決めがなされる。
【0049】
上記構成によれば、架橋部材30を使用する際に、複数の孔部12のうちのいずれかを選択することで、架橋部材30を使用目的に応じて所望の位置に取り付けることができる。また、架橋部材30が不要である場合には、架橋部材30をデッキサイドトリム10から取り外すことにより、車両室内のスペースを広く利用することができる。また、架橋部材30が取り付けられていない孔部12を閉塞部材20で塞ぐことができるから、車両室内の意匠性を向上させることができる。さらに、閉塞部材20は孔部12に対して周方向に位置決めされる構成であるから、閉塞部材20がデザイン的に、あるいは、機能的に方向性を有している場合でも、各閉塞部材20を正しい向きでデッキサイドトリム10に取り付けることができ、意匠性をさらに高めることができる。
【0050】
係合突部22は、閉塞部材20を孔部12に挿入する挿入方向における本体部21の先端面から角柱状に突出しており、孔部12は室内意匠面から底部13を有して凹状に窪む凹部であって、係合凹部14は底部13から窪んで設けられている。
【0051】
上記構成によれば、係合突部22を本体部21の径方向に突出させる構成とした場合と比較して、係合突部22および係合凹部14が車両室内の意匠面に現れないため、意匠性が向上する。また、係合突部22を本体部21の径方向に突出させる構成とした場合、孔部12の内面に径方向に窪む係合凹部14が形成されるため、孔部12に架橋部材30の伸縮部32を取り付けた際に、伸縮部32を周方向の全体で保持することができないが、上記構成によれば、第1取付部を周方向の全体で保持することができるから、架橋部材30の取付状態の安定性に優れる。
【0052】
収納部品40を備え、閉塞部材20は、収納部品40を車両室内側から取り付け可能とする取付孔25を有している。
【0053】
上記構成によれば、孔部12を閉塞部材20で塞いだ状態で、閉塞部材20に収納部品40を取り付けることができる。つまり、取付部の形状が異なる架橋部材30と収納部品40の2種類の部品を、用途に応じでデッキサイドトリム10の所望の位置に取り付けることができる。
【0054】
収納部品40の突出部45は、その延出方向の先端側に位置する先端部48が、該先端部48より基端側に位置する中間部47の外周面から外側に張り出した形状のものとされ、取付孔25は、突出部45の先端部48を挿入可能な挿入孔部26と、挿入孔部26の孔縁部に連なって形成され、中間部47が挿通可能とされるとともに、先端部48をその孔縁部に係止可能な係止孔部27と、を備えている。
【0055】
上記構成において、デッキサイドトリム10に収納部品40を取り付ける際には次のようにする。作業者は、車両室内側から挿入孔部26に対して突出部45を挿入した後、突出部45を係止孔部27側にスライド変位させることで係止孔部27に対して突出部45の中間部47を挿通させる。この結果、突出部45の先端部48が係止孔部27の孔縁部に対して車両室外側から係止する。これにより、デッキサイドトリム10に対して収納部品40を取り付けることができる。また、収納部品40を取り外す際には、突出部45を係止孔部27から挿入孔部26に変位させることで、挿入孔部26から突出部45を引き抜くことができる。このように、上記構成によれば、突出部45を取付孔25に対して挿抜することで、収納部品40の着脱を容易に行うことができる。
【0056】
挿入孔部26は円形をなし、係止孔部27は、挿入孔部26の中心から120度間隔で放射状に3つ配されており、係合突部22は、本体部21における当該本体部21を孔部12に挿入する挿入方向の先端面から正三角柱状に突出しており、挿入孔部26の中心から係止孔部27が配される方向と、係合突部22の中心軸から当該中心軸に沿って延びる前記係合突部22の3つの角部22Aが配される方向とが一致している。
【0057】
上記構成のように、複数の取付孔25を幾何学的な模様とすることで、意匠性をより高くすることができる。また、係止孔部27の配置方向と係合突部22の角部22Aが配される方向とが一致していることにより、閉塞部材20を孔部12に対して取り付ける際、閉塞部材20および孔部12の周方向の向きを感覚的に合わせ易く、取付作業性に優れる。
【0058】
<実施形態2>
次に、実施形態2を図12および図13によって説明する。本実施形態の車両室内構造(乗物室内構造)7は、車両用シート8のシートバックボード9の一部を構成する板状の取付ボード(板状部の一例)60と、取付ボード60に設けられた孔部62に対して挿抜可能に取り付けられる閉塞部材70と、取付ボード60に対して車室内側(乗物室内側)の面に配されると共に、孔部62に取り付け可能とされた支持部材(第1部品の一例)81と、取付ボード60に設けられた取付孔65に取り付け可能とされた天板部材(第2部品の一例)82と、を備える。
【0059】
取付ボード60は、シートバックの一部を構成しており、シートバックボード9の中央部に設けられた凹部(図示せず)の開口を塞ぐように設けられている。この取付ボード60のうち車室内側に配される面は、車両の室内意匠面を構成している。なお、本実施形態において室内意匠面とは、車体に内張りされる内装材に限らず、シートの外面等、室内を構成する全ての部材の外面を含むものとする。
【0060】
取付ボード60は、上下方向および左右方向に規則的に並ぶ複数の孔部62を備えている。具体的には、車両幅方向に並ぶ一対の孔部62が、上下方向に4組、等間隔で並んで設けられている。これらの孔部62は、上記実施形態1の孔部12と同様の構成とされている。つまり孔部62は、取付ボード60の室内側の板面(意匠面)から円柱形状に凹状に窪んでおり、孔部62の底部には、当該底部から正三角柱形状に凹状に窪む係合凹部(図示せず)が設けられている。係合凹部の角部は正面視逆三角形状に配置されている。これらの孔部62には、実施形態1の閉塞部材20と同じ構成の閉塞部材70が挿抜可能に取り付けられる。閉塞部材70の蓋部74には、取付孔75が設けられている。
【0061】
また取付ボード60には、閉塞部材70の蓋部74に設けられた取付孔75と同形同大の多数の取付孔65が板面を貫通して形成されている。つまり取付孔65は、3つの係止孔部のうちの2つが挿入孔部から斜め上方に延び、残りの1つの係止孔部が挿入孔部から下方に向けて延びるY字型となる向きに形成されている。これらの取付孔65は、周方向に位置決めされた閉塞部材70の取付孔64とともに規則的に並ぶように間隔が設定されており、美しい意匠面を構成している。
【0062】
取付ボード60には、テーブル80が着脱可能に取り付けられる。テーブル80は、略U形状の支持部材81と、支持部材81の上面に配される天板部材82とから構成されている。
【0063】
具体的には、支持部材81の両端部は同方向に向けて延びており、それら両端部の間の寸法は、上述した一対の孔部62の間の寸法と同等に設定されている。つまり、支持部材81の両端部は、任意の高さの一対の孔部62に取り付け可能とされている。
【0064】
一方、天板部材82は支持部材81の外縁部に概ね沿った形状とされ、支持部材81に載置された状態において取付ボード60に突き当てられる端縁部の両端部には、板面に沿って取付ボード60に向けて突出する突出部(図示せず)が設けられている。これら突出部は、取付ボード60に設けられた多数の取付孔65の2つに嵌め入れることが可能な間隔で設けられている。また、これらの取付部は実施形態1の収納部品40の突出部45と同じ形状とされている。すなわち、取付ボード60に設けられた取付孔65に取り付け可能とされている。
【0065】
このような本実施形態の車両室内構造7は、支持部材81を単独で使用することも可能であり、例えば実施形態1に記載したような種々の機能部品を取付ボード60の任意の位置に取り付けることが可能である。
【0066】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0067】
(1)上記実施形態では、閉塞部材20の本体部21が孔部12にぴったり嵌め入れられる円柱状とされた形態を示したが、例えば、閉塞部材の本体部が孔部内で回転可能な多角形状とされた場合も、係合突部を設けることにより、周方向の位置決めを行うことができる。また逆に、孔部が多角形状とされ、本体部が円柱状とされた場合にも本明細書に記載の技術を適用することができる。
【0068】
(2)上記実施形態では、係合突部22が閉塞部材20の底部23に設けられ、孔部12の底部13に設けられた係合凹部14に嵌め入れられる形態を示したが、係合突部を本体部の径方向に突出させ、孔部の径方向に窪む係合凹部と係合させる構成としてもよい。
【0069】
(3)上記実施形態では、収納部品40に設けた突出部45を閉塞部材20に設けた取付孔25に取り付ける構成を示したが、部品の閉塞部材に対する取付方法は本実施形態に限るものではない。例えば、部材を閉塞部材に設けたフックに引っ掛ける構成とすることができる。
【0070】
(4)上記実施形態では、閉塞部材20に収納部品40を取り付け可能な形態を示したが、閉塞部材は部品が取り付け可能な構成でなくてもよい。例えば、閉塞部材に模様を設けたり、ライン照明を設ける等、閉塞部材自体が方向性を有する場合に、本明細書に開示される技術を適用することができる。
【0071】
(5)取付孔25の形態は、上記実施形態に限るものではない。また、取付孔を上記実施形態のようにした場合でも、係合突部は三角柱状でなくてもよく、三角柱状とした場合でも、係合突部の角部の配される方向と取付孔の係止孔部が配される方向とが一致していなくてもよい。
【0072】
(6)乗物室内構造は、荷室やシートバックに限らず、例えば、ドアインナパネルやインパネ等(図14参照)、乗物室内のいずれの箇所にも適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1:荷室構造(乗物室内構造)、2:車両(乗物)、3:荷室、6:デッキボード、7:車両室内構造(乗物室内構造)、10:デッキサイドトリム(板状部)、12,62:孔部、13:底部、14:係合凹部、20,70:閉塞部材、21:本体部(閉塞部材本体部)、22:係合突部、22A:角部、23:底部、24,74:蓋部、25,75:取付孔(被取付部)、26:挿入孔部、27:係止孔部、30:架橋部材(第1部品)、31:棒状部(第1部品本体部)、32:伸縮部(第1取付部)、40:収納部品(第2部品)、45:突出部(第2取付部)、47:中間部(基端側部)、48:先端部(先端側部)、60:取付ボード(板状部)、81:支持部材(第1部品)、82:天板部材(第2部品)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14