(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116115
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20230815BHJP
【FI】
H02M3/00 H
H02M3/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018714
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 仁
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730AS01
5H730DD04
5H730FD61
5H730FG05
5H730XX04
5H730XX19
5H730XX26
5H730XX38
5H730XX41
(57)【要約】
【課題】
電力変換回路の発熱を抑制して電源装置を搭載するシステムの可用性の向上を図ることができる電源装置を提供する。
【解決手段】
スイッチング素子を有し、入力される入力電圧をスイッチング素子のスイッチング動作によって電力変換し、当該電力変換された電圧を出力電圧として出力する電力変換回路と、電力変換回路内の温度を検出し、検出された温度を示す検出温度信号を生成する温度検出回路と、検出温度信号に応じてスイッチング素子のスイッチング周波数を制御する制御信号を生成する制御回路と、を備え、スイッチング素子は制御信号に応じたスイッチング周波数でスイッチング動作する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子を有し、入力される入力電圧を前記スイッチング素子のスイッチング動作によって電力変換し、当該電力変換された電圧を出力電圧として出力する電力変換回路と、
前記電力変換回路内の温度を検出し、検出された温度を示す検出温度信号を生成する温度検出回路と、
前記検出温度信号に応じて前記スイッチング素子のスイッチング周波数を制御する制御信号を生成する制御回路と、を備える電源装置であって、
前記スイッチング素子は前記制御信号に応じた前記スイッチング周波数でスイッチング動作することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記検出温度信号が示す検出温度が制限温度以上であるときには前記電力変換回路の温度が制限温度以下となるように前記スイッチング素子のスイッチング周波数の低下を指定するように前記制御信号を生成することを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記温度検出回路はサーミスタを有し、前記サーミスタは前記スイッチング素子の近傍に設けられることを特徴とする請求項1又は2記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換回路の発熱抑制機能を備えた電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、入力電圧が与えられる入力端子と平滑回路との間に設けられたスイッチング素子がドライバによってスイッチング動作するスイッチングレギュレータ型の電源装置が開示されている。この電源装置においては、TSD(Thermal Shut Down)回路(過熱保護回路)が設けられ、TSD回路は、電源装置のスイッチング素子を含むレギュレータICからなる電力変換回路の所定箇所の温度が所定の温度以上になったことを検知すると、過熱検出信号をドライバに与え、過熱検出信号に応答してドライバはスイッチング素子のスイッチング動作を停止させる。このようにしてレギュレータICが所定の温度以上に上昇することが防止され、過熱保護が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された電源装置におけるTSD回路による加熱保護動作においては、電力変換回路の所定箇所の温度が所定の温度に達するとスイッチング素子のスイッチング動作を停止させるので、電源装置を搭載するシステム全体の可用性が高まらないという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、このような各課題に着目し、電力変換回路の発熱を抑制して電源装置を搭載するシステムの可用性の向上を図ることができる電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電源装置は、スイッチング素子を有し、入力される入力電圧を前記スイッチング素子のスイッチング動作によって電力変換し、当該電力変換された電圧を出力電圧として出力する電力変換回路と、前記電力変換回路内の温度を検出し、検出された温度を示す検出温度信号を生成する温度検出回路と、前記検出温度信号に応じて前記スイッチング素子のスイッチング周波数を制御する制御信号を生成する制御回路と、を備える電源装置であって、前記スイッチング素子は前記制御信号に応じた前記スイッチング周波数でスイッチング動作することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電源装置によれば、スイッチング素子を含む電力変換回路内の温度を制限温度以下に維持することができるので、電力変換回路の過剰な発熱により制限温度を越えることを抑制することができる。これにより電源装置を搭載するシステムにおいてシステムの停止を回避し、又はシステム停止までの時間を確保することができるので、システムの可用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の電源装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1の電源装置に制御ICを用いた構成を示す回路図である。
【
図3】
図1の電源装置内の温度検出回路の構成例を示す回路図である。
【
図4】
図1及び
図2の電源装置の周囲温度、温度検出対象の温度、スイッチング素子のスイッチング周波数、並びにサーミスタ及び並列回路の抵抗値の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0010】
図1は本発明による電源装置の概略構成を示し、
図2は
図1の電源装置に制御ICを用いた構成を示している。かかる電源装置は、電力変換回路11と、制御回路12と、温度検出回路13とを備えている。
【0011】
電力変換回路11は、内部にはスイッチング素子21を有するスイッチングレギュレータである。スイッチング素子21は、例えば、MOSFETである。スイッチング素子21は、
図1及び
図2には接続関係を示していないが、上述した特許文献1に示されたスイッチング素子と同様に、電力変換回路11の入力端子INと出力端子OUTとの間に設けられている。電力変換回路11は、入力端子INに印加される直流電圧である入力電圧をスイッチング素子21のスイッチング動作によって電力変換し、電力変換した電圧を出力電圧として出力端子OUTに供給する。電力変換回路11では、例えば、出力電圧が基準電圧に等しくなるようにスイッチング周期のデューティ比(スイッチング素子21のオン期間とオフ期間の比率)が制御される。
【0012】
温度検出回路13は温度検出素子としてサーミスタTH1を有し、サーミスタTH1は電力変換回路11内に設けられ、電力変換回路11内の温度を検出する。サーミスタTH1は与えられた温度に対応した抵抗値を両端間に得る素子である。本実施例では、サーミスタTH1はその両端間の抵抗値を検出温度の上昇に従って増加させる素子である。サーミスタTH1は電力変換回路11内において温度検出対象のスイッチング素子21の近傍(接した状態を含む)に配置され、電力変換回路11内の温度としてスイッチング素子21の温度又はその周囲温度を検出する。スイッチング素子21はスイッチング周波数が高くなるほど発熱する部品であるので温度検出対象となるが、温度検出対象はスイッチング周波数が高くなるほど発熱するならば、電力変換回路11内の他の部品、例えば、スイッチング素子21をスイッチング周波数で駆動するドライバ(図示せず)でも良い。
【0013】
図2に示すように、制御回路12は制御IC(集積回路)22内に形成されている。制御IC22は、電力変換回路11に接続されており、制御信号Scを生成し、その制御信号Scを電力変換回路11に供給する集積回路である。制御信号Scはスイッチング素子21のスイッチング周波数を指示する信号である。
【0014】
制御IC22には抵抗R1が外部接続されている。具体的には抵抗R1の一端が制御IC22の端子DETCに接続され、他端は接地接続されている。または、抵抗R1はサーミスタTH1と並列に接続されている。制御IC22は、正確には制御回路12の他に、温度検出回路13の一部を含んでいる。
【0015】
例えば、
図3に示すように、温度検出回路13は、一定の電圧Vccを内部抵抗R2(又は定電流源)を介して端子DETCと接地と間に、すなわち抵抗R1及びサーミスタTH1の並列回路に印加する構成である。この回路構成によりサーミスタTH1による検出温度に応じた電圧値を端子DETCで生成することを可能にしている。端子DETCの電圧値は
図2では検出温度信号Sdtとして示している。
【0016】
制御IC22では検出温度信号Sdtに基づいて上述した制御信号Scが生成される。具体的には、温度検出対象の温度が電源装置の設計上の最高温度(以下、制限温度と称す)を越える場合に、サーミスタTH1の抵抗値が上昇し始める。検出温度信号Sdtの電圧値の上昇に従って制御IC22から生成される制御信号Scが、電力変換回路11のスイッチング素子21のスイッチング周波数を低く設定させることになる。
【0017】
電力変換回路11は、例えば、スイッチング周波数、すなわちデューティ周期を決定するクロック信号生成回路(図示せず)を有している。温度検出対象の温度が制限温度に達した場合にそのクロック信号生成回路によって生成されるクロック信号の周波数が通常時の周波数より低く設定され、上述したドライバはその低く設定されたクロック信号に対応したスイッチング周波数でスイッチング素子21を駆動する。
【0018】
次に、かかる構成を有する電源装置の動作として温度検出対象(スイッチング素子21)の周囲温度が上昇する場合について
図4を用いて説明する。
図4の(A)はサーミスタTH1が検出する温度検出対象(スイッチング素子21)の周囲温度を示し、
図4の(B)は温度検出対象の温度を示し、
図4の(C)はスイッチング周波数を示し、
図4の(D)はサーミスタTH1の抵抗値と、抵抗R1及びサーミスタTH1の並列回路の抵抗値とを示している。また、
図4においてt1~t7は期間を示している。
【0019】
期間t1は通常時である。期間t1では周囲温度及び温度検出対象の温度が一定である。サーミスタTH1の抵抗値や抵抗R1及びサーミスタTH1の並列回路の抵抗値に変化はない。よって、制御IC22から出力される制御信号Scは通常時のスイッチング周波数を示すことになる。
【0020】
期間t2では
図4の(A)に示すように、周囲温度が上昇していくことに伴い、温度検出対象の温度が上昇していく。しかしながら、期間t2では温度検出対象の温度が制限温度を越えていないため、サーミスタTH1の抵抗値や抵抗R1及びサーミスタTH1の並列回路の抵抗値に変化はない。制御IC22の端子DETCに供給される検出温度信号Sdtの電圧値も変化しない。よって、制御IC22から出力される制御信号Scは通常時のスイッチング周波数を示し、スイッチング素子21のスイッチング周波数を継続している。
【0021】
期間t3では期間t2から継続して周囲温度が上昇していく。周囲温度の上昇に伴い、温度検出対象の温度も更に上昇することになる。これにより、温度検出対象の温度が制限温度に達しているため、サーミスタTH1の抵抗値が
図4の(D)に示すように増加変化を始める。サーミスタTH1の抵抗値の増加に伴い、抵抗R1とサーミスタTH1との並列回路の抵抗値も増加する。これにより制御IC22の端子DETCに供給される検出温度信号Sdtの電圧値が上昇する。
【0022】
検出温度信号Sdtの電圧値の上昇は制御IC22から出力される制御信号Scに反映し、期間t3では
図4の(C)に示すように制御IC22から出力される制御信号Scに応じてスイッチング素子21のスイッチング周波数の低下が始まる。スイッチング素子21のスイッチング周波数が低下すると、温度検出対象の発熱が弱まることになる。周囲温度が上昇しながらも、温度検出対象の発熱が弱まることで、温度検出対象のスイッチング素子21の温度は制限温度を保持するのである。
【0023】
期間t4では周囲温度の上昇が止まり、高温の周囲温度が維持されている状態である。この状態下では周囲温度の温度上昇が止まったことによりサーミスタTH1の抵抗値の増加が停止する。それに伴い、抵抗R1とサーミスタTH1との並列回路の抵抗値の増加も止まり、制御IC22の端子DETCに供給される検出温度信号Sdtの電圧値の上昇も止まる。よって、期間t3から継続していたスイッチング周波数の低下は制御IC22から出力される制御信号Scに応じて止まり、スイッチング周波数は通常時からは低下した状態で一定の周波数を保持する。期間t4では期間t3と同様にスイッチング周波数の低下による温度検出対象の発熱の弱まりによって温度検出対象は制限温度を保持する。
【0024】
期間t5では周囲温度が高温から低下し始める。期間t5の状態は期間t3と対照的である。期間t5では、周囲温度の低下に伴い、サーミスタTH1の抵抗値が
図4の(D)に示すように減少変化を始める。サーミスタTH1の抵抗値の減少に伴い、抵抗R1とサーミスタTH1との並列回路の抵抗値も減少する。これにより制御IC22の端子DETCに供給される検出温度信号Sdtの電圧値が降下する。
【0025】
検出温度信号Sdtの電圧値の降下は制御IC22から出力される制御信号Scに反映され、期間t5では
図4の(C)に示すように制御IC22から出力される制御信号Scに応じてスイッチング素子21のスイッチング周波数の上昇が始まる。温度検出対象のスイッチング素子21のスイッチング周波数は通常時に戻っていくので、周囲温度が低下しても温度検出対象の発熱が強まり、温度検出対象の温度は制限温度を保持する。
【0026】
期間t6では期間t5から継続して周囲温度が温度低下している。制御IC22から出力される制御信号Scに応じてスイッチング素子21のスイッチング周波数は通常時に戻り、温度検出対象の温度が制限温度を下回るため、動作は通常時と同様である。
【0027】
期間t7は期間t1と同じであり、元の通常時の状態に戻ったことを示している。
【0028】
このように実施例においては、温度検出対象のスイッチング素子21の周囲温度が上昇している状態では周囲温度の上昇時に周囲温度がスイッチング素子21の温度を上昇させる。サーミスタTH1の抵抗値が増加して検出温度信号Sdtが示す検出温度がスイッチング素子21の制限温度に達すると、制御IC22はスイッチング素子21のスイッチング周波数を低下させるように制御信号Scを生成する。制御信号Scに応じてスイッチング素子21のスイッチング周波数が低下するとスイッチング素子21の発熱が弱まる。
【0029】
よって、スイッチング素子21の温度は制限温度以下に維持されるので、スイッチング素子21を含む電力変換回路の過剰な発熱により制限温度を超えることを抑制することができる。これにより電源装置を搭載するシステムにおいてシステムの停止を回避し、又はシステム停止までの時間を確保することができるので、システムの可用性を高めることができる。
【0030】
なお、上記した実施例においては、サーミスタTH1はその両端間の抵抗値を検出温度の上昇に従って増加させる素子として示されたが、抵抗値を検出温度の上昇に従って低下させる素子でも良い。
【0031】
上記した実施例においては、温度検出素子としてサーミスタを用いた例を示したが、温度検出素子には他の素子を用いることができる。また、複数の温度検出素子を用いて電力変換回路の温度を検出しても良い。
【0032】
また、上記した実施例においては、電力変換回路内の単一の部品(スイッチング素子21)を温度検出対象としているが、複数の部品を温度検出対象としても良い。
【符号の説明】
【0033】
11 電力変換回路
12 制御回路
13 温度検出回路
21 スイッチング素子
22 制御IC
IN 入力端子
OUT 出力端子
R1 抵抗
TH1 サーミスタ