(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116124
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】インシュレータ、ステータ、及び電動モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/46 20060101AFI20230815BHJP
H02K 3/52 20060101ALI20230815BHJP
H02K 3/34 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
H02K3/46 B
H02K3/46 C
H02K3/52 E
H02K3/34 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018727
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】大堀 竜
(72)【発明者】
【氏名】正田 みのり
(72)【発明者】
【氏名】磯村 結珠
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC16
5H604PB03
5H604QB17
(57)【要約】
【課題】成形精度、組み付け性を向上できるインシュレータ、ステータ、及び電動モータを提供する。
【解決手段】インシュレータ26は、ステータコアの軸方向両側から装着される第1インシュレータ61及び第2インシュレータ62を備える。第1インシュレータ61は、第1コア端面被覆部65と、第1スカート部79と、有する。第2インシュレータ62は、第2コア端面被覆部265と、第2スカート部279と、有する。第1コア端面被覆部65のみに一体的に設けられ、コイルの端末部を第1インシュレータ61から外部に引き出すためのコイル引出部77を有する。第2スカート部279の軸方向で最も長い箇所の長さは、第1スカート部79の軸方向で最も長い箇所の長さよりも長い。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のコア本体及び前記コア本体から径方向に沿って突出される複数のティースを有するステータコアに装着され、前記ステータコアと前記ティースに巻回されるコイルとの絶縁を図るための樹脂製のインシュレータであって、
前記ステータコアの軸方向両側から装着される第1インシュレータ及び第2インシュレータを備え、
前記第1インシュレータは、
前記コア本体における軸方向の第1端面を覆う第1コア端面被覆部と、
前記第1コア端面被覆部から前記第2インシュレータに向かって軸方向に延び、前記コア本体の周面及び前記ティースの周方向側面を覆う第1スカート部と、
有し、
前記第2インシュレータは、
前記コア本体における軸方向の前記第1端面とは反対側の第2端面を覆う第2コア端面被覆部と、
前記第2コア端面被覆部から前記第1インシュレータに向かって軸方向に延び、前記コア本体の前記周面及び前記ティースの前記周方向側面を覆う第2スカート部と、
有し、
前記第1コア端面被覆部のみに一体的に設けられ、前記コイルの端末部を前記第1インシュレータから外部に引き出すためのコイル引出部を有し、
前記第2スカート部の軸方向で最も長い箇所の長さは、前記第1スカート部の軸方向で最も長い箇所の長さよりも長い
ことを特徴とするインシュレータ。
【請求項2】
前記第1スカート部の軸方向で最も長い箇所の長さをL1とし、前記第2スカート部の軸方向で最も長い箇所の長さをL2としたとき、長さL1及び長さL2は、
L2≧1.7×L1
を満たす
ことを特徴とする請求項1に記載のインシュレータ。
【請求項3】
前記第2スカート部は、
前記コア本体の前記周面を覆うコア側面被覆部と、
前記ティースのうちの径方向に沿って延びるティース本体の周方向両側面をそれぞれ覆う2つのティース側面被覆部と、
径方向で前記ティース本体の前記コア本体とは反対側のティース先端部に一体成形され周方向に延びる鍔部の外周面を覆う鍔側面被覆部と、
を有し、
前記コア側面被覆部の肉厚は、前記ティース側面被覆部の肉厚よりも厚い
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインシュレータ。
【請求項4】
前記2つのティース側面被覆部は、
軸方向で最も長い箇所の長さが長い長尺ティース側面被覆部と、
軸方向で最も長い箇所の長さが前記長尺ティース側面被覆部よりも短い短尺ティース側面被覆部と、
を含み、
前記コア側面被覆部のうち、周方向中央よりも前記短尺ティース側面被覆部寄りに形成され、前記コア側面被覆部の他の部位の肉厚よりも厚い厚肉部を有し、
前記厚肉部は、前記コア側面被覆部の軸方向全体に渡って延びている
ことを特徴とする請求項3に記載のインシュレータ。
【請求項5】
前記2つのティース側面被覆部は、前記コア側面被覆部から径方向内側に向かって延びており、
前記コア側面被覆部は、
周方向中央から周方向で隣り合う前記ティース側面被覆部に向かって延びる2つの第1側面被覆部と、
前記第1側面被覆部から前記ティース側面被覆部に向かってさらに延び、前記ティース側面被覆部に連結される第2側面被覆部と、
を有し、
2つの前記第1側面被覆部の間の角度は、前記第1側面被覆部と前記第2側面被覆部との間の角度よりも大きく、
前記第1側面被覆部と前記第2側面被覆部との接続部は、前記ティース本体の前記周方向側面と平行で前記鍔側面被覆部の周方向端部を通る直線上に位置しており、
前記第1側面被覆部の前記第2側面被覆部側の端部に、前記厚肉部が形成されている
ことを特徴とする請求項4に記載のインシュレータ。
【請求項6】
前記長尺ティース側面被覆部の肉厚は、前記短尺ティース側面被覆部の肉厚よりも厚い
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のインシュレータ。
【請求項7】
前記コア側面被覆部の前記第2コア端面被覆部とは反対側の先端部に形成され、前記先端部よりも前記第2コア端面被覆部側に向かって窪んだ凹部を有する
ことを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか1項に記載のインシュレータ。
【請求項8】
前記コア側面被覆部は、
周方向中央から周方向で隣り合う前記ティース側面被覆部に向かって延びる2つの第1側面被覆部と、
前記第1側面被覆部から前記ティース側面被覆部に向かってさらに延び、前記ティース側面被覆部に連結される第2側面被覆部と、
を有し、
2つの前記第1側面被覆部の間の角度は、前記第1側面被覆部と前記第2側面被覆部との間の角度よりも大きく、
前記第1側面被覆部と前記第2側面被覆部との接続部は、前記ティース本体の前記周方向側面と平行で前記鍔側面被覆部の周方向端部を通る直線上に位置しており、
前記凹部は、前記第1側面被覆部に形成されている
ことを特徴とする請求項7に記載のインシュレータ。
【請求項9】
前記凹部の周方向の側面は、前記凹部の周方向の幅が前記先端部に向かうに従って漸次大きくなるように傾斜形成されている
ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のインシュレータ。
【請求項10】
前記第1スカート部及び前記第2スカート部を避けた位置に、成形時の樹脂を注入することで形成されるゲート痕を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のインシュレータ。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のインシュレータと、
前記インシュレータが装着される環状のコア本体及び前記コア本体の周面から径方向に突出されたティースを有するステータコアと、
前記ティースに前記インシュレータを介して巻回されるコイルと、
を備える
ことを特徴とするステータ。
【請求項12】
請求項11に記載のステータと、
前記ステータに対して回転自在に設けられたロータと、
を備える
ことを特徴とする電動モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インシュレータ、ステータ、及び電動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータは、例えばコイルが巻回されたステータと、ステータに対して回転自在に設けられ永久磁石を有するロータと、を備える。ステータは磁性体により形成されており、環状のコア本体と、コア本体から径方向に沿って突出するティースと、を有する。ティースに、インシュレータの上からコイルが巻回されている。インシュレータは、絶縁性を有する樹脂により形成されている。インシュレータによって、ティースとコイルとの絶縁が図られる。
このような構成のもと、コイルに通電を行うとティースに磁界が形成される。この磁界と永久磁石との間で磁気的な吸引力や反発力が生じ、ロータが継続的に回転される。
【0003】
ここで、インシュレータは、ティースの周囲を取り囲めるように軸方向に分割構成され、コア本体の軸方向両側から装着される場合が多い。分割された2つのインシュレータのうちの一方には、コイルの端末部を集結させて外部電源と電気的に接続させるために、インシュレータからコイルを引き出すコイル引出部(柱、爪)が一体成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、コイル引出部が一体成形されたインシュレータは形状が複雑になるので、成形精度が悪化してしまうという課題があった。
また、インシュレータの成形後の変形が大きくなってしまう可能性があった。このため、インシュレータの成形後の変形により、インシュレータの組み付け性が悪化してしまうという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、成形精度、組み付け性を向上できるインシュレータ、ステータ、及び電動モータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係るインシュレータは、環状のコア本体及び前記コア本体から径方向に沿って突出される複数のティースを有するステータコアに装着され、前記ステータコアと前記ティースに巻回されるコイルとの絶縁を図るための樹脂製のインシュレータであって、前記ステータコアの軸方向両側から装着される第1インシュレータ及び第2インシュレータを備え、前記第1インシュレータは、前記コア本体における軸方向の第1端面を覆う第1コア端面被覆部と、前記第1コア端面被覆部から前記第2インシュレータに向かって軸方向に延び、前記コア本体の周面及び前記ティースの周方向側面を覆う第1スカート部と、有し、前記第2インシュレータは、前記コア本体における軸方向の前記第1端面とは反対側の第2端面を覆う第2コア端面被覆部と、前記第2コア端面被覆部から前記第1インシュレータに向かって軸方向に延び、前記コア本体の前記周面及び前記ティースの前記周方向側面を覆う第2スカート部と、有し、前記第1コア端面被覆部のみに一体的に設けられ、前記コイルの端末部を前記第1インシュレータから外部に引き出すためのコイル引出部を有し、前記第2スカート部の軸方向で最も長い箇所の長さは、前記第1スカート部の軸方向で最も長い箇所の長さよりも長いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、インシュレータ、ステータ、及び電動モータの成形精度、組み付け性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態における減速機付きモータの斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態におけるステータの斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態におけるステータを軸方向からみた平面図であり、端子ホルダを取り外した状態を示している。
【
図5】本発明の第1実施形態におけるステータコアを軸方向からみた一部拡大平面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態におけるインシュレータの斜視図である。
【
図7】本発明の第1実施形態における第1インシュレータを上方からみた斜視図である。
【
図8】本発明の第1実施形態における第2インシュレータを下方からみた斜視図である。
【
図9】本発明の第1実施形態における第2インシュレータの変形量を第1インシュレータの変形量で除した変形比率の変化を示すグラフである。
【
図10】従来品と本発明の第1実施形態における各インシュレータの変形量を比較したグラフである。
【
図11】本発明の第2実施形態における第2インシュレータを上方からみた斜視図である。
【
図12】本発明の第2実施形態における第2インシュレータを装着したステータコアを軸方向からみた一部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
<減速機付きモータ>
図1は、減速機付きモータ1の斜視図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う断面図である。
減速機付きモータ1は、例えば、車両のワイパー装置の駆動源として用いられる。
図1、
図2に示すように、減速機付きモータ1は、電動モータ2と、電動モータ2の回転を減速して出力する減速部3と、電動モータ2の駆動制御を行うコントローラ4と、を備える。
なお、以下の説明において、単に「軸方向」という場合は、電動モータ2のシャフト31における中心軸(電動モータ2の回転軸線C1)と平行な方向を意味するものとする。単に「周方向」という場合は、シャフト31の周方向(回転方向)を意味するものとする。単に「径方向」という場合は、軸方向及び周方向に直交するシャフト31の径方向を意味するものとする。
【0012】
<電動モータ>
電動モータ2は、モータケース5と、モータケース5内に収納された円筒状のステータ8と、ステータ8の径方向内側に配置され、ステータ8に対して回転可能に設けられたロータ9と、を備えている。電動モータ2は、ステータ8に電力を供給する際にブラシを必要としない、いわゆるブラシレスモータである。
【0013】
<モータケース>
モータケース5は、アルミニウム合金等の放熱性に優れた材料によって形成されている。モータケース5は、軸方向で分割可能に構成された第1モータケース6と、第2モータケース7と、からなる。第1モータケース6と第2モータケース7とは、それぞれ有底円筒状に形成されている。
【0014】
第1モータケース6は、底部10が減速部3のギアケース40と一体成形されている。底部10の径方向中央には、電動モータ2のシャフト31を挿通可能な貫通孔10aが形成されている。第1モータケース6及び第2モータケース7の各開口部6a,7aには、径方向外側に向かって張り出す外フランジ部16,17がそれぞれ形成されている。これら外フランジ部16,17同士を突き合わせ、ボルト25によって第1モータケース6と第2モータケース7とが一体化されている。モータケース5は、第1モータケース6と第2モータケース7とによって閉塞された内部空間を有し、この内部空間にステータ8及びロータ9が収納されている。
【0015】
<ロータ>
ロータ9は、ステータ8の径方向内側に微小隙間を介して回転自在に配置されている。ロータ9は、シャフト31と、シャフト31に嵌合固定される円筒状のロータコア32と、ロータコア32の外周部に組付けられた図示しない複数のマグネットと、ロータコア32をマグネットの上から覆うマグネットカバー32aと、を備える。
【0016】
シャフト31は、減速部3を構成するウォーム軸44と一体に形成されている。しかしながらこれに限るものではなく、ウォーム軸44は、シャフト31と別体に形成され、シャフト31の端部に連結されるものでもよい。シャフト31とウォーム軸44は、ギアケース40に軸受46,47を介して回転自在に支持されている。シャフト31とウォーム軸44は、回転軸線C1回りに回転する。なお、マグネットとしては、例えば、フェライト磁石が用いられる。しかしながらこれに限るものではなく、マグネットは、ネオジムボンド磁石やネオジム焼結磁石等を適用することも可能である。
【0017】
<減速部>
減速部3は、モータケース5と一体化されたギアケース40と、ギアケース40内に収納されたウォーム減速機構41と、を備えている。ギアケース40は、アルミニウム合金等の放熱性に優れた金属材料によって形成されている。ギアケース40は、一面に開口部40aを有する箱状に形成されている。ギアケース40は、ウォーム減速機構41を内部に収容するギア収容部42を有する。また、ギアケース40の側壁40bには、第1モータケース6が一体形成されている箇所に、第1モータケース6の貫通孔10aとギア収容部42を連通する開口部43が形成されている。
【0018】
ギアケース40の底壁40cには、円筒状の軸受ボス49が突出形成されている。軸受ボス49は、ウォーム減速機構41の出力軸48を回転自在に支持するためのものであり、内周側に図示しない滑り軸受が配置されている。軸受ボス49の先端部には、内周面に、図示しないOリングが装着されている。また、軸受ボス49の外周面には、剛性確保のための複数のリブ52が突設されている。
【0019】
ギア収容部42に収容されたウォーム減速機構41は、ロータ9のシャフト31と一体に形成されたウォーム軸44と、ウォーム軸44に噛合されるウォームホイール45と、により構成されている。ウォーム軸44は、軸方向の両端部が軸受46,47を介してギアケース40に回転軸線C1回りに回転可能に支持されている。ウォームホイール45には、電動モータ2の出力軸48が同軸に、かつ一体に設けられている。ウォームホイール45と出力軸48とは、これらの回転軸線が、ウォーム軸44(電動モータ2のシャフト31)の回転軸線C1と直交するように配置されている。出力軸48は、ギアケース40の軸受ボス49を介して外部に突出している。出力軸48の突出した先端には、モータ駆動する対象物品と接続可能なスプライン48aが形成されている。
【0020】
また、ウォームホイール45には、図示しないセンサマグネットが設けられている。このセンサマグネットは、コントローラ4に設けられた後述の磁気検出素子50によって位置を検出される。つまり、ウォームホイール45の回転位置は、コントローラ4の磁気検出素子50によって検出される。
【0021】
<コントローラ>
コントローラ4は、磁気検出素子50が実装されたコントローラ基板51を有している。コントローラ基板51は、磁気検出素子50がウォームホイール45のセンサマグネットに対向するように、ギアケース40の開口部40a内に配置されている。ギアケース40の開口部40aは、カバー53によって閉塞されている。
【0022】
コントローラ基板51には、ステータ8の後述するコイル24と電気的に接続される。また、コントローラ基板51には、カバー53に設けられたコネクタ11(
図1参照)の端子が電気的に接続されている。コントローラ基板51には、磁気検出素子50の他に、コイル24に供給する駆動電圧を制御するFET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)等のスイッチング素子からなるパワーモジュール(図示しない)や、電圧の平滑化を行うコンデンサ(図示しない)等が実装されている。
【0023】
<ステータ及び端子ホルダ>
図3は、ステータ8の斜視図である。
図4は、ステータ8を軸方向からみた平面図であり、端子ホルダ85を取り外した状態を示している。
図3、
図4に示すように、ステータ8は、中心軸が回転軸線C1と一致する円筒状のステータコア20と、ステータコア20に装着されるインシュレータ26と、ステータコア20にインシュレータ26の上から巻回される3相(U相、V相、W相)構造の複数のコイル24と、を備える。
【0024】
ステータコア20上に、端子ホルダ85が設けられている。端子ホルダ85は、端子86と、端子86を保持するホルダ本体87と、ステータコア20の軸方向一端部を覆うカバー部88と、が一体成形されている。端子86は、各相のコイル24の端末部24aが接続されるとともに、コントローラ基板51から延びる図示しないコネクタが接続される。
カバー部88は、ステータコア20の軸方向で対向配置された円環状の端面カバー部88aと、端面カバー部88aの外周縁からステータコア20側に向かって延出されインシュレータ26を径方向外側から覆う外周カバー部88bと、が一体成形されている。
【0025】
ホルダ本体87は、端面カバー部88aの一部からステータコア20とは反対側に向かって立ち上がり形成されている。端面カバー部88a及び外周カバー部88bのホルダ本体87に対応する箇所は、切除された形の切除部88cが形成されている。
ホルダ本体87は、軸方向かつ周方向に長い直方体状に形成されている。ホルダ本体87に、コントローラ基板51から延びる図示しないコネクタが装着される。ホルダ本体87には、軸方向からみて長手方向に並ぶ3個の端子収納凹部87aが形成されている。これら端子収納凹部87aに、端子86が収納されて保持されている。そして、端子86とコントローラ基板51から延びる図示しないコネクタとが接続される。
【0026】
図5は、ステータコア20を軸方向からみた一部拡大平面図である。
図5は、ステータコア20に装着されるインシュレータ26のうち、後述する第1インシュレータ61のみを図示している。また、
図5は、インシュレータ26のうち、後述する第2インシュレータ62側からステータコア20をみている。
図3から
図5に示すように、ステータコア20は、複数の電磁鋼板20pを積層することにより形成される。しかしながらこれに限られるものではなく、例えば軟磁性粉を加圧成形してステータコア20を形成してもよい。
【0027】
ステータコア20は、円筒状のコア本体21と、コア本体21の内周面19から径方向内側に向かって突出する複数(本第1実施形態では6個)のティース22と、コア本体21の外周面に一体成形された2つの固定部23と、を有する。
コア本体21の内周面19は、円弧形状ではなく僅かに多角形状である。すなわち、コア本体21の内周面19は、周方向で隣り合うティース22の間の周方向中央C2からティース22に向かって延びる2つの第1周面19aと、第1周面19aからティース22に向かってさらに延び、ティース22の根本に接続される2つの第2周面19bと、を有する。2つの第1周面19aの間の角度θ1は、第1周面19aと第2周面19bとの間の角度θ2よりも大きい。
【0028】
ティース22は、コア本体21の内周面19から径方向に沿って突出するティース本体28と、ティース本体28のコア本体21とは反対側の径方向内側端であるティース先端部28aに一体成形された鍔部29と、を有する。ティース本体28の2つの周方向側面28bは平行であり、かつ径方向に対して平行である。ティース本体28に、インシュレータ26の上からコイル24が巻回される。
【0029】
鍔部29は、周方向に沿って延びている。鍔部29の内周面は、回転軸線C1を中心とする円上に沿うように形成されている。周方向で隣接するティース22の間には、コア本体21の内周面、ティース本体28の周方向側面28b、及び鍔部29の外周面によって軸方向からみて蟻溝状のスロット27が形成される。
【0030】
固定部23は、コア本体21の外周面から径方向外側に向かって突出されており、周方向に180°間隔をあけて配置されている。固定部23には、軸方向に貫通するボルト挿通孔23aが形成されている。
【0031】
このような構成のもと、コア本体21の外周面が第1モータケース6の内周面に嵌合されて収納される。そして、固定部23のボルト挿通孔23aに図示しないタッピングねじを挿入し、このタッピングねじを第1モータケース6の底部10にねじ込むことにより、第1モータケース6にステータコア20が締結固定される。このように固定されたステータコア20の上から第2モータケース7を被せる。そして、第1モータケース6に第2モータケース7を固定する。
【0032】
[第1実施形態]
<インシュレータ>
図6は、インシュレータ26の斜視図である。
図6は、ステータコア20に装着された状態のインシュレータ26を示している。
インシュレータ26は、ステータコア20とコイル24との絶縁を図るためのものであり、絶縁性を有する樹脂により形成されている。
【0033】
図6に示すように、インシュレータ26は、ステータコア20の軸方向両側から装着されるように軸方向で2分割構成されている。すなわち、インシュレータ26は、ステータコア20の軸方向一方(
図5における上方)側から装着される第1インシュレータ61と、ステータコア20の軸方向他方(
図5における下方)側から装着される第2インシュレータ62と、を備える。
以下では、説明を分かりやすくするために、第1インシュレータ61側を上方とし、第2インシュレータ62側を下方として説明する(以下の第2実施形態でも同様)。
【0034】
まず、
図5から
図7に基づいて、第1インシュレータ61について説明する。
図7は、第1インシュレータ61を上方からみた斜視図である。
図5から
図7に示すように、第1インシュレータ61は、コア本体21を覆うコア本体被覆部63と、ティース22を覆うティース被覆部64と、が一体成形されたものである。コア本体被覆部63は、コア本体21の軸方向一端面(請求項における第1端面の一例)21aを覆う円環状の第1コア端面被覆部65と、第1コア端面被覆部65のコア本体21との当接面65aから下方に向かって突出されたコア側面被覆部66と、第1コア端面被覆部65の当接面65aから上方に向かって突出する円筒状の外壁部67と、を有する。
【0035】
コア側面被覆部66は、第1コア端面被覆部65の内周縁に配置されている。コア側面被覆部66は、コア本体21の内周面19に沿って形成され、この内周面19を覆う。コア側面被覆部66は、コア本体21の内周面19の形状に対応するように僅かに多角形状に形成されている。すなわち、コア側面被覆部66は、周方向で隣り合うティース被覆部64の間の周方向中央C3からティース被覆部64に向かって延びる2つの第1側面被覆部66aと、第1側面被覆部66aからティース被覆部64に向かってさらに延び、ティース被覆部64に接続される2つの第2側面被覆部66bと、を有する。
【0036】
2つの第1側面被覆部66aの間の角度θ3は、2つの第1周面19aの間の角度θ1と同一である。第1側面被覆部66aと第2側面被覆部66bとの間の角度θ4は、第1周面19aと第2周面19bとの間の角度θ2と同一である。すなわち、2つの第1側面被覆部66aの間の角度θ3は、第1側面被覆部66aと第2側面被覆部66bとの間の角度θ4よりも大きい。
また、第1側面被覆部66aと第2側面被覆部66bとの接続部66cは、ティース本体28の周方向側面28bと平行で、かつ後述する鍔側面被覆部73の周方向端部73aを通る直線S上に位置している。
【0037】
外壁部67は、第1コア端面被覆部65の外周縁寄りに配置されている。外壁部67の径方向外側に、端子ホルダ85の外周カバー部88bが配置される。
外壁部67には、各ティース被覆部64に対応する位置に、それぞれ引き込みスリット68と引き出しスリット69とが形成されている。
引き込みスリット68は、外壁部67の径方向外側から径方向内側へとコイル24を引き込むためのものである。引き出しスリット69は、外壁部67の径方向内側から径方向外側へとコイル24を引き出すためのものである。
【0038】
第1コア端面被覆部65及び外壁部67には、複数のティース22のうち、特定のティース22A(
図4参照、以下このティース22Aを特定ティース22Aと称する)を覆うティース被覆部64A(以下、このティース被覆部64Aを特定ティース被覆部64Aと称する)の根本に、コイル引出部77が一体成形されている。
コイル引出部77は、各相のコイル24の端末部24a(
図3、
図4参照)を上方へと引き出す部位である。コイル引出部77に端子ホルダ85の切除部88cが嵌るように、端子ホルダ85が配置される。すなわち、コイル引出部77の真上に端子ホルダ85の端子86が配置される。
【0039】
コイル引出部77には、各相のコイル24の端末部24aの引き出し箇所を別々に規制する複数(例えば、本第1実施形態のコイル24は3相構造なので3個)のコイル案内凹部78が形成されている。これらコイル案内凹部78は、周方向に並んで集約して配置されている。各コイル案内凹部78には、周方向に沿って突出するコイル保持爪78aが一体成形されている。各コイル案内凹部78を介して各相のコイル24の端末部24aが別々に上方へと引き出される。引き出された各相のコイル24の端末部24aは、コイル保持爪78aに保持されながら端子ホルダ85の端子86へと導かれ、この端子86に接続される。
【0040】
ティース被覆部64は、第1コア端面被覆部65からこの第1コア端面被覆部65の面方向に沿って延出され径方向に長いティース端面被覆部71と、ティース端面被覆部71の周方向両側(短手方向両端)から下方に向かって突出されたティース側面被覆部72と、ティース側面被覆部72の径方向内側端から周方向外側に突出された鍔側面被覆部73と、ティース端面被覆部71の径方向内側端及び鍔側面被覆部73の上端に接合され鍔側面被覆部73の上端から上方に向かって延出された内壁部74と、を有する。
【0041】
ティース端面被覆部71は、ティース本体28の上端を覆う。ティース側面被覆部72は、ティース22におけるティース本体28の周方向側面を覆う。2つのティース側面被覆部72は、ティース本体28の周方向側面28bに対応するように平行である。これらティース側面被覆部72の径方向外側端に、第2側面被覆部66bが接続される。2つのティース側面被覆部72は、軸方向で最も長い箇所の長さが長い長尺ティース側面被覆部72aと、軸方向で最も長い箇所の長さが長尺ティース側面被覆部72aよりも短い短尺ティース側面被覆部72bと、から成る。以下の説明では、各ティース側面被覆部72a,72bにおける軸方向で最も長い箇所の長さを、単に各ティース側面被覆部72a,72bの軸方向の長さという。
鍔側面被覆部73は、ティース22における鍔部29の外周面を覆う。
【0042】
これらティース側面被覆部72(長尺ティース側面被覆部72a、短尺ティース側面被覆部72b)及び鍔側面被覆部73と、コア本体被覆部63のコア側面被覆部66と、は連なって形成され、ティース端面被覆部71及び第1コア端面被覆部65から下方に突出する筒状の第1スカート部79を成している。すなわち、第1スカート部79はステータコア20のスロット27に介在される。
【0043】
第1スカート部79の下端である先端部79a、つまり、コア側面被覆部66の先端部66dは、長尺ティース側面被覆部72aの先端部と短尺ティース側面被覆部72bの先端部とを滑らかに連結するように斜めに形成されている。すなわち、第1スカート部79の先端部79a(コア側面被覆部66の先端部66d)は、ティース端面被覆部71及び第1コア端面被覆部65からの突出高さが周方向に沿って漸次変化するように斜めに形成されている。斜めに形成することにより、ステータコア20に第1インシュレータ61を装着する際、各ティース22に第1スカート部79が徐々に挿入される形になる。このため、ステータコア20(ティース22)への第1インシュレータ61の挿入性(装着性)が向上される。
【0044】
第1スカート部79の外側面79b(ティース側面被覆部72、鍔側面被覆部73、及びコア側面被覆部66のステータコア20側の側面)のうち、コア側面被覆部66のティース側面被覆部72寄りには、一対の圧入凸部82a,82bが形成されている。一対の圧入凸部82a,82bは、ティース被覆部64を挟んで周方向両側に配置されている。これら圧入凸部82a,82bは、ステータコア20に第1インシュレータ61を装着する際、圧入して装着するためのものである。圧入凸部82a,82bによって、ステータコア20からの第1インシュレータ61の脱落を抑制できる。
【0045】
一対の圧入凸部82a,82bは、特定ティース22Aに対応する箇所を除いて、1つのティース被覆部64置きに周方向に等間隔で配置されている。本第1実施形態では、ティース22(ティース被覆部64)を6個有しているので、特定ティース被覆部64Aを除いて周方向に等間隔で配置された3個のティース被覆部64に対応する箇所に、一対の圧入凸部82a,82bが配置されている。
【0046】
このような第1インシュレータ61には、各内壁部74の内周面に、射出ゲート痕Gが形成されている。射出ゲート痕Gは、第1インシュレータ61の射出成形時に形成される樹脂の注入痕である。
【0047】
次に、
図5を援用し、
図6、
図8に基づいて、第2インシュレータ62について説明する。
図8は、インシュレータ26における第2インシュレータ62を下方からみた斜視図である。
図6、
図8に示すように、第2インシュレータ62は、ステータコア20の軸方向中央(上下方向中央)を中心に第1インシュレータ61とはほぼ線対称な構成である。このように、第2インシュレータ62の基本的構成は、第1インシュレータ61とほぼ同一である。このため、以下の説明では、第2インシュレータ62のうち、第1インシュレータ61と同一構成については第1インシュレータ61と同一名称とし、同一符号を付して説明を省略する。また、第2インシュレータ62のうち、第1インシュレータ61とは同一構成であるが第1インシュレータ61との差異を説明する場合も説明を分かりやすくするために、基本的には同一名称とし、同一符号を付して説明する。
【0048】
すなわち、第2インシュレータ62は、コア本体21を覆うコア本体被覆部63と、ティース22を覆うティース被覆部264と、が一体成形されたものである。コア本体被覆部63は、コア本体21の軸方向他端面(請求項における第2端面の一例)21bを覆う円環状の第2コア端面被覆部265と、第2コア端面被覆部265のコア本体21との当接面265aから上方に向かって突出されたコア側面被覆部66と、第2コア端面被覆部265の当接面265aから下方に向かって突出する円筒状の外壁部83と、を有する。
【0049】
第1インシュレータ61と第2インシュレータ62との相違点は、第1インシュレータ61の第1コア端面被覆部65及び外壁部67には、コイル引出部77が形成されているのに対し、第2インシュレータ62の第2コア端面被覆部265及び外壁部83には、コイル引出部77が形成されていない点にある。
すなわち、第2コア端面被覆部265及び外壁部83は、第1インシュレータ61の第1コア端面被覆部65及び外壁部67と比較して簡素な構造であり、全周に渡って均一な形状である。
【0050】
また、第2インシュレータ62の第2スカート部279は、ティース側面被覆部72(長尺ティース側面被覆部72a、短尺ティース側面被覆部72b)及び鍔側面被覆部73と、コア本体被覆部63のコア側面被覆部66と、から成る。第2スカート部279の先端部279aは、第1インシュレータ61の第1スカート部79における先端部79aの傾斜方向に沿うように形成されている。このため、第1インシュレータ61と第2インシュレータ62とをステータコア20の軸方向両側から装着した際、互いに突き合わされる第1スカート部79の先端部79aと第2スカート部279の先端部279aとの隙間O(
図6参照)の幅は一定になる。
【0051】
第2インシュレータ62の射出ゲート痕Gも第1インシュレータ61と同様である。すなわち、第2インシュレータ62には、各内壁部74の内周面に、射出ゲート痕Gが形成されている。
【0052】
このように構成されたインシュレータ26(第1インシュレータ61、第2インシュレータ62)は、コア側面被覆部66のうちの第2側面被覆部66b、ティース側面被覆部72(長尺ティース側面被覆部72a、短尺ティース側面被覆部72b)、及び鍔側面被覆部73によって、コイル収納凹部70を形成する。各ティース22にインシュレータ26の上から巻回されるコイル24は、おおよそコイル収納凹部70に収納される(
図4も併せて参照)。
【0053】
ここで、第2スカート部279の軸方向で最も長い箇所の長さは、第1スカート部79の軸方向で最も長い箇所の長さよりも長い。第1スカート部79及び第2スカート部279の軸方向で最も長い箇所は、各々長尺ティース側面被覆部72aである。すなわち、第1スカート部79における長尺ティース側面被覆部72aの軸方向の長さをL1とし、第2スカート部279における長尺ティース側面被覆部72aの軸方向の長さをL2としたとき、長さL1,L2は、
L2>L1 ・・・(1)
を満たす。以下の説明では、第1スカート部79の軸方向で最も長い箇所の長さを、単に第1スカート部79の長さL1という。第2スカート部279の軸方向で最も長い箇所の長さを、単に第2スカート部279の長さL2という。
【0054】
さらに、第1スカート部79の長さL1、及び第2スカート部279の長さL2は、
L2≧1.7×L1 ・・・(2)
を満たすことが望ましい。
以下、上記式(1),(2)についての作用、効果について詳述する。
【0055】
図示しない金型を用い、この金型内に図示しないゲートを介して溶融樹脂を流し込むことで、第1インシュレータ61及び第2インシュレータ62を成形する。これらインシュレータ61,62は、硬化の過程で樹脂の収縮によりヒケが生じ、僅かに変形する。各インシュレータ61,62では、その構造上、各々コア端面被覆部65,265から延びる各スカート部79,279の変形量が大きくなる。
【0056】
ここで、第1インシュレータ61はコイル引出部77を有しているのに対し、第2インシュレータ62はコイル引出部77を有していない。第1インシュレータ61の形状は、コイル引出部77を有している分、複雑で全周に渡って不均一である。これに対し、第2インシュレータ62の形状は、簡素で全周に渡って均一である。このため、第1インシュレータ61の各第1スカート部79は、変形量が不均一となりやすく、かつ変形量自体も大きくなる。これに対し、第2インシュレータ62の各第2スカート部279は、変形量も均一になり、変形量自体も小さく抑えることが可能である。変形量が均一とは、変形する向きも均一であることをいう。
【0057】
すなわち、例えば、第1スカート部79の長さL1と第2スカート部279の長さL2との長さを同一とした場合(以下、このような場合を従来品という)、第1スカート部79は、第2スカート部279に対して変形量が不均一なばかりか、変形量が大きくなる。そこで、第1スカート部79の長さL1、及び第2スカート部279の長さL2を、上記式(2)を満たすようにすることにより、第1インシュレータ61の変型量よりも第2インシュレータ62の変型量が確実に大きくなる。
【0058】
図9は、縦軸を第2インシュレータ62の変形量を第1インシュレータ61の変形量で除した変形比率とし、横軸を第2スカート部279の長さL2を第1スカート部79の長さL1で除したスカート部長さ比とした場合の変形比率の変化を示すグラフである。
図9に示すように、上記式(2)を満たしたとき、変形比率が1以上となることが確認できる。すなわち、第1インシュレータ61の変形量よりも第2インシュレータ62の変形量が大きくなる。
【0059】
ここで、前述したように、第2インシュレータ62の各第2スカート部279は、変形量が均一になる。このため、第1インシュレータ61の変形量よりも第2インシュレータ62の変形量を大きくした場合でも、第1インシュレータ61の変形量が大きい場合と比較してステータコア20への第2インシュレータ62の組み付け性が向上される。この結果、インシュレータ26全体の組み付け性を向上できる。
【0060】
図10は、従来品と第1実施形態との各インシュレータ61,62の変形量を比較したグラフである。なお、
図10に示す変形量とは、最大変形量をいう。すなわち、各インシュレータ61,62において、最も変形量が大きい箇所は各スカート部79,279であるので、
図10に示す変形量とは、各スカート部79,279のうち、変形量が最大となる箇所の変形量をいう。
【0061】
図10に示すように、従来品では第2インシュレータ62に対して第1インシュレータ61の変形量が各段に大きいことが確認できる。第1インシュレータ61の各第1スカート部79は変形量が不均一なので、ステータコア20への第1インシュレータ61の組み付け性が悪化してしまう。なお、
図10に示す第1実施形態における各長さL1,L2は、L2=2.1×L1を満たす。
【0062】
したがって、上述の第1実施形態によれば、第1インシュレータ61の第1コア端面被覆部65(外壁部67)のみにコイル引出部77が形成されている場合において、このコイル引出部77が形成されていない第2インシュレータ62における第2スカート部279の長さL2が上記式(1)を満たすことにより、従来品と比較してインシュレータ26の組み付け性を向上できる。
また、従来品と比較して結果的にインシュレータ26の変形量を小さくできる(
図10の第1実施形態のグラフ参照)。このため、インシュレータ26の成形精度を向上できる。
【0063】
また、第2インシュレータ62における第2スカート部279の長さL2が上記式(2)を満たすことにより、第2インシュレータ62の変形量を第1インシュレータ61の変形量以上とすることができる。このため、確実にインシュレータ26の組み付け性、成形精度を向上できる。
さらに、各長さL1,L2をL2≦8.2×L1を満たすように設定することにより、第1スカート部79の長さとして、圧入凸部82a,82bを配置できる程度の長さを確保することができる。
【0064】
上記のようなインシュレータ26(第1インシュレータ61、第2インシュレータ62)は、各内壁部74の内周面に、射出ゲート痕Gが形成されている。換言すれば、各スカート部79,279を避けた位置に、射出ゲート痕Gが形成されている。すなわち、各スカート部79,279は、射出成形時の樹脂の流れ方向最下流側に位置していることになる。このようなインシュレータ26の構成において、上述の第1実施形態の構成を好適に用いることができる。
【0065】
インシュレータ26(第1インシュレータ61、第2インシュレータ62)の成形精度を向上できるので、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標12「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」に貢献することが可能となる。
【0066】
[第2実施形態]
<第2インシュレータ>
次に、
図3を援用し、
図11、
図12に基づいて、第2実施形態について説明する。前述の第1実施形態と同一態様には同一符号を付して説明を省略する。
図11は、第2実施形態における第2インシュレータ262を上方からみた斜視図である。
図12は、第2インシュレータ262を装着したステータコア20を軸方向からみた一部拡大平面図である。
【0067】
図3、
図11、
図12に示すように、第2実施形態において、ステータ8は、中心軸が回転軸線C1と一致する円筒状のステータコア20と、ステータコア20に装着されるインシュレータ26と、ステータコア20にインシュレータ26の上から巻回される3相(U相、V相、W相)構造の複数のコイル24と、を備える点は、上述の第1実施形態と同様である。第2実施形態における第1インシュレータ61及び第2インシュレータ262の基本的構成は、前述の第1実施形態における第1インシュレータ61及び第2インシュレータ62の基本的構成と同様である。第2インシュレータ262における第2スカート部279の長さL2は、上記式(1)を満たす点、望ましくは上記式(2)を満たす点は、上述の第1実施形態と同様である。
【0068】
第1実施形態と第2実施形態との相違点は、第1実施形態における第2インシュレータ62の形状と、第2実施形態における第2インシュレータ262の形状とが異なる点にある。
【0069】
ここで、各インシュレータ61,262を形成する際の樹脂の湯流れについて説明する。まず、各内壁部74の内周面に射出ゲート痕Gが形成されている通り、樹脂は、径方向内側から径方向外側に向かって流れる。続いて樹脂は、各スカート部79,279の根本(各コア端面被覆部65,265側)に到達し、その後、先端部79a,279aに向かって流れる。
【0070】
このような射出成形において、第2スカート部279の長さL2が上記式(1)を満たす場合、第2スカート部279の長さが長くなる分、この第2スカート部279への樹脂の湯流れが悪化してしまう。そこで、第2スカート部279を以下のように形成した。
【0071】
まず、第2インシュレータ262の第2スカート部279において、コア側面被覆部66の肉厚をT1とし、ティース側面被覆部72のうちの長尺ティース側面被覆部72aの肉厚をT2とし、短尺ティース側面被覆部72bの肉厚をT3としたとき、肉厚T1~T3は、
T1>T2>T3 ・・・(3)
を満たす。
【0072】
上記式(3)の理由は、以下の通りである。すなわち、ステータコア20への第2インシュレータ62の挿入性(装着性)を向上するために、長さの異なる長尺ティース側面被覆部72a及び短尺ティース側面被覆部72bを設けた。この結果、長さの長い長尺ティース側面被覆部72aへの樹脂の充填速度が低下したので、T2>T3とした。長尺ティース側面被覆部72aの肉厚T2を厚くした結果、コア側面被覆部66への樹脂の充填速度が低下したので、T1>T2とした。このように、各肉厚T1~T3を、上記式(3)を満たすようにすることにより、各部に樹脂が満遍なく行き渡らせることができる。
【0073】
続いて、第2インシュレータ262の第2スカート部279において、コア側面被覆部66の2つの接続部66cのうち、短尺ティース側面被覆部72b寄りの接続部66cに、コア側面被覆部66の他の部位の肉厚よりも厚い厚肉部91を形成した。換言すれば、厚肉部91は、コア側面被覆部66の周方向中央よりも短尺ティース側面被覆部72b寄りに形成されている。厚肉部91は、コア側面被覆部66の軸方向全体に渡って延びている。
【0074】
厚肉部91の形成理由は、以下の通りである。すなわち、上述の第2スカート部279の構成において、コア側面被覆部66の肉厚T1を厚くすることにより、コア側面被覆部66の2つの接続部66cのうち、短尺ティース側面被覆部72b寄りの接続部66cでの樹脂の充填速度が低下した。このため、コア側面被覆部66の2つの接続部66cのうち、短尺ティース側面被覆部72b寄りの接続部66cに厚肉部91を形成することにより、この接続部66cの流路を十分に大きくできる。よって、接続部66cでの樹脂の充填速度を十分に確保できる。
【0075】
続いて、第2スカート部279の先端部279aには、2つの第1側面被覆部66aに渡って凹部92が形成されている。凹部92は、第2スカート部279の先端部279aよりも第2コア端面被覆部265側に向かって窪むように形成されている。第2コア端面被覆部265から凹部92の底面92aに至る間の長さL3と、短尺ティース側面被覆部72bの軸方向の長さとは、ほぼ同一長さである。
【0076】
凹部92の周方向の両側面92bは、凹部92の周方向の幅が先端部279aに向かうに従って漸次大きくなるように傾斜形成されている。凹部92を形成する分、この凹部92が形成された箇所における第1側面被覆部66aの第2コア端面被覆部265からの長さ(長さL3)が短くなり、第2スカート部279の体積が減少される。このため、第2インシュレータ262の射出成形時において、第2スカート部279にショートショットが発生してしまうことを防止できる。また、凹部92の周方向の両側面92bが傾斜形成されているので、凹部92を介して第2スカート部279の先端部279aに向かう樹脂の流れがスムーズになる。
【0077】
ところで、
図12に示すように、各ティース22にインシュレータ26(第1インシュレータ61、第2インシュレータ262)の上から巻回されるコイル24は、おおよそコイル収納凹部70に収納される(
図4も併せて参照)。第2インシュレータ262に形成された厚肉部91の位置は、コイル収納凹部70の周方向端部となる接続部66cの位置である。このため、厚肉部91が、コイル24の占積率に影響を及ぼすことは殆どない。
また、凹部92を形成することにより、この凹部92の形成箇所を介してコア本体21の内周面19が露出されることになる。しかしながら凹部92は、コイル収納凹部70を構成しない第1側面被覆部66aに形成されている。すなわち、第1側面被覆部66aでは、コイル24の積まれる量が少ない。このため、凹部92を形成することにより、ステータコア20とコイル24との絶縁が損なわれてしまうことを防止できる。
【0078】
このように、上述の第2実施形態では、第2インシュレータ262の第2スカート部279において、コア側面被覆部66の肉厚T1、ティース側面被覆部72のうちの長尺ティース側面被覆部72aの肉厚T2、及び短尺ティース側面被覆部72bの肉厚T3は、上記式(3)を満たす。すなわち、コア側面被覆部66の肉厚T1は、ティース側面被覆部72の肉厚T2,T3よりも厚い。このため、第1スカート部79の長さL1に対して第2スカート部279の長さL2を長くした場合であっても第2スカート部279の湯流れを向上できる。よって、上述の第1実施形態と同様の効果に加え、第2インシュレータ262(インシュレータ26)の成形精度をさらに向上できる。
【0079】
また、長尺ティース側面被覆部72aの肉厚T2を、短尺ティース側面被覆部72bの肉厚T3よりも厚くすることにより、第2スカート部279の樹脂の湯流れをさらに向上できる。
【0080】
コア側面被覆部66の周方向中央よりも短尺ティース側面被覆部72b寄りに、厚肉部91が形成されている。厚肉部91は、コア側面被覆部66の軸方向全体に渡って延びている。このように厚肉部91を形成することにより、射出成形時の第2スカート部279でのショートショットを防止できる。
より具体的には、コア側面被覆部66の2つの接続部66cのうち、短尺ティース側面被覆部72b寄りの接続部66cに厚肉部91を形成した。このため、第2スカート部279での樹脂の充填速度が低下してしまう箇所の発生を防止できる。よって、射出成形時の第2スカート部279でのショートショットを防止でき、第2インシュレータ262(インシュレータ26)の成形精度をさらに向上できる。
【0081】
第2スカート部279の先端部279aには、先端部279aよりも第2コア端面被覆部265側に向かって窪むように凹部92が形成されている。このため、この凹部92が形成された箇所における第1側面被覆部66aの第2コア端面被覆部265からの長さ(長さL3)を短くでき、第2スカート部279の体積を減少できる。このため、第2インシュレータ262の射出成形時において、第2スカート部279にショートショットが発生してしまうことを防止できる。
【0082】
しかも、凹部92は、コア側面被覆部66(2つの第1側面被覆部66a)に形成されている。コア側面被覆部66には、コイル24の積まれる量が少ないので、このため、凹部92を形成することにより、ステータコア20とコイル24との絶縁が損なわれてしまうことを防止でき、インシュレータ26の機能が損なわれてしまうことも防止できる。
また、凹部92の周方向の両側面92bが傾斜形成されているので、凹部92を介して第2スカート部279の先端部279aに向かう樹脂の流れがスムーズになる。このため、第2インシュレータ262(インシュレータ26)の成形精度をさらに向上できる。
【0083】
また、第2インシュレータ262の成形精度を向上させるにあたって、コイル24の占積率に影響を及ぼすことがないので、電動モータ2のトルク性能を向上できる。このため、電動モータ2を駆動する際の消費エネルギーを抑えることができる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」に貢献することが可能となる。
【0084】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、減速機付きモータ1は、車両のワイパー装置の駆動源として用いられる場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、さまざまな駆動装置として減速機付きモータ1を適用できる。また、減速機付きモータ1のうち、上述の構成を備えた電動モータ2のみを、さまざまな電気機器に採用してもよい。
【0085】
上述の実施形態では、ステータ8のコイル24は、3相(U相、V相、W相)構造である場合について説明した。しかしながら、コイル24の相数は3相に限られるものではない。
【0086】
上述の実施形態では、ステータコア20は、円筒状のコア本体21と、コア本体21の内周面19から径方向内側に向かって突出する複数(6個)のティース22と、を備える場合について説明した。このようなステータコア20を有するステータ8の径方向内側に、ロータ9が配置されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、ステータコア20は、コア本体21の外周面からティース22が径方向外側に向かって突出する構成でもよい。このようなステータコア20を有するステータ8の径方向外側にロータ9が配置されてもよい。ティース22の個数も6個に限定されるものではない。ステータコア20の形状に対応してインシュレータ26を形成すればよい。このようなインシュレータ26でも上記の構成を採用できる。
【符号の説明】
【0087】
1…減速機付きモータ、2…電動モータ、3…減速部、4…コントローラ、5…モータケース、6…第1モータケース、6a…開口部、7…第2モータケース、7a…開口部、8…ステータ、9…ロータ、10…底部、10a…貫通孔、11…コネクタ、16…外フランジ部、17…外フランジ部、19…内周面(周面)、19a…第1周面、19b…第2周面、20…ステータコア、20p…電磁鋼板、21…コア本体、21a…軸方向一端面(第1端面の一例)、21b…軸方向他端面(第2端面の一例)、22…ティース、23…固定部、23a…ボルト挿通孔、24…コイル、24a…端末部、25…ボルト、26…インシュレータ、27…スロット、28…ティース本体、28a…ティース先端部、28b…周方向側面、29…鍔部、31…シャフト、32…ロータコア、32a…マグネットカバー、40…ギアケース、40a…開口部、40b…側壁、40c…底壁、41…ウォーム減速機構、42…ギア収容部、43…開口部、44…ウォーム軸、45…ウォームホイール、46…軸受、47…軸受、48…出力軸、48a…スプライン、49…軸受ボス、50…磁気検出素子、51…コントローラ基板、52…リブ、53…カバー、61…第1インシュレータ、62…第2インシュレータ、63…コア本体被覆部、64…ティース被覆部、64A…特定ティース被覆部、65…第1コア端面被覆部、65a…当接面、66…コア側面被覆部、66a…第1側面被覆部、66b…第2側面被覆部、66c…接続部、66d…先端部、67…外壁部、68…引き込みスリット、69…引き出しスリット、70…コイル収納凹部、71…ティース端面被覆部、72…ティース側面被覆部、72a…長尺ティース側面被覆部、72b…短尺ティース側面被覆部、73…鍔側面被覆部、73a…周方向端部、74…内壁部、77…コイル引出部、78…コイル案内凹部、78a…コイル保持爪、79…第1スカート部、79a…先端部、79b…外側面、82a…圧入凸部、82b…圧入凸部、83…外壁部、85…端子ホルダ、86…端子、87…ホルダ本体、87a…端子収納凹部、88…カバー部、88a…端面カバー部、88b…外周カバー部、88c…切除部、91…厚肉部、92…凹部、92a…底面、92b…側面、262…第2インシュレータ、264…ティース被覆部、265…第2コア端面被覆部、265a…当接面、279…第2スカート部、279a…先端部、C1…回転軸線、C2…周方向中央、C3…周方向中央、G…射出ゲート痕、O…隙間、S…直線、T1…肉厚、T2…肉厚、T3…肉厚、θ1…角度、θ2…角度、θ3…角度、θ4…角度