(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116128
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】電子機器装置、及び、電子機器装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 5/03 20060101AFI20230815BHJP
B29C 65/16 20060101ALI20230815BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
H05K5/03 A
B29C65/16
H05K5/02 J
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018736
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 将明
(72)【発明者】
【氏名】土橋 孝治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康一
【テーマコード(参考)】
4E360
4F211
【Fターム(参考)】
4E360AB02
4E360AB12
4E360AB34
4E360BA02
4E360BB22
4E360BD03
4E360BD05
4E360CA02
4E360EA03
4E360EA12
4E360EA18
4E360ED07
4E360ED30
4E360EE20
4E360GA60
4E360GB99
4E360GC08
4F211AA25
4F211AG07
4F211AH42
4F211TA01
4F211TC16
4F211TD11
4F211TN27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】レーザ溶着おけるレーザ光が透過する部材の光透過性が均一な電子機器装置及び電子機器装置の製造方法を提供する。
【解決手段】電子機器装置1は、所定の光吸収性を有する樹脂部材によって構成され開口部2Aを有する筐体2と、筐体に収容され電子回路が形成された回路基板3と、一端部と他端部を備え他端部が回路基板に電気的に接続された少なくとも一つの端子5と、筐体の開口部を覆い少なくとも一つの端子が貫通し所定の光透過性を有する樹脂部材で構成されたカバー部4と、を備える。少なくとも一つの端子の一端部5Aは、カバー部を基準に他端部5Bと反対に位置する。カバー部は、100度から180度の間の金型温度によって成形され、少なくとも一つの端子と回路基板ははんだ接合によって電気的に接続され、筐体とカバー部とはレーザ溶着により接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の光吸収性を有する樹脂部材によって構成され、開口部を有する筐体と、
前記筐体に収容され、電子回路が形成された回路基板と、
一端部と他端部を備え、前記他端部が前記回路基板に電気的に接続された、少なくとも一つの端子と、
前記筐体の前記開口部を覆い、前記少なくとも一つの端子が貫通し、所定の光透過性を有する樹脂部材で構成されたカバー部と、を備え、
前記少なくとも一つの端子の前記一端部は、前記カバー部を基準に、前記他端部と反対に位置し、
前記カバー部は、100度から180度の間の金型温度によって成形され、
前記少なくとも一つの端子と前記回路基板は、はんだ接合によって電気的に接続され、
前記筐体と前記カバー部は、レーザ溶着により接続された、
電子機器装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器装置であって、
前記筐体の光吸収性は、前記カバー部の光吸収性より高い、
電子機器装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電子機器装置であって、
前記カバー部の光透過性は、前記筐体の光透過性より高い、
電子機器装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子機器装置であって、
前記少なくとも一つの端子は、前記カバー部と一体に成形された、
電子機器装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子機器装置であって、
前記少なくとも一つの端子は、コネクタの一部である、
電子機器装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電子機器装置であって、
前記少なくとも一つの端子の一部は、曲がっている、
電子機器装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電子機器装置であって、
前記少なくとも一つの端子は、前記回路基板を貫通している、
電子機器装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電子機器装置であって、
前記少なくとも一つの端子と前記回路基板のはんだ接合は、部分ディップ、ディップ槽、又は、リフロー炉の中の少なくとも一つを使ってなされた、
電子機器装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電子機器装置であって、
前記カバー部は、100度から120度の間の金型温度によって成形される、
電子機器装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の電子機器装置であって、
前記カバー部と前記筐体と接合される部分から、前記少なくとも一つの端子と前記回路基板がはんだ接合される部分までの距離は、所定の距離未満である、
電子機器装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の電子機器装置であって、
前記カバー部及び前記筐体は、ポリブチレンテレフタレートによって構成される、
電子機器装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の電子機器装置であって、
前記筐体は、開口を有する直方体形状である
電子機器装置。
【請求項13】
電子機器装置の製造方法であって、
所定の光透過性を有する樹脂部材を、100度から180度の間の金型温度によって成形されたカバー部が備える少なくとも一つの端子と回路基板をはんだ接合し、
レーザ光吸収性を有する部材によって構成された筐体に前記回路基板を収容し、
レーザ溶着によって前記カバー部を前記筐体に接合する、
電子機器装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子機器装置、及び、電子機器装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケース本体と蓋部とをレーザ溶着により取り付ける技術が知られている。例えば、特許文献1には、次の構成が開示されている。すなわち、ケース本体は、光吸収性を有する材料からなり、その上面には、接合部を有すると共に、その内側に位置して位置ずれ防止用のガイド壁部が一体に設けられている。これに対し、蓋部は、光透過性を有する材料からなり、上壁部が赤外線透過窓とされ、下部外周に接合用のフランジ部を有している。ケース本体に蓋部をレーザ溶着するにあたっては、ケース本体の接合部に、蓋部のフランジ部を突合せて重ねるように配置し、押え治具によって押え付けた状態とする。このとき、ガイド壁部により、蓋部のフランジ部の位置決めがなされる。そして、その突合せ状態で、レーザ溶着装置により、フランジ部を通して接合部の上面にレーザ光を照射する。これにより、ケース本体の接合部がレーザ光によって加熱されて溶融し、フランジ部の下面部と溶着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザ溶着において接合強度のばらつきを防ぐには、レーザ光が透過する部材の光透過性が均一であることが求められる。
【0005】
本開示の目的は、レーザ溶着おける、レーザ光が透過する部材の光透過性が均一な電子機器装置及び当該電子機器装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、所定の光吸収性を有する樹脂部材によって構成され、開口部を有する筐体と、前記筐体に収容され、電子回路が形成された回路基板と、一端部と他端部を備え、前記他端部が前記回路基板に電気的に接続された、少なくとも一つの端子と、前記筐体の前記開口部を覆い、前記少なくとも一つの端子が貫通し、所定の光透過性を有する樹脂部材で構成されたカバー部と、を備え、前記少なくとも一つの端子の前記一端部は、前記カバー部を基準に、前記他端部と反対に位置し、前記カバー部は、100度から180度の間の金型温度によって成形され、前記少なくとも一つの端子と前記回路基板は、はんだ接合によって電気的に接続され、前記筐体と前記カバー部は、レーザ溶着により接続された、電子機器装置を提供する。
【0007】
本開示の一態様は、電子機器装置の製造方法であって、所定の光透過性を有する樹脂部材を、100度から180度の間の金型温度によって成形されたカバー部が備える少なくとも一つの端子と回路基板をはんだ接合し、レーザ光吸収性を有する部材によって構成された筐体に前記回路基板を収容し、レーザ溶着によって前記カバー部を前記筐体に接合する、電子機器装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、レーザ溶着おける、レーザ光が透過する部材の光透過性が均一な電子機器装置及び当該電子機器装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係る電子機器装置の構成を示す分解斜視図
【
図2】本実施の形態に係るカバー部における端子と回路基板とをはんだ接合した状態を示す平面図
【
図3】本実施の形態に係るカバー部におけるレーザ溶着の箇所を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を適宜参照して、本開示の実施の形態について、詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、すでによく知られた事項の詳細説明及び実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の記載の主題を限定することは意図されていない。
【0011】
(本実施の形態)
図1は、本実施の形態に係る電子機器装置1の構成を示す分解斜視図である。
図2は、本実施の形態に係るカバー部4における端子5と回路基板3とをはんだ接合7した状態を示す平面図である。
図3は、本実施の形態に係るカバー部4におけるレーザ溶着の箇所を示す正面図である。
【0012】
なお、説明の便宜上、
図1に示すように、回路基板3の主面に対して垂直に延びる軸をZ軸とする。Z軸に垂直かつカバー部4の主面に対して垂直に延びる軸をY軸とする。Y軸及びZ軸に対して垂直な軸をX軸とする。また、説明の便宜上、Z軸の正方向を「上」、Z軸の負方向を「下」、Y軸の負方向を「前」、Y軸の正方向を「後」、X軸の正方向を「右」、X軸の負方向を「左」と称する場合がある。なお、これらの方向に係る表現は、説明の便宜上用いられるものであって、当該構造の実使用時における姿勢を限定する意図ではない。
【0013】
電子機器装置1は、車両に搭載される。電子機器装置1を搭載する車両の例として、自動二輪車(オートバイ)、自動車、又は、電動アシスト付き自転車等が挙げられる。
【0014】
電子機器装置1は、筐体2と、回路基板3と、カバー部4と、少なくとも1つの端子5とを含んで構成される。
【0015】
筐体2は、中空の直方体形状を呈し、一面に開口部2Aを有する。ただし、筐体2の形状は、直方体に限られず、内部に回路基板3を収容できるのであればどのような形状であってもよい。筐体2は、所定の光吸収性を有する樹脂部材によって構成される。
【0016】
回路基板3は、電子回路(図示しない)が形成され、筐体2の開口部2Aから筐体2の内部に収容される。回路基板3は、電子機器装置1が搭載される車両の制御に用いられる。よって、回路基板3はECU(Electronic Control Unit)と読み替えられ、筐体2はECUケースと読み替えられてもよい。
【0017】
カバー部4は、筐体2の開口部2Aを覆う。カバー部4は、少なくとも1つの端子5が貫通している。
【0018】
図2に示すように、少なくとも1つの端子5は一端部5Aと他端部5Bを備え、一端部5Aはカバー部4を基準に他端部5Bと反対に位置し、他端部5Bは回路基板3に電気的に接続されている。少なくとも1つの端子5は、カバー部4と一体に形成されてよい。あるいは、少なくとも1つの端子5とカバー部4とは別体であってもよい。少なくとも1つの端子5は、コネクタ6の一部であってよい。少なくとも1つの端子5の一部は、曲がっていてよい。少なくとも1つの端子5は、回路基板3を貫通していてよい。
【0019】
図2に示すように、少なくとも1つの端子5と回路基板3は、はんだ接合7によって電気的に接続される。
【0020】
筐体2の光吸収性(光吸収率)は、カバー部4の光吸収性(光吸収率)より高い。また、カバー部4の光透過性(光透過率)は、筐体2の光透過性(光透過率)より高い。そして、
図3に示すように、筐体2の開口部2Aを形成する縁部2B(
図1参照)と対向するカバー部4における部分(つまりカバー部4の外部に露出する側の主面における外周部4B(
図3参照))に対して、レーザ光を照射する。カバー部4は筐体2よりも光透過性が高いので、照射されたレーザ光は、カバー部4を透過し、筐体2の縁部2Bを加熱及び溶融させる。これにより、カバー部4は、筐体2の縁部2Bに接合し、開口部2Aを塞ぐ。このように、カバー部4は、レーザ溶着によって筐体2に接合される。
【0021】
カバー部4及び筐体2は、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)によって構成される。ただし、カバー部4及び筐体2は、PBTとは異なる素材によって構成されてもよい。
【0022】
カバー部4と筐体2とが接合される部分から、少なくとも1つの端子5と回路基板3がはんだ接合7される部分までの距離D(
図3参照)は、所定の距離未満である。すなわち、はんだ接合7される部分の位置と、カバー部4におけるレーザ光が照射される外周部4Bとは、比較的近い。そのため、カバー部4は、はんだ接合7が行われる際に、はんだを溶融させる比較的高い温度(例えば230度)に曝される。従来、レーザ光を透過させるカバー部4は、結晶化を抑制するために、40度~50度といった比較的低い金型温度で成形されている。このように、比較的低い金型温度で成形されたカバー部4は、はんだ接合7で比較的高い温度に曝されたとき、その比較的高い温度に曝された部分が再結晶化し、光透過率が低下する。例えば、約40度の金型温度で成形されたカバー部4は、はんだ接合7が行われる前の光透過率が約70%であったものが、はんだ接合7が行われた後の光透過率が約50%~60%に低下する。そのため、カバー部4におけるレーザ光の光透過率にムラが生じてしまい、レーザ溶着によるカバー部4と筐体2との接合強度にばらつきが生じてしまう。接合強度のばらつきは、筐体2内の回路基板3に対する防水性能の低下、及び、車両の振動に対する電子機器装置1の耐性の低下等につながる。
【0023】
そこで、本実施の形態では、カバー部4を、100度から180度の間の金型温度で成形する。好ましくは、カバー部4を、100度から120度の間の金型温度で成形する。これにより、カバー部4は、はんだ接合7が行われた時に比較的高い温度に曝されたとしても、光透過率がほとんど低下しない。例えば、約120度の金型温度で成形されたカバー部4は、はんだ接合7が行われる前の光透過率が約40%であったものが、はんだ接合7が行われた後の光透過率が約37%~40%となる。つまり、本実施の形態に係るカバー部4の光透過率は、はんだ接合7が行われる前とはんだ接合7が行われた後で、ほとんど低下しない。そのため、カバー部4におけるレーザ光の光透過率にムラが生じず(つまり光透過率が均一であるため)、レーザ溶着によるカバー部4と筐体2との接合強度にばらつきが生じない。
【0024】
なお、レーザ溶着に用いられるレーザ発振器はファイバレーザ(Yb)であってよい。レーザ光の波長は1070nmであってよい。レーザ発振器の最大レーザ出力は100Wであってよい。ただし、本実施の形態において、レーザ発振器の種別、レーザ光の波長、及び、最大レーザ出力は、これらに限られない。
【0025】
<電子機器装置の製造方法>
本実施の形態に係る電子機器装置1は、次の工程によって製造されてよい。
【0026】
(工程1)所定の光透過性を有する樹脂部材を用い、100度から180度(好ましくは100度から120度)の間の金型温度によって、カバー部4を成形する。
【0027】
(工程2)カバー部4と一体に形成された少なくとも1つの端子5の他端部5Bを、回路基板3にはんだ接合7する。少なくとも1つの端子5と回路基板3のはんだ接合7は、部分ディップ、ディップ槽、又は、リフロー炉の少なくとも1つを使ってなされてよい。
【0028】
(工程3)筐体2の内部に回路基板3をスライドさせながら収容し、筐体2の開口部2Aを覆うようにカバー部4を配置する。
【0029】
(工程4)カバー部4の外周部4Bに向けてレーザ光を照射し、レーザ溶着によってカバー部4を筐体2に接合する。
【0030】
以上の工程により、カバー部4と筐体2とを安定した接合強度でレーザ溶着できる。よって、防水性能が高く、車両の振動に対する耐性の高い電子機器装置1を製造できる。
【0031】
以上、添付図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に相当し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本開示の技術は、レーザ溶着に有用である。
【符号の説明】
【0033】
1 電子機器装置
2 筐体
2A 開口部
2B 縁部
3 回路基板
4 カバー部
4B 外周部
5 端子
5A 一端部
5B 他端部
6 コネクタ
7 はんだ接合