(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116131
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】被覆部材および被覆方法
(51)【国際特許分類】
B60M 1/30 20060101AFI20230815BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20230815BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20230815BHJP
H01B 17/58 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
B60M1/30 331
F16L57/00 A
B60M1/30 304
H02G3/04 081
H01B17/58 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018739
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】久部 智史
(72)【発明者】
【氏名】小森 敦
(72)【発明者】
【氏名】関口 好彦
(72)【発明者】
【氏名】八子 雄吾
【テーマコード(参考)】
3H024
5G333
5G357
【Fターム(参考)】
3H024AA04
3H024AB03
3H024AC03
5G333AA10
5G333AB16
5G333CB19
5G333DA05
5G333EA02
5G357DA06
5G357DA10
5G357DB01
5G357DC20
5G357DD01
5G357DD05
5G357DD14
(57)【要約】
【課題】
作業性の向上かつ長期安定性に優れた被覆部材および被覆方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、長尺状の電車架線50の外周を被覆するための略円筒状の被覆部材1であって、その内周が電車架線50の外周より長くなるよう形成され、周側部の少なくとも一部が、軸方向全長に亘って自己融着性を有する自己融着部材10からなる被覆部材1および被覆方法に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の電車架線の外周を被覆するための略円筒状の被覆部材であって、
その内周が前記電車架線の外周より長くなるよう形成され、
周側部の少なくとも一部が、軸方向全長に亘って自己融着性を有する自己融着部材からなることを特徴とする被覆部材。
【請求項2】
前記自己融着部材からなる領域において、前記軸方向全長に亘って、他の部分より薄肉に形成された薄肉部を備えることを特徴とする請求項1に記載の被覆部材。
【請求項3】
前記薄肉部の両側に、前記薄肉部に向かって徐々に薄肉となる傾斜面を備えることを特徴とする請求項2に記載の被覆部材。
【請求項4】
前記自己融着部材からなる領域に、前記軸方向全長に亘って開口する開口部を備えることを特徴とする請求項1に記載の被覆部材。
【請求項5】
前記開口部の両端部に向かって徐々に薄肉となる傾斜面を備えることを特徴とする請求項4に記載の被覆部材。
【請求項6】
前記開口部の一端部が前記開口部の他端部よりも小径に巻回され、前記一端部と前記他端部とが円周方向に沿って重なり合うよう配置されるものであり、
前記開口部の前記一端部と前記他端部とは、径方向に互いに離間して配置されることを特徴とする請求項4または5に記載の被覆部材。
【請求項7】
前記自己融着部材は、自己融着性シリコーンゴムであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の被覆部材。
【請求項8】
前記自己融着部材と、自己融着性を有さない非自己融着部材と、から構成され、
前記非自己融着部材は、シリコーンゴムであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の被覆部材。
【請求項9】
押出成形により形成される長尺状の部材であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の被覆部材。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の被覆部材を用いて、長尺状の電車架線の外周を被覆する方法であって、
前記自己融着部材からなる領域のうち軸方向に沿って開口する開口部分から前記電車架線の外周に巻き付けて被覆する被覆工程と、
前記電車架線の外周に巻きつけた状態で、前記自己融着部材からなる前記開口部分の両端部を重ね合わせて接合する接合工程と、
を含む被覆方法。
【請求項11】
前記自己融着部材からなる領域を前記軸方向に沿って切断して前記開口部分を形成する切断工程をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の被覆方法。
【請求項12】
前記切断工程は、前記自己融着部材からなる領域において、前記軸方向全長に亘って他の部分より薄肉に形成された薄肉部に沿って切断することを特徴とする請求項11に記載の被覆方法。
【請求項13】
前記被覆工程は、前記自己融着部材からなる領域に前記軸方向全長に亘って開口するよう形成されている開口部から前記電車架線の外周に巻き付けて被覆することを特徴とする請求項10に記載の被覆方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆部材および被覆方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電車架線は、風等により架線柱に接触して短絡する虞がある。このような事態を抑制するため、一般に、電車架線は、その外周を被覆する被覆部材を備えている。このような被覆部材として、径方向に熱収縮性を有する熱収縮チューブが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既設の電車架線等の被被覆物に対して熱収縮チューブを用いて被覆する場合、接続コネクタや配管接手部を外した後に熱収縮チューブを挿入し、挿入後に接続コネクタや配管接手部を再度取り付ける必要があり、作業性が悪くなるという問題があった。一方、当該被被覆物に対して粘着テープを巻き回して被覆する場合、敷設される被膜が薄くなり、長期的に絶縁被膜を形成することが難しくなる虞があった。また、長尺の被被覆物や管径の大きい被被覆物に対して粘着テープを巻き回して被覆する場合は作業性が悪くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、作業性の向上かつ長期安定性に優れた被覆部材および被覆方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る被覆部材は、長尺状の電車架線の外周を被覆するための略円筒状の被覆部材であって、その内周が前記電車架線の外周より長くなるよう形成され、周側部の少なくとも一部が、軸方向全長に亘って自己融着性を有する自己融着部材からなる。
(2)別の実施形態に係る被覆部材において、好ましくは、前記自己融着部材からなる領域において、前記軸方向全長に亘って、他の部分より薄肉に形成された薄肉部を備えても良い。
(3)別の実施形態に係る被覆部材において、好ましくは、前記薄肉部の両側に、前記薄肉部に向かって徐々に薄肉となる傾斜面を備えても良い。
(4)別の実施形態に係る被覆部材において、好ましくは、前記自己融着部材からなる領域に、前記軸方向全長に亘って開口する開口部を備えても良い。
(5)別の実施形態に係る被覆部材において、好ましくは、前記開口部の両端部に向かって徐々に薄肉となる傾斜面を備えても良い。
(6)別の実施形態に係る被覆部材において、好ましくは、前記開口部の一端部が前記開口部の他端部よりも小径に巻回され、前記一端部と前記他端部とが円周方向に沿って重なり合うよう配置されるものであり、前記開口部の前記一端部と前記他端部とは、径方向に互いに離間して配置されても良い。
(7)別の実施形態に係る被覆部材において、好ましくは、前記自己融着部材は、自己融着性シリコーンゴムであっても良い。
(8)別の実施形態に係る被覆部材において、好ましくは、前記自己融着部材と、自己融着性を有さない非自己融着部材と、から構成され、前記非自己融着部材は、シリコーンゴムであっても良い。
(9)別の実施形態に係る被覆部材において、好ましくは、押出成形により形成される長尺状の部材であっても良い。
(10)上記目的を達成するための一実施形態に係る被覆方法は、上述のいずれかに記載の被覆部材を用いて、長尺状の電車架線の外周を被覆する方法であって、前記自己融着部材からなる領域のうち軸方向に沿って開口する開口部分から前記電車架線の外周に巻き付けて被覆する被覆工程と、前記電車架線の外周に巻きつけた状態で、前記自己融着部材からなる前記開口部分の両端部を重ね合わせて接合する接合工程と、を含む。
(11)別の実施形態に係る被覆方法は、好ましくは、前記自己融着部材からなる領域を前記軸方向に沿って切断して前記開口部分を形成する切断工程をさらに含んでも良い。
(12)別の実施形態に係る被覆方法において、好ましくは、前記切断工程は、前記自己融着部材からなる領域において、前記軸方向全長に亘って他の部分より薄肉に形成された薄肉部に沿って切断しても良い。
(13)別の実施形態に係る被覆方法において、好ましくは、前記被覆工程は、前記自己融着部材からなる領域に前記軸方向全長に亘って開口するよう形成されている開口部から前記被被覆物の外周に巻き付けて被覆しても良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作業性の向上かつ長期安定性に優れた被覆部材および被覆方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る被覆部材の斜視図を示す。
【
図3】
図3は、
図1の被覆部材を用いて電車架線を被覆した状態の縦断面図を示す。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態に係る被覆部材の
図2と同視の縦断面図を示す。
【
図5】
図5は、
図4の被覆部材を用いて電車架線を被覆した状態の縦断面図を示す。
【
図6】
図6は、本発明の第3実施形態に係る被覆部材の
図2と同視の縦断面図を示す。
【
図7】
図7は、本発明の第4実施形態に係る被覆部材の
図2と同視の縦断面図を示す。
【
図8】
図8は、本発明の第5実施形態に係る被覆部材の
図2と同視の縦断面図を示す。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る被覆部材の製造方法の一部を説明するための図を示す。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る被覆部材を用いた被覆方法の主な工程のフローの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
1.被覆部材
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る被覆部材の斜視図を示す。
図2は、
図1の被覆部材の縦断面図をそれぞれ示す。
図3は、
図1の被覆部材を用いて電車架線を被覆した状態の縦断面図を示す。なお、縦断面図は、被覆部材の軸方向に垂直に切断した断面図である。以後の各実施形態においても同様である。
【0011】
この実施形態に係る被覆部材1は、例えば、長尺状の電車架線50の外周を被覆するための略円筒状の長尺部材である。被覆部材1は、その内周が電車架線50の外周より長くなるよう形成され、周側部の少なくとも一部が、軸方向(
図2の紙面奥行方向)全長に亘って自己融着性を有する自己融着部材10からなる。被覆部材1は、軸方向に沿う中空部30を備える。中空部30は、電車架線50を被覆する際に、電車架線50を配置可能な部位である。この実施形態において、被覆部材1は、少なくとも電車架線50を絶縁被覆するための部材である。ただし、被覆部材1は、絶縁被覆に加え、防水被覆および/または防錆被覆するための部材であっても良い。また、被覆部材1は、絶縁被覆に代えて、防水被覆および/または防錆被覆するための部材であっても良い。
【0012】
この実施形態において、被覆部材1は、自己融着部材10と、自己融着性を有さない非自己融着部材20と、から構成される。被覆部材1は、好ましくは、自己融着部材10からなる領域において、軸方向全長に亘って、他の部分より薄肉に形成された薄肉部12を備える。薄肉部12の厚さは、ハサミやカッターナイフ等の切断具や作業者の手等で容易に引き裂き可能な厚さが好ましい。具体的に、薄肉部12の厚さは、0.05~1mmが好ましく、0.1~0.5mm以下がより好ましい。被覆部材1における薄肉部12以外の領域の厚さは、1~10mmが好ましく、2~5mmがより好ましい。ただし、被覆部材1の厚さは、電車架線50の種類や用途に応じて適宜設計することが好ましい。また、被覆部材1は、好ましくは、薄肉部12の両側に、薄肉部12に向かって徐々に薄肉となる傾斜面14,14を備える。この実施形態において、傾斜面14は、薄肉部12に向かって徐々に薄肉となる湾曲面である。ただし、傾斜面14は、薄肉部12に向かって徐々に薄肉となる形態であれば、その形状に特に制約はなく、例えば、薄肉部12に向かって直線的に薄肉となる傾斜面等であっても良い。被覆部材1において、自己融着部材10からなる領域は、被覆部材1の内周(または外周)における5%以上100%未満の大きさであることが好ましい。
【0013】
自己融着部材10は、好ましくは、自己融着性シリコーンゴムである。自己融着性シリコーンゴムは、下記の平均組成式(I)で示されるジオルガノポリシロキサンとホウ酸化合物とを含有するシリコーン組成物を硬化させた硬化物である。
【0014】
【化1】
(式(I)におけるR
1は、炭素数1~10の炭化水素基、nは、1.98~2.02である。)
【0015】
式(I)におけるR1としては、炭素数1~10、好ましくは、炭素数1~8の炭化水素基である。炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基等が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基等が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、トリル基等が挙げられる。また、R1としては、前述の炭化水素基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子、シアノ基等で置換された基でも良い。シリコーン組成物を硬化させる際に、後述の有機過酸化物で硬化を促進させる場合には、R1がアルケニル基、または、アルケニル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子、シアノ基で置換された基が好ましい。式(I)におけるnは、1.98~2.02である。nの値がこの範囲から外れると、自己融着性が得られないことがある。
【0016】
ジオルガノポリシロキサンの25℃における動粘度は、100~100,000,000cStであることが好ましく、100,000~10,000,000cStであることがより好ましい。ジオルガノポリシロキサンの25℃における動粘度がこの範囲内であれば、硬化前の取り扱い性と硬化後の機械的物性に優れる。
【0017】
ホウ酸化合物としては、ホウ酸、無水ホウ酸の誘導体等が挙げられる。ホウ酸としては、無水ホウ酸、ピロホウ酸、オルトホウ酸等が挙げられる。無水ホウ酸の誘導体としては、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、トリメトキシボロキシン等が挙げられる。また、ホウ酸化合物として、ジメチルジメトキシシランまたはジメチルジエトキシシラン等のオルガノアルコキシシランと無水ホウ酸とを縮合させて得たポリオルガノボロシロキサンを用いることもできる。ホウ酸化合物は、1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0018】
シリコーン組成物におけるホウ酸化合物の含有割合は、ジオルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1~50質量部であることが好ましく、0.5~30質量部であることがより好ましく、1~5質量部であることがさらに好ましい。ホウ酸化合物の含有割合が上記下限値以上であれば、十分な自己融着性を確保でき、上記上限値以下であれば、機械的物性の低下を抑制することができる。
【0019】
シリコーン組成物は、その硬化を促進するために、有機過酸化物を含んでいても良い。有機過酸化物としては、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。これらの有機過酸化物は、1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0020】
シリコーン組成物における有機過酸化物の含有割合は、ジオルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、0.5~3.0質量部であることがより好ましい。有機過酸化物の含有割合が上記下限値以上であれば、十分に硬化を促進できる。しかし、有機過酸化物の含有割合が上記上限値を超えても、含有割合に応じた硬化促進は見られなくなる。
【0021】
非自己融着部材20は、好ましくは、シリコーンゴムである。非自己融着部材20は、より好ましくは、使用前は未硬化若しくは半硬化状態であり、被被覆物50の外周に巻き付けた後で硬化する硬化性シリコーンゴム組成物である。硬化性シリコーンゴム組成物は、一般に2種類に大別される。当該2種類の硬化性シリコーンゴム組成物のうち一方は、未使用時には低温で保存し、硬化時には常温以上に加熱することによって硬化させる、いわゆる付加反応型の硬化性シリコーンゴム組成物である。他方は、未使用時には乾燥環境(防湿環境)で保存し、硬化時には空気中の水分を吸湿させることによって硬化させる、いわゆる縮合反応型の硬化性シリコーンゴム組成物である。非自己融着部材20は、付加反応型の硬化性シリコーンゴム組成物であっても良いし、縮合反応型の硬化性シリコーンゴム組成物であっても良いが、例えば、既設の被被覆物50の外周に被覆する場合等の取り扱い性を考慮すると、縮合反応型の硬化性シリコーンゴム組成物が好ましい。非自己融着部材20は、25℃におけるウイリアムス可塑度が50~500の範囲内にあることが好ましい。なお、ウイリアムス可塑度は、平行板可塑度計(ウイリアムスプラストメーター)を使用し、JIS K 6249「未硬化および硬化シリコーンゴムの試験方法」に規定の測定方法に準じて測定されるものである。
【0022】
自己融着部材10および非自己融着部材20は、好ましくは、絶縁破壊強さが10~20kV/mmであり、より好ましくは、15kV/mmである。なお、自己融着部材10および非自己融着部材20の絶縁破壊強さは、JIS C2110-1に準拠し、気中法による短時間絶縁破壊試験により測定したものである。
【0023】
被覆部材1は、好ましくは、薄肉部12を切断して開口した開口部分16(
図11を参照)から電車架線50が中空部30に挿入されて、電車架線50の外周に巻き付けられる(
図3を参照)。被覆部材1の内周は電車架線50の外周より長くなるよう形成されているため、被覆部材1は、電車架線50に巻き付いた状態で、自己融着部材10からなる開口部分16の両端部が重なり合う。そして、被覆部材1は、重なり合っている開口部分16の両端部が自己融着により接合し、電車架線50の外周を被覆することができる(
図3を参照)。よって、例えば、非常に長尺の電車架線50や径の大きい電車架線50の外周を被覆する場合や、既設の電車架線の外周を被覆する場合であっても、容易に被覆することができる。また、被覆部材1によれば、電車架線50に対して粘着テープ等を巻き回して被覆する場合に比べて、電車架線50に敷設される被膜を厚く設計しやすく、長期的に安定した絶縁被膜を形成することができる。また、被覆部材1は、薄肉部12の両側に傾斜面14,14を備えるため、開口部分16の両端部が傾斜面14,14に沿って重なり合う。よって、被覆部材1は、開口部分16の一方の端部の内周面と他方の端部の外周面との間の隙間が小さくなるため、自己融着による接合の強度が向上し、さらに長期的に安定した絶縁被覆を形成することができる。被覆方法については、詳細を後述する。
【0024】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る被覆部材について説明する。先の実施形態と共通する部分については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0025】
図4は、本発明の第2実施形態に係る被覆部材の
図2と同視の縦断面図を示す。
図5は、
図4の被覆部材を用いて電車架線を被覆した状態の縦断面図を示す。
【0026】
第2実施形態に係る被覆部材1aは、第1実施形態に係る被覆部材1と類似の構造を有するが、自己融着部材10に代えて自己融着部材10aを備える点において、第1実施形態に係る被覆部材1と異なる。
【0027】
被覆部材1aは、自己融着部材10aからなる領域において、軸方向全長に亘って、他の部分より薄肉に形成された薄肉部12aを備える。薄肉部12aの厚みは、先述の薄肉部12の厚みの範囲内であることが好ましい。被覆部材1aは、第1実施形態に係る被覆部材1と異なり、傾斜面14,14を備えていない。より具体的には、薄肉部12aは、自己融着部材10aからなる領域に形成された切り欠きである(
図4を参照)。被覆部材1aは、被覆部材1と同様に、その内周が電車架線50の外周より長くなるよう形成されている。
【0028】
このような被覆部材1aにおいても、被覆部材1と同様に、薄肉部12aを切断して開口した開口部分から電車架線50が中空部30に挿入されて、電車架線50の外周に巻き付けられる(
図5を参照)。被覆部材1aは、被覆部材1と同様に、電車架線50に巻き付いた状態で、自己融着部材10からなる開口部分の両端部が重なり合う。そして、被覆部材1aは、重なり合っている部分が自己融着により接合し、電車架線50の外周を被覆することができる(
図5を参照)。よって、被覆部材1aは、被覆部材1と同様に、例えば、非常に長尺の電車架線50や径の大きい電車架線50の外周を被覆する場合や、既設の電車架線の外周を被覆する場合であっても、容易に被覆することができる。また、被覆部材1aもまた、被覆部材1と同様に、電車架線50に対して粘着テープ等を巻き回して被覆する場合に比べて、電車架線50に敷設される被膜を厚く設計しやすく、長期的に安定した絶縁被膜を形成することができる。
【0029】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る被覆部材について説明する。先の実施形態と共通する部分については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0030】
図6は、本発明の第3実施形態に係る被覆部材の
図2と同視の縦断面図を示す。
【0031】
第3実施形態に係る被覆部材1bは、第1実施形態に係る被覆部材1と類似の構造を有するが、自己融着部材10に代えて自己融着部材10bを備える点および非自己融着部材20を備えていない点において、第1実施形態に係る被覆部材1と異なる。
【0032】
被覆部材1bは、自己融着部材10bから構成される略円筒状の長尺部材である。被覆部材1bは、被覆部材1と同様に、薄肉部12bと、傾斜面14b,14bとを備える。すなわち、被覆部材1bは、非自己融着部材20を備えず、被覆部材1が自己融着部材10bのみから構成されている点以外は、第1実施形態に係る被覆部材1と同様である。このような被覆部材1bにおいても、第1実施形態に係る被覆部材1と同様の効果を奏する。
【0033】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る被覆部材について説明する。先の実施形態と共通する部分については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0034】
図7は、本発明の第4実施形態に係る被覆部材の
図2と同視の縦断面図を示す。
【0035】
第4実施形態に係る被覆部材1cは、自己融着部材10cから構成される略円筒状の長尺部材である。被覆部材1cは、軸方向(
図7の紙面奥行方向)に沿う中空部30cと、軸方向全長に亘って開口する開口部16cと、を備える。被覆部材1cは、開口部16cの一端部17cが開口部16cの他端部17dよりも小径に巻回され、一端部17cと他端部17dとが円周方向に沿って重なり合うよう配置された、略e字状の部材である(
図7を参照)。被覆部材1cは、開口部16cの一端部17cと他端部17dとが、径方向に互いに離間して配置される。被覆部材1cは、その内周が電車架線50の外周より長くなるよう形成されている。また、被覆部材1cは、開口部16cの両端部17c,17dに向かって徐々に薄肉となる傾斜面14c,14cを備える。なお、自己融着部材10cの構成材料は、自己融着部材10と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0036】
被覆部材1cは、被覆部材1,1a(
図3および
図5を参照)と同様に、開口部16cから電車架線50が中空部30cに挿入されて、電車架線50の外周に巻き付けられる。被覆部材1cは、電車架線50に巻き付いた状態で、開口部16cの一端部17cと他端部17dとが重なり合い、自己融着により接合する。これにより、被覆部材1cは、電車架線50の外周を被覆することができる。よって、被覆部材1cにおいても、第1実施形態に係る被覆部材1と同様の効果を奏する。
【0037】
この実施形態において、被覆部材1cは、自己融着部材10cのみから構成されていたが、第1実施形態および第2実施形態に係る被覆部材1,1aと同様に、自己融着部材と非自己融着部材とから構成されていても良い。この場合、被覆部材1cは、開口部16cの両端部17c,17dから所定領域を自己融着部材からなる領域とし、その他の領域を非自己融着部材からなる領域とするのが好ましい。このように開口部16cの両端部17c,17dから所定領域のみを自己融着部材で形成することにより、電車架線50の外周に被覆する際の取り扱い性を向上させることができる。また、被覆部材1cは、傾斜面14c,14cを備えていなくとも良い。また、被覆部材1cは、開口部16cの他端部17dが開口部16cの一端部17cよりも小径に巻回された形態であっても良い。
【0038】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態に係る被覆部材について説明する。先の実施形態と共通する部分については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0039】
図8は、本発明の第5実施形態に係る被覆部材の
図2と同視の縦断面図を示す。
【0040】
第5実施形態に係る被覆部材1dは、自己融着部材10d,10eと、非自己融着部材20dと、から構成される略円筒状の長尺部材である。被覆部材1dは、軸方向(
図8の紙面奥行方向)に沿う中空部30dを備える。被覆部材1dは、その内周が電車架線50の外周より長くなるよう形成されている。被覆部材1dは、自己融着部材10d,10eからなる領域に、軸方向全長に亘って開口する開口部16dを備える。被覆部材1dにおいて、自己融着部材10dおよび自己融着部材10eは、開口部16dを挟んで隣接して備えられている。自己融着部材10dは、好ましくは、開口部16dの一端部から円周方向に沿う所定領域のうち、中空部30d側から所定の範囲に備えられる。自己融着部材10eは、好ましくは、開口部16dの他端部から円周方向に沿う所定領域のうち、外周側から所定の範囲に備えられる。なお、自己融着部材10dおよび非自己融着部材20dの構成材料は、自己融着部材10および非自己融着部材20とそれぞれ同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0041】
被覆部材1dは、被覆部材1,1a(
図3および
図5を参照)と同様に、開口部16dから電車架線50が中空部30dに挿入されて、自己融着部材10e上に自己融着部材10dが重なるように電車架線50の外周に巻き付けられる。被覆部材1dは、電車架線50に巻き付いた状態で、重なり合った自己融着部材10eと自己融着部材10dとが自己融着により接合する。これにより、被覆部材1dは、電車架線50の外周を被覆することができる。よって、被覆部材1dは、被覆部材1と同様に、例えば、非常に長尺の電車架線50や径の大きい電車架線50の外周を被覆する場合や、既設の電車架線の外周を被覆する場合であっても、容易に被覆することができる。また、被覆部材1dもまた、被覆部材1と同様に、電車架線50に対して粘着テープ等を巻き回して被覆する場合に比べて、電車架線50に敷設される被膜を厚くすることができ、長期的に安定した絶縁被膜を形成することができる。なお、被覆部材1dは、被覆部材1cと同様に、開口部16dの両端部に向かって徐々に薄肉となる傾斜面を備えていても良い。また、被覆部材1dは、自己融着部材10dが外周側に備えられ、かつ自己融着部材10eが中空部30d側に備えられていても良い。
【0042】
2.被覆部材の製造方法
次に、被覆部材の製造方法について説明する。ここでは、先述の第1実施形態に係る被覆部材1を例に挙げて、被覆部材1の製造方法を説明する。
【0043】
図9は、第1実施形態に係る被覆部材の製造方法の一部を説明するための図を示す。
図9に示すaは、被覆部材の製造工程の一部に使用されるマンドレルユニットの斜視図である。また、
図9に示すbは、aの斜視図の一部透過図である。
【0044】
被覆部材1は、好ましくは、押出成形により形成され、より好ましくは、2台の押出加工機を用いた2色押出製法により形成される。被覆部材1の製造に使用可能な装置の一例としては、自己融着部材10を押出可能な押出加工機(以下、「自己融着部材押出加工機」とも称する。)と、非自己融着部材20を押出可能な押出加工機(以下、「自己融着部材押出加工機」とも称する。)と、自己融着部材押出加工機および非自己融着部材押出加工機に接続されたマンドレルユニット70(
図9を参照)と、を備える装置が挙げられる。マンドレルユニット70は、インサイドマンドレル71と、アウトサイドマンドレル72と、ダイス73と、ダイスホルダ74と、接続フランジ76,78と、を備える(
図9を参照)。接続フランジ76は、自己融着部材押出加工機に接続可能なフランジである。接続フランジ78は、非自己融着部材押出加工機に接続可能なフランジである。なお、自己融着部材押出加工機および非自己融着部材押出加工機は、自己融着部材10および非自己融着部材20をそれぞれ押出可能な押出加工機であれば、特に制約されない。
【0045】
被覆部材1は、好ましくは、次のように製造される。まず、自己融着部材押出加工機から押し出された自己融着部材10が接続フランジ76を介してマンドレルユニットに流入する。また、非自己融着部材押出加工機から押し出された非自己融着部材20が接続フランジ78を介してマンドレルユニット70に流入する。マンドレルユニット70に流入した自己融着部材10および非自己融着部材20は、インサイドマンドレル71とアウトサイドマンドレル72との間を流動し、ダイスホルダ74を介してダイス73へ流出する。ダイス73は、ダイスホルダ74から流入した自己融着部材10および非自己融着部材20からなる押出成形体80の外径を制御する部材である。この実施形態において、接続フランジ76,78から流入した自己融着部材10および非自己融着部材20は、インサイドマンドレル71およびアウトサイドマンドレル72に流入してからダイス73へ流出するまでの間に、薄肉部12および傾斜面14,14が形成され、被覆部材1(
図1を参照)と同様の形状の押出成形体80に成形される。そして、ダイス73から押し出された押出成形体80を加硫炉(不図示)にて加硫することにより、被覆部材1が製造できる。なお、マンドレルユニット70は、自己融着部材10および非自己融着部材20を流入して被覆部材1と同様の形状の押出成形体80を押出可能なユニットであれば、その構成は特に制約されない。
【0046】
第2実施形態および第5実施形態に係る被覆部材1a,1dにおいても、先述の被覆部材1の製造方法と同様の方法で製造可能である。被覆部材1aの製造方法において、接続フランジ76,78から流入した自己融着部材10および非自己融着部材20は、インサイドマンドレル71およびアウトサイドマンドレル72に流入してからダイス73へ流出するまでの間に、薄肉部12が形成されて、被覆部材1a(
図4を参照)と同様の形状の押出成形体が成形されれば良い。また、被覆部材1dの製造方法において、接続フランジ76,78から流入した自己融着部材10および非自己融着部材20は、インサイドマンドレル71およびアウトサイドマンドレル72に流入してからダイス73へ流出するまでの間に、開口部16dが形成されて、被覆部材1d(
図8を参照)と同様の形状の押出成形体が成形されれば良い。
【0047】
また、第3実施形態および第4実施形態に係る被覆部材1b,1cにおいても、先述の被覆部材1の製造方法と同様の方法で製造可能である。ただし、被覆部材1b,1cは、非自己融着部材20を備えていないため、非自己融着部材押出加工機および接続フランジ78は不要となる。被覆部材1bの製造方法において、接続フランジ76から流入された自己融着部材10は、インサイドマンドレル71とアウトサイドマンドレル72との間を流動し、ダイスホルダ74を介してダイス73へ流出する。接続フランジ76から流入した自己融着部材10は、インサイドマンドレル71およびアウトサイドマンドレル72に流入してからダイス73へ流出するまでの間に、薄肉部12および傾斜面14,14が形成され、被覆部材1b(
図6を参照)と同様の形状の押出成形体に成形されれば良い。また、被覆部材1cの製造方法においても同様に、接続フランジ76から流入した自己融着部材10は、インサイドマンドレル71およびアウトサイドマンドレル72に流入してからダイス73へ流出するまでの間に、開口部16cおよび傾斜面14c,14cが形成され、被覆部材1c(
図7を参照)と同様の形状の押出成形体に成形されれば良い。
【0048】
3.被覆方法
次に、本発明の実施形態に係る被覆方法について説明する。ここでは、本発明の実施形態に係る被覆方法の一例として、先述の第1実施形態に係る被覆部材1を用いた被覆方法について説明する。
【0049】
図10は、第1実施形態に係る被覆部材を用いた被覆方法の主な工程のフローの一例を示す。
図11は、
図10の被覆方法の各工程の状況を縦断面視にて示す。
【0050】
この実施形態に係る被覆方法は、切断工程(S100)と、被覆工程(S110)と、接合工程(S120)とを含む。以下、各工程について説明する。
【0051】
3.1 切断工程(S100)
切断工程は、自己融着部材10からなる領域を軸方向(
図11の紙面奥行方向)に沿って切断して開口部分16を形成する工程である。この実施形態において、切断工程は、好ましくは、自己融着部材10からなる領域に形成された薄肉部12に沿って切断して開口部分16を形成する(
図11のaを参照)。より具体的には、切断工程は、作業者がハサミやカッターナイフ等の切断具を用いて、若しくは、作業者の手により薄肉部12を引き裂くことにより、開口部分16が形成される。
【0052】
3.2 被覆工程(S110)
被覆工程は、開口部分16から電車架線50の外周に被覆部材1を巻き付けて被覆する工程である(
図11のbおよびcを参照)。より具体的には、被覆工程は、開口部分16から中空部30に電車架線50を挿入するように、開口部分16の一端部17aから電車架線50の外周に被覆部材1を巻き付ける。このとき、被覆部材1の内周は電車架線50の外周よりも長くなるよう形成されているため、被覆部材1は、自己融着部材10からなる開口部分16の一端部17a上に開口部分16の他端部17bが重なり合う(
図11のcを参照)。この実施形態において、被覆部材1は、薄肉部12の両側に傾斜面14,14を備えるため、開口部分16の一端部17aに向かって傾斜する傾斜面14に沿って開口部分16の他端部17bが重なるように、電車架線50の外周に巻き付けられる。よって、被覆工程において、開口部分16の一端部17aと他端部17b側の内周面との隙間、および他端部17bと一端部17a側の外周面との隙間が非常に小さくなるように、被覆部材1を電車架線50の外周に巻き付けて被覆することができる。このように被覆することにより、被覆部材1と電車架線50の外周との隙間もまた、非常に小さくすることができる(
図11のcを参照)。
【0053】
3.3 接合工程(S120)
接合工程は、被覆部材1を電車架線50の外周に巻きつけた状態で、自己融着部材10からなる開口部分16の両端部17a,17bを重ね合わせて接合する工程である(
図11のcを参照)。より具体的には、接合工程は、被覆部材1のうち重なり合っている開口部分16の両端部17a,17bを含む領域が自己融着により接合する。これにより、被覆部材1により被被覆物50の外周を被覆することができる。この実施形態では、被覆部材1は薄肉部12の両側に傾斜面14,14を備えるため、被覆工程において、開口部分16の一端部17aと他端部17b側の内周面との隙間、および他端部17bと一端部17a側の外周面との隙間が非常に小さくなるように、被覆部材1を電車架線50の外周に巻き付けて被覆されている。この状態において、被覆部材1の自己融着部材10からなる領域が自己融着により接合するため、被覆部材1のうち重なり合っている領域は強固に接合することができる。また、この状態においては、被覆部材1と被被覆物50の外周との隙間も非常に小さくなる(
図11のcを参照)。よって、このような被覆方法によれば、被覆部材1により長期的に安定した絶縁被覆を形成することができる。また、このような被覆方法によれば、薄肉部12を引き裂いて開口部分16を形成し、開口部分16から中空部30に電車架線50を挿入するように被覆部材1を巻き付けるという簡単な工程により、被被覆物50の外周を被覆することができる。よって、例えば、非常に長尺の電車架線50や径の大きい電車架線50の外周を被覆する場合や、既設の電車架線の外周を被覆する場合であっても、容易に被覆することができる。
【0054】
第2実施形態および第3実施形態に係る被覆部材1a,1bにおいても、先述の被覆方法(
図10を参照)と同様の方法で、電車架線50の外周を被覆することができる。また、第4実施形態および第5実施形態に係る被覆部材1c,1dにおいても、先述の被覆方法(
図10を参照)と同様の方法で、電車架線の外周を被覆することができる。ただし、被覆部材1c,1dを用いた被覆方法においては、切断工程(S100)を省略することが好ましい。また、被覆部材1c,1dを用いた被覆方法においては、被覆工程(S110)において、予め被覆部材1c,1dに形成されている開口部16c,16dから中空部30c,30dに電車架線を挿入するように、電車架線50の外周に被覆部材1c,1dを巻き付けて被覆すれば良い。
【0055】
4.その他の実施形態
上述のように、本発明の好適な各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0056】
先述の第2実施形態において、被覆部材1aは、自己融着部材10aおよび非自己融着部材20aから構成されていたが(
図4を参照)、被覆部材1b(
図6を参照)と同様に、自己融着部材10aのみから構成されていても良い。
【0057】
また、先述の第5実施形態において、被覆部材1dは、自己融着部材10d,10eおよび非自己融着部材20dから構成されていたが(
図8を参照)、自己融着部材10d,10eのみから構成されていても良い。すなわち、被覆部材1dは、軸方向全長に亘って開口する開口部16dを有する略円筒状の自己融着部材からなる長尺部材であっても良い。この場合、被覆部材1dは、開口部16dの両端部に向かって徐々に薄肉となる傾斜面を備えていても良い。
【0058】
また、被覆部材1,1a,1bは、薄肉部12,12a,12bを備えていなくとも良い。すなわち、被覆部材1,1a,1bは、その厚さが一定の円筒形状であっても良い。この場合、切断工程(S100)において、自己融着部材10,10a,10bからなる領域を、切断具等により軸方向に沿って切断して開口部分を形成すれば良い。
【0059】
また、被覆部材1,1aは、自己融着部材10,10aに代えて、被覆部材1d(
図8を参照)の自己融着部材10d,10eと同様に、分離した2つの自己融着部材が隣接して備えられていても良い。より具体的には、当該2つの自己融着部材のうち一方は、薄肉部12,12aから円周方向に沿う所定領域のうち、中空部30,30a側から所定の範囲に備えられる。また、当該2つの自己融着部材のうち他方は、薄肉部12,12aを挟んで一方の自己融着部材に隣接して配置され、かつ外周側から所定の範囲に備えられる。この場合、被覆部材1,1aは、被覆部材1dと同様に、電車架線50に巻き付いた状態で、外周側に備えられた自己融着部材上に中空部30,30a側に備えられた自己融着部材が重なり、自己融着により接合することができる。
【0060】
また、被覆部材1dは、開口部16dを備えていなくとも良い。この場合、被覆部材1dによる被覆方法は、切断工程(S100)を省略することなく実行することが好ましい。より具体的には、切断工程(S100)において、自己融着部材10dと自己融着部材10eとの境界または境界近傍を、切断具等により軸方向に沿って切断して開口部16dを形成すれば良い。
【0061】
また、被覆部材1dは、被覆部材1c(
図7を参照)と同様に、開口部16dの一端部が他端部よりも小径に巻回された略e字状の部材であっても良い。この場合、被覆部材1dは、自己融着部材10eを備える端部が自己融着部材10dを備える端部より小径に巻回されることが好ましい。
【0062】
上述の各実施形態の複数の構成要素は、互いに組み合わせ不可能な場合を除いて、自由に組み合わせ可能である。例えば、自己融着部材10d,10eおよび非自己融着部材20dを、被覆部材1cの形態となるよう備えていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、例えば、鉄道架線等の長尺状の電車架線の外周を被覆する被覆部材および被覆方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1,1a,1b,1c,1d・・・被覆部材、10,10a,10b,10c,10d,10e・・・自己融着部材、12,12a,12b・・・薄肉部、14,14b,14c・・・傾斜面、16・・・開口部分、16c,16d・・・開口部、17c・・・開口部の一端部、17d・・・開口部の他端部、20,20d・・・非自己融着部材、50・・・電車架線。