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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116172
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】移乗器
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/10 20060101AFI20230815BHJP
   A61G 5/14 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
A61G7/10
A61G5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018818
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100177644
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 和樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 英一
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA08
4C040HH02
4C040JJ03
4C040JJ08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】介護者と被介護者の両者にかかる負担を減らしながら、容易かつ安定した移乗を行うことができる移乗器を提供する。
【解決手段】被介護者5を移乗させる移乗器1は、床面GLと接触する接地面20を有する支持脚部10と、支持脚部の前部に立設される支柱部11と、支柱部から前方に向かって延設され、介護者4が跨いで床面に両足を着けた状態で着座する着座部12と、支柱部の上部から後方に向かって延設され、吊り具33を介して被介護者5を吊持する一対の吊持アーム部31と、を備え、接地面は、被介護者の重心Gよりも上方に中心点Pを有する円弧状に形成され、介護者が着座部に着座した場合、支持脚部は前方に回動して被介護者を吊り上げ、介護者が着座部に着座しない場合、支持脚部は後方に回動して被介護者の重心から下した垂線を接地面と床面との接点に交差させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子と着座具との間で被介護者を移乗させる移乗器であって、
床面と接触する接地面を有し、前後方向に揺動可能に設けられる支持脚部と、
前記支持脚部の前部に立設される支柱部と、
前記支柱部から前方に向かって延設され、介護者が跨いで前記床面に両足を着けた状態で着座する着座部と、
前記支柱部の上部から後方に向かって延設され、前記被介護者を左右両側から挟むように配置され、吊り具を介して前記被介護者を吊持する一対の吊持アーム部と、を備え、
前記接地面は、一対の前記吊持アーム部に吊持された前記被介護者の重心よりも上方に中心点を有する円弧状に形成され、
前記介護者が前記着座部に着座した場合、前記支持脚部は前方に回動して前記被介護者を吊り上げ、
前記介護者が前記着座部に着座しない場合、前記支持脚部は後方に回動して前記被介護者の前記重心から下した垂線を前記接地面と前記床面との接点に交差させることを特徴とする移乗器。
【請求項2】
各々の前記吊持アーム部には、前記吊り具を引っ掛ける一対のフック部が前後方向に離間して設けられ、
一対の前記フック部は、前記被介護者の前記重心よりも上方で、前記重心から上方に延ばした垂直線を中心として等間隔に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の移乗器。
【請求項3】
前記支持脚部は、左右方向に間隔をあけて一対配置され、
一対の前記支持脚部の間隔は、前記車椅子の左右一対の車輪の間に進入可能、または左右一対の前記車輪の両外側に配置可能とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の移乗器。
【請求項4】
前記支持脚部は、
前記支柱部を支持する脚本体部と、
前記脚本体部の後端部に回動軸を介して回動可能に連結され、前記脚本体部と共に円弧状の前記接地面を形成した円弧姿勢と前記脚本体部に対して下方に折れるように回動した折曲姿勢との間で回動する回動脚部と、
前記円弧姿勢となった前記回動脚部が前記脚本体部に対して上方に折れるように回動することを規制する回動規制部と、を有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の移乗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被介護者の移乗に用いられる移乗器である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シャフトの上端部に被介護者の前側を受ける腹当て部が設けられ、シャフトの下端部に床面に接する接地部材が設けられた移乗支援器具が開示されている。腹当て部の両端部には被介護者の腋の下を受ける一対の抱き締め腕部が設けられ、一対の抱き締め腕部には介護者が保持する一対のハンドルが設けられている。接地部材の下端部には円弧状に曲げられたパイプが設けられている。パイプの円弧の中心点は、腹当て部に胸を当てた被介護者の重心よりも下方に位置している。介護者は、パイプに片足を載せ、両手でハンドルを手前に引き、移乗支援器具と被介護者の重量を支えながらパイプを揺動させて被介護者を押し上げる。この際、移乗支援器具の左右方向のバランスは、被介護者が自身の脚力により支えることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-179074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した移乗支援器具は被介護者を支持した状態で自立できない構造であり、介護者は両手でハンドルを握り、片足をパイプに載せ、もう片方の足のみで床面上に立ち続けなければならなかった。つまり、介護者は片足立ちという不安定な状態で常に両手で移乗支援器具を支え続けなければならなかった。そのため、介護者は、例えば、被介護者がバランスを崩しそうになる等、とっさの状況変化に対応することが難しかった。また、移乗支援器具のバランスを被介護者の脚力で支えることになっていたが、介護を必要とする被介護者の脚力で移乗支援器具を支えることは困難なことが多かった。
【0005】
さらに、上記した移乗支援器具では、被介護者の重心がパイプの円弧の中心点よりも上方に位置するため、傾き始めたパイプには水平に戻そうとする復元力が働かず、パイプは傾き始めると一気に最大限に傾いた姿勢になりやすい。このように、上記した移乗支援器具は急激かつ不安定に揺動し易い構造であるため、介護者および被介護者に負担がかかる虞があった。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮し、介護者と被介護者の両者にかかる負担を減らしながら、容易かつ安定した移乗を行うことができる移乗器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車椅子と着座具との間で被介護者を移乗させる移乗器であって、床面と接触する接地面を有し、前後方向に揺動可能に設けられる支持脚部と、前記支持脚部の前部に立設される支柱部と、前記支柱部から前方に向かって延設され、介護者が跨いで前記床面に両足を着けた状態で着座する着座部と、前記支柱部の上部から後方に向かって延設され、前記被介護者を左右両側から挟むように配置され、吊り具を介して前記被介護者を吊持する一対の吊持アーム部と、を備え、前記接地面は、一対の前記吊持アーム部に吊持された前記被介護者の重心よりも上方に中心点を有する円弧状に形成され、前記介護者が前記着座部に着座した場合、前記支持脚部は前方に回動して前記被介護者を吊り上げ、前記介護者が前記着座部に着座しない場合、前記支持脚部は後方に回動して前記被介護者の前記重心から下した垂線を前記接地面と前記床面との接点に交差させる。
【0008】
この場合、各々の前記吊持アーム部には、前記吊り具を引っ掛ける一対のフック部が前後方向に離間して設けられ、一対の前記フック部は、前記被介護者の前記重心よりも上方で、前記重心から上方に延ばした垂直線を中心として等間隔に配置されてもよい。
【0009】
この場合、前記支持脚部は、左右方向に間隔をあけて一対配置され、一対の前記支持脚部の間隔は、前記車椅子の左右一対の車輪の間に進入可能、または左右一対の前記車輪の両外側に配置可能とされてもよい。
【0010】
この場合、前記支持脚部は、前記支柱部を支持する脚本体部と、前記脚本体部の後端部に回動軸を介して回動可能に連結され、前記脚本体部と共に円弧状の前記接地面を形成した円弧姿勢と前記脚本体部に対して下方に折れるように回動した折曲姿勢との間で回動する回動脚部と、前記円弧姿勢となった前記回動脚部が前記脚本体部に対して上方に折れるように回動することを規制する回動規制部と、を有してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、介護者と被介護者の両者にかかる負担を減らしながら、容易かつ安定した移乗を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る移乗器および車椅子等を示す側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る移乗器および車椅子等を示す平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る移乗器の使用方法を説明する側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る移乗器の使用方法を説明する平面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る移乗器で被介護者を吊り上げた状態を示す側面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る移乗器で被介護者を吊り上げた状態を示す平面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る移乗器で被介護者をベッド上に移動させた状態を示す側面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る移乗器で被介護者をベッド上に移動させた状態を示す平面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る移乗器が自立する様子を示す側面図である。
図10】本発明の一実施形態の変形例に係る移乗器で被介護者を介護用ベッド上に移動させた状態を示す側面図である。
図11】本発明の一実施形態の変形例に係る移乗器が自立する様子を示す側面図である。
図12】本発明の一実施形態の他の変形例に係る移乗器および車椅子等を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、図面に示すFr、Rr、L、R、U、Dは、前、後、左、右、上、下を示している。本明細書では方向や位置を示す用語を用いるが、それらの用語は説明の便宜のために用いるものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、本明細書で用いる方向や位置は、原則として、被介護者から見た方向や位置としている。
【0014】
[移乗器の概要]
図1および図2を参照して、移乗器1の概要について説明する。図1は移乗器1および車椅子6等を示す側面図である。図2は移乗器1および車椅子6等を示す平面図である。
【0015】
移乗器1は、介護者4(後述する図3参照)によって操作され、被介護者5を車椅子6とベッド7(着座具(後述する図4参照))との間で移乗させる器具である。被介護者5は、例えば、高齢者や身体障害者等、車椅子6等に着座することはできるが、自力で起立したり歩行したりすることが困難な者を想定している。なお、移乗器1は、介護施設や被介護者5の自宅等、屋内で使用される。また、本明細書では、ベッド7を着座具の一例として挙げているが、これに限らず、ソファーや椅子等、被介護者5が着座することができるものであればよい。
【0016】
[車椅子]
図1および図2を参照して、車椅子6について簡単に説明する。車椅子6は、被介護者5の移動に用いられる一般的なものである。車椅子6は、金属製のフレーム40に取り付けられた座部41と、フレーム40の前部に軸支された一対の前輪42と、フレーム40の後部に軸支された一対の後輪43と、を備えている。一対の後輪43の間隔は、一対の前輪42の間隔よりも広くなっている。一対の後輪43の外側には、一対のハンドリム46が同軸上に固定されている。フレーム40の後上部には、介護者4が把持する一対のグリップ44が設けられている。フレーム40の前下部には、座部41に着座した被介護者5の両足5Aを載せる一対のステップ45が設けられている。なお、以下、前輪42と後輪43で共通する説明では、単に「車輪42,43」と呼ぶこととする。
【0017】
[移乗器]
次に、図1および図2を参照して、移乗器1の構成について説明する。移乗器1は、一対の支持脚部10と、支柱部11と、着座部12と、吊持部13と、備えている。一対の支持脚部10は床面GL上に配置され、支柱部11は一対の支持脚部10の前部に立設されている。着座部12は支柱部11から前方に向かって延設され、吊持部13は支柱部11の上部から後方に向かって延設されている。なお、一対の支持脚部10は、略同一形状であるため、以下の説明では、主に1つの支持脚部10について説明する。
【0018】
<支持脚部>
支持脚部10は、例えば、金属製(スチールやアルミニウム合金等)のパイプ状の部材で形成されている。一対の支持脚部10は、左右方向に間隔をあけて平行に配置されている。一対の支持脚部10の(左右方向の)間隔は、車椅子6の左右一対の前輪42の間隔よりも狭く、一対の前輪42の間に進入可能とされている(図2参照)。一対の支持脚部10の前部の間には、連結板21が架設されている。連結板21は、例えば、金属製の板材で形成され、ボルト等の締結手段(図示せず)によって一対の支持脚部10の前部に固定されている。なお、本明細書において「平行」との用語は、厳密に平行であることを要求する意味ではなく、僅かな傾きを許容する意味である。
【0019】
支持脚部10は、側面から見て、下方に膨出するように湾曲している(図1参照)。支持脚部10の下面は、床面GLと接触する接地面20とされている。支持脚部10は、接地面20の一部を床面GLに接触させ、転がるようにして前後方向に揺動可能に設けられている。接地面20は、着座姿勢の被介護者5の重心G(後述する図3図5等参照)よりも上方に中心点Pを有する円弧状に形成されている。具体的には、被介護者5の重心Gは概ね骨盤辺りに位置しており、接地面20の円弧の中心点Pは被介護者5の頭上に位置している。中心点Pから接地面20までの距離(半径R1)は、前後方向の何れの位置であっても一定(同一)とされている。なお、移乗器1に外力を加えていない状態では、接地面20は、前後方向の略中央(円弧の頂点)よりも、やや前側で床面GLに接触している(図1参照)。また、接地面20には、床面GLの傷付きを抑制するためにクッション材が取り付けられてもよい(図示せず)。
【0020】
<支柱部>
支柱部11は、連結板21の左右方向の中央部に立設されている。支柱部11は、連結板21から上方(略鉛直上方)に延設される直立部22と、直立部22の上端部から上斜め後方に延設される傾斜部23と、を有している。直立部22および傾斜部23は、例えば、金属製のパイプ状の部材で一体に形成されている。直立部22は、ボルト等の締結手段(図示せず)によって連結板21に固定されている。支柱部11(直立部22)の太さ(外径)は、車椅子6の一対のステップ45の間隔よりも僅かに小さく、一対のステップ45の間に進入可能とされている。
【0021】
<着座部>
着座部12は、支柱部11の直立部22の中間部に連結される支持アーム部24と、支持アーム部24の先端部(前端部)に取り付けられるシート部25と、を有している。支持アーム部24は、前斜め上方に向かって延設されている。シート部25は、介護者4の臀部4Dが接する部位であり、介護者4が座りやすいようにスポンジ等のクッション材で覆われている(図示せず)。
【0022】
支持アーム部24は、挟持部26と支持部27とを有し、例えば、金属製のパイプ状の部材で一体に形成されている。挟持部26は、平面から見て略U字状に形成され、直立部22を左右両側から挟み込むように配置されている(図2参照)。直立部22には上下方向に等間隔に複数の調節穴Hが穿設されており(図1参照)、挟持部26は、選択された1つの調節穴Hを貫通した締結部材28(例えば、ボルト・ナット等)によって直立部22に連結されている。締結部材28を取り外して貫通させる調節穴Hを変えることで、挟持部26(着座部12)の高さを変更することができる。支持部27は、挟持部26の前端部から前斜め上方に向かって延設されている。
【0023】
<吊持部>
吊持部13は、一対の吊持アーム部31の前端部を湾曲部30で連結し、平面から見て略U字状(またはコ字状)に形成されている(図2参照)。湾曲部30および一対の吊持アーム部31は、例えば、金属製のパイプ状の部材で一体に形成されている。なお、一対の吊持アーム部31は、左右対称となる形状であるため、以下の説明では、主に1つの吊持アーム部31について説明する。
【0024】
湾曲部30は、左右方向の中央部から両外側に向かって後方に湾曲しながら延設されている。湾曲部30(左右方向の中央部)は、ボルト等の締結手段(図示せず)によって支柱部11の傾斜部23の上端部に固定されている。一対の吊持アーム部31は、湾曲部30の左右方向の両端から後方に向かって延設されている。一対の吊持アーム部31は、左右方向に間隔をあけて平行に配置されている。一対の吊持アーム部31の間隔は、車椅子6の座部41の幅よりも僅かに広くなっている(図2参照)。なお、吊持部13(湾曲部30、吊持アーム部31)の一部または全部には、介護者4や被介護者5が触れることを考慮し、弾性材等から成るカバーが巻き付けられてもよい(図示せず)。
【0025】
吊持アーム部31には、一対のフック部32が前後方向に離間して設けられている。一対のフック部32は、吊持アーム部31の内側面に固定されている。各々のフック部32は、被介護者5に装着された吊り具33の掛合穴(図示せず)を引っ掛けられるように鉤爪状に形成されている。
【0026】
<吊り具>
吊り具33(スリング(後述する図3参照))は、移乗器1で被介護者5を吊り上げるために被介護者5に装着される一般的なものである。吊り具33は、例えば、合成繊維や植物繊維等で織られた布や合成樹脂製のシート等で形成され、被介護者5の背部、臀部および大腿部を支持する。吊り具33の左右方向の両端部には、二対のフック部32に掛けられる複数の掛合穴(図示せず)が穿設されている。
【0027】
なお、支持脚部10の円弧の長さや半径R1、支柱部11の長さ(高さ)、支柱部11の傾斜部23の角度、着座部12の支持アーム部24の長さや角度、吊持部13の幅や長さ等、各種寸法は、介護者4および被介護者5の体格等に応じて個別に設定されることが好ましい。また、支持脚部10、連結板21、支柱部11、支持アーム部24および吊持部13は、金属製に限らず、合成樹脂製または木製であってもよい。また、各部材の接合手段は、ボルト等の締結手段に限らず、溶接等で接合されてもよい。
【0028】
[移乗器の使用方法]
図1ないし図9を参照して、移乗器1の使用方法(移乗手順)について説明する。図3は移乗器1の使用方法を説明する側面図である。図4は移乗器1の使用方法を説明する平面図である。図5は移乗器1で被介護者5を吊り上げた状態を示す側面図である。図6は移乗器1で被介護者5を吊り上げた状態を示す平面図である。図7は移乗器1で被介護者5をベッド7上に移動させた状態を示す側面図である。図8は移乗器1で被介護者5をベッド7上に移動させた状態を示す平面図である。図9は移乗器1が自立する様子を示す側面図である。ここでは、一例として、車椅子6に載った被介護者5をベッド7上に移乗する場合について説明する。なお、図1図2図4図6および図8では、介護者4の図示は省略されている。
【0029】
介護者4は、移乗器1と被介護者5を載せた車椅子6とを、ベッド7の横に移動させる(図4等参照)。移乗器1および車椅子6(被介護者5)はベッド7の長手方向(前後方向)に沿って配置され(図4等参照)、移乗器1は車椅子6よりも前方に配置される(図1および図2参照)。また、介護者4は、車椅子6(座部41)に着座した被介護者5に吊り具33を装着する(図3参照)。
【0030】
介護者4は、移乗器1を後方へ押して床面GL上を滑らせて車椅子6に接近させ、一対の支持脚部10の先端側を床面GLとステップ45との隙間に差し入れる(図1参照)。介護者4は、更に移乗器1を後方に滑らせ、図3および図4に示すように、一対の支持脚部10を一対の車輪42,43の間に配置させる。この状態で、支柱部11の直立部22は車椅子6の一対のステップ45(被介護者5の両脚5B)の間に配置される。また、この状態で、一対の吊持アーム部31は、車椅子6(座部41)に着座した被介護者5を左右両側から挟むように配置される。なお、図3および図4等では、被介護者5の両腕5Cは、一対の吊持アーム部31の内側に収められているが、これに限らず、一対の吊持アーム部31の外側に出されてもよい(図示せず)。また、このタイミングで、介護者4は被介護者5に吊り具33を装着してもよい。また、介護者4は、移乗器1を後方に押すことに代えて、車椅子6を前方へ押してもよい。
【0031】
介護者4は、吊り具33の左右両側を持ち上げ、吊り具33の掛合穴を支持アーム部24のフック部32に掛ける(図3参照)。この状態では、被介護者5は、まだ車椅子6の座部41に着座している。図3に示すように、各々の支持脚部10に設けられた一対のフック部32は、被介護者5の重心Gよりも上方で、重心Gから上方に延ばした垂直線L1を中心として等間隔に配置されている。つまり、垂直線L1は、側面から見て、一対のフック部32の間隔を二等分する中心線となっている。なお、本明細書において「等間隔」や「二等分」との用語は、厳密に等しい間隔であることを要求する意味ではなく、僅かな誤差を許容する意味である。
【0032】
次に、図5に示すように、介護者4は、着座部12を跨いで床面GLに両足4Aを着けた状態で、シート部25に臀部4Dを載せる(着座する)。この際、介護者4の両脚4Bは、被介護者5の両脚5B(一対の前輪42)よりも外側に配置される。
【0033】
介護者4がシート部25に対し徐々に自身の体重をかけると(図5の白塗り矢印参照)、移乗器1は、支持脚部10の接地面20に沿って前方に転がる(図5の太矢印参照)。換言すれば、移乗器1は、中心点Pまわりに回動する。支柱部11は前方に傾倒するため、支柱部11よりも前方にある着座部12は下方に回動し、支柱部11よりも後方にある吊持部13(一対の吊持アーム部31)は上方に回動する。被介護者5は、吊り具33を介して一対の吊持アーム部31に繋がれているため、車椅子6の座部41から吊り上げられる(図5の黒塗り矢印参照)。なお、図5に示す二点鎖線は、車椅子6の座部41またはベッド7の高さを示している。
【0034】
介護者4は、片腕または両腕で車椅子6を後方に押し、車椅子6を移乗器1よりも後方に退避(移動)させる(図6参照)。一対の支持脚部10は、相対的に一対の車輪42,43の間から引き抜かれる。これにより、図5および図6に示すように、被介護者5は、吊り具33を介して一対の吊持アーム部31に吊持された状態(吊り下げられて宙に浮いた状態)になる。
【0035】
介護者4は、平面から見て、移乗器1をベッド7に向かって約90度旋回させる(図6の太矢印参照)。移乗器1は、一対の支持脚部10の接地面20と床面GLとの接点まわりに旋回(回動)する。図7および図8に示すように、一対の支持脚部10はベッド7の下面と床面GLとの隙間に進入し、一対の吊持アーム部31に吊られた被介護者5はベッド7の上方に配置される。なお、移乗器1を旋回させたときに被介護者5がベッド7上に届かない場合には、介護者4は、着座部12(シート部25)に座ったまま床面GL上を歩き、移乗器1を滑らせてベッド7に接近させる。
【0036】
介護者4がゆっくりと立ち上がり、シート部25に掛けていた体重(荷重)を徐々に抜くと(図7の白塗り矢印参照)、移乗器1は支持脚部10の接地面20に沿って後方に転がる(図7の太矢印参照)。支柱部11は後方に傾倒するため、着座部12は上方に回動し、吊持部13(一対の吊持アーム部31)は下方に回動する。吊り具33を介して一対の吊持アーム部31に吊られた被介護者5は、ベッド7上に降ろされる(図7の黒塗り矢印参照)。
【0037】
介護者4は、吊り具33をフック部32から外した後に被介護者5から除去する(図示せず)。以上によって、車椅子6からベッド7への被介護者5の移乗が完了する。介護者4は、一対の支持脚部10をベッド7の下から引き抜き、移乗器1をベッド7から離す(図示せず)。なお、ベッド7から車椅子6に移乗する場合は上記の逆手順となる(図示せず)。
【0038】
以上説明した本実施形態に係る移乗器1では、介護者4が着座部12を跨いで床面GLに両足4Aを着けた状態で着座すると、支持脚部10は前方に回動して被介護者5を吊り上げる構成とした(図5参照)。この構成によれば、被介護者5の吊り上げ作業時であっても、介護者4は両足4Aを床面GLに着けた安定した姿勢で、両手を自由に使うことができる。これにより、介護者4は、被介護者5がバランスを崩しそうになる等、とっさの状況変化にも迅速に対応することが可能になる。
【0039】
また、本実施形態に係る移乗器1では、支持脚部10(接地面20)が被介護者5の重心G(骨盤辺り)よりも上方に中心点Pを有する円弧状に形成されていた(図5参照)。この構成によれば、被介護者5の重心Gが中心点Pよりも下方にあるため、「起き上がり小法師」のように、移乗器1(支持脚部10)が傾き始めると、その傾きを戻そうとする復元力が働く。そのため、移乗器1を傾ける力(傾倒力)が弱められ、移乗器1をゆっくりと回動させることができる。これにより、移乗器1の回動(揺動)を緩やかにし安定させることができ、被介護者5にかかる負担(衝撃等)を低減することができる。また、支持脚部10(接地面20)の円弧の半径R1を大きく設定することができるため、移乗器1の揺動による吊り上げ量(上下方向の振幅)を小さくすることができる(図5参照)。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る移乗器1によれば、介護者4と被介護者5の両者にかかる負担を減らすことができる。また、車椅子6とベッド7(着座具)との間での被介護者5の移乗を、容易かつ安定して行うことができる。
【0041】
また、本実施形態に係る移乗器1では、各吊持アーム部31の一対のフック部32が、被介護者5の重心Gから上方に延ばした垂直線L1を中心として等間隔に配置されていた(図3参照)。このように配置された二対のフック部32に対し、被介護者5に装着した吊り具33を引っ掛けることによって、被介護者5を吊り下げた姿勢を安定させることができる。
【0042】
また、本実施形態に係る移乗器1によれば、車椅子6の一対の前輪42の間隔に応じて一対の支持脚部10の間隔が設定されているため(図2参照)、一対の支持脚部10を一対の前輪42等に干渉させることなく一対の前輪42等の間に差し込むことができる(図3参照)。一対の支持脚部10の差し込みに伴って、一対の吊持アーム部31を車椅子6に着座した被介護者5の左右両側に配置することができ、被介護者5に装着した吊り具33を一対の吊持アーム部31に取り付けることができる。
【0043】
ところで、移乗器1を安全に使用するための原則として、介護者4は、着座部12に着座して被介護者5を吊り上げた状態(一対の吊持アーム部31に吊り下げられ宙に浮いた状態(図5参照))で、着座部12から離れる(立ち上がる)ことはしない。しかし、仮に、不測の事態が生じて、介護者4が着座部12から離れた(立ち上がった)場合であっても、移乗器1は自立する(転倒しない)ようになっている。
【0044】
図9に示すように、被介護者5を吊り上げた状態で介護者4が着座部12に着座しない(離席した)場合、一対の支持脚部10は後方に回動して被介護者5の重心Gから下した垂線L2を接地面20と床面GLとの接点Tに交差させる。このように、一対の支持脚部10が重心Gの直下となる接点Tで接地面20を床面GLに接触させて安定する。これにより、被介護者5を吊り上げた状態の移乗器1は、過剰に後方に転がることを抑制され、転倒し難くなっている。なお、ここでいう「重心G」とは、正確には、移乗器1と被介護者5とを合わせて1つの物体としたときの重心Gであると捉えてもよい。
【0045】
以上説明した本実施形態に係る移乗器1は被介護者5を吊り上げた状態であっても自立することができるため、移乗器1の転倒を抑制することができる(図9参照)。また、介護者4が両手で移乗器1を支え続ける必要が無くなるため、介護者4は両手を使う作業を安定して行うことが可能になる。また、被介護者5は吊り具33を介して一対の吊持アーム部31に吊持されるため、被介護者5自身が移乗器1を支える必要が無くなる。
【0046】
[変形例]
次に、図10および図11を参照して、本実施形態の変形例に係る移乗器2について説明する。図10は移乗器2で被介護者5を介護用ベッド8上に移動させた状態を示す側面図である。図11は移乗器2が自立する様子を示す側面図である。なお、変形例に係る移乗器2の説明では、上記した本実施形態に係る移乗器1と同様の構成には同一の符号を付し、同様の説明は省略する。
【0047】
被介護者5が使用する介護用ベッド8(着座具)には、高さ調節機能や背上げ・膝上げ機能等、被介護者5の動作を助けたり介護者4の労力を軽減したりする機能が搭載されていることがある。介護用ベッド8は、上記した機能を実現するための各部材(図示せず)を支持するベースフレーム8A(図10参照)を備えており、ベースフレーム8Aと床面GLとの隙間(床面GLからの高さ)が非常に狭い(例えば70~80mm程度)ことがある。このような場合、被介護者5を吊り上げた移乗器1を旋回させて介護用ベッド8上に移動させる際、一対の支持脚部10が、ベースフレーム8Aに干渉してベースフレーム8Aと床面GLとの隙間に進入することができないことがある。
【0048】
[支持脚部]
そこで、変形例に係る移乗器2は、介護用ベッド8の下の狭い隙間であっても進入させることができる一対の支持脚部14を備えている。図10に示すように、各々の支持脚部14は、脚本体部15と、回動脚部16と、回動規制部17と、を有している。なお、一対の支持脚部14は、略同一形状であるため、以下の説明では、主に1つの支持脚部14について説明する。
【0049】
脚本体部15は、支持脚部14の前側の略半分を構成し、支柱部11を支持している。回動脚部16は、支持脚部14の後側の略半分を構成し、脚本体部15の後端部に回動軸18を介して回動可能に連結されている。回動脚部16は、脚本体部15と共に円弧状の接地面20を形成した円弧姿勢F1(図11参照)と、脚本体部15に対して下方に折れるように回動した折曲姿勢F2(図10参照)と、の間で回動する。円弧姿勢F1となった回動脚部16と脚本体部15とは、全体として先に説明した移乗器1の支持脚部10と略同一形状となる(図11参照)。折曲姿勢F2となった回動脚部16の接地面20は、床面GLに接触する(図10参照)。回動規制部17は、脚本体部15の後端部の上面に固定されている。回動規制部17は、回動軸18を越えて回動脚部16の上面に対向する位置まで延設されている。なお、移乗器2に外力を加えていない状態では、回動軸18の近傍または回動軸18よりも若干前方(脚本体部15の接地面20)が床面GLに接触し、脚本体部15は折曲姿勢F2となっている(図示せず)。
【0050】
[移乗器の使用方法]
変形例に係る移乗器2の使用方法は、先に説明した移乗器1の使用方法と略同一である。図10に示すように、介護者4がシート部25に着座し、移乗器2(各支持脚部14)を前方に転がすと、被介護者5は吊り上げられる。移乗器2は、支持脚部14の接地面20の前側を床面GLに接触させて安定する。回動脚部16は、自重で回動軸18を中心に下方に回動して折曲姿勢F2とされている。この状態で、介護者4は、移乗器2をベッド7に向かって約90度旋回させる。移乗器2は、脚本体部15の接地面20と床面GLとの接点まわりに旋回する。折曲姿勢F2とされた回動脚部16(および脚本体部15の前側)は、床面GL上を滑って介護用ベッド8のベースフレーム8Aと床面GLとの隙間に進入し、吊り上げられた被介護者5は介護用ベッド8の上方に配置される。
【0051】
介護者4がゆっくりと立ち上がると(図10の白塗り矢印参照)、移乗器2は後方に転がり、吊り上げられた被介護者5は介護用ベッド8上に降ろされる(図10の黒塗り矢印参照)。この状態で、回動脚部16は折曲姿勢F2を維持されている。介護者4は、吊り具33を被介護者5から除去し、折曲姿勢F2とされた回動脚部16を介護用ベッド8の下から引き抜き、移乗器2を介護用ベッド8から離す(図示せず)。以上によって、被介護者5の移乗が完了する。
【0052】
仮に、介護者4が着座部12から離れた(立ち上がった)場合、図11に示すように、一対の支持脚部14は後方に回動するため、折曲姿勢F2とされた回動脚部16は、相対的に床面GLに押し上げられ、回動軸18を中心に上方に回動して円弧姿勢F1になる。円弧姿勢F1とされた回動脚部16は、脚本体部15から延設された回動規制部17に突き当たって回動規制される。このように、回動規制部17は、円弧姿勢F1となった回動脚部16が脚本体部15に対して上方に折れるように回動することを規制する。つまり、回動脚部16の円弧姿勢F1が保持される。また、円弧姿勢F1とされた回動脚部16は、被介護者5の重心Gから下した垂線L2を接地面20と床面GLとの接点Tに交差させているため、移乗器2は自立する(転倒し難くなっている)。
【0053】
以上説明した本実施形態の変形例に係る移乗器2では、支持脚部14が脚本体部15と回動脚部16とを回動軸18で連結して構成されていた。この構成によれば、介護用ベッド8のベースフレーム8Aと床面GLとの隙間が狭い場合であっても、回動脚部16を折曲姿勢F2とすることで介護用ベッド8の下側の隙間に差し込むことができる(図10参照)。これにより、ベースフレーム8Aを有する介護用ベッド8であっても、移乗器2を用いた被介護者5の移乗を行うことができる。また、回動規制部17が円弧姿勢F1となった回動脚部16の上方への折曲を規制するため、上記した移乗器1と同様に、移乗器2も被介護者5を吊り上げた状態で自立することができる(図11参照)。以上説明したように、変形例に係る移乗器2によれば、介護者4と被介護者5の両者にかかる負担を減らしながら、容易かつ安定した移乗を行うことができる等、上記した移乗器1と同様の効果を得ることができる。
【0054】
なお、本実施形態の変形例に係る移乗器2では、回動規制部17が脚本体部15に固定されていたが、本発明はこれに限定されない。回動規制部17は、回動脚部16の前端部の上面に固定され、回動軸18を越えて脚本体部15の上面に対向する位置まで延設されてもよい(図示せず)。
【0055】
[その他の変形例]
なお、本実施形態(変形例を含む。以下同じ。)に係る移乗器1,2では、支持脚部10,14が円弧状に湾曲したパイプで構成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、支持脚部は、円弧状の接地面20と、接地面20の前後両端を直線状に結ぶ天面と、を有し、側面から見て略扇状に形成されてもよい(図示せず)。つまり、少なくとも床面GLと接触する接地面20が円弧状に湾曲していればよい。また、支持脚部10,14は、一対でなくてもよく、支持脚部が1枚の板状に形成されてもよい(図示せず)。支持脚部を1枚の板状にした場合には、連結板21は不要となる。
【0056】
また、本実施形態に係る移乗器1,2では、一対の支持脚部10,14が平行に配置されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、一対の支持脚部10,14は、平面から見て、前方から後方に向かって間隔を狭める(または広げる)ように傾斜していてもよい(図示せず)。また、例えば、一対の支持脚部10,14は、平面から見て、前後方向の中間の間隔を広げる(または狭める)ように湾曲していてもよい(図示せず)。さらに、例えば、一対の支持脚部10,14の間隔や傾斜角度を変更可能に構成してもよい(図示せず)。
【0057】
また、本実施形態に係る移乗器1,2では、一対の支持脚部10,14の間隔が、車椅子6の一対の前輪42の間に進入可能とされていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図12に示すように、一対の支持脚部10の間隔が、車椅子6の一対の後輪43(間隔が広い方の車輪)の間隔よりも広く、一対の後輪43の両外側に配置可能とされてもよい。なお、正確には、一対の支持脚部10の間隔は一対のハンドリム46よりも広くするとよい。この構成によれば、移乗器1全体が大型化してしまうが、左右方向に倒れにくくすることができる。なお、図12では、上記の特徴を適用した移乗器1を図示したが、上記の特徴を変形例に係る移乗器2に適用してもよい(図示せず)。
【0058】
また、本実施形態に係る移乗器1,2では、支柱部11が直立部22と傾斜部23とで一体形成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、直立部22と傾斜部23とが別々に構成され、ボルト等の締結手段で連結されてもよい(図示せず)。また、支柱部11は、直立部22と傾斜部23とを屈曲させた形状であったが、これに限らず、直立部22と傾斜部23との繋ぎ目部分を湾曲させてもよい(図示せず)。また、支柱部11は、傾斜部23を省略して直立部22のみで構成されてもよい(図示せず)。この場合、直立部22は、やや後方に傾けて斜めに立設されてもよい(図示せず)。
【0059】
また、本実施形態に係る移乗器1,2では、着座部12(支持アーム部24)が高さ調節可能に形成されていたが、これに限らず、支持アーム部24が支柱部11に不動に固定されてもよい(図示せず)。
【0060】
また、本実施形態に係る移乗器1,2では、1本の支柱部11が立設されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、2本の支柱部11が、一対の支持脚部10(または連結板21)の前端部に立設されてもよい(図示せず)。この場合、2本の支柱部11の間隔は、支柱部11が車椅子6に干渉しないように、車椅子6の幅(一対の車輪42,43の間隔)よりも広くすることが好ましい(図示せず)。また、この場合、湾曲部30が省略され、一対の吊持アーム部31が2本の支柱部11の上端部から後方に向かって延設されてもよい(図示せず)。
【0061】
また、本実施形態に係る移乗器1,2では、吊持部13が、湾曲部30と一対の吊持アーム部31とで略U字状に形成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、吊持部13は略V字状に形成されてもよい(図示せず)。この場合、湾曲部30が省略され、一対の吊持アーム部31が支柱部11(傾斜部23)の上端部から後方に向かって互いに離れるように延設されるとよい。また、この場合、一対の吊持アーム部31の前側を互いに接近するように湾曲させて、略U字状に近い形状にしてもよい(図示せず)。
【0062】
また、本実施形態に係る移乗器1,2では、二対(4つ)のフック部32が設けられていたが、これに限らず、三対以上のフック部32が設けられてもよい(図示せず)。また、フック部32を省略し、吊り具33に取り付けられたフックまたは環状の紐等を一対の吊持アーム部31に引っ掛けてもよい(図示せず)。
【0063】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係る移乗器における一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよく、特許請求の範囲は技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様を含んでいる。
【符号の説明】
【0064】
1,2 移乗器
4 介護者
4A 足
5 被介護者
6 車椅子
7 ベッド(着座具)
8 介護用ベッド(着座具)
10,14 支持脚部
11 支柱部
12 着座部
15 脚本体部
16 回動脚部
17 回動規制部
18 回動軸
20 接地面
31 吊持アーム部
32 フック部
33 吊り具
F1 円弧姿勢
F2 折曲姿勢
G 重心
GL 床面
L1 垂直線
L2 垂線
P 中心点
T 接点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12