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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116177
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】往復動式圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/10 20060101AFI20230815BHJP
【FI】
F04B49/10 331C
F04B49/10 331G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018826
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】和田 大祐
(72)【発明者】
【氏名】兼井 直史
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145AA03
3H145AA13
3H145AA25
3H145BA41
3H145CA05
3H145CA09
3H145CA19
3H145DA07
3H145EA13
3H145EA17
(57)【要約】
【課題】圧縮部から低圧側の圧縮部に水素ガスが漏出した場合でも、低圧側の圧縮部の吸込圧力が過度に増大してしまうことを抑制する。
【解決手段】往復動式圧縮機10は、第3段圧縮部13と第5段圧縮部15と駆動部20と排出機構45と圧力センサ47と排出制御部49aとを備えている。排出機構45は、第3段圧縮部13に吸入される水素ガスが流れる第2接続管32から水素ガスを排出可能である。排出制御部49aは、圧力センサによって検出された水素ガスの圧力が予め設定された設定値よりも高い場合に第2接続管32から水素ガスを排出するように排出機構45を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスを圧縮する往復動式圧縮機であって、
低圧段ピストンと、前記低圧段ピストンを収容する低圧段シリンダ部と、前記低圧段ピストンに取付けられるピストンリング群とを有し、水素ガスを圧縮する低圧段圧縮部と、
前記低圧段ピストンに接続された高圧段ピストンと、前記高圧段ピストンを収容し前記低圧段シリンダ部に接続された高圧段シリンダ部と、前記高圧段ピストンに取付けられるピストンリング群とを有し、前記低圧段圧縮部で圧縮された後の水素ガスを圧縮する高圧段圧縮部と、
前記高圧段圧縮部及び前記低圧段圧縮部を駆動する駆動部と、
前記低圧段圧縮部に吸入される水素ガスが流れる吸込側流路から水素ガスを排出可能な排出機構と、
前記低圧段圧縮部に吸入される水素ガスの圧力または前記低圧段圧縮部から吐出された水素ガスの圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサによって検出された前記水素ガスの圧力が予め設定された設定値よりも高い場合に前記吸込側流路から水素ガスを排出するように前記排出機構を制御する排出制御部と、を備えている、往復動式圧縮機。
【請求項2】
前記駆動部は、回転可能なモータを有し、
前記往復動式圧縮機が、
前記駆動部における前記モータの回転数を調整可能なインバータと、
前記吸込側流路から水素ガスを排出する場合に、排出された水素ガスの量を補うために、前記モータの回転数が上がるように前記インバータを制御する回転数制御部と、をさらに備えている、請求項1に記載の往復動式圧縮機。
【請求項3】
前記圧力センサが、前記吸込側流路に位置し、
前記排出機構が、前記吸込側流路に接続されたガス排出路と、前記ガス排出路に位置し弁開度を調整可能な排出弁と、を有し、
前記往復動式圧縮機が、前記ガス排出路において前記排出弁よりも下流側に位置する補助圧力センサをさらに備え、
前記回転数制御部は、前記圧力センサによる圧力検出値、前記補助圧力センサによる圧力検出値及び前記排出弁の流量特性に基づいて導出される前記水素ガスの排出流量に相当する量を補うように前記モータの回転数を上げるように構成されている、請求項2に記載の往復動式圧縮機。
【請求項4】
前記排出機構が、前記吸込側流路に接続されたガス排出路と、前記ガス排出路に位置する開閉弁と、前記ガス排出路において前記開閉弁よりも下流側に位置するオリフィスと、を有し、
前記往復動式圧縮機が、前記ガス排出路において前記オリフィスよりも下流側に位置する補助圧力センサをさらに備え、
前記回転数制御部は、前記圧力センサによる圧力検出値、前記補助圧力センサによる圧力検出値及び前記オリフィスによる前記ガス排出路の絞り比に基づいて導出される前記水素ガスの排出流量を補うように前記モータの回転数を上げるように構成されている、請求項2に記載の往復動式圧縮機。
【請求項5】
前記往復動式圧縮機から吐出される水素ガスの需要先が、タンクからなる蓄圧器であり、
前記蓄圧器に位置するか、または前記往復動式圧縮機及び前記蓄圧器を互いに繋ぐ需要先接続流路に位置する需要側圧力センサと、
前記蓄圧器または前記需要先接続流路に位置する需要側温度センサと、
前記需要側圧力センサによる圧力検出値と前記需要側温度センサによる温度検出値と前記蓄圧器のタンク容量とに基づいて、前記蓄圧器に蓄積されている水素ガスの単位時間当たりの密度変化量を推定する推定部と、
をさらに備え、
前記回転数制御部は、前記高圧段圧縮部から前記低圧段圧縮部への水素ガスの漏れがないとした場合に前記蓄圧器に蓄積される単位時間当たりの水素ガスの密度変化量と、前記推定部によって推定された単位時間当たりの水素ガスの密度変化量との差分に相当する量を補うように前記モータの回転数を上げるように構成されている、請求項2に記載の往復動式圧縮機。
【請求項6】
水素ガスを圧縮する往復動式圧縮機であって、
低圧段ピストンと、前記低圧段ピストンを収容する低圧段シリンダ部と、前記低圧段ピストンに取付けられるピストンリング群とを有し、水素ガスを圧縮する低圧段圧縮部と、
前記低圧段圧縮部から吐出された水素ガスを圧縮する中間段圧縮部と、
前記低圧段ピストンに接続された高圧段ピストンと、前記高圧段ピストンを収容し前記低圧段シリンダ部に接続された高圧段シリンダ部と、前記高圧段ピストンに取付けられるピストンリング群とを有し、前記中間段圧縮部から吐出された水素ガスを圧縮する高圧段圧縮部と、
前記低圧段圧縮部、前記中間段圧縮部及び前記高圧段圧縮部を駆動する駆動部と、
前記低圧段圧縮部に吸入される水素ガスが流れる吸込側流路から水素ガスを排出可能な排出機構と、
前記低圧段圧縮部に吸入される水素ガスの圧力、前記低圧段圧縮部から吐出され且つ前記中間段圧縮部に吸入される水素ガスの圧力、または、前記中間段圧縮部から吐出され且つ前記高圧段圧縮部に吸入される水素ガスの圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサによって検出された前記水素ガスの圧力が予め設定された設定値よりも高い場合に前記吸込側流路から水素ガスを排出するように前記排出機構を制御する排出制御部と、を備えている、往復動式圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復動式圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているように、水素ガスを圧縮する圧縮機であって、複数段の圧縮部を備えた往復動式の圧縮機が知られている。特許文献1に開示された圧縮機は、5段の圧縮部を備えており、各圧縮部がそれぞれ、ピストンリングが装着されたピストンと、ピストンを収容するシリンダとを有している。そして、第1段目~第3段目の圧縮部が互いに接続されて、いわゆるタンデム型となっており、第4段目及び第5段目の圧縮部も互いに接続されて、タンデム型となっている。第1段目~第5段目の圧縮部のピストンは、共通の駆動源によって駆動される。
【0003】
この構成において、例えば第2段目の圧縮部におけるピストンリングの摩耗等に起因して第2段目の圧縮室からガスが漏れると、第1段目の圧縮部の吐出圧力(第2圧部の吸込圧力)が上昇することがある。これは、第2段目の圧縮部内の圧縮室から漏出したガスが第1段目の圧縮部内の圧縮室に流入することに起因する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-17145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧縮室からの水素ガスの漏出量が多くなると吐出量が不足し、またその漏出先の圧縮部の吸込圧力(又は漏出先の1つ前の段の吐出圧力)が高くなると運転が困難になり、駆動源を停止しなければならない等、運転の継続が困難な場合もある。
【0006】
本発明は、圧縮部から低圧側の圧縮部に水素ガスが漏出した場合でも、低圧側の圧縮部の吸込圧力(低圧側の圧縮部の前段の圧縮部の吐出圧力)が過度に増大してしまうことを抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る往復動式圧縮機は、水素ガスを圧縮する往復動式圧縮機であって、低圧段ピストンと、前記低圧段ピストンを収容する低圧段シリンダ部と、前記低圧段ピストンに取付けられるピストンリング群とを有し、水素ガスを圧縮する低圧段圧縮部と、前記低圧段ピストンに接続された高圧段ピストンと、前記高圧段ピストンを収容し前記低圧段シリンダ部に接続された高圧段シリンダ部と、前記高圧段ピストンに取付けられるピストンリング群とを有し、前記低圧段圧縮部で圧縮された後の水素ガスを圧縮する高圧段圧縮部と、前記高圧段圧縮部及び前記低圧段圧縮部を駆動する駆動部と、前記低圧段圧縮部に吸入される水素ガスが流れる吸込側流路から水素ガスを排出可能な排出機構と、前記低圧段圧縮部に吸入される水素ガスの圧力または前記低圧段圧縮部から吐出された水素ガスの圧力を検出する圧力センサと、前記圧力センサによって検出された前記水素ガスの圧力が予め設定された設定値よりも高い場合に前記吸込側流路から水素ガスを排出するように前記排出機構を制御する排出制御部と、を備えている。
【0008】
本発明による往復動式圧縮機においては、高圧段圧縮部から低圧段圧縮部に水素ガスが漏出した場合には、低圧段圧縮部に吸入される水素ガス又は前記低圧段圧縮部から吐出された水素ガスの圧力が設定値よりも高くなってしまう場合がある。この場合に排出機構は吸込側流路から水素ガスを排出する。このため、高圧段圧縮部から低圧段圧縮部への水素ガスの漏出がある場合でも、低圧段圧縮部の吸込圧力又は低圧段圧縮部の吐出圧力が過度に高くなることを抑制することができる。
【0009】
前記駆動部は、回転可能なモータを有してもよい。この場合、前記往復動式圧縮機は、前記駆動部における前記モータの回転数を調整可能なインバータと、前記吸込側流路から水素ガスを排出する場合に、排出された水素ガスの量を補うために、前記モータの回転数が上がるように前記インバータを制御する回転数制御部と、をさらに備えてもよい。
【0010】
この態様では、モータの回転数が上げられることにより、排出機構によって排出される水素ガスを補うように低圧段圧縮部による水素ガスの吐出量が増大する。これにより、往復動式圧縮機による水素ガスの処理量の低下を抑制することができる。なお、モータの回転数を上げるときには、低圧段圧縮部及び高圧段圧縮部の双方を駆動する駆動部のモータの回転数が上がる。このため、低圧段圧縮部及び高圧段圧縮部の双方において、水素ガス吐出量が増大する。したがって、低圧段圧縮部による水素ガスの吐出量が増大するときでも、低圧段圧縮部の吐出圧力はほとんど増大しない。
【0011】
前記圧力センサは、前記吸込側流路に位置してもよい。この場合、前記排出機構は、前記吸込側流路に接続されたガス排出路と、前記ガス排出路に位置し弁開度を調整可能な排出弁と、を有してもよい。また、前記往復動式圧縮機、前記ガス排出路において前記排出弁よりも下流側に位置する補助圧力センサをさらに備えてもよい。前記回転数制御部は、前記圧力センサによる圧力検出値、前記補助圧力センサによる圧力検出値及び前記排出弁の流量特性に基づいて導出される前記水素ガスの排出流量に相当する量を補うように前記モータの回転数を上げるように構成されていてもよい。
【0012】
この態様では、低圧段圧縮部の吸込側流路のガス圧力を検出するための圧力センサを利用しながら、排出機構による水素ガスの排出流量を導き出せる。
【0013】
前記排出機構は、前記吸込側流路に接続されたガス排出路と、前記ガス排出路に位置する開閉弁と、前記ガス排出路において前記開閉弁よりも下流側に位置するオリフィスと、を有してもよい。この場合、前記往復動式圧縮機は、前記ガス排出路において前記オリフィスよりも下流側に位置する補助圧力センサをさらに備えてもよい。前記回転数制御部は、前記圧力センサによる圧力検出値、前記補助圧力センサによる圧力検出値及び前記オリフィスによる前記ガス排出路の絞り比に基づいて導出される前記水素ガスの排出流量を補うように前記モータの回転数を上げるように構成されていてもよい。
【0014】
この態様では、低圧段圧縮部の吸込側流路のガス圧力を検出するための圧力センサを利用しながら、排出機構による水素ガスの排出流量を導出できる。
【0015】
前記往復動式圧縮機から吐出される水素ガスの需要先は、タンクからなる蓄圧器であってもよい。この場合、前記往復動式圧縮機は、前記蓄圧器に位置するか、または前記往復動式圧縮機及び前記蓄圧器を互いに繋ぐ需要先接続流路に位置する需要側圧力センサと、前記蓄圧器または前記需要先接続流路に位置する需要側温度センサと、前記需要側圧力センサによる圧力検出値と前記需要側温度センサによる温度検出値と前記蓄圧器のタンク容量とに基づいて、前記蓄圧器に蓄積されている水素ガスの単位時間当たりの密度変化量を推定する推定部と、をさらに備えてもよい。前記回転数制御部は、前記高圧段圧縮部から前記低圧段圧縮部への水素ガスの漏れがないとした場合に前記蓄圧器に蓄積される単位時間当たりの水素ガスの密度変化量と、前記推定部によって推定された単位時間当たりの水素ガスの密度変化量との差分に相当する量を補うように前記モータの回転数を上げるように構成されていてもよい。
【0016】
この態様では、高圧段圧縮部から低圧段圧縮部への水素ガスの漏出があった場合でも、蓄圧器に水素ガスを蓄積するための時間が、想定される時間よりも長くなることを抑制できる。
【0017】
また本発明に係る往復動式圧縮機は、水素ガスを圧縮する往復動式圧縮機であって、低圧段ピストンと、前記低圧段ピストンを収容する低圧段シリンダ部と、前記低圧段ピストンに取付けられるピストンリング群とを有し、水素ガスを圧縮する低圧段圧縮部と、前記低圧段圧縮部から吐出された水素ガスを圧縮する中間段圧縮部と、前記低圧段ピストンに接続された高圧段ピストンと、前記高圧段ピストンを収容し前記低圧段シリンダ部に接続された高圧段シリンダ部と、前記高圧段ピストンに取付けられるピストンリング群とを有し、前記中間段圧縮部から吐出された水素ガスを圧縮する高圧段圧縮部と、前記低圧段圧縮部、前記中間段圧縮部及び前記高圧段圧縮部を駆動する駆動部と、前記低圧段圧縮部に吸入される水素ガスが流れる吸込側流路から水素ガスを排出可能な排出機構と、前記低圧段圧縮部に吸入される水素ガスの圧力、前記低圧段圧縮部から吐出され且つ前記中間段圧縮部に吸入される水素ガスの圧力、または、前記中間段圧縮部から吐出され且つ前記高圧段圧縮部に吸入される水素ガスの圧力を検出する圧力センサと、前記圧力センサによって検出された前記水素ガスの圧力が予め設定された設定値よりも高い場合に前記吸込側流路から水素ガスを排出するように前記排出機構を制御する排出制御部と、を備えている。
【0018】
本発明に係る往復動式圧縮機においては、高圧段圧縮部から低圧段圧縮部に水素ガスが漏出した場合には、低圧段圧縮部に吸入される水素ガスの圧力、低圧段圧縮部から吐出された水素ガスの圧力(又は中間段圧縮部の吸込圧力)、または高圧段圧縮部に吸入される水素ガスの圧力(又は中間段圧縮部の吐出圧力)が設定値よりも高くなってしまう場合がある。この場合に排出機構は吸込側流路から水素ガスを排出する。このため、高圧段圧縮部から低圧段圧縮部への水素ガスの漏出がある場合でも、低圧段圧縮部の吸込圧力、低圧段圧縮部の吐出圧力(又は中間段圧縮部の吸込圧力)及び高圧段圧縮部の吸込圧力(又は中間段圧縮部の吐出圧力)が過度に高くなることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、圧縮部から低圧側の圧縮部に水素ガスが漏出した場合でも、低圧側の圧縮部の吸込圧力(低圧側の圧縮部の前段の圧縮部の吐出圧力)が過度に増大してしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係る往復動式圧縮機の構成を概略的に示す図である。
図2】第1実施形態の変形例に係る往復動式圧縮機の構成を概略的に示す図である。
図3】第2実施形態に係る往復動式圧縮機の構成を概略的に示す図である。
図4】コントローラに記憶された排出弁の流量特性データを概略的に示す図である。
図5】第2実施形態の変形例に係る往復動式圧縮機を部分的且つ概略的に示す図である。
図6】コントローラに記憶されたオリフィスの流量特性データを概略的に示す図である。
図7】第3実施形態に係る往復動式圧縮機を部分的且つ概略的に示す図である。
図8】コントローラに記憶された時間及びガス密度の関係を概略的に示す図である。
図9】第4実施形態に係る往復動式圧縮機の構成を概略的に示す図である。
図10】その他の実施形態に係る往復動式圧縮機の構成を概略的に示す図である。
図11】その他の実施形態に係る往復動式圧縮機の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態に係る往復動式圧縮機10は、水素ガスを圧縮するための圧縮機であり、複数段(図例では5段)の圧縮部11~15を備えた多段圧縮機として構成されている。この往復動式圧縮機10は、例えば、高圧の水素ガスを利用する燃料電池車等のタンクに充填するための水素ステーションに設けられてもよい。
【0023】
往復動式圧縮機10は、第1段圧縮部11と、第2段圧縮部12と、第3段圧縮部13と、第4段圧縮部14と、第5段圧縮部15と、これら圧縮部11~15を駆動する駆動部20と、を備えている。第1段圧縮部11で圧縮された水素ガスは第2段圧縮部12に導入されてさらに圧縮される。この水素ガスは、さらに第3段~第5段圧縮部13~15によって順次圧縮される。各圧縮部11~15は、ピストンリング群22が装着されたピストン23と、ピストン23を収容するシリンダ部24と、を有し、シリンダ部24内においてピストン23の先端側の空間が圧縮室25として機能する往復動型の圧縮機構によって構成されている。
【0024】
各圧縮部11~15のシリンダ部24にはそれぞれ、対応する圧縮室25に臨む位置に吸込バルブ27及び吐出バルブ28が設けられている。第1段圧縮部11においては、吸込バルブ27に吸込管30が接続され、吐出バルブ28に第1接続管31の一端が接続されている。したがって、吸込管30を通して水素ガスが第1段圧縮部11の圧縮室25に吸入される。第1接続管31の他端は第2段圧縮部12の吸込バルブ27に接続されている。したがって、第1段圧縮部11で圧縮された水素ガスは第2段圧縮部12の圧縮室25に吸入される。第2段圧縮部12の吐出バルブ28には第2接続管32の一端が接続され、第2接続管32の他端は第3段圧縮部13の吸込バルブ27に接続されている。したがって、第2段圧縮部12で圧縮された水素ガスは第3段圧縮部13の圧縮室25に吸入される。第3段圧縮部13の吐出バルブ28には第3接続管33の一端が接続され、第3接続管33の他端は第4段圧縮部14の吸込バルブ27に接続されている。したがって、第3段圧縮部13で圧縮された水素ガスは第4段圧縮部14の圧縮室25に吸入される。第4段圧縮部14の吐出バルブ28には第4接続管34の一端が接続され、第4接続管34の他端は第5段圧縮部15の吸込バルブ27に接続されている。したがって、第4段圧縮部14で圧縮された水素ガスは第5段圧縮部15の圧縮室25に吸入される。第5段圧縮部15の吐出バルブ28には供給管35が接続されている。したがって、第5段圧縮部15で圧縮された水素ガスは供給管35を通して吐出される。
【0025】
第1段圧縮部11と第2段圧縮部12と第4段圧縮部14とは互いに接続されて、いわゆるタンデム型となっている。すなわち、これら圧縮部11,12,14のピストン23は接続ロッド37によって互いに接続されている。また、これら圧縮部11,12,14のシリンダ部24は互いに接続されて一体化している。このため、第4段圧縮部14の圧縮室25から水素ガスが漏れることがある場合には、この漏出ガスは第2段圧縮部12の圧縮室25に流入し得る。
【0026】
第3段圧縮部13と第5段圧縮部15とは互いに接続されて、いわゆるタンデム型となっている。すなわち、これら圧縮部13,15のピストン23は接続ロッド38によって互いに接続されている。また、これら圧縮部13,15のシリンダ部24は互いに接続されて一体化している。このため、第5段圧縮部15の圧縮室25から水素ガスが漏れることがある場合には、この漏出ガスは第3段圧縮部13の圧縮室25に流入し得る。
【0027】
第1段圧縮部11のピストン23は駆動ロッド39によって駆動部20の第1クランク機構(図示省略)に接続されており、第3段圧縮部13のピストン23は他の駆動ロッド40によって駆動部20の第2クランク機構(図示省略)に接続されている。第1クランク機構及び第2クランク機構は、駆動部20が有するモータ20aによって駆動される。したがって、駆動部20は、第1段~第5段圧縮部11~15のピストン23を一括して駆動する。このとき、各ピストン23の周期は同じになる。
【0028】
第3段圧縮部13に吸入される水素ガスが流れる第2接続管32には、第2接続管32内から水素ガスを排出可能な排出機構45が設けられている。排出機構45は、第2接続管32に接続されたガス排出路45aと、ガス排出路45aに位置する排出弁45bと、を含む。排出弁45bは、ガス排出路45aの開閉を切り替える開閉弁(オンオフ弁)によって構成されている。
【0029】
なお、排出弁45bは、第2接続管32から分岐するように第2接続管32に直接取り付けられてもよい。また排出機構45は、第2接続管32に設けられた三方弁によって構成されてもよい。この場合、三方弁は、水素ガスを第2接続管32から排出可能な状態と、第2接続管32から水素ガスが排出されない状態との間で状態切り替え可能に構成される。
【0030】
第2接続管32には、第2接続管32を流れる水素ガスの圧力を検出する圧力センサ47が設けられている。すなわち、第3段圧縮部13を低圧段圧縮部と見なすと、第5段圧縮部15は高圧段圧縮部となり、第4段圧縮部14は中圧段圧縮部となる。このとき、第3段圧縮部13のピストン23及びシリンダ部24はそれぞれ、低圧段ピストン及び低圧段シリンダ部として機能し、第4段圧縮部14のピストン23及びシリンダ部24はそれぞれ、中圧段ピストン及び中圧段シリンダ部として機能し、第5段圧縮部15のピストン23及びシリンダ部はそれぞれ、高圧段ピストン及び高圧段シリンダ部として機能する。また、第2接続管32は、低圧段圧縮部に吸入される水素ガスが流れる吸込側流路として機能する。また圧力センサ47は、低圧段圧縮部に吸入される水素ガスの圧力を検出することになる。
【0031】
圧力センサ47は検出した圧力を示す信号を出力する。この信号はコントローラ49に入力される。コントローラ49は、演算処理を実行するCPU、処理プログラムやデータなどを記憶するROM、及び、データを一時的に記憶するRAMを備えたマイクロコンピュータなどで構成されている。コントローラ49は、処理プログラムを実行することにより、所定の機能を発揮する。この機能には、排出制御部49aが含まれる。
【0032】
排出制御部49aは、圧力センサ47によって検出された水素ガスの圧力が予め設定された設定値よりも高い場合に水素ガスを第2接続管32から排出するように排出弁45bを制御する。この設定値は、通常時に第3段圧縮部13の吸込バルブ27が開くときの第2接続管32内の圧力値よりは高い値である。すなわち、第2接続管32内の圧力と第3段圧縮部13の圧縮室25内の圧力との差圧が、設定された圧力値になれば吸込バルブ27が開くため、第2接続管32内の圧力がこの通常時の圧力値よりも高くなるということは、第3段圧縮部13の圧縮室25内の圧力が通常時に比べて高くなっていることになる。このような場合として、第5段圧縮部15のピストンリング群22の摩耗等によって第5段圧縮部15からの漏出ガスが第3段圧縮部13の圧縮室25に流れ込み、第3段圧縮部13の圧縮室25内の圧力が通常時に比べて高くなっていることが想定される。したがって、圧力センサ47によって、第2接続管32内の圧力が設定値よりも高いことが検出された場合には、第3段圧縮部13の吸込圧力が過度に高くならないよう、排出機構45により第2接続管32内の水素ガスを排出するようにしている。
【0033】
ここで、往復動式圧縮機10の運転動作について説明する。第1実施形態による往復動式圧縮機10では、コントローラ49が外部からの指令を受けると、駆動部20を駆動する。なお、駆動部20の駆動時には通常、排出機構45の排出弁45bは閉じられている。駆動部20の駆動により、各圧縮部11~15で水素ガスが圧縮される。水素ガスは吸込管30を通して第1段圧縮部11に吸入されて圧縮され、その後、第2段圧縮部12~第5段圧縮部15で順次圧縮され、供給管35を通して吐出される。
【0034】
このとき、圧力センサ47によって第2接続管32内の水素ガスの圧力が検出されている。通常、圧力センサ47の検出値は設定値よりも低い値になるはずである。したがって、排出弁45bは閉じられている。しかし、第5段圧縮部15からの漏出ガスが第3段圧縮部13の圧縮室25に流れ込むことによって、第2接続管32内の圧力が設定値よりも高くなると、コントローラ49は排出弁45bを開く。これにより、第2接続管32から水素ガスが排出されるため、第3段圧縮部13に吸入される水素ガスの量が減り、それによって、第3段圧縮部13の吸込圧力が過度に高くなることが抑制される。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、第5段圧縮部15から第3段圧縮部13に水素ガスが漏出した場合には、第3段圧縮部13に吸入される水素ガス又は第3段圧縮部13から吐出された水素ガスの圧力が設定値よりも高くなってしまう場合がある。この場合に排出機構45は第2接続管32から水素ガスを排出する。このため、第5段圧縮部15から第3段圧縮部13への水素ガスの漏出がある場合でも、第3段圧縮部13の吸込圧力又は第3段圧縮部13の吐出圧力が過度に高くなることを抑制することができる。したがって、圧縮機10の運転が困難になることを抑制できる。
【0036】
なお、第1実施形態では、圧力センサ47が第2接続管32に設けられているが、これに代え、図2に示すように、圧力センサ47は第3接続管33に設けられてもよい。すなわち、圧力センサ47は、低圧段圧縮部から吐出される水素ガス又は中間段圧縮部に吸入される水素ガスの圧力を検出するように構成されていてもよい。言い換えると、漏出ガスが流入する圧縮部よりも後段の圧縮部に吸入される水素ガスの圧力を検出してガス排出制御を行ってもよい。
【0037】
第5段圧縮部15のピストンリング群22の摩耗等によって第5段圧縮部15からの漏出ガスが第3段圧縮部13の圧縮室25に流れ込むと、第3段圧縮部13からの吐出ガスが流れる第3接続管33内のガス圧力が増大する。したがって、圧力センサ47が第3接続管33に設けられる場合においても、第5段圧縮部15から第3段圧縮部13へのガス漏出を検知することができる。
【0038】
第1実施形態では、圧力センサ47が第2接続管32に設けられて、第5段圧縮部15から第3段圧縮部13へのガス漏出に対処できるようにした。これに代え/これとともに、第4段圧縮部14(高圧段圧縮部)から第2段圧縮部12(低圧段圧縮部)へのガス漏出に対処できるように、圧力センサ47が第1接続管31に設けられ、排出機構45は第1接続管31から水素ガスを排出させてもよい。
【0039】
(第2実施形態)
図3は第2実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0040】
第2実施形態では、排出機構45によって水素ガスを排出する際にモータ20aの回転数を上げて、排出される分に相当する量のガスを補うようにしている。以下、具体的に説明する。
【0041】
往復動式圧縮機10には、駆動部20のモータ20aの回転数を調整可能なインバータ51が設けられており、モータ20aの回転数はインバータ51によって調整される。
【0042】
排出弁45bは、弁開度を調整可能な弁によって構成されている。したがって、排出弁45bの開度が調整されることにより、排出機構45によるガス排出量が変化する。
【0043】
ガス排出路45aには、排出弁45bの下流側に位置し、排出弁45bの下流側におけるガス圧力を検出する補助圧力センサ53が設けられている。
【0044】
コントローラ49には、排出弁45bの流量特性データが記憶されている。この流量特性データは、排出弁45bの一次側及び二次側間の差圧(圧力センサ47の検出値P1と補助圧力センサ53の検出値P2の差圧)dPと、排出弁45bの弁開度Ovと、排出流量Qと、の間の関係を規定する特性データである。例えば図4に示すように、排出弁45bの流量特性は、検出値P1,P2間の差圧dPが大きくなるほど、排出流量Qが大きくなるが、排出流量Qの増大の程度は排出弁45bの弁開度Ovが大きいほど大きくなることを示す。
【0045】
また、コントローラ49には、モータ20aの回転数と第2段圧縮部12からの水素ガス吐出量との関係を示すデータである回転特性データが記憶されている。したがって、ガス処理量を増大させる場合に、その増大量に応じたモータ回転数の増大分を導出することができる。なお、モータ20aの回転数と第1段~第5段圧縮部11~15の少なくとも何れかからの水素ガス吐出量との関係を示すデータである回転特性データが記憶されても良い。
【0046】
コントローラ49の機能には、インバータ51を制御する回転数制御部49bが含まれている。排出制御部49aの指令により排出機構45の排出弁45bが開かれたときには、第2接続管32から水素ガスが排出されるため、回転数制御部49bは、排出される量に相当する量のガス圧縮量を通常の圧縮量に上乗せするように、モータ20aの回転数を上げる制御を行う。より具体的には、回転数制御部49bは、排出弁45bの検出値P1、補助圧力センサ53の検出値P2、コントローラ49に記憶された排出弁45bの流量特性を用いて、排出流量Qを導出する。そして、回転数制御部49bは、回転特性データを用いて、回転数をどれだけ上げる必要があるかを導出し、この導出された回転数だけモータ20aの回転数が上がるように、インバータ51を制御する。なお、回転数制御部49bは、排出される量と同じ量の水素ガスを補うのではなく、排出される量よりも少ないガス量を補うように回転数を上げてもよい。この場合、例えば、排出されるガス量の半分以上の量の水素ガスを補ってもよい。
【0047】
したがって、本実施形態では、水素ガスを排出するときにモータ20aの回転数が上げられることにより、排出機構45によって排出される水素ガスを補うように第3段圧縮部13~第5段圧縮部15による水素ガスの吐出量が増大する。これにより、往復動式圧縮機10による水素ガスの処理量の低下を抑制することができる。なお、第5段圧縮部15からの漏れ量は一定であるため、モータ20aの回転数を上げることにより第3段圧縮部13による水素ガスの吐出量が増大するが、第3段圧縮部13の吐出圧力の増大を抑制できる。
【0048】
また本実施形態では、水素ガスの補填量を導出するときに圧力センサ47の検出値P1を用いる。したがって、第2接続管32(第3段圧縮部13の吸込側流路)のガス圧力を検出するための圧力センサ47を利用しながら、排出機構45による水素ガスの排出量を導き出せる。
【0049】
なお、第2実施形態では、排出弁45bが開度調整可能な弁によって構成されているがこれに限られるものではない。例えば、図5に示すように、排出機構45は、ガス排出路45aに位置し開閉弁(オンオフ弁)からなる排出弁45bと、ガス排出路45aにおいて排出弁45bよりも下流側に位置するオリフィス45cと、を有してもよい。この場合、コントローラ49には、オリフィス45cの流量特性データが記憶される。この流量特性データは、図6に示すように、オリフィス45cにおける差圧(一次側及び二次側間の差圧)OdPと、排出流量Qと、の間の関係を規定する特性データである。この特性データに示されたオリフィス45cの流量特性は、オリフィス45cでの差圧OdPが大きくなるほど、排出流量Qが大きくなることを表している。
【0050】
そして、回転数制御部49bは、圧力センサ47の検出値P1、補助圧力センサ53の検出値P2、及びコントローラ49に記憶されたオリフィス45cの流量特性を用いて、排出流量Qを導出する。そして、回転数制御部49bは、回転特性データを用いて、回転数をどれだけ上げる必要があるかを導出し、この導出された回転数だけモータ20aの回転数が上がるように、インバータ51を制御する。
【0051】
その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、前記第1実施形態の説明を第2実施形態に援用することができる。
【0052】
(第3実施形態)
図7は第3実施形態を示す。尚、ここでは第1及び第2実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0053】
第3実施形態による往復動式圧縮機10では、当該圧縮機10から吐出される水素ガスの需要先が、タンクからなる蓄圧器55となっている。この場合において、往復動式圧縮機10は、蓄圧器55に予め定められた量の水素ガスを所定時間内に溜められるように、水素ガスの吐出量を調整するよう構成されている。
【0054】
図7に示すように、供給管35は、蓄圧器55に接続されている。供給管35には、供給管35内の水素ガスの圧力を検出する需要側圧力センサ57と、供給管35内の水素ガスの温度を検出する需要側温度センサ58と、が位置している。供給管35は往復動式圧縮機10及び蓄圧器55を互いに繋ぐ需要先接続流路である。なお、需要側圧力センサ57は蓄圧器55に位置してもよい。また、需要側温度センサ58は蓄圧器55に位置してもよい。
【0055】
本実施形態では、所定量の水素ガスを蓄圧器55に所定時間内に溜める必要があるため、コントローラ49の機能には、蓄圧器55での水素ガスの単位時間当たりの密度変化量を推定する推定部49cが含まれている。すなわち、需要側圧力センサ57による圧力検出値を水素ガスの圧力とし、需要側温度センサ58による温度検出値を水素ガスの温度とし、蓄圧器55のタンク容量を水素ガスの体積として、推定部49cは、これらを気体の状態方程式に当てはめて、蓄圧器55に溜められている水素ガスの密度を導出する。そして、推定部49cは、需要側圧力センサ57及び需要側温度センサ58によって繰り返し検出される検出値から、繰り返し密度の導出を実行し、蓄圧器55に蓄積されている水素ガスの単位時間当たりの密度変化量を推定する。
【0056】
蓄圧器55には、所定時間内に予め定められた圧力の水素ガスを溜める必要があるため、排出機構45によって一部の水素ガスが排出される場合には、排出された量の水素ガスを補う必要がある。したがって、回転数制御部49bは、高圧段圧縮部から低圧段圧縮部への水素ガスの漏れがないとした場合に蓄圧器55に蓄積される単位時間当たりの水素ガスの密度変化量と、推定部49cによって推定された単位時間当たりの水素ガスの密度変化量と、の差分に相当する量を補うようにモータ20aの回転数を上げるように構成されている。
【0057】
コントローラ49には、例えば図8に示すように、予め定められた時間ts内に予め定められた密度ρsの水素ガスを溜められるように、(高圧段圧縮部から低圧段圧縮部への水素ガスの漏れがないとした場合の)密度ρの時間推移を示すデータDsが記憶されている。一方、推定部49cによって推定された水素ガスの単位時間当たりの密度変化量から、ある時間t1におけるガス密度ρ1が導出されるため、コントローラ49は、時間t1におけるデータDsと導出されたガス密度ρ1との差分Δρを導出し、回転数制御部49bは、この差分Δρを補うように、モータ20aの回転数を上げる制御を行う。これにより、排出機構45によって水素ガスを排出する場合であっても、所定時間内に予め定められた圧力の水素ガスを蓄圧器55に溜めることができる。
【0058】
したがって、本実施形態によれば、高圧段圧縮部から低圧段圧縮部への水素ガスの漏出があった場合でも、蓄圧器55に水素ガスを蓄積するための時間が、想定される時間よりも長くなることを抑制できる。
【0059】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、第1及び第2実施形態の説明を第3実施形態に援用することができる。
【0060】
(第4実施形態)
図9は第4実施形態を示す。尚、ここでは第1~第3実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0061】
第4実施形態では、圧力センサ47が第4接続管34に位置する点において、第1実施形態と異なっている。第3段圧縮部13を低圧段圧縮部と見なすと、第5段圧縮部15は高圧段圧縮部となる。そして、第4段圧縮部14は、低圧段圧縮部から吐出された水素ガスを圧縮する中間段圧縮部として機能する。したがって、圧力センサ47は、第4接続管34に設けられて、中間段圧縮部から吐出され且つ高圧段圧縮部に吸入される水素ガスの圧力を検出するように構成される。すなわち、第5段圧縮部15から第3段圧縮部13への水素ガスの漏出がある場合には、第3段圧縮部13から吐出されるガス圧力も想定値より高くなる。この場合、第4段圧縮部14に吸入されるガス圧力及び第4段圧縮部14から吐出されるガス圧力も想定値より高くなる。したがって、圧力センサ47が第4接続管34に位置しているとしても、第5段圧縮部15から第3段圧縮部13へのガス漏出を検知することができる。そして、排出機構45は、圧力センサ47によって検出された水素ガスの圧力が予め設定された設定値よりも高い場合に、第2接続管32から水素ガスを排出する。
【0062】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、第1~第3実施形態の説明を第4実施形態に援用することができる。
【0063】
(その他の実施形態)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、第1段圧縮部11と第2段圧縮部12と第4段圧縮部14とがタンデム型となり、第3段圧縮部13と第5段圧縮部15とがタンデム型となっているが、これに限られるものではない。例えば、図10に示すように、第1段圧縮部11と第2段圧縮部12と第3段圧縮部13とがタンデム型となり、第4段圧縮部14と第5段圧縮部15とがタンデム型となってもよい。この場合、第5段圧縮部15(高圧段圧縮部)の漏出ガスは第4段圧縮部14(低圧段圧縮部)に流れ込むため、圧力センサ47は例えば第3接続管33に設けられてもよい。この場合、排出機構45は、第3接続管33から水素ガスを抜くように構成されていてもよい。また、第3段圧縮部13(高圧段圧縮部)の漏出ガスは第2段圧縮部12(低圧段圧縮部)に流れ込むため、圧力センサ47は例えば第1接続管31に設けられてもよい。この場合、排出機構45は、第1接続管31から水素ガスを抜くように構成されていてもよい。
【0064】
前記実施形態では、往復動式圧縮機10が5段の圧縮部11~15を備えた多段圧縮機として構成されているが、これに限られない。圧縮部の段数は2段以上であればよく、段数が2段の場合、例えば図11に示すよう、第1段圧縮部11と第2段圧縮部12とがタンデム型に構成される。そして、第2段圧縮部12(高圧段圧縮部)からの漏出ガスが第1段圧縮部11(低圧段圧縮部)に流れ込むため、圧力センサ47は吸込管30に設けられ、排出機構45は吸込管30から水素ガスを排出させる。
【符号の説明】
【0065】
10 :往復動式圧縮機
13 :第3段圧縮部
14 :第4段圧縮部
15 :第5段圧縮部
20 :駆動部
20a :モータ
22 :ピストンリング群
23 :ピストン
24 :シリンダ部
30 :吸込管
31 :第1接続管
32 :第2接続管
33 :第3接続管
34 :第4接続管
45 :排出機構
45a :ガス排出路
45b :排出弁
45c :オリフィス
47 :圧力センサ
49a :排出制御部
49b :回転数制御部
49c :推定部
51 :インバータ
53 :補助圧力センサ
55 :蓄圧器
57 :需要側圧力センサ
58 :需要側温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11