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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116179
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】通信方法及び通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 48/18 20090101AFI20230815BHJP
   H04W 4/00 20180101ALI20230815BHJP
   H04W 76/15 20180101ALI20230815BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20230815BHJP
【FI】
H04W48/18
H04W4/00 111
H04W76/15
H04W88/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018829
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】521042770
【氏名又は名称】ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 敏暢
(72)【発明者】
【氏名】伊東 孝紘
(72)【発明者】
【氏名】大西 亮吉
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA33
5K067AA41
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE24
5K067HH22
(57)【要約】
【課題】移動体と外部装置との間の通信において高信頼性と低コストとを適切に両立させること。
【解決手段】移動体と外部装置との間で通信を行う通信方法は、複数の通信モードのうち1つを選択するモード選択処理と、選択通信モードに基づいて移動体から外部装置へ送信対象データを送信するデータ送信処理と、を含む。回線選択モードは、移動体が利用可能な通信回線のうち1つを選択し、選択した1つの通信回線を用いて送信対象データを送信する。冗長送信モードは、移動体が利用可能な複数の通信回線を同時に用いて、送信対象データの同一パケットを並列的に送信する。モード選択処理は、移動体が置かれている環境を示す環境情報に基づいて、高信頼通信が必要か否かを判断する。高信頼通信が必要と判断された場合、冗長送信モードが選択される。一方、高信頼通信が不要と判断された場合、回線選択モードが選択される。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体と外部装置との間で通信を行う通信方法であって、
複数の通信モードのうち1つを選択するモード選択処理と、
前記選択した通信モードに基づいて前記移動体から前記外部装置へ送信対象データを送信するデータ送信処理と
を含み、
前記複数の通信モードは、
前記移動体が利用可能な通信回線のうち1つを選択し、前記選択した1つの通信回線を用いて前記送信対象データを送信する回線選択モードと、
前記移動体が利用可能な複数の通信回線を同時に用いて、前記送信対象データの同一パケットを並列的に送信する冗長送信モードと
を含み、
前記モード選択処理は、
前記移動体が置かれている環境を示す環境情報に基づいて、高信頼通信が必要か否かを判断することと、
前記高信頼通信が必要であると判断された場合、前記冗長送信モードを選択することと、
前記高信頼通信が必要ではないと判断された場合、前記回線選択モードを選択することと
を含む
通信方法。
【請求項2】
請求項1に記載の通信方法であって、
前記回線選択モードは、
前記移動体が利用可能な通信回線のうち最もコストが低い第1通信回線を選択するコスト優先選択モードと、
前記移動体が利用可能な通信回線のうち最も通信品質が高い1つを選択する品質優先選択モードと
を含み、
前記回線選択モードを選択することは、
前記第1通信回線の通信品質が一定レベルを満たすか否かを判断することと、
前記第1通信回線の前記通信品質が前記一定レベルを満たす場合、前記コスト優先選択モードを選択することと、
前記第1通信回線の前記通信品質が前記一定レベルを満たさない場合、前記品質優先選択モードを選択することと
を含む
通信方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の通信方法であって、
前記環境情報は、時間帯、明度、天候状態、物体密集度、交通シーン、及び前記移動体の速度のうち少なくとも一つを示す
通信方法。
【請求項4】
請求項3に記載の通信方法であって、
前記時間帯が夜間である場合、前記高信頼通信が必要であると判断される
通信方法。
【請求項5】
請求項3に記載の通信方法であって、
前記明度が閾値未満である場合、前記高信頼通信が必要であると判断される
通信方法。
【請求項6】
請求項3に記載の通信方法であって、
前記天候状態が雨、霧、及び雪のいずれかである場合、前記高信頼通信が必要であると判断される
通信方法。
【請求項7】
請求項3に記載の通信方法であって、
前記移動体の周囲の前記物体密集度が閾値以上である場合、前記高信頼通信が必要であると判断される
通信方法。
【請求項8】
請求項3に記載の通信方法であって、
前記移動体の遠隔運転が必要な前記交通シーンの場合、前記高信頼通信が必要であると判断される
通信方法。
【請求項9】
請求項3に記載の通信方法であって、
前記移動体の遠隔運転が不要な前記交通シーンの場合、前記高信頼通信は不要であると判断される
通信方法。
【請求項10】
請求項3に記載の通信方法であって、
前記移動体の前記速度が閾値以上である場合、前記高信頼通信が必要であると判断される
通信方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の通信方法であって、
前記移動体は、遠隔オペレータによる遠隔支援の対象であり、
前記外部装置は、前記遠隔オペレータ側の遠隔支援装置である
通信方法。
【請求項12】
移動体に搭載され、外部装置と通信を行う通信装置であって、
複数の通信モードのうち1つを選択し、前記選択した通信モードに基づいて送信対象データを前記外部装置に送信するように構成された通信コントローラを備え、
前記複数の通信モードは、
前記移動体が利用可能な通信回線のうち1つを選択し、前記選択した1つの通信回線を用いて前記送信対象データを送信する回線選択モードと、
前記移動体が利用可能な複数の通信回線を同時に用いて、前記送信対象データの同一パケットを並列的に送信する冗長送信モードと
を含み、
前記通信コントローラは、更に、
前記移動体が置かれている環境を示す環境情報に基づいて、高信頼通信が必要か否かを判断し、
前記高信頼通信が必要であると判断した場合、前記冗長送信モードを選択し、
前記高信頼通信が必要ではないと判断した場合、前記回線選択モードを選択する
ように構成される
通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体と外部装置との間で通信を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、基地局と加入者局との間で無線通信を行う無線通信システムを開示している。基地局又は加入者局に設けられる通信装置は、第1無線通信手段、第2無線通信手段、及び無線周波数切替手段を備える。第1無線通信手段は、準ミリ波以上の第1周波数帯を用いて無線通信を行う。第2無線通信手段は、第1周波数帯よりも低く降雨による電波減衰の少ない第2周波数帯を用いて無線通信を行う。無線周波数切替手段は、通常時には第1無線通信手段を選択し、通信遮断が検出された場合には第2無線通信手段を選択する。
【0003】
特許文献2は、送信装置を開示している。送信装置は、第1の通信回線を介してパケットを送信する第1の送信手段と、第2の通信回線を介してパケットを送信する第2の送信手段と、パケットを複製するパケット生成手段と、第1及び第2の通信回線の通信状態を監視する監視手段と、制御手段とを備える。制御手段は、監視された通信状態に応じて、第1及び第2の通信回線の少なくとも一方を用いて、複製された2以上のパケットを送信する。
【0004】
特許文献3は、複数の動作モードを有する移動体の経路を設定する経路設定装置を開示している。その経路設定装置は、移動体の動作モードに応じて定められる通信品質の要件を満たすエリアを経由するように、移動体の経路を設定する。
【0005】
特許文献4は、対象装置を遠隔操作するための遠隔操作装置を開示している。遠隔操作装置は、対象装置と遠隔操作装置との間の通信品質を取得し、その通信品質に基づいて、対象装置の操作に関する遠隔操作装置の権限を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-335201号公報
【特許文献2】国際公開第2017/175826号
【特許文献3】特開2020-165832号公報
【特許文献4】国際公開第2020/202372号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車両やロボット等の移動体と外部装置との間の通信に関しては、なるべく通信コストを減らしたいというニーズがあると考えられる。その一方で、移動体が置かれている環境によっては、高信頼な通信というニーズもあると考えられる。このようなニーズを踏まえて、低コストと高信頼性とをうまく両立させることが重要である。
【0008】
本開示の1つの目的は、移動体と外部装置との間の通信において高信頼性と低コストとを適切に両立させることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の観点は、移動体と外部装置との間で通信を行う通信方法に関連する。
通信方法は、
複数の通信モードのうち1つを選択するモード選択処理と、
選択した通信モードに基づいて移動体から外部装置へ送信対象データを送信するデータ送信処理と
を含む。
複数の通信モードは、
移動体が利用可能な通信回線のうち1つを選択し、選択した1つの通信回線を用いて送信対象データを送信する回線選択モードと、
移動体が利用可能な複数の通信回線を同時に用いて、送信対象データの同一パケットを並列的に送信する冗長送信モードと
を含む。
モード選択処理は、
移動体が置かれている環境を示す環境情報に基づいて、高信頼通信が必要か否かを判断することと、
高信頼通信が必要であると判断された場合、冗長送信モードを選択することと、
高信頼通信が必要ではないと判断された場合、回線選択モードを選択することと
を含む。
【0010】
第2の観点は、移動体に搭載され、外部装置と通信を行う通信装置に関連する。
通信装置は、複数の通信モードのうち1つを選択し、選択した通信モードに基づいて送信対象データを外部装置に送信するように構成された通信コントローラを備える。
複数の通信モードは、
移動体が利用可能な通信回線のうち1つを選択し、選択した1つの通信回線を用いて送信対象データを送信する回線選択モードと、
移動体が利用可能な複数の通信回線を同時に用いて、送信対象データの同一パケットを並列的に送信する冗長送信モードと
を含む。
通信コントローラは、更に、
移動体が置かれている環境を示す環境情報に基づいて、高信頼通信が必要か否かを判断し、
高信頼通信が必要であると判断した場合、冗長送信モードを選択し、
高信頼通信が必要ではないと判断した場合、回線選択モードを選択する
ように構成される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、複数の通信モードは、低コストの回線選択モードと、高信頼及び低遅延な冗長送信モードを含んでいる。高信頼通信を優先すべきか否かは、移動体が置かれている環境にも依存する。そこで、移動体が置かれている環境を示す環境情報に基づいて、高信頼通信が必要か否かが判断される。高信頼通信が必要であると判断された場合、冗長送信モードが積極的に選択される。一方、高信頼通信が必要ではないと判断された場合、回線選択モードが積極的に選択される。このように、高信頼通信が必要な場合にのみ冗長送信モードが選択され、それ以外の場合には回線選択モードが選択されるため、通信コストが不必要に増大することが防止される。すなわち、高信頼性と低コストとを適切に両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施の形態に係る通信システムの概要を示す概念図である。
図2】本開示の実施の形態に係る通信システムの適用例を説明するための概念図である。
図3】本開示の実施の形態に係る通信システムの構成例を示すブロック図である。
図4】本開示の実施の形態に係る通信システムの具体例を示すブロック図である。
図5】複数の通信回線の利用可能エリアの例を示す概念図である。
図6】本開示の実施の形態に係る回線選択モードを説明するための概念図である。
図7】本開示の実施の形態に係る冗長送信モードを説明するための概念図である。
図8】本開示の実施の形態に係る分割送信モードを説明するための概念図である。
図9】本開示の実施の形態に係る通信コントローラによる処理を示すフローチャートである。
図10】本開示の実施の形態に係るモード選択処理(ステップS100)を示すフローチャートである。
図11】本開示の実施の形態において高信頼通信が必要な環境の例を示すテーブル図である。
図12】本開示の実施の形態に係るステップS120の一例を示すフローチャートである。
図13】本開示の実施の形態に係るステップS120の変形例を示すフローチャートである。
図14】本開示の実施の形態に係る移動体の構成例を示すブロック図である。
図15】本開示の実施の形態に係る通信コントローラの構成例を示すブロック図である。
図16】本開示の実施の形態に係る通信コントローラの機能構成例を示すブロック図である。
図17】本開示の実施の形態に係る併用モードを説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。
【0014】
1.通信システム
図1は、本実施の形態に係る通信システム1の概要を示す概念図である。通信システム1は、第1通信装置10、第2通信装置20、及び通信ネットワーク30を含んでいる。第1通信装置10と第2通信装置20は、通信ネットワーク30を介して互いに接続されている。第1通信装置10と第2通信装置20は、通信ネットワーク30を介して互いに通信可能である。
【0015】
第1通信装置10は、移動体100に搭載される。移動体100としては、車両、ロボット、飛翔体、等が例示される。車両は、自動運転車両であってもよいし、ドライバが運転する車両であってもよい。ロボットとしては、物流ロボット、作業ロボット、等が例示される。飛翔体としては、飛行機、ドローン、等が例示される。
【0016】
第2通信装置20は、移動体100の外部の外部装置200に搭載される。外部装置200の種類は特に限定されない。例えば、外部装置200は、移動体100を管理する管理サーバである。他の例として、外部装置200は、移動体100の動作を遠隔で支援する遠隔支援装置であってもよい。更に他の例として、外部装置200は、移動体100とは別の移動体であってもよい。
【0017】
図2は、通信システム1の適用例を説明するための概念図である。図2に示される例では、通信システム1は、移動体100の動作を遠隔で支援する「遠隔支援」に利用される。より詳細には、移動体100にはカメラ111が搭載されている。カメラ111は、移動体100の周囲の状況を撮像して画像IMGを取得する。第1通信装置10は、画像IMGを外部装置200の一種である遠隔支援装置200Aに送信する。遠隔支援装置200Aの第2通信装置20は、移動体100から画像IMGを受け取る。遠隔支援装置200Aは、受け取った画像IMGを表示装置250に表示する。遠隔オペレータは、表示装置250に表示される画像IMGをみて、移動体100の周囲の状況を把握し、移動体100の動作を遠隔で支援する。遠隔オペレータによる遠隔支援としては、認識支援、判断支援、遠隔運転(遠隔操作)、等が挙げられる。遠隔オペレータによる指示は、第2通信装置20から移動体100の第1通信装置10に送られる。移動体100は、遠隔オペレータによる指示に従って動作する。
【0018】
本実施の形態によれば、移動体100に搭載された第1通信装置10は、複数の通信回線を介して外部装置200と通信可能なように構成される。第1通信装置10は、複数の通信回線のうち必要な数の通信回線を用いて、送信対象データを外部装置200に送信する。送信対象データは、ストリーミングデータであってもよい。
【0019】
より詳細には、第1通信装置10は、複数の通信キャリア及び複数種類の通信方式に対応している。通信方式としては、移動体通信事業者(MNO:Mobile Network Operator)によって提供される通常のセルラー方式、仮想移動体通信事業者(MVNO:Mobile Virtual Network Operator)によって提供される安価なセルラー方式、無線LAN(Local Area Network)方式、等が例示される。複数種類の通信方式間では通信コストが異なる。上記の例の場合、無線LAN方式が最も安く、通常のセルラー方式が最も高い。
【0020】
図3は、本実施の形態に係る通信システム1の構成例を示すブロック図である。第1通信装置10は、複数の通信インタフェース11及び通信コントローラ12を含んでいる。
【0021】
複数の通信インタフェース11は、それぞれ異なる通信キャリアあるいは異なる通信方式に対応している。これら複数の通信インタフェース11のそれぞれを介して複数の通信回線が確立される。言い換えれば、複数の通信回線と複数の通信インタフェース11とが互いに対応している。例えば、第1通信インタフェース11-1は、第1通信方式に基づく第1通信回線C1を介して通信を行う。第2通信インタフェース11-2は、第2通信方式に基づく第2通信回線C2を介して通信を行う。尚、複数の通信インタフェース11は、それぞれ異なる物理インタフェースにより実現されてもよいし、共通の物理インタフェースと異なる論理インタフェースの組み合わせにより実現されてもよい。
【0022】
通信コントローラ12は、移動体100上で動作する少なくとも1つのアプリが送受信するデータを制御するために設けられている。例えば、通信コントローラ12は、送信対象データを複数の通信インタフェース11(通信回線)のうち使用するものに割り当てる。そして、通信コントローラ12は、送信対象データを、割り当てられた通信インタフェース11(通信回線)を介して外部装置200に送信する。
【0023】
第2通信装置20は、ネットワークインタフェース21及び通信コントローラ22を含んでいる。ネットワークインタフェース21は、通信ネットワーク30に接続され、第1通信装置10と通信を行う。
【0024】
通信コントローラ22は、外部装置200上で動作する少なくとも1つのアプリが送受信するデータを制御するために設けられている。例えば、通信コントローラ22は、第1通信装置10から送信されるデータをネットワークインタフェース21を介して受信する。そして、通信コントローラ22は、受信データを宛先のアプリに出力する。
【0025】
図4は、本実施の形態に係る通信システム1の具体例を示すブロック図である。第1通信装置10の複数の通信インタフェース11は、無線LANインタフェース11-A、安価セルラーインタフェース11-B、及びセルラーインタフェース11-Cを含んでいる。無線LANインタフェース11-Aは、無線LAN方式に基づく通信回線Caを介して通信を行う。無線LANインタフェース11-Aは、アクセスポイント31-Aを介して通信ネットワーク32(例:WAN)に接続される。安価セルラーインタフェース11-Bは、安価なセルラー方式に基づく通信回線Cbを介して通信を行う。安価セルラーインタフェース11-Bは、セルラーネットワーク31-Bを介して通信ネットワーク32に接続される。セルラーインタフェース11-Cは、通常のセルラー方式に基づく通信回線Ccを介して通信を行う。セルラーインタフェース11-Cは、セルラーネットワーク31-Cを介して通信ネットワーク32に接続される。図4に示される例の場合、無線LAN方式に基づく通信回線Ca、安価なセルラー方式に基づく通信回線Cb、通常のセルラー方式に基づく通信回線Ccの順番に、通信コストは低い。
【0026】
図5は、複数の通信回線の利用可能エリアの例を示す概念図である。第1通信回線C1の利用可能エリアと第2通信回線C2の利用可能エリアは、部分的にオーバーラップしている。オーバーラップエリアでは、第1通信回線C1と第2通信回線C2の両方を同時に利用可能である。それ以外の利用可能エリアでは、第1通信回線C1あるいは第2通信回線C2のいずれか一方だけが利用可能である。
【0027】
2.複数の通信モード
本実施の形態に係る第1通信装置10の通信コントローラ12は、複数の通信モードを有しており、それら複数の通信モードの中から一つを選択して通信を行う。以下、通信コントローラ12の複数の通信モードについて説明する。
【0028】
2-1.回線選択モード
図6は、「回線選択モードMS」を説明するための概念図である。回線選択モードMSは、移動体100が利用可能な通信回線のうち1つを選択し、選択した1つの通信回線を用いて送信対象データを送信する。選択しなかった通信回線によるデータ送信は停止させる。図6に示される例では、通信コントローラ12は、第1通信回線C1を選択し、第1通信回線C1を用いて送信対象データのパケットを送信している。複数の通信回線を同時に使用せず、1つの通信回線を選択して使用するため、回線選択モードMSは比較的低コストである。
【0029】
回線選択モードMSは、更に、以下の「コスト優先選択モードMS1」と「品質優先選択モードMS2」の2つに分類されてもよい。
【0030】
2-1-1.コスト優先選択モード
コスト優先選択モードMS1は、移動体100が利用可能な通信回線のうち最もコストが低い1つを選択し、選択した1つの通信回線を用いて送信対象データを送信する。コスト優先選択モードMS1は、低コストの観点で最も優れた通信モードであると言える。
【0031】
2-1-2.品質優先選択モード
品質優先選択モードMS2は、移動体100が利用可能な通信回線のうち最も通信品質が高い1つを選択し、選択した1つの通信回線を用いて送信対象データを送信する。ここで、通信品質としては、通信帯域(通信速度、ビットレート)、電波強度、RTT(Round Trip Time)、ビット誤り率、等が例示される。通信品質は、リアルタイムな計測値、推定値、過去の通信実績データベースに基づく予測値、のいずれであってもよい。品質優先選択モードMS2は、通信品質と低コストのバランスが取れた通信モードであると言える。
【0032】
2-2.冗長送信モード
図7は、「冗長送信モードMR」を説明するための概念図である。冗長送信モードMRは、移動体100が利用可能な複数の通信回線を同時に用いて、送信対象データの同一パケットを並列的に送信する。図7に示される例では、通信コントローラ12は、第1通信回線C1と第2通信回線C2の両方を選択し、それら第1通信回線C1と第2通信回線C2を同時に用いて同一パケットを並列的に送信している。
【0033】
受信側の第2通信装置20の通信コントローラ22は、複数の通信回線を介して同一パケットを受信する可能性がある。その場合、通信コントローラ22は、最も早く受信した同一パケットを選択し、遅れて受信した同一パケットを破棄する。例えば、送信側の通信コントローラ12は、各送信パケットのヘッダに識別情報(例:識別番号)を付与する。受信側の通信コントローラ22は、各受信パケットのヘッダに付与された識別情報に基づいて、各パケットの受信履歴を把握する。そして、通信コントローラ22は、複数の通信回線を通して受信する同一パケットのうち最も早く受信したものを選択し、遅れて受信したものを破棄する。
【0034】
このように、冗長送信モードMRの場合、同一パケットが複数の通信回線を介して同時並列的に送信される。従って、高い通信信頼性が得られると共に、通信遅延も可能な限り低減される。つまり、冗長送信モードMRは、高信頼性及び低遅延の観点で優れている。但し、複数の通信回線が同時に使用されるため、コストは高くなる。
【0035】
2-3.分割送信モード
図8は、「分割送信モードMD」を説明するための概念図である。分割送信モードMDは、移動体100が利用可能な複数の通信回線を同時に用いて、送信対象データを分割して送信する。図8に示される例では、通信コントローラ12は、第1通信回線C1と第2通信回線C2の両方を選択し、送信対象データのパケットを第1通信回線C1と第2通信回線C2に分配している。分配比率は、例えば、第1通信回線C1と第2通信回線C2との通信帯域の比率に応じて設定される。分割送信モードMDの場合、トータルの通信帯域(スループット)は増加する。しかしながら、複数の通信回線が同時に使用されるため、コストは高くなる。
【0036】
3.モード選択処理
図9は、本実施の形態に係る通信コントローラ12による処理を示すフローチャートである。ステップS100において、通信コントローラ12は、複数の通信モードのうち1つを選択する「モード選択処理」を実行する。続くステップS200において、通信コントローラ12は、選択した通信モードに基づいて送信対象データを外部装置200に送信する「データ送信処理」を実行する。
【0037】
以下に説明する通り、本願発明者は、モード選択処理について詳細な検討を行った。
【0038】
まず、開発者の一般的な傾向として、スループットをなるべく増大させたいというものがある。つまり、開発者は、分割送信モードMDを利用した高スループット化に傾倒しがちである。しかしながら、そのような開発者の目線は、ユーザの目線とは必ずしも一致しない。ユーザは、高い通信料金を支払ってまで高スループット化することを必ずしも望んではいない。また、単一の通信回線しか利用することができないエリアでは、分割送信モードMDを使用することができない(図5参照)。
【0039】
車両やロボット等の移動体100と外部装置200との間の通信に関しては、より広いエリアでなるべく通信コストを減らしたいというニーズがあると考えられる。その一方で、移動体100が置かれている環境によっては、高信頼な通信というニーズもあると考えられる。このようなニーズを踏まえて、低コストと高信頼性とをうまく両立させることが重要であると考えられる。
【0040】
以上の観点から、本実施の形態によれば、主に、「回線選択モードMS」と「冗長送信モードMR」が利用される。以下、図10を参照して、本実施の形態に係るモード選択処理(ステップS100)について説明する。
【0041】
3-1.ステップS110
ステップS110において、通信コントローラ12は、環境情報ENVと通信回線情報CLNを取得する。環境情報ENVは、移動体100が置かれている環境を示す。環境情報ENVの具体例については後述する。通信回線情報CLNは、移動体100が現在利用可能な通信回線、その通信回線のコスト及び通信品質を示す。通信品質としては、通信帯域(通信速度、ビットレート)、電波強度、RTT、ビット誤り率、等が例示される。通信品質は、リアルタイムな計測値、推定値、過去の通信実績データベースに基づく予測値、のいずれであってもよい。
【0042】
3-2.ステップS120
ステップS120において、通信コントローラ12は、高信頼通信が必要か否かを判断する「判断処理」を実行する。高信頼通信を優先すべきか否かは、移動体100が置かれている環境にも依存する。そこで、通信コントローラ12は、環境情報ENVに基づいて、高信頼通信が必要か否かを判断する。
【0043】
図11は、高信頼通信が必要な環境の例を示すテーブル図である。高信頼通信が必要か否かを判断するための判断条件としては、時間帯、明度、天候状態、地域(物体密集度)、交通シーン、速度、等が例示される。
【0044】
第1の例において、環境情報ENVは、移動体100が存在する位置の「時間帯」(例:朝、昼、夕方、夜)を示す。例えば、時間帯が夕方あるいは夜間である場合、通信コントローラ12は、高信頼通信が必要であると判断する。それ以外の場合、通信コントローラ12は、高信頼通信は不要であると判断する。
【0045】
第2の例において、環境情報ENVは、移動体100によって認識される「明度」を示す。例えば、夜間、トンネル内、逆光条件では、明度は低い。例えば、明度が閾値未満である暗状態の場合、通信コントローラ12は、高信頼通信が必要であると判断する。一方、明度が閾値以上である明状態の場合、通信コントローラ12は、高信頼通信は不要であると判断する。
【0046】
第3の例において、環境情報ENVは、移動体100が存在する位置の「天候状態」(例:晴れ、くもり、雨、霧、雪)を示す。例えば、天候状態が雨、霧、及び雪のいずれかである場合、通信コントローラ12は、高信頼通信が必要であると判断する。それ以外の場合、通信コントローラ12は、高信頼通信は不要であると判断する。
【0047】
第4の例において、環境情報ENVは、移動体100の周囲の「物体密集度」を示す。物体密集度は、移動体100の周囲に人や他車両といった物体がどれだけ密集しているかを示す。例えば、物体密集度が閾値以上である密集地(例:商店街)の場合、通信コントローラ12は、高信頼通信が必要であると判断する。一方、物体密集度が閾値未満である閑散地の場合、通信コントローラ12は、高信頼通信は不要であると判断する。
【0048】
第5の例において、環境情報ENVは、移動体100が置かれている「交通シーン」を示す。ここでは、特に、移動体100が自動運転を行う場合について考える。自動運転の最中、移動体100が置かれている交通シーンによっては、移動体100が遠隔支援を遠隔オペレータに要求する可能性がある。遠隔支援には、(1)移動体100の代わりに遠隔オペレータが認識や行動判断を一時的に行う「認識判断支援」と、(2)遠隔オペレータが主体となって移動体100を遠隔で運転(操作)する「遠隔運転」とがある。例えば、交差点、道路工事区間、誘導員による誘導がある区間、等において、移動体100が遠隔オペレータに認識判断支援を要求する可能性がある。一方、自動運転の続行が不可能な交通シーン(例:複雑な道路構造、ODD(Operational Design Domain)の外、等)では、移動体100は遠隔オペレータに遠隔運転を要求する。このような遠隔運転が必要な交通シーンの場合、通信コントローラ12は、高信頼通信が必要であると判断する。一方、遠隔運転が不要な交通シーンの場合、通信コントローラ12は、高信頼通信は不要であると判断する。
【0049】
第6の例において、環境情報ENVは、移動体100の「速度」を示す。例えば、速度が閾値以上である高速状態の場合、通信コントローラ12は、高信頼通信が必要であると判断する。一方、速度が閾値未満である場合、通信コントローラ12は、高信頼通信は不要であると判断する。
【0050】
図12は、ステップS120(判断処理)の一例を示すフローチャートである。ステップS122において、通信コントローラ12は、上記第1~第6の例の判断を行う。少なくともいずれかの高信頼通信条件が成立した場合(ステップS122;Yes)、通信コントローラ12は、高信頼通信が必要であると判断する(ステップS123)。この場合、処理は、ステップS130に進む。それ以外の場合(ステップS122;No)、通信コントローラ12は、高信頼通信は必要ではないと判断する(ステップS124)。この場合、処理は、ステップS140に進む。
【0051】
図13は、ステップS120(判断処理)の変形例を示すフローチャートである。まずステップS121において、通信コントローラ12は、上記第5の例の判断を行う。遠隔運転が必要な交通シーンの場合(ステップS121;Yes)、処理は、上記のステップS122に進む。一方、遠隔運転が不要な交通シーンの場合(ステップS121;No)、処理は、ステップS122をスキップして、ステップS124に進む。すなわち、遠隔運転が不要な場合、通信コントローラ12は、高信頼通信は必要ではないと一律に判断する。この変形例は、移動体100の高い自動運転性能を信頼していると言える。
【0052】
3-3.ステップS130
図10に戻り、ステップS130において、通信コントローラ12は、複数の通信モードの中から「冗長送信モードMR(図7参照)」を選択する。
【0053】
3-4.ステップS140
一方、ステップS140において、通信コントローラ12は、複数の通信モードの中から「回線選択モードMS(図6参照)」を選択する。ステップS140は、以下の処理を含んでいてもよい。
【0054】
ステップS141において、通信コントローラ12は、通信回線情報CLNに基づいて、移動体100が利用可能な通信回線のうち最も低コストな通信回線を認識する。最も低コストな通信回線が第1通信回線C1であるとする。通信コントローラ12は、通信回線情報CLNに基づいて、第1通信回線C1の通信品質が一定レベルを満たすか否かを判断する。例えば、通信コントローラ12は、第1通信回線C1のスループットが所定の閾値以上であるか否かを判断する。第1通信回線C1の通信品質が一定レベルを満たす場合(ステップS141;Yes)、処理は、ステップS142に進む。一方、第1通信回線C1の通信品質が一定レベルを満たさない場合(ステップS141;No)、処理は、ステップS143に進む。
【0055】
ステップS142において、通信コントローラ12は、複数の通信モードの中から「コスト優先選択モードMS1」を選択する。
【0056】
ステップS143において、通信コントローラ12は、複数の通信モードの中から「品質優先選択モードMS2」を選択する。
【0057】
3-5.効果
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、複数の通信モードは、低コストの回線選択モードMSと、高信頼及び低遅延な冗長送信モードMRを含んでいる。高信頼通信を優先すべきか否かは、移動体100が置かれている環境にも依存する。そこで、移動体100が置かれている環境を示す環境情報ENVに基づいて、高信頼通信が必要か否かが判断される。高信頼通信が必要であると判断された場合、冗長送信モードMRが積極的に選択される。一方、高信頼通信が必要ではないと判断された場合、回線選択モードMSが積極的に選択される。このように、高信頼通信が必要な場合にのみ冗長送信モードMRが選択され、それ以外の場合には回線選択モードMSが選択されるため、通信コストが不必要に増大することが防止される。すなわち、本実施の形態によれば、移動体100と外部装置200との間の通信において、高信頼性と低コストとを適切に両立させることが可能となる。
【0058】
尚、上記の特許文献に開示されている従来技術によれば、通信状態や通信品質の低下は考慮されているが、移動体100が置かれている環境については考慮されていない。従来技術では、移動体100が置かれている環境に応じて回線選択モードMSあるいは冗長送信モードMRが選択されることはない。
【0059】
4.構成例
4-1.移動体の構成例
図14は、本実施の形態に係る移動体100の構成例を示すブロック図である。移動体100は、例えば車両である。移動体100は、第1通信装置10、センサ群110、制御装置120、及びアクチュエータ160を備えている。
【0060】
第1通信装置10は、移動体100の外部の外部装置200と通信を行う。例えば、第1通信装置10は、移動体100の遠隔支援を行うための遠隔支援装置200A(図2参照)と通信を行う。
【0061】
センサ群110は、認識センサ、状態センサ、位置センサ、等を含んでいる。認識センサは、移動体100の周辺の状況を認識(検出)する。認識センサとしては、カメラ111(図2参照)、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ、等が例示される。状態センサは、移動体100の状態を検出する。状態センサは、速度センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ、舵角センサ、等を含んでいる。位置センサは、移動体100の位置を検出する。位置センサとしては、GNSS(Global Navigation Satellite System)が例示される。
【0062】
制御装置120は、移動体100を制御する。制御装置120は、1又は複数のプロセッサ130(以下、単にプロセッサ130と呼ぶ)と1又は複数の記憶装置140(以下、単に記憶装置140と呼ぶ)を含んでいる。プロセッサ130は、各種処理を実行する。例えば、プロセッサ130は、CPU(Central Processing Unit)を含んでいる。記憶装置140は、プロセッサ130による処理に必要な各種情報を格納する。記憶装置140としては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、等が例示される。制御装置120は、1又は複数のECU(Electronic Control Unit)を含んでいてもよい。
【0063】
制御プログラム150は、プロセッサ130によって実行されるコンピュータプログラムである。プロセッサ130が制御プログラム150を実行することにより、制御装置120の機能が実現される。制御プログラム150は、記憶装置140に格納される。制御プログラム150は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。
【0064】
制御装置120は、センサ群110を用いて、移動体100が置かれている環境を示す環境情報ENVを取得する。環境情報ENVは、記憶装置140に格納される。例えば、環境情報ENVは、周辺状況情報、状態情報、位置情報、等を含んでいる。
【0065】
周辺状況情報は、移動体100の周囲の状況を示す情報であり、認識センサにより得られる。例えば、周辺状況情報は、カメラ111によって撮像される画像IMGを含む。他の例として、周辺状況情報は、LIDARによって得られる点群情報を含む。
【0066】
周辺状況情報は、更に、移動体100の周囲の物体に関する物体情報を含む。物体としては、歩行者、自転車、他車両(先行車両、後続車両、駐車車両、等)、道路構成(白線、横断歩道、縁石、ガードレール、等)、信号機、標識、落下物、等が例示される。物体情報は、移動体100に対する物体の相対位置及び相対速度を示す。例えば、カメラによって得られた画像IMGを解析することによって、物体を識別し、その物体の相対位置を算出することができる。また、LIDARによって得られた点群情報に基づいて、物体を識別し、その物体の相対位置と相対速度を取得することもできる。物体情報は、物体の移動方向や移動速度を含んでいてもよい。
【0067】
周辺状況情報は、移動体100が存在する位置の時間帯(例:朝、昼、夕方、夜)を含んでいてもよい。時間帯は、例えば、カメラ111によって撮像される画像IMGを分析することによって得られる。
【0068】
周辺状況情報は、移動体100によって認識される明度を含んでいてもよい。明度は、カメラ111によって撮像される画像IMGを分析することによって得られる。例えば、夜間、トンネル内、逆光条件では、明度は低い。
【0069】
周辺状況情報は、移動体100が存在する位置の天候状態(例:晴れ、くもり、雨、霧、雪)を含んでいてもよい。天候状態は、例えば、カメラ111によって撮像される画像IMGを分析することによって得られる。他の例として、LIDAR計測におけるレーザ反射率に基づいて、雨や雪を検出することもできる。
【0070】
周辺状況情報は、移動体100の周囲の物体密集度を含んでいてもよい。物体密集度は、移動体100の周囲に人や他車両といった物体がどれだけ密集しているかを表す指標である。物体密集度は、上記の物体情報に基づいて算出可能である。
【0071】
周辺状況情報は、移動体100が置かれている交通シーン(例:交差点、道路工事区間、誘導員による誘導、複雑な道路構造、等)を含んでいてもよい。これらの交通シーンは、上記の物体情報に基づいて認識可能である。
【0072】
状態情報は、移動体100の状態を示す情報であり、状態センサにより検出される。移動体100の状態としては、速度、加速度、ヨーレート、操舵角、等が例示される。
【0073】
状態情報は、移動体100の現在の運転モード(自動運転/遠隔運転/手動運転)を含んでいてもよい。状態情報は、移動体100が遠隔運転を必要としているか(自動運転の続行が不可能であるか)という状態を示していてもよい。
【0074】
位置情報は、移動体100の位置を示す情報であり、位置センサにより得られる。また、物体情報を利用した周知の自己位置推定処理(Localization)によって、より高精度な位置情報が取得されてもよい。
【0075】
アクチュエータ160は、移動体100を移動させるための装置である。制御装置120は、アクチュエータ160を制御することによって移動体100を移動させる。
【0076】
例えば、移動体100が車両である場合、アクチュエータ160は、車両を走行させる走行装置である。走行装置は、操舵装置、駆動装置、及び制動装置を含んでいる。例えば、操舵装置は、パワーステアリング(EPS: Electric Power Steering)装置を含んでいる。駆動装置としては、エンジン、電動機、インホイールモータ、等が例示される。制御装置120は、走行装置を制御することによって、操舵制御、駆動制御、及び制動制御を含む車両走行制御を実行する。
【0077】
制御装置120は、環境情報ENVに基づいて自動運転制御を行ってもよい。より詳細には、制御装置120は、環境情報ENVに基づいて走行プランを生成する。走行プランは、現在の走行車線を維持する、車線変更を行う、右左折を行う、障害物を回避する、等が例示される。更に、制御装置120は、環境情報ENVに基づいて、車両が走行プランに従って走行するために必要な目標トラジェクトリを生成する。目標トラジェクトリは、目標位置及び目標速度を含んでいる。そして、制御装置120は、車両が目標トラジェクトリに追従するように車両走行制御を行う。
【0078】
遠隔支援が行われる場合(図2参照)、制御装置120は、画像IMGを少なくとも含む車両情報を、第1通信装置10を介して遠隔支援装置200Aに送信する。また、制御装置120は、遠隔オペレータによる指示を示す指示情報を、第1通信装置10を介して遠隔支援装置200Aから受け取る。そして、制御装置120は、受け取った指示情報に従って車両走行制御を行う。
【0079】
4-2.通信コントローラの構成例
図15は、本実施の形態に係る通信コントローラ12の構成例を示すブロック図である。通信コントローラ12は、1又は複数のプロセッサ13(以下、単にプロセッサ13と呼ぶ)と1又は複数の記憶装置14(以下、単に記憶装置14と呼ぶ)を含んでいる。プロセッサ13は、各種処理を実行する。例えば、プロセッサ13は、CPUを含んでいる。記憶装置14は、プロセッサ13による処理に必要な各種情報を格納する。記憶装置14としては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD、SSD、等が例示される。
【0080】
記憶装置14には、環境情報ENV、通信回線情報CLN、及びポリシー情報POLが格納される。環境情報ENVは、移動体100が置かれている環境を示す。通信回線情報CLNは、移動体100が現在利用可能な通信回線、その通信回線のコスト及び通信品質を示す。ポリシー情報POLは、図11で例示された高信頼通信が必要な条件を示す。
【0081】
通信制御プログラム15は、プロセッサ13によって実行されるコンピュータプログラムである。プロセッサ13が通信制御プログラム15を実行することにより、通信コントローラ12の機能が実現される。通信制御プログラム15は、記憶装置14に格納される。通信制御プログラム15は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。
【0082】
尚、図15で示される通信コントローラ12と図14で示された制御装置120は、少なくとも部分的に共通であってもよい。すなわち、通信コントローラ12のプロセッサ13と制御装置120のプロセッサ130は、少なくとも部分的に共通であってもよい。通信コントローラ12の記憶装置14と制御装置120の記憶装置140は、少なくとも部分的に共通であってもよい。
【0083】
図16は、本実施の形態に係る通信コントローラ12の機能構成例を示すブロック図である。通信コントローラ12は、環境情報取得部16、通信回線情報取得部17、通信モード選択部18、及び通信部19を含んでいる。これら機能ブロックは、通信制御プログラム15を実行するプロセッサ13と記憶装置14との協働により実現される。
【0084】
環境情報取得部16は、制御装置120から環境情報ENVを取得する(図10;ステップS110)。環境情報取得部16は、環境情報ENVを通信モード選択部18に出力する。
【0085】
通信回線情報取得部17は、通信部19による通信の結果に基づいて、通信回線情報CLNを生成する(図10;ステップS110)。通信回線情報取得部17は、通信回線情報CLNを通信モード選択部18に出力する。
【0086】
通信モード選択部18は、ポリシー情報POLを保持している。通信モード選択部18は、環境情報ENV、ポリシー情報POL、及び通信回線情報CLNに基づいて、複数の通信モードのうち1つを選択するモード選択処理を実行する(図10;ステップS120~S140)。通信モード選択部18は、選択通信モードを通信部19に通知する。
【0087】
通信部19は、送信対象データDATを受け取る。送信対象データDATは、ストリーミングデータであってもよい。通信部19は、通信モード選択部18によって選択された通信モードに基づいて、使用する通信回線を選択し、送信対象データDATを外部装置200に送信する(図9;ステップS200)。
【0088】
5.併用モード
通信コントローラ12の複数の通信モードは、映像符号化標準規格H.264/SVCに基づく「併用モードMC」を含んでいてもよい。併用モードMCは、冗長送信モードMRと回線選択モードMSの組み合わせである。
【0089】
図17は、併用モードMCを説明するための概念図である。H.264/SVCによれば、送信対象データDAT(映像ストリーム)のデータ構造は、ベースレイヤLBと拡張レイヤLEを含んでいる。送信対象データDATは、高優先度データDAT-Hと低優先度データDAT-Lに分類される。例えば、高優先度データDAT-Hは、映像ストリームの再生に最低限必要なデータである。高優先度データDAT-Hは、ベースレイヤLBに割り当てられる。一方、低優先度データDAT-Lは、拡張レイヤLEに割り当てられる。
【0090】
通信コントローラ12は、ベースレイヤLBの高優先度データDAT-Hを冗長送信モードMRに基づいて送信し、拡張レイヤLEの低優先度データDAT-Lを回線選択モードMSに基づいて送信する。例えば、通信コントローラ12は、通信回線情報CLNに基づいて、通信品質が高い順に2本の通信回線を選択する。そして、通信コントローラ12は、選択した2本の通信回線を用い、ベースレイヤLBの高優先度データDAT-Hを冗長送信モードMRにより送信する。更に、通信コントローラ12は、その他の1本の通信回線を用い、拡張レイヤLEの低優先度データDAT-Lを回線選択モードMSにより送信する。尚、コスト優先選択モードMS1と品質優先選択モードMS2のいずれを選択するかについては、図10で示された手法と同様に決定される。
【0091】
併用モードMCによれば、少なくとも映像再生の継続性を確保しつつ、低コストで映像品質を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0092】
1 通信システム
10 第1通信装置
11 通信インタフェース
12 通信コントローラ
13 プロセッサ
14 記憶装置
15 通信制御プログラム
16 環境情報取得部
17 通信回線情報取得部
18 通信モード選択部
19 通信部
20 第2通信装置
30 通信ネットワーク
100 移動体
110 センサ群
111 カメラ
120 制御装置
130 プロセッサ
140 記憶装置
150 制御プログラム
160 アクチュエータ
200 外部装置
200A 遠隔支援装置
CLN 通信回線情報
DAT 送信対象データ
ENV 環境情報
POL ポリシー情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17