(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116185
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】カシメボタン部材の加工方法、カシメボタン部材およびカシメボタン部材の加工治具
(51)【国際特許分類】
A44B 1/04 20060101AFI20230815BHJP
A44B 1/00 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
A44B1/04 L
A44B1/00 D
A44B1/00 Z
A44B1/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018840
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】599076756
【氏名又は名称】株式会社 サンファスニングシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100117558
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 和之
(72)【発明者】
【氏名】山崎 幸雄
(57)【要約】
【課題】カシメ付けの際の方向合わせが簡易迅速に行えるようにカシメボタン部材を加工するカシメボタン部材の加工方法、その加工方法が適用されたカシメボタン部材およびカシメボタン部材の加工に用いられるカシメボタン部材の加工治具を提供する。
【解決手段】リベット部材1は、概ね円板状に形成された頭部2と、頭部2の裏面中央に立設されているカシメ用突部3とを有する。リベット部材1は、インクジェット印刷装置のプリントヘッドから吐き出されたインク滴を用いて頭部2の表面に装飾4が形成され、かつそのインク滴が頭部2の裏面側に回り込むことによって、方向表示部5が頭部2に形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
概ね円形または多角形の板状に形成された頭部を有するカシメボタン部材の加工方法であって、
インクジェット印刷装置のプリントヘッドから吐き出されたインク滴を用いて文字、図形、記号または模様を含む装飾が前記頭部の表面に形成されるときに、該インク滴が前記頭部の裏面側に回り込むことによって、前記頭部の表面に形成される前記装飾の方向を特定するのに有効な方向表示部が形成される方向表示部形成ステップを有するカシメボタン部材の加工方法。
【請求項2】
前記方向表示部形成ステップは、前記リベット部材の前記頭部に応じた係止凹部を有する加工治具が用いられ、該加工治具は、前記係止凹部に係止されている前記頭部の裏面側周端部の一部が露出する深さを有し、かつ前記係止凹部の周縁部よりも外側に延設されている延設凹部が形成され、前記インク滴が前記頭部の裏面側に回り込むように、前記インク滴が前記延設凹部に塗布される請求項1記載のカシメボタン部材の加工方法。
【請求項3】
概ね円形または多角形の板状に形成された頭部を有するカシメボタン部材であって、
インクジェット印刷装置のプリントヘッドから吐き出されたインク滴を用いて文字、図形、記号または模様を含む装飾が前記頭部の表面に形成され、かつ該インク滴が前記頭部の裏面側に回り込むことによって、前記頭部の表面に形成されている前記装飾の方向を特定するのに有効な方向表示部が前記頭部に形成されているカシメボタン部材。
【請求項4】
概ね円形または多角形の板状に形成された頭部を有するカシメボタン部材の加工に用いられる加工治具であって、
前記カシメボタン部材の前記頭部に応じた係止凹部を有し、該係止凹部に前記頭部が係止されているときに、該頭部の裏面側周端部の一部が露出する深さを有し、かつ前記係止凹部の周縁部よりも外側に延設されている延設凹部が形成されているカシメボタン部材の加工治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カシメ付けが行われるときの方向合わせが簡易迅速に行えるようにカシメボタン部材を加工するカシメボタン部材の加工方法、その加工方法が適用されたカシメボタン部材およびカシメボタン部材の加工に用いられるカシメボタン部材の加工治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂製ホック(プラスチックスナップともいい、ホックは、スナップ留め具ともいう)が知られている。例えば特許文献1に開示されているように、樹脂製ホックは、リベット部材と篏合部材とを有していて、そのそれぞれが表面と裏面から生地を挟み込むようにして一体化された構造を有している。そのリベット部材が突部を有し、篏合部材がその突部に応じた貫通孔を有している。そして、その突部が生地を貫通したあとに篏合部材の貫通孔を挿通するようにして、その先端部を拡径変形させてカシメ付けが行われる。そうすることで、リベット部材と篏合部材とが一体化されて樹脂製ホックが得られる。
【0003】
一方、従来、樹脂製ホック、スナップボタン、押しボタン、ジーンズボタン、鳩目といったカシメ付けが行われて(かしめて)生地に取り付けされる部材(以下、本発明において「カシメボタン部材」という)に文字、図形、模様等の装飾が形成されていることがあった。例えば、特許文献2、3には、インクジェットプリンタを用いてボタンの表面に文字や絵柄が施すことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3100292号公報
【特許文献2】特開2005-297229号公報
【特許文献3】特開2005-335181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、樹脂製ホックは、リベット部材と篏合部材とを有していて、そのそれぞれが生地の表面と裏面に配置されて、カシメ付けが行われることで一体化されて生地に取り付けられる。
【0006】
そして、これらリベット部材に文字、図形、記号または模様を含む装飾が形成されていることもあり、そのような場合でも、カシメ付けが行われて一体化され、生地への取り付けが行われる。その際、樹脂製ホックは、生地の決められた位置(例えば、服飾の前身頃の左右合わせ目の縁部)に決められた方向を向くように(形成されている文字、図形、記号または模様が正しい方向を向いて正しく視認できるように)取り付けられることが重要である。
【0007】
しかし、カシメ付けが行われるときは所定の工具が必要であり、その工具に対し、突部が上側を向くように、リベット部材をセットしなければならない。すると、リベット部材がセットされたときに文字、図形、記号または模様を含む装飾がリベット部材の頭部の下側になるため、カシメ付けの際、それらを直接目視することができない。したがって、リベット部材を工具にセットしたときに文字、図形、記号または模様を含む装飾が不適切な向きを向きやすい。そうならないようにするには、突部を持って文字、図形、記号または模様を直接目視して、頭部が正しい方向を向いているのかどうかを確かめる必要があり、この手間が生地への効率的な取り付けを妨げる要因となっていた。また、スナップボタンや押しボタンでも同様の課題があり、頭部と筒状受部とを有するボタン本体と、その筒状受部に篏合可能なリベット体とを有するジーンズボタンや鳩目でも同様の課題があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、カシメ付けの際の方向合わせが簡易迅速に行えるようにカシメボタン部材を加工するカシメボタン部材の加工方法、その加工方法が適用されたカシメボタン部材およびカシメボタン部材の加工に用いられるカシメボタン部材の加工治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、概ね円形または多角形の板状に形成された頭部を有するリベット部材の加工方法であって、インクジェット印刷装置のプリントヘッドから吐き出されたインク滴を用いて文字、図形、記号または模様を含む装飾が頭部の表面に形成されるときに、そのインク滴が頭部の裏面側に回り込むことによって、頭部の表面に形成される装飾の方向を特定するのに有効な方向表示部が形成される方向表示部形成ステップを有するカシメボタン部材の加工方法を提供する。
【0010】
上記カシメボタン部材の加工方法において、方向表示部形成ステップは、リベット部材の頭部に応じた係止凹部を有する加工治具が用いられ、その加工治具は、係止凹部に係止されている頭部の裏面側周端部の一部が露出する深さを有し、かつ係止凹部の周縁部よりも外側に延設されている延設凹部が形成され、インク滴が頭部の裏面側に回り込むように、インク滴が延設凹部に塗布されるようにすることができる。
【0011】
また、本発明は、概ね円形または多角形の板状に形成された頭部を有するカシメボタン部材であって、インクジェット印刷装置のプリントヘッドから吐き出されたインク滴を用いて文字、図形、記号または模様を含む装飾が頭部の表面に形成され、かつそのインク滴が頭部の裏面側に回り込むことによって、頭部の表面に形成されている装飾の方向を特定するのに有効な方向表示部が頭部に形成されているカシメボタン部材を提供する。
【0012】
更に、本発明は、概ね円形または多角形の板状に形成された頭部を有するカシメボタン部材の加工に用いられる加工治具であって、カシメボタン部材の頭部に応じた係止凹部を有し、その係止凹部に頭部が係止されているときに、その頭部の裏面側周端部の一部が露出する深さを有し、かつ係止凹部の周縁部よりも外側に延設されている延設凹部が形成されているカシメボタン部材の加工治具を提供する。
【発明の効果】
【0013】
以上詳述したように、本発明によれば、カシメ付けの際の方向合わせが簡易迅速に行えるようにカシメボタン部材を加工するカシメボタン部材の加工方法、その加工方法が適用されたカシメボタン部材およびカシメボタン部材の加工に用いられるカシメボタン部材の加工治具が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係るリベット部材を示す斜視図である。
【
図5】同じく、一部省略した
図4の5-5線断面図である。
【
図6】二つのリベット部材と、篏合部材を用いた生地への取り付け手順を示した分解斜視図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係るリベット部材の加工治具を示す平面図である。
【
図8】
図7の加工治具と、その載置部に載置されているリベット部材を示す一部省略した要部の平面図である。
【
図10】インクジェット印刷装置と加工治具を用いたリベット部材の印刷工程を模式的に示した図である。
【
図11】(a)は変形例に係るリベット部材の正面図、(b)は別の変形例に係るリベット部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態に係るカシメボタン部材について、リベット部材1を例にとって、
図1~
図6を参照して説明する。
図1~
図5は、本発明の実施の形態に係るリベット部材1を示す図で、
図1は斜視図、
図2は平面図、
図3は正面図である。
図4は裏面図、
図5は
図4の5-5線断面図である。
図6は二つのリベット部材1と篏合部材10とを用いた生地6への取り付け手順を示した分解斜視図である。
【0016】
リベット部材1は、ナイロン樹脂、アクリル樹脂等の合成樹脂を用いて形成された樹脂製の部材である。リベット部材1は、頭部2と、カシメ用突部3とを有し、両者が一体となって形成されている。図示のリベット部材1の場合、頭部2およびカシメ用突部3が樹脂製の部材であるが、頭部2が樹脂製の部材で、かつカシメ用突部3が金属製の部材でもよいし、頭部2、カシメ用突部3がともに金属製の部材でもよい。
【0017】
図2に示すように、頭部2は、平面視概ね円形の板状に形成されている。
図3、
図4に詳しく示すように、頭部2は表面2bと裏面2dを有し、表面2bの周縁部に沿って形成された環状縁部2cを有している。
【0018】
図3に示すように、表面2bは、その中心部2aが頂上となるように僅かに膨らんだドーム状に形成されている(そのほかの形状でもよいが、詳しくは後述する)。その表面2bには、
図1、
図2に示すように、蜘蛛を描いた図形の装飾4が形成されている。装飾4は、後述するインクジェット印刷工程によって表面2bに形成されている。
図5に示すように、環状縁部2cは、表面2bから裏面2d側に延設されている。その裏面2dの中央にカシメ用突部3が立設されている。図示の装飾4は、蜘蛛を描いた図形を含むが、アルファベットなどの文字や、蜘蛛とは異なる図形、記号または模様を含むようにすることもできる。
【0019】
頭部2には、方向表示部5が形成されている。
図4,
図5に示すように、方向表示部5は頭部2の裏面側周端部、すなわち、環状縁部2cの裏面2d側の端部2cc(
図4に示すように、端部2ccは幅の狭い円環状に形成されている)に形成され、さらにそこから内側面2ca、さらには裏面2dにまでつながっている。図示の方向表示部5は、頭部2の平面視(
図2に示すように、蜘蛛の図形が正しく視認できる方向)で下側に配置される箇所に形成されている。方向表示部5は、端部2ccから裏面2dまでつながっていて裏面2d側から直接目視することができるので、方向印として用いることができる。方向印とは、リベット部材1が図示しないカシメ付け工具にセットされて裏面2dが目視されているときに、その裏側の装飾4の方向(形成されている図形、文字、記号が正しい方向を向いて正しく視認できる方向)を特定するのに有効な目印となるものである。
【0020】
カシメ用突部3は、
図1,
図3、
図4に示すように、鋭利な先端部3aと、その先端部3aから裏面2d側に向かって漸次太さが太くなる先鋭部3b、太さ概ね一様で、裏面2dに接続されている基部3cとを有している。
【0021】
そして、リベット部材1には、本願発明に係る加工方法が適用されており、それによって、リベット部材1は、後述するカシメ付けが行われるときの方向合わせが簡易迅速に行えるようになっている。その加工方法では、装飾4が頭部2の表面2bに形成されるが、その装飾4が形成されるときに、後述する方向表示部形成ステップが実行されることによって、前述の方向表示部5が形成されている。
【0022】
(加工方法)
本願発明に係る加工方法では、加工治具30と、インクジェット印刷装置50とが用いられる。加工治具30は、樹脂、金属等を用いて形成された板状の部材であって、
図7に示すような平面視矩形板状に形成されている。その表面30aには、複数の載置部35が縦方向および横方向に規則正しく並べられている。
【0023】
各載置部35は、係止凹部31と、貫通孔部32と、係止凹部31の一部につなげて形成されている延設凹部33とを有している。各載置部35には、
図8,
図9に示すようにリベット部材1が載置される。
【0024】
係止凹部31は、加工治具30の表面30aに形成されている凹部である。係止凹部31は、リベット部材1の頭部2に応じた大きさの平面視円形状に窪んでおり、その深さは、環状縁部2cの高さよりも小さい(浅い)大きさである。
図9に示すように、係止凹部31は、平面視円形帯状の底部31dを有しており、載置部35にリベット部材1が載置されたときに、環状縁部2cがその底部31dによって係止される。
【0025】
貫通孔部32は、係止凹部31の内側の概ね中央に形成されている貫通孔(加工治具30の表面30aから裏面30bまで貫通している)であって、カシメ用突部3の直径よりも大きい大きさに形成されている。
【0026】
延設凹部33は、
図8、
図9に示すように、係止凹部31の外側から内側に回り込むように形成された凹部である。延設凹部33は、係止凹部31に係止されている頭部2の裏面側周端部(環状縁部2cの裏面2d側の端部2cc)が露出する深さ、すなわち、係止凹部31よりも大きい深さを有している。延設凹部33が係止凹部31よりも大きい深さを有しているので、頭部2が
図8、
図9に示すようにして係止凹部31に係止されているときに、端部2ccの延設凹部33上に配置されている部分が係止凹部31に接することなく露出する格好になる。
【0027】
そして、延設凹部33は、張り出し凹部33aと、内凹部33bとを有している。張り出し凹部33aは、係止凹部31の周縁部31aよりも外側に張り出すようにして表面30aに形成された凹部である。内凹部33bは、張り出し凹部33aから周縁部31aの内側にまで回り込むように形成された凹部である。
【0028】
各載置部35にはリベット部材1が載置される。その際、カシメ用突部3が貫通孔部32を挿通し、環状縁部2cが底部31dに係止される。その載置部35が加工治具30には複数並べられているので、複数のリベット部材1が加工治具30に並べられている状態でインクジェット印刷装置50を用いた印刷工程が実行される。そのとき、方向表示部形成ステップが実行される。
【0029】
インクジェット印刷装置50は、
図10に示すように、プリントヘッド51を有している。プリントヘッド51は4つのノズル52を有している。各ノズル52は、本実施の形態では、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのそれぞれの色(他の色でも良いし、ノズル52の個数も4個には限定されない)の図示しないインク容器が接続されている。各ノズル52からそれぞれの色のインク滴idが吐き出される。
【0030】
そして、インクジェット印刷装置50を用いた印刷工程では、複数のリベット部材1が並べられている加工治具30上をインクジェット印刷装置50のプリントヘッド51を矢印X方向に移動させるなどしてインク滴idが載置部35ごとに塗布される。その際、図示しない制御装置から出力される画像データに応じた色のインク滴idが各リベット部材1の表面2bに塗布される。それによって、前述した装飾4が形成される。
【0031】
その印刷工程において、方向表示部形成ステップが実行される。方向表示部形成ステップでは、各載置部35において、インク滴idが頭部2の裏面2d側に回り込むように、プリントヘッド51から吐き出されるインク滴idの一部が延設凹部33に一定量塗布される。すると、延設凹部33は、端部2ccが露出する深さ、すなわち、係止凹部31よりも大きい深さを有しているので、塗布されるインク滴idが延設凹部33に露出している端部2ccに塗布される。また、延設凹部33は、内凹部33bを有し、周縁部31aの内側にまで回り込むように形成されているから、インク滴idは、係止凹部31の周縁部31aよりも内側にまで回り込み、端部2ccからさらに回り込んで内側面2ca、さらには裏面2dにまでインク滴idを及ばせてそれらに塗布されるようにすることもできる。
【0032】
こうして、方向表示部5が形成される。このとき、延設凹部33に塗布されるインク滴idの量を調整するとよい。例えば、塗布されるインク滴idの量が少なくなれば方向表示部5が端部2ccにだけ形成されるようになるし、方向表示部5が端部2ccと内側面2caにだけ形成されるようにすることもできる。いずれの場合も、各載置部35に延設凹部33が形成されているからこそ端部2cc、内側面2ca、裏面2dにまでインク滴idが塗布されるのであり、それによって、方向印として利用可能な方向表示部5が形成される。
【0033】
一方、
図6に示すように、リベット部材1は、篏合部材10(雌側篏合部材10A,雄側篏合部材10B)とともに、生地6の表側と裏側にそれぞれ挟むように配置されて、生地6への取り付けが行われる。篏合部材10は合成樹脂製であり(金属製でもよい)、雌側篏合部材10A,雄側篏合部材10Bとともに、カシメ用突部3が貫通する貫通孔10dが形成されている。
【0034】
そして、図示しないカシメ付け工具にリベット部材1が、カシメ用突部3が上向きになるように設置され(このとき、頭部2の表面2bが裏面2dの背面側に配置されているので、目視で視認することはできない)その上から生地6を(取り付け箇所がカシメ付け工具上に配置されるように)置く。さらに、雌側篏合部材10Aまたは雄側篏合部材10Bを置いてからカシメ付け工具を操作してカシメ付けを行う。すると、カシメ用突部3の先端部3aがつぶれて拡径変形されることで貫通孔10dから外れなくなり、それによって、リベット部材1、1と、雌側篏合部材10Aまたは雄側篏合部材10Bとが一体化されて生地6への取り付けが完了する。
【0035】
以上のように、ホックの取り付けの際、頭部2の表面2bが裏面2dの背面側に配置されているので、表面2bを直接目視することはできない。すると、リベット部材1がカシメ用工具にセットされたときに不適切な方向を向いてしまいやすい。
【0036】
しかしながら、リベット部材1には、方向表示部5が形成され、これが加工治具30の延設凹部33を通って、表面2b側から裏面2d側に回り込んだインク滴idによって形成されているから、方向表示部5は裏面2d側からも直接目視することができる。そのため、方向表示部5が方向印として用いられる。すると、リベット部材1がカシメ付け工具にセットされているときでも、頭部2の表面2bを直接目視して、頭部2が正しい方向を向いているのかどうかを確かめるまでもなく、方向表示部5を目視するだけで頭部2の方向を特定し、それが正しいかどうかを把握することができる。したがって、方向表示部5を目印にしてリベット部材1が正しい方向で置かれていることをすぐさま把握することができるから、カシメ付けの際の方向合わせが簡易迅速になり、よって、生地への効率的な取り付けが可能になる。
【0037】
さらには、例えば、方向表示部5が形成されている箇所が手前側(下側)になるようにする、といった形でリベット部材1をカシメ付け工具にセットするときの置き方を決めておけばよい。そのほか、カシメ付け工具に目印を形成しておき、そのカシメ付け工具の目印に方向表示部5を合致させる、といった形でリベット部材1のカシメ付け工具へのセットの仕方を決めてもよい。このようにしても、リベット部材1と篏合部材10の生地6への効率的な取り付けが可能になる。
【0038】
前述の頭部2はドーム状に形成されていた。頭部2の代わりに、
図11(a)に示すように、中心部が底部となるように僅かに凹んだ浅底すり鉢状の表面を有する頭部2Aとすることもできる。また、
図11(b)に示すように、平坦な表面を有する頭部2Bとすることもできるし、表面に凹凸があってもよい。さらに、頭部2は、平面視概ね円形の板状に形成されていたが、平面視六角形、八角形といった多角形の板状に形成されていてもよい(図示せず)。カシメ用突部3は、鋭利な先端部3aを有していたが、太さ概ね一様の筒状、先端に向かって漸次縮径された筒状に形成されていてもよい。
【0039】
図示はしないが、本発明は、樹脂製ホックのほか、スナップボタン、押しボタン、ジーンズボタン、鳩目といったカシメ付けが行われて(かしめて)生地に装着される部材に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明を適用することにより、カシメ付けの際の方向合わせが簡易迅速に行えるようになる。本発明は、カシメボタン部材を加工するカシメボタン部材の加工方法、その加工方法が適用されたカシメボタン部材およびカシメボタン部材の加工に用いられるカシメボタン部材の加工治具の分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…リベット部材、2…頭部、2b…表面、2d…裏面、3…カシメ用突部、4…装飾、5…方向表示部、10…篏合部材、30…加工治具、31…係止凹部、33…延設凹部、33a…張り出し凹部、33b…内凹部、35…載置部、50…インクジェット印刷装置。