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特開2023-116193流動性計測方法、流動性計測装置、並びに流動性計測システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116193
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】流動性計測方法、流動性計測装置、並びに流動性計測システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 11/14 20060101AFI20230815BHJP
   G01N 33/38 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
G01N11/14 A
G01N33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018853
(22)【出願日】2022-02-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年11月25日~26日開催の建設フェア四国2021in徳島での展示
(71)【出願人】
【識別番号】513308088
【氏名又は名称】GNN Machinery Japan 株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593089046
【氏名又は名称】青木あすなろ建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000156204
【氏名又は名称】株式会社淺沼組
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(71)【出願人】
【識別番号】305025544
【氏名又は名称】大木建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390036515
【氏名又は名称】株式会社鴻池組
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000148346
【氏名又は名称】株式会社錢高組
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣藤 義和
(72)【発明者】
【氏名】毛利 彰仁
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】森田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】岸本 豪太
(72)【発明者】
【氏名】駒田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】新田 稔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 好幸
(72)【発明者】
【氏名】柳田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】住 学
(72)【発明者】
【氏名】浦野 真次
(72)【発明者】
【氏名】薗井 孫文
(72)【発明者】
【氏名】馬場 朝之
(57)【要約】
【課題】物質の流動性を、労力を軽減しながら容易に計測する。
【解決手段】本流動性計測方法は、施設内に設置された回転可能な容器12の内部に、容器12の回転に伴って回動するようにセンサ20を設置し、容器12内に物質Mを投入し、容器12を回転させて物質M内にセンサ20を通過させ、そのときに物質Mから受けた圧力をセンサ20により計測し、センサ20により計測された圧力に基づいて、物質Mの流動性を算出する。これにより、物質Mを容器12から出し入れする必要なく、物質Mの流動性を算出することができ、しかも、必要に応じて、容器12を継続的に回転させながら連続して物質Mの流動性を把握することができる。このため、労力を大幅に軽減することが可能となり、作業効率を向上させつつ、容易に物質Mの流動性を計測することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質の流動性を計測する方法であって、
施設内に設置された回転可能な容器の内部に、該容器の回転に伴って回動するようにセンサを設置し、
前記容器内に前記物質を投入し、
前記容器を回転させて前記物質内に前記センサを通過させ、そのときに前記物質から受けた圧力を前記センサにより計測し、
前記センサにより計測された圧力に基づいて、前記物質の流動性を算出することを特徴とする流動性計測方法。
【請求項2】
前記物質として、フレッシュコンクリートの流動性を算出することを特徴とする請求項1記載の流動性計測方法。
【請求項3】
前記容器を一定速度で回転させ、その際に前記センサが前記物質から受けた圧力と、予め把握している前記圧力と前記物質のスランプ実測値又はスランプフロー実測値との関係とに基づいて、前記物質のスランプ推定値又はスランプフロー推定値を算出することを特徴とする請求項1又は2記載の流動性計測方法。
【請求項4】
前記容器を少なくとも2つの一定速度で回転させ、一方の一定速度の際に前記センサが前記物質から受けた圧力と、他方の一定速度の際に前記センサが前記物質から受けた圧力とに基づいて、最小二乗法を利用して、前記物質の見かけの塑性粘度及び見かけの降伏値を算出することを特徴とする請求項1又は2記載の流動性計測方法。
【請求項5】
前記容器として傾胴ミキサを用い、該傾胴ミキサを回転させたときに、前記物質に対して前記センサを繰り返し出入させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の流動性計測方法。
【請求項6】
物質の流動性を計測するための装置であって、
施設内に設置され、内部に前記物質が投入される容器と、
回転速度を可変に前記容器を回転させるための回転機構と、
前記物質に接触したときの圧力を計測するセンサと、
該センサを、前記容器の回転に伴って該容器の内部で回動させ、該容器に投入された前記物質内を通過させるような位置に取り付けるための取付部と、
前記容器の回転時に前記センサにより計測された圧力に基づいて、前記物質の流動性を算出する算出部と、を含むことを特徴とする流動性計測装置。
【請求項7】
前記物質として、フレッシュコンクリートの流動性を算出するものであることを特徴とする請求項6記載の流動性計測装置。
【請求項8】
前記算出部は、前記回転機構によって前記容器が一定速度で回転されたときに、前記センサが前記物質から受けた圧力と、予め設定されている前記圧力と前記物質のスランプ実測値又はスランプフロー実測値との関係とに基づいて、前記物質のスランプ推定値又はスランプフロー推定値を算出することを特徴とする請求項6又は7記載の流動性計測装置。
【請求項9】
前記算出部は、前記回転機構によって前記容器が少なくとも2つの一定速度で回転されたときの、一方の一定速度の際に前記センサが前記物質から受けた圧力と、他方の一定速度の際に前記センサが前記物質から受けた圧力とに基づいて、最小二乗法を利用して、前記物質の見かけの塑性粘度及び見かけの降伏値を算出することを特徴とする請求項6又は7記載の流動性計測装置。
【請求項10】
前記容器が傾胴ミキサであり、
前記取付部は、前記傾胴ミキサが回転されたときに、該傾胴ミキサ内の前記物質に対して前記センサが繰り返し出入するような位置に、前記センサを取り付けることを特徴とする請求項6から9のいずれか1項記載の流動性計測装置。
【請求項11】
請求項6から10のいずれか1項記載の流動性計測装置と、
前記算出部の算出結果を含む複数のデータを表示するための表示部と、
前記複数のデータを格納するためのデータ格納部と、
前記センサと前記算出部との間、及び、前記算出部と前記データ格納部との間で、データの送受信を行うための通信部と、を含むことを特徴とする流動性計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質の流動性を、様々な用途のために計測する流動性計測方法、流動性計測装置、並びに流動性計測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
研究施設などで行われる物質の試験、例えばフレッシュコンクリートの練り混ぜ試験では、まず、容量50~100リットル程度の小型のミキサを用いてフレッシュコンクリートを練り混ぜて試料とし、それを容器へ一時的に移して必要な試験を行う。コンクリートを用いた実際の工事を想定すると、フレッシュコンクリートの製造施設から施工現場までの運搬時間や打ち込みが考慮されて、フレッシュコンクリートの経時変化試験が行われる場合が多い。例えば、試料のフレッシュコンクリートを容器のまま静置して保管し、練り混ぜから120分までの間の30分毎に、試料のスランプ試験やスランプフロー試験(特許文献1参照)などを行う。或いは、フレッシュコンクリートを運搬するアジテータ車のドラムに見立てた傾胴ミキサへ容器内の試料を投入し、低速回転での保管、容器に移してからのスランプ試験やスランプフロー試験、及び傾胴ミキサへの再投入を、30分毎に繰り返し行う。
【0003】
一方、コンクリートが打ち込まれる施工では、施工に先立ってコンクリートの流動状況のシミュレーションなどが行われる。このようなシミュレーションでは、施工現場でフレッシュコンクリートを充填する構造物の具体的構造(型枠)を考慮して、その型枠内へのコンクリートの流動状況を把握するが、そのために、使用するフレッシュコンクリートの粘度が必要となる。このようなことを目的として、フレッシュコンクリートの粘度測定を行う場合は、見かけの粘度測定として回転翼粘度計が使用されることが多い。この方法では、10リットル程度の容器に試料のフレッシュコンクリートを詰めて、そこへ粘度計の回転翼を挿入し、各回転速度で回転翼を回転させてトルクを測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4981984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、コンクリートの配合試験では、上記のようなフレッシュコンクリートの経時変化試験が行われるが、必要に応じてスランプ試験やスランプフロー試験の回数を増やそうとすると、それに伴って多大な労力が必要となる。すなわち、上記のような30分間隔では、フレッシュコンクリートのスランプ値やスランプフロー値の変動を捉えるには必ずしも十分ではなく、それを勘案して例えば5分間隔でスランプ値やスランプフロー値を収録することを考えると、労力の観点から現実的ではなかった。特に、傾胴ミキサを用いた試験では、傾胴ミキサからの全量の試料の排出、試験、傾胴ミキサへの再投入を繰り返すため、莫大な労力が必要となる。
【0006】
更に、回転翼粘度計を用いたフレッシュコンクリートの粘度測定では、回転翼の形状などに起因して回転翼と共に試料そのものが回転したり、試料内の粗骨材の片寄りが見られたりして、見かけの粘度を測定することが困難であった。このため、コンクリートの流動状況のシミュレーションなどが正確に行えず、施工現場での打ち込みに適した流動性への調整や、そのためのコンクリート構成材料の混合比の把握なども困難であった。また、フレッシュコンクリートのスランプ値、スランプフロー値、見かけの粘度といった流動性は、コンクリート構成材料の適切な混合比の把握だけでなく、コンクリート製品の開発や選定、混和剤などの構成材料の開発といった、様々な用途に使用されるものであるため、容易に計測されることが望ましい。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、物質の流動性を、労力を軽減しながら容易に計測することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0008】
(1)物質の流動性を計測する方法であって、施設内に設置された回転可能な容器の内部に、該容器の回転に伴って回動するようにセンサを設置し、前記容器内に前記物質を投入し、前記容器を回転させて前記物質内に前記センサを通過させ、そのときに前記物質から受けた圧力を前記センサにより計測し、前記センサにより計測された圧力に基づいて、前記物質の流動性を算出する流動性計測方法。
【0009】
本項に記載の流動性計測方法は、物質の流動性を計測するものであって、まず、研究施設などの施設内に設置された回転可能な容器の内部に、接触により圧力を計測可能なセンサを設置する。このとき、容器の回転に伴って、容器内部でセンサが回動するように、センサを固定する。次に、センサを設置した容器の内部に計測対象の物質を投入し、この状態で容器を回転させることで、容器内で物質を攪拌すると共にセンサを回動させる。すると、物質内をセンサが通過し、センサが物質に接触するため、そのときに物質から受けた圧力をセンサによって計測する。
【0010】
そして、上記のように計測された圧力は、物質の流動性を示す1つの指標になることから、センサにより計測された圧力に基づいて、物質の流動性を算出する。これにより、物質を容器から出し入れする必要なく、物質の流動性が算出され、しかも、必要に応じて、容器を継続的に回転させながら連続して物質の流動性が把握される。このため、労力が大幅に軽減され、作業効率が向上されつつ、容易に物質の流動性が計測されるものである。また、計測対象の物質の量や容器の大きさは、使用するセンサによって圧力が計測可能であればよいため、少量及び小型でも対応するものであり、計測した物質の流動性は様々な用途で使用されるものとなる。
【0011】
(2)上記(1)項において、前記物質として、フレッシュコンクリートの流動性を算出する流動性計測方法。
本項に記載の流動性計測方法は、計測対象の物質がフレッシュコンクリートであって、上記(1)項に記載したようにフレッシュコンクリートの流動性を算出するものである。このようにして、フレッシュコンクリートの流動性が計測されることで、施工現場に応じたコンクリート構成材料の適切な混合比の把握、施工現場で使用するコンクリートの選定、コンクリート製品の開発、コンクリート材料の開発、混和剤の開発といった、様々な用途で利用されるものとなる。更に、施工現場で使用するフレッシュコンクリートの流動性を上記のように把握しておき、それに見合った能力のコンクリートポンプ車を施工現場で使用することとすれば、フレッシュコンクリートの流動性を把握せずに能力過剰のコンクリートポンプ車を使用する場合と比較して、コストの削減や二酸化炭素排出量の削減に寄与するものとなり、環境に配慮するものとなる。また、フレッシュコンクリートの流動性が把握されることで、特に施工現場の型枠形状が複雑な場合に行われる、それを模した型枠へフレッシュコンクリートを流し込む実証実験などの省略が期待されるものである。
【0012】
(3)上記(1)(2)項において、前記容器を一定速度で回転させ、その際に前記センサが前記物質から受けた圧力と、予め把握している前記圧力と前記物質のスランプ実測値又はスランプフロー実測値との関係とに基づいて、前記物質のスランプ推定値又はスランプフロー推定値を算出する流動性計測方法。
本項に記載の流動性計測方法は、容器を一定速度で回転させたときにセンサが物質から受けた圧力と、そのときの物質のスランプ実測値又はスランプフロー実測値との関係を、予め把握する。すなわち、容器内で一定速度で回転させたときの物質の圧力計測と、その物質を試料としたスランプ試験やスランプフロー試験との双方を繰り返し行い、それらの結果を利用して、上記のような関係を把握する。そして、物質の計測時には、容器を一定速度で回転させ、その際に容器内でセンサが物質から受けた圧力と、上記のように把握した圧力と物質のスランプ実測値又はスランプフロー実測値との関係とに基づいて、物質のスランプ推定値又はスランプフロー推定値を算出する。これにより、物質のスランプやスランプフローの経時変化が、作業の労力が低減されながら連続的に容易に計測されるものである。
【0013】
(4)上記(1)(2)項において、前記容器を少なくとも2つの一定速度で回転させ、一方の一定速度の際に前記センサが前記物質から受けた圧力と、他方の一定速度の際に前記センサが前記物質から受けた圧力とに基づいて、最小二乗法を利用して、前記物質の見かけの塑性粘度及び見かけの降伏値を算出する流動性計測方法。
本項に記載の流動性計測方法は、容器を少なくとも2つの一定速度で回転させ、一方の一定速度の際にセンサが物質から受けた圧力と、他方の一定速度の際にセンサが物質から受けた圧力とを計測する。更に、一方の一定速度及びそのときの圧力と、他方の一定速度及びそのときの圧力とに基づいて、最小二乗法を利用して、容器の回転速度と物質から受けた圧力との関係式を、圧力を回転速度の一次方程式で表現して導出する。そして、その一次方程式の傾きを物質の見かけの塑性粘度、圧力の切片を物質の見かけの降伏値として算出するものである。これにより、物質の見かけの塑性粘度や見かけの降伏値が、作業の労力が低減されつつ容易に計測されるものである。
【0014】
(5)上記(1)から(4)項において、前記容器として傾胴ミキサを用い、該傾胴ミキサを回転させたときに、前記物質に対して前記センサを繰り返し出入させる流動性計測方法。
本項に記載の流動性計測方法は、センサを設置して物質を投入する容器として、傾胴ミキサを使用するものである。そして、傾胴ミキサを回転させたときに、傾胴ミキサ内の物質に対してセンサが繰り返し出入するような位置に、センサを取り付けるものである。これにより、傾胴ミキサによって物質が効率よく攪拌されると共に、センサによって物質からの圧力が効率よく計測されるものとなる。更に、傾胴ミキサはアジテータ車のドラムに形状が似ていることから、特に物質としてフレッシュコンクリートの流動性を計測する場合に、アジテータ車におけるフレッシュコンクリートの流動性の経時変化を把握するための応用が期待されるものである。
【0015】
(6)物質の流動性を計測するための装置であって、施設内に設置され、内部に前記物質が投入される容器と、回転速度を可変に前記容器を回転させるための回転機構と、前記物質に接触したときの圧力を計測するセンサと、該センサを、前記容器の回転に伴って該容器の内部で回動させ、該容器に投入された前記物質内を通過させるような位置に取り付けるための取付部と、前記容器の回転時に前記センサにより計測された圧力に基づいて、前記物質の流動性を算出する算出部と、を含む流動性計測装置。
本項に記載の流動性計測装置は、内部に計測対象の物質が投入される容器、容器を回転させるための回転機構、物質に接触したときの圧力を計測するセンサ、センサを容器の内部に取り付けるための取付部、及びセンサの計測結果に基づいて物質の流動性を算出する算出部を含むものである。このような上記(1)項の流動性計測方法を実現可能な具体的な構成により、上記(1)項の流動性計測方法と同等の作用を奏するものである。
【0016】
(7)上記(6)項において、前記物質として、フレッシュコンクリートの流動性を算出するものである流動性計測装置。
(8)上記(6)(7)項において、前記算出部は、前記回転機構によって前記容器が一定速度で回転されたときに、前記センサが前記物質から受けた圧力と、予め設定されている前記圧力と前記物質のスランプ実測値又はスランプフロー実測値との関係とに基づいて、前記物質のスランプ推定値又はスランプフロー推定値を算出する流動性計測装置。
(9)上記(6)(7)項において、前記算出部は、前記回転機構によって前記容器が少なくとも2つの一定速度で回転されたときの、一方の一定速度の際に前記センサが前記物質から受けた圧力と、他方の一定速度の際に前記センサが前記物質から受けた圧力とに基づいて、最小二乗法を利用して、前記物質の見かけの塑性粘度及び見かけの降伏値を算出する流動性計測装置。
【0017】
(10)上記(6)から(9)項において、前記容器が傾胴ミキサであり、前記取付部は、前記傾胴ミキサが回転されたときに、該傾胴ミキサ内の前記物質に対して前記センサが繰り返し出入するような位置に、前記センサを取り付ける流動性計測装置。
(7)から(10)項に記載の流動性計測装置は、各々、上記(2)から(5)項の流動性計測方法に利用される具体的構成を備えており、上記(2)から(5)項の流動性計測方法と同等の作用を奏するものである。
【0018】
(11)上記(6)から(10)項のいずれか1項記載の流動性計測装置と、前記算出部の算出結果を含む複数のデータを表示するための表示部と、前記複数のデータを格納するためのデータ格納部と、前記センサと前記算出部との間、及び、前記算出部と前記データ格納部との間で、データの送受信を行うための通信部と、を含む流動性計測システム。
本項に記載の流動性計測システムは、上記(6)から(10)項に示したような流動性計測装置に加えて、表示部、データ格納部、及び通信部を含むものである。表示部は、流動性計測装置の算出部による算出結果を含む複数のデータを表示するものであり、データ格納部は、そのような複数のデータを格納するものである。通信部は、流動性計測装置のセンサと算出部との間を通信可能に接続すると共に、算出部とデータ格納部との間も通信可能に接続する。このような構成により、表示部を介した様々なデータの確認、データ格納部を介したデータの保存及び保存したデータの確認、通信部を介したデータの送受信などが円滑に行われる。このため、作業者によって計測作業が効率よく進められるものとなり、保存された各種データが様々な用途に利用されるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記のような構成であるため、物質の流動性を、労力を軽減しながら容易に計測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係る流動性計測装置及び流動性計測システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2図1の流動性計測装置の容器をなす傾胴ミキサの側面イメージ図である。
図3図2の傾胴ミキサの内部を示す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態に係る流動性計測方法の手順の一例を示すフロー図である。
図5】スランプ推定値の算出に利用するグラフの一例である。
図6】見かけの塑性粘度及び見かけの降伏値の算出に利用する計算式のイメージグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づき説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、また、図面の全体にわたって、同一部分若しくは対応する部分は、同一の符号で示している。
図1は、本発明の実施の形態に係る流動性計測装置10と、この流動性計測装置10を備えた本発明の実施の形態に係る流動性計測システム40との構成を示している。なお、流動性計測装置10及び流動性計測システム40の構成は、図1のブロック図に限定されるものではなく、例えば用途や状況などに応じて、図1に示した構成要素の一部が削除、変更、ないし適宜追加された構成であってもよいものである。
【0022】
流動性計測装置10は、例えば建築現場や土木現場で使用されるフレッシュコンクリートや土などの、物質M(図2参照)の流動性を計測するものであって、図1に示すように、容器12、回転機構18、センサ20、取付部30、及び算出部32を含んでいる。容器12は、回転機構18の制御を受けて回転可能なものであり、内部に物質Mが投入された状態で回転することで、物質Mを攪拌する。容器12には、研究施設や製造施設などに設置された任意のものが使用されてよいが、本実施形態では、例えば図2及び図3に示すような傾胴ミキサ12Aが用いられている。
【0023】
傾胴ミキサ12Aの大きさは、実験室などで使用される比較的小型のものから、製造工場などで使用される比較的大型のものまでであってよく、特に限定されるものではないが、本実施形態では容量が数十リットルの比較的小型の傾胴ミキサ12Aを用いるものとする。傾胴ミキサ12Aは、図3で確認できるように、内部に複数の羽根14を有しており、これによって物質Mの攪拌効率が高められている。回転機構18は、容器12(傾胴ミキサ12A)を回転させるものであって、本実施形態ではインバータ制御によって容器12の回転速度が可変になっている。例えば、回転機構18は、1rpm~20rpmの範囲で容器12の回転速度を制御する。
【0024】
センサ20は、物質Mなどに接触したときに受ける抵抗の圧力を計測するものであって、本実施形態では棒状のセンサ20が用いられている。この棒状のセンサ20は、取付部30によって容器12(傾胴ミキサ12A)の内部に、容器12の回転に伴って回動するように取り付けられ、このとき、図2図3に示されるように、センサ20の一端側が容器12の中心の方へと突出するように、センサ20の他端側が容器12に固定される。より詳しくは、センサ20は、容器12内に物質Mが投入された状態で容器12が回転されたときに、図2に示すようにセンサ20の全体が物質M内に浸かる状態と、センサ20の少なくとも一部が物質M内から出る状態とが繰り返されるような位置に、取付部30によって取り付けられている。
【0025】
更に、図1に示すように、本実施形態のセンサ20は、測定部22、データ処理部24、電源部26、及び後述する通信部60の一部をなす送信部62を含んでいる。測定部22は、センサ20が物質Mに接触したときの物理的な変形を測定して電気信号に変換するものであり、例えばひずみゲージなどで構成される。データ処理部24は、測定部22による測定結果を受けて、後述する算出部32などでの利用に適した圧力データとして出力するものである。送信部62は、データ処理部24からの出力を、算出部32へ送信するためのものであり、電源部26は、測定部22、データ処理部24、及び送信部62へ電力を供給するためのものである。
【0026】
上記のような構成の棒状のセンサ20には、例えば、GNN Machinery Japan株式会社が輸入・販売するCommand Alkon社製のプローブセンサが用いられる。しかしながら、本発明の実施の形態に係る流動性計測装置10のセンサ20は、上記のプローブセンサに限定されるものではなく、物質Mなどに接触したときの圧力を計測できるものであればよい。すなわち、センサ20は、容器12内で物質Mの流動を妨げずに、物質Mから抵抗を受けるような形状及び大きさのものであれば、任意のセンサを使用してよい。また、設置先の容器12の大きさや形状に応じて、センサ20の大きさや形状を選定するようにしてもよい。
【0027】
算出部32は、回転された容器12内でセンサ20が物質Mに接触し、そのときにセンサ20によって計測された圧力に基づいて、物質Mの流動性を算出するものである。詳しくは後述するが、算出部32は、物質Mの流動性として、例えば物質Mのスランプ推定値、スランプフロー推定値、見かけの塑性粘度、及び見かけの降伏値などを算出する。算出部32は、例えばノート型、タブレット型、デスクトップ型といった種々のコンピュータや、それらに組み込まれるソフトウェアなどの、任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせで構成される。
【0028】
一方、流動性計測システム40は、上記のような構成の流動性計測装置10に加えて、表示部50、データ格納部54、及び通信部60を含んでいる。表示部50は、算出部32による算出結果、センサ20による計測結果、算出部32の算出に使用されるその他のデータといった、流動性計測システム40で取り扱う様々なデータを、例えば計測作業を行う作業者などに対して表示するためのものである。表示部50には、任意のディスプレイ装置が用いられてよく、例えば算出部32を構成するコンピュータのディスプレイが使用されてもよい。データ格納部54は、上記のように表示部50により表示されるデータなどの、流動性計測システム40で取り扱う様々なデータを格納するものであって、任意の記憶装置で構成されてよい。
【0029】
通信部60は、流動性計測システム40内でのデータ通信を実現するためのものであって、少なくとも、センサ20と算出部32との間、及び、算出部32とデータ格納部54との間を、データ通信可能に接続する。このため、本実施形態の通信部60は、上述したようにセンサ20に組み込まれた送信部62と、算出部32に接続され、送信部62からデータを受信すると共に、データ格納部54へデータを送信する送受信部64と、送受信部64から送信されたデータを受信してデータ格納部54へ伝達する受信部66とを含んでいる。送信部62と送受信部64との間は、例えばWi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)といった近距離無線通信規格で接続され、送受信部64と受信部66との間は、有線、無線、インターネット回線といった任意の通信規格で接続される。通信部60の各構成要素には、それぞれで行う通信の規格を満たし得る任意の通信機器が利用される。なお、通信部60は、データ格納部54に格納されたデータに対して、関係者が操作する各種のコンピュータやスマートフォンといった端末からアクセスできるようにする、追加的な構成要素を備えていてもよい。
【0030】
続いて、図4に示すフロー図を参照しながら、上述した流動性計測装置10及び流動性計測システム40を用いて実行する、本発明の実施の形態に係る流動性計測方法の具体的な手順の流れについて説明する。流動性計測装置10及び流動性計測システム40の構成については、適宜、図1図3を参照のこと。なお、図4に示すフロー図は、具体的な手順を説明するための一例を示したものである。従って、本発明の実施の形態に係る流動性計測方法は、図4のフロー図に限定されるものではなく、例えば、流動性計測装置10及び流動性計測システム40の構成や状況などに応じて、図4に示したステップの一部が削除、変更、ないし適宜追加されたフローであってもよいものである。
【0031】
S10(センサ設置):センサ20を、取付部30を介して、容器12の内部の、物質Mとの接触時に圧力を測定可能な適切な位置に設置する。センサ20の設置位置や取り付け方法は、使用するセンサ20の形状及び大きさや、容器12の形状及び大きさなどを考慮して、予め決定しておくものとする。本実施形態では、容器12として傾胴ミキサ12Aを用い、棒状のセンサ20を使用するものとし、上述したように、図2図3に示すような位置にセンサ20を取り付ける。
【0032】
S20(物質投入):傾胴ミキサ12A(容器12)の内部に、傾胴ミキサ12Aの大きさなどに見合った適切な量の、計測対象の物質Mを投入する。本実施形態では、物質Mとしてフレッシュコンクリートの流動性を計測するものとする。このため、傾胴ミキサ12Aへの投入に先立ち、フレッシュコンクリートMを練り混ぜておく必要があるが、練り混ぜは傾胴ミキサ12Aを利用して行ってもよく、別の方法で行ってもよい。
S30(計測対象選定):物質(フレッシュコンクリート)Mを試料として計測する流動性を選定する。ここでは、物質Mのスランプ値又はスランプフロー値を計測する場合(YES)はS40へ移行し、それ以外の流動性を計測する場合(NO)はS70へ移行する。
【0033】
S40(一定速度で容器回転):回転機構18により、傾胴ミキサ12A(容器12)を一定速度で回転させる。このときの回転の一定速度は、これに限定されるものではないが、例えば1rpm~2rpmである。
S50(センサ計測):センサ20により、物質(フレッシュコンクリート)Mから受ける圧力を計測する。すなわち、上記S40での傾胴ミキサ12Aの回転により、傾胴ミキサ12Aの内部では、フレッシュコンクリートMが攪拌されると共に、センサ20が回動するため、フレッシュコンクリートMに対してセンサ20が繰り返し出入する態様となる。このときに、フレッシュコンクリートMから抵抗として受ける圧力を、センサ20により連続的に計測する。
【0034】
S60(スランプ値又はスランプフロー値算出):算出部32により、上記S50で計測された圧力を通信部60を介してセンサ20から取得し、取得した圧力を使用して、物質(フレッシュコンクリート)Mのスランプ値又はスランプフロー値を算出する。ここで、本発明の実施の形態に係る流動性計測方法では、センサ20が物質Mから受ける圧力と、物質Mのスランプ実測値又はスランプフロー実測値との関係を、予め求めておくものとする。すなわち、例えばスランプ実測値の場合は、センサ20を設置した容器12の内部に物質(ここではフレッシュコンクリート)Mを投入し、容器12を一定速度で回転させる。このときの速度は、上記S40での回転速度と同様である。そして、センサ20によりフレッシュコンクリートMから受けた圧力を計測した後、容器12からフレッシュコンクリートMを取り出して、そのフレッシュコンクリートMを試料としてスランプ試験を行う。このような圧力の計測及びスランプ試験を繰り返し行い、フレッシュコンクリートMの圧力の変化とスランプ実測値の変化とを紐付けて、フレッシュコンクリートMの圧力とスランプ実測値との関係を把握する。
【0035】
なお、スランプフロー実測値の場合は、上記のスランプ試験に代えてスランプフロー試験を行い、フレッシュコンクリートMの圧力とスランプフロー実測値との関係を把握すればよい。算出部32には、これらの関係が予め設定されている。そして、本ステップS60では、上記S50で計測した圧力と、予め設定されているフレッシュコンクリートMの圧力とスランプ実測値との関係とに基づいて、算出部32によりフレッシュコンクリートMのスランプ推定値を算出する。例えば図5には、フレッシュコンクリートMの圧力値とスランプ実測値との関係の一例が示されており、黒丸部分が実際に計測された値である。実線は隣接する黒丸間を直線で接続したものであり、破線は変化が緩やかになるように補完的に示したものである。
【0036】
例えば、上記S50で計測されたフレッシュコンクリートMからの圧力値が18kPaである場合は、図5の破線上の白丸で示された位置のスランプ実測値を読み取ることで、スランプ値が8.5cm程度であることが推定できる。このようにして、スランプ推定値を算出すればよく、スランプフロー推定値の場合も同様である。なお、物質Mの圧力とスランプ実測値又はスランプフロー実測値との関係は、物質M毎(物質Mそのものや物質Mを構成する材料比毎)や、使用する容器12の容量毎などに把握しておくことが好ましい。また、図5のような関係から読み取れるスランプ(又はスランプフロー)実測値を、そのままスランプ(又はスランプフロー)推定値として算出するのではなく、例えば、図5のような関係を把握した際の試験環境と上記S50での試験環境との相違点などを加味した調整を行い、スランプ(又はスランプフロー)推定値を算出してもよい。
【0037】
S70(計測対象選定):物質(フレッシュコンクリート)Mを試料として計測する流動性を選定する。ここでは、物質Mの見かけの塑性粘度又は見かけの降伏値を計測する場合(YES)はS80へ移行し、それ以外の流動性を計測する場合(NO)はS130へ移行する。
S80(第1の速度で容器回転):回転機構18により、傾胴ミキサ12A(容器12)を第1の一定速度で回転させる。このときの回転の一定速度は、これに限定されるものではないが、例えば低速回転として1rpm~2rpmである。
【0038】
S90(センサ計測):センサ20により、物質(フレッシュコンクリート)Mから受ける圧力を計測する。すなわち、上記S50と同様に、傾胴ミキサ12Aの内部でフレッシュコンクリートMから抵抗として受ける圧力を、センサ20により連続的に計測する。
S100(第2の速度で容器回転):回転機構18により、傾胴ミキサ12Aを第2の一定速度で回転させる。このときの回転の一定速度は、これに限定されるものではないが、例えば中速回転として5rpm程度である。
S110(センサ計測):センサ20により、フレッシュコンクリートMから受ける圧力を計測する。すなわち、上記S50、S90と同様に、傾胴ミキサ12Aの内部でフレッシュコンクリートMから抵抗として受ける圧力を、センサ20により連続的に計測する。
【0039】
S120(見かけの塑性粘度及び見かけの降伏値算出):算出部32により、上記S90及びS110で計測された圧力を、通信部60を介してセンサ20から取得し、取得した圧力を使用して、物質(フレッシュコンクリート)Mの見かけの塑性粘度及び見かけの降伏値を算出する。具体的には、上記S90で計測された圧力及びそのときの傾胴ミキサ12Aの回転速度と、上記S110で計測された圧力及びそのときの傾胴ミキサ12Aの回転速度とを使用して、最小二乗法により、フレッシュコンクリートMから受けた圧力と傾胴ミキサ12Aの回転速度との関係式を導出する。すなわち、フレッシュコンクリートMから受けた圧力をP(kPa)、傾胴ミキサ12Aの回転速度をN(/min)としたとき、例えば図6のようなイメージで示される「P=g+hN」という一次方程式を立てる。そして、この一次方程式の傾きを表すhを、フレッシュコンクリートMの見かけの塑性粘度(kPa・min)として算出し、圧力Pの切片であるgを、フレッシュコンクリートMの見かけの降伏値(kPa)として算出するものである。
【0040】
なお、本実施形態では、上記S80及びS100で容器12を回転させた2つの一定速度及びその際の圧力を用いて、見かけの塑性粘度及び見かけの降伏値を算出しているが、3つ以上の一定速度及びその際の圧力を用いて算出してもよい。例えば3つの一定速度を利用する場合は、上記S80における低速回転及び上記S100における中速回転に加えて、高速回転として10rpm程度で容器12を回転させ、その際に計測された圧力も利用して、フレッシュコンクリートMから受けた圧力と傾胴ミキサ12Aの回転速度との関係式を導出してもよい。
【0041】
S130(容器回転):上記S30及びS70での選定を経て、物質(フレッシュコンクリート)Mの流動性として、スランプ値、スランプフロー値、見かけの塑性粘度、及び見かけの降伏値のうち、何れにも該当しない流動性を計測する場合には、その流動性の計測に適した速度で、回転機構18により傾胴ミキサ12A(容器12)を回転させる。
S140(センサ計測):センサ20により、物質(フレッシュコンクリート)Mから受ける圧力を計測する。すなわち、上記S50、S90、及びS110と同様に、傾胴ミキサ12Aの内部でフレッシュコンクリートMから抵抗として受ける圧力を、センサ20により連続的に計測する。
【0042】
S150(流動性算出):算出部32により、上記S140において計測された圧力に基づいて、物質Mの計測対象の流動性を算出する。算出方法は、計測対象の流動性に応じた適切な方法を利用すればよい。
S160(算出結果利用):上記S60、S120、及びS150で算出した結果を、コンクリート構成材料の適切な混合比の把握、コンクリートの選定、コンクリート製品の開発、コンクリートの流動状況のシミュレーション、コンクリート材料の開発、及び混和剤の開発など、目的に応じた用途に利用する。また、各算出結果やその算出に使用した様々なデータを、表示部50に表示させてもよく、データ格納部54に格納してもよい。
【0043】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る流動性計測方法は、物質M(図2参照)の流動性を計測するものであって、図1に示すような流動性計測装置10を用いて実行する。まず、研究施設などの施設内に設置された回転可能な容器12の内部に、接触により圧力を計測可能なセンサ20を設置する(図4のS10参照)。このとき、容器12の回転に伴って、容器12内部でセンサ20が回動するように、取付部30を介してセンサ20を固定する。次に、センサ20を設置した容器12の内部に計測対象の物質Mを投入し(図4のS20参照)、この状態で回転機構18により容器12を回転させることで、容器12内で物質Mを攪拌すると共にセンサ20を回動させる(図4のS130参照)。すると、物質M内をセンサ20が通過し、センサ20が物質Mに接触するため、そのときに物質Mから受けた圧力をセンサ20によって計測する(図4のS140参照)。
【0044】
そして、上記のように計測された圧力は、物質Mの流動性を示す1つの指標になることから、センサ20により計測された圧力に基づいて、算出部32によって物質Mの流動性を算出する(図4のS150参照)。これにより、物質Mを容器12から出し入れする必要なく、物質Mの流動性を算出することができ、しかも、必要に応じて、容器12を継続的に回転させながら連続して物質Mの流動性を把握することができる。このため、労力を大幅に軽減することが可能となり、作業効率を向上させつつ、容易に物質Mの流動性を計測することができる。また、計測対象の物質Mの量や容器12の大きさは、使用するセンサ20によって圧力が計測可能であればよいため、少量及び小型でも対応することができ、計測した物質Mの流動性を様々な用途で使用することが可能となる。
【0045】
また、本発明の実施の形態に係る流動性計測方法は、計測対象の物質Mがフレッシュコンクリートである場合に、上記のようにしてフレッシュコンクリートMの流動性を計測する。計測されたフレッシュコンクリートMの流動性は、施工現場に応じたコンクリート構成材料の適切な混合比の把握、施工現場で使用するコンクリートの選定、コンクリート製品の開発、コンクリート材料の開発、混和剤の開発といった、様々な用途で利用することができる。更に、施工現場で使用するフレッシュコンクリートMの流動性を上記のように把握しておき、それに見合った能力のコンクリートポンプ車を施工現場で使用することとすれば、フレッシュコンクリートMの流動性を把握せずに能力過剰のコンクリートポンプ車を使用する場合と比較して、コストの削減や二酸化炭素排出量の削減に寄与することができ、環境に配慮することができる。また、フレッシュコンクリートMの流動性が把握されることで、特に施工現場の型枠形状が複雑な場合に行われる、それを模した型枠へフレッシュコンクリートMを流し込む実証実験などの省略を期待することもできる。
【0046】
更に、本発明の実施の形態に係る流動性計測方法は、センサ20を設置して物質Mを投入する容器12として、図2及び図3に示すような傾胴ミキサ12Aを使用するものである。そして、傾胴ミキサ12Aを回転させたときに、傾胴ミキサ12A内の物質Mに対してセンサ20が繰り返し出入するような位置に、取付部30によりセンサ20を取り付けるものである。これにより、傾胴ミキサ12Aによって物質Mを効率よく攪拌することができると共に、センサ20によって物質Mからの圧力を効率よく計測することができる。更に、傾胴ミキサ12Aはアジテータ車のドラムに形状が似ていることから、特に物質Mとしてフレッシュコンクリートの流動性を計測する場合に、アジテータ車におけるフレッシュコンクリートMの流動性の経時変化を把握するための応用を期待することができる。
【0047】
また、本発明の実施の形態に係る流動性計測方法は、物質Mのスランプ値又はスランプフロー値を計測する場合は、容器12を一定速度で回転させたときにセンサ20が物質Mから受けた圧力と、そのときの物質Mのスランプ実測値又はスランプフロー実測値との関係を、予め把握する。すなわち、容器12内で一定速度で回転させたときの物質Mの圧力計測と、その物質Mを試料としたスランプ試験やスランプフロー試験との双方を繰り返し行い、それらの結果を利用して、上記のような関係(例えば図5参照)を把握する。そして、物質Mの計測時には、容器12を一定速度で回転させ、その際に容器12内でセンサ20が物質Mから受けた圧力と、上記のように把握した圧力と物質Mのスランプ実測値又はスランプフロー実測値との関係とに基づいて、算出部32により物質Mのスランプ推定値又はスランプフロー推定値を算出する(図4のS40~S60参照)。これにより、物質Mのスランプやスランプフローの経時変化を、作業の労力を低減しながら連続的に容易に計測することができる。
【0048】
加えて、本発明の実施の形態に係る流動性計測方法は、物質Mの見かけの粘度を計測する場合は、容器12を少なくとも2つの一定速度で回転させ、一方の一定速度の際にセンサ20が物質Mから受けた圧力と、他方の一定速度の際にセンサ20が物質Mから受けた圧力とを計測する(図4のS80~S110参照)。更に、一方の一定速度及びそのときの圧力と、他方の一定速度及びそのときの圧力とに基づいて、算出部32により、最小二乗法を利用して、容器12の回転速度と物質Mから受けた圧力との関係式を、圧力を回転速度の一次方程式で表現して導出する(例えば図6参照)。そして、その一次方程式の傾きを物質Mの見かけの塑性粘度、圧力の切片を物質Mの見かけの降伏値として算出するものである(図4のS120参照)。これにより、物質Mの見かけの塑性粘度や見かけの降伏値を、作業の労力を低減しつつ容易に計測することが可能となる。
【0049】
一方、本発明の実施の形態に係る流動性計測装置10は、上述した本発明の実施の形態に係る流動性計測方法を実現可能な構成を有し、その流動性計測方法に用いられることで、流動性計測方法と同等の作用効果を奏することができる。
他方、本発明の実施の形態に係る流動性計測システム40は、上述した流動性計測装置10に加えて、表示部50、データ格納部54、及び通信部60を含むものである。表示部50は、流動性計測装置10の算出部32による算出結果を含む複数のデータを表示するものであり、データ格納部54は、そのような複数のデータを格納するものである。通信部60は、流動性計測装置10のセンサ20と算出部32との間を通信可能に接続すると共に、算出部32とデータ格納部54との間も通信可能に接続する。このような構成により、表示部50を介した様々なデータの確認、データ格納部54を介したデータの保存及び保存したデータの確認、通信部60を介したデータの送受信などを円滑に行うことができる。このため、作業者によって計測作業を効率よく進めることができ、保存した各種データを様々な用途に利用することが可能となる。
【符号の説明】
【0050】
10:流動性計測装置、12:容器、12A:傾胴ミキサ、18:回転機構、20:センサ、30:取付部、32:算出部、40:流動性計測システム、50:表示部、54:データ格納部、60:通信部、M:物質(フレッシュコンクリート)
図1
図2
図3
図4
図5
図6