(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116211
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】アルカリイオン電池用負極活物質、負極材料及び該負極材料を備えるアルカリイオン電池、並びに、アルカリイオン電池用負極活物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/58 20100101AFI20230815BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20230815BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230815BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M4/587
H01M4/36 A
C01G53/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018888
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】301029388
【氏名又は名称】時空化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521493765
【氏名又は名称】株式会社関兵
(71)【出願人】
【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 佳佳
(72)【発明者】
【氏名】官 国清
(72)【発明者】
【氏名】岳 喜岩
(72)【発明者】
【氏名】関 和治
(72)【発明者】
【氏名】阿布 里提
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AA07
4G048AA08
4G048AB02
4G048AC06
4G048AE05
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA15
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA17
5H050CB05
5H050CB07
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA27
(57)【要約】
【課題】アルカリイオン電池に優れた容量特性及びサイクル特性をもたらすことができる負極活物質、負極材料及び該負極材料を備えるアルカリイオン電池、並びに、負極活物質の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のアルカリイオン電池用負極活物質は、金属硫化物及び炭素を含有する複合材料を含み、前記金属硫化物は、亜鉛と、亜鉛以外の少なくとも1種の遷移金属元素とを有する。本発明のアルカリイオン電池用負極活物質の製造方法は、亜鉛源と、遷移金属元素源と、有機配位子とを溶媒中で混合して前駆体を得る工程1、前記前駆体を硫黄源の存在下で加熱処理することで硫化物を得る工程2、及び、前記硫化物をエッチング処理して前記複合材料を得る工程3を備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリイオン電池用負極活物質であって、
金属硫化物及び炭素を含有する複合材料を含み、
前記金属硫化物は、亜鉛と、亜鉛以外の少なくとも1種の遷移金属元素とを有する、アルカリイオン電池用負極活物質。
【請求項2】
前記遷移金属元素は、Ni、Co、Mn、Fe、Cu及びMoからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のアルカリイオン電池用負極活物質。
【請求項3】
前記複合材料は、ミクロスフェア構造に形成されている、請求項1又は2に記載のアルカリイオン電池用負極活物質。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のアルカリイオン電池用負極活物質を含む、負極材料。
【請求項5】
請求項4に記載のアルカリイオン電池用負極材料を備える、アルカリイオン電池。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載のアルカリイオン電池用負極活物質の製造方法であって、
亜鉛源と、遷移金属元素源と、有機配位子とを溶媒中で混合して前駆体を得る工程1、
前記前駆体を硫黄源の存在下で加熱処理することで硫化物を得る工程2、及び、
前記硫化物をエッチング処理して前記複合材料を得る工程3
を備える、アルカリイオン電池用負極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリイオン電池用負極活物質、負極材料及び該負極材料を備えるアルカリイオン電池、並びに、アルカリイオン電池用負極活物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属硫化物は、その高いイオン/電子伝導性と理論的容量、優れた熱安定性、可逆的ナトリウムイオン貯蔵能力、高い電気化学的活性等の性質を有するため、高性能ナトリウムイオン電池(SIB)アノード材料として、最近大きな関心を集めている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、アノード材料として、炭素質繊維に埋め込まれた遷移金属硫化物中空ナノ粒子が開示されている。また、非特許文献2には、N及びSを共ドープした炭素中に珊瑚状ZnSを埋め込んだアノード材料が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ACS Applied Materials Interfaces 10(2018):40531-40539
【非特許文献2】Applied Surface Science 535 (2021) 147748
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の金属硫化物は、充電/放電サイクル中に激しい体積変動とイオン拡散の鈍化があり、サイクル性能とレート能力が低下しやすく、金属硫化物のナトリウムイオン電池への応用は制限されやすいものであった。また、非特許文献1及び2に開示されるアノード材料はいずれも複雑な合成プロセスを用いて合成する必要もあり、製造のしやすさという点でも改善の余地がある。
【0006】
近年の電池分野においては、従来よりも容量特性及びサイクル特性をさらに向上させることが強く求められており、これに伴い、優れた容量特性及びサイクル特性をもたらすことが可能な電池材料の開発が要求されている。この観点から、アルカリイオン電池の負極材料に適用したときに優れた容量特性及びサイクル特性をもたらすことができる負極活物質を開発することは、電池分野において極めて重要な位置づけであった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、アルカリイオン電池に優れた容量特性及びサイクル特性をもたらすことができる負極活物質、負極材料及び該負極材料を備えるアルカリイオン電池、並びに、負極活物質の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の金属を含有する金属硫化物と、炭素材料とを複合化した材料により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
アルカリイオン電池用負極活物質であって、
金属硫化物及び炭素を含有する複合材料を含み、
前記金属硫化物は、亜鉛と、亜鉛以外の少なくとも1種の遷移金属元素とを有する、アルカリイオン電池用負極活物質。
項2
前記遷移金属元素は、Ni、Co、Mn、Fe、Cu及びMoからなる群より選ばれる少なくとも1種である、項1に記載のアルカリイオン電池用負極活物質。
項3
前記複合材料は、ミクロスフェア構造に形成されている、項1又は2に記載のアルカリイオン電池用負極活物質。
項4
項1~3のいずれか1項に記載のアルカリイオン電池用負極活物質を含む、負極材料。
項5
項4に記載のアルカリイオン電池用負極材料を備える、アルカリイオン電池。
項6
項1~3のいずれか1項に記載のアルカリイオン電池用負極活物質の製造方法であって、
亜鉛源と、遷移金属元素源と、有機配位子とを溶媒中で混合して前駆体を得る工程1、
前記前駆体を硫黄源の存在下で加熱処理することで硫化物を得る工程2、及び、
前記硫化物をエッチング処理して前記複合材料を得る工程3
を備える、アルカリイオン電池用負極活物質の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の負極活物質は、アルカリイオン電池に優れた容量特性及びサイクル特性をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】各実施例及び比較例で得られた負極活物質のSEM画像を示す。
【
図2】各実施例及び比較例で得られた負極活物質のX線回折測定(XRD)結果を示す。
【
図3】各作製例で組み立てた電池の定電流充放電試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0013】
1.負極活物質
本発明のアルカリイオン電池用負極活物質(以下、単に「負極活物質」ということもある)は、金属硫化物及び炭素を含有する複合材料を含み、前記金属硫化物は、亜鉛と、亜鉛以外の少なくとも1種の遷移金属元素とを有する。斯かる負極活物質は、アルカリイオン電池(例えば、ナトリウムイオン電池)を構成するための負極材料として使用することができ、アルカリイオン電池に優れた容量特性及びサイクル特性をもたらすことができる。具体的に本発明の負極活物質は、高い初期放電容量及び充電容量を有し、また、繰り返し充放電を行った後でも容量維持率を高くすることができる。
【0014】
本発明の負極活物質は、前記複合材料を主成分として含有する。前記複合材料は、金属硫化物及び炭素で構成される材料である。
【0015】
前記金属硫化物は、亜鉛と、亜鉛以外の少なくとも1種の遷移金属元素とを有する複合硫化物である。以下、亜鉛以外の少なくとも1種の遷移金属元素を「遷移金属元素M」と表記する。
【0016】
前記金属硫化物において、亜鉛以外の少なくとも1種の遷移金属元素Mは、Ni、Co、Mn、Fe、Cu及びMoからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。この場合、本発明の負極活物質は、アルカリイオン電池に優れた容量特性及びサイクル特性をもたらしやすくなる。遷移金属元素Mは、Niを含むことがより好ましい。従って、前記金属硫化物は、亜鉛とニッケルとを含む硫化物であることがより好ましい。
【0017】
前記金属硫化物に含まれる金属は、亜鉛及び前記遷移金属元素M以外の金属元素を含むこともでき、あるいは、亜鉛及び前記遷移金属元素Mのみであってもよい。前記金属硫化物に含まれる金属は2種以上であり、2種のみであってもよい。例えば、前記金属硫化物に含まれる金属は亜鉛と、1種の遷移金属元素Mのみであってもよい。
【0018】
前記複合材料は炭素を含有する。当該炭素は、例えば、複合材料において、アモルファス状態で存在し得る。前記複合材料は、アモルファス状の炭素フレームワークが形成されており、当該炭素フレームワークに前記金属硫化物がカプセル化されて存在し得る。
【0019】
前記複合材料は、本発明の効果を阻害しない限り、金属硫化物及び炭素以外の元素や成分を含むことができる。好ましくは、前記複合材料における金属硫化物及び炭素の合計割合は50質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。前記複合材料は、前記金属硫化物及び炭素のみで形成されていてもよい。
【0020】
前記複合材料において、各元素の含有割合は特に限定されない。例えば、前記複合材料中、亜鉛元素及び前記遷移金属元素Mのモル比(Zn:M)は、例えば、1:0.5~1:10とすることができ、1:0.5~1:5であることが好ましく、1:0.8~1:3であることがより好ましい。
【0021】
また、前記金属硫化物の全質量に対する硫黄原子の含有割合は、10~50質量%とすることができ、好ましくは15~45質量%、より好ましくは20~40質量%である。
【0022】
前記複合材料において、炭素の含有割合は、例えば、20~80質量%であり、好ましくは50~70質量%である。
【0023】
前記複合材料において、ZnS成分の含有割合は、1~30質量%であることが好ましく、2~25質量%であることがより好ましく、3~15質量%であることがさらに好ましく、4~10質量%であることが特に好ましい。ZnS成分の含有割合が特定の範囲であることで、本発明の負極活物質は、アルカリイオン電池に特に優れた容量特性及びサイクル特性をもたらしやすくなる。
【0024】
前記複合材料の形態は特に限定されず、粉末状、塊状、顆粒状、繊維状等の種々の形態をとり得る。前記複合材料が粉末状である場合、例えば、ミクロスフェア構造等の多孔質状粒子を挙げることができ、その他、中空粒子、不定形粒子、球状粒子等、種々の形状であってもよい。アルカリイオン電池に優れた容量特性及びサイクル特性をもたらすことができる点で、前記複合材料は、多孔質状粒子であることが好ましく、ミクロスフェア構造を有することがより好ましい。
【0025】
前記複合材料が粒子状である場合、その平均粒子径は特に限定されず、例えば、100nm~100μmとすることができる。この場合、負極活物質は、アルカリイオン電池に優れたサイクル特性をもたらしやすい。前記複合材料が粒子状である場合、その平均粒子径は、1~80μmであることが好ましく、2~50μmであることがより好ましい。ここでいう平均粒子径とは、前記複合材料の走査型電子顕微鏡による直接観察によって無作為に50個の粒子を選択し、これらの円相当径を計測して算術平均した値をいう。
【0026】
前記複合材料のBET比表面積は特に限定されず、例えば、85m2/g以上であることが好ましい。この場合、アルカリイオン電池により優れた容量特性及びサイクル特性をもたらしやすい。前記複合材料のBET比表面積は90m2/g以上であることがより好ましく、100m2/g以上であることがさらに好ましく110m2/g以上であることが特に好ましい。前記複合材料のBET比表面積は、例えば、5000m2/g以下、好ましくは3000m2/g以下、より好ましくは1000m2/g以下、さらに好ましくは500m2/g以下、特に好ましくは300m2/g以下である。
【0027】
本発明の負極活物質は、前記炭素材料の他、本発明の効果が阻害されない程度である限り、他の成分を含むことができ、あるいは、負極活物質は前記炭素材料のみとすることもできる。負極活物質に含まれる前記炭素材料の含有割合は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましい。負極活物質に前記炭素材料が存在するかどうかは、負極活物質のXRDスペクトルから判断することができる。
【0028】
従来の金属硫化物を含む材料は、充電/放電サイクル中に激しい体積変動とイオン拡散の鈍化があり、サイクル性能とレート能力が低下することから、ナトリウムイオン電池等への応用は制限されやすいものであった。これに対し」、本発明の負極活物質は、金属硫化物を炭素材料と複合化した前記複合材を構成成分として含有することで、導電性が改善され、体積変動を緩衝することができ、より高いレート能力とサイクル安定性をもたらすことができるものである。
【0029】
2.負極活物質の製造方法
負極活物質を製造する方法は特に限定されない。例えば下記の工程1、工程2及び工程3を備える製造方法によって、本発明の負極活物質を製造することができる。
工程1;亜鉛源と、遷移金属元素源と、有機配位子とを溶媒中で混合して前駆体を得る工程。
工程2;前記前駆体を硫黄源の存在下で加熱処理することで硫化物を得る工程。
工程3;前記硫化物をエッチング処理して前記複合材料を得る工程。
【0030】
(工程1)
工程1は、亜鉛源と、遷移金属元素源と、有機配位子とを溶媒中で混合して前駆体を得るための工程である。
【0031】
亜鉛源は、亜鉛単体であってもよいし、亜鉛の化合物であってもよいし、これらの混合物であってもよく、好ましくは、亜鉛の化合物である。
【0032】
亜鉛の化合物の種類は特に限定されず、例えば、亜鉛の無機化合物、塩化物、有機化合物を挙げることができる。亜鉛の無機化合物としては、例えば、亜鉛の硝酸塩、硫酸塩、塩化物、酸化物、塩素酸塩、過塩素酸塩、クロリド錯体、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩及びリン酸水素塩、シアン化合物、シアン化合物塩、オキソアニオンを含む化合物(亜鉛酸塩)等を挙げることができる。亜鉛の有機化合物としては、酢酸塩、シュウ酸塩、蟻酸塩及びコハク酸塩等を挙げることができる。
【0033】
中でも亜鉛源は、亜鉛の無機化合物であることが好ましく、亜鉛の硝酸塩(例えば、Zn(NO3)2)であることが好ましい。
【0034】
遷移金属元素源は、遷移金属元素単体であってもよいし、遷移金属元素の化合物であってもよいし、これらの混合物であってもよく、好ましくは、遷移金属元素の化合物である。遷移金属元素としては、前述の遷移金属元素Mであり、中でもNiであることがより好ましい。
【0035】
遷移金属元素の化合物の種類は特に限定されず、例えば、遷移金属元素の無機化合物、塩化物、有機化合物を挙げることができる。遷移金属元素の無機化合物としては、例えば、遷移金属元素の硝酸塩、硫酸塩、塩化物、酸化物、塩素酸塩、過塩素酸塩、クロリド錯体、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩及びリン酸水素塩、シアン化合物、シアン化合物塩、オキソアニオンを含む化合物(亜鉛酸塩)等を挙げることができる。遷移金属元素の有機化合物としては、酢酸塩、シュウ酸塩、蟻酸塩及びコハク酸塩等を挙げることができる。
【0036】
中でも遷移金属元素源は、遷移金属元素の無機化合物であることが好ましく、遷移金属元素の硝酸塩であることが好ましい。遷移金属元素源としては、Niの硝酸塩(例えば、Ni(NO3)2)を挙げることができる。
【0037】
工程1で使用する有機配位子は、複合材料における炭素源となる原料である。有機配位子の種類は特に限定されず、例えば、各種遷移金属に配位することができる有機配位子を広く挙げることができる。例えば、配位子として機能することが知られている芳香族系カルボン酸化合物、イミダゾール化合物、アミノ化合物等を挙げることができる。
【0038】
具体的に有機配位子としては、p-ベンゼンジカルボン酸(H2BDC)、o-ベンゼンジカルボン酸、m-ベンゼンジカルボン酸、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸(H4DOBDC)、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(H3BTC)、1,4-ベンゼンジカルボキシレート、2,4,6-トリス(4-カルボキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(H3TATB)、2-アミノテレフタル酸(NH2BDC)、2-メチルイミダゾール(2-MIM)、1-メチルイミダゾール(1-MIM)、1,4-ビス(イミダゾール-1-イル)ベンゼン(1,4-BIB)、4-(イミダゾール-1-イル)フタル酸(H2IPC)、4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジル、4,4’-オキシビス安息香酸、フマル酸、シュウ酸、コハク酸、ビフェニル-3,4’、5-トリカルボン酸(BPTC)、4,4’-ビフェニルジカルボキシレート(BPDC)、2,5-ジオキシドテレフタレート(DOT)等を挙げることができる。
【0039】
工程1で使用する溶媒は特に限定されず、使用する原料に応じて適宜選択することができる。斯かる溶媒は、例えば、水;エタノール、イソプロパノール、n-ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N、N-ジエチルホルムアミド(DEF)等のアミド系溶媒;その他、グリセロール、エチレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、アセトニトリル、トリエチルアミン、テトラヒドロフラン(THF)等を挙げることができる。工程1で使用する溶媒は、2種以上の混合溶媒であってもよい。
【0040】
工程1において、亜鉛源と、遷移金属元素源と、有機配位子とを溶媒中で混合する方法は特に限定されない。混合の一態様として、亜鉛源と、遷移金属元素源とを含む溶媒と、有機配位子を含む溶媒とを混合する方法が挙げられる。この場合、前者の溶媒と後者の溶媒とは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0041】
工程1において、亜鉛源と、遷移金属元素源と、有機配位子との使用割合も特に限定されず、所望の複合材料が得られるように、これらの原料を適宜の割合で使用することができる。例えば、公知の金属有機構造体(MOF)を得るための条件と同様の条件を採用することができる。一例として、亜鉛源及び遷移金属元素源の濃度がそれぞれ、0.1~1000mM(好ましくは0.5~500mM、より好ましくは1~100mM)である溶液と、有機配位子の濃度が0.1~1000mM(好ましくは0.5~500mM、より好ましくは1~100mM)である溶液どうしを混合して反応を行うことができる。
【0042】
工程1で、亜鉛源と、遷移金属元素源と、有機配位子とを溶媒中で混合するにあたり、混合時の温度は、例えば、80~400℃、好ましくは100~200℃であり、また、温度に応じて混合時間は適宜選択される。
【0043】
工程1で、亜鉛源と、遷移金属元素源と、有機配位子とを溶媒中で混合することで前駆体が生成する。斯かる前駆体は、金属有機構造体(MOF)である。
【0044】
工程1で得られる前駆体は、例えば、固形分であるので、適宜の方法で分離し、生成物を取得することができる。斯かる生成物は、さらに適宜の方法で精製処理及び乾燥処理等を行うこともできる。
【0045】
(工程2)
工程2は、前記工程1で得られた前駆体を硫黄源の存在下で加熱処理することで硫化物を得るための工程である。
【0046】
工程2で使用する硫黄源は硫黄単体(硫黄粉末や昇華硫黄)であってもよいし、硫黄を含む化合物であってもよいが、硫黄を含む化合物であることが好ましい。
【0047】
硫黄を含む化合物としては、例えば、公知の硫黄化合物を広く挙げることができ、例えば、チオアセトアミド(CH3CSNH2)、チオ尿素(SC(NH2)2)、システイン(C3H7NO2S)、チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)、硫化アンモニウム((NH4)2S)、硫化ナトリウム(Na2S)等を挙げることができる。なお、硫黄を含む化合物としては、硫黄元素の一部が、Se及び/又はTe元素に置き換えられてもよい。硫黄源は1種単独で使用することができ、あるいは、2種以上を併用することもできる。
【0048】
工程2において、前記工程1で得られた前駆体を硫黄源の存在下で加熱処理する方法は特に限定されない。例えば、固体状の前駆体と硫黄源とを反応器に収容し、所定温度で加熱処理する方法を挙げることができる。この加熱処理は、空気雰囲気下、不活性ガス雰囲気下等で行うことができる。加熱処理は、例えば、市販の加熱炉等の公知の加熱装置を使用することができる。
【0049】
工程2において、加熱処理の温度も特に限定されず、例えば、200~2000℃とすることができ、好ましくは250~1000℃、より好ましくは300~800℃である。加熱処理の時間は温度に応じて適宜選択され、例えば、1~10時間である。
【0050】
工程2で使用する前駆体及び硫黄源の割合は特に限定されない。例えば、金属硫化物が形成されやすく、所望の負極活物質が得られやすいという点で、前駆体100質量部あたりの硫黄源の使用量を10~1000質量部とすることが好ましく、30~800質量部とすることがより好ましく、50~600質量部とすることがさらに好ましい。
【0051】
工程2の加熱処理により、金属硫化物が生成物として得られる。また、この加熱処理によって炭化も生じ、炭素源が生成する。すなわち、工程2の加熱処理により、アモルファス状の炭素フレームワークが形成されており、当該炭素フレームワークに前記金属硫化物がカプセル化され得る。工程2の加熱処理で得られる生成物は、適宜の方法で処理することで、精製された金属硫化物を得ることもできる。
【0052】
(工程3)
工程3は、工程2で得た前記硫化物をエッチング処理して前記複合材料を得るための工程である。
【0053】
エッチング処理の方法は特に限定されず、例えば、工程2で得た前記硫化物をエッチング剤に接触させる方法を挙げることができる。エッチング剤としては特に限定されず、例えば、公知のエッチング剤を広く使用することができる。例えば、塩酸、硫酸、硝酸、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などの酸又はアルカリをエッチング剤として使用することができる。エッチング剤が酸又はアルカリである場合、その濃度は、例えば、0.1~5M、好ましくは0.5~3Mである。
【0054】
エッチング剤は、塩化鉄(FeCl3)等の金属塩を含有することもできる。例えば、塩化鉄(FeCl3)等の金属塩を含有する酸又はアルカリをエッチング剤として使用することができる。エッチング剤が塩化鉄(FeCl3)等の金属塩を含有する場合、金属塩の濃度は、例えば、0.1~5M、好ましくは0.2~3Mである。
【0055】
工程3のエッチング処理は、例えば、エッチング剤に工程2で得た前記硫化物を浸漬し、攪拌することで行うことができる。エッチング時の温度は、例えば、10~90℃、好ましくは30~80℃、さらに好ましくは40~70℃、特に好ましくは、50~65℃である。エッチング処理の時間(エッチング剤と硫化物との接触時間)は、例えば、1分~60分である。エッチング時の温度が50~65℃である場合、エッチング処理の時間は15分以上であることが好ましく、18分以上であることがより好ましい。
【0056】
工程3のエッチング処理によって、目的の複合材料を得ることができる。エッチング処理によって、不要な成分などが除去され得る。また、エッチング処理によって、過剰のZnSが除去され、これにより、複合材料中に欠陥が形成されて、比表面積を適性の範囲に調整しやすくなる。この結果、得られる負極活物質は、アルカリイオン電池に特に優れた容量特性及びサイクル特性をもたらしやすくなる。
【0057】
エッチング処理後は、必要に応じて複合材料を洗浄してもよい。この場合、例えば、二硫化炭素を洗浄液として使用することができる。
【0058】
工程3で得られた複合材料(金属硫化物及び炭素を含有する複合材料)を、本発明の負極活物質として得ることができ、あるいは必要に応じてその他の成分を配合することで、本発明の負極活物質として得ることもできる。
【0059】
上記工程1、工程2及び工程3を備える製造方法によれば、簡便な工程によって、容易に本発明の負極活物質を得ることができ、低エネルギーである製造方法となる。また、製造時に使用する原料も安価で、かつ、豊富な資源から入手することができる。
【0060】
3.負極材料
本発明の負極材料は、上記負極活物質を含む限り、他の成分を含むこともでき、例えば、アルカリイオン電池(例えば、ナトリウムイオン電池)の負極材料に使用されている公知の成分を挙げることができる。例えば、本発明の負極材料は、上記負極活物質の他、導電助剤及びバインダーを含むことができる。
【0061】
導電助剤は、例えば、各種電池の電極材料を形成するために使用されている公知の導電助剤を広く挙げることができる。導電助剤としては、例えば、各種の炭素材料が例示され、硬質炭素、軟質炭素、グラフェン、還元型酸化グラフェン、天然黒鉛、人造黒鉛、導電性カーボンブラック、炭素繊維等を挙げることができる。炭素繊維としては、例えば、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等が挙げられる。導電助剤は、その他、銅、ニッケル等の金属粉末、金属繊維、導電性セラミックス材料等を使用することもできる。
【0062】
バインダー例えば、各種電池の電極材料を形成するために使用されている公知のバインダーを広く挙げることができる。バインダーとしては、例えば、各種樹脂材料を挙げることができ、具体的には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができる。
【0063】
負極材料において、負極活物質の含有割合は特に限定されない。例えば、負極材料に含まれる負極活物質、導電助剤及びバインダーの全質量に対して、負極活物質が50~95質量%含まれることが好ましく、60~90質量%含まれることがより好ましい。
【0064】
負極材料において、導電助剤の含有割合は特に限定されない。例えば、負極材料に含まれる負極活物質、導電助剤及びバインダーの全質量に対して、導電助剤が3~30質量%含まれることが好ましく、5~20質量%含まれることがより好ましい。
【0065】
負極材料において、バインダーの含有割合は特に限定されない。例えば、負極材料に含まれる負極活物質、導電助剤及びバインダーの全質量に対して、バインダー3~30質量%含まれることが好ましく、5~20質量%含まれることがより好ましい。
【0066】
負極材料は、負極活物質、導電助剤及びバインダーのみで構成されていてもよいし、その他の成分が含まれていてもよい。
【0067】
負極材料の調製方法は特に限定されず、例えば、公知の負極材料の調製方法を広く採用することができる。例えば、負極活物質、導電助剤及びバインダーを所定の割合にて、適宜の方法で混合することで、負極材料を調製することができる。負極材料を調製するにあたっては、負極活物質、導電助剤及びバインダーを分散させるべく、溶媒を使用することもできる。溶媒としては、水の他、各種の有機溶媒、例えば、炭素数1~3の低級アルコール化合物、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)等を挙げることができる。負極材料が溶媒を含む場合は、例えば、スラリー状やペースト状となる。
【0068】
4.アルカリイオン電池
本発明のアルカリイオン電池は、前記負極材料を備える限り、その他の構成は特に限定されず、例えば、公知のアルカリイオン電池と同様の構成とすることができる。アルカリイオン電池の種類は特に制限されず、例えば、ナトリウム二次電池、リチウムイオン電池、カリウム二次電池等を挙げることができる。本発明のアルカリイオン電池は、ナトリウム電池であることが好ましく、ナトリウムイオン二次電池であることがさらに好ましい。
【0069】
アルカリイオン電池は、例えば、正極、負極、電解質及びセパレータを備えることができる。電池の大きさ及び形状は、その用途に応じて適宜決定することができる。
【0070】
正極は、例えば、金属箔と正極材料で構成された構造を有することができる。金属箔を形成するための金属としては、アルミニウム、チタン、白金、モリブデン、ステンレス、銅等が挙げられる。正極材料は公知の正極材料を広く適用することができ、例えば、正極材料を構成する材料としては、ナトリウム金属、リチウム金属、NaFePO4、Na3V2(PO4)3、NaxMO4(M=Co、Mn、V、Fe)、LiTiS2、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiNi0.33Mn0.33Co0.33O2、LiNi0.8Mn0.15Al0.05O2、LiMn2O4、LiFePO4等が挙げられる。正極は公知の方法で作製することができ、例えば、金属箔上に正極材料を塗布する方法が挙げられる。
【0071】
負極は、例えば、金属箔に本発明の負極活物質が担持された構造を有することができる。金属箔としては、アルミニウム、チタン、白金、モリブデン、ステンレス、銅等が挙げられる。負極は公知の方法で作製することができる。
【0072】
アルカリイオン電池において、電解質の種類も特に限定されず、例えば、公知の電解質を使用することができる。電解質は固体電解質及び液体電解質のいずれでもよい。
【0073】
液体電解質としては、電解質が溶媒に溶解した溶液を挙げることができる。電解質としては電池の種類に応じて各種アルカリ塩を挙げることができ、例えば、NaPF6、NaClO4、NaCF3SO3、NaFSI、NaTFSI、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiBOB、LiAsF6、LiCF3SO3、LiTFSI、LiFSI、KPF6、KFSI、KTFSI、KBF4等が挙げられ、その他、公知のマグネシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等も挙げられる。溶媒は水、ジグライム、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸プロピル、フルオロエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等が例示される。
【0074】
固体電解質としては、硫化物系や酸化物系等の無機物材料や、PEO(ポリエチレンオキシド)系等の高分子材料が挙げられる。
【0075】
セパレータとしては、二次電池に適用されている公知のセパレータを使用することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリイミド;ポリビニルアルコール;末端アミノ化ポリエチレンオキシドポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂;アクリル樹脂;ナイロン;芳香族アラミド;無機ガラス;セラミックス等で形成された材料を挙げることができる。セパレータは、多孔質膜、不織布、織布等の形態とすることができる。その他、セパレータとしては、各種の高分子膜、および無機電解質を挙げることができる。無機電解質としては、例えば、LiLaTiO3、Li7La3Zr2O12(LLZO)、Na3Zr2Si2PO12、Na11Sn2PS12、Na3PSe4等が挙げられる。
【実施例0076】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0077】
(実施例1)
150mgのNi(NO3)2六水和物と、150mgのZn(NO3)2六水和物とを、15mLのエチレングリコールに分散させた原料1を準備した。また、90mgのp-ベンゼンジカルボン酸(H2BDC)を24mLのN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に超音波処理によって分散させた原料2を準備した。次に、上記の原料1及び原料2を混合し、室温で1時間撹拌し、その後、混合物をテフロン(登録商標)で裏打ちされた密封オートクレーブ(50ml容量)に移し、150℃で6時間加熱した。これにより生成した薄緑色の前駆体(Ni-ZnMOF)を遠心分離によって収集し、DMFとエタノールを使用して数回洗浄した後、真空オーブン内にて60℃で12時間乾燥させた(工程1)。乾燥させた前駆体を、質量比1:5のチオアセトアミド(TAA)とともに、アルゴン雰囲気中、500℃で2時間加熱して、黒色の硫化物を生成物として得た(工程2)。最後に、この硫化物を、0.5MFeCl3を含む13mLの1MH2SO4溶液に入れて、60℃で15分間撹拌するエッチング処理を行った後、蒸留水と二硫化炭素とでそれぞれ3回洗浄した後、複合材料(Ni-Zn-S@C-2)を得た(工程3)。複合材料のBET比表面積を窒素吸脱着等温線に基づいて測定したところ、114.86cm2/gであった。また、得られた複合材料のZnS量を元素分析により定量したところ、約5.6質量%であった。
【0078】
(比較例1)
150mgのNi(NO3)2六水和物と、150mgのZn(NO3)2六水和物とを、15mLのエチレングリコールに分散させた原料1を準備した。また、90mgのp-ベンゼンジカルボン酸(H2BDC)を24mLのN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に超音波処理によって分散させた原料2を準備した。次に、上記の原料1及び原料2を混合し、室温で1時間撹拌し、その後、混合物をテフロン(登録商標)で裏打ちされた密封オートクレーブ(50ml容量)に移し、150℃で6時間加熱した。これにより生成した薄緑色の前駆体(Ni-ZnMOF)を遠心分離によって収集し、DMFとエタノールを使用して数回洗浄した後、真空オーブン内にて60℃で12時間乾燥させた。乾燥させた前駆体を、質量比1:5のチオアセトアミド(TAA)とともに、アルゴン雰囲気中、500℃で2時間加熱して、黒色の硫化物を生成物(Ni-Zn-S@C-1)として得た。生成物のBET比表面積を窒素吸脱着等温線に基づいて測定したところ、82.20cm2/gであった。また、得られた生成物(Ni-Zn-S@C-1)のZnS量を元素分析により定量したところ、約37質量%であった。
【0079】
(作製例1)
実施例及び比較例で得られた複合材料を負極活物質とし、それぞれの負極活物質を用いて電池を作製した。具体的には、負極活物質と、導電性添加剤としてsuperP(導電性カーボンブラック)と、バインダーとしてメチルピロリジノン中に溶解したポリフッ化ビニリデン(PVDF)とからなる負極材料用スラリーを準備した。このスラリーにおいて、負極活物質:superP:PVDF=7.5:1.5:1(質量比)とした。スラリーを銅箔にコーティングし、真空中120℃で12時間乾燥させることで、負極を製作した。この負極と、正極(アルミニウム箔付きナトリウム金属)と、液体電解質と、この液体電解質をしみ込ませたセパレータ(Cytiva提供の「Whatman GF/Cガラス繊維ろ紙」)とを用い、公知の方法により、電池を組み立てた。電解質は、1Mトリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム溶液とし、斯かる溶液の溶媒は、ジグライムとした。
【0080】
(評価結果)
図1は、実施例1(
図1(b))及び比較例1(
図1(a))で得られた負極活物質のSEM画像を示している。いずれの負極活物質もミクロスフェア構造を有していることがわかった。
【0081】
図2は、実施例及び比較例で得られた負極活物質のX線回折測定(XRD)結果である。X線回折測定には、Rigaku社製の「SmartLab」を使用し、2θ=10~100°の範囲でCu-Kα(λ=1.540Å)放射線源を使用して測定を行った。
【0082】
図2のXRDパターンから、実施例1で得た複合材料からなる負極活物質は、すべてNiS(JCPDSカード番号02-1280)およびZnS(JCPDSカード番号05-0566)の回折ピークとよく一致していることが認められ、他の回折ピークは現れなかった。従って、実施例1の複合材料からなる負極活物質は、亜鉛とニッケルの金属硫化物と炭素とを含む複合材料で形成されていることがわかった。比較例1の複合材料からなる負極活物質は、NiS(JCPDSカード番号02-1280)のサンプルに一致するだけであって、他の回折ピークは現れなかった。
【0083】
図3は、作製例1で組み立てた電池の定電流充放電試験の結果を示す。この測定には、LANDバッテリー試験システム「CT2001A」(Wuhan LAND electronics Co., Lt
d. China)を使用して測定した。ここで、測定温度は30℃、印加電圧は1.5~3.5V(1Ag
-1)とした。なお、
図3において、Y軸の第1軸は容量(mAhg
-1)を示し、Y軸の第2軸はクーロン効率(%)を示す。
【0084】
200サイクル後、実施例1の複合材料から作製した電極は1Ag-1の高電流密度で415.1mAhg-1の比容量を示し、また、1900サイクル後であっても404.5mAhg-1の比容量を示した。これに対し、比較例1の複合材料から作製した電極は、1Ag-1の高電流密度で297.9mAhg-1の比容量に留まった。
【0085】
従って、実施例1で得た負極活物質を含む負極材料を備えた電池は、比較例1の負極活物質を備える電池よりも優れた容量特性及びサイクル特性をもたらすことができることがわかった。