(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116227
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】出力回路
(51)【国際特許分類】
H03K 19/0175 20060101AFI20230815BHJP
H03H 11/28 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
H03K19/0175 220
H03H11/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018910
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】390009667
【氏名又は名称】セイコーNPC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正敏
【テーマコード(参考)】
5J056
5J098
【Fターム(参考)】
5J056BB17
5J056BB18
5J056DD02
5J056DD51
5J056FF08
5J098AA02
5J098AA03
5J098AA11
5J098AA14
5J098AB01
5J098AB11
5J098AB31
5J098AC28
5J098AD02
5J098AD20
5J098AD21
(57)【要約】
【課題】出力波形にサグが発生することを抑制することができる出力回路を提供する。
【解決手段】入力波形のACカップリング回路を構成するコンデンサと、前記コンデンサとベースが接続されるとともにエミッタに出力端が接続されるバイポーラトランジスタから構成される第1トランジスタ、または、前記コンデンサとゲートが接続されるとともにソースに出力端が接続されるMOSトランジスタから構成される第2トランジスタのいずれかであるトランジスタと、前記コンデンサに対して並列に設けられ、並列用コンデンサと並列用抵抗との直列接続から構成される回路部と、を備える出力回路。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力波形のACカップリング回路を構成するコンデンサと、
前記コンデンサとベースが接続されるとともにエミッタに出力端が接続されるバイポーラトランジスタから構成される第1トランジスタ、または、前記コンデンサとゲートが接続されるとともにソースに出力端が接続されるMOSトランジスタから構成される第2トランジスタのいずれかであるトランジスタと、
前記コンデンサに対して並列に設けられ、並列用コンデンサと並列用抵抗との直列接続から構成される回路部と、
を備える出力回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、出力回路に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な分野でACカップリング回路が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
ACカップリング回路は、入力された電圧信号から直流(DC:Direct Current)成分を除去して交流(AC:Alternating Current)成分を抽出する。
【0003】
例えば、ACカップリングでレベルシフトした電圧信号をバイポーラトランジスタのエミッタフォロアもしくはMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタのソースフォロアで出力する出力回路が知られている。当該出力回路は、例えば、小振幅の電圧出力方式で、ディジタル信号を出力する。
【0004】
図3は、背景技術に係る出力回路101の概略的な構成の一例を示す図である。
出力回路101は、波形発生部111と、コンデンサ112と、コンデンサ113と、バイアス電源114と、抵抗115と、トランジスタ116と、電源117と、出力端118と、抵抗119と、を備える。
なお、これらの回路素子の接続関係は、
図1に示される出力回路1の該当部分と同様であり、ここでは詳細な説明を省略する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、
図3に示される出力回路101では、いわゆるサグが出力波形に発生してしまうといった問題があった。サグは、例えば、瞬時の電圧低下を表す。
【0007】
これについて具体的に説明する。
図4(A)は、背景技術に係る出力回路101の入力波形2011の一例を示す図である。
図4(B)は、背景技術に係る出力回路101の出力波形2012の一例を示す図である。
図4(A)および
図4(B)のそれぞれに示されるグラフにおいて、横軸は時間を表しており、縦軸はレベル(電圧のレベル)を表している。
【0008】
ここで、入力波形2011としては、
図2(A)に示される入力波形1011と同じ波形を例示してある。
また、
図4(B)には、オフセット電圧2021を示してある。
図3および
図4の例では、オフセット電圧2021は、
図2(A)に示されるオフセット電圧1021と同様である。
【0009】
図3に示される出力回路101では、処理されるディジタル信号が高周波である場合には波形の崩れはない。
しかしながら、出力回路101では、
図4(B)に示されるように、処理されるディジタル信号がACカップリングの時定数以下である場合には、波形(例えば、方形波)のハイレベル(H)およびロウレベル(L)の平坦部が斜めになるサグが発生してしまう。このため、低い周波数では、出力回路101を使用することができなかった。
なお、このようなサグは、コンデンサ112の蓄電荷が抜けることで発生する。
【0010】
本開示は、このような事情を考慮してなされたもので、出力波形にサグが発生することを抑制することができる出力回路を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様は、入力波形のACカップリング回路を構成するコンデンサと、前記コンデンサとベースが接続されるとともにエミッタに出力端が接続されるバイポーラトランジスタから構成される第1トランジスタ、または、前記コンデンサとゲートが接続されるとともにソースに出力端が接続されるMOSトランジスタから構成される第2トランジスタのいずれかであるトランジスタと、前記コンデンサに対して並列に設けられ、並列用コンデンサと並列用抵抗との直列接続から構成される回路部と、を備える出力回路である。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、出力回路において、出力波形にサグが発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る出力回路の概略的な構成の一例を示す図である。
【
図2】(A)は実施形態に係る出力回路の入力波形の一例を示す図であり、(B)は実施形態に係る出力回路の出力波形の一例を示す図である。
【
図3】背景技術に係る出力回路の概略的な構成の一例を示す図である。
【
図4】(A)は背景技術に係る出力回路の入力波形の一例を示す図であり、(B)は背景技術に係る出力回路の出力波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本開示の実施形態について説明する。
【0015】
[出力回路]
図1は、実施形態に係る出力回路1の概略的な構成の一例を示す図である。
出力回路1は、波形発生部11と、第1コンデンサ13と、第2コンデンサ12と、バイアス電源14と、第1抵抗15と、トランジスタ16と、電源17と、出力端18と、第3抵抗19と、回路部21と、を備える。
回路部21は、第3コンデンサ31と、第2抵抗32と、を備える。
【0016】
ここで、
図1に示される出力回路1は、
図3に示される出力回路101と比べて、回路部21が追加された構成となっている。なお、各回路素子のパラメーター(例えば、容量、または、抵抗値など)は、
図1に示される出力回路1と
図3に示される出力回路101とで異なっていてもよい。
また、
図1の例では、第2コンデンサ12を用いてACカップリング回路が構成されている。
【0017】
図1の例では、波形発生部11が入力信号の波形(入力波形)を発生する。当該波形としては、例えば、方形波(矩形波と呼ばれてもよい。)の波形が用いられる。
例えば、波形発生部11は、出力回路1の外部の回路から行われる制御によって、入力波形を発生させてもよい。
図1の例では、トランジスタ16として、バイポーラトランジスタが用いられている。
【0018】
出力回路1における回路素子の接続関係について説明する。
波形発生部11の一端は、グランドと接続されている。
波形発生部11の他端と、第2コンデンサ12の一端と、第3コンデンサ31の一端と、が接続されている。
第3コンデンサ31の他端と、第2抵抗32の一端と、が接続されている。
第1コンデンサ13の一端は、グランドと接続されている。
【0019】
バイアス電源14の一端(
図1の例では、負側)は、グランドと接続されている。
バイアス電源14の他端(
図1の例では、正側)と、第1抵抗15の一端と、が接続されている。
第2コンデンサ12の他端と、第1コンデンサ13の他端と、第1抵抗15の他端と、第2抵抗32の他端と、トランジスタ16のベースと、が接続されている。
【0020】
電源17と、トランジスタ16のコレクタと、が接続されている。
第3抵抗19の一端は、グランドと接続されている。
トランジスタ16のエミッタと、第3抵抗19の他端と、が接続されている。ここで、トランジスタ16のエミッタと第3抵抗19の他端との間に、出力端18が設けられている。
【0021】
第1コンデンサ13の容量をC1で表す。
第2コンデンサ12の容量をC2で表す。
第3コンデンサ31の容量をC3で表す。
第1抵抗15の抵抗値をR1で表す。
第2抵抗32の抵抗値をR2で表す。
入力(IN)の波形の電圧(ハイレベル(H)とロウレベル(L)との電位差)をViで表す。
出力(OUT)の波形のオフセット電圧をVoffsetで表す。
バイアス電源14の電圧(バイアス電圧)をVbiasで表す。
トランジスタ16のベース-エミッタ間の電圧をVBEで表す。
【0022】
図2(A)は、実施形態に係る出力回路1の入力波形1011の一例を示す図である。
図1の例では、入力波形1011は、波形発生部11により発生する波形である。
図2(B)は、実施形態に係る出力回路1の出力波形1012の一例を示す図である。
図1の例では、出力波形1012は、出力端18から出力される波形である。
図2(A)および
図2(B)のそれぞれに示されるグラフにおいて、横軸は時間を表しており、縦軸はレベル(電圧のレベル)を表している。
また、
図2(B)には、オフセット電圧1021を示してある。
【0023】
ここで、オフセット電圧Voffsetは、式(1)により表される。
【0024】
[数1]
Voffset = Vbias - VBE ・・(1)
【0025】
オフセット電圧1021を基準(中心電圧)として、出力波形1012のハイレベル(H)とロウレベル(L)との間の電位差(振幅)は、式(2)で表される。
【0026】
[数2]
電位差 = {C2/(C1+C2)}・Vi ・・(2)
【0027】
ここで、出力波形1012は、入力波形1011の振幅(電圧Vi)が容量C1と容量C2により分圧された結果に基づいている。
本実施形態では、式(3)に示される比の関係について、容量C1と容量C2との関係と、抵抗値R1と抵抗値R2との関係とを合わせる。
また、容量C1および容量C2に電荷を供給できるように、容量C3を大きい値に設定する。
なお、式(3)は理想的な式であり、現実では調整により多少ずれてもよい。
【0028】
[数3]
{C2/(C1+C2)} = {R1/(R1+R2)}
C3 >> C1+C2
・・(3)
【0029】
このような設定により、出力回路1では、出力波形1012の電圧が一定値(ハイレベル(H)の値あるいはロウレベル(L)の値)に対して斜めに変化するサグを補償することができる。
出力回路1では、例えば、第2コンデンサ12だけだとサグが発生するような波形部分に、回路部21の第3コンデンサ31の蓄電荷が注入されることで、サグの発生を抑制することができる。
【0030】
ここで、
図1の例では、出力回路1において、トランジスタ16としてバイポーラトランジスタが用いられて、ACカップリングでレベルシフトした電圧信号を当該バイポーラトランジスタのエミッタフォロアで出力する場合を示したが、これに限られない。
例えば、トランジスタ16としては、バイポーラトランジスタの代わりに、MOS(Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタが用いられてもよい。この場合、出力回路1において、ACカップリングでレベルシフトした電圧信号を当該MOSトランジスタのソースフォロアで出力する。また、この場合、当該MOSトランジスタのゲート、ドレイン、ソースが、それぞれ、バイポーラトランジスタのベース、コレクタ、エミッタの代わりに配置される。
【0031】
図1の例では、出力回路1では、例えば、小振幅の電圧出力方式で、ディジタル信号を出力する。
具体例として、波形発生部11は、出力が大きいCMOS(Complementary MOS)の回路を用いて構成されてもよい。このような場合においても、出力回路1では、容量C
2と容量C
3との分圧により、出力を小さくすることが可能である。
また、
図1の例において、出力回路1では、バイアス電圧(バイアス電流)を生成する回路において、第1抵抗15の代わりに電流源が用いられてもよい。
【0032】
以上のように、本実施形態に係る出力回路1では、ACカップリングの容量(本実施形態では、容量C2)に並列に、第3コンデンサ31(容量C3)と第2抵抗32(抵抗値R2)とを直列に接続した回路部21を備えている。そして、回路部21の容量C3と抵抗値R2を適度に選択することで、出力波形1012を平坦にするようにサグを補償することができる。
【0033】
したがって、本実施形態に係る出力回路1では、サグが補償されることで、例えば、低い周波数領域まで出力周波数を下げることができる。
このように、本実施形態に係る出力回路1では、出力波形1012にサグが発生することを抑制することができる。
本実施形態に係る出力回路1では、例えば、簡易な回路を用いて、波形のサグの改善を実現することができる。
【0034】
例えば、従来技術では、ACカップリングでレベルシフトした出力をバイポーラエミッタフォロア等で出力する集積回路の出力回路において、出力する周波数を下げるとACカップリングの時定数の影響で出力波形の平坦部が斜めになるサグが発生する。
これに対して、本実施形態に係る出力回路1では、例えば、時定数をそのまま同じ値として、容量(C)と抵抗(R)からなる回路を付加することで、平坦部のサグを容易に水平に補正することができる。
【0035】
一構成例として、出力回路1は、入力波形のACカップリング回路を構成するコンデンサ(本実施形態では、第2コンデンサ12)と、当該コンデンサとベースが接続されるとともにエミッタに出力端が接続されるバイポーラトランジスタから構成される第1トランジスタ(
図1の例)、または、当該コンデンサとゲートが接続されるとともにソースに出力端が接続されるMOSトランジスタから構成される第2トランジスタ(
図1とは別の例)のいずれかであるトランジスタ(本実施形態では、トランジスタ16)と、当該コンデンサに対して並列に設けられ、並列用コンデンサ(本実施形態では、第3コンデンサ31)と並列用抵抗(本実施形態では、第2抵抗32)との直列接続から構成される回路部(本実施形態では、回路部21)と、を備える。
【0036】
ここで、本実施形態に係る出力回路1は、例えば、ECL(Emitter-Coupled Logic)回路などに適用されてもよい。
【0037】
以上、この開示の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この開示の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0038】
1、101…出力回路、11、111…波形発生部、12…第2コンデンサ、13…第1コンデンサ、31…第3コンデンサ、112、113…コンデンサ、14、114…バイアス電源、15…第1抵抗、19…第3抵抗、32…第2抵抗、115、119…抵抗、16、116…トランジスタ、17、117…電源、18、118…出力端、21…回路部、1011、2011…入力波形、1012、2012…出力波形、1021、2021…オフセット電圧