(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116245
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20230815BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01C3/06 120Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018942
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春瀬 祐太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 義朗
(72)【発明者】
【氏名】曽根 秀倫
(72)【発明者】
【氏名】本橋 和也
(72)【発明者】
【氏名】林 幸雄
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA09
2F112CA05
2F112DA02
2F112DA05
2F112DA25
2F112DA28
2F112EA05
2F112FA41
5J084AA05
5J084AC02
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA06
5J084BA36
5J084BA40
5J084BB02
5J084BB04
5J084BB10
5J084CA03
5J084CA22
5J084CA32
5J084CA45
5J084EA31
(57)【要約】
【課題】動部を用いずに光を受光可能な測定エリアを広げること。
【解決手段】本開示に係る測定装置は、光を測定エリアに照射する照射部と、受光センサと、前記測定エリアからの反射光を前記受光センサに受光させる受光用光学系とを備える。前記受光用光学系は、第1方向に光軸をシフトさせた第1レンズエレメントと、前記第1レンズエレメントとは逆方向に光軸をシフトさせた第2レンズエレメントとを連結させた連結レンズを有し、第1測定エリアからの前記反射光を、前記第1レンズエレメントを介して、前記受光センサの受光素子に受光させるとともに、前記第1測定エリアと重複した重複エリアを含む第2測定エリアからの前記反射光を、前記第2レンズエレメントを介して、前記受光素子に受光させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を測定エリアに照射する照射部と、
受光センサと、
前記測定エリアからの反射光を前記受光センサに受光させる受光用光学系と
を備え、
前記受光用光学系は、
第1方向に光軸をシフトさせた第1レンズエレメントと、前記第1レンズエレメントとは逆方向に光軸をシフトさせた第2レンズエレメントとを連結させた連結レンズを有し、
第1測定エリアからの前記反射光を、前記第1レンズエレメントを介して、前記受光センサの受光素子に受光させるとともに、
前記第1測定エリアと重複した重複エリアを含む第2測定エリアからの前記反射光を、前記第2レンズエレメントを介して、前記受光素子に受光させる、
測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測定装置であって、
前記照射部が前記光を照射する前記測定エリア上の位置を制御する制御部を有する、
測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記受光センサの受光素子が前記第1測定エリアの第1位置と前記第2測定エリアの第2位置の光とを受光可能であるとき、前記第1位置及び前記第2位置に同時に光が照射されないように、前記照射部を制御する、
測定装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の測定装置であって、
前記受光センサは、第1受光素子と、第2受光素子とを有し、
前記第1受光素子は、前記第1レンズエレメントを介して、前記測定エリア上の所定位置の光を受光可能であり、
前記第2受光素子は、前記第2レンズエレメントを介して、前記測定エリア上の前記所定位置の光を受光可能である、
測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の測定装置であって、
前記第1受光素子の第1受光結果と、前記第2受光素子の第2受光結果とを取得する制御部を有する、測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の測定装置であって、
前記制御部は、
前記第1受光結果に基づいて、前記所定位置における対象物までの距離を算出するとともに、
前記第2受光結果に基づいて、前記所定位置における対象物までの距離を算出する、測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記第1受光結果に基づいて算出された前記距離と、前記第2受光結果に基づいて算出された前記距離とに基づいて、異常を検出する、
測定装置。
【請求項8】
請求項5に記載の測定装置であって、
前記制御部は、
前記第1受光素子が光を検知した時間を繰り返し計測することによって第1ヒストグラムを生成し、
前記第2受光素子が光を検知した時間を繰り返し計測することによって第2ヒストグラムを生成し、
前記第1ヒストグラムと前記第2ヒストグラムとを合わせた第3ヒストグラムを生成し、
前記第3ヒストグラムのピークに基づいて、光を発光させてから前記反射光を受光するまでの到達時間を検出することによって、前記所定位置における対象物までの距離を算出する、
測定装置。
【請求項9】
請求項5に記載の測定装置であって、
前記制御部は、
前記第1受光素子が光を検知した時間と、前記第2受光素子が光を検知した時間とを繰り返し計測することによってヒストグラムを生成し、
前記ヒストグラムのピークに基づいて、光を発光させてから前記反射光を受光するまでの到達時間を検出することによって、前記所定位置における対象物までの距離を算出する、
測定装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の測定装置であって、
前記受光用光学系は、前記受光センサと前記連結レンズとの間に集光レンズを有する、測定装置。
【請求項11】
請求項10に記載の測定装置であって、
前記集光レンズの焦点距離をf1、
前記集光レンズの主点から前記受光センサまでの距離をL1、
前記第1方向における前記受光センサの幅の半分の長さをy、
前記第1方向における前記受光用光学系の光軸と前記第1レンズエレメントの光軸との間隔をt、
としたとき、
t<y×f1/(f1-L1)
である、測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パルス光を射出してから反射光を受光するまでの光の飛行時間に基づいて、反射物までの距離を測定する測距装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の装置では、ミラーを回転させることによって光を走査させるとともに、ミラーに戻ってきた反射光を受光部に受光させている。但し、ミラーを回転させるような可動部は、故障の原因になり易い。一方、可動部を用いずに光を受光する場合、測定可能な範囲(測定エリア)が狭くなるという課題がある。
【0005】
本発明は、可動部を用いずに光を受光可能な測定エリアを広げることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一形態は、光を測定エリアに照射する照射部と、受光センサと、前記測定エリアからの反射光を前記受光センサに受光させる受光用光学系とを備え、前記受光用光学系は、第1方向に光軸をシフトさせた第1レンズエレメントと、前記第1レンズエレメントとは逆方向に光軸をシフトさせた第2レンズエレメントとを連結させた連結レンズを有し、第1測定エリアからの前記反射光を、前記第1レンズエレメントを介して、前記受光センサの受光素子に受光させるとともに、前記第1測定エリアと重複した重複エリアを含む第2測定エリアからの前記反射光を、前記第2レンズエレメントを介して、前記受光素子に受光させる、測定装置である。
【0007】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、可動部を用いずに光を受光可能な測定エリアを広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、測定装置1の全体構成の説明図である。
【
図3】
図3Aは、受光センサ22の説明図である。
図3Bは、測定エリア50の説明図である。
図3Cは、測定装置1を車両に搭載した例の説明図である。
【
図4】
図4は、受光センサ22の画素221の配置の説明図である。
【
図7】
図7A及び
図7Bは、受光センサ22の画素221(受光領域)と、測定エリア50との関係を示す説明図である。
【
図10】
図10は、測定方法の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図12】
図12は、重複エリア53を測定する場合における信号処理部362の説明図である。
【
図13】
図13は、重複エリア53を測定する場合における別の信号処理部362の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、同一の又は類似する構成について共通の符号を付して重複した説明を省略することがある。
【0011】
<全体構成>
図1は、測定装置1の全体構成の説明図である。
【0012】
測定装置1は、対象物90までの距離を測定する装置である。測定装置1は、いわゆるLiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)としての機能を有する装置である。測定装置1は、測定光を出射し、対象物90の表面で反射した反射光を検出し、測定光を出射してから反射光を受光するまでの時間を計測することによって、対象物90までの距離をTOF方式(Time of flight)で測定する。測定装置1は、照射部10と、受光部20と、制御部30とを有する。
【0013】
照射部10は、対象物90に向かって測定光を照射する。照射部10は、所定の画角で測定エリア50(後述)に測定光を照射することになる。照射部10は、光源12と、投光用光学系14とを有する。光源12は、光を出射する。光源12は、例えば面発光レーザー(VCSEL)により構成される。投光用光学系14は、光源12から出射された光を測定エリア50に照射する光学系である。
【0014】
受光部20は、対象物90からの反射光を受光する。受光部20は、測定エリア50からの反射光を受光することになる。受光部20は、受光センサ22と、受光用光学系24とを有する。受光部20の詳しい構成については、後述する。
【0015】
制御部30は、測定装置1の制御を司る。制御部30は、照射部10からの光の照射を制御する。また、制御部30は、受光部20の出力結果に基づいて、対象物90までの距離をTOF方式(Time of flight)で測定する。制御部30は、不図示の演算装置及び記憶装置を有する。演算装置は、例えばCPU、GPUなどの演算処理装置である。演算装置の一部がアナログ演算回路で構成されても良い。記憶装置は、主記憶装置と補助記憶装置とにより構成され、プログラムやデータを記憶する装置である。記憶装置に記憶されているプログラムを演算装置が実行することにより、対象物90までの距離を測定するための各種処理が実行される。図中には、各種処理の機能ブロックが示されている。
【0016】
制御部30は、設定部32と、タイミング制御部34と、測距部36とを有する。設定部32は、各種設定を行う。タイミング制御部34は、各部の処理タイミングを制御する。例えば、タイミング制御部34は、光源12から光を射出させるタイミングなどを制御する。測距部36は、対象物90までの距離を測定する。測距部36は、信号処理部362と、時間検出部364と、距離算出部366とを有する。信号処理部362は、受光センサ22の出力信号を処理する。時間検出部364は、光の飛行時間(光を照射してから反射光が到達するまでの時間)を検出する。距離算出部366は、対象物90までの距離を算出する。なお、制御部30の処理については、後述する。
【0017】
<受光部20について>
図2は、受光部20の説明図である。既に説明した通り、受光部20は、受光センサ22と、受光用光学系24とを有する。
【0018】
以下の説明では、受光用光学系24の光軸に沿った方向をZ方向とする。なお、測定装置1の測定対象となる対象物90は、測定装置1に対してZ方向に離れていることになる。また、Z方向に垂直な方向であって、連結レンズ25(後述)を構成する第1レンズエレメント251及び第2レンズエレメント252の並ぶ方向をY方向とする。また、Z方向及びY方向に垂直な方向をX方向とする。
【0019】
図3Aは、受光センサ22の説明図である。
図4は、受光センサ22の画素221の配置の説明図である。
受光センサ22は、XY平面(X方向及びY方向に平行な面)に平行な受光面を有する。受光面は、矩形状に構成されている。測定エリアから届く反射光は、受光用光学系24を介して、受光センサ22の受光面に照射される(測定エリア50の像が受光用光学系24によって受光センサ22の受光面で結像する)。
【0020】
受光センサ22は、2次元配置された複数の画素221を有する。例えばVGAの受光センサ22の場合、480×640の画素211が2次元配置されている。各画素221は、受光素子を有しており、受光素子は、受光量に応じた信号を出力する。制御部30は、画素221ごとの出力信号を取得することになる。
【0021】
受光用光学系は、連結レンズ25を有する。
図5は、連結レンズ25の斜視図である。
連結レンズ25は、第1レンズエレメント251と第2レンズエレメント252とを連結させた光学部品である。第1レンズエレメント251及び第2レンズエレメント252は、凸レンズ状の部位(光学エレメント)であり、Y方向に並んで配置されている。第1レンズエレメント251の焦点距離と第2レンズエレメント252の焦点距離は同じである。また、第1レンズエレメント251及び第2レンズエレメント252は、それぞれZ方向に沿った光軸を有する。第1レンズエレメント251の光軸は、受光用光学系24(後述する集光レンズ26)の光軸に対して+Y方向にシフトされている。一方、第2レンズエレメント252の光軸は、受光用光学系24の光軸に対して-Y方向にシフトされている。つまり、第2レンズエレメント252の光軸は、第1レンズエレメント251とは逆方向にシフトされている。
【0022】
また、受光用光学系24は、集光レンズ26を有する。集光レンズ26は、受光センサ22と連結レンズ25との間に配置されたレンズである。受光用光学系24が集光レンズ26を有することによって、広い範囲の測定エリア50からの反射光を受光センサ22に受光させることができる。また、受光用光学系24が集光レンズ26を有することによって、受光センサ22の矩形状の受光面に、矩形状の測定エリア50の像を結像できる。集光レンズ26と受光センサ22との距離は、集光レンズ26の焦点距離よりも近い。
【0023】
図3Bは、測定エリア50の説明図である。
図6A及び
図6Bは、測定エリア50の説明図である。
図6Aは、受光センサ22が第1レンズエレメント251を介して第1測定エリア51からの反射光を受光する様子の説明図である。
図6Bは、受光センサ22が第2レンズエレメント252を介して第2測定エリア52からの反射光を受光する様子の説明図である。
【0024】
測定エリア50は、第1測定エリア51と第2測定エリア52とにより構成される。第1測定エリア51は、第1レンズエレメント251を介して受光センサ22が反射光を受光するエリアである(言い換えると、第1レンズエレメント251は、第1測定エリア51からの反射光を受光センサ22に受光させる光学エレメントである)。第2測定エリア52は、第2レンズエレメント252を介して受光センサ22が反射光を受光するエリアである(言い換えると、第2レンズエレメント252は、第2測定エリア52からの反射光を受光センサ22に受光させる光学エレメントである)。第1レンズエレメント251と第2レンズエレメント252がY方向に並んで配置されているため、第1測定エリア51及び第2測定エリア52はY方向にずれて配置されている。これにより、測定エリア50をY方向に長く設定できる(言い換えると、Y方向の広い範囲の反射光を受光できる)。
【0025】
本実施形態では、第1測定エリア51と第2測定エリア52が重複している。以下の説明では、第1測定エリア51と第2測定エリア52とが重複した領域のことを「重複エリア53」と呼ぶ。重複エリア53が設けられることによって、第1測定エリア51と第2測定エリア52との間に反射光を受光できない領域が形成されることを防止できる。
【0026】
図7A及び
図7Bは、受光センサ22の画素221(受光領域)と、測定エリア50との関係を示す説明図である。
図7Aは、第1レンズエレメント251を介して第1測定エリア51からの反射光を受光する場合の受光センサ22の画素221と、測定エリア50との関係を示す説明図である。
図7Bは、第2レンズエレメント252を介して第2測定エリア52からの反射光を受光する場合の受光センサ22の画素221と、測定エリア50との関係を示す説明図である。図中の受光センサ22の各画素221の左側には、対応する測定エリア50の領域が示されている。受光センサ22の各画素221は、測定エリア50の対応する領域からの反射光を受光する。
【0027】
受光センサ22は、Y方向に並ぶ複数の画素221(受光領域)を有しており、ここでは12個の画素(画素#1~#12)がY方向に並んでいる。なお、Y方向に並ぶ画素221の数は、12に限られるものではない(例えばVGAの受光センサ22の場合、640個の画素がY方向に並ぶ)。また、測定エリア50は、Y方向に複数の領域(領域A~領域P)に分割されており、ここでは16個の領域に分割されている。なお、Y方向に分割された測定エリア50の領域の数は、16に限られるものではない。
【0028】
図7Aに示すように、第1測定エリア51は、領域A~領域Lに相当する。受光センサ22の画素#1~#12は、第1測定エリア51の領域L~領域Aにそれぞれ対応する。例えば、受光センサ22の画素#5は、第1レンズエレメント251を介して、測定エリア50の領域Hからの反射光を受光することになる。
【0029】
図7Bに示すように、第2測定エリア52は、領域E~領域Pに相当する。受光センサ22の画素#1~#12は、第2測定エリア52の領域P~領域Eにそれぞれ対応する。例えば、受光センサ22の画素#5は、第2レンズエレメント252を介して、測定エリア50の領域Lからの反射光を受光することになる。このように、受光センサ22の或る画素(例えば画素#5)は、連結レンズ25の第1レンズエレメント251及び第2レンズエレメント252を介して、測定エリア50の2つの領域(例えば領域Hと領域L)からの反射光を受光可能である。以下の説明では、受光センサ22の或る画素(例えば画素#5)が測定エリア50の2つの位置(例えば領域Hと領域L)の反射光を受光可能である場合において、その2つの位置(例えば領域Hと領域L)のうち、第1レンズエレメント251を介して反射光を受光する位置(例えば領域H)を「第1位置」と呼び、第2レンズエレメント252を介して反射光を受光する領域(例えば領域L)を「第2位置」と呼ぶことがある。
【0030】
ところで、受光センサ22の或る画素が測定エリア50の2つの領域(第1位置、第2位置)からの反射光を受光可能である場合、その画素の受光素子が反射光を受光した時に、第1位置及び第2位置のうちのどちらからの反射光を受光したのかを判別できるようにする必要がある。そこで、本実施形態では、制御部30は、照射部10を制御することによって光を照射する測定エリア50上の位置を制御可能に構成されている。そして、制御部30は、第1位置及び第2位置に同時に光を照射しないように照射部10を制御する。これにより、例えば測定エリア50の領域Hに光が照射された時に受光センサ22の画素#5の受光素子が反射光を受光した場合には、制御部30は、受光した光が領域Lからの反射光ではなく、領域Hからの反射光であるものとし、画素#5の受光素子の信号に基づいて領域H内の対象物90の距離を算出することが可能である。
【0031】
図7A及び
図7Bに示すように、重複エリア53は、領域E~領域Lに相当する。
図7Aに示すように、受光センサ22の画素#8~#1は、第1レンズエレメント251を介して、重複エリア53である領域E~領域Lからの反射光を受光する。また、
図7Bに示すように、受光センサ22の画素#12~#5は、第2レンズエレメント252を介して、重複エリア53である領域E~領域Lからの反射光を受光する。重複エリア53の或る領域(例えば領域H)からの反射光は、連結レンズ25の第1レンズエレメント251及び第2レンズエレメント252を介して、受光センサ22の2つの画素(例えば画素#5と画素#9)で受光可能である。
【0032】
図3Bに示すように、Z方向から測定エリア50を見ると、測定エリア50はX方向及びY方向に所定の画角を有する。本実施形態では、X方向の長さに対するY方向の長さの割合(いわゆるアスペクト比)は、測定エリア50の方が受光センサ22よりも大きくなる。つまり、本実施形態では、受光センサ22の形状と比べて、測定エリア50をY方向に長く設定できる(言い換えると、Y方向の広い範囲の反射光を受光できる)。
【0033】
図6Aに示すように、受光センサ22の受光面のうち、第1レンズエレメント251を介して重複エリア53からの反射光を受光する領域を「第1領域22A」と呼ぶ。また、
図6Bに示すように、受光センサ22の受光面のうち、第2レンズエレメント252を介して重複エリア53からの反射光を受光する領域を「第2領域22B」と呼ぶ。重複エリア53上の或る点からの反射光は、受光センサ22の第1領域22A上の画素221と、第2領域22B上の画素221とでそれぞれ受光することができる。
【0034】
図3Bに示すように、重複エリア53(ハッチングが施された領域)は、測定エリア50のY方向の中央部に位置する。つまり、
図3Bに示すように、測定エリア50の中央部(重複エリア53)からの反射光は、第1レンズエレメント251を介して受光センサ22の第1領域22A上の画素221で受光することができるとともに、第2レンズエレメント252を介して受光センサ22の第2領域22B上の画素221で受光することができる。
【0035】
図3Cは、測定装置1を車両に搭載した例の説明図である。図に示すように、測定装置1を車両に搭載する場合、比較的近傍では、広視野で距離を測定することが望ましい。これに対し、本実施形態では、
図3Bに示すように、測定エリア50のアスペクト比を広げることができるので、広視野での距離の測定に有利である。
一方、
図3Cに示すように、測定装置1を車両に搭載する場合、遠方までの距離の測定が必要とされるエリアは、比較的狭い範囲であることが許容されるが、遠方から届く反射光の強度は弱くなることが想定される。これに対し、本実施形態では、
図3Bに示すように、測定エリア50の重複エリア53からの反射光を受光センサ22の2つの画素(第1領域22A及び第2領域22Bのそれぞれの画素221)で受光できるので、遠方の距離の測定に有利である。
【0036】
<光学条件について>
図8A及び
図8Bは、光学条件の説明図である。
図8Aは、受光センサ22と集光レンズ26との関係の説明図である。
図8Bは、受光センサ22の虚像22’と連結レンズ25との関係の説明図である。
【0037】
図8Aに示すように、集光レンズ26の焦点距離をf1とする。また、集光レンズ26の主点から受光センサ22までの距離をL1とする。また、受光センサ22のY方向の半分の長さをyとする(受光用光学系24の光軸から受光センサ22の端部までの長さをyとする)。
【0038】
本実施形態では、集光レンズ26の主点から受光センサ22までの距離L1は、集光レンズ26の焦点距離f1よりも小さい(L1<f1)。受光センサ22が集光レンズ26の焦点よりも近くに配置されるため、受光センサ22の虚像22’(集光レンズ26による受光センサ22の像)は、集光レンズ26から見て受光センサ22の反対側(図中の受光センサ22の左側)に配置される。
【0039】
集光レンズ26の主点から虚像22’までの距離をL’とすると、L1、L’及びf1の関係は次式(1)の通りとなる。
(1/L1)-(1/L’)=1/f1 ・・・・(1)
【0040】
このため、集光レンズ26の主点から虚像22’までの距離L’は、次式(2)の通りとなる。
L’=(L1×f1)/(f1-L1) ・・・・(2)
【0041】
また、受光用光学系24の光軸から受光センサ22の虚像22’の端部までの長さをy’とすると、y’は次式の通りとなる。
y’=y×(L’/L1)
=y×f1/(f1-L1) ・・・・(3)
【0042】
次に、
図8Bに示すように、第1レンズエレメント251及び第2レンズエレメント252の焦点距離をf2とする。また、連結レンズ25の主点(第1レンズエレメント251又は第2レンズエレメント252の主点)から虚像22’までの距離をL2とする。ここで、
図8Bに示すように、連結レンズ25が遠方の照射エリアからの反射光を虚像22’の位置に結像させると考えると、焦点距離f2と距離L2との関係は次式(4)の通りとなる。
L2=f2 ・・・・(4)
【0043】
なお、集光レンズ26の主点と連結レンズ25の主点との距離をdとする。ここで、距離L2は、距離L’に距離dを加算した値に相当するため、焦点距離f1,f2と各距離との関係は、次式(5)の通りとなる。
(L1×f1)/(f1-L1)+d=f2 ・・・・(5)
【0044】
また、
図8Bに示すように、受光用光学系24(集光レンズ26)の光軸と第1レンズエレメント251(又は第2レンズエレメント252)の光軸との間隔をtとし、「シフト量t」と呼ぶ。ここで、重複エリア53が形成されるためには、第1測定エリア51と第2測定エリア52とが重なる必要がある。このため、シフト量tは、受光用光学系24の光軸から受光センサ22の虚像22’の端部までの長さy’よりも小さい必要がある(t<y’)。つまり、重複エリア53が形成されるためには、連結レンズ25の第1レンズエレメント251及び第2レンズエレメント252のそれぞれのシフト量tは、次式の条件を満たす必要がある。
t<y×f1/(f1-L1) ・・・・(6)
【0045】
<測定例1>
図9A~
図9Cは、測定方法の一例の説明図である。図中の測定エリア50の各領域の右側には、対応する光源12の発光領域が示されている。また、図中の受光センサ22の各画素221の左側には、対応する測定エリア50の領域が示されている。
【0046】
光源12は、Y方向に複数の発光領域に分割されており、ここでは16個の発光領域(発光領域#1~#16)に分割されている。なお、Y方向に分割された光源12の発光領域の数は、16に限られるものではない。光源12の各発光領域(発光領域#1~#16)は、測定エリア50の各領域(領域P~領域A)に対応している。
制御部30は、光源12の複数の発光領域の中から特定の発光領域を発光させることによって、光を照射する測定エリア50上の位置を制御する。ここでは、制御部30は、図中の一番下の発光領域#16から順に発光するように、光源12を制御する。これにより、測定エリア50の領域A~領域Pに光が走査するように照射される。測定エリア50に照射する光をY方向に走査させることによって、受光センサ22の或る画素が測定エリア50の2つの位置(第1位置、第2位置)からの反射光を受光可能である場合に、その2つの位置(第1位置及び第2位置)に同時に光を照射しないようにすることができる。なお、制御部30は、Y方向に並ぶ発光領域を順に発光させなくても良い。例えば、制御部30は、ランダムな順に発光領域を発光させることによって、光を照射する測定エリア50上の位置を制御しても良い。また、受光センサ22の或る画素が受光可能な2つの位置(第1位置、第2位置)に同時に光を照射しなければ、測定エリア50の複数の領域に同時に光を照射しても良い。また、ミラーを回転させることによって、測定エリア50の領域A~領域Pに光を走査させても良い。
【0047】
図10は、測定方法の一例を説明するためのタイミングチャートである。
図10の上側には、光源12の発光領域がパルス光を出射するタイミング(出射タイミング)が示されている。
図10の中央には、パルス状の反射光が到達するタイミング(到達タイミング)が示されている。
図10の下側には、画素221(受光素子)の出力信号が示されている。
【0048】
制御部30(タイミング制御部34)は、光源12に所定の周期でパルス光を出射させる。パルス光の出射後、制御部30の測距部36(信号処理部362)は、画素221(受光素子)の出力信号に基づいて、反射光の到達タイミングを検出する。例えば、信号処理部362は、各画素221の出力信号のピークのタイミングに基づいて、反射光の到達タイミングを検出する。制御部30の測距部36(時間検出部364)は、光の出射タイミングと、光の到達タイミングとに基づいて、光を照射してから反射光が到達するまでの時間Tfを検出する。時間Tfは、測定装置1と対象物90との間を光が往復する時間に相当する。そして、測距部36(距離算出部366)は、時間Tfに基づいて、対象物90までの距離Lを算出する。なお、光を照射してから反射光が到達するまでの時間をTfとし、光の速度をCとしたとき、距離Lは、L=C×Tf/2となる。
【0049】
図9Aに示すように、光源12の発光領域#16から出射した光は、投光用光学系14を介して、測定エリア50(第1測定エリア51)の領域Aに照射される。受光センサ22の画素#12は、受光用光学系24(第1レンズエレメント251)を介して、領域Aからの反射光を受光する。制御部30は、受光センサ22の画素#12の出力信号に基づいて、領域A内の対象物90までの距離を算出する。
なお、制御部30は、発光領域#16の発光後(言い換えると、領域Aの測定後)、発光領域#15~#13を順に発光させ、第1測定エリア51の領域B~Dに光を順に照射させ、受光センサ22の画素#11~#9の出力信号に基づいて、領域B~領域D内の対象物90までの距離を順に算出する。
【0050】
図9Bに示すように、光源12の発光領域#12から出射した光は、投光用光学系14を介して、測定エリア50の領域Eに照射される。領域Eは重複エリア53に属するため、領域Eからの反射光は、連結レンズ25の第1レンズエレメント251及び第2レンズエレメント252を介して、受光センサ22の画素#8と画素#12で受光可能である。
制御部30は、受光センサ22の画素#8の出力信号に基づいて距離を算出するとともに、受光センサ22の画素#12の出力信号に基づいて距離を算出し、算出した2つの距離の平均を求めることによって、領域E内の対象物90までの距離を算出する。これにより、距離の算出精度を高めたり、ロバスト性を高めたりすることができる。また、制御部30は、受光センサ22の画素#8の出力信号に基づいて距離を算出するとともに、受光センサ22の画素#12の出力信号に基づいて距離を算出し、算出した2つの距離の差が所定値よりも大きいときに、異常を検出しても良い。なお、制御部30は、受光センサ22の画素#8と画素#12の一方の出力信号に基づいて、領域E内の対象物90までの距離を算出しても良い。
制御部30は、発光領域#12の発光後(言い換えると、領域Eの測定後)、発光領域#11~#5を順に発光させ、重複エリア53の領域F~Lに光を順に照射させ、反射光を受光した2つの画素の出力信号に基づいて領域F~領域L内の対象物90までの距離を順に算出する。
【0051】
図9Cに示すように、光源12の発光領域#4から出射した光は、投光用光学系14を介して、測定エリア50(第2測定エリア52)の領域Mに照射される。受光センサ22の画素#4は、受光用光学系24(第2レンズエレメント252)を介して、領域Mからの反射光を受光する。制御部30は、受光センサ22の画素#4の出力信号に基づいて、領域M内の対象物90までの距離を算出する。制御部30は、発光領域#4の発光後(言い換えると、領域Mの測定後)、発光領域#3~#1を順に発光させ、第2測定エリア52の領域N~Pに光を順に照射させ、受光センサ22の画素#3~#1の出力信号に基づいて、領域N~領域P内の対象物90までの距離を順に算出する。
【0052】
上記の測定方法によれば、12個の画素221(画素#1~#12)がY方向に並ぶ受光センサ22の出力結果に基づいて、16個に分割された測定エリア50のそれぞれの領域(領域A~領域P)内の対象物90までの距離を算出することができる。このように、受光センサ22は、Y方向の広い範囲の反射光を受光できる。例えばY方向に640個の画素が並ぶVGA(640×480画素)の受光センサ22を用いて、Y方向に840画素の解像度で測定エリア50の画像(距離画像)を取得することが可能になる。
【0053】
<測定例2>
図11Aは、受光センサ22の別の一例の説明図である。
受光センサ22は、2次元配置された複数の画素221を有する。各画素221は、複数の受光素子222を有する。ここでは、各画素221は、受光素子222として、X方向に3個、Y方向に3個に配列された9個のSPAD(Single Photon Avalanche Diode)を有する。SPADで構成された受光素子222は、フォトンを検出するとパルス信号を出力する。
【0054】
この測定方法においても、
図9A~
図9Cに示すように、制御部は、図中の一番下の発光領域#16から順に発光するように、光源12を制御する。これにより、測定エリア50の領域A~領域Pに光が走査するように照射される。
【0055】
まず、
図9Aに示すように、光源12の発光領域#16から出射した光が、投光用光学系14を介して、測定エリア50(第1測定エリア51)の領域Aに照射されるとともに、領域Aからの反射光を受光用光学系24(第1レンズエレメント251)を介して受光センサ22の画素#12が受光する場合について説明する。
【0056】
図11Bは、信号処理部362の説明図である。信号処理部362は、加算部362Aと、比較部362Bと、ヒストグラム生成部362Cとを有する。ここでは、処理信号部は、受光センサ22の各画素221の出力信号に基づいて、時間相関単一光子計数法(Time Correlated Single Photon Counting(TCSPC)で用いるヒストグラムを生成する。
【0057】
加算部362Aは、画素221(ここでは画素#12)を構成する複数の受光素子222(SPAD)の出力信号を加算する。加算部362Aは、受光素子222が出力するパルス幅を調整(整形)した上で、複数の受光素子222の出力信号を加算しても良い。比較部362Bは、加算部362Aの出力信号と閾値とを比較し、加算部362Aの出力信号が閾値以上の場合に信号を出力する。比較部362Bが信号を出力するタイミングは、受光センサ22の受光素子222(SPAD)が光を検知したタイミングであると考えられる。
【0058】
ところで、外乱光のフォトンは時間的にランダムにそれぞれの受光素子222に入射する。これに対し、反射光のフォトンは、光を照射してから所定の遅延時間(対象物90までの距離に応じた飛行時間)にそれぞれの受光素子222に入射する。このため、外乱光のフォトンが時間的にランダムに受光素子222に入射した場合には、加算部362Aの出力信号が閾値以上になる確率は低い。一方、反射光のフォトンが受光素子222に入射した場合には、画素221を構成する複数の受光素子222が同時にフォトンを検出するため、加算部362Aの出力信号が閾値以上になる確率は高い。このため、複数の受光素子222の出力信号を加算部362Aで加算し、加算部362Aの出力信号と閾値とを比較部362Bに比較させることによって、受光素子222(SPAD)が反射光を検知したと考えられる時間を計測する。
【0059】
図11Cは、ヒストグラムの説明図である。図中の横軸は、時間であり、縦軸は頻度(回数)である。ヒストグラム生成部362Cは、比較部362Bの出力に基づいて、受光センサ22の受光素子222(SPAD)が光を検知した時間を繰り返し計測するとともに、その時間に対応付けられた頻度(回数)をインクリメントすることによって、ヒストグラムを生成する。ヒストグラム生成部362Cは、頻度(回数)をインクリメントする時、数を1つ増加させる代わりに、加算部362Aの出力信号(加算値)に相当する数を増加させても良い。
【0060】
なお、設定部32(
図1参照)は、ヒストグラムを生成するための積算回数を予め設定する。タイミング制御部34は、設定された積算回数に応じて、照射部10の光源12にパルス光を複数回出射させる。光源12からの1回のパルス光の出射に対して、加算部362Aから信号が1回又は複数回出力される。ヒストグラム生成部362Cは、設定された積算回数に達するまで、比較部362Bの出力信号に応じて、頻度(回数)をインクリメントすることによって、ヒストグラムを生成する。
【0061】
ヒストグラムの生成後、測距部36(時間検出部364)は、ヒストグラムに基づいて、光を照射してから反射光が到達するまでの時間Tfを検出する。
図11Cに示すように、測距部36(時間検出部364)は、ヒストグラムの頻度のピークに対応する時間を検出し、その時間を時間Tfとする。そして、測距部36(距離算出部366)は、時間Tfに基づいて、対象物90までの距離を算出する。
【0062】
次に、
図9Bに示すように、光源12の発光領域#12から出射した光が、投光用光学系14を介して、重複エリア53の領域Eに照射されるとともに、領域Eからの反射光を受光用光学系24の第1レンズエレメント251及び第2レンズエレメント252を介して受光センサ22の画素#8と画素#12が受光する場合について説明する。
【0063】
図12は、重複エリア53を測定する場合における信号処理部362の説明図である。信号処理部362は、加算部362Aと、比較部362Bと、ヒストグラム生成部362Cと、ヒストグラム合成部362Dとを有する。加算部362A、比較部362B及びヒストグラム生成部362Cについては、既に説明したため説明を省略する。
【0064】
ヒストグラム合成部362Dは、2つのヒストグラム生成部362Cによって生成された2つのヒストグラム(単独ヒストグラム)を1つのヒストグラム(合成ヒストグラム)に合成する。ヒストグラム合成部362Dは、重複エリア53の領域に対応付けられた2つの画素に基づくそれぞれのヒストグラム(単独ヒストグラム)を合成することによって、合成ヒストグラムを生成する。ここでは、ヒストグラム合成部362Dは、領域Eに対応する受光センサ22の画素#8と画素#12に基づく2つの単独ヒストグラムを合成することによって、合成ヒストグラムを生成する。2つの単独ヒストグラムを合成して合成ヒストグラムが生成されるため、単独ヒストグラムの積算回数が所定数の半分であっても、所定の積算回数のヒストグラムを生成することができる。このため、重複エリア53の測定では、設定された積算回数のヒストグラムを高速に生成できるため、距離の測定を高速で行うことができる。また、
図3Cに示すように重複エリア53からの反射光の強度は弱くなることが想定されるが、重複エリア53からの反射光を受光センサ22の2つの画素に基づくそれぞれのヒストグラム(単独ヒストグラム)を合成し、合成ヒストグラムに基づいて対象物90までの距離を測定することによって、反射光の強度が弱くても距離の測定精度の低下を抑制できる。
【0065】
図13は、重複エリア53を測定する場合における別の信号処理部362の説明図である。
信号処理部362は、加算部362Aと、比較部362Bと、ヒストグラム生成部362Cとを有する。加算部362Aは、重複エリア53の領域に対応付けられた2つの画素221(ここでは画素#8と画素#12)を構成する複数の受光素子222(SPAD)の出力信号を加算する。つまり、加算部362Aは、重複エリア53の領域に対応付けられた2つの画素221(ここでは画素#8と画素#12)を実質的に1つの画素とみなし、その画素を構成する複数の受光素子222(SPAD)の出力信号を加算する。
図11Bに示す加算部362Aと比べると、
図13に示す加算部362Aは、2倍の受光素子222(SPAD)の出力信号を加算することになる。比較部362Bは、加算部362Aの出力信号と閾値とを比較し、加算部362Aの出力信号が閾値以上の場合に信号を出力する。
【0066】
なお、設定部32(
図1参照)は、重複エリア53以外の測定エリア50を測定する場合の比較部362B(
図11B参照)の閾値と比べて、重複エリア53の測定を行う場合の比較部362B(
図13参照)の閾値を大きい値に設定する。これにより、加算部362Aの出力信号が閾値以上になる場合に、受光センサ22の受光素子222(SPAD)が反射光を検知した確率が高くなる。なお、加算部362Aが加算する受光素子222(SPAD)の出力信号の数が多いため、閾値が大きい値に設定されていても、比較部362Bがヒストグラム生成部362Cに信号を出力する頻度は低減しない(所定の積算回数のヒストグラムの生成が遅くならずに済む)。このため、
図13に示す比較部362Bの閾値を大きい値に設定することが許容されている。
【0067】
ヒストグラム生成部362Cは、比較部362Bの出力に基づいて、受光センサ22の受光素子222(SPAD)が光を検知した時間を繰り返し計測するとともに、その時間に対応付けられた頻度(回数)をインクリメントすることによって、ヒストグラムを生成する。なお、
図12に示す信号処理部362と比べて、
図13に示す信号処理部362は、ヒストグラムを生成するためのデータを記憶させるメモリの容量を削減できるとともに、ヒストグラムを生成するための演算量を削減できる。また、
図3Cに示すように重複エリア53からの反射光の強度は弱くなることが想定されるが、重複エリア53からの反射光を受光センサ22の2つの画素の受光素子222(SPAD)で受光するため、反射光の強度が弱くても距離の測定精度の低下を抑制できる。
【0068】
===小括===
上記の測定装置1は、光を測定エリア50に照射する照射部10と、受光センサ22と、測定エリア50からの反射光を受光センサ22に受光させる受光用光学系24とを備えている。受光用光学系24は、第1レンズエレメント251と第2レンズエレメント252とを連結させた連結レンズ25を有する。第1レンズエレメント251の光軸は+Y方向(第1方向に相当)にシフトされており、第2レンズエレメント252の光軸は-Y方向(第1レンズエレメント251の光軸をシフトさせた方向と逆方向)にシフトされている。測定エリア50の第1測定エリア51からの反射光は、第1レンズエレメント251を介して、受光センサ22の受光素子に受光される。また、重複エリア53を含む第2測定エリア52からの反射光は、第2レンズエレメント252を介して、受光センサ22の受光素子に受光される。このような測定装置1によれば、Y方向(第1方向に相当)の広い範囲からの反射光を受光できる。また、重複エリア53が設けられるため、第1測定エリア51と第2測定エリア52との間に反射光を受光できない領域が形成されることを防止できる。
【0069】
上記の制御部30は、光を照射する測定エリア50上の位置を制御する。これにより、測定エリア50上の所定の位置に光を照射したり、測定エリア50上の所定の位置に光を照射しないようにしたりすることが可能になる。
【0070】
上記の受光センサ22の或る画素(例えば
図7A及び
図7Bに示す画素#5)は、測定エリア50の2つの位置(第1位置と第2位置;例えば領域Hと領域L)からの反射光を受光可能である。このような場合、制御部30は、その画素(例えば画素#5)が受光可能な第1測定エリア51の第1位置(例えば領域H)及び第2測定エリア52の第2位置(例えば領域L)の両方の領域に同時に光を照射しないように照射部10を制御する。これにより、その画素の受光素子が反射光を受光した時に、測定エリア50上の2つの位置のどちらからの反射光を受光したのかを判別可能となる。
【0071】
図9Bに示すように、重複エリア53の領域E(所定位置)からの反射光は、第1レンズエレメント251を介して受光センサ22の画素#8の受光素子(第1受光素子)によって受光可能であるとともに、第2レンズエレメント252を介して受光センサ22の画素#12の受光素子(第2受光素子)によって受光可能である。このように、同じ位置からの反射光を2つの受光素子で受光可能にすることによって、ロバスト性を高めることができる。
【0072】
また、制御部30は、重複エリア53の領域E(所定位置)に光を照射した時に、受光センサ22の画素#8の受光素子の出力信号(第1受光結果)と、画素#12の受光素子の出力信号(第2受光結果)とを取得する。このように、同じ位置からの反射光を受光する2つの受光素子の出力信号(受光結果)を取得することによって、ロバスト性を高めることができる。
【0073】
また、制御部30は、受光センサ22の画素#8の受光素子の出力信号(第1受光結果)に基づいて領域E内の対象物90までの距離を算出するとともに、画素#12の受光素子の出力信号(第2受光結果)に基づいて同じ領域E内の対象物90までの距離を算出する。このように、同じ位置からの反射光を受光した2つの受光素子の出力信号(受光結果)に基づいてそれぞれ距離を算出することによって、ロバスト性を高めることができる。
【0074】
また、制御部30は、受光センサ22の画素#8の出力信号(第1受光結果)に基づいて算出された距離と、画素#12の出力信号(第2受光結果)に基づいて算出された距離とに基づいて、異常を検出しても良い。これにより、測定装置1の何らかの不具合を判定可能である。
【0075】
図12に示すように、制御部30は、受光センサ22の画素#8の受光素子(第1受光素子)が光を検知した時間を繰り返し計測することによって単独ヒストグラム(第1ヒストグラム)を生成し、画素#12の受光素子(第2受光素子)が光を検知した時間を繰り返し計測することによって単独ヒストグラム(第2ヒストグラム)を生成し、2つの単独ヒストグラムを合成した合成ヒストグラム(第3ヒストグラム)を生成しても良い。この場合、制御部30は、合成ヒストグラム(第3ヒストグラム)のピークに基づいて光の到達時間Tf(
図11C参照)を検出することができ、検出した到達時間Tfに基づいて対象物までの距離を算出する。これにより、単独ヒストグラム(第1ヒストグラム及び第2ヒストグラム)の積算回数が所定数の半分であっても、所定の積算回数の合成ヒストグラム(第3ヒストグラム)を生成することができるので、距離の測定を高速で行うことができる。
【0076】
図13に示すように、制御部30は、受光センサ22の画素#8の受光素子(第1受光素子)が光を検知した時間と、画素#12(第2受光素子)が光を検知した時間とを繰り返し計測することによってヒストグラムを生成しても良い。これにより、ヒストグラムを生成するためのデータを記憶させるメモリの容量を削減できるとともに、ヒストグラムを生成するための演算量を削減できる。なお、この場合においても、制御部30は、ヒストグラムのピークに基づいて光の到達時間Tf(
図11C参照)を検出することができ、検出した到達時間Tfに基づいて対象物までの距離を算出することになる。
【0077】
上記の受光用光学系24は、受光センサ22と連結レンズ25との間に、集光レンズ26を有する。受光用光学系24が集光レンズ26を有することにより、広い範囲からの反射光を受光センサ22に受光させることが可能になる。但し、受光用光学系24が集光レンズ26を有していなくても良い(この場合、
図8Bの虚像22’の大きさの受光面を持つ受光センサ22に置き換えることになるため、受光センサ22や測定装置1が大型化する)。
【0078】
上記の受光用光学系24において、集光レンズ26の焦点距離をf1とし、集光レンズ26の主点から受光センサ22までの距離をL1とし、Y方向(第1方向に相当)における受光センサ22の幅の半分の長さをyとし、Y方向における受光用光学系24の光軸と第1レンズエレメント251の光軸との間隔(シフト量)をtとしたとき、t<y×f1/(f1-L1)であることが望ましい。これにより、測定エリア50に重複エリア53を設けることができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態につき詳述したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために構成を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施形態の構成の一部について、他の構成に追加、削除、置換することが可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 測定装置、10 照射部、
12 光源、14 投光用光学系、
20 受光部、22 受光センサ、
221 画素、222 受光素子、
22A 第1領域、22B 第2領域、
24 受光用光学系、
25 連結レンズ、
251 第1レンズエレメント、252 第2レンズエレメント、
26 集光レンズ、
30 制御部、32 設定部、
34 タイミング制御部、36 測距部、
362 信号処理部、362A 加算部、
362B 比較部、362C ヒストグラム生成部、
362D ヒストグラム合成部、
364 時間検出部、366 距離算出部、
50 測定エリア、51 第1測定エリア、
52 第2測定エリア、53 重複エリア、
90 対象物