(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116255
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 9/22 20060101AFI20230815BHJP
F28F 9/013 20060101ALI20230815BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20230815BHJP
G21D 1/00 20060101ALI20230815BHJP
G21C 13/00 20060101ALI20230815BHJP
G21C 15/12 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
F28F9/22
F28F9/013 B
F28D7/16 A
G21D1/00 Q
G21C13/00 100
G21C13/00 200
G21C15/12 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018957
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜田 紀昭
(72)【発明者】
【氏名】藤村 幸治
【テーマコード(参考)】
3L065
3L103
【Fターム(参考)】
3L065DA02
3L103AA09
3L103BB09
3L103CC14
3L103CC18
3L103DD08
3L103DD38
3L103DD42
3L103DD44
(57)【要約】
【課題】熱交換器の伝熱管において、座屈の発生による破損を防ぐことができる熱交換器を提供する。
【解決手段】上部管板と、下部管板と、上部管板と下部管板とにそれぞれ固定された複数の伝熱管と、上部管板と下部管板との間に設置され、複数の伝熱管を支持する支持板と、を有し、伝熱管内には、下部管板と上部管板との間を流体が流れる第1流路が形成され、伝熱管外には、流体が流れる第2流路が形成される、円筒状の熱交換器を、支持板には、伝熱管が挿入される貫通孔と、第2流路の貫通孔とが、それぞれ互いに独立した位置に、複数個分布して配置され、熱交換器の径方向で比較したときに、内側の第2流路の貫通孔の大きさと、外側の第2流路の貫通孔の大きさとが異なる構成とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部管板と、
下部管板と、
前記上部管板と前記下部管板とにそれぞれ固定された、複数の伝熱管と、
前記上部管板と前記下部管板との間に設置され、前記複数の伝熱管を支持する支持板と、を有し、
前記伝熱管内には、前記下部管板と前記上部管板との間を流体が流れる第1流路が形成され、
前記伝熱管外には、流体が流れる第2流路が形成される、円筒状の熱交換器であって、
前記支持板には、前記伝熱管が挿入される貫通孔と、前記第2流路の貫通孔とが、それぞれ互いに独立した位置に、複数個分布して配置され、
前記熱交換器の径方向で比較したときに、内側の前記第2流路の貫通孔の大きさと、外側の前記第2流路の貫通孔の大きさとが異なる
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
炉心を内包する原子炉容器と、前記原子炉容器の外側に設置する格納容器と、前記原子炉容器内に充填される1次系冷却材と、前記1次系冷却材と2次系冷却材との間の熱交換を行う中間熱交換器と、前記2次系冷却材の熱で水を蒸気にまで加熱する蒸気発生器と、前記蒸気発生器にて発生した前記蒸気からエネルギーを回収する高圧タービン及び低圧タービンと、これら前記高圧タービン及び前記低圧タービンに連結された発電機と、前記低圧タービンから排出された前記蒸気を冷却して凝縮させる復水器とを備えた高速炉型原子力発電システムにおける、前記中間熱交換器に用いられていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記第2流路の貫通孔の大きさは、前記支持板の板厚で定義されることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記第2流路の貫通孔の大きさは、貫通孔の円径で定義されることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記熱交換器の径方向において、前記第1流路の基準流速に対して前記第1流路の流速が大きい位置では、前記支持板の板厚が前記第1流路の基準流速に対応する板厚よりも薄く、前記第1流路の基準流速に対して前記第1流路の流速が小さい位置では、前記支持板の板厚が前記第1流路の基準流速に対応する板厚よりも厚いことを特徴とする請求項3に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記熱交換器の径方向において、前記第1流路の基準流速に対して前記第1流路の流速が大きい位置では、前記第2流路の貫通孔の円径が前記第1流路の基準流速に対応する貫通孔の円径よりも大きく、前記第1流路の基準流速に対して前記第1流路の流速が小さい位置では、前記第2流路の貫通孔の円径が前記第1流路の基準流速に対応する貫通孔の円径よりも小さいことを特徴とする請求項4に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記熱交換器の径方向において、前記第1流路の基準流速に対して前記第1流路の流速がα倍である位置では、前記支持板の板厚が、前記第1流路の基準流速に対応する板厚のα-2倍とされていることを特徴とする請求項3に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記熱交換器の径方向において、前記第1流路の基準流速に対して前記第1流路の流速がβ倍である位置では、前記第2流路の貫通孔の円径が、前記第1流路の基準流速に対応する貫通孔の円径のβ2倍とされていることを特徴とする請求項4に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関する。本発明の熱交換器は、高速炉の中間熱交換器等に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
高速炉プラントは、特許文献1及び特許文献2に記載されているように、1次冷却系、2次冷却系、給水・主蒸気系の3系統を備えている。
1次冷却系は、原子炉容器と中間熱交換器の間で1次系冷却材である1次ナトリウムを循環させる。
2次冷却系は、中間熱交換器と蒸気発生器の間で2次系冷却材である2次ナトリウムを循環させる。
給水・主蒸気系は、蒸気発生器で発生した蒸気を主蒸気配管により高圧タービン及び低圧タービンに供給し、低圧タービンから排出された蒸気を復水器で凝縮することによって生じた給水を給水配管により蒸気発生器に戻す。
【0003】
給水配管には、複数の給水加熱器及び給水ポンプが設けられている。
高圧タービン及び低圧タービンは蒸気によって回転され、高圧タービン及び低圧タービンに連結された発電機が駆動されて発電される。
【0004】
高速炉の中間熱交換器では、放射化されている1次系冷却材と、非放射化されている2次系冷却材を、熱交換している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58-31294号公報
【特許文献2】特開2002-341080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
中間熱交換器において、伝熱管の座屈に伴う変形が生じると、伝熱管が破損する可能性があり、十二分に安全性を確保した構造が中間熱交換器に求められる。
中間熱交換器では、伝熱管の座屈をはじめとする問題の発生を防止して、構造健全性及び性能向上を図るため、伝熱管内及び伝熱管外において冷却材が一様な流れになるような構造に設計する。
【0007】
しかし、各伝熱管の入口で流量が異なる流配が生じ、中間熱交換器の設計の制約からその流配を一様化できない場合には、ある伝熱管で入熱量に対し除熱量が低くなると、中間熱交換器の径方向に並列する伝熱管の平均温度より当該の伝熱管の温度が高くなる。
これにより、当該の伝熱管の軸方向(引張方向)に熱応力が発生すると、伝熱管の両端が固定された管板に設置されているので、発生した熱応力の反作用としての圧縮応力が伝熱管にかかる。
そのため、伝熱管に座屈が発生する懸念があり、座屈の発生により伝熱管が損傷する可能性がある。
【0008】
また、高速炉用の中間熱交換器以外の用途の熱交換器であっても、各伝熱管の入口で流配を生じる可能性がある場合には、同様に、伝熱管に座屈が発生することにより、伝熱管が損傷する可能性がある。
【0009】
本発明は、かかる技術的な課題を解決するためになされたもので、熱交換器の伝熱管において、座屈の発生による破損を防ぐことができる熱交換器を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明の上記の目的及びその他の目的と本発明の新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の熱交換器は、上部管板と、下部管板と、上部管板と下部管板とにそれぞれ固定された複数の伝熱管と、上部管板と下部管板との間に設置され、複数の伝熱管を支持する支持板と、を有し、伝熱管内には、下部管板と上部管板との間を流体が流れる第1流路が形成され、伝熱管外には、流体が流れる第2流路が形成される、円筒状の熱交換器である。
そして、本発明の熱交換器は、支持板には、伝熱管が挿入される貫通孔と、第2流路の貫通孔とが、それぞれ互いに独立した位置に、複数個分布して配置され、熱交換器の径方向で比較したときに、内側の第2流路の貫通孔の大きさと、外側の第2流路の貫通孔の大きさとが異なるものである。
【発明の効果】
【0012】
上述の本発明の熱交換器によれば、熱交換器の径方向で比較したときに、内側の第2流路の貫通孔の大きさと、外側の第2流路の貫通孔の大きさとが異なるので、熱交換器の径方向の内側と外側とで、第2流路の貫通孔の圧損係数が異なる。
これにより、各伝熱管の入口で発生した流配による第1流路の流速の差異に対応して、伝熱管外の第2流路の流速を熱交換器の径方向で差異を生じるように、制御することができる。従って、熱交換器の径方向に並ぶ伝熱管の平均温度の差異を低減して、座屈の発生を防止することができる。
【0013】
なお、上述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の熱交換器の実施例を適用する高速炉型原子力発電システムの一例の系統図である。
【
図2】本発明の熱交換器の各実施例における伝熱管の入口の流速の分布の一例を示す図である。
【
図3】本発明の実施例1の熱交換器の概略構成図(正面図)である。
【
図4】
図3の熱交換器の支持板の一部分の水平断面図である。
【
図5】本発明の実施例1の熱交換器における第2流路の貫通孔の板厚の分布の例を示す図である。
【
図6】本発明の実施例2の熱交換器の概略構成図(正面図)である。
【
図7】
図6の熱交換器の支持板の一部分の水平断面図である。
【
図8】本発明の実施例2の熱交換器における第2流路の貫通孔の円形の分布の例を示す図である。
【
図9】従来の中間熱交換器の概略構成図(正面図)である。
【
図10】
図9の中間熱交換器の支持板の一部分の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施の形態及び実施例について、文章もしくは図面を用いて説明する。ただし、本発明に示す構造、材料、その他具体的な各種の構成等は、ここで取り上げた実施の形態や実施例に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。また、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
熱交換器は、大きく分類して、伝熱管に対して平行な流れ(パラレルフロー)をもつ構造と、伝熱管に対して垂直な流れ(クロスフロー)をもつ構造と、に分かれる。
【0017】
本発明の熱交換器は、上部管板と、下部管板と、上部管板と下部管板とにそれぞれ固定された複数の伝熱管と、上部管板と下部管板との間に設置され、複数の伝熱管を支持する支持板と、を有し、伝熱管内には、下部管板と上部管板との間を流体が流れる第1流路が形成され、伝熱管外には、流体が流れる第2流路が形成される、円筒状の熱交換器である。
即ち、本発明の熱交換器は、第1流路と第2流路がそれぞれ伝熱管に対して平行な流れ(パラレルフロー)をもつ構造である。
そして、第1流路を流れる流体と第2流路を流れる流体の間で熱交換を行うことができる。
【0018】
また、本発明の熱交換器は、支持板に、伝熱管が挿入される貫通孔と、第2流路の貫通孔とが、それぞれ互いに独立した位置に、複数個分布して配置されている。
即ち、本発明の熱交換器は、支持板の第2流路の貫通孔内に伝熱管が挿入されている、流路が2重構造となっている構成の従来の熱交換器とは、構成が異なる。
【0019】
さらに、本発明の熱交換器は、熱交換器の径方向で比較したときに、径方向の内側の第2流路の貫通孔の大きさと、径方向の外側の第2流路の貫通孔の大きさとが異なる。
【0020】
本発明の熱交換器の構成によれば、熱交換器の径方向で比較したときに、内側の第2流路の貫通孔の大きさと、外側の第2流路の貫通孔の大きさとが異なる。従って、熱交換器の径方向の内側と外側とで、第2流路の貫通孔の圧損係数が異なる。
これにより、各伝熱管の入口で発生した流配による第1流路の流速の差異に対応して、伝熱管外の第2流路の流速を熱交換器の径方向で差異を生じるように、制御することができる。従って、熱交換器の径方向に並ぶ伝熱管の平均温度の差異を低減して、座屈の発生を防止することができる。
【0021】
上記の熱交換器の構成において、伝熱管、上部管板、下部管板、支持板には、従来から熱交換器の伝熱管、上部管板、下部管板、支持板に、それぞれ用いられている材料を、使用することができる。
【0022】
上記の熱交換器において、第2流路の貫通孔の大きさが支持板の板厚で定義される構成とすることができる。
即ち、この構成の場合には、熱交換器の径方向で比較したときに、内側の支持板の板厚と、外側の支持板の板厚とが異なる。そして、この場合、支持板の板厚の大小によって、第2流路の貫通孔の圧損係数が異なるので、第2流路の流速に差異が生じる。
【0023】
この構成において、さらに、第1流路の基準流速Vに対して第1流路の流速が大きい位置では、支持板の板厚を第1流路の基準流速Vに対応する板厚Lよりも薄くして、第1流路の基準流速Vに対して第1流路の流速が小さい位置では、支持板の板厚を第1流路の基準流速Vに対応する板厚Lよりも厚くすることができる。
そして、第2流路の貫通孔の厚さは、その貫通孔の位置の支持板の板厚に一致する。
このとき、第1流路の基準流速Vに対して第1流路の流速が大きい位置では、支持板の板厚を第1流路の基準流速Vに対応する板厚Lよりも薄くするので、第2流路の貫通孔が薄くなり、貫通孔の抵抗が小さくなって、第2流路の流速が大きくなる。
また、第1流路の基準流速Vに対して第1流路の流速が小さい位置では、支持板の板厚を第1流路の基準流速Vに対応する板厚Lよりも厚くするので、第2流路の貫通孔が厚くなり、貫通孔の抵抗が大きくなって、第2流路の流速が小さくなる。
従って、第1流路の基準流速に対する、第1流路の流速の大小に対して、第2流路の流速の大小を合わせることができるので、第1流路の流速の分布に近づけるように、第2流路に流速の分布をもたせることができる。これにより、熱交換器の径方向に並ぶ伝熱管において、温度上昇の差を小さくして、平均温度の差異をさらに低減することができる。
【0024】
また、この構成において、さらに、熱交換器の径方向において、第1流路の基準流速Vに対して第1流路の流速がα倍である位置では、支持板の板厚を、第1流路の基準流速Vに対応する板厚Lのα-2倍とすることができる。
このとき、第1流路の基準流速Vに対して第1流路の流速がα倍である位置では、支持板の板厚を第1流路の基準流速Vに対応する板厚Lのα-2倍とするので、第1流路の流速の分布に、第2流路の流速の分布を対応させることができる。これにより、熱交換器の径方向に並ぶ伝熱管において、温度上昇を揃えて、平均温度の差異をさらに低減することができる。
【0025】
上記の熱交換器において、第2流路の貫通孔の大きさが貫通孔の円径で定義される構成とすることができる。
即ち、この構成の場合には、熱交換器の径方向で比較したときに、内側の第2流路の貫通孔の円径と、外側の第2流路の貫通孔の円径とが異なる。そして、この場合、第2流路の貫通孔の円径の大小によって、第2流路の貫通孔の圧損係数が異なるので、第2流路の流速に差異が生じる。
【0026】
この構成において、さらに、第1流路の基準流速Vに対して第1流路の流速が大きい位置では、第2流路の貫通孔の円径を第1流路の基準流速Vに対応する貫通孔の円径Dよりも大きくして、第1流路の基準流速Vに対して第1流路の流速が小さい位置では、第2流路の貫通孔の円径を第1流路の基準流速Vに対応する貫通孔の円径Dよりも小さくすることができる。
このとき、第1流路の基準流速Vに対して第1流路の流速が大きい位置では、第2流路の貫通孔の円径を第1流路の基準流速Vに対応する貫通孔の円径Dよりも大きくするので、貫通孔の抵抗が小さくなって、第2流路の流速が大きくなる。
また、第1流路の基準流速Vに対して第1流路の流速が小さい位置では、第2流路の貫通孔の円径を第1流路の基準流速Vに対応する貫通孔の円径Dよりも小さくするので、貫通孔の抵抗が大きくなって、第2流路の流速が小さくなる。
従って、第1流路の基準流速に対する、第1流路の流速の大小に対して、第2流路の流速の大小を合わせることができるので、第1流路の流速の分布に近づけるように、第2流路に流速の分布をもたせることができる。これにより、熱交換器の径方向に並ぶ伝熱管において、温度上昇の差を小さくして、平均温度の差異をさらに低減することができる。
【0027】
また、この構成において、さらに、熱交換器の径方向において、第1流路の基準流速Vに対して第1流路の流速がβ倍である位置では、第2流路の貫通孔の円径を、第1流路の基準流速Vに対応する貫通孔の円径Dのβ2倍とすることができる。
このとき、第1流路の基準流速Vに対して第1流路の流速がβ倍である位置では、第2流路の貫通孔の円径を、第1流路の基準流速Vに対応する貫通孔の円径Dのβ2倍とするので、第1流路の流速の分布に、第2流路の流速の分布を対応させることができる。これにより、熱交換器の径方向に並ぶ伝熱管において、温度上昇を揃えて、平均温度の差異をさらに低減することができる。
【0028】
本発明の熱交換器は、例えば、高速炉型原子力発電システムにおいて、1次系冷却材と2次系冷却材とを熱交換する、中間熱交換器に適用することが好適である。
【0029】
本発明の熱交換器を適用する高速炉型原子力発電システムとしては、炉心を内包する原子炉容器と、格納容器と、1次系冷却材と、中間熱交換器と、1次主循環ポンプと、2次冷却系配管と、2次主循環ポンプと、蒸気発生器と、給復水・主蒸気系配管と、高圧タービン及び低圧タービンと、発電機と、復水器を備えた構成が挙げられる。
格納容器は、原子炉容器の外側に設置され、原子炉容器が格納される。原子炉容器と格納容器の間の空間には、不活性ガスが注入される。
1次系冷却材は、原子炉容器内に充填される。
中間熱交換器は、1次系冷却材と2次系冷却材との間の熱交換を行う。
1次主循環ポンプは、1次系冷却材を強制循環させる。
2次冷却系配管は、中間熱交換器に2次系冷却材を循環させる。
2次主循環ポンプは、2次系冷却材を強制循環させる。
蒸気発生器は、2次系冷却材の熱で水を蒸気にまで加熱する。
給復水・主蒸気系配管は、蒸気発生器に付設されている。
高圧タービン及び低圧タービンは、蒸気発生器にて発生した蒸気からエネルギーを回収する。発電機は、これら高圧タービン及び低圧タービンに連結されている。
復水器は、低圧タービンから排出された蒸気を冷却して凝縮させる。
【0030】
高速炉型原子力発電システムでは、中間熱交換器で熱交換される1次系冷却材の温度が高い。1次系冷却材の温度が高いため、前述したように、中間熱交換器において、伝熱管の座屈が発生することが懸念される。
そのため、高速炉型原子力発電システムの中間熱交換器に、本発明の熱交換器の構成を適用することにより、伝熱管の座屈による変形を抑制することができる。
【0031】
また、高速炉用の中間熱交換器以外の用途、例えば、原子力以外の用途、における熱交換器であっても、高い温度の流体が流れる場合には、本発明の熱交換器を適用することにより、伝熱管の座屈による変形を抑制して、伝熱管の破損を防ぐことができる。
【実施例0032】
続いて、本発明の具体的な実施例を説明する。
【0033】
(高速炉型原子力発電システムの構成)
まず、本発明の熱交換器の実施例の説明に先立ち、本発明の熱交換器の実施例を適用する、高速炉型原子力発電システムの一例を説明する。
本発明の熱交換器の実施例を適用する、高速炉型原子力発電システムの一例の系統図を、
図1に示す。
【0034】
図1に示す高速炉型原子力発電システムは、炉心1、原子炉容器2、中間熱交換器4、及び、一次主循環ポンプ5が内蔵されている、格納容器(ガードベッセル)3を備える。
炉心1は、核分裂物質を含み、原子炉容器2内に収納されている。
原子炉容器2は、その中に1次系冷却材16が充填されている。
原子炉容器2と格納容器3と間の空間には、不活性ガス15が注入されている。
中間熱交換器4は、1次系冷却材16と、2次系冷却材とを熱交換する。
【0035】
さらに、
図1に示す高速炉型原子力発電システムは、2次冷却系配管8、2次主循環ポンプ7、蒸気発生器6、高圧タービン10a及び低圧タービン10b、主蒸気系配管9a、復水器12、給復水系配管9b、発電機11、給水ポンプ13、及び給水加熱器14を備える。
2次冷却系配管8は、中間熱交換器4に2次系冷却材を供給する。
2次主循環ポンプ7は、2次冷却系配管8内の2次系冷却材を循環させる。
蒸気発生器6は、2次冷却系配管8に接続されており、2次系冷却材により水を加熱して、蒸気を発生させる。
主蒸気系配管9aは、蒸気発生器6にて発生した蒸気を、高圧タービン10a及び低圧タービン10bに送る。
給復水系配管9bは、仕事を終えた蒸気を復水器12にて凝縮した水を、蒸気発生器6に戻す。
高圧タービン10aの下流側に低圧タービン10bが設けられ、低圧タービン10bの軸に発電機11が連結されている。なお、
図1では図示を省略しているが、発電機11は、高圧タービン10aにも連結されている。
発電機11は、高圧タービン10a及び低圧タービン10bの回転により、発電を行う。
復水器12は、低圧タービン10bの下流側に設けられ、上流側に主蒸気系配管9aが接続され、下流側に給復水系配管9bが接続されている。
給水ポンプ13及び給水加熱器14は、復水器12の下流側で給復水系配管9bに連結されている。
【0036】
本例の高速炉型原子力発電システムは、炉心1にて加熱された1次系冷却材16を、中間熱交換器4に通して2次系冷却材を加熱すると共に、この2次系冷却材を蒸気発生器6に通して発生した蒸気を、主蒸気系配管9aに供給する。
そして、この蒸気を高圧タービン10a及び低圧タービン10bに導いて、発電機11により発電を行う。
使用された蒸気は、復水器12で凝縮されて水となり、その後、給水ポンプ13及び給水加熱器14を通ってそれぞれ加熱及び昇圧され、再び蒸気発生器6に給水される。
【0037】
(従来の中間熱交換器)
ここで、高速炉型原子力発電システムに使用される、従来の中間熱交換器の一例の構成を説明する。
図9は、従来の中間熱交換器の一例の概略構成図(要部の正面図)を示す。
なお、
図9では、中間熱交換器の全体ではなく、伝熱管の入口部分を含む、中間熱交換器の要部(中間熱交換器の下部)を示している。また、
図9では、円筒状の中間熱交換器のうち、中心軸よりも右側の部分を示している。
【0038】
図9に示す中間熱交換器では、中間熱交換器の胴17内に、円筒状の伝熱管18が複数本配置されている。
そして、各伝熱管18の下端及び上端にそれぞれ管板26が設けられ、各伝熱管18が下端及び上端の管板26に固定されている。なお、
図9では、各伝熱管18の下端の管板26のみを図示して、各伝熱管18の上端の管板は図示を省略している。
また、各伝熱管18の途中には、伝熱管18がその長手方向にフリーの状態となるように支持する、平板状の支持板19が設けられている。
下端の管板26の下方、中間熱交換器の底部には、下部プレナム25が設けられており、この下部プレナム25は、左端に開口を有している。
【0039】
そして、この
図9に示す中間熱交換器では、伝熱管18内の第1流路に、低温の流体である2次冷却材を流す。
また、伝熱管18外の第2流路に、高温の流体である1次冷却材を流す。
伝熱管18内の第1流路の流れ22は、下部から上部の方向に流れている。
伝熱管18外の第2流路の流れ20は、上部から下部の方向に流れている。
下部プレナム25内の流れ23が、伝熱管18の入口において、伝熱管18内の第1流路の流れ22に分岐する。即ち、この中間熱交換器は、下部プレナム25の下流に、伝熱管18が設置されている構成である。
一方で、伝熱管18に平行に流れる第2流路の流れ20が、下端の管板26の上で合流し、中間熱交換器の出口における第2流路の流れ21となって、中間熱交換器の外に排出される。
【0040】
また、
図9の支持板19の一部分の水平断面図を、
図10に示す。
図10に示すように、支持板19に、伝熱管18の断面が配置されている。なお、図示しないが、伝熱管18の断面を囲うように、伝熱管18を通すための貫通孔が支持板19に設けられている。
支持板19には、さらに、図中黒い丸印で示す、断面円形の第2流路の貫通孔27が設けられている。
伝熱管18は、中間熱交換器の径方向(矢印24)に平行な列に並んで配置され、同じ列の各伝熱管18がほぼ等間隔に配置されている。また、伝熱管18は、奇数番目の列と偶数番目の列とで互い違いの位置に配置されている。
第2流路の貫通孔27は、伝熱管18及び伝熱管18を通すための貫通孔とは独立した位置、具体的には、伝熱管18の列方向及び行方向の中間の位置に、配置されている。
【0041】
ところで、中間熱交換器は、構造健全性及び性能向上を図るため、伝熱管18内及び伝熱管18外において、それぞれ一様な流れになるような構造に設計される。
しかし、
図9及び
図10に示す、従来の中間熱交換器では、下部プレナム25の形状および流況より、各伝熱管18の入口で流配が生じることがある。即ち、
図9の伝熱管18内の第1流路の流れ22について、第1流路の流れ22の矢印の長さで流速の大きさを示すように、中間熱交換器の径方向24における伝熱管18の位置によって、第1流路の流れ22の流速が異なることがある。
そして、ある伝熱管18において、第1流路の流れ22の流速が小さいと、入熱量に対し除熱量が低くなり、当該の伝熱管18の平均温度が他の伝熱管より高くなる。そのため、伝熱管18の端を固定する管板26で圧縮応力が生じるので、伝熱管18の座屈が発生する懸念がある。このように座屈が発生することにより、伝熱管18が損傷する可能性がある。
【0042】
そこで、各伝熱管18の平均温度と、中間熱交換器の径方向24の伝熱管18の列の平均温度との差に起因する、伝熱管18の座屈を防止するように、本発明の熱交換器を構成する。
【0043】
(実施例)
続いて、本発明の熱交換器の実施例を説明する。
図2は、本発明の熱交換器の各実施例における伝熱管の入口の流速分布の一例を示す図である。
【0044】
図2では、熱交換器の径方向の無次元距離に対する、伝熱管18内の第1流路の伝熱管18の入口における流速の分布の一例を示している。
なお、
図2の縦軸の伝熱管18の入口における流速で、Vは伝熱管18内を流れる第1流路の流れ20の基準流速を示す。
図2に示す第1流路の伝熱管18の入口における流速の分布の例では、第1流路の流れ20の基準流速Vに対して、最大値がV+30%(1.3V)、最小値がV-30%(0.7V)となっている。
【0045】
本発明の熱交換器の各実施例では、
図2に示すような、第1流路の伝熱管18の入口における流速の分布に合わせるように、熱交換器の径方向において、伝熱管18の外の第2流路の貫通孔27内の流速に分布を持たせる。
以下の各実施例では、
図2に示した、最大がV+30%で最小がV-30%である流速の分布の例を用いて、説明を行う。
【0046】
(実施例1)
次に、本発明の実施例1の熱交換器を説明する。
図3は、本発明の実施例1の熱交換器の概略構成図(要部の正面図)を示す。なお、
図3では、熱交換器の全体ではなく、伝熱管の入口部分を含む、熱交換器の要部(熱交換器の下部)を示している。また、
図3では、円筒状の熱交換器のうち、中心軸よりも右側の部分を示している。
さらに、
図4は、
図3の支持板19の一部分の水平断面図を示す。
図3及び
図4に示す実施例1の熱交換器は、
図1に示した高速炉型電子力発電システムの中間熱交換器4に適用することができる。
【0047】
図3に示すように、実施例1の熱交換器は、熱交換器の胴17内に、円筒状の伝熱管18が複数本配置され、各伝熱管18の下端及び上端にそれぞれ管板26が設けられ、各伝熱管18が下端及び上端の管板26に固定されている。なお、
図3では、各伝熱管18の下端の管板26のみを図示して、各伝熱管18の上端の管板は図示を省略している。
また、各伝熱管18の途中には、伝熱管18がその長手方向にフリーの状態となるように支持する、平板状の支持板19が設けられている。
下端の管板26の下方、熱交換器の底部には、下部プレナム25が設けられており、この下部プレナム25は、左端に開口を有している。
【0048】
そして、この
図3に示す熱交換器では、伝熱管18内の第1流路に、低温の流体を流す。
また、伝熱管18外の第2流路に、高温の流体を流す。
伝熱管18内の第1流路の流れ22は、下部から上部の方向に流れている。
伝熱管18外の第2流路の流れ20は、上部から下部の方向に流れている。
下部プレナム25内の流れ23が、伝熱管18の入口において、伝熱管18内の第1流路の流れ22に分岐する。
一方で、伝熱管18に平行に流れる第2流路の流れ20が、下端の管板26の上で合流し、熱交換器の出口における第2流路の流れ21となって、熱交換器の外に排出される。
【0049】
図3に示す熱交換器では、
図9に示した従来の中間熱交換器と同様に、伝熱管18の入口において、伝熱管18内の第1流路の流れ22に、矢印22の長さで示すような流速の分布を生じている。
【0050】
また、
図4の水平断面図に示すように、支持板19に、伝熱管18の断面と、図中黒い丸印で示す、断面円形の第2流路の貫通孔27が設けられている。
第2流路の貫通孔27は、伝熱管18及び伝熱管18を通すための貫通孔とは独立した位置、具体的には、伝熱管18の列方向及び行方向の中間の位置に、配置されている。
なお、
図4に示す支持板19は、
図10に示した従来の中間熱交換器の支持板19と比較して、伝熱管18の断面及び第2流路の貫通孔27の断面の寸法及び配置が同一である構成となっている。
【0051】
実施例1の熱交換器では、特に、
図3に示すように、支持板19に設けられた第2流路の貫通孔27の長さ、即ち、支持板19の板厚を調整する。
図3に示す実施例1の熱交換器の構成は、
図9に示した従来の中間熱交換器の構成と類似しているが、熱交換器の径方向24において、支持板19の板厚が変化している点で、支持板19の板厚が均一である
図9の構成とは相違している。
そして、実施例1の熱交換器では、伝熱管18外の第2流路の流れ20の流速の分布が、
図2に示した伝熱管18内の第1流路の流れ22の流速(矢印22の長さ)の分布に対応するように、支持板19の板厚が調整されている。
【0052】
実施例1の熱交換器の第2流路の貫通孔27の板厚の分布の例を、
図5に示す。この
図5では、
図3に示した支持板19の板厚の分布を定量的に示している。
図5において、
図2に示した第1流路の流れ20の基準流速Vに対応する、第2流路の貫通孔27の板厚をLとしている。
【0053】
図5に示した第2流路の貫通孔27の板厚を算出する考え方を、以下に示す。
まず、第2流路の貫通孔27内の流れの圧力差Δp[Pa]は、下記の式(1)で算出できるとする。
【0054】
【数1】
ここで、λは管摩擦係数[-]、Lは第2流路の貫通孔27の板厚[m]、Dは第2流路の貫通孔27の円径[m]、ρは流体の密度[kg/m
3]、vは第2流路の貫通孔27内の流速[m/s]である。
【0055】
次に、
図2に示した第1流路の流速の分布に合わせて、基準流速Vに対して±30%の流速を変化させるときにおける、第2流路の貫通孔27の板厚を検討する。
ここで、前提条件として、熱交換器の径方向24に並ぶ、第2流路の貫通孔27の圧力差は等しいとする。
式(1)に対して、第2流路の貫通孔27内の流速がα倍になるときの第2流路の貫通孔27の板厚をL
αとすると、式(1)と前提条件より、下記の式(2)が成り立つ。
【0056】
【0057】
式(2)より変形すると、下記の式(3)が得られる。
【0058】
【0059】
式(3)より、流速を基準流速Vのα倍とするときには、第2流路の貫通孔27の板厚を基準値Lのα-2倍とすればよいことがわかる。
【0060】
式(3)にVの-30%に相当するα=0.7を代入すると2.05Lになり、Vの+30%に相当するα=1.3を代入すると0.59Lになる。Vに対して±30%の流速以外を同様に計算し、プロットすると、
図5に黒い丸で示す各点になる。
また、
図3及び
図4に示したように、支持板19は、熱交換器の径方向24に連続して形成されるので、
図5において、各点の間を曲線で結んでいる。
【0061】
そして、
図5に曲線で示す板厚の分布を有するように、支持板19を作製する。
このような板厚の分布を有する支持板19を熱交換器に使用することにより、貫通孔27を通る第2流路の流れ20の圧損係数に分布を付与することができる。そして、
図3に第2流路の流れ20の矢印の長さで示すように、第2流路の流れ20の流速に分布を持たせることができる。
これにより、第2流路の流れ20の流速の分布を、伝熱管18内の第1流路の流れ22の流速の分布に合わせて、熱交換器の径方向24における各伝熱管18の平均温度を、等しくすることが可能になる。
【0062】
上述した実施例1の熱交換器の構成によれば、
図2に示した熱交換器の径方向における第1流路の流れ22の流速の分布に対応して、
図5に曲線で示すように、熱交換器の径方向24において、支持板19の板厚を変化させている。
これにより、第1流路の流れ22の流速の分布に、第2流路の流れ20の流速の分布を対応させることができるので、熱交換器の径方向24に並ぶ伝熱管18において、温度上昇を揃えて、伝熱管18の座屈の発生を防止することができる。
【0063】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2の熱交換器を説明する。
図6は、本発明の実施例2の熱交換器の概略構成図(要部の正面図)を示す。なお、
図6では、熱交換器の全体ではなく、伝熱管の入口部分を含む、熱交換器の要部(熱交換器の下部)を示している。また、
図6では、円筒状の熱交換器のうち、中心軸よりも右側の部分を示している。
さらに、
図7は、
図6の支持板19の一部分の水平断面図を示す。
図6及び
図7に示す実施例2の熱交換器も、
図1に示した高速炉型電子力発電システムの中間熱交換器4に適用することができる。
【0064】
実施例2の熱交換器では、特に、
図7に示すように、支持板19に設けられた第2流路の貫通孔27の円径(断面の円の直径)を調整する。
図7に示す実施例2の熱交換器の支持板19は、
図10に示した従来の中間熱交換器の支持板19と類似しているが、熱交換器の径方向24において、貫通孔27の円径が変化している点で、貫通孔27の円径が均一である
図10の支持板19とは相違している。
そして、実施例2の熱交換器では、伝熱管18外の第2流路の流れ20の流速の分布が、
図2に示した伝熱管18内の第1流路の流れ22の流速(矢印22の長さ)の分布に対応するように、貫通孔27の円径が調整されている。
なお、
図6に示す支持板19は、
図9に示した従来の中間熱交換器の支持板19と同様に、支持板19の板厚が均一である。
【0065】
実施例2の熱交換器の第2流路の貫通孔27の円径の分布の例を、
図8に示す。この
図8では、
図7に示した第2流路の貫通孔27の円径の分布を定量的に示している。
図8において、
図2に示した第1流路の流れ20の基準流速Vに対応する、第2流路の貫通孔27の円径をDとしている。
【0066】
図8に示した第2流路の貫通孔27の円径を算出する考え方を、以下に示す。なお、前提条件及び算出する考え方は、実施例1で第2流路の貫通孔27の板厚を算出したときと同様である。
前述した第2流路の貫通孔27内の流れの圧力差Δpの式(1)に対して、第2流路の貫通孔27内の流速がβ倍になるときの第2流路の貫通孔27の円径をD
βとすると、式(1)と前提条件より、下記の式(4)が成り立つ。
【0067】
【0068】
式(4)より変形すると、下記の式(5)が得られる。
Dβ=β2D (5)
【0069】
式(5)より、流速を基準流速Vのβ倍とするときには、第2流路の貫通孔27の円径を基準値Dのβ2倍とすればよいことがわかる。
【0070】
式(5)にVの-30%に相当するβ=0.7を代入すると0.49Dになり、Vの+30%に相当するβ=1.3を代入すると1.69Dになる。Vに対し±30%の流速以外を同様に計算し、プロットすると、
図8に黒い丸で示す各点になる。
【0071】
そして、
図8に黒い丸で示す円径の分布を有するように、支持板19に貫通孔27を作製する。
このような貫通孔27の円径の分布を有する支持板19を熱交換器に使用することにより、貫通孔27を通る第2流路の流れ20の圧損係数に分布を付与することができる。そして、
図6に第2流路の流れ20の矢印の長さで示すように、第2流路の流れ20の流速に分布を持たせることができる。
これにより、第2流路の流れ20の流速の分布を、伝熱管18内の第1流路の流れ22の流速の分布に合わせて、熱交換器の径方向24における各伝熱管18の平均温度を、等しくすることが可能になる。
【0072】
上述した実施例2の熱交換器の構成によれば、
図2に示した熱交換器の径方向における第1流路の流れ22の流速の分布に対応して、
図8に示すように、熱交換器の径方向24において、第2流路の貫通孔27の円径を変化させている。
ので、実施例1の熱交換器と同様に、
これにより、第1流路の流れ22の流速の分布に、第2流路の流れ20の流速の分布を対応させることができるので、熱交換器の径方向24に並ぶ伝熱管18において、温度上昇を揃えて、伝熱管18の座屈の発生を防止することができる。
【0073】
上記の各実施例においては、第2流路の流れ20の流速の分布を、第1流路の流れ22の流速の分布に対応させている。
そして、
図3や
図6では、各流路の流速を示す矢印22,20の長さを、同程度としている。
しかし、各流路の流速の分布における、流速の絶対値は、必ずしも同程度ではなくてもよい。第1流路の流速の分布に対する第2流路の流速の分布がほぼ定数倍であれば、各伝熱管18の温度上昇をほぼ揃えることができる。
従って、第1流路の流れ22の基準流速Vに対応する、支持板19の板厚の基準値Lや貫通孔27の円径の基準値Dは、作製可能な所定の値に設定して、設定した基準値Lや基準値Dに基づいて、他の箇所の板厚や円径を算出すればよい。
【0074】
また、上述のように、第1流路の流速の分布に対する第2流路の流速の分布がほぼ定数倍(同程度も含む)であれば、各伝熱管18の温度上昇をほぼ揃えることができるが、本発明は、そのようなほぼ定数倍(同程度も含む)である構成には限定されない。
第1流路の流速の大小の傾向に合うように、支持板の板厚または貫通孔の円径が異なり、第2流路の流速に差異を生じる構成とすれば、伝熱管の温度上昇の差異を小さくして、伝熱管の座屈の発生を防止することが可能になる。
即ち、例えば、前述したように、熱交換器の径方向において、第1流路の基準流速に対して第1流路の流速が大きい位置では、支持板の板厚が第1流路の基準流速に対応する板厚よりも薄く、第1流路の基準流速に対して第1流路の流速が小さい位置では、支持板の板厚が第1流路の基準流速に対応する板厚よりも厚い構成とする。
また例えば、前述したように、熱交換器の径方向において、第1流路の基準流速に対して第1流路の流速が大きい位置では、第2流路の貫通孔の円径が第1流路の基準流速に対応する貫通孔の円径よりも大きく、第1流路の基準流速に対して第1流路の流速が小さい位置では、第2流路の貫通孔の円径が第1流路の基準流速に対応する貫通孔の円径よりも小さい構成とする。
【0075】
上記の各実施例の説明では、
図2に示した、伝熱管18の入口における第1流路の流れ22の流速の分布が基準流速Vに対して、V±30%の範囲である場合を例として説明していた。
本発明では、第1流路の流速の分布が
図2に示した分布である場合に限らず、適用することができる。例えば、最大値及び最小値の基準流速に対する差が30%より大きい場合や30%より小さい場合、最大値の基準流速に対する差と最小値の基準流速に対する差が異なる場合(+40%と-20%等)にも適用することができる。
【0076】
また、上記の各実施例の説明では、熱交換器の径方向に並ぶ貫通孔27の圧力差が等しいことを前提条件として、板厚や円径の値を算出していた。これに対して、貫通孔27の圧力差が一定ではなく、貫通孔27の圧力差にずれが生じている場合もありうる。この場合には、圧力差の基準値からのずれの方向を調べて、ずれの方向に合うように、前述したαやβの値を調整して、板厚や円径の値を求めればよい。
【0077】
(変形例)
上記の各実施例では、支持板19の板厚を調整する構成、あるいは、支持板19の貫通孔27の円径を調整する構成であった。
これに対して、これらの実施例の構成を組み合わせて、支持板19の板厚及び貫通孔27の円径の両方を、熱交換器の径方向に分布を持たせるように調整してもよい。
このように、支持板19の板厚及び貫通孔27の円径の両方を調整することにより、伝熱管18内の流速の分布が大きく変化する分布であって、支持板19の設計等の制約により一方のみの調整では調整しきれない場合でも、調整することが可能になる。
【0078】
また、伝熱管外の第2流路の入口や出口に、第2流路の流速を抑制するための抵抗体を付加してもよい。このように抵抗体を付加することにより、第2流路の圧力損失をより適切に設定することが可能になる。
【0079】
上記の各実施例では、伝熱管18内の第1流路には、低温の流体を上方向に流し、伝熱管18外の第2流路には、高温の流体を下方向に流していた。
本発明は、このような構成に限定されるものではなく、伝熱管内の第1流路に高温の流体を流して、伝熱管外の第2流路に低温の流体を流す構成や、伝熱管内の第1流路には流体を下方向に流して、伝熱管外の第2流路には流体を上方向に流す構成を、採用することも可能である。そして、例えば、前述した特許文献2の構成のように、伝熱管内の第1流路に高温の流体を下方向に流し、伝熱管外の第2流路に低温の流体を上方向に流す構成を、採用することも可能である。
【0080】
なお、本発明は、上述した実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した各実施の形態及び実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
1…炉心、2…原子炉容器、3…格納容器(ガードベッセル)、4…中間熱交換器、5…1次主循環ポンプ、6…蒸気発生器、7…2次主循環ポンプ、8…2次冷却系配管、9…給復水・主蒸気系配管、9a…主蒸気系配管、9b…給復水系配管、10a…高圧タービン、10b…低圧タービン、11…発電機、12…復水器、13…給水ポンプ、14…給水加熱器、15…不活性ガス、16…1次系冷却剤、17…(中間)熱交換器の胴、18…伝熱管、19…支持板、20…第2流路の流れ、21…(中間)熱交換器の出口における第2流路の流れ、22…第1流路の流れ、23…下部プレナム内の流れ、24…(中間)熱交換器の径方向、25…下部プレナム、26…管板、27…第2流路の貫通孔