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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116258
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】モールド型圧電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/05 20060101AFI20230815BHJP
   H03B 5/32 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
H03H9/05
H03B5/32 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018962
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(72)【発明者】
【氏名】藤野 和也
(72)【発明者】
【氏名】大西 学
【テーマコード(参考)】
5J079
5J108
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA02
5J079BA44
5J079CB02
5J079HA06
5J079HA16
5J079HA26
5J079HA29
5J108BB02
5J108CC04
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE18
5J108GG05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】圧電振動子の封止性能を向上させたモールド型の圧電デバイスを提供する。
【解決手段】モールド型圧電デバイスは、平板状の基板1と、圧電振動子2と、IC3と、モールド部Mと、を有する。圧電振動子2とIC3は、平板状の基板1上に搭載されている。モールド部Mは、圧電振動子2とIC3を含んで基板上に樹脂材を被覆形成している。圧電振動子2は、板状の振動板21と、振動板21の表裏面に接合した板状の封止部材22、23とからなる。封止部材22、23には、面取り部22a、23aが形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子と、
電子部品と、
前記圧電振動子と前記電子部品が搭載された基板と、
前記基板上の圧電振動子と電子部品を樹脂材により被覆するモールド部を有するモールド型圧電デバイスであって、
前記圧電振動子は、振動板と、前記振動板の上下面に接合される封止部材からなり、
前記振動板は、振動部と、前記振動部より厚肉で前記振動部の周囲に配置された枠部を有し、
前記封止部材は前記枠部に接合されるとともに、前記封止部材には面取り部が形成されていることを特徴とするモールド型圧電デバイス。
【請求項2】
前記封止部材は平面視矩形形状の樹脂フィルムからなり、前記矩形の角部に面取り部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のモールド型圧電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子等を樹脂で被覆した構成のモールド型圧電デバイスに関する
【背景技術】
【0002】
近年、IOTの本格的な普及および高精度無線通信の拡大に伴い、周波数タイミングデバイスの需要が拡大している。周波数タイミングデバイスとしては水晶デバイスや当該水晶デバイスと他の電子部品を組み合わせた複合圧電デバイスが用いられており、例えば水晶振動板と発振回路用のIC部品をセラミックパッケージに収納し、これらをリッドにて気密接合することにより、水晶振動板とIC部品が気密封止された圧電発振器(圧電デバイス)を得ている。
【0003】
また、例えば水晶振動板と温度センサをセラミックパッケージに収納し、これらをリッドにて気密接合することにより、水晶振動板と温度センサが気密封止されたセンサ付きの圧電デバイスを得ている。
【0004】
上記各構成においては、セラミックパッケージを用いて、リッドにて気密封止し、パッケージ内を真空雰囲気または不活性ガス雰囲気に保つ構成であるが、デバイスの低背化には適しておらず、またその材料構成から比較的高価であり、圧電デバイスの低コスト化の阻害要因となっていた。
【0005】
一方、本出願人は、板状の圧電振動板の表裏面に封止部材を接合した超薄型の圧電振動子を提案し、このような圧電振動子を基板に搭載して樹脂モールドした構成の圧電デバイスの提案も行っている。特許文献1参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特願2021-154811号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
圧電振動子は封止部材により圧電振動領域が封止される。封止部材は例えば樹脂フィルムが用いられるが、上述の樹脂モールドを射出成型により行った場合、射出成型時に金型内を流れる軟化した樹脂流体が封止部材を剥いでしまうことがあった。このような場合、前記圧電振動領域の気密性が破壊され、圧電デバイスとしての性能が得られない場合があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、圧電振動子の封止性能を向上させ、低背化、低コスト化ができるモールド型の圧電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるモールド型圧電デバイスは、圧電振動子と、電子部品と、前記圧電振動子と前記電子部品が搭載された基板と、前記基板上の圧電振動子と電子部品を樹脂材により被覆するモールド部を有するモールド型圧電デバイスであって、 前記圧電振動子は、振動板と、前記振動板の上下面に接合される封止部材からなり、 前記振動板は、振動部と、前記振動部より厚肉で前記振動部の周囲に配置された枠部を有し、前記封止部材は前記枠部に接合されるとともに、前記封止部材には面取り部が形成されていることを特徴としている。
【0010】
上記構成によれば、枠部に接合された封止部材に対して、樹脂モールド時に軟化した樹脂流体が強勢に当たった場合でも、封止部材に面取り部が形成されていることにより、金型内を樹脂流体がスムーズに流れ、封止部材が端部から剥離するという事象発生が抑制される。
【0011】
前記封止部材は、樹脂材からなってもよいし、ガラス材や水晶材あるいは金属材を用いてもよい。これら封止部材は剛性を持った板体であってもよいし、樹脂材の場合、薄肉のフィルム状の構成であってもよい。いずれの構成においても、薄肉のものを用いることにより、圧電振動子の低背化に寄与する。さらに、樹脂材の場合は、樹脂材の表裏のいずれか一方あるいは両方に金属膜や金属板を積層するようにしてもよい。このような構成にすることにより、樹脂モールドされた最終製品の状態において気密信頼性を向上させることができる。
【0012】
また封止部材は面取り部を有しているが、その構成としては、封止部材は平面で見て矩形構成で、その少なくとも1つの角部が面取りされている構成であったり、4つの角部が面取りされている構成であったり、あるいは平面で見て長楕円形の構成であってもよい。いずれの構成であっても、前記振動部を被覆して封止する構成が必要である。
【0013】
なお、この面取り構成は、直線の切り欠き構成であってもよいし、曲率を有した丸め構成であってもよいし、鈍角を有する複数直線からなる構成であってもよい。丸め構成の場合は、角部を有しないので、剥がれの起点が形成されにくく、樹脂モールド時に封止部材の剥がれがより抑制される。
【0014】
特に、前記封止部材に平面視矩形形状の樹脂フィルム(薄肉フィルム状の樹脂膜)を用いた場合は、その柔軟な材料特性から、フィルムの端部が捲れ上がる可能性が高くなるが、角部に面取り部が形成されていることにより、封止部材の剥がれが抑制できる。
【0015】
また面取り部の別の構成として、封止部材の厚さ方向に傾斜部が形成された構成であってもよい。具体的には、封止部材の枠部との接合面の外周に対して、接合面と反対の面(厚さ方向の反対面)の外周を小さくすることにより、封止部材の厚さ方向に傾斜部が形成された構成である。
【0016】
なお、上記平面視で面取りをした構成と、上記断面視で面取りをした構成を併用した構成であってもよい。この場合、樹脂モールド時の樹脂流体の流れがよりスムーズになり、封止部材の剥がれがより抑制される。
【0017】
さらに、樹脂フィルムは三層構成からなり、熱硬化性のコア層と、当該コア層の表裏に熱可塑性の外層からなる構成であってもよい。ここで前記外層の構成は、表裏同じ材料、厚さのものを用いることにより、表裏からの伸長収縮に係る応力を相殺することになり、フィルムの捲れ上がりが抑制でき、樹脂モールド時にも封止部材の剥がれをより抑制することができる。
【0018】
電子部品は、発振回路を構成したIC部品であってもよい。この場合、圧電振動子とIC部品を電気的に接続することにより圧電発振器を得ることができる。
【0019】
また、電子部品はサーミスタ等の温度センサであってもよい。この場合、圧電振動子近傍の温度を温度センサで測定することができ、この温度情報を別途形成した温度補償回路に提供することにより、圧電振動子の周波数温度補償を行うことができる。
【0020】
また、電子部品は複数のデバイスからなってもよい。例えば、発振回路用ICと、圧力センサ、圧力データ処理回路ICの複数のデバイスを一体的に樹脂モールドすることにより、圧力計を得ることができる等、複合型の圧電デバイスを得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、樹脂モールドを行った際にも封止部材の剥がれが抑制できることにより封止性能を向上させ、低背化、低コスト化ができるモールド型圧電デバイスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第一の実施形態にかかるモールド型圧電デバイスの斜視図である。
図2図1の側面図である。
図3】第一の実施形態に用いる圧電振動子の分解斜視図である。
図4】第一の実施形態に用いる圧電振動子の平面図である。
図5図4のA-A断面図である。
図6図5の部分拡大図である。
図7】側壁係止の他の構成を示す部分拡大図である。
図8】側壁係止の他の構成を示す部分拡大図である。
図9】面取り部の他の構成例を示す部分拡大図である。
図10】面取り部の他の構成例を示す部分拡大図である。
図11】第一の実施形態の他の構成例を示す側面図である。
図12】第二の実施形態にかかるモールド型圧電デバイスの側面図である。
図13】第二の実施形態に用いる圧電振動子の平面図である。
図14図13のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
-第一の実施形態-
第一の実施形態にかかるモールド型圧電デバイスは、図1図2に示すように、平板状の基板1上に、圧電振動子2とIC3を搭載し、これら圧電振動子2とIC3を含んで基板上に樹脂材を被覆形成したモールド部Mとからなる。
【0025】
基板1は例えばガラスエポキシ材からなる絶縁板の表面及び裏面に、金属膜からなる電気配線パターンが形成されている。基板1の表面においてはその配線パターンの接続部となる電極パッド11a,11b,12を除いて、絶縁膜13が被覆されており、基板上面に搭載される部品との絶縁を図っている。
【0026】
電極パッド11a,11bは、圧電振動子接続用の導電膜である。電極パッド12はIC接続用の導電膜であり、IC電極パッド31に対応した多数個のパッド構成となっている。これら電極パッド11a,11bはIC電極パッド31と所定の配線パターンにより電気的につながっており、本実施の形態においては、圧電発振器を構成するよう配線されている。
【0027】
基板1の裏面においては、四隅の角部に薄肉部(凹部)14を形成しており、薄肉部表面に端子電極14aが形成されている。これら端子電極14aは前述の電極パッド12のいずれかと電気的につながっている。また端子電極14a以外は絶縁膜が被覆されている。
【0028】
なお、端子電極14aは本実施の形態においては基板の四隅に各1つ形成されているが、四隅以外に他の機能端子を形成してもよい。例えば、圧電振動子2の特性を測定するための電極端子を設けてもよい。あるいは温度補償機能を持った圧電発振器においてはICに対してデータ書き込みをする場合があるが、このような場合、ICの書き込み端子につながった端子電極14aを別途形成してもよい。
【0029】
圧電振動子2は図3乃至図7に詳細に示すように、板状の振動板21と前記振動板21の表裏面に接合した、各々板状の封止部材22,23とからなり、全体として板体を三枚重ねた三層構成となっている。具体的な寸法例としては、いわゆる1210サイズとして、長辺寸法が1.2mm、短辺寸法が1.0mm、厚さが0.3mmをあげることができるが、これより大きい1612サイズ(長辺寸法が1.6mm、短辺寸法が1.2mm)、あるいはこれより小さい1008サイズ(長辺寸法が1.0mm、短辺寸法が0.8mm)であってもよい。なお、図4において封止部材22に被覆された部位においては点線で作図している。
【0030】
振動板21は、全体として矩形の水晶板からなり、中央部分に振動部211とその周囲に枠部212を形成するとともに、長辺の両端部には端子部T1,T2が形成されている。水晶板はATカット水晶板を用いており、厚みすべり振動モードの周波数を用いることを意図して設計されている。図3図4において水晶板の結晶軸方向を示している。なお、ATカット水晶板以外にSCカット水晶板やXカット(X-Y水晶板)を用いた屈曲振動モードの音叉型振動子等、他の振動モードの水晶板や、他の形状の振動部構成を用いてもよい。
【0031】
振動部211は枠部212よりも薄肉構成(換言すれば枠部212は振動部211より厚肉構成)で、振動部211の1つの角部に設けられた連結部213により、枠部212と機械的につながっている。なお、本実施の形態において、連結部213は振動部と同じ板厚に設定されているが、漸次厚さが増加して枠部につながる等の構成を採ってもよい。この場合、エネルギー閉じ込め効果により、振動部の振動エネルギーが外部に漏洩せず、特性の安定した圧電振動子を得ることができる。
【0032】
振動部211の厚さは周知のとおり、所望の周波数により決定され、厚みすべりモードに基づく周知の周波数算出式により、その厚さが決定される。
【0033】
振動部211は矩形形状でその中央部には矩形の励振電極211a、211cが各々表裏面に対向して形成されている。励振電極211aからは引出電極211bが、励振電極211cからは引出電極211d(図示せず)がそれぞれ引き出され、引出電極211b、211dは前記連結部213の表面または裏面を通って枠部に設けられた封止部212a,212bにそれぞれ接続されている。封止部212aは枠部上面に周状に形成され、封止部212bは枠部下面に周状に形成されている。そして最終的に封止部212aは端子部T1に、封止部212bは端子部T2に各々繋がっている。端子部T1,T2はそれぞれ圧電振動子の長辺方向端部に形成され、表裏面および両側面につながって形成されている。これにより表裏の区別なく、圧電振動子2を基板1にはんだ等の導電接合材Sにより導電接合することができる。
【0034】
なお、本実施の形態においては、振動部211と枠部212間は連結部のみにより機械的に繋がった構成としているが、複数個所で接続された構成でもよいし、振動部211の全周が枠部212とつながった構成としてもよい。この場合は振動部211の機械的保持強度を向上させることができる。
【0035】
前記振動部、前記連結部、前記枠部に形成された各電極膜(金属膜)は同じ金属材料で構成している。すなわち励振電極211a,211c、引出電極211b、211d、封止部212a,212b、端子部T1,T2は、各々複数層の金属膜からなる。具体例として、水晶板に接して下地金属膜としてTi膜あるいはCr膜が形成され、その上面にAu膜が形成された構成が例示できるが、これ以外の金属材料を用いてもよい。
【0036】
なお、本実施の形態において、基板1と端子部T1,T2との接合は、導電接合材Sとして高融点はんだを用いている。具体的にはSn-Sb系の高融点はんだを用いており、モールド型圧電デバイスを実装基板にリフローソルダリングする際の温度に耐える融点の合金材料を用いている。なお、この高融点はんだは他の組成のはんだであってもよい。このはんだ接合に対応するため、端子部T1,T2の金属膜構成はTi膜-Ni膜-Au膜の積層構成からなっている。これはいわゆるはんだ喰われの減少を抑制するための構成である。はんだ接合を行わない場合、例えば導電性樹脂接着剤により導電接合を行う場合においては、端子部T1,T2の金属各構成は励振電極等と同じTi膜-Au膜の構成等であってもよい。
【0037】
ところで、封止部材22,23は平面視矩形の構成で、本実施の形態においては樹脂フィルムを用いている。樹脂フィルムは三層構成からなり、熱硬化性を得るように材質調整されたポリイミドからなるコア層221と、コア層221の表裏に熱可塑性を得るように材質調整されたポリイミドからなる外層222,223からなる。外層222,223の構成は表裏同じ材料、厚さのものを用いることにより、フィルム表裏の収縮率を同じくすることができ、これによりフィルムの捲れ上がりが抑制でき、樹脂モールド時にも封止部材の剥がれをより抑制することができる。
【0038】
封止部材22,23の4つの角部は各々面取り部22a、23aが形成されている。本実施の形態においては、面取り部22a、23aは曲率を有する丸め形状としている。
【0039】
封止部材22,23は枠部212上に形成された封止部212a,212b等の金属膜および/または水晶板に接合される。接合においては前述の熱可塑性の外層222,223等を枠部に加熱圧着することにより行う。これにより封止部材22,23は枠部212に接着され、振動部が封止されることで振動部表裏の励振電極211a,211cが外気から保護される。なお、図4図5に示すように、封止部材22,23の長辺側は端子部T1,T2に接合される位置まで伸びているか、あるいはその内側にある水晶素地部(枠部212の電極膜が形成されていない領域)を覆う構成が好ましい。このような構成により、端子部をはんだ等の導電接合材で基板に接合する際、異電極間の短絡を防止することができる。
【0040】
前記接合された封止部材の外層223,233の一部は、枠部212の内部側壁部212cにも形成され、側面係止部223a、233aを形成している。図5図6に示すように、この側面係止部22b、23bは、熱により柔軟になった前記外層223,233が前記内部側壁部212cに伸長した構成であってもよいし、封止部材を振動板に押圧することにより、前記外層223,233の一部が、内部側壁部に入りこむ状態で形成された構成であってもよい。なお、図6図5において円で囲った領域の拡大図である。
【0041】
また、図7に示すように傾斜面状の内部側壁部212dを形成し、当該内部側壁部212dに対して、側面係止部223b、233b(図示せず)が形成される構成であってもよい。この構成の場合、前記傾斜面状の内部側壁部212dに多くの側面係止部が溜まる状態となるので、封止部材の接合強度向上に寄与する。なお、図7においては、内部側壁部の傾斜面が上方に向いているが、傾斜面が下方に向いている構成であってもよい。
【0042】
さらに図8に示すように、コア層221に段差部221aを設け、前記段差部が内部側壁部212cに当接した構成により、側面係止部223c、233c(図示せず)を形成してもよい。この構成においては、コア層221自体が側面係止部223c、233cとして内部側壁部212cにはまり込む構成とすることにより、位置決めが確実になるとともに、封止部材の接合強度が向上し、封止部材の剥がれを抑制できる。
【0043】
これら側面係止部223c、233cは枠部の内部側面の全周に形成する構成とした場合、封止部材の接合強度を向上させる点で好ましいが、内部側面の一部に側面係止部を設けても必要な接合強度向上が期待できる。
【0044】
以上、いくつかの側面係止部の構成例を開示したが、側面係止部を設けることにより、封止部材の接合強度を向上させることができ、樹脂をモールド成形する際の封止部材の剥離を抑制する効果があるが、側面係止部がない構成であってもよい。
【0045】
ところで、前記面取り部の構成として、平面視矩形の板状封止部材に対して四隅の角部を円弧状にした構成(曲率を有した丸め構成)例を例示したが、この形状に限定されるものではなく、図9に示す面取り部22bのように直線の切り欠き構成であってもよいし、図10に示す面取り部22cのように複数の直線が鈍角に交わる切り欠き構成であってもよい。
【0046】
このような面取り部の形成は、事前に封止部材に対して個別に面取り加工を行った封止部材を用いてもよいし、レーザービーム等のエネルギービームにより、封止部材接合後に面取り部を形成してもよい。
【0047】
さらには、封止部材が感光性の樹脂フィルムからなる場合、封止部材を振動体に接合した後、面取り部に対応するパターンが形成された所定のマスクを介して露光を行うことにより、所定形状の面取り部を形成してもよい。この場合、面取り部より外側はエッチング等により除去される。
【0048】
なお、このような感光性のフィルムを用いる場合は、ウェハレベルでの製造を行うと効率的である。例えば3インチ水晶ウェハを用い、これに対してフォトリソグラフィ技術、エッチング技術等を用いて一度に多数の振動板を形成する。具体的には枠部と振動部からなる振動板の外形加工並びに各振動板への電極形成、端子電極形成をフォトリソグラフィ技術、エッチング技術を用いて行う。これによりマトリクス状に複数の振動板を一体的に形成した水晶ウェハを得ることができる。
【0049】
この水晶ウェハに対して、感光性のフィルムを接合し、所定のマスクパターンにて露光を行うことにより、個別に面取り部が形成された封止部材により振動部が封止された多数の圧電振動子群(水晶ウェハ)を得ることができる。この圧電振動子群をダイシングあるいはブレークにより、個別の圧電振動子を得ることができる。
【0050】
図1図2に示すように、基板1に搭載されるIC3は発振回路が形成された半導体チップであり、全体として薄肉の角型チップ構成である。IC3の能動面には複数のIC電極パッド31が対向する辺の近傍に並んでおり、本実施の形態においては、4つのIC電極パッドが2列に並んだ、合計8つのIC電極パッド31を有する構成としている。これらIC電極パッド31はワイヤWにより基板の電極パッド12に各々接合されている。
【0051】
モールド部Mは基板1の外周から上方に立ち上がる構成で、かつ圧電振動子2とIC3とを樹脂により埋める状態に形成されている。本実施の形態においては、モールド部Mはエポキシ樹脂からなり、例えばモールド金型を用いた射出成型法等の手法により形成される。エポキシ樹脂は主構成材としてエポキシ樹脂を用い、これにSiO2等の微粒子を添加することにより、耐熱性、放熱性、流動性や熱膨張率の調整などの機能を付与している。
【0052】
ところで、図2に示すように、モールド部Mの上面M1と圧電振動子またはICのワイヤの上端M2との距離Dは100μmに設定されている。この距離M2は低背化の観点と樹脂モールド強度確保の観点から80~200μmであると好ましい。
【0053】
以上の構成により、基板1の表面に圧電振動子2とIC3が並列して搭載され、必要な導電接合が行われ樹脂材にてモールド成形された、底面に端子電極14aを有するモールド型圧電発振器を得ることができる。
【0054】
なお、このモールド型圧電デバイスの外形寸法例としては、縦2.0mm、横1.6mm、高さ0.64mmの直方体構成をあげることができるが、この寸法は、要求仕様によって小型化したり大型化することが可能である。また基板の端子電極の配置も要求仕様に応じて任意に形成することができる。
【0055】
次に、第1の実施形態の他の例を、図11とともに説明する。基本構成は上記実施形態と同じであるが、圧電振動子2において振動板の上面に接合された封止部材の上部に補強板4が形成されている。当該補強板4は封止部材で用いている樹脂フィルムの上面に接着配置されるもので、例えば、樹脂板、水晶板、ガラス板、シリコン(Si)板、あるいは金属板を用いることができる。本実施の形態においては、一面に粘着剤が形成されたSi板を封止部材に接着した構成としており、これにより樹脂材をモールド形成する際に、樹脂フィルムが振動部側に撓み封止部材と振動部とが接触することを防止する。なお、補強板の形状は平板構成でもよいが、図11に示すように補強板4の外周が下方に屈曲した係止部41を設けてもよい。このような係止部を有する構成においては、係止部41が補強板4を接着する際の位置ずれを抑制することができる。
【0056】
さらに、前記封止部材の上部に補強板4に加えて、圧電振動子下面側(基板搭載面側)の封止部材の表面に補強板を設けてもよい。このような構成であれば、樹脂モールドの際に圧電振動子下面側に流れ込む樹脂流体による押圧力を補強板にて受け止める構成となる。よって圧電振動子下面側においても、樹脂材をモールド形成する際に、樹脂フィルムが振動部側に撓み封止部材と振動部とが接触することを防止する。
【0057】
なお、封止部材として、樹脂フィルム以外に樹脂板、水晶板、ガラス板、シリコン(Si)板、あるいは金属板を用いた場合でも、補助板の補強効果は有効である。
【0058】
-第二の実施形態-
第二の実施形態にかかるモールド型圧電デバイスを図12図13図14とともに説明する。基本構成は第一実施形態と同様であるが、基板1´の裏面において薄肉部を有しない点、圧電振動子2´の振動部211の保持構成と、圧電振動子2´に設けた封止部材22´,23´の構成、並びに圧電振動子2´の導電接合構成とIC3の導電接合構成、そして図示してはいないが、IC3の機能、構成が異なっている。図12に示すように、モールド型圧電デバイスは平板状の基板1´上に、圧電振動子2´とIC3が搭載され、これら圧電振動子2´とIC3を含んで基板上に樹脂材を被覆形成したモールド部Mとからなる構成である。なお図13においては、矢印Cで示すように、封止部材22´が振動板21´の上面に、振動部211を覆うように接合されることを示している。
【0059】
圧電振動子2´は、板状の振動板21´と、前記振動板21´の表裏面に接合した、各々板状の封止部材22´,23´とならなり、全体として板体を三枚重ねた三層構成となっている。
【0060】
振動板21´は、全体として矩形のATカット水晶板からなり、中央部分に振動部211が、振動部211の周囲に枠部212が、所定の間隔を隔てて配置され、振動部211と枠部212は連結部213、214により一体的に形成されている。前記連結部213、214は振動部211のX方向の一辺側であって、Z´方向に並んで形成されている。そして振動板21´の長辺方向の両端部には端子部T1,T2が形成されている。
【0061】
振動部211は矩形形状で、その中央部には平面視矩形の励振電極211a、211cが各々表裏面に対向して形成されている。励振電極211aからは引出電極211bが、励振電極211cからは引出電極211dがそれぞれ引き出され、引出電極211b、211dは前記連結部213,214を通って枠部に設けられた封止部212a,212bにそれぞれ接続されている。封止部212aは枠部上面に周状に形成され、封止部212bは枠部下面に周状に形成されている。そして最終的に封止部212aは端子部T1に、封止部212bは端子部T2に各々繋がっている。
【0062】
封止部材22´,23´は平面視矩形の構成で、本実施の形態においては樹脂フィルムを用いている。樹脂フィルムは三層構成からなり、熱硬化性を得るように材質調整されたポリイミドからなるコア層221と、コア層221の表裏に熱可塑性を得るように材質調整されたポリイミドからなる外層222,223からなる。外層222,223の構成は表裏同じ材料、厚さのものを用いることにより、フィルム表裏の収縮率を同じくすることができ、これによりフィルムの捲れ上がりが抑制でき、樹脂モールド時にも封止部材の剥がれをより抑制することができる。なお、本実施の形態において、封止部材22´,23´の長辺は、端子部T1,T2の一部を被覆する位置まで伸びている。
【0063】
本実施の形態においては、封止部材22´,23´の厚さ方向に面取り部(傾斜部)22d,23dを形成している。すなわち、図12図13図14に示すように、封止部材22´,23´の外周部には断面で見て傾斜部を有する面取り部22d,23dが形成されている。
【0064】
このように断面で見て傾斜部を有する面取り部を形成することより、樹脂モールド時の樹脂流体の流れがスムーズになり、封止部材の剥がれが抑制される。
【0065】
また、第一実施形態で示した平面視で面取りをした構成と本実施の形態で示した断面視で面取りをした構成を併用してもよい。この場合、樹脂モールド時の樹脂流体の流れがよりスムーズになり、封止部材の剥がれがより抑制される。
【0066】
ところで、前記モールド部Mを形成する際、上述したように圧電振動子、電子部品を搭載した基板をモールド金型にセットして、金型内に軟化させた樹脂材を射出することにより、樹脂成型を行う。この際に圧電振動子の封止部材に対しては、相当の樹脂流体の圧力がかかる。このため前記枠部間を架橋する封止部材に樹脂フィルムを適用した場合、封止部材の撓み量については下記のような構成としている。
【0067】
図14に示すように、例えば封止部材22´を例にとると、封止部材22´を枠部212に架橋した状態において、封止部材22´の底面(基準仮想線L)と励振電極間の距離をD1とし、封止部材22´の最大撓み量をD2とした場合、D1>D2となるように構成している。
【0068】
このような構成により、励振電極211aに近接するように撓んでいる封止部材22´が、励振電極211aに接触することを防止することができる。
【0069】
この実施形態では、封止部材に用いる樹脂フィルムの撓み量D2は、例えば10μm程度であり、これに対して、励振電極211a又は励振電極211cと封止部材22´又は封止部材23´の間の垂直距離D1は、撓み量D2の2倍以上、例えば、20μm程度としている。
【0070】
ここで用いる樹脂フィルムは、300℃程度の耐熱性を有するポリイミド樹脂フィルムであるので、当該圧電振動子2´、基板1´にはんだ接合する場合の半田リフロー処理の高温に耐えることができる。
【0071】
ここで用いる封止部材(ポリイミドからなる樹脂フィルム)は、透明であるが、後述の加熱圧着の条件によっては、不透明となる場合がある。なお、封止部材は透明、不透明、あるいは、半透明であってもよい。
【0072】
封止部材に樹脂フィルムを用いた場合の例としてポリイミド樹脂を例示したが、スーパーエンジニアリングプラスチックに分類されるような樹脂、例えば、ポリアミド樹脂やポリエーテルエーテルケトン樹脂等を用いてもよい。
【0073】
ICは半導体チップであり、圧電振動子と電気的につながった発振回路と温度センサそして温度補償回路がチップ内に形成されている。温度センサは温保補償回路と電気的につながっており、また温度補償回路は発振回路と電気的につながっている。これにより圧電振動子2´とIC3により温度補償型圧電発振器を構成している。
【0074】
ところで、本実施の形態においては圧電振動子2´およびIC3は基板に対してバンプ接合(フェースダウンボンディング)されている。圧電振動子の端子部T1,T2の一方面には、Au材からなるスタッドバンプB1が各々の端子部に2つ、合計4つ形成されている。これらスタッドバンプを介して、圧電振動子2´は基板1´の電極パッドと電気的機械的接合されている。
【0075】
IC3は複数のIC電極パッド31が形成されている能動面が基板側に向いて搭載され、基板に形成された複数の電極パッド12と、一対一で対応してバンプ接合されている。図示しないが、IC電極パッドにはスタッドバンプが形成されている。
【0076】
モールド部Mは樹脂材からなり、前記バンプ接合された圧電振動子2´,IC3を樹脂にて一体的に被覆している。
【0077】
以上の構成により、基板1´の表面に圧電振動子2´とIC3が並列して搭載され、必要な導電接合が行われ樹脂材にてモールド成形された、底面に端子電極14aを有するモールド型圧電発振器を得ることができる。
【0078】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1、1´ 基板
14 切り欠き部
11a、11b、12 電極パッド
2、2´ 圧電振動子
21、21´ 振動板
211 振動部
212 枠部
213、214 連結部
22、22´、23、23´ 封止部材
22b、22c、22d、23d 面取り部
223a、223b、223c、233a、233b、233c 側面係止部
3 IC
31 IC電極パッド
4 補強板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14