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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116265
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】粒状ゴム材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20230815BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20230815BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20230815BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
C08J3/12 A
C08L21/00
C08L83/04
C08K5/09
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018969
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】駒林 正士
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA60
4F070AB26
4F070AC40
4F070AC92
4F070DA41
4J002AC001
4J002CP032
4J002EF046
4J002GC00
4J002GM00
(57)【要約】
【課題】高いエネルギー効率でゴム組成物を粉砕して粒状ゴム材料を製造する方法を提供する。
【解決手段】粒状ゴム材料の製造方法は、溶解度パラメータが20.5MPa1/2以下の油分を含有するゴム組成物を機械的に粉砕するものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解度パラメータが20.5MPa1/2以下の油分を含有するゴム組成物を機械的に粉砕する粒状ゴム材料の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された粒状ゴム材料の製造方法において、
前記油分がシリコーンオイルを含む粒状ゴム材料の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された粒状ゴム材料の製造方法において、
前記油分が不飽和脂肪酸を含む粒状ゴム材料の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載された粒状ゴム材料の製造方法において、
前記油分の前記不飽和脂肪酸がリノール酸及び/又はオレイン酸を含む粒状ゴム材料の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された粒状ゴム材料の製造方法において、
前記ゴム組成物のベースポリマーがシリコーンゴムを含む粒状ゴム材料の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された粒状ゴム材料の製造方法において、
前記ゴム組成物における前記油分の含有量が前記ゴム組成物のベースポリマー100質量部に対して1質量部以上15質量部以下である粒状ゴム材料の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載された粒状ゴム材料の製造方法において、
前記ゴム組成物のベースポリマーの溶解度パラメータと前記油分の溶解度パラメータとの差が5MPa1/2以下である粒状ゴム材料の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載された粒状ゴム材料の製造方法において、
前記ゴム組成物が、使用済み製品から回収された廃棄ゴムに前記油分を含有させたものである粒状ゴム材料の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載された粒状ゴム材料の製造方法において、
前記ゴム組成物がチップ状に形成されている粒状ゴム材料の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載された粒状ゴム材料の製造方法において、
前記ゴム組成物の機械的粉砕を、せん断力で粉砕する方式の粉砕機を用いて行う粒状ゴム材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状ゴム材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄製品から回収した廃棄ゴムを粉砕機で粉砕することにより、ゴム製品の充填材等として用いられる粒状ゴム材料を製造することが行われている。例えば、特許文献1には、脆化温度よりも低い温度まで予備冷却したゴム及びプラスチック材料を液体窒素とともに粉砕機に供給して粉砕することが開示されている。特許文献2には、粗砕されたゴムとともに気体を粉砕機に供給して粉砕することが開示されている。特許文献3には、破砕したゴムを粗粉砕した後、細粉砕ロールによって細粉砕することが開示されている。特許文献4には、チップ状のゴムを固着防止剤を添加しながら荒粉砕し、荒粉砕ゴムから中粉砕ゴムを経て微粉砕ゴムに順次仕上げて行き、微粉砕ゴムを分級してその一部を製品として回収することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1-168361号公報
【特許文献2】特開平6-8242号公報
【特許文献3】特許第4579671号公報
【特許文献4】特許第4565989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、高いエネルギー効率でゴム組成物を粉砕して粒状ゴム材料を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、溶解度パラメータが20.5MPa1/2以下の油分を含有するゴム組成物を機械的に粉砕する粒状ゴム材料の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、粉砕対象のゴム組成物が、溶解度パラメータが20.5MPa1/2以下の油分を含有して膨潤することにより機械的強度が下がり、これによりゴム組成物を高いエネルギー効率で機械的に粉砕することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について説明する。
【0008】
実施形態に係る粒状ゴム材料の製造方法では、溶解度パラメータ(SP値)が20.5MPa1/2以下の油分を含有するゴム組成物を機械的に粉砕する。
【0009】
この実施形態に係る粒状ゴム材料の製造方法によれば、粉砕対象のゴム組成物が、SP値が20.5MPa1/2以下の油分を含有して膨潤することにより機械的強度が下がり、これによりゴム組成物を高いエネルギー効率で機械的に粉砕することができる。
【0010】
ゴム組成物のベースポリマーとしては、例えば、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)等が挙げられる。シリコーンゴムのSP値は、一般的に15MPa1/2以上15.6MPa1/2以下である。フッ素ゴムのSP値は、一般的に17.6MPa1/2である。ゴム組成物のベースポリマーは、ゴム組成物を高いエネルギー効率で機械的に粉砕する観点から、シリコーンゴムを含むことが好ましい。
【0011】
SP値が20.5MPa1/2以下の油分(以下「油分A」という。)としては、例えば、シリコーンオイル、不飽和脂肪酸、植物油等が挙げられる。不飽和脂肪酸としては、例えば、リノール酸、オレイン酸等が挙げられる。植物油としては、例えば、ごま油、しらしめ油、コーン油、大豆油、菜種油、こめ油、糠油、小麦胚芽油、椿油、ベニバナ油、ヤシ油、綿実油、ひまわり油、エゴマ油、アマニ油、オリーブオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、ヘーゼルナッツオイル、ウォルナッツオイル、グレープシードオイル、マスタードオイル、レタス油等が挙げられる。油分Aは、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。油分Aは、環境負荷が小さく且つゴム組成物を高いエネルギー効率で機械的に粉砕する観点から、シリコーンオイルを含むことがより好ましい。油分Aは、同様の観点から、不飽和脂肪酸を含むことがより好ましく、リノール酸及び/又はオレイン酸を含むことが更に好ましい。
【0012】
油分AのSP値は、20.5MPa1/2以下であり、ゴム組成物を高いエネルギー効率で機械的に粉砕する観点から、好ましくは19MPa1/2以下、より好ましくは18.5MPa1/2以下である。シリコーンオイルのSP値は、一般的に13.3MPa1/2以上19.5MPa1/2以下である。リノール酸のSP値は17.6MPa1/2である。オレイン酸のSP値は17.6MPa1/2である。
【0013】
ベースポリマーのSP値と油分AのSP値との差は、ゴム組成物を膨潤させて高いエネルギー効率で機械的に粉砕する観点から、好ましくは5MPa1/2以下、より好ましくは3MPa1/2以下である。
【0014】
ゴム組成物における油分Aの含有量は、ゴム組成物を膨潤させて高いエネルギー効率で機械的に粉砕する観点から、ベースポリマー100質量部に対して、好ましくは1質量部上15質量部以下、より好ましくは5質量部以上10質量部以下である。
【0015】
ゴム組成物は、油分A以外に、カーボンブラックなどの補強材、可塑剤、加工助剤、老化防止剤、加硫促進剤、加硫促進助剤等を含有していてもよい。
【0016】
粉砕前のゴム組成物は、粗粉砕されてチップ状に形成されていることが好ましい。ゴム組成物は、架橋ゴムであることが好ましく、資源の再利用の観点から、使用済み製品から回収された廃棄ゴムに油分Aを含有させたものであることがより好ましい。廃棄ゴムに油分Aを含有させたゴム組成物を得るには、粗粉砕した廃棄ゴムを油分Aと混合し、廃棄ゴムに油分Aを吸油させればよい。
【0017】
ゴム組成物の機械的粉砕に用いる粉砕機は、ゴム組成物をせん断力で粉砕する方式であることが好ましい。かかる粉砕機としては、例えば、グラインダー(石臼式粉砕機)、カッターミル等が挙げられる。
【0018】
粉砕後の粒状ゴム材料の粒径は、例えば125μm以上2mm以下である。粉砕後の粒状ゴム材料は、JIS Z8801-1:2019に規定される目開き1mmのふるいを透過する大きさであることが好ましい。
【0019】
得られた粒状ゴム材料は、油分Aを含有しているので、まとまりやすく、取り扱いが容易であり、例えばゴム又は樹脂をマトリクスとする複合材に配合する充填材として用いられ、具体的には、プリンタや複写機のロール類、ゴムマット等に適用することができる。
【実施例0020】
[試験評価1]
(チップ状シリコーンゴム組成物)
<実施例1-1>
粗粉砕したチップ状の架橋ゴムのシリコーンゴム組成物(シリコーンゴムのSP値:15.0MPa1/2)とシリコーンオイル(SP値:18.5MPa1/2)とを混合し、シリコーンオイルを含有するチップ状シリコーンゴム組成物を調製した。シリコーンオイルの添加量を、シリコーンゴムのベースポリマー100質量部に対して20質量部とした。これを実施例1-1とした。
【0021】
<実施例1-2>
シリコーンオイルの代わりにオレイン酸(SP値:17.6MPa1/2)を用いたことを除いて実施例1-1と同様にして、オレイン酸を含有するチップ状シリコーンゴム組成物を調製した。これを実施例1-2とした。
【0022】
<実施例1-3>
シリコーンオイルの代わりにリノール酸(SP値:17.6MPa1/2)を用いたことを除いて実施例1-1と同様にして、リノール酸を含有するチップ状シリコーンゴム組成物を調製した。これを実施例1-3とした。
【0023】
<比較例>
油分を含有させなかった粗粉砕したチップ状シリコーンゴム組成物を比較例とした。
【0024】
(試験方法及び試験結果)
実施例1-1乃至1-3及び比較例のチップ状シリコーンゴム組成物のそれぞれについて、油分を除くチップ状シリコーンゴム組成物の質量を揃え、グラインダー(グローエンジニアリング社製)を用いて機械的に粉砕した。グラインダーは、一対の砥石間のクリアランスを500μmに設定し、砥石の回転数を2400rpmとした。そして、実施例1-1乃至1-3の処理速度を、比較例の処理速度を基準として相対評価した。その結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
[試験評価2]
(チップ状シリコーンゴム組成物)
<実施例2-1>
粗粉砕したチップ状の架橋ゴムのシリコーンゴム組成物とリノール酸とを混合し、リノール酸を含有するチップ状シリコーンゴム組成物を調製した。リノール酸の添加量を、シリコーンゴムのベースポリマー100質量部に対して2質量部とした。これを実施例2-1とした。
【0027】
<実施例2-2乃至2-4>
リノール酸の添加量を、シリコーンゴムのベースポリマー100質量部に対して、5質量部、10質量部、及び15質量部としたことを除いて実施例2-1と同様にして調製したチップ状シリコーンゴム組成物を、それぞれ実施例2-2乃至2-4とした。
【0028】
(試験方法及び試験結果)
実施例2-1乃至2-4及び比較例のチップ状シリコーンゴム組成物のそれぞれについて、油分を除くチップ状シリコーンゴム組成物の質量を揃え、グラインダー(グローエンジニアリング社製)を用いて機械的に粉砕した。グラインダーは、一対の砥石間のクリアランスを500μmに設定し、砥石の回転数を1800rpmとした。そして、実施例2-1乃至2-4の処理速度を、比較例の処理速度を基準として相対評価した。その結果を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
また、実施例2-2及び比較例のチップ状シリコーンゴム組成物のそれぞれについて、油分を除くチップ状シリコーンゴム組成物の質量を揃え、カッターミル(オリエント粉砕機社製)を用いて機械的に粉砕した。カッターミルは、スクリーン径を2mmとした。そして、実施例2-2の処理速度を、比較例の処理速度を基準として相対評価した。その結果を表3に示す。
【0031】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、粒状ゴム材料の製造方法の技術分野について有用である。