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  • 特開-形材ユニット及び建具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116274
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】形材ユニット及び建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/22 20060101AFI20230815BHJP
   E06B 1/30 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
E06B3/22
E06B1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018992
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 憲佑
(72)【発明者】
【氏名】大山 雄也
【テーマコード(参考)】
2E014
【Fターム(参考)】
2E014AA03
2E014BA08
2E014BB00
2E014BC00
(57)【要約】
【課題】合成樹脂製の形材の伸縮を抑制可能な形材ユニット等を提供する。
【解決手段】中空部を備える合成樹脂製の押出形材と、前記中空部内に設けられる金属製の補強部材と、前記押出形材に挿通される固定具により前記補強部材に固定され、当該補強部材と共に前記押出形材を挟持する金属部材と、前記金属部材と前記押出形材との摺動を規制する摺動規制部と、を有している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を備える合成樹脂製の押出形材と、
前記中空部内に設けられる金属製の補強部材と、
前記押出形材に挿通される固定具により前記補強部材に固定され、当該補強部材と共に前記押出形材を挟持する金属部材と、
前記金属部材と前記押出形材との摺動を規制する摺動規制部と、
を有していることを特徴とする形材ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の形材ユニットであって、
前記摺動規制部は、前記金属部材と前記押出形材を接着する接着部であることを特徴とする形材ユニット。
【請求項3】
請求項1に記載の形材ユニットであって、
前記摺動規制部は、前記金属部材に設けられた突起が前記押出形材に押圧されている押圧部であることを特徴とする形材ユニット。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の形材ユニットであって、
前記摺動規制部による規制力は、前記押出形材の収縮力より大きいことを特徴とする形材ユニット。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の形材ユニットが、障子が備える框及び躯体に固定される枠体に用いられていることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製の押出形材が備える中空部内に金属製の補強部材が設けられている形材ユニット及び建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、合成樹脂製の框の強度を上げるために合成樹脂製の框の中空部内に金属製の中空部補強部材が長手方向に沿って設けられている建具は知られている(例えば、特許文献1参照)。この建具の框は、中空部とガラス収容部とを有しており、中空部内に設けられた中空部補強材が、ガラス収容部に配置された金属製の連結部材に、中空部とガラス収容部とを仕切る部位を挟んでビスなどにより連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-44501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
合成樹脂製の框は、金属製の補強材よりも熱膨張し易いため、長期使用において、温度変化により伸縮すると、框のビス孔に挿通されて補強材に螺合しているビスのように樹脂製の框を挿通している固定具が樹脂側のビス穴の縁を押圧し、伸縮が繰り返されることにより挿通されている孔が広がってしまい、樹脂の伸縮を抑えることができない。また、合成樹脂製の框は一般的に押し出し成形された形材であり、温度が上昇しガラス転移温度付近に到達すると、押出加工時に生じた歪が解放されて収縮する。この形材の収縮による歪みや変形は、補強材と形材をビス等で連結しただけでは、抑制することができないという課題があった。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、合成樹脂製の形材の伸縮を抑制可能な形材ユニット及び建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するための主たる発明は、中空部を備える合成樹脂製の押出形材と、前記中空部内に設けられる金属製の補強部材と、前記押出形材に挿通される固定具により前記補強部材に固定され、当該補強部材と共に前記押出形材を挟持する金属部材と、前記金属部材と前記押出形材との摺動を規制する摺動規制部と、を有していることを特徴とする形材ユニットである。
本発明の他の特徴については、本明細書および添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、合成樹脂製の形材の伸縮を抑制可能な形材ユニット及び建具を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る形材ユニットが用いられた建具を示す図である。
図2】框材を示す縦断面である。
図3】框材をガラス収容部側から見た図である。
図4】板部材が接着された框形材と補強部材との固定構造を示す断面図である。
図5】框形材に噛み込む突起を備えた板部材を用いた框形材と補強部材との固定構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る形材ユニットについて図面を参照して説明する。
【0010】
本実施形態では、建具が備える障子の框を構成する框材に本発明の形材ユニットを用いる例について説明する。また、本実施形態では、框材に用いる例を挙げて説明するが、これに限らず、例えば、建具の枠など、中空部に補強部材を備える押出形材を用いることが可能であれば構わない。
【0011】
本実施形態の建具1は、例えば図1に示すように、引違い障子1aと、引違い障子1aを支持する枠体1bと、を備えており、引違い障子1aが備える框10を構成する4本の框材11に本発明の形材ユニットが用いられている。本実施形態では、4本の框材11のうちの下框をなす框材11を例に挙げて説明する。
【0012】
框材11は、図2に示すように、本発明の形材ユニットでなる框本体12と、框本体12に係合される押縁13と、を有している。框本体12に係合された押縁13は、矩形状に接合された框10の状態において、その内周側に、複層ガラス1cの端部が挿入されるガラス収容部11aを框本体12とともに形成している。
【0013】
框本体12は、長手方向を押出方向とし、長手方向に貫通する中空部14aを有する合成樹脂製の框形材14と、中空部14aに設けられる鉄などの金属製の補強部材15とを有している。
【0014】
框形材14は、断面がほぼ矩形状をなす中空部14aの内周側に位置して当該中空部14aを形成する内周壁部14bと、内周壁部14bの室内側の端から内周側に突出する室内突出部14cと、内周壁部14bの室外側に設けられ押縁13が係合される係合溝14dと、を有している。そして、室内突出部14c及び内周壁部14bと、係合溝14dに係合される押縁13によりガラス収容部11aが形成される。すなわち、ガラス収容部11aと中空部14aとは内周壁部14bにより仕切られている。
【0015】
中空部14a内に設けられる補強部材15は、断面がコ字状をなし、框形材14のほぼ全長に亘って設けられている。補強部材15は、内周壁部14bと対面して当接される当接面部15aと、複層ガラス1cの面内方向に間隔を空けて当接面部15aと対面する対面部15bと、当接面部15aと対面部15bの、複層ガラス1cの面外方向における一方の端同士を連結する連結壁部15cと、を有している。
【0016】
補強部材15は、図3に示すように、框形材14の長手方向における両端部近傍にて、ガラス収容部11aに配置された金属部材としての鉄製の板部材16と共に、内周壁部14bを挟持する状態で、ガラス収容部11a側から固定具としてのビス3により固定されている。
【0017】
板部材16には、図4に示すように、ビス3が挿通する板挿通孔16aが設けられている。板部材16は、板挿通孔16aが、内周壁部14bに設けられビス3が挿通される框挿通孔14eと位置を合わせて配置され、内周壁部14bのガラス収容部11a側の面に接着剤4により接着されている。ここで、接着剤4により板部材16と框形材14とが接着されている接着部5が、金属部材(板部材16)と押出形材(框形材14)との摺動を規制する摺動規制部に相当する。
【0018】
接着剤4には、板部材16と框形材14との摺動の規制力が、押出形材である框形材14の収縮力より大きくなる接着力を有する接着剤4が用いられる。例えば、断面積A、長さL、弾性率Eで表される形材に、収縮量ΔLの収縮が生じるときの形材の熱収縮力Pは、(式1)に示すとおりで或る。
このため、板部材16の接着面積と接着剤4の接着力との積が、熱収縮力Pより大きくなる接着剤を用いる。接着剤4としては、例えば、セメダイン株式会社製 セメダイン(登録商標)Y-618H等が挙げられる。
【0019】
補強部材15は、当接面部15aが中空部14a内にて内周壁部14bに当接され、内周壁部14bのガラス収容部11a側の面に接着された板部材16の板挿通孔16aと、内周壁部14bの框挿通孔14eとを挿通したビス3が当接面部15aに螺合されることにより固定されている。
【0020】
本実施形態の框本体12によれば、板部材16と框形材14とは接着剤4により接着された接着部5により摺動が規制されているので、框形材14と板部材16との相対移動が抑制される。また、板部材16は、金属製の補強部材15にビス3により固定されているので、補強部材15とほぼ一体となっており、補強部材15との相対移動は生じ難い。このため、温度変化等により框形材14に伸縮が生じる場合であっても、框形材14は、補強部材15に固定された板部材16により、板部材16及び補強部材15との相対移動が規制されているので、合成樹脂製の框形材の伸縮を抑制することが可能となる。また、温度が上昇しガラス転移温度付近に到達する際に、押出形材でなる框形材14に生じる収縮も抑制することが可能となる。
【0021】
接着剤4による規制力は、框形材14の熱等による収縮力より大きいので、温度変化等により框形材14が収縮する場合であっても、接着部5の規制力により框形材14の収縮の発生を抑えることが可能となる。
【0022】
また、板部材16に設ける板挿通孔16aを、ビス3のねじ部が挿通可能であると共に、可及的に小さく形成する、換言すると、板挿通孔16aは、ビス3のねじ部が挿通される最小のサイズに形成すると、板挿通孔16aの内径は、挿通されるビス3のねじ部の外径とほぼ等しくなり、挿通されたビス3と板挿通孔16aとの間に隙間はほとんど生じない。このため、合成樹脂製の框形材14の伸縮により板部材16に伸縮方向に力が作用しても、板挿通孔16aの内周に接触するビス3により板部材16の移動が規制されるので、框形材14の伸縮をより確実に防止することが可能となる。
【0023】
上記実施形態においては、框形材14と板部材16との接着に接着剤4を用いる例について説明したが、これに限らず、例えば両面テープなどにより接着しても構わない。
【0024】
上記実施形態においては、框形材14と板部材16とを接着した接着部5を、押出形材と金属部材との摺動を規制する摺動規制部とした例について説明したがこれに限るものではない。例えば、図5に示すように、板部材16の框形材14との対向面側に突起16bを設けておき、ビス3を板挿通孔16a及び框挿通孔14eを挿通させて補強部材15に螺合することにより、突起16bが框形材14に押圧されて噛み込む押圧部6を、押出形材と金属部材との摺動を規制する摺動規制部としても構わない。
【0025】
図5では、断面形状が框形材14側に突出する山形形状の突起16bが、長手方向と交差する交差方向に繋がって設けられている例について示しているが、突起の形状はこれに限るものではない。例えば、断面形状が円弧状、台形状であっても構わず、また、長手方向と交差する交差方向に繋がっておらず、点在していても構わない。
【0026】
また、上記実施形態においては、框形材14の長手方向における両端部近傍の2箇所にて補強部材15をビス止めする例について説明したが、これに限らず、長手方向に適宜間隔を空けて3箇所以上ビス止めしても構わない。この場合には、框形材14の伸縮をより確実に防止することが可能となる。また、各板部材16を1本のビス3を挿通させて補強部材15に螺合した例について説明したが、複数本のビス3を螺合して取り付けても構わない。
【0027】
また、上記框形材14のような形材ユニットを用いた引違い障子1aなどの障子が備える框10及び躯体に固定される枠体1bを有する建具1によれば、障子や枠体1bが温度変化により変形しにくい建具1を提供することが可能となる。
上記実施形態においては、固定具を、内周壁部14bに挿通されて補強部材15に螺合されるビス3を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、リベットなどであっても構わない。
【0028】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
本実施形態には、少なくとも以下の発明が含まれる。
【0029】
中空部を備える合成樹脂製の押出形材と、前記中空部内に設けられる金属製の補強部材と、前記押出形材に挿通される固定具により前記補強部材に固定され、当該補強部材と共に前記押出形材を挟持する金属部材と、前記金属部材と前記押出形材との摺動を規制する摺動規制部と、を有していることを特徴とする形材ユニットである。
【0030】
このような形材ユニットによれば、金属部材と押出形材とは摺動規制部により摺動が規制されているので、押出形材と金属部材との相対移動が抑制される。また、金属部材は、金属製の補強部材に固定具により固定されているので、補強部材とほぼ一体となっており、補強部材との相対移動は生じ難い。このため、温度変化により押出形材に伸縮が生じる場合であっても、押出形材は、補強部材に固定された金属部材により、金属部材及び補強部材との相対移動が規制されているので、合成樹脂製の形材の伸縮を抑制することが可能となる。また、温度が上昇しガラス転移温度付近に到達する際に、押出形材に生じる収縮も抑制することが可能となる。
【0031】
かかる形材ユニットであって、前記摺動規制部は、前記金属部材と前記押出形材を接着する接着部であることを特徴とする。
このような形材ユニットによれば、金属部材と押出形材とは接着部により接着されているので、より確実に金属部材と押出形材との摺動を規制することが可能となる。
【0032】
かかる形材ユニットであって、前記摺動規制部は、前記金属部材に設けられた突起が前記押出形材に押圧されている押圧部であることを特徴とする。
このような形材ユニットによれば、金属部材と押出形材とは、金属部材に設けられた突起が押出形材に押圧されることにより摺動が規制されているので、金属製の突起が合成樹脂製の押出形材に噛み込むため、より確実に金属部材と押出形材との摺動を規制することが可能となる。
【0033】
かかる形材ユニットであって、前記摺動規制部による規制力は、前記押出形材の収縮力より大きいことを特徴とする。
このような形材ユニットによれば、摺動規制部による規制力は、押出形材の収縮力より大きいので、温度変化等により押出形材が収縮する場合であっても、摺動規制部の規制力により押出形材の収縮の発生を抑えることが可能となる。
【0034】
かかる形材ユニットであって、前記固定具は、ビスであり、前記金属部材は、前記ビスが挿通される挿通孔を有し、前記挿通孔は、前記ビスが挿通可能であると共に可及的に小さく形成されていることを特徴とする。
このような形材ユニットによれば、金属部材に設けられ、固定具であるビスが挿通される挿通孔は、ビスが挿通可能であると共に可及的に小さく形成されているので、挿通されたビスと挿通孔との間に隙間はほとんど生じない。このため、合成樹脂製の押出形材の伸縮により金属部材に伸縮方向に力が作用しても、挿通孔の内周に接触するビスにより金属部材の移動が規制されるので、摺動規制部により金属部材との摺動が規制されている押出形材の伸縮をより確実に防止することが可能となる。
【0035】
また、上記形材ユニットが、障子が備える框及び躯体に固定される枠体に用いられていることを特徴とする建具である。
このような建具によれば、障子や枠体が温度変化により変形しにくい建具を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1 建具、1a 引違い障子、1b 枠体、3 ビス、
4 接着剤、5 接着部、6 押圧部、10 框、
14 框形材、14a 中空部、15 補強部材、16 板部材、
16a 板挿通孔、16b 突起
図1
図2
図3
図4
図5