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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116279
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】投光器、受光器、及び測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20230815BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20230815BHJP
   G01S 17/894 20200101ALI20230815BHJP
   G01S 17/931 20200101ALN20230815BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
G01S17/894
G01S17/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018999
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本橋 和也
(72)【発明者】
【氏名】林 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 義朗
(72)【発明者】
【氏名】曽根 秀倫
(72)【発明者】
【氏名】春瀬 祐太
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA10
2F112CA05
2F112DA02
2F112DA11
2F112DA19
2F112DA25
2F112DA28
2F112EA05
2F112FA41
5J084AA05
5J084AB01
5J084AB07
5J084AC02
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA06
5J084BA07
5J084BA36
5J084BA39
5J084BA40
5J084BB02
5J084BB04
5J084BB20
5J084BB27
5J084CA03
5J084CA32
5J084EA22
5J084EA31
(57)【要約】
【課題】要求される配光サイズや測定精度に柔軟に対応することが可能な、投光器、受光器、及び測定装置を提供する。
【解決手段】投光器(又は受光器)は、位置関係が固定された第1発光部及び第2発光部(又は第1受光部及び第2受光部)を有する発光ユニット(又は受光ユニット)と、第1発光部から出射する光を第1投光エリアに投光(又は第1受光エリアからの光を第1受光部に集光)する第1投光光学系(又は第1受光光学系)と、第2発光部から出射する光を、第1投光エリアとは異なるエリアを含む第2投光エリアに投光(又は第1受光エリアとは異なるエリアを含む第2受光エリアからの光を第2受光部に集光)する、第1投光光学系(又は第1受光光学系)とは焦点距離が異なる第2投光光学系(又は第2受光光学系)とを含む。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置関係が固定された第1発光部及び第2発光部を有する発光ユニットと、
前記第1発光部から出射する光を第1投光エリアに投光する第1投光光学系と、
前記第2発光部から出射する光を、前記第1投光エリアとは異なるエリアを含む第2投光エリアに投光する、前記第1投光光学系とは焦点距離が異なる第2投光光学系と、
を有する投光器。
【請求項2】
請求項1に記載の投光器であって、
前記第1投光光学系は、その光軸を前記第1発光部の光軸にオフセットさせて設けられる、
投光器。
【請求項3】
請求項1に記載の投光器であって、
前記第1発光部及び前記第2発光部を個別に点灯制御する制御装置を有し、
前記制御装置は、前記第1投光エリアと前記第2投光エリアが重複するエリアについては前記第1発光部と前記第2発光部が同時に点灯しないように制御する、
投光器。
【請求項4】
請求項1に記載の投光器であって、
前記発光ユニットは、第3発光部と、前記第2投光光学系とは焦点距離が異なる第3投光光学系と、を更に有し、
前記第3投光光学系は、前記第3発光部から出射する光を、前記第1投光エリア及び前記第2投光エリアとは異なるエリアを含む第3投光エリアに投光するように設けられ、
前記第2投光エリアは、前記第1投光エリアと前記第3投光エリアの間に配置される、
投光器。
【請求項5】
請求項4に記載の投光器であって、
前記第3投光光学系の光軸は、前記第3発光部の光軸にオフセットさせて設けられる、
投光器。
【請求項6】
請求項4に記載の投光器であって、
前記第1乃至第3投光エリアは重複するエリアを有しない、
投光器。
【請求項7】
請求項4に記載の投光器であって、
前記第2投光光学系は、前記第1投光光学系及び前記第3投光光学系よりも焦点距離が長い、
投光器。
【請求項8】
請求項4に記載の投光器であって、
前記第1発光部乃至前記第3発光部を個別に点灯制御する制御装置を有し、
前記制御装置は、
前記第1投光エリアと前記第2投光エリアが重複するエリアについては、前記第1発光部と前記第2発光部が同時に点灯しないように制御し、
前記第2投光エリアと前記第3投光エリアが重複するエリアについては、前記第2発光部と前記第3発光部が同時に点灯しないように制御する、
投光器。
【請求項9】
請求項1に記載の投光器であって、
前記発光ユニットは、第3発光部を更に有し、
前記第1投光光学系は、前記第1発光部から出射する光を前記第2投光エリアとは異なるエリアを含む第1投光エリアに投光するとともに、前記第2発光部から出射する光を前記第1投光エリア及び前記第2投光エリアとは異なるエリアを含む第3投光エリアに投光するように設けられ、
前記第2投光光学系は、前記第3発光部から出射する光を第2投光エリアに投光するように設けられ、
前記第2投光エリアは、前記第1投光エリアと前記第3投光エリアの間に配置される、
投光器。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の投光器を用いて構成される測定装置であって、
前記投光器と、
前記投光器から投光された光の測定対象からの反射光を受光する受光器と、
を備え、
前記受光器の受光結果に基づき測定対象までの距離を測定する、
測定装置。
【請求項11】
位置関係が固定された第1受光部及び第2受光部を有する受光ユニットと、
第1受光エリアから入射する光を前記第1受光部に集光させる第1受光光学系と、
第1受光エリアとは異なるエリアを含む第2受光エリアから入射する光を前記第2受光部に集光させる、前記第1受光光学系とは焦点距離が異なる第2受光光学系と、
を有する受光器。
【請求項12】
請求項11に記載の受光器であって、
前記第1受光光学系は、その光軸を前記第1受光部の光軸にオフセットさせて設けられる、
受光器。
【請求項13】
請求項11に記載の受光器であって、
前記受光ユニットは、第3受光部と、前記第2受光光学系とは焦点距離が異なる第3受光光学系と、を更に有し、
前記第3受光光学系は、前記第1受光エリア及び前記第2受光エリアとは異なるエリアを含む第3受光エリアからの光を前記第3受光部に集光するように設けられ、
前記第2受光エリアは、前記第1受光エリアと前記第3受光エリアの間に配置される、
受光器。
【請求項14】
請求項13に記載の受光器であって、
前記第3受光光学系の光軸は、前記第3受光部の光軸にオフセットさせて設けられる、
受光器。
【請求項15】
請求項13に記載の受光器であって、
前記第1乃至第3受光エリアは重複するエリアを有しない、
受光器。
【請求項16】
請求項13に記載の受光器であって、
前記第2受光光学系は、前記第1受光光学系及び前記第3受光光学系よりも焦点距離が長い、
受光器。
【請求項17】
請求項11に記載の受光器であって、
前記受光ユニットは、第3受光部を更に有し、
前記第1受光光学系は、前記第1受光エリアから入射する光を前記第2受光部に集光させるとともに、第1受光エリア及び前記第2受光エリアとは異なるエリアを含む第3受光エリアから入射する光を前記第1受光部に集光させるように設けられ、
前記第2受光光学系は、前記第2受光エリアから入射する光を前記第3受光部に入射するように設けられ、
前記第2受光エリアは、前記第1受光エリアと前記第3受光エリアの間に配置される、
受光器。
【請求項18】
請求項11~17のいずれか一項に記載の受光器を用いて構成される測定装置であって、
投光器と、
前記投光器から投光された光の測定対象からの反射光を受光する前記受光器と、
を備え、
前記受光器の受光結果に基づき測定対象までの距離を測定する、
測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投光器、受光器、及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
AD(Autonomous Driving:自動運転)やADAS(Advanced Driver Assistance System:先進運転支援システム)の進展に伴い、周囲環境の把握や自己位置推定に用いる測定装置の一つとして、投光光(照射光、光ビーム(レーザ光))を対象物に照射する投光器と、投光光が測定対象物に反射して戻ってくる反射光(戻り光)を受光する受光器とを備え、投光器が投光光を出射したタイミングと受光器が反射光を受光したタイミングの差に基づき対象物までの距離を測定して対象物に関する情報を提供する測定装置であるLiDAR(Light Detection and Ranging)の研究/開発が進められている。
【0003】
対象物の形状把握等を目的として多点観測を行うLiDARの種別の一つとして、フラッシュLiDAR(Flash LiDAR)がある。フラッシュLiDARは、モータやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)といった機械的な構成を含まず、ADやADASの実現のために車載目的で利用される場合等、耐久性が要求される分野におけるLiDARの有力候補として注目されている。
【0004】
特許文献1には、車両に実装されるLIDARシステムについて記載されている。LIDARシステムは、標的場面に向かって光源によって生成された光ビームを投影する照明器(レーザプロジェクタ)、物体から反射する光を受信する受信機、物体についての距離情報を反射光から算出するコントローラ(プロセッサ)、所望の範囲及び視野(FOV(Field Of View)を横断して光の特定のパターンを走査する要素を含む。受信機及びコントローラは、受信された信号光をLIDARシステム範囲及びFOV内にある周囲環境の点毎3Dマップを表す測定値に変換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2020-527724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フラッシュLiDARの投光器の配光のサイズ(FOV(Field Of View):視野角、ビームプロファイル)は、投光器の発光部のサイズと、投光光を調節する光学系(以下、「投光光学系」と称する。)の焦点距離によって決まる。また、フラッシュLiDARの受光器の配光のサイズ(以下、「配光サイズ」と称する。)は、受光器の受光部のサイズと反射光を受光部に集光する光学系(以下、「受光光学系」と称する。)の焦点距離によって決まる。そのため、特定の目的にフラッシュLiDARを適用する際は、実現される配光サイズが適用先のシステムで要求される仕様を満たすようにする必要がある。
【0007】
ここで配光サイズを調節する方法として、例えば、複数のフラッシュLiDARを並設することが考えられる。しかしその場合、部品点数やコストの増大が課題となる。また、例えば、特定の視野範囲(投光エリア、受光エリア)についての測定精度を高めたい(遠方視認性を向上させたい)といったニーズにも柔軟に対応する必要がある。
【0008】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、要求される配光サイズや測定精度に柔軟に対応することが可能な、投光器、受光器、及び測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の一つは、位置関係が固定された第1発光部及び第2発光部を有する発光ユニットと、前記第1発光部から出射する光を第1投光エリアに投光する第1投光光学系と、前記第2発光部から出射する光を、前記第1投光エリアとは異なるエリアを含む第2投光エリアに投光する、前記第1投光光学系とは焦点距離が異なる第2投光光学系と、を有する。
【0010】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、要求される配光サイズや測定精度に柔軟に対応することが可能な、投光器、受光器、及び測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】測定装置の概略的な構成を示す図である。
図2A】発光部及び投光光学系と投光エリアとの関係を説明する図である。
図2B】受光部及び受光光学系と受光エリアとの関係を説明する図である。
図3A】発光ユニット及び投光光学系と投光エリアとの関係を説明する図である。
図3B】発光ユニット及び投光光学系と投光エリアとの関係を説明する図である。
図3C】発光ユニット及び投光光学系と投光エリアとの関係を説明する図である。
図3D】発光ユニット及び投光光学系と投光エリアとの関係を説明する図である。
図3E】発光ユニット及び投光光学系と投光エリアとの関係を説明する図である。
図4A】受光ユニット及び受光光学系と受光エリアとの関係を説明する図である。
図4B】受光ユニット及び受光光学系と受光エリアとの関係を説明する図である。
図4C】受光ユニット及び受光光学系と受光エリアとの関係を説明する図である。
図4D】受光ユニット及び受光光学系と受光エリアとの関係を説明する図である。
図4E】受光ユニット及び受光光学系と受光エリアとの関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、以下の説明において、同一の又は類似する構成について共通の符号を付して重複した説明を省略することがある。
【0014】
[第1実施形態]
<測定装置>
図1に、一実施形態として示す測定装置100の概略的な構成(ブロック図)を示している。例示する測定装置100は、フラッシュLiDAR(Flash Light Detection and Ranging)としての機能を含み、投光光(照射光、光ビーム(レーザ光))を対象物に照射する投光器と、投光光が測定対象物に反射して戻ってくる反射光(戻り光)を受光する受光器とを備える。測定装置100は、投光器が投光光を出射したタイミングと受光器が反射光を受光したタイミングとの差(レーザ光の飛行時間。以下、「TOF」(Time Of Flight)と称する。)を測定して対象物に関する情報を提供する。
【0015】
測定装置100は、例えば、AD(Autonomous Driving:自動運転システム)やADAS(Advanced Driver Assistance System:先進運転支援システム)が実装される車両に搭載される。測定装置100は、例えば、人、車両、物体の検出を補助するとともに、車両の運転者や車両の周囲に存在する者の安全確保、車両の運転中に周囲に存在する物体に与える損傷を低減するために有用な各種の情報を提供する。
【0016】
同図に示すように、例示する測定装置100は、発光ユニット11、投光制御装置112、電流源113、投光光学系14、受光光学系15、受光ユニット16、TOF測定装置117、演算装置150、及び通信I/F160を含む。このうち、発光ユニット11、投光制御装置112、電流源113、及び投光光学系14は、前述した投光器を構成し、受光光学系15及び受光ユニット16は、前述した受光器を構成する。
【0017】
投光器を構成する発光ユニット11は、互いの位置関係が固定されて配置された複数の発光部111を有する。ここで「互いの位置関係が固定されている」とは、例えば、複数の発光部111が同じ部材(半導体基板等)に固定されていることをいう。
【0018】
発光部111は、例えば、面発光タイプのレーザ発光素子(例えば、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)。以下、「面発光素子」と称する。))や、複数の面発光素子が一次元的又は二次元的に基板(半導体基板、セラミック基板等)に配置された面発光素子アレイ(例えば、VCSELアレイ)である。
【0019】
投光制御装置112は、発光部111の面発光素子の駆動電流を供給する電流源113を制御するための制御信号を生成して電流源113に入力することにより、電流源113から面発光素子に供給される電流(駆動電流)を制御する。また、投光制御装置112は、発光ユニット11の面発光素子が発光したタイミング(投光光が面発光素子から出射したタイミング。以下、「投光タイミング」と称する。)を示す信号をTOF測定装置117に入力する。投光制御装置112は、例えば、発光ユニット11の面発光素子の夫々に流す電流のオンオフを周期的に繰り返す制御を行うことにより、面発光素子を周期的に繰り返し発光させる。
【0020】
電流源113は、投光制御装置112から入力される制御信号に応じた電流を発光部111の面発光素子に供給する。電流源113は、例えば、面発光素子の夫々に流す電流をオンオフするための周期的な方形波の電流を面発光素子に供給する。
【0021】
投光光学系14は、例えば、発光ユニット11から出射する投光光に光学的な作用(屈折、散乱、回折等)を与えることにより投光光の配光を調節する。投光光学系14は、例えば、コリメートレンズ等の各種レンズ、回折格子、反射鏡(ミラー)等の光学部品を用いて構成される。
【0022】
受光光学系15は、対象物50から戻ってくる反射光を受光ユニット16の受光部161に集光する。受光光学系15は、例えば、集光レンズ等の各種レンズ、波長フィルタ等の各種フィルタ、反射鏡(ミラー)等の光学部品を用いて構成される。
【0023】
受光ユニット16は、互いの位置関係が固定されて配置された複数の受光部161を有する。尚、「互いの位置関係が固定されている」とは、例えば、複数の受光部161が同じ部材(半導体基板等)に固定配置されていることをいう。
【0024】
受光部161は、例えば、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)、フォトダイオード、バランス型光検出器等の光検出器を用いて構成される。受光部161は、受光光学系15から入射する反射光を光電変換することにより、反射光の強度に応じた電流(以下、「受光電流」と称する。)を生成する。受光部161は、反射光を受光したタイミング(以下、「受光タイミング」と称する。)を示す信号、及び生成した受光電流を、TOF測定装置117に入力する。
【0025】
TOF測定装置117は、投光制御装置112から入力される投光タイミングを示す信号と受光部161から入力される受光タイミングを示す信号とに基づきTOFを求める。TOF測定装置117は、例えば、TDC(Time to Digital Converter)回路を搭載した時間測定IC(集積回路:Integrated Circuit)を用いて構成される。TOF測定装置117は、求めたTOFと受光部161から入力された受光電流を、演算装置150に入力する。
【0026】
演算装置150は、プロセッサ(CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)等)を用いて構成される。演算装置150は、TOF測定装置117から入力される受光電流やTOFに基づき、対象物50の検出や測距等の各種測定に用いる情報を生成する。上記情報は、例えば、時間相関単一光子計数法(Time Correlated Single Photon Counting)で用いるヒストグラム(histogram)、対象物50の各点(ポイント)までの距離、ポイントクラウド(点群情報:point cloud)等である。また、演算装置150は、投光制御装置112や受光ユニット16を制御する。演算装置150は、例えば、投光制御装置112や受光ユニット16を制御することにより、ヒストグラムの生成にかかる処理が高速化もしくは最適化されるように、前述した投光タイミングや受光タイミングを制御する。演算装置150によって生成された情報は、通信I/F160(I/F:Interface)を介して当該情報を利用する装置(以下、「各種利用装置40」と称する。)に提供(送信)される。
【0027】
各種利用装置40は、例えば、ポイントクラウドによる環境地図の作成、スキャンマッチングアルゴリズム(NDT(Normal Distributions Transform)、ICP(Iterative Closest Point)等)を用いた自己位置推定(SLAM(Simultaneous Localization and Mapping))等を行う。
【0028】
図2Aは、発光部111及び投光光学系14と、これらによって形成される投光エリア(以下、「投光エリア51」と称する。)との関係を説明する模式図である。投光エリア51は、発光部111のサイズ(形状、大きさ)と、投光光学系14の焦点距離とによって決まる。また、測定装置100の測定精度(分解能。例えば、対象物50までの距離の測定精度)は、投光光学系14の焦点距離に応じて決まり、焦点距離が長い程、測定精度は向上する。但し、投光光学系14の焦点距離が長くなる程、投光エリア51は狭くなる。
【0029】
図2Bは、受光部161及び受光光学系15と、これらによって形成される受光エリア(以下、「受光エリア52」と称する。)との関係を説明する模式図である。同図に示すように、受光エリア52は、受光部161のサイズ(形状、大きさ)と、受光光学系15の焦点距離とによって決まる。また、測定装置100の測定精度(分解能。例えば、対象物50までの距離の測定精度)は、受光光学系15の焦点距離に応じて決まり、焦点距離が長い程、測定精度は向上する。但し、受光光学系15の焦点距離が長くなる程、受光エリアは狭くなる。
【0030】
このように、投光エリア51や受光エリア52のサイズは、発光部111のサイズや受光部161のサイズによって制約されるため、発光部111や受光部161として、例えば、既製品を利用しようとした場合、投光エリア51乃至受光エリア52は必ずしも測定装置100の目的や用途に一致しない。また、測定装置100の目的や用途によっては、特定の視野範囲(投光エリア、受光エリア)の測定精度を他の視野範囲よりも高めたい(例えば、フラッシュLiDARをADやADASに適用した場合に対向車線の遠方等の特定の視野範囲における測定精度を高めたい場合等)といったニーズがあるが、こうしたニーズにも柔軟に対応する必要がある。
【0031】
そこで、本実施形態の測定装置100においては、投光器及び受光器を以下に説明する構成とすることにより上記の課題やニーズへの対応を図っている。
【0032】
<投光器>
図3Aは、本実施形態の測定装置100における投光器の要素(発光ユニット11及び投光光学系14)と、当該投光器によって形成される投光エリア51との関係を説明する模式図である。同図では、説明の便宜上、投光器の要素(発光ユニット11及び投光光学系14)についてはこれらを発光部111の光軸に垂直な方向から眺めた図(+y側から眺めた図)とし、また、投光エリアについては上記光軸の方向から眺めた図(-z側から眺めた図)としている。同図に示す矢線は、発光部111と投光エリア51の対応を示している(図3B図3Eについても同様)。尚、同図では発光ユニット11のサイズを誇張して描いており、通常は投光エリア51のサイズに比べて発光ユニット11のサイズは十分に小さい。
【0033】
同図に示すように、例示する投光器は、互いの位置関係が固定された3つの発光部(第1発光部111a、第2発光部111b、第3発光部111c)を有する発光ユニット11と、3つの投光光学系14(第1投光光学系14a、第2投光光学系14b、第3投光光学系14c)とを含む。
【0034】
第1投光光学系14aは、第1発光部111aから出射する光ビームを第1投光エリア51aに配光する。図中、一点鎖線は、発光部111又は投光光学系14の光軸を表す。
【0035】
同図に示すように、第1投光光学系14aは、その光軸を第1発光部111aの光軸に対してオフセットさせて配置されている。本例では、第1投光光学系14aの光軸を、第1発光部111aの光軸よりも第2発光部111bから離間する側(-x方向)にオフセットさせている。このように第1投光光学系14aの光軸を第1発光部111aの光軸に対してオフセットさせることで、オフセットさせない場合に比べて第1投光エリア51aをx軸に沿って拡げることができる。
【0036】
第2投光光学系14bは、第2発光部111bから出射する光ビームを、第1投光エリア51aとは異なるエリアを含む第2投光エリア51bに配光する。尚、本例では、第1投光エリア51aの端部付近と第2投光エリア51bの端部付近とが重なるようにしている。このように隣接するエリアが一部重なるようにすることで、発光ユニット11の製造時の誤差や発光ユニット11を車両等に搭載した際に生じる誤差等により第1投光エリア51aと第2投光エリア51bとの間に不感エリア(測定不能エリア)が生じてしまうのを防ぐことができる。
【0037】
第3投光光学系14cは、第3発光部111cから出射する光ビームを、第1投光エリア51a及び第2投光エリア51bとは異なるエリアを含む第3投光エリア51cに配光する。尚、本例では、第2投光エリア51bの端部付近と第3投光エリア51cの端部付近とが重なるようにしている。このように隣接するエリアが一部重なるようにすることで、発光ユニット11の製造時の誤差や発光ユニット11を車両等に搭載する際に生じる誤差により第2投光エリア51bと第3投光エリア51cとの間に不感エリア(測定不能エリア)が生じるのを防ぐことができる。
【0038】
尚、重複する投光エリア51については、投光制御装置112が、例えば、いずれか一方の発光部111のみを点灯させる制御を行うことで、重複しない投光エリアと投光光の強度の均一化を図ることができるとともに、電力消費を抑えることもできる。
【0039】
同図に示すように、第3投光光学系14cは、その光軸を第3発光部111cの光軸に対してオフセットさせて配置されている。本例では、第3投光光学系14cの光軸を、第3発光部111cの光軸よりも第2発光部111bから離間する側(+x方向)にオフセットさせている。このように第3投光光学系14cの光軸を第3発光部111cの光軸に対してオフセットさせることで、オフセットさせない場合に比べて第3投光エリア51cをx軸に沿って拡げることができる。
【0040】
同図に示すように、本例では、第2投光エリア51bは、第1投光エリア51aと第3投光エリア51cの間に存在する。また、第2投光光学系14bは、第1投光光学系14a及び第3投光光学系14cとは焦点距離が異なる。本例では、第2投光光学系14bの焦点距離を第1投光光学系14a及び第3投光光学系14cよりも長く設定している。このため、第2投光エリア51bについては、第1投光エリア51a及び第3投光エリア51cよりも測定精度が高くなる。これにより、例えば、測定装置100の有効測定距離を長く(より遠方まで精度を確保可能にする)ことができる。尚、本例では、第2投光光学系14bの焦点距離を第1投光光学系14a及び第3投光光学系14cよりも長く設定しているが、適用先で要求される仕様に応じて各投光光学系の焦点距離は任意に設定してよい。
【0041】
以上のように、例示する投光器によれば、互いの位置関係が固定された複数の発光部111を有する一つの発光ユニット11を用いて投光エリア51を拡げることができる。このため、例えば、複数の発光部111が一次元的もしくは二次元的に配置された市販の発光ユニット11を用い、測定装置100の適用先で要求される仕様を満たすように少ない部品点数でコストを抑えつつ配光を調節することができる。また、発光部111の集積度の高い発光ユニット11を用いて広い投光エリアを実現することができるため、測定装置100の小型化を図ることができる。また、投光光学系14の焦点距離を個別に設定することで、特定の投光エリア51の測定精度を他の投光エリア51よりも高めたいといったニーズにも柔軟かつ容易に対応することができる。また、発光部111a~111c毎に投光光学系14a~14cを設けているので、投光光学系14a~14cを相互に干渉しない位置関係で配置することができる。
【0042】
ところで、図3Aの例では、第1投光エリア51aの一部及び第3投光エリア51cの一部が第2投光エリア51bと重なるようにしているが、例えば、図3Bに示すように、第2投光エリア51bの全体が、第1投光エリア51a及び第3投光エリア51cの少なくともいずれかに重なるようにしてもよい。
【0043】
また、測定装置100の製造時の誤差や車両等への適用先への搭載時の誤差が問題にならない場合には、例えば、図3Cに示すように、各投光エリア51が重ならないようにしてもよい。この場合は投光エリアをより広く(最大限に)することができる。
【0044】
また、以上の例では、発光部111と投光光学系14とを一対一で設けているが、複数の発光部111の配光を同じ投光光学系14で行うようにしてもよい。例えば、図3Dは、図3Aと同様の配光を、3つの発光部111(第1発光部111a、第2発光部111b、第3発光部111c)と2つの投光光学系14(第1投光光学系14a、第2投光光学系14b)とによって実現した場合である。また、図3Eは、図3C同様の配光を、上記3つの発光部111と上記2つの投光光学系14(第1投光光学系14a、第2投光光学系14b)で実現した場合である。
【0045】
これらの例では、第1発光部111aと第2発光部111bから出射する光ビームの配光を、1つの第1投光光学系14aを用いて行っており、第1投光光学系14aにより第1投光エリア51aと第3投光エリア51cが形成されている。また、第3発光部111cから出射する光ビームの配光については、第1投光光学系14aとは焦点距離が異なる第2投光光学系14bにより行っており、第2投光光学系14bにより第2投光エリア51bが形成されている。このような構成とすることで、投光光学系の点数を減らすことができ、測定装置100の小型化やコストダウンを図ることができる。
【0046】
<受光器>
図4Aは、本実施形態の測定装置100における受光器の要素(受光ユニット16及び受光光学系15)と、当該受光器によって形成される受光エリアとの関係を説明する模式図である。同図では、説明の便宜上、受光器の要素(受光ユニット16及び受光光学系15)についてはこれらを受光部161の光軸に垂直な方向から眺めた図(+y側から眺めた図)とし、また、受光エリアについては上記光軸の方向から眺めた図(-z側から眺めた図)としている。同図に示す矢線は、受光部161と受光エリア52の対応を示している(図4B図4Eについても同様)。尚、同図では受光ユニット16のサイズを誇張して描いており、通常は受光エリア52のサイズに比べて受光ユニット16のサイズは十分に小さい。
【0047】
同図に示すように、受光器は、互いの位置関係が固定された3つの受光部(第1受光部161a、第2受光部161b、第3受光部161c)を有する受光ユニット16と、3つの受光光学系15(第1受光光学系15a、第2受光光学系15b、第3受光光学系15c)とを含む。
【0048】
本例において、第1受光光学系15aは、第1受光エリア52aからの反射光を第1受光部161aに集光する。図中、一点鎖線は、受光部161又は受光光学系15の光軸を表す。
【0049】
同図に示すように、第1受光光学系15aは、その光軸を第1受光部161aの光軸に対してオフセットさせて配置されている。本例では、第1受光光学系15aの光軸を、第1受光部161aの光軸よりも第2受光部161bから離間する側(-x方向)にオフセットさせている。このように第1受光光学系15aの光軸を第1受光部161aの光軸に対してオフセットさせることで、オフセットさせない場合に比べて第1受光エリア52aをx軸に沿って拡げることができる。
【0050】
第2受光光学系15bは、第1受光エリア52aとは異なるエリアを含む第2受光エリア52bからの反射光を第2受光部161bに集光する。尚、本例では、第1受光エリア52aの端部付近と第2受光エリア52bの端部付近とが重なるようにしている。このように隣接するエリアが一部重なるようにすることで、受光ユニット16の製造時の誤差や受光ユニット16を車両等に搭載した際に生じる誤差等により第1受光エリア52aと第2受光エリア52bとの間に不感エリア(測定不能エリア)が生じてしまうのを防ぐことができる。
【0051】
第3受光光学系15cは、第1受光エリア52a及び第2受光エリア52bとは異なるエリアを含む第3受光エリア52cからの反射光を第3受光部161cに集光する。尚、本例では、第2受光エリア52bの端部付近と第3受光エリア52cの端部付近とが重なるようにしている。このように隣接するエリアが一部重なるようにすることで、受光ユニット16の製造時の誤差や受光ユニット16を車両等に搭載する際に生じる誤差により第2受光エリア52bと第3受光エリア52cとの間に不感エリア(測定不能エリア)が生じるのを防ぐことができる。
【0052】
同図に示すように、第3受光光学系15cは、その光軸を第3受光部161cの光軸に対してオフセットさせて配置されている。本例では、第3受光光学系15cの光軸を、第3受光部161cの光軸よりも第2受光部161bから離間する側(+x方向)にオフセットさせている。このように第3受光光学系15cの光軸を第3受光部161cの光軸に対してオフセットさせることで、オフセットさせない場合に比べて第3受光エリア52cをx軸に沿って拡げることができる。
【0053】
同図に示すように、本例では、第2受光エリア52bは、第1受光エリア52aと第3受光エリア52cの間に存在する。また、第2受光光学系15bは、第1受光光学系15a及び第3受光光学系15cとは焦点距離が異なる。本例では、第2受光光学系15bの焦点距離を第1受光光学系15a及び第3受光光学系15cよりも長く設定している。このため、第2受光エリア52bについては、第1受光エリア52a及び第3受光エリア52cよりも測定精度が高くなる。これにより、例えば、測定装置100の有効測定距離を長く(より遠方まで精度を確保可能にする)ことができる。尚、本例では、第2受光光学系15bの焦点距離を第1受光光学系15a及び第3受光光学系15cよりも長く設定しているが、各受光光学系の焦点距離は、適用先で要求される仕様に応じて任意に設定してよい。
【0054】
以上のように、例示する受光器によれば、位置関係が固定された複数の受光部161を有する一つの受光ユニット16を用いて受光エリア52を拡げることができる。このため、例えば、複数の受光部161が一次元的もしくは二次元的に配置された市販の受光ユニット16を用い、測定装置100の適用先で要求される仕様を満たすように少ない部品点数でコストを抑えつつ配光を調節することができる。また、受光部161の集積度の高い受光ユニット16を用いて広い受光エリアを実現することができるため、測定装置100の小型化を図ることができる。また、受光光学系の焦点距離を個別に設定することで、特定の受光エリアの測定精度を他の受光エリアよりも高めたいといったニーズにも柔軟かつ容易に対応することができる。また、受光部161a~161c毎に受光光学系15a~15cを設けているので、受光光学系15a~15cを相互に干渉しない位置関係で配置することができる。
【0055】
ところで、図4Aの例では、第1受光エリア52aの一部及び第3受光エリア52cの一部が第2受光エリア52bと重なるようにしているが、例えば、図4Bに示すように、第2受光エリア52bの全体が、第1受光エリア52a及び第3受光エリア52cの少なくともいずれかに重なるようにしてもよい。
【0056】
また、測定装置100の製造時の誤差や車両等への適用先への搭載時の誤差が問題にならない場合には、例えば、図4Cに示すように、各受光エリア52が重ならないようにしてもよい。この場合は受光エリアをより広く(最大限に)することができる。
【0057】
また、以上の例では、受光部161と受光光学系15とを一対一で設けているが、複数の受光部161の集光を同じ受光光学系15で行うようにしてもよい。例えば、図4Dは、図4Aと同様の集光を、3つの受光部161(第1受光部161a、第2受光部161b、第3受光部161c)と2つの投光光学系14(第1受光光学系15a、第2受光光学系15b)とによって実現した場合である。また、図4Eは、図4Cと同様の集光を、上記3つの受光部161と上記2つの受光光学系15(第1受光光学系15a、第2受光光学系15b)で実現した場合である。
【0058】
これらの例では、第1受光エリア52a及び第3受光エリア52cからの反射光の第1受光部161a及び第3受光部161cへの集光を1つの第1受光光学系15aにより行っている。また、第2受光エリア52bからの反射光の第2受光部161bへの集光を第1受光光学系15aとは焦点距離が異なる第2受光光学系15bにより行っている。これにより受光光学系の点数を減らすことができ、測定装置100の小型化やコストダウンを図ることができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態につき詳述したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために構成を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施形態の構成の一部について、他の構成に追加、削除、置換することが可能である。
【0060】
例えば、以上では、3つの投光エリア(もしくは3つの受光エリア)を構成する場合を説明したが、本発明は、2つの投光エリア(もしくは2つの受光エリア)を構成する場合や、4つ以上の投光エリア(もしくは4つ以上の受光エリア)を構成する場合にも適用することができる。
【0061】
また、例えば、以上に説明した投光器及び受光器の新たな仕組みは、双方の仕組みを測定装置100に採用してもよいし、いずれか一方の仕組みのみを採用してもよい。
【符号の説明】
【0062】
50 対象物、51a 第1投光エリア、51b 第2投光エリア、51c 第3投光エリア、52a 第1受光エリア、52b 第2受光エリア、52c 第3受光エリア、100 測定装置、11 発光ユニット、111 発光部、112 投光制御装置、113 電流源、14 投光光学系、15 受光光学系、16 受光ユニット、161 受光部、117 TOF測定装置、150 演算装置、160 通信I/F、40 各種利用装置


図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E