(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116280
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】投光器、及び測定装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/484 20060101AFI20230815BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20230815BHJP
【FI】
G01S7/484
G01S17/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019000
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本橋 和也
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AB01
5J084AB07
5J084AC02
5J084BA03
5J084BA07
5J084BA12
5J084CA11
5J084CA12
5J084EA29
(57)【要約】
【課題】レーザ光による人体への影響を低減しつつ、フレームレート(スキャンスピード)の低下を防ぐことが可能な、投光器及び測定装置を提供する。
【解決手段】投光器は、個別に点灯/消灯を制御可能な複数のレーザ光源を備えた発光部と、レーザ光源の夫々の点灯/消灯を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、夫々を同時に点灯させた際に人の目に入射する可能性のあるレーザ光のエネルギーの総量が予め設定された閾値以下となるようなレーザ光源の2つ以上の組合せを同時に点灯させる。制御装置は、例えば、隣接するレーザ光源を同時に点灯させないように複数のレーザ光源を同時に点灯させる。発光部は、例えば、複数の面発光素子が一次元的又は二次元的に配列された面発光素子アレイである。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別に点灯/消灯を制御可能な複数のレーザ光源を備えた発光部と、
前記レーザ光源の夫々の点灯/消灯を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、夫々を同時に点灯させた際に人の目に入射する可能性のあるレーザ光のエネルギーの総量が予め設定された閾値以下となるような前記レーザ光源の2つ以上の組合せを同時に点灯させる、
投光器。
【請求項2】
請求項1に記載の投光器であって、
前記制御装置は、観察機器を用いた覗き込みによる人体への被曝量が予め設定された閾値以下となるように、同時に点灯させる前記複数のレーザ光源を選択する、
投光器。
【請求項3】
請求項1に記載の投光器であって、
前記制御装置は、裸眼による覗き込みによる人体への被曝量が予め設定された閾値以下となるように、同時に点灯させる前記複数のレーザ光源を選択する、
投光器。
【請求項4】
請求項1に記載の投光器であって、
前記制御装置は、隣接する前記レーザ光源を同時に点灯させないように複数の前記レーザ光源を同時に点灯させる、
投光器。
【請求項5】
請求項4に記載の投光器であって、
前記制御装置は、前記レーザ光源の一つ以上おきの組合せを同時に点灯させる、
投光器。
【請求項6】
請求項1に記載の投光器であって、
前記発光部を構成する複数の前記レーザ光源を、隣接する複数の前記レーザ光源を要素とする複数のグループに分類し、隣接する2つの前記グループの面発光素子を同時に点灯させないように、複数の前記グループの前記レーザ光源を同時に点灯させる、
投光器。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の投光器であって、
前記発光部は、前記レーザ光源である面発光素子を一次元的又は二次元的に配列した構造を有する面発光素子アレイである、
投光器。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の投光器を用いて構成される測定装置であって、
前記投光器と、
前記投光器から投光された光の反射光を受光する受光器と、
を備え、
前記受光器の受光結果に基づき検知対象までの距離を計測する、
測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投光器、及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
AD(Autonomous Driving:自動運転)やADAS(Advanced Driver Assistance System:先進運転支援システム)の進展に伴い、周囲環境の把握や自己位置推定に用いる測定装置の一つとしてLiDAR(Light Detection and Ranging)と称する。)の研究/開発が進められている。LiDARは、投光光(照射光、光ビーム(レーザ光))を対象物に照射する投光器(照射器)と、投光光が測定対象物に反射して戻ってくる反射光(戻り光)を受光する受光器とを備え、投光器が投光光を出射したタイミングと受光器が反射光を受光したタイミングとの差(レーザ光の飛行時間。以下、「TOF」(Time Of Flight)と称する。)に基づき対象物までの距離を取得する。
【0003】
LiDARの投光器から照射されるレーザ光は、発光面積が小さくエネルギー密度が高いため人体に有害となる場合がある。我が国では日本工業規格(JIS:Japanese Industrial Standards)に「レーザ製品の放射安全基準」が定められており(JIS C 6802)、LiDARは、投光器から照射(投光)されるレーザ光が、上記規格において定められた条件を満たすように設計する必要がある。
【0004】
特許文献1には、レーザ光源のパラメータ(目の安全性のための照射範囲、繰り返しレート、デューティサイクル、パルス電力、動作温度への参照等)間のバランスを柔軟に調整することを目的として構成されたLIDARシステムについて記載されている。LIDARシステムは、複数の角度領域から、第1レーザパルスを特定の角度領域に放射するレーザスキャナのレーザ光源を作動させ、第1レーザパルスの反射に基づきLIDAR測定を行い、LIDAR測定に基づきレーザスキャナのスキャンパラメータを変更し、第2レーザパルスを特定の角度領域に放射するレーザスキャナのレーザ光源の選択的作動を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
LiDARの種別の一つとして、フラッシュLiDAR(Flash LiDAR)がある。フラッシュLiDARは、モータやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)といった機械的な構成を含まず、ADやADASの実現のために車載目的で利用される場合等、耐久性が要求される分野におけるLiDARの有力候補として注目されている。
【0007】
ところで、例えば、
図6(a)に示すように、フラッシュLiDARの光源60を発光させ投光対象エリア61(FOV(Field Of View))の全体に同時にレーザ光を照射しようとして光源60の全体(例えば、光源の全ての発光素子601)を同時に点灯させる制御を行った場合、
図6(b)に示すように、人の目に入射する可能性のあるレーザ光の強度(出力、光密度)が上記規格に基づく閾値(安全値、上限値、許容値等)を超える可能性が高くなる。また、対向車線の遠方に存在する車両を測定する場合等、長距離の測定が必要な場合は強度の高いレーザ光を照射する必要あり、人体への影響を如何に防ぐかが課題となる。尚、
図6(b)は、上記制御を示すグラフであり、横軸を時間、縦軸を発光素子601の発光強度として、投光量(投光光のエネルギー)と被曝量(人が被爆するエネルギー)の大きさを模式的に示したものである。
【0008】
上記の課題を解決する方法の一つとして、例えば、
図7(a)に示すように、光源60として個別に点灯/消灯の制御(オンオフ制御)が可能な複数(同図では4つ)の発光素子601を備えたもの(例えば、アドレッサブルVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)アレイ)を用いることが考えられる。この場合、個々の発光素子601a~601dの投光対象エリア61a~61dが異なるように設定し、個々の発光素子601a~601dを夫々順次点灯(時間をずらして点灯)させるようにすることで、投光対象エリア61の全体にレーザ光を照射することができるとともに人体への影響を低減することができる。
【0009】
しかし上記の方法では発光素子601a~601dの点灯/消灯回数(オンオフ回数)が必然的に増加するため、
図7(b)に示すように、
図6(a)に示した方法に比べてフレームレート(投光対象エリア61a~61d全体のスキャンスピード)の確保が難しくなるという課題がある。
【0010】
特許文献1には、目の安全性確保のための照射範囲をレーザ光源のパラメータとして考慮して他のパラメータとのバランスを調整することが記載されている。しかしフレームレートの低下を防ぐ方法についてはとくに記載されていない。
【0011】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、レーザ光による人体への影響を低減しつつ、フレームレートの低下を防ぐことが可能な、投光器、及び測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明の一つは、投光器であって、個別に点灯/消灯を制御可能な複数のレーザ光源を備えた発光部と、前記レーザ光源の夫々の点灯/消灯を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、夫々を同時に点灯させた際に人の目に入射する可能性のあるレーザ光のエネルギーの総量が予め設定された閾値以下となるような前記レーザ光源の2つ以上の組合せを同時に点灯させる。
【0013】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、レーザ光による人体への影響を低減しつつ、フレームレート(スキャンスピード)の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】測定装置の概略的な構成を説明する図である。
【
図2】発光部の一例として示す面発光素子アレイの平面図である。
【
図3】(a)は、投光制御装置による面発光素子の制御の説明に用いる投光器の構成例を示す模式図であり、(b)は、投光制御装置による発光部の制御の一例を示すグラフである。
【
図4】(a)~(c)は、同時に点灯させる面発光素子の組合せの例を示す模式図である。
【
図5】(a)は、「測定条件1」の場合における、面発光素子が開口絞りを見込む角の算出方法を説明する図であり、(b)は、「測定条件3」の場合における、面発光素子が開口絞りを見込む角の算出方法を説明する図である。
【
図6】(a)は、発光素子の制御の説明に用いる投光器の構成例を示す模式図であり、(b)は、光源の制御の一例を示すグラフである。
【
図7】(a)は、発光素子の制御の説明に用いる投光器の構成例を示す模式図であり、(b)は、光源の制御の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、以下の説明において、同一の又は類似する構成について共通の符号を付して重複した説明を省略することがある。
【0017】
図1に、一実施形態として示す測定装置100の概略的な構成(ブロック図)を示している。例示する測定装置100は、AD(Autonomous Driving:自動運転システム)やADAS(Advanced Driver Assistance System:先進運転支援システム)が実装される車両等に搭載されるフラッシュLiDAR(Flash Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)である。
【0018】
測定装置100は、測定エリアに向けて照射(投光)した光ビームが対象物50で反射し、その反射光(戻り光、散乱光)が戻ってくるまでの時間(以下、「TOF」(Time Of Flight)と称する。)を測定することにより、対象物50までの距離を測定する。
【0019】
以下の説明において、測定装置100が対象物50に向けて照射する光ビーム(照射光)のことを「投光光」と、また、投光光が対象物50に反射して戻ってくる光のことを「反射光」と称する。
【0020】
測定装置100は、例えば、人、車両、物体等の検出を補助するとともに、車両の運転者や車両の周囲に存在する者の安全確保や、車両の運転中に周囲に存在する物体に与える損傷を低減するために有用な各種の情報を提供する。
【0021】
同図に示すように、例示する測定装置100は、発光部111、投光制御装置112、電流源113、投光光学系114、受光光学系115、受光部116、TOF測定装置117、演算装置150、及び通信I/F160の各構成を含む。このうち、発光部111、投光制御装置112、電流源113、及び投光光学系114は、投光光を生成する「投光器」を構成する。また、受光光学系115及び受光部116は、反射光を受光する「受光器」を構成する。
【0022】
発光部111は、一次元的又は二次元的に基板(半導体基板、セラミック基板等)に配置された複数の面発光タイプのレーザ光源(例えば、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)。以下、「面発光素子10」と称する。))を有し、個々の面発光素子10を独立してオンオフ制御することが可能な面発光素子アレイ(アドレッサブルVCSELアレイ)を用いて構成される。面発光素子10は、投光光となる光ビーム(レーザ光)を生成する。
【0023】
図2は、発光部111の一例として示す面発光素子アレイの平面図である。例示する面発光素子アレイは、基板22の一方の面に正方格子状に配列された複数の面発光素子10を有する。同図において、複数の面発光素子10は、いずれもその放出方向(光軸)を紙面に対して垂直方向(同図に示す+z方向)に向けて設けられている。例示する面発光素子アレイには、面発光素子10を発光させるための電流(駆動電流)を電流源113から供給するための複数の電流供給線23が電気的に接続されている。
【0024】
尚、面発光素子アレイにおける面発光素子10の配置形態は同図に示すものに必ずしも限定されず、例えば、斜方格子状、三角格子状、正方格子状、矩形格子状、六角格子状等であってもよい。また、面発光素子10は必ずしも基板22上に二次元的に配列されるものでなくてもよく、基板22上に一次元的に配列されていてもよい。
【0025】
図1に戻り、投光制御装置112は、発光部111の面発光素子10の駆動電流を供給する電流源113を制御するための制御信号を生成して電流源113に入力することにより、電流源113から面発光素子10に供給される電流(駆動電流)を制御する。また、投光制御装置112は、面発光素子10が発光したタイミング(投光光が面発光素子10から出射したタイミング。以下、「投光タイミング」と称する。)を示す信号をTOF測定装置117に入力する。投光制御装置112は、例えば、面発光素子10の夫々に流す電流のオンオフを周期的に繰り返す制御を行うことにより、面発光素子10を周期的に繰り返し発光させる。
【0026】
電流源113は、投光制御装置112から入力される制御信号に応じた電流を面発光素子10に供給する。電流源113は、例えば、面発光素子10の夫々に流す電流をオンオフするための周期的な方形波の電流を面発光素子10に供給する。
【0027】
投光光学系114は、例えば、発光部111から出射する投光光に光学的な作用(屈折、散乱、回折等)を与えることにより投光光の配光を調節する。投光光学系114は、例えば、コリメートレンズ等の各種レンズ、回折格子、反射鏡(ミラー)等の光学部品を用いて構成される。
【0028】
受光光学系115は、対象物50から戻ってくる反射光を受光部116に集光する。受光光学系115は、例えば、集光レンズ等の各種レンズ、波長フィルタ等の各種フィルタ、反射鏡(ミラー)等の光学部品を用いて構成される。
【0029】
受光部116は、例えば、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)、フォトダイオード、バランス型光検出器等の光検出器を用いて構成される。受光部116は、受光光学系115から入射する反射光を光電変換することにより、反射光の強度に応じた電流(以下、「受光電流」と称する。)を生成する。受光部116は、反射光を受光したタイミング(以下、「受光タイミング」と称する。)を示す信号、及び生成した受光電流を、TOF測定装置117に入力する。
【0030】
TOF測定装置117は、投光制御装置112から入力される投光タイミングを示す信号と受光部116から入力される受光タイミングを示す信号とに基づき、TOFを求める。TOF測定装置117は、例えば、TDC(Time to Digital Converter)回路を搭載した時間測定IC(集積回路:Integrated Circuit)を用いて構成される。TOF測定装置117は、求めたTOFと受光部116から入力された受光電流を、演算装置150に入力する。
【0031】
演算装置150は、プロセッサ(CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)等)を用いて構成される。演算装置150は、TOF測定装置117から入力される受光電流やTOFに基づき、対象物50の検出や測距等の各種測定に用いる情報を生成する。上記情報は、例えば、時間相関単一光子計数法(Time Correlated Single Photon Counting)で用いるヒストグラム(histogram)、対象物50の各点(ポイント)までの距離、ポイントクラウド(点群情報:point cloud)等である。また、演算装置150は、投光制御装置112や受光部116を制御する。演算装置150は、例えば、投光制御装置112や受光部116を制御することにより、上記のヒストグラムの生成にかかる処理が高速化もしくは最適化されるように、前述した投光タイミングや受光タイミングを制御する。演算装置150によって生成された情報は、通信I/F160(I/F:Interface)を介して当該情報を利用する装置(以下、「各種利用装置40」と称する。)に提供(送信)される。
【0032】
各種利用装置40は、例えば、ポイントクラウドによる環境地図の作成、スキャンマッチングアルゴリズム(NDT(Normal Distributions Transform)、ICP(Iterative Closest Point)等)を用いた自己位置推定(SLAM(Simultaneous Localization and Mapping))等を行う。
【0033】
<発光制御>
投光制御装置112は、人の目に入射する可能性のあるレーザ光のエネルギーの総量が予め設定された閾値(安全値、上限値、許容値等)以下となるような面発光素子10の2つ以上の組合せを同時に点灯させるように制御する。これによりレーザ光が誤って人体に照射された際の人体への影響(被曝量)を低減し、測定装置100や投光器がレーザ製品についての放射安全基準(国際電気標準(IEC:International Electrotechnical Commission)の60825-1、日本工業規格(JIS:Japanese Industrial Standards)の「レーザ製品の放射安全基準」(JIS C 6802)等)を満たすようにすることができる。また、2つ以上の上記の組合せを同時に点灯させるようにすることで、フレームレート(投光対象エリアのスキャンスピード)の低下を防ぐことができる。
【0034】
図3(a)は、投光制御装置112による面発光素子10の制御の説明に用いる投光器の構成例を示す模式図である。同図における符号は、
図1に付した符号と対応している。同図の例では、説明の簡単のため、発光部111が基板上に一次元的に等間隔で配列された4つの面発光素子10a~10dを有している場合を示している。面発光素子10a~10dは、いずれも共通の仕様(例えば、いずれも同一型番の製品)であるものとする。
【0035】
同図に示すように、4つの面発光素子10a~10dのうち、面発光素子10aから出射したレーザ光は、投光光学系114を介して投光エリア51aに、また、面発光素子10bから出射したレーザ光は、投光光学系114を介して投光エリア51bに、また、面発光素子10cから出射したレーザ光は、投光光学系114を介して投光エリア51cに、また、面発光素子10dから出射したレーザ光は、投光光学系114を介して投光エリア51dに、夫々配光される。
【0036】
ここで例えば、隣接する2つの面発光素子10(面発光素子10aと面発光素子10b、面発光素子10bと面発光素子10c、面発光素子10cと面発光素子10dのいずれかの組合せ)の夫々から同時にレーザ光を出射した場合、投光光学系114によって投光対象エリアに向けて配光される2つのレーザ光は、人の目に同時に入射して人体に有害な影響を与える可能性がある。そこで、投光制御装置112は、隣接する面発光素子10を同時に点灯させないように制御することによりレーザ光による人体への影響を低減し、測定装置100(投光器)がレーザ製品の放射安全基準を満たすようにする。
【0037】
図3(b)は、上記の制御を示すグラフである。同グラフは、横軸を時間、縦軸を面発光素子10の発光強度として、投光量(投光光のエネルギー)と被曝量(人が被爆するエネルギー)の大きさを示したものである。同図に示すように、本例では、面発光素子10aと面発光素子10cの組合せを同時に点灯させ、その後、面発光素子10bと面発光素子10dの組合せを同時に点灯させている。同図から理解されるように、各点灯タイミングにおける被曝量は、
図6(a)に示した方法における被曝量(
図6(b))の1/2になる。また、この場合、1フレームに要する時間は、
図7(a)に示した方法における時間(
図7(b))の1/2の時間で済み、
図7(a)に示した方法に比べてフレームレート(投光対象エリアのスキャンスピード)を高めることができる。
【0038】
尚、本例では、隣接する2つの面発光素子10を同時に点灯させないようにするために1つおきの面発光素子10の組合せを同時に点灯させるようにしているが、例えば、面発光素子10を2つ以上おきに同時に点灯させるようにしてもよい。また、隣接していない2つ以上の面発光素子10の任意の組合せを同時に点灯させるようにしてもよい。
【0039】
また、発光部111を構成する複数の面発光素子10を、夫々隣接する複数の面発光素子10を要素とする複数のグループに分類し、隣接する2つのグループに属する面発光素子10を同時に点灯させないようにしてもよい。但しこの場合、一つのグループの面発光素子10を全てを同時に点灯させた場合に人の目に入射する可能性のあるレーザ光のエネルギーの総量は予め設定された閾値(安全値、上限値、許容値等)以下であるものとする。
【0040】
図4に同時に点灯させる面発光素子10の組合せの例を示す。(a)は、面発光素子10を1つおきに同時に点灯させるようにした場合、(b)は、面発光素子10を2つおきに同時に点灯させるようにした場合、(c)は、2つ以上の面発光素子10を有するグループ(本例では2つの面発光素子10を有するグループ)を単位としてグループ一つおきに面発光素子10を同時に点灯させるようにした場合である。
【0041】
尚、発光部111(面発光素子アレイ)を構成する面発光素子10のうち同時に点灯させる面発光素子10の組合せをどのように選択するかは、例えば、面発光素子10の配置間隔、面発光素子10の配置形態(例えば、斜方格子状、三角格子状、正方格子状、矩形格子状、六角格子状等)、面発光素子10から出射する光ビームもしくは当該光ビームが投光光学系114を通過した後のビーム発散角(ビーム広がり角、ピッチ)、人の目の視角(瞳孔の開口絞りに応じて定まる視角)を考慮することにより決定する。
【0042】
例えば、レーザ光の波長が400~1400nmである場合、「JIS C 6802の「5.4測定光学系」の「表10」には、「測定条件1」(望遠鏡、双眼鏡等(以下、「観察機器」と称する。)によって危険性が増大するような平行ビームに適用)として、「2000mmの位置にある50mmの開口絞り」が、また、「測定条件3」(裸眼、低倍率の拡大鏡及び操作ビームに対する放射量の決定に適用)として、「100mmの位置にある7mmの開口絞り」が記載されている。
【0043】
この場合、上記の「測定条件1」では、
図5(a)に示すように、面発光素子10(レーザ製品)が開口絞りを見込む角θ
1は1.4゜(≒2*arctan(50/2/2000)となる。また、例えば、上記の「測定条件3」では、
図5(b)に示すように、面発光素子10(レーザ製品)が開口絞りを見込む角θ
2は4.0゜(≒2*arctan(7/2/100))となる。
【0044】
このため、例えば、投光器を
図3(a)に示す構成において面発光素子10aと面発光素子10c(もしくは面発光素子10bと面発光素子10d)を同時に点灯させた場合に双方からのレーザ光が同時に人の目に入射しないようにするには、「測定条件1」では、面発光素子10から出射する光ビームもしくは当該光ビームが投光光学系114を通過した後のビーム発散角(ビーム広がり角)及びピッチが0.7゜(=1.4゜/2)以上であればよい。また、「測定条件3」では、面発光素子10から出射する光ビームもしくは当該光ビームが投光光学系114を通過した後のビーム発散角(ビーム広がり角)及びピッチが、2.0゜(=4.0゜/2)以上であればよい。
【0045】
以上に説明したように、本実施形態の測定装置100は、投光制御装置112は、夫々を同時に点灯させた際に人の目に入射する可能性のあるレーザ光のエネルギー総量が予め設定された閾値(安全値、上限値、許容値等)以下となるような面発光素子10の2つ以上の組合せを同時に点灯させるように制御する。このため、レーザ光による人体への影響(被曝量)を低減し、測定装置100(投光器)がレーザ製品の放射安全基準を満たすようにすることができるとともに、フレームレート(投光対象エリアのスキャンスピード)の低下を防ぐことができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態につき詳述したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために構成を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施形態の構成の一部について、他の構成に追加、削除、置換することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 面発光素子、22 基板、50 対象物、100 測定装置、111 発光部、112 投光制御装置、113 電流源、114 投光光学系、115 受光光学系、116 受光部、117 TOF測定装置、150 演算装置、160 通信インタフェース