(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116284
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】ペースト用シリンジ
(51)【国際特許分類】
A61C 5/62 20170101AFI20230815BHJP
A61C 13/07 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
A61C5/62
A61C13/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019008
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】391003576
【氏名又は名称】株式会社トクヤマデンタル
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】人見 美希
(72)【発明者】
【氏名】山崎 達矢
(72)【発明者】
【氏名】豊田 真奈
(72)【発明者】
【氏名】山口 能利
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 誠也
【テーマコード(参考)】
4C052
4C159
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052HH08
4C159DD03
4C159FF05
(57)【要約】
【課題】貯蔵弾性率が500乃至1500Pa程度のペーストである場合でも押し子に適宜の力を加えることによってシリンジ外筒のノズル部を通して排出することができると共に、シリンジ外筒の主部の内周面と押し子の押し部の外周面との間隙を通ってペーストが逆流して損失されてしまうことを可及的に回避することができるペースト用シリンジを提供する。
【解決手段】ペースト用シリンジは、筒形状である主部とこの主部の先端から延出するノズル部とを含むシリンジ外筒と、シリンジ外筒内に収容されるペーストに作用してノズル部を通してペーストを排出するための押し部を含む押し子とを備えている。シリンジ外筒の主部の内径MDと押し子の押し部の外径PDとの差(MD-PD)は0.03乃至0.40mmであり、シリンジ外筒の主部の内径MDとノズル部の内径NDとの比(ND/MD)は0.15乃至0.70である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形状である主部と該主部の先端から延出するノズル部とを含むシリンジ外筒と、該シリンジ外筒内に収容されるペーストに作用して該ノズル部を通してペーストを排出するための押し部を含む押し子とを備えたペースト用シリンジにして、
該シリンジ外筒の該主部の内径MDと該押し子の該押し部の外径PDとの差(MD-PD)は0.03乃至0.40mmであり、
該シリンジ外筒の該主部の内径MDと該ノズル部の内径NDとの比(ND/MD)は0.15乃至0.70である、
ことを特徴とするペースト用シリンジ。
【請求項2】
該差(MD-PD)は0.04乃至0.35mmである、請求項1記載のペースト用シリンジ。
【請求項3】
該比(ND/MD)は0.16乃至0.45である、請求項1又は2記載のペースト用シリンジ。
【請求項4】
該シリンジ外筒の該主部の容量は20乃至80mLである、請求項1から3までのいずれかに記載のペースト用シリンジ。
【請求項5】
該シリンジ外筒の該主部の内周面及び該押し子の該押し部の外周面は円筒形状である、請求項1から4までのいずれかに記載のペースト用シリンジ。
【請求項6】
該シリンジ外筒の該ノズル部の内周面は円筒形状又は先細円錐台形状である、請求項1から5までのいずれかに記載のペースト用シリンジ。
【請求項7】
ペーストは非架橋樹脂を主成分とする粉材とラジカル重合性単量体を主成分とする液材が混合された粉液混合型義歯床用裏装材であり、常温での貯蔵弾性率が500乃至1500Paである、請求項1から6までのいずれかに記載のペースト用シリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジ外筒と押し子とを備えたシリンジ、更に詳しくは非架橋樹脂を主成分とする粉材とラジカル重合性単量体を主成分とする液材が混合された粉液混合型義歯床用裏装材の如きペーストのためのペースト用シリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、基準義歯から義歯を形成する際に、ポリエチルメタクリレートの如き非架橋樹脂を主成分とする粉材とメタクリレート系モノマーの如きラジカル重合性単量体を主成分とする液材とを混合して、粉液混合型義歯床用裏装材として使用されるペーストを生成し、基準義歯に適用することが開示されている。また、下記特許文献2及び3には、非架橋樹脂を主成分とする粉材とラジカル重合性単量体を主成分とする液材の好適例が詳述されている。
【0003】
本発明者等は、粉材と液材とを混合してペーストを生成し便宜に使用するために、シリンジを利用することを検討した。詳述すると、シリンジ外筒から押し子を離脱し且つシリンジ外筒のノズル部を封鎖した状態で粉材と液材とをシリンジ外筒内に投入し、混合ヘラの如き適宜の混合具をシリンジ外筒内に挿入して粉材と液材とを混合してペーストを生成する。しかる後に、シリンジ外筒のノズル部の封鎖を解除すると共にシリンジ外筒に押し子を組み合わせ、押し子を操作してノズル部の先端からペーストを排出して基準義歯の所要部位に適用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021―187780号公報
【特許文献2】再公表特許WO2018/016602号公報
【特許文献3】特開2020―45459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粉液混合型義歯床用裏装材として使用されるペーストは、通常、常温(即ち15乃至25℃)で貯蔵弾性率が500乃至1500Pa程度の粘度で基準義歯の所要部位に適用することが望まれる。他方、一般的なシリンジにおいては、押し子の押し部の外周面にはゴムリングの如きシール部材が配設されており、シリンジ外筒の主部の内周面と押し子の押し部の外周面とは緊密に密接されている。本発明者等の実験によれば、かような一般的なシリンジの場合には、押し子に相当な力を加えても貯蔵弾性率が500乃至1500Pa程度の粘度のペーストを排出することが不可能であった。また、シリンジ外筒の主部の内径MDとノズル部の内径NDとの比(ND/MD)が過少な場合にも、押し子に過大な力を加えなければ貯蔵弾性率が500乃至1500Pa程度の粘度のペーストを排出することが不可能であった。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、貯蔵弾性率が500乃至1500Pa程度のペーストである場合でも押し子に適宜の力を加えることによってシリンジ外筒のノズル部を通して排出することができると共に、シリンジ外筒の主部の内周面と押し子の押し部の外周面との間隙を通ってペーストが逆流して損失されてしまうことを可及的に回避することができる、新規且つ改良されたペースト用シリンジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討及び実験の結果、シリンジ外筒の主部の内径MDと押し子の押し部の外径PDとの差(MD-PD)を適切な値に設定すると共に、シリンジ外筒の主部の内径MDとノズル部の内径NDとの比(ND/MD)を適切な値に設定することによって、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0008】
即ち、本発明によれば上記主たる技術的課題を達成するペースト用シリンジとして、
筒形状である主部と該主部の先端から延出するノズル部とを含むシリンジ外筒と、該シリンジ外筒内に収容されるペーストに作用して該ノズル部を通してペーストを排出するための押し部を含む押し子とを備えたペースト用シリンジにして、
該シリンジ外筒の該主部の内径MDと該押し子の該押し部の外径PDとの差(MD-PD)は0.03乃至0.40mmであり、
該シリンジ外筒の該主部の内径MDと該ノズル部の内径NDとの比(ND/MD)は0.15乃至0.70である、
ことを特徴とするペースト用シリンジが提供される。
【0009】
シリンジ外筒の主部の内周面及び押し子の押し部の外周面は、円筒形状に限られることなく、楕円筒形状或いは正多角形筒形状でもよく、語句「内径」及び「外径」は、楕円筒形状の場合は長径又は短径を意味し、正多角形筒形状の場合は対向する側面間の長さを意味する。また、ノズル部の内周面は、円筒形状に限られることなく、先細円錐台形状等でもよいが、語句「内径」は、先細円錐台形状である場合は先端の最小内径を意味する。
【0010】
好ましくは、該差(MD-PD)は0.04乃至0.35mmであり、該比(ND/MD)は0.16乃至0.45である。該シリンジ外筒の該主部の容量は20乃至80mLであるのが好適である。該シリンジ外筒の該主部の内周面及び該押し子の該押し部の外周面は円筒形状であるのが好都合であり、該シリンジ外筒の該ノズル部の内周面は円筒形状又は先細円錐台形状であるのが好都合である。ペーストは非架橋樹脂を主成分とする粉材とラジカル重合性単量体を主成分とする液材が混合された粉液混合型義歯床用裏装材であり、常温での貯蔵弾性率が500乃至1500Paである場合に、特に好適である。
【発明の効果】
【0011】
後述する実施例及び比較例から明確に理解される如く、本発明のペースト用シリンジによれば、貯蔵弾性率が500乃至1500Pa程度のペーストである場合でも押し子に適宜の力を加えることによってシリンジ外筒のノズル部を通して排出することができると共に、シリンジ外筒の主部の内周面と押し子の押し部の外周面との間隙を通ってペーストが逆流して損失されてしまうことを可及的に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に従って構成されたシリンジの好適実施形態を、一部を断面で示す分解正面図。
【
図2】
図1に図示するシリンジにおけるシリンジ外筒の主部の、
図1の線II-IIに沿った横断面図。
【
図3】
図1に図示するシリンジにおけるシリンジ外筒のノズル部の、
図1の線III-IIIに沿った横断面図。
【
図4】
図1に図示するシリンジにおける押し子の底面図。
【
図5】
図1に図示するシリンジの使用様式を説明するための、一部を断面で示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に従って構成されたシリンジの好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳述する。
【0014】
図1を参照して説明すると、全体を番号2で示すシリンジは、シリンジ外筒4、押し子6及び封鎖具8を備えている。シリンジ外筒4、押し子6及び封鎖具8は、ポリエチレン又はポリプロピレンの如き適宜の合成樹脂から形成することができる。シリンジ外筒4、押し子6及び封鎖具8、特にシリンジ外筒4、は透明乃至半透明であるのが好都合である。
【0015】
シリンジ外筒:
図1と共に
図2及び
図3を参照して説明を続けると、シリンジ外筒4は主部10とこの主部10の先端(
図1において下端)から延出するノズル部12を含んでいる。図示のシリンジ外筒4における主部10は円筒形状であり、円筒形状の内周面と円筒形状の外周面とを有する。主部10の内周面と外周面とは、円筒形状に限られるものではなく、楕円筒形状或いは正六角筒の如き正多角筒形状でもよく、そしてまた内周面と外周面とが同一形状ではなく、例えば内周面が円筒形状であり外周面が正多角筒形状であってもよい。シリンジ外筒4の主部10内に収容されるペーストが粉液混合型義歯床裏装材(この粉液混合型義歯床裏装材については後に言及する)である場合、その排出必要量等の点から、シリンジ外筒4の主部10の容量は20乃至80mL、特に25乃至50mL程度であり、シリンジ外筒4の主部10の内径は20乃至40mm程度で長さは50乃至130mm、特に70乃至100mm程度であるのが好都合である。主部10の基端(
図1において上端)には略楕円形状でよい張出フランジ14が付設されている。図示のシリンジ外筒4におけるノズル部12は円筒形状であり、円筒形状の内周面と円筒形状の外周面を有する。所望ならば、ノズル部12の内周面及び/又は外周面を先細円錐台形状(即ち逆円錐台形状)にすることもできる。ノズル部12は、主部10の先端から主部10と同心状に延出しており、主部10の先端とノズル部12の基端(
図1において上端)とは円環状である接続壁16によって接続されている。ノズル部12は、必ずしも主部10と同心状である必要はなく、主部10に対して偏心して主部10の先端から延出することもできる。
【0016】
押し子:
図示の押し子6は、先端(
図1において下端)に位置する押し部18、基端(
図1において上端)に位置する操作部20、及び押し部18と操作部20とを接続する接続部22を有する。押し部18は、上記シリンジ外筒4の主部10の内周面に対応した外周面、従って図示の押し子6においては円筒形状の外周面、を有する薄円板形状である。押し部18の下面、即ち上記シリンジ外筒4の主部10内に収容されるペースト(このペーストについては後に更に言及する)に作用する押圧面、には同心状に下方に突出する円柱形状の突起24が付設されている。図示の押し子6においては、操作部20も薄円板形状であり、その外径は上記シリンジ外筒4の主部10の外径よりも幾分大きい外径を有する。接続部22は90度の角度間隔をおいて配設された4個の細長薄板片26(
図1には3個の細長薄板片26のみが図示されている)から形成されており、かかる4個の細長薄板片26の内側縁は相互に接続され、下端縁は押し部18の上面に接続され、上端縁は操作部20の下面に接続されている。4個の細長薄板片26の外側縁は押し部18の外周縁よりも半径方向内側に位置する。
【0017】
封鎖具:
図1に図示する如く、図示の実施形態における封鎖具8は、円形底壁28、この底壁28の周縁から上方に延出する円筒形状の側壁30及び底壁28の中心から上方に突出する円柱形状の封鎖ピン32を有する。側壁30の内径は上記シリンジ外筒4のノズル部12の外径と実質上同一であり、封鎖ピン突起32の外径は上記シリンジ外筒4のノズル部12の内径と実質上同一であり、封鎖ピン32の突出長さは上記シリンジ外筒4のノズル部12の長さと実質上同一であるのが好都合である。
【0018】
シリンジ外筒の主部の内径MDと押し子の押し部の外径PDとの差:
本発明に従って構成されたシリンジ2においては、シリンジ外筒4の主部10の内径MDと押し子6の押し部18の外径PDとの差(MD-PD)が0.03乃至0.40mm、好ましくは0.04乃至0.35mm、特に好ましくは0.05乃至0.30mm、であることが重要である。後述する実施例及び比較例から明確に理解されるとおり、差(MD-PD)が過少であると、押し子6を操作してシリンジ外筒4の主部10からノズル部12を通してペーストを押し出すことが困難であり、差(MD-PD)が過大であると、押し子6を操作してシリンジ外筒4の主部10からノズル部12を通してペーストを押し出す際にシリンジ外筒4の主部10の内周面と押し子6の押し部18の外周面との間隙を通ってペーストが逆流しペーストが無駄に損失されてしまう傾向がある。上述した如く、シリンジ外筒4の主部10の内周面及び押し子6の押し部18の外周面は、円筒形状に限られることなく、楕円筒形状或いは正多角形筒形状でもよく、語句「内径」及び「外径」は、楕円筒形状の場合は長径又は短径を意味し、正多角形筒形状の場合は対向する側面間の長さを意味する。
【0019】
シリンジ外筒の主部の内径MDとノズル部の内径NDとの比(ND/MD):
本発明に従って構成されたシリンジ2においては、シリンジ外筒4の主部10の内径MDとノズル部12の内径NDとの比(ND/MD)が0.15乃至0.70、好ましくは0.16乃至0.45、特に好ましくは0.17乃至0.35、であることが重要である。後述する実施例及び比較例から明らかな如く、比(ND/MD)が過少であると、押し子6を操作してシリンジ外筒4の主部10からノズル部12を通してペーストを押し出すことが困難であり、比(ND/MD)が過大であると、ノズル部12を通して排出されるペーストの断面積が過大になり粉液混合型義歯床用裏装材として使用するのに不都合になる。上述した如く、ノズル部12の内周面は、円筒形状に限られることなく、先細円錐台形状等でもよいが、語句「内径」は、先細円錐台形状である場合は先端の最小内径を意味する。
【0020】
シリンジの使用様式:
次に、主として
図5を参照して、シリンジ2の使用様式について説明する。粉液混合型義歯床裏装材を生成する際には、シリンジ外筒4から押し子6を分離する。そして、
図5に示す如く、シリンジ外筒4のノズル部12に封鎖具8を装着し、更に詳しくは封鎖具8の側壁30をノズル部12の外周面に被嵌し封鎖ピン32をノズル部12内に挿入し、底壁28の内面をノズル部12の先端面に当接させ、かくしてノズル部12を封鎖する。次いで、シリンジ外筒4の主部10の基端(
図5において上端)に位置する開口を通して主部10内に所要量の粉材及び液材(図示していない)をこの順序で或いは逆順序で順次に投入する。上記粉液混合型義歯床裏装材を生成するための粉材はポリエチルメタクリレートの如き非架橋樹脂を主成分とする粉材であり、液材はメタクリレート系モノマーの如きラジカル重合性単量体を主成分とする液材である。かような粉材及び液材の詳細は、上記特許文献2及び3に詳細に記載されているのでかかる記載を引用し、本明細書においては説明を省略する。シリンジ外筒4のノズル部12は封鎖具8によって封鎖されている故に、主部10に投入された粉材及び液材がノズル部12を通して流下することはない。次に、混合ヘラの如き適宜の混合具(図示していない)をシリンジ外筒4の主部10内に挿入して投入された粉材と液材とを混合する。かくして、シリンジ外筒4の主部10内にペースト即ち粉液混合型義歯床裏装材が生成される。
【0021】
しかる後に、
図5に二点鎖線で示す如く押し子6の先端部をシリンジ外筒4内に進入させて、シリンジ外筒4に押し子6を組み合わせると共に、封鎖具8をノズル部12から離脱してノズル部12の封鎖を解除する。そして、シリンジ外筒4の張出フランジ14に人差し指及び中指を掛けると共に押し子6の操作部20に親指を係合させ、押し子6に押圧力を加えてシリンジ外筒4の主部10内に押し子6を漸次進行させ、これによって押し子6の押し部18によって主部10内のペーストを押圧し、ノズル部12を通して所要部位、例えば基準義歯の床面(裏面)上、に排出する。押し部18の下面に付設されている突起24はノズル部12内に進入し、ノズル部12内にペーストを実質上残留させることなくペーストを排出することができる。
【0022】
実施例及び比較例
使用したシリンジ:
図1乃至
図5に図示するとおりの形態のシリンジを使用した。シリンジ外筒の容量は37mLであり、シリンジ外筒の主部の内径MD、シリンジ外筒のノズル部の内径ND、押し子の押し部の外径PD、シリンジ外筒の主部の内径MDと押し子の押し部の外径PDとの差(MD-PD)、及びシリンジ外筒の主部の内径MDとシリンジ外筒のノズル部の内径NDとの比(ND/MD)は表1に記載のとおりであった。
【0023】
使用した粉液混合型義歯床用裏装材:
表1に示す記号「HL」は株式会社トクヤマデンタルから商品名「トクヤマヒカリライナー」として販売されている粉液混合型義歯床用裏装材を示し、記号「R3」は株式会社トクヤマデンタルから商品名「トクヤマリベースIIIファースト」として販売されている粉液混合型義歯床裏装材を示す。
【0024】
粉材及び液材の投入及び混和:
押し子を離脱したシリンジ外筒のノズル部に封鎖具を装着した状態で、液材(4.8mL)を投入し、次いで粉材(HLの場合8.6g、R3の場合9.6g)を投入し、しかる後に株式会社トクヤマデンタルから商品名「スパチュラNo.001」として販売されている混和ヘラを使用して粉材と液材を30秒間混和した。しかる後に、シリンジ外筒に押し子を組み合わせ、シリンジ外筒から封鎖具を離脱した。
【0025】
ペーストの貯蔵弾性率(混和から排出までの時間):
粉材と液材とを混和すると徐々にペーストとなり時間の経過に伴って粘度が漸次増大する。そこで、粉材と液材と混和からの時間の経過に伴う、ペーストの貯蔵弾性率の変化をアントンパール社(Anton Paar GmbH)から商品名「MCR302」として販売されている粘弾性測定装置によって測定した。そして、得られた測定値に基いて、粉材と液材との混和からの経過時間を測定し、ペーストの貯蔵弾性率Paが表1に記載する値に到達した時点で押し子を手動操作して、ノズル部を通してペーストの排出を試みた。
【0026】
表1における記号「〇」は押し子を手動操作することによってペーストを排出することが可能であったことを示し、表1における記号「×」は押し子を手動操作することによってペーストを排出することが著しく困難乃至不可能であったことを示す。表1におけるペースト損失欄における記号「AA」は逆流によるペーストの損失が10%未満であったことを示し、記号「A」は逆流によるペーストの損失が10%以上20%未満であったことを示し、記号「B」は逆流によるペーストの損失が20%以上50%未満であったことを示し、記号「C」は逆流によるペーストの損失が50%以上であったことを示す。
【0027】
表1から、シリンジ外筒の主部の内径MDと押し子の押し部の外径PDとの差(MD-PD)が0.03乃至0.40mm、特に0.04乃至0.35mm、殊に0.05乃至0.30mmであり、シリンジ外筒の主部の内径MDとシリンジ外筒のノズル部の内径NDとの比(ND/MD)が0.15乃至0.70、特に0.16乃至0.45、殊に0.17乃至0.35であると、押し子を手動操作することによって貯蔵弾性率が500乃至1500Paであるペーストを円滑に排出することができると共にペーストの損失を可及的に回避する(損失を20%未満、特に10%未満に低減できる)ことが理解される。
【0028】
【符号の説明】
【0029】
2:シリンジ
4:シリンジ外筒
6:押し子
8:封鎖具
10:シリンジ外筒の主部
12:シリンジ外筒のノズル部
18:押し子の押し部