(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116300
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】微気象要素推定装置及び微気象要素推定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01W 1/10 20060101AFI20230815BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230815BHJP
G01W 1/02 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
G01W1/10 D
G06T7/00 350B
G01W1/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019032
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 祐士
(72)【発明者】
【氏名】藤原 邦彦
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096CA04
5L096DA02
5L096HA09
5L096JA03
5L096JA11
5L096KA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】気象シミュレーションを行う場合に比較して、より容易に微気象要素を推定することができる微気象要素推定装置及び微気象要素推定プログラムを得る。
【解決手段】微気象要素推定装置10は、予め定められた種類の微気象要素に相関を有する画像要素が含まれる動画像が入力情報とされ、当該微気象要素を示す微気象要素情報が出力情報とされた微気象要素推定モデル13Dに対し、推定対象領域の動画像を入力することで微気象要素情報を推定する推定部11Eと、推定部11Eによって推定された微気象要素情報に関する微気象要素関連情報を提示する提示部11Gと、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた種類の微気象要素に相関を有する画像要素が含まれる動画像が入力情報とされ、前記微気象要素を示す微気象要素情報が出力情報とされた微気象要素推定モデルに対し、推定対象領域の動画像を入力することで前記微気象要素情報を推定する推定部と、
前記推定部によって推定された前記微気象要素情報に関する微気象要素関連情報を提示する提示部と、
を備えた微気象要素推定装置。
【請求項2】
前記予め定められた種類の微気象要素は、風速、日射量、グローブ温度、気温、湿度、降水量、降雪量、雷、竜巻、黄砂、花粉、霜、虹、霧、靄、及び地震の震度の少なくとも1つである、
請求項1に記載の微気象要素推定装置。
【請求項3】
前記画像要素は、各々、推定対象とする微気象要素が雷又は竜巻である場合は上空の様子を示す画像であり、推定対象とする微気象要素が降水量又は黄砂である場合は背景のかすみを示す画像であり、推定対象とする微気象要素が風速である場合は木のそよぎを示す画像であり、推定対象とする微気象要素が日射量又はグローブ温度である場合は地表面の明るさを示す画像である、
請求項2に記載の微気象要素推定装置。
【請求項4】
前記微気象要素関連情報は、前記推定部によって推定された微気象要素情報そのもの、及び当該微気象要素情報によって間接的に示される間接情報の少なくとも一方である、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の微気象要素推定装置。
【請求項5】
前記微気象要素推定モデルは、人工知能によるモデルである、
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の微気象要素推定装置。
【請求項6】
学習用動画像及び学習用微気象要素情報を取得する学習用情報取得部と、
前記学習用情報取得部によって取得された学習用動画像を入力情報とし、学習用微気象要素情報を出力情報として前記微気象要素推定モデルの機械学習を行う学習部と、を更に備えた
請求項1~請求項5の何れか1項に記載の微気象要素推定装置。
【請求項7】
再学習用動画像及び再学習用微気象要素情報を取得する再学習用情報取得部と、
前記再学習用情報取得部によって取得された再学習用動画像を入力情報とし、再学習用微気象要素情報を出力情報として前記微気象要素推定モデルの機械学習を再度行う再学習部と、を更に備えた
請求項6に記載の微気象要素推定装置。
【請求項8】
予め定められた基準情報を用いて、前記推定部によって推定された微気象要素情報を調整する調整部、を更に備えた
請求項1~請求項7の何れか1項に記載の微気象要素推定装置。
【請求項9】
予め定められた種類の微気象要素に相関を有する画像要素が含まれる動画像が入力情報とされ、前記微気象要素を示す微気象要素情報が出力情報とされた微気象要素推定モデルに対し、推定対象領域の動画像を入力することで前記微気象要素情報を推定し、
推定した前記微気象要素情報に関する微気象要素関連情報を提示する、
処理をコンピュータに実行させるための微気象要素推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微気象要素推定装置及び微気象要素推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微気象要素を計測する場合、専用の複合センサが必要とされていた。しかしながら、この技術では、複合センサを設置するのに専門の知識が必要なうえ、複合センサの輸送や設置に費用がかかる、高精度なものであるが故に高コストとなってしまう、という問題点があった。
【0003】
この問題点を解決するために、複合センサを用いることなく、微気象要素を推定するために適用することのできる技術として特許文献1に開示されている気象予測システムがあった。
【0004】
この気象予測システムでは、所定地域の気象推定値を、所定地域の狭域の気象観測データでデータ同化して、所定地域の気象解析値を算出し、所定の気象モデルに基づいて、所定地域の気象解析値により、所定地域の気象予測データを算出する。また、この気象予測システムでは、所定地域の広域の気象観測データを取得し、複数の所定地域毎の気象予測データを取得し、複数の広域の気象観測データを取得し、広域の気象観測データと、所定地域を含む領域の気象予測データとに基づいて、領域の気象予測データの信頼度を算出する。そして、この気象予測システムでは、信頼度を用いて、所定地域毎の気象予測データで、領域の気象推定値をデータ同化して、領域の気象解析値を算出し、気象モデルに基づいて、領域の気象解析値により、領域の気象予測データを算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている技術では、多くの計算量を要する気象シミュレーションを行う必要があり、必ずしも容易に気象予測データが得られるとは限らない、という問題点があった。
【0007】
なお、この問題点は、気象予測データのみならず、微気象要素に属する情報についても生じ得る問題点である。また、ここでいう「微気象要素」には、風速、日射量、グローブ温度等の一般的な要素に加えて、地震の震度といった要素も広義として含むものとする。
【0008】
本開示は、以上の事情を鑑みて成されたものであり、気象シミュレーションを行う場合に比較して、より容易に微気象要素を推定することができる微気象要素推定装置及び微気象要素推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の本発明に係る微気象要素推定装置は、予め定められた種類の微気象要素に相関を有する画像要素が含まれる動画像が入力情報とされ、前記微気象要素を示す微気象要素情報が出力情報とされた微気象要素推定モデルに対し、推定対象領域の動画像を入力することで前記微気象要素情報を推定する推定部と、前記推定部によって推定された前記微気象要素情報に関する微気象要素関連情報を提示する提示部と、を備える。
【0010】
請求項1に記載の本発明に係る微気象要素推定装置によれば、予め定められた種類の微気象要素に相関を有する画像要素が含まれる動画像が入力情報とされ、当該微気象要素を示す微気象要素情報が出力情報とされた微気象要素推定モデルに対し、推定対象領域の動画像を入力することで微気象要素情報を推定し、推定した微気象要素情報に関する微気象要素関連情報を提示することで、気象シミュレーションを行う場合に比較して、より容易に微気象要素を推定することができる。
【0011】
請求項2に記載の本発明に係る微気象要素推定装置は、請求項1に記載の微気象要素推定装置であって、前記予め定められた種類の微気象要素が、風速、日射量、グローブ温度、気温、湿度、降水量、降雪量、雷、竜巻、黄砂、花粉、霜、虹、霧、靄、及び地震の震度の少なくとも1つであるものである。
【0012】
請求項2に記載の本発明に係る微気象要素推定装置によれば、予め定められた種類の微気象要素を、風速、日射量、グローブ温度、気温、湿度、降水量、降雪量、雷、竜巻、黄砂、花粉、霜、虹、霧、靄、及び地震の震度の少なくとも1つとすることで、適用した微気象要素を推定することができる。
【0013】
請求項3に記載の本発明に係る微気象要素推定装置は、請求項2に記載の微気象要素推定装置であって、前記画像要素が、各々、推定対象とする微気象要素が雷又は竜巻である場合は上空の様子を示す画像であり、推定対象とする微気象要素が降水量又は黄砂である場合は背景のかすみを示す画像であり、推定対象とする微気象要素が風速である場合は木のそよぎを示す画像であり、推定対象とする微気象要素が日射量又はグローブ温度である場合は地表面の明るさを示す画像であるものである。
【0014】
請求項3に記載の本発明に係る微気象要素推定装置によれば、上記画像要素を、各々、推定対象とする微気象要素が雷又は竜巻である場合は上空の様子を示す画像とし、推定対象とする微気象要素が降水量又は黄砂である場合は背景のかすみを示す画像とし、推定対象とする微気象要素が風速である場合は木のそよぎを示す画像とし、推定対象とする微気象要素が日射量又はグローブ温度である場合は地表面の明るさを示す画像とすることで、何れの微気象要素についても、画像要素として容易に動画像に含めることができる結果、より容易に微気象要素を推定することができる。
【0015】
請求項4に記載の本発明に係る微気象要素推定装置は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の微気象要素推定装置であって、前記微気象要素関連情報が、前記推定部によって推定された微気象要素情報そのもの、及び当該微気象要素情報によって間接的に示される間接情報の少なくとも一方であるものである。
【0016】
請求項4に記載の本発明に係る微気象要素推定装置によれば、微気象要素関連情報を、推定した微気象要素情報そのもの、及び当該微気象要素情報によって間接的に示される間接情報の少なくとも一方とすることで、微気象要素情報そのものを適用する場合は、間接情報を適用する場合に比較して、推定された微気象要素情報を、より把握しやすくすることができ、間接情報を適用する場合は、微気象要素情報そのものを適用する場合に比較して、ユーザにとっての利便性を、より向上させることができる。
【0017】
請求項5に記載の本発明に係る微気象要素推定装置は、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の微気象要素推定装置であって、前記微気象要素推定モデルが、人工知能によるモデルであるものである。
【0018】
請求項5に記載の本発明に係る微気象要素推定装置によれば、微気象要素推定モデルを人工知能によるモデルとすることで、微気象要素推定モデルを、統計的手法を用いたモデルとする場合に比較して、より簡易かつ高精度に微気象要素を推定することができる。
【0019】
請求項6に記載の本発明に係る微気象要素推定装置は、請求項1~請求項5の何れか1項に記載の微気象要素推定装置であって、学習用動画像及び学習用微気象要素情報を取得する学習用情報取得部と、前記学習用情報取得部によって取得された学習用動画像を入力情報とし、学習用微気象要素情報を出力情報として前記微気象要素推定モデルの機械学習を行う学習部と、を更に備えたものである。
【0020】
請求項6に記載の本発明に係る微気象要素推定装置によれば、学習用動画像及び学習用微気象要素情報を取得し、取得した学習用動画像を入力情報とし、学習用微気象要素情報を出力情報として微気象要素推定モデルの機械学習を行うことで、より簡易に、微気象要素推定モデルを構築することができる。
【0021】
請求項7に記載の本発明に係る微気象要素推定装置は、請求項6に記載の微気象要素推定装置であって、再学習用動画像及び再学習用微気象要素情報を取得する再学習用情報取得部と、前記再学習用情報取得部によって取得された再学習用動画像を入力情報とし、再学習用微気象要素情報を出力情報として前記微気象要素推定モデルの機械学習を再度行う再学習部と、を更に備えたものである。
【0022】
請求項7に記載の本発明に係る微気象要素推定装置によれば、再学習用動画像及び再学習用微気象要素情報を取得し、取得した再学習用動画像を入力情報とし、再学習用微気象要素情報を出力情報として微気象要素推定モデルの機械学習を再度行うことで、より高精度に、微気象要素を推定することができる。
【0023】
請求項8に記載の本発明に係る微気象要素推定装置は、請求項1~請求項7の何れか1項に記載の微気象要素推定装置であって、予め定められた基準情報を用いて、前記推定部によって推定された微気象要素情報を調整する調整部、を更に備えたものである。
【0024】
請求項8に記載の本発明に係る微気象要素推定装置によれば、予め定められた基準情報を用いて、推定した微気象要素情報を調整することで、より高精度に、微気象要素を推定することができる。
【0025】
請求項9に記載の本発明に係る微気象要素推定プログラムは、予め定められた種類の微気象要素に相関を有する画像要素が含まれる動画像が入力情報とされ、前記微気象要素を示す微気象要素情報が出力情報とされた微気象要素推定モデルに対し、推定対象領域の動画像を入力することで前記微気象要素情報を推定し、推定した前記微気象要素情報に関する微気象要素関連情報を提示する、処理をコンピュータに実行させる。
【0026】
請求項9に記載の本発明に係る微気象要素推定プログラムによれば、予め定められた種類の微気象要素に相関を有する画像要素が含まれる動画像が入力情報とされ、当該微気象要素を示す微気象要素情報が出力情報とされた微気象要素推定モデルに対し、推定対象領域の動画像を入力することで微気象要素情報を推定し、推定した微気象要素情報に関する微気象要素関連情報を提示することで、気象シミュレーションを行う場合に比較して、より容易に微気象要素を推定することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、気象シミュレーションを行う場合に比較して、より容易に微気象要素を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施形態に係る微気象要素推定システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る微気象要素推定装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る微気象要素推定モデルによる微気象要素の推定法の説明に供する模式図である。
【
図4】実施形態に係る微気象要素推定装置の、微気象要素推定モデルの学習時における機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】実施形態に係る微気象要素推定装置の、微気象要素推定モデルの再学習時における機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】実施形態に係る微気象要素推定装置の、微気象要素推定モデルの運用時における機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】実施形態に係る学習用情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
【
図8】実施形態に係る再学習用情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
【
図9】実施形態に係る学習処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】実施形態に係る再学習処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】実施形態に係る初期情報入力画面の構成の一例を示す正面図である。
【
図12】実施形態に係る微気象要素推定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】実施形態に係る推定結果画面の構成の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態例を詳細に説明する。なお、本実施形態では、本発明の微気象要素として、風速、日射量、グローブ温度、降水量、黄砂、雷、及び竜巻を適用した場合について説明するが、これに限るものではない。例えば、これらの微気象要素に対して、気温、湿度、降雪量、花粉、霜、虹、霧、靄、及び地震の震度を含めて、これらの微気象要素の少なくとも1つの要素を、本発明の微気象要素として適用する形態としてもよい。
【0030】
まず、
図1を参照して、本実施形態に係る微気象要素推定システム1の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る微気象要素推定システム1の構成の一例を示すブロック図である。
【0031】
図1に示すように、本実施形態に係る微気象要素推定システム1は、本システムの中心的な役割を担う微気象要素推定装置10を含む。また、本実施形態に係る微気象要素推定システム1は、後述する微気象要素推定モデルを学習させる際の学習用情報の収集に用いる撮影装置30A、30B、・・・及び観測装置40A、40B、・・・を含む。また、本実施形態に係る微気象要素推定システム1は、微気象要素推定モデルの再学習の際、及び微気象要素情報の推定を行う(運用する)際に用いる撮影装置50を含む。また、本実施形態に係る微気象要素推定システム1は、微気象要素推定モデルを再学習させる際の学習用情報の収集に用いる観測装置70を含む。更に、本実施形態に係る微気象要素推定システム1は、各種気象情報を蓄積する気象情報サーバ80と、各種データベースを蓄積する情報蓄積装置90と、を含む。以下では、微気象要素推定モデルの再学習用に撮影装置50及び観測装置70によって得られる情報を「再学習用情報」という。
【0032】
なお、以下では、撮影装置30A、30B、・・・を区別することなく説明する場合は、単に「撮影装置30」と総称する。また、以下では、観測装置40A、40B、・・・を区別することなく説明する場合は、単に「観測装置40」と総称する。また、
図1では図示を省略するが、撮影装置50及び観測装置70は、微気象要素推定システム1が微気象要素の推定対象とする地域毎に設けられている。
【0033】
本実施形態に係る情報蓄積装置90は不揮発性の記憶部92を備えている。記憶部92はHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部92には、学習用情報データベース92A及び再学習用情報データベース92Bが記憶されている。学習用情報データベース92A及び再学習用情報データベース92Bについては、詳細を後述する。
【0034】
微気象要素推定装置10と、撮影装置30と、観測装置40と、撮影装置50と、観測装置70と、気象情報サーバ80と、情報蓄積装置90とは、ネットワークNを介して接続されている。微気象要素推定装置10は、撮影装置30、観測装置40、撮影装置50、観測装置70、気象情報サーバ80、及び情報蓄積装置90とネットワークNを介して相互に通信可能とされている。なお、本実施形態では、ネットワークNとしてインターネット、電話回線等の公共の通信回線を適用しているが、この形態に限定されるものではない。ネットワークNとして、例えば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の企業内の通信回線を適用してもよく、これらの企業内の通信回線及び公共の通信回線を組み合わせて適用してもよい。また、本実施形態では、ネットワークNとして有線の通信回線を適用しているが、この形態に限定されるものではなく、無線の通信回線を適用してもよく、有線及び無線の各通信回線を組み合わせて適用してもよい。
【0035】
本実施形態に係る撮影装置30は、上述したように、学習用情報を収集するためのものである。そして、本実施形態に係る微気象要素推定システム1では、撮影装置30として、日本の各地に設けられている監視カメラで、かつ、微気象要素推定システム1が推定対象としている微気象要素に相関を有する画像要素が画角内に含まれるカメラが用いられている。但し、この形態に限るものではなく、学習用情報の収集のための専用のカメラを撮影装置30として適用する形態としてもよい。また、本実施形態に係る微気象要素推定システム1では、撮影装置30として、カラーの動画像を撮影するカメラを適用しているが、これに限るものではない。例えば、モノクロの動画像を撮影するカメラを撮影装置30として適用する形態としてもよい。
【0036】
また、本実施形態に係る観測装置40は、微気象要素推定システム1が推定対象としている微気象要素の一部を計測することができるものとされており、上述した微気象要素のうち、風速、日射量、及びグローブ温度を計測することができるものである。
【0037】
一方、本実施形態に係る撮影装置50は、上述したように、微気象要素推定モデルの再学習を行う際、及び微気象要素情報を推定する際に用いられるものである。そして、本実施形態に係る撮影装置50は、微気象要素情報の推定対象とする地点において、推定対象とする微気象要素に相関を有する画像要素が画角内に含まれるように設置されている。本実施形態に係る微気象要素推定システム1では、撮影装置50として、推定対象地点における、対象とする微気象要素に相関を有する画像要素が画角内に含まれるように設置された監視カメラが用いられている。但し、この形態に限るものではなく、微気象要素の推定に専用のカメラを撮影装置50として適用する形態としてもよい。また、本実施形態に係る微気象要素推定システム1では、撮影装置50としても、撮影装置30と同様に、カラーの動画像を撮影するカメラを適用しているが、これに限るものではない。例えば、モノクロの動画像を撮影するカメラを撮影装置50として適用する形態としてもよい。
【0038】
また、本実施形態に係る観測装置70は、上述したように、再学習用情報の収集に用いるものであり、観測装置40と同様の微気象要素が計測されるものとして構成されている。
【0039】
更に、本実施形態に係る気象情報サーバ80は、微気象要素推定システム1が推定対象としている微気象要素のうち、観測装置40及び観測装置70では計測できない微気象要素(本実施形態では、降水量、黄砂、雷、及び竜巻)を示す情報(以下、「気象情報」という。)を逐次蓄積するサーバである。なお、気象情報サーバ80によって記憶される気象情報は、気象庁、ウェザーニュース等によって公開されている情報から得ることができる。
【0040】
ここで、微気象要素推定装置10、気象情報サーバ80、及び情報蓄積装置90の例としては、パーソナルコンピュータ及びサーバコンピュータ等の各種コンピュータが挙げられる。
【0041】
次に、
図2を参照して、本実施形態に係る微気象要素推定装置10のハードウェア構成を説明する。
図2は、本実施形態に係る微気象要素推定装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0042】
本実施形態に係る微気象要素推定装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、一時記憶領域としてのメモリ12、不揮発性の記憶部13、キーボードとマウス等の入力部14、液晶ディスプレイ等の表示部15、媒体読み書き装置(R/W)16及び通信インタフェース(I/F)部18を備えている。CPU11、メモリ12、記憶部13、入力部14、表示部15、媒体読み書き装置16及び通信I/F部18はバスBを介して互いに接続されている。媒体読み書き装置16は、記録媒体17に書き込まれている情報の読み出し及び記録媒体17への情報の書き込みを行う。
【0043】
記憶部13はHDD、SSD、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部13には、学習プログラム13A、再学習プログラム13B、及び微気象要素推定プログラム13Cが記憶されている。これらの各プログラムは、当該各プログラムが書き込まれた記録媒体17が媒体読み書き装置16にセットされ、媒体読み書き装置16が記録媒体17からの上記各プログラムの読み出しを行うことで、記憶部13へ記憶(インストール)される。CPU11は、学習プログラム13A、再学習プログラム13B、及び微気象要素推定プログラム13Cの各プログラムを記憶部13から順次読み出してメモリ12に展開し、当該各プログラムが有するプロセスを順次実行する。
【0044】
また、記憶部13には、微気象要素推定モデル13Dが記憶される。本実施形態に係る微気象要素推定モデル13Dは、微気象要素推定システム1が推定対象としている微気象要素(以下、単に「微気象要素」という。)に相関を有する画像要素が含まれる動画像(以下、単に「動画像」という。)が入力情報とされている。また、本実施形態に係る微気象要素推定モデル13Dは、上記微気象要素を示す微気象要素情報が出力情報とされている。
【0045】
なお、本実施形態に係る微気象要素推定システム1では、上述したように、微気象要素の種類として、風速、日射量、グローブ温度、降水量、黄砂、雷、及び竜巻を適用している。また、本実施形態では、上述したように、微気象要素推定モデル13Dの学習時において用いられる動画像が、撮影装置30による撮影によって得られたものとされ、再学習時及び運用時において用いられる動画像が、撮影装置50による撮影によって得られたものとされている。
【0046】
本実施形態に係る微気象要素推定モデル13Dは、CNN(Convolutional Neural Network、畳み込みニューラルネットワーク)を用いたAI(Artificial Intelligence、人工知能)によるモデルとされているが、これに限るものではない。RNN(Recurrent Neural Network、回帰型ニューラルネットワーク)の一種であるLSTM(Long Short Term Memory)ネットワーク等といったCNN以外のAI等の他の機械学習モデルを微気象要素推定モデル13Dとして適用する形態としてもよい。
【0047】
次に、
図3を参照して、本実施形態に係る微気象要素推定モデル13Dによる微気象要素の推定法について説明する。
図3は、本実施形態に係る微気象要素推定モデル13Dによる微気象要素の推定法の説明に供する模式図である。
【0048】
図3に示すように、本実施形態に係る微気象要素推定モデル13Dでは、撮影装置50によって得られた動画像60の画角内に含まれる、推定対象とする微気象要素に相関を有する画像要素(以下、単に「画像要素」という。)を用いて、対応する微気象要素を推定する。例えば、推定対象とする微気象要素が風速である場合は、画像要素として木のそよぎを示す画像が用いられ、推定対象とする微気象要素が日射量又はグローブ温度である場合は、画像要素として地表面の明るさを示す画像が用いられる。また、例えば、推定対象とする微気象要素が降水量又は黄砂である場合は、画像要素として背景の霞みを示す画像が用いられ、推定対象とする微気象要素が雷又は竜巻である場合は、画像要素として上空の様子を示す画像が用いられる。
【0049】
本実施形態に係る微気象要素推定システム1では、微気象要素推定モデル13Dの学習を、撮影装置30による撮影によって得られた動画像を入力情報とし、当該動画像の撮影時における微気象要素情報を出力情報として行う。また、本実施形態に係る微気象要素推定システム1では、微気象要素推定モデル13Dの再学習を、撮影装置50による撮影によって得られた動画像を入力情報とし、当該動画像の撮影時における微気象要素情報を出力情報として行う。
【0050】
この学習及び再学習を行う際に適用する微気象要素のうち、降水量、黄砂、雷、及び竜巻については観測装置40及び観測装置70では得ることができないため、これらの微気象要素については、気象情報サーバ80から取得するものとしている。
【0051】
但し、降水量、黄砂、雷、及び竜巻の各情報の取得方法は、気象情報から取得する方法に限るものではない。例えば、雷については、インターネット<URL:https://akizukidenshi.com/catalog/g/gK-08685/>等に掲載されている雷センサを用いて検出する形態としてもよい。また、例えば、竜巻については、インターネット<URL:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/tornado3-1.html>等に掲載されている気象ドップラーレーダを用いて検出する形態としてもよい。更に、例えば、黄砂については、インターネット<URL:https://www.mitsubishielectric.co.jp/corporate/randd/list/appliance/b205/index.html>等に掲載されている空気質センサを用いて検出する形態としてもよい。
【0052】
次に、
図4を参照して、本実施形態に係る微気象要素推定装置10の、微気象要素推定モデル13Dの学習時における機能的な構成について説明する。
図4は、本実施形態に係る微気象要素推定装置10の、微気象要素推定モデル13Dの学習時における機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0053】
図4に示すように、微気象要素推定モデル13Dの学習時における微気象要素推定装置10は、学習用情報取得部11A及び学習部11Bを含む。微気象要素推定装置10のCPU11が学習プログラム13Aを実行することで、学習用情報取得部11A及び学習部11Bとして機能する。
【0054】
本実施形態に係る学習用情報取得部11Aは、学習用動画像及び学習用微気象要素情報(上述した学習用情報に相当。)を取得する。なお、本実施形態では、上記学習用動画像を、撮影装置30による撮影によって得られて登録された動画像を、後述する学習用情報データベース92A(
図7も参照。)から読み出すことにより取得する。また、本実施形態では、上記学習用微気象要素情報を、観測装置40及び気象情報サーバ80から得られて登録された微気象要素情報を、学習用情報データベース92Aから読み出すことにより取得する。但し、この形態に限るものではなく、撮影装置30、観測装置40、及び気象情報サーバ80から学習用動画像及び学習用微気象要素情報を直接取得する形態としてもよい。
【0055】
そして、本実施形態に係る学習部11Bは、学習用情報取得部11Aによって取得された学習用動画像を入力情報とし、学習用微気象要素情報を出力情報として微気象要素推定モデル13Dの機械学習を行う。
【0056】
次に、
図5を参照して、本実施形態に係る微気象要素推定装置10の、微気象要素推定モデル13Dの再学習時における機能的な構成について説明する。
図5は、本実施形態に係る微気象要素推定装置10の、微気象要素推定モデル13Dの再学習時における機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0057】
図5に示すように、微気象要素推定モデル13Dの再学習時における微気象要素推定装置10は、再学習用情報取得部11C及び再学習部11Dを含む。微気象要素推定装置10のCPU11が再学習プログラム13Bを実行することで、再学習用情報取得部11C及び再学習部11Dとして機能する。
【0058】
本実施形態に係る再学習用情報取得部11Cは、再学習用動画像及び再学習用微気象要素情報(上述した再学習用情報に相当。)を取得する。なお、本実施形態では、上記再学習用動画像を、撮影装置50による撮影によって得られて登録された動画像を、後述する再学習用情報データベース92B(
図8も参照。)から読み出すことにより取得する。また、本実施形態では、上記再学習用微気象要素情報を、観測装置70及び気象情報サーバ80から得られて登録された微気象要素情報を再学習用情報データベース92Bから読み出すことにより取得する。但し、この形態に限るものではなく、撮影装置50、観測装置70、及び気象情報サーバ80から再学習用動画像及び再学習用微気象要素情報を直接取得する形態としてもよい。
【0059】
そして、本実施形態に係る再学習部11Dは、再学習用情報取得部11Cによって取得された再学習用動画像を入力情報とし、再学習用微気象要素情報を出力情報として微気象要素推定モデル13Dの機械学習を再度行う。
【0060】
次に、
図6を参照して、本実施形態に係る微気象要素推定装置10の、微気象要素推定モデル13Dの運用時における機能的な構成について説明する。
図6は、本実施形態に係る微気象要素推定装置10の、微気象要素推定モデル13Dの運用時における機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0061】
図6に示すように、微気象要素推定モデル13Dの運用時における微気象要素推定装置10は、推定部11E、調整部11F、及び提示部11Gを含む。微気象要素推定装置10のCPU11が微気象要素推定プログラム13Cを実行することで、推定部11E、調整部11F、及び提示部11Gとして機能する。
【0062】
本実施形態に係る推定部11Eは、微気象要素推定モデル13Dに対し、推定対象領域の動画像を入力することで微気象要素情報を推定する。
【0063】
また、本実施形態に係る調整部11Fは、予め定められた基準情報を用いて、推定部11Eによって推定された微気象要素情報を調整する。そして、本実施形態に係る提示部11Gは、推定部11Eによって推定され、調整部11Fによって調整された微気象要素情報に関する微気象要素関連情報(本実施形態では、微気象要素情報そのもの)を提示する。
【0064】
本実施形態では、調整部11Fによる調整対象として風速及び日射量を適用する。調整部11Fによる調整対象を風速とする場合、学習時、再学習時、及び運用時の各々で適用する動画像の画角内に、風速に応じて撓み量が変化する共通の部材(図示省略。以下、「基準部材」という。)を設けておき、この基準部材の撓み量を上記基準情報として適用する。この場合の調整部11Fによる調整方法としては、学習時及び再学習時の少なくとも一方における上記撓み量の代表値(本実施形態では、平均値)と、運用時における上記撓み量の代表値との差分が大きいほど、微気象要素推定モデル13Dによって推定された風速に対する調整量を大きくする形態が例示される。
【0065】
また、調整部11Fによる調整対象を日射量とする場合、学習時、再学習時、及び運用時の各々で適用する動画像の画角内に、日射量に応じて明るさが変化する白色面を有する基準部材を設けておき、この基準部材の明るさを上記基準情報として適用する。この場合の調整部11Fによる調整方法としては、学習時及び再学習時の少なくとも一方における上記明るさの代表値(本実施形態では、平均値)と、運用時における上記明るさの代表値との差分が大きいほど、微気象要素推定モデル13Dによって推定された日射量に対する調整量を大きくする形態が例示される。
【0066】
このように、本実施形態に係る微気象要素推定システム1では、基準部材を用いることで得られる基準情報を用いて一部の微気象要素情報を調整するため、各動画像は、画角内に基準部材が含まれるものとされる。
【0067】
このように、本実施形態では、調整部11Fによる調整で用いる基準情報として、動画像の画角内に設けた基準部材に関する物理量を適用しているが、これに限るものではない。例えば、学習時、再学習時、及び運用時において適用した動画像の撮影時における、対象とする微気象要素情報を気象庁等が公開している気象情報から取得し、取得した微気象要素情報を基準情報として適用する形態としてもよい。この場合の調整部11Fによる調整方法としては、気象情報から取得した、学習時及び再学習時の少なくとも一方における微気象要素情報と、運用時における微気象要素情報との差分が大きいほど、微気象要素推定モデル13Dによって推定された微気象要素情報に対する調整量を大きくする形態が例示される。
【0068】
また、上述したように、本実施形態に係る微気象要素推定システム1では、提示部11Gにより、調整部11Fによって調整された微気象要素情報に関する微気象要素関連情報を提示しているが、これに限るものではない。例えば、調整部11Fによる調整を行わず、微気象要素推定モデル13Dによって得られた微気象要素情報に関する微気象要素関連情報を直接提示する形態としてもよい。また、本実施形態に係る微気象要素推定システム1では、再学習部11Dにより微気象要素推定モデル13Dの再学習を行っているが、これに限るものではない。例えば、再学習部11Dによる再学習を行わず、学習部11Bによる学習によって得られた微気象要素推定モデル13Dを微気象要素情報の推定に直接用いる形態としてもよい。
【0069】
次に、
図7を参照して、本実施形態に係る学習用情報データベース92Aについて説明する。
図7は、本実施形態に係る学習用情報データベース92Aの構成の一例を示す模式図である。本実施形態に係る学習用情報データベース92Aは、微気象要素推定モデル13Dの学習に用いる情報、即ち、撮影装置30、観測装置40、及び気象情報サーバ80から得られた情報を記憶するためのものである。
【0070】
図7に示すように、本実施形態に係る学習用情報データベース92Aは、学習用動画像ID(Identification)、学習用動画像、及び微気象要素の各情報が関連付けられて記憶される。
【0071】
上記学習用動画像IDは、関連する学習用動画像群を個別に識別するために、当該学習用動画像群の各々毎に異なる情報として予め割り振られた情報であり、上記学習用動画像は、学習用動画像そのものを示す情報である。
【0072】
また、上記微気象要素は、対応する学習用動画像の撮影時における微気象要素の状況を示す情報である。例えば、微気象要素が、風速、日射量、グローブ温度、及び降水量といった数値で表されるものである場合は、上記微気象要素を示す情報として、対応する学習用動画像の撮影時における微気象要素の値の代表値(本実施形態では、平均値)を適用する。これに対し、微気象要素を示す情報が、雷、竜巻といったような数値では表されないものである場合は、上記微気象要素を示す情報として、雷が発生しているか否か、竜巻が発生しているか否かといった、対象とする微気象要素の発生の有無を示す情報を適用する。
【0073】
なお、本実施形態に係る学習用情報データベース92Aでは、学習用動画像として全国各地の地域別の動画像を適用しており、学習用動画像IDは当該地域別の動画像群毎に割り振られている。
【0074】
次に、
図8を参照して、本実施形態に係る再学習用情報データベース92Bについて説明する。
図8は、本実施形態に係る再学習用情報データベース92Bの構成の一例を示す模式図である。本実施形態に係る再学習用情報データベース92Bは、微気象要素推定モデル13Dの再学習に用いる情報、即ち、撮影装置50、観測装置70、及び気象情報サーバ80から得られた情報を記憶するためのものである。
【0075】
図8に示すように、本実施形態に係る再学習用情報データベース92Bは、再学習用動画像ID、再学習用動画像、及び微気象要素の各情報が関連付けられて記憶される。
【0076】
上記再学習用動画像IDは、関連する再学習用動画像群を個別に識別するために、当該再学習用動画像群の各々毎に異なる情報として予め割り振られた情報であり、上記再学習用動画像は、再学習用動画像そのものを示す情報である。
【0077】
また、上記微気象要素は、対応する再学習用動画像の撮影時における微気象要素の状況を示す情報であり、学習用情報データベース92Aの微気象要素を示す情報と同様の情報である。
【0078】
なお、本実施形態に係る再学習用情報データベース92Bでは、再学習用動画像として、微気象要素推定システム1の運用時における、微気象要素の推定対象とする地域別の動画像を適用しており、再学習用動画像IDは当該地域別の動画像群毎に割り振られている。
【0079】
また、本実施形態に係る微気象要素推定システム1では、学習用情報データベース92A及び再学習用情報データベース92Bにおける各動画像の1回当たりの撮影時間を、当該1回当たりの動画像を教師データの最小単位とすることを想定して、数秒(本実施形態では、5秒)程度としている。
【0080】
また、本実施形態に係る再学習用情報データベース92Bは、微気象要素推定システム1の運用時における、微気象要素推定モデル13Dによる推定精度を向上させるために、微気象要素推定モデル13Dの校正を行うためのデータベースである。この点を勘案して、再学習用情報データベース92Bにおける推定対象地域別の各情報の収集期間が定められる。例えば、風速、日射量、グローブ温度といった比較的短期間で観測できる微気象要素情報であれば、概ね1~2日程度、長くても1~2週間といった収集期間とする。これに対し、雷、竜巻といった観測に長期間を要する微気象要素に関しては1か月間~数か月といった収集期間とする。
【0081】
以下では、錯綜を回避するため、学習用情報データベース92A及び再学習用情報データベース92Bの各々が、微気象要素推定システム1の管理者等によるアノテーションを経た教師データとして適用することができるものとされている場合について説明する。
【0082】
また、図示は省略するが、本実施形態に係る情報蓄積装置90の記憶部92には、学習用情報データベース92A及び再学習用情報データベース92Bの他に、上述した学習時及び再学習時の少なくとも一方における基準情報が記憶されている。
【0083】
次に、
図9~
図13を参照して、本実施形態に係る微気象要素推定装置10の作用を説明する。
【0084】
まず、
図9を参照して、本実施形態に係る学習処理を実行する場合の微気象要素推定装置10の作用を説明する。
図9は、本実施形態に係る学習処理の一例を示すフローチャートである。
【0085】
微気象要素推定装置10のCPU11が学習プログラム13Aを実行することによって、
図9に示す学習処理が実行される。
図9に示す学習処理は、ユーザにより、学習プログラム13Aの実行を開始する指示入力が入力部14を介して行われた場合に実行される。なお、ここでは、錯綜を回避するために、学習用情報データベース92Aが構築済みである場合について説明する。
【0086】
図9のステップ100で、CPU11は、1組分の学習用動画像及び微気象要素の各情報(学習用情報)を学習用情報データベース92Aから読み出す。
【0087】
ステップ102で、CPU11は、読み出した学習用情報における学習用動画像を入力情報とし、読み出した学習用情報における微気象要素情報を出力情報(正解情報)として、微気象要素推定モデル13Dを機械学習する。ステップ104で、CPU11は、学習用情報データベース92Aに記憶されている全ての情報についてステップ102による機械学習が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ100に戻る一方、肯定判定となった場合は本学習処理を終了する。なお、ステップ100~ステップ104の処理を繰り返し実行する場合にCPU11は、それまでに学習対象としなかった学習用情報を学習対象とするようにする。
【0088】
以上の学習処理により、微気象要素推定モデル13Dが学習されることになる。
【0089】
次に、
図10を参照して、本実施形態に係る再学習処理を実行する場合の微気象要素推定装置10の作用を説明する。
図10は、本実施形態に係る再学習処理の一例を示すフローチャートである。
【0090】
微気象要素推定装置10のCPU11が再学習プログラム13Bを実行することによって、
図10に示す再学習処理が実行される。
図10に示す再学習処理は、ユーザにより、再学習プログラム13Bの実行を開始する指示入力が入力部14を介して行われた場合に実行される。なお、ここでは、錯綜を回避するために、再学習用情報データベース92Bが構築済みであり、かつ、微気象要素推定モデル13Dが学習済みである場合について説明する。
【0091】
図10のステップ200で、CPU11は、予め定められた構成とされた初期情報入力画面を表示するように表示部15を制御し、ステップ202で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0092】
図11には、本実施形態に係る初期情報入力画面の構成の一例が示されている。
図11に示すように、本実施形態に係る初期情報入力画面では、微気象要素情報の推定対象とする地域の名称(以下、「対象地域名」という。)の入力を促すメッセージが表示される。また、本実施形態に係る初期情報入力画面では、対象地域名を入力するための入力領域15Aが表示される。
【0093】
一例として
図11に示す初期情報入力画面が表示部15に表示されると、ユーザは、入力部14を用いて、微気象要素の推定対象とする地域の対象地域名を入力領域15Aに入力した後、終了ボタン15Bを指定する。ユーザによって終了ボタン15Bが指定されると、ステップ202が肯定判定となってステップ204に移行する。
【0094】
ステップ204で、CPU11は、学習済みの微気象要素推定モデル13Dを記憶部13から読み出す。ステップ206で、CPU11は、入力された対象地域名に対応する情報であり、かつ、1組分の再学習用動画像及び微気象要素の各情報(再学習用情報)を再学習用情報データベース92Bから読み出す。
【0095】
ステップ208で、CPU11は、読み出した再学習用情報における再学習用動画像を入力情報とし、読み出した再学習用情報における微気象要素情報を出力情報(正解情報)として、読み出した微気象要素推定モデル13Dを機械学習する。ステップ210で、CPU11は、再学習用情報データベース92Bに記憶されている、対象地域名に対応する地域に対応する全ての情報についてステップ208による機械学習が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ206に戻る一方、肯定判定となった場合はステップ212に移行する。なお、ステップ206~ステップ210の処理を繰り返し実行する場合にCPU11は、それまでに学習対象としなかった再学習用情報を学習対象とするようにする。
【0096】
ステップ212で、CPU11は、以上の処理によって再学習が行われた微気象要素推定モデル13Dを、対応する対象地域を示す情報に関連付けて記憶部13に記憶し、その後に本再学習処理を終了する
【0097】
以上の再学習処理により、微気象要素推定モデル13Dが対象地域で得られた再学習用情報が用いられて再学習され、対象地域別に記憶部13に登録されることになる。なお、微気象要素推定装置10は、以上の学習処理及び再学習処理の実行に並行して、上述した基準情報の導出及び記憶部13への記憶を行う。
【0098】
次に、
図12~
図13を参照して、微気象要素推定モデル13Dを運用する場合における微気象要素推定装置10の作用を説明する。
図12は、本実施形態に係る微気象要素推定処理の一例を示すフローチャートである。
【0099】
微気象要素推定装置10のCPU11が微気象要素推定プログラム13Cを実行することによって、
図12に示す微気象要素推定処理が実行される。
図12に示す微気象要素推定処理は、ユーザにより、微気象要素推定プログラム13Cの実行を開始する指示入力が入力部14を介して行われた場合に実行される。なお、錯綜を回避するために、以下では、全ての対象地域における微気象要素推定モデル13Dの再学習が終了している場合について説明する。
【0100】
図12のステップ300で、CPU11は、再学習処理のステップ200の処理で表示したものと同様の初期情報入力画面(
図11も参照。)を表示するように表示部15を制御し、ステップ302で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0101】
一例として
図11に示す初期情報入力画面が表示部15に表示されると、ユーザは、入力部14を用いて、微気象要素の推定対象とする地域の対象地域名を入力領域15Aに入力した後、終了ボタン15Bを指定する。
【0102】
ユーザによって終了ボタン15Bが指定されると、ステップ302が肯定判定となってステップ304に移行する。
【0103】
ステップ304で、CPU11は、入力された対象地域名が示す対象地域(以下、単に「対象地域」という。)に関連付けられて記憶部13に記憶された微気象要素推定モデル13Dを用いて微気象要素情報を導出する微気象要素導出処理を以下に示すように実行する。
【0104】
即ち、CPU11は、まず、対象地域に関連付けられた微気象要素推定モデル13Dに対して、対象地域に設けられた撮影装置50による撮影によって得られている動画像の入力を開始する。
【0105】
微気象要素推定モデル13Dへの動画像の入力が開始されると、当該微気象要素推定モデル13Dから当該動画像から推定される微気象要素情報が順次出力される。そこで、CPU11は、微気象要素推定モデル13Dから出力された微気象要素情報を順次取得し、取得した微気象要素情報を記憶部13に順次記憶する。
【0106】
そして、CPU11は、対象とする全ての微気象要素情報の取得及び記憶が終了すると、微気象要素導出処理を終了し、ステップ306に移行する。なお、この微気象要素導出処理の実行時に、CPU11は、上述した基準情報を撮影装置50によって得られた動画像から導出し、記憶部13に記憶する。
【0107】
ステップ306で、CPU11は、微気象要素導出処理において記憶した全ての微気象要素情報、及び基準情報(以下、「第1基準情報」という。)と、学習時及び再学習時の少なくとも一方において記憶した基準情報(以下、「第2基準情報」という。)と、を記憶部13から読み出す。ステップ308で、CPU11は、読み出した第1基準情報及び第2基準情報を用いて、読み出した微気象要素情報における風速及び日射量を示す情報を、上述したように調整する。
【0108】
ステップ310で、CPU11は、以上の処理を経た微気象要素情報を用いて、予め定められた構成とされた推定結果画面を表示するように表示部15を制御し、ステップ312で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0109】
図13には、本実施形態に係る推定結果画面の構成の一例が示されている。
図13に示すように、本実施形態に係る推定結果画面では、対象地域の名称を示す情報と共に、一部調整処理が施された微気象要素情報が表示される。従って、ユーザは、推定結果画面を参照することで、対象地域における微気象要素情報の状況を容易に把握することができる。
【0110】
一例として
図13に示す推定結果画面が表示部15に表示されると、ユーザは、推定された微気象要素情報の内容を把握した後、入力部14を用いて終了ボタン15Bを指定する。ユーザによって終了ボタン15Bが指定されると、本微気象要素推定処理が終了する。
【0111】
以上説明したように、本実施形態に係る微気象要素推定装置10は、予め定められた種類の微気象要素に相関を有する画像要素が含まれる動画像が入力情報とされ、当該微気象要素を示す微気象要素情報が出力情報とされた微気象要素推定モデルに対し、推定対象領域の動画像を入力することで微気象要素情報を推定する推定部11Eと、推定部11Eによって推定された微気象要素情報に関する微気象要素関連情報を提示する提示部11Gと、を備えている。従って、気象シミュレーションを行う場合に比較して、より容易に微気象要素を推定することができる。
【0112】
また、本実施形態によれば、予め定められた種類の微気象要素として、風速、日射量、グローブ温度、降水量、黄砂、雷、及び竜巻を適用している。従って、適用した微気象要素を推定することができる。
【0113】
また、本実施形態によれば、上記画像要素を、各々、推定対象とする微気象要素が雷又は竜巻である場合は上空の様子を示す画像とし、推定対象とする微気象要素が降水量又は黄砂である場合は背景のかすみを示す画像とし、推定対象とする微気象要素が風速である場合は木のそよぎを示す画像とし、推定対象とする微気象要素が日射量又はグローブ温度である場合は地表面の明るさを示す画像としている。従って、何れの微気象要素についても、画像要素として容易に動画像に含めることができる結果、より容易に微気象要素を推定することができる。
【0114】
また、本実施形態によれば、微気象要素関連情報を、推定した微気象要素情報そのものとしている。従って、推定された微気象要素情報を、より把握しやすくすることができる。
【0115】
また、本実施形態によれば、微気象要素推定モデルを人工知能によるモデルとしている。従って、微気象要素推定モデルを、統計的手法を用いたモデルとする場合に比較して、より簡易かつ高精度に微気象要素を推定することができる。
【0116】
また、本実施形態によれば、学習用動画像及び学習用微気象要素情報を取得し、取得した学習用動画像を入力情報とし、学習用微気象要素情報を出力情報として微気象要素推定モデルの機械学習を行っている。従って、より簡易に、微気象要素推定モデルを構築することができる。
【0117】
また、本実施形態によれば、再学習用動画像及び再学習用微気象要素情報を取得し、取得した再学習用動画像を入力情報とし、再学習用微気象要素情報を出力情報として微気象要素推定モデルの機械学習を再度行っている。従って、より高精度に、微気象要素を推定することができる。
【0118】
更に、本実施形態によれば、予め定められた基準情報を用いて、推定した微気象要素情報を調整している。従って、より高精度に、微気象要素を推定することができる。
【0119】
なお、上記実施形態では、提示する微気象要素関連情報として、推定した微気象要素情報そのものを適用した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、微気象要素情報によって間接的に示される間接情報を、微気象要素関連情報として適用する形態としてもよい。この場合、上記間接情報としては、「風速がかなり強いため、外で洗濯物を干すのはお勧めしません。」、「対象地域における快適指数は70%です」等といった情報を例示することができる。この場合、微気象要素情報そのものを適用する場合に比較して、ユーザにとっての利便性を、より向上させることができる。
【0120】
また、上記実施形態では、単一の動画像から複数種類の微気象要素情報を推定する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、単一の動画像から単一種類の微気象要素情報を推定する形態としてもよい。この場合、上記動画像には、当該種類の微気象要素情報に相関を有する画像要素を含めるようにする。この場合、単一の動画像から1種類の微気象要素情報しか推定することができなくなるが、当該1種類の微気象要素情報に特化して微気象要素推定モデル13Dの学習を行うことができる結果、上記実施形態に比較して、微気象要素情報の推定精度を向上させることができる。
【0121】
また、上記実施形態では、推定する時点における微気象要素情報を推定対象とした場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、1時間後、半日後、1日後といった比較的近い未来の微気象要素情報を推定対象とする形態としてもよい。この場合、学習時や再学習時においても、動画像の取得時から推定対象とする時間が経過した後の微気象要素情報を教師データとして適用する。
【0122】
また、上記実施形態では、動画像のみを微気象要素情報の推定に用いる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、動画像に加えて、季節、時刻、撮影画角内に含まれる植物の種類等といった推定対象に関する状況を限定する付加情報も用いて微気象要素情報を推定する形態としてもよい。この場合の形態例としては、微気象要素推定モデル13Dによって推定された微気象要素情報を付加情報により調整する形態や、付加情報の種類毎に微気象要素推定モデル13Dを構築する形態等を例示することができる。なお、この形態の場合、動画像には、撮影時刻、撮影位置といったメタデータが付与されている場合が多いため、当該メタデータを利用することで、比較的簡易に実現することができる。
【0123】
また、上記実施形態において例示した各種画面の構成は各々一例であり、変更を加えてもよいことは言うまでもない。
【0124】
また、上記実施形態では、特に言及しなかったが、微気象要素推定処理によって得られた微気象要素情報をデータベース化する等によって記憶しておき、単なる表示に留まらず、他の評価等に再利用する形態としてもよい。
【0125】
また、上記実施形態において、例えば、学習用情報取得部11A、学習部11B、再学習用情報取得部11C、再学習部11D、推定部11E、調整部11F、及び提示部11Gの各処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0126】
処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0127】
処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0128】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0129】
1 微気象要素推定システム
10 微気象要素推定装置
11 CPU
11A 学習用情報取得部
11B 学習部
11C 再学習用情報取得部
11D 再学習部
11E 推定部
11F 調整部
11G 提示部
12 メモリ
13 記憶部
13A 学習プログラム
13B 再学習プログラム
13C 微気象要素推定プログラム
13D 微気象要素推定モデル
14 入力部
15 表示部
16 媒体読み書き装置
17 記録媒体
18 通信I/F部
30 撮影装置
40 観測装置
50 撮影装置
60 動画像
70 観測装置
80 気象情報サーバ
90 情報蓄積装置
92 記憶部
92A 学習用情報データベース
92B 再学習用情報データベース