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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116303
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】移動式除草装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 21/04 20060101AFI20230815BHJP
   A01M 21/00 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
A01M21/04 Z
A01M21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019039
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】谷澤 好人
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA19
2B121DA16
2B121DA17
2B121DA62
2B121DA63
2B121FA15
(57)【要約】
【課題】安全性を高めつつレーザ照射によって不要植物を除去できる移動式除草装置を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、植物の上方から、植物に向けてレーザ光を照射するように構成されたレーザ照射器と、レーザ光の照射空間を囲むように配置された、遮光性かつ筒状の遮蔽壁と、レーザ照射器及び遮蔽壁を保持すると共に、移動機構を有する装置本体と、を備える移動式除草装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の上方から、前記植物に向けてレーザ光を照射するように構成されたレーザ照射器と、
前記レーザ光の照射空間を囲むように配置された、遮光性かつ筒状の遮蔽壁と、
前記レーザ照射器及び前記遮蔽壁を保持すると共に、移動機構を有する装置本体と、
を備える、移動式除草装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動式除草装置であって、
前記遮蔽壁は、少なくとも前記装置本体の移動時に、地面との間に上下方向の隙間が設けられるように配置される、移動式除草装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の移動式除草装置であって、
前記遮蔽壁は、
開口部と、
前記開口部の上方から前記遮蔽壁の径方向内側かつ下方に向かって延伸すると共に、上下方向において前記開口部と重なる傾斜部と、
を有する、移動式除草装置。
【請求項4】
請求項3に記載の移動式除草装置であって、
前記傾斜部は、水平方向において前記開口部と重なる、移動式除草装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の移動式除草装置であって、
前記遮蔽壁は、前記傾斜部を上下方向に揺動させるように構成された角度調整機構を有する、移動式除草装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動式除草装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ照射によって、農地における不要植物(つまり雑草)を除去する除草装置が公知である(特許文献1-3参照)。この除草装置では、不要植物の上方からレーザ光を照射することで、不要植物に損傷を与えて枯死させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-53941号公報
【特許文献2】特開2015-53942号公報
【特許文献3】特開2015-62412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不要植物に損傷を与えるためのレーザ光は、人体(特に網膜)にとって有害である。そのため、レーザ光を用いた除草装置では、散乱したレーザ光から近くの作業者を保護する必要がある。
【0005】
本開示の一局面は、安全性を高めつつレーザ照射によって不要植物を除去できる移動式除草装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、植物の上方から、植物に向けてレーザ光を照射するように構成されたレーザ照射器と、レーザ光の照射空間を囲むように配置された、遮光性かつ筒状の遮蔽壁と、レーザ照射器及び遮蔽壁を保持すると共に、移動機構を有する装置本体と、を備える移動式除草装置である。
【0007】
このような構成によれば、遮光性を有する遮蔽壁によってレーザ光の照射領域外への散乱が抑制される。これにより、作業者がレーザ光から保護されるため、除草作業時の安全性を高めることができる。
【0008】
本開示の一態様では、遮蔽壁は、少なくとも装置本体の移動時に、地面との間に上下方向の隙間が設けられるように配置されてもよい。このような構成によれば、移動式除草装置の移動時に遮蔽壁が農作物に接触することが避けられる。その結果、農作物の損傷が抑制される。
【0009】
本開示の一態様では、遮蔽壁は、開口部と、開口部の上方から遮蔽壁の径方向内側かつ下方に向かって延伸すると共に、上下方向において開口部と重なる傾斜部と、を有してもよい。このような構成によれば、レーザ光の散乱を抑制しつつ、傾斜部の延伸方向に沿って作業者が開口部から遮蔽壁の内部を視認することができる。そのため、安全性を維持しつつ、移動式除草装置の作業状況を作業者が確認することができる。
【0010】
本開示の一態様では、傾斜部は、水平方向において開口部と重なってもよい。このような構成によれば、上方から照射されるレーザ光の開口部からの漏洩が抑制される。そのため、安全性の向上を促進できる。
【0011】
本開示の一態様では、遮蔽壁は、傾斜部を上下方向に揺動させるように構成された角度調整機構を有してもよい。このような構成によれば、作業者が遮蔽壁の内部を視認できる距離を調整することができる。その結果、安全性の向上を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態における移動式除草装置の模式図である。
図2図2は、図1の移動式除草装置における制御装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、図1の移動式除草装置における遮蔽壁の模式図である。
図4図4A及び図4Bは、図3の遮蔽壁における開口部及び遮蔽部を示す模式図である。
図5図5A及び図5Bは、図3の遮蔽壁における角度調整機構を示す模式図である。
図6図6A及び図6Bは、図3の遮蔽壁における上部及び下部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す移動式除草装置1は、農地において、農作物P1の周辺に発生した不要植物P2(つまり雑草)を除去するための装置である。移動式除草装置1は、装置本体2と、レーザ照射器3と、カメラ4と、制御装置5と、遮蔽壁6とを備える。
【0014】
<装置本体>
装置本体2は、レーザ照射器3、カメラ4、制御装置5、及び遮蔽壁6を保持する筐体である。また、装置本体2は、移動機構を有する。
【0015】
本実施形態の移動機構は、複数の車輪21によって構成されている。装置本体2は、複数の車輪21によって、農地上を走行するように構成されている。移動機構は、モータによって車輪21を回転させる電動式であってもよいし、作業者が装置本体2を押す又は引くことで移動する手動式であってもよい。また、装置本体2は、移動機構として、車輪21の替わりに1以上の電動式クローラーを備えてもよい。
【0016】
<レーザ照射器>
レーザ照射器3は、不要植物P2の上方から、不要植物P2に向けてレーザ光Lを照射するように構成されている。レーザ照射器3は、ミラー等の光学素子を用いてレーザ光Lの方向を変えることで、不要植物P2の上方からレーザ光Lを照射するよう構成されていてもよい。
【0017】
レーザ照射器3は、レーザ光Lにより、不要植物P2に損傷を与える(具体的には焼損させる)ことで不要植物P2を枯死させる。レーザ光Lは、例えば不要植物P2の成長点に照射される。不要植物P2の成長点は、カメラ4が取得した画像に基づいて制御装置5によって判定される。
【0018】
レーザ照射器3としては、バッテリと、発振器と、集光部とを備える公知のレーザ照射装置が使用できる。レーザ照射器3のレーザ光の周波数は、例えば430nm以上675nm以下である。
【0019】
レーザ照射器3は、装置本体2の移動中にレーザ照射を行ってもよいし、装置本体2が停止した状態でレーザ照射を行ってもよい。レーザ照射器3は、制御装置5が識別した複数の不要植物P2に順次レーザ照射を行う。
【0020】
<カメラ>
カメラ4は、農作物P1及び不要植物P2が混在する農地を上方から撮影した画像を取得するように構成されている。
【0021】
カメラ4が取得する画像には、少なくとも1つの農作物P1、少なくとも1つの不要植物P2及びその他の物体(例えば、柵等の構造物、石等の障害物など)が含まれる。カメラ4の撮影範囲は、装置本体2の移動に伴って変化する。
【0022】
<制御装置>
制御装置5は、主にレーザ照射器3を制御する。制御装置5は、例えばプロセッサと、RAM、ROM等の記憶媒体と、通信部と、入出力部とを備えるコンピュータにより構成される。図2に示すように、制御装置5は、画像処理部51と、レーザ制御部52とを有する。
【0023】
画像処理部51は、カメラ4が撮影した画像から、不要植物P2を識別するように構成されている。画像処理部51は、公知の統計学的手法によって構築されたAI(人工知能)を用いて、不要植物P2を識別する。
【0024】
統計学的手法としては、例えば、教師あり機械学習、多変量解析等が挙げられる。教師あり機械学習では、多数のラベル(つまり教師データ)付きの植物の画像を機械学習回路にて分析することで、判定式(つまり分類器)を構築する。
【0025】
また、画像処理部51は、AIによって識別した不要植物P2の成長点を判定する。成長点は、主に植物の茎の先端にある細胞分裂の活発な組織を含む部位であり、植物の種類に応じて特定が可能である。
【0026】
レーザ制御部52は、画像処理部51によって識別された不要植物P2の座標に対するレーザ光の照射をレーザ照射器3に指示する。レーザ制御部52は、レーザ照射器3に対して、照射座標、照射時間、照射強度等を入力する。
【0027】
<遮蔽壁>
図3に示すように、遮蔽壁6は、レーザ照射器3によるレーザ光Lの照射空間を囲むように配置された筒状の部材である。
【0028】
遮蔽壁6は、例えば鋼板、樹脂板等の遮光性の材料で構成されている。遮蔽壁6の材料としては、耐候性及び耐久性の観点から、ステンレス鋼板又はメッキ鋼板が好適である。耐候性及び耐久性は、塗装等の表面処理によって高めることもできる。本実施形態では、遮蔽壁6は、レーザ光Lの照射空間を四方から囲む四角筒状である。ただし、遮蔽壁6は、四角筒状以外の多角筒状、又は円筒状であってもよい。
【0029】
遮蔽壁6は、複数の開口部61と、複数の傾斜部62とを有する。開口部61は、遮蔽壁6の外部と内部とを連通するスリットである。傾斜部62は、作業者Wの遮蔽壁6の内部への視線を遮る板状の部位である。
【0030】
図4Aに示すように、開口部61は、遮蔽壁6の上下方向に延伸する垂直部63に設けられた孔から、傾斜部62と垂直部63との間にわたって存在する空間である。開口部61は、水平方向に対して一定の傾斜を有する上方からの視線を遮蔽壁6の内部に通過させる。なお、開口部61内には、透光性の部材が配置されていてもよい。
【0031】
傾斜部62は、開口部61の上方から遮蔽壁6の径方向内側かつ下方に向かって延伸している。具体的には、傾斜部62は、開口部61の上端(つまり垂直部63の下端)から延伸している。ただし、傾斜部62は、必ずしも開口部61の上端から延伸しなくてもよい。つまり、傾斜部62は、必ずしも垂直部63の端部から延伸しなくてもよい。
【0032】
傾斜部62は、遮蔽壁6の内部において上方から視認される内面と、遮蔽壁6の内部において開口部61と対向すると共に、水平方向に対して傾斜した外面とを有する。傾斜部62は、遮蔽壁6の一部を内側に向かって切り起こした形状を有する。
【0033】
遮蔽壁6には、上下方向に沿って複数の開口部61と複数の傾斜部62とが交互に配置されている。複数の開口部61と複数の傾斜部62とは、遮蔽壁6の内部を一定角度から視認可能とするルーバーを構成している。なお、ルーバーの構成部分は、遮蔽壁6の他の部分の材料と異なる材料で形成されてもよい。
【0034】
図4Aのルーバー構造では、傾斜部62によって、上方から照射されるレーザ光Lの開口部61からの漏洩が抑制される。そのため、安全性の向上を促進できる。なお、ルーバー構造は、遮蔽壁6の少なくとも1面に設けられればよい。
【0035】
図4Bに示すように、遮蔽壁6は、傾斜部62の下端と垂直部63とを接続する板状の接続部64を有してもよい。この場合、開口部61は、接続部64に設けられた孔によって構成される。開口部61は、例えば接続部64へのパンチングによって形成されている。接続部64は、傾斜部62の下端から遮蔽壁6の径方向外側かつ下方に向かって延伸している。
【0036】
図5Aに示すように、傾斜部62は、上下方向及び水平方向の双方において開口部61と重なっていてもよい。さらに、傾斜部62の下端部は、水平方向において垂直部63と重なっていてもよい。
【0037】
遮蔽壁6は、図5Aに示す角度調整機構65を有する。角度調整機構65は、傾斜部62を上下方向に揺動させるように構成されている。つまり、角度調整機構65は、傾斜部62の外面と垂直部63の内面との成す傾斜角Θを変化させる。角度調整機構65は、傾斜部62の上端部を垂直部63に対し揺動可能に連結するヒンジである。
【0038】
角度調整機構65によって、遮蔽壁6は、図5Aに示す開口部61が存在する開口状態と、図5Bに示す開口部61が存在しない(つまり開口部61が閉塞された)閉塞状態との間で変位することができる。
【0039】
したがって、除草作業中に遮蔽壁6を閉塞状態としつつ、遮蔽壁6の内部を確認する時に遮蔽壁6を開口状態とすることができる。また、傾斜部62の傾斜角Θの調整によって、例えば作業者Wの身長に合わせて、遮蔽壁6の内部を視認できる距離を変化させることができる。なお、傾斜角Θの好ましい範囲は、例えば15°以上45°以下である。
【0040】
さらに、傾斜部62の傾斜角Θの調整によって、日中におけるカメラ4の撮影領域の明るさを調整することができる。その結果、画像処理部51による不要植物P2の認識精度を向上させることができる。
【0041】
図6Aに示すように、遮蔽壁6は、装置本体2に連結された上部6Aと、上部6Aに下方から連結された下部6Bとを有する。下部6Bの下端は、農地の地面と離れて配置されている。具体的には、下部6Bの下端は農作物P1よりも上方に位置する。
【0042】
遮蔽壁6は、下部6Bを上下方向に移動可能に構成されている。したがって、図6Bに示すように、図6Aよりも農作物P1の背が高い場合、図6Aよりも下部6Bを上方に移動させることができる。
【0043】
また、遮蔽壁6は、装置本体2の停止時には下部6Bの下端を地面に接触させ、装置本体2の走行時に下部6Bを上方に移動させるように構成されてもよい。つまり、遮蔽壁6は、少なくとも装置本体2の移動時に、地面との間に上下方向の隙間が設けられるように配置されればよい。
【0044】
移動式除草装置1は、装置本体2の走行方向に存在する農作物P1の大きさを検出するセンサを備えてもよい。制御装置5は、このセンサの検出結果に基づいて、遮蔽壁6の下部6Bを自動で上下させるように構成されてもよい。
【0045】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)遮光性を有する遮蔽壁6によってレーザ光の照射領域外への散乱が抑制される。これにより、作業者がレーザ光から保護されるため、除草作業時の安全性を高めることができる。
【0046】
(1b)装置本体2の移動時に、遮蔽壁6と地面との間に上下方向の隙間が設けられるように配置されることで、移動式除草装置1の移動時に遮蔽壁6が農作物に接触することが避けられる。その結果、農作物の損傷が抑制される。
【0047】
(1c)遮蔽壁6が開口部61と傾斜部62とを有することで、レーザ光の散乱を抑制しつつ、傾斜部62の延伸方向に沿って作業者が開口部61から遮蔽壁6の内部を視認することができる。そのため、安全性を維持しつつ、移動式除草装置1の作業状況を作業者が確認することができる。
【0048】
(1d)角度調整機構65によって作業者が遮蔽壁6の内部を視認できる距離を調整することができる。その結果、安全性の向上を促進できる。
【0049】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0050】
(2a)上記実施形態の移動式除草装置において、遮蔽壁は、必ずしも開口部及び傾斜部を有しなくてもよい。
【0051】
(2b)上記実施形態の移動式除草装置において、装置本体の移動形態は走行に限定されない。移動式除草装置は、例えば、飛行により移動してもよい。
【0052】
(2c)上記実施形態の移動式除草装置は、必ずしも画像処理部を備えなくてもよい。例えば、作業者による不要植物の位置の入力に基づいて、レーザ照射器がレーザ光を照射してもよい。
【0053】
(2d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0054】
1…移動式除草装置、2…装置本体、3…レーザ照射器、4…カメラ、5…制御装置、
6…遮蔽壁、6A…上部、6B…下部、21…車輪、51…画像処理部、
52…レーザ制御部、61…開口部、62…傾斜部、63…垂直部、64…接続部、
65…角度調整機構。
図1
図2
図3
図4
図5
図6