(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116312
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】移動式除草装置
(51)【国際特許分類】
A01M 21/00 20060101AFI20230815BHJP
G06T 7/62 20170101ALI20230815BHJP
【FI】
A01M21/00 Z
G06T7/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019048
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】谷澤 好人
【テーマコード(参考)】
2B121
5L096
【Fターム(参考)】
2B121AA19
2B121DA17
2B121DA62
2B121DA63
2B121EA25
2B121EA26
5L096BA08
5L096BA18
5L096CA02
5L096DA02
5L096FA02
5L096FA59
5L096FA64
5L096GA51
5L096HA11
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】不要植物を効率的に除去できる移動式除草装置を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、植物を上方から撮影した画像を取得するように構成されたカメラと、植物の上方から、植物に向けてレーザ光を照射するように構成されたレーザ照射器と、画像に基づいて植物の特性を判定すると共に、特性に基づいてレーザ光の照射量を調整するように構成された制御装置と、カメラ及びレーザ照射器を保持すると共に、移動機構を有する装置本体と、を備える移動式除草装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を上方から撮影した画像を取得するように構成されたカメラと、
前記植物の上方から、前記植物に向けてレーザ光を照射するように構成されたレーザ照射器と、
前記画像に基づいて前記植物の特性を判定すると共に、前記特性に基づいて前記レーザ光の照射量を調整するように構成された制御装置と、
前記カメラ及び前記レーザ照射器を保持すると共に、移動機構を有する装置本体と、
を備える、移動式除草装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動式除草装置であって、
前記制御装置は、前記レーザ光の照射出力の調整によって、前記レーザ光の照射量を調整する、移動式除草装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の移動式除草装置であって、
前記制御装置は、前記レーザ光の照射時間の調整によって、前記レーザ光の照射量を調整する、移動式除草装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の移動式除草装置であって、
前記特性には、前記植物の大きさが含まれる、移動式除草装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の移動式除草装置であって、
前記特性には、前記植物の種類が含まれる、移動式除草装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動式除草装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ照射によって、農地における不要植物(つまり雑草)を除去する除草装置が公知である(特許文献1-3参照)。この除草装置では、不要植物の上方からレーザ光を照射することで、不要植物に損傷を与えて枯死させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-53941号公報
【特許文献2】特開2015-53942号公報
【特許文献3】特開2015-62412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
農地における不要植物はできるだけ成長していない段階で除去することが好ましい。そのため、バッテリ容量、省電力、過度の照射に対する安全性等の観点から、レーザ光の照射量はこのような比較的小さい不要植物に合わせて設定される。
【0005】
しかしながら、このようにレーザ光の照射量が制限されると、想定以上に成長した不要植物が発生した場合に、レーザ光の出力不足により不要植物が十分に除去できないおそれがある。
【0006】
本開示の一局面は、不要植物を効率的に除去できる移動式除草装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、植物を上方から撮影した画像を取得するように構成されたカメラと、植物の上方から、植物に向けてレーザ光を照射するように構成されたレーザ照射器と、画像に基づいて植物の特性を判定すると共に、特性に基づいてレーザ光の照射量を調整するように構成された制御装置と、カメラ及びレーザ照射器を保持すると共に、移動機構を有する装置本体と、を備える移動式除草装置である。
【0008】
このような構成によれば、画像解析によって判定された植物の特性に基づいてレーザ光の照射量を調整することができるため、植物に過不足なくレーザ光を照射できる。その結果、バッテリ容量の増大、消費電力の上昇、及び過度のレーザ光の照射を抑制しつつ、不要植物を効率的に除去できる。
【0009】
本開示の一態様では、制御装置は、レーザ光の照射出力の調整によって、レーザ光の照射量を調整してもよい。このような構成によれば、比較的容易にレーザ光の照射量を調整できる。
【0010】
本開示の一態様では、制御装置は、レーザ光の照射時間の調整によって、レーザ光の照射量を調整してもよい。このような構成によっても、比較的容易にレーザ光の照射量を調整できる。
【0011】
本開示の一態様では、特性には、植物の大きさが含まれてもよい。このような構成によれば、植物の大きさにしたがってレーザ光の照射量を調整することができる。
【0012】
本開示の一態様では、特性には、植物の種類が含まれてもよい。このような構成によれば、植物の形状に合わせてレーザ光の照射量を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態における移動式除草装置の模式図である。
【
図2】
図2は、
図1の移動式除草装置における制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、レーザ光の照射軌跡の一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、
図2の制御装置が実行する処理を概略的に示すフロー図である。
【
図7】
図7は、
図2の制御装置が実行する処理を概略的に示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す移動式除草装置1は、農地において、農作物の周辺に発生した不要植物P(つまり雑草)を除去するための装置である。移動式除草装置1は、装置本体2と、レーザ照射器3と、カメラ4と、制御装置5とを備える。
【0015】
<装置本体>
装置本体2は、レーザ照射器3、カメラ4、及び制御装置5を保持する筐体である。また、装置本体2は、移動機構を有する。
【0016】
本実施形態の移動機構は、複数の車輪21によって構成されている。装置本体2は、複数の車輪21によって、農地上を走行するように構成されている。移動機構は、モータによって車輪21を回転させる電動式であってもよいし、作業者が装置本体2を押す又は引くことで移動する手動式であってもよい。また、装置本体2は、移動機構として、車輪21の替わりに1以上の電動式クローラーを備えてもよい。
【0017】
<レーザ照射器>
レーザ照射器3は、制御装置5によって識別された不要植物Pの上方から、不要植物Pに向けてレーザ光Lを照射するように構成されている。レーザ照射器3は、ミラー等の光学素子を用いてレーザ光Lの方向を変えることで、不要植物P2の上方からレーザ光Lを照射するよう構成されていてもよい。
【0018】
レーザ照射器3は、レーザ光Lにより、不要植物Pに損傷を与える(具体的には焼損させる)ことで不要植物Pを枯死させる。レーザ光Lは、不要植物Pの成長点又は根元に照射される。不要植物Pの成長点及び根元は、カメラ4が取得した画像に基づいて制御装置5によって判定される。
【0019】
レーザ照射器3としては、バッテリ(図示省略)と、発振器31と、反射制御部32(例えばガルバノスキャナ、MEMS等)とを備える公知のレーザ照射装置が使用できる。レーザ照射器3のレーザ光の周波数は、例えば430nm以上675nm以下である。
【0020】
レーザ照射器3は、レーザ光Lの照射方向、照射出力、及び照射時間を変更可能に構成されている。照射出力は、制御装置5から発振器31に出力される信号(例えばアナログ入力電圧)によって変更される。
【0021】
レーザ照射器3は、装置本体2の移動中にレーザ照射を行ってもよいし、装置本体2が停止した状態でレーザ照射を行ってもよい。レーザ照射器3は、制御装置5が識別した複数の不要植物Pに順次レーザ照射を行う。
【0022】
<カメラ>
カメラ4は、少なくとも1つの農作物及び少なくとも1つの不要植物Pが混在する農地を上方から撮影した画像を取得するように構成されている。
【0023】
カメラ4が取得する画像には、少なくとも1つの農作物、少なくとも1つの不要植物P及びその他の物体(例えば、柵等の構造物、石等の障害物など)が含まれる。カメラ4の撮影範囲は、装置本体2の移動に伴って変化する。
【0024】
<制御装置>
制御装置5は、主にレーザ照射器3を制御する。制御装置5は、例えばプロセッサと、RAM、ROM等の記憶媒体と、通信部と、入出力部とを備えるコンピュータにより構成される。
図2に示すように、制御装置5は、画像処理部51と、レーザ制御部52と、データベース53とを有する。
【0025】
画像処理部51は、カメラ4が撮影した画像から、不要植物Pを識別するように構成されている。画像処理部51は、公知の統計学的手法によって構築されたAI(人工知能)を用いて、不要植物Pを識別する。
【0026】
統計学的手法としては、例えば、教師あり機械学習、多変量解析等が挙げられる。教師あり機械学習では、多数のラベル(つまり教師データ)付きの植物の画像を機械学習回路にて分析することで、判定式(つまり分類器)を構築する。
【0027】
画像処理部51は、不要植物Pの識別後、さらに不要植物Pの特性を判定するように構成されている。不要植物Pの特性には、不要植物Pの大きさ及び不要植物Pの種類が含まれる。
【0028】
図3A及び
図3Bに示すように、画像処理部51は、例えば、カメラ4が撮影した画像における不要植物Pに外接する長方形Sの面積を、不要植物Pの大きさとして判定する。つまり、画像処理部51は、不要植物Pの基準方向における幅Xと、基準方向と直交する方向における幅Yとの積を不要植物Pの大きさとして求める。
【0029】
また、画像処理部51は、データベース53に記憶されている植物のデータを参照して、不要植物Pの種類(つまりカテゴリ)を判定する。具体的には、画像処理部51は、画像から不要植物Pの葉の形状、枚数、位置等を認識し、これを基に不要植物Pの種類を判定する。
【0030】
画像処理部51は、例えば、
図4Aの不要植物Pを「二葉雑草」と判定し、
図4Bの不要植物Pを「多葉雑草」と判定し、
図4Cの不要植物Pを「イネ科雑草」と判定する。なお、画像処理部51は、4種以上のカテゴリに不要植物Pを分類してもよい。
【0031】
図2に示すレーザ制御部52は、画像処理部51によって識別された不要植物Pの座標に対するレーザ光の照射をレーザ照射器3に指示する。また、レーザ制御部52は、画像処理部51が判定した不要植物Pの特性に基づいてレーザ光の照射量及び照射軌跡を調整するように構成されている。
【0032】
具体的には、レーザ制御部52は、不要植物Pの大きさ及び種類に基づいて、レーザ光の照射量(つまり不要植物Pへの照射エネルギー)を決定する。レーザ光の照射量は、レーザ光の照射出力及び照射時間に比例する。
【0033】
レーザ制御部52は、不要植物Pが大きいほどレーザ光の照射量を大きくし、不要植物Pが小さいほどレーザ光の照射量を小さくする。また、レーザ制御部52は、不要植物Pの種類によるレーザ光への耐性(つまりレーザ光による除去のしにくさ)が大きいほどレーザ光の照射量を大きくし、レーザ光への耐性が小さいほどレーザ光の照射量を小さくする。
【0034】
レーザ光の照射量は、レーザ光の照射出力及び照射時間の少なくとも一方の変更により調整される。レーザ光の照射量を大きくする調整では、照射時間は変えずに照射出力のみを大きくする、照射出力は変えずに照射時間のみを大きくする、又は照射出力及び照射時間の双方を大きくする、のいずれかの調整が行われる。
【0035】
レーザ光の照射時間は、例えば、
図4A、
図4B及び
図4Cに示すように、レーザ光の照射点の周回数によって調整される。レーザ光の照射点は、不要植物Pの成長点又は根元を中心に周回するように移動する。
【0036】
不要植物Pの大きさ及び種類に対応するレーザ光の照射出力及び照射時間は、これらの関係を記述したテーブル又は関数としてデータベース53に記憶される。テーブル又は関数に不要植物Pの大きさ及び種類が変数として入力されると、対応する照射出力及び照射時間が出力される。下記の表1は、テーブルの一例である。このように照射出力及び照射時間の双方を調整することで、照射量の調整自由度が高まる。
【0037】
【0038】
レーザ制御部52は、不要植物Pに対するレーザ光の照射軌跡(つまり照射模様)を設定する機能も有する。照射軌跡Rとしては、
図5に示すように、円、四角形、三角形等の幾何学的模様、「Z」、「V」等の文字、星型、盃型等の象形模様などが挙げられる。
【0039】
これらの照射軌跡Rは、不要植物P上を移動する照射点の経路であり、途切れの無い連続的な模様である。照射軌跡Rを形成する際の照射点の移動速度は、照射軌跡Rの全長及び繰り返し回数と、照射時間とによって調整される。
【0040】
レーザ制御部52は、レーザ照射器3に対して、上述のようにして調整された照射座標、照射出力、照射時間、照射軌跡等を入力する。レーザ照射器3は、レーザ制御部52から指示された照射出力及び照射時間にて、照射軌跡に沿って不要植物Pへレーザ光を照射する。
【0041】
<制御装置の処理>
以下、
図6のフロー図を参照しつつ、制御装置5の画像処理部51及びレーザ制御部52が実行する処理の一例について説明する。
【0042】
本処理では、まず、画像処理部51が、カメラ4が撮影した画像を取得する(ステップS110)。次に、画像処理部51は、画像から不要植物を識別した上で、不要植物の特性を判定する(ステップS120)。不要植物の特性の判定後、レーザ制御部52が、レーザ光の照射量を調整する(ステップS130)。
【0043】
図7に示す照射量調整処理では、レーザ制御部52は、不要植物の大きさが閾値以上か否か判定する(ステップS210)。不要植物の大きさが閾値以上の場合(S210:YES)、レーザ制御部52は、不要植物の種類が「A」であるか否か判定する(ステップS220)。不要植物の種類が「A」である場合(S220:YES)、レーザ制御部52は、表1における「パターン1」の照射量を設定する(ステップS230)。
【0044】
不要植物の種類が「A」でない場合(S220:NO)、レーザ制御部52は、不要植物の種類が「B」であるか否か判定する(ステップS240)。不要植物の種類が「B」である場合(S240:YES)、レーザ制御部52は、表1における「パターン2」の照射量を設定する(ステップS250)。一方、不要植物の種類が「B」でない場合(S240:NO)、レーザ制御部52は、表1における「パターン3」の照射量を設定する(ステップS260)。
【0045】
不要植物の大きさが閾値未満の場合(S210:NO)も、同様にして、レーザ制御部52は、不要植物の種類が「A」であるか否かの判定(ステップS270)及び不要植物の種類が「B」であるか否かの判定(ステップS290)により、表1における「パターン4」、「パターン5」又は「パターン6」の照射量を設定する(ステップS280、ステップS300及びステップS310)。
【0046】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)画像解析によって判定された不要植物の特性に基づいてレーザ光の照射量を調整することができるため、不要植物に過不足なくレーザ光を照射できる。その結果、バッテリ容量の増大、消費電力の上昇、及び過度のレーザ光の照射を抑制しつつ、不要植物を効率的に除去できる。
【0047】
(1b)レーザ光の照射出力の調整によって、比較的容易にレーザ光の照射量を調整できる。
(1c)レーザ光の照射時間の調整によって、比較的容易にレーザ光の照射量を調整できる。
【0048】
(1d)画像処理部51が判定する不要植物の特性に不要植物の大きさが含まれることで、植物の大きさにしたがってレーザ光の照射量を調整することができる。
(1e)画像処理部51が判定する不要植物の特性に不要植物の種類が含まれることで、植物の形状に合わせてレーザ光の照射量を調整することができる。
【0049】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0050】
(2a)上記実施形態の移動式除草装置において、制御装置は、必ずしも装置本体に保持されなくてもよい。例えば、制御装置は、農地の上又は農地から離れた施設に設置されると共に、カメラ及びレーザ照射器と無線通信を行うように構成されてもよい。
【0051】
(2b)上記実施形態の移動式除草装置において、制御装置は、植物の大きさのみ、又は植物の種類のみに応じてレーザ光の照射量を調整してもよい。また、制御装置は、植物の大きさ及び種類以外の特性に基づいてレーザ光の照射量を調整してもよい。
【0052】
(2c)上記実施形態の移動式除草装置において、装置本体の移動形態は走行に限定されない。移動式除草装置は、例えば、飛行により移動してもよい。
【0053】
(2d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0054】
1…移動式除草装置、2…装置本体、3…レーザ照射器、4…カメラ、5…制御装置、
21…車輪、31…発振器、32…反射制御部、51…画像処理部、
52…レーザ制御部、53…データベース。