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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116394
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20230815BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20230815BHJP
   F16C 32/04 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
F04D19/04 A
F16C19/16
F16C32/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195651
(22)【出願日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2022018857
(32)【優先日】2022-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149009
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 稔久
(72)【発明者】
【氏名】西村 太貴
【テーマコード(参考)】
3H131
3J102
3J701
【Fターム(参考)】
3H131AA02
3H131BA06
3H131CA13
3J102AA01
3J102BA03
3J102BA19
3J102CA09
3J102CA23
3J102CA27
3J102DA02
3J102DA07
3J102DA11
3J102DA26
3J102GA06
3J701AA03
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701FA38
3J701FA41
3J701GA29
(57)【要約】
【課題】吸気口が筐体の側面に形成された場合であっても磁石の位置調整を容易に行うことが可能な真空ポンプを提供すること
【解決手段】真空ポンプ1では、筐体部2は、側面部13に形成された吸気口P11を有する。磁気軸受32は、筐体部2に固定されたマグネットホルダ部16の周囲に配置された第1永久磁石41と、第1永久磁石41と径方向において対向してロータ3に配置された第2永久磁石42と、を有する。磁石ナット46は、マグネットホルダ部16の周囲に形成された雄ネジ形状に嵌る雌ネジ形状を内面に有する、磁石ナット46は、マグネットホルダ部16に対して回転させることでロータ3の回転軸に沿った方向に移動して第2永久磁石42に対する第1永久磁石41の位置は、磁石ナット46を調整する。磁石ナット46は、第1吸気口P11から挿入される回転治具61に係止される貫通孔52cを側面に有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なロータと、
側面に形成された吸気口を有し、前記ロータを収容する筐体部と、
前記筐体部に固定されたマグネットホルダ部の周囲に配置された第1磁石と、前記第1磁石と径方向において対向して前記ロータに配置された第2磁石と、を有する磁気軸受と、
前記マグネットホルダ部の周囲に形成された第1ネジ形状に嵌る第2ネジ形状を内面に有し、前記マグネットホルダ部に対して回転させることで前記ロータの回転軸に沿った方向に移動して前記第2磁石に対する前記第1磁石の位置を調整する調整部材と、を備え、
前記調整部材は、前記吸気口から挿入される治具に係止される係止部を側面に有する、
真空ポンプ。
【請求項2】
前記係止部は、前記調整部材の側面に周方向に沿って形成された複数の貫通孔、複数の凹部、または複数の凸部である、
請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
前記ロータに配置され、前記第2磁石の位置を固定する固定部材を更に備え、
前記調整部材は、
前記径方向において前記固定部材と対向して配置され、前記第2ネジ形状が形成された第1部分と、
前記吸気口と対向して配置され、前記係止部が形成された第2部分と、を有する、
請求項1または2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
前記第2部分の内径は、前記第1部分の内径よりも大きく形成され、
前記係止部は、前記第2部分の側面に周方向に沿って等間隔で形成された複数の貫通孔である、
請求項3に記載の真空ポンプ。
【請求項5】
前記ロータの軸芯であるロータシャフトの前記磁気軸受とは反対側の端部に配置され、前記ロータシャフトを前記筐体部に対して回転可能に支持する転がり軸受と、
前記転がり軸受の前記磁気軸受とは反対側であって前記ロータシャフトに固定され、前記転がり軸受に前記磁気軸受側の方向への予圧を付与する予圧付与部材と、を更に備えた、
請求項1または2に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
前記予圧付与部材は、前記転がり軸受と反対側から挿入される前記予圧を計測する治具と係合可能な被係合部を有する、
請求項5に記載の真空ポンプ。
【請求項7】
前記予圧付与部材は、ナット部材であり、
前記被係合部は、前記ナット部材の外側面に形成された凹部である、
請求項6に記載の真空ポンプ。
【請求項8】
前記予圧付与部材は、ナット部材であり、
前記ナット部材は、前記転がり軸受の反対側に向かって外側に広がるように傾斜した外側面を有し、
前記被係合部は、前記外側面である、
請求項6に記載の真空ポンプ。
【請求項9】
前記筐体部は、
前記吸気口が形成され、前記ロータを覆うケーシングと、
前記ケーシングと接続されるベースと、を有し、
前記マグネットホルダ部は、前記ケーシングと一体に形成されている、
請求項1または2に記載の真空ポンプ。
【請求項10】
前記ロータは、前記吸気口側の端部に配置され、前記吸気口から前記ロータの回転バランスを修正可能な回転バランス修正部を有する、
請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項11】
前記回転バランス修正部は、
前記端部の側面に周方向に沿って等間隔に形成された複数のバランス修正孔と、
前記複数のバランス修正孔の全部または一部に配置される修正錘と、を有する、
請求項10に記載の真空ポンプ。
【請求項12】
前記バランス修正孔の内周面には、雌ネジ形状が形成され、
前記修正錘は、外周面に雄ネジ形状が形成されており、前記バランス修正孔の前記内周面と螺合している、
請求項11に記載の真空ポンプ。
【請求項13】
前記バランス修正孔は、前記回転軸に近づくに従って前記吸気口側と反対側に向かうように傾斜している、
請求項11に記載の真空ポンプ。
【請求項14】
回転可能なロータと、
吸気口を有し、前記ロータを収容する筐体部と、
前記筐体部に固定されたマグネットホルダ部の周囲に配置された第1磁石と、前記第1磁石と径方向において対向して前記ロータに配置された第2磁石と、を有する磁気軸受と、
前記第2磁石に対する前記第1磁石の位置を調整する調整部材と、
前記ロータの軸芯であるロータシャフトの前記磁気軸受とは反対側の端部に配置され、前記ロータシャフトを前記筐体部に対して回転可能に支持する転がり軸受と、
前記転がり軸受の前記磁気軸受とは反対側であって前記ロータシャフトに固定され、前記転がり軸受に前記磁気軸受側の方向への予圧を付与する予圧付与部材と、を備え、
前記予圧付与部材は、前記転がり軸受と反対側から挿入される前記予圧を計測する治具と係合可能な被係合部を有する、
真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ分子ポンプは、超高真空用の真空ポンプ、およびリークディテクタ用の真空ポンプ等として使用される。例えば、特許文献1に示す真空ポンプは、筐体の内部にロータを収容し、ロータを数万回転で回転させることにより真空排気を行う。
【0003】
特許文献1に示す真空ポンプでは、磁気軸受および転がり軸受によってロータが筐体に回転可能に支持されている。磁気軸受は、ロータに配置された回転体側磁石と、筐体に固定されたマグネットホルダ部に配置された静止側磁石と、を含む。転がり軸受は、回転の際のガタや異音の発生を低減するために予圧をかける必要がある。静止側磁石に対する回転体側磁石の位置を調整することによって、適切な予圧を転がり軸受にかけることができる。
【0004】
回転体側磁石の位置調整は、マグネットホルダ部に螺合された磁石ナットを回転することによって行われる。筐体には、磁石ナットの上部に吸気口が形成されており、作業者は、吸気口を介して磁石ナットの回転を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-122529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、リークディテクタに用いられるターボ分子ポンプ等では、吸気口が磁石ナットの上部に設けられておらず、磁石ナットの側面に形成されている場合がある。
【0007】
本発明は、吸気口が筐体の側面に形成された場合であっても磁石の位置調整を容易に行うことが可能な真空ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る真空ポンプは、ロータと、筐体部と、磁気軸受と、調整部材と、を備える。ロータは、回転可能である。筐体部は、側面に形成された吸気口を有し、ロータを収容する。磁気軸受は、筐体部に固定されたマグネットホルダ部の周囲に配置された第1磁石と、第1磁石と径方向において対向してロータに配置された第2磁石と、を有する。調整部材は、マグネットホルダ部の周囲に形成された第1ネジ形状に嵌る第2ネジ形状を内面に有し、マグネットホルダ部に対して回転させることでロータの回転軸に沿った方向に移動して第2磁石に対する第1磁石の位置を調整する。調整部材は、吸気口から挿入される治具に係止される係止部を側面に有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吸気口が筐体の側面に形成された場合であっても磁石の位置調整を容易に行うことが可能な真空ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1に係る真空ポンプの断面図である。
図2図1のS部拡大図である。
図3】実施形態1に係る真空ポンプの磁石ナットの斜視図である。
図4】実施形態1に係る真空ポンプの磁石ナットの平面図である。
図5】実施形態1に係る真空ポンプにおいて第1永久磁石の位置の調整方法を説明するための図である。
図6】実施形態1に係る真空ポンプの磁石ナットの貫通孔に治具を差し込んでいる状態を示す図である。
図7】(a)実施形態1に係る真空ポンプのスラストナットを示す断面図である、(b)実施形態に係る真空ポンプの転がり軸受にかける予圧を計測するための治具を示す模式図である。
図8】実施形態2に係る真空ポンプの第1吸気口の近傍を示す断面図である。
図9】実施形態2に係る真空ポンプの最も第1吸気口側に位置するロータ翼ユニットを示す斜視図である。
図10】実施形態2に係る真空ポンプの最も第1吸気口側に位置するロータ翼ユニットを示す平面図である。
図11】実施形態2に係る真空ポンプの回転バランス修正部のバランス修正孔に治具を用いて止めネジを挿入している状態を示す断面図である。
図12】(a)実施形態1の変形例に係る真空ポンプの磁石ナットの平面図である、(b)実施形態の変形例に係る真空ポンプの磁石ナットの側面図である、
図13】(a)実施形態1に係る真空ポンプの磁石ナットの平面図である、(b)実施形態の変形例に係る真空ポンプの磁石ナットの側面図である、
図14】(a)実施形態1の変形例に係る真空ポンプのスラストナットを示す断面図である、(b)実施形態1の変形例に係る真空ポンプの転がり軸受にかける予圧計測するための治具を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示にかかる実施の形態の真空ポンプについて図面を参照しながら説明する。
【0012】
(実施形態1)
実施形態1に係る真空ポンプについて説明する。
【0013】
(真空ポンプ1)
図1は、実施形態に係る真空ポンプ1の断面図である。
【0014】
真空ポンプ1は、タービン部Tと、ドラッグポンプ部Dと、を含む。タービン部Tは、ターボ分子ポンプを構成する。ドラッグポンプ部Dは、ネジ溝ポンプを構成する。真空ポンプ1は、排気対象空間を含む排気対象装置に接続されている。排気対象空間からのガスは、タービン部Tで排気された後、ドラッグポンプ部Dで排気され、真空ポンプ1の外に排気される。
【0015】
真空ポンプ1は、図1に示すように、筐体部2と、ロータ3と、モータ4と、複数のステータ翼ユニット5と、ステータ円筒部6と、を有する。筐体部2は、ロータ3と、モータ4と、複数のステータ翼ユニット5と、ステータ円筒部6とを収容する。
【0016】
(筐体部2)
筐体部2は、ケーシング7と、ベース8と、を有する。筐体部2は、アルミニウム合金または鉄等の金属によって形成されている。ケーシング7は、筒状の部材である。
【0017】
ケーシング7は、複数のステータ翼ユニット5と、ロータ3に設けられた複数段のロータ翼ユニット22と、を収容する。ケーシング7は、第1端部11と、第2端部12と、側面部13と、を有する。第1端部11は、ロータ3の軸Aに対して垂直にロータ3を覆うように配置されている。
【0018】
第2端部12は、ロータ3の軸A方向において、第1端部11と反対側に位置している。第2端部12は、ベース8に接続される。側面部13は、第1端部11と第2端部12を繋ぐ。ケーシング7の側面部13には、第1吸気口P11と、第2吸気口P12、P13が形成されている。第1吸気口P11は、側面部13の第1端部11近傍に形成されている。第1吸気口P11には、排気対象空間を含む排気対象装置が接続される。
【0019】
ベース8は、ケーシング7の第2端部12側の開口を塞ぐように配置されている。ケーシング7およびベース8は、ステータ円筒部6と、ロータ3に設けられているロータ円筒部23と、を収納する。ベース8は、ベース端部15を有する。ベース端部15は、ケーシング7の第2端部12に接続される。なお、ケーシング7とベース8の接続は、互いに別体の部材が接合されることを含むものとし、また、一体の部材において別々の部分が連なっていることを含むものとする。
【0020】
ベース8の側面には、排気口P21が形成されている。排気口P21には、補助ポンプが接続される。筐体部2の内部空間には、第1吸気口P11から排気口P21に至る排気経路が形成される。この排気経路に、複数の第2吸気口P12、P13が接続される。真空ポンプ1をリークディテクタとして用いる場合には、複数の第2吸気口P12、P13に、それぞれ試験体からの配管が接続される。第2吸気口P12は、タービン部Tとドラッグポンプ部Dの間に形成されている。第2吸気口P13は、ドラッグポンプ部Dの途中に形成されている。なお、第2吸気口P12、P13は、真空ポンプ1の用途によっては形成されていなくてもよい。
【0021】
(ロータ3)
ロータ3は、シャフト21と、複数段のロータ翼ユニット22と、ロータ円筒部23と、を有する。
【0022】
シャフト21は、ロータ3の軸A方向に延びている。以下の説明では、軸A方向のうちベース8からケーシング7に向かう方向を第1方向A1とし、その反対を第2方向A2とする。
【0023】
真空ポンプ1は、マグネットホルダ部16を有している。マグネットホルダ部16は、ケーシング7の内側に配置されている。マグネットホルダ部16は、ケーシング7の第1端部11からベース8に向かって配置されている。マグネットホルダ部16は、ケーシング7と一体に形成されている。一体に形成されているとは、例えば、同じ材料を用いて金型で成形することや、切削によって形成することである。
【0024】
マグネットホルダ部16は、外形が円柱状である。マグネットホルダ部16の第2方向A2側の端には、第1方向A1に向かって凹部16aが形成されている。凹部16aには、シャフト21の第1方向A1側の端が挿入されている。
【0025】
ベース8の第2方向A2側の面の中央には、第1方向A1に向かって凹部8aが形成されている。真空ポンプ1は、蓋部9を有している。蓋部9は、ベース8の凹部8aを塞ぐように配置されている。
【0026】
ベース8の凹部8aの第1方向A1側の天井部分には、軸A方向に沿って貫通孔8bが形成されている。シャフト21は貫通孔8bに挿入されており、シャフト21の第2方向A2側の端は凹部8aの内側に突出している。
【0027】
真空ポンプ1は、保護軸受31と、磁気軸受32と、転がり軸受33と、を有している。保護軸受31は、マグネットホルダ部16とシャフト21の間に配置されている。保護軸受31は、マグネットホルダ部16の凹部16aの内部に配置されている。保護軸受31は、シャフト21の第1方向A1側のラジアル方向の振れを制限するタッチダウンベアリングとして機能する。シャフト21が定常回転している状態では、シャフト21と保護軸受31は接触しておらず、大外乱が加わった場合や、回転の加速または減速時にシャフト21の振れ回りが大きくなった場合に、シャフト21が保護軸受31の内輪の内面に接触する。保護軸受31は、例えばボールベアリング等を用いることができる。
【0028】
磁気軸受32は、マグネットホルダ部16とロータ3の間に配置されている。磁気軸受32は、ロータ3を非接触支持する。磁気軸受32については後段にて詳しく説明する。
【0029】
転がり軸受33は、シャフト21とベース8の間に配置される。転がり軸受33は、ベース8に対してシャフト21を回転可能に支持する。転がり軸受33は、ベース8の貫通孔8bに配置されている。転がり軸受33は、例えばボールベアリングを用いることができる。真空ポンプ1は、シャフト21に固定されたスラストナット34(予圧付与部材の一例、ナット部材の一例)を有している。スラストナット34は、シャフト21のうち貫通孔8bから突出して凹部8aの内部に位置する部分に配置されている。スラストナット34は、転がり軸受33の第2方向A2側に配置されている。後述する磁気軸受32を調整すると、ロータ3にケーシング7側に移動する力が付与されるため、スラストナット34が転がり軸受33に第1方向A1に向かって予圧を付与する。
【0030】
複数段のロータ翼ユニット22は、それぞれシャフト21に接続されている。複数段のロータ翼ユニット22は、軸A方向に互いに間隔をおいて配置されている。各々のロータ翼ユニット22は、複数のロータ翼25を含む、図示を省略するが、複数のロータ翼25の各々は、シャフト21を中心にして放射状に延びている。なお、図面においては、複数段のロータ翼ユニット22の1つ、および複数のロータ翼25の1つのみに符号が付されており、他のロータ翼ユニット22および他のロータ翼25の符号は省略されている。
【0031】
ロータ円筒部23は、シャフト21に接続されている。ロータ円筒部23は、ロータ翼ユニット22の下方に配置されている。ロータ円筒部23は、円筒状であり、軸A方向に延びている。ロータ円筒部23は、シャフト21の外周側においてシャフト21を囲むように配置されている。ロータ円筒部23の外周面は筒状の曲面である。
【0032】
(モータ4)
モータ4は、ロータ3を回転駆動する。モータ4としては、例えばDCブラシレスモータが用いられる。モータ4は、モータロータ26と、モータステータ27と、を有する。モータロータ26は、シャフト21に取り付けられている。モータステータ27は、ベース8に取り付けられている。モータステータ27は、モータロータ26と向かい合って配置されている。
【0033】
(複数段のステータ翼ユニット5)
複数段のステータ翼ユニット5は、ケーシング7の内面に接続されている。複数段のステータ翼ユニット5は、軸A方向において、互いに間隔を空けて配置されている。複数段のステータ翼ユニット5の各々は、複数段のロータ翼ユニット22の間に配置されている。各々のステータ翼ユニット5は、複数のステータ翼28を含む。図示を省略するが、複数のステータ翼28は、それぞれシャフト21を中心として放射状に延びている。
【0034】
複数段のロータ翼ユニット22と複数段のステータ翼ユニット5とは、タービン部T(ターボ分子ポンプ)を構成する。なお、図面においては、複数のステータ翼ユニット5の1つ、および複数のステータ翼28の1つのみに符号が付されており、他のステータ翼ユニット5および他のステータ翼28の符号は省略されている。
【0035】
(ステータ円筒部6)
ステータ円筒部6は、ロータ円筒部23の径方向外側に配置されている。ステータ円筒部6は、ベース8に接続されている。ステータ円筒部6は、ロータ円筒部23の径方向において、ロータ円筒部23と向かい合って配置されている。
【0036】
ステータ円筒部6の内周面には、らせん状のネジ溝が設けられている。ロータ円筒部23とステータ円筒部6は、ドラッグポンプ部D(ネジ溝ポンプ)を構成する。
【0037】
(磁気軸受32)
図2は、図1のS部拡大図である。磁気軸受32は、第1永久磁石41(第1磁石の一例)と、第2永久磁石42(第2磁石の一例)と、を有している。第1永久磁石41は、マグネットホルダ部16の外周面に配置されている。第2永久磁石42は、ロータ3の内周面に固定されている。第1永久磁石41と第2永久磁石42は径方向Bにおいて対向するように配置されている。
【0038】
第1永久磁石41と第2永久磁石42はリング状である。図1では、軸A方向に沿って第1永久磁石41が3個、第2永久磁石42が3個並んで配置されているが、第1永久磁石41および第2永久磁石42の個数は特に限定されるものではない。
【0039】
第1永久磁石41と第2永久磁石42の間には隙間が形成されている。第1永久磁石41と第2永久磁石42を構成する各々のリング状磁石要素は、軸A方向の一端がN極、他端がS極になるように配置されている。積層されている第1永久磁石41のリング状磁石要素は、N極同士、またはS極同士が軸A方向おいて向かい合うように配置されている。積層されている第2永久磁石42のリング状磁石要素は、N極同士、またはS極同士が軸A方向おいて向かい合うように配置されている。第1永久磁石41と第2永久磁石42は、同じ極同士が概ね向かい合うように配置されているが、軸A方向の位置ずれによって、シャフト21にケーシング7およびベース8に対して第1方向A1に移動する力が付与され、転がり軸受33にスラストナット34によって予圧力が付与される。第1永久磁石41の第2永久磁石42に対する軸A方向における位置ズレ量を調整することによって予圧力を調整することができる。
【0040】
真空ポンプ1は、図2に示すように、固定部材43と、皿バネ44と、バネ支持部材45と、磁石ナット46と、を更に有する。
【0041】
固定部材43は、第2永久磁石42の第1方向A1側の面に配置されている。固定部材43はリング状である。固定部材43は、ロータ3と繋がっており、ロータ3と同一の部品として図示されているが、別々の部品であってもよい。固定部材43は、第2永久磁石42の位置を固定するための押さえ部材である。ロータ3と別部品の場合、固定部材43は、焼きばめ・冷やしばめ等によってロータ3に固定されている。
【0042】
皿バネ44は、第1永久磁石41の第2方向A2側に配置されている。皿バネ44の第1永久磁石41と反対側の端は、マグネットホルダ部16に固定されたバネ支持部材45によって支持されている。弾性体である皿バネ44は、第1永久磁石41の第1方向A1側の面に配置された磁石ナット46とバネ支持部材45との間で第1永久磁石41を弾性支持している。なお、皿バネ44と第1永久磁石41の間にシムリングが配置されていてもよい。
【0043】
(磁石ナット46)
磁石ナット46は、リング状である。磁石ナット46は、第1永久磁石41の第1方向A1側の面に配置されている。磁石ナット46は、第1永久磁石41の軸A方向における位置を調整する。磁石ナット46は、転がり軸受33に加えられる磁石の反発力による予圧力の圧力を受けるための押さえ部材といえる。磁石ナット46は、マグネットホルダ部16の外周に移動可能に配置されている。
【0044】
図3は、磁石ナット46の斜視図である。図4は、磁石ナット46の平面図である。磁石ナット46は、マグネットホルダ部16と螺合する第1部分51と、後述する回転治具61(治具の一例)に係止される貫通孔52cが形成された第2部分52と、を有する。
【0045】
第1部分51は、第2部分52よりも第1永久磁石41側に配置されている。第1部分51は、磁石ナット46のうち第1永久磁石41を押さえる部分である。第1部分51は、リング状である。第1部分51の内周面51aには雌ネジ形状(第2ネジ形状の一例)が形成されている。マグネットホルダ部16の外周面には雄ネジ形状(第1ネジ形状の一例)が形成されている。磁石ナット46の第1部分51の雌ネジ形状は、マグネットホルダ部16の外周面の雄ネジ形状に嵌っている。第1部分51は、径方向において固定部材43と対向するように配置されている。
【0046】
第2部分52は、第1部分51の第1永久磁石41とは反対側の端に繋がっている。第2部分52は、リング状である。図4に示すように、第2部分52は第1部分51と同軸上に配置されている。図4に示すように、第2部分52の内径R1は、第1部分51の内径R2よりも大きく形成されている。第2部分52の内周面52aには、雌ネジ形状が形成されていない。第2部分52の外径R3は、第1部分51の外径R4よりも大きく形成されている。第2部分52は、第1部分51よりも径方向の外側に位置している。第2部分52は、軸A方向において固定部材43よりも第1端部11側(第1方向A1側)に配置されている。このため、第2部分52は、第1部分51よりも外側に位置することができる。第2部分52は、図1に示すように、径方向Bにおいて第1吸気口P11と対向するように配置されている。
【0047】
第2部分52の側面52bには、複数の貫通孔52cが形成されている。複数の貫通孔52cは、径方向Bに沿って形成されている。磁石ナット46では、複数の貫通孔52cは、周方向に沿って等間隔に形成されている。図3および図4に示す例では、第2部分52には、10個の貫通孔52cが形成されている。10個の貫通孔52cは、軸Aを中心に36°間隔で形成されている。
【0048】
磁石ナット46はマグネットホルダ部16に螺合しているため、マグネットホルダ部16に対して周方向に回転することによって、軸A方向に沿って移動できる。なお、磁石ナット46と第1永久磁石41の間に、第1永久磁石41を保護するためにスペーサを配置してもよい。
【0049】
磁石ナット46がマグネットホルダ部16に対して軸A周りに回転すると、磁石ナット46は軸A方向に移動する。磁石ナット46の移動によって皿バネ44で弾性支持されている第1永久磁石41が軸A方向に沿って移動する。磁石ナット46を回転させることによって第2永久磁石42に対する第1永久磁石41の位置を調整することができる。
【0050】
(位置調整方法)
次に、第1永久磁石41の位置調整方法について説明する。磁石ナット46を軸A周りに回転させることによって、第2永久磁石42に対する第1永久磁石41の位置を調整して適切な予圧力を転がり軸受33に付与する。
【0051】
図5は、第1永久磁石41の位置の調整方法を説明するための図である。図5に示すように、作業者は、真空ポンプ1の第1吸気口P11から磁石ナット46を回転させるための回転治具61を差し込む。回転治具61の先端61aは、図6に示すように、磁石ナット46の貫通孔52cに挿入される。回転治具61は、棒状である。回転治具61の先端61aは、磁石ナット46およびロータ3を保護するためにゴム等の弾性部材で覆われている方が好ましい。磁石ナット46の貫通孔52cに回転治具61を差し込んだ状態で、回転治具61の先端61aを左右方向C(軸Aに対して垂直な方向ともいえる)に動かすことによって、マグネットホルダ部16に対して軸Aの周りに磁石ナット46を回転させることができる。このように、貫通孔52cの縁52eに回転治具61を係止して磁石ナット46を回転することができる。回転治具61の形状は、磁石ナット46を回転させることができれば限定されるものではない。本実施の形態では、回転治具61は円柱形状であるが、多角柱形状であってもよい。
【0052】
スラストナット34には、図5に示すように、つかみ治具62が取り付けられている。蓋部9がベース8に取り付けられていない状態では、つかみ治具62を凹部8aに挿入することができる。
【0053】
例えば、スラストナット34の側面に凹部を形成し、凹部につかみ治具62の先端が引っ掛けられている。つかみ治具62は、フォースゲージ63に取り付けられており、つかみ治具62を第2方向A2に引っ張ることによってスラストナット34に付与した力を計測することができる。
【0054】
図7(a)は、スラストナット34の形状を示す断面図である。スラストナット34は、側面34aに形成された凹部34b(被係合部の一例)を有している。凹部34bは少なくとも軸Aを挟んで対向して2つ形成されている方が好ましく、対向する2つを1組として周方向に複数組形成されている方が好ましい。図7(b)は、つかみ治具62の模式図である。つかみ治具62は、例えば、支持部62aと、支持部62aに対して回動可能(矢印参照)な一対の回動部62bと、を有する。各々の回動部62bは、支持部62aから第1方向A1に向かって延びる。一対の回動部62bは、対向して配置されている。回動部62bの先端62cが内側に向かって突出している。この先端62cが、スラストナット34の凹部34bに挿入されることによって、スラストナット34はつかみ治具62によって係合される。
【0055】
磁気軸受32によってスラストナット34には第1方向A1に向かって移動するように力が付与されている。スラストナット34をつかみ治具62で掴んだ状態で、つかみ治具62を第2方向A2に移動させるように力を付与し、スラストナット34が第2方向A2に移動したときの力をフォースゲージ63で読み取る。これによって、現在の状態での予圧力を計測することができる。予圧力が適切な値よりも小さい場合には、回転治具61を用いて磁石ナット46を軸A周りの一方向に回転させて第1永久磁石41と第2永久磁石42の位置ズレ量を大きくする。一方、予圧力が適切な値よりも大きい場合には、回転治具61を用いて磁石ナット46を軸A周りの他方向に回転させて第1永久磁石41と第2永久磁石42の位置ズレ量を小さくする。
【0056】
このように回転治具61を用いて磁石ナット46を回転させた後に、つかみ治具62を下方に移動させてスラストナット34が第2方向A2に移動した値をフォースゲージ63で読み取る。これを繰り返すことによって、転がり軸受33に適切な予圧力を付与できるように第1永久磁石41の位置を調整することができる。
【0057】
(実施形態2)
実施形態2に係る真空ポンプについて説明する。
ターボ分子ポンプは、超高真空用の真空ポンプ、およびリークディテクタ用の真空ポンプ等として使用される。例えば、特許文献1に示す真空ポンプは、筐体の内部にロータを収容し、ロータを数万回転で回転させることにより真空排気を行う。
【0058】
このように、ターボ分子ポンプは、ロータを毎分数万位回転という高速回転で回転駆動させており、加速中も含めて運転中に低振動であることが求められている。低振動を実現させるためには精密なバランス修正が必要となる。
【0059】
特許文献1に示す真空ポンプでは、筐体のロータの上部に吸気口が形成されており、作業者は、吸気口を介してロータの回転バランスの修正を行う。
【0060】
しかしながら、リークディテクタに用いられるターボ分子ポンプ等では、吸気口が磁石ナットの上部に設けられておらず、ロータの側方に形成されている場合がある。
【0061】
本発明は、吸気口が筐体の側面に形成された場合であってもロータの回転バランスの修正を容易に行うことが可能な真空ポンプを提供することを目的とする。
【0062】
図8は、実施形態2の真空ポンプ300の第1吸気口P11の近傍を示す断面図である。この実施形態2の真空ポンプ300は、実施形態1の真空ポンプ1と比較して、ロータ330の回転バランスを修正する回転バランス修正部370が設けられている。
【0063】
図8に示すように、真空ポンプ300のロータ330は、シャフト21と、複数段のロータ翼ユニット322と、ロータ円筒部23と、回転バランス修正部370と、を有する。ロータ330と固定部材43は繋がっており、同一の部品として図示されているが、別々の部品であってもよい。シャフト21およびロータ円筒部23(図1参照)は、実施形態1の構成と同じである。複数段のロータ翼ユニット322は、実施形態1と同様に、それぞれシャフト21に接続されている。複数段のロータ翼ユニット322は、軸A方向に互いに間隔をおいて配置されている。複数のロータ翼ユニット322のうち最も第1吸気口P11側に位置するロータ翼ユニット322を322aとして示す。
【0064】
図9は、ロータ翼ユニット322aの示す斜視図である。図10は、ロータ翼ユニット322aの平面図である。図9および図10に示すように、ロータ翼ユニット322aは、円筒部381と、複数のロータ翼25と、を含む。円筒部381は、シャフト21の外側に配置される。複数のロータ翼25は、円筒部381に固定されている。複数のロータ翼25は、円筒部381の周囲に配置されている。なお、ロータ翼ユニット322a以外の他のロータ翼ユニット322も円筒部381と、複数のロータ翼25と、を含む。
【0065】
回転バランス修正部370は、ロータ330の回転バランスを修正する。図11図13に示すように、回転バランス修正部370は、複数段のロータ翼ユニット322のうち最も第1吸気口P11側に位置するロータ翼ユニット322aの円筒部381(端部の一例)に配置されている。回転バランス修正部370は、第1吸気口P11からアクセス可能に配置されている。
【0066】
回転バランス修正部370は、複数のバランス修正孔371と、止めネジ372(修正錘の一例)と、を含む。図9および図10に示すように、複数のバランス修正孔371は、円筒部381の側面381aに周方向に沿って等間隔に形成されている。周方向とは、ロータ330の軸Aを中心とする円周方向である。例えば、図10に示すように、12個のバランス修正孔371が円筒部381に30度の等間隔で設けられている。図10に示すように、各々のバランス修正孔371は、円筒部381の側面381aから軸Aに向かって形成されている。図8に示すように、各々のバランス修正孔371は、中心軸Aに向かうに従って、第1吸気口P11側から第1吸気口P11とは反対側(排気口P21側)に向かうように傾斜している。
【0067】
止めネジ372は、回転バランスをとるために複数のバランス修正孔371の全部または一部に適宜配置される。複数種類の止めネジ372が用意されており、回転バランスが保たれるように、適宜使用される。複数種類の止めネジ372とは、長さおよび重さが異なる止めネジのことである。バランス修正孔371の内周面には、雌ネジ形状が形成されている。止めネジ372の外周面には、雄ネジ形状が形成されている。バランス修正孔371に止めネジ372をネジ込むことによって、止めネジ372をバランス修正孔371内に挿入して配置することができる。このように、止めネジ372がバランス修正孔371に螺合しているため、ロータ330が回転しても、バランス修正孔371内において止めネジ372の位置を固定することができる。図8では、左側のバランス修正孔371に止めネジ372が配置され、右側のバランス修正孔371には止めネジ372が配置されていない状態を示す。
【0068】
ロータ翼ユニット322aの円筒部381の上面381bには、溝部382が形成されている。図9に示すように、溝部382は、軸Aを中心に円周状に形成されている。上述した複数のバランス修正孔371は、溝部382と連通している。この溝部382が形成されていない場合、バランス修正孔371に止めネジ372を挿入すると、止めネジ372の奥に空間が生じ、真空にする際に空間から気体が漏れ出すことになる。溝部382はガス抜き用として設けられている。
【0069】
図14は、第1吸気口P11から回転バランス修正部370に治具400を挿入してバランス修正を行っている状態を示す断面図である。治具400としては、止めネジ372を回転させるドライバー等を挙げることができる。治具400を第1吸気口P11から差し込んで、回転バランスを確認しながら、止めネジ372を複数のバランス修正孔371のうち所定の箇所に挿入する。このように、ロータ330の回転バランスの修正を行うことができる。
【0070】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0071】
上記実施形態では、磁石ナット46には、複数の貫通孔52cが形成されているが、治具で係止して回転させることができれば、磁石ナット46の形状は特に限定されるものではない。磁石ナット46の第2部分52の孔が貫通しておらず、凹んでいるだけでもよい。
【0072】
また、図12(a)および図12(b)に示すような磁石ナット146であってもよい。図12(a)は、実施形態の変形例の磁石ナット146の平面図である。図12(b)は、磁石ナット146の側面図である。磁石ナット146は、第1部分151と、第2部分152とを有する。磁石ナット146の第1部分151は、上述した磁石ナット46の第1部分51と同様の構成である。磁石ナット146の第2部分152は、第1部分151の第1永久磁石41側の反対側の端(第1方向A1側の端)に繋がっている。第2部分152は、リング状である。第2部分152は第1部分151と同軸上に配置されている。第2部分152の内径は、第1部分151の内径と同じである。第2部分152の内周面152aと第1部分151の内周面152aは、段差なく繋がっており、双方に雌ネジ形状が形成されている。第2部分152の外側面152bには、複数の凸部152cが径方向外側に向かって形成されている。複数の凸部152cは、外側面152bに沿って周方向に等間隔で形成されている。凸部152cは、外側面152bから径方向Bの外側に向かって突出している。図12(a)に示す例では、8個の凸部152cが形成されている。隣り合う凸部152cの間に回転治具61を差し込み、回転治具61を凸部152cに係止することによって、磁石ナット146を回転させることができる。この場合、回転治具61の先端61aの形状は円柱状よりも四角柱の方が凸部152cに係止しやすいため好ましい。また、回転治具61としてフックレンチ状のものを用いてもよい。
【0073】
さらに、図13(a)および図13(b)に示すような磁石ナット246であってもよい。図13(a)は磁石ナット246の平面図である。図13(b)は、磁石ナット246の側面図である。磁石ナット246は、軸Aを中心とするリンク状である。磁石ナット246の内側面246aには、雌ネジ形状が形成されており、マグネットホルダ部16の外周面の雄ネジ形状と螺合している。磁石ナット246の外側面246bには、複数の凹部246cが形成されている。凹部246cは、軸A方向に沿って磁石ナット246の第1方向A1の端から第2方向A2の端まで形成されている。なお、凹部246cは、固定部材43と対向する部分には形成されていなくてもよく、第1方向A1側にのみ形成されていてもよい。
【0074】
上記実施形態では、予圧を計測するために、スラストナット34に凹部34bを形成した構成について説明したが、このような構成に限られるものではなく、スラストナット34に第2方向A2側に向かうような力を付与できればよい。
【0075】
例えば、図14(a)に示すようなスラストナット134が用いられてもよい。図14(a)は、シャフト21に配置されたスラストナット134の断面図である。スラストナット134の外側面134aは、転がり軸受33とは反対側(第2方向A2)に向かって外側に広がるように傾斜している。スラストナット134は、中心軸と垂直な断面形状が第2方向A2に向かって大きくなるように形成されている。
【0076】
図14(b)は、つかみ治具162の模式図である。つかみ治具162は、例えば、本体部162aと、本体部162aに対して回動可能(矢印参照)な一対の回動部162bと、を有する。各々の回動部162bは、本体部162aから第1方向A1に向かって延びている。一対の回動部162bは対向して配置されている。各々の回動部162bの先端162cの内側に形成された内周面162d(被係合部の一例)は、第2方向A2に向かうに従って外側に向かうように傾斜している。一対の回動部162bの内周面162dの間隔は、第2方向A2に向かって広くなっている。
【0077】
内周面162dでスラストナット134の外側面134aを挟み込むことによって、つかみ治具162でスラストナット134を係合することができ、係合した状態で、つかみ治具162を第2方向A2に向かって移動させることによって、スラストナット134に第2方向A2に向かって力を付与することができる。上記実施形態では、リークディテクタに用いられる真空ポンプ1について説明したが、リークディテクタに限らなくてもよい。
【0078】
上記実施形態では、貫通孔52c、凸部152c、および凹部246cは、周方向に沿って等間隔で形成されているが、等間隔でなくてもよい。
【0079】
上記実施形態では、止めネジ372をバランス修正孔371に挿入しているが、止めネジ372に限らなくてもよく、回転バランスを修正可能な錘であれば、ネジに限られるものではない。
【0080】
上記実施形態では、バランス修正孔371は、円筒部381の側面381aから軸Aに向かうに従って第1吸気口P11とは反対側に向かうように傾斜しているが、傾斜していなくてもよく、側面381aから軸Aに向かって垂直に形成されていてもよい。
【0081】
なお、各実施形態に記載された構成は自由に組み合わせてもよい。
【0082】
(態様)
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者より理解される。
【0083】
(第1態様)真空ポンプは、ロータと、筐体部と、磁気軸受と、調整部材と、を備える。ロータは、回転可能である。筐体部は、側面に形成された吸気口を有し、ロータを収容する。磁気軸受は、筐体部に固定されたマグネットホルダ部の周囲に配置された第1磁石と、第1磁石と径方向において対向してロータに配置された第2磁石と、を有する。調整部材は、マグネットホルダ部の周囲に形成された第1ネジ形状に嵌る第2ネジ形状を内面に有し、マグネットホルダ部に対して回転させることでロータの回転軸に沿った方向に移動して第2磁石に対する第1磁石の位置を調整する。調整部材は、吸気口から挿入される治具に係止される係止部を側面に有する。
【0084】
第1態様に係る真空ポンプでは、筐体部の側面に形成された吸気口から治具を挿入し、治具を調整部材の係止部に係止することができる。このため、調整部材を回転して調整部材の位置を移動することにより、第2磁石に対する第1磁石の位置を調整することができる。第1磁石の位置を調整することによって、ロータの筐体部への支持に用いる転がり軸受に適切な予圧をかけることができる。また、筐体部の外側から第1磁石の位置を調整することができるため、ロータ等の部品を筐体部に組み込んだ後も予圧の調整を行うことが可能となる。
【0085】
(第2態様)第1態様に係る真空ポンプにおいて、係止部は、調整部材の側面に周方向に沿って形成された複数の貫通孔、複数の凹部または複数の凸部である。
【0086】
第2態様に係る真空ポンプでは、側面に形成された吸気口から治具を挿入し、調整部材の外側面に形成された貫通孔の縁、凹部または凸部に治具を引っ掛けることによって調整部材を回転させることができる。
【0087】
(第3態様)第1または第2態様に係る真空ポンプにおいて、固定部材を更に備える。固定部材は、ロータに配置され、第2磁石の位置を固定する。調整部材は、第1部分と、第2部分と、を有する。第1部分は、径方向において固定部材と対向して配置され、第2ネジ形状が形成されている。第2部分は、吸気口と対向して配置され、係止部が形成されている。
【0088】
第3態様に係る真空ポンプでは、第2磁石の位置を固定する固定部材と干渉しないような位置に係止部を形成することができる。また、係止部が形成された第2部分が吸気口と対向して配置されているため、吸気口から挿入した治具で係止部を係止しやすく、調整部材を回転させやすい。
【0089】
(第4態様)第3態様に係る真空ポンプにおいて、第2部分の内径は、第1部分の内径よりも大きく形成されている。係止部は、第2部分の側面に周方向に沿って等間隔で形成された複数の貫通孔である。
【0090】
第4態様に係る真空ポンプでは、治具を貫通孔に挿入して左右に動かすことによって調整部材を回転させることができる。また、第2部分の内径を大きくすることによって、治具がマグネットホルダ部に当たることを低減できる。
【0091】
(第5態様)第1~4のいずれかの態様に係る真空ポンプにおいて、転がり軸受と、予圧付与部材と、を更に備える。転がり軸受は、ロータの軸芯であるロータシャフトの磁気軸受とは反対側の端部に配置され、ロータシャフトを筐体部に対して回転可能に支持する。予圧付与部材は、転がり軸受の磁気軸受とは反対側であってロータシャフトに固定され、転がり軸受に磁気軸受側の方向への予圧を付与する。
【0092】
第5態様に係る真空ポンプでは、治具で調整部材を移動することによって、第2磁石に対する第1磁石の位置を調整し、転がり軸受に適切な予圧を付与することができる。
【0093】
(第6態様)第5の態様に係る真空ポンプにおいて、予圧付与部材は、転がり軸受と反対側から挿入される予圧を計測する治具と係合可能な被係合部を有する。
【0094】
第6態様に係る真空ポンプでは、転がり軸受とは反対側から予圧計測用の治具を挿入して予圧を計測しながら、吸気口から挿入した調整用の治具によって調整部材を動かして第2磁石に対する第1磁石の位置を調整することができる。また、吸気口が側面に形成された場合であっても、吸気口とは反対側から予圧付与部材を引っ張ることによって予圧を計測することができる。
【0095】
(第7態様)第6の態様に係る真空ポンプにおいて、予圧付与部材は、ナット部材である。被係合部は、ナット部材の外側面に形成された凹部である。
【0096】
第7態様に係る真空ポンプでは、凹部に予圧計測用の治具を係止することによって、予圧付与部材に吸気口とは反対側に向かって力を付与することができ、予圧を計測することができる。
【0097】
(第8態様)第6の態様に係る真空ポンプにおいて、予圧付与部材は、ナット部材である。ナット部材は、転がり軸受の反対側に向かって外側に広がるように傾斜した傾斜面を有する。被係合部は、傾斜面である。
【0098】
第8態様に係る真空ポンプでは、予圧計測用の治具の傾斜面に対応する部分によって予圧付与部材を係止することによって、予圧付与部材に吸気口とは反対側に向かって力を付与することができ、予圧を計測することができる。
【0099】
(第9態様)第1~8のいずれかの態様に係る真空ポンプにおいて、筐体部は、ケーシングと、ベースと、を有する。ケーシングは、吸気口が形成され、ロータを覆う。ベースは、ケーシングに接続される。マグネットホルダ部は、ケーシングと一体に形成されている。
【0100】
第9態様に係る真空ポンプでは、マグネットホルダ部がケーシングと一体に形成されているため、部品点数を減らすことが出来る。また、ロータの筐体部への支持に用いる転がり軸受と磁気軸受の同軸度を向上し、ロータの回転軸の傾きを抑えることができ、低振動および長寿命化を図ることができる。
【0101】
(第10態様)第1の態様に係る真空ポンプにおいて、ロータは、吸気口側の端部に配置され、吸気口からロータの回転バランスを修正可能な回転バランス修正部を有する。
【0102】
第10態様に係る真空ポンプでは、ロータの回転バランスを側面の吸気口から修正可能である。これにより、側面に吸気口が設けられた構成であっても、ケーシング内にロータを組み入れた状態でバランス修正を行うことができ、加速中も含めた運転中の振動を低減することができる。また、例えばマグネットホルダ部がケーシングと一体に形成されている場合、ロータをケーシングに組み込む前にバランス修正用の治具に組み込みバランス修正が行われる。しかしながら、バランス修正用の治具で使用されている静止側の磁石は、製品のケーシング側に使用される磁石と異なる。また、製品のケーシングと治具ではマグネットホルダ部の軸が異なる。このため、治具でのバランス修正後に、製品のケーシングに組み込むとバランス修正が崩れ、振動または騒音が発生する場合がある。本態様では、製品のケーシングにロータを組み入れた状態でバランス修正を行うことができるため、運転中の振動および騒音を低減することができる。
【0103】
(第11態様)第10の態様に係る真空ポンプにおいて、回転バランス修正部は、複数のバランス修正孔と、修正錘と、を有する。複数のバランス修正孔は、端部の側面に周方向に沿って等間隔に形成されている。修正錘は、複数のバランス修正孔の全部または一部に配置される。
【0104】
第11態様に係る真空ポンプでは、複数のバランス修正孔のうちいずれのバランス修正孔に修正錘を配置するか、および配置する修正錘の種類を調整することによって、回転バランスを修正することができる。なお、修正錘の種類とは、例えば重さおよび長さが異なる修正錘を示す。
【0105】
(第12態様)第11の態様に係る真空ポンプにおいて、バランス修正孔の内周面には、雌ネジ形状が形成されている。修正錘は、外周面に雄ネジ形状が形成されており、バランス修正孔の内周面と螺合している。
【0106】
第12態様に係る真空ポンプでは、バランス修正孔に修正錘が螺合しているため、遠心力によって移動しないように修正錘をバランス修正孔内に配置することができる。
【0107】
(第13態様)第11の態様に係る品空ポンプにおいて、バランス修正孔は、回転軸に近づくに従って吸気口側と反対側に向かうように傾斜している。
【0108】
第13態様に係る真空ポンプでは、バランス修正孔が傾斜しているため、吸気口から治具を挿し込んで、バランス修正孔に修正錘を挿入し易い。
【0109】
(第14態様)真空ポンプは、ロータと、筐体部と、磁気軸受と、調整部材と、転がり軸受と、予圧付与部材と、を備える。ロータは、回転可能である。筐体部は、吸気口を有し、ロータを収容する。磁気軸受は、筐体部に固定されたマグネットホルダ部の周囲に配置された第1磁石と、第1磁石と径方向において対向してロータに配置された第2磁石と、を有する。調整部材は、第2磁石に対する第1磁石の位置を調整する。転がり軸受は、ロータの軸芯であるロータシャフトの磁気軸受とは反対側の端部に配置され、ロータシャフトを筐体部に対して回転可能に支持する。予圧付与部材は、転がり軸受の磁気軸受とは反対側であってロータシャフトに固定され、転がり軸受に磁気軸受側の方向への予圧を付与する。予圧付与部材は、転がり軸受と反対側から挿入される予圧を計測する治具と係合可能な被係合部を有する。
【0110】
これによって、転がり軸受とは反対側から予圧計測用の治具を挿入して予圧を計測しながら、吸気口から挿入した調整用の治具によって調整部材を動かして第2磁石に対する第1磁石の位置を調整することができる。
【0111】
また、吸気口の位置に限らず、例えば、吸気口が筐体部の第1端部に設けられている場合であっても、吸気口からは予圧計測用の治具と調整用の治具のうち一方の治具しか挿入できないため、治具の挿入を交代で行う必要がある。しかしながら、本態様では、調整用の治具を吸気口から挿入するとともに、吸気口とは別の位置か予圧計測用の治具を挿入することができるため、予圧調整を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0112】
1:真空ポンプ、2:筐体部、3:ロータ、4:モータ、5:ステータ翼ユニット、6:ステータ円筒部、7:ケーシング、8:ベース、8a:凹部、8b:貫通孔、9:蓋部、11:第1端部、12:第2端部、13:側面部、14:吸気口、15:ベース端部、16:マグネットホルダ部、16a:凹部、21:シャフト、22:ロータ翼ユニット、23:ロータ円筒部、25:ロータ翼、26:モータロータ、27:モータステータ、28:ステータ翼、31:保護軸受、32:磁気軸受、33:転がり軸受、34:スラストナット、41:第1永久磁石、42:第2永久磁石、43:固定部材、44:皿バネ、45:バネ支持部材、46:磁石ナット、51:第1部分、51a:内周面、52:第2部分、52a:内周面、52b:側面、52c:貫通孔、61:回転治具、61a:先端、62:治具、63:フォースゲージ、146:磁石ナット、151:第1部分、152:第2部分、152a:内周面、152b:外側面、152c:凸部、246:磁石ナット、246a:内側面、246b:外側面、246c:凹部、246:磁石ナット、300:真空ポンプ、322:ロータ翼ユニット、330:ロータ、370:回転バランス修正部、371:バランス修正孔、372:止めネジ、381:円筒部、381a:側面、381b:上面、382:溝部、400:治具、A:軸、A1:第1方向、A2:第2方向、B:径方向、D:ドラッグポンプ部、P11:第1吸気口、P12:第2吸気口、P13:第2吸気口、P21:排気口、R1:内径、R2:内径、R3:外径、R4:外径、T:タービン部

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