(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116422
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】高透明性エレクトロクロミックポリマー
(51)【国際特許分類】
C08G 61/12 20060101AFI20230815BHJP
G02F 1/15 20190101ALN20230815BHJP
【FI】
C08G61/12
G02F1/15 507
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023017747
(22)【出願日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】17/668,300
(32)【優先日】2022-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/748,383
(32)【優先日】2022-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/093,287
(32)【優先日】2023-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521095259
【氏名又は名称】アンビライト・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジアングオ・メイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイデヒ・パンディット
(72)【発明者】
【氏名】ジヤン・ワン
【テーマコード(参考)】
2K101
4J032
【Fターム(参考)】
2K101AA22
2K101DA01
2K101DC04
2K101DC42
2K101DD06
2K101EJ14
2K101EK05
4J032BA04
4J032BA14
4J032BA21
4J032BB01
4J032BC02
4J032CG02
(57)【要約】
【課題】中性状態の可視光領域で高い透明性を示す、メタ共役リンカー及び芳香族部分を含む、新しいタイプのエレクトロクロミックポリマーを提供すること。
【解決手段】エレクトロクロミックポリマーは、1つ又は複数のメタ共役リンカー(MCL)及び1つ又は複数の芳香族部分(Ar)を含む繰り返し単位からなる。1つ又は複数のMCLのそれぞれは、MCLのメタ位で1つ又は複数のArと部分的に共役して、エレクトロクロミックポリマーのポリマー主鎖を形成している。エレクトロクロミックポリマーは、エレクトロクロミック素子において光学的切り替え及び変色を受け、エレクトロクロミック素子は高い透明性及び高い光学的コントラストを示す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数のメタ共役リンカー(MCL)及び1つ又は複数の芳香族部分(Ar)を含むポリマー主鎖からなるエレクトロクロミックポリマーであって、
1つ又は複数のMCLのそれぞれは、その1つ又は複数のMCLのメタ位で1つ又は複数のArと部分的に共役しており、
中性状態で420nm以下の吸収開始を有する、
エレクトロクロミックポリマー。
【請求項2】
中性状態で無色である、請求項1に記載のエレクトロクロミックポリマー。
【請求項3】
中性状態で410nm未満の吸収極大(λmax)を有する、請求項1に記載のエレクトロクロミックポリマー。
【請求項4】
酸化状態で可視及び/又は近赤外線波長の吸収を有する、請求項1に記載のエレクトロクロミックポリマー。
【請求項5】
酸化状態で104cm-1より大きい吸収係数を有する、請求項4に記載のエレクトロクロミックポリマー。
【請求項6】
Ag/AgCl電極に対して0.1~1.5V(両端を含む)の範囲の酸化電位を有する、請求項1に記載のエレクトロクロミックポリマー。
【請求項7】
1つ又は複数のMCLが、芳香族構造又は縮合芳香族構造の少なくとも1つを含む、請求項1に記載のエレクトロクロミックポリマー。
【請求項8】
1つ又は複数のMCLが芳香族構造を含み、芳香族構造はベンゼン構造又は複素環構造を含む、請求項7に記載のエレクトロクロミックポリマー。
【請求項9】
1つ又は複数のMCLが縮合芳香族構造を含み、縮合芳香族構造は縮合ベンゼン構造、又は縮合複素環構造、又は縮合ベンゼン及び複素環構造を含む、請求項7に記載のエレクトロクロミックポリマー。
【請求項10】
1つ又は複数のMCL及び1つ又は複数のArが、以下の式:
【化1】
(式中、nは0より大きい整数であり、m
1、m
2、・・・、m
nのそれぞれは、0以上の整数であり、但し、m
1、m
2、・・・、m
nの少なくとも1つは0より大きい)
の交互の様式で配置されている、請求項1に記載のエレクトロクロミックポリマー。
【請求項11】
1つ又は複数のMCL及び対応するメタ位のそれぞれが、以下の式:
【化2A】
【化2B】
【化2C】
【化2D】
(式中、XはS、Se、N、C又はOであり;R
1~R
12のそれぞれは、水素、C
1~C
30アルキル、C
2~C
30アルケニル、C
2~C
30アルキニル、C
2~C
30アルキルカルボニル、C
1~C
30アルコキシ、C
3~C
30アルコキシアルキル、C
2~C
30アルコキシカルボニル、C
4~C
30アルコキシカルボニルアルキル、C
1~C
30アルキルチオ、C
1~C
30アミニルカルボニル、C
4~C
30アミニルアルキル、C
1~C
30アルキルアミニル、C
1~C
30アルキルスルホニル、C
3~C
30アルキルスルホニルアルキル、C
6~C
18アリール、C
3~C
15シクロアルキル、C
3~C
30シクロアルキルアミニル、C
5~C
30シクロアルキルアルキルアミニル、C
5~C
30シクロアルキルアルキル、C
5~C
30シクロアルキルアルキルオキシ、C
1~C
12ヘテロシクリル、C
1~C
12ヘテロシクリルオキシ、C
1~C
30ヘテロシクリルアルキルオキシ、C
1~C
30ヘテロシクリルアミニル、C
5~C
30ヘテロシクリルアルキルアミニル、C
2~C
12ヘテロシクリルカルボニル、C
3~C
30ヘテロシクリルアルキル、C
1~C
13ヘテロアリール、又はC
3~C
30ヘテロアリールアルキルの1つから独立して選択され;波線のそれぞれは、メタ位の1つを表す)
の1つを含む、請求項1に記載のエレクトロクロミックポリマー。
【請求項12】
1つ又は複数のArのそれぞれが、以下の式:
【化3】
(式中、R
13、R
14及びR
15のそれぞれは、水素、C
1~C
30アルキル、C
2~C
30アルケニル、C
2~C
30アルキニル、C
2~C
30アルキルカルボニル、C
1~C
30アルコキシ、C
3~C
30アルコキシアルキル、C
2~C
30アルコキシカルボニル、C
4~C
30アルコキシカルボニルアルキル、C
1~C
30アルキルチオ、C
1~C
30アミニルカルボニル、C
4~C
30アミニルアルキル、C
1~C
30アルキルアミニル、C
1~C
30アルキルスルホニル、C
3~C
30アルキルスルホニルアルキル、C
6~C
18アリール、C
3~C
15シクロアルキル、C
3~C
30シクロアルキルアミニル、C
5~C
30シクロアルキルアルキルアミニル、C
5~C
30シクロアルキルアルキル、C
5~C
30シクロアルキルアルキルオキシ、C
1~C
12ヘテロシクリル、C
1~C
12ヘテロシクリルオキシ、C
1~C
30ヘテロシクリルアルキルオキシ、C
1~C
30ヘテロシクリルアミニル、C
5~C
30ヘテロシクリルアルキルアミニル、C
2~C
12ヘテロシクリルカルボニル、C
3~C
30ヘテロシクリルアルキル、C
1~C
13ヘテロアリール、又はC
3~C
30ヘテロアリールアルキルの1つから独立して選択される)
の1つを有するチオフェン系単位、フラン系単位、セレノフェン系単位、又はピロール系単位の1つを含む、請求項1に記載のエレクトロクロミックポリマー。
【請求項13】
1つ又は複数のArのそれぞれが、チオフェン系単位を含み、チオフェン系単位は、以下の式:
【化4】
(式中、XはS、Se、N、C又はOであり;R
15~R
18のそれぞれは、水素、C
1~C
30アルキル、C
2~C
30アルケニル、C
2~C
30アルキニル、C
2~C
30アルキルカルボニル、C
1~C
30アルコキシ、C
3~C
30アルコキシアルキル、C
2~C
30アルコキシカルボニル、C
4~C
30アルコキシカルボニルアルキル、C
1~C
30アルキルチオ、C
1~C
30アミニルカルボニル、C
4~C
30アミニルアルキル、C
1~C
30アルキルアミニル、C
1~C
30アルキルスルホニル、C
3~C
30アルキルスルホニルアルキル、C
6~C
18アリール、C
3~C
15シクロアルキル、C
3~C
30シクロアルキルアミニル、C
5~C
30シクロアルキルアルキルアミニル、C
5~C
30シクロアルキルアルキル、C
5~C
30シクロアルキルアルキルオキシ、C
1~C
12ヘテロシクリル、C
1~C
12ヘテロシクリルオキシ、C
1~C
30ヘテロシクリルアルキルオキシ、C
1~C
30ヘテロシクリルアミニル、C
5~C
30ヘテロシクリルアルキルアミニル、C
2~C
12ヘテロシクリルカルボニル、C
3~C
30ヘテロシクリルアルキル、C
1~C
13ヘテロアリール、又はC
3~C
30ヘテロアリールアルキルの1つから独立して選択され;Yは、Ar、若しくは芳香族構造、若しくは縮合芳香族構造のいずれか1つ若しくは複数、又はこれらの組み合わせである)
の1つを含む、請求項12に記載のエレクトロクロミックポリマー。
【請求項14】
チオフェン系単位のXがOである、請求項13に記載のエレクトロクロミックポリマー。
【請求項15】
以下の式:
【化5A】
【化5B】
【化5C】
【化5D】
(式中、n及びmは0より大きい整数であり、a及びbは、0以上の整数であり、但し、a及びbの少なくとも1つは0より大きい)
の式を含む、請求項1に記載のエレクトロクロミックポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2023年1月4日に出願された米国特許出願第18/093,287号、2022年5月19日に出願された米国特許出願第17/748,383号、及び2022年2月9日に出願された米国特許出願第17/668,300号の優先権及び利益を主張する。上記全出願の全ての内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、メタ共役リンカー及び芳香族部分を含む新しいタイプのエレクトロクロミックポリマーに関し、これは中性状態(neutral state)において可視光領域で高い透明性を示す。このポリマーは、その膜を酸化すると、可視光及び近赤外領域で高度に吸収性となり、従って着色する。高い光学的コントラスト及び高い透過率を有する、こうした共役エレクトロクロミックポリマー膜を組み込んだ素子(device)もさらに開示される。
【背景技術】
【0003】
エレクトロクロミック素子は、光透過率の調節及び太陽熱利得の制御を可能にする。真空スパッタリングプロセスを通して製造される無機系エレクトロクロミック素子と比較して、ポリマー系エレクトロクロミックウィンドウは、ロールツーロールコーティング及び積層を通して製造することができる。従ってそれは、低コスト生産及び製造の柔軟性をもたらす。
【0004】
ポリマー系エレクトロクロミック素子は、典型的には、sp2混成炭素で作られた完全共役ポリマー主鎖を特徴とする共役エレクトロクロミックポリマー(ECP)から構成される。従来、ECPは典型的には可視光領域で強い吸光度を有し、従ってその中性状態で着色する。それらが酸化すると、その吸収は近赤外(近接IR)領域の方へシフトし、可視光領域で透過型になる。しかし、酸化したポリマーは可視光領域に弱い吸収を有し、残存する色(residue color)をもたらす。ポリマー膜が厚いと、問題はより深刻になる。その結果、それはポリマーの光学的コントラストにマイナスに影響する。さらに、それは共役エレクトロクロミックポリマーが達成することができる最も高い光透過率を限定する。加えて、中性状態での従来のECPは、膜を通る可視光を遮断して近接IR光を透過させる一方で透過型状態では、可視光を透過させて近接IR光を遮断する。この組み合わせは、熱の管理及び太陽熱利得(SHG)の制御にとって効率的ではない。SHGは、太陽からの放射線がウィンドウ製品を通して熱に変えられる様式を表す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は新しいタイプのエレクトロクロミックポリマーに関する。本出願で開示されるエレクトロクロミックポリマーは、1つ又は複数のメタ共役リンカー(MCL)及び1つ又は複数の芳香族部分(Ar)を含むポリマー主鎖からなる。1つ又は複数のMCLのそれぞれは、その1つ又は複数のMCLのメタ位で1つ又は複数のArと部分的に共役して、エレクトロクロミックポリマーのポリマー主鎖を形成している。いくつかの実施形態では、本開示のエレクトロクロミックポリマーは陽極着色(anodically-coloring)エレクトロクロミックポリマー(AC-ECP)であり、酸化すると着色する。
【0006】
いくつかの実施形態では、本開示のエレクトロクロミックポリマーは、中性状態で420nm以下の吸収開始(absorption onset)を有する。いくつかの実施形態では、吸収極大(λmax、ポリマーがその最も強い光子吸収を有する波長)は中性状態で410nm未満である。いくつかの実施形態では、本開示のエレクトロクロミックポリマーは、中性状態では無色である一方、酸化状態では着色し可視であり、近赤外吸収性である。酸化エレクトロクロミックポリマーは、可視及び/又は近接IR領域で104cm-1より大きい吸収係数を有し、従って酸化状態で着色している。
【0007】
高いバンドギャップにもかかわらず、本開示のエレクトロクロミックポリマーは、いくつかの実施形態ではAg/AgCl電極に対して両端を含む0.1~1.5Vの範囲の比較的低い酸化電位を依然として有する。
【0008】
MCLは、芳香族構造若しくは縮合芳香族構造の少なくとも1つ、又はこれらの組み合わせを含む。芳香族構造はベンゼン構造又は複素環構造を含む。縮合芳香族構造は、縮合ベンゼン構造、又は縮合複素環構造、又は縮合ベンゼン及び複素環構造を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示のエレクトロクロミックポリマーに対して、1つ又は複数のMCL及び1つ又は複数のArは、
【0010】
【0011】
の一般式の交互の又はランダムな様式で配置される。
【0012】
この構造で、nは0より大きい整数であり、m1、m2、・・・、mnのそれぞれは0以上の整数であり、但し、m1、m2、・・・、mnの少なくとも1つが0より大きい。1つ若しくは複数のMCL(又は1つ若しくは複数のAr)は、互いと同じ又は互いと異なり得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のMCL及び対応するメタ位は、以下の式:
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
(式中、波線のそれぞれは、1つ又は複数のArに隣接して連結するメタ位を表し;XはS、Se、N、C又はOであり;R1~R12は、これらに限定されないが、以下の、水素、C1~C30アルキル、C2~C30アルケニル、C2~C30アルキニル、C2~C30アルキルカルボニル、C1~C30アルコキシ、C3~C30アルコキシアルキル、C2~C30アルコキシカルボニル、C4~C30アルコキシカルボニルアルキル、C1~C30アルキルチオ、C1~C30アミニルカルボニル、C4~C30アミニルアルキル、C1~C30アルキルアミニル、C1~C30アルキルスルホニル、C3~C30アルキルスルホニルアルキル、C6~C18アリール、C3~C15シクロアルキル、C3~C30シクロアルキルアミニル、C5~C30シクロアルキルアルキルアミニル、C5~C30シクロアルキルアルキル、C5~C30シクロアルキルアルキルオキシ、C1~C12ヘテロシクリル、C1~C12ヘテロシクリルオキシ、C1~C30ヘテロシクリルアルキルオキシ、C1~C30ヘテロシクリルアミニル、C5~C30ヘテロシクリルアルキルアミニル、C2~C12ヘテロシクリルカルボニル、C3~C30ヘテロシクリルアルキル、C1~C13ヘテロアリール、又はC3~C30ヘテロアリールアルキルを含む置換基から独立して選択される)
の1つを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のArは、以下の式:
【0021】
【0022】
(式中、R13、R14及びR15のそれぞれは、これらに限定されないが、以下の、水素、C1~C30アルキル、C2~C30アルケニル、C2~C30アルキニル、C2~C30アルキルカルボニル、C1~C30アルコキシ、C3~C30アルコキシアルキル、C2~C30アルコキシカルボニル、C4~C30アルコキシカルボニルアルキル、C1~C30アルキルチオ、C1~C30アミニルカルボニル、C4~C30アミニルアルキル、C1~C30アルキルアミニル、C1~C30アルキルスルホニル、C3~C30アルキルスルホニルアルキル、C6~C18アリール、C3~C15シクロアルキル、C3~C30シクロアルキルアミニル、C5~C30シクロアルキルアルキルアミニル、C5~C30シクロアルキルアルキル、C5~C30シクロアルキルアルキルオキシ、C1~C12ヘテロシクリル、C1~C12ヘテロシクリルオキシ、C1~C30ヘテロシクリルアルキルオキシ、C1~C30ヘテロシクリルアミニル、C5~C30ヘテロシクリルアルキルアミニル、C2~C12ヘテロシクリルカルボニル、C3~C30ヘテロシクリルアルキル、C1~C13ヘテロアリール、又はC3~C30ヘテロアリールアルキルを含む置換基から独立して選択される)
を有するチオフェン系単位、フラン系単位、セレノフェン系単位、若しくはピロール系単位の1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、チオフェン系単位は、以下の式:
【0024】
【0025】
(式中、Xは、S、Se、N、C又はOであり;R15~R18のそれぞれは、これらに限定されないが、以下の水素、C1~C30アルキル、C2~C30アルケニル、C2~C30アルキニル、C2~C30アルキルカルボニル、C1~C30アルコキシ、C3~C30アルコキシアルキル、C2~C30アルコキシカルボニル、C4~C30アルコキシカルボニルアルキル、C1~C30アルキルチオ、C1~C30アミニルカルボニル、C4~C30アミニルアルキル、C1~C30アルキルアミニル、C1~C30アルキルスルホニル、C3~C30アルキルスルホニルアルキル、C6~C18アリール、C3~C15シクロアルキル、C3~C30シクロアルキルアミニル、C5~C30シクロアルキルアルキルアミニル、C5~C30シクロアルキルアルキル、C5~C30シクロアルキルアルキルオキシ、C1~C12ヘテロシクリル、C1~C12ヘテロシクリルオキシ、C1~C30ヘテロシクリルアルキルオキシ、C1~C30ヘテロシクリルアミニル、C5~C30ヘテロシクリルアルキルアミニル、C2~C12ヘテロシクリルカルボニル、C3~C30ヘテロシクリルアルキル、C1~C13ヘテロアリール、又はC3~C30ヘテロアリールアルキルを含む置換基から独立して選択され;Yは、Ar、芳香族構造、若しくは縮合芳香族構造のいずれか1つ若しくは複数、又はこれらの組み合わせである)
又はその組み合わせを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、チオフェン系単位のXはOである。
【0027】
いくつかの実施形態では、本開示のエレクトロクロミックポリマーは、以下の式:
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
(式中、n及びmは、0より大きい整数であり、a及びbは、a及びbの少なくとも1つが0より大きい、0以上の整数である)
を含む。
【0033】
本技術の様々な実施形態のある特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。本技術の特徴及び利点のより良好な理解は、本発明の原理が利用される例示的実施形態を説明した以下の詳細な記述、及び下記添付図面を参照することによって得られるであろう。本発明を説明する目的のために、図面は、本発明の1つ又は複数の実施形態の態様を示している。しかし、本発明は、図面に示される正確な装置及び手段に限定されないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1(A)】従来のECP(
図1(B))と比較して、本開示のECPの異なる色変化メカニズムを表す図である。
【
図1(B)】従来のECPの色変化メカニズムを表す図である。
【
図2】一実施形態による実施例ECP-1を使用した、例示的なソリッドステート素子(solid-state device)のCVデータの図である。
【
図3】一実施形態による545nmでの実施例ECP-1を使用した、代表的なソリッドステート素子のスイッチング速度論(switching kinetics)の図である。
【
図4】一実施形態による異なる電圧での、例示的なECP-1薄膜の吸光度スペクトルの図である。
【
図5】一実施形態による別の実施例ECP-2を使用した、例示的なソリッドステート素子のCVデータの図である。
【
図6】一実施形態による550nmで実施例ECP-2を使用した、例示的なソリッドステート素子のスイッチング速度論の図である。
【
図7】一実施形態による異なる電圧での、例示的なECP-2薄膜の吸光度スペクトルの図である。
【
図8】一実施形態による異なる電圧での、ジクロロメタン中0.1mg/mLの例示的なECP-6溶液の吸光度スペクトルの図である。
【
図9】一実施形態による異なる電圧での、ジクロロメタン中0.1mg/mLの例示的なECP-7溶液の吸光度スペクトルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下の記述では、本発明の様々な実施形態の完全な理解を提供するために、ある特定の細部が記載されている。しかし、本発明がこれらの細部なしで実行され得ることを、当業者は理解するであろう。そのうえ、本発明の様々な実施形態が本明細書に開示されているが、多くの改変及び修正は、当業者共通の一般知識に従って本発明の範囲内でなされ得る。こうした修正は、実質的に同じ方法で同じ結果を達成するために、本発明の任意の態様にとって公知の等価物の置換を含む。
【0036】
文脈で特に要求しない限り、本明細書及び特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」という単語、及び「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などのその変形は、開放的で包括的な意味、すなわち「含むが、限定されるものではない」と解釈すべきである。明細書を通した数値範囲の記述は、範囲を定義する値を含む範囲内にある各個別の値を個別に参照する略記法として機能する意図であり、各個別の値は、本明細書に個別に記載されたように明細書に組み込まれる。さらに、単数形の形態「1つの(a)」「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈で明白に指示しない限り複数の指示対象を含む。
【0037】
本明細書を通して「一実施形態(one embodiment)」又は「1つの実施形態(an embodiment)」への言及は、実施形態に関連して記述された特定の特徴、構造又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書を通して様々な場所での「一実施形態では」又は「1つの実施形態では」という成句の出現は、全てが必ずしも同じ実施形態を指しておらず、いくつかの例であり得る。さらに、特定の特徴、構造、又は特性を、1つ又は複数の実施形態で任意の好適な様式で組み合わせてよい。
【0038】
本開示は、新しいタイプのエレクトロクロミックポリマーに関する。本出願で開示されるエレクトロクロミックポリマーは、1つ又は複数のメタ共役リンカー(MCL)及び1つ又は複数の芳香族部分(Ar)を含むポリマー主鎖からなる。1つ又は複数のMCLのそれぞれは、その1つ又は複数のMCLのメタ位で1つ又は複数のArと部分的に共役して、エレクトロクロミックポリマーのポリマー主鎖を形成してる。いくつかの実施形態では、本出願で開示されるエレクトロクロミックポリマーは、1つ又は複数のMCL及び1つ又は複数のArを含む繰り返し単位からなり、メタ共役は、MCLの使用を通してポリマー主鎖に沿って導入される。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックポリマーは陽極着色エレクトロクロミックポリマー(AC-ECP)であり、酸化すると着色する。
【0039】
図1で示すように、従来の共役ECP(
図1(B))は完全に共役して可視光領域に強い吸光度を有し、従ってその中性状態で着色する一方、酸化すると(酸化状態)その吸収は近接IR領域の方へシフトし、透過型になる。しかし、酸化ポリマーは可視光領域に依然として弱い吸収を有し、残存する色につながる。他方では、
図1(A)のECPに開示する1つの実施例で説明するように、ECPは、中性状態では450nmの後に吸収を実質的に示さず、酸化状態では可視光範囲及び近赤外線範囲にいくつかの吸収ピークを有し、可視光範囲での着色及び近赤外吸収を示している。
【0040】
本開示のエレクトロクロミックポリマーは、可視光及び近接IR光の通過又は遮断を同期化することができ、これは、一実施形態では、太陽熱利得を管理するためのエレクトロクロミックウィンドウに非常に有用である。本開示のエレクトロクロミックポリマーは中性状態で透明であり、酸化状態で着色してIR吸収性であり、この特性は高い光学的コントラスト、高い透過率、及び相乗作用的な太陽熱の利得を達成するために、非常に望まれている。
【0041】
本開示のエレクトロクロミックポリマーは、中性状態の可視光領域で透明であり、酸化状態で着色する。例えば、本開示のエレクトロクロミックポリマーは、中性状態の可視光範囲(例えば、450~750nm)で少なくとも60%の透過率を有し得る。いくつかの実施形態では、本開示のエレクトロクロミックポリマーは、中性状態の450~750nmの範囲で少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、98%、又はそれ以上の透過率を有し得る。いくつかの実施形態では、本開示のエレクトロクロミックポリマーは、中性状態の可視光範囲で透明である。酸化状態では、本開示のエレクトロクロミックポリマーは、可視光範囲(例えば、約360~750nm)及び近接IR範囲(例えば、約750~1600ナノメートル)に吸収を有し、それによって着色し、近赤外吸収性である。
【0042】
本開示のエレクトロクロミックポリマーは、UV吸収及びエネルギーバンドギャップを有する。エネルギーバンドギャップは、電子の価電子帯と伝導帯の間のエネルギー差である。それは、伝導に関与することができる伝導帯の状態まで電子を励起するために必要なエネルギーの最小変化である。吸収開始(λc)は、ポリマーが光子吸収を有さないよりも高い波長である。エネルギーバンドギャップは、1240/吸収開始波長として計算することができる。いくつかの実施形態では、本出願で開示されるエレクトロクロミックポリマーは、中性状態で450nm以下の吸収開始を有する。いくつかの実施形態では、本開示のエレクトロクロミックポリマーは、中性状態で440nm、430nm、420nm、410nm、405nm、又は400nm以下の吸収開始を有する。いくつかの実施形態では、吸収極大(λmax、ポリマーがその最も強い光子吸収を有する波長)は、中性状態で420nm未満である。いくつかの実施形態では、吸収極大は中性状態で410nm又は405nm又は400nm未満である。いくつかの実施形態では、本開示のエレクトロクロミックポリマーは、中性状態で、2.8eV以上かつ4.0eV未満のエネルギーバンドギャップを有する。いくつかの実施形態では、本開示のエレクトロクロミックポリマーは、中性状態で2.9、3.0又は3.1eV以上、かつ4.0eV未満のエネルギーバンドギャップを有する。いくつかの実施形態では、本開示のエレクトロクロミックポリマーは、中性状態で無色(例えば、400~750nm若しくは410~750nm若しくは420~750nmに吸光度がない)又は黄色(例えば、400~500nm、若しくは410~500nm、若しくは420~500nm、若しくは400~480nm、若しくは410~480nm、若しくは420~480nm、若しくは400~450nm、若しくは410~450nm、若しくは420~450nmにテーリング吸収)であり、酸化状態で着色し、可視であり、近接IR吸収性である。酸化エレクトロクロミックポリマーは、可視及び/又は近接IR領域で104cm-1より大きい吸収係数を有し、従って酸化状態で着色する。
【0043】
中性状態の可視光範囲での実質的な吸光度不足、及び酸化状態の可視光範囲での高い吸光度に起因して、本開示のエレクトロクロミックポリマーは、従来のECPに比較して高い光学的コントラスト及び高い光透過率を実証する。高いバンドギャップにもかかわらず、本開示のエレクトロクロミックポリマーは、いくつかの実施形態では、Ag/AgCl電極に対して0.1~1.5V(両端を含む)の範囲の比較的低い酸化電位を有する。いくつかの実施形態では、本開示のエレクトロクロミックポリマーは、Ag/AgCl電極に対して0.1~1V(両端を含む)の範囲の低い酸化電位を有する。比較的低い酸化電位は、ECPのサイクリング耐久性にプラスになり得る。従って、本開示のエレクトロクロミックポリマーは、良好なサイクリング安定性/信頼性及び高い光学的コントラストを有する素子へうまく組み込むことができる。
【0044】
MCLは、芳香族構造若しくは縮合芳香族構造の少なくとも1つ、又はこれらの組み合わせを含む。芳香族構造はベンゼン構造又は複素環構造を含む。縮合芳香族構造は、縮合ベンゼン構造、又は縮合複素環構造、又は縮合ベンゼン及び複素環構造を含む。いくつかの実施形態では、MCLはベンゼン、若しくはナフタレン、若しくは5-員複素環、若しくはベンゼン縮合五員複素環の少なくとも1つ、又はこれらの構造の組み合わせを含む。MCLのパフォーマンス、例えば、溶解性又は加工性又は安定性を調節するために、MCL上に側鎖又は芳香族側鎖を導入することもできる。
【0045】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のMCL及び1つ又は複数のArは、以下の一般式:
【0046】
【0047】
の交互の又はランダムな様式で配置される。
【0048】
この構造で、nは0より大きい整数であり、m1、m2、・・・、mnのそれぞれは、0以上の整数であり、但し、m1、m2、・・・、mnの少なくとも1つが0より大きい。1つ又は複数のArは芳香族部分であり、芳香族部分は1つ又は複数の芳香族構造を含み得る。1つ又は複数のMCL(又はAr)のそれぞれは、互いと同じであっても、互いと異なっていてもよい。
【0049】
メタ共役は、1つ又は複数のMCLの使用を通してポリマー主鎖に導入される。1つ又は複数のMCLのそれぞれは、1つ又は複数のArとそのメタ位を通して連結することによって、ポリマー主鎖において部分的に共役する。例えば、メタ位は、MCLの芳香族構造又は縮合芳香族構造の2つの位置である。メタ位が接続される場合、芳香族構造又は縮合芳香族構造からのπ電子は、p軌道を通しては別の隣接して連結された単位に完全に非局在化することができない。
【0050】
いくつかの実施形態では、MCLの芳香族構造は、ベンゼン構造又は五員複素環構造を含み、MCLの芳香族構造はメタ位で置換され、メタ位は芳香族構造の1-位及び3-位である。いくつかの実施形態では、MCLの縮合芳香族構造はナフタレンを含み、縮合芳香族構造はメタ位で置換され、メタ位はナフタレン上の1-位及び3-位、又は1-位及び4-位、又は1-位及び6-位である。いくつかの実施形態では、MCLの縮合芳香族構造は5-員複素環と縮合したベンゼンを含み、縮合芳香族構造はメタ位で置換され、メタ位は、ベンゼン縮合複素環上の1-位及び3-位、又は1-位及び5-位である。
【0051】
1つ又は複数のMCLの例示構造及び対応するメタ位は以下:
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
(式中、XはS、Se、N、C又はOであり;R1~R12は、これらに限定されないが以下の、水素、C1~C30アルキル、C2~C30アルケニル、C2~C30アルキニル、C2~C30アルキルカルボニル、C1~C30アルコキシ、C3~C30アルコキシアルキル、C2~C30アルコキシカルボニル、C4~C30アルコキシカルボニルアルキル、C1~C30アルキルチオ、C1~C30アミニルカルボニル、C4~C30アミニルアルキル、C1~C30アルキルアミニル、C1~C30アルキルスルホニル、C3~C30アルキルスルホニルアルキル、C6~C18アリール、C3~C15シクロアルキル、C3~C30シクロアルキルアミニル、C5~C30シクロアルキルアルキルアミニル、C5~C30シクロアルキルアルキル、C5~C30シクロアルキルアルキルオキシ、C1~C12ヘテロシクリル、C1~C12ヘテロシクリルオキシ、C1~C30ヘテロシクリルアルキルオキシ、C1~C30ヘテロシクリルアミニル、C5~C30ヘテロシクリルアルキルアミニル、C2~C12ヘテロシクリルカルボニル、C3~C30ヘテロシクリルアルキル、C1~C13ヘテロアリール、又はC3~C30ヘテロアリールアルキルを含む置換基から独立して選択され;波線はメタ位を表す)の1つを含み得る。
【0058】
1つ又は複数のArは、限定されるものではないが、以下:
【0059】
【0060】
の式を有する、チオフェン系単位、フラン系単位、セレノフェン系単位、若しくはピロール系単位のいずれか1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0061】
上記の構造で、R13、R14及びR15のそれぞれは、これらに限定されないが、以下の水素、C1~C30アルキル、C2~C30アルケニル、C2~C30アルキニル、C2~C30アルキルカルボニル、C1~C30アルコキシ、C3~C30アルコキシアルキル、C2~C30アルコキシカルボニル、C4~C30アルコキシカルボニルアルキル、C1~C30アルキルチオ、C1~C30アミニルカルボニル、C4~C30アミニルアルキル、C1~C30アルキルアミニル、C1~C30アルキルスルホニル、C3~C30アルキルスルホニルアルキル、C6~C18アリール、C3~C15シクロアルキル、C3~C30シクロアルキルアミニル、C5~C30シクロアルキルアルキルアミニル、C5~C30シクロアルキルアルキル、C5~C30シクロアルキルアルキルオキシ、C1~C12ヘテロシクリル、C1~C12ヘテロシクリルオキシ、C1~C30ヘテロシクリルアルキルオキシ、C1~C30ヘテロシクリルアミニル、C5~C30ヘテロシクリルアルキルアミニル、C2~C12ヘテロシクリルカルボニル、C3~C30ヘテロシクリルアルキル、C1~C13ヘテロアリール、又はC3~C30ヘテロアリールアルキルを含む置換基から独立して選択される。
【0062】
チオフェン系単位は、限定されるものではないが、以下:
【0063】
【0064】
の式、又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0065】
上記の構造で、XはS、Se、N、C又はOであり;R15~R18のそれぞれは、限定されるものではないが、以下の、水素、C1~C30アルキル、C2~C30アルケニル、C2~C30アルキニル、C2~C30アルキルカルボニル、C1~C30アルコキシ、C3~C30アルコキシアルキル、C2~C30アルコキシカルボニル、C4~C30アルコキシカルボニルアルキル、C1~C30アルキルチオ、C1~C30アミニルカルボニル、C4~C30アミニルアルキル、C1~C30アルキルアミニル、C1~C30アルキルスルホニル、C3~C30アルキルスルホニルアルキル、C6~C18アリール、C3~C15シクロアルキル、C3~C30シクロアルキルアミニル、C5~C30シクロアルキルアルキルアミニル、C5~C30シクロアルキルアルキル、C5~C30シクロアルキルアルキルオキシ、C1~C12ヘテロシクリル、C1~C12ヘテロシクリルオキシ、C1~C30ヘテロシクリルアルキルオキシ、C1~C30ヘテロシクリルアミニル、C5~C30ヘテロシクリルアルキルアミニル、C2~C12ヘテロシクリルカルボニル、C3~C30ヘテロシクリルアルキル、C1~C13ヘテロアリール、又はC3~C30ヘテロアリールアルキルを含む置換基から独立して選択され;Yは、Ar、若しくは芳香族構造、若しくは縮合芳香族構造のいずれか1つ若しくは複数、又はこれらの組み合わせである。
【0066】
いくつかの実施形態では、チオフェン系単位のXはOである。
【0067】
エレクトロクロミックポリマー主鎖へメタ共役を導入することによって、ポリマー主鎖に沿った電子共役は妨げられ、高いバンドギャップ(>2.0eV)につながる。従って、本開示のエレクトロクロミックポリマーは、中性状態で高度に透過型に(又は透明にさえ)見える。ECPの酸化はより低いバンドギャップ(<1.5eV)をもたらし、ポリマーの吸収はUV領域から可視及び近接IR領域へレッドシフトする(red-shift)。従って、ポリマーは高度に着色する。
【0068】
1つ又は複数のArは、1つ又は複数の芳香族構造又は縮合芳香族構造を含み得る。Arのタイプ及び量を制御することによって、中性状態で可視光範囲内の高い透明性を維持しながら、本開示のエレクトロクロミックポリマーの酸化還元電位を容易に調整することができる。例えば、電子がより豊富な単位(例えば、ジオキシチオフェン)を主鎖上に導入して、ポリマーをより酸化されやすくし、その結果その開始電位(onset potential)を低下させ、その電気化学的安定性及びエレクトロクロミックサイクリング安定性を改善することができる。MCL上の置換基を変更する(例えば、アルコキシ側鎖を導入する)ことによって、本開示のエレクトロクロミックポリマーの酸化還元電位を調節することもできる。
【0069】
本開示のエレクトロクロミックポリマーを、溶媒、例えば、トルエン又はp-キシレンに溶解させることができ、溶液処理可能膜キャスティングプロセス(solution-processable film casting process)に使用することができる。ポリマー溶液の濃度を制御することによって、制御可能な厚さを有するポリマー薄膜を得ることができる。さらに、優れた溶解性は、本開示のエレクトロクロミックポリマーに様々なキャスティング法、例えば、スピンコーティング、スプレーコーティング、及びドロップキャスティングとの適合性をもたらす。製造にフレンドリーなプロセスにより、そのより広範な応用が実現可能になる。
【0070】
実施例を以下に示す。
【0071】
実施形態
【実施例0072】
ECP-1
いくつかの実施形態では、本開示のECP-1は以下
【0073】
【0074】
の式を有する。
【0075】
ECP-1は、カルバゾール含有反応単位を調製し、次いで、二量体単位と共にそれを重合することによって合成される。詳細な方法は以下の工程を含む:
【0076】
工程1-1:カルバゾール含有反応単位(化合物2)の調製。
【0077】
【0078】
3,6-ジブロモカルバゾールを、DMFに溶解させる。その後、1.2当量のNaHを添加し、混合物を2時間撹拌する。次いで、1.2当量の化合物1を反応に添加し、混合物を終夜撹拌する。その後水を反応へ添加し、固体を沈殿させる。懸濁液をろ過して所望の生成物である化合物2を白色固体として得る。
【0079】
工程1-2:重合:カルバゾール含有反応単位の二量体単位との重合。
【0080】
【0081】
化合物2(1当量)、化合物3(1当量)、K2CO3(2.6当量)、PivOH(0.3当量)、Pd(OAc)2(0.02当量)をシェンク管の中へ添加する。次いで吸引し(3~5分間)窒素で管を再び満たした。この手順を3回繰り返す。続いて、窒素脱気溶媒ジメチルアセトアミド(DMAc)を添加し、混合物を120℃に加熱して、14時間持続する。次いで、混合物をメタノールの中へ注ぎ、粗製ポリマー固体を沈殿させる。ろ過して固体を得、固体をクロロホルムへ再溶解させ、水で3回洗う。クロロホルム溶液を大量のメタノールへ添加し、ポリマーを沈殿させる。懸濁液をろ過して、所望の生成物であるポリマーECP-1を得る。
【0082】
得られたECP-1は、およそ0.75V(対Ag/AgCl)の酸化電位、及び3.0eVより高いエネルギーバンドギャップを有する。ECP-1は、エレクトロクロミック層として使用されるECP-1、電解質としてのPEGDA中0.2MのLiTFSI、及びイオン貯蔵層としてのVOxを用いて、ソリッドステートECDに組み立てられる。ソリッドステートECDは、-0.5V~1.5Vの間で安定して切り替えることができる(
図2)。ECP-1の中性及び酸化状態の吸光度スペクトルを、405nmのλc及び320nmのλmaxとともに
図4に示す。ソリッドステートECDは、中性状態で93%の高い透過率を有する高い透明性を示し(
図3)、ECP-1が酸化されると、約614nmに1つの吸収ピーク及びおよそ900~1100nmの近接IR領域に別のより広い吸収帯を有して(
図4)、鮮明な青色へ切り替わる。ソリッドステートECDの光学的コントラストは、約75%である(
図3)。
ECP-2は、最初に置換ベンゼン反応単位を調製し、次いで非環式ジオキシチオフェン(AcDOT)単位と共にそれを重合することによって、合成される。詳細な方法は以下の工程を含む:
化合物5及びp-トルエンスルホン酸をアセトニトリルに溶解させる。続いて、N-ブロモスクシンイミドを添加し、混合物を終夜攪拌する。懸濁液をろ過して、所望の生成物を得る。生成物である化合物6は白色固体である。