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特開2023-116430ガリウムとテルルがドーピングされた固体電解質、その製造方法及びこれを含む全固体電池
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116430
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】ガリウムとテルルがドーピングされた固体電解質、その製造方法及びこれを含む全固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20230815BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230815BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20230815BHJP
   H01B 1/08 20060101ALI20230815BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20230815BHJP
   C01B 19/00 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/052
H01B1/06 A
H01B1/08
H01B13/00 Z
C01B19/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018470
(22)【出願日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】10-2022-0016993
(32)【優先日】2022-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】316016667
【氏名又は名称】ウルサン ナショナル インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】523046604
【氏名又は名称】ミコ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】キム,グン テ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ア リム
(72)【発明者】
【氏名】ジョ,ヒョ イ
【テーマコード(参考)】
5G301
5H029
【Fターム(参考)】
5G301CA02
5G301CA16
5G301CA24
5G301CA28
5G301CD01
5H029AJ02
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL03
5H029AL12
5H029AM12
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029HJ02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】イオン伝導度及び電位窓の特性に優れた全固体電池用リチウムランタンジルコニウム酸化物固体電解質、その製造方法及び全固体電池を提供する。
【解決手段】Lia-xGaLaZrc-yTe12(5≦a≦9、0<x≦4、2≦b≦4、1≦c≦3、0<y<1)で表される、ガリウム(Ga)とテルル(Te)がドーピングされたリチウムランタンジルコニウム酸化物系化合物を含む固体電解質とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される、ガリウム(Ga)とテルル(Te)がドーピングされたリチウムランタンジルコニウム酸化物系化合物を含む固体電解質:
[化学式1]
Lia-xGaLaZrc-yTe12
(5≦a≦9、0<x≦4、2≦b≦4、1≦c≦3、0<y<1)。
【請求項2】
前記ガリウム(Ga)とテルル(Te)がドーピングされたリチウムランタンジルコニウム酸化物系化合物が下記化学式2で表される、請求項1に記載の固体電解質:
[化学式2]
Li7-xGaLaZr2-yTe12
(0<x≦3、0<y<1)。
【請求項3】
ガーネットキュービック相(Garnet Cubic Phase)を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の酸化物固体電解質。
【請求項4】
γ-Alをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の固体電解質。
【請求項5】
(a)リチウム前駆体、ガリウム前駆体、ランタン前駆体、ジルコニウム前駆体及びテルル前駆体をミリング(milling)するステップ;及び
(b)前記ミリングされた混合物を焼成(calcination)するステップを含む、請求項1に記載された固体電解質の製造方法。
【請求項6】
前記(a)ステップで、ミリングは遊星ミリング(planatery milling)である、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記(a)ステップで、ミリングは前駆体を溶媒と混合して実行される、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記(a)ステップで、ミリングは300~700rpmで実行される、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記(a)ステップで、リチウム前駆体、ガリウム前駆体、ランタン前駆体、ジルコニウム前駆体及びテルル前駆体は、それぞれLi、Ga、La、ZrO及びTeOである、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項10】
(c)前記焼成された混合物を2次ミリングするステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記焼成された混合物にγ-Alを添加した後、2次ミリングする、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記(c)ステップで、ミリングは遊星ミリング(planatery milling)である、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
正極;
負極;及び
前記正極と負極との間に介在される固体電解質を含む全固体電池において、
前記固体電解質が請求項1に記載された固体電解質を含む、ことを特徴とする全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガリウムとテルルがドーピングされた固体電解質、その製造方法及びこれを含む全固体電池に関する。具体的には、本発明は、ガリウムとテルルがドーピングされたリチウムランタンジルコニウム酸化物(lithium lanthanum zirconium oxide、LLZO)を含む固体電解質、その製造方法及びこれを含む全固体リチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
可燃性の液体電解質を固体電解質で置き換えた全固体リチウムイオン電池は、爆発危険を除去して最も重要な安定性を確保することができて、多くの関心を集めている。また、安定性のほかにも次世代電池として思われる理由は次の通りである。第一に、有機系液体電解質に使用できなかった高エネルギ密度を有する新しい活物質を活用することができるようになる。有機系液体電解質の電位窓は4.5V以下で、その以上になると、電解質構造の崩壊による性能低下を伴う。しかしながら、固体電解質の電位窓は5V以上で、高電圧を有する新しい正極物質を適用してエネルギ密度を高めることができるようになる。第二に、固体電解質は高いヤング率(Young’s modulus)と輸率(transference number)を有するので、リチウム樹脂相(Li-dendrite)の形成が理論的に抑制されることができて、現在用いられるグラファイト(graphite)(黒鉛)負極をリチウム金属で置き換えることができ、容量を極大化することができる。第三に、セルパッケージング時にエネルギ密度を増加させることができる。中大型電池のためにセルをパッケージングする時、液体電解質はセルをそれぞれ密封した後、モジュールとパックで組立てなければならないが、固体電解質は積層だけで複数個のセルを組立てて密封することができる。よって、セルの性能が同一であると仮定した時、体積が従来に比べて20%ほど減少し、体積当たりエネルギ密度を高めることができることに予測される。
【0003】
全固体リチウムイオン電池の固体電解質は、高分子とセラミックス電解質を用いる場合に分けられ、セラミックス電解質は硫化物系と酸化物系に対する研究が主に行われている。硫化物系固体電解質の場合、イオン伝導度が10-2S/cm以上で、液体電解質ほど優れた伝導度を見せ、冷間圧縮(cold pressing)のみで焼結が可能で、バルク型全固体電池の製作が可能であるので、商用化を目標として、たくさんの開発が行われている。しかしながら、硫化物系固体電解質は、空気中で酸素と水分と反応して致命的な毒性物質である硫化水素(HS)を生成することがあり、酸化物系である正極活物質と接触すると副反応を起こして、密封と界面処理のための工程費用が高くなる虞があるという限界を抱えている。また、硫化物電解質は、リチウム金属と反応するため、負極として高容量リチウム金属を用いることができないという短所がある。
【0004】
一方、酸化物系固体電解質は、各種物質に対する化学的安定性に優れ、毒性物質の発生や副産物の生成などの問題を最小化することができるという長所を有する。酸化物系固体電解質には、LATP(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO)、LLTO(Li3xLa2/(3-x)TiO)系、LLZO(LiLaZr12)などが広く知られており、そのうち、LLZOが高いイオン伝導度、電極材料との低い反応性、広い電位窓(0-6V)などの長所で注目されている。ただ、前記LLZOは焼結工程でリチウム(Li)の揮発により工程の条件を設定しにくく、難焼結性により製造工程が複雑であるという問題がある。また、結晶構造によってイオン伝導度の差が大きいので、このような問題を解決するために、LLZOの結晶構造を制御する技術の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、イオン伝導度及び電位窓の特性に優れた全固体電池用LLZO固体電解質、その製造方法及びこれを含む全固体電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一様態に係ると、下記化学式1で表される、ガリウム(Ga)とテルル(Te)がドーピングされたリチウムランタンジルコニウム酸化物系化合物を含む固体電解質が提供される:
[化学式1]
Lia-xGaLaZrc-yTe12
(5≦a≦9、0<x≦4、2≦b≦4、1≦c≦3、0<y<1)
【0007】
本発明の他の一様態に係ると、(a)リチウム前駆体、ガリウム前駆体、ランタン前駆体、ジルコニウム前駆体及びテルル前駆体をミリング(milling)するステップ;及び(b)前記ミリングされた混合物を焼成(calcination)するステップを含む、固体電解質の製造方法が提供される。
【0008】
本発明のまた他の一様態に係ると、正極;負極;及び前記正極と負極との間に介在される固体電解質を含む全固体電池において、前記固体電解質が前述の化学式1の固体電解質を含む、ことを特徴とする全固体電池が提供される。
【発明の効果】
【0009】
ガリウムとテルルがドーピングされた本発明の固体電解質は、イオン伝導度と電位窓の特性が優れているので、充放電性能、エネルギ効率のような電気化学的特性が改善された全固体電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1a】比較例1によって製造した固体電解質の焼成条件によるXRD分析結果グラフである。
図1b】実施例1によって製造した固体電解質の焼成条件によるXRD分析結果グラフである。
図2a】比較例2によって製造した全固体電池内の固体電解質の焼成条件によるX線回折分析グラフである。
図2b図2aにおいて1050℃の温度で4時間焼成した固体電解質を含む全固体電池のX線回折分析グラフである。
図2c図2aにおいて1050℃の温度で8時間焼成した固体電解質を含む全固体電池のX線回折分析グラフである。
図2d図2aにおいて1050℃の温度で12時間焼成した固体電解質を含む全固体電池のX線回折分析グラフである。
図3a】実施例2によって製造した全固体電池内の固体電解質の焼成条件によるX線回折分析グラフである。
図3b図3aにおいて1050℃の温度で4時間焼成した固体電解質を含む全固体電池のX線回折分析グラフである。
図3c図3aにおいて1050℃の温度で8時間焼成した固体電解質を含む全固体電池のX線回折分析グラフである。
図3d図3aにおいて1050℃の温度で12時間焼成した固体電解質を含む全固体電池のX線回折分析グラフである。
図4】実施例2及び比較例2によって製造した全固体電池内の固体電解質の焼成条件による導電率を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0012】
本出願で用いた用語は、ただ特定の具現例を説明するために用いられたもので、本発明を限定しようとする意図はない。異なるように定義されない限り、技術的または科学的用語を含んで、ここで用いられるすべての用語は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0013】
明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」、「含有」する、「有する」とする時、これは特に異なるように定義されない限り、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0014】
層、膜などのある部分が他の部分の「上に」あるとする時、これは他の部分の「直上に」にあってある部分と他の部分が互いに接している場合だけでなく、その中間にまた他の部分が存在する場合も含む。反対に、ある部分が他の部分の「直上に」あるとする時は、中間に他の部分がないことを意味する。
【0015】
本発明に係る固体電解質に含まれるガリウム(Ga)とテルル(Te)がドーピングされたリチウムランタンジルコニウム酸化物系化合物(以下、LLZO化合物とも称する)は、下記化学式1で表される:
[化学式1]
Lia-xGaLaZrc-yTe12
(5≦a≦9、0<x≦4、2≦b≦4、1≦c≦3、0<y<1)
【0016】
前記化学式1のLLZO化合物は、下記化学式2で表されることができる。
[化学式2]
Li7-xGaLaZr2-yTe12
(0<x≦3、0<y<1)
【0017】
好ましくは、前記化学式2のx及びyは、それぞれ0<x≦0.5、0<y<0.5であってもよい。前記範囲を逸脱して、xの比率が小さすぎると、ガーネットキュービック相を生成するという効果を得ることができないという短所があり、xの比率が大きすぎると、物質内部のLi含有量が少なすぎて、伝導度が減少するという短所がある。また、yの比率が小さすぎると、ガーネットキュービック相を生成する効果を得られないという短所があり、xの比率が大きすぎると、同じく物質内部のLi含有量が少なすぎて伝導度が減少するという短所がある。
【0018】
本発明の一具現例に係ると、前記ガリウムとテルルがドーピングされたLLZO化合物はガーネットキュービック相(Garnet Cubic Phase)を有してもよい。
【0019】
また、本発明の一具現例に係ると、前記ガリウムとテルルがドーピングされたLLZO化合物を含む固体電解質は、γ-Alをさらに含むことができる。前記γ-Alは、固体電解質のイオン伝導度と安定性を向上させるための目的で添加されることができる。前記γ-Alは、全体固体電解質の中で5重量%以下の量で含まれることができる。
【0020】
本発明の一具現例に係ると、前記ガリウムとテルルがドーピングされたLLZO化合物を含む固体電解質は、イオン伝導度が0.5×10-3~2.0×10-3S/cmであってもよい。
【0021】
本発明の他の一様態に係ると、(a)リチウム前駆体、ガリウム前駆体、ランタン前駆体、ジルコニウム前駆体及びテルル前駆体をミリング(milling)するステップ;及び(b)前記ミリングされた混合物を焼成(calcination)するステップを含む、前記ガリウムとテルルがドーピングされたLLZO化合物を含む固体電解質の製造方法が提供される。
【0022】
本発明の一具現例に係ると、前記方法は、前記焼成された混合物をγ-Alと混合するステップをさらに含むことができる。
【0023】
本発明の他の一具現例に係ると、前記方法は、(c)前記焼成された混合物を2次ミリングするステップをさらに含むことができる。
【0024】
本発明の他の一具現例に係ると、前記方法は、(a)リチウム前駆体、ガリウム前駆体、ランタン前駆体、ジルコニウム前駆体及びテルル前駆体をミリングするステップ;(b)前記ミリングされた混合物を焼成するステップ;前記焼成された混合物に追加の添加剤、例えばγ-Alを添加するステップ;及び(c)前記焼成された混合物と追加の添加剤を共に2次ミリングするステップを含むことができる。
【0025】
前記(a)ステップで、リチウム前駆体、ガリウム前駆体、ランタン前駆体、ジルコニウム前駆体及びテルル前駆体は、それぞれLi、Ga、La、ZrO及びTeOであってもよい。これらは目的するドーピング量によって適切な混合比に定量して混合されることができる。
【0026】
一実施例によって、Li:Ga:La:ZrO:TeOの含有比は1:0.015~0.19:1.61~2.00:0.811~1.01:0~0.3であってもよい。前記範囲を逸脱してリチウム前駆体の含有量が少なすぎると、製造された固体電解質のリチウムイオン伝導度が減少されることができ、リチウム前駆体の含有量が多すぎると、製造された固体電解質がキュービック相を有するガーネット構造を有しにくいという短所がある。
【0027】
前記(a)ステップで、前記前駆体をミリングする。それにより、粒子が機械的に粉砕されて均一に混合されることができる。前記ミリングはボールミリングまたは遊星ミリング(planatery milling)、具体的には、遊星ミリングであってもよい。前記ミリングは、工具鋼(tool steel)、ステンレス鋼(stainless steel)、超硬合金(cemented carbide)、窒化ケイ素(silicon nitride)、アルミナ(alumina)及びジルコニア(zirconia)などで選択される材質のミリング容器(jar)とこれらの中で選択される材質のボールを用いて実施することができ、特にこれに限定されるのではない。ボールは直径が1~30mmのものを用いることができるが、全部同じ大きさを有するものを用いるか、2種以上の大きさを有するボールをともに用いることもできる。
【0028】
前記ミリングの速度や時間は、目的する粒径、すなわち、粉砕度によって異なり得、例えば50~750rpmまたは300~700rpmで実行されてもよく、例えば1~48時間実行されてもよい。
【0029】
前記(a)ステップにおけるミリングは、前駆体を溶媒と混合して実行されることができる。前記溶媒として用いられる前駆体及びこれで作られる化合物が固体電解質として用いられた時に性能に影響を及ぼさないものであれば特に制限されず、例えば、メタノール、エタノールなどを用いることができる。このように、溶媒を用いた場合、前記ミリングを実行した後、適切な温度で乾燥させた後に後続ステップを実行することが好ましい。前記乾燥時間と温度は特に制限されないが、例えば、60~100℃で2~20時間実行されることができる。
【0030】
前記(b)の焼成は、前述のように、ミリングされた混合物を800℃~1200℃の温度で0.5~24時間実行されてもよく、好ましくは、950℃~1050℃の温度で4時間~24時間実行されてもよい。前記範囲を逸脱して、前述の焼成温度が低すぎたり焼成時間が短すぎる場合、焼結が不十分になることがある。また、前述の焼成温度が高すぎたり焼成時間が長すぎる場合、Li揮発による二次相が生成される虞があり、工程時間が増えて、それによる費用が増加する虞がある。前記焼成ステップによって混合物はガリウムとテルルがドーピングされたLLZOになり得る。
【0031】
前記焼成を実行した後、(c)前記焼成された混合物を2次ミリングするステップをさらに含むことができ、この時、前記焼成された混合物は固体電解質のイオン伝導度と安定性を向上させるために、γ-Alとともにミリングされることができる。前記γ-Alは、固体電解質の全体において5重量%以下になるようにする量で含まれることができる。前記2次ミリングもボールミリングまたは遊星ミリング(planatery milling)、具体的には、遊星ミリングであってもよく、溶媒との混合下で実行されてもよい。ミリング速度とミリング時間、用いられる溶媒の種類、溶媒の乾燥は前述の(a)ステップで説明した内容を参考することができる。ただ、前述の(a)ステップと同じ条件、例えばミリング速度下で実行される必要はない。
【0032】
前述の本発明に係る化合物を含有する固体電解質は、全固体電池の固体電解質として用いることができる。
【0033】
全固体電池は、正極、負極及び前記正極と負極との間に介在された固体電解質を含む。
【0034】
本発明の固体電解質の厚さは、全固体電池の構造によって大きく相異する。例えば、0.1um以上且つ1mm以下、または1以上且つ100um以下であってもよい。前記固体電解質は、本発明のLLZO固体電解質に加えて、全固体電池に通常用いる固体電解質、例えば、無機固体電解質または有機固体電解質をさらに含むことができる。
【0035】
前記無機固体電解質の例としては、Thio-LISICON(Li3.25Ge0.250.75)、LiS-SiS、LiI-LiS-SiS、LiI-LiS-P、LiO-B、LiPO、LiO-LiWO-B、LiPON、LiBON、LiLaTa12、LiBaLaTa12、LiPO(4-3/2w)(wはw<1)、Li3.6Si0.60.4などの無機固体電解質が可能である。
【0036】
また、前記有機固体電解質の例としては、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデンなどのポリマー系列の材料にリチウム塩を混合したものを用いることができる。
【0037】
一方、本発明に係る全固体電池の正極及び負極は特に限定されず、公知のものが使用可能である。
【0038】
全固体電池の負極はリチウム金属を単独で用いたり負極集電体上に負極活物質が積層されたものを用いる。負極活物質はリチウム金属、リチウム合金、リチウム金属複合酸化物、リチウム含有チタン複合酸化物(LTO)及びこれらの組合からなる群で選択された1種、例えばLiTi12、LiFeなどであってもよい。
【0039】
本発明に係る全固体電池の正極は特に限定されず、公知の全固体電池に用いられる材質であり得る。正極活物質はリチウム二次電池の用途によって異なり得、LiNi0.8-xCo0.2Al、LiCoMn、LiNiCo、LiNiMn、LiNiCoMn、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiFePO、LiCoPO、LiMnPO及びLiTi12などのリチウム金属酸化物;CuMo、FeS、CoS及びMiSなどのカルコゲン化物、TiS、ZrS、RuO、Co、Mo、Vなどの酸化物、硫化物またはハロゲン化物が用いられることができる。
【0040】
前記正極はバインダをさらに含むことができ、バインダとしては特に限定されず、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素含有バインダが用いられることができる。
【0041】
正極には導電材がさらに含まれることができる。導電材は正極の導電性を向上させることができれば、特に限定されず、ニッケル粉末、酸化コバルト、酸化チタン、カーボンなどを例示することができる。カーボンとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、黒鉛、炭素纎維及びフラーレンからなる群で選択された何れか一つまたはこれらの1種以上を挙げることができる。
【0042】
前述の構成を有する全固体電池の製造は、本発明で特に限定されず、公知の方法を通じて製造可能である。例えば、正極と負極との間に固体電解質を配置させた後、これを圧縮成形してセルを組立てる。
【0043】
前記組立てられたセルは外装材内に設置した後、加熱圧縮などによって封止する。外装材としては、アルミニウム、ステンレスなどのラミネートパック、円筒状や角状の金属製容器が非常に適合する。
【0044】
本発明に係る全固体電池は、安全で高エネルギ密度を有しているので、再生エネルギなどの代替品または電気自動車の電源として好ましく適用されることができる。
【0045】
以下、本発明の実施例を参照して発明についてより具体的に説明する。実施例は発明の説明のために提示されるもので、本発明がこれに限定されるのではない。
【0046】
[実施例1:ガリウムとテルルでドーピングされた固体電解質の製造]
(a)リチウム前駆体、ガリウム前駆体、ランタン前駆体、ジルコニウム前駆体及びテルル前駆体として、それぞれLi、Ga、La、ZrO及びTeOを用意し、それぞれをLi:Ga:La:ZrO:TeOの含有比を1:0.016~0.092:1.92~1.95:0.846~0.803:0.026~0.157の含有比で混合した後、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)の溶媒と混合してボールミリングを実行する。具体的には、直径が3~5mmのボールを用いた遊星ミリング方式で300~400rpm及び1~4時間ボールミリングする。
【0047】
(b)前記ボールミリングした結果物を950℃の温度で12~24時間焼成させる。
【0048】
(c)前記焼成した結果物を300~400rpmで1~4時間2次ミリングを実行する。
【0049】
(d)2次ミリングされた固体電解質を利用して、ペレットを3~5ton、30~60s条件にし、冷間静水圧プレス(Cold Isostatic Pressing)処理した後、1000~1100℃の温度で4時間、1050℃の温度で8時間、1050℃の温度で12時間それぞれ焼成させる。
【0050】
前記製造方法によって、最終的に、Li6.75Ga0.25LaZr1.75Te0.2512の固体電解質を製造する。
【0051】
[実施例2:ガリウムとテルルでドーピングされた固体電解質を含むペレットの製造]
実施例1によって製造された固体電解質を用い、15パイサイズのモールドに0.5gのパウダーを入れ、3ton、30s加圧して予備ペレットを製造した後、追加的に、CIP工程を通じて(250MPa、5min)予備ペレットをさらに密集に作って最終ペレットを製造した。
【0052】
[比較例1:一般LLZO固体電解質の製造]
実施例1に比べて、ガリウムとテルルをドーピングさせるガリウム前駆体及びテルル前駆体を混合しないでボールミリングすることを除き、実施例1と同様に固体電解質を製造した。
【0053】
[比較例2:一般LLZO固体電解質を含む全固体電池の製造]
実施例2に比べて、実施例1に係る固体電解質の代わりに比較例1に係る固体電解質を用いることを除き、実施例1と同様に固体電解質を製造した。
【0054】
[実験例1:焼成条件によるガリウムとテルルでドーピングされた固体電解質のXRD分析]
実施例1及び比較例1によって固体電解質を製造し、jade分析方法でXRD分析した結果を図1a及び図1bに示した。
【0055】
具体的には、図1aは比較例1によって製造した固体電解質の焼成条件によるXRD分析結果グラフであり、図1bは実施例1によって製造した固体電解質の焼成条件によるXRD分析結果グラフである。
【0056】
これを参考すると、比較例1による固体電解質は、焼成条件によってテトラ(Tetra)相を含み、高い温度で焼成時間が長くなるほどテトラ(Tetra)相からキュービック(Cubic)相の比率が高くなったことを確認することができた。
【0057】
ただ、実施例1によってガリウムとテルルを所定含有量で含む固体電解質は、焼成条件に関係なくキュービック(Cubic)相のみを含むことを確認することができた。
【0058】
[実験例2:ガリウムとテルルでドーピングされた固体電解質を含む全固体電池の導電率の分析]
実施例2及び比較例2によって全固体電池を製造し、2プローブ(probe)インピーダンス測定方法で導電率を分析した結果を図2a及び図3dに示した。
【0059】
具体的には、図2aは比較例2によって製造した全固体電池内の固体電解質の焼成条件による電気インピーダンスグラフであり、図2bは図2aにおいて1050℃の温度で4時間焼成した固体電解質の電気インピーダンスグラフであり、図2cは図2aにおいて1050℃の温度で8時間焼成した固体電解質の電気インピーダンスグラフであり、図2dは図2aにおいて1050℃の温度で12時間焼成した固体電解質を含む全固体電池の電気インピーダンスグラフである。
【0060】
また、図3aは実施例2によって製造した全固体電池内の固体電解質の焼成条件によるナイキスト(Nyquist)グラフであり、図3bは図3aにおいて1050℃の温度で4時間焼成した固体電解質を含む全固体電池のナイキスト(Nyquist)グラフであり、図3cは図3aにおいて1050℃の温度で8時間焼成した固体電解質を含む全固体電池のナイキスト(Nyquist)グラフであり、図3dは図3aにおいて1050℃の温度で12時間焼成した固体電解質を含む全固体電池のナイキスト(Nyquist)グラフである。
【0061】
これを参考すると、焼結(sintering)温度が増加するほど、導電率が向上されるという点を確認することができる。
【0062】
また、図4は実施例2及び比較例2によって製造した全固体電池内の固体電解質の焼成条件による導電率を示したグラフである。
【0063】
これを参考すると、実施例2による全固体電池の導電率は何れの焼成条件でも比較例2による全固体電池の伝導度よりも高いことを確認することができる。
【0064】
すなわち、一実施例によって製造した全固体電池内に含まれている固体電解質は、LLZO電池内ガリウム及びテルルを特定含有量範囲で含ませて、特定焼成条件で製造されるので、すべての焼成条件で安定したキュービック(Cubic)相を確保することで、これを含む全固体電池の導電率が高いという長所がある。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、当該技術分野において熟練された当業者は特許請求範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更させることができることを理解すべきである。

図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図3c
図3d
図4