(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116456
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】強皮症関連血管障害を治療または改善するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230815BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230815BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230815BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20230815BHJP
C12N 9/78 20060101ALI20230815BHJP
C07K 17/02 20060101ALN20230815BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P17/00
A61P9/00
A61K38/46
C12N9/78
C07K17/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023080860
(22)【出願日】2023-05-16
(62)【分割の表示】P 2020502298の分割
【原出願日】2018-07-17
(31)【優先権主張番号】62/534,468
(32)【優先日】2017-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521117986
【氏名又は名称】ユニケリス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】UNIKERIS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ディーン・シュライバー
(72)【発明者】
【氏名】ジャンフランコ・フォルナシーニ
(72)【発明者】
【氏名】ナデジダ・ソウカレヴァ
(72)【発明者】
【氏名】サントシュ・クマール・ラマムルティ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】強皮症関連血管障害を治療または改善するための組成物を提供する。
【解決手段】強皮症関連血管障害および血管変化の阻止、治療、改善または予防および強皮症の予防または進行の減少における使用のための、アデノシンデアミナーゼ酵素活性を有するか、または個体におけるアデノシンデアミナーゼ酵素活性のレベルを増加または維持することができる薬剤、化合物または組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強皮症関連血管障害および血管変化の阻止、治療、改善または予防および強皮症の予防または進行の減少における使用のための、アデノシンデアミナーゼ酵素活性を有するか、または個体におけるアデノシンデアミナーゼ酵素活性のレベルを増加または維持することができる薬剤、化合物または組成物。
【請求項2】
強皮症関連血管障害が、増殖性閉塞性血管障害、特に、突発性閉塞性血管障害および進行性閉塞性血管障害、レイノー症候群、浮腫性の腫れぼったい手、毛細血管拡張症、指潰瘍、肺動脈高血圧症(PAH)、心筋機能障害、強皮症腎クリーゼ、血管壁の肥厚または血管閉塞または血管の血栓症または破壊性血管障害である、請求項1に記載の使用のための薬剤、化合物または組成物。
【請求項3】
レイノー症候群が、強皮症、手の非陥凹性浮腫、遠位指潰瘍および/または口の開口の減少を伴う顔面または口腔周囲の皮膚の拘縮(ここで、レイノー症候群、手の非陥凹性浮腫、遠位指潰瘍および/または顔面または口腔周囲の皮膚の拘縮は、強皮症の初期の病的発現である)を伴う、請求項2に記載の使用のための薬剤、化合物または組成物。
【請求項4】
強皮症が、局在性または限局性強皮症またはびまん性、または全身性強皮症、または限局性または全身性硬化症を含む、請求項1に記載の使用のための薬剤、化合物または組成物。
【請求項5】
薬剤、化合物または組成物が、
アデノシンデアミナーゼ酵素またはアデノシンデアミナーゼ活性を有するポリペプチドもしくはペプチド、またはその複合体を含むか、または
アデノシンデアミナーゼ酵素またはアデノシンデアミナーゼ活性を有するポリペプチドもしくはペプチド、またはその複合体である、請求項1~4のいずれか1つに記載の使用のための薬剤、化合物または組成物。
【請求項6】
薬剤、化合物または組成物が、
アデノシンデアミナーゼ酵素活性を有するか、またはアデノシンデアミナーゼ酵素活性のレベルを増加または維持することができる薬剤、化合物または組成物の組換え、単離、治療、合成またはペプチド模倣バージョン、またはアデノシンデアミナーゼ活性を有するポリペプチドもしくはペプチドであるか、または
アデノシンデアミナーゼ酵素活性を有するか、またはアデノシンデアミナーゼ酵素活性のレベルを増加または維持することができる薬剤、化合物または組成物の組換え、単離、治療、合成またはペプチド模倣バージョン、またはアデノシンデアミナーゼ活性を有するポリペプチドもしくはペプチドを含む、前記請求項のいずれか1つに記載の使用のための薬剤、化合物または組成物。
【請求項7】
アデノシンデアミナーゼ酵素、またはアデノシンデアミナーゼ活性を有するポリペプチドもしくはペプチドが、ヒトまたは他の動物源、特に、ウシ、またはそれらの混合物であるか、またはそれらに由来する、前記請求項のいずれか1つに記載の使用のための薬剤、化合物または組成物。
【請求項8】
アデノシンデアミナーゼ酵素、またはアデノシンデアミナーゼ酵素活性を有するポリペプチドもしくはペプチドが、
(a)ポリエチレングリコール複合体として製造されるか、またはポリエチレングリコール複合体中に製剤されるか、またはポリエチレングリコール複合体で投与されるか(ここで、ポリエチレングリコール複合体は、場合によっては、PEG化ウシアデノシンデアミナーゼ酵素であり、場合によっては、ペガデマーゼ、またはエラペガデマーゼ、またはアデノシンデアミナーゼ酵素活性を有するポリ(オキシ-1,2-エタンジイル), α-カルボキシ-ω-メトキシ-アミド、またはアデノシンデアミナーゼ酵素活性を有するポリペプチドである)、または
(b)非抗原性ポリマーに複合されるか、結合されるか、または共有結合され(ここで、非抗原性ポリマーは、場合によっては、ポリアルキレンオキシド、デキストラン、ポリビニルピロリドン、多糖類、澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドを含む);
(c)酸素のイプシロンアミノ基と官能化末端基との間の実質的に加水分解耐性のウレタン結合に複合されるか、結合されるか、または共有結合される;
前記請求項のいずれか1つに記載の使用のための薬剤、化合物または組成物。
【請求項9】
アデノシンデアミナーゼ酵素、またはアデノシンデアミナーゼ酵素活性を有するポリペプチドもしくはペプチドが、リシンのイプシロンアミノ基修飾、またはカルボン酸基の修飾を介して複合する、前記請求項のいずれか1つに記載の使用のための薬剤、化合物または組成物。
【請求項10】
アデノシンデアミナーゼ酵素、またはアデノシンデアミナーゼ酵素活性を有するポリペプチドもしくはペプチド複合体が、ADA、またはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドの各分子に結合した約1~約25個のポリマー鎖である、前記請求項のいずれか1つに記載の使用のための薬剤、化合物または組成物。
【請求項11】
アデノシンデアミナーゼ酵素、またはアデノシンデアミナーゼ酵素活性を有するポリペプチドもしくはペプチドが、直鎖、分枝鎖またはマルチアームポリマーでありうるポリアルキレンオキシド、特に、ポリエチレングリコールに複合し;場合によっては、ポリアルキレンオキシドおよびポリエチレングリコール(PEG)が、約2,000~約45,000ダルトンの分子量(MW)を有する、前記請求項のいずれか1つに記載の使用のための薬剤、化合物または組成物。
【請求項12】
アデノシンデアミナーゼ酵素、またはアデノシンデアミナーゼ酵素活性を有するポリペプチドもしくはペプチドが、
【化1】
[式中、nは、1~5,000の正の整数である]
のいずれかと複合する、前記請求項のいずれか1つに記載の使用のための薬剤、化合物または組成物。
【請求項13】
アデノシンデアミナーゼ酵素、またはアデノシンデアミナーゼ酵素活性を有するポリペプチドもしくはペプチドが、
式:
【化2】
[式中、zは、約1~約80の正の整数であり;およびRは、実質的に非抗原性であるポリマー、特に、放出可能または放出不可能な形態、特に、1000~100,000 Daの平均MWを有する直鎖、分枝鎖またはマルチアームポリエチレングリコール(PEG)を含む]
を有する複合体である、前記請求項のいずれか1つに記載の使用のための薬剤、化合物または組成物。
【請求項14】
ポリエチレングリコール(PEG)が、
【化3】
[式中、R
11、R
75およびR
76は、独立して、H、C
1-6アルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキルおよび置換C
1-6アルキルから選択され;mは、ゼロまたは正の整数であり;Y
74は、OまたはSであり;およびnは、重合度を表す]
として官能化される、請求項12に記載の使用のための薬剤、化合物または組成物。
【請求項15】
薬剤、化合物または組成物が、組成物または製剤または医薬組成物として製剤される、前記請求項のいずれか1つに記載の使用のための薬剤、化合物または組成物。
【請求項16】
組成物または製剤または医薬組成物が、経腸または非経口投与用に製剤される、請求項15に記載の使用のための薬剤、化合物または組成物。
【請求項17】
投与が、経口、直刀、膣内、局所、皮下、皮内、筋肉内(IM)、静脈内(IV)またはくも膜下(IT)、大脳内、硬膜外、頭蓋内または直腸、鼻、または吸入またはスプレーによる、請求項16に記載の使用のための薬剤、化合物または組成物。
【請求項18】
組成物または製剤または医薬組成物が、ナノ粒子、粒子、ミセルもしくはリポソームもしくはリポプレックス、ポリマーソーム、ポリプレックスまたはデンドリマーに包含されるか、または担持される、請求項15~17のいずれか1つに記載の使用のための薬剤、化合物または組成物。
【請求項19】
組成物または製剤または医薬組成物が、錠剤、丸剤、カプセル、ゲル、ゲルタブ、液体、粉末、エマルジョン、ローション、エアロゾル、スプレー、ロゼンジ、水性または滅菌または注射溶液、またはインプラントの形態である、請求項15~18のいずれか1つに記載の使用のための薬剤、化合物または組成物。
【請求項20】
組成物または製剤または医薬組成物が、有効量のアデノシンデアミナーゼ酵素、またはアデノシンデアミナーゼ酵素活性を有するポリペプチドもしくはペプチドを含み、有効量が、
(a)少なくとも1日1回~1年に1回から、複数回投与に分割される、約0.01~約100 mg/kg、または約5~約50 mg/kg、または約10~約30 mg/kg;
(b)約5 U/kg~約50 U/kg、または約20 U/kg~約60 U/kg、または約0.5U/kg~約5 U/kg、または超生理学的用量、特に、最大100U/kgまたはそれ以上;
(c)毎週約250 U/ml投与、場合によっては、皮下またはIM投与;または
(d)(a)~(c)のいずれか、ここで、投与量は、初回投与後の血漿アデノシンデアミナーゼ酵素、アデノシンおよび/または他の特定のバイオマーカーのモニタリングに基づいて個別化される;
である、請求項15~18のいずれか1つに記載の使用のための薬剤、化合物または組成物。
【請求項21】
組成物または製剤または医薬組成物が、有効量のアデノシンデアミナーゼ酵素、またはアデノシンデアミナーゼ酵素活性を有するポリペプチドもしくはペプチドを含み、特に、
- 初回投与のための約10 U/kg、または約5~15 U/kgのアダジェン(または約0.067 mg/kg、または約0.001~0.12 mg/kgのEZN2279)の投与スケジュール;
- 2回目の投与のための約15 U/kg、または約5~15 U/kgのアダジェン(または約0.1 mg/kgまたは約0.05~0.5 mg/kgのEZN2279)、および/または
- 3回目の投与のための約30 U/kgのアダジェン、約15~30 U/kg(または約0.134 mg/kg、または約0.05~0.30 mg/kgのEZN2279);または超生理学的用量、特に、最大100U/kgまたはそれ以上;
を用いるさまざまな投与スケジュールの使用を含む、請求項15~18のいずれか1つに記載の使用のための薬剤、化合物または組成物。
【請求項22】
有効量のアデノシンデアミナーゼ酵素、またはアデノシンデアミナーゼ酵素活性を有するポリペプチドもしくはペプチドが、毎日、1日2回、毎週、隔週、毎月、毎年のいずれか1つで投与される、請求項20または21に記載の使用のための薬剤、化合物または組成物。
【請求項23】
アデノシンデアミナーゼ酵素活性を有するか、またはアデノシンデアミナーゼ酵素活性のレベルを増加または維持することができる化合物または組成物が、全身性硬化症の、レイノー症候群に対しては局所硝酸塩またはカルシウムチャネル遮断薬、掻痒症に対しては抗ヒスタミン薬、食道症状に対してはH2ブロッカーまたはプロトンポンプ阻害薬、下部消化管症状に対しては下痢止め薬または鎮痙薬、および高血圧またはその他の腎徴候に対してはACEI/ARB薬の1つ以上と併用される、前記請求項のいずれか1つに記載の使用のための組成物または製剤または医薬組成物。
【請求項24】
アデノシンデアミナーゼ酵素活性を有するか、またはアデノシンデアミナーゼ酵素活性のレベルを増加または維持することができる化合物または組成物が、メトトレキサート、シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチル、またはリツキシマブなどの薬剤を組み合わせた免疫抑制剤の1つ以上と併用される、前記請求項のいずれか1つに記載の使用のための組成物または製剤または医薬組成物。
【請求項25】
アデノシンデアミナーゼ酵素活性を有するか、またはアデノシンデアミナーゼ酵素活性のレベルを増加または維持することができる化合物または組成物が、抗生物質、液体、サイトカイン、免疫調節剤、抗炎症剤、補体活性化剤、炭水化物結合ドメインの1つ以上と併用される、前記請求項のいずれか1つに記載の使用のための組成物または製剤または医薬組成物。
【請求項26】
アデノシンデアミナーゼ酵素活性を有するか、またはアデノシンデアミナーゼ酵素活性のレベルを増加または維持することができる化合物または組成物が、ナノ粒子、ナノリポ粒子、小胞およびリポソーム膜に製剤化される、請求項23~25のいずれか1つに記載の使用のための組成物または製剤または医薬組成物。
【請求項27】
生体分子などの特定の分子を標的とするように設計される、請求項26に記載の使用のための組成物または製剤または医薬組成物。
【請求項28】
特に、血管細胞、線維芽細胞、筋細胞または心臓細胞、内皮細胞を標的とするための、細胞表面ポリペプチドなどのポリペプチドを包含する、請求項27に記載の使用のための組成物または製剤または医薬組成物。
【請求項29】
前記請求項のいずれか1つに記載の使用のための化合物または組成物または製剤または医薬組成物を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、強皮症関連血管障害の予防および治療に関する。別の実施態様では、本発明は、レイノー症候群(レイノー現象(RP)とも呼ばれる)、浮腫性の腫れぼったい手、毛細血管拡張症、指潰瘍、肺動脈高血圧症(PAH)、心筋機能障害、および強皮症腎クリーゼなどの構造的および機能的異常を引き起こす、強皮症関連血管障害および血管変化、特に、特発性閉塞性血管障害および進行性閉塞性血管障害などの増殖性閉塞性血管障害に対する、医薬組成物および製剤、製品およびキット、ならびにそれらを用いるための方法を提供する。別の実施態様では、本発明は、レイノー症候群、浮腫性の腫れぼったい手、毛細血管拡張症、指潰瘍、肺動脈高血圧症(PAH)、心筋機能障害、および強皮症腎クリーゼなどの構造的および機能的異常を引き起こす、強皮症関連血管障害および血管変化、特に、特発性閉塞性血管障害および進行性閉塞性血管障害などの増殖性閉塞性血管障害を治療、改善または予防における使用のための、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、またはADA複合体などのADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドを提供する。別の実施態様では、本発明は、強皮症(ここで、強皮症は、場合によっては、限局性強皮症またはびまん性もしくは全身性強皮症を含む)の進行の予防または減少における使用のための、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、またはADA複合体などのADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドを提供する。
【背景技術】
【0002】
全身性硬化症(SSc)は、自己免疫の背景を有する、血管損傷ならびに皮膚およびさまざまな内臓の線維症を特徴とする多系統結合組織障害である。SScの病因は分かりにくいままであるが、自己免疫および環境要因による初期の血管損傷が血管構造の構造的および機能的異常を引き起こし、最終的には、さまざまな臓器における線維芽細胞の構成的活性化および筋線維芽細胞への進化をもたらすことが一般に受け入れられている。
【0003】
SScは、破壊性血管障害、または小血管の喪失および進行性閉塞性血管障害、血管壁の肥厚、細動脈および小動脈の閉塞を含む、血管構造の構造変化を特徴とする。SScは、脈管形成および血管新生の障害も特徴とする。
【0004】
SSC血管構造の機能障害として、細胞接着分子の発現の変化、内皮機能不全、血管構造の異常および凝固/血栓症の障害をもたらす内皮から間葉への移行の活性化が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SSc患者の血管構造の構造異常は、破壊性血管障害と増殖性閉塞性血管障害の2つのカテゴリーに分類される。破壊性血管障害は、小血管の進行性の喪失を特徴とするが、増殖性閉塞性血管障害は、血管内皮細胞および平滑筋細胞の過剰な増殖によるものであり、細動脈および小動脈の閉塞をもたらす。血管の異常は、血管新生を伴う代償性血管形成の障害または異常、および血管のリモデリングによって引き起こされ、組織の低酸素症と皮膚線維芽細胞の活性化、および指潰瘍、PAH、強皮症腎クリーゼなどの強皮症の他の特徴をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
別の実施態様では、本発明は、
(i)強皮症関連血管障害および血管変化、特に、特発性閉塞性血管障害および進行性閉塞性血管障害などの増殖性閉塞性血管障害、レイノー症候群、浮腫性の腫れぼったい手、毛細血管拡張症、指潰瘍、肺動脈高血圧症(PAH)、心筋機能障害、および強皮症腎クリーゼ;
(ii)強皮症患者における血管壁の肥厚(ここで、強皮症は、場合によっては、限局性強皮症またはびまん性もしくは全身性強皮症を含む)、
および、場合によっては、全身性硬化症、強皮症関連血管障害または強皮症関連閉塞性血管障害(ここで、増殖性閉塞性血管障害は、場合によっては、特発性閉塞性血管障害および進行性閉塞性血管障害である);
(iii)強皮症患者(ここで、強皮症は、場合によっては、限局性強皮症またはびまん性もしくは全身性強皮症を含む)におけるか、または全身性硬化症に関連する、強皮症関連血管障害または増殖性閉塞性血管障害、場合によっては、特発性閉塞性血管障害または進行性閉塞性血管障害を有する個体における、血管閉塞;
(iv)強皮症に関連するレイノー症候群、手の非陥凹性浮腫、遠位指潰瘍および/または口の開口の減少を伴う顔面または口腔周囲の皮膚の拘縮(ここで、レイノー症候群、手の非陥凹性浮腫、遠位指潰瘍および/または顔面または口腔周囲の皮膚の拘縮は、強皮症の初期の病的発現である);
の進行を阻止するか、治療するか、改善するか、または予防するか、または減少させることにおける使用のための、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、またはADA複合体などのADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドを提供する。
【0007】
本発明はまた、
(a)それを必要とする個体に、アデノシンデアミナーゼ酵素(アデノシンアミノヒドロラーゼ、またはADAとしても知られる)活性を有するか、または個体におけるADA活性のレベルを増加または維持することができる薬剤、化合物または組成物の有効量を投与すること;または
(b)
(1)それを必要とする個体に、アデノシンデアミナーゼ酵素(アデノシンアミノヒドロラーゼ、またはADAとしても知られる)活性を有するか、または個体におけるADA活性のレベルを増加または維持することができる薬剤、化合物または組成物の有効量を提供すること、および
(2)それを必要とする個体に薬剤、化合物または組成物を投与すること、
それによって、
(i)それを必要とする個体において、強皮症関連血管障害、場合によっては、強皮症関連増殖性閉塞性血管障害、場合によっては、突発性閉塞性血管障害または進行性閉塞性血管障害の進行を阻止するか、治療するか、改善するか、または予防するか、または減少させること;
(ii)強皮症患者における血管壁の肥厚の進行を阻止するか、治療するか、改善するか、または予防するか、または減少させること(ここで、強皮症は、場合によっては、限局性強皮症またはびまん性もしくは全身性強皮症を含む)、
および、場合によっては、全身性硬化症、強皮症関連血管障害または増殖性閉塞性血管障害の進行を阻止するか、治療するか、改善するか、または予防するか、または減少させること(ここで、増殖性閉塞性血管障害は、場合によっては、突発性閉塞性血管障害または進行性閉塞性血管障害である);
(iii)強皮症患者(ここで、強皮症は、場合によっては、限局性強皮症またはびまん性もしくは全身性強皮症を含む)におけるか、または全身性硬化症をに関連する、強皮症関連血管障害または増殖性閉塞性血管障害、場合によっては、特発性閉塞性血管障害または進行性閉塞性血管障害を有する個体における、血管閉塞の進行を阻止するか、治療するか、改善するか、または予防するか、または減少させること;
(iv)強皮症に関連するレイノー症候群、手の非陥凹性浮腫、遠位指潰瘍および/または口の開口の減少を伴う顔面および/または口腔周囲の皮膚の拘縮の進行を阻止するか、治療するか、改善するか、または予防するか、または減少させること(ここで、レイノー症候群、手の非陥凹性浮腫、遠位指潰瘍および/または顔面または口腔周囲の皮膚の拘縮は、強皮症の初期の病的発現である);
(v)強皮症の進行を予防するか、または減少させること(ここで、強皮症は、場合によっては、限局性強皮症またはびまん性もしくは全身性強皮症を含む);
を含む上述の疾患または状態の進行を阻止するか、治療するか、改善するか、または予防するか、または減少させるための方法を開示する。
【0008】
別の実施態様では、本発明は、薬剤、化合物または組成物が、アデノシンデアミナーゼ酵素(アデノシンアミノデヒドロラーゼまたはADAとしても知られる)またはアデノシンデアミナーゼ活性を有するポリペプチドもしくはペプチドを含むか、または、アデノシンデアミナーゼ酵素(アデノシンアミノデヒドロラーゼまたはADAとしても知られる)またはアデノシンデアミナーゼ活性を有するポリペプチドもしくはペプチドである方法を提供する。
【0009】
別の実施態様では、本発明は、上記列挙した疾患のいずれかを阻止するか、治療するか、改善するか、または予防するか、または減少させることにおける使用のための、アデノシンデアミナーゼ酵素(アデノシンアミノデヒドロラーゼまたはADAとしても知られる)またはアデノシンデアミナーゼ活性を有するポリペプチドもしくはペプチドを含むか、またはアデノシンデアミナーゼ酵素(アデノシンアミノデヒドロラーゼまたはADAとしても知られる)またはアデノシンデアミナーゼ活性を有するポリペプチドもしくはペプチドである薬剤、化合物または組成物を提供し、さらに具体的には、
(i)強皮症関連血管障害、場合によっては、強皮症関連増殖性閉塞性血管障害、場合によっては、突発性閉塞性血管障害または進行性閉塞性血管障害;
(ii)強皮症患者における血管壁の肥厚(ここで、強皮症は、場合によっては、限局性強皮症またはびまん性もしくは全身性強皮症を含む)、
および、場合によっては、限局性または局在性または全身性硬化症、強皮症関連血管障害または増殖性閉塞性血管障害(ここで、増殖性閉塞性血管障害は、場合によっては、突発性閉塞性血管障害または進行性閉塞性血管障害である)を有する個体において、阻止するか、治療するか、改善するか、または予防すること;
(iii)強皮症患者における血管閉塞(ここで、強皮症は、場合によっては、限局性強皮症またはびまん性もしくは全身性強皮症、全身性硬化症に関連する、強皮症関連血管障害または増殖性閉塞性血管障害、場合によっては、突発性閉塞性血管障害または進行性閉塞性血管障害を含む);
(iv)強皮症に関連するレイノー症候群、手の非陥凹性浮腫、遠位指潰瘍および/または口の開口の減少を伴う顔面または口腔周囲の皮膚の拘縮(ここで、レイノー症候群、手の非陥凹性浮腫、遠位指潰瘍および/または顔面または口腔周囲の皮膚の拘縮は、強皮症の初期の病的発現である);
(v)強皮症の進行を予防するか、または減少させること(ここで、強皮症は、場合によっては、限局性強皮症またはびまん性もしくは全身性強皮症を含む);
および/または
(vi)ここで、薬剤、化合物または組成物は、上記列挙した疾患または状態のいずれかへの補助治療として用いられる。
【0010】
別の実施態様では、本発明は、薬剤、化合物または組成物が、アデノシンデアミナーゼ酵素(アデノシンアミノヒドロラーゼ、またはADAとしても知られる)活性を有するか、または個体におけるADA活性のレベルを増加または維持することができる薬剤、化合物または組成物の組換え、単離、治療、合成またはペプチド模倣バージョン、またはアデノシンデアミナーゼ活性を有するポリペプチドもしくはペプチドであるか、またはそれらを含む方法を提供する。
【0011】
別の実施態様では、個体は、哺乳類またはヒトである。
【0012】
別の実施態様では、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、またはアデノシンデアミナーゼ活性を有するポリペプチドもしくはペプチドは、ヒトまたは他の哺乳類源、場合によっては、ウシ源または米国特許第8,071,741号に記載の源、またはそれらの混合物であるか、またはそれらに由来する。
【0013】
別の実施態様では、本発明は、
(a)ポリエチレングリコール複合体として製造されるか、またはポリエチレングリコール複合体中に製剤されるか、またはポリエチレングリコール複合体で投与されるか(ここで、ポリエチレングリコール複合体形態は、場合によっては、ペグ化ウシアデノシンデアミナーゼ酵素であり、場合によっては、ペガデマーゼ・ウシとも呼ばれ、アダジェン(ADAGEN(登録商標))(Leadiant Biosciences Ltd.、Windsor、UK)としても知られる(モノメトキシポリエチレングリコールスクシンイミジル)11-17-アデノシンデアミナーゼ(CAS 130167-68-9)を含む;または、別の実施態様では、ADAを有するポリ(オキシ-1,2-エタンジイル), α-カルボキシ-ω-メトキシ-アミド(エラペガデマーゼ- CAS 1709806-75-6-またはEZN2279とも称される)であるか、または別の実施態様では、ADA活性を有するポリペプチドである);または
(b)非抗原性ポリマー、ゼラチン、またはナノ粒子もしくは当該技術分野の実施者に既知の他の放出システムに複合されるか、結合されるか、または共有結合される(ここで、非抗原性ポリマーは、場合によっては、ポリアルキレンオキシドを含む);
アデノシンデアミナーゼ(ADA)、またはアデノシンデアミナーゼ(ADA)活性を有するポリペプチドもしくはペプチドを提供する。
【0014】
別の実施態様では、薬剤、化合物または組成物は、医薬組成物として製剤されるか、またはインビボ投与用に製剤されるか;または経腸または非経口投与用、あるいは経口、局所、皮下、筋肉内(IM)、静脈内(IV)またはくも膜下(IT)投与用、または吸入もしくはスプレーによる投与用に製剤され、
ここで、化合物または製剤は、場合によっては、経口、非経口、吸入スプレー、経鼻で、局所的、くも膜下、大脳内、硬膜外、頭蓋内または直腸投与され;
ここで、製剤または医薬組成物は、場合によっては、ナノ粒子、粒子、ミセルもしくはリポソームもしくはリポプレックス、ポリマーソーム、ポリプレックスまたはデンドリマーに包含されるか、または担持され;または
ここで、化合物もしくは組成物、または製剤もしくは医薬組成物は、ナノ粒子、リポソーム、錠剤、丸剤、カプセル、ゲル、ゲルタブ、液体、粉末、エマルジョン、ローション、エアロゾル、スプレー、ロゼンジ、水性または滅菌または注射溶液、またはインプラントとして製剤されるか、またはそれに包含される。
【0015】
別の実施態様では、それを必要とする個体に投与されるアデノシンデアミナーゼ(ADA)、またはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドの有効量は、
(a)少なくとも1日1回~1年に1回から、複数回投与に分割される、約0.01~約100 mg/kg、たとえば、約1~約100 mg/kg、または約5~約50 mg/kg、または約10~約30 mg/kg;
(b)約5 U/kg~約50 U/kg、たとえば、約10 U/kg~約30 U/kg、または約20 U/kg~約60 U/kg、または約0.5U/kg~約5 U/kg(たとえば、約1 U/kg)、超生理学的用量、たとえば、最大100U/kgを提供することもできる;
(c)毎週約250 U/ml投与、場合によっては、皮下またはIM投与;または
(d)(a)~(c)のいずれか、ここで、投与量は、初回投与後の血漿ADA活性、アデノシンレベルおよび/または他の特定のバイオマーカーのモニタリングに基づいて個別化される;
である。
【0016】
別の実施態様では、それを必要とする個体に投与されるアデノシンデアミナーゼ(ADA)、またはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドの有効量は、さまざまな投与スケジュールの使用を含み、場合によっては:
- 初回投与のための約10 U/kg、または約5~15 U/kgのアダジェン(または約0.067 mg/kg、または約0.001~0.12 mg/kg、たとえば、0.03~0.12 mg/kgのEZN2279)の投与スケジュール;
- 2回目の投与のための約15 U/kg、または約5~15 U/kgのアダジェン(または約0.1 mg/kgまたは約0.05~0.5 mg/kgのEZN2279)、および/または
- 3回目の投与のための約30 U/kgのアダジェン、たとえば、20 U/kgまたは約15~25または30 U/kg、(または約0.134 mg/kg、または約0.05~0.30、たとえば、0.25 mg/kgのEZN2279);必要であるか、または希望する場合、超生理学的用量、たとえば、最大100U/kgが予見される場合がある;
を用いる。
【0017】
別の実施態様では、本発明は、本明細書で提供される化合物または組成物または製剤または医薬組成物、および場合によっては、本明細書で提供される方法の実施に関する指示書を含むキットを提供する。
【0018】
別の実施態様では、薬剤の製造における、本明細書で提供される化合物または組成物または製剤の使用を提供する。
【0019】
(i)それを必要とする個体において、強皮症関連血管障害、場合によっては、強皮症関連増殖性閉塞性血管障害、場合によっては、突発性閉塞性血管障害または進行性閉塞性血管障害を阻止、治療、改善または予防する;
(ii)強皮症患者における血管壁の肥厚を阻止、治療、改善または予防する(ここで、強皮症は、場合によっては、局在性もしくは限局性強皮症またはびまん性もしくは全身性強皮症を含む)、
および、場合によっては、局在性もしくは限局性、または全身性硬化症を有する個体において、強皮症関連血管障害または増殖性閉塞性血管障害(ここで、増殖性閉塞性血管障害は、場合によっては、突発性閉塞性血管障害または進行性閉塞性血管障害である)を阻止するか、治療するか、改善するか、または予防する;
(iii) 強皮症患者に(ここで、強皮症は、場合によっては局在性もしくは限局性強皮症またはびまん性もしくは全身性強皮症を含む)おけるか、または全身性硬化症に関連する、強皮症関連血管障害または増殖性閉塞性血管障害、場合によっては、特発性閉塞性血管障害または進行性閉塞性血管障害を有する個体における、血管閉塞、を阻止、治療、改善または予防する;
(iv)強皮症に関連するレイノー症候群、手の非陥凹性浮腫、遠位指潰瘍および/または口の開口の減少を伴う顔面または口腔周囲の皮膚の拘縮(ここで、レイノー症候群、手の非陥凹性浮腫、遠位指潰瘍および/または顔面または口腔周囲の皮膚の拘縮は、強皮症の初期の病的発現である)を阻止、治療、改善または予防する;
(v)強皮症の進行を予防するか、または減少させる(ここで、強皮症は、場合によっては、局在性もしくは限局性強皮症またはびまん性もしくは全身性強皮症を含む);ための薬剤の製造における、本明細書で提供される化合物または組成物、または製剤または医薬組成物の使用。
【0020】
別の実施態様では、本発明は、
(i)それを必要とする個体において、強皮症関連血管障害、場合によっては、強皮症関連増殖性閉塞性血管障害、場合によっては、突発性閉塞性血管障害または進行性閉塞性血管障害を阻止、治療、改善または予防すること;
(ii)強皮症患者における血管壁の肥厚を阻止、治療、改善または予防すること(ここで、強皮症は、場合によっては、局在性もしくは限局性強皮症またはびまん性もしくは全身性強皮症を含む)、
および、場合によっては、全身性硬化症を有する個体において、強皮症関連血管障害または増殖性閉塞性血管障害を阻止するか、治療するか、改善するか、または予防すること;
(iii)強皮症患者(ここで、強皮症は、場合によっては、局在性もしくは限局性強皮症またはびまん性もしくは全身性強皮症を含む)におけるか、または全身性硬化症に関連する、強皮症関連血管障害または閉塞性血管障害、場合によっては、特発性閉塞性血管障害または進行性増殖性閉塞性血管障害を有する個体における、血管閉塞を阻止、治療、改善または予防すること;
(iv)強皮症に関連するレイノー症候群、手の非陥凹性浮腫、遠位指潰瘍および/または口の開口の減少を伴う顔面または口腔周囲の皮膚の拘縮(ここで、レイノー症候群、手の非陥凹性浮腫、遠位指潰瘍および/または顔面または口腔周囲の皮膚の拘縮は、強皮症の初期の病的発現である)を阻止、治療、改善または予防すること;
(v)強皮症の進行を予防するか、または減少させること(ここで、強皮症は、場合によっては、局在性もしくは限局性強皮症またはびまん性もしくは全身性強皮症を含む);
における使用のための、本明細書で提供される化合物または組成物または製剤を提供し、
ここで、使用は、場合によっては、それを必要とする個体に投与するための方法を含み、
ここで、それを必要とする個体は、
(i)強皮症関連血管障害、場合によっては、増殖性閉塞性血管障害、場合によっては、突発性閉塞性血管障害または進行性閉塞性血管障害;
(ii)強皮症によって引き起こされる血管壁の肥厚(ここで、強皮症は、場合によっては、局在性もしくは限局性強皮症またはびまん性もしくは全身性強皮症を含む);
(iii)強皮症によって引き起こされる血管閉塞(ここで、強皮症は、場合によっては、局在性もしくは限局性強皮症またはびまん性もしくは全身性強皮症を含む)、または強皮症関連血管障害または強皮症関連増殖性閉塞性血管障害、場合によっては、突発性閉塞性血管障害または進行性閉塞性血管障害、または全身性硬化症;
を有するか、または進行させているか、またはその素因があり、または
(iv)それを必要とする個体は、全身性硬化症、または強皮症に関連するレイノー症候群、手の非陥凹性浮腫、遠位指潰瘍および/または口の開口の減少を伴う顔面または口腔周囲の皮膚の拘縮を有するか、または進行させているか、またはその素因があり;および/または
(v)それを必要とする個体は、強皮症(ここで、強皮症は、場合によっては、局在性もしくは限局性強皮症またはびまん性もしくは全身性強皮症を含む)を有するか、または進行させているか、またはその素因がある。
【0021】
本発明の1つ以上の例示的な実施態様の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的、および利点は、明細書および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0022】
本書に引用されているすべての公報、特許、特許出願は、あらゆる目的のための参照により明示的に本明細書に組み込まれる。
【0023】
本明細書に記載される図面は、本明細書に提供される例示的な実施態様の例示であり、特許請求の範囲に含まれる本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
本明細書において、図面を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】アダジェン
(登録商標)(PEG化アデノシンデアミナーゼ(Leadiant Biosciences Ltd.、Windsor、UK))は、Fra2トランスジェニック(tg)マウスの閉塞した肺血管の数を、ビヒクル処置Fra2tgマウスにおける69.2 +/- 20.5%から、それぞれ、0.5および5 Uの用量でアダジェン
(登録商標)処置したFra2tgマウスにおける40.6 +/- 15.7%および25 +/- 20.4%へと有意に減少させた実験からのデータの画像を説明し、データをグラフで説明する。血管閉塞に関する、両方の用量レベルのアダジェン
(登録商標)と、ビヒクルとの間の差異は、両方ともP<0.05であり、有意であった。
【
図2】Fra2tgマウスの肺動脈の平均血管壁厚さが、非トランスジェニックコントロールマウスと比較して、1.81 +/- 0.31倍まで増加した(P<0.01)ことを示す実験からのデータの画像を説明し、データをグラフで説明する。アダジェン
(登録商標)(PEG化アデノシンデアミナーゼ(Leadiant Biosciences Ltd.、Windsor、UK))による処置は、肺動脈の血管壁の厚さを有意に減少させ、Fra2tgマウスの相対的血管壁厚さの増加を、アダジェン
(登録商標)0.5Uで1.21 +/-0.19倍(P<.01 vs NaCl)、およびアダジェン
(登録商標)5Uで1.09+/- 0.04倍(P < 0.01 vs NaClコントロール)に低下させた。
【
図3】強皮症cGvHDマウスの体重(
図3A)および臨床複合スコア(
図3B)における臨床転帰に対するアダジェン
(登録商標)(PEG化アデノシンデアミナーゼ(Leadiant Biosciences Ltd.、Windsor、UK))の効果をグラフで示す。 さまざまな図面中の同様の参照記号は、同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な記載
別の実施態様では、本発明は、医薬組成物および製剤、製品およびキット、ならびにそれらを使用するための方法、強皮症関連血管障害、場合によっては、強皮症に関連する血管障害;突発性閉塞性血管障害または進行性閉塞性血管障害などの強皮症関連増殖性閉塞性血管障害を治療、改善、後退、またはその症状を軽減もしくは減少させるか、または予防するための方法を提供する。
【0026】
別の実施態様では、本発明は、強皮症関連血管障害および血管変化、特に、突発性閉塞性血管障害および進行性閉塞性血管障害などの進行性閉塞性血管障害、レイノー症候群、浮腫性の腫れぼったい手、毛細血管拡張症、指潰瘍、肺動脈高血圧症(PAH)、心筋機能障害、および強皮症腎クリーゼを治療、改善または予防することにおける使用のための、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、またはADA複合体などのADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドを提供する。
【0027】
別の実施態様では、本発明は、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、またはADA複合体などのADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドの有効量を、それを必要とする個体に投与して、強皮症関連血管障害;特に、強皮症関連血管障害および血管変化、特に、特発性閉塞性血管障害および進行性閉塞性血管障害などの増殖性閉塞性血管障害、レイノー症候群、浮腫性の腫れぼったい手、毛細血管拡張症、指潰瘍、肺動脈高血圧症(PAH)、心筋機能障害、および強皮症腎クリーゼを治療、改善または予防するための方法を提供する。
【0028】
別の実施態様では、本発明は、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、またはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドの有効量を投与して、強皮症の進行を予防または低下させるための方法を提供する。
【0029】
本明細書では、技術分野で認められたSSc動物モデルであるSScのFra2マウスモデルを使用したインビボ試験について説明する(たとえば、Maurer et al、Vascul Pharmacol.(2013)Mar;58(3):194-201;Beyer et al.、Arthritis & Rheumatology、October 2010、62(10):2831-2844を参照)。Fra2(Fos関連抗原-2)トランスジェニックマウスは、強皮症の血管と線維の両方の特徴を組み込んだ強皮症のモデルであり、血管変化は、9週齢までに最初に検出され、線維症の発症に先行することにより、全身性硬化症の病理を模倣する。Fra2マウスは最終的に肺疾患を発症し、18~22週間の範囲で、呼吸不全で死亡する。これらの実験では、Fra2マウスの治療は、8週間で開始され、マウスは16週齢で屠殺され、組織サンプルが研究された。この実験では、マウスの4つのグループが研究された。
【0030】
グループ1) ADAに対してビヒクルで処置された野生型コントロールマウス
グループ2) ADAに対してビヒクルのみで処置されたFra2トランスジェニックマウス
グループ3)(処置グループ1) 低用量(0.5 U/週(wk)i.p.)のADAで処置されたFra2 TGマウス
グループ4)(処置グループ2) 高用量(5 U 1x/週 i.p.)のADAで処置されたFra2 TGマウス
【0031】
転帰指標:
肺動脈の血管リモデリングの組織学的評価;SM22の厚さを測定することによって肺動脈の血管壁の厚さを評価した - 正常の(>)10%を超える血管壁の平均直径を有する陽性血管壁が病状を表すと考えられる。各壁の厚さを決定するために、3回の測定を行った。さらに、肺動脈の管腔閉塞の程度は、閉塞された管腔を有する動脈の手集計によって決定した。
【0032】
データは、このSScモデルへのADA投与が血管壁の厚さに大きな影響を与えたことを明確に示す。コントロールである非処置のFra2マウスでは、肺動脈の血管壁の平均厚さは、非Fra2トランスジェニックコントロールマウスと比較して、1.81 +/- 0.31倍増加した。ADAによる処置は、肺動脈の血管壁の肥厚の有意な減少と関連しており、0.5単位のADAを投与したFra2マウスでは相対血管壁の厚さを1.21 +/- 0.19に、5単位のADAの投与では1.09 +/- 0.04倍に減少させた。血管肥厚のこの改善は、SScおよび関連する障害、特に、以前の抗炎症または抗血栓療法または強皮症の他の療法では対処されていないSScの病理の血管成分の予防または進行の減少に対するADA投与のインビボでの有効性を実証する。
【0033】
局在性または限局性または全身性強皮症の重要な側面である血管障害の別の顕著な側面は、上記のSSc血管の病態生理学の組み合わせによる動脈の閉塞である。トランスジェニック(tg)Fra2マウスを処置する実験では、ADAが、Fra2tgマウスの閉塞した肺血管の数を、ビヒクル処置Fra2マウスにおける69.2 +/- 20.5%から、それぞれ0.5および5単位の用量のアダジェン
(登録商標)(Leadiant Biosciences Ltd.、Windsor、UK)で処置されたFra2tgマウスにおける40.6 +/-15.7%および25.0 +/- 20.4%に減少させることが実証された。データがグラフ形式でまとめられている
図1に示す顕微鏡写真は、この点を視覚的に示す。
図1の顕微鏡写真は、Fra2tgマウスの肺血管閉塞に対するアダジェン
(登録商標)の効果を示す。ヘマトキシリン/エオシンで染色された代表的な画像は、各グループについて200倍の倍率で示されている。
【0034】
データがグラフ形式でまとめられている
図2に示す顕微鏡写真は、肺動脈の相対的血管壁厚さによって分析されたFra2tgマウスの血管損傷に対するアダジェン
(登録商標)の効果を実証する。
【0035】
別の広く使用されている全身性硬化症のマウスモデルも研究で使用し、B10.D2→BALB/c(H-2(d)マイナー組織適合抗原ミスマッチモデル(強皮症の慢性移植片対宿主病マウスモデルまたはSSc-cGVHDとしても知られる)は、同様の皮膚病理および肺病理を特徴とする全身性硬化症のモデルである。ジャクソン研究所(Bar Harbor ME)から購入したB10.2D2(H-2D)マウスを、通常の昼/夜サイクルで滅菌ペレット食と水により特定の病原体を含まない条件で維持した。未分画の脛骨および大腿骨由来の骨髄細胞を入手し、移植時まで通常の方法でろ過した。8週齢のレシピエントマウス(BALB/c(H-2d)は、700 cGyの全身放射線を受けた。放射線照射の6時間後、すべてのBALB/c(H-2D)レシピエントは、同系BALB/c(H-2D)マウスまたは同種B10.D2(H-2D)マウスのいずれかから骨髄を受けた。5×10(6)個の脾細胞と1×10(6)個の骨髄細胞の注入により、尾静脈から注射された0.2mlのPBSに再懸濁させた。移植されたマウスの4つのグループには、BMTの10日後に処置を開始し、マウスを屠殺し、BMTの45日後に分析のためにサンプルを得た。
【0036】
それぞれ8匹のマウスで構成される4つのグループを調査した。グループは次のとおりである:
グループ1)ADAの溶媒を適用した同系移植コントロールグループ
グループ2)ビヒクル処置線維症群:同種骨髄および脾細胞移植を受けたマウス(B10.D2(H-2d→BALB/c(H-2d)
処置グループ1)低用量のADA(0.5 U 1X/週、腹腔内)で処置された、同種骨髄および脾細胞移植を受けたマウス(B10.D2(H-2d)→BALB/c(H-2d))
処置グループ2)高用量のADA(5 U 1X/週、腹腔内)で処置された、同種骨髄および脾細胞移植を受けたマウス(B10.D2(H-2d))
【0037】
転帰指標:
SSc-cGVHD(全身性硬化症の動物モデルとして当該技術分野で認められている)の臨床スコア;慢性GVHDのマウスは、消耗、猫背、および脱毛を発症する。
【0038】
採点システムは、観察された脱毛の表面積に基づいて、次のように、SSc-GVHDの程度の分類のために使用された。
Healthy appearance=0
脱毛< 1 cm2 =1
脱毛 1-2 cm2 =2
脱毛 > 2 cm2 =3
【0039】
モニターされる追加の臨床パラメーターとして、可動性、下痢、および体重減少が挙げられる。臨床cGVHDの発生率を、臨床症状を示したマウスのパーセンテージとして表した。
【0040】
同種BMTは、同種移植されたビヒクル処置マウスの平均体重において、BMTの45日後の同系コントロールと比較して有意に低い体重減少を誘発した(99±5%ベースライン対122±4%ベースライン、**)。0.5 Uおよび5 Uの用量でのアダジェン処置は、同種BMTによって誘発された体重減少を部分的に救い、それぞれ平均体重を111±8%および106±4%ベースラインに増加させた(両方に対して、*)。
図3Aを参照。
【0041】
疾患の最初の臨床徴候は、同種BMTの24日後に明らかになった。cGvHDの複合スコアは、BMTの45日後に、ビヒクル処理した同種移植マウスにおいて2.75±1.50に徐々に増加した。対照的に、同系移植されたコントロールマウスは、観察期間を通して疾患の臨床症状を全く発現しなかった(平均スコア0±0)。アダジェンは、cGvHDの臨床徴候を改善し、平均複合スコアを、0.5 Uの用量で処置したマウスでは1.38±0.52に、5 Uの用量のアダジェンで処置したマウスでは1.13±0.64に減らした(両方に対して、*)。
図3Bを参照。
【0042】
アダジェン(登録商標)は、最初に強皮症の動物モデルでその薬理活性をテストするために使用されたが、ヒトまたはウシなどの動物由来のアデノシンデアミナーゼ(ADA)天然タンパク質;およびまた、組織からの抽出および精製により得られたADA;組換えまたは合成または半合成プロセスにより得られたADA;ならびにADA複合体などのADA活性を有するペプチドまたはポリペプチドなどにより得られたADAの投与に続いて、同じか、または実質的に同じ薬理学的活性が、得られることが予想される
【0043】
ADA活性は、血液、血漿、血清、組織中のアデノシンのレベルを低下させ、強皮症関連血管障害の臨床症状の改善をもたらす可能性のある生化学的事象のカスケードを引き起こすために重要である。
【0044】
血液、血漿、血清、組織中のアデノシンのレベルを低下させることができる、ADA、またはADA複合体などのADA活性を有する任意のペプチドもしくはポリペプチドは、強皮症および関連血管障害の進行の予防または減少に有効であり;強皮症関連血管障害および血管変化、特に、特発性閉塞性血管障害および進行性閉塞性血管障害などの増殖性閉塞性血管障害、レイノー症候群、浮腫性の腫れぼったい手、毛細血管拡張症、指潰瘍、肺動脈高血圧症(PAH)、心筋機能障害、および強皮症腎クリーゼを阻止、治療、改善または予防することにおいて有効である。
【0045】
要約すると、これらのデータは、強皮症動脈の血管壁の厚さに影響を及ぼす(または減少させる)(または強皮症関連血管肥厚の発生を予防するか、または重症度を減少させる)、ならびにこの重症でしばしば致命的な疾患の重要な特徴である血管の血栓症を減少させるか、または予防する、ADA(ADA複合体を含む)の価値を実証する。
【0046】
要約すると、これらのデータは、広く受け入れられている強皮症モデル(Fra2マウス)の疾患の重要な要素である、基礎となる血管障害の改善におけるADA(ADA複合体を含む)治療の価値を実証する。ADAは、強皮症で見られる多くの罹患率の原因であるだけでなく、多くの専門家が病気の病態生理の重要な要素と考えている、増殖性血管障害と血管内膜肥厚に劇的な影響を与えた。ADAによる予防的治療は、SSc-cGVHDモデルにおける疾患の進行を遅らせ、疾患の非常に初期の段階で投与された場合に臨床的特徴を改善した。
【0047】
アデノシンデアミナーゼ(ADA)酵素
別の実施態様では、本発明は、ヒトまたは非ヒト、たとえば、ウシなどの動物源からのもの、あるいは組換えまたは合成ADAでありうる、アデノシンデアミナーゼ(ADA)酵素、またはADA複合体などのADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドを用いる組成物および方法を提供する。別の実施態様では、使用される酵素として、たとえば、後述あるいは米国特許第(USPN)8,071,741号に記載の、ADAポリペプチドまたは、類似体、突然変異、誘導体または、複合体、キャップ型またはマルチペグ化もしくはモノペグ化体などのその化学的修飾体などのその活性フラグメントが挙げられる。たとえば、1つの実施態様では、ADAがウシ源から精製される場合、天然に存在するウシADAのCys74残基はシステインでキャップまたは保護され、配列番号:1のADAをコードする遺伝子から予測される6つのC末端残基は、存在しない。
【0048】
別の実施態様では、ADAまたはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドは組換え型である。別の実施態様では、配列番号:2または配列番号:4に従ってDNA分子から翻訳された組換えウシADA(配列番号:1)または組換えヒトADA(rhADA、配列番号:3)でありうる。別の実施態様では、たとえば、米国特許第8,071,741号に記載されるように、組換えADAは、ウシADAの6つのC末端残基を欠く場合がある。
【0049】
別の実施態様では、ADAまたはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドもしくはアゴニストは、特許出願公開番号20080159964 A1および米国特許第8,071,741号記載されているように、突然変異、類縁体、誘導体、化学修飾体、変異体、または複合体である。たとえば、別の実施態様では、溶媒に曝露された酸化可能なCys残基をキャッピングすることにより、ADAを安定化することができる;組換えADAのシステイン残基などの酸化可能なアミノ酸は、酸化されたグルタチオン、ヨードアセトアミド、ヨード酢酸、シスチン、他のジチオールおよびそれらの混合物などのキャッピング剤によって、ADAタンパク質を実質的に不活性化することなく、キャッピングすることができる。組換えADAのキャッピングにより、ADAは、安定化し、分解から保護される。別の実施態様では、ADAまたはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドにおいて、溶媒に曝露された酸化可能なCys残基は、たとえば、アラニン、セリン、アスパラギン、グルタミン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、トレオニン、チロシン、およびバリンなどの適切な非酸化可能なアミノ酸残基で置き換えられる。
【0050】
アデノシンデアミナーゼ(ADA)複合体
別の実施態様では、本発明は、他の分子、たとえば、ポリエチレングリコールまたはいずれかの非抗原性(たとえば、ヒトに対する非抗原性)ポリマー、ゼラチン、またはナノ粒子などの他のポリマーに結合した、アデノシンデアミナーゼ(ADA)酵素、またはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドを提供する。
【0051】
別の実施態様では、本明細書で提供される 方法を実施するために用いられるADA-ポリエチレングリコール複合体は、酸素のイプシロンアミノ基と官能化末端基との間に実質的に加水分解耐性のウレタン結合を形成する方法を記載する、米国特許第4,179,337;5,122,614;5,324,844; 5,349,001;および第5,728,650号に記載の技術を用いて調製される。ADA酵素またはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドがポリマー鎖に結合される結合は、複合体が薬学的に許容されるモードで投与されるように、酵素またはポリペプチドとポリマーを十分に結合させる当該技術分野で公知のいずれかの部分である。別の実施態様では、アミド結合が用いられる。使用可能なアミド結合ポリマー酵素の例は、米国特許第5,349,001号に記載されており、該公報には、環状イミド活性化ポリアルキレンオキシドの使用、およびADAを含む治療用タンパク質および酵素との結合が記載されている。
【0052】
別の実施態様では、非抗原性高分子物質として、デキストラン、ポリビニルピロリドン、多糖類、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドまたは他の類似の非免疫原性ポリマーなどの材料が挙げられる。
【0053】
別の実施態様では、複合体化のための、ADA、またはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドを調製するために、リシンのイプシロンアミノ基修飾、またはカルボン酸基および/または他の反応性アミノ酸基の修飾が、当該技術分野で周知のように調製される。
【0054】
別の実施態様では、複合体は、ADA、またはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドの各分子に結合した約1~約25個のポリマー鎖である。酵素と反応するポリマーのモル過剰を制御することによって、結合するポリマー鎖の数を変えることができる。たとえば、別の実施態様では、複合体は、当該技術分野で周知のとおり、約5~約20本のポリマー鎖、または約10~18本のポリマー鎖を含む。
【0055】
別の実施態様では、ADA、またはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドは、ポリエチレンアルキレンなどのポリアルキレンオキシドに複合体化されており、これは直鎖、分枝鎖またはマルチアームポリマーでありうる;場合によっては、ポリアルキレンオキシドおよびポリエチレングリコール(PEG)の分子量(MW)は、約2,000~約45,000ダルトンである。たとえば、米国特許第8,071,841号参照;たとえば、ポリエチレグリコールに複合する場合、ADAは、アダジェン(登録商標)(Leadiant Biosciences、Windsor、UK)である。
【0056】
別の実施態様では、ADA活性を有するポリペプチドは、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)、α-カルボキシ-ω-メトキシ-、アデノシンデアミナーゼを有するアミド、たとえば、合成ADA(エラペガデマーゼまたはEZN2279という名称を与えられている1つの形態である)であり、ここで、該ADAは、以下の配列(配列番号:1)を有しうる:
【化1】
【0057】
上述のADAは、DNAによってコード化され、ここで、DNAは、以下の配列(配列番号:2)を有しうる:
【化2】
【0058】
別の実施態様では、ADA活性を有するポリペプチドは、組換えヒトタンパク質であり、以下の配列(配列番号:3を有しうる:
【化3】
【0059】
上述の配列番号:3のADAは、DNAによってコード化され、ここで、DNAは、以下の配列(配列番号:4)を有しうる:
【化4】
【0060】
別の実施態様では、ADA活性を有するポリペプチドは、以下:
【化5】
[式中、nは、1~5,000、好ましくは、1~4,000、より好ましくは、1~2,500、特に、18~2,269の正の整数である]
のいずれかと複合する。
【0061】
別の実施態様では、ADA活性を有するポリペプチドは、米国特許第8,071,841号に記載される。
【0062】
別の実施態様では、ADA、またはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドは、一般式:
【化6】
[式中、zは、正の整数、たとえば、約1~約80であり;およびRは、放出可能または放出不可能な形態でありうるポリマー、たとえば、実質的に非抗原性であるポリマーを含む]
を有する複合体である。別の実施態様では、ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)であり、ここで、PEGは、直鎖、分枝鎖またはマルチアームPEGでありうる。別の実施態様では、ポリマーの平均MWは、1000~100,000 Da、または約5,000 Da~約45,000 Da、または5,000 Da~約20,000 Daの範囲であるか、またはアダジェン
(登録商標)に見られるように約5,000ダルトンである。
【0063】
別の実施態様では、PEGは、
【化7】
[式中、R
11、R
75およびR
76は、独立して、H、C
1-6アルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキルおよび置換C
1-6アルキルから選択され;mは、ゼロまたは正の整数、たとえば、1または2であり;Y
74は、OまたはSであり;およびnは、重合度を表す]
として官能化されうる。
【0064】
別の実施態様では、放出可能なポリマー系は、ベンジル脱離またはトリメチルロックラクトン化に基づきうる。放出可能なポリマー系の活性化ポリマーリンカーは、たとえば、米国特許第6,180,095;6,720,306;5,965,119;6,624,142;および6,303,569号の記載のとおり製造することができる。別の実施態様では、ADAポリマー複合体は、米国特許第7,122,189および7,087,229号に記載のものなどの特定のビシン(2-(ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ)酢酸)ポリマー残基を用いて製造される。別の実施態様では、米国特許第5,122,614;5,324,844;5,612,460;および5,808,096号に記載の活性化PEGを用いる。別の実施態様では、ポリアルキレンオキシドは、炭酸スクシンイミジル、チアゾリジンチオン、ウレタン、およびアミド系リンカーなどのリンカー構造を介してADAに複合される。別の実施態様では、ポリアルキレンオキシドは、ウシから精製されたADAまたはシステイン安定化組換えヒトADA上のLysのイプシロンアミノ基に共有的に結合する。別の実施態様では、キャップ型ADAポリマー複合体は、酵素上のイプシロンアミノ基に結合した少なくとも5本のポリエチレングリコール鎖を含み、酵素上のイプシロンアミノ基に結合した約11~18本のPEG鎖を有する。
【0065】
医薬組成物および製剤
別の実施態様では、本発明は、本明細書で提供される使用および方法は、たとえば、それを必要とする個体において、強皮症関連血管障害および血管変化、特に、特発性閉塞性血管障害および進行性閉塞性血管障害などの増殖性閉塞性血管障害、レイノー症候群、浮腫性の腫れぼったい手、毛細血管拡張症、指潰瘍、肺動脈高血圧症(PAH)、心筋機能障害、および強皮症腎クリーゼを治療するか、改善するか、後退させるか、その進行を遅延させるか、またはその症状を軽減もしくは減少させるか、または予防するための方法;あるいはレイノー症候群、手の非陥凹性浮腫、遠位指潰瘍および/または口の開口の減少を伴う顔面または口腔周囲の皮膚の拘縮(ここで、レイノー症候群、手の非陥凹性浮腫、遠位指潰瘍および/または顔面または口腔周囲の皮膚の拘縮は、強皮症の初期の病的発現である)を阻止するか、治療するか、軽減するか、その進行を遅延化させるか、または予防するための方法を実施するための医薬組成物および製剤を提供する。
【0066】
別の実施態様では、医薬組成物および製剤は、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、またはアデノシンデアミナーゼ活性を有するポリペプチドもしくはペプチド、たとえば、たとえば、ポリエチレングリコール複合体として、たとえば、PEGウシアデノシンデアミナーゼ酵素としてADA複合体として製造されるか、またはADA複合体中に製剤されたADA、または(モノエトキシポリエチレングリコールスクシンイミジル)11-17-アデノシンデアミナーゼ、またはアダジェン(登録商標)(Leadiant Biosciences Ltd.、Windsor、UK)を含む。
【0067】
別の実施態様では、本明細書で提供される使用および方法を実施するために使用される組成物は、薬学的に許容される担体とともに製剤される。別の実施態様では、本明細書で提供される使用および方法を実施するために使用される医薬組成物は、非経口、局所、皮下、筋肉内、経口で投与されるか、またはエアロゾルまたは経皮などの局所投与により投与することができる。医薬組成物は、任意の方法で製剤化することができ、状態または疾患および病気の程度、各患者の一般的な医学的状態、結果として生じる好ましい投与方法などに応じて、さまざまな単位剤形で投与することができる。製剤および投与のための技術の詳細は、科学文献および特許文献に詳しく記載されており、たとえば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co、Easton PA(Remington’s)を参照のこと。
【0068】
本明細書で提供される使用および方法を実施するために使用される治療薬は、単独で、または医薬製剤(組成物)の成分として投与することができる。化合物は、ヒト医学または獣医学において使用するための任意の便利な方法での投与用に製剤化することができる。湿潤剤、乳化剤およびラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味料、香味料、香料、緩衝剤、保存剤および酸化防止剤もまた本発明組成物中に存在することができる。
【0069】
本明細書で提供される使用および方法を実施するために使用される組成物の製剤には、経口/鼻、局所、非経口、好ましくは筋肉内、注射;直腸、および/または膣内投与に適したものが含まれる。製剤は、単位剤形で便利に提供することができ、薬学の技術分野で周知の任意の方法によって調製することができる。単回剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、治療される宿主、特定の投与モードに応じて変化する。単回剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般に、治療効果を生成する化合物の量である。
【0070】
本明細書で提供される使用および方法を実施するために使用される医薬品製剤は、医薬品の製造のために当技術分野で知られている任意の方法に従って調製することができる。そのような薬剤は、甘味料、香味料、着色料、保存剤を含むことができる。製剤は、製造に適した非毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合することができる。製剤は、1つ以上の希釈剤、乳化剤、保存剤、緩衝剤、賦形剤などを含んでもよく、液剤、散剤、エマルジョン、凍結乾燥粉末、スプレー、クリーム、ローション、放出制御製剤、錠剤、丸薬、ゲル、パッチ、埋め込み剤などの形で提供されてもよい。
【0071】
経口投与用医薬製剤は、当該技術分野で周知の薬学的に許容される担体を適正で適切な用量で使用して製剤化することができる。そのような担体は、錠剤、ゲルタブ、丸薬、散剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ロゼンジ、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などの、患者による摂取に適した単位剤形で医薬品を製剤化することを可能にする。経口使用のための医薬製剤は、固体賦形剤として、場合によっては、得られた混合物を粉砕し、適切な追加の化合物を添加した後、必要に応じて、錠剤または糖衣錠のコアを得るために、顆粒の混合物を処理することによって製剤化することができる。適切な固形賦形剤は、炭水化物またはタンパク質充填剤であり、たとえば、糖、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールなどの糖類;トウモロコシ、小麦、米、ジャガイモ、またはその他の植物由来の澱粉;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはナトリウムカルボキシメチルセルロースなどのセルロース;およびアラビアおよびトラガカントなどのゴム;ならびにゼラチンおよびコラーゲンなどのタンパク質である。架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムなどのその塩として、崩壊剤または可溶化剤を添加してもよい。
【0072】
糖衣錠のコアは、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物も含有する、濃縮糖液などの適切なコーティングをして提供される。製品識別のために、または活性化合物の量(すなわち、投与量)を特徴付けるために、染料または顔料を錠剤または糖衣錠のコーティングに加えることができる。本明細書で提供される使用と方法を実施するために使用される医薬品製剤は、また、たとえば、ゼラチンで作られた押し込み型カプセル、ならびにゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールなどのコーティングで作られた軟密閉カプセルを用いて経口的に使用されうる。押し込み型カプセルは、ラクトースまたはデンプンなどの充填剤または結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、および、場合によっては、安定剤と混合した活性剤を含むことができる。軟カプセルでは、活性剤は、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に、安定剤の有無にかかわらず、溶解または懸濁することができる。
【0073】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合された活性剤(たとえば、本明細書で提供される使用および方法を実施するために使用される組成物)を含むことができる。このような賦形剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アカシアゴムなどの懸濁剤、および天然のリン脂質(たとえば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物(たとえば、ステロイド酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合生成物(たとえば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトールから誘導された部分エステルの縮合生成物(たとえば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール)、またはエチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導された部分エステルとの縮合生成物 (たとえば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)が挙げられる。水性懸濁液は、p-ヒドロキシ安息香酸エチルまたはn-プロピルなどの1つ以上の保存剤、1つ以上の着色剤、1つ以上の香味料、およびスクロース、アスパルテームまたはサッカリン、あるいはエリスリトールまたはレバウディオサイドAなどの1つ以上の甘味料も含むことができる。製剤を、浸透圧に調整することができる。
【0074】
油性医薬品は、本明細書で提供される使用および方法を実施するために使用される疎水性活性剤の投与のために特に有用である。油性懸濁液は、落花生油、オリーブ油、ゴマ油、ココナッツ油などの植物油、または流動パラフィンなどの鉱物油、またはこれらの混合物に活性剤を懸濁することによって製剤化されうる。経口投与された疎水性医薬化合物のバイオアベイラビリティを向上させ、個人間および個人内の変動を減少させるための精油または精油成分の使用を記載している米国特許第5,716,928号を参照のこと(米国特許第5,858,401号も参照のこと)。油性懸濁液は、蜜蝋、固形パラフィン、セチルアルコールなどの増粘剤を含むことができる。口当たりの良い経口製剤を提供するために、グリセロール、ソルビトールまたはスクロース、あるいはエリスリトールまたはレバウディオサイドAなどの甘味料を添加することができる。これらの製剤は、アスコルビン酸などの酸化防止剤を添加することにより保存することができる。注射可能な油性ビヒクルの例として、Minto (1997) J. Pharmacol. Exp. Ther. 281:93-102を参照のこと。本明細書で提供される医薬品製剤は、水中油型エマルジョンの形態でもありうる。油相は、上述した植物油または鉱油、またはこれらの混合物でありうる。適切な乳化剤として、アカシアゴムおよびトラガカントゴムなどの天然ゴム、大豆レシチンなどの天然リン脂質、モノオレイン酸ソルビタンなどの脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導されたエステルまたは部分エステル、およびモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどのこれらの部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物が挙げられる。シロップとエリキシルの製剤のように、エマルジョンは、甘味料および風味料も含むことができる。このような製剤は、粘滑剤、保存剤、または着色剤を含むこともできる。
【0075】
本明細書で提供される使用および方法の実施において、医薬化合物は、坐剤、吸入剤、粉末製剤およびエアロゾル製剤(たとえば、ステロイド吸入剤、Rohatagi (1995) J. Clin. Pharmacol. 35:1187-1193;Tjwa (1995) Ann. Allergy Asthma Immunol. 75:107-111を参照)などの鼻腔内、眼内、および膣内経路によっても投与されうる。坐剤製剤は、常温では固体だが体温では液体であるため、体内で融解して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤と薬物を混合することによって製造することができる。そのような材料は、ココアバターおよびポリエチレングリコールである。
【0076】
本明細書で提供される使用および方法の実施において、医薬化合物を、経皮的に、局所経路によりデリバリーすることができ、アプリケータースティック、溶液、懸濁液、エマルジョン、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ゼリー、ペイント、粉末、およびエアロゾルとして製剤化することができる。
【0077】
本明細書で提供される方法の実施において、医薬化合物を、吸入によりデリバリーすることができる;たとえば、別の実施態様では、吸入用のADAまたはADA複合体、たとえば、PEG複合体は、たとえば、米国特許第6,509,006;6,592,904;7,097,827;および6,358,530号に記載の方法を用いて、乾燥分散用に、たとえば、ADAまたはADAPEG複合体を含む溶液を噴霧乾燥することによって製造されうる。例示的な乾燥粉末賦形剤として、分散を促進するためにADAまたはADAPEG複合体と混合される低分子量炭水化物またはポリペプチドが挙げられる。別の実施態様では、乾燥粉末分散用の担体として有用である医薬品賦形剤の種類として、有用な分散剤でもあるヒト血清アルブミン(HSA)などの安定剤、炭水化物、アミノ酸およびポリペプチドなどの増量剤;pH調整剤または緩衝液;塩化ナトリウムなどの塩;などが挙げられる。これらの担体は、結晶形態またはアモルファス形態であってもよく、あるいは2つの混合物であってもよい。粉末またはエアロゾル製剤をデリバリーするために使用することができるデバイスとして、たとえば、米国特許第5,605,674;7,097,827号に記載されたデバイスが挙げられ、たとえば、ネブライザーでありうる。
【0078】
本明細書で提供される方法の実施において、医薬化合物を、体内での徐放のためにナノ粒子またはマイクロスフェアとしてデリバリーすることもできる。たとえば、ナノ粒子またはマイクロスフェアを、皮下にゆっくりと放出される薬物の皮内または皮下注射により投与することができる;Rao (1995) J. Biomater Sci. Polym. Ed. 7:623-645を参照のこと;生分解性で注射可能なゲル製剤として、たとえば、Gao (1995) Pharm. Res. 12:857-863 (1995)を参照のこと;あるいは、経口投与用マイクロスフェアとして、たとえば、Eyles (1997) J. Pharm. Pharmacol. 49:669-674を参照のこと。
【0079】
本明細書で提供される方法の実施において、医薬化合物を、筋肉内(IM)、髄腔内、もしくは静脈内(IV)投与、または体腔もしくは器官の管腔への投与などによって、非経口投与することができる。これらの製剤は、薬学的に許容される担体に溶解した活性剤の溶液を含むことができる。使用されうる許容可能なビヒクルおよび溶媒は、水、デキストロース水溶液、およびリンゲル液、等張性塩化ナトリウムである。さらに、滅菌固定油を、溶媒または懸濁媒体として使用することができる。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドなどの刺激の少ない固定油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸も、同様に注射剤の製造において使用することができる。これらの溶液は滅菌されており、一般に望ましくない物質は含まれていない。これらの製剤を、従来のよく知られた滅菌技術によって滅菌してもよい。製剤は、たとえば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどの、pH調整剤および緩衝剤、毒性調整剤といったような、生理的条件に近づけるために必要な薬学的に許容される補助物質を含んでもよい。これらの製剤中の活性剤の濃度は、大きく変動することが可能であり、選択された特定の投与モードおよび患者の必要性に応じて、主に液量、粘度、体重などに基づいて選択される。IV投与の場合、製剤は、滅菌注射用水性または油性懸濁液などの、滅菌注射用製剤でありうる。この懸濁液を、これらの適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して製剤化することができる。滅菌注射製剤は、1,3-ブタンジオールの溶液など、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒の懸濁液でもありうる。投与は、ボーラス投与または持続注入(たとえば、特定の期間の、血管への実質的に中断のない導入)によるものでありうる。
【0080】
本明細書で提供される使用および方法を実施するために使用される医薬化合物および製剤を、凍結乾燥することができる。本明細書で提供される医薬および増量剤、たとえば、マンニトール、トレハロース、ラフィノース、およびスクロースまたはその混合物を含む溶液を凍結乾燥することによって製造することができる、本明細書で提供される組成物を含む安定な凍結乾燥製剤が提供される。他の多くの従来の凍結乾燥剤がある。糖類の中で、乳糖が最も一般的である。また、クエン酸、炭酸ナトリウム、EDTA、ベンジルアルコール、グリシン、塩化ナトリウムなども使用される(たとえば、Journal of Excipients and Food Chemistry Vol. 1、Issue 1 (2010) pp 41-54を参照)。安定した凍結乾燥製剤を製造するプロセスには、約2.5 mg/mLのタンパク質、約15 mg/mLのスクロース、約19 mg/mLのNaCl、および5.5を超え6.5未満のpHを有するクエン酸ナトリウム緩衝液の溶液を凍結乾燥することが含まれうる。たとえば、米国特許出願公開第20040028670号を参照のこと。
【0081】
本明細書で提供される使用および方法を実施するために使用される製剤を、予防的および/または治療的適用のために投与することができる。治療的適用では、組成物は、すでに病気または疾患に苦しんでいる対象に、病気または疾患およびその合併症の臨床症状を治癒、緩和または部分的に阻止するのに十分な量(治療有効量)で投与される。たとえば、別の実施態様では、本明細書で提供される医薬組成物は、それを必要とする個体における、たとえば、強皮症関連血管障害および血管変化、特に、特発性閉塞性血管障害および進行性閉塞性血管障害などの増殖性閉塞性血管障害、などの構造的および機能的異常を引き起こす、レイノー症候群、浮腫性の腫れぼったい手、毛細血管拡張症、指潰瘍、肺動脈高血圧症(PAH)、心筋機能障害、および強皮症腎クリーゼの治療および予防に十分な量で投与される。これを達成するのに十分な医薬組成物の量を、「治療有効量」と定義する。この使用に有効な投与スケジュールと量、すなわち「投与計画」は、疾患または状態の段階、疾患または状態の重症度、患者の健康の一般的状態、患者の身体状態、年齢などのさまざまな要因に依存する。関連するバイオマーカーをモニターすることによっても、投与スケジュールを調整することができる。患者の投与計画の計算では、投与モードも考慮される。
【0082】
投与計画では、当該技術分野で周知の薬物動態パラメーター、すなわち、活性薬剤の吸収速度、バイオアベイラビリティ、代謝、クリアランスなども考慮される(たとえば、Hidalgo-Aragones(1996)J. Steroid Biochem. Mol. Biol. 58:611-617;Groning (1996) Pharmazie 51:337-341;Fotherby (1996) Contraception 54:59-69;Johnson (1995) J. Pharm. Sci. 84:1144-1146;Rohatagi (1995) Pharmazie 50:610-613;Brophy (1983) Eur. J. Clin. Pharmacol. 24:103-108;最新のRemington’s、上記を参照のこと)。最新技術により、臨床医は、個々の患者、活性薬剤、および治療される疾患または状態のための投与計画を決定することができる。医薬品として使用される同様の組成物に提供されるガイドラインは、投与計画、すなわち、投与スケジュールおよび投与量レベルを決定するためのガイダンスとして使用でき、本明細書で提供される方法は適切かつ適切に実施される。
【0083】
患者による必要性および忍容性による投与量と頻度に応じて、製剤の単回または複数回投与を行うことができる。製剤は、本明細書に記載の状態、疾患または症状を効果的に治療、予防または改善するのに十分な量の活性剤を提供する必要がある。たとえば、本明細書で提供される方法を実施するために使用される組成物の経口投与用の例示的な医薬製剤は、1日当たり約0.1~0.5~約20、50、100または1000またはそれ以上のμg/体重キログラムの1日量でありうる。別の実施態様では、投与量は、1日当たり患者当たり体重1kg当たり約1 mg~約4 mgである。別の実施態様では、さまざまな間隔(毎日、毎週、隔週、3週間ごと、毎月)で投与され、場合によっては、IV、IMまたは皮下投与される、それを必要とする個体に投与されるアデノシンデアミナーゼ(ADA)、またはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドの有効量は、約0.01~約100 mg/kg、または約1~約100 mg/kg、または約5~約50 mg/kg、または約10~約30 mg/kg;約5 U/kg~約50 U/kg、または約10 U/kg~約30 U/kg;または約0.5 U/kg~約5 U/kg(たとえば、約1 U/kg)、または、約250単位/mlである。超生理学的用量、たとえば、最大約100 U/kgまたはそれ以上を提供することもできる。
【0084】
別の実施態様では、それを必要とする個体に投与されるアデノシンデアミナーゼ(ADA)、またはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドの有効量は、たとえば、
- 投与スケジュールは、第1用量では、約10 U/kg、または約5~15 U/kgのアダジェン(登録商標)(または約0.067 mg/kg、または約0.001~0.12 mg/kgまたは約0.03~0.12 mg/kgのEZN2279);
- 第2用量では、約15 U/kg、または約5~15 U/kgのアダジェン(登録商標)(または約0.1 mg/kgまたは約0.05~0.5 mg/kgのEZN2279);
- 第3用量では、約30 U/kgのアダジェン(登録商標)、または約20 U/kgのアダジェン(登録商標)、または約15~30U/kg、約15~25 U/kg(または約0.134 mg/kg、または約0.05~0.30 mg/kg、または約0.05~0.25 mg/kgのEZN2279);
のさまざまな投与スケジュールの使用を含む。超生理学的用量、たとえば、最大約100 U/kgまたはそれ以上を提供することもできる。
【0085】
別の実施態様では、維持投与量が投与され、たとえば、必要に応じて、約5、または約1および10 U/kg/週のさらなる増加を伴う、約20 U/kg/週、または約15~25 U/kg/週のアダジェン(登録商標)(または約0.134、または約0.05~0.25 mg/kg、mg/kgのEZN2279)であるが、ただし、一部の患者では、約30 U/kgのアダジェン(登録商標)(または約0.2 mg/kgのEZN2279)の最大単回用量を超えるべきではない。しかしながら、「投与計画」は、疾患または状態の段階、疾患または状態の重症度、患者の健康の一般的な状態、患者の身体的状態、年齢などのさまざまな要因に応じるので、「投与計画」として、必要性または望ましさに応じて、たとえば、最大100U/kg、またはそれ以上の超生理学的用量が提供されてもよい。
【0086】
別の実施態様では、それを必要とする個体に投与されるアデノシンデアミナーゼ(ADA)、またはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドの有効量は、初回投与後の血漿ADA活性のモニタリングに基づいて個別化される。
【0087】
別の実施態様では、それを必要とする個体に投与されるアデノシンデアミナーゼ(ADA)、またはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドの有効量は、約250 U/L~約580 U/L(37℃にてアッセイ)の範囲、または約10 U/L~約50 U/Lの範囲、または約10 U/L~約600 U/Lの範囲である、血漿ADA活性(トラフレベル)を維持するのに十分な量である。
【0088】
別の実施態様では、有効量は、血漿アデノシンの形態でのアデノシンの減少によって実証される。別の実施態様では、それを必要とする個体に投与されるアデノシンデアミナーゼ(ADA)、またはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチド、またはADA複合体の有効量は、血管組織のアデノシンレベル(ここで、アデノシンは、AMP、ADP、ATPの形態で存在する)を、タンパク質1 mgあたり約10 nmole未満、またはタンパク質1 mgあたり約5 nmole未満まで低下させるのに十分な量である。
【0089】
別の実施態様では、ADA、またはADA複合体などのADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドの低用量は、血流またはIVまたはIMで、たとえば、IVまたはIM投与として、または体腔もしくは器官の管腔へ投与される場合(たとえば、経口、吸入または皮下投与とは対照的に)に使用される。局所、スプレー、吸入または経口投与において、または粉末、スプレーまたは吸入による投与において、実質的に高い用量を使用することができる。非経口または非-非経口投与可能な製剤を製造するための実際の方法は、当業者に知られているか、または明らかであり、上記のRemington’sなどの刊行物に、より詳細に記載されている。
【0090】
別の実施態様では、ADA、またはADA複合体などのADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドは、慢性的に、たとえば、診断の日から患者の人生の最後の日まで、または疾患が寛解するまで投与される。別の実施態様では、疾患の特定の従来知られているバイオマーカーの定期的なモニタリングを通じて、治療段階から維持期間に移行するための用量調整が必要である。
【0091】
別の実施態様では、治療、治療計画または特定の投与量の有効性の評価において、または治療と維持量のどちらを付与すべきかを決定するために、個人、たとえば、強皮症患者は、たとえば、皮膚合併症のためのロドナン皮膚スコア、間質性線維症をモニターするためのラジオグラフィーおよび/または高解像度CTスキャン、肺高血圧症をモニターするためのドップラー検査を伴う心エコー検査、および腎パラメーターをモニターするための血液および尿検査、および心疾患が疑われる場合、血清トロポニン、クレアチンキナーゼMB画分、およびN末端プロ脳性ナトリウムペプチド、FVCなどの肺機能などの、器官および組織の関与の有無および程度についての定期的な定期スクリーニングに付される。全身性硬化症の治療の専門家が選択した時間間隔で、指潰瘍、非陥凹性浮腫、毛細血管拡張症、皮膚石灰沈着症およびレイノー症候群の存在と重症度などの皮膚所見に焦点を合わせる徹底的な身体検査を行う必要がある。腎障害の発生率が高いため、血圧は慎重にモニターされ、病歴および身体検査もまた、肺、リウマチ、および胃腸の徴候および症状に焦点を合わせる。
【0092】
慎重な臨床的および実験的観察の過程で、強皮症の皮膚症状または内臓症状の進行が発見される場合、漸減を試みる前に少なくとも1年間、ADA、またはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチド、またはADA複合体の全用量での再開が検討されうる。一部の患者では、ADA、またはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドの投与が長期にわたる必要があり、全身性硬化症に関連する高い罹患率および死亡率によって正当化される可能性がある。
【0093】
患者がADA療法を受けた後に残存症状が残っている場合、強皮症の治療に熟練した医師は、併用臓器療法(concomitant organ based therapy)を使用することができる。たとえば、別の実施態様では、ADAは、全身性硬化症の、レイノー症候群に対しては局所硝酸塩またはカルシウムチャネル遮断薬、掻痒症に対しては抗ヒスタミン薬、食道症状に対してはH2ブロッカーまたはプロトンポンプ阻害薬、下部消化管症状に対しては下痢止め薬または鎮痙薬、および高血圧またはその他の腎徴候に対してはACEI/ARB薬とともに投与される。ADAおよび対症療法にもかかわらず適切な反応が得られない場合、別の実施態様では、メトトレキサート、シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチル、またはリツキシマブなどの薬剤を組み合わせた免疫抑制剤は、さまざまな臨床研究において、ある程度の効果があることが明らかにされているので、急速に進行する皮膚疾患または肺線維症に対して、それらも使用される(使用および方法とともに本明細書で提供される)。
【0094】
本明細書で提供される使用および方法は、たとえば、自己免疫疾患または状態、癌、敗血症性ショック、感染症、発熱、疼痛および関連症状もしくは状態を治療するための組成物などの他の薬物または医薬品との併用をさらに含むことができる。たとえば、本明細書で提供される方法および/または組成物および製剤は、抗生物質(たとえば、抗菌性または静菌性のペプチドまたはタンパク質)、特に、グラム陰性菌または腸内細菌の異常増殖を引き起こす他の種、液体、サイトカイン、免疫調節剤、抗炎症剤、コラーゲン様ドメインまたはフィブリノーゲン様ドメイン(たとえば、フィコリン)、炭水化物結合ドメインなどを含むペプチドまたはタンパク質などの補体活性化剤、およびそれらの組み合わせと共製剤および/または共投与することができる。
【0095】
ナノ粒子、ナノリポ粒子およびリポソーム
本発明は、また、本明細書で提供される使用および方法を実施するために、たとえば、組成物(アデノシンデアミナーゼ(ADA)、またはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチド、またはADA複合体を含みうる)をインビボ、インビトロまたはエクスビボで哺乳類細胞にデリバリーするために使用される化合物を含むナノ粒子、ナノリポ粒子、小胞およびリポソーム膜を提供する。別の実施態様では、これらの組成物は、たとえば、血管細胞(たとえば、血管内皮、上皮または平滑筋細胞など)、線維芽細胞、筋細胞または心臓細胞、内皮細胞などの所望の細胞型を標的とするための、細胞表面ポリペプチドといったようなポリペプチドなどの、生体分子などの特定の分子を標的とするように設計される。
【0096】
本発明は、たとえば、Park、et al.、米国特許出願公開第20070082042号に記載されるような、本明細書で提供される方法を実施するために使用される化合物を含む多層リポソームを提供する。多層リポソームは、スクワラン、ステロール、セラミド、中性脂質または油、脂肪酸およびレシチンを含む油相成分の混合物を使用して、本明細書で提供される使用および方法を実施するために使用される組成物を捕捉するために、粒径約200~5000 nmに製造することができる。
【0097】
リポソームは、たとえば、米国特許第4,534,899号;またはPark、et al.、米国特許出願公開第20070042031号などに記載のように、活性剤(たとえば、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、またはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチド、またはADA複合体)を封入することによるリポソームの製造方法であって、第1のリザーバー中の水溶液を提供すること;第2のリザーバー中の有機脂質溶液を提供し、次いで、第1混合領域中で水溶液を有機脂質溶液と混合して、リポソーム溶液を生成すること(ここで、有機脂質溶液は、水溶液と混合して、実質的に瞬時に、活性剤を封入しているリポソームを生成する);および、その後ただちに、リポソーム溶液を緩衝溶液と混合して、希釈リポソーム溶液を生成すること;を含む方法などの、任意の方法を使用して作成することができる。
【0098】
1つの実施態様では、本明細書で提供される使用および方法を実施するために使用されるリポソーム組成物は、たとえば、米国特許出願公開第20070110798号に記載のように、たとえば、本明細書で提供される方法を実施するために使用される化合物(たとえば、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、またはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチド、またはADA複合体)の、所望の細胞型(たとえば、内皮細胞、癌細胞、またはそれを必要とする任意の組織)へのデリバリーを標的とするために、置換アンモニウムおよび/またはポリアニオンを含む。
【0099】
本発明は、たとえば、米国特許出願公開第20070077286号に記載のように、活性剤含有ナノ粒子(たとえば、第2ナノ粒子)の形態で、本明細書で提供される使用および方法を実施するために使用される化合物(たとえば、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、またはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチド、またはADA複合体)を含むナノ粒子を提供する。1つの実施態様では、本発明は、二価または三価の金属塩と反応するための、本明細書で提供される使用および方法を実施するために使用される脂溶性活性剤、または脂溶性水溶性活性剤を含むナノ粒子を提供する。
【0100】
1つの実施態様では、たとえば、米国特許出願公開第20050136121号に記載のように、固体脂質懸濁液を用いて、本明細書で提供される使用および方法を実施するために使用される組成物を製剤し、インビボ、インビトロまたはエクスビボで哺乳動物細胞にデリバリーすることができる。
【0101】
本明細書で提供される使用およびを実施するために使用される組成物および製剤は、リポソームまたはナノリポソームの使用によってデリバリーすることができる。リポソームを使用することによって、特に、リポソーム表面が標的細胞に特異的なリガンドを有する場合、またはそうでなければ優先的に特定の器官に向けられる場合、インビボで標的細胞への活性剤のデリバリーに焦点を当てることができる。たとえば、米国特許第6,063,400号;第6,007,839号;Al-Muhammed (1996) J. Microencapsul. 13:293-306;Chonn (1995) Curr. Opin. Biotechnol. 6:698-708;Ostro (1989) Am. J. Hosp. Pharm. 46:1576-1587を参照。
【0102】
デリバリービヒクル
別の実施態様では、任意のデリバリービヒクルを用いて、本明細書で提供される使用およびを実施する、たとえば、たとえば、本明細書で提供される組成物(たとえば、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、またはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチド、またはADA複合体)を、インビボ、インビトロまたはエクスビボで哺乳動物細胞にデリバリーすることができる。たとえば、米国特許出願公開第20060083737号などに記載のように、ポリエチレンイミン誘導体などの、ポリカチオン、カチオン性ポリマーおよび/またはカチオン性ペプチドを使用することができる。
【0103】
1つの実施態様では、たとえば、米国特許出願公開第20040151766号に記載のように、無水ポリペプチド-界面活性剤複合体を用いて、本明細書で提供される使用およびを実施するための組成物を製剤する。
【0104】
1つの実施態様では、たとえば、米国特許第7,306,783号;第6,589,503号に記載のように、本明細書で提供される使用および方法を実施するために使用される組成物を、細胞膜透過性ペプチド複合体を有するビヒクルを用いて、細胞に適用することができる。1つの態様では、デリバリーされる組成物は、細胞膜透過性ペプチドに結合される。1つの実施態様では、たとえば、高度に塩基性で、ポリホスホイノシチドに結合する輸送媒介ペプチドを記述する、米国特許第5,846,743号に記載のように、デリバリーされる組成物および/またはデリバリービヒクルは、輸送媒介ペプチドに結合される。
【0105】
1つの実施態様では、電気的可透過化(electro-permeabilization)は、米国特許第7,109,034号;第6,261,815号;第5,874,268号に記載のように、たとえば、任意のエレクトロポレーションシステムを使用して、組成物を細胞にデリバリーするための主要なまたは補助的な手段として使用される。
【0106】
製品およびキット
別の実施態様では、本発明は、本明細書で提供される使用および方法を実施するための、たとえば、強皮症関連血管障害および血管変化、特に、突発性閉塞性血管障害および進行性閉塞性血管障害などの増殖性閉塞性血管障害、レイノー症候群、浮腫性の腫れぼったい手、毛細血管拡張症、指潰瘍、肺動脈高血圧症(PAH)、心筋機能障害、および強皮症腎クリーゼを治療、改善または予防するための、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、またはADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチド、またはADA複合体を含む製品およびキットを提供する。別の実施態様では、本発明は、強皮症関連血管障害および血管変化、特に、特発性閉塞性血管障害および進行性閉塞性血管障害などの増殖性閉塞性血管障害、レイノー症候群、浮腫性の腫れぼったい手、毛細血管拡張症、指潰瘍、肺動脈高血圧症(PAH)、心筋機能障害、および強皮症腎クリーゼの治療、改善または予防における使用のための、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、またはADA複合体などのADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドを含む製品およびキットを提供する。別の実施態様では、本発明は、強皮症(ここで、強皮症は、局在性もしくは限局性強皮症またはびまん性もしくは全身性強皮症を含む)の進行を予防するか、または減少させることにおける使用のための、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、またはADA複合体などのADA活性を有するポリペプチドもしくはペプチドを含む製品およびキットを提供する。
【0107】
別の実施態様では、本明細書で提供される製品およびキットは、本明細書で提供される方法を実施するための指示書を含む。
【0108】
本発明をさらに、本明細書に記載の実施例を参照して説明するが、本発明はこのような実施例に限定されるものではないことを理解すべきである。
【実施例0109】
実施例に特記されない限り、すべての組換えDNA技術は、たとえば、Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Second Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press、NYおよびVolumes 1 and 2 of Ausubel et al. (1994) Current Protocols in Molecular Biology、Current Protocols、USAに記載のような標準的プロトコルにしたがって実行される。標準的分子生物学技術のための他の参考文献として、Sambrook and Russell (2001) Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Third Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press、NY、およびVolumes I and II of Brown (1998) Molecular Biology LabFax、Second Edition、Academic Press (UK)が挙げられる。ポリメラーゼ鎖反応のための標準的材料および方法は、Dieffenbach and Dveksler (1995) PCR Primer:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、and in McPherson at al. (2000) PCR - Basics:From Background to Bench、First Edition、Springer Verlag、Germanyに見いだすことができる。
【0110】
実施例1:強皮症関連血管障害の治療または改善および/または全身性硬化症(SSc)の進行の予防または減少
この実施例は、強皮症関連血管障害に苦しむ患者の全身性硬化症(SSc)を治療、予防するか、またはその進行を減少させるための、本明細書で提供される医薬組成物もしくは製剤、製品もしくはキットを使用するためのプロトコルを記載する。全身性硬化症の動物モデルの前臨床データは、傷害後の非常に早い時期に投与された場合のアデノシンデアミナーゼの有効性を示した;すなわち、8週間のFra2マウスについての時間経過(当該技術分野で認められた全身性硬化症の動物モデル)。
【0111】
したがって、前臨床データは、患者が、本明細書で提供される方法を使用して治療を受けることに適格であるいくつかのシナリオを実証する。これらは、限定された皮膚病変を有する一部の患者は、肺高血圧を発症するが、びまん性皮膚病変を含む進行のリスクが高い、全身性硬化症と診断された患者を包含する。したがって、別の実施態様では、肺高血圧症、心筋炎、炎症性ミオパシーおよび/または関節炎の徴候または症状を有する患者、または従来の対症療法に反応性が低い他の内臓療法は、本明細書で提供される方法を使用した治療に適格である。
【0112】
しかしながら、SSc-cGVHDモデル(cGVDHの当該技術分野で認められたマウスモデル)は、ADAが強皮症初期の病理学的発現、すなわち、血管の変化に影響を与える可能性があることを実証しているので、別の実施態様では、ADAは、該疾患の最も初期のコースにおいて、初期に投与され、たとえば、ここで、徴候として、レイノー症候群、手のむくみのない浮腫、痛みを伴う遠位指潰瘍および/または口の開口部の減少を伴う顔面または口腔周囲の皮膚の拘縮が挙げられ、そして、毛細管顕微鏡検査における異常の特に有用な所見は、強皮症のパターンと一致する。
【0113】
別の実施態様では、びまん性皮膚病変(進行性皮膚拘縮)、食道、肺、心臓、腎臓などの内臓の関与、たとえば、制御不良の高血圧、吸収不良または腸偽閉塞を伴う下痢、労作性関節障害における呼吸困難を有する強皮症患者などの既存の強皮症疾患を有する患者を治療するために、または皮膚もしくは全身症状が急速に進行している強皮症患者は、本明細書で提供される方法による治療に適格である個人の1つのグループとして包含されうる。
【0114】
別の実施態様では、本明細書で提供される方法による治療に適格である個人の別のグループ(早期症状を有する)として、皮膚病変または毛細管顕微鏡検査における異常、腫れぼったいもしくは腫れた指、または抗トポイソメラーゼ1(抗-Scl-70)抗体および/または抗-RNAポリメラーゼIII抗体または核パターンをもつ陽性ANAに対する陽性試験の存在下でレイノー症候群を有する個人が挙げられる。
【0115】
別の実施態様では、本明細書で提供される方法による治療に適格である個人の別のグループとして、特に、虚血性指先潰瘍、石灰沈着症、色素沈着亢進、粘膜皮膚毛細血管拡張症、新たに発症した胸焼けまたは嚥下障害、X線撮影または高解像度CTスキャンにおける間質性肺変化またはドップラー心エコー検査における肺高血圧の証拠を伴う運動中の呼吸困難などの全身性硬化症を強く示唆する近位病変を伴う両手の指の皮膚肥厚の存在下での臨床徴候および症状を有する個人が挙げられる。
【0116】
本発明の多くの実施態様が説明されてきた。それにもかかわらず、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな修正を行うことができることを理解することができる。したがって、他の実施態様は以下の特許請求の範囲内にある。
強皮症関連血管障害および血管変化の阻止、治療、改善または予防および強皮症の予防または進行の減少における使用のための、アデノシンデアミナーゼ酵素活性を有するか、または個体におけるアデノシンデアミナーゼ酵素活性のレベルを増加または維持することができる薬剤、化合物または組成物。