(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116495
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】老化細胞の処置のためのタンパク質療法
(51)【国際特許分類】
C12P 21/08 20060101AFI20230815BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230815BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230815BHJP
A61K 38/04 20060101ALI20230815BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230815BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230815BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230815BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230815BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230815BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20230815BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230815BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230815BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230815BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230815BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230815BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230815BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230815BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230815BHJP
A61P 39/02 20060101ALI20230815BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230815BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20230815BHJP
C12Q 1/04 20060101ALN20230815BHJP
C07K 14/46 20060101ALN20230815BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230815BHJP
【FI】
C12P21/08
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 C
A61K39/395 D
A61K39/395 E
A61K39/395 L
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K38/04
A61K38/16
A61K47/68
A61P3/00
A61P9/00
A61P11/00
A61P19/00
A61P19/02
A61P21/00
A61P25/28
A61P27/02
A61P29/00
A61P35/00
A61P35/04
A61P37/02
A61P39/02
G01N33/53 Y
G01N33/531 A
C12Q1/04
C07K14/46
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】35
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023084511
(22)【出願日】2023-05-23
(62)【分割の表示】P 2019536157の分割
【原出願日】2018-01-03
(31)【優先権主張番号】62/441,745
(32)【優先日】2017-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/509,830
(32)【優先日】2017-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520478172
【氏名又は名称】バイオアトラ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ショート ジェイ エム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】老化細胞を標的とし、老化細胞の細胞外環境において条件付き活性がある、条件付き活性老化細胞除去抗体を作製する方法を提供する。
【解決手段】方法は、老化細胞に関連する標的に結合する親抗体または抗体断片をコードするDNAを進化させて、突然変異体DNAを作出するステップと;突然変異体DNAを発現させて突然変異体抗体または抗体断片を得るステップと;突然変異体抗体または抗体断片を、前記老化細胞の細胞外条件下での標的への結合活性のアッセイおよび正常な生理学的条件下での標的への結合活性のアッセイに供するステップと;条件付き活性老化細胞除去抗体または抗体断片を選択するステップと;を含み、正常な生理学的条件下でのアッセイにおける活性に対する、細胞外条件下でのアッセイにおける条件付き活性老化細胞除去抗体または抗体断片の活性の比が、少なくとも1.3:1である、方法である。
【選択図】
図18B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
老化細胞に関連する標的に結合する条件付き活性タンパク質を、前記老化細胞に関連する前記標的に結合する親タンパク質から生成する方法であって、
(i)1つまたは複数の進化的技術(evolutionaly techniques)を利用して前記親タンパク質をコードするDNAを進化させて、突然変異体DNAを作出するステップと;
(ii)前記突然変異体DNAを発現させて突然変異体タンパク質を得るステップと;
(iii)前記突然変異体タンパク質を、前記老化細胞の細胞外条件下でのアッセイおよび正常な生理学的条件下でのアッセイに供するステップと;
(iv)(a)前記アッセイにおける前記親タンパク質の活性に比較した、前記正常な生理学的条件下での同アッセイにおける同活性の低下、および前記正常な生理学的条件下でのアッセイにおける前記条件付き活性タンパク質の活性に比較した、前記老化細胞の細胞外条件下での前記アッセイにおける同活性の上昇;ならびに
(b)前記アッセイにおける前記親タンパク質の活性に比較した、前記正常な生理学的条件下での同アッセイにおける同活性の低下、および前記老化細胞の細胞外条件下での前記アッセイにおける前記親タンパク質の活性に比較した、前記老化細胞の細胞外条件下での前記アッセイにおける同活性の上昇、
のうちの少なくとも1つを示す前記突然変異体タンパク質から前記条件付き活性タンパク質を選択するステップと;
を含む、方法。
【請求項2】
前記親タンパク質が、酵素、抗体、受容体、リガンド、酵素断片、抗体断片、受容体断片、およびリガンド断片から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性が、前記標的への結合活性である、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記親タンパク質が、酵素であり、前記活性が、前記老化細胞の少なくとも一部を基質として用いる酵素活性である、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記標的が、老化細胞の外面に配置された表面分子である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記表面分子が、老化細胞の細胞膜タンパク質である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記標的が、APC、ARHGAP1、ARMCX-3、AXL、B2MG、BCL2L1、CAPNS2、CD261、CD39、CD54、CD73、CD95、CDC42、CDKN2C、CLYBL、COPG1、CRKL、DCR1、DCR2、DCR3、DEP1、DGKA、EBP、EBP50、FASL、FGF1、GBA3、GIT2、ICAM1、ICAM3、IGF1、ISG20、ITGAV、KITLG、ラミンB1、LANCL1、LCMT2、LPHN1、MADCAM1、MAG、MAP3K14、MAPK、MEF2C、miR22、MMP3、MTHFD2、NAIP、NAPG、NCKAP1、ネクチン4、NNMT、NOTCH3、NTAL、OPG、OSBPL3、p16、p16INK4a、p19、p21、p53、PAI1、PARK2、PFN1、PGM、PLD3、PMS2、POU5F1、PPP1A、PPP1CB、PRKRA、PRPF19、PRTG、RAC1、RAPGEF1、RET、Smurf2、STX4、VAMP3、VIT、VPS26A、WEE1、YAP1、YH2AX、およびYWHAEのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記条件付き活性タンパク質が、環状ペプチドである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記環状ペプチドが、約5~約500アミノ酸、または約8~約300アミノ酸、または約8~約200アミノ酸、または約10~約100アミノ酸、または約10~約50アミノ酸の範囲内の長さを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記正常な生理学的条件下での前記アッセイにおける前記条件付き活性タンパク質の前記活性に対する、前記老化細胞の細胞外条件下での前記アッセイにおける前記条件付き活性タンパク質の前記活性の比が、少なくとも約1.3:1、または少なくとも約2:1、または少なくとも約3:1、または少なくとも約4:1、または少なくとも約5:1、または少なくとも約6:1、または少なくとも約7:1、または少なくとも約8:1、または少なくとも約9:1、または少なくとも約10:1、または少なくとも約11:1、または少なくとも約12:1、または少なくとも約13:1、または少なくとも約14:1、または少なくとも約15:1、または少なくとも約16:1、または少なくとも約17:1、または少なくとも約18:1、または少なくとも約19:1、または少なくとも約20:1、または少なくとも約30:1、または少なくとも約40:1、または少なくとも約50:1、または少なくとも約60:1、または少なくとも約70:1、または少なくとも約80:1、または少なくとも約90:1、または少なくとも約100:1である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記老化細胞の前記細胞外条件が、約5.5~約7.0、または約6.0~約7.0、または約6.2~約6.8の範囲内のpHである、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記正常な生理学的条件が、約7.2~約7.8、または約7.2~約7.6、または約7.4~約7.6の範囲内のpHである、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記老化細胞の前記細胞外条件が、デオキシヌクレオチドの正常な生理学的濃度よりも低濃度の同デオキシヌクレオチドである、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記老化細胞の前記細胞外条件が、酸素の正常な生理学的濃度よりも低濃度の酸素である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記老化細胞の前記細胞外条件が、NAD+/NADHの正常な生理学的比よりも低い比のNAD+/NADHである、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記老化細胞の前記細胞外条件が、ヒポタウリン、システインスルフィン酸、システイン-グルタチオンジスルフィド、ガンマ-グルタミルアラニン、ガンマ-グルタミルメチオニン、ピリドキサート、ガンマ-グルタミルグルタミン、およびアラニンから選択される少なくとも1種のレドックスホメオスタシス代謝産物の正常な生理学的濃度に比較して高濃度の同レドックスホメオスタシス代謝産物である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記老化細胞の前記細胞外条件が、3-ウレイドプロピオナート、ウラート、7-メチルグアニン、およびヒポキサンチンから選択される少なくとも1種のヌクレオチド代謝産物の正常な生理学的濃度に比較して高濃度の同ヌクレオチド代謝産物である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記老化細胞の前記細胞外条件が、チミジンの正常な生理学的濃度に比較して低濃度のチミジンである、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記老化細胞の前記細胞外条件が、グリシルイソロイシン、グリシルバリン、グリシルロイシン、イソロイシルグリシン、およびバリルグリシンから選択される少なくとも1種のジペプチドの正常な生理学的濃度に比較して低濃度の同ジペプチドである、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記老化細胞の前記細胞外条件が、リノレアート、ジホモリノレアート、および10-ヘプタデカノアートから選択される少なくとも1種の脂肪酸の正常な生理学的濃度に比較して低濃度の前記脂肪酸である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記老化細胞の前記細胞外条件が、2-ヒドロキシパルミタート、2-ヒドロキシステアラート、3-ヒドロキシデカノアート、3-ヒドロキシオクタノアート、およびグリセロホスホリルコリンから選択される少なくとも1種のリン脂質代謝産物の正常な生理学的濃度に比較して高濃度の前記リン脂質代謝産物である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記老化細胞の前記細胞外条件が、アラニン、C-グリコシルトリプトファン、キヌレニン、ジメチルアルギニン、およびオルチチン(orthithine)から選択される少なくとも1種のアミノ酸代謝産物の正常な生理学的濃度に比較して高濃度の前記アミノ酸代謝産物である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記老化細胞の前記細胞外条件が、フェニルピルバートの正常な生理学的濃度に比較して低濃度の前記フェニルピルバートである、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記老化細胞の前記細胞外条件が、フマラート、マロナート、エイコサペンタエノアート、およびシトラートから選択される少なくとも1種の代謝産物の正常な生理学的濃度に比較して高濃度の前記代謝産物である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記老化細胞の前記細胞外条件が、ホスホコリンに対するグリセロホスホコリンの正常な生理学的比に比較して高い比の、ホスホコリンに対するグリセロホスホコリンである、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記老化細胞の前記細胞外条件が、前記老化細胞により分泌されるタンパク質の正常な生理学的濃度に比較して高濃度の前記タンパク質であり、前記老化細胞により分泌される前記タンパク質が、GM-CSF、GROa、GRC-α、β、γ、IGFBP-7、IL-lα、IL-6、IL-7、IL-8、MCP-1、MCP-2、MIP-la、MMP-1、MMP-10、MMP-3、アンフィレグリン、ENA-78、エオタキシン-3、GCP-2、GITR、HGF、ICAM-1、IGFBP-2、IGFBP-3、IGFBP-4、IGFBP-5、IGFBP-6、IL-13、IL-Iβ、MCP-4、MIF、MIP-3a、MMP-12、MMP-13、MMP-14、NAP2、オンコスタチンM、オステオプロテゲリン、PIGF、RANTES、sgpl30、TIMP-2、TRAIL-R3、Acrp30、アンギオゲニン、Axl、bFGF、BLC、BTC、CTACK、EGF-R、Fas、FGF-7、G-CSF、GDNF、HCC-4、I-309、IFN-γ、IGFBP-1、IL-1Rl、IL-11、IL-15、IL-2R-a、IL-6R、I-TAC、レプチン、LIF、MMP-2、MSP-a、PAI-1、PAI-2、PDGF-BB、SCF、SDF-1、sTNF RI、sTNF RII、トロンボポエチン、TIMP-1、tPA、uPA、uPAR、VEGF、MCP-3、IGF-1、TGF-β3 、MIP-1-デルタ、IL-4、IL-16、BMP-4、MDC、IL-10、Fit-3リガンド、ICAM-1、CNTF、EGF、およびBMP-6のうちの少なくとも1つから選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記正常な生理学的条件下での前記アッセイおよび前記老化細胞の前記細胞外条件下での前記アッセイが、無機化合物、イオンおよび有機分子から選択される少なくとも1種の成分を含有するアッセイ溶液中で実施される、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1種の成分が、前記正常な生理学的条件下での前記アッセイおよび前記老化細胞の前記細胞外条件下での前記アッセイの両方で、前記アッセイ溶液中で実質的に同じ濃度を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも1種の成分が、前記無機化合物であり、ホウ酸、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸二アンモニウム、硫酸マグネシウム、リン酸一アンモニウム、リン酸一カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸銅、硫酸鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸マグネシウム、硝酸カルシウム、カルシウムキレート、銅キレート、鉄キレート、鉄キレート、マンガンキレート、亜鉛キレート、モリブデン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウム、重炭酸カリウム、硝酸カリウム、塩酸、二酸化炭素、硫酸、リン酸、炭酸、尿酸、塩化水素、および尿素から選択される、請求項27~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1種の成分が、前記イオンであり、リンイオン、硫黄イオン、塩化物イオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、鉄イオン、亜鉛イオン、および銅イオンから選択される、請求項27~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも1種の成分が、2~7.0mg/dLの濃度範囲内の尿酸、8.2~11.6mg/dLの濃度範囲内のカルシウムイオン、355~381mg/dLの濃度範囲内の塩化物イオン、0.028~0.210mg/dLの濃度範囲内の鉄イオン、12.1~25.4mg/dLの濃度範囲内のカリウムイオン、300~330mg/dLの濃度範囲内のナトリウムイオン、および15~30mMの濃度範囲内の炭酸のうちの1つまたは複数から選択される、請求項27~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1種の成分が、前記有機分子であり、ヒスチジン、アラニン、イソロイシン、アルギニン、ロイシン、アスパラギン、リシン、アスパラギン酸、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニン、グルタミン、トリプトファン、グリシン、バリン、ピロリシン、プロリン、セレノシステイン、セリン、およびチロシンから選択されるアミノ酸である、請求項27~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも1種の成分が、前記有機分子であり、クエン酸、α-ケトグルタル酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、乳酸、ピルビン酸、α-ケトン酸、酢酸、および揮発性脂肪酸から選択される有機酸である、請求項27~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも1種の成分が、前記有機分子であり、グルコース、ペントース、ヘキソース、キシロース、リボース、マンノース、ガラクトース、ラクトース、GlcNAcβ1-3Gal、Galα1-4Gal、Manα1-2Man、GalNAcβ1-3Gal、ならびにO-、N-、C-、およびS-グリコシドから選択される糖である、請求項27~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1種の成分が、前記イオンであり、マグネシウムイオン、硫酸イオン、重硫酸イオン、炭酸イオン、重炭酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン、過硫酸イオン、一過硫酸イオン、ホウ酸イオン、およびアンモニウムイオンから選択される、請求項27~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記老化細胞の前記細胞外条件が、約5.5~約7.0の範囲内の第一のpHであり、前記正常な生理学的条件が、約7.2~約7.8の範囲内の第二のpHであり、
前記1つまたは複数のアッセイが、900a.m.u未満の分子量と、前記第一のpHから最大0.5、1、2、3、または4pH単位離れたpKaと、を有する少なくとも1種の分子種を含有するアッセイ溶液中で実施される、
請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記老化細胞の前記細胞外条件が、約5.5~約7.0の範囲内の第一のpHであり、前記正常な生理学的条件が、約7.2~約7.8の範囲内の第二のpHであり、
前記1つまたは複数のアッセイが、900a.m.u未満の分子量を有する少なくとも1種の分子種を含有するアッセイ溶液中で実施され、
前記分子種が、前記第一のpHと前記第二のpHの間にpKaを有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記老化細胞の細胞外条件が、約5.5~約7.0の範囲内の第一のpHであり、前記正常な生理学的条件が、約7.2~約7.8の範囲内の第二のpHであり、
前記1つまたは複数のアッセイが、ヒスチジン、ヒスタミン、水素化アデノシン二リン酸塩、水素化アデノシン三リン酸塩、クエン酸塩、重炭酸塩、酢酸塩、乳酸塩、二硫化物、硫化水素、アンモニウム、およびリン酸二水素塩から選択される少なくとも1種の分子種を含有するアッセイ溶液中で実施される、
請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記選択のステップ(iv)が、(a)前記アッセイにおける前記親タンパク質の活性に比較した、正常な生理学的条件下での同アッセイにおける同活性の低下、および正常な生理学的条件下での前記アッセイにおける前記条件付き活性タンパク質の前記活性に比較した、前記老化細胞の前記細胞外条件下での前記アッセイにおける同活性の上昇、を示す条件付き活性タンパク質を選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記選択のステップ(iv)が、(b)前記アッセイにおける前記親タンパク質の活性に比較した、前記正常な生理学的条件下での同アッセイにおける同活性の低下、および前記老化細胞の前記細胞外条件下での前記アッセイにおける前記親タンパク質の活性に比較した、前記老化細胞の前記細胞外条件下での前記アッセイにおける同活性の上昇、を示す条件付き活性タンパク質を選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記条件付き活性タンパク質が条件付き活性抗体であり、前記条件付き活性抗体をリンカーによりマスキング部分にコンジュゲートするステップをさらに含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記マスキング部分が、前記標的への結合における前記条件付き活性抗体の活性を少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%低減する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記リンカーが、前記条件付き活性抗体の可変領域に共有結合される、請求項41~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記マスキング部分が、前記条件付き活性抗体の可変領域に特異的に結合する、請求項41~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記マスキング部分が、5%以下、7%以下、10%以下、15%以下、20%以下、25%以下、30%以下、35%以下、40%以下、45%以下、50%以下、55%以下、60%以下、65%以下、70%以下、75%以下、または80%以下の前記標的への配列同一性を有する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記リンカーが、可撓性領域および切断部位を含む、請求項41~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記可撓性領域が、グリシン、アラニンおよびセリンから選択される少なくとも1種のアミノ酸から本質的になる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記可撓性領域が、1アミノ酸~20アミノ酸、2アミノ酸~15アミノ酸、3アミノ酸~12アミノ酸、4アミノ酸~10アミノ酸、5アミノ酸~9アミノ酸、または6アミノ酸~8アミノ酸の長さを有する、請求項46~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記切断部位が、前記老化細胞の前記細胞外環境においてプロテアーゼにより切断され得る、請求項46~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記プロテアーゼが、ADAM10、ADAM12、ADAM17、ADAMTS、ADAMTS5、BACE、カスパーゼ1~14、カテプシンA,カテプシンB、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンK、カテプシンS、FAP、MT1-MMP、グランザイムB、グアニジノベンゾアターゼ、へプシン、ヒト好中球エラスターゼ、レグマイン、マトリプターゼ2、メプリン、MMP1~17、MT-SP1、ネプリライシン、NS3/4A、プラスミン、PSA、PSMA、TRACE、TMPRSS 3、TMPRSS 4、およびuPAのうちの少なくとも1種から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記条件付き活性タンパク質をリンカーにより細胞傷害剤、細胞増殖抑制剤、または抗増殖剤にコンジュゲートするステップをさらに含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記リンカーが、前記老化細胞の前記細胞外環境においてプロテアーゼにより切断され得る切断部位を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記プロテアーゼが、ADAM10、ADAM12、ADAM17、ADAMTS、ADAMTS5、BACE、カスパーゼ1~14、カテプシンA,カテプシンB、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンK、カテプシンS、FAP、MT1-MMP、グランザイムB、グアニジノベンゾアターゼ、へプシン、ヒト好中球エラスターゼ、レグマイン、マトリプターゼ2、メプリン、MMP1~17、MT-SP1、ネプリライシン、NS3/4A、プラスミン、PSA、PSMA、TRACE、TMPRSS 3、TMPRSS 4、およびuPAのうちの少なくとも1種から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記抗増殖剤が、化学療法剤である、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記条件付き活性タンパク質を、毒性薬剤、放射性薬剤、またはDレトロインベルソ型ペプチドから選択される薬剤にコンジュゲートするステップをさらに含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記条件付き活性タンパク質が、条件付き活性抗体である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記Dレトロインベルソ型ペプチドが、天然タンパク質の断片または全長の逆配列との少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも98%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項55~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記天然タンパク質が、FOXO4、AMPK、JNK、MST1、CK1、STAT3、p38、PRMT1、およびASK1のうちの少なくとも1種から選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記Dレトロインベルソ型ペプチドが、5を含むそれ以下の、10を含むそれ以下の、15を含むそれ以下の、20を含むそれ以下の、25を含むそれ以下の、30を含むそれ以下の、35を含むそれ以下の、40を含むそれ以下の、45を含むそれ以下の、50を含むそれ以下の、60を含むそれ以下の、70を含むそれ以下の、80を含むそれ以下の、90を含むそれ以下の、または100を含むそれ以下のアミノ酸残基の長さを有する、請求項55~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記Dレトロインベルソ型ペプチドが、最大で0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55または60%の、Lアミノ酸残基であるアミノ酸残基を有する、請求項55~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記Dレトロインベルソ型ペプチドが、100%のDアミノ酸残基を有する、請求項55~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記Dレトロインベルソ型ペプチドが、PPRRRQRRKKRG(SEQ ID NO:10)、GALFLGFLGA AGSTMGAWSQ PKKKRKV(SEQ ID NO:11)、KETWWETWWT EWSQPKKKRKV(SEQ ID NO:12)、Ac-GLWRALWRLLRSLWRLLWRA-Cya(SEQ ID NO:13)、およびオクタアルギニンから選択される1つまたは複数の機能的ドメインを含む、請求項55~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記Dレトロインベルソ型ペプチドが、LTLRKEPASE IAQSILEAYS QNGWANRRSG GKRP(SEQ ID NO:5)、LTLRKEPASE IAQSILEAYS QNGWANRRSG GKRPPPRRRQ RRKKRG(SEQ ID NO:6)、またはSEIAQSILEAYSQNGW(SEQ ID NO:7)を含む、請求項56~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
請求項1~63のいずれか1項に記載の方法により生成される条件付き活性タンパク質。
【請求項65】
抗体である、請求項64に記載の条件付き活性タンパク質。
【請求項66】
前記抗体が、一本鎖抗体または抗体断片である、請求項65に記載の条件付き活性タンパク質。
【請求項67】
前記抗体が、ヒト化抗体である、請求項65に記載の条件付き活性タンパク質。
【請求項68】
前記抗体が、二重特異性抗体である、請求項65に記載の条件付き活性タンパク質。
【請求項69】
前記抗体が、T細胞のキメラ抗原受容体の一部として操作されるのに適する、請求項64~68のいずれか1項に記載の条件付き活性タンパク質。
【請求項70】
受容体、調節タンパク質、可溶性タンパク質、サイトカイン、受容体断片、調節タンパク質断片、可溶性タンパク質断片、およびサイトカイン断片から選択される、請求項64に記載の条件付き活性タンパク質。
【請求項71】
環状ペプチドである、請求項64に記載の条件付き活性タンパク質。
【請求項72】
前記環状ペプチドが、約5~約500アミノ酸、約8~約300アミノ酸、約8~約200アミノ酸、約10~約100アミノ酸、または約10~約50アミノ酸の長さを有する、請求項71に記載の条件付き活性タンパク質。
【請求項73】
前記環状ペプチドが、少なくとも1種の非天然由来アミノ酸を含む、請求項71に記載の条件付き活性タンパク質。
【請求項74】
リンカーによりマスキング部分にコンジュゲートされた条件付き活性抗体である、請求項64に記載の条件付き活性タンパク質。
【請求項75】
前記マスキング部分が、前記標的への結合における前記条件付き活性抗体の活性を少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%低減する、請求項74に記載の条件付き活性タンパク質。
【請求項76】
前記リンカーが、前記条件付き活性抗体の可変領域に共有結合される、請求項74~75のいずれか1項に記載の条件付き活性タンパク質。
【請求項77】
前記リンカーが、可撓性領域および切断部位を含む、請求項74~76のいずれか1項に記載の条件付き活性タンパク質。
【請求項78】
前記切断部位が、老化細胞の細胞外環境においてプロテアーゼにより切断され得る、請求項74~77のいずれか1項に記載の条件付き活性タンパク質。
【請求項79】
前記プロテアーゼが、ADAM10、ADAM12、ADAM17、ADAMTS、ADAMTS5、BACE、カスパーゼ1~14、カテプシンA,カテプシンB、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンK、カテプシンS、FAP、MT1-MMP、グランザイムB、グアニジノベンゾアターゼ、へプシン、ヒト好中球エラスターゼ、レグマイン、マトリプターゼ2、メプリン、MMP1~17、MT-SP1、ネプリライシン、NS3/4A、プラスミン、PSA、PSMA、TRACE、TMPRSS 3、TMPRSS 4、およびuPAのうちの少なくとも1種から選択される、請求項78に記載の条件付き活性タンパク質。
【請求項80】
リンカーにより細胞傷害剤、細胞増殖抑制剤、または抗増殖剤にコンジュゲートされる、請求項64~73のいずれか1項に記載の条件付き活性タンパク質。
【請求項81】
前記リンカーが、老化細胞の細胞外環境においてプロテアーゼの切断部位を含む、請求項80に記載の条件付き活性タンパク質。
【請求項82】
前記プロテアーゼが、ADAM10、ADAM12、ADAM17、ADAMTS、ADAMTS5、BACE、カスパーゼ1~14、カテプシンA,カテプシンB、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンK、カテプシンS、FAP、MT1-MMP、グランザイムB、グアニジノベンゾアターゼ、へプシン、ヒト好中球エラスターゼ、レグマイン、マトリプターゼ2、メプリン、MMP1~17、MT-SP1、ネプリライシン、NS3/4A、プラスミン、PSA、PSMA、TRACE、TMPRSS 3、TMPRSS 4、およびuPAのうちの少なくとも1種から選択される、請求項81に記載の条件付き活性タンパク質。
【請求項83】
前記抗増殖剤が、化学療法剤である、請求項80に記載の条件付き活性タンパク質。
【請求項84】
請求項64~83のいずれか1項に記載の条件付き活性タンパク質の有効量と、医薬的に許容できる担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項85】
請求項64~83のいずれか1項に記載の条件付き活性タンパク質または請求項84に記載の医薬組成物を、対象に投与するステップを含む、加齢および老化細胞関連疾患または障害のうちの1つの処置の方法。
【請求項86】
前記老化細胞関連疾患または障害が、認知疾患、心臓血管疾患、代謝疾患および障害、運動機能疾患および障害、脳血管疾患、気腫、骨関節炎、肺疾患、炎症/自己免疫疾患および障害、眼科疾患または障害、転移、化学療法または放射線療法の副作用、加齢関連疾患および障害、線維性疾患および障害のうちの少なくとも1つから選択される、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
親有機化合物から約3000a.m.u未満の分子量を有する条件付き活性分子を作製するための方法であって、
1種または複数の部分的荷電または荷電基を前記親有機化合物に導入することにより前記親有機化合物を修飾して、1種または複数の修飾された有機化合物を生成するステップと;
前記正常な生理学的条件下でのアッセイにおける活性と比較して、異常な条件下での前記アッセイにおいてより高い同活性を示す前記修飾された有機化合物を選択するステップと、
を含む、方法。
【請求項88】
親有機化合物から約3000a.m.u未満の分子量を有する条件付き活性分子を作製するための方法であって、
前記親有機化合物から1種または複数の部分的荷電または荷電基を除去することにより前記親有機化合物を修飾して、1種または複数の修飾された有機化合物を生成するステップと;
前記正常な生理学的条件下でのアッセイにおける活性と比較して、異常な条件下での前記アッセイにおいてより高い同活性を示す前記修飾された有機化合物を選択するステップと、
を含む、方法。
【請求項89】
親有機化合物から約3000a.m.u未満の分子量を有する条件付き活性分子を作製するための方法であって、
前記親有機化合物の1つまたは複数の基を1種または複数の部分的荷電または荷電基で置換えることにより前記親有機化合物を修飾して、1種または複数の修飾された有機化合物を生成するステップと;
前記正常な生理学的条件下でのアッセイにおける活性と比較して、異常な条件下での前記アッセイにおいてより高い同活性を示す前記修飾された有機化合物を選択するステップと、
を含む、方法。
【請求項90】
前記親有機化合物が、約100a.m.u~約3000a.m.u、または約100a.m.u~約1500a.m.u、または約150a.m.u~約1250a.m.u、または約300a.m.u~約1100a.m.u、または約400a.m.u~約1000a.m.uの範囲内の分子量を有する、請求項87~89のいずれか1項に記載の方法。
【請求項91】
前記異常な条件が、老化細胞の細胞外条件の値であり、前記正常な生理学的条件が、正常細胞の同細胞外条件の異なる値である、請求項87~90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
前記異常な条件が、約5.0~約7.0、または約5.5~約7.0、または約6.0~約7.0、または約6.2~約6.8の範囲内のpHであり、前記正常な生理学的条件が、約7.0~約7.8、または約7.2~約7.8、または約7.2~約7.6の範囲内のpHである、請求項87~91のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
本開示は、老化細胞を処置もしくは浄化する分野、および/または老化細胞に関係する疾患もしくは障害を処置する分野に関する。詳細には本開示は、老化細胞を標的とする条件付き活性タンパク質に関し、そしてそのような条件付き活性タンパク質を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
開示の背景
老化細胞は、代謝活性があるが、細胞増殖周期のG1期に捕らえられ、寿命は複数の優性遺伝子により制御される(Stanulis-Praeger,Mech.Ageing Dev.,vol.38,pp.1-48,1987)。老化細胞は、複数の重要な様相が静止細胞および最終分化細胞と異なり、拡張、平坦化および顆粒性増大(increased granularity)などの特徴的な形態変化を有する(Dimri et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, vol. 92, pp.9363-9367, 1995)。老化細胞は、有糸分裂促進因子により刺激されたとしても、分裂しない(Campisi, Trends Cell Biol., vol. 11, pp. S27-S31, 2001)。老化は、p53および/またはRb、ならびにそれらの調節因子、例えばp16INK4a、p21、およびARFの活性化を含む。p53またはRbが不活性化された場合を除き、老化は、一般に不可逆性である。
【0003】
老化細胞は、高レベルのプラスミノーゲンアクチベータインヒビター(PAI)を発現し、pH6でβ-ガラクトシダーゼ活性への染色を示す(Sharpless et al., J. Clin. Invest., vol. 113, pp.160-168, 2004)。不可逆性のG1停止は、Rbをリン酸化するサイクリン依存性キナーゼ(Cdk)複合体の不活性化により媒介される。P21が、老化細胞中に蓄積し、CdK4-CdK6を阻害する。P16もまた、CdK4-CdK6を阻害し、β-ガラクトシダーゼ活性および細胞容積に比例して、老化細胞に蓄積する(Stein et al., Mol. Cell. Biol., vol. 19, pp.2109-2117, 1999)。エビデンスにより、p21が老化の開始時に発現されるが老化の維持には必要とされず、p16の発現が一旦開始した老化の維持を支援することが示唆されている。
【0004】
幾つかの例において、老化は、各細胞分裂でのテロメアの短縮化進行に関係するため、特定の染色体テロメアが、危機的な長さに達すると、老化が惹起される(Mathon and Lloyd, Nat. Rev. Cancer, vol. 3, pp.203-213, 2001; Martins, U. M. Exp Cell Res., vol. 256, pp.291-299, 2000)。老化は、テロメアを伸長するテロメラーゼの発現により排除される可能性がある。例えばヒト線維芽細胞は、トランスフェクトされてテロメラーゼを発現すると、線維芽細胞が、無期限に複製を受ける。ほとんどの癌細胞は、テロメアの長さを維持するためにテロメラーゼを発現し、無期限に複製する。テロメラーゼを発現しない少数の癌細胞は、テロメアの伸長のための代替的メカニズム(ALT)を有する。
【0005】
他の老化原因もある。集合的にこれらの他の原因は、多くの場合、ストレス誘導性早期細胞老化(SIPS)と称される。酸化ストレスは、テロメアを短縮し、それにより老化を誘導し得る(von Zglinicki, Trends Biochem. Sci., vol. 27, pp.339-344, 2002)。過酸素症は、老化を誘導することが示されている。早期~中期のG1期にあるヒト線維芽細胞のガンマ線照射は、p53依存性に老化を誘発する(Di Leonardo et al., Genes Dev., vol. 8, pp.2540-2551, 1994)。紫外線照射もまた、老化を誘発する。老化を誘発し得る他の物質としては、過酸化水素(Krtolica et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, vol. 98, pp.12072-12077, 2001)、酪酸ナトリウム、5-アザシタジン、およびRas発癌遺伝子でのトランスフェクション(Tominaga, Mech. Ageing Dev., vol. 123, pp.927-936, 2002)が挙げられる。ドキソルビシン、シスプラチン、および他の宿主を含む化学療法剤が、癌細胞において老化を誘導することが示されている(Roninson, Cancer Res., vol. 63, pp.2705-2715, 2003)。5-ブロモデオキシウリジンの処置は、正常および悪性腫瘍細胞の両方において老化をもたらす(Michishita et al., J. Biochem., vol. 126, pp.1052-1059, 1999)。概して言えば、DNAを損傷する薬剤は、老化を誘導することが可能である。
【0006】
老化と加齢の間の関連性が、エビデンスで示唆されている。高齢のドナーからの培養細胞は、若齢のドナーの細胞よりも少ない増殖周期の後に老化を示す(Martin et al., Lab. Invest., vol. 23, pp.86-92, 1970; Schneider et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, vol. 73, pp.3584-3588, 1976)。短命の種からの細胞は、長命の種からの細胞よりも少ない増殖周期の後に老化する(Rohme, D., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, vol. 78, pp.5009-3320, 1981)。ワーナー症候群などの遺伝的早老症候群のドナーからの培養細胞は、年齢が一致する対照からの細胞よりも少ない増殖周期の後に老化を示す。
【0007】
老化は、様々な年齢関係の疾患および障害に関連付けられた老化細胞に機能的変化を付与する(Chang et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, vol. 97, pp.4291-4296, 2000)。老化細胞は、個体が加齢すると個体の組織および臓器中に蓄積し、年齢関係の病態の部位に見出される。老化細胞が、年齢関係の健康減退の特定態様において因果的に関連し、特定疾患に寄与し得ること、ならびに必要となる生命維持的な化学療法および放射線処置の結果としても誘導されることを前提にすると、老化細胞の存在は、世界中の何百万もの患者に有害な影響を有し得る。広い範囲で、老化細胞の選択的排除が年齢関係の疾患および障害を予防および処置し得ると、考えられている。
【0008】
老化細胞はまた、腫瘍形成を促進し得る。老化間質細胞は、近隣の上皮細胞へのパラクリン効果を発揮する腫瘍促進因子を発現する。これらの効果としては、分裂促進性および抗アポトーシス性が挙げられる(Chang et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, vol. 97, pp.4291-4296, 2000)。老化線維芽細胞は、マウスにおいて前悪性および悪性上皮細胞を刺激するが正常な上皮細胞を刺激せずに腫瘍を形成することが示されている。線維芽細胞の10%しか老化しない場合にこのことが起こった(Krtolica et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, vol. 98, pp.12072-12077, 2001)。老化細胞により分泌される腫瘍促進因子は、一部がP21waf1/cip1/sdi1により媒介される(Roninson, Cancer Res., vol. 63, pp.2705-2715, 2003)。老化間質細胞の閾値は、隣接する前悪性上皮細胞を生存、遊走および分裂させる環境を提供するようである(Campisi, Nat. Rev. Cancer, vol. 3, pp. 339-349, 2003)。
【0009】
結果として、老化細胞を標的とする治療が、老化関連疾患および障害のための有望な処置選択である。US2016/0038576には、年齢関係の疾患および障害、ならびに老化細胞の存在に関連するまたはその存在により増悪される他の疾患および障害の処置および防御のために老化細胞に特異的に向けられる適合免疫応答を誘導するための免疫原性組成物が開示されている。該免疫原性組成物は、老化細胞関連の抗原、老化細胞関連抗原をコードするポリヌクレオチド、および対象への投与の際に使用するための該ポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターのうちの少なくとも1つまたは複数を含む。
【0010】
WO2015116740には、老化細胞関連疾患および障害の処置のために非老化細胞に比較して老化細胞を選択的に殺傷する小分子老化細胞除去薬の治療有効量を投与する方法が開示されている。該方法により処置可能な老化細胞関連疾患および障害としては、アテローム性硬化症などの動脈硬化、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、骨関節炎、老化関連の眼科疾患および障害、ならびに老化関連の皮膚疾患および障害に関連する、または誘発される心臓血管疾患および障害が挙げられる。
【0011】
US2015/0064137には、老化細胞の選択的排除に有用なポリペプチド、およびポリペプチドを含むウイルスが開示されている。該ポリペプチドおよびウイルスは、老化細胞においてアポトーシスを誘導し得る。該ポリペプチドは、プロアポトーシス遺伝子の産物から選択される。該ウイルスは、p16プロモーターにより発現が調節されるプロアポトーシス遺伝子を含む。該p16プロモーターは、古典的p16プロモーターまたは非古典的p16プロモーターであり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これらの治療薬は、老化細胞の1種または複数のタンパク質を標的として、老化細胞を殺傷または除去する。しかし、老化細胞のこれらの標的タンパク質は、望ましくない副作用を誘導し得る他のタイプの細胞にも存在する場合がある。したがって、老化細胞上の標的に優先的および/または特異的に結合しながら、他のタイプの細胞上にある同じ標的への結合を最小限にする、または排除する治療性タンパク質の分類を開発することが、有利となろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
開示の概要
一実施形態において、該開示は、老化細胞に関連する標的に結合する条件付き活性タンパク質を、該老化細胞に関連する該標的に結合する親タンパク質から生成する方法であって、
(i)1つまたは複数の進化的技術(evolutionaly techniques)を利用して該親タンパク質をコードするDNAを進化させて、突然変異体DNAを作出するステップと;
(ii)該突然変異体DNAを発現させて突然変異体タンパク質を得るステップと;
(iii)該突然変異体タンパク質を、該老化細胞の細胞外条件下でのアッセイおよび正常な生理学的条件下でのアッセイに供するステップと;
(iv)(a)アッセイにおける該親タンパク質の活性に比較した、該正常な生理学的条件下での同アッセイにおける同活性の低下、および該正常な生理学的条件下でのアッセイにおける該条件付き活性タンパク質の活性に比較した、該老化細胞の細胞外条件下での該アッセイにおける同活性の上昇;ならびに
(b)アッセイにおける該親タンパク質の活性に比較した、該正常な生理学的条件下での同アッセイにおける同活性の低下、および該老化細胞の細胞外条件下でのアッセイにおける該親タンパク質の活性に比較した、該老化細胞の細胞外条件下での該アッセイにおける同活性の上昇、
のうちの少なくとも1つを示す該突然変異体タンパク質から該条件付き活性タンパク質を選択するステップと;
を含む、方法を提供する。
【0014】
幾つかの実施形態において、該親タンパク質は、酵素、抗体、受容体、リガンド、酵素断片、抗体断片、受容体断片、およびリガンド断片から選択されてもよい。
【0015】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該活性は、該標的への結合活性であってもよい。
【0016】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該親タンパク質は、酵素であってもよく、該活性は、老化細胞の少なくとも一部を基質として用いる酵素活性である。
【0017】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該条件付き活性タンパク質は、環状ペプチドであってもよい。該環状ペプチドは、約5~約500アミノ酸、または約10~約50アミノ酸の長さを有していてもよい。
【0018】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該標的は、老化細胞の外面に配置された表面分子であってもよい。前述の実施形態のそれぞれにおいて、該表面分子は、老化細胞の細胞膜タンパク質であってもよい。前述の実施形態のそれぞれにおいて、該標的は、APC、ARHGAP1、ARMCX-3、AXL、B2MG、BCL2L1、CAPNS2、CD261、CD39、CD54、CD73、CD95、CDC42、CDKN2C、CLYBL、COPG1、CRKL、DCR1、DCR2、DCR3、DEP1、DGKA、EBP、EBP50、FASL、FGF1、GBA3、GIT2、ICAM1、ICAM3、IGF1、ISG20、ITGAV、KITLG、ラミンB1、LANCL1、LCMT2、LPHN1、MADCAM1、MAG、MAP3K14、MAPK、MEF2C、miR22、MMP3、MTHFD2、NAIP、NAPG、NCKAP1、ネクチン4、NNMT、NOTCH3、NTAL、OPG、OSBPL3、p16、p16INK4a、p19、p21、p53、PAI1、PARK2、PFN1、PGM、PLD3、PMS2、POU5F1、PPP1A、PPP1CB、PRKRA、PRPF19、PRTG、RAC1、RAPGEF1、RET、Smurf2、STX4、VAMP3、VIT、VPS26A、WEE1、YAP1、YH2AX、およびYWHAEから選択されてもよい。加えて、該標的が前述のものの任意の組み合わせであり得ることが、認識されるべきである。
【0019】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該正常な生理学的条件下でのアッセイにおける該条件付き活性タンパク質の活性に対する、老化細胞の細胞外条件下での該アッセイにおける該条件付き活性タンパク質の活性の比は、少なくとも約1.3:1、または少なくとも約2:1、または少なくとも約3:1、または少なくとも約4:1、または少なくとも約5:1、または少なくとも約6:1、または少なくとも約7:1、または少なくとも約8:1、または少なくとも約9:1、または少なくとも約10:1、または少なくとも約11:1、または少なくとも約12:1、または少なくとも約13:1、または少なくとも約14:1、または少なくとも約15:1、または少なくとも約16:1、または少なくとも約17:1、または少なくとも約18:1、または少なくとも約19:1、または少なくとも約20:1、または少なくとも約30:1、または少なくとも約40:1、または少なくとも約50:1、または少なくとも約60:1、または少なくとも約70:1、または少なくとも約80:1、または少なくとも約90:1、または少なくとも約100:1であってもよい。
【0020】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該老化細胞の細胞外条件は、約5.5~約7.0、または約6.0~約7.0、または約6.2~約6.8の範囲内のpHであってもよい。
【0021】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該正常な生理学的条件は、約7.2~約7.8、または約7.2~約7.6、または約7.4~約7.6の範囲内のpHであってもよい。
【0022】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該老化細胞の細胞外条件は、デオキシヌクレオチドの正常な生理学的濃度よりも低濃度の同デオキシヌクレオチドであってもよい。
【0023】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該老化細胞の細胞外条件は、酸素の正常な生理学的濃度よりも低濃度の酸素であってもよい。
【0024】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該老化細胞の細胞外条件は、NAD+/NADHの正常な生理学的比よりも低い比のNAD+/NADHであってもよい。
【0025】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該老化細胞の細胞外条件は、ヒポタウリン、システインスルフィン酸、システイン-グルタチオンジスルフィド、ガンマ-グルタミルアラニン、ガンマ-グルタミルメチオニン、ピリドキサート、ガンマ-グルタミルグルタミン、およびアラニンから選択されるレドックスホメオスタシス代謝産物の正常な生理学的濃度に比較して高濃度の同レドックスホメオスタシス代謝産物の少なくとも1種であってもよい。
【0026】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該老化細胞の細胞外条件は、3-ウレイドプロピオナート、ウラート、7-メチルグアニン、およびヒポキサンチンから選択される少なくとも1種のヌクレオチド代謝産物の正常な生理学的濃度に比較して高濃度の同ヌクレオチド代謝産物であってもよい。
【0027】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該老化細胞の細胞外条件は、チミジンの正常な生理学的濃度に比較して低濃度のチミジンであってもよい。
【0028】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該老化細胞の細胞外条件は、グリシルイソロイシン、グリシルバリン、グリシルロイシン、イソロイシルグリシン、およびバリルグリシンから選択される少なくとも1種のジペプチドの正常な生理学的濃度に比較して低濃度の同ジペプチドであってもよい。
【0029】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該老化細胞の細胞外条件は、リノレアート、ジホモリノレアート、および10-ヘプタデカノアートから選択される少なくとも1種の脂肪酸の正常な生理学的濃度に比較して低濃度の該脂肪酸であってもよい。
【0030】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該老化細胞の細胞外条件は、2-ヒドロキシパルミタート、2-ヒドロキシステアラート、3-ヒドロキシデカノアート、3-ヒドロキシオクタノアート、およびグリセロホスホリルコリンから選択される少なくとも1種のリン脂質代謝産物の正常な生理学的濃度に比較して高濃度の該リン脂質代謝産物であってもよい。
【0031】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該老化細胞の細胞外条件は、アラニン、C-グリコシルトリプトファン、キヌレニン、ジメチルアルギニン、およびオルチチン(orthithine)から選択される少なくとも1種のアミノ酸代謝産物の正常な生理学的濃度に比較して高濃度の該アミノ酸代謝産物であってもよい。
【0032】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該老化細胞の細胞外条件は、フェニルピルバートの正常な生理学的濃度に比較して低濃度の該フェニルピルバートであってもよい。
【0033】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該老化細胞の細胞外条件は、フマラート、マロナート、エイコサペンタエノアート、およびシトラートから選択される少なくとも1種の代謝産物の正常な生理学的濃度に比較して高濃度の該代謝産物であってもよい。
【0034】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該老化細胞の細胞外条件は、ホスホコリンに対するグリセロホスホコリンの正常な生理学的比に比較して高い比のホスホコリンに対するグリセロホスホコリンであってもよい。
【0035】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該老化細胞の細胞外条件は、該老化細胞により分泌されるタンパク質の正常な生理学的濃度に比較して高濃度の前記タンパク質であってもよく、ここで該老化細胞により分泌される前記タンパク質は、GM-CSF、GROa、GRC-α、β、γ、IGFBP-7、IL-lα、IL-6、IL-7、IL-8、MCP-1、MCP-2、MIP-la、MMP-1、MMP-2、MMP-10、MMP-3、アンフィレグリン、ENA-78、エオタキシン-3、GCP-2、GITR、HGF、ICAM-1、IGFBP-1、IGFBP-2、IGFBP-3、IGFBP-4、IGFBP-5、IGFBP-6、IL-13、IL-Iβ、MCP-4、MIF、MIP-3a、MMP-12、MMP-13、MMP-14、NAP2、オンコスタチンM、オステオプロテゲリン、PIGF、RANTES、sgpl30、TIMP-2、TRAIL-R3、Acrp30、アンギオゲニン、AXL、bFGF、BLC、BTC、CTACK、EGF-R、Fas、FGF-7、G-CSF、GDNF、HCC-4、I-309、IFN-γ、IL-1Rl、IL-11、IL-15、IL-2R-a、IL-6R、I-TAC、レプチン、LIF、MSP-a、PAI-1、PAI-2、PDGF-BB、SCF、SDF-1、sTNF RI、sTNF RII、トロンボポエチン、TIMP-1、tPA、uPA、uPAR、VEGF、MCP-3、IGF-1、TGF-β3 、MIP-1-デルタ、IL-4、IL-16、BMP-4、MDC、IL-10、Fit-3リガンド、CNTF、EGF、BMP-6およびそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つから選択される。
【0036】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該正常な生理学的条件下でのアッセイおよび該老化細胞の細胞外条件下でのアッセイは、無機化合物、イオンおよび有機分子から選択される少なくとも1種の成分を含有するアッセイ溶液中で実施されてもよい。この実施形態において、該少なくとも1種の成分は、該正常な生理学的条件下でのアッセイおよび該老化細胞の細胞外条件下でのアッセイの両方でアッセイ溶液中に実質的に同じ濃度を有していてもよい。これらの実施形態において、該少なくとも1種の成分は、無機化合物であってもよく、ホウ酸、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸二アンモニウム、硫酸マグネシウム、リン酸一アンモニウム、リン酸一カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸銅、硫酸鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸マグネシウム、硝酸カルシウム、カルシウムキレート、銅キレート、鉄キレート、鉄キレート、マンガンキレート、亜鉛キレート、モリブデン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウム、重炭酸カリウム、硝酸カリウム、塩酸、二酸化炭素、硫酸、リン酸、炭酸、尿酸、塩化水素、および尿素から選択される。これらの実施形態において、該少なくとも1種の成分は、イオンであってもよく、リンイオン、硫黄イオン、塩化物イオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、鉄イオン、亜鉛イオン、および銅イオンから選択される。これらの実施形態において、該少なくとも1種の成分は、2~7.0mg/dLの濃度範囲内の尿酸、8.2~11.6mg/dLの濃度範囲内のカルシウムイオン、355~381mg/dLの濃度範囲内の塩化物イオン、0.028~0.210mg/dLの濃度範囲内の鉄イオン、12.1~25.4mg/dLの濃度範囲内のカリウムイオン、300~330mg/dLの濃度範囲内のナトリウムイオン、および15~30mMの濃度範囲内の炭酸のうちの1つまたは複数から選択されてもよい。これらの実施形態において、該少なくとも1種の成分は、有機分子であってもよく、ヒスチジン、アラニン、イソロイシン、アルギニン、ロイシン、アスパラギン、リシン、アスパラギン酸、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニン、グルタミン、トリプトファン、グリシン、バリン、ピロリシン、プロリン、セレノシステイン、セリン、およびチロシンから選択されるアミノ酸である。これらの実施形態において、少なくとも1種の成分は、クエン酸、α-ケトグルタル酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、乳酸、ピルビン酸、α-ケトン酸、酢酸、および揮発性脂肪酸から選択される有機酸であってもよい。これらの実施形態において、該少なくとも1種の成分は、グルコース、ペントース、ヘキソース、キシロース、リボース、マンノース、ガラクトース、ラクトース、GlcNAcβ1-3Gal、Galα1-4Gal、Manα1-2Man、GalNAcβ1-3Gal、ならびにO-、N-、C-、およびS-グリコシドから選択される糖であってもよい。これらの実施形態において、該少なくとも1種の成分は、マグネシウムイオン、硫酸イオン、重硫酸イオン、炭酸イオン、重炭酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン、過硫酸イオン、一過硫酸イオン、ホウ酸イオン、およびアンモニウムイオンから選択されてもよい。
【0037】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該老化細胞の細胞外条件は、約5.5~約7.0の範囲内の第一のpHであってもよく、該正常な生理学的条件は、約7.2~約7.8の範囲内の第二のpHであってもよく、該1つまたは複数のアッセイは、900a.m.u未満の分子量と、前記第一のpHから最大0.5、1、2、3、または4pH単位離れたpKaと、を有する少なくとも1種の分子種を含有するアッセイ溶液中で実施されてもよい。
【0038】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該老化細胞の細胞外条件は、約5.5~約7.0の範囲内の第一のpHであってもよく、該正常な生理学的条件は、約7.2~約7.8の範囲内の第二のpHであってもよく、該1つまたは複数のアッセイは、900a.m.u未満の分子量を有する少なくとも1種の分子種を含有するアッセイ溶液中で実施されてもよく、前記分子種は、前記第一のpHと前記第二のpHの間にpKaを有していてもよい。
【0039】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該老化細胞の細胞外条件は、約5.5~約7.0の範囲内の第一のpHであってもよく、該正常な生理学的条件は、約7.2~約7.8の範囲内の第二のpHであってもよく、該1つまたは複数のアッセイは、ヒスチジン、ヒスタミン、水素化アデノシン二リン酸塩、水素化アデノシン三リン酸塩、クエン酸塩、重炭酸塩、酢酸塩、乳酸塩、二硫化物、硫化水素、アンモニウム、およびリン酸二水素塩から選択される少なくとも1種の分子種を含有するアッセイ溶液中で実施されてもよい。
【0040】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該選択のステップ(iv)は、(a)該アッセイにおける親タンパク質の活性に比較した、正常な生理学的条件下での同アッセイにおける同活性の低下、および正常な生理学的条件下での該アッセイにおける条件付き活性タンパク質の活性に比較した、該老化細胞の細胞外条件下での該アッセイにおける同活性の上昇、を示す条件付き活性タンパク質を選択することを含んでいてもよい。
【0041】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該選択のステップ(iv)は、(b)該アッセイにおける親タンパク質の活性に比較した、正常な生理学的条件下での同アッセイにおける同活性の低下、および該老化細胞の細胞外条件下での該アッセイにおける親タンパク質の活性に比較した、該老化細胞の細胞外条件下での該アッセイにおける同活性の上昇、を示す条件付き活性タンパク質を選択することを含んでいてもよい。
【0042】
別の実施形態において、本開示は、前述の方法のいずれかにより生成された条件付き活性タンパク質を提供する。該条件付き活性タンパク質は、抗体であってもよい。該抗体は、一本鎖抗体または抗体断片であってもよい。該抗体は、T細胞のキメラ抗原受容体の一部として操作されるのに適し得る。該抗体は、ヒト化抗体、二重特異性抗体、または多重特異性抗体であってもよい。
【0043】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該条件付き活性タンパク質は、受容体、調節タンパク質、可溶性タンパク質、サイトカイン、受容体断片、調節タンパク質断片、可溶性タンパク質断片、およびサイトカイン断片から選択されてもよい。
【0044】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該条件付き活性タンパク質は、条件付き活性抗体であってもよく、該条件付き活性抗体は、リンカーによりマスキング部分にコンジュゲートされていてもよい。該マスキング部分は、該標的に対する該条件付き活性抗体の結合活性を少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%低減する。
【0045】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該リンカーは、該条件付き活性抗体の可変領域に共有結合されていてもよい。
【0046】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該マスキング部分は、該条件付き活性抗体の可変領域に特異的に結合してもよい。
【0047】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該リンカーは、可撓性領域および切断部位を含んでいてもよい。
【0048】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該切断部位は、該老化細胞の細胞外環境においてプロテアーゼにより切断されてもよい。
【0049】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該条件付き活性タンパク質は、リンカーにより、細胞傷害剤、細胞増殖抑制剤、または抗増殖剤にコンジュゲートされてもよい。
【0050】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該リンカーは、該老化細胞の細胞外環境において、少なくとも1種のプロテアーゼの切断部位を含んでいてもよい。該少なくとも1種のプロテアーゼは、ADAM10、ADAM12、ADAM17、ADAMTS、ADAMTS5、BACE、カスパーゼ1~14、カテプシンA,カテプシンB、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンK、カテプシンS、FAP、MT1-MMP、グランザイムB、グアニジノベンゾアターゼ、へプシン、ヒト好中球エラスターゼ、レグマイン、マトリプターゼ2、メプリン、MMP1~17、MT-SP1、ネプリライシン、NS3/4A、プラスミン、PSA、PSMA、TRACE、TMPRSS 3、TMPRSS 4、およびuPAから選択される。
【0051】
別の実施形態において、本開示は、前述の条件付き活性タンパク質のいずれかの有効量と、医薬的に許容できる担体と、を含む医薬組成物を提供する。
【0052】
さらに別の実施形態において、本開示は、前述の条件付き活性タンパク質のいずれか、または前述の医薬組成物のいずれかを投与するステップを含む、加齢、または老化細胞関連疾患もしくは障害の処置の方法を提供する。前述の実施形態において、該老化細胞関連疾患または障害は、認知疾患、心臓血管疾患、代謝疾患および障害、運動機能疾患および障害、脳血管疾患、気腫、骨関節炎、肺疾患、炎症/自己免疫疾患および障害、眼科疾患または障害、転移、化学療法または放射線療法の副作用、加齢関連疾患および障害、線維性疾患および障害から選択されてもよい。
【0053】
さらに別の実施形態において、本開示は、親有機化合物から約3000a.m.u未満の分子量を有する条件付き活性分子を作製するための方法を提供する。該方法は、1種または複数の部分的荷電または荷電基を該親有機化合物に導入することにより該親有機化合物を修飾して、1種または複数の修飾された有機化合物を生成するステップと、該正常な生理学的条件下での該アッセイにおける活性と比較して、異常な条件下での該アッセイにおいてより高い同活性を示す該修飾された有機化合物を選択するステップと、を含む。
【0054】
さらに別の実施形態において、本開示は、親有機化合物から約3000a.m.u未満の分子量を有する条件付き活性分子を作製するための方法であって、該親有機化合物から1種または複数の部分的荷電または荷電基を除去することにより該親有機化合物を修飾して、1種または複数の修飾された有機化合物を生成するステップと、該正常な生理学的条件下での該アッセイにおける活性と比較して、異常な条件下での該アッセイにおいてより高い同活性を示す該修飾された有機化合物を選択するステップと、を含む、方法を提供する。
【0055】
さらに別の実施形態において、本開示は、親有機化合物から約3000a.m.u未満の分子量を有する条件付き活性分子を作製するための方法であって、該親有機化合物の1つまたは複数の基を1種または複数の部分的荷電または荷電基で置換えることにより該親有機化合物を修飾して、1種または複数の修飾された有機化合物を生成するステップと;該正常な生理学的条件下での該アッセイにおける活性と比較して、異常な条件下での該アッセイにおいてより高い同活性を示す該修飾された有機化合物を選択するステップと、を含む、方法を提供する。
【0056】
前述の方法のそれぞれにおいて、該親有機化合物は、約100a.m.u~約3000a.m.u、または約100a.m.u~約1500a.m.u、または約150a.m.u~約1250a.m.u、または約300a.m.u~約1100a.m.u、または約400a.m.u~約1000a.m.uの範囲内の分子量を有していてもよい。
【0057】
前述の方法のそれぞれにおいて、該異常な条件は、老化細胞の細胞外条件の値であってもよく、該正常な生理学的条件は、正常細胞の同細胞外条件の異なる値である。
【0058】
前述の方法のそれぞれにおいて、該異常な条件は、約5.0~約7.0、または約5.5~約7.0、または約6.0~約7.0、または約6.2~約6.8の範囲内のpHであってもよく、該正常な生理学的条件は、約7.0~約7.8、または約7.2~約7.8、または約7.2~約7.6の範囲内のpHである。
【0059】
前述の方法のそれぞれにおいて、該条件付き活性タンパク質は、毒性薬剤、放射性薬剤、またはDレトロインベルソ型ペプチドから選択される薬剤にコンジュゲートされていてもよい。
【0060】
前述の実施形態のそれぞれにおいて、該Dレトロインベルソ型ペプチドは、LTLRKEPASE IAQSILEAYS QNGWANRRSG GKRP(SEQ ID NO:5)、LTLRKEPASE IAQSILEAYS QNGWANRRSG GKRPPPRRRQ RRKKRG(SEQ ID NO:6)、またはSEIAQSILEAYSQNGW(SEQ ID NO:7)を含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】pH7.4を超える、pH6.0での実施例9で選択された条件付き活性抗体の選択性を示したプロットである。
【
図2】3種のアミノ酸残基で2つの塩架橋を形成し、デオキシヘモグロビンのT四次構造を安定化して、酸素へのより低い親和性を導く、デオキシヘモグロビンにおける塩架橋の形成を示した図解である。
【
図3】キメラ抗原受容体(CAR)の構造を示した図解である。
【
図4】異なる緩衝溶液中でアッセイされた抗原に対する条件付き活性抗体の結合活性を示す。
【
図5】条件付き活性抗体の結合活性に及ぼすクレブス緩衝剤の組成変更の影響を示す。
【
図6】3種の異なる条件付き活性抗体の結合活性が、実施例12に記載される通り、H7.4での重炭酸塩の存在および濃度に依存したことを示す。
【
図7】天然または野生型ペプチドのDレトロインベルソ型(DRI)ペプチドの設計原理を示す。
【
図8】FOXO4をはじめとするFOXOファミリーを調節するシグナル伝達経路を示す。「+p」はリン酸化を示し、「-p」は脱リン酸化を示し、「+m」はメチル化を示し、矢印は活性化を示し、先端に交差するバーの付いた線は阻害を示し、それぞれが標的遺伝子に関係付けられている。
【
図9B】1μMパルボシクリブイセチオン酸塩で処置されたMCF-7細胞を示す。
【
図9C】蛍光活性化セルソーティング(FACS)による未処置のMCF-7細胞と、処置されたMCF-7細胞の分離を示す。
【
図9D】未処置のMCF-7細胞およびパルボシクリブイセチオン酸塩で処置されたMCF-7細胞の標的発現プロファイルを示す。
【
図10A】未処置のMDA-MB231細胞を示す。
【
図10B】1μMパルボシクリブイセチオン酸塩で処置されたMDA-MB231細胞を示す。
【
図10C】FACSによる、未処置のMDA-MB231細胞と、パルボシクリブイセチオン酸塩で処置されたMDA-MB231細胞の分離を示す。
【
図10D】未処置のMDA-MB231細胞およびパルボシクリブイセチオン酸塩で処置されたMDA-MB231細胞の標的発現プロファイルを示す。
【
図11A】未処置のMDA-MB468細胞を示す。
【
図11B】1μMパルボシクリブイセチオン酸塩で処置されたMDA-MB468細胞を示す。
【
図11C】未処置のMDA-MB468細胞と、パルボシクリブイセチオン酸塩で処置されたMDA-MB468細胞がFACSにより分離されなかったことを示す。
【
図11D】未処置のMDA-MB468細胞と、パルボシクリブイセチオン酸塩で処置されたMDA-MB468細胞で類似の標的発現プロファイルを示す。
【
図12A】未処置のMDA-MB231細胞を示す。
【
図12B】パルボシクリブイセチオン酸塩で処置されたMDA-MB231細胞を示す。
【
図13A】未処置のMDA-MB468細胞を示す。
【
図13B】パルボシクリブイセチオン酸塩で処置されたMDA-MB468細胞を示す。
【
図14A】B-gal染色陰性であった未処置のMDA-MB231細胞のFACSセルソーティングを示す。
【
図14B】B-gal染色陰性であったパルボシクリブイセチオン酸塩で処置されたMDA-MB231細胞のFACSセルソーティングを示す。
【
図14C】B-gal染色陽性であった未処置のMDA-MB231細胞のFACSセルソーティングを示す。
【
図14D】B-gal染色陽性であったパルボシクリブイセチオン酸塩で処置されたMDA-MB231細胞のFACSセルソーティングを示す。
【
図15A】未処置のMDA-MB231細胞のFACSソーティングを示す。
【
図15B】パルボシクリブイセチオン酸塩で処置されたMDA-MB231細胞のFACSソーティングを示す。
【
図16A】B-gal染色陰性であった未処置のMDA-MB468細胞のFACSセルソーティングを示す。
【
図16B】B-gal染色陰性であったパルボシクリブイセチオン酸塩で処置されたMDA-MB468細胞のFACSソーティングを示す。
【
図16C】B-gal染色陽性であった未処置のMDA-MB468細胞のFACSセルソーティングを示す。
【
図16D】B-gal染色陽性であったパルボシクリブイセチオン酸塩で処置されたMDA-MB468細胞のFACSセルソーティングを示す。
【
図17A】未処置のMDA-MB468細胞のFACSソーティングを示す。
【
図17B】パルボシクリブイセチオン酸塩で処置されたMDA-MB468細胞のFACSソーティングを示す。
【
図18A】パルボシクリブイセチオン酸塩処置の前および後のMDA-MB231およびMDA-MB468細胞のCD73発現レベルを示す。
【
図18B】抗CD73条件付き活性抗体による老化細胞殺傷を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
定義
本明細書で提供された実施例の理解を容易にするために、特定の頻出する方法および/用語を本明細書内で定義する。
【0063】
用語「約」、「活性」、「薬剤」、「あいまい塩基の要件」、「アミノ酸」、「増幅」、「キメラ特性」、「同族の」、「比較ウィンドウ」、「保存的アミノ酸置換」「~に対応する」、「効果的な分解」、「定義された配列の枠組み」、「消化」、「指向性ライゲーション」、「DNAシャッフル」、「薬物」または「薬物分子」、「有効量」、「電解質」、「エピトープ」、「酵素」、「進化」または「進化すること」、「断片」、「誘導体」、「類似体」、「単一アミノ酸置換の全範囲」、「遺伝子」、「遺伝的不安定性」、「異種性」、「相同性の(homologousまたはhomeologous)」、「工業的適用」、「同一の」または「同一性」、「同一性のエリア」、「単離された」、「単離された核酸」、「リガンド」、「ライゲーション」、「リンカー」または「スペーサー」、「微細環境」、「進化される分子特性」、「突然変異」、「天然由来の」、「正常な生理学的条件」または「野生型操作条件」、「核酸分子」、「核酸分子」、「~をコードする核酸配列」または「~のDNAコード配列」または「~をコードするヌクレオチド配列」、「プロモーター配列」、「酵素(タンパク質)をコードする核酸」または「酵素(タンパク質)をコードするDNA」または「酵素(タンパク質)をコードするポリヌクレオチド」、「特異的な核酸分子種」、「作業中の核酸試料を核酸ライブラリーに組立てること」、「核酸ライブラリー」、「核酸構築物」または「ヌクレオチド構築物」または「DNA構築物」、「構築物」、「オリゴヌクレオチド」または「オリゴ」、「相同性の」、「動作可能に連結された」、「~に動作可能に連結された」、「親ポリヌクレオチドセット」、「患者」または「対象」、「生理学的条件」、「集団」、「代用形」、「プレ代用形(pre-pro-form)」、「擬ランダム」、「擬似反復単位」、「ランダムペプチドライブラリー」、「ランダムペプチド配列」、「受容体」、「組換え体」、「合成の」、「関連のポリヌクレオチド」、「還元的再集合(reductive reassortment)」、「参照配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性のパーセンテージ」、「実質的同一性」、「参照配列」、「反復指数(RI)」、「制限部位」、「選択的ポリヌクレオチド」、「配列同一性」、「類似性」、「特異的に結合する」、「特異的ハイブリダイゼーション」、「特異的ポリヌクレオチド」、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」、「実質的に同一の」、「実質的に純粋な酵素」、「実質的に純粋な」、「処置すること」、「可変セグメント」、「変異体」、「野生型」、「野生型タンパク質」または「野生型生物学的タンパク質」、「親分子」または「標的タンパク質」、「作業すること」、「条件付き活性抗体」、「抗体依存性細胞介在性細胞傷害」または「ADCC」、「癌」および「癌性」、「多重特異性抗体」、「全長抗体」、「ライブラリー」、「組換え抗体」、ならびに「個体」または「対象」の定義は、WO2016/138071と同様である。
【0064】
本明細書で用いられる用語「抗体」は、抗原のエピトープに結合することが可能なインタクトの免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の断片、例えばFab、Fab’、(Fab’)2、Fv、およびSCA断片を指す。誘導される抗体の抗原(例えば、ポリペプチド抗原)に選択的に結合する何らかの能力を保持するこれらの抗体断片は、当該技術分野で周知の方法を利用して作製することができ(例えば、上掲のHarlow and Lane参照)、以下にさらに記載される。請求された発明の実践に有用な抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、sIgA、IgDまたはIgEであってもよい。抗体を用いて、イムノアフィニティークロマトグラフィーにより抗原の調製量を単離することができる。そのような抗体の様々な他の用途は、疾患(例えば、新生物)を診断および/またはステージ付けするためのもの、ならびに例えば新生物、自己免疫疾患、AIDS、心臓血管疾患、感染症および同様のものなどの疾患を処置するための治療的適用のためものである。キメラ抗体、ヒト様抗体、ヒト化抗体または完全ヒト抗体は、ヒト患者への投与に特に有用である。
【0065】
Fab断片は、抗体分子の一価抗原結合断片からなり、酵素パパインによる全抗体分子の消化でインタクトの軽鎖および重鎖の一部からなる断片を生じることにより生成され得る。
【0066】
抗体分子のFab’断片は、全抗体分子をペプシンで処置し、続いて還元して、インタクトの軽鎖および重鎖の一部からなる分子を生じることにより得ることができる。2つのFab’断片は、この手法で処置された抗体分子により得られる。
【0067】
抗体の(Fab’)2断片は、後の還元がなされずに酵素ペプシンで全抗体分子を処置することにより得ることができる。(Fab’)2断片は、2つのジスルフィド結合により互いにまとめられた2つのFab’断片の二量体である。
【0068】
Fv断片は、2つの鎖として発現された、軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作された断片として定義される。
【0069】
一本鎖抗体(「SCA」またはscFv)は、適切な可撓性ポリペプチドライナー(liner)により連結された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含み、アミノ末端および/またはカルボキシル末端に追加のアミノ酸配列を含み得る、遺伝子操作された一本鎖分子である。例えば一本鎖抗体は、コードするポリヌクレオチドへの連結のためにテザーセグメントを含んでいてもよい。機能的な一本鎖抗体は、一般に、特異的標的分子またはエピトープへの結合のために全長抗体の特性を保持するように、軽鎖の可変領域の充分な部分と、重鎖の可変領域の充分な領域と、を含む。
【0070】
本明細書で用いられる用語「抗原」または「Ag」は、免疫応答を惹起することが可能な分子として定義される。この免疫応答は、抗体生成もしくは特異的免疫コンピテントセルの活性化のいずれか、または両方を含んでいてもよい。当業者は、事実上全てのタンパク質またはペプチドを含む任意の巨大分子が抗原として働き得ることを、理解しているであろう。抗原が作製、合成され得、または生物学的試料から誘導され得ることは、即座に明白になろう。そのような生物学的試料としては、組織試料、腫瘍試料、細胞、または生体液を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0071】
本明細書で用いられる用語「アポトーシス」は、細胞の萎縮、クロマチンの凝結、および貪食により排除される膜結合体への細胞の断片化を特徴とする単一細胞に影響を及ぼす細胞死のメカニズムを指す。用語「アポトーシス」は、多くの場合、用語「プログラム細胞死」と同義的に用いられる。
【0072】
本明細書で用いられる用語「アポトーシス誘導活性」は、内部または外部刺激により、発達または分化の特定段階にある(i)特定の細胞型および/または(ii)細胞、において選択的にアポトーシスをもたらす化合物の生来の特性を指す。熟練者は、細胞培養物中の化合物のアポトーシス誘導活性を計測するためのインビトロ標準アッセイ、例えば細胞質チトクロームC(アポトーシスのマーカー)のレベルおよびTUNEL(アポトーシスのマーカー)のレベルを評定するテスト、の存在を認知している。これらの標準的アッセイを利用すれば、熟練者は、異なる発達段階にある異なる細胞型または細胞に関して、例えば老化細胞と非老化細胞の対比で、異なる化合物のアポトーシス誘導活性を容易に評定および比較することができる。他の標準的アポトーシスアッセイは、アネキシンVアッセイおよび切断カスパーゼ-3染色である。
【0073】
用語「バイオシミラー」または「後発生物製剤」は、米国食品医薬品局(FDA)により公表された実用的定義と一致する手法で用いられており、FDAは、バイオシミラーを参照製品と「高度に類似する」製品である(臨床的不活性成分中に微量の差があるが)と定義している。実際には、参照製品とバイオシミラー製品の間には、安全性、純度、および能力に関して臨床的に有意義な差は存在し得ない(Public Health Service (PHS) Act §262)。バイオシミラーは、欧州医薬品庁ヒト用医薬品委員会(CHMP)により2012年5月30日に採用され、欧州連合により「Guideline on similar biological medicinal products containing monoclonal antibodies-non-clinical and clinical issues」(Document Reference EMA/CHMP/BMWP/403543/2010)として公表された1つまたは複数のガイドラインに適合するものでもあり得る。例えば、「バイオシミラー抗体」は、典型的には異なる会社により作製されたイノベーターズ抗体(参照抗体)の次のバージョンを指す。バイオシミラー抗体と参照抗体の間の差は、例えばリン酸塩、様々な脂質および炭水化物などの他の生化学群を抗体に付着させることによる;翻訳後のタンパク質分解切断による;アミノ酸の化学的性質を変化させることによる(例えば、ホルミル化);または多くの他のメカニズムによる、翻訳後修飾を含み得る。他の翻訳後修飾は、製造工程の操作の結果であり得、例えば糖化が、還元糖への生成物の暴露により起こり得る。幾つかの例において、貯蔵条件が、起こる酸化、脱アミド化、または凝集などの特定の分解経路に認容され得る。これらの生成物関連変異体の全てが、バイオシミラー抗体に含まれ得るため。
【0074】
用語「癌」および「癌性」は、典型的には未調節の細胞成長/増殖を特徴とする哺乳動物中の生理学的条件を指す、またはそれを記載する。「腫瘍」は、1種または複数の癌性細胞を含む。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、および白血病またはリンパ悪性腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。そのような癌のより特別な例としては、扁平細胞癌(例えば、扁平上皮細胞癌)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌(「NSCLC」)、肺の腺癌および肺の扁平上皮癌などの肺癌、腹膜の癌、肝細胞癌、消化器癌を含む胃癌(gastric or stomach cancer)、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌(kidney or renal cancer)、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、精巣癌、および頭頸部癌が挙げられる。
【0075】
用語「条件付き活性タンパク質」は、対照の、または正常な生理学的条件下の活性に比較して、1つまたは複数の異常な条件下でのより大きな、またはより小さな同活性である親タンパク質の変異体または突然変異体を指す。この条件付き活性タンパク質はまた、体内の選択された領域において活性を示す、そして/または異常なもしくは認容される生理学的条件下で上昇または低下した活性を示す。正常な生理学的条件は、対象の投与部位または作用部位の組織もしくは臓器など、対象のある位置で正常範囲内と見なされる条件である。異常な条件は、その位置のその条件について正常には許容され得る範囲から逸脱する条件である。一態様において、該条件付き活性タンパク質は、正常な生理学的条件では事実上不活性であるが、異常な、または認容的条件では活性である。例えば一態様において、進化した条件付き活性タンパク質は、体温では事実上不活性であるが、より低い、またはより高い温度では活性である。別の態様において、条件付き活性タンパク質は、正常な生理学的または対照条件で可逆的または不可逆的に不活性化されていてもよい。さらなる態様において、該条件付き活性タンパク質は、治療性タンパク質である。別の態様において、該条件付き活性タンパク質は、薬物または治療薬として用いられる。さらに別の態様において、該条件付き活性タンパク質は、例えば肺の通過後、または腎臓内で見いだされるより低いpH環境など、高度に酸素化された血液中でより高活性または低活性である。条件付き活性タンパク質は、条件付き活性生物学的タンパク質であってもよい。
【0076】
本明細書で用いられる用語「環状ペプチド」は、アミノ末端とカルボキシル末端自体が、環状鎖を形成する(即ち、1つの残基のカルボキシルと、別のアルファアミンの間の)ペプチド結合により互いに連結されたポリペプチド鎖を指す。本出願の目的では、環状ペプチドはまた、非アルファアミドの連結などのペプチド結合以外の連結、およびTrp残基とCys残基の間のチオエーテルの連結を含んでいてもよい。環状ペプチドの長さは、約5~約500アミノ酸、または約8~約300アミノ酸、または約8~約200アミノ酸、または約10~約100アミノ酸、または約10~約50アミノ酸の範囲内であってもよい。加えて、天然由来アミノ酸以外のアミノ酸、例えばβ-アラニン、フェニルグリシンおよびホモアルギニンが、環状ペプチド内に含まれていてもよい。
【0077】
本明細書で用いられる略語「DRI」は、アミノ酸配列が天然または野生型タンパク質の断片または全長に比較して逆方向であるL-ペプチドのDレトロインベルソ型アイソフォームを指し、DRIペプチド内のアミノ酸残基の少なくとも一部は、天然または野生型タンパク質中のL-アミノ酸残基の代わりにDアミノ酸残基である(
図7)。Dレトロインベルソ型ペプチドは、天然タンパク質の断片または全長のアミノ酸配列を同定すること、該配列を逆向きにすること、および公知の方法を利用してDレトロインベルソ型ペプチドを合成して、天然タンパク質の断片または全長のアミノ酸配列の逆向きを有し、該Dレトロインベルソ型ペプチド中に所望の機能を提供するのに充分な数のDアミノ酸を含むペプチドを提供することにより作製され得る。
【0078】
用語「老化細胞の除去が有益となる疾患または疾病」、「老化細胞の存在に関連する疾患または疾病」および「老化細胞の除去が有益となる障害」は、互換的に用いられ、老化細胞の除去、または浄化または生存性低下が疾患または疾病に罹患した対象に有益となる哺乳動物対象、例えばヒト対象における任意の前記疾患または疾病を指す。該用語は、老細胞が疾患の一原因もしくは唯一の原因である、または疾患の進行に寄与する、状況を包含する。該用語はさらに、老化細胞が将来、前記対象における疾患または疾病の原因になり得る状況に関する。例えば、老化細胞の除去が有益になる疾患または疾病の処置は、老化細胞を除去することにより予防される、予防され得る、または改善される疾患または疾病である。例えば化学療法剤および放射線療法は、細胞老化を誘導することが知られている。細胞老化に関連する疾患または疾病の発病を予防するためにこれらの老化細胞を除去することは、有利である。該用語はさらに、老化細胞の除去が疾患または疾病の症状を軽減または低減する疾患または疾病を包含する。
【0079】
老化細胞の除去は、特に疾患もしくは疾病が治癒、予防され得る場合、または該疾患もしくは疾病の症状が低減もしくは軽減され得る場合には、有益である。老化細胞の除去は、老化細胞におけるアポトーシスの誘導により実現されてもよい。例えば、老化細胞の除去が有益となる疾患または疾病は、アテローム性硬化症、関節炎もしくは関節症などの慢性炎症性疾患、癌、骨関節炎、糖尿病、糖尿病性潰瘍、後弯症、硬化症、肝不全、硬変、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)、椎弓板症、骨粗しょう症、認知症、(心臓)血管疾患、肥満、メタボリックシンドローム、急性心筋梗塞、気腫、インスリン感受性、ブトヌーズ熱、サルコペニア、アルツハイマー病、ハンチントン病もしくはパーキンソン病などの神経変性疾患、白内障、貧血、高血圧症、線維症、加齢黄斑変性、COPD、喘息、腎不全、失禁、難聴などの聴覚損失、盲目などの視覚損失、睡眠障害、関節痛もしくは下肢痛などの疼痛、平衡異常、恐怖、うつ病、呼吸困難、体重減少、脱毛、筋肉損失、骨密度減少、虚弱および/または健康不足により形成される群から選択される。老化細胞の除去が有益となる疾患または疾病は、炎症に関連する、または炎症につながる疾患または疾病、具体的には哺乳動物、例えばヒト対象の慢性炎症であり、前記炎症は、老化細胞により誘発または介在される。幾つかの実施形態において、前記炎症により誘発または介在される前記老化細胞は、少なくとも一部が前記疾患または疾病により罹患された臓器または組織と同じ臓器に、より好ましくは同じ組織に存在する。
【0080】
本明細書で用いられる用語「老化細胞の存在に関連する疾患または疾病」は、哺乳動物、例えばヒトの対象における老化細胞の存在または細胞老化の存在が前記対象における前記疾患または疾病につながる、哺乳動物、例えばヒトの対象における任意の疾患または疾病を指す。これに関連して、「~につながる」は、とりわけ、(i)疾患もしくは疾病の少なくとも部分的な原因としての、(ii)または症状の少なくとも部分的な原因としての、老化細胞または細胞老化を指すことができる。幾つかの実施形態において、老化細胞の存在に関連する疾患または疾病は、アテローム性硬化症、関節炎もしくは関節症などの慢性炎症性疾患、癌、骨関節炎、糖尿病、糖尿病性潰瘍、後弯症、硬化症、肝不全、硬変、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)、椎弓板症、骨粗しょう症、認知症、(心臓)血管疾患、肥満、メタボリックシンドローム、急性心筋梗塞、気腫、インスリン感受性、ブトヌーズ熱、サルコペニア、アルツハイマー病、ハンチントン病もしくはパーキンソン病などの神経変性疾患、白内障、貧血、高血圧症、線維症、加齢黄斑変性、COPD、喘息、腎不全、失禁、難聴などの聴覚損失、盲目などの視覚損失、睡眠障害、関節痛もしくは下肢痛などの疼痛、平衡異常、恐怖、うつ病、呼吸困難、体重減少、脱毛、筋肉損失、骨密度減少、虚弱および/または健康不足により形成される群から選択される。老化細胞の除去が有利となる具体的疾患または疾病は、炎症に関連する、または炎症につながる疾患または疾病、典型的には、例えばヒトなどの哺乳動物の対象の慢性炎症であり、前記炎症は、老化細胞により誘発または介在される。幾つかの実施形態において、前記炎症により誘発または介在される前記老化細胞は、少なくとも一部が前記疾患または疾病により罹患された臓器または組織と同じ臓器に、例えば同じ組織に存在する。
【0081】
本明細書で用いられる用語「老化細胞の細胞外条件」は、1種または複数の老化細胞のすぐ周囲を取り囲み、非老化細胞を取り囲む同じ条件と異なる、細胞外環境の条件を指す。老化細胞の細胞外環境は、例えば老化細胞に隣接する任意の細胞外マトリックスまたは流体を含み得る。
【0082】
本明細書で用いられる用語「FOXO4ペプチド」および「FOXO4タンパク質」は、フォークヘッドボックスタンパク質O4(FOXO4)遺伝子の転写産物から翻訳されたタンパク質を指す。FOXO4は、2つの変異体(SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2)を有する。用語「FOXO4 DRIペプチド」は、FOXO4タンパク質の少なくとも1つの断片の逆アミノ酸配列を有するDレトロインベルソ型ペプチドを指し、幾つかの、例えば全てのDアミノ酸残基を含有する。
【0083】
用語「全長抗体」は、抗原結合可変領域(VHまたはVL)と、軽鎖定常ドメイン(CL)および重鎖定常ドメインCH1、CH2およびCH3と、を含む抗体を指す。定常ドメインは、ネイティブ配列の定常ドメイン(例えば、ヒトネイティブ配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列変異体であってもよい。重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、全長抗体は、異なる「クラス」に割り付けられ得る。全長抗体には5種の主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらの幾つかは、「サブクラス」(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2にさらに分別され得る。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれる。
【0084】
「個体」または「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物としては、飼育動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類、例えばサル)、ウサギ、およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
本明細書で用いられる用語「ライブラリー」は、単一プール中のタンパク質の集合体を指す。ライブラリーは、DNA組換え体技術を利用して作製されてもよい。例えばcDNAまたは任意の他のタンパク質をコードするDNAの集合体を発現ベクターに挿入して、タンパク質ライブラリーを作製してもよい。同じく、cDNAまたはタンパク質をコードするDNAの集合体をファージゲノムに挿入して、野生型タンパク質のバクテリオファージディスプレイライブラリーを作製してもよい。cDNAの集合体は、Sambrookら(Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)により開示された方法によるなど、選択された細胞集団または組織試料から生成されてもよい。選択された細胞型からのcDNA集合体はまた、Stratagene(登録商標)などの業者から市販される。本明細書で用いられる野生型タンパク質のライブラリーは、生物学的試料の集合体ではない。
【0086】
本明細書で用いられる用語「リガンド」は、特定の受容体により認識され、1つまたは複数の結合部位において受容体に特異的に結合する分子を指す。リガンドの例としては、細胞膜受容体のアゴニストおよびアンタゴニスト、毒素および毒液、ウイルスエピトープ、ホルモン、ホルモン受容体ペプチド、酵素、酵素基質、補因子、薬物(例えば、アヘン剤、ステロイドなど)、レクチン、糖、ポリヌクレオチド、核酸、オリゴ糖、タンパク質、およびモノクローナル抗体が挙げられるが、これらに限定されない。典型的にはリガンドは、2つの構造的部分:受容体へのリガンドの結合に関与する第一の部分と、そのような結合に関与しない第二の部分と、を含む。
【0087】
本明細書で用いられる用語「多重特異性抗体」は、少なくとも2つの異なるエピトープへの結合特異性を有する抗体である。例示的な多重特異性抗体は、BBB-Rおよび脳抗体の両方に結合してもよい。多重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)として調製することができる。2つ、3つまたはより多くの(例えば4つの)機能的抗原結合部位を有する操作された抗体もまた、企図される(例えば、US2002/0004587 A1参照)。
【0088】
本明細書で用いられる用語「非天然由来アミノ酸」は、天然に見出されない任意のアミノ酸を指す。非天然アミノ酸としては、D-アミノ酸、天然に見出されない側鎖を有するアミノ酸、およびペプチドミメティクスが挙げられる。ペプチドミメティクスの例としては、b-ペプチド、g-ペプチド、およびd-ペプチド;らせんまたはシートコンフォメーションを採用し得るバックボーンを有するオリゴマー、例えばビピリジンセグメントを利用するバックボーンを有する化合物、疎溶媒性相互作用を利用するバックボーンを有する化合物、側鎖相互作用を利用するバックボーンを有する化合物、水素結合相互作用を利用するバックボーンを有する化合物、および金属配位を利用するバックボーンを有する化合物が挙げられるが、これらに限定されない。非天然由来アミノ酸は、生体液中の抗微生物ペプチドの提示を増大させるように設計され得る非特異的タンパク質吸着に抵抗する側鎖、および/またはペプチド内の非天然アミノ酸残基をモノマー単位として利用してポリマーブラシの合成を可能にする重合可能な側鎖を有する残基も含む。
【0089】
本明細書で用いられる用語「親タンパク質」は、本発明の方法を利用して条件付き活性ポリペプチドまたはタンパク質を生成するように進化され得るポリペプチドまたはタンパク質を指す。該親タンパク質は、野生型タンパク質または非天然由来タンパク質であってもよい。例えば、治療性ポリペプチドもしくはタンパク質、または突然変異体もしくは変異体ポリペプチドもしくはタンパク質は、親ポリペプチドまたはタンパク質として用いられてもよい。親タンパク質はまた、別の天然由来タンパク質、野生型タンパク質、治療性タンパク質、または突然変異体タンパク質の断片であってもよい。親タンパク質の例としては、抗体、抗体断片、酵素、酵素断片、サイトカインおよびその断片、ホルモンおよびその断片、リガンドおよびその断片、受容体およびその断片、調節タンパク質およびその断片、ならびに成長因子およびその断片が挙げられる。
【0090】
本明細書で用いられる用語「ポリペプチド」は、モノマーがアミノ酸であり、ペプチドまたはジスルフィド結合を通して互いに連結されたポリマーを指す。ポリペプチドは、全長天然由来アミノ酸鎖またはその断片、突然変異体もしくは変異体、例えば結合相互作用内の該当するアミノ酸鎖の選択された領域であってもよい。ポリペプチドはまた、合成アミノ酸鎖、または天然アミノ酸もしくはその断片と合成アミノ酸鎖との組み合わせであってもよい。断片は、全長タンパク質の一部であり、典型的には約8~約500アミノ酸長の間、好ましくは約8~約300アミノ酸、より好ましくは約8~約200アミノ酸、より好ましくは約10~約50または100アミノ酸長である、アミノ酸配列を指す。加えて、天然由来アミノ酸以外のアミノ酸、例えばβ-アラニン、フェニルグリシンおよびホモアルギニンが、ポリペプチド中に含まれていてもよい。遺伝子コードされていない一般に遭遇するアミノ酸が、ポリペプチド中に含まれていてもよい。該アミノ酸は、D-またはL-光学異性体であってもよい。D-異性体は、以下にさらに記載される具体的状況における使用に好ましい。加えて、他のペプチドミメティクスもまた、例えばポリペプチドのリンカー配列において、有用である(Spatola, 1983,Chemistry and Biochemistry of Amino Acids. Peptides and Proteins, Weinstein, ed., Marcel Dekker, New York, p. 267参照)。一般に用語「タンパク質」は、共有または非共有結合によりまとめられた2つまたは複数のポリペプチド鎖を含む構造を含むこと以外の用語「ポリペプチド」との任意の重大な差を含むことを意図しない。
【0091】
本明細書で用いられる用語「タンパク質」は、モノマーがアミノ酸であり、ペプチドまたはジスルフィド結合を通して互いに連結されたポリマーを指す。タンパク質は、延長天然由来アミノ酸鎖またはその断片、突然変異体もしくは変異体、例えば結合相互作用内の該当するアミノ酸鎖の選択された領域であってもよい。タンパク質は、ポリマーの全体または一部を利用して環状構造を形成するアミノ酸ポリマーを有する環状ペプチドであってもよい。タンパク質は、合成アミノ酸鎖、非天然アミノ酸を含むアミノ酸鎖または天然アミノ酸鎖もしくはその断片と合成アミノ酸鎖との組み合わせであってもよい。断片は、全長タンパク質の一部であり、典型的には約8~約500アミノ酸長の間、好ましくは約8~約300アミノ酸、より好ましくは約8~約200アミノ酸、より好ましくは約10~約50または100アミノ酸長である、アミノ酸配列を指す。加えて、天然由来アミノ酸以外のアミノ酸、例えばβ-アラニン、フェニルグリシンおよびホモアルギニンが、ポリペプチド中に含まれていてもよい。遺伝子コードされていない一般に遭遇するアミノ酸が、ポリペプチド中に含まれていてもよい。該アミノ酸は、D-またはL-光学異性体であってもよい。D-異性体は、以下にさらに記載される特異的状況における使用に好ましい。加えて、他のペプチドミメティクスもまた、例えばポリペプチドのリンカー配列において、有用である(Spatola, 1983, Chemistry and Biochemistry of Amino Acids. Peptides and Proteins, Weinstein, ed., Marcel Dekker, New York, p. 267参照)。一般に用語「タンパク質」は、共有または非共有結合によりまとめられた2つまたは複数のポリペプチド鎖を含む構造を含むこと以外の用語「ポリペプチド」との任意の重大な差を含むことを意図しない。
【0092】
本明細書で用いられる用語「受容体」は、所与のリガンドに対して親和性を有する分子を指す。受容体は、天然由来または合成分子であってもよい。受容体は、非改変状態で、または他の分子種との凝集物として用いられてもよい。受容体は、直接、または特異的結合物質を介して、結合膜に共有結合または非共有結合で付着させることができる。受容体の例としては、特異的抗原決定基(ウイルス、細胞または他の材料など)と反応するモノクローナル抗体および抗血清などの抗体、細胞膜受容体、複合炭水化物および糖タンパク質、酵素、ならびにホルモン受容体が挙げられるが、これらに限定されない。受容体へのリガンドの結合は、当業者に公知の種々のリガンド受容体結合アッセイにより検出され得る複合体を形成する特異的分子認識を通したリガンドと受容体分子との組み合わせを示す。
【0093】
本明細書で用いられる用語「老化」または「細胞老化」は、活発に分裂する細胞から代謝活性のある非分裂細胞への進行を意味する。用語「老化」は、複数回の分裂の後に細胞が進入する状態を指し、その状態では、細胞が代謝活性のままでも、将来の細胞分裂が起こるのを妨害される。
【0094】
本明細書で用いられる用語「老化細胞」は、代謝活性があるが細胞周期から永久に離脱された細胞を意味する(例えば、Campisi, Cell, vol. 120, pp.513-522, 2005参照)。老化細胞は、複製せず、老化細胞に起因する以下のさらなる特徴の1つまたは複数を有する:G1期における細胞周期停止;拡大された平坦な形態;顆粒性増大;pH6でのβ-ガラクトシダーゼ活性の染色;老化関連のヘテロクロマチン形成;ならびにp16およびp21により部分的に調節された特徴的遺伝子発現。老化細胞の例としては、老化脂肪前駆細胞、老化内皮細胞、老化線維芽細胞、老化神経細胞、老化上皮細胞、老化間葉系細胞、老化平滑筋細胞、老化マクロファージ、および老化軟骨細胞が挙げられる。
【0095】
本明細書で用いられる用語「老化細胞除去薬」は、老化細胞の選択的破壊を選択的に(優先的に、またはより大きな度合いで)破壊する、殺傷する、除去する、または容易にする薬剤を指す。言い換えれば、該老化細胞除去薬は、非老化細胞を破壊または殺傷する能力と比較して、生物学的、臨床的、および/または統計学的に有意な手法で老化細胞を破壊または殺傷する。該老化細胞除去薬は、小化合物、またはタンパク質、ポリヌクレオチドなどの生物学的分子であってもよい。老化細胞除去薬は、確定された老化細胞を選択的に殺傷するのに充分であるが、臨床的に有意な、または生物学的に有意な数の非老化細胞を殺傷する(破壊、死滅を引き起こす)には不充分である量および時間で用いられる。特定の実施形態において、本明細書に記載された老化細胞除去薬は、老化細胞の死を誘導(開始、刺激、惹起、活性化、促進)して、それをもたらす(即ち、誘発する、導く)手法で、少なくとも1つのシグナル伝達経路を改変する。該老化細胞除去薬は、例えば、細胞生存シグナル伝達経路(例えば、Akt経路)または炎症経路のいずれかまたは両方を、例えば生存細胞内のタンパク質、および/または老化細胞内の炎症経路と拮抗することにより、改変してもよい。
【0096】
本明細書で用いられる用語「小分子」は、900a.m.u.未満、またはより好ましくは500a.m.u.、またはより好ましくは200a.m.u.未満、またはより好ましくは100a.m.u.未満の分子量を有する分子またはイオンを指す。本発明のアッセイおよび環境において、小分子は多くの場合、主としてアッセイまたは環境のpHに応じて、分子の混合物および分子の脱プロトン化イオンとして存在してもよい。
【0097】
本明細書で用いられる用語「老化細胞に関連する標的」は、老化細胞の表面に位置する(例えば、細胞膜タンパク質)、または老化細胞中に存在する、または老化細胞により老化細胞の細胞外環境に分泌される、分子、例えばタンパク質を意味する。
【0098】
本明細書で用いられる用語「治療性タンパク質」は、例えば検査者または医師により、探求される組織、系、動物またはヒトの生物学的または医療的応答を誘起するために哺乳動物に投与され得る任意のタンパク質および/またはポリペプチドを指す。治療性タンパク質で、1つより多くの生物学的または医療的応答を誘起してもよい。治療性タンパク質の例としては、抗体、酵素、ホルモン、サイトカイン、調節タンパク質、およびそれらの断片が挙げられる。
【0099】
本明細書で用いられる用語「治療性有効量」は、そのような量を受けていない対応する対象に比較して、非限定的に疾患、障害もしくは副作用の治癒、予防もしくは改善をもたらす、または疾患もしくは障害の進行速度を低下させる任意の量を意味する。該用語はまた、その範囲内に、正常な生理学的機能を増進するのに効果的な量、および患者における生理学的機能を誘発して、第二の医薬剤の治療効果を増進または援助するのに効果的な量を包含する。
【0100】
本明細書で用いられる用語「処置する」および「処置」は、対象(即ち、患者)の疾患、障害、または疾病の医療的管理を指す(例えば、Stedman’s Medical Dictionary)。一般に、適当な用量および処置レジメンが、治療上の、そして/または予防上の利益を提供するのに充分な量で老化細胞除去薬を提供する。本明細書に記載された老化細胞除去薬が投与される対象への治療上の利益としては、例えば物体が疾患に関連する望ましくない生理学的変化を予防もしくは遅延もしくは阻止(低減)する、またはそのような疾患の拡大もしくは重症度を予防もしくは遅延もしくは阻止(低減)する、改善された臨床転帰が挙げられる。
【0101】
本明細書で用いられる用語「腫瘍微細環境」は、腫瘍細胞の成長および転移を支持する固形腫瘍内および固形腫瘍の周辺の微細環境を指す。腫瘍微細環境としては、新生物の形質転換を促進すること、腫瘍の成長および浸潤を支援すること、腫瘍の宿主免疫性を防御すること、治療抵抗性を育成すること、および休眠状態の転移が生育するニッチを提供することを可能にする、周辺の血管、免疫細胞、線維芽細胞、他の細胞、可溶性因子、シグナル伝達分子、細胞外マトリックス、および機械的キューが挙げられる。腫瘍とその周辺の微細環境は、密接に関係し、一定して相互作用する。腫瘍は、細胞外シグナルを放出すること、腫瘍の血管新生を促進すること、および末梢免疫耐性を誘導することにより微細環境に影響を及ぼし得るが、微細環境内の免疫細胞は、癌性細胞の成長および進化に影響を与え得る。Swarts et al. “Tumor Microenvironment Complexity: Emerging Roles in Cancer Therapy,” Cancer Res, vol., 72, pages 2473-2480, 2012; Weber et al., “The tumor microenvironment,” Surgical Oncology, vol. 21, pages 172-177, 2012; Blagosklonny, “Antiangiogenic therapy and tumor progression,” Cancer Cell, vol. 5, pages 13-17, 2004; Siemann, “Tumor microenvironment,” Wiley, 2010;およびBagley, “The tumor microenvironment,” Springer, 2010を参照されたい。
【0102】
詳細な記載
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる通り、単数形態の「a」、「an」、および「the」が他に明確に示されない限り複数の対象を含むことが、留意されなければならない。さらに、用語「a」(または「an」)、「1つまたは複数の」および「少なくとも1つの」は、本明細書では互換的に用いられ得る。用語「含むこと」、「包含すること」、「有すること」、および「から構築された」もまた、互換的に用いられ得る。
【0103】
他に示されない限り、本明細書および特許請求の範囲で用いられる原材料の量、特性、例えば分子量、パーセント、比率、反応条件その他を表現する全ての数字が、用語「約」が存在する、しないにかかわらず、全ての例で用語「約」により修飾されるものと理解されなければならない。したがって反することが示されない限り、本明細書および特許請求の範囲に示された数字のパラメータは、本開示により得られるように探求される所望の特性に応じて変動され得る近似値である。最低でも、そして特許請求の範囲の同等物の教義の適用を限定する試みではなく、各数字パラメータは、少なくとも報告された有効数字の数に照らして、そして通常の丸めの技術を適用することにより、解釈されなければならない。本開示の広い範囲を示す数字範囲およびパラメータが近似値であるが、具体的実施例に示された数値は、可能な限り精密に報告される。しかし任意の数値は、生来、各試験測定に見いだされる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含む。
【0104】
本明細書で開示された各成分、化合物、置換基またはパラメータが、単独での使用のために、または本明細書に開示された他の各成分、化合物、置換基もしくはパラメータの1つもしくは複数と組み合わせて開示されると解釈されるべきであることが、理解されなければならない。
【0105】
同じく、本明細書に開示された各成分、化合物、置換基またはパラメータのための各量/値または量/値の範囲が、本明細書に開示された任意の他の成分(複数可)、化合物(複数可)、置換基(複数可)またはパラメータ(複数可)のために開示された各量/値または量/値の範囲と組み合わせて開示される通り解釈されるべきであること、および本明細書に開示された2つ以上の成分(複数可)、化合物(複数可)、置換基(複数可)またはパラメータのための量/値の任意の組み合わせまたは量/値の範囲が、こうして本明細書の目的で互いに組み合わせて開示されることが、理解されなければならない。
【0106】
本明細書に開示された各範囲が、同じ有効数字を有する開示範囲内の各具体的値の開示として解釈されるべきであることは、さらに理解されよう。したがって1~4の範囲は、1、2、3および4の値の開示を表すものと解釈されるべきである。さらに、本明細書に開示された各範囲の各下限が、同じ成分、化合物、置換またはパラメータのために本明細書に開示された各範囲の各上限および各範囲内の各具体的値と組み合わせて開示されるものと解釈されなければならないことは、理解されよう。したがって、本開示は、各範囲の各下限を、各範囲内の各範囲もしくは各具体的値の各上限と組み合わせることにより、または各範囲の各上限を、各範囲内の各具体的値と組み合わせることにより、得られる全ての範囲の開示と解釈されるべきである。
【0107】
さらに、本明細書または実施例に開示された成分、化合物、置換基またはパラメータの具体的量/値が、範囲の下限または上限のいずれかの開示と解釈されなければならず、したがって本出願の他の箇所の同じ成分、化合物、置換基またはパラメータの範囲または具体的量/値の任意の他の下限または上限と組み合わせて、その成分、化合物、置換基またはパラメータの範囲を形成することができる。
【0108】
本発明は、老化細胞への活性を有する条件付き活性タンパク質を、老化細胞に関連する該標的に結合する親タンパク質から生成するための方法を提供する。該方法は、
(i)1つまたは複数の進化的技術を利用して該親タンパク質をコードするDNAを進化させて、突然変異体DNAを作出するステップと;
(ii)該突然変異体DNAを発現させて突然変異体タンパク質を得るステップと;
(iii)該突然変異体タンパク質を、該老化細胞の細胞外条件下でのアッセイおよび正常な生理学的条件下でのアッセイに供するステップと;
(iv)(a)アッセイにおける該親タンパク質の活性に比較した、該正常な生理学的条件下での同アッセイにおける同活性の低下、および該正常な生理学的条件下でのアッセイにおける該条件付き活性タンパク質の活性に比較した、該老化細胞の細胞外条件下での該アッセイにおける同活性の上昇;ならびに
(b)アッセイにおける該親タンパク質の活性に比較した、該正常な生理学的条件下での同アッセイにおける同活性の低下、および該老化細胞の細胞外条件下でのアッセイにおける該親タンパク質の活性に比較した、該老化細胞の細胞外条件下での該アッセイにおける同活性の上昇、
のうちの少なくとも1つを示す該突然変異体タンパク質から該条件付き活性タンパク質を選択するステップと;
を含む。
【0109】
該親タンパク質は、抗体、リガンド、受容体もしくは酵素、または前述のいずれかの断片であってもよい。リガンドの例としては、サイトカインおよびその断片、ホルモンおよびその断片、調節タンパク質およびその断片、ならびに成長因子およびその断片が挙げられる。
【0110】
抗体、リガンド、または受容体の場合、該親タンパク質は、老化細胞に関連する標的に結合し、該活性は、該標的への結合活性であってもよい。酵素については、基質および活性が老化細胞の少なくとも一部を該基質として使用する酵素活性であるため、該親タンパク質は、老化細胞の少なくとも一部を利用し得る。
【0111】
幾つかの実施形態において、該親タンパク質は、治療性タンパク質またはバイオシミラーであってもよい。
【0112】
老化細胞に関連する標的は、典型的には老化細胞のタンパク質である。該標的は、幾つかの例において、老化細胞の細胞膜上のタンパク質である。幾つかの実施形態において、該標的は、DEP-1、NTAL、EBP50、STX4、VAMP3、ARMCX-3、LANCL1、B2MG、PLD3、およびVPS26Aから選択される。これらのタンパク質は、WO2015/181526に記載された通り老化細胞のバイオマーカーとして認識される。幾つかの実施形態において、該標的は、ITGAV、RAC1、ARHGAP1、RAPGEF1、CRKL、NCKAP1、CDC42、CAPNS2、EBP、FGF1、ISG20、KITLG、LPHN1、MAG、MEF2C、OSBPL3、PFN1、POU5F1、PPP1CB、pl6INK4a、PRKRA、APC、AXL、BCL2L1、CDKN2C、CLYBL、COPG1、DGKA、GBA3、GIT2、IGF1、LCMT2、MADCAM1、MAP3K14、MTHFD2、NAIP、NAPG、NNMT、PARK2、PMS2、PRPF19、PRTG、RAPGEF1、RET、VIT、WEE1、YAP1、およびYWHAEから選択される。
【0113】
幾つかの実施形態において、該標的は、Fasタンパク質または細胞死受容体(DR)である。Fasは、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6A(TNFSF6)と称される場合もある。これは、老化細胞の外側から容易に接近可能である膜受容体である。DRは、TNF関連アポトーシス誘導性リガンド(TRAIL)であり、Guicciardi et al., “Life and death by death receptors,” FASEB J. vol. 23, pp. 1625-1637, 2009を参照されたい。DRの例としては、DR4およびDR5が挙げられる。
【0114】
幾つかの実施形態において、該老化細胞に関連する標的は、MDM2、AKT(AKT1、AKT2、およびAKT3)、NOTCH3、DcR2(TNFRSF10D)、およびBCL-2抗アポトーシス性タンパク質ファミリーのタンパク質から選択される。このファミリーにおける該タンパク質は、BH1~BH4ドメイン(BCL-2(即ち、BCL-2抗アポトーシス性タンパク質ファミリーのBCL-2タンパク質メンバー)、BCL-xL、BCL-w、Al、MCL-1、およびBCL-B);またはBH1、BH2、およびBH3ドメイン(BAX、BAK、およびBOK);またはBH3ドメインのみ(BIK、BAD、BID、BIM、BMF、HRK、NOXA、およびPUMA)を有する(例えば、Cory et al., Nature Reviews Cancer, vol. 2, pp. 647-56, 2002; Cory et al., Cancer Cell, vol. 8, pp. 5-6, 2005; Adams et al, Oncogene, vol. 26, pp. 1324-1337, 2007参照)。本発明における使用に適した老化細胞に関連するさらなる標的は、Althubiti et al, Cell Death and Disease, vol. 5, p. el528, 2014に記載されている。
【0115】
幾つかの実施形態において、該老化細胞に関連する標的は、US2016/0115237に記載された通り、プリオンタンパク質(PrP)、CD38、Notch-1、CD44、CD59、Fasリガンド、TNF受容体、およびEGF受容体から選択されるタンパク質のミスフォールド形態から選択される。該標的はまた、p16INK4a、またはUS 2016/0038576の表1~3から選択されるタンパク質であってもよい。
【0116】
幾つかの実施形態において、該老化細胞に関連する標的が、選択されたら、該標的に結合する該親タンパク質は、選択された標的に結合して該老化細胞の少なくとも一部を基質として使用する酵素、または該標的に結合する抗体、リガンドもしくは受容体であるように選択されてもよい。本発明における使用のための適切な親タンパク質の幾つかの例は、WO 2016/138071の「Target Wild-type Proteins」の節に記載される。
【0117】
該親タンパク質は、WO 2016/138071に記載される通り、ライブラリーから選択されてもよい。幾つかの実施形態において、該親タンパク質は、例えば7.0未満のpH、例えば5.0から7.0未満、または5.5から7.0未満、または6.0から7.0未満、または6.2~6.8の条件下でのアッセイの利用により、ライブラリーから選択される。
【0118】
幾つかの他の実施形態において、該親タンパク質は、例えば6~7.5の間、好ましくは6~7の間、より好ましくは6.2~6.8の間のpKaを有する小分子を含有しないスクリーニング溶液を使用して、ライブラリーから選択される。そのような小分子の例は、本出願に記載される。
【0119】
幾つかの実施形態において、該親タンパク質は、抗体である。幾つかの実施形態における該親タンパク質は、親抗体としての使用のために選択されるものに基づく1つまたは複数の好適な特徴を有する。例えば特定の実施形態において、該親抗体は、5.0から7.0未満のpHなど、老化細胞の1つまたは複数の細胞外条件で良好な結合活性を有することに基づいて選択されてもよい。
【0120】
幾つかの実施形態において、該親抗体は、特異的エピトープへの結合活性について選択される。特異的エピトープへの結合活性に基づく選択は、老化細胞の1つまたは複数の細胞外条件での良好な結合活性についての選択など、1つまたは複数の他の選択基準と組み合わせてもよい。
【0121】
他の実施形態において、該親抗体は、内在化効率に基づいて選択される。内在化効率に基づく選択は、特異的エピトープへの結合活性、または老化細胞の1つまたは複数の細胞外条件での良好な結合活性など、1つまたは複数の他の選択基準と組み合わせられてもよい。
【0122】
他の実施形態において、該親抗体は、正常な生理学的条件および老化細胞の細胞外条件の両方の下で類似した結合活性および/または特性を有していてもよい。そのような実施形態において、該親抗体は、正常な生理学的条件および老化細胞の細胞外条件の両方の下で最も類似した結合活性および/または1つもしくは複数の特徴の最も類似した組み合わせを有することに基づいて選択される。例えば、正常な生理学的条件および老化細胞の細胞外条件が、それぞれpH7.4および6.4であり得る場合、pH7.4および6.4で最も類似した結合活性を有する抗体が、pH7.4および6.4でより類似しない結合活性を有する抗体よりも、親抗体として選択されてもよい。
【0123】
幾つかの実施形態において、該親タンパク質は、天然由来のタンパク質の断片であってもよい。例えば該親タンパク質は、酵素の触媒ドメイン、リガンドもしくは受容体の結合ドメイン、または抗体の可変領域であってもよい。幾つかの実施形態において、該親タンパク質は、8アミノ酸単位しかないペプチドまたは環状ペプチドであってもよい。
【0124】
親タンパク質が、選択された後、親タンパク質をコードするDNAは、適切な進化的技術を利用して進化して突然変異体DNAを生成するが、その後に条件付き活性タンパク質を同定するスクリーニングのために突然変異体タンパク質を生成するように発現されてもよい。該親タンパク質をコードするDNAを進化させるため、突然変異体DNAを発現させて突然変異体タンパク質を生成するため、そして該突然変異体タンパク質をスクリーニングするための適切な技術は、WO2016/138071に記載される。
【0125】
選択されたら、条件付き活性タンパク質が、WO2016/138071に記載される通り、場合により「ミメティック」および「ペプチドミメティック」な形態で合成されてもよい。
【0126】
選択された条件付き活性タンパク質はまた、ポリペプチド発現細胞生成宿主または生物体を利用して生成されてもよい。生成工程をより効率的にするために、条件付き活性タンパク質をコードするDNAは、細胞生成宿主または生物体のためのコドン最適化に供されてもよい。コドン最適化は、マウス系におけるコドン最適化を記載したNarum et al., ”Codon optimization of gene fragments encoding Plasmodium falciparum merzoite proteins enhances DNA vaccine protein expression and immunogenicity in mice,” Infect. Immun., vol. 69, pp, 7250-3, 2001;酵母系のコドン最適化を記載したOutchkourov et al., ”Optimization of the expression of Equistatin in Pichia pastoris, protein expression and purification,” Protein Expr. Purif., vol. 24, pp. 18-24, 2002;大腸菌のコドン最適化を記載したFeng et al., ”High level expression and mutagenesis of recombinant human phosphatidylcholine transfer protein using a synthetic gene: evidence for a C-terminal membrane binding domain” Biochemistry, vol. 39, pp. 15399-409, 2000;コドンの使用が大腸菌におけるタンパク質分泌にどのように影響を与えるかを記載したHumphreys et al., ”High-level periplasmic expression in Escherichia coli using a eukaryotic signal peptide: importance of codon usage at the 5’ end of the coding sequence”, Protein Expr. Purif., vol. 20, pp. 252-64, 2000など、過去に記載されている。
【0127】
該細胞生成宿主は、CHO、HEK293、IM9、DS-I、THP-I、Hep G2、COS、NIH 3T3、C33a、A549、A375、SK-MEL-28、DU 145、PC-3、HCT 116、Mia PACA-2、ACHN、Jurkat、MML-l、Ovcar 3、HT 1080、Panc-1、U266、769P、BT-474、Caco-2、HCC 1954、MDA-MB-468、LnCAP、NRK-49F、およびSP2/0細胞株;ならびにマウス脾細胞およびウサギPBMCからなる群の1つから選択される哺乳動物細胞生成宿主であってもよい。該哺乳動物細胞生成宿主は、例えばCHOまたはHEK293細胞株から選択される。1つの具体的な態様において、該哺乳動物細胞生成宿主は、CHO-S細胞株である。別の実施形態において、該哺乳動物細胞生成宿主は、HEK293細胞株である。
【0128】
幾つかの実施形態において、該細胞生成宿主は、酵母細胞、例えばS.セレビシエ酵母細胞またはピキア酵母細胞である。幾つかの実施形態において、該細胞生成宿主は、大腸菌などの原核細胞である(Owens, R.J. and Young, R.J., J. Immunol. Meth., vol. 168, p.149, 1994; Johnson S and Bird RE, Methods Enzymol., vol. 203, p.88, 1991)。該条件付き活性タンパク質はまた、植物細胞または植物において生成されてもよい(Firek et al., Plant Mol. Biol., vol. 23, p.861, 1993)。
【0129】
該条件付き活性タンパク質は、天然の工程を通して、またはWO2016/138071に記載される化学修飾技術を利用して、修飾されてもよい。該条件付き活性タンパク質は、同じくWO2016/138071に記載される通り、固相化学ペプチド合成法を利用して合成されてもよい。
【0130】
該条件付き活性タンパク質は、老化細胞の細胞外条件下でのアッセイおよび/または正常な生理学的条件下でのアッセイを利用して選択されてもよい。該選択された条件付き活性タンパク質は、
(a)アッセイにおける該親タンパク質の活性に比較した、該正常な生理学的条件下での同アッセイにおける同活性の低下、および該正常な生理学的条件下でのアッセイにおける該条件付き活性タンパク質の活性に比較した、該老化細胞の細胞外条件下での該アッセイにおける同活性の上昇;ならびに
(b)アッセイにおける該親タンパク質の活性に比較した、該正常な生理学的条件下での同アッセイにおける同活性の低下、および該老化細胞の細胞外条件下でのアッセイにおける該親タンパク質の活性に比較した、該老化細胞の細胞外条件下での該アッセイにおける同活性の上昇、
のうちの少なくとも1つを示す。
【0131】
該条件は、正常な生理学的条件でのアッセイに比較して老化細胞の細胞外条件下でのアッセイでは、同じ条件であるがその条件の異なる値を有し、例えば該条件は、pHであってもよく、正常な生理学的条件でのpHの値は、7.2~7.8または7.2~7.6であってもよく、老化細胞の細胞外条件でのpHの値は、6.0~7.0または6.2~6.8であってもよい。
【0132】
該活性は、例えば該標的への条件付き活性抗体の結合活性、もしくは特異的エピトープ、該タンパク質の内在化効率などの任意の老化細胞の処置に関する任意の活性であってもよく、または酵素の場合、該活性は、例えば基質としての該老化細胞の少なくとも一部への条件付き活性酵素の酵素活性であってもよい。
【0133】
老化細胞の細胞外条件は、例えば正常細胞の特徴に比較して、老化細胞の特別な特徴(複数可)の結果である老化細胞のすぐそばの細胞外環境において誘発された差異の1つまたは複数から選択される。本発明において有用である老化細胞の特別な特徴の一群は、老化細胞の代謝活性である。例えば老化細胞は、以下の特別な特徴の1つまたは複数を示し得る:(1)老化細胞の成長停止が、本質的に永久であり、既知の生理学的刺激により逆行され得ない;(2)老化細胞が、サイズを増加させ、時には非老化同等物のサイズの2倍より大きく拡大する;(3)老化細胞が、リソゾーム量の増加を部分的に反映する老化関連β-ガラクトシダーゼ(SAP-gal)を発現する;(4)多くの老化細胞が、静止または最終分化細胞により一般には発現されないpl6INK4aを発現する;(5)持続的なDNA損傷反応(DDR)シグナル伝達を有する一部の老化細胞が、DNAセグメントと称される持続的な核内フォーカスを宿し、クロマチン変化が老化を補強し(機能不全のテロメアまたはテロメア機能不全誘導フォーカス(TIF)などのDNA-SCARS)、活性化DDRタンパク質を含有し、一過性の損傷フォーカスと識別可能である;(6)老化細胞が発現し、老化に関連する分子を分泌する場合があり、特定の例では持続的DDRシグナル伝達の存在下で観察される場合がある;(7)老化細胞の核がラミニンB1などの構造タンパク質、またはヒストンおよびHMGB1などのクロマチン関連タンパク質を喪失する。例えば、Freund et al, Mol. Biol. Cell, vol. 23, pp. 2066-75, 2012; Davalos et al, J. Cell Biol., vol. 201, pp. 613-29, 2013; Ivanov et al, J. Cell Biol., DOI:10.1083/jcb.201212110, pp. 1-15, 2013; Funayama et al, J. Cell Biol., vol. 175, pp. 869-80, 2006を参照されたい。
【0134】
幾つかの実施形態において、該老化細胞の細胞外条件は、老化細胞における解糖代謝の増加により誘発される低pHである(James et al., “Senescent human fibroblasts show increased glycolysis and redox homeostasis with extracellular metabolomes that overlap with those of irreparable DNA damage, aging, and disease,” J Proteome Res., vol. 14, pp. 1854-71, 2015)。解糖は、糖を分解して2つのピルビン酸塩および2つのATPを形成することを含み、そこでピルビン酸塩が乳酸塩に変換されて排泄される場合があり、こうして老化細胞の細胞外環境においてpHを低下させる(Wiley and Campisi, “From Ancient Pathways to Aging Cells-Connecting Metabolism and Cellular Senescence,” Cell Metab., vol. 23, pp. 1013-21, 2016)。これは、腫瘍微細環境に類似しており、癌細胞の解糖代謝は、腫瘍微細環境においてpHを低下させる。したがって老化細胞の細胞外条件は、約5.5~約7.2、または約6.0~約7.0、または約6.2~約7.0、または約6.2~約6.8、または約6.4~約6.8の範囲内の酸性pHになり得る。対応する正常な生理学的条件は、約7.2~約7.8、好ましくは7.2~約7.6、またはより好ましくは約7.4~約7.6の範囲内の正常な生理学的pHである。
【0135】
幾つかの実施形態において、該老化細胞の細胞外条件は、正常な細胞環境におけるデオキシヌクレオチドの正常な生理学的濃度に比較して、低濃度のデオキシヌクレオチドであってもよい(Wiley and Campisi, “From Ancient Pathways to Aging Cells-Connecting Metabolism and Cellular Senescence,” Cell Metab., vol. 23, pp. 1013-21, 2016)。一部の老化細胞は、デオキシヌクレオチドを合成する能力を喪失している場合があり、したがって正常細胞の細胞外環境におけるデオキシヌクレオチドの細胞外濃度に比較した、老化細胞の細胞外環境における低濃度のデオキシヌクレオチドを導き得る。したがって老化細胞の細胞外条件は、正常細胞の細胞外環境におけるデオキシヌクレオチドの正常な生理学的濃度に比較して、より低濃度の同デオキシヌクレオチドになるように選択されてもよく、対応する正常な生理学的条件は、正常細胞の細胞外環境における同デオキシヌクレオチドの濃度である。
【0136】
幾つかの実施形態において、該老化細胞の細胞外条件は、正常細胞の細胞外環境における酸素の生理学的濃度に比較して低濃度の酸素であってもよい(Wiley and Campisi, “From Ancient Pathways to Aging Cells-Connecting Metabolism and Cellular Senescence,” Cell Metab., vol. 23, pp. 1013-21, 2016)。老化細胞は、非老化細胞に比較した酸素消費の増加を有し、正常細胞の細胞外環境に比較して低濃度の酸素を老化細胞の細胞外環境に存在させ得る。したがって該老化細胞の細胞外条件は、正常細胞の細胞外環境における酸素の正常な生理学的濃度に比較してより低濃度の酸素になるように選択されてもよく、対応する正常な生理学的条件は、正常細胞の細胞外環境における酸素の濃度である。
【0137】
幾つかの実施形態において、該老化細胞の細胞外条件は、正常細胞の細胞外環境におけるNAD+/NADH比よりも低いNAD+/NADH比であってもよい(Wiley and Campisi, “From Ancient Pathways to Aging Cells-Connecting Metabolism and Cellular Senescence,” Cell Metab., vol. 23, pp. 1013-21, 2016)。したがって該老化細胞の細胞外条件は、正常細胞の細胞外環境における正常な生理学的NAD+/NADH比に比較してより低いNAD+/NADH比になるように選択されてもよく、対応する正常な生理学的条件は、正常細胞の細胞外環境における正常なNAD+/NADH比である。
【0138】
幾つかの実施形態において、該老化細胞の細胞外条件は、正常な成長細胞、コンフルエント細胞または静止細胞の細胞外環境におけるヒポタウリン、システインスルフィン酸、システイン-グルタチオンジスルフィド、ガンマ-グルタミルアラニン、ガンマ-グルタミルメチオニン、ピリドキサート、ガンマ-グルタミルグルタミン、およびアラニンから選択されるレドックスホメオスタシス代謝産物の正常な濃度に比較して、高濃度の同レドックスホメオスタシス代謝産物であってもよい(James et al., “Senescent human fibroblasts show increased glycolysis and redox homeostasis with extracellular metabolomes that overlap with those of irreparable DNA damage, aging, and disease,” J Proteome Res., vol. 14, pp. 1854-71, 2015)。したがって該老化細胞の細胞外条件は、成長細胞、コンフルエント細胞または静止細胞から選択され得る正常細胞の細胞外環境におけるレドックスホメオスタシス代謝産物の正常な生理学的濃度に比較して高濃度の同レドックス代謝産物になるように選択されてもよく、対応する正常な生理学的条件は、正常細胞の細胞外環境におけるレドックスホメオスタシス代謝産物の濃度である。
【0139】
幾つかの実施形態において、該老化細胞の細胞外条件は、正常な成長細胞、コンフルエント細胞または静止細胞の細胞外環境における3-ウレイドプロピオナート、ウラート、7-メチルグアニン、およびヒポキサンチンから選択されるヌクレオチド代謝産物の濃度に比較して、高濃度の同ヌクレオチド代謝産物であってもよい(James et al., “Senescent human fibroblasts show increased glycolysis and redox homeostasis with extracellular metabolomes that overlap with those of irreparable DNA damage, aging, and disease,” J Proteome Res., vol. 14, pp. 1854-71, 2015)。したがって該老化細胞の細胞外条件は、成長細胞、コンフルエント細胞または静止細胞から選択され得る正常細胞の細胞外環境におけるヌクレオチド代謝産物の正常な生理学的濃度に比較して高濃度の同ヌクレオチド代謝産物になるように選択されてもよく、対応する正常な生理学的条件は、正常細胞の細胞外環境におけるヌクレオチド代謝産物の濃度である。
【0140】
幾つかの実施形態において、該老化細胞の細胞外条件は、正常な成長細胞、コンフルエント細胞または静止細胞の細胞外環境におけるチミジンの濃度に比較して、低濃度のチミジンであってもよい(James et al., “Senescent human fibroblasts show increased glycolysis and redox homeostasis with extracellular metabolomes that overlap with those of irreparable DNA damage, aging, and disease,” J Proteome Res., vol. 14, pp. 1854-71, 2015)。したがって該老化細胞の細胞外条件は、成長細胞、コンフルエント細胞または静止細胞から選択され得る正常細胞の細胞外環境におけるチミジンの正常な生理学的濃度に比較して低濃度のチミジンになるように選択されてもよく、対応する正常な生理学的条件は、正常細胞の細胞外環境におけるチミジンの濃度である。
【0141】
幾つかの実施形態において、該老化細胞の細胞外条件は、正常な成長細胞、コンフルエント細胞または静止細胞の細胞外環境におけるグリシルイソロイシン、グリシルバリン、グリシルロイシン、イソロイシルグリシンおよびバリルグリシンから選択されるジペプチドの濃度に比較して、低濃度の同ジペプチドであってもよい(James et al., “Senescent human fibroblasts show increased glycolysis and redox homeostasis with extracellular metabolomes that overlap with those of irreparable DNA damage, aging, and disease,” J Proteome Res., vol. 14, pp. 1854-71, 2015)。したがって該老化細胞の細胞外条件は、成長細胞、コンフルエント細胞または静止細胞から選択され得る正常細胞の細胞外環境におけるジペプチドの正常な生理学的濃度に比較して低濃度の同ジペプチドになるように選択されてもよく、対応する正常な生理学的条件は、正常細胞の細胞外環境における同ジペプチドの濃度である。
【0142】
幾つかの実施形態において、該老化細胞の細胞外条件は、正常な成長細胞、コンフルエント細胞または静止細胞の細胞外環境におけるリノレアート、ジホモリノレアート、および10-ヘプタデセノアートから選択される脂肪酸の濃度に比較して、低濃度の同脂肪酸であってもよい(James et al., “Senescent human fibroblasts show increased glycolysis and redox homeostasis with extracellular metabolomes that overlap with those of irreparable DNA damage, aging, and disease,” J Proteome Res., vol. 14, pp. 1854-71, 2015)。したがって該老化細胞の細胞外条件は、成長細胞、コンフルエント細胞または静止細胞から選択され得る正常細胞の細胞外環境におけるリノレアート、ジホモリノレアート、および10-ヘプタデセノアートから選択される脂肪酸の正常な生理学的濃度に比較して低濃度の同脂肪酸になるように選択されてもよく、対応する正常な生理学的条件は、正常細胞の細胞外環境における同脂肪酸の濃度である。
【0143】
幾つかの実施形態において、該老化細胞の細胞外条件は、正常な成長細胞、コンフルエント細胞または静止細胞の細胞外環境における2-ヒドロキシパルミタート、2-ヒドロキシステアラート、3-ヒドロキシデカノアート、3-ヒドロキシオクタノアート、およびグリセロホスホリルコリンから選択されるリン脂質代謝産物の濃度に比較して、高濃度の同リン脂質であってもよい(James et al., “Senescent human fibroblasts show increased glycolysis and redox homeostasis with extracellular metabolomes that overlap with those of irreparable DNA damage, aging, and disease,” J Proteome Res., vol. 14, pp. 1854-71, 2015)。したがって該老化細胞の細胞外条件は、成長細胞、コンフルエント細胞または静止細胞から選択され得る正常細胞の細胞外環境におけるリン脂質代謝産物の正常な生理学的濃度に比較して、高濃度の同リン脂質代謝産物になるように選択されてもよく、対応する正常な生理学的条件は、正常細胞の細胞外環境における同リン脂質代謝産物の濃度である。
【0144】
幾つかの実施形態において、該老化細胞の細胞外条件は、正常な成長細胞、コンフルエント細胞または静止細胞の細胞外環境におけるアラニン、C-グリコシルトリプロファン、キヌレニン、ジメチルアルギニンおよびオルチチン(ortithine)から選択されるアミノ酸代謝産物の濃度に比較して、高濃度の同アミノ酸代謝産物であってもよい(James et al., “Senescent human fibroblasts show increased glycolysis and redox homeostasis with extracellular metabolomes that overlap with those of irreparable DNA damage, aging, and disease,” J Proteome Res., vol. 14, pp. 1854-71, 2015)。したがって該老化細胞の細胞外条件は、成長細胞、コンフルエント細胞または静止細胞から選択され得る正常細胞の細胞外環境におけるアミノ酸代謝産物の正常な生理学的濃度に比較して、高濃度の同アミノ酸代謝産物になるように選択されてもよく、対応する正常な生理学的条件は、正常細胞の細胞外環境におけるアミノ酸代謝産物の濃度である。
【0145】
幾つかの実施形態において、該老化細胞の細胞外条件は、正常な成長細胞、コンフルエント細胞または静止細胞の細胞外環境におけるフェニルピルバートの濃度に比較して低濃度のフェニルピルバートであってもよい(James et al., “Senescent human fibroblasts show increased glycolysis and redox homeostasis with extracellular metabolomes that overlap with those of irreparable DNA damage, aging, and disease,” J Proteome Res., vol. 14, pp. 1854-71, 2015)。したがって該老化細胞の細胞外条件は、正常細胞の細胞外環境におけるフェニルピルバートの正常な生理学的濃度に比較して、低濃度のフェニルピルバートになるように選択されてもよく、対応する正常な生理学的条件は、正常細胞の細胞外環境におけるフェニルピルバートの濃度である。
【0146】
幾つかの実施形態において、該老化細胞の細胞外条件は、正常な成長細胞、コンフルエント細胞または静止細胞の細胞外環境におけるフマラート、マロナート、エイコサペンタエノアートおよびシトラートから選択される代謝産物の濃度に比較して、高濃度の同代謝産物であってもよい(James et al., “Senescent human fibroblasts show increased glycolysis and redox homeostasis with extracellular metabolomes that overlap with those of irreparable DNA damage, aging, and disease,” J Proteome Res., vol. 14, pp. 1854-71, 2015)。したがって該老化細胞の細胞外条件は、正常細胞の細胞外環境におけるフマラート、マロナート、エイコサペンタエノアートおよびシトラートから選択される代謝産物の正常な生理学的濃度に比較して、高濃度の同代謝産物になるように選択されてもよく、対応する正常な生理学的条件は、正常細胞の細胞外環境における同代謝産物の濃度である。
【0147】
幾つかの実施形態において、老化細胞の細胞外条件は、正常な非静止細胞の細胞外環境におけるホスホコリンに対するグリセロホスホコリンの比と比較して高い同比であってもよい(Gey and Seeger, “Metabolic changes during cellular senescence investigated by proton NMR-spectroscopy,” Mech Ageing Dev., vol. 134, pp. 130-8, 2013)。老化細胞の細胞外条件は、正常な非静止細胞の細胞外環境におけるホスホコリンに対するグリセロホスホコリンの比と比較して高い同比になるように選択されてもよく、対応する正常な生理学的条件は、正常な非静止細胞の細胞外環境におけるホスホコリンに対するグリセロホスホコリンの比である。
【0148】
老化細胞は、総称で老化細胞関連分泌表現型(SASP)と呼ばれる種々の異なるタンパク質を分泌する。これらの分泌されたタンパク質としては、例えば、GM-CSF、GROa、GRC-α、β、γ、IGFBP-7、IL-1α、IL-6、IL-7、IL-8、MCP-1、MCP-2、MIP-la、MMP-1、MMP-10、MMP-3、アンフィレグリン、ENA-78、エオタキシン-3、GCP-2、GITR、HGF、ICAM-1、IGFBP-2、IGFBP-4、IGFBP-5、IGFBP-6、IL-13、IL-Iβ、MCP-4、MIF、MIP-3a、MMP-12、MMP-13、MMP-14、NAP2、オンコスタチン M、オステオプロテゲリン、PIGF、RANTES、sgpl30、TIMP-2、TRAIL-R3、Acrp30、アンギオゲニン、Axl、bFGF、BLC、BTC、CTACK、EGF-R、Fas、FGF-7、G-CSF、GDNF、HCC-4、I-309、IFN-γ、IGFBP-1、IGFBP-3、IL-1 Rl、IL-11、IL-15、IL-2R-a、IL-6 R、I-TAC、レプチン、LIF、MMP-2、MSP-a、PAI-1、PAI-2、PDGF-BB、SCF、SDF-1、sTNF RI、sTNF RII、トロンボポエチン、TIMP-1、tPA、uPA、uPAR、VEGF、MCP-3、IGF-1、TGF-β3 、MIP-1 -デルタ、IL-4、FGF-7、PDGF-BB、IL-16、BMP-4、MDC、MCP-4、IL-10、TIMP-1、Fit-3リガンド、ICAM-1、Axl、CNTF、INF-γ、EGF、およびBMP-6が挙げられる。老化細胞により分泌されるさらなるタンパク質としては、IGF-2、およびIGF-2R、IGFBP-3、IGFBP-7、TGF-β、WNT2、CXCR2結合ケモカイン、WNT16B、SFRP2、SPINK1、ENPP5、EREG、ANGPTL4、CSGALNACT、CCL26、AREG、ANGPT1、CCK、THBD、CXCL14、NOV、GAL、NPPC、FAM150B、CST1、MUCL1、NPTX2、TMEM155、EDN1、PSG9、ADAMTS3、CD24、PPBP、CXCL3、CST2、PSG8、PCOLCE2、PSG7、TNFSF15、C17orf67、CALCA、FGF18、BMP-2、MATN3、TFP1、SERPINI 1、TNFRSF25、およびIL-23Aが挙げられる。幾つかの実施形態において、該老化細胞の細胞外条件は、正常な細胞の細胞外環境におけるこれらの分泌タンパク質の濃度、および正常細胞の細胞外環境における同分泌タンパク質(複数可)の非存在下での正常な生理学的条件または正常な生理学的濃度に比較して、高濃度の同分泌タンパク質の1種もしくは複数、または同タンパク質の1種もしくは複数の存在のいずれかである。
【0149】
本発明の条件付き活性タンパク質は、老化細胞除去薬として用いられて、老化細胞を対象から殺傷または除去してもよい。条件付き活性タンパク質と老化細胞との相互作用で、細胞老化の際に活性化される細胞生存シグナル伝達経路および/または炎症経路を阻害することを通して老化細胞を阻害または殺傷してもよい。細胞生存シグナル伝達経路および/または炎症経路の阻害は、老化細胞の死亡を導く老化細胞におけるアポトーシス経路などの細胞死経路を誘導し得る(即ち、開始、惹起、刺激し得る、または幾つかの手法において細胞死経路の抑制を除去もしくは阻害し得る)。
【0150】
老化の間に活性化される細胞生存シグナル伝達経路としては、srcキナーゼシグナル伝達経路、PI3K/Akt経路、PBK/Akt/mTor経路、p38/MAPK経路、ERK/MAPK経路、mTOR経路、インスリン/IGF-1シグナル伝達経路、およびTGF-βシグナル伝達経路が挙げられる。老化の間に活性化される炎症経路としては、p38/MAPKシグナル伝達経路、ERK/MAPK経路、srcキナーゼシグナル伝達経路、およびNF-kB経路が挙げられる。
【0151】
該srcキナーゼシグナル伝達経路は、細胞増殖、分化、アポトーシス、細胞接着およびストレス反応の調節に関与する(例えば、Wang, Oncogene, vol. 19, pp. 5643-50, 2000およびThomas et al, Annu. Rev. Cell Dev. Biol., vol. 13, pp. 513-609, 1997参照)。該srcキナーゼシグナル伝達経路は、マクロファージ介在性免疫反応をはじめとする炎症反応(例えば、Byeon et al, Mediators of Inflammation, vol. 2012, article ID 512926, 2012参照)および急性炎症反応(例えば、Okutani et al, Am. J. Physiol. Lung Cell Mol. Physiol., vol. 291, pp. L129-L141, 2006参照)にも関与する。したがってsrcキナーゼシグナル伝達経路を改変する条件付き活性タンパク質は、シグナル伝達経路および炎症経路の両方を改変してもよい。
【0152】
細胞のシグナル伝達経路および/または炎症経路を改変することが、1つもしくは複数の下流のタンパク質の機能に影響を与えてもよく、または1つもしくは複数の下流のタンパク質と各細胞シグナル伝達もしくは炎症経路の他の成分との相互作用に影響を与えてもよい。例えば、srcキナーゼシグナル伝達経路またはPBK/Akt経路を改変する条件付き活性タンパク質が、各経路における1つもしくは複数の下流のタンパク質の機能を改変してもよく、または1つもしくは複数の下流のタンパク質と各経路の他の成分との相互作用に影響を与えてもよい(例えば、実施例1;
図2B~2D参照)。老化細胞において上方制御される例示的タンパク質としては、P38/MAPK、ERK1/2、およびPBK(複合体)が挙げられる。特定の実施形態において、細胞シグナル伝達経路である該PBK/Akt経路は、老化の間に活性化され、本明細書に記載された条件付き活性タンパク質は、該PBK/Akt経路を阻害して、老化細胞においてアポトーシスを増進または誘導する。
【0153】
老化細胞の細胞外条件下でのアッセイ、および正常な生理学的条件下でのアッセイのためのアッセイ溶液は、例えばクエン酸ナトリウムなどのクエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、クレブス緩衝液などの重炭酸緩衝液、リン酸緩衝整理食塩水(PBS)緩衝液、ハンクス緩衝液、トリス緩衝液、HEPES緩衝液などから選択される成分を含む。該アッセイに適する当業者に公知の他の緩衝液が、用いられてもよい。
【0154】
本発明のアッセイ溶液は、無機化合物、イオンおよび有機分子から選択される少なくとも1種の成分、例えばヒトなどの哺乳動物または動物の体液中に一般に見いだされる成分を含有してもよい。これらの無機化合物、イオンおよび有機分子は、WO2016/138071に詳細に記載される。
【0155】
該条件付き活性タンパク質は、無機化合物、イオンおよび有機分子のうちの1つまたは複数と相互作用し得る。該条件付き活性タンパク質と、無機化合物、イオンおよび有機分子から選択され得る該成分とのそのような相互作用としては、水素結合、疎水性相互作用、およびファンデルワールス相互作用が挙げられる。
【0156】
幾つかの実施形態において、該老化細胞の細胞外条件は、5.5~7.2、または6.0~7.0、または6.2~6.8の範囲内のより低いpHであり、正常な生理学的条件は、正常な生理学的pH、例えば7.2~7.8の範囲内である。細胞外条件としてのpHのアッセイ溶液は、細胞外条件のより低いpHと、正常な生理学的pHの間のpKaの成分を含んでいてもよい。該pKaは、例えば細胞外条件のより低いpHから最大0.5、1、1.5、2、2.5、または3単位離れている。幾つかの実施形態におけるこの成分は、900a.m.u.未満の分子量を有し、例えばヒスチジン、ヒスタミン、水素化アデノシン二リン酸塩、水素化アデノシン三リン酸塩、クエン酸塩、重炭酸塩、酢酸塩、乳酸塩、二硫化物、硫化水素、アンモニウム、リン酸二水素塩およびそれらの任意の組み合わせから選択されてもよい。
【0157】
特定の条件付き活性タンパク質が、該条件付き活性タンパク質が誘導される親タンパク質のアミノ酸残基に比較して多数の(高い割合の)荷電アミノ酸残基を含有することが観察された。3種の正電荷のアミノ酸残基:リシン、アルギニンおよびヒスチジンと、2種の負電荷のアミノ酸残基:アスパラギン酸およびグルタミン酸が存在する。これらの荷電アミノ酸残基は、該条件付き活性タンパク質が誘導される親タンパク質と比較して、特定の条件付き活性タンパク質において過剰に提示される(over-represented)。結果として、該条件付き活性タンパク質中の荷電アミノ酸残基の数が増加するため、該条件付き活性タンパク質は、アッセイ溶液中で荷電分子種と相互作用する可能性が高い。これはまた、該条件付き活性タンパク質の活性に影響を及ぼす。
【0158】
特定の条件付き活性タンパク質が典型的にはアッセイ溶液中の異なる分子種の存在下で異なる活性を有することもまた、観察された。少なくとも2つのイオン化状態を有する分子種:pHなどの条件の1つの値で非荷電または低荷電の状態、ならびに同条件の異なる値で荷電またはより高荷電の状態は、該条件付き活性タンパク質の活性を改変し得る。該分子種の荷電またはより高荷電の状態は、該分子種と、条件付き活性タンパク質中に存在する荷電アミノ酸残基との相互作用を増加させ得る。このメカニズムを利用して、該条件付き活性タンパク質の選択性および/またはpH依存的活性を増大させてもよい。
【0159】
該条件付き活性タンパク質の電荷(複数可)の性質は、該条件付き活性タンパク質の活性に影響を及ぼすのに適した分子種を決定するのに用いられる1つの因子であり得る。幾つかの実施形態において、該条件付き活性タンパク質は、親タンパク質に比較して、より多くの正電荷のアミノ酸残基:リシン、アルギニンおよびヒスチジンを有していてもよい。したがって該条件付き活性タンパク質は、該活性が望ましい老化細胞の細胞外環境中に存在する特定の分子種と所望のレベルの相互作用を有するように、そして/または低活性が望ましい正常な生理学的条件において存在する特定の分子種と所望のレベルの相互作用を有するように選択され得る。
【0160】
該条件付き活性タンパク質の荷電アミノ酸残基の位置が、活性への影響を有していてもよい。例えば、該条件付き活性タンパク質の結合部位に対する荷電アミノ酸残基の近接性を利用して、該条件付き活性タンパク質の活性に影響を及ぼしてもよい。
【0161】
幾つかの実施形態において、該荷電分子種と該条件付き活性タンパク質との相互作用がタンパク質上の異なる部分、特に荷電または極性が付された部分の間に塩架橋を形成し得る例があってもよい。塩架橋の形成は、ポリペプチド構造を安定化することが知られている(Donald, et al., “Salt Bridges: Geometrically Specific, Designable Interactions,” Proteins, 79(3): 898-915, 2011; Hendsch, et al., “Do salt bridges stabilize proteins? A continuum electrostatic analysis,” Protein Science, 3:211-226, 1994)。該塩架橋は、通常は「ブレシング(breathing)」と呼ばれる一定した微細の構造変化を受けるタンパク質構造を安定化または固定することができる(Parak, “Proteins in action: the physics of structural fluctuations and conformational changes,” Curr Opin Struct Biol., 13(5):552-557, 2003)。構造の変動は、該条件付き活性タンパク質を効率的に認識させてそのパートナーに結合させるため、タンパク質構造の「ブレシング」は、タンパク質の機能およびそのパートナーとの結合に重要である(Karplus, et al., “Molecular dynamics and protein functions,” PNAS, vol. 102, pp. 6679-6685, 2015)。ことによると、該塩架橋は、パートナーが結合部位に接近するのを直接遮断し得るため、塩架橋を形成させることにより、該条件付き活性タンパク質上の結合部位、特に結合ポケットは、パートナーへの接近性が低くなり得る。結合部位から遠隔の塩架橋でさえも、アロステリック効果が、結合部位のコンフォメーションを改変して結合を阻害し得る。それゆえ、塩架橋が該条件付き活性タンパク質の構造を安定化(固定)した後、該タンパク質は、パートナーへの結合の際により低い活性になり、活性低下に導き得る。
【0162】
タンパク質およびその構造が塩架橋により安定化させる方法の公知の一例が、ヘモグロビンである。構造および化学試験から、化学基の少なくとも2つの組み合わせ、つまりpH7付近のpKa値を有するヒスチジンβ146およびα122のアミノ末端および側鎖が、塩架橋を担うことが、明らかとなった。デオキシヘモグロビンにおいて、β146の末端カルボン酸基は、他のαβ二量体のαサブユニットにおけるリシン残基と共に塩架橋を形成している。この相互作用は、ヒスチジン残基のイミダゾール基がプロトン化されていることを前提として、同じ鎖内の負電荷のアスパラギン酸94と塩架橋に参加し得る位置で、ヒスチジンβ146の側鎖を固着する(
図2)。高pHでは、ヒスチジンβ146の側鎖は、プロトン化されず、塩架橋は、形成しない。しかしpHが降下すると、ヒスチジンβ146の側鎖は、プロトン化されるようになり、ヒスチジンβ146とアスパラギン酸β94の間に塩架橋が形成し、それがデオキシヘモグロビンの四次構造を安定化させて、組織を活発に代謝する際に(より低いpHで)酸素が放出される傾向がより高まる。該ヘモグロビンは、酸素についてはpH依存性の結合活性を示し、低pHでは、酸素への結合活性が、塩架橋の形成のせいで低下する。その一方で高pHでは、酸素への結合活性は、塩架橋が非存在であるため上昇する。
【0163】
同様に、重炭酸塩などの小分子は、該条件付き活性タンパク質において塩架橋を形成することにより条件付き活性タンパク質によるパートナーへの結合活性を低下させてもよい。例えばpKa6.4未満のpHでは、重炭酸塩がプロトン化し、このため荷電されない。非荷電重炭酸塩は、塩架橋を形成することができず、こうして条件付き活性タンパク質とパートナーとの結合に及ぼす影響をほとんど有さない。このため、該条件付き活性タンパク質は、低pHではパートナーとの高い結合活性を有する。その一方で、重炭酸塩のpKaよりも大きな高pHでは、重炭酸塩は、プロトンを遊離することによりイオン化し、こうして負電荷になる。負電荷の重炭酸塩は、該条件付き活性タンパク質上の正電荷部分または極性化部分の間に塩架橋を形成して、該条件付き活性タンパク質の構造を安定化させるであろう。これは、該条件付き活性タンパク質とそのパートナーとの結合を遮断または低減するであろう。このため、該条件付き活性タンパク質は、高pHでは低活性を有する。こうして該条件付き活性タンパク質は、重炭酸の存在下でpH依存性活性を有し、高pHよりも低pHでより高い結合活性を有する。
【0164】
重炭酸塩などの分子種が、アッセイ溶液に存在しない場合、該条件付き活性タンパク質は、条件付き活性を喪失し得る。これは、該条件付き活性タンパク質上の、該タンパク質の構造を安定化(固定)する塩架橋が欠如することが原因の可能性がある。したがって該パートナーは、任意のpHで該条件付き活性タンパク質上の結合部位に対して同様の接近性を有し、第一のpHおよび第二のpHで類似の活性を生じるであろう。
【0165】
塩架橋(イオン結合)は、分子種が該条件付き活性タンパク質の活性に影響を与えるための最も強力で、最も一般的な手法であるが、そのような分子種と該条件付き活性タンパク質の間の他の相互作用もまた、該条件付き活性タンパク質の構造の安定化(固定)に寄与し得ることが、理解されなければならない。他の相互作用としては、水素結合、疎水性相互作用、およびファンデルワールス相互作用が挙げられる。
【0166】
幾つかの実施形態において、該条件付き活性タンパク質は、適切な化合物またはイオンを該分子種として選択するために、該条件付き活性タンパク質を親タンパク質と比較し、該条件付き活性タンパク質がより高い割合の負電荷のアミノ酸残基または正電荷のアミノ酸残基を有するか否かを決定するために進化させる。その後、正常な生理学的pHで適切な電荷を有する化合物を選択して、該条件付き活性タンパク質の活性に影響を及ぼしてもよい。例えば、該条件付き活性タンパク質が、該親タンパク質よりも高い割合の正電荷のアミノ酸残基を有する場合、該適切な化合物は、典型的には該条件付き活性タンパク質と相互作用するために正常な生理学的pHで負電荷になるはずである。その一方で、該条件付き活性タンパク質は、該親タンパク質よりも高い割合の負電荷のアミノ酸残基を有する場合、該適切な小分子は、典型的には該条件付き活性タンパク質と相互作用するために正常な生理学的pHで正電荷になるはずである。
【0167】
したがって、適切な分子種は、老化細胞の細胞外条件のより低いpHでの非荷電または低荷電状態から、正常な生理学的pHの荷電状態またはより高荷電状態へ遷移する無機または有機分子であってもよい。該分子種は、典型的には該より低いpHと正常な生理学的pHの間のpKaを有するはずである。例えば重炭酸塩は、6.4のpKaを有する。したがってpH7.4などのより高いpHでは、負電荷の重炭酸塩が、該条件付き活性タンパク質中の荷電アミノ酸残基に結合して、活性を低減するであろう。その一方で、pH6.0~6.2などのより低いpHでは、より低荷電の重炭酸塩が、該条件付き活性タンパク質へ同量で結合せず、したがって該条件付き活性タンパク質のより高い活性を可能にするであろう。
【0168】
二硫化物は、pKa7.05を有する。したがって、pH7.4などのより高いpHでは、より負電荷の二硫化物が、該条件付き活性タンパク質の正電荷のアミノ酸残基に結合して、活性を低減するであろう。その一方で、pH6.0~6.8などのより低いpHでは、より低電荷の硫化水素/二硫化物は、同レベルの該条件付き活性タンパク質に結合せず、こうして該条件付き活性タンパク質のより高い活性を可能にするであろう。
【0169】
一部の分子種は、二硫化物、硫化水素、ヒスチジン、ヒスタミン、クエン酸塩、重炭酸塩、酢酸塩、および乳酸塩から選択される。これらの小分子のそれぞれは、6.2~7.0の間のpKaを有する。他の適切な小分子は、CRC Handbook of Chemistry and Physics, CRC pressによる96th Edition, 2015; Chemical Properties Handbook, McGraw-Hill Education, 1998などの本出願の原理を利用した教書に見出してもよい。
【0170】
例えば該分子種は、低分子量および/または比較的小さなコンフォメーションを有し、立体障害を最小限にすることにより条件付き活性タンパク質上の小さなポケットへの最大の接近を確保する。このため、小分子は典型的には、900a.m.u.未満、またはより好ましくは500a.m.u.未満、より好ましくは200a.m.u.未満、より好ましくは100a.m.u.の分子量を有する。例えば硫化水素、二硫化物および重炭酸塩は全て、低分子量および小さな構造を有し、条件付き活性タンパク質上のポケットへの接近を提供する。
【0171】
該アッセイ溶液中の該分子種の濃度は、例えば対象における該分子種の生理学的濃度、またはその付近である。例えば、重炭酸塩(ヒト血清中の)の生理学的濃度は、15~30mMの範囲内である。したがって該アッセイ溶液中の重炭酸塩の濃度は、10mM~40mM、または15mM~30mM、または20mM~25mM、または約20mMであってもよい。二硫化物の生理学的濃度もまた、低い。該アッセイ溶液中の二硫化物の濃度は、3~500nM、または5~200nM、または10~100nM、または10~50nMであってもよい。
【0172】
該分子種は、老化細胞の細胞外条件のためのアッセイ溶液、および正常な生理学的条件のためのアッセイ溶液中に、実質的に同じ濃度、例えば重炭酸塩では約20μMで存在してもよい。
【0173】
幾つかの実施形態において、該条件付き活性タンパク質は、2種以上の異なる小分子、例えば重炭酸塩とヒスチジンの組み合わせが存在する場合には、pH依存性である。それゆえ、これらの2種以上の小分子が、該アッセイ溶液中に存在する。
【0174】
該アッセイ溶液中の分子種は、その場でアッセイ溶液の成分から形成されてもよく、または直接アッセイ溶液中に含まれてもよい。例えば空気からのCO2をアッセイ溶液に溶解させて、重炭酸塩をアッセイ溶液中の分子種として提供してもよい。別の例として、リン酸二水素ナトリウムをアッセイ溶液に添加して、リン酸水素塩をアッセイ溶液中の分子種として提供してもよい。
【0175】
該分子種が存在しない場合、該条件付き活性タンパク質は、pH依存性を喪失してもよい。したがって該分子種の非存在下では、該条件付き活性タンパク質は、老化細胞の細胞外条件のより低いpHと、該分子種の非存在下での正常な生理学的pHの間で類似の活性を有していてもよい。この同じ結果が、正常な生理学的条件と異なる老化細胞の任意の細胞外条件に基づいて実現され得る。
【0176】
幾つかの実施形態において、該条件付き活性タンパク質は、補助的タンパク質の存在下で、正常な生理学的pHでの活性に比較して、老化細胞の細胞外条件のより低いpHで高い同活性を示す。該補助的タンパク質は、血液またはヒト血清中に存在するタンパク質であってもよい。1つの適切なタンパク質は、アルブミン、特にウシアルブミンまたはヒトアルブミンなどの哺乳動物アルブミンであってもよい。
【0177】
一態様において、アルブミンなどの該補助的タンパク質は、該進化のステップにより生成される突然変異体タンパク質から該条件付き活性タンパク質をスクリーニングおよび選択するのに用いられるアッセイ溶液中に存在する。別の態様において、アルブミンなどの補助的タンパク質を含むアッセイ溶液を用いて、同じまたは異なる条件下で選択された条件付き活性タンパク質の活性をテストする。
【0178】
幾つかの実施形態において、本出願で議論されたこれらの無機化合物、イオンおよび有機分子の2種以上が、実質的に同じ濃度で、正常な生理学的条件のため、および老化細胞の細胞外条件のための両アッセイ溶液に添加される。例えば重炭酸塩およびヒスチジンの両方が、両アッセイ溶液に添加される。
【0179】
一実施形態において、ヒト血清が、正常な生理学的条件のため、および老化細胞の細胞外条件のための両アッセイ溶液に、実質的に同じ濃度で添加されてもよい。ヒト血清は、多数の無機化合物、イオン、有機分子(タンパク質など)を有するため、該アッセイ溶液は、2種のアッセイ溶液の間で実質的に同じ濃度で存在する無機化合物、イオン、有機分子から選択される複数および多数の成分を有するであろう。
【0180】
幾つかの他の実施形態において、2種以上の成分の少なくとも1種が、正常な生理学的条件のため、および老化細胞の細胞外条件のためのアッセイ溶液に、異なる濃度で添加される。例えば重炭酸塩およびヒスチジンの両方が、該アッセイ溶液に添加される。該重炭酸塩濃度は、アッセイ溶液間で異なっていてもよいが、ヒスチジンが、両アッセイ溶液中で同じ濃度を有していてもよい。
【0181】
幾つかの実施形態において、該アッセイ溶液は、2種以上の条件に依存する活性を有する条件付き活性生体タンパク質を選択するように設計されてもよい。1つの例示的実施形態において、該条件付き活性タンパク質は、pHおよび重炭酸塩の両方に依存する活性を有していてもよい。そのような条件付き活性タンパク質を選択するためのアッセイ溶液は、7.2~7.6のpH、25~30mMの範囲内の濃度の重炭酸塩を有する正常な生理学的条件のためのアッセイ溶液であってもよい。老化細胞の細胞外条件のためのアッセイ溶液は、6.4~6.8のpH、10~20mMの範囲内の濃度の重炭酸塩を有してもよい。場合により、正常な生理学的条件および老化細胞の細胞外条件の両方のアッセイ溶液はまた、イオンを含んで突然変異体タンパク質と結合パートナーの間の結合を支援し、こうして条件付き活性タンパク質へのヒット数を増加させてもよい。
【0182】
幾つかの実施形態において、血清の特定の成分が、目的のために該アッセイ溶液から最小化または除外されてもよい。例えば抗体をスクリーニングする際、抗体と結合する、または抗体を吸着する血清成分は、該アッセイ溶液中で最小化または該アッセイ溶液から除外され得る。種々の異なる条件下で条件付き活性ではなく、むしろ単に血清中に存在する成分に結合する結合突然変異体抗体など、そのような結合抗体は、それにより偽陽性を与える場合がある。したがって、アッセイ中で突然変異体タンパク質に潜在的に結合し得る成分を最小化または除外するためのアッセイ成分の注意深い選択が、所望の結合パートナー以外のアッセイ中の成分に結合することにより条件付き活性について陽性と不注意に同定され得る偽陽性の突然変異体タンパク質の数を低減し得る。例えば、ヒト血清中の成分と結合する傾向を有する突然変異体タンパク質がスクリーニングされる幾つかの実施形態において、ヒト血清の成分に結合する突然変異体タンパク質により誘発される偽陽性の可能性を低減または排除するために、ウシ血清アルブミンが該アッセイ溶液中で用いられてもよい。他の類似の置換えもまた、特定の例で行われて、当業者により充分に察知される同様の目標を実現することができる。
【0183】
幾つかの実施形態において、該進化のステップで、先に議論された条件付き活性の特徴の他の所望の特性を同時に有し得る突然変異体タンパク質を生成してもよい。進化され得る適切な他の所望の特性としては、結合親和性、発現、ヒト化などを挙げることができる。それゆえ本発明を用いて、これらの他の所望の特性の少なくとも1つまたは複数の改善も有する条件付き活性タンパク質を生成してもよい。
【0184】
幾つかの実施形態において、該条件付き活性タンパク質を、例えば第二の進化ステップにおいて、本明細書に開示された変異原性技術の1つを利用してさらに突然変異させて、結合親和性、発現、ヒト化などの条件付き活性タンパク質の別の特性を改善してもよい。該第二の進化ステップの後に、該突然変異体タンパク質は、該条件付き活性および該改善された特性の両方についてスクリーニングされてもよい。
【0185】
幾つかの実施形態において、親タンパク質を進化させて突然変異体タンパク質を生成した後、
(a)アッセイにおける該親タンパク質の活性に比較した、該正常な生理学的条件下での同アッセイにおける同活性の低下、および正常な生理学的条件下でのアッセイにおける該条件付き活性タンパク質の活性に比較した、該老化細胞の細胞外条件下での該アッセイにおける同活性の上昇;ならびに
(b)アッセイにおける該親タンパク質の活性に比較した、該正常な生理学的条件下での同アッセイにおける同活性の低下、および該老化細胞の細胞外条件下でのアッセイにおける該親タンパク質の活性に比較した、該老化細胞の細胞外条件下での該アッセイにおける同活性の上昇、
のうちの少なくとも1つを示す、第一の条件付き活性タンパク質が選択される。
【0186】
選択された第一の条件付き活性タンパク質は、その後、さらに1つまたは複数の追加の進化、発現および選択ステップに供されて、同じく
(a)アッセイにおける該親タンパク質の活性に比較した、該正常な生理学的条件下での同アッセイにおける同活性の低下、および正常な生理学的条件下でのアッセイにおける該条件付き活性タンパク質の活性に比較した、該老化細胞の細胞外条件下での該アッセイにおける同活性の上昇;ならびに
(b)アッセイにおける該親タンパク質の活性に比較した、該正常な生理学的条件下での同アッセイにおける同活性の低下、および該老化細胞の細胞外条件下でのアッセイにおける該親タンパク質の活性に比較した、該老化細胞の細胞外条件下での該アッセイにおける同活性の上昇、
のうちの少なくとも1つを示す少なくとも1つの第二の条件付き活性タンパク質を選択してもよい。第二の活性は、第一の活性と同様であってもよく、その場合、第二の条件付き活性タンパク質が、第一の条件付き活性タンパク質に比較して、細胞外条件での活性と正常な生理学的条件での活性の間でより大きな比を有することが望ましい。幾つかの実施形態において、該第二の活性は、第一の活性と異なる活性であってもよく、その場合、内在化効率または特異的エピトープへの結合などの活性が、第二の活性であってもよい。
【0187】
特定の実施形態において、本発明は、1.0より大きな、正常な生理学的条件での活性に対する老化細胞の細胞外条件での活性の比(例えば、2つの条件の間に高い選択性)を有する条件付き活性タンパク質を生成することを目標とする。正常な生理学的条件での活性に対する老化細胞の細胞外条件での活性の比または選択性は、少なくとも約1.3:1、または少なくとも約2:1、または少なくとも約3:1、または少なくとも約4:1、または少なくとも約5:1、または少なくとも約6:1、または少なくとも約7:1、または少なくとも約8:1、または少なくとも約9:1、または少なくとも約10:1、または少なくとも約11:1、または少なくとも約12:1、または少なくとも約13:1、または少なくとも約14:1、または少なくとも約15:1、または少なくとも約16:1、または少なくとも約17:1、または少なくとも約18:1、または少なくとも約19:1、または少なくとも約20:1、または少なくとも約30:1、または少なくとも約40:1、または少なくとも約50:1、または少なくとも約60:1、または少なくとも約70:1、または少なくとも約80:1、または少なくとも約90:1、または少なくとも約100:1であってもよい。
【0188】
一実施形態において、該条件付き活性タンパク質は、抗体であり、それは、少なくとも約5:1、または少なくとも約6:1、または少なくとも約7:1、または少なくとも約8:1、または少なくとも約9:1、または少なくとも約10:1、または少なくとも約20:1、または少なくとも約40:1、または少なくとも約70:1、または少なくとも約100:1の、正常な生理学的条件での活性に対する老化細胞の細胞外条件での活性の比を有していてもよい。
【0189】
幾つかの実施形態において、該条件付き活性タンパク質は、リンカー(L)を通してマスキング部分(MM)にコンジュゲートされた抗体または抗体断片(総称的に「抗体」と呼ぶ)を含むプロボディーである。該プロボディーは、正常細胞の細胞外環境に比較して、老化細胞の細胞外環境でより活性がある。特に正常細胞の細胞外環境において、プロボディーのマスキング部分は、抗体の活性をマスキングし、結果として、標的老化細胞に対してより低い結合活性を有する。該マスキング部分は、老化細胞の細胞外環境に存在するプロテアーゼにより抗体から切断されることになる。該抗体はそれにより、暴露されて、標的老化細胞に自由に結合することができるようになる。それゆえ該プロボディーは、老化細胞の細胞外環境における標的老化細胞に対して、正常細胞の細胞外環境における同標的への結合活性よりも高い結合活性を有する。
【0190】
プロボディーに含まれ得る抗体断片としては、抗体(VL、VH)の軽鎖および/または重鎖の可変または超可変領域、可変断片(Fv)、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fab断片、一本鎖抗体(scAb)、一本鎖可変領域(scFv)、相補性決定領域(CDR)、ドメイン抗体(dAb)、BHHまたはBNAR型の単一ドメイン重鎖免疫グロブリン、ならびに単一ドメイン軽鎖免疫グロブリンを挙げることができる。
【0191】
該マスキング部分は、マスキング部分を含まない抗体の結合活性に比較して、標的老化細胞へのプロボディー中の同抗体の結合活性を低減するように機能する(例えば、マスキング部分がプロボディーから切断された後)。標的老化細胞への該抗体の結合活性は、マスキング部分により、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%低減され得る。結合活性の低減は、例えば少なくとも2、4、6、8、12、28、24、30、36、48、60、72、84、または96時間の期間であり得る。
【0192】
一実施形態において、該マスキング部分(MM)は、抗体(Ab)の1つまたは複数の可変領域へ、リンカー(L)を介してコンジュゲートして、抗体と標的老化細胞の間にバリアを生成する。例えば該マスキング部分は、1つまたは複数の可変領域のN末端にコンジュゲートされてもよい。マスキング部分とリンカーは、1つまたは複数の可変領域のN末端にコンジュゲートされた一本鎖を形成している。別の例において、該マスキング部分は、1つまたは複数の可変領域のアミノ酸の側鎖にコンジュゲートされていてもよく、この場合、該マスキング部分とリンカーは、1つまたは複数の可変領域におけるアミノ酸の側鎖にコンジュゲートされた一本鎖を形成している。さらに別の例において、該マスキング部分は、プロボディーが抗体の断片のみ(可変領域のみなど)を含む場合には、1つまたは複数の可変領域のC末端にコンジュゲートされている。幾つかの実施形態において、該プロボディーは、N末端からC末端まで、MM-L-Abの構造を有する。別の実施形態において、該プロボディーは、N末端からC末端まで、Ab-L-MMの構造を有する。
【0193】
幾つかの実施形態において、該マスキング部分は、抗体の可変領域の1つまたは複数に結合するペプチドのための多様なペプチドのライブラリーをスクリーニングすることにより同定されてもよい(Desnoyers et al., “Tumor-specific activation of an EGFR-targeting probody enhances therapeutic index,” Sci Transl Med., vol. 5, 207ra144, 2013)。リンカーを通して抗体にコンジュゲートされると、抗体へ特異的に結合して、標的老化細胞への抗体の結合を遮断し得るペプチドが、マスキング部分として選択される。該スクリーニングは、非限定的にパニング、蛍光活性化セルソーティングおよびストレプトアビジンコーティング磁気ビーズを用いた磁気選別法をはじめとする公知の技術を利用して実施されてもよい(Rice et al., “Bacterial display using circularly permuted outer membrane protein OmpX yields high affinity peptide ligands,” Protein Sciences,vol. 15, pp. 825-36, 2006)。
【0194】
幾つかの実施形態において、ランダムペプチドライブラリー(例えば、約2~約40アミノ酸、または約5~約30アミノ酸、または約8~約20アミノ酸、または40より大きなアミノ酸を有するペプチド)をスクリーニング法に用いて、適切なマスキング部分を同定してもよい。例えば、各ペプチド足場が膜貫通タンパク質および候補物質で構成される、ペプチド足場のライブラリーを提供することを含むスクリーニング手順を通して、抗体への特異的結合親和性を有するマスキング部分を同定することができる。その後、該ライブラリーは、抗体への検出可能な結合活性を有する1つまたは複数の適切なマスキング部分を同定するために、抗体と接触される。スクリーニングは、もう1回の磁気活性化選別法または蛍光活性化セルソーティングを含み得る。
【0195】
したがって本発明は、該マスキング部分がプロボディー中の抗体に特異的であり得ることを企図する。特定の抗体に充分に作用する1つのマスキング部分が、別の抗体に対してより低い最適性であってもよい。したがって該抗体に最良なマスキング部分についての、プロボディー中の抗体を利用した多様なペプチドライブラリーのスクリーニングが、本発明の幾つかの実施形態で重要になり得る。
【0196】
幾つかの実施形態において、該マスキング部分は、合成ペプチドの多様なライブラリーからスクリーニングされる。このタイプのマスキング部分は、標的老化細胞(抗体の天然の結合パートナー)に対して特定レベルの類似性を有し得る。特定の実施形態において、該マスキング部分は、抗体の天然の結合パートナーの後でモデリングされてもよい。例えば、該天然の結合パートナーは、1つまたは複数のアミノ酸残基を変化させて抗体への結合活性をわずかに低下させることにより修飾されてもよい。他の実施形態において、該マスキング部分は、抗体の天然の結合パートナーと5%以下、7%以下、10%以下、15%以下、20%以下、25%以下、30%以下、35%以下、40%以下、45%以下、50%以下、55%以下、60%以下、65%以下、70%以下、75%以下、または80%以下の配列同一性を有する。
【0197】
該マスキング部分の構造特性は、標的老化細胞への抗体結合を妨害するのに必要となる最小アミノ酸配列、抗体(全抗体または断片)の大きさ、リンカーの長さその他の複数の因子に依存する。幾つかの実施形態において、該マスキング部分は、共有結合により抗体に連結されている。一例において、該抗体は、リンカーと抗体の間のシステイン-システイン・ジスルフィド架橋によりマスキング部分に連結されている。別の例において、該抗体は、リンカーと抗体の間のペプチド結合によりマスキング部分に連結されている。
【0198】
幾つかの実施形態において、該マスキング部分は、抗体に特異的に結合することができず、むしろ立体障害などの1つまたは複数の非特異的相互作用を通して標的老化細胞への抗体の結合を妨害するに過ぎない。例えば、プロボディーの構造が、マスキング部分に、電荷に基づく相互作用を通して抗体をマスキングさせ、それによりマスキング部分を適所に保持して、抗体の結合部位への接近を妨害するように、該マスキング部分がプロボディー内に位置してもよい。
【0199】
プロボディーのリンカーは、マスキング部分と抗体の間に位置する。該リンカーは、切断部位(CS)を含み、そこで老化細胞の細胞外環境中に存在するプロテアーゼが、リンカーを切断して、プロボディーからマスキング部分を遊離させる。該抗体はその後、露出され、標的老化細胞に結合するために利用可能になる。該リンカーは、切断部分の一方または両方の側部に隣接する1つまたは複数の可撓性領域(FR)をさらに含んでいてもよい。例えば該リンカーは、-FR-CS-FR-、-FR-CS-、-CS-FR-、-FR-FR-CS-、-CS-FR-FR-、-FR-FR-CS-FR-、-FR-CS-FR-FR-、-FR-FR-CS-FR-FR-の構造を有していてもよい。
【0200】
該可撓性領域は、マスキング部分のコンフォメーションに可撓性を提供して、マスキング部分を抗体の結合部位に到達させ、結合を妨害させる。該可撓性領域は、最大の可撓性を提供するために小さな側鎖を有するグリシン、セリン、およびアラニンなどの小さなアミノ酸から本質的になる。グリシンおよびグリシン-セリンポリマーは、相対的に構造が定まらず、それゆえ成分の間のニュートラルテザー(neutral tether)として働くことができる。グリシンは、アラニンよりも有意によりファイ-プサイの空間(phi-psi space)に接近し、より長い側鎖を有する残基よりもかなり制約が小さい(Scheraga,Rev. Computational Chem., pp. 11173-11142, 1992参照)。
【0201】
適切な可撓性領域は、1アミノ酸~20アミノ酸、2アミノ酸~15アミノ酸、3アミノ酸~12アミノ酸、4アミノ酸~10アミノ酸、5アミノ酸~9アミノ酸、6アミノ酸~8アミノ酸、または7アミノ酸~8アミノ酸など異なる長さを有し得、1、2、3、4、5、6、または7アミノ酸長であってもよい。
【0202】
模範的可撓性領域としては、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー(例えば、(GS)n(SEQ ID NO: 14)、(GGS)n(SEQ ID NO: 15)、(GSGGS)n(SEQ ID NO: 16)、(GSGGS)n(SEQ ID NO: 17)、および(GGGS)n(SEQ ID NO: 18)(ここでnは、少なくとも1の整数である)など)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、および当該技術分野で公知の他の可撓性領域が挙げられる。可撓性領域のさらなる例としては、GGSG(SEQ ID NO: 19)、GGSGG(SEQ ID NO: 20)、GSGSG(SEQ ID NO: 21)、GSGGG(SEQ ID NO: 22)、GGGSG(SEQ ID NO: 23)、GSSSG(SEQ ID NO: 24)、GSSGGSGGSGGSG(SEQ ID NO: 25)、GSSGGSGGSGG(SEQ ID NO: 26), GSSGGSGGSGGS(SEQ ID NO: 27)、GSSGGSGGSGGSGGGS (SEQ ID NO: 28)、GSSGGSGGSG(SEQ ID NO: 29)、GSSGGSGGSGS(SEQ ID NO: 30)、GSSGT(SEQ ID NO: 31)またはGSSG(SEQ ID NO: 32)が挙げられる。
【0203】
切断部位は、老化細胞の細胞外環境においてプロテアーゼの基質である。該切断部位は、一般にはリンカーの一部として含まれる。しかし幾つかの例において、プロボディーが阻害された状態、または未切断の状態、またはマスキングされた状態である場合に切断部位の全てまたは一部が抗体のマスキングを容易にするように、該切断部位がマスキング部分の一部であってもよい。
【0204】
該切断部位は、老化細胞の細胞外環境中のプロテアーゼに基づいて選択されてもよい。該老化細胞は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)などの細胞外環境にプロテアーゼを分泌することが知られている。MMPファミリーメンバーの例としては、ストロメリシン-1および-2(それぞれ、MMP-3および-10)およびコラゲナーゼ-1(MMP-1)が挙げられる。他のMMPとしては、MMP1、MMP2、MMP7、MMP8、MMP9、MMP13およびMMP14が挙げられる。プロボディー中で用いられる切断部位の設計を支援し得るこれらのプロテアーゼの天然基質もまた、公知である。例えばこれらのMMPは、MCP-1、-2および-4、ならびにIL-8を切断し得る。種々の他のCXCL/CCLファミリーメンバーもまた、MMP-9、-2、または-7により切断され得る。セリンプロテアーゼもまた、老化細胞の細胞外環境に存在する。セリンプロテアーゼのメンバーとしては、ウロキナーゼ型または組織型プラスミノーゲン活性化因子(それぞれ、uPAまたはtPA)が挙げられる。Coppe et al., “The Senescence-Associated Secretory Phenotype: The Dark Side of Tumor Suppression,” Annu Rev Pathol., vol. 5, pp. 99-118, 2010を参照されたい。
【0205】
1つの模範的実施形態において、該切断部位は、マトリックスメタロプロテアーゼの基質であり、このため該メイキング部分(making moiety)を遊離するためにMMPにより切断可能である。別の実施形態において、該切断部位は、セリンuPAまたはPSAの基質である。幾つかの実施形態において、該プロボディーは、1つより多くの切断部位を含み得、それぞれが異なるプロテアーゼの基質であり得る。プロテアーゼの基質であり得る模範的切断部位としては、ADAM10、ADAM12、ADAM17、ADAMTS、ADAMTS5、BACE、カスパーゼ1~14カテプシンA、カテプシンB、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンK、カテプシンS、FAP、MT1-MMP、グランザイムB、グアニジノベンゾアターゼ、へプシン、ヒト好中球エラスターゼ、レグマイン、マトリプターゼ2、メプリン、MMP1~17、MT-SP1、ネプリライシン、NS3/4A、プラスミン、PSA、PSMA、TRACE、TMPRSS 3、TMPRSS 4、およびuPAが挙げられる。幾つかの模範的切断部位は、MMPにより切断され得るPLGLWA(SEQ ID NO: 33)、およびコラゲナーゼにより切断され得るGPQGIAGQ(SEQ ID NO: 34)である。切断部位の他の例としては、YGLLGIAGPPGP(SEQ ID NO: 35)、SPGRVVRG(SEQ ID NO: 36)、VRG(SEQ ID NO: 37)が挙げられる。
【0206】
幾つかの実施形態において、該プロボディー中の抗体は、それ自体に条件付き活性がある。特に該抗体自体は、正常な生理学的条件での標的への結合活性に比較して、老化細胞の細胞外環境における条件での該標的に対してより高い同結合活性を有し得る。そのようなプロボディーは、(1)マスキング部分を切断して、マスキング部分から抗体の結合部位を解離すること、および(2)該抗体が正常な生理学的条件での結合活性に比較して、老化細胞の細胞外環境における条件で標的への高い結合活性を有すること、により、該プロボディーが老化細胞の細胞外環境に到達したら、二倍の増幅を提供する。
【0207】
一実施形態において、該条件付き活性タンパク質は、別の薬剤とコンジュゲートされることが意図された抗体である。該条件付き活性抗体は、少なくとも約10:1、または少なくとも約11:1、または少なくとも約12:1、または少なくとも約13:1、または少なくとも約14:1、または少なくとも約15:1、または少なくとも約16:1、または少なくとも約17:1、または少なくとも約18:1、または少なくとも約19:1、または少なくとも約20:1、または少なくとも約40:1、または少なくとも約60:1、または少なくとも約80:1、または少なくとも約100:1の正常な生理学的条件での活性に対する、老化細胞の細胞外条件での活性の高い比を有していてもよい。コンジュゲートされた薬剤が、例えば毒性または放射能がある場合、そのようなコンジュゲートされた薬剤は、疾患または処置部位で所望なら濃縮されるため、上記のことは特に重要になり得る。
【0208】
幾つかの実施形態において、該コンジュゲート剤は、Dレトロインベルソ型ペプチド(「DRIペプチド」)である。該DRIペプチドは、Dアミノ酸が逆配列であるため、誘導される天然タンパク質と類似のアミノ酸の側鎖トポロジーを維持し得る。加えて、該DRIペプチドは、タンパク質分解に対してより耐性があり、このため誘導される天然タンパク質よりもかなり長い半減期を有する傾向がある。その上、該DRIペプチドは、誘導される天然タンパク質の構造と類似の構造を有する。最後に、DRIペプチドは、誘導される天然タンパク質に匹敵する生物学的利用能を有する。したがって該DRIペプチドは、誘導される天然タンパク質の機能的代替物であり得、誘導される天然タンパク質と競合し得る。したがってDRIペプチドは、有望な医薬剤と見なされる。
【0209】
FOXO4は、損傷された細胞が老化を受けるか、またはアポトーシスを受けるかを決定する分子ピボットである。FOXO1、3および4をはじめとするFOXOタンパク質ファミリーは、成長因子のシグナル伝達により負に調節されるが、酸化ストレスにより活性化することもできる(Brunet,A. et al., Science,vol. 303, pp. 2011-2015(2004);de Keizer,P. L. et al., Cancer Res,vol. 70, pp. 8526-8536(2010);Essers,M. A. et al., EMBO J., vol. 23, pp. 4802-4812(2004))。構成的foxo1-/-マウスは、胚致死性であり、foxo3-/-マウスは、生殖器欠損を示すが、foxo4-/-マウスは、有意に欠損性の表現型を宿さない(Hosaka,T. et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A,vol. 101, pp. 2975-2980(2004);Castrillon,D. H. et al., Science,vol. 301, pp. 215-218(2003))。個々の条件付き体性foxo3-/-マウスは、有意に短縮された寿命を示すが、条件付き体性foxo1-/-およびfoxo4-/-は、示さない(Paik,J. H. et al., Cell,vol. 128, pp. 309-323(2007))。体性トリプル1、3、4-/-マウスは、リンパ腫の増加を示し、このためこの各FOXOタンパク質が機能的に余剰であることが示される(同書)。しかし注目すべきこととして、単一の体性foxo4-/-マウスは、いずれの短縮された寿命も、または無腫瘍生存期間のいずれの変化も示さない。同等物であるFOXO1およびFOXO3と異なり、FOXO4のmRNAおよびタンパク質発現は、老化が誘導したDNA損傷レベルに応答して有意に増加する。
【0210】
電離放射線(XRAY)誘導性DNA損傷に誘発された老化は、成長停止に必要となるDNA-SCARS(またはDNA Segments with Chromatin Alterations Reinforcing Senescence)と称される持続的な核焦点の形成を特徴とする(Rodier,F. et al., J Cell Sci,vol. 124, pp. 68-81 (2011))。これらのDNA損傷性条件下では、安定した短ヘアピンRNA干渉(shRNA)を用いたFOXO4発現の損失が、老化の代わりにアポトーシスを誘導した。このことから、遺伝子毒性ストレスに応答して、FOXO4は、細胞老化が起こるか、またはアポトーシスが起こるか、の分子内決定におけるピボット因子であることが示される。
【0211】
FOXO4が老化を選んでアポトーシスを制限するメカニズムは、p53腫瘍サプレッサータンパク質との物理的関連性を含む。p53は、DNA損傷の後の細胞運命を調節することが周知であり(Rodier,F. et al., Nucleic Acids Res,vol. 35, pp. 7475-7484(2007))、DNA-SCARSの主要成分である(Rodier,F. et al., Nat. Cell Biol., vol. 11, pp. 973-979(2009))。p53は、翻訳後修飾およびその相互作用パートナーに応じて、老化およびアポトーシスを誘導することができる(Vousden,K. H. et al., Nat. Rev. Mol. Cell Biol., vol. 8, pp. 275-283(2007))。p53は、Ser46上でリン酸化されると、細胞周期停止よりもアポトーシスに強く傾く(Bulavin,D. V. et al., EMBO J., vol. 18, pp. 6845-6854(1999))。しかしSer46は、活性化発癌遺伝子をはじめとする複数の老化誘導性刺激に応答してリン酸化される(Feng,L. et al., Cell Cycle,vol. 5, pp. 2812-2819(2006);Bischof,O. et al., EMBO J., vol. 21, pp. 3358-3369(2002))。DNA損傷条件下では、p53のSer46リン酸化が増加するようになり、Ser46リン酸化を担うHIPK2キナーゼとの干渉(Dauth,I. et al., Cancer Res,vol. 67, pp. 2274-2279(2007))が、FOXO4欠失により誘発されたアポトーシス応答を傷害する。こうしてFOXO4は、老化に傾いてp53シグナル伝達のアポトーシス機能を抑えることにより、老化細胞におけるアポトーシスを抑制する。FOXO4の阻害、特にp53との相互作用は、老化細胞をアポトーシスに切り替えるであろう。
【0212】
ヒトFOXO4タンパク質は、2種の変異体を有する(SEQ ID NO:1および2)。幾つかの実施形態において、FOXO4タンパク質の任意の断片が、FOXO4 DRIペプチドを設計するための基礎として用いられてもよい。一実施形態において、該FOXO4断片は、DNA結合ドメイン(SEQ ID NO:3)またはp53相互作用ドメイン(SEQ ID NO:4)などのFOXO4タンパク質の機能的ドメインの少なくとも一部を含む。
【0213】
FOXO4の機能を阻害し、そして/またはp53との相互作用を妨害し得る任意のFOXO4 DRIペプチドが、条件付き活性抗体へのコンジュゲート剤として用いられてもよい。特に、3種のFOXO4 DRIペプチド:LTLRKEPASE IAQSILEAYS QNGWANRRSG GKRP(SEQ ID NO:5)、LTLRKEPASE IAQSILEAYS QNGWANRRSG GKRPPPRRRQ RRKKRG(SEQ ID NO:6)、およびSEIAQSILEAYSQNGW(SEQ ID NO:7)は、FOXO4とp53との相互作用を効果的に妨害するのに好ましい。これらの3種のFOXO4 DRIペプチドは全て、Dアミノ酸残基からなる。これらのFOXO4 DRIペプチド中のDアミノ酸残基の少なくとも幾つかが、老化細胞においてアポトーシスを誘導する能力を有意に減じることなく、Lアミノ酸残基と置換えられていてもよい。これらのFOXO4 DRIペプチドは、FOXO4とp53の相互作用を妨害し、それによりp53を抑制するFOXO4の機能を阻害して、老化細胞のアポトーシスを誘導する。
【0214】
FOXO4は、それ自体が他のタンパク質により調節される。
図8を参照すると、FOXO4をはじめとするFOXOファミリーのメンバーが、リン酸化またはメチル化を通して他のタンパク質により活性化され、リン酸化を通してAMPK、JNK、MST1、CK1、STAT3、p38により、そしてメチル化を通してPRMT1により活性化される。ストレス活性化c-Jun N末端キナーゼ(JNK)およびエネルギーを感知するAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)が、酸化および栄養ストレス刺激への暴露の際に、FOXOをリン酸化および活性化する。FOXO4を活性化する任意のタンパク質が、本発明に有意なDRIペプチドの設計の基礎になり得る(即ち、天然または野生型タンパク質)。幾つかの実施形態において、該天然タンパク質は、AMPK、JNK、MST1、CK1、STAT3、p38およびPRMT1からなる群から選択される。
【0215】
JNKタンパク質を例とする。JNKは、FOXO4をリン酸化および活性化し得るc-Jun N末端キナーゼである。ヒトJNKは、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を有する。JNKタンパク質に基づくDRIペプチドは、競合メカニズムを用いて基質への接近を遮断することによりアロステリックに、そして選択的にJNKをモジュレートすることができる(Bonny,C. et al. Diabetes,vol. 50, pp. 77-82(2001);Borsello,T. et al. Trends Mol Med,vol. 10,pp. 239-244, (2004);およびBorsello,T. et al. Nat Med,vol. 9, pp. 1180-1186, (2003))。1つの模範的JNK DRIペプチドは、DQSRPVQPFLQLTTPRKP(SEQ ID NO:9)である。
【0216】
さらに、AMPK、JNK、MST1、CK1、STAT3、p38およびPRMT1の活性化因子もまた、該DRIペプチドの設計のための天然タンパク質として用いられてよい。例えばASK1は、JNKを活性化するアポトーシスシグナル調節キナーゼ1である。ヒトASK1は、GenBankアクセション番号 No.NP_005914を有する。ASK1タンパク質は、DRIペプチドの設計のための天然タンパク質であってもよい。そのようなDRIペプチドは、ASK1を阻害することができ、こうしてJNKの活性を抑制し、FOXO4の阻害を導くであろう。
【0217】
幾つかの実施形態において、本発明のDRIペプチドの設計のための天然タンパク質は、ヒトFOXO4、AMPK、JNK、MST1、CK1、STAT3、p38、PRMT1、およびASK1などのヒトタンパク質である。幾つかの他の実施形態において、本発明の該DRIペプチドの設計のための天然タンパク質は、FOXO4、AMPK、JNK、MST1、CK1、STAT3、p38、PRMT1、およびASK1の霊長類またはマウスタンパク質などの哺乳動物タンパク質である。オーソログタンパク質が別の分子種において機能し得ることが一般に理解されており、それはオーソログに基づいて設計されたDRIペプチドが別の分子種において機能し得ることを意味している。例えば、マウスFOXO4に基づいて設計されたDRIペプチドは、ヒトFOXO4上で機能する可能性があり、つまりヒトにおいて老化細胞のアポトーシスを誘導するために本発明のコンジュゲートとして用いられてもよい。
【0218】
一実施形態において、天然タンパク質の断片を用いて、DRIペプチドを設計する。別の実施形態において、天然タンパク質の全長を利用して、該DRIペプチドを設計する。これらの実施形態において、DRIペプチドのアミノ酸配列は、FOXO4、AMPK、JNK、MST1、CK1、STAT3、p38、PRMT1、およびASK1の天然タンパク質の断片または全長のアミノ酸配列の厳密な逆である。
【0219】
幾つかの他の実施形態において、DRIペプチドのアミノ酸配列は、FOXO4、AMPK、JNK、MST1、CK1、STAT3、p38、PRMT1、およびASK1の天然タンパク質の断片または全長のアミノ酸配列の厳密な逆ではない。そのような実施形態において、該DRIペプチドのアミノ酸配列は、天然タンパク質の断片または全長の逆配列と少なくとも51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%の配列同一性を有していてもよい。
【0220】
該DRIペプチドは、例えば老化細胞への該DRIペプチドの進入を可能にするための小ペプチドであってもよい。幾つかの実施形態において、該DRIペプチドは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、またはより多くのアミノ酸残基を含有する。
【0221】
幾つかの実施形態における該DRIペプチドは、全てのDアミノ酸残基からなるが、幾つかの機能的DRIペプチドは、Lアミノ酸残基とDアミノ酸残基の組み合わせを含有し得る。幾つかの実施形態において、該DRIペプチドは、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、または60%のLアミノ酸残基であるアミノ酸残基を有する。
【0222】
幾つかの実施形態において、該DRIペプチドは、該DRIペプチドを設計するために用いられる基礎として働く天然タンパク質の一部でない1つまたは複数の機能的ドメインをさらに含んでいてもよい。一実施形態において、該DRIペプチドは、老化細胞へのDRIペプチドの進入を容易にしてアポトーシスを誘導する配列”PPRRRQRRKKRG”(SEQ ID NO:10)を含む。当業者は、この機能的ドメインが老化細胞へのDRIペプチドの進入を容易にする任意の他のタンパク質ドメインにより置換えられ得ることを理解する。
【0223】
該DRIペプチドに含まれ得る幾つかの他の機能的ドメインは、一次両親媒性ペプチド(primary amphipatic peptide)MPG(GALFLGFLGA AGSTMGAWSQ PKKKRKV、SEQ ID NO:11)、Pep-1(KETWWETWWT EWSQPKKKRKV、SEQ ID NO:12)、二次両親媒性ペプチドCADY(Ac-GLWRALWRLLRSLWRLLWRA-Cya、SEQ ID NO:13)またはオクタアルギニン(R(8))などの細胞透過性ペプチド(「CPP」)を含む。
【0224】
該DRIペプチド内の機能性ドメインは、それ自体が任意のアポトーシス誘導活性を有するのではなく、該DRIペプチドの別の部分のアポトーシス誘導活性を上昇させる働きがあり得る。該機能性ドメインは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、または10のアミノ酸残基を含み、より好ましくは該機能性ドメインの全てのアミノ酸残基が、Dアミノ酸残基である。
【0225】
本発明による該DRIペプチドは、老化細胞を殺傷、浄化、除去、不活性化する、または老化細胞の生存性を低減する場合には、老化細胞におけるアポトーシス誘導活性を有する。幾つかの実施形態において、該DRIペプチドは、老化細胞培養物中の細胞の少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90または95%を殺傷、浄化、除去、不活性化し得る、または老化細胞の生存性を低減し得る。
【0226】
幾つかの実施形態において、該DRIペプチドは、老化細胞においてアポトーシス誘導活性を選択的に示し、つまり非老化細胞においてはアポトーシス誘導活性をほとんど、または全く有さない。該DRIペプチドは、少なくとも1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、またはより高い比で、非老化細胞におけるアポトーシスよりも老化細胞においてアポトーシスを起こし得る。
【0227】
当業者は、共通する一般的知識を用いれば、本発明によるDRIペプチドが老化細胞においてアポトーシス誘導活性を示すか否かを標準的インビトロテストで評定することができる。例えば、老化細胞の細胞培養物は、前記細胞培養物を電離放射線または化学療法剤に供することにより得ることができ、その後、非老化細胞と混合物することができる。老化細胞を提供する別の方法は、(i)反復老化が起こるまでの連続通過(=テロメア短縮)、(ii)H2O2およびロテノンなどの酸化ストレッサーの使用による、(iii)二酪酸ナトリウムとしてのクロマチンリモデラー、または(iv)RASG12VもしくはBRAFV600Eなどの過剰活性化された発癌遺伝子の発現である。老化細胞の存在は、SA-B-GALについてテストすることにより確定され得る。
【0228】
第二のステップは、本発明によるペプチドを細胞培養物に投与し、(i)細胞質チトクロームCの染色、または(ii)TUNELの染色など、アポトーシスの1つまたは複数のマーカーを測定することである。チトクロームCのデータは、チトクロームCがミトコンドリアから細胞質ゾルへ放出された細胞の数(DAPIを用いて細胞を示し得る)、または(後期段階では)完全に消失した細胞の数をカウントすることにより定量され得る。カスパーゼは細胞の死滅に必要となるため、アポトーシスを受けようとしている細胞(サイトゾルへのチトクロームCの放出により示される)は、実際に死滅することができないように、このアッセイはカスパーゼ阻害剤の存在下で実施することができる。このアッセイの利点は、数日(例えば5日)にわたる老化量の累積数を得ることができることである。TUNEL染色では、TUNELで陽性に染色された核のパーセンテージ(DAPI陽性)が、カウントされる。これは、肉眼で容易に実施することができるが、Cellprofiler(freeware)と呼ばれるソフトウエアツールを利用することもできる。
【0229】
幾つかの実施形態において、該条件付き活性タンパク質は、ペプチドリンカーに共有結合され、該ペプチドリンカーもまた該条件付き活性タンパク質にコンジュゲートされたプロドラッグを含む。プロドラッグは、該ペプチドリンカーにコンジュゲートされた薬物である。共有結合されたペプチドリンカーの存在により、該薬物は、活性形態でない。該ペプチドリンカーは、老化細胞の細胞外環境においてプロテアーゼにより切断され、こうして活性形態の条件付き活性タンパク質から共有結合された薬物を放出することができる。
【0230】
該薬物と条件付き活性タンパク質の間のペプチドリンカーは、本出願に記載されたプロボディー中で用いられる同じ切断部位(例えば、SEQ ID NO:33~37の切断部位)を含んでいてもよい。プロボディーにおいて抗体を遊離し得る老化細胞の細胞外環境における同じプロテアーゼが、該ペプチドリンカーを切断して、老化細胞の細胞外環境における条件付き活性タンパク質から活性形態のプロドラッグを遊離することになる。
【0231】
幾つかの実施形態において、該ペプチドリンカーは、酵素レグマインにより切断されてもよい。そのようなペプチドリンカーは、レグマインのための切断部位を含む。幾つかの模範的切断部位は、PTN(SEQ ID NO:38);PNN(SEQ ID NO:39);PAN(SEQ ID NO:40);PPN(SEQ ID NO:41);TTN(SEQ ID NO:42);TNN(SEQ ID NO:43);TAN(SEQ ID NO:44);TPN(SEQ ID NO:45);NTN(SEQ ID NO:46);NNN(SEQ ID NO:47);NAN(SEQ ID NO:48);NPN(SEQ ID NO:49);ATN(SEQ ID NO:50);ANN(SEQ ID NO:51);AAN(SEQ ID NO:52);APN(SEQ ID NO:53);TTNL(SEQ ID NO:54);TTNA(SEQ ID NO:55);PTNL(SEQ ID NO:56);PTNA(SEQ ID NO:57);PNNL(SEQ ID NO:58);PNNA(SEQ ID NO:59);TNNL(SEQ ID NO:60);TNNA (SEQ ID NO:61);NK(SEQ ID NO:62);NL(SEQ ID NO:63);NA(SEQ ID NO:64);NE(SEQ ID NO:65);ND(SEQ ID NO:66);およびNN(SEQ ID NO:67)である。
【0232】
プロドラッグ中のペプチドリンカーに共有結合された該薬物は、細胞傷害剤、細胞分裂阻害薬または抗増殖剤であってもよい。これらの薬物は、
アルカロイド類:ドセタキセル、エトポシド、イリノテカン、パクリタキセル、テニポシド、テポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、
アルキル化剤:ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン、ベンゾデパ、カルボクオン、メツレデパ、ウレデパ、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、クロラムブシル、クロラナファジン(Chloranaphazine)、シクロホスファミド、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベメビキン(novemebichin)、ペルホスファミド、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、セムスチン、ラニムスチン、ダカルバジン、マノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、テモゾロミド、
抗生物質およびその類似体:アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カルビシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、メノガリル、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ピラルビシン、プリカマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ジノスタチン、ゾルビシン、
代謝拮抗薬:デノプテリン、エダトレキサート、メトトレキサート、ピリトレキシム、プテロプテリン、トムデックス、トリメトレキサート、クラドリジン(cladridine)、フルダラビン、6-メルカプトプリン、ペントスタチン、チアミプリン、チオグアニン、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフチル(carmoftir)、シタラビン、ドキシフルリジン、エミテフール、フロクスウリジン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、テガフール、
白金錯体:カロプラチン、シスプラチン、ミボプラチン、オキサリプラチン、
その他:アセグラトン、アムサクリン、ビサントレン、デフォスファミド、デメコルシン、ジアジクオン、エフロルニチン、エリプチニウム酢酸塩、エトグルシド、エトプシド(Etopside)、フェンレチニド、硝酸ガリウム、ヒドロキシ尿素、ロニダミン、ミルテフォシン、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダモル、ニトラクリン、ペントスタチン、フェナメット、ポドフィリン酸、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、ラゾキサン、ソブゾキサン、スピロゲルマニウム、テニポシド、テヌアゾン酸、トリアジクオン、2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン、ウレタン、
により具体化される。
【0233】
プロドラッグ中のペプチドリンカーに共有結合された薬物は、化学療法剤であってもよい。化学療法剤は、異なる方法で老化細胞を阻害し得る。化学療法剤は、アルキル化により、架橋により、またはDNAの二本鎖切断によりDNA鋳型を損傷し得る。他の化学療法剤は、インターカレーションによりRNA合成を遮断し得る。幾つかの化学療法剤は、紡錘体阻害剤、または酵素活性を阻害する代謝拮抗薬、またはホルモンおよび抗ホルモン剤である。化学療法剤は、非限定的にアルキル化剤、代謝拮抗薬、抗腫瘍抗生物質、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、ニトロソ尿素、ホルモンおよび抗ホルモン剤、ならびに毒素をはじめとする様々な薬物群から選択されてもよい。幾つかの例は、以下の通りである:
アルキル化剤の例としては、シクロホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メルファラン、チオテパ、イフォスファミド、ナイトロジェンマスタードが挙げられる。
代謝拮抗薬の例としては、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド、6-チオグアニン、6-メルカプトプリンが挙げられる。
抗腫瘍抗生物質の例としては、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イドルビシン、ニミトキサントロン(nimitoxantron)、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、プリカマイシンが挙げられる。
ビンカアルカロイド類およびエピポドフィロトキシン類の例としては、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデスチン(vindestin)、エトポシド、テニポシドが挙げられる。
ニトロソ尿素類の例としては、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシンが挙げられる。
ホルモン剤および抗ホルモン剤の例としては、アドレノコルチコルチコイド類(adrenocorticorticoids)、エストロゲン類、抗エストロゲン剤、プロゲスチン類、アロマターゼ阻害剤、アンドロゲン類、抗アンドロゲン剤が挙げられる。
無作為な合成薬としては、ダカルバジン、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、プロカルバジド(procarbazide)、シスプラチン、カルボプラチンが挙げられる。
【0234】
別の態様において、本発明は、正常な生理学的条件下よりも異常な条件下で活性がある条件付き活性分子または条件付き活性薬品(CAM)を提供する。該条件付き活性分子は、約3000a.m.u.未満の分子量を有する親有機化合物から得られる有機化合物および/またはその塩である。親有機化合物は、約100a.m.u~約1500a.m.u、または約150a.m.u~約1250a.m.u、または約300a.m.u~約1100a.m.u、または約400a.m.u~約1000a.m.uの範囲内の分子量を有する治療活性化合物であり得る。
【0235】
該親有機化合物は、抗癌剤、抗菌剤、免疫調整剤、抗肥満薬、抗糖尿病薬、抗真菌剤、抗ウイルス剤、避妊薬、鎮痛薬、抗炎症剤(例えば、ステロイド系または非ステロイド系抗炎症剤(NSAID))、制吐薬、血管弛緩剤、血管収縮剤、および心臓血管剤からなる薬剤の群から選択されてもよい。特に該親化合物としては、アザシチジン、ベンダムスチン、ボルテゾミブ、シスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、カルムスチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エトポシド、フルダラビン、ゲムシタビン、メルファラン、マイトマイシン、オキサリプラチン、ペメトレキセド、ペントスタチン、ストレプトゾシン、チオテパ、トポテカン、またはビンブラスチンなどの抗癌剤;アミフォスチンなどの細胞保護剤;チゲサイクリン、ドキシサイクリン、クロラムフェニコール、アジスロマイシン(azhithromycin)またはセファゾリンなどの抗菌剤;カスポファンギン、ミカファンギン、アニデュラファンギンまたはボリコナゾールなどの抗真菌剤;アシクロビルまたはガンシクロビルなどの抗ウイルス剤;チオチキセンまたはミダゾラムなどの抗精神薬;エソメプラゾール、ランソプラゾールまたはパントプラゾールなどの抗潰瘍薬;メタミゾール、ヒドロモルホンまたはレミフェンタニルなどの鎮痛薬;ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、インドメタシン、ケトプロフェンまたはパレコキシブなどの抗炎症剤;メトトレキサートなどの免疫調整剤;アプレピタント、ドラセトロン、フォサプレピタント、グラニセトロン、オンダンセトロン、メトクロプラミド(metoclopromide)、ヒコシン(hycosine)またはプロメタジンなどの制吐薬;アテノロール、ドブタミン、またはエポプロステノールなどの心臓血管剤;メトヘキシタールなどの麻酔薬;およびそれらの医薬的に許容できる塩またはそれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0236】
幾つかの実施形態において、本発明は、親有機化合物から条件付き活性分子を作製するための方法を提供する。該方法は、1種または複数の荷電基を導入して修飾された有機化合物を生成することにより親有機化合物を修飾するステップと;該修飾された有機化合物を正常な生理学的条件下でのアッセイおよび異常な条件下でのアッセイに供するステップと;正常な生理学的条件下に比較して、異常な条件下でより高い活性を示す条件付き活性分子を修飾された有機化合物から選択するステップと、を含む。
【0237】
親有機化合物の修飾は、親有機化合物状の1つまたは複数の非荷電および/もしくは部分荷電基を1つもしくは複数の部分荷電もしくは荷電基で置換えることにより、または1つもしくは複数の部分荷電もしくは荷電基の添加により、実現されてもよい。親有機化合物への1つもしくは複数の部分荷電もしくは荷電基の添加は、親有機化合物上の水素原子などの1つもしくは複数の原子または中性基を、1つもしくは複数の部分荷電もしくは荷電基と置換えることにより修飾されてもよい。該部分荷電または荷電基は、正荷電または負荷電であってもよい。適切な荷電基の例としては、-COO-、-SO3
-、-PO4
-、-PO3
-、-PO2
-、-BO3
-、-NH2
+、-NH3
+および他の荷電基が挙げられるが、これらに限定されない。適切な部分荷電基の例としては、極性基または極性側鎖が挙げられる。
【0238】
他の実施形態において、該親有機化合物は、該親有機化合物から1つもしくは複数の部分荷電もしくは荷電基を除去することにより修飾されてもよい。
【0239】
生成され、修飾された有機化合物は、正常な生理学的条件下でのアッセイおよび異常な条件下でのアッセイに供される。幾つかの実施形態において、該異常な条件は、約5.0から約7.0未満、または約5.5から約7.0未満、または約6.0から約7.0未満、または約6.2から約6.8の範囲内のpHなど、老化細胞の細胞外条件の値である。該正常な生理学的条件は、約7.0から約7.8未満、または約7.2から約7.8未満、または約7.2から約7.6未満の範囲内のpHなど、正常細胞の細胞外環境での条件の異なる値である。
【0240】
該修飾された有機化合物の活性は、両方のアッセイで測定される。該条件付き活性分子は、
(a)アッセイにおける該親タンパク質の活性に比較した、該正常な生理学的条件下での同アッセイにおける同活性の低下、および正常な生理学的条件下でのアッセイにおける該条件付き活性タンパク質の活性に比較した、異常な条件下での該アッセイにおける同活性の上昇;ならびに
(b)アッセイにおける該親タンパク質の活性に比較した、該正常な生理学的条件下での同アッセイにおける同活性の低下、および異常な条件下でのアッセイにおける該親タンパク質の活性に比較した、異常な条件下での該アッセイにおける同活性の上昇、
のうちの少なくとも1つを示す、修飾された有機化合物から選択されてもよい。異常な条件下でのアッセイおよび正常な生理学的条件下でのアッセイで用いられるアッセイ溶液は、先に議論された小分子および/または分子種を含有していてもよい。
【0241】
異常な条件および正常な生理学的条件下での両方のアッセイで測定された活性は、標的への該分子の結合アッセイであってもよい。
【0242】
特定の実施形態において、該条件付き活性分子は、1.0より大きな、正常な生理学的条件での活性に対する異常な条件での活性の比(例えば、2つの条件の間の大きな選択性)を有する。活性の比は、少なくとも約1.3:1、または少なくとも約2:1、または少なくとも約3:1、または少なくとも約4:1、または少なくとも約5:1、または少なくとも約6:1、または少なくとも約7:1、または少なくとも約8:1、または少なくとも約9:1、または少なくとも約10:1、または少なくとも約11:1、または少なくとも約12:1、または少なくとも約13:1、または少なくとも約14:1、または少なくとも約15:1、または少なくとも約16:1、または少なくとも約17:1、または少なくとも約18:1、または少なくとも約19:1、または少なくとも約20:1、または少なくとも約30:1、または少なくとも約40:1、または少なくとも約50:1、または少なくとも約60:1、または少なくとも約70:1、または少なくとも約80:1、または少なくとも約90:1、または少なくとも約100:1であってもよい。
【0243】
該条件付き活性タンパク質は、WO2016/138071に記載される通りさらに操作されてもよい。該条件付き活性タンパク質は、抗体コンジュゲーションを通して操作されてもよく、多重特異性抗体を生成するように操作されてもよく、免疫エフェクター細胞表面抗原に対する二重特異性条件付き活性抗体を生成するように操作されてもよく、マスキングされた条件付き活性タンパク質を生成するように操作されてもよく、そして/または抗体のFc領域が操作されてもよく、それぞれがWO2016/138071に記載されている。該条件付き活性タンパク質は、WO2015/175375に記載された通り、条件付き活性ウイルス粒子を操作するために用いられてもよい。
【0244】
T細胞は、外来抗原を有する物質または細胞と戦うために哺乳動物免疫系により用いられる。CAR-Tの技術は、キメラ抗原受容体(CAR)をT細胞に挿入して、高特異性CAR-T細胞を生成し、そこでCARが、標的組織の表面の抗原に特異的に結合することにより操作されたCAR-T細胞を標的組織に指向させることにより、天然の循環するT細胞をリプログラムする遺伝子操作法を利用する。したがって該CAR-T細胞は、腫瘍細胞を特異的に標的化して、天然の循環T細胞よりもかなり効果的なCAR-T細胞を作製することができる。該CAR-T細胞が、老化細胞を標的化するように操作されてもよい。
【0245】
本発明のCARは、少なくとも1つの抗原特異性標的化領域(ASTR)、細胞外スペーサドメイン(ESD)、膜貫通ドメイン(TM)、1つまたは複数の共刺激ドメイン(CSD)、および細胞内シグナル伝達ドメイン(ISD)を含み、
図3およびJensen et al., “Design and implementation of adoptive therapy with chimeric antigen receptor-modified T cells,” Immunol Rev., vol. 257, pp. 127-144,2014を参照されたい。ASTRが、標的抗原に特異的に結合した後、ISDは、CAR-T細胞内の細胞内シグナル伝達を活性化する。例えば該ISDは、非MHC制限的手法で選択された標的に向かうようにCAR-T細胞特異性および反応性を書き換えて、抗体の抗原結合特性を模索することができる。非MHC制限抗原認識が、CAR-T細胞に、老化細胞を認識して抗原プロセシングを開始する能力を与える。一実施形態において、該ESDおよび/またはCSDは、任意選択による。別の実施形態において、該ASTRは、二重特異性を有し、2つの異なる抗原またはエピトープと特異的に結合させる。本発明の条件付き活性タンパク質は、CARを老化細胞の細胞外環境においてより活性にするために、ASTRまたはその一部として操作されてもよい。そのようなCARは、T細胞を老化細胞に優先的に送達し、それにより正常組織上のT細胞攻撃により誘発される副作用を劇的に低減することができる。これにより、より高用量のT細胞を治療有効性の上昇に使用させて、処置への対象の耐性が改善される。
【0246】
ASTRは、老化細胞上の抗原に特異的に結合する抗体、特に一本鎖抗体、またはその断片などの条件付き活性タンパク質を含んでいてもよい。ASTRに適したタンパク質の幾つかの例としては、連結されたサイトカイン(サイトカイン受容体を担う細胞の認識を導く)、アフィボディー、天然由来の受容体からのリガンド結合ドメイン、および老化細胞上の受容体のための可溶性タンパク質/ペプチドリガンドが挙げられる。
【0247】
幾つかの実施形態において、本発明のCARは、少なくとも2つの異なる抗原または同抗原上の2つのエピトープを標的とする少なくとも2つのASTRを含む。一実施形態において、該CARは、少なくとも3つ以上の異なる抗原またはエピトープを標的とする3つ以上のASTRを含む。複数のASTRが、CAR内に存在する場合、該ASTRは、縦列に配列されていてもよく、リンカーペプチドにより分離されていてもよい(
図3)。
【0248】
さらに別の実施形態において、ASTRは、ダイアボディーを含む。ダイアボディーにおいて、scFvは、2つの可変領域を互いに折り重ねるには過度に短いリンカーペプチドによって作製されて、scFvを誘導して二量体化させる。さらに短いリンカー(1つまたは2つのアミノ酸)は、三量体、いわゆるトリアボディーまたはトリボディーの形成を導く。テトラボディーが、ASTRにおいて用いられてもよい。
【0249】
標的抗原は、先に議論された表面タンパク質などの老化細胞上に見出される表面タンパク質を含む。
【0250】
幾つかの実施形態において、該細胞外スペーサドメインおよび膜貫通ドメインは、ユビキチン化耐性であってもよく、CAR-T細胞シグナル伝達を強化すること、つまりそれらの活性を増進することができる(Kunii et la.,“Enhanced function of redirected human t cells expressing linker for activation of t cells that is resistant to ubiquitylation,” Human Gene Therapy, vol. 24, pp. 27-37, 2013)。この領域内では、細胞外スペーサドメインは、CAR-T細胞の外部にあり、つまり異なる条件に暴露され、潜在的に条件付きユビキチン化耐性を生成し得る。
【0251】
本発明の条件付き活性タンパク質は、WO2016/138071に詳細に記載される通り、ヒトの医薬または診断使用のための医薬組成物、医薬装置、キット、または製造品の中に含まれていてもよい。
【0252】
本発明の条件付き活性タンパク質および医薬組成物を用いて、必要とする対象における年齢関連疾患および障害などの老化細胞関連疾患および障害を処置してもよい。本明細書に記載された条件付き活性タンパク質または医薬組成物を投与することにより処置され得る老化細胞関連疾病、障害または疾患の例としては、認知疾患(例えば、軽度認知障害(MCI)、アルツハイマー病および他の認知症;ハンチントン病);心臓血管疾患(例えば、アテローム性硬化症、心臓拡張機能障害、大動脈瘤、狭心症、不整脈、心筋症、うっ血性心不全、冠動脈疾患、心筋梗塞、心内膜炎、高血圧症、軽動脈疾患、末梢血管疾患、心臓ストレス抵抗性、心線維症);代謝疾患および障害(例えば、肥満、糖尿病、メタボリックシンドローム);神経変性疾患および障害をはじめとする神経疾患および障害(例えば、パーキンソン病、運動ニューロン機能不全(MND));脳血管疾患;気腫;良性前立腺肥大;肺疾患(例えば、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、閉塞性細気管支炎、喘息);肺不全;炎症性/自己免疫性疾患および障害(例えば、骨関節炎、湿疹、乾癬、骨粗しょう症、粘膜炎、移植関連疾患および障害);眼科疾患または障害(例えば、加齢黄斑変性、白内障、緑内障、視覚損失、老視);糖尿病性潰瘍;転移;化学療法の副作用、放射線療法の副作用;年齢関連疾患および障害(例えば、後弯症、腎不全または腎機能障害、虚弱、脱毛、聴覚損失、筋肉疲労、皮膚病、サルコペニア、および椎間板ヘルニア)および老化により誘発される他の年齢関連疾患(例えば、放射線、化学薬品の暴露、喫煙、高脂肪/高糖食の摂食、および環境因子から生じた疾患/障害);創傷治癒:皮膚母斑;ならびに線維性疾患および障害(例えば、嚢胞性線維症、腎線維症、肝線維症、肺線維症、口腔粘膜下線維症、心線維症、および膵線維症)が挙げられる。
【0253】
より具体的な実施形態において、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物を投与することにより該疾患または障害を有する対象における疾患または障害に関連する老化細胞(即ち、確定された老化細胞)を殺傷または除去することにより老化細胞関連疾患または障害を処置するための方法が提供される。特定の模範的実施形態において、本発明を用いて、骨関節炎;特発性肺線維症;慢性閉塞性肺疾患(COPD);またはアテローム性硬化症を処置する。
【0254】
該条件付き活性タンパク質または医薬組成物を投与することを含む、本明細書に記載された方法の使用から利益を受け得る対象(即ち、患者、個体(ヒトまたは非ヒト動物))は、癌を有し得る対象も包含する。これらの方法により処置される対象は、部分または完全寛解(癌寛解とも呼ばれる)と見なされ得る。本明細書で詳細に議論される通り、老化細胞の選択的殺傷または除去のための方法における使用のための該条件付き活性タンパク質または医薬組成物は、癌の処置として、即ち統計学的に有意な手法で癌細胞を殺傷または破壊する手法で、用いられることを意図していない。それゆえ、本明細書に開示された方法は、癌の処置のための一次療法と見なされる手法での該条件付き活性タンパク質または医薬組成物の使用を包含しない。該条件付き活性タンパク質が単独で、または他の化学療法剤もしくは放射線療法剤と共に、一次癌治療と見なされるのに充分な手法で用いられないとしても、本明細書に記載された該条件付き活性タンパク質または医薬組成物は、転移を阻害するために有用な手法(例えば、短期クールの治療)で用いられてもよい。特定の実施形態において、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物で処置される対象は、癌を有さない(即ち、該対象は、医療の技術分野の当業者により癌を有すると診断されていない)。
【0255】
心臓血管疾患および障害
該条件付き活性タンパク質または医薬組成物により処置される老化細胞関連疾患または障害は、心臓血管疾患であってもよい。該心臓血管疾患は、狭心症、不整脈、アテローム性硬化症、心筋症、うっ血性心不全、冠動脈疾患、頸動脈疾患、心内膜炎、心臓発作(冠動脈血栓症、心筋梗塞)高血圧/高血圧症、大動脈瘤、脳動脈瘤、心線維症、心臓拡張機能障害、高コレステロール血症/高脂質血症、僧帽弁逸脱、末梢血管疾患(例えば、末梢動脈疾患)、心臓ストレス抵抗性、および脳卒中のうちの任意の1つまたは複数であってもよい。
【0256】
特定の実施形態において、動脈硬化(即ち、動脈の硬質化)に関連する、または動脈硬化により誘発される老化細胞関連の心臓血管疾患を処置するための方法が、提供される。該心臓血管疾患は、アテローム性硬化症(例えば、冠動脈疾患(CAD)および頸動脈疾患);狭心症、うっ血性心不全および末梢血管疾患(例えば、末梢動脈疾患(PAD))のうちの任意の1つまたは複数であってもよい。動脈硬化に関連する、または動脈硬化により誘発される心臓血管疾患を処置するための方法は、高血圧/高血圧症、狭心症、脳卒中および心臓発作(即ち、冠動脈血栓症、心筋梗塞(MI))の発生の見込みを低減し得る。特定の実施形態において、対象の血管(例えば、動脈)中のアテローム斑(複数可)を安定化させ、それにより脳卒中またはMIなどの血栓事象の発生の見込みを低減する、または該発生を遅延させるための方法が、提供される。特定の実施形態において、条件付き活性タンパク質の投与を含むこれらの方法は、対象の血管(例えば、動脈)中のアテローム斑の脂質量を低減し(即ち、脂質量の低減を誘発し)、そして/または線維性被膜の厚さを増加させる(即ち、線維性被膜の厚さの増加を誘発する、肥厚を増進または促進する)。
【0257】
一実施形態において、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物を投与することにより、アテローム斑の形成を阻害する(またはアテローム斑を低減、排除する、その形成の減少を誘発する)ための方法が、提供される。他の実施形態において、粥腫の量(即ち、レベル)を低減(減少、排除)するための方法が、提供される。血管(例えば、動脈)中の粥腫の量の低減は、例えば粥腫の表面積の低減、または血管(例えば、動脈)の塞栓の程度もしくは度合い(例えば、パーセント)の低減により決定されてもよく、心臓血管の技術分野で用いられる血管造影術または他の視覚化法により計測することができる。同じく本明細書で提供されるのは、対象の1つまたは複数の血管(例えば、1つまたは複数の動脈)中に存在するアテローム斑の安定性を上昇させる(または安定性を改善、促進、増進する)ための方法であり、該方法は、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0258】
心臓血管疾患(例えば、アテローム性硬化症)を処置または予防する(即ち発症または発生の見込みを低減または低下させる)ための該条件付き活性タンパク質または医薬組成物の有効性は、医療および臨床業界の当業者により即座に決定され得る。身体検査、臨床症状の評定およびモニタリング、ならびに本明細書に記載され、当該技術分野で実践される分析テストおよび方法(例えば、血管造影法、心電図検査、ストレステスト、非ストレステスト)の実施をはじめとする診断方法の1つまたは任意の組み合わせが、対象の健康状態をモニタリングするために用いられ得る。該条件付き活性タンパク質または医薬組成物による処置の効果は、処置を受けた心臓血管疾患に罹患した、またはそのリスクがある患者の症状を、そのような処置を行わなかった患者、またはプラセボ処置の患者の症状と比較することなど、当該技術分野で公知の技術を利用して分析され得る。
【0259】
炎症性および自己免疫疾患および障害
特定の実施形態において、老化細胞関連疾患または障害は、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物の投与を含む、本明細書に記載された方法に従って処置または予防され得る(即ち、発生の見込みを低減する)、非限定的例として骨関節炎などの炎症性疾患または障害である。他の炎症性または自己免疫疾患または障害としては、骨粗しょう症、乾癬、口腔粘膜炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患、湿疹、後弯症、椎間板ヘルニア、および肺疾患、COPDおよび特発性肺線維症が挙げられる。
【0260】
予想外に、老化細胞を選択的に殺傷することにより、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物は、発生の見込みを低減し、関節におけるプロテオグリカン層の損失またはびらん(erosion)を低減または阻害し、罹患した関節内の炎症を低減し、コラーゲン(例えば、2型コラーゲン)の生成を促進する(即ち、刺激する、増強する、誘導する)。老化細胞の除去は、関節内で生成されたIL-6などの炎症性サイトカインの量(即ち、レベル)の低減を誘発し得、炎症が低減される。少なくとも1種の条件付き活性タンパク質を該対象に投与することにより、ことによると対象の骨関節炎の関節に存在する、老化細胞を選択的に殺傷もしくは除去すること、および/または必要とする対象の関節においてコラーゲン(2型コラーゲンなど)の生成を誘導すること、により骨関節炎を処置するための方法が、本明細書で提供される。該条件付き活性タンパク質はまた、関節内のコラーゲンを分解するメタロプロテイナーゼ13(MMP-13)の生成を減少させるため(阻害するため、低減するため)、そしてプロテオグリカン層を回復させる、またはプロテオグリカン層の損失および/もしくは分解を阻害するために、用いられてもよい。該条件付き活性タンパク質または医薬組成物での処置は、それにより骨のびらんの発生の見込みを予防もしくは低減し得る、該びらんを阻害もしくは低減し得る、または該びらんを緩徐にし得る。本明細書に詳細に記載される通り、特定の実施形態において、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物は、骨関節炎の関節に直接投与される(例えば、関節内、局所、経皮、皮内、または皮下送達により)。該条件付き活性タンパク質または医薬組成物での処置は、関節の強度を回復、改善し得る、または強度の増悪を阻害し得る。加えて、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物を投与することを含む方法は、関節痛を低減することができ、それゆえ骨関節炎の関節の疼痛管理に有用である。
【0261】
対象における骨関節炎の処置または防御、および1種または複数の老化細胞除去薬を受ける対象のモニタリングのための1種または複数の条件付き活性タンパク質の有効性は、医療および臨床の技術分野の当業者により即座に決定され得る。身体検査(罹患した関節の柔軟性、膨張または発赤を計測するなど)、臨床症状の評定およびモニタリング(疼痛、剛性、可動性など)、ならびに本明細書に記載されて当該技術分野で実践される分析テストおよび方法の実施(例えば、炎症性サイトカインまたはケモカインのレベル;関節内の骨の間の空間の狭さにより示される軟骨損失を計測するX線画像;軟骨をはじめとする骨および軟組織の詳細な画像を提供する磁気共鳴画像(MRI)を計測すること)をはじめとする診断方法の1つまたは任意の組み合わせが、対象の健康状態をモニタリングするために用いられてもよい。1種または複数の老化細胞除去薬の処置の効果は、処置を受けた骨関節炎などの炎症性疾患または障害に罹患した、またはそのリスクがある患者の症状を、そのような処置を受けていない、またはプラセボ処置を受けた患者の症状に比較することにより、分析され得る。
【0262】
特定の実施形態において、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物は、関節リウマチ(RA)を処置および/または予防するために(即ち、発生の見込みを減少または低減するために)用いられてもよい。
【0263】
慢性炎症は、後弯症および骨粗しょう症などの他の年齢関連または加齢関連疾患および障害にも寄与し得る。後弯症は、細胞老化に関連付けられている。後弯症を処置するための老化細胞除去薬の能力は、当該技術分野で用いられる前臨床動物モデルにおいて計測されてもよい。例として、TTDマウスは、後弯症を発症し(例えば、de Boer et al. Science, vol. 296, pp. 1276-1279, 2002参照);用いられ得る他のマウスとしては、同じく後弯症を発症することが知られるBubRlH/Hマウスが挙げられる(例えば、Baker et al. Nature, vol. 479, pp. 232-36, 2011参照)。後弯症の形成は、視覚により経時的に測定される。老化細胞除去薬での処置により減少される老化細胞のレベルは、SA-P-Gal染色などの1種または複数の老化細胞関連マーカーの存在を検出することにより計測され得る。
【0264】
さらに別の実施形態において、本明細書に記載された該条件付き活性タンパク質または医薬組成物で処置または予防され得る(即ち、発生の見込みが低減される)炎症性/自己免疫性障害としては、潰瘍性大腸炎およびクローン病などの過敏性腸症候群(IBS)および炎症性腸疾患が挙げられる。該疾患の診断およびモニタリングは、血液検査、結腸鏡検査、軟性S状結腸鏡検査、バリウム注腸、CTスキャン、MRI、内視鏡、および小腸造影をはじめとする当該技術分野において日常的に実践される方法および診断テストに従って実施される。
【0265】
他の実施形態において、本明細書に記載された方法は、椎間板ヘルニアを有する対象を処置するのに有用になり得る。これらの椎間板ヘルニアを有する対象は、血中および血管壁中の細胞老化の存在率上昇を示す(例えば、Roberts et al. Eur. Spine J., 15 Suppl 3: S312-316, 2006参照)。高レベルの炎症促進性分子およびマトリックスメタロプロテアーゼもまた、加齢の変性した椎間板組織に見いだされ、老化細胞への役割が示唆される(例えば、Chang-Qing et al. Ageing Res. Rev., vol. 6, pp. 247-61, 2007参照)。動物モデルを利用して、椎間板ヘルニアを処置する際の老化細胞除去薬の有効性を特徴づけてもよく;椎間板の変性は、圧迫および骨盤強度の評価によりマウスに誘導される(例えば、Lotz et al. Spine, vol. 23, pp. 2493-506, 1998参照)。
【0266】
該条件付き活性タンパク質または医薬組成物を使用することにより処置または予防され得る(即ち、発生の見込みが低減される)他の炎症性または自己免疫疾患としては、湿疹、乾癬、骨粗しょう症および肺疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)、喘息)、炎症性腸疾患、および粘膜炎(幾つかの例において放射線により誘導される口腔粘膜炎など)が挙げられる。腎線維症、肝線維症、膵線維症、心線維症、皮膚創傷治癒、および口腔粘膜下線維症などの臓器の特定の線維症または線維性状態が、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物を用いて処置されてもよい。
【0267】
特定の実施形態において、該老化細胞関連障害は、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物の投与を含む、本明細書に記載された方法により処置または予防され得る(即ち、発生の見込みが低減される)、非限定的例として乾癬および湿疹などの皮膚の炎症性障害である。乾癬および湿疹の処置、ならびにそのような処置を受ける対象のモニタリングのための該条件付き活性タンパク質または医薬組成物の有効性は、医療または臨床の技術分野の当業者により即座に計測され得る。身体検査(皮膚の外観など)、臨床症状(かゆみ、膨張、および疼痛など)の評定および/またはモニタリング、ならびに本明細書に記載され、当該技術分野で実践される分析テストおよび方法(即ち、炎症促進性サイトカインのレベルの計測)の実施をはじめとする診断方法の1つまたは任意の組み合わせ。
【0268】
肺疾患および障害
一実施形態において、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物を投与することにより肺疾患または障害を有する対象における該疾患または障害に関連する老化細胞(即ち、確定された老化細胞)を殺傷または除去することにより該疾患または障害である老化細胞関連疾患または障害を処置または予防する(即ち、発生の見込みを低減する)ための方法が、提供される。老化関連の肺疾患および障害としては、例えば特発性肺線維症(IPF)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、嚢胞性線維症、気管支拡張症および肺気腫が挙げられる。IPFにおける細胞老化の関与は、該疾患の発生率が年齢に応じて増加すること、およびIPF患者における肺組織がSA-P-Gal陽性細胞を豊富に含み、高レベルの老化マーカーp21を含む、という観察により示唆される(例えば、Minagawa et al, Am. J. Physiol. Lung Cell. Mol. Physiol., vol. 300, pp. L391-L401, 2011参照)。短いテロメアは、IPFおよび細胞老化の両方に共通する危険因子である(例えば、Alder et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 105, pp. 13051-56, 2008参照)。理論に結び付けるのを望むものではないが、IPFへの細胞老化の寄与は、IL-6、IL-8およびIL-Iβなどの老化細胞のSASP成分が線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化および上皮から間葉系への移行を促進して、肺胞および間質空間の細胞外マトリックスの大規模なリモデリングをもたらすことが、報告により示唆される(例えば、上掲のMinagawa et al参照)。
【0269】
該条件付き活性タンパク質または医薬組成物を用いることにより処置され得る他の肺疾患または障害としては、例えば肺気腫、喘息、気管支拡張症、および嚢胞性線維症が挙げられる(例えば、Fischer et al, Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol., vol. 304, pp. L394-400, 2013参照)。
【0270】
老化関連の肺疾患または障害を処置または予防する(即ち、発生の見込みを低減する)ための本明細書に記載された方法は、加齢の対象、ならびに肺機能の損失(または退化)(即ち、若齢対象に比較して減退または損傷された肺機能)および/または肺組織の変性を有する対象を処置するために用いられてもよい。老化細胞除去薬を加齢対象(無症候の中年成人を含む)に投与することにより、呼吸管から老化細胞を殺傷および除去させて、肺機能の減退を減速または阻害してもよい。該条件付き活性タンパク質または医薬組成物による処置の効果は、処置を受けた肺疾患に罹患した、またはそのリスクがある患者の症状を、そのような処置を受けていない、またはプラセボ処置を受けた患者の症状に比較することなど、当該技術分野で公知の技術を利用して分析され得る。加えて、肺の機械的機能を評価する方法および技術、例えば肺容量、エラスタンス、および気道過敏症を測定する技術が、実施されてもよい。肺機能を計測し、処置全体を通して肺機能をモニタリングするために、数多くの測定、つまり呼気予備量(ERV)、努力性肺活量(FVC)、対標準肺活量(FEV)(例えば、1秒間のFEV、FEV1)、FEV1/FEV比、努力性呼気流量25%~75%、および最大換気量(MVV)、ピーク呼吸流量(PEF)、肺活量(SVC)のいずれか1つが、得られてもよい。全体的な肺容量は、全肺気量(TLC)、肺活量(VC)、残気量(RV)、および機能的残気量(FRC)を包含する。肺胞毛細管膜を通るガス交換は、一酸化炭素拡散能(DLCO)を利用して測定され得る。末梢毛細管酸素飽和量(SpO2)もまた、測定され得る。
【0271】
神経疾患および障害
該条件付き活性タンパク質または医薬組成物を投与することにより処置可能な老化細胞関連疾患または障害は、神経疾患または障害を包含する。そのような老化細胞関連疾患および障害としては、パーキンソン病、アルツハイマー病(および他の認知症)、運動ニューロン機能不全(MND)、軽度認知障害(MCI)、ハンチントン病、ならびに加齢黄斑変性などの目の疾患および障害が挙げられる。年齢の増加に関連する目の他の疾患は、緑内障、視覚損失、老視、および白内障である。
【0272】
ドーパミン生成ニューロンの老化は、活性酸素種の生成を通してPDで観察される細胞死に寄与すると考えられ(例えば、Cohen et al, J. Neural Transm. Suppl. 19:89-103 (1983)参照)、それゆえ、本明細書に記載された条件付き活性タンパク質または医薬組成物は、パーキンソン病の処置および防御に有用である。
【0273】
パーキンソン病に関連する神経変性性欠損および/または自発運動欠如を検出、モニタリングまたは定量するための方法は、組織学的試験、生化学的試験、および行動評価など、当該技術分野で公知である(例えば、US2012/0005765参照)。パーキンソン病の症状は、当該技術分野で公知であり、随意運動の開始または終了が困難であること、痙攣、硬直した動き、筋萎縮、震え(振戦)、心拍数の変化、しかし正常な反射、動作緩慢、および姿勢動揺が挙げられるが、これらに限定されない。
【0274】
1つまたは複数の老化細胞除去薬を受けた対象における本明細書に記載された条件付きタンパク質または医薬組成物の有効性は、医療および臨床業界の当業者により即座に決定され得る。身体検査、臨床症状の評定およびモニタリング、ならびに本明細書に記載され、分析テストおよび方法の実施をはじめとする診断方法の1つまたは任意の組み合わせが、対象の健康状態をモニタリングするために用いられ得る。該条件付き活性タンパク質または医薬組成物を投与することの効果は、処置を受けたアルツハイマー病に罹患した、またはそのリスクがある患者の症状を、そのような処置を行わなかった患者、またはプラセボ処置の患者の症状と比較することなど、当該技術分野で公知の技術を利用して分析され得る。
【0275】
軽度認知障害(MCI)
MCIは、個体の年齢および教養を基に予測されたものを超えているが、個体の日常活動を妨害するほど充分に有意でない認知障害の発病および発展を含む脳機能症候群である。該条件付き活性タンパク質の投与は、老化細胞を殺傷または除去することによりMCIを低減または阻害してもよい。星状細胞の形態学的分析、アセチルコリンの放出、神経変性を評定するための銀染色、およびベータアミロイド沈着を検出するためのPiB PET画像など、MCIに関連する神経病理学的欠損を検出、モニタリング、定量または評定するための方法は、当該技術分野で公知である(例えば、US2012/0071468参照)。8方向放射状迷路パラダイム、非見本合わせ課題、水迷路中の他人中心性場所決定課題、モーリス迷路試験、視空間課題、および遅延反応空間記憶課題、嗅覚新規検査(olfactory novelty test)(同著書参照)など、MCIに関連する行動異常を検出、モニタリング、定量または評定するための方法もまた、当該技術分野で公知である。
【0276】
運動ニューロン機能不全(MND)
MNDは、発話、歩行、呼吸、および嚥下などの不可欠な随意筋活動を制御する細胞である運動ニューロンを破壊する進行性の神経障害の群である。MNDの例としては、ルー・ゲーリッグ病としても知られる筋萎縮性側索硬化症(ALS)、進行性球麻痺、偽球麻痺、原発性側索硬化、進行性筋萎縮症、下位運動ニューロン疾患、および脊髄筋萎縮症(SMA)(例えば、ウェルドニッヒ-ホフマン病とも呼ばれるSMA1、クーゲルバーグ-ヴェランダー病、およびケネディ病とも呼ばれるSMA2、SMA3)、ポリオ後症候群、および遺伝性痙性対麻痺が挙げられるが、これらに限定されない。該条件付き活性タンパク質の投与は、老化細胞を殺傷または除去することによりMNDを低減または阻害し得る。MNDなどの、パーキンソン病に関連する自発運動不足および/または他の欠乏を検出、モニタリング、または定量するための方法は、当該技術分野で公知である(例えば、US20120005765参照)。病理組織学的、生化学的、および電気生理学的な検査および運動活性分析を含む、MNDに関係する運動不足および組織病理学的欠乏を検出、モニタリング、定量する、または評定するための方法は、当該技術分野で公知である(例えば、Rich et al., J Neurophysiol, vol. 88, pp. 3293-3304, 2002; Appel et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 88, pp. 647-51, 1991参照)。
【0277】
眼科的疾患および障害
特定の実施形態において、老化細胞関連疾患または障害は、眼の疾患、障害、または疾病、例えば、老視、黄斑変性、または白内障である。他の特定の実施形態において、老化細胞関連疾患または障害は、緑内障である。黄斑変性は、斑と呼ばれる網膜の中央部分の光受容細胞の損失を引き起こす神経変性疾患である。加齢黄斑変性の厳密な原因は、まだ知られていないが、老化網膜色素上皮(RPE)細胞の数は、年齢と共に増加する。年齢および特定の遺伝的因子および環境因子は、ARMDを発症する危険因子である(例えば、Lyengar et al, Am. J. Hum. Genet., vol. 74, pp. 20-39, 2004; Kenealy et al, Mol. Vis., vol. 10, pp. 57-61, 2004; Gorin et al, Mol. Vis., vol. 5, p. 29, 1999参照)。マイクロRNAの減少は、老化細胞プロファイルに寄与し;DICER1切除は、早期老化を誘導する。黄斑変性の対象の診断およびモニタリングは、当該技術分野で容認された定期眼科検診の手順および対象による症状の報告に従って、眼科の技術分野の当業者により達成され得る。
【0278】
水晶体前嚢および水晶体後嚢の機械的性質の年齢関連の変化から、水晶体後嚢の機械強度が、年齢と共に著しく低下することが示唆される(例えば、Krag et al, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., vol. 44, pp. 691-96, 2003; Krag et al, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., vol. 38, pp. 357-63, 1997参照)。水晶体の層状構造も変化し、これは、少なくとも一部として、組織の組成変化に起因し得る。
【0279】
IV型コラーゲンが、上皮層の下の基底膜の配置から推論して、細胞機能に影響を及ぼすことが、研究から示唆され、組織安定化におけるIV型コラーゲンの役割が、データから裏づけられる。後嚢混濁(PCO)は、白内障手術後数年間のうちに患者のおよそ20~40%に合併症として発症する(例えば、Awasthi et al, Arch Ophthalmol., vol. 127, pp. 555-62, 2009参照)。PCOは、創傷治癒に類似した応答で後嚢に沿った残りの水晶体上皮細胞の増殖および活性から生じる。線維芽細胞増殖因子、形質転換増殖因子β、表皮成長因子、肝細胞増殖因子、インスリン様成長因子、ならびにインターロイキンIL-1およびIL-6などの成長因子はまた、上皮細胞遊走を促進し得る。本明細書で議論される通り、老化細胞によるこれらの因子およびサイトカインの生成は、SASPに寄与する。対照的に、インビトロ研究で、IV型コラーゲンが水晶体上皮細胞の接着を促進することが示されている(例えば、Olivero et al, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., vol. 34, pp. 2825-34, 1993参照)。眼内レンズへのIV型コラーゲン、フィブロネクチン、およびラミニンの接着は、細胞遊走を阻害し、PCOのリスクを低減し得る(例えば、Raj et al, Int. J. Biomed. Sci., vol. 3, pp. 237-50, 2007参照)。
【0280】
任意の特定の理論に結び付けるのを望むものではないが、本明細書に記載された条件付き活性タンパク質の選択的殺傷または除去は、IV型コラーゲン網の分裂を緩徐にし得る、または妨害し得る(遅延、阻害、阻止し得る)。老化細胞の除去およびそれによるSASPの炎症効果の除去は、上皮細胞遊走を減少または阻害し得、老視の発病を遅延させ得る(抑制し得る)か、または疾病の重症度進行を減速もしくは緩徐にし得る(軽度から中等度または中等度から重度への進行を緩徐にし得るなど)。本明細書に記載された条件付き活性タンパク質および医薬組成物はまた、白内障手術後にPCOの発生の見込みを低減させるのに有用になり得る。
【0281】
BubR1低形質マウスは、生涯の早期に両側的に後嚢下白内障を発症し、このことは老化が役割を果たし得ることを示唆している(例えば、Baker et al, Nat. Cell Biol., vol. 10, pp. 825-36, 2008参照)。白内障の存在および重症度は、眼科の技術分野の当業者により日常的に実施される方法を利用して眼科検診によりモニタリングされ得る。
【0282】
特定の実施形態において、老化細胞を選択的に殺傷する少なくとも1種の条件付き活性タンパク質は、老視、白内障、または黄斑変性を発症するリスクのある対象に投与されてもよい。該条件付き活性タンパク質での処置を、ヒト対象が少なくとも40歳の時に開始して、白内障、老視、および黄斑変性の発病または発症を遅延させても、または阻害してもよい。ほぼ全てのヒトが、老視を発症するため、特定の実施形態において、老化細胞除去薬が、本明細書に記載された手法で、ヒト対象が40歳に達した後に該対象に投与されて、老視の発病または発症を遅延させても、または阻害してもよい。
【0283】
特定の実施形態において、該老化関連疾患または障害は、緑内障である。緑内障は、多くは他の主な症状がなく、視野欠損を引き起こす疾患の群について記載するために使用される広義用語である。体液の流出に必要とされる細胞網が、SA-P-Gal染色に供されると、緑内障患者において老化の4倍増加が観察された(例えば、Liton et al, Exp. Gerontol., vol. 40, pp. 745-748, 2005参照)。
【0284】
緑内障の進行の阻害に及ぼす治療の影響をモニタリングするために、標準の自動視野計測(視野検査)が、最も広く使用される技術である。加えて、進行検出のための幾つかのアルゴリズムが開発された(例えば、Wesselink et al, Arch Ophthalmol., vol. 127, pp. 270-274, 2009、およびその参考資料を参照)。追加の方法としては、隅角鏡検査(体液が眼から流出する小柱網および角を検査する);画像技術(例えば、走査レーザトモグラフィー(例えば、HRT3)、レーザー偏光測定(例えば、GDX)、光干渉断層撮影);検眼鏡検査法;および角膜中央部の厚さを計測する厚度計測定が挙げられる。
【0285】
代謝性の疾患または障害
該条件付き活性タンパク質または医薬組成物を投与することにより処置可能な老化関連疾患または障害は、代謝性の疾患または障害を包含する。そのような老化細胞関連疾患および障害としては、糖尿病、メタボリック症候群、糖尿病性潰瘍、および肥満が挙げられる。本明細書に記載された条件付き活性タンパク質は、2型糖尿病、特に年齢、食事、および肥満に関連する2型糖尿病を処置するのに用いられてもよい。
【0286】
肥満および2型糖尿病などの代謝疾患における老化細胞の関与は、損傷または代謝機能不全への反応として示唆されている(例えば、Tchkonia et al, Aging Cell, vol. 9, pp. 667-684, 2010を参照)。肥満マウス由来の脂肪組織は、老化マーカーSA-P-Gal、p53、およびp21の誘導を示した(例えば、 Minamino et al, Nat. Med., vol. 15, pp. 1082-1087, 2009参照)。腫瘍壊死因子-アルファおよびCcl2/MCP1などの炎症促進性サイトカインの同時の上方制御が、同じ脂肪組織中で観察された(例えば、上掲のMinamino et al.参照)。炎症促進性のSASP成分もまた、2型糖尿病に寄与することが示唆されているため(例えば、上掲のTchkonia et al.参照)、肥満における老化細胞の誘導は、潜在的に臨床的関わりを有する。老化マーカーおよびSASP成分の上方制御の類似パターンは、マウスおよびヒトの両方で糖尿病に関連する(例えば、上掲のMinamino et al.参照)。したがって、老化細胞除去薬を投与することを含む本明細書に記載された方法は、2型糖尿病に加え、肥満およびメタボリック症候群の処置または防御に有用であり得る。理論に結び付けるのを望むものではないが、老化前脂肪細胞が老化細胞除去薬と接触し、それにより老化前脂肪細胞を殺傷することが、糖尿病、肥満、またはメタボリック症候群のいずれか1つを有する人に臨床上および健康上の利益をもたらし得る。
【0287】
糖尿病および老化に関連する疾病または障害は、糖尿病性潰瘍(即ち、糖尿病の創傷)である。潰瘍は、皮膚の破壊であり、これは、皮下組織または筋肉もしくは骨さえも含むように拡大し得る。これらの病変は、特に、下肢に生じる。糖尿病性静脈潰瘍の患者は、慢性創傷の部位で細胞老化の存在増加を示す(例えば、Stanley et al. J. Vas. Surg., vol. 33, pp. 1206-1211, 2001参照)。慢性創傷の部位で、糖尿病性潰瘍などの慢性炎症も観察され(例えば、Goren et al. Am. J. Pathol., vol. 168, pp. 65-77参照)、老化細胞の炎症促進性サイトカインの表現型が、その病態における役割を有することが示唆される。
【0288】
該条件付き活性タンパク質の有効性は、医療および臨床の技術分野の当業者により即座に決定され得る。身体検査、臨床症状の評定およびモニタリング、ならびに本明細書に記載されたものなどの分析テストおよび方法の実施をはじめとする診断方法の1つまたは任意の組み合わせが、対象の健康状態をモニタリングするために用いられてもよい。糖尿病の処置または防御のために本明細書に記載された1種または複数の老化細胞除去薬を受けている対象は、例えば、グルコースおよびインスリン抵抗性、エネルギー消費量、身体組成、脂肪組織、骨格筋、および肝臓炎症、ならびに/または脂質毒性(インビボ画像による筋肉および肝臓脂質、ならびに筋肉、肝臓、骨髄および膵臓β細胞脂質蓄積、ならびに組織学的検査による炎症)をアッセイすることにより、モニタリングされ得る。2型糖尿病の他の特徴的特性または表現型は、公知であり、本明細書に記載された通り、そして当該技術分野において公知で日常的に実践される他の方法および技術を利用することにより、アッセイすることができる。
【0289】
2型糖尿病を有するまたは2型糖尿病を発症するリスクのある対象は、メタボリック症候群を有し得る。ヒトにおけるメタボリック症候群は、典型的には肥満に関連し、心臓血管疾患、肝臓脂肪症、高脂血症、糖尿病、およびインスリン抵抗性の1つまたは複数を特徴とする。メタボリック症候群の対象は、例えば、高血圧症、2型糖尿病、高脂血症、脂質異常症(例えば、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症)、インスリン抵抗性、肝臓脂肪症(脂肪性肝炎)、高血圧症、アテローム性硬化症、および他の代謝障害の1つまたは複数を含み得る、代謝障害または代謝異常の群を示し得る。
【0290】
皮膚疾患または障害
本明細書に記載された条件付き活性タンパク質または医薬組成物を投与することにより処置可能な老化細胞関連疾患または障害は、皮膚疾患または障害を包含する。そのような老化細胞関連疾患および障害としては、乾癬および湿疹が挙げられ、これらも炎症性疾患であり、先により詳細に議論されている。老化に関連する他の皮膚疾患および障害としては、細かいしわ(老化によるしわ);心因掻痒(糖尿病および老化に関連する);知覚不全(糖尿病および多発性硬化症に関連する化学療法の副作用);乾癬(述べられた通り)および他の丘疹鱗屑性障害、例えば、紅皮症、扁平苔癬、および苔癬様皮膚病症;アトピー性皮膚炎(湿疹の形態および炎症に関係する);湿疹性発疹(高齢患者に多く観察され、特定の薬物の副作用に関連する)が挙げられる。老化に関係する他の皮膚疾患および障害としては、好酸球性皮膚病(特定種類の血液癌に関連する);反応性の好中球性皮膚症(炎症性腸症候群などの基礎疾患に関係する);天疱瘡(自己抗体がデスモグレインに対して形成する自己免疫性疾患);天疱瘡様および他の免疫水疱性皮膚病(皮膚の自己免疫性水疱形成);加齢に関連する皮膚の線維性組織球性増殖;ならびに高齢の個体群でより一般的な皮膚リンパ腫が挙げられる。本明細書に記載された方法に従って処置可能であり得る別の皮膚疾患としては、紅斑性狼瘡の症状である皮膚の狼瘡が挙げられる。遅発性の狼瘡は、T細胞およびB細胞の機能低下(即ち、減退)、ならびに加齢に関連するサイトカイン(免疫老化)に関連付けられ得る。
【0291】
転移
特定の実施形態において、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物は、体内の1つの臓器または組織から別の臓器または組織への転移(即ち、癌または腫瘍細胞の拡大および拡散)の処置または予防に用いられ得る。癌を有する対象は、転移を阻害するために該条件付き活性タンパク質または医薬組成物の投与から利益を受け得る。そのような条件付き活性タンパク質または医薬組成物は、腫瘍増殖を阻害し得る。癌の転移は、癌細胞(即ち、腫瘍細胞)が、発生および最初のコロニー形成の解剖学的部位を越えて対象の全身の他の領域に広がる時に生じる。腫瘍増殖は、腫瘍サイズにより計測され得、これは、例えば、PETスキャン、MRI、CATスキャン、生検などにより、当業者に熟知された様々な方法で測定され得る。腫瘍増殖に対する治療剤の効果も、腫瘍細胞の分化を検査することにより評価され得る。
【0292】
本明細書および当該技術分野で使用されるように、癌または腫瘍という用語は、典型的には異常な細胞増殖を示す細胞を特徴とする疾患を包含する、臨床用の記述用語である。癌という用語は、悪性腫瘍または悪性腫瘍から生じる疾患状態について記載するために一般に使用される。あるいは異常な成長は、当該技術分野において新生物と称され得る。組織関連などの腫瘍という用語は、一般に、少なくとも部分的に過度かつ異常な細胞増殖を特徴とする任意の異常な組織成長を指す。腫瘍は、転移性であり得、発生および最初のコロニー形成のその解剖学的部位を越えて対象の全身の他の領域に広がり得る。癌は、固形腫瘍を含み得るか、または「液体」腫瘍(例えば、白血病および他の血液癌)を含み得る。
【0293】
細胞は、放射線および特定の化学療法剤などの癌治療によって老化に誘導される。老化細胞の存在は、炎症分子の分泌(老化細胞に関する本明細書の記載を参照)を増加させ、腫瘍進行を促進し、これは、腫瘍成長を促進し、腫瘍サイズを増大させ、転移を促進し、分化を改変し得る。老化細胞が破壊されると、腫瘍進行が、有意に阻害され、結果として、小サイズの腫瘍になり、転移成長ほとんどまたは全く観察されなくなる(例えば、WO2013/090645参照)。したがって、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物は、化学療法または放射線療法の後に投与されて、これらの老化細胞を殺傷または除去し得る。本明細書に議論され、そして当該技術分野で理解される通り、老化細胞関連分泌表現型(SASP)の存在などにより示されるような老化の確定が、数日間にわたって行われ;それゆえ、老化が確定されると、老化細胞除去薬を投与して老化細胞を殺傷し、それにより転移の発生の見込みを低減するまたは転移の程度を低減することが開始される。
【0294】
特定の実施形態において、化学療法または放射線療法が、少なくとも1日の治療実施(on-therapy)(即ち、化学療法または放射線療法)と、その後の少なくとも1週間の治療休止(off-therapy)の処置サイクルで施される場合、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物は、治療休止の時間間隔の2日目またはそれ以降に開始し、治療休止の時間間隔の最終日またはそれ以前に終了する、治療休止の時間間隔の間に1日以上投与される。より具体的な実施形態において、化学療法または放射線療法が、少なくとも1日の治療実施(即ち、化学療法または放射線療法)と、その後の少なくとも1週間の治療休止の処置サイクルで施される場合、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物は、治療休止の時間間隔の6日目である1日に投与される。他の具体的な実施形態において、化学療法または放射線療法が、少なくとも1日の治療実施(即ち、化学療法または放射線療法)と、その後の少なくとも2週間の治療休止の処置サイクルで施される場合、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物は、化学療法または放射線療法休止の時間間隔の6日目に投与が開始され、続く化学療法または放射線療法の処置コースの初日の少なくとも1日前または少なくとも2日前に終了する。
【0295】
転移を処置するための別の実施形態において、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物は、化学療法または放射線療法の処置レジメンが完了した後に投与され得る。特定の実施形態において、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物は、化学療法または放射線療法が完了した後、14日以内の処置ウィンドウ(即ち、老化細胞除去薬の処置クール)内で1日以上、投与される。
【0296】
本明細書に記載された方法はまた、医療技術分野で記載される腫瘍のタイプのいずれか1つの転移癌の進行を阻害する、阻止する、または緩徐にするのに有用である。癌(腫瘍)のタイプには、以下のものが挙げられる:副腎皮質癌、小児期副腎皮質癌、AIDS関連の癌、肛門癌、虫垂癌、基底細胞癌、小児期基底細胞癌、膀胱癌、小児期膀胱癌、骨癌、脳腫瘍、小児期星状細胞腫、小児期脳幹部グリオーマ、小児期中枢神経系非定型奇形腫様/横紋筋肉腫様腫瘍、小児期中枢神経系胚芽腫、小児期中枢神経系胚細胞腫瘍、小児期頭蓋咽頭腫脳腫瘍、小児期脳室上衣腫脳腫瘍、乳癌、小児期気管支腫瘍、類癌腫、小児期類癌腫、消化管カルチノイド、原発不明癌、原発不明小児期癌、小児期心(心臓)腫瘍、子宮頸癌、小児期子宮頸癌、小児期脊索腫、慢性骨髄増殖性障害、結腸癌、大腸癌、小児期大腸癌、肝臓外胆管癌、非浸潤性乳管癌(DCIS)、子宮内膜癌、食道癌、小児期食道癌、小児期鼻腔神経芽細胞腫、眼癌、骨の悪性線維性組織球腫、胆嚢癌、胃癌(gastric(stomach) cancer)、小児期胃癌、消化管間質腫瘍(GIST)、小児期消化管間質腫瘍(GIST)、小児期頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、神経膠腫、頭頸部癌、小児期頭頸部癌、肝細胞(肝臓)癌、下咽頭癌、腎臓癌、腎細胞の腎臓癌、ウィルムス腫瘍、小児期腎腫瘍、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭癌、小児期喉頭癌、白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(cml)、ヘアリーセル白血病、口唇癌、肝臓癌(原発性)、小児期肝臓癌(原発性)、上皮内小葉癌(LCIS)、肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、リンパ腫、AIDS関連のリンパ腫、バーキットリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫(CNS)、黒色腫、小児期黒色腫、眼球内(眼の)黒色腫、メルケル細胞癌、悪性中皮腫、小児期悪性中皮腫、潜在性原発の転移性扁平上皮頸部癌、NUT遺伝子に関する正中管癌腫(midline tract carcinoma)、口腔癌、小児期多発性内分泌腺腫症、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成の新生物、脊髄増殖性新生物、多発性骨髄腫、鼻腔癌、鼻咽腔癌、小児期鼻咽腔癌、神経芽細胞腫、口腔癌、小児期口腔癌、口腔咽頭癌、卵巣癌、小児期卵巣癌、上皮卵巣癌、低悪性度の卵巣癌、膵臓癌、小児期膵臓癌、膵臓内分泌腫瘍(島細胞腫)、小児期乳頭腫症、パラガングリオーマ、副鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍、小児期胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、腎盂移行上皮癌、網膜芽細胞腫、唾液腺癌、小児期唾液腺癌、腫瘍のユーイング肉腫ファミリー、カポジ肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、小児期横紋筋肉腫、軟部組織肉腫、子宮肉腫、セザリー症候群、小児期皮膚癌、非黒色腫皮膚癌、小腸癌、扁平上皮癌、小児期扁平上皮癌、睾丸癌、小児期睾丸癌、喉頭癌、胸腺腫および胸腺癌、小児期胸腺腫および胸腺癌、甲状腺癌、小児期甲状腺癌、尿管移行上皮癌、尿道癌、子宮内膜の子宮癌、膣癌、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症。
【0297】
化学療法および放射線療法の副作用
別の実施形態において、該老化細胞関連の障害または疾病は、化学療法の副作用または放射線療法の副作用である。非癌細胞を老化へ誘導する化学療法剤の例としては、アントラサイクリン(ドキソルビシン、ダウノルビシンなど);タキソール(例えば、パクリタキセル);ゲムシタビン;ポマリドマイド;およびレナリドマイドが挙げられる。本明細書に記載された通り投与される老化細胞除去薬の1種または複数は、化学療法の副作用または放射線療法の副作用を処置および/または予防する(即ち、その発生の見込みを低減する)ために使用され得る。老化細胞の除去または破壊は、化学療法または放射線療法のエネルギー不均衡を含む急性毒性をなどの急性毒性を改善し得る。急性毒性の副作用としては、胃腸毒性(例えば、吐気、嘔吐、便秘、食欲不振、下痢)、末梢神経障害、疲労、倦怠感、低身体活動、血液毒性(例えば、貧血症)、肝毒性、脱毛症(脱毛)、疼痛、感染、粘膜炎、体液鬱滞、皮膚毒性(例えば、発疹、皮膚炎、色素過剰症、蕁麻疹、光過敏症、爪の変化)、口腔の問題(例えば、口腔粘膜炎)、歯肉もしくは咽喉の問題、または化学療法もしくは放射線療法により引き起こされた任意の毒性副作用が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、放射線療法または化学療法により引き起こされた毒性副作用(例えば、National Cancer Instituteのウェブサイトを参照)は、本明細書に記載された方法により改善され得る。したがって特定の実施形態において、治療を受ける対象において化学療法もしくは放射線療法またはその両方の急性毒性を改善する(発生を低減、阻害または予防するため(即ち、発生の見込みを低減するため))、あるいはその毒性副作用(即ち、有害な副作用)の重症度を低減するための方法が、本明細書で提供され、ここで該方法は、老化細胞を選択的に殺傷、除去もしくは破壊する、またその選択的な破壊を容易にする薬剤を該対象に投与することを含む。
【0298】
化学療法もしくは放射線療法の副作用を処置する、またはその発生の見込みを低減する、またはその重症度を低減するための該条件付き活性タンパク質または医薬組成物の投与は、転移の処置/予防のために先に記載されたものと同じ処置クールにより達成され得る。転移を処置または予防する(即ち、その発生の見込みを低減する)ために記載された通り、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物は、化学療法もしくは放射線療法の休止の時間間隔中に、または化学療法もしくは放射線療法の処置レジメンが完了した後に投与される。
【0299】
より具体的な実施形態において、急性毒性は、エネルギー不均衡を含む急性毒性であり、体重減少、内分泌学的変化(複数可)(例えば、ホルモン不均衡、ホルモンシグナル伝達の変化)、および身体組成の変化(複数可)の1つまたは複数を含み得る。特定の実施形態において、エネルギー不均衡を含む急性毒性は、医学療法を受けなかった対象で観察されるよりも低いまたは排除されたエネルギー消費量に示される通り、対象が物理的に活性となる能力の減少または低減に関係する。非限定的例として、エネルギー不均衡を含むそのような急性毒性作用は、低身体活動を包含する。他の特定の実施形態において、エネルギー不均衡は、疲労または倦怠感を包含する。
【0300】
一実施形態において、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物により処置または予防される(即ち、発生の見込みが低減される)化学療法の副作用は、心臓毒性である。アントラサイクリン(ドキソルビシン、ダウノルビシンなど)で処置されている癌を有する対象は、アントラサイクリンの心臓毒性を低減する、改善する、または減少させる、本明細書に記載された1種または複数の老化細胞除去薬により処置され得る。医療の技術分野で充分に理解される通り、アントラサイクリンに関連する心臓毒性のために、癌が薬物に応答したとしても、対象が受け得る最大の生涯投与量は制限される。該条件付き活性タンパク質の1つまたは複数の投与により、心臓毒性は低減し得、それによりさらなる量のアントラサイクリンを対象に投与することができ、癌疾患に関係する予後の改善がもたらされる。一実施形態において、心臓毒性は、ドキソルビシンなどのアントラサイクリンの投与により生じる。ドキソルビシンは、白金に基づく治療が不能であった後の卵巣癌;原発性全身性化学療法が不能であった、もしくは該療法に不耐性後のカポジ肉腫;または以前にボルテゾミブを受けていない、もしくは少なくとも1回、過去の治療を受けた患者においてボルテゾミブと組み合わせた多発性骨髄腫、を有する患者を処置するために認可されたアントラサイクリントポイソメラーゼである。ドキソルビシンは、患者への総生涯投与量が550mg/m2を超過する場合、うっ血性心不全につながり得る心筋障害を引き起こし得る。患者が、さらに縦隔放射線照射または別の心臓毒性の薬物を受ける場合、心臓毒性は、低用量でも生じ得る。製剤挿入物(drug product inserts)(例えば、Doxil、アドリアマイシン)を参照されたい。
【0301】
他の実施形態において、本明細書に記載された該条件付き活性タンパク質または医薬組成物は、慢性または長期の副作用を改善するために本明細書に提供された方法で使用され得る。慢性の毒性副作用は、典型的には長期間にわたる化学療法または放射線療法への複数回の暴露またはその実施により生じる。特定の毒性作用は、処置のかなり後に現われ(遅発性毒性作用とも呼ばれる)、治療による臓器または系への損傷により生じる。臓器機能不全(例えば、神経、肺、心臓血管、および内分泌腺の機能不全)は、小児期に癌の処置を受けた患者で観察されてきた(例えば、Hudson et al, JAMA, vol. 309, pp. 2371-81, 2013参照)。任意の特定の理論に結び付けるのを望むものではないが、老化細胞、特に化学療法または放射線療法により老化に誘導された特定の正常細胞を破壊することにより、慢性の副作用の発生の見込みが低減され得る、または慢性副作用の重症度が低減もしくは排除され得る、または慢性副作用の発生時間が遅延され得る。化学療法または放射線療法を受けた対象に生じる慢性および/または後期の毒性の副作用としては、心筋症、うっ血性心疾患、炎症、早発閉経、骨粗しょう症、不妊症、認知機能の障害、末梢神経障害、続発性癌、白内障および他の視覚問題、聴力損失、慢性疲労、肺活量の減少、および肺疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0302】
加えて、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物を投与することで癌を有する対象において老化細胞を殺傷または除去することにより、化学療法または放射線療法への感受性が、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物が投与されなかった場合よりも、臨床的または統計学的に有意な手法で高められ得る。言い換えれば、化学療法または放射線療法への耐性の発達は、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物が各化学療法または放射線療法で処置された対象に投与された時に阻害され得る。
【0303】
年齢関係の疾患および障害
該条件付き活性タンパク質または医薬組成物は、自然な加齢のプロセスの一部として生じる、または対象が老化誘導剤もしくは誘導因子(例えば、放射線、化学療法、喫煙、高脂肪/高糖食、他の環境因子)に暴露された時に生じる年齢関係の疾患または障害を処置または予防する(即ち、発生の見込みを低減する)のに有用であり得る。年齢関係の障害もしくは疾患、または年齢の影響を受けやすい特性は、老化誘導性の刺激に関連し得る。本明細書に記載された処置の方法の効能は、老化誘導性の刺激に関連する年齢関連の障害もしくは年齢の影響を受けやすい特性の症状の数を減少させることにより、1つもしくは複数の症状の重症度を低下させることにより、または老化誘導性の刺激に関連する年齢関連の障害もしくは年齢の影響を受けやすい特性の進行を遅延させることにより、発現され得る。他の特定の実施形態において、老化誘導性の刺激に関係する年齢関連の障害または年齢の影響を受けやすい特性を予防することは、老化誘導性の刺激に関連する年齢関連の障害または年齢の影響を受けやすい特性の発病、あるいは老化誘導性の刺激に関連する1つもしくは複数の年齢関連の障害または年齢の影響を受けやすい特性の再発を予防する(即ち、発生の見込みを低減する)または遅延させることを指す。
【0304】
年齢関係の疾患または疾病としては、例えば、腎機能障害、後弯症、椎間板ヘルニア、虚弱、脱毛、聴力損失、視覚損失(盲目または視覚障害)、筋肉疲労、皮膚障害、皮膚母斑、糖尿病、メタボリック症候群、およびサルコペニアが挙げられる。視覚損失は、対象が過去に有した視覚の欠如を指す。視力に基づいて視覚および視覚損失の範囲について記載するために、様々な尺度が開発されてきた。年齢関係の疾患および症状はまた、皮膚の疾病、例えば非限定的に、以下の疾病の1つまたは複数を処置することを含む:表在性の小じわなどのしわ;色素過剰症;瘢痕;ケロイド;皮膚炎;乾癬;湿疹(脂漏性湿疹など);酒さ;白斑;尋常性魚鱗癬;皮膚筋炎;および紫外線角化症。
【0305】
虚弱は、毎日または急性のストレス要因に対処する対象の能力を損なう、多数の生理学的系にわたる予備力(reserve)および機能の加齢関連の降下から生じた脆弱性上昇の臨床的に認識可能な状態として定義されている。特定の実施形態において、加齢、ならびに加齢関係の疾患および障害は、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物を投与することにより処置または予防され得る(即ち、発生の見込みが低減される)。該条件付き活性タンパク質または医薬組成物は、成体幹細胞の老化を阻害し得る、または老化した成体幹細胞の蓄積を阻害し得る、成体幹細胞を殺傷し得る、もしくはその除去を促進し得る。例えば、組織の再生能を維持するために幹細胞における老化を予防する重要性について記載したPark et al, J. Clin. Invest., vol. 113, pp. 175-79, 2004、およびSousa-Victor, Nature, vol. 506, pp. 316-21, 2014を参照されたい。
【0306】
本明細書に記載された老化細胞関連の疾患または障害の処置に関する該条件付き活性タンパク質または医薬組成物の有効性は、医療および臨床の技術分野における当業者により即座に決定され得る。身体検査、患者の自己評価、臨床症状の評価およびモニタリング、臨床検査、体力テスト、ならびに診査手術を含む分析的な試験および方法の実施をはじめとする当業者に周知である、特別の疾患または障害に適当な診断法の1つまたはその任意の組み合わせは、例えば、対象の健康状態および老化細胞除去薬の有効性のモニタリングに使用されてもよい。本明細書に記載された処置方法の効果は、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物を受けた特定の疾患または障害に罹患したまたはそのリスクのある患者の症状を、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物で処置されていないまたはプラセボ処置を受けた患者の症状と比較することなど、当該技術分野で公知の技術を使用して分析されてもよい。
【0307】
該条件付き活性タンパク質または医薬組成物の有効性は、非限定的に、処置される疾患から生じたもしくはそれに関連する症状の軽減、減少もしくは緩和;症状の発生の減少;生活の質の改善;より長い無疾患状態(即ち、対象が、疾患の診断がなされることに基づいて症状を示す見込みまたは傾向を減少させる);疾患の範囲の縮小;疾患の安定した(即ち、増悪しない)状態;疾患進行の遅延もしくは緩徐化;疾患状態の改善もしくは緩和;および検出可能もしくは検出不能にかかわらず寛解(部分または完全にかかわらず);および/または全生存率を含む有益な、もしくは所望の臨床結果を包含し得る。該条件付き活性タンパク質または医薬組成物の有効性はまた、対象が、該条件付き活性タンパク質または医薬組成物を受けていなかった場合に予測される生存と比較した時の生存延長を意味し得る。
【0308】
本明細書に記載された該条件付き活性タンパク質または医薬組成物での処置を必要とする対象、患者、または個体は、老化細胞関連疾患もしくは障害の症状を発症した、または老化細胞関連疾患もしくは障害を発症するリスクのあるヒトであっても、または非ヒト霊長類もしくは他の動物(即ち、獣医学的使用)であってもよい。処置され得る非ヒト動物としては、哺乳動物、例えば非ヒト霊長類(例えば、猿、チンパンジー、ゴリラなど)、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、アレチネズミ、ハムスター、フェレット、ウサギ)、ウサギ目動物、家畜豚(例えば、豚、ミニチュアピッグ)、ウマ、イヌ、ネコ、ウシ、ゾウ、クマ、および他の飼育動物、家畜、および動物園の動物が挙げられる。
【0309】
実施例
条件付き活性タンパク質を作製するための実施例1~9は、WO2016/138071に記載される。
【0310】
実施例10:異なる緩衝液中の条件付き活性抗体の活性
【0311】
それぞれ2種のモノクローナル抗体(親抗体としてのmAb 048-01およびmAb 048-02)から進化された条件付き活性抗体の活性を、2種の異なる緩衝液中で測定した(
図4)。2種の緩衝液は、リン酸緩衝液(条件IV)およびクレブス緩衝液(条件I)であった。6種の条件付き活性抗体:CAB Hit 048-01、CAB Hit 048-02、CAB Hit 048-03、CAB Hit 048-04、CAB Hit 048-05、およびCAB Hit 048-06を、mAb 048-01から進化させた。3種の条件付き活性抗体:CAB Hit 048-07、CAB Hit 048-08、およびCAB Hit 048-09をmAb 048-02から進化させた。
【0312】
この試験から、該条件付き活性抗体の選択性(pH7.4でのアッセイにおける活性に対するpH6.0でのアッセイにおける活性の比)がアッセイで用いられた緩衝液により影響を受けることが示された。野生型mAb 048-02から進化された条件付き活性抗体が、リン酸緩衝液中よりもクレブス緩衝液中で有意に高い選択性を示した(
図4)。
【0313】
実施例11:条件付き活性抗体および重炭酸塩の選択性
【0314】
実施例10では、リン酸緩衝液(条件IV)よりもクレブス緩衝液(条件I)において、該条件付き活性抗体のより高い選択性が観察された。このことが、実施例10で観察されたより高い選択性に最も有意に寄与したクレブス緩衝液中の成分の同定に導いた。1つの条件付き活性抗体の選択性を、1回に1成分を様々な成分から差し引いたクレブス緩衝液から得られた緩衝液で再試験した(
図5、左のバーの群)。完全なクレブス緩衝液が用いられた場合、該条件付き活性抗体の選択性は高く、pH6.0/7.4の活性比が約8である。成分A~Fが、それぞれクレブス緩衝液から差し引かれると、該条件付き活性抗体の選択性は喪失しなかったが、該条件付き活性抗体は、成分CおよびDのそれぞれが差し引かれた場合にはより低い選択性になった。しかし、成分G(重炭酸塩)が、クレブス緩衝液から差し引かれると、該条件付き活性抗体の選択性は、完全に喪失した。
図5を参照されたい。このことから、重炭酸塩がクレブス緩衝液中の該条件付き活性抗体の高い選択性を少なくとも一部、担うことが示される。
【0315】
その後、同じ条件付き活性抗体の選択性を、重炭酸塩を有さないリン酸緩衝液(条件IV)中で測定し、該条件付き活性抗体の選択性がリン酸緩衝液中で完全に喪失することが観察された。重炭酸塩をリン酸緩衝液に添加すると、該条件付き活性抗体の選択性は、クレブス緩衝液中で観察されたレベルまで回復された。これにより、重炭酸塩がこの条件付き活性抗体の選択性に必要であることが確証された。
【0316】
実施例12:重炭酸塩はpH7.4での結合を抑制する
【0317】
この実施例では、0から重炭酸塩の生理学的濃度(約20mM)までの範囲内の異なる重炭酸塩濃度を有する緩衝液中で、3種の条件付き活性抗体(CAB Hit A、CAB Hit B、およびCAB Hit C)についてのpH7.4の結合活性を測定した(
図6)。pH7.4での3種の条件付き活性抗体全ての結合活性が、重炭酸塩濃度を0~生理学的濃度まで上昇させると用量依存的に低下することが観察された(
図6)。その一方で、野生型抗体の結合活性は、重炭酸塩により影響を受けなかった。この試験では、重炭酸塩の存在下での該条件付き活性抗体の選択性が、少なくとも一部として、重炭酸塩との相互作用によるpH7.4での条件付き活性抗体への結合活性喪失を原因とする可能性が示された。
【0318】
実施例13:老化細胞の誘導
【0319】
細胞の播種:6ウェルプレートにおいて、ウェルあたり培地2mL中でブランクおよび処置用に、細胞を1.0×105細胞のMDA-MB468(P10)、MDA-MB231(Px)、および2.0×105細胞のMCF-7(Px)として播いた。細胞を一晩培養した。
・ MCF-7は、ERa+細胞株である。パルボシクリブは、この細胞株において抗増殖活性を有し、細胞増殖を停止させて、老化細胞を誘導する。
・ MDA-MB231は、ERa-細胞株である。パルボシクリブは、この細胞株において抗増殖活性を有し、細胞増殖を停止させて、老化細胞を誘導する。
・ MDA-MB468は、別のERa-細胞株である。パルボシクリブは、この細胞株において抗増殖効果を有さず、したがって製造成長を停止させず、老化細胞を誘導することができない。
【0320】
パルボシクリブ溶液の調製:パルボシクリブイセチオン酸塩25mg(PD-0332991、Selechchem、カタログ番号S1579、バッチ4、25mg)をH2O 0.5mLに添加して、87.15mM濃度のパルボシクリブの溶液を原液として生成させた。原液2.3μLをH2O 198μLと混合して、1mMのパルボシクリブ溶液を生成させた。
【0321】
老化細胞の誘導:1mMパルボシクリブ溶液 2μLを培地2mLに添加して、培養細胞(MCF-7、MDA-MB231、およびMDA-MB468)の処置のために最終濃度1μMのパルボシクリブを得た。培養細胞をこの培地で7日間処置して、老化細胞の誘導を試みた。
【0322】
FACによる老化細胞の検出(B-galおよび抗体の同時染色):パルボシクリブでの7日間処置の後、該細胞をSA-B-Gal蛍光基質(C12FDG)および一連の抗体と同時染色し、Zombie NIR生死色素を適用した
1. 細胞をPBSで2回洗浄し、細胞をDetachin(商標)細胞剥離溶液で剥離させる。
2. Detachin(商標)とDMEMとの反応を停止させて、細胞をカウントする。
3. PBS中の2mM C12FDG(最終33μM)、抗体(5μL、1×106細胞まで)、およびZombie NIR色素(1:1000)により氷上で1時間、染色する。
4. 細胞をPBSで2回洗浄し、4%PFAにより室温で10分間固定する。
5. PBSで洗浄して、FACを100μL PBS中で回収する。
6. FITC-PE-APC/Cy7を適用する。
7. 細胞を以下の抗体と同時染色して、対応する抗原の発現を検出する:
a) PE抗ヒトCD54クローンHCD54、200μg/mL、アイソタイプ:Ms IgG1。Biolegend、カタログ番号322707、ロット番号B232865、5μl/106細胞
b) PE抗ヒトCD73クローンAD2、アイソタイプ:Ms IgG1。Biolegend、カタログ番号344004、ロット番号B216193、5μl/106細胞
c) PE抗ヒトCD261(DR4、TRAIL-R1)クローンDJR1、200 μg/mL、アイソタイプ:Ms IgG1。Biolegend、カタログ番号307205、ロット番号B189821、5μl/106細胞
d) PE抗ヒトCD95 (Fas) クローンDX2、100 μg/mL、アイソタイプ:Ms IgG1。Biolegend、カタログ番号305607、ロット番号B203942、5μl/106細胞
e) PE抗ヒトCD39クローンA1、50μg/mL、アイソタイプ:Ms IgG1。Biolegend、カタログ番号328208、ロット番号B199643、5μl/106細胞
f) PE抗ヒトNectin4、アイソタイプ:Ms IgG1。R&D systems、カタログ番号FAB2659P、ロット番号AAAO0217031、5μl/106細胞
g) PE-アイソタイプマウス抗IgG1、k:クローンMOPC-21、0.2 mg/mL。 Biolegend、カタログ番号400112、ロット番号B220359、5μl/106細胞。
【0323】
誘導された老化細胞を、FACSにより検出した。染色された細胞をPBSで洗浄して、4%パラホルムアルデヒド(PFA)により室温で10分間固定し、FACS分析に用いた。Cell Biolabs製のCBA-230キットを用いたSA-B-gal(Senescence Associated B-Gal)染色も、対照として実施した。
【0324】
細胞株(MCF-7、MDA-MB231、およびMDA-MB468細胞)を、パルボシクリブ処置の後、顕微鏡下で観察した。さらに、パルボシクリブ処置後の該細胞株で発現された標的プロファイルも、対応する抗体での染色により分析した。プロファイルされた標的は、標的1(CD54)、標的2(CD73)、標的3(CD261)、標的4(CD95)、標的5(CD39)、および標的6(ネクチン4)であった。
【0325】
MCF-7細胞は、パルボシクリブ処置に応答して、細胞を老化細胞になるように誘導した(
図9A~9B)。MCF-7細胞は、老化細胞のための細胞外環境を有するクラスターを形成した(
図9B)。FACS分析は、パルボシクリブ処置細胞(老化細胞)が未処置細胞(非老化細胞)と異なることを明確に示した(
図9C)。パルボシクリブ処置細胞(老化細胞)の標的プロファイルが、未処置細胞(非老化細胞)と異なることが見出された(
図9D)。具体的には標的1、2および6は、老化細胞においてより多く発現され、標的2は、発現レベルの最大上昇を有した。
【0326】
同様に、MDA-MB231細胞もまた、パルボシクリブ処置に応答して、細胞を老化細胞になるように誘導した(
図10A~10B)。MCF-MB231細胞もまた、細胞外環境を有するクラスターを形成した(
図10B)。FACS分析は、パルボシクリブ処置細胞(老化細胞)が未処置細胞(非老化細胞)と異なることを明確に示した(
図10C)。パルボシクリブ処置細胞(老化細胞)の標的プロファイルが、未処置細胞(非老化細胞)と異なることが見出された(
図10D)。具体的には標的1および2は、未処置の非老化細胞に比較して、老化細胞において有意に高い発現レベルを示した。
【0327】
対照MDA-MB468細胞は、パルボシクリブ処置に応答せず、したがってこの処置は、対照細胞を老化細胞になるように誘導しなかった(
図11A~11B)。FACSおよび標的プロファイルの分析は、処置細胞と未処置細胞の間に任意の有意な差を示さなかった。
【0328】
実施例14:MDA-MB231細胞のパルボシクリブ処置およびベータガラクトシダーゼ染色
【0329】
MDA-MB231細胞を6ウェルプレートに1×105細胞/ウェルで播種し、一晩培養した。培養された細胞を2つのバッチに分離し、1つのバッチは1μMパルボシクリブイセチオン酸塩で7日間処置し、もう一方のバッチは未処置のままであった。ウェルから細胞を剥離することにより、両方のバッチを回収した。
【0330】
回収された細胞を、PBS緩衝液中のベータガラクトシダーゼ(B-gal)基質(FITC)、標的抗体(抗CD73抗体)、および生死色素(APC/Cy7)により氷上で1時間、染色した。B-gal染色は、Cell Signaling Technologies、カタログ番号9860Sキットを用いて実施した。染色されたMDA-MB231細胞を、顕微鏡下で観察した。
図12Aには、未処置のMDA-MB231細胞では、細胞クラスターが観察されなかったため老化細胞がほとんど存在しないことが示される。
図12Bには、パルボシクリブで処置されたMDA-MB231細胞が示されている。細胞の一部は、クラスターを形成した老化細胞に誘導され、細胞外環境も存在した。
【0331】
未処置および処置の両方の染色細胞をPBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒドにより室温で10分間固定した。固定された細胞を、FACSセルソーティングにおいて用いた。
【0332】
未処置細胞は、ほとんどがB-gal染色陰性であったが、それらはFACSソーティングによりCD73活性で分離された(
図14A)。B-gal陽性細胞が、有意により少ない数で存在したが、それらもFACSソーティングによりCD73活性で分離された(
図14C)。対照的にパルボシクリブ処置細胞は、ほぼ同じ数のB-gal陰性細胞およびB-gal陽性細胞を有した(
図14Bおよび14D)。同様に、処置細胞は、B-gal陰性またはB-gal陽性に関わらず、FACSソーティングによりCD73活性で分離された(
図14Bおよび14D)。
【0333】
MDA-MB231細胞についてのFACSソーティングの結果を、
図15A~15Bに要約している。15Aには、より多数の老化細胞およびより高いCD73活性を含む処置細胞に比較して、老化細胞の数がかなり少なく、該細胞のCD73活性がかなり小さいレベルであったことが示されている(
図15B)。
【0334】
実施例15:MDA-MB468細胞のパルボシクリブ処置およびベータガラクトシダーゼ染色
【0335】
MDA-MB468細胞を、実施例14におけるMDA-MB231細胞に記載された通り、培養、染色および回収した。染色されたMDA-MB468細胞を、顕微鏡下で観察した。
図13Aには、未処置のMDA-MB468細胞が示されている。
図13Bには、パルボシクリブで処置されたMDA-MB468細胞が示されている。処置後には、有意な老化細胞(細胞クラスター)は、観察されなかった。未処置および処置細胞は、顕微鏡下の観察では、形態学的に類似しているようであった。
【0336】
未処置およびパルボシクリブ処置の両方の染色細胞をPBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒドにより室温で10分間固定した。固定された細胞を、FACSセルソーティングにおいて用いた。
【0337】
未処置細胞は、ほとんどがB-gal染色陰性であったが、それらはFACSソーティングによりCD73活性で分離された(
図16A)。分離は、実施例14のMDA-MB231細胞ほど明瞭ではなかった。B-gal陽性細胞が、有意により少ない数で存在したが、それらもFACSソーティングによりCD73活性で分離された(
図16C)。同じように処置細胞も、ほとんどがB-gal陰性であった(
図16Bおよび16D)。同様に、処置細胞は、B-gal陰性またはB-gal陽性に関わらず、FACSソーティングによりCD73活性で分離されたが、実施例14のMDA-MB231細胞ほど明瞭ではなかった(
図14Bおよび14D)。
【0338】
MDA-MB468細胞についてのFACSソーティングの結果を、
図17A~17Bに要約している。処置細胞および未処置細胞は、類似の老化細胞数およびCD73活性レベルを有した。これらの結果から、パルボシクリブ処置が有意な老化細胞数を誘導しなかったことが示される。
【0339】
実施例16:MDA-MB231およびMDA-MB468細胞におけるCD73の発現
【0340】
パルボシクリブ処置後のMDA-MB231細胞およびMDA-MB468細胞のCD73発現レベルを測定した(
図18A)。MDA-MB231細胞において、パルボシクリブ処置は、CD73の発現レベルを有意に上昇させた(
図18Aの左側2つのバー)。未処置のMDA-MB468細胞は、未処置のMDA-MB231細胞よりも低いCD73の発現レベルを有した(
図18Aの1番目および3番目のバー)。さらに、パルボシクリブ処置は、MDA-MB468細胞におけるCD73の発現レベルを有意に上昇させなかった(
図18Aの右側2つのバー)。
【0341】
実施例17:ZAPアッセイにより測定される老化細胞殺傷
【0342】
ZAPアッセイを、Advanced Targeting SystemsのZAPアッセイキットの製造業者に推奨されるプロトコルに従って実施した。
【0343】
パルボシクリブ処置は、MDA-MB231細胞におけるCD73発現が増加した老化細胞に誘導することが観察されたため、細胞殺傷アッセイ(ZAPアッセイ)をMDA-MB231細胞で実施した。手短に述べると、細胞を96ウェルプレートに4×103細胞/ウェルで播種し、一晩培養した。培養細胞を2つのバッチに分離し、1つのバッチは1μMパルボシクリブイセチオン酸塩で7日間処置されたもの、もう一方のバッチはパルボシクリブイセチオン酸塩で処置されていないものであった。
【0344】
両方の型のMDA-MB231細胞を、ZAPアッセイに用いた。各型の細胞を、4群:BAP147-CD73(条件付き活性抗CD73抗体)、B12(アイソタイプ陰性対照)、サポリン(陰性対照)、および培地のみ(陰性対照)でアッセイした。ZAPアッセイは、72時間実施した。
【0345】
該条件付き活性抗CD73抗体および陰性対照を用いた細胞殺傷の結果を、
図18Bに表している。Y軸のOD
450nm値は、生存細胞の総数を表す。培地は、パルボシクリブで処置された細胞と未処置細胞とで類似の影響を有し、培地が老化細胞への細胞殺傷活性を有さないことが示された。該条件付き活性抗CD73抗体は、未処置細胞と比較されたパルボシクリブ処置細胞の有意な細胞数減少を誘導しており、該条件付き活性抗CD73抗体が老化細胞の有意な細胞殺傷活性を有することが示された。
【0346】
B12は、未処置細胞に比較してパルボシクリブで処置された細胞に対して小さな影響を有するようであり、B12が老化細胞への小さな、そして有意性の低い細胞殺傷能力を有することが示された。興味深いこととして、サポリンもまた、B12に比較して老化細胞数の同様に小さな低減を誘発した。
図18B参照。
【0347】
この実施例は、該条件付き活性抗CD73抗体が、パルボシクリブにより誘導された老化細胞で過剰発現されたCD73を標的化し、それによりこれらの老化細胞の有意な数を殺傷し得ることを実証している。
【0348】
本明細書で言及された全ての文書は、全体として、あるいは具体的に依存する開示を提供する参照により、本明細書に組み入れられる。本出願者(複数可)は、任意の開示された実施形態を公共に提示する意図はなく、任意の開示された改良または改変が特許請求の範囲に文字通り含まれ得ないという点で、それらは均等物の教義の下でその一部と見なされる。
【0349】
しかし、本発明の数多くの特徴および利点が、本発明の構造および機能の詳細と共に前述の記載に示されていても、本開示は例示に過ぎず、添付の特許請求の範囲で表された用語の広義で示される全ての程度で、特に本発明の原理内で部品の形状、寸法、および配置に関して、変更が詳細に施され得ることが、理解されなければならない。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
老化細胞に関連する標的に結合する条件付き活性老化細胞除去抗体または抗体断片を、前記老化細胞に関連する前記標的に結合する親抗体または抗体断片から生成する方法であって、
(i)1つまたは複数の進化的技術(evolutionaly techniques)を利用して前記親抗体または抗体断片をコードするDNAを進化させて、突然変異体DNAを作出するステップと;
(ii)前記突然変異体DNAを発現させて突然変異体抗体または抗体断片を得るステップと;
(iii)前記突然変異体抗体または抗体断片を、前記老化細胞の細胞外条件下での標的への結合活性のアッセイおよび正常な生理学的条件下での標的への結合活性のアッセイに供するステップと;
(iv)ステップ(iii)のアッセイに供した前記突然変異体抗体または抗体断片から
(a)前記正常な生理学的条件下でのアッセイにおける前記親抗体または抗体断片の標的への結合活性に比較した、同アッセイにおける同標的への結合活性の低下、および前記正常な生理学的条件下でのアッセイにおける前記条件付き活性老化細胞除去抗体または抗体断片の標的への結合活性に比較した、前記老化細胞の前記細胞外条件下での前記アッセイにおける同標的への結合活性の上昇;ならびに
(b)前記正常な生理学的条件下でのアッセイにおける前記親抗体または抗体断片の標的への結合活性に比較した、同アッセイにおける同標的への結合活性の低下、および前記老化細胞の前記細胞外条件下での前記アッセイにおける前記親抗体または抗体断片の標的への結合活性に比較した、前記老化細胞の前記細胞外条件下での前記アッセイにおける同標的への結合活性の上昇、
のうちの少なくとも1つを示す前記条件付き活性老化細胞除去抗体または抗体断片を選択するステップと;
を含み、前記標的が、APC、ARHGAP1、ARMCX-3、AXL、B2MG、BCL2L1、CAPNS2、CD261、CD39、CD54、CD73、CD95、CDC42、CDKN2C、CLYBL、COPG1、CRKL、DCR1、DCR2、DCR3、DEP1、DGKA、EBP、EBP50、FASL、FGF1、GBA3、GIT2、ICAM1、ICAM3、IGF1、ISG20、ITGAV、KITLG、ラミンB1、LANCL1、LCMT2、LPHN1、MADCAM1、MAG、MAP3K14、MAPK、MEF2C、miR22、MMP3、MTHFD2、NAIP、NAPG、NCKAP1、ネクチン4、NNMT、NOTCH3、NTAL、OPG、OSBPL3、p16、p16INK4a、p19、p21、p53、PAI1、PARK2、PFN1、PGM、PLD3、PMS2、POU5F1、PPP1A、PPP1CB、PRKRA、PRPF19、PRTG、RAC1、RAPGEF1、RET、Smurf2、STX4、VAMP3、VIT、VPS26A、WEE1、YAP1、YH2AX、およびYWHAEのうちの少なくとも1つから選択され、
前記老化細胞の前記細胞外条件が5.5~7.0の範囲内の第一pHであり、前記正常な生理学的条件が7.2~7.8の範囲内の第二pHであり、
正常な生理学的条件でのアッセイおよび前記老化細胞の前記細胞外条件下でのアッセイが、少なくとも10mMの重炭酸塩の濃度を有するアッセイ溶液中で行われ、
前記正常な生理学的条件下での前記アッセイにおける前記条件付き活性老化細胞除去抗体または抗体断片の前記活性に対する、前記老化細胞の前記細胞外条件下での前記アッセイにおける前記条件付き活性老化細胞除去抗体または抗体断片の前記活性の比が、少なくとも1.3:1である、方法。
【請求項2】
前記親抗体または抗体断片が、抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記正常な生理学的条件下での前記アッセイにおける前記条件付き活性老化細胞除去抗体または抗体断片の前記活性に対する、前記老化細胞の前記細胞外条件下での前記アッセイにおける前記条件付き活性老化細胞除去抗体または抗体断片の前記活性の比が、または少なくとも2:1、または少なくとも3:1、または少なくとも4:1、または少なくとも5:1、または少なくとも6:1、または少なくとも7:1、または少なくとも8:1、または少なくとも9:1、または少なくとも10:1である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一pHが6.0~7.0、または6.2~6.8の範囲内である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第二pHが7.2~7.6、または7.4~7.6の範囲内である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記選択のステップ(iv)が、(a)前記正常な生理学的条件下でのアッセイにおける前記親抗体または抗体断片の活性に比較した、同アッセイにおける同活性の低下、および前記正常な生理学的条件下でのアッセイにおける前記条件付き活性老化細胞除去抗体または抗体断片の前記活性に比較した、前記老化細胞の前記細胞外条件下での前記アッセイにおける同活性の上昇、を示す条件付き活性老化細胞除去抗体または抗体断片を選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記選択のステップ(iv)が、(b)前記正常な生理学的条件下でのアッセイにおける前記親抗体または抗体断片の活性に比較した、同アッセイにおける同活性の低下、および前記老化細胞の前記細胞外条件下での前記アッセイにおける前記親抗体または抗体断片の活性に比較した、前記老化細胞の前記細胞外条件下での前記アッセイにおける同活性の上昇、を示す条件付き活性老化細胞除去抗体または抗体断片を選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記条件付き活性抗体をリンカーによりマスキング部分にコンジュゲートするステップをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記マスキング部分が、前記標的への結合における前記条件付き活性抗体の活性を少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%低減する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記リンカーが、前記条件付き活性抗体の可変領域に共有結合される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記マスキング部分が、前記条件付き活性抗体の可変領域に特異的に結合する、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記マスキング部分が、5%以下、7%以下、10%以下、15%以下、20%以下、25%以下、30%以下、35%以下、40%以下、45%以下、50%以下、55%以下、60%以下、65%以下、70%以下、75%以下、または80%以下の前記標的への配列同一性を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記リンカーが、可撓性領域および切断部位を含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記可撓性領域が、グリシン、アラニンおよびセリンから選択される少なくとも1種のアミノ酸から本質的になる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記可撓性領域が、1アミノ酸~20アミノ酸、2アミノ酸~15アミノ酸、3アミノ酸~12アミノ酸、4アミノ酸~10アミノ酸、5アミノ酸~9アミノ酸、または6アミノ酸~8アミノ酸の長さを有する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記切断部位が、前記老化細胞の前記細胞外環境においてプロテアーゼにより切断され得る、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記プロテアーゼが、ADAM10、ADAM12、ADAM17、ADAMTS、ADAMTS5、BACE、カスパーゼ1~14、カテプシンA,カテプシンB、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンK、カテプシンS、FAP、MT1-MMP、グランザイムB、グアニジノベンゾアターゼ、へプシン、ヒト好中球エラスターゼ、レグマイン、マトリプターゼ2、メプリン、MMP1~17、MT-SP1、ネプリライシン、NS3/4A、プラスミン、PSA、PSMA、TRACE、TMPRSS 3、TMPRSS 4、およびuPAのうちの少なくとも1種から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記条件付き活性老化細胞除去抗体または抗体断片をリンカーにより細胞傷害剤、細胞増殖抑制剤、または抗増殖剤にコンジュゲートするステップをさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記リンカーが、前記老化細胞の前記細胞外環境においてプロテアーゼにより切断され得る切断部位を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記プロテアーゼが、ADAM10、ADAM12、ADAM17、ADAMTS、ADAMTS5、BACE、カスパーゼ1~14、カテプシンA,カテプシンB、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンK、カテプシンS、FAP、MT1-MMP、グランザイムB、グアニジノベンゾアターゼ、へプシン、ヒト好中球エラスターゼ、レグマイン、マトリプターゼ2、メプリン、MMP1~17、MT-SP1、ネプリライシン、NS3/4A、プラスミン、PSA、PSMA、TRACE、TMPRSS 3、TMPRSS 4、およびuPAのうちの少なくとも1種から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗増殖剤が、化学療法剤である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記条件付き活性老化細胞除去抗体または抗体断片を、毒性薬剤、放射性薬剤、またはDレトロインベルソ型ペプチドから選択される薬剤にコンジュゲートするステップをさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記条件付き活性老化細胞除去抗体または抗体断片が、条件付き活性抗体である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記Dレトロインベルソ型ペプチドが、天然タンパク質の断片または全長の逆配列との少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも98%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記天然タンパク質が、FOXO4、AMPK、JNK、MST1、CK1、STAT3、p38、PRMT1、およびASK1のうちの少なくとも1種から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記Dレトロインベルソ型ペプチドが、5を含むそれ以下の、10を含むそれ以下の、15を含むそれ以下の、20を含むそれ以下の、25を含むそれ以下の、30を含むそれ以下の、35を含むそれ以下の、40を含むそれ以下の、45を含むそれ以下の、50を含むそれ以下の、60を含むそれ以下の、70を含むそれ以下の、80を含むそれ以下の、90を含むそれ以下の、または100を含むそれ以下のアミノ酸残基の長さを有する、請求項22~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記Dレトロインベルソ型ペプチドが、最大で0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55または60%の、Lアミノ酸残基であるアミノ酸残基を有する、請求項22~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記Dレトロインベルソ型ペプチドが、100%のDアミノ酸残基を有する、請求項22~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記Dレトロインベルソ型ペプチドが、PPRRRQRRKKRG(SEQ ID NO:10)、GALFLGFLGA AGSTMGAWSQ PKKKRKV(SEQ ID NO:11)、KETWWETWWT EWSQPKKKRKV(SEQ ID NO:12)、Ac-GLWRALWRLLRSLWRLLWRA-Cya(SEQ ID NO:13)、およびオクタアルギニンから選択される1つまたは複数の機能的ドメインを含む、請求項22~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記Dレトロインベルソ型ペプチドが、LTLRKEPASE IAQSILEAYS QNGWANRRSG GKRP(SEQ ID NO:5)、LTLRKEPASE IAQSILEAYS QNGWANRRSG GKRPPPRRRQ RRKKRG(SEQ ID NO:6)、またはSEIAQSILEAYSQNGW(SEQ ID NO:7)を含む、請求項23~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
標的に結合する親抗体または抗体断片から3000a.m.u未満の分子量を有する、標的に結合する条件付き活性老化細胞除去抗体または抗体断片を作製するための方法であって、
1種または複数の部分的荷電または荷電基を前記親抗体または抗体断片に導入することにより前記親抗体または抗体断片を修飾して、1種または複数の修飾された抗体または抗体断片を生成するステップと;
前記1種または複数の修飾された抗体または抗体断片を、前記老化細胞の前記細胞外条件下での標的への結合活性のアッセイおよび正常な生理学的条件下での標的への結合活性のアッセイに供するステップ、
(a)前記正常な生理学的条件下でのアッセイにおける前記親抗体または抗体断片の標的への結合活性に比較した、同アッセイにおける同標的への結合活性の低下、および前記正常な生理学的条件下でのアッセイにおける前記条件付き活性老化細胞除去抗体または抗体断片の標的への結合活性に比較した、前記老化細胞の前記細胞外条件下での前記アッセイにおける同標的への結合活性の上昇;ならびに
(b)前記正常な生理学的条件下でのアッセイにおける前記親抗体または抗体断片の標的への結合活性に比較した、同アッセイにおける同標的への結合活性の低下、および前記老化細胞の前記細胞外条件下での前記アッセイにおける前記親抗体または抗体断片の標的への結合活性に比較した、前記老化細胞の前記細胞外条件下での前記アッセイにおける同標的への結合活性の上昇、
のうちの少なくとも1つを示す前記修飾された抗体または抗体断片から前記条件付き活性老化細胞除去抗体または抗体断片を選択するステップと
を含み、前記標的が、APC、ARHGAP1、ARMCX-3、AXL、B2MG、BCL2L1、CAPNS2、CD261、CD39、CD54、CD73、CD95、CDC42、CDKN2C、CLYBL、COPG1、CRKL、DCR1、DCR2、DCR3、DEP1、DGKA、EBP、EBP50、FASL、FGF1、GBA3、GIT2、ICAM1、ICAM3、IGF1、ISG20、ITGAV、KITLG、ラミンB1、LANCL1、LCMT2、LPHN1、MADCAM1、MAG、MAP3K14、MAPK、MEF2C、miR22、MMP3、MTHFD2、NAIP、NAPG、NCKAP1、ネクチン4、NNMT、NOTCH3、NTAL、OPG、OSBPL3、p16、p16INK4a、p19、p21、p53、PAI1、PARK2、PFN1、PGM、PLD3、PMS2、POU5F1、PPP1A、PPP1CB、PRKRA、PRPF19、PRTG、RAC1、RAPGEF1、RET、Smurf2、STX4、VAMP3、VIT、VPS26A、WEE1、YAP1、YH2AX、およびYWHAEのうちの少なくとも1つから選択され、
前記老化細胞の前記細胞外条件が5.5~7.0の範囲内の第一pHであり、前記正常な生理学的条件が7.2~7.8の範囲内の第二pHであり、
正常な生理学的条件でのアッセイおよび前記老化細胞の前記細胞外条件下でのアッセイが、少なくとも10mMの重炭酸塩の濃度を有するアッセイ溶液中で行われる、方法。
【請求項32】
標的に結合する親抗体または抗体断片から、3000a.m.u未満の分子量を有する、標的に結合する条件付き活性老化細胞除去抗体または抗体断片を作製するための方法であって、
前記親抗体または抗体断片から1種または複数の部分的荷電または荷電基を除去することにより前記親抗体または抗体断片を修飾して、1種または複数の修飾された抗体または抗体断片を生成するステップと;
前記1種または複数の修飾された抗体または抗体断片を、前記老化細胞の細胞外条件下での標的への結合活性のアッセイおよび正常な生理学的条件下での標的への結合活性のアッセイに供するステップ、
(a)前記正常な生理学的条件下でのアッセイにおける前記親抗体または抗体断片の標的への結合活性に比較した、同アッセイにおける同標的への結合活性の低下、および前記正常な生理学的条件下でのアッセイにおける前記条件付き活性老化細胞除去抗体または抗体断片の標的への結合活性に比較した、前記老化細胞の前記細胞外条件下での前記アッセイにおける同標的への結合活性の上昇;ならびに
(b)前記正常な生理学的条件下でのアッセイにおける前記親抗体または抗体断片の標的への結合活性に比較した、同アッセイにおける同標的への結合活性の低下、および前記老化細胞の前記細胞外条件下での前記アッセイにおける前記親抗体または抗体断片の標的への結合活性に比較した、前記老化細胞の前記細胞外条件下での前記アッセイにおける同標的への結合活性の上昇、
のうちの少なくとも1つを示す前記修飾された抗体または抗体断片から前記条件付き活性老化細胞除去抗体または抗体断片を選択するステップと
を含み、前記標的が、APC、ARHGAP1、ARMCX-3、AXL、B2MG、BCL2L1、CAPNS2、CD261、CD39、CD54、CD73、CD95、CDC42、CDKN2C、CLYBL、COPG1、CRKL、DCR1、DCR2、DCR3、DEP1、DGKA、EBP、EBP50、FASL、FGF1、GBA3、GIT2、ICAM1、ICAM3、IGF1、ISG20、ITGAV、KITLG、ラミンB1、LANCL1、LCMT2、LPHN1、MADCAM1、MAG、MAP3K14、MAPK、MEF2C、miR22、MMP3、MTHFD2、NAIP、NAPG、NCKAP1、ネクチン4、NNMT、NOTCH3、NTAL、OPG、OSBPL3、p16、p16INK4a、p19、p21、p53、PAI1、PARK2、PFN1、PGM、PLD3、PMS2、POU5F1、PPP1A、PPP1CB、PRKRA、PRPF19、PRTG、RAC1、RAPGEF1、RET、Smurf2、STX4、VAMP3、VIT、VPS26A、WEE1、YAP1、YH2AX、およびYWHAEのうちの少なくとも1つから選択され、
前記老化細胞の前記細胞外条件が5.5~7.0の範囲内の第一pHであり、前記正常な生理学的条件が7.2~7.8の範囲内の第二pHであり、
正常な生理学的条件でのアッセイおよび前記老化細胞の前記細胞外条件下でのアッセイが、少なくとも10mMの重炭酸塩の濃度を有するアッセイ溶液中で行われる、方法。
【請求項33】
標的に結合する親抗体または抗体断片から、3000a.m.u未満の分子量を有する、標的に結合する条件付き活性老化細胞除去抗体または抗体断片を作製するための方法であって、
前記親抗体または抗体断片の1つまたは複数の基を1種または複数の部分的荷電または荷電基で置換えることにより前記親抗体または抗体断片を修飾して、1種または複数の修飾された抗体または抗体断片を生成するステップと;
前記1種または複数の修飾された抗体または抗体断片を、前記老化細胞の細胞外条件下での標的への結合活性のアッセイおよび正常な生理学的条件下での標的への結合活性のアッセイに供するステップ、
(a)前記正常な生理学的条件下でのアッセイにおける前記親抗体または抗体断片の標的への結合活性に比較した、同アッセイにおける同標的への結合活性の低下、および前記正常な生理学的条件下でのアッセイにおける前記条件付き活性老化細胞除去抗体または抗体断片の標的への結合活性に比較した、前記老化細胞の前記細胞外条件下での前記アッセイにおける同標的への結合活性の上昇;ならびに
(b)前記正常な生理学的条件下でのアッセイにおける前記親抗体または抗体断片の標的への結合活性に比較した、同アッセイにおける同標的への結合活性の低下、および前記老化細胞の前記細胞外条件下での前記アッセイにおける前記親抗体または抗体断片の標的への結合活性に比較した、前記老化細胞の前記細胞外条件下での前記アッセイにおける同標的への結合活性の上昇、
のうちの少なくとも1つを示す前記修飾された抗体または抗体断片から前記条件付き活性老化細胞除去抗体または抗体断片を選択するステップと
を含み、前記標的が、APC、ARHGAP1、ARMCX-3、AXL、B2MG、BCL2L1、CAPNS2、CD261、CD39、CD54、CD73、CD95、CDC42、CDKN2C、CLYBL、COPG1、CRKL、DCR1、DCR2、DCR3、DEP1、DGKA、EBP、EBP50、FASL、FGF1、GBA3、GIT2、ICAM1、ICAM3、IGF1、ISG20、ITGAV、KITLG、ラミンB1、LANCL1、LCMT2、LPHN1、MADCAM1、MAG、MAP3K14、MAPK、MEF2C、miR22、MMP3、MTHFD2、NAIP、NAPG、NCKAP1、ネクチン4、NNMT、NOTCH3、NTAL、OPG、OSBPL3、p16、p16INK4a、p19、p21、p53、PAI1、PARK2、PFN1、PGM、PLD3、PMS2、POU5F1、PPP1A、PPP1CB、PRKRA、PRPF19、PRTG、RAC1、RAPGEF1、RET、Smurf2、STX4、VAMP3、VIT、VPS26A、WEE1、YAP1、YH2AX、およびYWHAEのうちの少なくとも1つから選択され、
前記老化細胞の前記細胞外条件が5.5~7.0の範囲内の第一pHであり、前記正常な生理学的条件が7.2~7.8の範囲内の第二pHであり、
正常な生理学的条件でのアッセイおよび前記老化細胞の前記細胞外条件下でのアッセイが、少なくとも10mMの重炭酸塩の濃度を有するアッセイ溶液中で行われる、方法。
【請求項34】
前記親有機化合物が、100a.m.u~3000a.m.u、または100a.m.u~1500a.m.u、または150a.m.u~1250a.m.u、または300a.m.u~1100a.m.u、または400a.m.u~1000a.m.uの範囲内の分子量を有する、請求項31~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記第一pHが6.0~7.0、または6.2~6.8の範囲内であり、前記第二pHが7.2~7.8、または7.2~7.6の範囲内のpHである、請求項31~33のいずれか1項に記載の方法。
【外国語明細書】