(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116496
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】炭化水素原料から合成ガスを生成する化学反応器としての内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02M 33/00 20060101AFI20230815BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
F02M33/00 D
F02M21/02 G
F02M21/02 K
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023084559
(22)【出願日】2023-05-23
(62)【分割の表示】P 2020511217の分割
【原出願日】2018-09-24
(31)【優先権主張番号】62/565,844
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507021506
【氏名又は名称】リサーチ トライアングル インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョン リーブス カーペンター ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ダグラス バービー
(72)【発明者】
【氏名】アプールブ アガーワル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】内燃機関を合成ガス発生器として利用する方法を提供する。
【解決手段】内燃機関100は、スロットル210、点火タイミング、前記機関に結合された負荷、燃料圧力、過給機への電力、および予熱器への電力などの1つ以上の動作パラメータを調整することによって燃料リッチな条件で動作し、特定のエンジン速度と排気ガスの温度を維持する。これらの条件下で内燃機関100を作動させると、内燃機関100は、水素と一酸化炭素を含む合成ガスを製造する改質器200として機能することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料リッチな条件下で内燃機関を反応器として使用する方法であって、
初期の燃料空気当量比を有する供給ガスを使用して前記機関を始動すること;
前記燃料空気当量比を段階的に増やして、燃料リッチな供給ガスを生成すること;およ
び
前記燃料空気当量比を増加させながら、スロットル、点火タイミング、前記機関に結合
された負荷、燃料圧力、前記供給ガスに作用する過給機への電力、および前記供給ガスに
作用する予熱器への電力の1つ以上を調整して、燃料空気当量比を約1.6~2.4に維
持すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記供給ガスが、炭化水素化合物および酸素含有流を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記機関を始動する前の初期条件を、所定の燃料圧力、部分的に開いたスロットル、第
1の所定の点火タイミング値、および前記機関に結合された負荷のうちの少なくとも1つ
として設定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記部分的に開いたスロットルを設定することが、50%未満の所定の設定で前記スロ
ットルを設定することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の所定の点火タイミング値を設定することが、前記点火タイミングを上死点(
BTDC)前の約5~約12度に設定することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記機関を始動することが、前記燃料圧力を約0インチのH2Oゲージに設定して、前
記機関を始動させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
約1000~2000回転/分(RPM)のエンジン速度と約900℃未満の排気ガス
温度を維持する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記点火タイミングを調整することは、前記エンジン速度を約1000~2000RP
Mの間に維持するために前記機関負荷を増加させながら、点前記火タイミングを第2の所
定の値に進めることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記点火タイミング第2の所定値が、約8度BTDCと約28度BTDCの間である、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記過給機への前記電力を調整することは、最初に前記過給機に電力を供給することを
含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記エンジン速度を約1000~2000RPMに維持するために前記燃料圧力を増加
させながら、前記過給機への前記電力を増加させることをさらに含む、請求項10に記載
の方法。
【請求項12】
前記スロットルを調整することが、前記燃料圧力と前記機関負荷を増加させて前記エン
ジン速度を約1000~2000RPMに維持しながら、前記スロットルを増加させるこ
とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記排気ガス温度を監視することと、前記燃料圧力、前記スロットル、および前記機関
負荷のうちの1つ以上を変更して、前記排気ガス温度を約900℃未満に維持することを
さらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記予熱器への前記電力を調整することが、最初に前記予熱器に電力を供給することを
含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記予熱器を初期温度に設定し、前記エンジン速度を約1000~2000RPMに維
持しながら前記予熱器温度が上昇するにつれて前記燃料圧力を上昇させることをさらに含
む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記予熱器の初期温度が、約200℃である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記点火タイミングを第3の所定値に調整することをさらに含む、請求項1に記載の方
法。
【請求項18】
前記点火タイミング第3の所定値が、約20~約30度BTDCである、請求項17に
記載の方法。
【請求項19】
前記燃料圧力および前記機関負荷を調整して所望のエンジン体積スループットに達する
まで前記エンジン速度を約1000~2000RPMに維持しながら、前記過給機への前
記電力を増加させることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記燃料圧力を調整して前記燃料空気当量が約1.6~2.4に達するまで前記エンジ
ン速度を約1000~2000RPMに維持しながら、前記予熱器が前記初期温度に達し
たときに、前記予熱器温度を上げることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記燃料ガス初期燃料空気当量比が、約1である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
燃料リッチな条件下で内燃機関を運転する方法であって、
前記機関の始動後、排気背圧、吸気マニホールド圧力、エンジン速度、点火タイミング
、燃料ガス燃料空気当量比、および燃料ガス入口温度について、一連のメンテナンス動作
条件を維持すること;
前記燃料ガス燃料空気当量比を維持しながら前記燃料ガス入口温度を上げること、およ
びエンジン排気ガスのメタンと酸素の含有量を監視すること;および
監視されたメタンと酸素含有量に応じて点火タイミングを調整すること、
を含む、方法。
【請求項23】
前記初期動作排気背圧が、周囲~5bar絶対圧である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記動作吸気マニホールド圧力が、約周囲~2bar絶対圧の間である、請求項22に
記載の方法。
【請求項25】
前記初期動作エンジン速度が、約1000~2000回転毎分(RPM)である、請求
項22に記載の方法。
【請求項26】
前記初期動作点火タイミングが、上死点(BTDC)の約25~35度前である、請求
項22に記載の方法。
【請求項27】
前記動作燃料ガス燃料空気当量比が、約1.6~2.4である、請求項22に記載の方
法。
【請求項28】
前記初期動作燃料ガス入口温度が、約200℃~270℃である、請求項22に記載の
方法。
【請求項29】
前記監視されたメタンおよび酸素含有量に応じて前記点火タイミングを調整することが
、前記監視されたメタンまたは酸素含有量が許容レベルを超えて増加した場合に、前記点
火タイミングを進めることを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記機関の各シリンダからの排気ガス温度を監視することをさらに含む、請求項22に
記載の方法。
【請求項31】
各シリンダの点火タイミングを個別に調整して、各シリンダの前記排気ガス温度の変動
を約75℃の範囲内に低減することをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記排気ガスが、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、窒素(N2)、水蒸気(H2O
)、二酸化炭素(CO2)、および微量成分のうちの少なくとも2つの組み合わせを含む
、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
前記先行請求項のいずれかに記載の方法を実行するように構成されたガス改質器システ
ム。
【請求項34】
前記ガス改質器システムが、シンガスを製造するように構成されている、請求項33に
記載のガス改質器システム。
【請求項35】
前記シンガスが、水素(H2)と一酸化炭素(CO)を含む、請求項34に記載のガス
改質器システム。
【請求項36】
ガス改質器システムであって、
燃料ガス入口、排気ガス出口、複数のシリンダ、点火タイミングシステム、スロットル
、燃料ガス予熱器、および過給機を含む内燃機関
を含み、
前記内燃機関が、約1.6~2.4の燃料ガス燃料空気当量比で動作するように構成さ
れている、ガス改質器システム。
【請求項37】
前記内燃機関が、約1.6~2.4の燃料ガス燃料空気当量比で動作するために、燃料
ガス燃料空気当量比、燃料ガス入口温度、吸気マニホールド圧力、点火タイミング、エン
ジン速度、排気マニホールド圧力、および排気ガス温度を個別に調整するように構成され
ている、請求項36に記載のガス改質器システム。
【請求項38】
前記内燃機関が、水素(H2)および一酸化炭素(CO)を含む排気ガスを生成するよ
うに構成されている、請求項36に記載のガス改質器システム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2017年9月29日に出願された「INTERNAL COMBUSTI
ON ENGINE AS A CHEMICAL REACTOR TO PRODU
CE SYNTHESIS GAS FROM HYDROCARBON FEEDS」
というタイトルの米国仮特許出願第62/565,844号の利益を主張し、その内容は
その全体を参照により本明細書に含める。
【連邦政府の支援による研究または開発】
【0002】
本発明は、米国エネルギー省から授与された認可番号DE-AR0000506に基づ
く政府の支援を受けて行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【技術分野】
【0003】
本発明は、概して、特に内燃機関を合成ガス発生器として使用する合成ガスの製造に関
する。
【背景技術】
【0004】
多くのプロセスおよび操作は、軽質炭化水素のガス流を生成する。多くの場合、これら
のガス流は低圧であり、さまざまな汚染物質をさらに含む可能性がある。したがって、ガ
ス流は本質的な価値がほとんどない可能性があり、汚染物質を除去してガスを圧縮する(
天然ガス輸送パイプラインへの導入を可能にするために圧力を上げるなど)コストは、法
外に高価になる可能性がある。これらの制約を考えると、ガス流は、フレア、焼却、また
はベントによって処分されることがよくある。
【0005】
最近、これらの低品質の炭化水素流をより生産的に使用することに関心が高まっている
。そのような分野の1つは、合成ガス(シンガス)の生産における供給ガスとして炭化水
素流を使用することである。シンガスは、有機原料(軽質炭化水素、石炭、石油コークス
、バイオマス、オイル)の部分燃焼から製造され、主に水素(H2)と一酸化炭素(CO
)で構成される。シンガスには、出発原料によっては汚染物質(H2S、COSを含む)
が含まれていることがよくある。多くのシンガス製造プロセスは、触媒ベースの改質装置
を利用して、有機原料を部分的に酸化する。触媒は反応速度を上げ、反応温度を下げるの
に役立つが、多くの触媒は高価な材料から作られ、ガス流に存在する硫黄化合物による被
毒、およびすすおよびその他の粒子による目詰まりの影響を受ける。
【0006】
シンガスは、様々な化学物質を製造するための出発物質である。シンガスは、ガスター
ビンまたはエンジンベースの発電機での発電にも使用できる。シンガスは、COと水蒸気
を水性ガスシフト(WGS)プロセスを介してH2と二酸化炭素(CO2)に変換するこ
とによって、H2を生成するためにも使用できる。プロセスガスのH2とCOの比率は、
通常、下流の用途の需要を満たすために注意深く調整する必要がある。
【0007】
最近、米国特許第9,169,773号(Brombergら)は、水素リッチガスを
生成するためにエンジンを利用する改質器-液体燃料製造システムを開示した。開示され
ているシステムは、空気/燃料比、当量比、2.5<φ<4.0で動作する。彼らはまた
、効果的なエンジンベースの改質装置について、均質チャージ圧縮点火(HCCI)、部
分予備混合圧縮点火(PCI)、または反応制御圧縮点火(RCCI)を使用できること
を開示している。彼らは、「流動バーナー火炎とシリンダ計算では、当量比が低いほど、
変換で放出されるエネルギーが高くなり、シリンダ温度のピークが高くなり、水素とCO
への選択性が低くなる・・・」と報告している。
【0008】
米国特許第2,391,687号(Eastmanら)は、90%以上の純粋なO2で
作動し、2.8~4.0の当量比を有するシンガスを生成するためのエンジンを開示して
いる。
【発明の概要】
【0009】
前述の問題の全体または一部、および/または当業者によって観察された可能性がある
他の問題に対処するために、本開示は、以下に示される実装において例として説明される
方法、プロセス、システム、装置、機器、および/またはデバイスを提供する。
【0010】
一実施形態によれば、燃料リッチ条件下で内燃機関を使用する方法は、初期の燃料空気
当量比を有する供給ガスを使用して前記機関を始動すること;燃料空気当量比を段階的に
増やして、燃料リッチな供給ガスを生成すること;燃料空気当量比を増加させながら、ス
ロットル、点火タイミング、前記機関に結合された負荷、燃料圧力、供給ガスに作用する
過給機への電力、および供給ガスに作用する予熱器への電力の1つ以上を調整して、燃料
空気当量比を約1.6~2.4に維持すること、を含む。一実施形態では、約1000~
2000回転毎分(RPM)のエンジン速度および約900℃未満の排気ガスの温度が維
持される。
【0011】
別の実施形態によれば、燃料リッチ条件下で内燃機関を運転する方法は、前記機関の始
動後、排気背圧、吸気マニホールド圧力、エンジン速度、点火タイミング、燃料ガス燃料
空気当量比、および燃料ガス入口温度について初期条件セットを維持すること;燃料ガス
燃料空気当量比を維持しながら燃料ガス入口温度を上げ、エンジン排気ガスのメタンと酸
素の含有量を監視すること;監視されたメタンと酸素含有量に応じて点火タイミングを調
整すること、を含む。
【0012】
別の実施形態によれば、ガス改質器システムは、本明細書で開示される方法のいずれか
を実行するように構成されている。
【0013】
別の実施形態によれば、ガス改質器システムは、燃料ガス入口、排気ガス出口、複数の
シリンダ、点火タイミングシステム、スロットル、燃料ガス予熱器、および過給機、を含
む内燃機関を含み、内燃機関は、約1.6~2.4の燃料ガス燃料空気当量比で動作する
ように構成されている。
【0014】
本発明の他のデバイス、装置、システム、方法、特徴、および利点は、以下の図および
詳細な説明を検討すると、当業者には明らかであるか、明らかになるであろう。そのよう
なすべての追加のシステム、方法、特徴、および利点は、この説明に含まれ、本発明の範
囲内にあり、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図されている。
【0015】
本発明は、以下の図を参照することによってよりよく理解することができる。図中の構
成要素は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに本発明の原理を説明することに重点が置か
れている。図面において、同様の参照番号は、異なる図を通して対応する部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、いくつかの実施形態による内燃機関の例示的なシリンダの概略断面図である。
【
図2】いくつかの実施形態による、内燃機関を使用してシンガスを生成するためのシステムの概略図である。
【
図3】いくつかの実施形態による、内燃機関を使用してシンガスを生成するためのシステムの概略図である。
【
図4】いくつかの実施形態による、内燃機関を使用してシンガスを生成するためのシステムの概略図である。
【
図5】
図5は、いくつかの実施形態による、燃料リッチ条件下でエンジンを始動するための方法の例示的なフローチャートである。
【
図6】
図6は、いくつかの実施形態による、燃料リッチ条件下でエンジンを動作させるための方法の例示的なフローチャートである。
【
図7】
図7は、いくつかの実施形態による、様々な燃料空気当量比についての燃料空気吸入温度のグラフである。
【
図8】
図8は、いくつかの実施形態による、様々な燃料空気当量比についてのH
2対CO比のグラフである。
【
図9】
図9は、いくつかの実施形態による、様々な燃料空気当量比についての天然ガスの分別変換のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「シンガス」は、合成ガスを指す。本開示の文脈では
、シンガスは、少なくとも一酸化炭素(CO)と二原子水素ガス(H2)との混合物であ
る。実施形態に応じて、シンガスは、例えば、水、空気、二原子窒素ガス(N2)、二原
子酸素ガス(O2)、二酸化炭素(CO2)、硫黄化合物(例えば、硫化水素(H2S)
、硫化カルボニル(COS)、硫黄酸化物(SOx)など)、窒素化合物(例えば、窒素
酸化物(NOx)など)、金属カルボニル、炭化水素(例えば、メタン(CH4))、ア
ンモニア(NH3)、塩化物(例えば、塩化水素(HCl))、シアン化水素(HCN)
、微量金属および半金属(例えば、水銀(Hg)、ヒ素(As)、セレン(Se)、カド
ミウム(Cd)など)およびその化合物、粒子状物質(PM)などの他の成分をさらに含
み得る。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「低級炭化水素」は、メタン、エタン、プロパンおよ
びブタンを含むがこれらに限定されない、低分子量の炭化水素を指す。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「負荷」は、電気加熱器、動力計、水浴などを意味する
ことがある。負荷を増減することによって、入力条件が変化するときにエンジンを一定速
度で運転することができる。エンジン内の温度または出力コンポーネントの比率を変更す
るために、負荷を変えることもできる。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「天然ガス」は、メタンとより少量の高級アルカンか
ら主になる炭化水素(HC)ガスの混合物を指す。実施形態に応じて、天然ガスは、上記
のものの1つ以上などの非HC種、ならびに二硫化炭素(CS2)および/または他のジ
スルフィド、およびメタンチオール(CH3SH)およびエタンチオール(C2H5SH
)などのメルカプタン(チオール)、およびチオフェン(C4H4S)などのチオフェン
、およびその他の有機硫黄化合物をさらに含み得る。
【0021】
本開示は、内燃機関をシンガス発生器として利用する方法を提供する。さらに、このプ
ロセスは、メタノールの生産および他の化学物質の生産プロセスと組み合わせて使用でき
る。開示された方法は、世界中に分散された多種多様な炭化水素源を利用することができ
る。例えば、石油と天然ガスの生産井は米国の多くの遠隔地にあり、個々の坑井、コンプ
レッサー、空気圧機器、および坑井の貯蔵容器が炭化水素排出流を製造することがある。
これらの炭化水素流は、少量で低圧であり、汚染の可能性があるため、フレア状またはベ
ント状になることがよくある。天然ガス輸送パイプラインに収集するためにこれらの異種
の流れを圧縮および精製することは、非常に高価になる可能性がある。本開示の方法は、
特定の条件下で運転される大量生産の内燃機関を利用して、これらの炭化水素を部分的に
酸化し、より高い価値を有し得るシンガスを生成し、シンガスの収集を経済的に実現可能
とする。
【0022】
内燃機関は、典型的には車両の推進、機械装置の駆動、または発電のいずれかのために
電力を製造するために何十年もの間開発され、利用されてきた。これらの使用のそれぞれ
において、重点は製造される電力を最大化するための燃料の効率的で完全な燃焼にあった
。しかしながら、内燃機関は、他の用途にとって興味深い特性を有する。エンジン温度を
制御するためのクーラントおよびラジエータシステムからの熱管理、シリンダ内に高圧を
生成する能力、シリンダ内の短い滞留時間の機能、バルブ圧力の制御などの特性は、すべ
て、エンジンが化学反応器として機能する化学変換のプロセスで使用できる。この用途で
は、エンジンパラメータを制御して、発電とは対照的に、望ましい化学変換を最大化する
ことに重点が置かれる。場合によっては、化学反応は電力を発生し得る。あるいは、他の
例では、シャフトを外部から回すことによって電力を追加することができる。短い滞留時
間で動作し、上記の特性を利用する化学反応は、化学反応器としてエンジンを使用するこ
とに適応できる可能性がある。ここでは、軽質炭化水素をシンガスに変換するためのこの
ような用途について説明する。
【0023】
図1は、様々な実施形態による内燃機関100の1つのシリンダ105の断面概略図を
示す。内燃機関100は、シリンダ105内に燃焼室110をさらに備えることができる
。ピストン115は、シリンダ105内に配置され、シリンダ105内で上下に移動する
ことができ、それによって、燃焼室110の可変容積を画定する。燃焼室110は、ピス
トン115がシリンダ105内の最も高い位置(上死点(TDC)と呼ばれる)にあると
きにその最小容積となり、ピストン115がシリンダ105内の最も低い位置(下死点(
BDC)と呼ばれる)にあるときにその最大容積となる。ピストン115は、連接棒12
5によってクランクシャフト120に結合され得る。内燃機関100は、シリンダ105
の上部に結合されたヘッド130をさらに含み得る。ヘッド130は、1つ以上の吸気弁
135および1つ以上の排気弁140を収容し得る。各吸気弁135は、吸気ポート14
5を開閉する働きをすることができ、一方、各排気弁140は、排気ポート150を開閉
する働きをすることができる。吸気ポート145は、燃焼室110と流体連通して、燃料
と酸化剤との混合物(チャージと呼ばれる)を燃焼室110に流入させる。排気ポート1
50はまた、燃焼室110と流体連通して、排気ガスを燃焼室110から流出させる。ヘ
ッド130はまた、少なくとも部分的に燃焼室110内に延在し、チャージのための点火
源を提供することができる1つ以上の点火プラグ155を含むことができる。
【0024】
図1には示されていないが、内燃機関100は、吸気ポート145に入る前に燃料およ
び酸化剤の一方または両方の温度を上昇させる予熱器、および吸気ポート145に入る前
に燃料および酸化剤の一方または両方の圧力を上昇させる過給機をさらに含み得る。予熱
器は、例えば内燃機関100からの排気ガスの熱の一部を抽出するための熱交換器を備え
ることができる。あるいは、予熱器は、電動加熱器、二次燃料の燃焼、または別のプロセ
スからの熱の除去など、当技術分野で既知の他のプロセスによって熱エネルギーを得るこ
とができる。過給機は、内燃機関100からの排気ガスからエネルギーを抽出するための
タービンを含み得る。あるいは、過給機は、電気モータまたは別のプロセスからのエネル
ギーの除去などの当技術分野で既知の他のプロセスによって動力を供給され得る。
【0025】
特定の非限定的な実施形態では、内燃機関100は、4ストロークプロセスを使用して
動作するように適合され得る。4ストロークプロセスは、例えば、ピストン115がTD
Cにあるところから始まり、次に下向きに動き始める。吸気弁135は下に動き、それに
よって吸気ポート145を燃焼室110と流体連通させる。ピストン115は下向きに動
き、チャージが燃焼室110に入ることを可能にする。ピストン115がBDCに到達す
ると、吸気弁135が閉じる。次に、ピストン115が上方に移動し、チャージを圧縮す
る。ピストン115がTDCに近づくと、スパークプラグ155は、チャージを点火する
火花を生成する。様々な実施形態では、以下でさらに説明するように、ピストン115が
TDCに到達する前に火花を生成することができる。チャージが燃焼すると、燃焼室11
0内の圧力が増加し、ピストン115を押し下げる。ピストン115がBDCに到達する
と、排気弁140が下降し、それによって排気ポート150が燃焼室110と流体連通す
る。ピストン115がTDCに向かって移動すると、燃焼したチャージからの燃焼ガスが
排気ポート150から押し出される。ピストン115がTDCに到達すると、排気弁14
0が閉じ、サイクルが繰り返される。
【0026】
各プロセスの詳細は本明細書では説明されていないが、様々な実施形態の内燃機関10
0は、2ストロークプロセス、5ストロークプロセス、6ストロークプロセス、圧縮点火
プロセス(例えば、ディーゼル)、ジェットエンジン、タービン、ロータリーエンジン、
または当技術分野で知られている他の任意のエンジンタイプに従って動作するように構成
されてもよい。本開示は、その普及および容易な利用可能性のために、4ストロークプロ
セスに焦点を当てているが、本開示の範囲に対する制限は推論されるべきではない。
【0027】
典型的には、炭化水素および酸素は、それぞれ内燃機関100で燃焼される燃料および
酸化剤である。
酸素中の炭化水素の燃焼に関する一般的な化学量論的化学方程式は、式1によって与えら
れる:
【化1】
したがって、化学量論的完全燃焼では、すべての炭化水素と酸素が反応して二酸化炭素と
水を形成する。したがって、化学量論的完全燃焼の場合、ある比率の燃料と空気が必要で
ある。実際の空気燃料比が化学量論的な空気燃料比とどのように比較されるかを示す1つ
の尺度は、当量比(φと表記)である。当量比は、実際の空気燃料比を化学量論的な空気
燃料比で割って計算される。1より大きい当量比の値は、燃料リッチな条件を示す。
【0028】
化学量論的完全燃焼に従って運転される内燃機関100は、通常、有用な仕事および熱
を抽出するように運転される。しかしながら、様々な実施形態は、内燃機関100を化学
反応器として利用するために、化学量論的条件以外で内燃機関100を作動させることを
含み得る。特定の実施形態は、炭化水素を部分的に酸化するために、燃料リッチな条件(
すなわち、化学量論的量未満の酸素がすべての炭化水素を燃焼する)を利用することがで
きる。特定の作用メカニズムに限定されることを意図せずに、いくつかの条件下で、内燃
機関100は改質装置として動作して、次式によって与えられる化学反応に従って水素(
H
2)および一酸化炭素(CO)を含む合成ガス(シンガス)を生成することができる。
【化2】
炭化水素がメタン(CH
4)の場合、部分酸化反応は式3で与えられる。
CH
4 + 0.5O
2 → CO + 2H
2 式3
さらに、完全燃焼(式1)、式4および式5(メタンの場合を示す)などの改質反応、お
よびその他の既知の改質および燃焼反応など、他の反応も発生する可能性がある。
2CH
4 + O
2 + CO
2 → 3CO + 3H
2 + H
2O 式4
4CH
4 + O
2 + 2H
2O → 4CO + 10H
2 式5
【0029】
図2は、例えば、シンガスを生成するための化学反応器として内燃機関100を利用す
ることができる、様々な実施形態によるプロセス200の概略図である。前述のように、
内燃機関100へのチャージは、酸化剤および燃料を含み得る。酸化剤は、空気、リッチ
化空気、または十分な酸素を含むガスを含み得る。酸化剤は、フィルタ205を通過して
、粒子および他の固体汚染物、ならびに水などの液体またはガス状汚染物を除去すること
ができる。酸化剤の流れは、スロットル210によって制御することができる。スロット
ル210は、当技術分野で知られている任意の流れ調整装置を備えることができ、手動で
または電子的に制御することができる。酸化剤の圧力は、過給機215によって増加させ
ることができる。過給機215は、圧力を増加させるコンプレッサーとして機能し、それ
により、より多くの酸素を内燃機関100の各シリンダ105に送達することができる。
過給機215は、電気モータによって駆動されてもよく、または内燃機関100の排気流
または別のプロセス流中の残留エネルギーを利用するなど、別の方法で動力を供給されて
もよい。酸化剤はまた、内燃機関100に入る前に、酸化剤の温度を上げるために加熱器
220を通過してもよい。加熱器220は、電気的に加熱されるコイル、または内燃機関
100の排気流(例えば、
図4を参照)などのプロセス流からエネルギーを抽出する熱交
換器を利用してもよい。燃料はまた、フィルタ225を通過して、固体、液体、または気
体の汚染物質を除去し、流れ調整器230を通過してもよい。燃料流の温度は、酸化剤加
熱器220と同様に動作する加熱器235によって上昇させることができる。ミキサ24
0は、酸化剤と燃料を所望の比率で混合して、内燃機関100の各シリンダ105に供給
されるチャージを形成することができる。次に、内燃機関100は、前述のようにチャー
ジを部分的に酸化して、排気流中にシンガスを生成する。内燃機関100の動作はまた、
機械的動力および熱を生成し得る。
【0030】
様々な実施形態では、プロセス200は、中央処理装置(図示せず)をさらに含むこと
ができる。中央処理装置は、プロセス200の個々の構成要素の1つ以上と通信し、それ
らをアクティブ化および制御することができる。中央処理装置は、コンピュータコードを
格納および実行して、内燃機関100の監視された動作条件および内燃機関100によっ
て製造されたシンガスの分析に応じてプロセス200の動作を開始することができる。例
えば、内燃機関100の排気流中のH2対COの比を監視することができ、中央処理装置
は、監視されたH2対COの比に応じて、プロセス200の個々の構成要素の1つ以上を
調整することができる。さらに、中央処理装置は、1つ以上のシリンダ105内の燃焼温
度、吸気圧力、排気圧力などの内燃機関100の監視されたパラメータに応じて、プロセ
ス200の1つ以上の個々の構成要素を調整することができる。
【0031】
図3は、例えばシンガスを製造するための化学反応器として内燃機関100を利用し得
る、様々な実施形態によるプロセス300の概略図である。
図3は、内燃機関100が発
電機305に結合されて、内燃機関100によって生成された機械的動力を電力に変換し
得ることを示す。電力は、酸化剤加熱器220、ガス加熱器235、または任意の他の目
的に電力を供給するために使用され得る。
【0032】
図4は、例えば、シンガスを製造するための化学反応器として内燃機関100を利用し
得る、様々な実施形態によるプロセス400の概略図である。プロセス400では、シン
ガス中の残留熱を利用して、酸化剤および燃料を加熱することができる。酸化剤加熱器2
20および燃料加熱器235は、シンガスから酸化剤および燃料流に熱を伝達するために
熱交換器を含むことができる。熱交換器は、シェルとチューブ、プレートとシェル、プレ
ートフィンなど、当技術分野で知られている任意のタイプでよく、例えば、平行流、向流
、または直交流構成で動作することができる。
【0033】
燃料リッチな条件下で作動する内燃機関100は、デトネーションまたはノッキングと
して知られる異常燃焼の影響を受けやすい場合がある。ノッキングは、チャージのポケッ
トが火花によって生成された火炎前面の外側で点火したときに発生し、シリンダ105内
の圧力を設計限界を超えて上昇させる可能性がある。この圧力の増加は、ピストン115
またはヘッド130の穴を引き裂く可能性があり、内燃機関100の壊滅的な故障につな
がる。
【0034】
様々な実施形態は、内燃機関100を始動して燃料リッチ状態での動作に到達し、その
後、ノッキングなし(または最小)で定常状態下で動作する方法を含む。
図5は、内燃機
関100を始動して燃料リッチな状態での運転に到達するための方法500の様々な実施
形態の一般的なフローチャートを示す。内燃機関100は、ステップ505で初期燃料空
気当量比を有する供給ガスを使用して始動することができる。ステップ510で燃料空気
当量比を漸増させて、燃料リッチな供給ガスを生成することができる。ステップ515で
、燃料空気当量比を増加させながら、エンジン速度を約1000~2000RPMに維持
し、排気ガスの温度を約900℃未満に維持しながら、以下の1つ以上を調整することが
できる:スロットル210、点火タイミング、内燃機関100に結合された負荷、燃料圧
力、供給ガスに作用する過給機215への電力、および供給ガスに作用する予熱器220
、235への電力。
【0035】
内燃機関100を始動する前に、燃料圧力が通常は周囲圧力より低い値であり、スロッ
トル210が所定の値、通常は50%未満に部分的に開かれ、点火タイミングが第1の所
定値に設定され、負荷が内燃機関100に結合されるように、初期動作条件を設定するこ
とができる。様々な実施形態において、点火タイミングは、点火プラグ155によってい
つ火花が発生するかを決定し、ピストン115がTDCにあるときのクランクシャフト1
20の回転位置に対して測定される。一般に、点火タイミングは、ピストン115がTD
Cに到達する前に火花を生成するように進められてもよい。点火タイミングを進めること
により、チャージの燃焼(または所望の量の部分燃焼)を、ピストン115がTDCに到
達する点の近くで完了することができる。点火タイミングは、通常、ピストン115がT
DCに到達する前のクランクシャフト120の回転運動の角度、または単に上死点の前(
BTDC)の角度として表される。様々な実施形態では、第1の所定の点火タイミング値
は、約8度のBDTC、または約5度~約15度のBDTCであってもよい。他の実施形
態では、第1の所定の点火タイミング値は、最大約30度のBDTCであってもよい。
【0036】
内燃機関100の始動を開始し、エンジンが始動するまで内燃機関100が短時間回転
するのを可能にした後、燃料圧力は、通常、周囲圧力近くまで増加して、内燃機関100
がそれ自体で稼働できるようにする。始動後、エンジン回転数を監視したほうがよい。点
火タイミングは、エンジン速度を約1000~2000RPMの間に維持するために負荷
を追加しながら、第2の所定の値まで徐々に進めることができる。第2の所定の点火タイ
ミング値は、約16度BTDCであってもよい。他の実施形態では、第2の所定の点火タ
イミング値は、約8度~約28度のBTDC、好ましくは約10度~約20度のBTDC
の範囲とすることができる。
【0037】
前述のように、過給機215は、特定の実施形態では、電気モータによって電力を供給
され得る。このような実施形態では、過給機215に最初に電力を供給し、次に、約10
00~2000RPMの間にエンジン速度を維持するために、燃料圧力を段階的に増加さ
せながら、出力を段階的に増加させることができる。様々な実施形態において、過給機2
15は、最初は最初の所定値、通常はエンジンを自然に吸引するのと同様の空気を供給す
る設定で電力供給され、最初の所定値と第2の所定値の間の約10%~15%の増分で第
2の所定値まで徐々に増加する。様々な実施形態では、より大きな増分を使用してもよい
が、燃料圧力は約0.1インチH2Oだけ増分的に増加してもよい。
【0038】
スロットル210は、約90%開いた最終的なスロットル位置に到達するまで、1%~
10%まで増加する増分を使用して、初期設定から徐々に増加させることができる。スロ
ットル210を増加させる間、エンジン速度を約1000~2000RPMに維持するた
めに、燃料圧力を増加させることができる。燃料圧力を追加している間に内燃機関100
の性能が急速に低下する場合、燃料空気混合物がリッチすぎる可能性がある。この状況で
は、燃料圧力が低下し、負荷がエンジン速度の制御に使用される場合がある。排気ガスの
温度も監視することができ、燃料圧力、スロットル210、およびエンジン負荷の1つ以
上を変更することによって、900℃未満に維持したほうがよい。
【0039】
予熱器220、235は、最初に電力を供給されて、吸気ポート145に入る前にチャ
ージの温度を予熱器220、235は約200℃に維持することができる。次に、点火タ
イミングをさらにBTDC進めることができる。当技術分野で知られているように、最適
な点火タイミングおよび点火タイミングを進めるための特定のプロセスは、例えば、燃料
条件(温度、圧力、汚染物質の存在など)、燃料噴射のタイミング、点火システムのタイ
プと状態、エンジン速度、エンジン負荷、使用するエンジンの具体的なタイプなど、多く
の要因に依存する。過給機215への電力は、空気供給速度を増加させるために段階的に
増加させることができる。過給機の出力が増加し、予熱器220、235が加熱すると、
燃料圧力と負荷を調整することによって、エンジン速度を約1000~2000RPMに
維持できる。所望のエンジンスループットが達成されたら、過給機の出力増加を中止する
ことができる。
【0040】
予熱器220、235が約200℃に達すると、予熱器の温度は、設定温度のオーバー
シュートを回避するために、通常、設定の15%以下の所定の増分で増加させることがで
きる。当技術分野で知られているように、自動制御システムを使用すると、設定温度をオ
ーバーシュートするリスクを増大させることなく、より大きな温度増分を可能にすること
ができる。燃料圧力は、予熱器の温度が上昇する間、エンジン速度を約1000~200
0RPMに維持するように調整できる。所望の燃料空気当量比が得られたら、予熱器温度
のさらなる上昇を中止することができる。様々な実施形態では、所望の燃料空気当量比は
、約1.6~2.4であってよい。
【0041】
予熱器温度を上げている間に内燃機関100が突然安定性を失う場合、現在のマニホー
ルド圧力での現在の燃料対空気比に対して、シリンダ105内の動作温度が高すぎる可能
性がある。この状況では、安定性が回復するまで予熱器220、235への電力をオフに
してから、予熱器220、235への電力をオンにして、予熱器の温度と燃料圧力の上昇
を再開することができる。
【0042】
チャージに酸化剤を供給するために空気がしばしば使用されるが、濃縮空気(例えば、
最大約35体積パーセントO2)が様々な実施形態で使用されてもよい。濃縮空気を使用
すると、エンジンのスループットが向上し、単位スループットあたりの下流コストが削減
され、液体生成物の収集と触媒活性が向上する。また、ガス供給に加湿空気または蒸気添
加を使用することができる。湿度を上げるか、または追加の蒸気を追加すると、シリンダ
内の水蒸気濃度が増加し、上記式5で説明されているように、水蒸気改質反応によって水
素の収量が増加する。
【0043】
主要な燃料を説明するためにここではメタンが使用されているが、様々な実施形態では
様々な炭化水素燃料組成物を使用することができる。多くの場合、システムの運用は、天
然ガスパイプラインから取られるメタン、油井からの関連ガス、一般にフレアされる廃ガ
ス流、バイオガス流、および他のそのようなガス状軽質炭化水素流を利用する。パイプラ
イン天然ガスは主にメタンで構成されているが、1~6%のエタンレベルと、微量の他の
炭化水素、二酸化炭素、窒素、および他の分子がある。同様に、油井からの関連ガスは、
高濃度のエタンと、通常プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサンなどの天然ガス液体と呼
ばれるより高級の炭化水素を含む。いくつかの例では、残りの天然ガスがパイプラインの
ために収集され、利用され、またはフレアされる前に、天然ガス液体が収集される。シン
ガスを製造するためのエンジンの動作は、変換を維持し、すす生成を回避するように動作
パラメータを調整することにより、天然ガス液体の除去の有無にかかわらず、この燃料で
実行できる。エンジンの別の燃料流は、廃棄物または副産物としてのさまざまな化学、製
造、または工業プロセスまたは貯蔵システムからのガス流であり得、そのような燃料はさ
まざまな軽質炭化水素を含み得る。これらの流れが(燃料濃度に応じて)十分に高い燃料
濃度を有するか、そのような濃度を達成するように処理できる場合、これらは、これらの
流れを利用するシンガス製造の潜在的な燃料源になると考えられる。さらに、エンジンを
使用してシンガスを製造するための燃料として使用できるバイオガスの多くの供給源があ
る。本発明の目的のために、バイオガスは、主にメタンと二酸化炭素およびバイオガス分
野で知られている他の微量成分を含むバイオマス材料の分解から生成されるガス流として
定義される。バイオガスの源の例としては、埋立地、動物の排泄物を処理する場所、廃水
処理プラントなどがある。バイオガスの使用では、エンジンを効率的に運転するために、
燃料から二酸化炭素を(濃度に応じて)除去するために前処理が必要になる場合があるが
、エンジンの運転には完全な除去は必要とされない。エンジンの動作は、一般的に二酸化
炭素の存在に耐性がある。天然ガスの組成で説明したように、エタンは通常天然ガス流に
含まれている。他の実施形態は、燃料として、または燃料として天然ガスと混合して、追
加のエタンを使用することができる。燃料流への水素の添加はまた、いくつかの実施形態
において、様々な燃料組成物に利益を提供し得る。この水素は、外部の供給源から入手す
る、またはエンジンの運転または下流プロセスからリサイクルすることができる。一実施
形態は、エンジン排気ガスから選択的に除去された水素をリサイクルする、またはエンジ
ン排気の一部をリサイクルすることである。
【0044】
燃料リッチ状態に到達するための内燃機関100の始動が達成されると(例えば、
図5
を参照して上述した方法を実施することなどによって)、
図6は、燃料リッチな条件下で
内燃機関100を継続して動作させるための方法600の様々な実施形態の別の一般的な
フロー図を示している。ステップ605では、排気背圧、吸気マニホールド圧力、エンジ
ン速度、点火タイミング、燃料ガス燃料空気当量比、および燃料ガス入口温度について、
内燃機関100の始動後、初期の一連の動作条件を維持することができる。燃料空気当量
比を維持しながら予熱器への電力を増加させることによって、ステップ610で燃料ガス
入口温度を増加させることができる。排気ガスのメタンと酸素の含有量(メタンは燃料中
の炭化水素であると仮定)を監視できる。点火タイミングは、監視されたメタンおよび酸
素含有量に応じて、ステップ615で調整することができる。
【0045】
様々な実施形態において、初期動作排気背圧は、ほぼ周囲~5bar絶対圧であっても
よく、初期動作吸気マニホールド圧力は、ほぼ周囲~2bar絶対圧であってもよく、初
期動作エンジン速度は、約1000~2000RPMであってもよく、初期動作点火タイ
ミングは約25~35度BTDCであってもよく、初期動作燃料空気当量比は約1.6~
2.4であってもよく、初期燃料ガス温度は約200~270℃であってもよい。
図7は
、1~2の燃料空気当量比に対するおおよその燃料ガス温度範囲を示す。
【0046】
様々な実施形態では、監視されたメタンおよび酸素に応じて点火タイミングを調整する
ことは、メタンおよび酸素スリップ(すなわち、内燃機関100を通過する未反応のメタ
ンおよび酸素)を監視することを含む。排気ガス中のメタン含有量または排気ガス中の酸
素含有量が許容レベルを超える場合、スリップを低減するために点火タイミングを早める
ことができる。点火タイミングを進めながら排気ガス温度を監視することによって、排気
ガス温度を
図7に示す範囲内に維持することができる。様々な実施形態では、内燃機関1
00のすべてのシリンダ105の点火タイミングを等しく進めるのではなく、点火タイミ
ングをシリンダ105ごとに個別に調整して、各個々のシリンダ105の排気ガスの温度
の変動が約75℃の範囲内になるようにすることができる。
【0047】
本質的に定常状態の動作条件下で、
図8は、所定の燃料空気当量比についての排気ガス
中のH
2対COの予想比を示している。したがって、内燃機関100は、下流のプロセス
に必要な場合に、所望のH
2対CO比を生成するように調整されてもよい。
図9は、所定
の燃料空気当量比に対する内燃機関100の燃料としての天然ガスの分別変換を示す。様
々な実施形態によれば、
図8を使用して、所望のH
2対CO比を生成するのに必要な燃料
空気当量比を決定することができ、次に
図9を使用して、選択された燃料空気当量比で発
生する可能性がある燃料の予想される分別変換を決定することができる。
【実施例0048】
エンジンシステムは、ローカルユーティリティ天然ガスパイプラインから供給された天
然ガスでシンガスを製造するように構成した。商業的に入手可能な8シリンダ、8.8L
の火花点火エンジンは、リッチ操作でシンガスを製造するシステムに構成した。周囲の環
境から空気を取り入れ、過給機を使用して、圧力を約2barの吸気マニホールド圧力に
ブーストした。天然ガスは、パイプライン天然ガスの通常の米国仕様を満たすユーティリ
ティパイプラインから供給した。記載した実行期間全体の典型的な組成は、95体積%の
メタン(CH4)、4体積%のエタン(C2H6)、1体積%の二酸化炭素(CO2)お
よび測定されていない微量成分であった。混合する前に、空気と天然ガスの混合物を20
0℃を超えて加熱した。混合フィードは、吸気マニホールドを通してエンジンシリンダに
供給した。火花点火を利用して、フィードをシリンダ内でシンガスに変換した。エンジン
は1500RPMの速度で運転し、排気ガス温度は900℃未満に維持した。製造したシ
ンガスは排気マニホールドを通して収集し、下流の圧力調整を使用して4~5barの圧
力に維持した。
【0049】
表1は、本開示による内燃機関100の動作によるこの実施例からのシンガス組成(4
回の実行の平均)を示す。
【0050】
【0051】
上記の実施例は、例示のみを目的としており、本発明を実施例で使用されるプロセスに
限定するものではない。
【0052】
一般に、「通信する」および「・・・連通」などの用語(例えば、第1の構成要素が第
2の構成要素「と通信する」または「と連通している」)は、本明細書では、2以上の構
成要素または要素間の構造的、機能的、機械的、電気的、信号的、光学的、磁気的、電磁
気的、イオン的または流体的関係を示す。したがって、1つの構成要素が第2の構成要素
と通信するという事実は、追加の構成要素が第1および第2の構成要素の間に存在し、お
よび/または動作可能に関連または係合する可能性を排除することを意図しない。
【0053】
本発明の様々な態様または詳細は、本発明の範囲から逸脱することなく変更され得るこ
とが理解されよう。さらに、前述の説明は、例示のみを目的とするものであり、限定を目
的とするものではなく、本発明は、特許請求の範囲によって規定される。
前記機関を始動する前の初期条件を、所定の燃料圧力、部分的に開いたスロットルおよび前記機関に結合された負荷のうちの少なくとも1つとして設定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
前記スロットルを調整することが、前記燃料圧力と前記機関負荷を増加させて前記エンジン速度を1000~2000RPMに維持しながら、前記スロットルを増加させることを含む、請求項1に記載の方法。
前記排気ガス温度を監視することと、前記燃料圧力、前記スロットル、および前記機関負荷のうちの1つ以上を変更して、前記排気ガス温度を900℃未満に維持することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
前記予熱器を初期温度に設定し、前記エンジン速度を1000~2000RPMに維持しながら前記予熱器の温度が上昇するにつれて前記燃料圧力を上昇させることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
前記燃料圧力および前記機関負荷を調整して所望のエンジン体積スループットに達するまで前記エンジン速度を1000~2000RPMに維持しながら、前記過給機への前記電力を増加させることをさらに含む、請求項8に記載の方法。
前記燃料圧力を調整して前記燃料空気当量が1.6~2.4に達するまで前記エンジン速度を1000~2000RPMに維持しながら、前記予熱器が前記初期温度に達したときに、前記予熱器の温度を上げることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
前記内燃機関が、1.6~2.4の燃料ガス燃料空気当量比で動作するために、燃料ガス燃料空気当量比、燃料ガス入口温度、吸気マニホールド圧力、点火タイミング、エンジン速度、排気マニホールド圧力、および排気ガス温度を個別に調整するように構成されている、請求項20に記載のガス改質器システム。