(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116524
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】分散剤
(51)【国際特許分類】
C09K 23/42 20220101AFI20230815BHJP
C08G 65/28 20060101ALI20230815BHJP
A01N 43/653 20060101ALN20230815BHJP
A01P 3/00 20060101ALN20230815BHJP
A01N 25/04 20060101ALN20230815BHJP
【FI】
C09K23/42
C08G65/28
A01N43/653 C
A01P3/00
A01N25/04 101
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023086077
(22)【出願日】2023-05-25
(62)【分割の表示】P 2021541609の分割
【原出願日】2020-01-13
(31)【優先権主張番号】102019200789.9
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】19166815.1
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ガーベル・ドロテー
(72)【発明者】
【氏名】ヘーヴェルマン・フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】クプファー・ライナー
(72)【発明者】
【氏名】シャインハルト・ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】ベック・ディートマー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】例えば顔料の水性顔料調製物、または植物保護製剤水性製剤のための分散剤の製造方法を提供する。
【解決手段】式(I)、(II)の化合物またはそれらの混合物の製造方法であって、残基XをHで置き換えてアルコールとし、スチレンオキシドでアルコキシル化し、生成物をエチレンオキシドでアルコキシル化することによる方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)、式(II)の化合物またはそれらの混合物を含有する組成物
【化1】
[式中、
nは、1以上の整数であり、
R
1は、1~10個の炭素原子を有する脂肪族の直鎖状もしくは分岐状炭化水素残基、水素原子、構造単位-O-X、または構造単位-CH
2-O-Xであり、
Xは、式(III)に一致する
【化2】
(式中、
aは、2~6の整数であり、
bは、0~3の整数であり、
cは、20~28の整数であり、
mは、1または2であり、
R
2は、1~10個の炭素原子を有する脂肪族の直鎖状もしくは分岐状炭化水素残基であり、
Yは、水素、-SO
3M、-SO
2M、-PO
3M
2または-CH
2COOMであり、そして
Mは、カチオンである)]。
【請求項2】
式IIIにおいて、左から見て、ブロックmがブロックcの前にあり、そしてブロックaおよびbがm内に、ランダムにまたはブロック様式で配置される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
aが、3、4または5、特に3または4である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
bが、0~2、特に0または1の整数である、請求項1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項5】
mが1である、請求項1~4のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項6】
YがHまたは-PO3M2である、請求項1~5のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項7】
(a+b):cの比が1:4~1:6である、請求項1~6のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項8】
aが、2~6の数、とりわけ3、4または5を表し、
bが、0~3の数を表し、
cが、20~28の数を表し、
mが、1または2を表し、そして
Yが、Hまたは-PO3M2を表す、
請求項1~7のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項9】
aが2~6の数であり、bが0または1であり、mが1であり、そしてcが20~28の数である、請求項1~7のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項10】
R1が-CH2-O-Xを表す、請求項1~9のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項11】
R2が-CH3を表す、請求項1~9のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項12】
nが1を表す、請求項1~9のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項13】
式(I)、式(II)の化合物またはそれらの混合物
【化3】
[式中、
nは、1以上の整数であり、
R
1は、1~10個の炭素原子を有する脂肪族の直鎖状もしくは分岐状炭化水素残基、水素原子、構造単位-O-Xまたは構造単位-CH
2-O-Xであり、
Xは、式(III)に一致する
【化4】
(式中、
aは、2~6の整数であり、
bは、0~3の整数であり、
cは、20~28の整数であり、
mは、1または2であり、
R
2は、1~10個の炭素原子を有する脂肪族の直鎖状もしくは分岐状炭化水素残基であり、
Yは、水素、-SO
3M、-SO
2M、-PO
3M
2または-CH
2COOMであり、そして
Mは、カチオンである)]
の製造方法であって、
1.残基XをHで形式的に置き換えることによって式Iまたは式IIから生じるアルコールを供し、
2.これを、活性な水素原子あたり、2~6モルのスチレンオキシド、および任意選択的に3モルまでのC
3~C
12-アルキレンオキシドでアルコキシル化し、ここで当該アルコキシル化は、スチレンオキシドおよびC
3~C
32-アルキレンオキシドで同時に実施することができ、または逐次的に実施することができ、
3.ステップ2を任意選択的に1回または2回繰り返し、および
4.そのようにして得られた生成物を、活性な水素原子あたり20~28モルのエチレンオキシドでアルコキシル化することによる、
前記方法。
【請求項14】
アルコキシル化が、アルカリ金属触媒、アルカリ土類金属触媒またはバイメタルシアン化物触媒を用いて実施される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
アルコキシル化が、130~140℃の範囲の温度および2~9barの圧力で行われる、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
反応終了時に触媒が中和される、請求項13~15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
得られた生成物が、-SO3M、-SO2M、-PO3M2または-CH2COOMからなる群から選択されるアニオン性基Yの付加によって修飾される、請求項13~16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
反応終了後に、得られた生成物が水系で混合され、乳酸で中和される、請求項13~17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
aが2~6の数であり、bが0または1であり、mが1であり、そしてcが20~28の数である、請求項13~18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
YがPO3M2を意味する、請求項13~19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
式(I)、式(II)の化合物またはそれらの混合物の、植物保護剤の水性製剤のための分散剤としての使用
【化5】
[式中、
nは、1以上の整数であり、
R
1は、1~10個の炭素原子を有する脂肪族の直鎖状もしくは分岐状炭化水素残基、水素原子、構造単位-O-X、または構造単位-CH
2-O-Xであり、
Xは、式(III)に一致する
【化6】
(式中、
aは、2~6の整数であり、
bは、0~3の整数であり、
cは、20~28の整数であり、
mは、1または2であり、
R
2は、1~10個の炭素原子を有する脂肪族の直鎖状もしくは分岐状炭化水素残基であり、
Yは、水素、-SO
3M、-SO
2M、-PO
3M
2または-CH
2COOMであり、そして
Mは、カチオンである)]。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、分岐状で、ブロック状のポリマー性分散剤である。これらは、固体および液体材料を、水を含有する液体中に乳化または分散させるのに適している。例えば、本発明による分散剤の使用により、有機および無機顔料の水性顔料調製物、または植物保護剤の水性調製物を製造することができる。
【背景技術】
【0002】
ブロックコポリマー構造を有する様々な分散剤が、先行技術において公知である。
【0003】
EP3260480(特許文献1)は、そのようなポリマーの分散剤としての使用における、任意の配置に勝る様々なモノマーのブロック状配置の利点を記載している。これらのポリマーは、ラジカル重合技術によって得られる。
【0004】
EP1078946(特許文献2)は、低発泡性の湿潤剤および分散剤としての、構造R1O(SO)a(EO)b(PO)c(BO)dR2の直鎖状のブロック状ポリアルキレンオキシドを記載している。それらは、アニオン開環重合によって得られる。ここで、R1は、8~13個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状または脂環式の残基を表す。R2は、水素、アシル残基、アルキル残基またはカルボン酸残基(各々1~8個の炭素原子を有する)、SOはスチレンオキシド、EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシド、BOはブチレンオキシドであり、aは0~1.9、bは3~50、cは0~3、そしてdは0~3である。
【0005】
EP0940406(特許文献3)は、特に、ω-ヒドロキシ官能性オリゴ-またはポリ(アルキル)スチレンをポリ(アルキル)スチレン-ブロック(b)-ポリアルキレンオキシド-コポリマーに転化し、次いで対応するリン酸エステルに変換することによって得られるリン酸エステルの使用を開示している。ここでも再び、直鎖状ポリマーが開示されている。
【0006】
DE102006002800(特許文献4)は、スチレンオキシド、アルキレンオキシドおよび二価以上のアミンおよびアルコールのコポリマーをベースとする分散剤を開示している。これにより、液体で、低粘度の、泡のない顔料分散体の製造を可能にする、分岐状で、ブロック状の構造が生じる。とりわけ、65g/mol未満の分子量を有する低分子量の開始物質分子が特に好適であると記載されている(実施例のサンプル1~4)。そのようなものは、例えば、エチレングリコール(二価アルコール)またはエチレンジアミンであり得る。これによるとしかしながら、スチレンオキシドの添加前に所望の槽充填レベルに到達するためには、製造時に溶媒を必要とする。
【0007】
開環アニオン重合は非常に発熱的に進行し、多くの熱を放出するので、スチレンオキシドはゆっくりと添加されなければならない。従って、これらの場合には、撹拌機が利き、効率的に混合できる槽充填レベルを保証するためには、溶媒が必要とされる。例えば、前記溶媒は、ビス(2-メトキシエチル)エーテル(ジグリム)である。その代わり、この溶媒は、費用・労力をかけて除去されない限り、分散剤中に揮発性有機成分を生じさせる。着色剤-および塗料産業においてますます厳しくなる当局の規則および消費者の意識の高まりを考慮すると、得られる着色剤がなおもエコラベルに関して適格とされるためには、そのような揮発性成分(揮発性有機化合物、すなわちVOC、および半揮発性有機化合物、すなわちSVOC)は、最善の場合、完全に回避されるべきである。別の成分(バインダー、合体剤)の場合に、VOC/SVOC成分を完全には省くことはできず、従って、着色剤製造業者は処方の余地が担保されたままでなければならないので、とりわけ分散剤は、上記のような揮発性成分を含むべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】EP3260480
【特許文献2】EP1078946
【特許文献3】EP0940406
【特許文献4】DE102006002800
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の課題は、例えば顔料調製物に使用するための、または分散体状の植物保護製剤の製造のための、VOCおよびSVOCを含まない分散剤を提供することであった。顔料調製物の場合、これらは高い着色力(Farbstaerke)および低い粘度を有するべきである。さらに、本質的なコーティング特性が負の影響を受けてはならない。いわゆるRub-out試験を用いて試験されるベース塗料との相容性が、例として挙げられるべきである。従って、Rub-outはできるだけ少ないべきである。
【0010】
農薬(Pestizide)は、通常、有効物質のより良好な利用を達成するために、調製物の形態で使用される。このような調製物は、製剤とも呼ばれ、一般に固体または液体形態である。液体農薬調製物は、ユーザーにとって容易に計量することができ、スプレーブロス中に均一に分散できる、という利点を有する。現代の農薬は大抵、水または別の溶媒においてほんのわずかな可溶性を有する複雑な有機分子である。従って、これらの農薬は、都合よくは、懸濁濃厚物として分散形態で提供される。
【0011】
これらの分散体状の植物保護製剤、特に懸濁濃厚物の場合、固体の有効物質は効率的にかつ微細に分散されるべきであり、そして沈降は防止されるべきである。有効物質が微細性であることは、有効物質が植物または標的生物に応じて取り込まれ得ることを確実にする。乳化性の濃厚物の場合、疎水性溶媒ならびにそこに溶解した農薬有効物質および湿潤剤および乳化分散剤は、濃厚物として調製され、そして施用のためには、水含有液体を用いた希釈により、疎水性溶媒および有効物質が乳化されて存在する水性スプレーブロスに調製される。
【0012】
懸濁濃厚物における農薬の安定化のためには、分散剤が必要である。これらの分散剤は、任意選択的に適当な界面活性物質(湿潤剤)によってサポートされて、懸濁濃厚物の製造を可能にするが、これは通常、系に高い機械的力をもたらすためにミリング(Mahlung)を用いて達成される。ミリングプロセスの後、分散剤は、立体相互作用または静電相互作用によって系に対して安定化作用を有する。分散剤は、アニオン性、カチオン性、両性または非イオン性の構造であり得る。それらは、低分子量の性質のものであってよく、あるいは重合されたモノマーのランダムな、交互の、ブロック状の、櫛状の、または星型の配置構造を形成する、より高い分子量のポリマーであってよい。
【0013】
懸濁濃厚物の製造のために大量に使用される商業的に重要な分散剤の例は、アルキルナフタレンとホルムアルデヒドのスルホン化縮合生成物(ナフタレンスルホネート)またはリグニンスルホネートである。しかしながら、これらの製品は、皮膚および眼を刺激するので、毒物学的無害性および使用者の安全性に関する今日の要件をもはや満たさない。さらに、安定な懸濁濃厚物を得るためには、これらの分散剤は殊に有効ではなく、すなわちそれは比較的大きな量を必要とする。
【0014】
従って、本発明の課題は、少量であっても懸濁濃厚物の十分な安定化を可能にし、加工が容易であり、好ましくは液体形態で存在し、そして有利な毒物学的プロファイルを特徴とする、分散剤をベースとする懸濁濃厚物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
驚くべきことに、この課題は、三価以上のポリオールから開始されるアルキレンオキシド付加生成物である分岐状ポリマー構造によって、殊に良好に解決することができた。それらは、ポリオール、スチレンオキシドおよび少なくとも1つのアルキレンオキシドから構成される構造単位を含むブロックコポリマーである。
【0016】
少なくとも三価の開始物質分子により、これらのポリマーは、どちらかというと疎水性のコアとどちらかというと親水性の周辺を有する星型またはデンドリマー型構造を有する。別の開始物質分子および上記とは異なる組成またはブロックの順序を使用すると、顔料調製物および植物保護製剤において使用した場合に上記の全ての特性プロファイル(特に揮発性有機成分および色特性ならびに粘度、安定性および相容性に関して)を有しない分散剤が得られる。
【0017】
本発明の対象は、式(I)、式(II)の化合物またはそれらの混合物を含有する組成物である
【0018】
【化1】
[式中、
nは、1以上の整数であり、
R
1は、1~10個の炭素原子を有する脂肪族の直鎖状もしくは分岐状炭化水素残基、水素原子、構造単位-O-X、または構造単位-CH
2-O-Xであり、
Xは、式(III)に一致する
【0019】
【化2】
(式中、
aは、2~6の整数であり、
bは、0~3の整数であり、
cは、20~28の整数であり、
mは、1または2であり、
R
2は、1~10個の炭素原子を有する脂肪族の直鎖状もしくは分岐状炭化水素残基であり、
Yは、水素、-SO
3M、-SO
2M、-PO
3M
2または-CH
2COOMであり、そして
Mは、カチオンである)]。
【0020】
式(I)の化合物、式(II)の化合物、またはそれらの混合物は、特に、乳化剤または分散剤として作用するのに適している。以下、それらを、本発明による分散剤(Dispergatoren)または本発明による分散剤(Dispergiermittel)と呼ぶ。乳化-または分散作用は、特に、疎水性溶媒のためまたは農薬の分散のため(いずれの場合も水含有液体における)、ならびに水含有液体における無機または有機顔料のためである。
【0021】
本発明の対象はさらに、水含有液体における、疎水性溶媒のためのまたは農薬の分散のための、乳化剤または分散剤としての、式(I)、式(II)の化合物またはそれらの混合物の使用である。
【0022】
本発明のさらなる対象は、疎水性溶媒または農薬と水含有液体との混合物に、式(I)または(II)の少なくとも1種の分散剤を添加することによる、水含有液体における少なくとも1種の疎水性溶媒または農薬の乳化または分散のための方法である。
【0023】
本発明のさらなる対象は、式(I)、式(II)の化合物またはそれらの混合物の製造のための方法であって、
1.残基XをHで形式的に置き換えることによって式Iまたは式IIから生じるアルコールを供し、
2.これを、活性な水素あたり2~6モルのスチレンオキシド、および任意選択的に活性な水素あたり3モルまで、特に0~2モル、就中0~1モルのC3~C12-アルキレンオキシドでアルコキシル化し、ここで当該アルコキシル化は、スチレンオキシドおよび前記C3~C12-アルキレンオキシドで同時に実施することができ、または逐次的に実施することができ、
3.ステップ2を任意選択的に1回~2回繰り返し、および
4.このようにして得られた生成物を、活性な水素あたり20~28モルのエチレンオキシドでアルコキシル化することによる、
前記方法である。
【0024】
ステップ2を1回または2回繰り返す場合、アルコキシル化の終了時におけるスチレンオキシドおよびC3~C12-アルキレンオキシドのモル量aおよびbが上記の範囲にあることに注意が払われるべきである。
【0025】
アルコキシル化は、アルカリ金属触媒、アルカリ土類金属触媒またはバイメタルシアン化物触媒を用いて行われる。通例の反応温度は130~140℃の範囲である。反応は、通例の2~9barの圧力で不活性化条件下(窒素ブランケットを用いて)で実施される。
【0026】
式(III)において、波線は、この残基の残りの分子(式IまたはII)への結合位置を示す。この結合から出発して、化学量論的指数mを有する構造単位が、化学量論的指数cを有する構造単位の前に常にあること、すなわち、エチレンオキシドが前重合(anpolymerisiert)される前に、ポリオール開始物質が、常に最初に、スチレンオキシドおよび/またはエチレンオキシド以外のアルキレンオキシドと反応することが必要である。一方、化学量論的指数mを有する括弧内の化学量論的指数aおよびbを有するブロックは、ランダムにまたはブロック様式で配置されてよい。
【0027】
好ましい実施形態において、aは、3、4または5、特に3または4の数である。
【0028】
好ましい実施形態において、bは、0~2、特に0または1の数である。
【0029】
好ましい実施形態において、mは1である。
【0030】
好ましい実施形態において、Yは、Hまたは-PO3M2である。
【0031】
好ましい実施形態において、aは、3、4または5、特に3または4であり、bは、0または1であり、(a+b):cの比は、1:4~1:6である。
【0032】
好ましい実施形態において、Mは、水素、Na+、K+、NH4
+、トリエタノールアンモニウムの群からのカチオン、またはそれらの組み合わせである。
【0033】
好ましい実施形態において、本発明による組成物は、式Iおよび/またはIIの化合物であって、当該式中、
aは、2~6の数であり、
bは、0~3の数であり、
cは、20~28の数であり、
mは、1または2の数、とりわけ1であり、そして
Yは、Hまたは-PO3M2である
化合物を含む。
【0034】
さらに好ましい実施形態において、前記分散剤は、式(I)[式中、aは2~6の数であり、bは0または1であり、mは1であり、そしてcは20~28の数である]に相当する。
【0035】
好ましい実施形態において、R1は-CH2-O-Xである。
【0036】
好ましい実施形態において、nは1である。
【0037】
好ましい実施形態において、R2はCH3である。
【0038】
前述の全ての実施形態において、aは、とりわけ3、4または5、特に3または4である。
【0039】
本発明による分散剤は、ポリオールへのスチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドまたは長鎖アルキレンオキシドの付加およびアニオン重合によって製造される。アルコキシル化は、これらのポリオールの1個または複数の酸素原子に対して行われる。アルコキシル化は、公知の触媒、例えばアルカリ金属-、アルカリ土類金属-またはバイメタルシアン化物触媒を用いて、不活性化された様式で実施される。典型的な温度は130~140℃の範囲であり、典型的な圧力は2~9barの範囲である。アニオン重合は、ランダムに(ブロックm内)、またはブロック様式で(ブロックm内、およびcに対するmに関して)行うことができる。
【0040】
モノマーと開始物質分子との比が、反応の開始時に開始物質と触媒との十分な混合を確実にするには大きすぎる場合、この合成は補助溶媒を用いて実施することができる。そのような溶媒は、グリコール類、グリコールエーテル、グリム類または他の有機溶媒であり得る。
【0041】
しかしながら、本発明による分散剤は、溶媒なしでバルクで(in Substanz)製造することもできる。反応の終了時に、任意選択的に、触媒は中和しなければならない。これは、一般的な酸、例えば有機カルボン酸(例えば、酢酸、乳酸、イソノナン酸)または無機酸(鉱酸)を用いて行うことができる。
【0042】
ポリマー剤形は、バルク(高粘性液体)でまたは溶液であることができる。合成からの残留溶媒が、溶液として存在し得る。対照的に、水性剤形は、その後の顔料分散体または植物保護剤の製造において、粘度が低いため、取り扱いがより容易であるので好ましい。これはさらに、揮発性有機成分(VOC/SVOC)が、本発明による分散剤の使用時に得られる最終組成物中に導入されないことを担保する。
【0043】
共重合に続いて、第1のステップで生じた式(I)または(II)の非イオン性分散剤を、アニオン性基の付加によって修飾することができる。適切なアニオン性基は、本発明による非イオン性分散剤とアミドスルホン酸との反応により得ることができる硫酸半エステル、あるいは本発明による非イオン性分散剤とオルトリン酸、ポリリン酸または五酸化リンP2O5の反応により製造されるリン酸エステルである。エーテルカルボン酸は、本発明による非イオン性分散剤をアルカリ性条件下でモノクロロ酢酸と反応させることによって製造することができる。
【0044】
殊に好ましい実施態様において、本発明による分散剤は、合成後に80%水系で混合され、乳酸で中和される。乳酸は、3.90のpKa値を有し、別の有機酸、例えば酢酸と比較して臭気が極めて低いという利点を有する。この方法は、殊に、aが2~6の数であり、bが0であり、mが1であり、cが20~28の数である本発明による分散剤のために好ましい。
【0045】
殊に好ましい実施形態では、本発明の分散剤(式中、aは2~6の数であり、bは0であり、cは20~28の数である)は、反応の終わりに、Yがホスフェートであるように改質される。
【0046】
本発明による分散剤は、疎水性溶媒または農薬および水含有液体からの混合物に、式(I)または(II)の少なくとも1種の分散剤を添加することにより、少なくとも1種の固体農薬を水含有液体中に分散させるために適しており、そのようにして製造されたエマルションまたは分散体は、
(A)3~80重量%、特に20~70重量%、とりわけ30~65重量%の、少なくとも1種の疎水性溶媒または農薬、
(B)0.1~30重量%、特に1~15重量%の、式(I)および/または(II)の少なくとも1種の分散剤、
(C)5~99重量%、特に5~90重量%、殊に好ましくは10~70重量%の水
を含有する。
【0047】
本発明による植物保護剤の水性製剤の成分(A)の1種または複数の農薬(Pestizide)は、特に、除草剤(Herbiziden)、殺虫剤(Insektiziden)および殺菌剤(Fungiziden)からなる群から選択される。
【0048】
好ましい殺菌剤は、脂肪族窒素系殺菌剤、アミド系殺菌剤、例えばアシルアミノ酸系殺菌剤、またはアニリド系殺菌剤、またはベンズアミド系殺菌剤、またはストロビルリン系殺菌剤、芳香族系殺菌剤、ベンズイミダゾール系殺菌剤、ベンゾチアゾール系殺菌剤、カーバメート系殺菌剤、コナゾール系殺菌剤、例えばイミダゾール類またはトリアゾール類、ジカルボキシイミド系殺菌剤、ジチオカーバメート系殺菌剤、イミダゾール系殺菌剤、モルホリン系殺菌剤、オキサゾール系殺菌剤、ピラゾール系殺菌剤、ピリジン系殺菌剤、ピリミジン系殺菌剤、ピロール系殺菌剤、キノン系殺菌剤である。
【0049】
好ましい除草剤は、アミド系除草剤、アニリド系除草剤、芳香族酸系除草剤、例えば安息香酸系除草剤またはピコリン酸系除草剤、ベンゾイルシクロヘキサンジオン系除草剤、ベンゾフラニルアルキルスルホネート系除草剤、ベンゾチアゾール系除草剤、カーバメート系除草剤、カルバニレート系除草剤、シクロヘキセンオキシム系除草剤、シクロプロピルイソオキサゾール系除草剤、ジカルボキシイミド系除草剤、ジニトロアニリン系除草剤、ジニトロフェノール系除草剤、ジフェニルエーテル系除草剤、ジチオカーバメート系除草剤、イミダゾリノン系除草剤、ニトリル系除草剤、有機リン系除草剤、オキサジアゾロン系除草剤、オキサゾール系除草剤、フェノキシ系除草剤、例えばフェノキシ酢酸系除草剤、またはフェノキシブタン酸系除草剤、またはフェノキシプロピオン酸系除草剤、またはアリールオキシフェノキシプロピオン酸系除草剤、ピラゾール系除草剤、例えばベンゾイルピラゾール系除草剤、またはフェニルピラゾール系除草剤、ピリダジノン系除草剤、ピリジン系除草剤、チオカーバメート系除草剤、トリアジン系除草剤、トリアジノン系除草剤、トリアゾール系除草剤、トリアゾロン系除草剤、トリアゾロピリミジン系除草剤、ウラシル系除草剤、ウレア系除草剤、例えばフェニル尿素系除草剤、またはスルホニル尿素系除草剤である。
【0050】
好ましい殺虫剤は、カーバメート系殺虫剤、例えば、ベンゾフラニルメチルカーバメート系殺虫剤またはジメチルカーバメート系殺虫剤またはオキシムカーバメート系殺虫剤またはフェニルメチルカーバメート系殺虫剤、ジアミド系殺虫剤、昆虫成長制御剤、大環状ラクトン系殺虫剤、例えばアベルメクチン系殺虫剤、またはミルベマイシン系殺虫剤、またはスピノシン系殺虫剤、ネレイストキシン(Nereistoxin)類似体系殺虫剤、ニコチノイド系殺虫剤、例えばニトログアニジンニコチノイド系殺虫剤、またはピリジルメチルアミンニコチノイド系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、例えば有機ホスフェート系殺虫剤、または有機チオホスフェート系殺虫剤、またはホスホネート系殺虫剤、またはリンアミドチオエート系殺虫剤、オキサジアジン系殺虫剤、ピラゾール系殺虫剤、ピレスロイド系殺虫剤、例えばピレスロイドエステル系殺虫剤またはピレスロイドエーテル系殺虫剤またはピレスロイドオキシム系殺虫剤、テトラム酸系殺虫剤、テトラヒドロフランジオン系殺虫剤、チアゾール系殺虫剤である。
【0051】
特に好ましくは、本発明による懸濁濃厚物の成分a)の1種または複数の農薬は、トリアゾール系殺菌剤、ストロビルリン系殺菌剤、ネオニコチノイド系殺虫剤、フェニルピラゾール系殺虫剤、ベンゾイルシクロヘキサンジオン系除草剤、トリアジン系除草剤およびスルホニル尿素系除草剤からなる群から選択される。
【0052】
特に好ましくは、本発明による懸濁濃厚物の成分a)の1種または複数の農薬は、エポキシコナゾール、テブコナゾール、アゾキシストロビン、トリフロキシストロビン、イミダクロプリド、チアクロプリド、チアメトキサム、フィプロニル、エチプロル、メソトリオン、テンボトリオン、アトラジン、ニコスルフロン、ヨードスルフロンおよびメソスルフロンからなる群から選択される。
【0053】
本発明による分散剤はさらに、有機および/または無機顔料を用いた顔料調製物の製造にも殊に適している。例示的な組成において、このようにして製造された顔料調製物は、以下の成分を有することができる:
(A)3~80重量%、特に20~70重量%、とりわけ30~65重量%の、少なくとも1種の有機および/または無機顔料。
(B)0.1~30重量%、特に1~15重量%の、式(I)および/または(II)の少なくとも1種の分散剤。
(C)0~50重量%、特に1~20重量%の湿潤剤、通常は、200~2000g/モルの平均モル質量を有するポリエチレングリコールエーテル。
(D)0~2重量%、特に0.02~0.5重量%の消泡剤。
(E)0~2重量%、特に0.02~0.2重量%の防腐物質。
(F)5~90重量%、特に10~70重量%の水。
【0054】
顔料調製物の成分(A)は、特に、微細粒子の有機または無機顔料、あるいは異なる有機および/または無機顔料の混合物である。ここで、顔料は、乾燥粉末の形態で、粒状物として、または水で湿ったプレスケーキとして使用することができる。
【0055】
本発明による分散剤を用いて製造された顔料調製物は、良好な貯蔵安定性を有し、凝集および沈殿する傾向が非常に低い。前記顔料調製物は、高い着色力、明確な色調および低い粘度を有する。前記顔料調製物は、一般的な水性塗料系、例えば、高い顔料体積濃度のエマルションペイントおよび低い顔料体積濃度のエマルションペイントに対して相容性である。
【0056】
固形農薬を含む植物保護製剤は、以下のようにして製造することができる:
懸濁濃厚物の一般的な製造方法:
レオロジー調整のために使用される増粘剤、例えばKelzan(登録商標)S溶液を除いて全ての成分を、ディゾルバーで予備分散する。後続の微粉砕を、所望の粒径に達するまでビーズミルで行う。引き続き、Kelzan(登録商標)S水溶液を添加し、所望の最終粘度に調節する。
【0057】
乳化可能な濃厚物の場合、水非混和性溶媒を、1種または複数の農薬作用物質、分散剤およびさらに別の成分と一緒に混合して、濃厚物とする。前記濃縮物は、水含有液体で希釈することによって乳化して、スプレーブロスとする。
【0058】
顔料調製物は、本発明による分散剤を用いて、粉末、粒状物または水性プレスケーキの形態の成分(A)を、水および成分B、および任意選択的に(C)、(D)、(E)の存在下、それ自体は通例の方法で分散させ、引き続き任意選択的に水と混合し、得られた水性顔料分散体を水で所望の濃度に調整することによって製造することができる。とりわけ、成分(B)、(C)、(D)、(E)および(F)を混合し、均質化し、次いで、充填した混合物中に成分(A)を撹拌混合し、顔料をペーストにし、予備分散する。使用する顆粒の粒の硬度に応じて、引き続き、任意選択的に冷却下で、粉砕装置または分散装置を用いてこれを微分散または微細化させる。このためには、撹拌機、ディゾルバー(鋸歯撹拌機)、ローター・ステーターミル、ボールミル、撹拌ボールミル、例えばサンドミル及びビーズミル、高速ミキサー、混練装置、ロールミルまたは高性能ビーズミルを使用することができる。顔料の微分散または粉砕は、所望の粒度分布になるまで行われ、0~100℃の範囲の温度で、適切には20~60℃の間の温度で行うことができる。微分散に続いて、顔料調製物を水で、とりわけ脱イオンもしくは蒸留水で、さらに希釈してもよい。
【0059】
本発明による分散剤を含有する顔料調製物は、塗料およびエマルションペイントおよび分散ワニス(ファサード塗装(Fassadenfarben)のために利用される)の着色または製造に特に適している。
【0060】
本発明による分散剤は、アルキルフェノールおよびアルキルフェノールエトキシレートを含まず、従って、本発明による分散剤を含有する廃棄物は、水生生物にとって有害ではない。
【実施例0061】
例
サンプル1~3および比較サンプル1~4の合成
サンプル1:ペンタエリスリトール+4molプロピレンオキシド+12molスチレンオキシド+80molエチレンオキシド
1Lのガラスオートクレーブに、ペンタエリスリトールと4当量のプロピレンオキシド(150.0g、0.41モル)の反応生成物を、水酸化カリウム(水中40重量%;2.40g)と一緒に仕込んだ。混合物を、真空下125℃で1時間乾燥させた。引き続き、この温度でスチレンオキシド(587.1g、4.89モル)を分けて添加した。反応をエポキシド値の滴定によりチェックした。次いで、中間生成物を100℃に冷却し、単離した。中間生成物(250.0g、0.14mol)を125℃に加熱した1Lのガラスオートクレーブに再び入れた。この温度で、486.7g(11.05モル)のエチレンオキシドを、不活性化された操作様式で、2~5バールの全圧で、分けて計量添加した。一定圧力まで反応させた後、生成物を80℃に冷却し、30分間真空を適用することによって微量の未反応エチレンオキシドを除去し、生成物を単離した。
【0062】
サンプル2:グリセリン+12molスチレンオキシド+75molエチレンオキシド グリセリン(200g、2.17mol)およびKOH(40%水溶液、30.46g)を1Lオートクレーブに入れ、混合物を120℃で2時間乾燥し、次いで130℃に加熱した。この温度でスチレンオキシド(521.9g 4.34mol)を分けて添加した。反応をエポキシド値の滴定によりチェックした。中間体を単離し、部分量(172.0g、0.51mol)をさらなる反応に投入し、スチレンオキシド(735.9g、6.12mol)を分けて添加することによって130℃で反応させた。反応をエポキシド値の滴定によりチェックした。中間生成物(200.0g、0.13mol)をオートクレーブに入れ、2~6barの全圧で不活性化された操作様式で、135℃でエチレンオキシド(459.5g、10.4mol)と反応させた。一定圧力まで反応させた後、生成物を80℃に冷却し、30分間真空を適用することによって微量の未反応エチレンオキシドを除去し、生成物を単離した。
【0063】
サンプル3:グリセリン+12molスチレンオキシド+75molエチレンオキシド+リン酸ナトリウム塩
前駆体を、「サンプル2」と類似して製造した。サンプル2(1730.7g)を撹拌装置に入れ、60℃に加熱した後、ポリリン酸(117.1g)を2.5時間の添加時間をかけて計量添加した。発熱反応の内部温度は60~70℃の範囲であった。添加終了後、70℃で1時間、100℃でさらに5時間、後反応をさせる。生成物を苛性ソーダ溶液(50重量%水溶液)で7.7のpH値に、全含水量を20重量%に調整した。
【0064】
比較サンプル1:エチレンジアミン+16スチレンオキシド+100エチレンオキシド エチレンジアミン(60.1g)をジメチルテトラグリコール(294.5g)に溶解し、スチレンオキシド(480.6g)と反応させた。水酸化カリウムを添加し(40重量%水溶液、15.0g)、含まれる水を真空中100℃で除去した。引き続き、さらなるスチレンオキシド(1441.8g)を添加し、反応が完全に完了した後、中間体を単離した。後続の反応において、中間体(341.6g)をエチレンオキシド(656.5g)と反応させた。反応が完全に完了した後、生成物を20%の含水率に調整し、単離した。
【0065】
比較サンプル2:エチレンジアミン+4プロピレンオキシド+8スチレンオキシド+80エチレンオキシド
上記の合成と同様に、エチレンジアミンと4当量のプロピレンオキシド(200.0g、0.68mol)の反応生成物を水酸化カリウム(水中40重量%;5.59g)でアルカリ化し、乾燥し、130℃でスチレンオキシド(587.1g、4.89mol)と反応させた。得られた中間生成物(220.0g、0.17mol)を135℃でエチレンオキシド(583.1g、13.24mol)と反応させた。一定圧力まで反応させた後、生成物を80℃に冷却し、30分間真空を適用することによって微量の未反応エチレンオキシドを除去し、生成物を単離した。
【0066】
比較サンプル3:ペンタエリスリトール+4プロピレンオキシド+4スチレンオキシド+10エチレンオキシド
上記の合成と同様に、ペンタエリスリトールと4当量のプロピレンオキシド(225.0g、0.61mol)の反応生成物を水酸化カリウム(水中40重量%;3.61g)でアルカリ化し、乾燥し、130℃でスチレンオキシド(293.5g、2.44mol)と反応させた。得られた中間生成物(180.0g、0.21mol)を135℃でエチレンオキシド(373.6.7g、8.48mol)と反応させた。一定圧力まで反応させた後、生成物を80℃に冷却し、30分間真空を適用することによって微量の未反応エチレンオキシドを除去し、生成物を単離した。
【0067】
比較サンプル4:ペンタエリスリトール+4プロピレンオキシド+8スチレンオキシド+140エチレンオキシド
上記の合成と同様に、ペンタエリスリトールと4当量のプロピレンオキシド(225.0g、0.61mol)の反応生成物を水酸化カリウム(水中40重量%;3.61g)でアルカリ化し、乾燥し、130℃でスチレンオキシド(587.1g、4.89mol)と反応させた。得られた中間生成物(180.0g、0.14mol)を135℃でエチレンオキシド(834.9g、18.95mol)と反応させた。一定圧力まで反応させた後、生成物を80℃に冷却し、30分間真空を適用することによって微量の未反応エチレンオキシドを除去し、生成物を単離した。
【0068】
本発明のサンプル1~3は、ペンタエリスリトールまたはグリセリンから開始する。サンプル1は、アルコール基あたり1回プロポキシル化した後、スチレンオキシド-およびエチレンオキシドブロックを付加した。サンプル2~3では、グリセリンをプロポキシル化なしで開始物質として使用し、最初にスチレンオキシド、次いでエチレンオキシドを付加した。
【0069】
比較サンプル1は、開始物質分子としてエチレンジアミンを含有する。従って、ジグリムが重合溶媒として必要とされる。その結果、このようにして得られたポリマー性分散剤はVOC/SVOCを含有し、従って要件を満たさない。
【0070】
比較サンプル2の場合、本発明によるサンプル1の場合と同様に、各アミン水素あたり1回プロポキシル化を行った。このようにして、より高い分子量を有する開始物質を製造することができ、当該開始物質を用いると、その後の重合のために溶媒を使用する必要がない。従って、比較サンプル2は、VOC/SVOCを含まない。開始物質としてエチレンジアミンを使用するので、比較サンプル2は本発明によるものではない。
【0071】
比較サンプル3を、ポリオール開始物質、ペンタエリスリトールを用いて製造した。比較サンプル3では、a=1であり、すなわち、スチレンオキシドの割合は、本発明に従って必要とされるよりも低い。
【0072】
比較サンプル4を、ポリオール開始物質、ペンタエリスリトールを用いて製造した。比較サンプル4では、c=35であり、すなわち、エチレンオキシドの割合は、本発明に従って必要とされるよりも高い。
【0073】
【0074】
上記のOH価および粘度は100%の物質について決定した。記載される酸化物単位の値は、分子全体を基準とする。上記の数からa、bおよびcに関する値に達するためには、これらを開始物質分子における活性な水素原子の数、例えばグリセリンに関しては3、ペンタエリスリトールに関しては4で除す必要がある。
【0075】
【0076】
顔料用分散剤としてのポリマーの適性を評価するために、水性顔料ペーストを製造した。この目的のために、顔料を、本発明による分散剤および先行技術から公知の他の添加剤と一緒に、脱イオン水においてペーストにし、次いでディゾルバー(例えば、VMA-Getzmann GmbH社からのCN-F2型)または他の適切な装置で予備分散させた。引き続き、微分散をビーズミル(例えばVMA-GetzmannのAPS 500を用いる)を用いるか、または他の適切な分散装置を用いて行い、ここで粉砕は、d=1mmのサイズのシリカザイトビーズ(Siliquarzitperlen)またはジルコニウム混合酸化物ビーズを用いて冷却下で行った。引き続き、粉砕媒体を顔料分散体から分離し、後者を評価した。とりわけ、本発明によるポリマーを、粘度、着色力および相容性に関して比較サンプルと比較した。
【0077】
この目的のために、以下の4つのベース調製物を選択した(全ての記載は、組成物全体=100%を基準とする質量%である)。
【0078】
【0079】
顔料調製物を製造するために、成分B、C、D、E、FおよびGを導入し、混合した。引き続き、粉末状の成分Aを添加し、ディゾルバーを用いて予備分散した。微分散は、冷却しながらd=1mmのサイズのジルコニウム混合酸化物ビーズを用いてビーズミルで行った。粉砕時間は30~60分であった。引き続き粉砕媒体を分離し、顔料調製物を単離した。顔料調製物を、24時間後に、着色力(エマルションペイントにおける着色)および粘度について試験した。引き続き、それを50℃で28日間貯蔵し、前記の2つの特性について再び試験し、そこから貯蔵安定性がわかる。
【0080】
粘度を、Thermofischer GmbHのコーンプレート型粘度計(Haake Viskostester 550モデル)を用いて、20℃で、0~200s-1の剪断速度範囲にわたって試験し、60s-1の剪断速度を用いて粘度を示した。
【0081】
貯蔵安定性を粘度に基づいて評価した。24時間後の貯蔵安定性を、50℃で28日間の加熱貯蔵後に測定した粘度と比較した。ペーストは、これらの粘度が200mPasを超える量で異ならず、ペーストが沈降または離液を示さなかった場合、その貯蔵安定性を「非常に良好」と評価した。粘度が200mPasの量を超えて変化し、および/またはわずかな沈降が生じた場合、貯蔵安定性を「良好」とした。貯蔵安定性でないペーストは、貯蔵中に著しく増粘し(400 mPasを超える粘度の増加)、または固体もしくはチキソトロピーとなった。
【0082】
着色力を、興味のペーストを用いてエマルションペイントを2%で着色することによって、DIN 55986に基づいて決定した。引き続き、着色した塗料を、規定の層厚でペイントカード(Lackkarte)上に付着させ、乾燥後、コニカミノルタ分光光度計で調べた。
【0083】
相容性は、Rub-out試験によって決定した。この目的のために、エマルションペイントを顔料分散体と混合した後、ペイントカード上に施与した。引き続き、ペイントカードの下部を後で指でこすった。後でこすった表面が、隣接する後処理がされていない表面よりも強く着色された場合、非相容性であった(DE2368946も参照されたい)。以下の結果が得られた:
【0084】
【0085】
上記の例から分かるように、ポリオールを開始物質として使用し、本発明による量のオキシラン誘導体を使用すると、着色力、相容性、粘度および貯蔵安定性に関してより良好な結果が達成される。
【0086】
例Aの調製物において使用されるピグメントブルー15:3は、本発明のサンプル1~3を用いて、全ての態様において満足に分散させることができる。対照的に、比較サンプル1および2を用いた調製物は、貯蔵安定性ではなく、比較サンプル1では、貯蔵中の著しい粘度増加およびチキソトロピーが認められる。一方、本発明によらないスチレンオキシドまたはエチレンオキシド含有量を有する比較サンプル3および4は、非常に強い発泡が顕著である。さらに、比較サンプル3を用いた調製物は、1週間後に既に半固体である。比較サンプル4を用いた調製物も貯蔵安定性ではない。
【0087】
例Bの全ての調製物において使用されるピグメントイエロー74は、比較的容易に分散させることができ、従って多くの分散剤サンプルによっても満足のいく様式で分散させることができる顔料である。比較サンプル2では、非常に強力なRub-outが観察されるので、ペーストとベース塗料との強い非相容性が見られる。比較サンプル1は、揮発性有機成分(VOC/SVOC)を含有する顔料調製物をもたらす。さらに、比較サンプル3および4は、それらの強い発泡および貯蔵安定性の欠如が顕著である。
【0088】
例Bの調製物において使用されるピグメントグリーン7は、本発明のサンプル1~3を用いて、全ての態様において満足に分散させることができる。他方、比較サンプル1では、チキソトロピーおよび1週間以内における1000mPas超の粘度増加を含めて貯蔵安定性の欠如という欠陥が見られる。比較サンプル2の場合、非常に強力なRub-outが観察されるので、またもや強い非相容性という欠陥が見られる。
【0089】
ピグメントレッド101は、無機顔料である唯一の例である。サンプル1は、この無機顔料も十分に良好に分散させることができる。貯蔵の際にわずかな沈降が生じるが、これは容易に再び撹拌することができる。より長い期間経た調製物製剤では、レオロジー添加剤を用いてこの特性を再度補うことができる。比較サンプル1では、流動性ペーストを生成することができなかった。
【0090】
比較サンプル1は、エチレンジアミンを用いて開始し、VOC/SVOCに寄与する溶媒としてジグリムを含有する。この分散剤を用いると、本発明によるサンプル1~3を用いた場合のように、有機顔料において同様に良好な着色力を達成できるが、要求が少ないピグメントイエロー74を用いたペーストのみが貯蔵安定性である。赤色酸化鉄には、比較サンプル1は推奨されない。
【0091】
比較サンプル2は同様に開始物質としてエチレンジアミンを含有するが、スチレンオキシドブロックの前に活性なアミン酸素当たり各々1単位のプロピレンオキシドをさらに含有する。単一のプロポキシル化が開始物質の分子量を増加させるので、この合成ストラテジーにより、溶媒なしで操作することが可能となる。従って、VOC/SVOCを含まない分散剤という要件が満たされる。しかしながら、比較サンプル2は多くの場合に、着色中に、ベース塗料との非相容性をもたらし、これは黄色および緑色の強力なRub-outによって明らかである。
【0092】
ピグメントブルー15:3の場合、ペーストは貯蔵安定性ではなく、容易に再溶解できない強い沈殿物が形成された。従って、このサンプルは要件を満たさない。
【0093】
アミン開始比較サンプルは、全請求項および全ての試験した顔料調製物において要件を満たすことができない。それらは、本発明による式(I)または(II)を開始物質として有していない。
【0094】
また、本発明に従わないスチレンオキシド割合(a=1)を有する比較サンプル3は課題を満たさず、高すぎるエチレンオキシド割合(c=35)を有する比較サンプル4も同様に満たさない。
【0095】
本発明によるサンプル1~3は、プロポキシル化がポリオール開始物質で行われたか(サンプル1)または行われなかったか(サンプル2~3)にかかわらず、顔料分散体に関して提起された技術的課題を解決する。
【0096】
要約すると、この課題は、ポリオール開始物質および適切な割合のスチレンオキシドおよびエチレンオキシドを有する本発明によるポリマーによってのみ達成されると言うことができる。本発明に従うポリマーのみが、得られる顔料調製物において必要な全ての基準を満たす。
【0097】
植物保護製剤の例
【0098】
【0099】
テブコナゾールを用いた作物保護製剤においても、本発明によるサンプル2を用いた製剤のみが安定な懸濁液を生じ、比較サンプルを用いた製剤は固体になる。