(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116537
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】非小細胞肺がんの治療に使用するためのオシメルチニブ
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20230815BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230815BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230815BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20230815BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20230815BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20230815BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20230815BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20230815BHJP
A61K 31/475 20060101ALI20230815BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20230815BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K33/24
A61K31/282
A61K31/337
A61K31/7068
A61K31/7048
A61K31/475
A61K31/519
A61K9/20
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023087054
(22)【出願日】2023-05-26
(62)【分割の表示】P 2020541872の分割
【原出願日】2019-02-11
(31)【優先権主張番号】62/629,166
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・フランシス・パトリック・ナッシュ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】局所進行性の切除不能な上皮増殖因子受容体(EGFR)変異陽性非小細胞肺がん(ステージIII)の患者の治療に使用するための化合物および治療方法を提供する。
【解決手段】根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に疾患が進行していない、局所進行性の切除不能なEGFR変異陽性NSCLCの患者の治療に使用するための、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に疾患が進行していない、局所進行性の切除不能なEGFR変異陽性NSCLCの患者の治療に使用するための、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記切除不能なEGFR変異陽性NSCLCが、放射線化学療法によって治癒可能であると考えられる、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
前記放射線化学療法が同時放射線化学療法を含む、請求項1又は2に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
前記放射線化学療法が逐次放射線化学療法を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
前記放射線化学療法が白金製剤との2剤併用化学療法を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
前記放射線化学療法が、シスプラチン又はカルボプラチンから選択される白金系薬剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
前記放射線化学療法が、エトポシド、ビノレルビン、ビンブラスチン、ペメトレキセド、パクリタキセル、ドセタキセル、又はゲムシタビンから選択される非白金系薬剤を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
前記EGFR変異陽性NSCLCが、エクソン19の欠失又はL858R置換変異から選択されるEGFRにおける活性化変異を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
前記オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩が、1日1回投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
前記オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩が、前記患者に、前記放射線化学療法の完了前には投与されない、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
前記オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩が錠剤形態である、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
前記オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩がメシル酸塩の形態である、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項13】
ヒト患者において局所進行性のステージIIIの切除不能なEGFR変異陽性NSCLCを治療する方法であって、前記方法は、前記患者にオシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与するステップを含み、疾患が、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に進行していない、方法。
【請求項14】
根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に疾患が進行していない、局所進行性の切除不能なEGFR変異陽性NSCLCの患者の治療のための医薬品の製造におけるオシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、局所進行性の切除不能な上皮増殖因子受容体(EGFR)変異陽性非小細胞肺がん(ステージIII)の患者の治療に使用するための、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩について記載する。特に、本明細書は、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に疾患が進行していない患者におけるそのような治療について記載する。
【背景技術】
【0002】
原発性肺がんは、非メラニン細胞性皮膚がんに次いで最も多く見られるがんであり(世界で全ての新たながんの12.9%)、依然として全般に、がんが関連する主要な死因となっている(がんによる全死亡数の19.4%)(非特許文献1)。非小細胞肺がん(NSCLC)は、全ての肺がんのおよそ80%~85%を占める。
【0003】
上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、及びアファチニブなどは、通常、腫瘍がEGFR遺伝子において活性化変異を示す転移性非小細胞肺がん(NSCLC)の患者の無増悪生存期間を延長する。最も多く見られるEGFR活性化変異は、L858R置換変異及びエクソン19の欠失である。しかしながら、そのような患者の大多数には、これらのEGFR-TKIに対して、治療後、通常9~13カ月以内に耐性が生じる。獲得耐性の1つの重要な機序は、EGFR遺伝子のエクソン20におけるT790M EGFRの変異である。この獲得耐性の故に、オシメルチニブ(TAGRISSO(商標))などのさらなるEGFR-TKIが開発されるに至り、これは、別のEGFR-TKI療法以降に進行した転移性EGFR T790M変異陽性NSCLCの患者の治療用に承認されている。
【0004】
EGFR-TKIは、転移性の状態にあるNSCLCの患者の予後を大幅に改善したが、しかしながら、これらの薬物は、ステージIIIの切除不能なNSCLCの患者の標準治療にはなっていない。ステージIIIのNSCLCは、G7の国々(米国、仏国、独国、イタリア、スペイン、英国及び日本)において2016年に約100,000人の患者を冒していると推定され、その大多数(約70%)は切除不能な疾患を有している(非特許文献2)。1998年~2006年にNSCLCと診断された813,032人の患者についてのUS National Cancer Database、及び入手可能な病期分類情報を基にすれば、ステージIIIの疾患と診断された患者の割合は、およそ27%であった(非特許文献3)。
【0005】
切除不能なステージIIIのNSCLCの患者に対する現在の標準治療は、放射線化学療法を用いる根治目的の治療である。同じ標準治療が、EGFR変異陽性の患者及びEGFR野生型の患者の両方に適用されている。同時放射線化学療法(CCRT)は、パフォーマンスステータスが良く、併存疾患が最小である、より若年の患者に対する標準治療と考えられている。逐次放射線化学療法(SCRT)は、一般に、健康度合の劣る患者に対して供与される。しかし、有効性のレベルの差は小さい。
【0006】
EGFRで選別しない患者については、(i)腫瘍病期分類(ステージの移行に至る)における改善、(ii)放射線療法、例えば、強度変調放射線療法(IMRT)の計画及び実施における改善、並びに(iii)放射線化学療法に伴う毒性の管理における改善が、切除不能な疾患を有する患者の転帰の幾つかの改善につながった。CCRTに関連する有効性転帰は、全生存期間中央値(OS)が20.6~28.7カ月の範囲であった(非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8)。
【0007】
切除不能なステージIIIのEGFR変異陽性NSCLCの患者については、同じ根治目的の放射線化学療法の標準治療が供与される。EGFR野生型腫瘍の患者と比較して、放射線化学療法後の無増悪生存期間中央値(PFS)は、同様か又は低い。しかしこの中で、局所領域の制御は優れており、遠隔制御は劣っている(非特許文献9)。全生存期間中央値は、一般に、EGFR変異陽性腫瘍の患者の方が長く、その理由は、一部には、疾患進行時にEGFR-TKIを投与するからである可能性がある。放射線化学療法後の標準治療は観察である。EGFR変異陽性NSCLCの患者は、疾患進行後にはEGFR-TKIを受けるのが当然であろう。
【0008】
根治的放射線化学療法は根治目的の治療として供与されるが、残念ながら患者の大多数は再燃する。したがって、切除不能なステージIIIのNSCLCの患者にとって、高い医療ニーズが依然として未対処のままである。
【0009】
以前の幾つかの臨床試験は、第一世代EGFR-TKI、例えば、エルロチニブ、ゲフィチニブ及びアファチニブなどを、ステージIIIのNSCLCの治療のために使用することについて調査しているが、その結果は実に様々である。これらの試験は一般に小規模であり、ベースライン時の疾患特性、以前に使用された放射線化学療法レジメン、EGFR-TKI治療のタイミング、及び手術などの追加の治療戦略が許容されるかどうかについて著しく異なっている(非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13、非特許文献14、及び非特許文献15)。
【0010】
EGFR変異陽性NSCLCの患者における放射線化学療法の転帰を調査した第III相試験は報告されたものがない。現行の国際的ガイドラインは、ステージIIIの切除不能なEGFR変異陽性NSCLCの管理において、EGFR-TKIに役目はないことを示している。これらの患者の予後不良を考慮すると、この状態の患者には代替の治療選択肢が明らかに必要である。発明者らは、そのような患者に、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後にオシメルチニブを使用すると、予後の改善、例えば無増悪生存期間(PFS)の改善、又は奏効期間(DoR)の改善、又は全生存期間(OS)の改善のうち、1つ又は複数における改善の結果になり得ることを発見した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Ann.Oncol.[2014],vol.25(Suppl.3),27-39
【非特許文献2】Kantar Health Cancer MPact 2016
【非特許文献3】J.Thorac.Oncol.[2010],29-33
【非特許文献4】Lancet Oncol.[2015],vol.16(2),187-199
【非特許文献5】J.Clin.Oncol.[2016],vol.34(9),953-962
【非特許文献6】Ann.Oncol.[2017],vol.28(4),777-783
【非特許文献7】J.Clin.Oncol.[2015],vol.33(24),2660-2666
【非特許文献8】Ann.Oncol.[2015],vol.26(6),1134-1142
【非特許文献9】J.Radiat.Res.[2016],vol.57(5),449-459
【非特許文献10】J Clin Oncol[2008],vol.26(15),2450-2456
【非特許文献11】J Thorac Oncol[2010]vol.5(9),1382-1390
【非特許文献12】Int J Radiat Oncol Biol Phys[2015],vol.92(2),317-324
【非特許文献13】Int J Radiat Oncol Biol Phys[2016]vol.96(2),E455
【非特許文献14】J Clin Oncol[2017],vol.35(15 Suppl),8531
【非特許文献15】Cancer Res Treat[2017],vol.49(4),981-989
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書は、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に疾患が進行していない、局所進行性の切除不能なEGFR変異陽性NSCLC(ステージIII)の患者の治療に使用するための、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩について記載する。
【0013】
本明細書は、オシメルチニブが、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の完了後にのみ患者に投与される、上記のような治療についてさらに記載する。
【0014】
本明細書は、治療をすると、無増悪生存期間(PFS)の改善、奏効期間(DoR)の改善、又は全生存期間(OS)の改善のうち1つ又は複数の改善の結果になる、上記のような治療についてさらに記載する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の実施形態では、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に疾患が進行していない、局所進行性の切除不能なEGFR変異陽性NSCLC(ステージIII)の患者の治療に使用するための、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0016】
さらなる実施形態では、ヒト患者において局所進行性の切除不能なEGFR変異陽性NSCLC(ステージIII)を治療する方法であって、当該方法は、当該患者にオシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与するステップを含み、当該疾患が、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に進行していない、方法が提供される。
【0017】
さらなる実施形態では、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に疾患が進行していない、局所進行性の切除不能なEGFR変異陽性NSCLC(ステージIII)の患者の治療のための医薬品の製造におけるオシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩の使用が提供される。
【0018】
本明細書で使用する場合、ある任意の数値について言う場合の「約」という用語は、その値の±10%内を意味する。
【0019】
局所進行性の(ステージIII)切除不能なNSCLC
局所進行性の(ステージIII)NSCLCにより、広範な予後をもつ患者の多様な要素を有する群ができる(例えば、欧州臨床腫瘍学会(European Society of Medical Oncology)の局所進行性のステージIIIの非小細胞肺がんに関するガイドライン(Annals of Oncology[2015],vol.26,1573-1588,2015)、及び国際肺がん学会(International Association for the Study of Lung Cancer:IASLC)/国際対がん連合(Union for International Cancer Control)の原発腫瘍/所属リンパ節/遠隔転移(TNM)ステージ分類第8版(J.Thorac.Oncol.[2016],vol.11,39-51)を参照)。その範囲の一端では、T3及びN1の疾患の患者は、一般に切除可能である(即ち、目に見える腫瘍は手術で除去することができる)と考えられる。その範囲の対極の端では、T4疾患、即ち、生命中枢構造(横隔膜、縦隔、心臓、大血管、気管、反回神経、イオソファガス(eosophagus)、椎体、及び気管分岐部)に浸潤する疾患の患者、及び/又は同側縦隔リンパ節転移(N2)、同側遠隔リンパ節の疾患、又は対側リンパ節転移(N3)の患者は、一般に切除不能であると考えられる。Tステージとリンパ節の状態との様々な組合せによって、疾患がステージIIIA、IIIB又はIIIC(順に転帰不良の度合が増す)と分類されるかどうかが決定される。ある患者の局所進行性のNSCLCをステージIIIA、ステージIIIB又はステージIIICと分類する方法、及びある患者の局所進行性のNSCLCを切除可能又は切除不能と評価する方法は、当業者に知られているであろう。
【0020】
したがって、一実施形態では、局所進行性の切除不能なNSCLCは、放射線化学療法によって治癒可能であると考えられる切除不能なNSCLCを含む。
【0021】
さらなる実施形態では、局所進行性の切除不能なNSCLCは、局所進行性の非転移性NSCLCを含む。
【0022】
さらなる実施形態では、局所進行性の切除不能なNSCLCは、ステージIIICの切除不能なNSCLCを含む。
【0023】
さらなる実施形態では、局所進行性の切除不能なNSCLCは、ステージIIIBの切除不能なNSCLCを含む。
【0024】
さらなる実施形態では、局所進行性の切除不能なNSCLCは、ステージIIIAの切除不能なNSCLCを含む。
【0025】
さらなる実施形態では、局所進行性の切除不能なNSCLCは、ステージIIIB及びステージIIICの切除不能なNSCLCを含む。
【0026】
EGFR変異陽性NSCLC及び診断法
2004年に、EGFRのエクソン18~21における活性化変異が、NSCLCのEGFR-TKI療法に対する応答と相関することが報告された(Science[2004],vol.304,1497-1500;New England Journal of Medicine[2004],vol.350,2129-2139)。これらの変異は、米国及び欧州ではNSCLCの患者のおよそ10~16%に、アジアではNSCLCの患者のおよそ30~50%に発生していると推定される。最も重要なEGFR活性化変異のうちの2つは、エクソン19の欠失及びエクソン21のミスセンス変異である。エクソン19の欠失は既知のEGFR変異のおよそ45%を占める。3~7アミノ酸の欠失をもたらす11の異なる変異がエクソン19に検出されており、全てが、均一に欠失したアミノ酸747~749に対応するコドンに集中している。最も重要なエクソン19の欠失はE746~A750である。エクソン21のミスセンス変異は既知のEGFR変異のおよそ39~45%を占め、そのうち置換変異L858Rは、エクソン21の全ての変異のおよそ39%を占める(J.Thorac.Oncol.[2010],1551-1558)。当業者はEGFR-TKI療法に対する改善された応答に相関するEGFRにおける変異を承知している。
【0027】
したがって、一実施形態では、EGFR変異陽性NSCLCは、EGFRにおける活性化変異を含む。さらなる実施形態では、EGFRにおける活性化変異は、エクソン18~21における活性化変異を含む。さらなる実施形態では、EGFRにおける活性化変異は、エクソン19の欠失又はエクソン21のミスセンス変異を含む。さらなる実施形態では、EGFRにおける活性化変異は、エクソン19の欠失又はL858R置換変異を含む。
【0028】
EGFRの活性化変異を検出する多くの方法があり、それについて当業者は承知している。これらの方法は、腫瘍組織及び血漿の両方に基づく各診断法を含む。一般に、EGFRの変異状況は、最初に、患者に由来する腫瘍組織生検試料を使用して評価される。腫瘍試料が入手不可能である場合、又は腫瘍試料が陰性である場合、EGFR変異状況は、血漿試料を使用して評価される。EGFR活性化変異を検出するため、特にエクソン19の欠失又はL858R置換変異を検出するために適した診断法の特定の例は、Cobas(商標)EGFR Mutation Test v2(Roche Molecular System)である。
【0029】
したがって、一実施形態では、EGFR変異陽性NSCLCは、EGFRにおける活性化変異(エクソン18~21における活性化変異、例えばエクソン19の欠失又はエクソン21のミスセンス変異、例えばエクソン19の欠失又はL858R置換変異など)を含み、患者のEGFR変異状況は、適切な診断法を使用して判断されている。さらなる実施形態では、EGFR変異状況は、腫瘍組織試料を使用して判断されている。さらなる実施形態では、EGFR変異状況は、血漿試料を使用して判断されている。さらなる実施形態では、診断法には、Cobas(商標)EGFR Mutation Test(v1又はv2)が使用される。
【0030】
根治的白金製剤ベースの放射線化学療法
局所進行性の切除不能なNSCLC(ステージIII)の患者に対する現在の標準治療は、根治的放射線化学療法(CRT)、即ち対症療法的目的ではなく根治目的でのCRTの使用、特に根治的白金製剤ベースの放射線化学療法である。
【0031】
したがって、一実施形態では、患者には、疾患が放射線化学療法によって治癒可能であると考えられる、切除不能なNSCLCの患者が含まれる。
【0032】
CRTにおいて投与することができる最大放射線量は、腫瘍体積を標的し、健常組織への曝露、特に正常な健常器官への曝露を最小にする能力に依存する。放射線治療における改善、例えば、三次元原体照射設計、四次元設計CTスキャン、強度変調放射線療法(IMRT)及び画像誘導放射線療法(IGRT)の各技術の導入などは、腫瘍体積の標的化を改善し、それにより、放射線投与量を高くすることを可能にした。今では約100Gyまでの総放射線量を安全に投与することが可能である(Curr.Opin.Oncol.[2011],vol.23,140-149)。当業者はある任意のNSCLCの患者向けの適切な総放射線量、及び適切な投与頻度を承知している。
【0033】
複数の異なる化学療法薬剤が白金製剤ベースのCRTでの使用に適している。標準治療は、白金製剤との2剤併用化学療法を供与することであり、白金系薬剤(シスプラチン又はカルボプラチンなど)が、第2の又はさらなる化学療法薬剤と組み合わされて投与される。第2の又はさらなる化学療法薬剤は、非白金系(エトポシド、ビノレルビン、ペメトレキセド、タキサン(パクリタキセル又はドセタキセルなど)、ビンブラスチン、ドキソルビシン又はゲムシタビンなど)とすることができる。当業者は、ある任意のステージIIIの切除不能なNSCLCの患者に対する適切な化学療法レジメンを承知している。
【0034】
CRTにおける放射線治療及び化学療法治療の順序には複数の選択肢がある。治療は逐次的に行うことができ、その場合、CRTは2つの別々の相、即ち化学療法が投与される第1の相、続いて放射線療法が投与される第2の相にわたって行われる(逐次放射線化学療法又はSCRT)。治療はまた同時に行うこともでき、その場合、単一の相の期間に放射線療法と化学療法の両方が同時に(例えば同時(同日)投与により)投与される(同時放射線化学療法又はCCRT)。このような同時治療はまた、以下の追加の相を含んでもよい。(i)同時相の前に、導入相において化学療法がさらに投与される、若しくは(ii)同時相の後に、地固め相において化学療法がさらに投与される、又は(iii)同時相の前後両方に、導入相と地固め相の両方において化学療法がさらに投与される。CCRTは、パフォーマンスステータスが良く、併存疾患が最小である、より若年の患者に対する標準治療と考えられている。SCRTは、一般に、健康度合の劣る患者に対して供与される。上記の治療の各相には、以下でさらに説明するように、さらに多くの個々の治療サイクルのうちの1つを含めることができる。
【0035】
化学療法治療及び放射線治療の種類、並びに化学療法治療と放射線治療の順序は、ある患者のEGFR-TKI治療に対する応答の仕方における重要な要素となり得る。
【0036】
したがって、一実施形態では、放射線化学療法は、同時放射線化学療法(CCRT)を含む。
【0037】
さらなる実施形態では、放射線化学療法は、逐次放射線化学療法(SCRT)を含む。
【0038】
さらなる実施形態では、最終化学療法サイクルは、放射線の最終投与の前に、又はそれと同時に終了する。
【0039】
さらなる実施形態では、放射線化学療法は、導入相を含む。
【0040】
さらなる実施形態では、放射線化学療法は、地固め相を含む。
【0041】
さらなる実施形態では、同時放射線化学療法は、(i)化学療法が放射線と同時に投与される(例えば同時(同日)投与)、少なくとも2治療サイクルを含む治療期間、又は(ii)化学療法が放射線と同時に投与される(例えば(同日)投与)、少なくとも5週用量の放射線化学セルパイ(therpay)を含む治療期間を含む。
【0042】
さらなる実施形態では、逐次放射線化学療法は、放射線での治療の前に少なくとも2治療サイクルの化学療法治療を含む。
【0043】
さらなる実施形態では、放射線化学療法の一部として患者に投与される総放射線量は、約100Gy以下である。さらなる実施形態では、患者に投与される総放射線量は、約90Gy以下である。さらなる実施形態では、患者に投与される総放射線量は、約80Gy以下である。さらなる実施形態では、患者に投与される総放射線量は、約70Gy以下である。さらなる実施形態では、患者に投与される総放射線量は、約60Gy以下である。
【0044】
一実施形態では、患者に投与される白金製剤ベースの化学療法は、単一の白金系薬剤(シスプラチン又はカルボプラチンなど)を含む。
【0045】
別の実施形態では、白金製剤ベースの化学療法は、白金製剤との2剤併用化学療法を含む。
【0046】
別の実施形態では、2剤併用化学療法は、シスプラチンと、エトポシド、ビノレルビン、ビンブラスチン、ペメトレキセド、タキサン(パクリタキセル又はドセタキセルなど)、又はゲムシタビンから選択される第2の化学療法とを含む。さらなる実施形態では、2剤併用化学療法は、シスプラチンと、エトポシド、ビノレルビン、ビンブラスチン、ペメトレキセド、又はタキサン(パクリタキセル又はドセタキセルなど)から選択される第2の化学療法とを含む。さらなる実施形態では、2剤併用化学療法は、シスプラチン+エトポシド、又はシスプラチン+ビノレルビン、又はシスプラチン+ビンブラスチン、又はシスプラチン+ペメトレキセド、又はシスプラチン+タキサン(シスプラチン+パクリタキセル、又はシスプラチン+ドセタキセルなど)、又はシスプラチン+ゲムシタビンを含む。
【0047】
別の実施形態では、2剤併用化学療法は、カルボプラチンと、エトポシド、ビノレルビン、ビンブラスチン、ペメトレキセド、タキサン(パクリタキセル又はドセタキセルなど)、又はゲムシタビンから選択される第2の化学療法とを含む。さらなる実施形態では、2剤併用化学療法は、カルボプラチンと、エトポシド、ビノレルビン、ビンブラスチン、ペメトレキセド、又はタキサン(パクリタキセル又はドセタキセルなど)から選択される第2の化学療法とを含む。さらなる実施形態では、2剤併用化学療法は、カルボプラチン+エトポシド、又はカルボプラチン+ビノレルビン、又はカルボプラチン+ビンブラスチン、又はカルボプラチン+ペメトレキセド、又はカルボプラチン+タキサン(カルボプラチン+パクリタキセル、又はカルボプラチン+ドセタキセルなど)、又はカルボプラチン+ゲムシタビンを含む。
【0048】
シスプラチンの1日総量は、一般に、体表面積(BSA)を基準に計算され、1日量は、通常、約50mg/m2~約100mg/m2の範囲である。したがって、一実施形態では、シスプラチンの最大1日量は、約150mg/m2以下、例えば約120mg/m2以下、例えば約100mg/m2以下、例えば約90mg/m2以下、例えば約80mg/m2以下、例えば約70mg/m2以下、例えば約60mg/m2以下、例えば約50mg/m2以下である。
【0049】
シスプラチンを用いるCRTを受ける患者は、一般に、シスプラチンを毎日投与されるわけではなく、シスプラチンは、一般に、治療サイクルの中で投与される。一実施形態では、治療サイクルは、42日以下、例えば35日以下、例えば28日以下、例えば21日以下である。一実施形態では、シスプラチンは、各治療サイクルの1日目に投与される。一実施形態では、シスプラチンは、21日にわたる治療サイクルの1日目にのみ投与される。一実施形態では、シスプラチンは、28日にわたる治療サイクルの1日目にのみ投与される。一実施形態では、シスプラチンは、28日にわたる治療サイクルの1日目及び8日目に投与される。一実施形態では、シスプラチンは、35日にわたる治療サイクルの1日目及び29日目に投与される。一実施形態では、シスプラチンは、42日にわたる治療サイクルの1日目、8日目、29日目及び36日目に投与される。
【0050】
カルボプラチンの1日総量は、一般に、ある患者に対して、当業者に知られている式(カルバート式など)を使用して、曲線下面積(AUC)を基準に計算される。典型的な1日量は、AUC2~AUC6の範囲である。一実施形態では、カルボプラチンの最大1日量は、AUC6以下、例えばAUC5以下、例えばAUC4以下、例えばAUC3以下、例えばAUC2以下である。
【0051】
カルボプラチンを用いるCRTを受ける患者は、一般に、カルボプラチンを毎日投与されるわけではなく、カルボプラチンは、一般に、治療サイクルの中で投与される。一実施形態では、治療サイクルは、21日以下、例えば14日以下、例えば7日以下である。一実施形態では、シスプラチンは、各治療サイクルの1日目に投与される。一実施形態では、シスプラチンは、7日にわたる治療サイクルの1日目にのみ投与される。一実施形態では、シスプラチンは、21日にわたる治療サイクルの1日目にのみ投与される。
【0052】
非白金系化学療法薬剤の1日総量は、一般に、体表面積(BSA)を基準に計算される。
【0053】
一実施形態では、エトポシドの1日総量は、約50mg/m2~約100mg/m2、例えば約100mg/m2以下、例えば約90mg/m2以下、例えば約80mg/m2以下、例えば約70mg/m2以下、例えば約60mg/m2以下、例えば約50mg/m2以下である。さらなる実施形態では、エトポシドは、21日にわたる治療サイクルの1日目、2日目及び3日目に投与される。さらなる実施形態では、エトポシドは、42日にわたる治療サイクルの1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、29日目、20日目、31日目、32日目及び33日目に投与される。
【0054】
一実施形態では、ビンブラスチンの1日総量は、約3mg/m2~約20mg/m2、例えば約20mg/m2以下、例えば約15mg/m2以下、例えば約10mg/m2以下、例えば約5mg/m2以下、例えば約4mg/m2以下、例えば約3mg/m2以下である。さらなる実施形態では、ビンブラスチンは、5週間にわたる治療サイクルの中で、週1回、例えば1週当たり1回投与される。
【0055】
一実施形態では、ペメトレキセドの1日総量は、約500mg/m2以下、例えば約500mg/m2である。さらなる実施形態では、ペメトレキセドは、21日にわたる治療サイクルの1日目に投与される。
【0056】
一実施形態では、パクリタキセルの1日総量は、約45mg/m2~約200mg/m2、例えば約200mg/m2以下、例えば約150mg/m2以下、例えば約100mg/m2以下、例えば約50mg/m2以下、例えば約45mg/m2以下である。さらなる実施形態では、パクリタキセルは、21日にわたる治療サイクルの中で、週1回、例えば1週当たり1回投与される。さらなる実施形態では、パクリタキセルは、21日にわたる治療サイクルの1日目にのみ投与される。
【0057】
一実施形態では、ビノレルビンの1日総量は、約25mg/m2~約30mg/m2、例えば約30mg/m2以下、例えば約25mg/m2以下である。さらなる実施形態では、ビノレルビンは、各治療サイクルの1日目に投与される。さらなる実施形態では、ビノレルビンは、21日にわたる治療サイクルの1日目及び8日目に投与される。さらなる実施形態では、ビノレルビンは、28日にわたる治療サイクルの1日目、8日目、15日目及び22日目に投与される。
【0058】
一実施形態では、ゲムシタビンの1日総量は、約1000mg/m2~約1500mg/m2、例えば約1500mg/m2以下、例えば約1250mg/m2以下、例えば約1000mg/m2以下である。さらなる実施形態では、ゲムシタビンは、各治療サイクルの1日目に投与される。さらなる実施形態では、ゲムシタビンは、21日にわたる治療サイクルの1日目及び8日目に投与される。
【0059】
一実施形態では、ドセタキセルの1日総量は、約75mg/m2以下、例えば約75mg/m2である。さらなる実施形態では、ドセタキセルは、各治療サイクルの1日目に投与される。さらなる実施形態では、ドセタキセルは、21日にわたる治療サイクルの1日目に投与される。
【0060】
CRTを受ける患者は、1又は複数の治療サイクルを受けてもよい。したがって、一実施形態では、白金製剤ベースの化学療法は、6以下の治療サイクル、又は5以下の治療サイクル、又は4以下の治療サイクル、又は3以下の治療サイクル、又は2以下の治療サイクル、又は単一の治療サイクルで投与されてもよい。
【0061】
一実施形態では、CCRTレジメンは以下から選択される。
a)1日目、8日目、29日目及び36日目に1日総量約50mg/m2のシスプラチンを用いる42日の治療サイクル;1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、29日目、30日目、31日目、32日目及び33日目に1日総量約50mg/m2のエトポシド;及び同時放射線療法;
b)1日目及び29日目に1日総量約100mg/m2のシスプラチンを用いる35日の治療サイクル;1日総量約5mg/m2のビンブラスチンを毎週;及び同時放射線療法;
c)1日目に1日総量AUC5のカルボプラチンを用いる21日の治療サイクル;1日目に1日総量約500mg/m2のペメトレキセド;及び同時放射線療法;並びに治療サイクルの総数は4サイクル以下とすることができる;
d)1日目に1日総量約75mg/m2のシスプラチンを用いる21日の治療サイクル;1日目に1日総量約500mg/m2のペメトレキセド;及び同時放射線療法;治療サイクルの総数は3サイクル以下とすることができる;並びにペメトレキセド単独を任意選択により約500mg/m2でさらに4サイクル投与することができる;
e)1週総量AUC2のカルボプラチンを用いる7日の治療サイクル;1週総量約45~50mg/m2のパクリタキセル;及び同時放射線療法;並びに任意選択により1週総量AUC6のカルボプラチン及び1週総量約200mg/m2のパクリタキセルを用いてのさらなる2サイクル。
【0062】
一実施形態では、SCRTレジメンは以下から選択される。
a)1日目及び8日目に1日総量約50mg/m2のシスプラチンを用いる28日の治療サイクル;1日目、8日目、15日目及び22日目に1日総量約25mg/m2のビノレルビン;治療サイクルの総数は4サイクル以下とすることができ;及び次に放射線療法を行う;
b)1日目に1日総量約100mg/m2のシスプラチンを用いる28日の治療サイクル;1日目、8日目、15日目及び22日目に1日総量約30mg/m2のビノレルビン;治療サイクルの総数は4サイクル以下とすることができ;及び次に放射線療法を行う;
c)1日目に1日総量約75~80mg/m2のシスプラチンを用いる21日の治療サイクル;1日目及び8日目に1日総量約25~30mg/m2のビノレルビン;治療サイクルの総数は4サイクル以下とすることができ;及び次に放射線療法を行う;
d)1日目に1日総量約100mg/m2のシスプラチンを用いる28日の治療サイクル;1日目、2日目及び3日目に1日総量約100mg/m2のエトポシド;治療サイクルの総数は4サイクル以下とすることができ;及び次に放射線療法を行う;
e)1日目に1日総量約75mg/m2のシスプラチンを用いる21日の治療サイクル;1日目及び8日目に1日総量約1250mg/m2のゲムシタビン;治療サイクルの総数は4サイクル以下とすることができ;及び次に放射線療法を行う;
f)1日目に1日総量約75mg/m2のシスプラチンを用いる21日の治療サイクル;1日目に1日総量約75mg/m2のドセタキセル;治療サイクルの総数は4サイクル以下とすることができ;及び次に放射線療法を行う;
g)1日目に1日総量約75mg/m2のシスプラチンを用いる21日の治療サイクル;1日目に1日総量約500mg/m2のペメトレキセド;治療サイクルの総数は4サイクル以下とすることができ;及び次に放射線療法を行う;
h)1日目に1日総量AUC6のカルボプラチンを用いる21日の治療サイクル;1日目に1日総量約200mg/m2のパクリタキセル;治療サイクルの総数は4サイクル以下とすることができ;及び次に放射線療法を行う;
i)1日目に1日総量AUC5のカルボプラチンを用いる21日の治療サイクル;1日目及び8日目に1日総量約1000mg/m2のゲムシタビン;治療サイクルの総数は4サイクル以下とすることができ;及び次に放射線療法を行う;並びに
j)1日目に1日総量AUC5のカルボプラチンを用いる21日の治療サイクル;1日目に1日総量約500mg/m2のペメトレキセド;治療サイクルの総数は4サイクル以下とすることができ;及び次に放射線療法を行う。
【0063】
オシメルチニブ及びその医薬組成物
オシメルチニブは次の化学構造を有する。
【化1】
【0064】
オシメルチニブの遊離塩基は、化学名:N-(2-{2-ジメチルアミノエチル-メチルアミノ}-4-メトキシ-5-{[4-(1-メチルインドール-3-イル)ピリミジン-2-イル]アミノ}フェニル)プロパ-2-エンアミドで知られている。オシメルチニブは、国際公開第2013/014448号パンフレットに記載されている。オシメルチニブは、別名AZD9291である。
【0065】
オシメルチニブは、メシル酸塩:N-(2-{2-ジメチルアミノエチル-メチルアミノ}-4-メトキシ-5-{[4-(1-メチルインドール-3-イル)ピリミジン-2-イル]アミノ}フェニル)プロパ-2-エンアミドメシル酸塩の形態で見出され得る。オシメルチニブメシル酸塩は、別名TAGRISSO(商標)である。
【0066】
オシメルチニブメシル酸塩は、経口1日1回錠剤製剤として、80mg(遊離塩基として表示、オシメルチニブメシル酸塩95.4mgに等しい)の用量で、転移性EGFR T790M変異陽性NSCLCの患者の治療用に、現在承認されている。用量変更が必要であれば、40mg経口1日1回錠剤製剤(遊離塩基として表示、オシメルチニブメシル酸塩47.7mgに等しい)が利用可能である。錠剤のコアは、医薬賦形剤(マンニトール及び微結晶セルロースなど)、崩壊剤(低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなど)及び滑沢剤(フマル酸ステアリルナトリウムなど)を含む。錠剤製剤は、国際公開第2015/101791号パンフレットに記載されている。
【0067】
したがって、一実施形態では、オシメルチニブは、メシル酸塩である、N-(2-{2-ジメチルアミノエチル-メチルアミノ}-4-メトキシ-5-{[4-(1-メチルインドール-3-イル)ピリミジン-2-イル]アミノ}フェニル)プロパ-2-エンアミドメシル酸塩の形態である。
【0068】
さらなる実施形態では、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩は、1日1回投与される。さらなる実施形態では、オシメルチニブメシル酸塩は1日1回投与される。
【0069】
さらなる実施形態では、オシメルチニブの1日総量は約80mgである。さらなる実施形態では、オシメルチニブメシル酸塩の1日総量は約95.4mgである。
【0070】
別の実施形態では、オシメルチニブの1日総量は約40mgである。さらなる実施形態では、オシメルチニブメシル酸塩の1日総量は約47.7mgである。
【0071】
さらなる実施形態では、オシメルチニブは、1種又は複数種の薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物の形態で投与される。さらなる実施形態では、組成物は、1種又は複数種の医薬賦形剤(マンニトール及び微結晶セルロースなど)、1種又は複数種の医薬用崩壊剤(低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなど)又は1種又は複数種の医薬用滑沢剤(フマル酸ステアリルナトリウムなど)を含む。
【0072】
さらなる実施形態では、組成物は錠剤の形態であり、錠剤のコアは、(a)2~70部のオシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩、(b)5~96部の2種以上の医薬賦形剤、(c)2~15部の1種又は複数種の医薬用崩壊剤、及び(d)0.5~3部の1種又は複数種の医薬用滑沢剤を含み、全ての部は重量によるものであり、部の合計は(a)+(b)+(c)+(d)=100である。
【0073】
さらなる実施形態では、組成物は錠剤の形態であり、錠剤のコアは、(a)7~25部のオシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩、(b)微結晶セルロース及びマンニトールを含む、55~85部の2種以上の医薬賦形剤、(c)低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含む、2~8部の医薬用崩壊剤、(d)フマル酸ステアリルナトリウムを含む1.5~2.5部の医薬用滑沢剤を含み、全ての部は重量によるものであり、部の合計は(a)+(b)+(c)+(d)=100である。
【0074】
さらなる実施形態では、組成物は錠剤の形態であり、錠剤のコアは、(a)約19部のオシメルチニブメシル酸塩、(b)約59部のマンニトール、(c)約15部の微結晶セルロース、(d)約5部の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、及び(e)約2部のフマル酸ステアリルナトリウムを含み、全ての部は重量によるものであり、部の合計は(a)+(b)+(c)+(d)+(e)=100である。
【0075】
投与レジメン
オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩は、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に疾患が進行していない、局所進行性の切除不能なEGFR変異陽性NSCLC(ステージIII)の患者に投与されることになる。進行は、RECIST基準に従って評価することができる。当業者は、RECIST基準及び放射線化学療法後の疾患進行のエビデンスを評価するのに適した方法を承知している(Eur.J.Cancer[2009],vol.45(2),228-247)。
【0076】
放射線化学療法とオシメルチニブを用いる治療の順序は、ある患者の応答の仕方における重要な要素となり得る。特に、オシメルチニブを患者に、放射線化学療法が完了した後に投与すること、及びそのような放射線化学療法の前又はそれと同時には、オシメルチニブの使用を回避することが重要であり得る。
【0077】
したがって、一実施形態では、オシメルチニブは、患者に、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の完了後に投与される。別の実施形態では、オシメルチニブは、患者に、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の完了前には投与されない。別の実施形態では、オシメルチニブは、患者に、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法と同時には投与されない。別の実施形態では、オシメルチニブは、患者に、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の前にもそれと同時にも投与されない。
【0078】
さらなる実施形態では、患者は、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法後に完全奏効となる。さらなる実施形態では、患者は、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法後に部分奏効となる。さらなる実施形態では、患者は、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法後に安定疾患を有する。
【0079】
放射線化学療法の完了とオシメルチニブの初回投与との間にはあまり期間を置かないのが好ましい場合がある。
【0080】
したがって、一実施形態では、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩の初回投与は、放射線化学療法の完了後、12週以内に、例えば10週以内に、例えば8週以内に、例えば6週以内に、例えば4週以内に、例えば2週以内に、例えば1週以内に投与される。
【0081】
さらなる実施形態では、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩は、患者に、疾患進行の時まで投与される。別の実施形態では、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩は、患者に、放射線化学療法の完了後、5年間まで、例えば4年まで、例えば3年まで、例えば30カ月まで、例えば24カ月まで、例えば18カ月まで、例えば12カ月まで投与される。
【0082】
本明細書によるオシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与される、局所進行性の切除不能なNSCLC(ステージIII)の患者は、現存の標準治療と比較した際の予後の改善により、利益を得る場合がある。特に、そのような患者は、無増悪生存期間(PFS)の改善、客観的奏効率の増加、奏効期間(DoR)の改善、又は全生存期間(OS)の改善のうち1つ又は複数により、利益を得る場合がある。
【0083】
したがって、一実施形態では、患者は、少なくとも12カ月、例えば少なくとも14カ月、例えば少なくとも16カ月、例えば少なくとも18カ月、例えば少なくとも20カ月、例えば少なくとも22カ月、例えば少なくとも24カ月、例えば少なくとも26カ月、例えば少なくとも28カ月、例えば少なくとも30カ月、例えば少なくとも32カ月、例えば少なくとも34カ月、例えば少なくとも36カ月の無増悪生存期間により、利益を得る。さらなる実施形態では、患者は、少なくとも15カ月、例えば少なくとも20カ月、例えば少なくとも25カ月、例えば少なくとも30カ月、例えば少なくとも35カ月の奏効期間により、利益を得る。さらなる実施形態では、患者は、少なくとも30カ月、例えば少なくとも35カ月、例えば少なくとも40カ月、例えば少なくとも45カ月、例えば少なくとも50カ月、例えば少なくとも55カ月、例えば少なくとも60カ月の全生存期間により、利益を得る。
【0084】
本明細書によるオシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与される、局所進行性の切除不能なNSCLC(ステージIII)の患者は、中枢神経系転移、特に脳転移の発生及び/又は進行において、現存の標準治療と比較した際の予後の改善により、特に利益を得る場合がある。
【0085】
したがって、一実施形態では、本明細書によるオシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩を用いる治療に選択される患者は、中枢神経系転移、例えば脳転移を発症するリスクがある。
【0086】
さらなる実施形態では、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩は、患者の中枢神経系転移、例えば脳転移の発生の低減に使用するために提供される。
【0087】
さらなる実施形態では、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩は、中枢神経系転移、例えば脳転移を発症するリスクがある患者の、無増悪生存期間(PFS)、奏効期間(DoR)、又は全生存期間(OS)のうち1つ又は複数の改善に使用するために提供される。
【0088】
さらなる実施形態では、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩は、中枢神経系転移、例えば脳転移を発症している患者の、無増悪生存期間(PFS)、奏効期間(DoR)、又は全生存期間(OS)のうち1つ又は複数の改善に使用するために提供される。
【0089】
さらなる実施形態では、患者は、少なくとも12カ月、例えば少なくとも14カ月、例えば少なくとも16カ月、例えば少なくとも18カ月、例えば少なくとも20カ月、例えば少なくとも22カ月、例えば少なくとも24カ月、例えば少なくとも26カ月、例えば少なくとも28カ月、例えば少なくとも30カ月、例えば少なくとも32カ月、例えば少なくとも34カ月、例えば少なくとも36カ月の、中枢神経系の無増悪生存期間により、利益を得る。
【0090】
さらなる実施形態
一実施形態では、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に疾患が進行していない、局所進行性の切除不能なEGFR変異陽性NSCLC(ステージIII)の患者の治療に使用するための、1日1回投与される、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0091】
さらなる実施形態では、ヒト患者において局所進行性の切除不能なEGFR変異陽性NSCLC(ステージIII)を治療する方法であって、当該方法は、当該患者にオシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩を1日1回投与するステップを含み、当該疾患が、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に進行していない、方法が提供される。
【0092】
さらなる実施形態では、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に疾患が進行していない、局所進行性の切除不能なEGFR変異陽性NSCLC(ステージIII)の患者の治療のための医薬品の製造におけるオシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩の使用であって、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩が1日1回投与される、使用が提供される。
【0093】
一実施形態では、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に疾患が進行していない、局所進行性の切除不能なEGFR変異陽性NSCLC(ステージIII)の患者の治療に使用するためのオシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩であって、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩が1日1回投与され、白金製剤ベースの放射線化学療法が白金製剤との2剤併用化学療法を含む、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0094】
さらなる実施形態では、ヒト患者において局所進行性の切除不能なEGFR変異陽性NSCLC(ステージIII)を治療する方法であって、当該方法は、当該患者にオシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩を1日1回投与するステップを含み、当該疾患が、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に進行しておらず、白金製剤ベースの放射線化学療法が、白金製剤との2剤併用化学療法を含む、方法が提供される。
【0095】
さらなる実施形態では、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に疾患が進行していない、局所進行性の切除不能なEGFR変異陽性NSCLC(ステージIII)の患者の治療のための医薬品の製造におけるオシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩の使用であって、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩が1日1回投与され、白金製剤ベースの放射線化学療法が、白金製剤との2剤併用化学療法を含む、使用が提供される。
【0096】
一実施形態では、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に疾患が進行していない、局所進行性の切除不能なEGFR変異陽性NSCLC(ステージIII)の患者の治療に使用するためのオシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩であって、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩が1日1回投与され、放射線化学療法の一部として当該患者に投与される総放射線量が約100Gy以下である、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0097】
さらなる実施形態では、ヒト患者において局所進行性の切除不能なEGFR変異陽性NSCLC(ステージIII)を治療する方法であって、当該方法は、当該患者にオシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩を1日1回投与するステップを含み、当該疾患が、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に進行しておらず、放射線化学療法の一部として当該患者に投与される総放射線量が約100Gy以下である、方法が提供される。
【0098】
さらなる実施形態では、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に疾患が進行していない、局所進行性の切除不能なEGFR変異陽性NSCLC(ステージIII)の患者の治療のための医薬品の製造におけるオシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩の使用であって、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩が1日1回投与され、放射線化学療法の一部として当該患者に投与される総放射線量が約100Gy以下である、使用が提供される。
【0099】
一実施形態では、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に疾患が進行していない、局所進行性の切除不能なEGFR変異陽性NSCLC(ステージIII)の患者の治療に使用するためのオシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩であって、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩が1日1回投与され、EGFR変異陽性NSCLCが、エクソン19の欠失又はL858R置換変異から選択されるEGFRにおける活性化変異を含む、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0100】
さらなる実施形態では、ヒト患者において局所進行性の切除不能なEGFR変異陽性NSCLC(ステージIII)を治療する方法であって、当該方法は、当該患者にオシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩を1日1回投与するステップを含み、当該疾患が、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に進行しておらず、EGFR変異陽性NSCLCが、エクソン19の欠失又はL858R置換変異から選択されるEGFRにおける活性化変異を含む、方法が提供される。
【0101】
さらなる実施形態では、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に疾患が進行していない、局所進行性の切除不能なEGFR変異陽性NSCLC(ステージIII)の患者の治療のための医薬品の製造におけるオシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩の使用であって、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩が1日1回投与され、EGFR変異陽性NSCLCが、エクソン19の欠失又はL858R置換変異から選択されるEGFRにおける活性化変異を含む、使用が提供される。
【実施例0102】
根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に疾患が進行していない、局所進行性の切除不能なEGFR変異陽性NSCLC(ステージIII)の患者における維持療法としての、オシメルチニブの第III相、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、多施設、国際共同試験
根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に疾患が進行していない、局所進行性の切除不能なEGFR変異陽性NSCLC(ステージIII)の患者におけるオシメルチニブの利点を確認するために以下の試験が行われる。
【0103】
計画された試験施設及び患者数
試験施設は約70。およそ200人の患者がランダム化されることになる(患者は、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に、完全奏効[CR]である、部分奏効[PR]である、又は安定疾患[SD]を有することになる)。
【0104】
試験デザイン
根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に疾患が進行していない、局所進行性の切除不能な上皮増殖因子受容体変異陽性非小細胞肺がん(ステージIII)の患者における維持療法として、プラセボと比較した際の、オシメルチニブの有効性及び安全性を評価する第III相、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、多施設国際共同試験。
【0105】
試験薬、投与量及び投与方式
オシメルチニブ80mg又は対応するプラセボが、経口で、1日1回投与されることになる。
【0106】
【0107】
【0108】
スクリーニング
本試験には、2パートのスクリーニングプロセスを含めることになる。パートIでは、パートIスクリーニング同意書への署名の後に、中央検査所で患者の保管腫瘍試料をEGFR変異状況について試験し、患者の適格性を決定することになる。加えて、EGFR変異を遡及的試験で評価するための血漿試料が採取されることになる。その他のスクリーニング評価はパートIの期間中には実施されない。パート1スクリーニングは、放射線化学療法の前、療法中、又は療法後に行うことができる。組織EGFR変異試験が、Ex19Delの変異又はL858Rの変異について陽性である場合、患者は、放射線化学療法の完了後、及び主要同意書に署名した後に、パートIIのスクリーニングに入り、要件に適格であると確認された場合に、来院1回目評価の履行を開始することになる。
【0109】
臨床検査改善法(Clinical Laboratory Improvement Amendments:CLIA)で認可された検査所(米国の施設につき)、又は認定検査所(米国以外)において実施された、cobas(登録商標)EGFR Mutation Test v2を使用する既存のEGFR変異陽性試験の結果を有する患者は、直接パートIIスクリーニングに入ることができる。
【0110】
標的患者集団
選択基準
男性患者及び女性患者は、少なくとも18歳でなくてはならない。少なくとも20歳である日本の患者。
【0111】
主に非扁平上皮性病態のNSCLCと組織学的に実証されている患者であり、局所進行性の切除不能なNSCLC(ステージIII)(国際肺がん学会(International Association for the Study of Lung Cancer:IASLC)Staging Manual in Thoracic Oncology 2016第8版による)を発症しており、その腫瘍が、組織のcobas(登録商標)EGFR Mutation Test v2(Roche Diagnostics)により検出されるEGFRエクソン19の欠失又はエクソン21(L858R)置換変異を、単独か、又は他のEGFR変異と組み合わせて有している、患者。
【0112】
明白なcT4疾患を除き、リンパ節の状態のN2又はN3は、生検により、気管支内の超音波、縦隔鏡検査、又は胸腔鏡検査により、立証されておくべきである。生検を行わない場合、リンパ節の状態は、全身18F-フルオロ-デオキシグルコース陽電子放出断層撮影(PET)にプラスして、PETに加えての、又はPETと組み合わせての造影コンピュータ断層撮影(CT)で確認しておくべきである。
【0113】
患者は、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の最中又は後に疾患が進行していてはいけない。同時放射線化学療法(CCRT)レジメン及び逐次放射線化学療法(SCRT)の両方は、以下に定義するように許可される。
【0114】
CCRT-患者は、少なくとも2サイクルの白金製剤ベースの化学療法(又は5週用量の白金製剤との2剤併用レジメン)を放射線療法と同時に受け、それらは試験におけるIPの初回投与の前6週間以内に完了していなければならない。CCRTの前の化学療法の投与は許可される。最終化学療法サイクルは、放射線の最終投与の前に、又はそれと同時に終了しなければならない。放射線後の地固め化学療法は許可されないが、CCRT前の化学療法の投与は許可される。
【0115】
SCRT-SCRTは、化学療法の後に放射線療法を行うものと定義され、放射線療法の後に化学療法を行うものではない。患者は、少なくとも2サイクルの白金製剤ベースの化学療法(又は5週用量の白金製剤との2剤併用レジメン)を放射線治療の前に受け、それらは試験におけるIPの初回投与の前6週間以内に完了していなければならない。放射線後の地固め化学療法は許可されない。
【0116】
患者が、少なくとも2サイクルの白金製剤ベースの化学療法(又は5週用量の白金製剤ベースの化学療法)を受け、次に、1サイクルの白金製剤ベースの化学療法又は5週用量未満の白金製剤ベースの化学療法を放射線療法と同時に受ける場合、これはSCRTとみなされることになる。
【0117】
患者が、1サイクルの白金製剤ベースの化学療法(又は5週用量未満の白金製剤ベースの化学療法)を受け、次に、1サイクルの白金製剤ベースの化学療法又は5週用量未満の白金製剤との2剤併用レジメンを放射線療法と同時に受ける場合、これはCCRTともSCRTともみなされず、その患者は適格ではないということになる。
【0118】
白金製剤との2剤併用化学療法レジメンは、局所標準治療レジメンに従い、以下の薬剤:エトポシド、ビンブラスチン、ビノレルビン、タキサン(パクリタキセル又はドセタキセル)、又はペメトレキセドのうち1つを含有していなければならない。ゲムシタビンは、放射線の前に使用される場合は許可されるが、放射線と同時の使用は許可されない。
【0119】
患者の最終化学療法サイクルは、放射線の最終投与の前に、又はそれと同時に終了しなければならない。
【0120】
患者は、放射線化学療法の一部として総放射線量60Gy±10%(54~66Gy)を投与されていなければならない。ランダム化に適格な患者は
-平均肺線量<20Gy及び/又はV20<35%
-平均食道線量<34Gy
-心臓V50≦25%、V30≦50%、及びV45≦35
を有していることが推奨されるが、必須ではない。
【0121】
患者は、登録及びランダム化の際に、世界保健機関(World Health Organization:WHO)のPSが0又は1でなければならない。
【0122】
適切な器官機能
除外基準
患者は、放射線化学療法の前に症候性ILDの既往歴がある。
【0123】
患者は、放射線化学療法の後に症候性間質性肺炎を有する。
【0124】
以前の放射線化学療法により、何らかの未解決の毒性、即ち有害事象共通用語基準(Common Terminology Criteria for Adverse Events:CTCAE)のグレード2超を有する患者。試験薬により増悪することが合理的には予想されない不可逆性の毒性を有する患者は、AstraZenecaの医療モニターと相談後に組み入れられる場合がある(例えば聴力損失)。
【0125】
試験の評価及び患者の追跡調査
ランダム化は放射線の完了から6週間以内に行わなければならず、スクリーニング期間は試験治療の開始28日以内に実施されることになる。ランダム化の後に、患者は、2週目、4週目、及び24週目までは4週毎に、48週目までは8週毎に、その後は試験薬の中止まで12週毎に来院することになる。
【0126】
ランダム化のスケジュールに従って、オシメルチニブ(80mg経口、1日1回)又は対応するプラセボが、1日1回経口投与されることになる。
【0127】
被験者全員が、BICRによって評価される客観的なX線撮影での疾患進行まで、又は治療中止基準に該当するまで、ランダム化試験治療を受け続けるべきである。腫瘍評価は、(i)胸部及び腹部(肝臓及び副腎を含む)の造影コンピュータ断層撮影(CT)を使用して実施されることになる。しかし、被験者がCT造影剤に対して禁忌である場合、非造影CT又はMRIが許容されることになり、及び(ii)脳の造影T1w磁気共鳴画像法(MRI)。しかしながら、ガドリニウム-ジエチレントリアミン五酢酸(Gd-DTPA)系造影剤に対して禁忌である被験者においては、非造影MRIで十分であろう。胸部/腹部のCT及び脳のMRIは、腫瘍撮像来院で毎回実施されることになる。ベースライン評価は、スクリーニング手順の一部である。客観的腫瘍評価は、8週毎に(ランダム化の日を基準として)48週まで、次いでその後は12週毎に、固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors:RECIST)v1.1によって定義され、BICRによって確認される、客観的なX線撮影での疾患進行が発生するまで(試験薬及び/又は後療法を中止する理由は無関係に)行われることになる。臨床的に必要であれば、即ち、疾患進行が疑われる場合には、追加のスキャンが実施されるべきである。予定外の評価が実施される場合、且つ患者の疾患が進行していない場合、その患者の計画どおりの来院時に、あらゆる努力をして後続の評価を実施するべきである。
【0128】
安全性モニタリングには、有害事象の収集、毎回の来院時の、身体検査、バイタルサイン、臨床化学検査、血液学検査、尿検査及びECGの評価が含まれる。左室駆出率(ECHO又はMUGAによる)は、定期的に管理されることになる。
【0129】
患者報告の転帰
患者報告の症状、機能、及び全般的な健康状態/QoLは、試験薬の投与期間中、及び疾患進行後に定期的に評価されることになる。
【0130】
薬物動態学的評価
トラフPK試料は、4週目、12週目及び24週目に採取されることになる。
【0131】
患者の適切な管理のため、治療のランダム化について知ることが必要となる医学的な緊急事態を除いて、治療規約は破られてはならない。さらに、試験責任医師の要請により、BICRによって疾患の進行が確認され次第、その後の患者の管理に必須であるとみなされれば、その患者は盲検を解くことができる。プラセボ群にランダム化された患者については、オシメルチニブ群への公式なクロスオーバーは許可されない。再燃後に患者が受ける治療は、医師が判断することになる。再発後のがんの治療及び手順は記録されることになる。
【0132】
試験療法の中止後、患者は、死亡するまで、又は進行後の転帰の評価(PFS2、TFST、TSST)及び全生存期間の評価の同意を撤回するまで、追跡調査がなされることになる。
試験療法の中止後、患者は、死亡するまで、又は進行後の転帰の評価(PFS2、TFST、TSST)及び全生存期間の評価の同意を撤回するまで、追跡調査がなされることになる。
本願は、下記の態様を包含する。
[態様1]
根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に疾患が進行していない、局所進行性の切除不能なEGFR変異陽性NSCLCの患者の治療に使用するための、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩。
[態様2]
前記切除不能なEGFR変異陽性NSCLCが、放射線化学療法によって治癒可能であると考えられる、態様1に記載の使用のための化合物。
[態様3]
前記放射線化学療法が同時放射線化学療法を含む、態様1又は2に記載の使用のための化合物。
[態様4]
前記放射線化学療法が逐次放射線化学療法を含む、態様1~3のいずれか一つに記載の使用のための化合物。
[態様5]
前記放射線化学療法が白金製剤との2剤併用化学療法を含む、態様1~4のいずれか一つに記載の使用のための化合物。
[態様6]
前記放射線化学療法が、シスプラチン又はカルボプラチンから選択される白金系薬剤を含む、態様1~5のいずれか一つに記載の使用のための化合物。
[態様7]
前記放射線化学療法が、エトポシド、ビノレルビン、ビンブラスチン、ペメトレキセド、パクリタキセル、ドセタキセル、又はゲムシタビンから選択される非白金系薬剤を含む、態様1~6のいずれか一つに記載の使用のための化合物。
[態様8]
前記EGFR変異陽性NSCLCが、エクソン19の欠失又はL858R置換変異から選択されるEGFRにおける活性化変異を含む、態様1~7のいずれか一つに記載の使用のための化合物。
[態様9]
前記オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩が、1日1回投与される、態様1~8のいずれか一つに記載の使用のための化合物。
[態様10]
前記オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩が、前記患者に、前記放射線化学療法の完了前には投与されない、態様1~9のいずれか一つに記載の使用のための化合物。
[態様11]
前記オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩が錠剤形態である、態様1~10のいずれか一つに記載の使用のための化合物。
[態様12]
前記オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩がメシル酸塩の形態である、態様1~11のいずれか一つに記載の使用のための化合物。
[態様13]
ヒト患者において局所進行性のステージIIIの切除不能なEGFR変異陽性NSCLCを治療する方法であって、前記方法は、前記患者にオシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与するステップを含み、疾患が、根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に進行していない、方法。
[態様14]
根治的白金製剤ベースの放射線化学療法の後に疾患が進行していない、局所進行性の切除不能なEGFR変異陽性NSCLCの患者の治療のための医薬品の製造におけるオシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩の使用。