(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116543
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】ヒトトロンビン受容体PAR4に対する結合タンパク質
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230815BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230815BHJP
A61P 7/02 20060101ALN20230815BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20230815BHJP
A61K 48/00 20060101ALN20230815BHJP
A61K 47/51 20170101ALN20230815BHJP
A61K 38/02 20060101ALN20230815BHJP
A61K 49/00 20060101ALN20230815BHJP
A61K 47/68 20170101ALN20230815BHJP
A61K 51/10 20060101ALN20230815BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20230815BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
A61P7/02
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K48/00
A61K47/51
A61K38/02
A61K49/00
A61K47/68
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K51/10 100
A61K51/10 200
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023087663
(22)【出願日】2023-05-29
(62)【分割の表示】P 2020535276の分割
【原出願日】2018-09-11
(31)【優先権主張番号】2017903685
(32)【優先日】2017-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(71)【出願人】
【識別番号】304044531
【氏名又は名称】モナシュ ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハミルトン,ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】スリーマン,マーク
(57)【要約】 (修正有)
【課題】血栓症の治療または防止においてPAR1の標的化における治療プロファイルの改良をもたらすPAR4アンタゴニストを提供する。
【解決手段】抗PAR4組換え抗体もしくは合成抗体もしくはモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であるプロテアーゼ活性化受容体4(PAR4)結合タンパク質であって、トロンビンの存在下で、細胞表面発現ヒトPAR4の切断を50%以上阻害する、前記プロテアーゼ活性化受容体4(PAR4)結合タンパク質である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗PAR4組換え抗体もしくは合成抗体もしくはモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であるプロテアーゼ活性化受容体4(PAR4)結合タンパク質であって、トロンビンの存在下で、細胞表面発現ヒトPAR4の切断を50%以上阻害する、前記プロテアーゼ活性化受容体4(PAR4)結合タンパク質。
【請求項2】
前記トロンビンの存在下で、細胞表面発現PAR4の(i)60%以上の切断、または(ii)70%以上の切断、または(iii)80%以上の切断を阻害する、請求項1に記載のPAR4結合タンパク質。
【請求項3】
前記トロンビンの存在下で、細胞表面発現PAR4の90%以上の切断を阻害する、請求項1または2に記載のPAR4結合タンパク質。
【請求項4】
PAR4のトロンビン切断部位にまたがるエピトープに対し特異的に結合する、請求項1~3のいずれか1項に記載のPAR4結合タンパク質。
【請求項5】
前記エピトープが配列APRGYを含み、前記トロンビン切断部位がRGに対応する、請求項4に記載のPAR4結合タンパク質。
【請求項6】
前記エピトープがILPAPRGYまたはAPRGYPGQVから選択される配列を含むまたは前記配列からなる、請求項4または5に記載のPAR4結合タンパク質。
【請求項7】
前記抗体がヒトPAR4のAla120及び/またはThr120バリアントに結合する、請求項1~6のいずれか1項に記載のPAR4結合タンパク質。
【請求項8】
前記タンパク質が、ヒトPAR1、PAR2、またはPAR3に結合しないかまたは実質的に結合しない、請求項1~7のいずれか1項に記載のPAR4結合タンパク質。
【請求項9】
以下に示される可変重鎖(VH)配列を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のPAR4結合タンパク質。
(配列中、
X
1はVまたはIであり、
X
2はAまたはVであり、
X
3はTまたはAであり、
X
4はLまたはFであり、
X
5はNまたはSであり、
X
6はYまたはDであり、
X
7はSまたはAであり、
X
8はYまたはFであり、
X
9はSまたはRであり、
X
10はNまたはSであり、
X
11はKまたはRであり、
X
12はHまたはYであり、
X
13はA、L、またはTであり、
X
14はKまたはRであり、
X
15はTまたはDであり、
X
16はNまたはTであり、
X
17はLまたはQであり、
X
18はYまたはFであり、
X
19はSまたはIであり、
X
20はSまたはTであり、
X
21はI、S、またはAであり、;
X
22はV、I、M、またはLであり、
X
23はE、S、V、またはIであり、
X
24はV、T、R、またはGであり、
X
25はL、R、またはGであり、
X
26はPまたはVである)
【請求項10】
以下に示される可変軽鎖(VL)配列を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のPAR4結合タンパク質。
(配列中、
X
1はKまたはEであり、
X
2はVまたはAであり、
X
3はRまたはGであり、
X
4はAまたはTであり、
X
5はRまたはSであり、
X
6はVまたはIであり、
X
7はNまたはSであり、
X
8はNまたはSであり、
X
9はFまたはYであり、
X
10はFまたはLであり、
X
11はIまたはTであり、
X
12はIまたはTであり、
X
13はFまたはLであり、
X
14はSまたはTであり、
X
15はVまたはLであり、
X
16はN、R、またはSである)
【請求項11】
前記VHが以下からなる群より選択されるCDR1配列を含む、請求項9または10に記載のPAR4結合タンパク質:
(i)GFTLSNYG(配列番号13);
(ii)GFTFSSDG(配列番号59);
(iii)GFTFSNYG(配列番号68);
(iv)GFTFSSYG(配列番号55);
(v)GFAFSSYG(配列番号70);及び
(vi)GFTLSSYG(配列番号75)。
【請求項12】
前記VHが以下からなる群より選択されるCDR2配列を含む、請求項9~11のいずれか1項に記載のPAR4結合タンパク質:
(i)IWYDGSNK(配列番号14);
(ii)IWFDGRNK(配列番号60);
(iii)IWYDGSNR(配列番号71);及び
(iv)IWYDGSSK(配列番号76)。
【請求項13】
前記VHが以下からなる群より選択されるCDR3配列を含む、請求項9~12のいずれか1項に記載のPAR4結合タンパク質:
(i)ARESIVEVLPPFDY(配列番号15);
(ii)ARESSISTRPPFDY(配列番号61);
(iii)ARETIMVRGVPFD(配列番号69);
(iv)ARETALVRGVPFDY(配列番号56);
(v)ARETAMVRGVPFDY(配列番号72);及び
(vi)ARETILIGGVPFDY(配列番号77)。
【請求項14】
前記VLが以下からなる群より選択されるCDR1配列を含む、請求項10に記載のPAR4結合タンパク質:
(i)QRVRNNY(配列番号16);
(ii)QSVRSSY(配列番号57);及び
(iii)QSIRSNY(配列番号78)。
【請求項15】
前記VLがCDR2配列GAS(配列番号28)を含む、請求項10または14に記載のPAR4結合タンパク質。
【請求項16】
前記VLが以下からなる群より選択されるCDR3配列を含む、請求項10、14、または15に記載のPAR4結合タンパク質:
(i)QQYGNSYT(配列番号18);
(ii)QQYGRSYT(配列番号62);及び
(iii)QQYGSSYT(配列番号58)。
【請求項17】
以下に示される可変重鎖(VH)配列を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のPAR4結合タンパク質。
(配列中、
X
1はAまたはSであり、
X
2はTまたはAであり、
X
3はVまたはIであり、
X
4はYまたはSであり、
X
5はGまたはSであり、
X
6はLまたはFであり、
X
7はN、D、またはTであり、
X
8はYまたはFであり、
X
9はSまたはRであり、
X
10はRまたはHであり、
X
11はNまたはIであり、
X
12はSまたはTであり、
X
13はTまたはSであり、
X
14はNまたはTであり、
X
15はKまたはNであり、
X
16はFまたはLであり、
X
17はKまたはNであり、
X
18はAまたはKであり、
X
19はI、F、またはVであり、
X
20はYまたはHであり、
X
21はNまたはSであり、
X
22はR、G、またはSであり、
X
23はVまたはHである)
【請求項18】
以下に示される可変軽鎖(VL)配列を含む、請求項1~9または17のいずれか1項に記載のPAR4結合タンパク質。
(配列中、
X
1はVまたはAであり、
X
2はVまたはIであり、
X
3はSまたはTであり、
X
4はS、Y、またはNであり、
X
5はKまたはIであり、
X
6はNまたはKであり、
X
7はRまたはSであり、
X
8はRまたはQであり、
X
9はTまたはAであり、
X
10はTまたはSであり、
X
11はQまたはRであり、
X
12はT、S、またはNであり、
X
13はNまたはNであり、
X
14はEまたはGである)
【請求項19】
前記VHが以下からなる群より選択されるCDR1配列を含む、請求項18に記載のPAR4結合タンパク質:
(i)GGSLSDYY(配列番号86);
(iii)SGSFSTYF(配列番号47);及び
(iv)GGSFSNYY(配列番号66)。
【請求項20】
前記VHが以下からなる群より選択されるCDR2配列を含む、請求項18または19に記載のPAR4結合タンパク質:
(i)INHSGTT(配列番号87);
(ii)IIHTGST(配列番号64);または
(iii)INHSGST(配列番号48)。
【請求項21】
前記VHが以下からなる群より選択されるCDR3配列を含む、請求項18、19、または20に記載のPAR4結合タンパク質:
(i)AIEYSNSRGYYYGMDV(配列番号88);
(ii)AFEYSSSGGYYYGMDV(配列番号49);及び
(iii)KVEHSSSSGHYYYGMDV(配列番号65)。
【請求項22】
前記VLが以下からなる群より選択されるCDR1配列を含む、請求項18~21のいずれか1項に記載のPAR4結合タンパク質:
(i)QTISNY(配列番号109);
(ii)QSISSY(配列番号50);及び
(iii)QTISYY(配列番号66)。
【請求項23】
前記VLがCDR2配列AAS(配列番号51)を含む、請求項18~22のいずれか1項に記載のPAR4結合タンパク質。
【請求項24】
前記VLが以下からなる群より選択されるCDR3配列を含む、請求項18~23のいずれか1項に記載のPAR4結合タンパク質:
(i)RQNYNTPLT(配列番号85);
(iii)QQTYSTPLT(配列番号52);または
(iv)QQSYSTPLT(配列番号67)。
【請求項25】
以下の配列をそれぞれ含む、または以下の配列からそれぞれなるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を有する可変重鎖(VH)を含む、いずれかの先行請求項に記載のPAR4結合タンパク質:
(i)配列番号13、配列番号14、及び配列番号15;
(ii)配列番号47、配列番号48、及び配列番号49;
(iii)配列番号24、配列番号25、及び配列番号26;
(iv)配列番号55、配列番号14、及び配列番号56;
(v)配列番号59、配列番号60、及び配列番号61;
(vi)配列番号63、配列番号64、及び配列番号65;
(vii)配列番号68、配列番号14、及び配列番号69;
(viii)配列番号70、配列番号71、及び配列番号72;
(ix)配列番号55、配列番号73、及び配列番号74;
(x)配列番号75、配列番号76、及び配列番号77;
(xi)配列番号79、配列番号80、及び配列番号81;
(xii)配列番号82、配列番号80、及び配列番号83;
(xiii)配列番号55、配列番号73、及び配列番号74;または
(xiv)配列番号86、配列番号87、及び配列番号88。
【請求項26】
以下の配列をそれぞれ含む、または以下の配列からそれぞれなるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を有する可変軽鎖(VL)をさらに含む、請求項25に記載のPAR4結合タンパク質:
(i)配列番号16、配列番号17、及び配列番号18;
(ii)配列番号50、配列番号51、及び配列番号52;
(iii)配列番号27、配列番号28、及び配列番号29;
(iv)配列番号57、配列番号28、及び配列番号58;
(v)配列番号57、配列番号28、及び配列番号62;
(vi)配列番号66、配列番号51、及び配列番号67;
(vii)配列番号57、配列番号28、及び配列番号58;
(viii)配列番号57、配列番号28、及び配列番号58;
(ix)配列番号78、配列番号28、及び配列番号62;
(x)配列番号84、配列番号51、及び配列番号85;
(xi)配列番号57、配列番号28、及び配列番号58;
(xii)配列番号57、配列番号51、及び配列番号58;または
(xiii)配列番号109、配列番号51、及び配列番号85。
【請求項27】
配列番号11、配列番号22、配列番号45、配列番号53、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、もしくは配列番号107のうちのいずれか1つに示される配列に対し、少なくとも95%同一であるVH配列、またはそのヒト化、キメラ、もしくは脱免疫化バージョンを含む、いずれかの先行請求項に記載のPAR4結合タンパク質。
【請求項28】
配列番号12、配列番号23、配列番号46、配列番号54、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、もしくは配列番号108のうちのいずれか1つに示される配列に対し、少なくとも95%同一であるVL配列、またはそのヒト化、キメラ、もしくは脱免疫化バージョンをさらに含む、請求項27に記載のPAR4結合タンパク質。
【請求項29】
以下を含む、いずれかの先行請求項に記載のPAR4結合タンパク質:
(i)配列番号11に示されるVH及び配列番号12に示されるVL;
(ii)配列番号45に示されるVH及び配列番号46に示されるVL;
(iii)配列番号22に示されるVH及び配列番号23に示されるVL;
(iv)配列番号53に示されるVH及び配列番号54に示されるVL;
(v)配列番号89に示されるVH及び配列番号90に示されるVL;
(vi)配列番号91に示されるVH及び配列番号92に示されるVL;
(vii)配列番号93に示されるVH及び配列番号94に示されるVL;
(viii)配列番号95に示されるVH及び配列番号96に示されるVL;
(ix)配列番号97に示されるVH及び配列番号98に示されるVL;
(x)配列番号99に示されるVH及び配列番号100に示されるVL;
(xi)配列番号101に示されるVH及び配列番号102に示されるVL;
(xii)配列番号103に示されるVH及び配列番号104に示されるVL;
(xiii)配列番号105に示されるVH及び配列番号106に示されるVL;または(xiv)配列番号107に示されるVH及び配列番号108に示されるVL。
【請求項30】
前記抗原結合断片が、
(i)1本鎖Fv断片(scFv);
(ii)二量体scFv(di-scFv);
(iii)重鎖定常領域またはFcまたは重鎖定常ドメイン(CH)2及び/またはCH3に連結している(i)及び/または(ii)のうちの少なくとも1つ
である、いずれかの先行請求項に記載のPAR4結合タンパク質。
【請求項31】
前記抗原結合断片が、
(i)ダイアボディ;
(ii)トリアボディ;
(iii)テトラボディ;
(iv)Fab;
(v)F(ab′)2;
(vi)Fv;または
(vii)重鎖定常領域またはFcまたは重鎖定常ドメイン(CH)2及び/またはCH3に連結している(i)~(vi)のうちの少なくとも1つ
である、請求項1~29のいずれか1項に記載のPAR4結合タンパク質。
【請求項32】
ある部分と結合している、いずれかの先行請求項に記載のPAR4結合タンパク質。
【請求項33】
前記部分が、ラジオアイソトープ、検出可能な標識、治療化合物、コロイド、毒素、核酸、ペプチド、タンパク質、対象におけるPAR4結合タンパク質の半減期を増加させる化合物、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項32に記載のPAR4結合タンパク質。
【請求項34】
いずれかの先行請求項に記載のPAR4結合タンパク質をコードする核酸。
【請求項35】
配列番号20に示されるVH核酸配列を含む、及び/または配列番号21に示されるVL核酸配列を含む、請求項34に記載のPAR4結合タンパク質。
【請求項36】
配列番号30に示されるVH核酸配列を含む、及び/または配列番号31に示されるVL核酸配列を含む、請求項34に記載のPAR4結合タンパク質。
【請求項37】
請求項1~33のいずれか1項に記載のPAR4結合タンパク質と好適な担体とを含む、組成物。
【請求項38】
対象における血栓症または血栓塞栓性障害を治療または防止するための方法であって、請求項1~33のいずれか1項に記載のPAR4結合タンパク質もしくは抗体、または請求項37に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項39】
血栓症または血栓塞栓性障害を治療、防止、または改善するための方法であって、それを必要とする対象に、請求項1~33のいずれか1項に記載のPAR4結合タンパク質もしくは抗体の治療有効量、または請求項37に記載の組成物の治療有効量を投与することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
参照による組込み
本明細書で引用または参照される全ての文書、及び本明細書で引用される文書内で引用または参照される全ての文書は、本明細書で言及される任意の製品に対するまたは本明細書での参照により組み込まれる任意の文書内での任意の製造業者の指示、記述、製品仕様、及び製品シートと共に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、2017年9月11日出願の豪州特許出願第2017903685号の優先権を主張するものであり、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
配列表の電子申請の全内容は、あらゆる目的においてその全体が参照により組み込まれる。
【0004】
本開示の分野
本開示は、ヒトプロテアーゼ活性化受容体4(PAR4)結合タンパク質(例えば、抗体)を対象とする。詳細には、ヒトPAR4のアンタゴニストである抗PAR4結合タンパク質、ならびにその方法及び使用を対象とする。
【背景技術】
【0005】
活性化血小板は動脈血栓症においてキーとなる細胞構成要素であり、世界中で最も一般的な死亡及び障害の原因となっており(Rosendaal FR et al.(2014)384:1653-4)、多くの国における死亡のほぼ40%を占め(Mozaffarian D et al.(2015)Circulation 131 e29-322)、オーストラリアもこのような国に含まれる(Australian Bureau of Statistics,Causes of Death,Australia,2011 3303 Chapter 42011(2013))。動脈血栓症は、心臓発作及び虚血性脳卒中を引き起こす。
【0006】
血小板は、動脈血栓を形成する細胞である。血小板は、血小板凝集及び凝固促進を引き起こす内在的アゴニストの組合せにより活性化され、これらのアゴニストが一緒になって病的な血栓形成を推進する。そのため、抗血小板薬は動脈血栓症の防止のための主要な薬物療法を構成する。しかし、このような薬剤が多数あるにもかかわらず、安全性及び/または有効性の制約から新規薬物標的の合理化が求められている。広範囲の臨床現場で抗血小板薬の改良に対する重大な需要が存在し、新規薬剤の開発に大きな関心が寄せられている。
【0007】
トロンビンは、既知のヒト血小板活性化物質としては最も強力であり、凝固カスケードにおいてキーとなるエフェクタープロテアーゼでもある。トロンビンは、主にプロテアーゼ活性化細胞表面受容体(PAR)、PAR1及びPAR4を介して血小板を活性化して、身体の最も強力な血小板活性化物質となる(Vu T-KH et al(1991)Cell 64:1057-68;Coughlin SR(1992) J Clin Invest 89:351-5;Coughlin SR(2000)Nature 407:258-64)。これらの受容体は、N末端のタンパク質分解により活性化される7回膜貫通受容体、Gタンパク質共役受容体(GPCR)のユニークなファミリーに属する。ひとたび切断されると、新たに露出したN末端は繋留リガンドとして働き、細胞外ループ2を結合することにより受容体を活性化する(Vu T-KH et al(1991)Cell 64:1057-68)。複数のプロテアーゼによって発現し活性化されるPARファミリーの4つのメンバー(PAR1~4)が存在する。
【0008】
全ての血小板PAR機能を欠損した(PAR4-/-)マウスは、自発的出血を伴うことなく血栓症から保護される(Hamilton J et al.(2004)Thromb Haemost 2:1429-35;Hamilton J et al.(2009)Blood Rev 23:61-5)が、これは抗血栓療法向けにこのような受容体を標的化することにおける潜在可能性を示すものである。ヒト血小板上には2つの優勢なPAR、PAR1及びPAR4が存在する。このうち、PAR1はより高親和性のトロンビン受容体であり、抗血小板薬開発の的となっており、2つのPAR1アンタゴニスト、アトパキサル(E5555)(Goto S et al.(2010)Eur Heart J 31:2601-13)及びボラパキサル(Tricoci P et al.(2012)New Engl J Med 366:20-33;Morrow DA et al(2012)New Engl J Med 366:1404-13)が臨床試験で評価されている。ボラパキサルは、2014年後半に米国FDAにより承認され、2016年半ばにTGAにより心筋梗塞及び末梢動脈疾患の防止向けに予定された。しかし、一剤または二剤の抗血小板療法と組み合わせたボラパキサルは、特に脳卒中の病歴または他の素因を有する患者において、脳内出血率の顕著な増加を伴った(Tricoci P et al.(2012)New Engl J Med 366:20-33;Morrow DA et al(2012)New Engl J Med 366:1404-13)。
【0009】
その結果、PAR4アンタゴニストの開発に大きな関心が寄せられるようになった。PAR4の機能的役割は、主に血小板に関して解明されている。PAR4を特徴づけるキーとなる特色は、PAR1及びADP受容体P2Y12の両方と共にヘテロオリゴマーを形成する能力であり、これによりPAR4はトロンビン及びADP開始シグナリングの両方に影響を及ぼすことが可能になる(Li D et al.(2011)J Biol Chem 286:3805-14)。2つの血小板PAR間の1つの大きな差異は、細胞内シグナリングの動態である(Holinstat M et al.(2006)J Biol Chem 281:26665-74;Voss B et al.(2007)Mol Pharmacol 71:1399-406;Holinstat M et al.(2007)Mol Pharmacol 71:686-94)。PAR1及びPAR4の両方がGqを介しシグナルを発して細胞内カルシウムを動員し、インテグリン活性化、顆粒分泌、及びホスファチジルセリン(PS)露出を含めた血小板機能を駆動する。しかし、PAR4活性化は、PAR1活性化よりも低速でより持続的な細胞内カルシウムシグナルを誘発する(Covic L et al.(2002)PNAS 99:643-8)。カルシウムシグナリングにおけるこの時間差は、部分的には、PAR4切断部位に対するアニオン性配列C末端に起因する可能性がある(Jacques S et al.(2003)Biochem J 376:733-40)。PAR4の下流におけるこのような持続的な血小板活性化がもたらす細胞的な結果はまだ完全には特徴づけられていないが、これらの現象が持続的な細胞内カルシウムレベルの上昇に依存することを考慮すると、持続的な血小板分泌動態(Jonnalagadda D et al.(2012)120:5209-16)及び血小板凝血促進機能が関係する可能性がある(Williamson P et al.(1995)34:10448-55;Dachary-Prigent J et al.(1995)Biochemistry 34:11625-34)。
【0010】
PAR4がヒト血栓形成セッティングにおける凝血促進活性に寄与することを検証する研究は存在しないが、これはおそらくは、このような研究に必要とされる適切なPAR4アンタゴニストの利用可能性が限定されていることに起因する。最も一般的に使用されるPAR4アンタゴニストは、小分子YD-3(Wu CC et al.(2000)Br J Pharmacol 130:1289-96)、ペプチド模倣体tc-YPGKF-NH2(Hollenberg MD et al.(2001)79:439-42)、ならびにペプデューシンP4pal-10及びP4pal-il(Leger AJ et al.(2006)Circulation 113:1244-54;Covic L et al.(2002)PNAS 99:643-8;Stampfuss JJ et al.(2003)Nat Med 9:1447)である。しかし、これらの薬剤は、ヒト血小板を用いた研究では、広く利用可能でない(例えば、YD-3)か、あるいは特異性の欠如(例えば、ペプデューシン)及び/または有効性の欠如(例えば、tc-YPGKF-NH2)が報告されている(Stampfuss JJ et al.(2003)Nat Med 9:1447;Hollenberg MD et al.(2004)Br J Pharmacol 143:443-54;Wu CC et al.(2002)Thromb Haemost 87:1026-33)。PAR4アンタゴニスト(BMS-986141)は早期の臨床試験で血栓症の治療に関し検証されているが、一般的なPAR4バリアント(集団に応じて人口の19~82%に存在)は、受容体を小分子阻害物質(例えば、BMS-986141)に対し非感受性にする。
【0011】
上記に基づけば、血栓症の医学的治療向けの改良されたヒトPAR4結合タンパク質の同定が有用であろうことは当業者には明らかであろう。さらに、有害な副作用を最小限にとどめた血栓症の治療は顕著なアンメットメディカルニーズである。したがって、既存の戦略にまさる利点をもたらし、血栓症の治療または防止においてPAR1の標的化における治療プロファイルの改良をもたらすPAR4アンタゴニストが当技術分野で必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
現在の臨床プログラムは、小分子オルソステリックPAR4阻害物質を開発している。しかし最近になり、このアプローチは高いパーセンテージの患者で完全に無効であることが明らかになった。具体的には、PAR4における一塩基多型(SNP;rs773902)は、受容体をオルソステリックPAR4アンタゴニズムに対し非感受性にする(Edelstein LC et al(2014)Blood 124:3450-3458)。この小ヌクレオチド多型(SNP)は、アミノ酸120がアラニン(Ala120)かスレオニン(Thr120)かを決定する。薬理学的研究からは、オルソステリックPAR4アンタゴニズムは、Ala120遺伝子型の患者におけるPAR4誘導血小板活性化を強力に阻害するが、Thr120遺伝子型の患者からの血小板には高濃度であっても全く影響をもたらさないことが示された。ヘテロ接合では部分的阻害のみがもたらされる(Edelstein LC et al(2014)Blood 124:3450-3458)。PAR4における阻害物質抵抗性Thr120形態の出現率は著しく高く(いくつかの集団では80%超)、これは、このアンタゴニズムが及ぼす影響が重大であることを示すものである。Thr120アレルは人種的に二形性であり、北米人154例のコホートでは、自分が黒人であると認識する者の63%に生じており、これに対し白人では19%に生じている。Human Genome Diversity Project(HGDP)からのデータは、SNP rs773902が地域特異的ではなく、サハラ砂漠以南のアフリカに住む人々の最大80%、パプア人及びメラネシア人の約3分の2がThr120 PAR4バリアントを有することを示している。
【0013】
SNP rs773902は、PAR4をオルソステリック阻害物質に対し抵抗性にすることに加え、PAR4の受容体活性化に対する感受性を増加させ、Thr120バリアントを有する患者に過活性の血小板をもたらす(Edelstein LC et al.(2013)Nat Med 19:1609-1616)。このPAR4機能の増加は、標準治療の抗血小板薬(アスピリン及び/またはP2Y12阻害物質)で治療した患者において持続した。
【0014】
発明者らは、ヒトPAR4に対し特異的に結合し、トロンビンによるPAR4活性化を阻害するモノクローナル抗体を開発した。したがって、この抗体は、トロンビンにより誘導されるPAR4切断のアンタゴニストである。発明者らにより同定された抗体は、PAR4媒介事象(例えば血栓症)を弱めるまたは低減することができる。さらに、発明者らは、PAR4の標的化は、その作用機序が異なることや全体的により幅広い安全プロファイルを有することにより、PAR1の標的化に比べて出血合併症を引き起こしにくいことを見いだした。
【0015】
詳細には、発明者らが同定した抗体は、PAR4受容体バリアント、すなわちAla120及びThr120の両方に対し有効であり、このことは、感受性のPAR4バリアントを有する対象だけでなく全ての対象における血栓塞栓性障害の治療に有効であることを意味する。さらに、当該抗体は、PAR1との交差反応性を最小限にとどめてPAR4に対し特異的に結合するため、出血合併症を最小限に抑えるまたは回避することができる。したがって、本発明抗体は、従来技術のPAR1アンタゴニスト及びPAR4小分子阻害物質からはこのようにして区別される。
【0016】
加えて、発明者らは、当該抗体がトロンビン誘導PAR4切断及びヒト血小板の凝集を著しく阻害することを見いだした。さらに、これらの効果は、免疫化ペプチドで抗体を競合解除することにより元に戻すことができた。
【0017】
したがって、本開示は、対象における血栓症を診断または予測するための様々な試薬を提供する。本開示は、対象における血栓症または血栓塞栓性障害を治療、防止、または改善するための方法も提供する。
【0018】
本開示は、抗原結合ドメインを含むPAR4結合タンパク質であって、抗原結合ドメインがヒトPAR4に対し特異的に結合し、タンパク質が少なくとも1つのPAR4媒介事象(例えば、血栓症)を弱める、PAR4結合タンパク質を提供する。1つの例において、タンパク質は、トロンビンの存在下で少なくとも1つのPAR4媒介事象(例えば、血栓症)を弱める。
【0019】
1つの例において、抗原結合ドメインは、非抗体PAR4結合タンパク質からのものである、またはこれに由来する。1つの例において、PAR4結合タンパク質は小分子アンタゴニストではない(小分子アンタゴニストの例として、例えばWO2013/163244に記載のイミダゾチアジアゾール誘導体、または例えばUS7879792で説明されている合成ペプチドアナログ)。
【0020】
本開示は、抗PAR4抗体の抗原結合ドメインを含むヒトPAR4結合タンパク質であって、抗原結合ドメインがPAR4に対し特異的に結合し、タンパク質が、PAR4を発現する細胞に接触したときに少なくとも1つのPAR4媒介事象(例えば、血栓症)を弱める、ヒトPAR4結合タンパク質も提供する。1つの例において、タンパク質は、トロンビンの存在下で少なくとも1つのPAR4媒介事象(例えば、血栓症)を弱める。
【0021】
1つの例において、PAR4結合タンパク質は、PAR4を発現する細胞(例えば、血小板)の細胞表面上にあるホスファチジルセリン(PS)の外在化を阻害する。1つの例において、PAR4結合タンパク質は、全血血栓症アッセイにより測定した場合の血栓体積を低減する。
【0022】
本開示は、抗PAR4組換えもしくは合成もしくはモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であるプロテアーゼ活性化受容体4(PAR4)結合タンパク質であって、トロンビンによって誘導されるヒトPAR4切断を実質的に阻害する、プロテアーゼ活性化受容体4(PAR4)結合タンパク質を提供する。
【0023】
当業者は、適切なin vitroアッセイを用いてPAR4切断を測定することができるであろう。非限定的な例として、PAR4切断は、表面上で蛍光標識タグ付きPAR4タンパク質を発現する細胞株で評価することができる。トロンビンの存在下でPAR4切断が引き起こす細胞表面からのFLAGの喪失は、定量化することができる。特定の例において、PAR4切断は、蛍光標識FLAGタグを含むPAR4をコードする核酸を含む形質移入HEK293細胞で測定することができる。トロンビンの存在下(例えば、0.1U/ml)でPAR4切断が引き起こす細胞表面からのFLAGの喪失は、フローサイトメトリーの使用により定量化することができる。
【0024】
1つの例において、結合タンパク質は、細胞表面発現ヒトPAR4の切断を、トロンビンの存在下で50%以上阻害する。
【0025】
1つの例において、PAR4結合タンパク質は、ヒトPAR4のトロンビン切断部位にまたがるエピトープに対し、特異的に結合する。1つの例において、PAR4結合タンパク質は、GDDSTPSILPAPRGYPGQVC(配列番号2)として示される配列内に含まれる残基を含むエピトープに対し、特異的に結合する。1つの例において、ペプチドは配列番号1または配列番号2からなる。例えば、ペプチドはファージの表面上に示される。
【0026】
別の例において、エピトープは配列APRGY(配列番号42)を含み、このときトロンビン切断部位はRGに対応する。別の例において、エピトープは、ILPAPRGY(配列番号43)またはAPRGYPGQV(配列番号44)から選択される配列を含む、またはそれからなる。1つの例において、PAR4結合タンパク質は、PRGYPG(配列番号1)として示される配列を含むエピトープに対し特異的に結合する。
【0027】
1つの例において、PAR4結合タンパク質は、ヒトPAR4のAla120バリアントまたはThr120バリアントのいずれかに対し特異的に結合する。別の例において、PAR4結合タンパク質は、ヒトPAR4のAla120バリアント及びThr120バリアントのいずれにも結合する。
【0028】
1つの例において、PAR4結合タンパク質は、配列番号19に従うヒトPAR4配列内のトロンビン切断部位に結合する。1つの例において、PAR4結合タンパク質は、配列番号19に示されるヒトPAR4配列の残基35~54にマッチする配列に結合する。別の例において、PAR4結合タンパク質は、任意選択でキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)または他の免疫刺激分子を追加的に含む、配列番号2として示される配列に結合する。さらなる例において、PAR4結合タンパク質は、配列番号4に示される配列に結合する。
【0029】
別の例において、PAR4結合タンパク質は、任意選択でC末端GGGG及びストレプトアビジン-k/ビオチン(SKB)を追加的に含む、配列番号2として示される配列に結合する。1つの例において、PAR4タンパク質は、配列番号7として示される配列に結合する。
【0030】
1つの例において、PAR4結合タンパク質は、ヒトPAR3、PAR2、またはPAR1に結合しないか、または実質的に結合しない。
【0031】
さらなる例において、PAR4結合タンパク質は、配列番号3(マウスPAR4)、配列番号8(ヒトPAR3)、配列番号9(ヒトPAR2)、または配列番号10(ヒトPAR1)からなる群より選択されるPAR配列に対し、結合しないか、または実質的に結合しない。
【0032】
1つの例において、結合のレベルは、ペプチド(例えば、配列番号2または配列番号7に従うペプチド)を固定し、ペプチドをPAR4結合タンパク質に接触させることによって評価される。
【0033】
本明細書に記載されたこのような結合の特徴を有する例示的なPAR4結合タンパク質は、5ARC3.F10b.H4b(以下、5A.RC3と呼ぶ)または5F.RF3.A7b.A1(以下、5F.RF3と呼ぶ)という名称の抗体の可変領域及び/またはCDRを含む。
【0034】
1つの例において、PAR4結合タンパク質は、5A.RC3、51.RG1、5F.RG3、5G.RA1、5D.RH4、5H.RH4、5G.RF6、5G.RD6、5H.RA3、5G.RG1、5H.RG4、5G.RC5、5F.RE6、5H.RF2という名称の抗体と類似のレベルもしくは実質的に同じレベルで、または類似の親和性もしくは実質的に同じ親和性で、配列番号1、配列番号2、配列番号4、もしくは配列番号7に示される配列からなるペプチドまたはヒトPAR4に結合する。
【0035】
別の例において、PAR4結合タンパク質は、5A.RC3、51.RG1、5F.RG3、5G.RA1、5D.RH4、5H.RH4、5G.RF6、5G.RD6、5H.RA3、5G.RG1、5H.RG4、5G.RC5、5F.RE6、5H.RF2という名称の抗体がヒトPAR4に結合するのを競合的に阻害する。さらなる例において、当該タンパク質は、5A.RC3、51.RG1、5F.RG3、5G.RA1、5D.RH4、5H.RH4、5G.RF6、5G.RD6、5H.RA3、5G.RG1、5H.RG4、5G.RC5、5F.RE6、5H.RF2という名称の抗体が、配列番号2、配列番号4、または配列番号7に示される配列からなるペプチドに結合するのを競合的に阻害する。
【0036】
1つの例において、PAR4結合タンパク質は、配列番号2、配列番号4、または配列番号7に示される配列からなるペプチドに、配列番号11、配列番号22、配列番号45、配列番号53、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、または配列番号107に示される配列を含むVHと、配列番号12、配列番号23、配列番号46、配列番号54、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、または配列番号108に示される配列を含むVLとを含む抗体が結合する量の75%以内の量で結合する。
【0037】
1つの例において、結合しているタンパク質または抗体の量は、PAR4結合タンパク質を、配列番号1、配列番号2、配列番号4、もしくは配列番号7に示される配列からなるペプチドに接触させることにより、及びペプチドに接触したPAR4結合タンパク質の量(例えば、10μg/ml)により評価される。次いで、ペプチドに結合しているPAR4結合タンパク質の量を測定し、それぞれがペプチドに結合している配列番号11、配列番号22、配列番号45、配列番号53、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、または配列番号107に示される配列を含むVHと、配列番号12、配列番号23、配列番号46、配列番号54、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、または配列番号108に示される配列を含むVHとを含む、抗体の量と比較する。1つの例において、ペプチドに結合しているPAR4結合タンパク質の量は、結合している抗体の量の約80%、または70%、または60%、または40%以内である。
【0038】
本開示は、以下の名称の抗体の結合を競合的に阻害するPAR4結合タンパク質も提供する:
(i)配列番号11に示される配列を含むVH及び配列番号12に示される配列を含むVLを含む前述の5A.RC3抗体;
(ii)配列番号45に示される配列を含むVH及び配列番号46に示される配列を含むVLを含む5I.RG1;
(iii)配列番号22に示される配列を含むVH及び配列番号23に示される配列を含むVLを含む5F.RF3;
(iv)配列番号53に示される配列を含むVH及び配列番号54に示される配列を含むVLを含む5G.RA1;
(v)配列番号89に示される配列を含むVH及び配列番号90に示される配列を含むVLを含む5D.RH4;
(vi)配列番号91に示される配列を含むVH及び配列番号92に示される配列を含むVLを含む5H.RH4;
(vii)配列番号93に示される配列を含むVH及び配列番号94に示される配列を含むVLを含む5G.RF6;
(viii)配列番号95に示される配列を含むVH及び配列番号96に示される配列を含むVLを含む5G.RD6;
(ix)配列番号97に示される配列を含むVH及び配列番号98に示される配列を含むVLを含む5H.RA3;
(x)配列番号99に示される配列を含むVH及び配列番号100に示される配列を含むVLを含む5G.RG1;
(xi)配列番号103に示される配列を含むVH及び配列番号104に示される配列を含むVLを含む5H.RG4;
(xii)配列番号103に示される配列を含むVH及び配列番号104に示される配列を含むVLを含む5G.RC5;
(xiii)配列番号105に示される配列を含むVH及び配列番号106に示される配列を含むVLを含む5F.RE6;または
(xiv)配列番号107に示される配列を含むVH及び配列番号108に示される配列を含むVLを含む5H.RF2が、配列番号2、配列番号4、もしくは配列番号7に示される配列を含むもしくはそれからなるペプチド、またはヒトPAR4(例えば、配列番号19)。
【0039】
1つの例において、PAR4結合タンパク質は、細胞表面(例えば、N末端FLAGタグを含むPAR4を形質移入したHEK293細胞)上に発現するヒトPAR4のトロンビン誘導切断を低減する(すなわち、PAR4アンタゴニスト活性を有する)。1つの例において、(例えば、10μg/mlの濃度の)PAR4結合タンパク質は、PAR4発現HEK293細胞(例えば、約5×104細胞)のトロンビン誘導切断を(例えば、0.1U/ml)低減する。このような活性を有する例示的な抗体は、抗体5A.RC3、5I.RG1、5F.RF3、5G.RA1、5D.RH4、5H.RH4、5G.RF6、5G.RD6、5H.RA3、5G.RG1、5H.RG4、5G.RC5、5F.RE6、もしくは5H.RF2、またはこのような抗体のCDRを含む抗体の可変領域または相補性決定領域(CDR)を含む。
【0040】
1つの例において、PAR4結合タンパク質は、本明細書に記載のヒトPAR4のトロンビン切断部位を含むペプチドに、またはヒトPAR4のN末端細胞外領域に、2nM以下(例えば1.5nM以下、例えば1nM以下)の親和性解離定数(KD)で結合する。1つの例において、KDは、約0.01nMから約2nMの間、例えば約0.05nMから約1nMの間、例えば約0.1nMから約1nMの間、例えば約0.3nMから約1nMの間である。1つの例において、KDは、約0.01nMから1nMの間、例えば、約0.05nMから0.9nMの間、例えば、約0.09nMから約0.7nMの間、例えば、約0.1nMから0.6nMの間である。
【0041】
1つの例において、KDは、ストレプトアビジンチップを利用し、チップの表面上のビオチン結合ヒトPAR4ペプチド(例えば、配列番号7に従うペプチド)を捕捉し、それにPAR4結合タンパク質を通すことによって評価される。
【0042】
1つの例において、KDは、ストレプトアビジンチップを利用し、チップの表面上のビオチン結合ヒトPAR4ペプチド(例えば、配列番号7に従うペプチド)を捕捉し、それにPAR4結合タンパク質を通すことによって評価される。
【0043】
本開示の例示的なPAR4結合タンパク質は、SAチップビオチンペプチドSPRにより評価した場合、約0.01から0.61の間のKDを有する。1つの例において、PAR4結合タンパク質は0.4nM(例えば、+/-0.1nM)のKDを有する。1つの例において、PAR4結合タンパク質は、本明細書におけるPAR4結合タンパク質のいずれか1つに対応する表4に示されるKDを有する。
【0044】
1つの例において、本開示のPAR4結合タンパク質は、ヒトPAR4に対し特異的に結合する。1つの例において、タンパク質の結合は、ELISA及び高スループット抗原マイクロアレイによって評価される。
【0045】
1つの例において、PAR4結合タンパク質は、ヒトPAR4内の同じエピトープに、または以下の抗体が結合するエピトープと重複するヒトPAR4内のエピトープに結合する:
(i)配列番号11に示される配列を含むVH及び配列番号12に示される配列を含むVLを含む前述の5A.RC3抗体;
(ii)配列番号45に示される配列を含むVH及び配列番号46に示される配列を含むVLを含む5I.RG1;
(iii)配列番号22に示される配列を含むVH及び配列番号23に示される配列を含むVLを含む5F.RF3;
(iv)配列番号53に示される配列を含むVH及び配列番号54に示される配列を含むVLを含む5G.RA1;
(v)配列番号89に示される配列を含むVH及び配列番号90に示される配列を含むVLを含む5D.RH4;
(vi)配列番号91に示される配列を含むVH及び配列番号92に示される配列を含むVLを含む5H.RH4;
(vii)配列番号93に示される配列を含むVH及び配列番号94に示される配列を含むVLを含む5G.RF6;
(viii)配列番号95に示される配列を含むVH及び配列番号96に示される配列を含むVLを含む5G.RD6;
(ix)配列番号97に示される配列を含むVH及び配列番号98に示される配列を含むVLを含む5H.RA3;
(x)配列番号99に示される配列を含むVH及び配列番号100に示される配列を含むVLを含む5G.RG1;
(xi)配列番号103に示される配列を含むVH及び配列番号104に示される配列を含むVLを含む5H.RG4;
(xii)配列番号103に示される配列を含むVH及び配列番号104に示される配列を含むVLを含む5G.RC5;
(xiii)配列番号105に示される配列を含むVH及び配列番号106に示される配列を含むVLを含む5F.RE6;または
(xiv)配列番号107に示される配列を含むVHを含む5H.RF2。
【0046】
本開示は、ヒトPAR4に対し特異的に結合し、かつ抗PAR4組換えもしくは合成もしくはモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であるPAR4結合タンパク質も提供する。
【0047】
1つの例において、抗体は、トロンビンによるPAR4の切断を実質的に阻害する。
【0048】
1つの例において、PAR4はヒト血小板上で発現する。
【0049】
1つの例において、PAR4結合タンパク質は、ヒト重鎖及び軽鎖の定常領域配列を含むキメラ抗体である。別の例において、PAR4結合タンパク質はヒト化抗体または完全ヒト抗体である。
【0050】
1つの例において、PAR4結合タンパク質は、細胞表面発現PAR4の切断を、トロンビンまたはPAR1アンタゴニストの存在下で60%以上阻害する。さらなる例において、当該タンパク質は、PAR4の切断を少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも8%、少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%阻害する。
【0051】
別の例において、トロンビンによるPAR4の切断は、flagタグ付PAR4発現HEK293細胞からのFlagタグの喪失によって測定される。別の例において、切断はフローサイトメトリーによって測定される。
【0052】
1つの例において、PAR4結合タンパク質は、ヒトPAR1、PAR2、またはPAR3に結合しない、または実質的に結合しない。
【0053】
1つの例において、PAR4結合タンパク質は、以下に示される可変重鎖(VH)配列を含む。
(配列中、
X
1はVまたはIであり、
X
2はAまたはVであり、
X
3はTまたはAであり、
X
4はLまたはFであり、
X
5はNまたはSであり、
X
6はYまたはDであり、
X
7はSまたはAであり、;
X
8はYまたはFであり、
X
9はSまたはRであり、
X
10はNまたはSであり、
X
11はKまたはRであり、
X
12はHまたはYであり、
X
13はA、L、またはTであり、
X
14はKまたはRであり、
X
15はTまたはDであり、
X
16はNまたはTであり、
X
17はLまたはQであり、
X
18はYまたはFであり、
X
19はSまたはIであり、
X
20はSまたはTであり、
X
21はI、S、またはAであり、
X
22はV、I、M、またはLであり、
X
23はE、S、V、またはIであり、
X
24はV、T、R、またはGであり、
X
25はL、R、またはGであり、
X
26はPまたはVである)
【0054】
1つの例において、PAR4結合タンパク質はさらに、以下に示される可変軽鎖(VL)配列を含む。
(配列中、
X
1はKまたはEであり、
X
2はVまたはAであり、
X
3はRまたはGであり、
X
4はAまたはTであり、
X
5はRまたはSであり、
X
6はVまたはIであり、
X
7はNまたはSであり、
X
8はNまたはSであり、
X
9はFまたはYであり、
X
10はFまたはLであり、
X
11はIまたはTであり、
X
12はIまたはTであり、
X
13はFまたはLであり、
X
14はSまたはTであり、
X
15はVまたはLであり、
X
16はN、R、またはSである)
【0055】
1つの例において、VHは、以下からなる群より選択されるCDR1配列を含む:
(i)GFTLSNYG(配列番号13);
(ii)GFTFSSDG(配列番号59);
(iii)GFTFSNYG(配列番号68);
(iv)GFTFSSYG(配列番号55);
(v)GFAFSSYG(配列番号70);及び
(vi)GFTLSSYG(配列番号75)。
【0056】
1つの例において、VHは、以下からなる群より選択されるCDR2配列を含む:
(i)IWYDGSNK(配列番号14);
(ii)IWFDGRNK(配列番号60);
(iii)IWYDGSNR(配列番号71);及び
(iv)IWYDGSSK(配列番号76)。
【0057】
1つの例において、VHは、以下からなる群より選択されるCDR3配列を含む:
(i)ARESIVEVLPPFDY(配列番号15);
(ii)ARESSISTRPPFDY(配列番号61);
(iii)ARETIMVRGVPFD(配列番号69);
(iv)ARETALVRGVPFDY(配列番号56);
(v)ARETAMVRGVPFDY(配列番号72);及び
(vi)ARETILIGGVPFDY(配列番号77)。
【0058】
1つの例において、VLは、以下からなる群より選択されるCDR1配列を含む:
(i)QRVRNNY(配列番号16);
(ii)QSVRSSY(配列番号57);及び
(iii)QSIRSNY(配列番号78)。
【0059】
1つの例において、VLは、CDR2配列GAS(配列番号28)を含む。
【0060】
1つの例において、VLは、以下からなる群より選択されるCDR3配列を含む:
(i)QQYGNSYT(配列番号18);
(ii)QQYGRSYT(配列番号62);及び
(iii)QQYGSSYT(配列番号58)。
【0061】
別の例において、PAR4結合タンパク質は、以下に示される可変重鎖(VH)配列を含む。
【0062】
別の例において、PAR4結合タンパク質は、以下に示される可変重鎖(VH)配列を含む。
(配列中、
X
1はAまたはSであり、
X
2はTまたはAであり、
X
3はVまたはIであり、
X
4はYまたはSであり、
X
5はGまたはSであり、
X
6はLまたはFであり、
X
7はN、D、またはTであり、
X
8はYまたはFであり、
X
9はSまたはRであり、
X
10はRまたはHであり、
X
11はNまたはIであり、
X
12はSまたはTであり、
X
13はTまたはSであり、
X
14はNまたはTであり、
X
15はKまたはNであり、
X
16はFまたはLであり、
X
17はKまたはNであり、
X
18はAまたはKであり、
X
19はI、F、またはVであり、
X
20はYまたはHであり、
X
21はNまたはSであり、
X
22はR、G、またはSであり、
X
23はVまたはHである)
【0063】
1つの例において、PAR4結合タンパク質はさらに、以下に示される可変軽鎖(VL)配列を含む。
(配列中、
X
1はVまたはAであり、
X
2はVまたはIであり、
X
3はSまたはTであり、
X
4はS、Y、またはNであり、
X
5はKまたはIであり、
X
6はNまたはKであり、
X
7はRまたはSであり、
X
8はRまたはQであり、
X
9はTまたはAであり、
X
10はTまたはSであり、
X
11はQまたはRであり、
X
12はT、S、またはNであり、
X
13はNまたはNであり、
X
14はEまたはGである)
【0064】
1つの例において、VHは、以下からなる群より選択されるCDR1配列を含む:
(i)GGSLSDYY(配列番号86);
(iii)SGSFSTYF(配列番号47);及び
(iv)GGSFSNYY(配列番号66)。
【0065】
1つの例において、VHは、以下からなる群より選択されるCDR2配列を含む:
(i)INHSGTT(配列番号87);
(ii)IIHTGST(配列番号64);または
(iii)INHSGST(配列番号48)。
【0066】
1つの例において、VHは、以下からなる群より選択されるCDR3配列を含む:
(i)AIEYSNSRGYYYGMDV(配列番号88);
(ii)AFEYSSSGGYYYGMDV(配列番号49);及び
(iii)KVEHSSSSGHYYYGMDV(配列番号65)。
【0067】
1つの例において、VLは、以下からなる群より選択されるCDR1配列を含む:
(i)QTISNY(配列番号109);
(ii)QSISSY(配列番号50);及び
(iii)QTISYY(配列番号66)。
【0068】
1つの例において、VLは、CDR2配列AAS(配列番号51)を含む。
【0069】
1つの例において、VLは、以下からなる群より選択されるCDR3配列を含む:
(i)RQNYNTPLT(配列番号85);
(iii)QQTYSTPLT(配列番号52);または
(iv)QQSYSTPLT(配列番号67)。
【0070】
本開示は、以下の配列をそれぞれ含む、または以下の配列からそれぞれなるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を有する可変重鎖(VH)を含むPAR4結合タンパク質も提供する:
(i)配列番号13、配列番号14、及び配列番号15;
(ii)配列番号47、配列番号48、及び配列番号49;
(iii)配列番号24、配列番号25、及び配列番号26;
(iv)配列番号55、配列番号14、及び配列番号56;
(v)配列番号59、配列番号60、及び配列番号61;
(vi)配列番号63、配列番号64、及び配列番号65;
(vii)配列番号68、配列番号14、及び配列番号69;
(viii)配列番号70、配列番号71、及び配列番号72;
(ix)配列番号55、配列番号73、及び配列番号74;
(x)配列番号75、配列番号76、及び配列番号77;
(xi)配列番号79、配列番号80、及び配列番号81;
(xii)配列番号82、配列番号80、及び配列番号83;
(xiii)配列番号55、配列番号73、及び配列番号74;または
(xiv)配列番号86、配列番号87、及び配列番号88。
【0071】
本開示は、以下の配列をそれぞれ含む、または以下の配列からそれぞれなるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を有する可変軽鎖(VL)を含むPAR4結合タンパク質も提供する:
(i)配列番号16、配列番号17、及び配列番号18;
(ii)配列番号50、配列番号51、及び配列番号52;
(iii)配列番号27、配列番号28、及び配列番号29;
(iv)配列番号57、配列番号28、及び配列番号58;
(v)配列番号57、配列番号28、及び配列番号62;
(vi)配列番号66、配列番号51、及び配列番号67;
(vii)配列番号57、配列番号28、及び配列番号58;
(viii)配列番号57、配列番号28、及び配列番号58;
(ix)配列番号78、配列番号28、及び配列番号62;
(x)配列番号84、配列番号51、及び配列番号85;
(xi)配列番号57、配列番号28、及び配列番号58;
(xii)配列番号57、配列番号51、及び配列番号58;または
(xiii)配列番号109、配列番号51、及び配列番号85。
【0072】
1つの例において、PAR-4結合タンパク質は、以下を含む:
(i)配列番号11、配列番号22、配列番号45、配列番号53、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、もしくは配列番号107のうちのいずれか1つに示される配列に対し、少なくとも50%同一である配列を含むVH、またはそのヒト化、キメラ、もしくは脱免疫化バージョン;及び/または
(ii)配列番号12、配列番号23、配列番号46、配列番号54、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、もしくは配列番号108に示される配列に対し、少なくとも85%同一である配列を含むVL、またはそのヒト化、キメラ、もしくは脱免疫化バージョン。
【0073】
1つの例において、VHは、配列番号11、配列番号22、配列番号45、配列番号53、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、または配列番号107のうちのいずれか1つに対し、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または99.5%同一である配列を含む。
【0074】
1つの例において、VLは、配列番号12、配列番号23、配列番号46、配列番号54、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、または配列番号104のうちのいずれか1つに対し、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または99.5%同一である配列を含む。
【0075】
1つの例において、VHは、配列番号11、配列番号22、配列番号45、配列番号53、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、または配列番号107(CDR配列は除外)のうちのいずれか1つに対し、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、97%、98%、99%、または99.5%同一である配列を含む。
【0076】
1つの例において、VLは、配列番号12、配列番号23、配列番号46、配列番号54、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、または配列番号108(CDR配列は除外)に対し、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または99.5%同一である配列を含む。
【0077】
1つの例において、CDRは、IMGTナンバリングシステムによって定義される。
【0078】
本開示は、以下を含むPAR4結合タンパク質も提供する:
(i)配列番号11に示されるVH及び配列番号12に示されるVL;
(ii)配列番号45に示されるVH及び配列番号46に示されるVL;
(iii)配列番号22に示されるVH及び配列番号23に示されるVL;
(iv)配列番号53に示されるVH及び配列番号54に示されるVL;
(v)配列番号89に示されるVH及び配列番号90に示されるVL;
(vi)配列番号91に示されるVH及び配列番号92に示されるVL;
(vii)配列番号93に示されるVH及び配列番号94に示されるVL;
(viii)配列番号95に示されるVH及び配列番号96に示されるVL;
(ix)配列番号97に示されるVH及び配列番号98に示されるVL;
(x)配列番号99に示されるVH及び配列番号100に示されるVL;
(xi)配列番号101に示されるVH及び配列番号102に示されるVL;
(xii)配列番号103に示されるVH及び配列番号104に示されるVL;
(xiii)配列番号105に示されるVH及び配列番号106に示されるVL;または(xiv)配列番号107に示されるVH及び配列番号108に示されるVL。
【0079】
1つの例において、PAR4結合タンパク質抗原結合断片は、
(i)1本鎖Fv断片(scFv);
(ii)二量体scFv(di-scFv);
(iii)重鎖定常領域またはFcまたは重鎖定常ドメイン(CH)2及び/またはCH3に結合している(i)及び/または(ii)のうちの少なくとも1つ;または
(iv)血小板に結合するタンパク質(例えば、フォン・ウィルブランド因子(vWF))に連結している(i)及び/または(ii)のうちの少なくとも1つ である。
【0080】
本開示の別の例において、VL及びVHは別々のポリペプチド鎖である。例えば、PAR4結合タンパク質は、
(i)ダイアボディ;
(ii)トリアボディ;
(iii)テトラボディ;
(iv)Fab;
(v)F(ab′)2;
(vi)Fv;または
(vii)重鎖定常領域またはFcまたは重鎖定常ドメイン(CH)2及び/またはCH3に連結している(i)~(vi)のうちの少なくとも1つ;または
(viii)血小板に結合するタンパク質(例えば、vWF)に連結している(i)~(vi)のうちの少なくとも1つ である。
【0081】
本開示は、本明細書に記載のVH及びVLを含むキメラ抗体であって、VHがヒト重鎖定常領域に連結し、VLがヒト軽鎖定常領域に連結している、キメラ抗体も提供する。
【0082】
本開示に基づけば、本開示のPAR4結合タンパク質がヒト、ヒト化、合成ヒト化(synhumanized)、キメラ、及び霊長類化タンパク質を包含することは当業者には明らかであろう。
【0083】
本開示の抗体は、IgM、IgG、IgE、IgA、IgD、またはサブクラスを含めた任意のクラスに属することができる。IgGの例示的なサブクラスは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4である。
【0084】
1つの例において、PAR4結合タンパク質は組換え型である。1つの例において、PAR4結合タンパク質は合成である。
【0085】
1つの例において、本開示のPAR4結合タンパク質または抗体は、ある部分と結合体化する。例えば、当該部分は、ラジオアイソトープ、検出可能な標識、治療化合物、コロイド、毒素、核酸、ペプチド、タンパク質、対象におけるPAR4結合タンパク質の半減期を増加させる化合物、及びこれらの混合物からなる群より選択される。
【0086】
本開示は、本開示のPAR4結合タンパク質または抗体をコードする単離された核酸も提供する。1つの例において、PAR4結合タンパク質または抗体は、配列番号20に示されるVH核酸配列及び/または配列番号21に示されるVL核酸配列を含む。別の例において、PAR4結合タンパク質または抗体は、配列番号30に示されるVH核酸配列及び/または配列番号31に示されるVL核酸配列を含む。
【0087】
本開示は追加的に、プロモーターに対し作用可能に連結した本開示の核酸を含む発現コンストラクトを提供する。このような発現コンストラクトは、ベクター内、例えばプラスミド内のものであり得る。
【0088】
単一のポリペプチドPAR4結合タンパク質を対象とする本開示の例において、発現コンストラクトは、そのポリペプチド鎖をコードする核酸に連結したプロモーターを含むことができる。
【0089】
PAR4結合タンパク質を形成する複数のポリペプチドを対象とする例において、本開示の発現コンストラクトは、プロモーターに対し作用可能に連結した(例えば、VHを含む)ポリペプチドのうちの1つをコードする核酸と、別のプロモーターに対し作用可能に連結した(例えば、VLを含む)ポリペプチドのうちの別の1つをコードする核酸とを含む。
【0090】
別の例において、発現コンストラクトは、例えば、以下の5′から3′の順で作用可能に連結した構成要素を含む、バイシストロン性発現コンストラクトである:
(i)プロモーター;
(ii)第1のポリペプチドをコードする核酸;
(iii)内部リボソーム進入部位;及び
(iv)第2のポリペプチドをコードする核酸。
【0091】
例えば、第1のポリペプチドはVHを含み第2のポリペプチドはVLを含む、または第1のポリペプチドはVLを含み第2のポリペプチドはVHを含む。
【0092】
本開示は、別々の発現コンストラクトであって、一方が(例えば、VHと、任意選択で重鎖定常領域またはその一部とを含む)第1のポリペプチドをコードし、もう一方が(例えば、VLと、任意選択で軽鎖定常領域とを含む)第2のポリペプチドをコードする、別々の発現コンストラクトも企図している。例えば、本開示は、
(i)(例えば、プロモーターに対し作用可能に連結したVHを含む)ポリペプチドをコードする核酸を含む第1の発現コンストラクト、及び
(ii)(例えば、プロモーターに対し作用可能に連結したVLを含む)ポリペプチドをコードする核酸を含む第2の発現コンストラクト
を含む組成物であって、第1及び第2のポリペプチドが会合して本開示のPAR4結合タンパク質を形成する、組成物も提供する。
【0093】
本開示は追加的に、本開示のPAR4結合タンパク質もしくは抗体を発現する単離された細胞、または本開示のPAR4結合タンパク質もしくは抗体を発現するように遺伝子修飾された組換え細胞を提供する。1つの例において、細胞は単離されたハイブリドーマである。別の例において、細胞は、本開示の核酸もしくは発現コンストラクトを含むか、または:
(i)プロモーターに対し作用可能に連結した(例えば、VHを含む)ポリペプチドをコードする核酸を含む第1の発現コンストラクト、及び
(ii)プロモーターに対し作用可能に連結した(例えば、VLを含む)ポリペプチドをコードする核酸を含む第2の発現コンストラクト
であって、第1及び第2のポリペプチドが会合して本開示のPAR4結合タンパク質を形成する、第1の発現コンストラクト及び第2の発現コンストラクトを含む。
【0094】
本開示は追加的に、本開示のPAR4結合タンパク質または核酸または発現コンストラクトまたは細胞と、好適な担体と含む組成物を提供する。1つの例において、組成物は本開示のPAR4結合タンパク質を含む。
【0095】
1つの例において、担体は医薬的に許容される。
【0096】
本開示の組成物は、単独で投与されても、他の治療、治療薬、または薬剤と組み合わせて、同時または順次のいずれかで投与されてもよい。
【0097】
本開示は追加的に、対象における血栓症または血栓塞栓性障害を治療または防止するための方法であって、本開示のPAR4結合タンパク質または核酸または発現コンストラクトまたは細胞または組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。1つの例において、対象は、血栓症のようなPAR4媒介事象のリスクがある者である。1つの例において、対象は、PAR4媒介事象(例えば、血栓症)を有する、または過去に有していた者である。
【0098】
1つの例において、本方法は、配列番号11、配列番号22、配列番号45、配列番号53、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、もしくは配列番号107のいずれか1つに示される配列を含むVH、またはそのヒト化もしくは脱免疫化バージョンと、配列番号12、配列番号23、配列番号46、配列番号54、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、もしくは配列番号108のいずれか1つに示される配列を含むVH、またはそのヒト化もしくは脱免疫化バージョンとを含む抗体を、対象に投与することを含む。
【0099】
本開示は追加的に、医学分野で使用するための、本開示のPAR4結合タンパク質または核酸または発現コンストラクトまたは細胞または組成物を提供する。
【0100】
本開示は追加的に、PAR4媒介事象(例えば、血栓症)の治療または予防で使用するための、本開示のPAR4結合タンパク質または核酸または発現コンストラクトまたは細胞または組成物を提供する。
【0101】
1つの例において、本開示は、血栓症または血栓塞栓性障害を治療、防止、または改善するための方法であって、それを必要とする対象に、本開示のPAR4結合タンパク質または核酸または発現コンストラクトまたは細胞または組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0102】
いくつかの例において、本開示は、血栓症の治療、防止、または改善を必要とする対象における血栓症を治療、防止、または改善するための方法であって、それを必要とする対象に、本開示のPAR4結合タンパク質または核酸または発現コンストラクトまたは細胞または組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0103】
1つの例において、本開示は、手術手順に関連する血栓症のリスクを低減する方法であって、対象に、本開示のPAR4結合タンパク質または核酸または発現コンストラクトまたは細胞または組成物を手術手順の前及び/または後のいずれかに投与することを含む、方法を提供する。1つの例において、手術手順は肝臓移植であり、血栓症は肝動脈血栓症である。
【0104】
いくつかの例において、本開示は、本開示に従うPAR4結合タンパク質または抗体の用量が適切かどうかを決定するための方法を提供する。このような方法は、(i)本開示のPAR4結合タンパク質または抗体による処置を受けた対象からの血液試料を取得することと、(ii)血液試料からの血小板をin vitroでPAR4アゴニストにより処置することと、(iii)血小板活性化を測定することと、(iv)PAR4結合タンパク質または抗体により処置した後の血液試料における血小板活性化を、PAR4結合タンパク質または抗体により処置する前に取得した血液試料における血小板活性化と比較することとを含む。
【0105】
好適なPAR4アゴニストの例は当業者によく知られていると考えられる。非限定的な例としては、AYPGKF-NH2(Tocris)のようなアゴニストペプチドが挙げられる。
【0106】
1つの例において、血小板活性化は、本明細書の実施例で例示されている方法に従って測定される。
【0107】
いくつかの実施形態において、本開示は、血小板凝集を阻害または防止する方法であって、それを必要とする対象(例えば、ヒト)に、本開示に従うPAR4結合タンパク質の治療有効量を投与するステップを含む、方法を含む。
【0108】
いくつかの例において、本開示は、血栓症または血栓塞栓性障害の治療または予防の方法であって、それを必要とする対象(例えば、ヒト)に、本開示に従う、PAR4切断及び/またはシグナリングを阻害するPAR4結合タンパク質の治療有効量を投与することを含み、当該対象が二重のPAR1/PAR4血小板受容体レパートリーを有する、方法を提供する。
【0109】
好ましくは、対象はヒトである。
【0110】
本開示は追加的に、医学分野における、本開示のPAR4結合タンパク質または核酸または発現コンストラクトまたは細胞または組成物の使用を提供する。
【0111】
本開示は追加的に、血栓症または血栓塞栓性障害を治療または予防するための医薬品製造における、本開示のPAR4結合タンパク質または核酸または発現コンストラクトまたは細胞または組成物の使用を提供する。
【0112】
本開示は追加的に、試料中のPAR4を検出するための方法であって、試料を本開示のPAR4結合タンパク質または抗体に接触させて抗原-タンパク質複合体を形成することと、複合体を検出することとを含み、複合体を検出することが試料中のPAR4を示す、方法を提供する。
【0113】
本開示は、ヒトPAR4のアンタゴニスト抗体を生成するための、医薬的に許容される担体と共に配列番号4に従う配列を含むまたはそれからなるワクチン抗原も提供する。
【0114】
本開示は、トロンビンの存在下でPAR-4の切断を阻害しない、または部分的にのみ阻害するPAR-4結合タンパク質も提供する。
【0115】
したがって、1つの例において、本開示は、以下を含むPAR4結合タンパク質も提供する:
(i)配列番号32に示される配列に対し少なくとも50%同一である配列を含むVH、またはそのヒト化、キメラ、もしくは脱免疫化バージョン;及び/または
(ii)配列番号33に示される配列に対し少なくとも85%同一である配列を含むVL、またはそのヒト化、キメラ、または脱免疫化バージョン。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【
図1】PAR4のトロンビン切断及び活性化部位の細胞外位置ならびに本明細書に記載の抗体の抗PAR4標的領域の模式図を示している。
【
図2】フローサイトメトリーによる定量化で、N末端FLAGタグを含むヒトPAR4を形質移入したHEK293細胞の細胞表面上に存在するインタクトPAR4のパーセンテージを示している。細胞は、第1のハイブリドーマスクリーンから取得した5つの異なるハイブリドーマ上清(MoB5ARC3、MoB5BRB4、MoB5BRC6、MoB5BBRH3、及びMoB5CRC4)で前処置してからトロンビンで処置した(2U/mlで10分間)。陽性対照はポリクローナル抗PAR4抗体とした(French et al(2016)Journal of Thrombosis and Haemostasis 14:1642-1654)。データは、3つの個別データポイントにおける平均+平均の標準誤差である。
【
図3】フローサイトメトリーによる定量化で、N末端FLAGタグを含むPAR4を形質移入したHEK293細胞の細胞表面上に存在するインタクトPAR4のパーセンテージ(FLAGエピトープ%による測定)を示している。細胞を、5A.RC3の2つのサブクローン(B6b及びH4bと呼ばれる)からの上清で前処置してから、トロンビンで処置した(2U/mlで10分間)。データは、4つの個別データポイントにおける平均+平均の標準誤差である。
【
図4】フローサイトメトリーによる定量化で、N末端FLAGタグを含むヒトPAR4のThr120またはAla120のいずれかを形質移入したHEK293細胞の細胞表面上に存在するインタクトPAR4のパーセンテージ(FLAGエピトープ%による測定)を示している。細胞を、示されるような様々な濃度の5A.RC3サブクローンで前処置し、次いでトロンビン(2U/ml)で処置した。
【
図5】(A)免疫原PAR4ならびにPAR1、2、及び3の対応領域に対応する固定したタンパク質に対する5A.RC3(濃色)及び5B.RB4(淡色)のハイブリドーマ上清の結合のELISAベーススクリーニングと、(B)5A.RC3サブクローンのPAR4抗体のヒトPAR4ペプチドに対する結合親和性のBiacore分析(異なる濃度で測定)とを示している。
【
図6】5A.RC3はAla120及びThr120両方のPAR4バリアントのトロンビン切断を阻害する。PAR4バリアントのトロンビン切断を評価するため、HEK293T細胞に、トロンビン切断部位の上流のFLAGエピトープを含むPAR4-120AlaまたはPAR4-120Thrいずれかのバリアントを一過的に形質移入した。(A)細胞を漸増用量(0.1~2U/mL)のトロンビンで刺激し、FITC結合体化抗FLAG抗体を用いて、フローサイトメトリーによりトロンビン切断の量をFLAGエピトープの喪失として測定した。(B)トロンビン刺激の前に形質移入細胞を5A.RC3と共にプレインキュベートすることで、PAR4バリアントに関係なく、同じ程度でほぼ完全なトロンビン切断阻害がもたらされた。5A.RC3の1、10、100μg/mlの用量を比較した。
【
図7】5A.RC3サブクローンは、PAR4 Thr120バリアントを有するドナーにおける上方制御されたトロンビン誘導血小板凝集応答を阻害する。異なるPAR4バリアントのヒト単離血小板において、PAR4アゴニストに対する血小板凝集応答に対する応答を評価した。予測の通り、Tアレルの存在は、中用量範囲の(A)PAR4-AP及び(B)トロンビンに応答したより高い最大凝集に関連する。類似の傾向は、(C)ボラパキサル(90nM)によるPAR1遮断の存在下でのトロンビン刺激の場合でも観察される。(D)PAR1アンタゴニストの存在下におけるトロンビン誘導血小板凝集応答(すなわち、PAR4依存的)に対する5A.RC3阻害活性の濃度応答は、Thr120バリアントに対する有効性を示しており、これは抗体媒介のPAR4阻害が全ての遺伝子型に対し同様に有効であることを示すものである。(E)PAR4依存的トロンビン誘導血小板凝集における5A.RC3阻害活性のIC50。
【
図8】フローサイトメトリーによってアイソタイプ対照に対し示されるように、5A.RC3(10ug/mL)が単離血小板中のヒトPAR4に結合することを示している。
【
図9】PAR4遺伝子型が凝固促進性血小板表現型の増加に関連し、抗体媒介阻害により標的化可能であることを示している。(A)PAR4活性化ペプチド(AP)刺激、及び(B)トロンビン刺激に応答したホスファチジルセリン露出を測定することにより、ヒト単離血小板の凝固促進活性を評価した。Thr120バリアントが、PAR4-AP刺激血小板におけるPS露出の増加をもたらすことに留意されたい。類似の傾向はトロンビン刺激血小板でも観察される。(C)5A.RC3サブクローンによる前処置は、ドナー遺伝子型に関係なく、トロンビン誘導ホスファチジルセリン露出を用量依存的に阻害した。
【
図10-1】5A.RC3サブクローンがドナー遺伝子型に関係なく血栓症を阻害することを示している。以下の血栓症パラメーターを、凝固条件下のヒト全血血栓症アッセイにおいて、10分の期間にわたりリアルタイムで測定した:(A)血小板沈着(PE結合体化抗CD9)、トロンビン活性(FRETベースのトロンビンプローブ)、フィブリン体積(Dylight650結合体化抗フィブリン抗体)、及び血栓当たりのフィブリンの比(示されているデータは10分エンドポイント時のものである)。直接的なトロンビン阻害物質ヒルジン(800U/mL)が、血小板沈着の継続にもかかわらず、トロンビン活性及びフィブリン体積を消失させたことに留意されたい。
【
図10-2】5A.RC3サブクローンがドナー遺伝子型に関係なく血栓症を阻害することを示している。以下の血栓症パラメーターを、凝固条件下のヒト全血血栓症アッセイにおいて、10分の期間にわたりリアルタイムで測定した:(B~E)PAR4遺伝子型全体においてこれらのパラメーターの有意差は観察されなかった。5A.RC3(白抜きのバー、100μg/mL)は、対照(黒色のバー)との比較で、(F)血小板沈着に対しては影響を及ぼさなかったが、(G)トロンビン活性、(H)フィブリン体積、及び(I)血栓体積当たりのフィブリンの比に対しては有意に阻害した。データは、遺伝子型当たりN=4~6の平均±SEMである(合計n=15、色はPAR4遺伝子型を示す:黒色の丸=AA、灰色の丸=AT、白色の丸=TT)。(G)及び(H)については、データをヒルジンベースラインに対し正規化し、未処置対照のパーセンテージとして表現した。統計的有意性は一元配置ANOVA(B~E)またはスチューデントT検定(F~G)により決定した。*はP<0.05を示す。
【
図11】血小板凝集に対する最初のハイブリドーマ上清の機能的スクリーニングを示す。
【
図12】IMGTナンバリングに従って同定されたCDRを伴うMoB5A-RC3.F10b.H4b(5A.RC3)のVH(A)及びVL(B)のアミノ酸配列を示している。VH=重鎖可変領域、VL=軽鎖可変領域、CDR=相補性決定領域、及びFWR=フレームワーク領域。この抗体はPAR4阻害機能を示した。
【
図13】IMGTナンバリングに従って同定されたCDRを伴うMoB5H-RD2.A7b(5H.RD2)のVH(A)及びVL(B)のアミノ酸配列を示している。VH=重鎖可変領域、VL=軽鎖可変領域、CDR=相補性決定領域、及びFWR=フレームワーク領域。この抗体は、PAR4に結合したものの、PAR4に対する阻害機能を示さなかった。
【
図14】IMGTナンバリングに従って同定されたCDRを伴うMoB5F-RF3.A7b.C9(5F.RF3)のVH(A)及びVL(B)のアミノ酸配列を示している。VH=重鎖可変領域、VL=軽鎖可変領域、CDR=相補性決定領域、及びFWR=フレームワーク領域。この抗体はPAR4阻害機能を示した。
【
図15】ELISAによる精製mAbのhPAR4ペプチドとの反応性を示している。用量依存的方式でhPAR4ペプチドに結合した精製mAbが、アルカリホスファターゼ(Ap)と結合体化した抗マウスFcにより検出された。無関係の非PAR4抗原に対し産生したIC(アイソタイプ対照)mAbの場合には、結合が観察されなかった。
【
図16】ELISAにより10μg/mlにおいて、精製抗HPAR4 mAbがhPAR4ビオチン化ペプチドに対し特異的に結合し、hPAR1、hPAR2、及びhPAR3(ビオチン化ペプチド)に対しては非特異的に反応しないことを示している。
【
図17】フローサイトメトリーによる精製抗hPAR4 mAb vsアイソタイプ対照のヒト単離血小板に対する濃度依存的結合を示している。幾何平均蛍光強度として表現された生データが示されている。各mAbは濃度依存的に結合している。N=3~5。データポイントは平均±SEMである。
【
図18】3種の抗hPAR4 mAbクローンによる0.1U/mlトロンビンにより誘導されるヒト血小板凝集の濃度依存的阻害を示している。試験した最高濃度において各クローンによるほぼ最大限の阻害が達成された。これらの濃度阻害曲線から測定されたIC
50値(μg/ml)も図中に示されている。N=4~8。データポイントは平均±SEMである。
【
図19】モノクローナル抗体5A.RC3及び5D.RH4によるヒト血栓形成の阻害を示している。5D.RH4または5A.RC3(共に100μg/ml)いずれかによる血液の前処置により、合計血栓体積が低減した。個別のデータポイントが示されている。バーは平均±SEMである。*P<0.05(対応のないスチューデントt検定)。
【
図20】IMGTナンバリングシステムに従う相補性決定領域(CDR)を示す抗PAR4 mAbの可変重鎖の配列を示している。
【
図21】IMGTナンバリングシステムに従う相補性決定領域(CDR)を示す抗PAR4 mAbの可変軽鎖の配列を示している。
【
図22】抗hPAR4 mAbのエピトープマッピングのための合成ペプチドを示している。元のヒトPAR4抗原にまたがる重複ペプチドを合成した。これらは、アミノ酸残基1~9、アミノ酸残基8~15、及びアミノ酸置換11~20からなった。トロンビン切断部位の配列は下線で示されている。多量体の形成を防止するためにC末端システイン残基を除去した。
【
図23】精製hPAR4 mAbとペプチド1~9、ペプチド8~15、及びペプチド11~20との反応性を示している。吸光度の値はバックグラウンドレベルから差し引いた。非hPAR4対照mAbは、3つのペプチドのいずれに対しても反応しなかった。
【0117】
配列表の解説
配列番号1:PAR4のエピトープ配列
配列番号2:hPAR4の配列(裸)
配列番号3:mPAR4の配列(裸)
配列番号4:免疫原として使用したhPAR4(KLH)の配列
配列番号5:免疫原として使用したmPAR4(KLH)の配列
配列番号6:mPAR4(ビオチン)の配列
配列番号7:hPAR4(ビオチン)の配列
配列番号8:hPAR3(ビオチン)の配列
配列番号9:hPAR2(ビオチン)の配列
配列番号10:hPAR1(ビオチン)の配列
配列番号11:5A.RC3 VHのアミノ酸配列
配列番号12:5A.RC3 VLのアミノ酸配列
配列番号13:5A.RC3 VH CDR1の配列
配列番号14:5A.RC3 VH CDR2の配列
配列番号15:5A.RC3 VH CDR3の配列
配列番号16:5A.RC3 VL CDR1の配列
配列番号17:5A.RC3 VL CDR2の配列
配列番号18:5A.RC3 VL CDR3の配列
配列番号19:ヒトPAR4の配列
配列番号20:5A.RC3 VHの核酸配列
配列番号21:5A.RC3 VLの核酸配列
配列番号22:5A.RC3 VHのアミノ酸配列
配列番号23:5F.RF3 VLのアミノ酸配列(5F.RF3)
配列番号24:5F.RF3 VH CDR1の配列
配列番号25:5F.RF3 VH CDR2の配列
配列番号26:5F.RF3 VH CDR3の配列
配列番号27:5F.RF3 VL CDR1の配列
配列番号28:5F.RF3 VL CDR2の配列
配列番号29:5F.RF3 VL CDR3の配列
配列番号30:5F.RF3 VHの核酸配列
配列番号31:5F.RF3 VLの核酸配列
配列番号32:5H.RD2 VHのアミノ酸配列
配列番号33:5H.RD2 VLのアミノ酸配列
配列番号34:5H.RD2 VH CDR1の配列
配列番号35:5H.RD2 VH CDR2の配列
配列番号36:5H.RD2 VH CDR3の配列
配列番号37:5H.RD2 VL CDR1の配列
配列番号38:5H.RD2 VL CDR2の配列
配列番号39:5H.RD2 VL CDR3の配列
配列番号40:5H.RD2 VHの核酸配列
配列番号41:5H.RD2 VLの核酸配列
配列番号42:エピトープ配列
配列番号43:エピトープ配列
配列番号44:エピトープ配列
配列番号45:5I.RG1 VHのアミノ酸配列
配列番号46:5I.RG1 VLのアミノ酸配列
配列番号47:5I.RG1 VH CDR1の配列
配列番号48:5I.RG1 VH CDR2の配列
配列番号49:5I.RG1 VH CDR3の配列
配列番号50:5I.RG1 VL CDR1の配列
配列番号51:5I.RG1 VL CDR2の配列
配列番号52:5I.RG1 VL CDR3の配列
配列番号53:5G.RA1 VHのアミノ酸配列
配列番号54:5G.RA1 VLのアミノ酸配列
配列番号55:5G.RA1 VH CDR1の配列
配列番号14:5G.RA1 VH CDR2の配列
配列番号56:5G.RA1 VH CDR3の配列
配列番号57:5G.RA1 VL CDR1の配列
配列番号28:5G.RA1 VL CDR2の配列
配列番号58:5G.RA1 VL CDR3の配列
配列番号89:5D.RH4 VHのアミノ酸配列
配列番号90:5D.RH4 VLのアミノ酸配列
配列番号59:5D.RH4 VH CDR1の配列
配列番号60:5D.RH4 VH CDR2の配列
配列番号61:5D.RH4 VH CDR3の配列
配列番号57:5D.RH4 VL CDR1の配列
配列番号28:5D.RH4 VL CDR2の配列
配列番号62:5D.RH4 VL CDR3の配列
配列番号91:5H.RH4 VHのアミノ酸配列
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配列番号63:5H.RH4 VH CDR1の配列
配列番号64:5H.RH4 VH CDR2の配列
配列番号65:5H.RH4 VH CDR3の配列
配列番号66:5H.RH4 VL CDR1の配列
配列番号51:5H.RH4 VL CDR2の配列
配列番号67:5H.RH4 VL CDR3の配列
配列番号93:5G.RF6 VHのアミノ酸配列
配列番号94:5G.RF6 VLのアミノ酸配列
配列番号68:5G.RF6 VH CDR1の配列
配列番号14:5G.RF6 VH CDR2の配列
配列番号69:5G.RF6 VH CDR3の配列
配列番号57:5G.RF6 VL CDR1の配列
配列番号28:5G.RF6 VL CDR2の配列
配列番号58:5G.RF6 VL CDR3の配列
配列番号95:5G.RD6 VHのアミノ酸配列
配列番号95:5G.RD6 VLのアミノ酸配列
配列番号70:5G.RD6 VH CDR1の配列
配列番号71:5G.RD6 VH CDR2の配列
配列番号72:5G.RD6 VH CDR3の配列
配列番号57:5G.RD6 VL CDR1の配列
配列番号28:5G.RD6 VL CDR2の配列
配列番号58:5G.RD6 VL CDR3の配列
配列番号97:5H.RA3 VHのアミノ酸配列
配列番号98:5H.RA3 VLのアミノ酸配列
配列番号55:5H.RA3 VH CDR1の配列
配列番号73:5H.RA3 VH CDR2の配列
配列番号74:5H.RA3 VH CDR3の配列
配列番号57:5H.RA3 VL CDR1の配列
配列番号28:5H.RA3 VL CDR2の配列
配列番号58:5H.RA3 VL CDR3の配列
配列番号99:5G.RG1 VHのアミノ酸配列
配列番号100:5G.RG1 VLのアミノ酸配列
配列番号75:5G.RG1 VH CDR1の配列
配列番号76:5G.RG1 VH CDR2の配列
配列番号77:5G.RG1 VH CDR3の配列
配列番号78:5G.RG1 VL CDR1の配列
配列番号28:5G.RG1 VL CDR2の配列
配列番号62:5G.RG1 VL CDR3の配列
配列番号101:5H.RG4 VHのアミノ酸配列
配列番号102:5H.RG4 VLのアミノ酸配列
配列番号79:5H.RG4 VH CDR1の配列
配列番号80:5H.RG4 VH CDR2の配列
配列番号81:5H.RG4 VH CDR3の配列
配列番号57:5H.RG4 VL CDR1の配列
配列番号28:5H.RG4 VL CDR2の配列
配列番号58:5H.RG4 VL CDR3の配列
配列番号103:5G.RC5 VHのアミノ酸配列
配列番号104:5G.RC5 VLのアミノ酸配列
配列番号82:5G.RC5 VH CDR1の配列
配列番号80:5G.RC5 VH CDR2の配列
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配列番号57:5G.RC5 VL CDR1の配列
配列番号51:5G.RC5 VL CDR2の配列
配列番号58:5G.RC5 VL CDR3の配列
配列番号105:5F.RE6 VHのアミノ酸配列
配列番号106:5F.RE6 VLのアミノ酸配列
配列番号55:5F.RE6 VH CDR1の配列
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配列番号84:5F.RE6 VL CDR1の配列
配列番号51:5F.RE6 VL CDR2の配列
配列番号85:5F.RE6 VL CDR3の配列
配列番号107:5H.RF2 VHのアミノ酸配列
配列番号108:5H.RF2 VLのアミノ酸配列
配列番号86:5H.RF2 VH CDR1の配列
配列番号87:5H.RF2 VH CDR2の配列
配列番号88:5H.RF2 VH CDR3の配列
配列番号109:5H.RF2 VL CDR1の配列
配列番号51:5H.RF2 VL CDR2の配列
配列番号85:5H.RF2 VL CDR3の配列。
【発明を実施するための形態】
【0118】
概要
本明細書全体において、別段の明記がない限り、または文脈上他の意味が要求されない限り、単一のステップ、物質の組成物、ステップの群、または物質の組成物の群への言及は、これらのステップ、物質の組成物、ステップの群、または物質の組成物の群のうちの1つ及び複数(すなわち1つ以上)を包含するように解釈するものとする。
【0119】
当業者は、本開示が、具体的に記載されているものの他にも変形形態及び変更形態が生じやすいことを理解するであろう。本開示が全てのこのような変形形態及び変更形態を含むことを理解されたい。本開示は、本明細書中で個別にまたは集合的に言及または示された全てのステップ、特色、組成物、及び化合物、ならびに当該ステップまたは特色のあらゆる組合せまたは任意の2つ以上も含む。
【0120】
本開示は、本明細書に記載の特定の例によって範囲を限定されないものとする。このような特定の例は、例示のために意図されているに過ぎない。機能的に等価の産物、組成物、及び方法は、明らかに本開示の範囲内にある。
【0121】
本開示の任意の例は、別段の明記がない限り、必要な変更を考慮しながら本開示の任意の他の例に適用されるように解釈するものとする。
【0122】
別段の具体的な定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当該技術分野の(例えば、細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学における)当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有するように解釈するものとする。
【0123】
別段の指示がない限り、本開示で利用される組換えタンパク質、細胞培養、及び免疫学的技法は、当業者に周知された標準的な手順である。このような技法は文献全体において、例えば、Perbal(1984),Sambrook et al.(1989)、Brown(1991)、Glover and Hames(1995及び1996)、ならびにAusubel et al.(1988、現在に至るまでの全ての改訂を含む)、Harlow and Lane(1988)、Coligan et al.(現在までの全ての改訂を含む)、ならびにZola(1987)のような出典で記載及び説明されている。
【0124】
本明細書における可変領域及びその一部、免疫グロブリン、抗体及びその断片の記載及び定義は、Kabat(1987及び/または1991)、Bork et al.(1994)、及び/またはChothia and Lesk(1987及び/または1989)、またはAl-Lazikani et al.(1997)、またはLefranc M.-P.(1997)Immunology 5 Today 18,509のIMGTナンバリングにおける考察により、さらに明らかにされ得る。
【0125】
本明細書全体において、「含む(comprise)」という語、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などのバリエーションは、述べられた要素、整数、もしくはステップ、または要素、整数、もしくはステップの群を含み、ただし任意の他の要素、整数、もしくはステップ、または要素、整数、もしくはステップの群を除外しないように理解されたい。
【0126】
本明細書で使用される場合、「~に由来する」という用語は、指定の完全体が、特定の供給源から取得することができること(ただし、必ずしもその供給源から直接取得されるとは限らない)を示すものと解釈されたい。
【0127】
本発明は、当業者の技能範囲の従来的な分子生物学、微生物学、及び組換えDNA技法を用いる。例えば、Sambrook et al“Molecular Cloning”A Laboratory Manual(1989)を参照。
【0128】
選択された定義
本明細書で使用される場合、文脈による明確な別段の定めがない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」には複数の指示対象が含まれる。「a」(または「an」)、ならびに「1つ以上」及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書では互換的に使用され得る。
【0129】
さらに、本明細書で使用される場合の「及び/または」は、他方を伴うまたは伴わない2つの指定された特色または構成要素を具体的に開示するものとして解釈するものとする。したがって、「A及び/またはB」のような表現で使用される場合の「及び/または」という用語は、「A及びB」、「AまたはB」、「A」(単独)、ならびに「B」(単独)を含むように意図されている。同様に、「A、B、及び/またはC」のような表現で使用される場合の「及び/または」という用語は、以下の実施形態の各々を包含するように意図されている:A、B、及びC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)。
【0130】
「約」という用語は、本明細書では、およそ、大まかに、~前後、または~の領域内を意味するように使用される。「約」という用語が数値範囲と共に使用される場合、「約」は、記載値の上方及び下方に境界を広げることにより、その範囲を変更する。概して、本明細書において「約」という用語は、ある数値を、記載値に対し10パーセント(%)上または下(高いまたは低い)の変化量で上方及び下方に超えるように変更するために使用される。
【0131】
本明細書に記載のPAR4結合タンパク質及び抗体、核酸、細胞、ならびにベクターは単離された形態であることが理解されよう。「単離された」とは、天然に見いだされない形態のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、または細胞を意味する。単離されたポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、または細胞には、もはや天然に見いだされる形態ではない程度まで精製されたものが含まれる。いくつかの態様において、単離された抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、または細胞は実質的に純粋である。いくつかの態様において、単離された抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、または細胞は「組換え型」である。
【0132】
本明細書で使用される場合、「プロテアーゼ活性化受容体(PAR4)」という用語は、トロンビンまたはトロンビンアゴニストにより特異的に活性化され、よってPAR4媒介シグナリング事象(例えば、ホスホイノシチド加水分解、Ca流出、血小板凝集)を活性化する、脊椎動物細胞表面タンパク質の全てまたは一部を意味する。このポリペプチドは、本明細書に記載のリガンド活性化特性(アゴニスト活性化及びアンタゴニスト阻害の特性を含む)ならびに組織分布を有することを特徴とする。この用語は、トロンビンに結合可能なこれらのPAR4部分または配列番号2に示されるPAR4受容体部分を含む。
【0133】
「PAR4アンタゴニスト」という用語は、PAR4に結合し、PAR4切断及び/またはシグナリングを阻害する血小板凝集の阻害物質を意味する。典型的には、PAR4活性は、対照細胞におけるこのような活性に比べて少なくとも10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、または100%、用量依存的に低減される。対照細胞とは、化合物で処置されていない細胞である。PAR4活性は、本明細書に記載の方法(例えば、PAR4発現細胞におけるカルシウム動員、血小板凝集、例えばカルシウム動員、p-セレクチン、もしくはCD40L放出を測定する血小板活性化アッセイ、または血栓症及び止血モデル)を含めた、当技術分野における任意の標準的な方法によって測定される。
【0134】
「hPAR4」すなわち「ヒトPAR4」という用語は、完全ヒト抗体を指す。命名及び非限定の目的で、hPAR4のアミノ酸配列は配列番号19に示されている。
【0135】
本明細書で使用される場合、「mAb」という用語は、マウス定常領域配列及びヒト可変領域配列を含むモノクローナル抗体を指すように意図されている。
【0136】
「抗体」という用語は、天然の、または部分的もしくは完全に合成的に産生された、または組換えで産生された免疫グロブリンを説明する。この用語は、抗体結合ドメインである、または抗体結合ドメインに相同である結合ドメインを有する任意のポリペプチドまたはタンパク質も網羅する。CDR移植抗体もこの用語で企図されている。「抗体」とは、特定のエピトープに結合する任意の免疫グロブリンであり、抗体及びその断片がこれに含まれる。この用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多価抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、及びヒト抗体を包含する。また、「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互接続される少なくとも2つの免疫グロブリン重(H)鎖及び2つの免疫グロブリン軽(L)鎖、またはこれらの抗原結合部分を含むタンパク質も指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略記される)及び重鎖定常領域(本明細書ではCHと略記される)から構成される。CHは、通常、3つのドメイン、CH1、CH2、及びCH3から構成される(例えば、IgMは追加の領域ドメインCH4を有する)。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略記される)及び軽鎖定常領域(本明細書ではCLと略記される)から構成される。CLは1つのドメインから構成され、ラムダまたはカッパタイプのものとすることができる。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分することができ、この領域は、フレームワーク領域(FWR)と称されるより保存的な領域と共に散在する。各VH及びVLは3つのCDR及び4つのFWRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端にかけて以下の順:FWR1、CDR1、FWR2、CDR2、FWR3、CDR3、FWR4に並んでいる。あるいくつかの実施形態において、VH及びVLは共に、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。他の実施形態において、単一のVHドメインまたは単一VLドメインは、抗原と特異的に相互作用し得る。抗体のCHドメインは、免疫グロブリンが、免疫システムの様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)、血管壁を覆う細胞、免疫グロブリンのCHドメインのための他の細胞発現受容体、及び古典的相補システムの第1の構成要素(C1q)を含む、宿主組織または因子に結合するのを媒介することができる。抗体分子は、任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、またはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)のものとすることができる。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、重鎖及び/または軽鎖の部分が、特定の種に由来する抗体内または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である一方で、鎖(複数可)の残部は別の種に由来する抗体内または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体も含み、加えて、所望の生物学的活性を示す限りでは、このような抗体の断片も含む(米国特許第4,816,567号及びMorrison et al,Proc. Natl. Acad. Sci.USA 81:6851-6855(1984))。脊椎動物系における基本的な抗体構造は十分に理解されている。例えば、Harlow et al.(1988)Antibodies:A Laboratory Manual(2nd ed.;Cold Spring Harbor Laboratory Press)を参照。任意の「抗原結合断片」も「抗体」という用語の意味の中に含まれている。
【0137】
「抗原結合断片」という用語は、抗原(例えば、PAR4)に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1つ以上の断片を指す。全長抗体の断片は、抗体の抗原結合機能を実施することができる。抗体の「抗原結合断片」という用語内に包含される結合断片の例としては、(i)Fab断片、すなわち、VL及びCL、VH及びCH1ドメインからなる1価の断片;(ii)F(ab)2断片、すなわち、ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋によって連結する2つのFab断片を含む2価の断片;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVH及びCLドメインからなるFv断片;(v)VHドメインまたはVLドメインのみからなる、単一ドメイン抗体断片またはdAb(Ward et al.,Nature 341:544-546(1989));ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VH及びVLは別々の遺伝子によってコードされるが、これらは、組換え法または合成法を用いて、例えば、単一タンパク質鎖としての作製を可能にする合成リンカーにより、結合することができ、このとき、VH及びVL領域は対合して1価の分子(1本鎖Fv(scFv)として知られる)を形成する(例えば、Bird et al.(1988) Science 242:423-426及びHuston et al.(1988)Proc. Natl. Acad. Sci.USA 85:5879-5883)。scFvは、抗体の「抗原結合断片」という用語内にも包含される。これらの抗体断片は、当業者に知られている従来的な技法を用いて取得され、そしてこの断片は、インタクト抗体と同じ方式で有用性のスクリーニングが行われる。
【0138】
本明細書で使用される場合、「抗体可変領域」とは、相補性決定領域(CDR;すなわち、CDR1、CDR2、及びCDR3)ならびにフレームワーク領域(FWR)のアミノ酸配列を含めた抗体分子の軽鎖及び重鎖の部分を指す。VHとは重鎖の可変領域を指す。VLとは軽鎖の可変領域を指す。本発明で使用される方法によれば、CDR及びFRに割り当てられたアミノ酸位置は、Kabat(Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1987及び1991))もしくはChotia and Lesk 1987 J.Mol Biol.196:901-917)に従って、またはIMGTナンバリングシステムに従って定義することができる。
【0139】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体は、特定のエピトープに対する単一結合特異性及び親和性を示す。モノクローナル抗体は、任意の動物から、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタなどから生成することができ、または合成的に生成し、部分的または完全にヒト配列とすることができる。
【0140】
本明細書で使用される場合、「ポリクローナル抗体」という用語は、抗原に対する抗体を生成するために抗原を注射した哺乳類の血清から精製された抗体の混合物を指す。ポリクローナル抗体は、任意の哺乳類から、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヒトなどから生成することができ、または、例えば、VH及びVL遺伝子ファージディスプレイライブラリーとして、合成的に生成することができる。
【0141】
「キメラ抗体」という用語は、重鎖及び/または軽鎖の部分が、特定の種(例えば、ネズミ科動物)に由来する抗体内または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である一方で、鎖(複数可)の残部は別の種(例えば、霊長類)に由来する抗体内または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である抗体を指し、加えて、所望の生物学的活性を示す限りでは、このような抗体の断片も指す。
【0142】
「ヒト化抗体」という用語は、概して組換え技法を用いて調製され、非ヒト種からの免疫グロブリンに由来するエピトープ結合部位を有し、分子の残りの免疫グロブリン構造がヒト免疫グロブリンの構造及び/または配列に基づく、キメラ分子を指すように理解するものとする。抗原結合部位は、好ましくは、ヒト抗体の可変ドメイン内の適切なフレームワーク領域に移植した非ヒト抗体からの相補性決定領域(CDR)と、ヒト抗体からの残りの領域とを含む。
【0143】
「ヒト抗体」という用語は、本明細書で抗体分子及び結合タンパク質と共に使用される場合、可変抗体領域(例えば、VH、VL、CDR、及びFR領域)と、ヒトに(例えば、ヒトの生殖細胞または体細胞に)見いだされる配列に由来するまたは対応する定常抗体領域とを指す。
【0144】
「IMGTナンバリング」とは、本明細書で使用される場合、抗体可変領域のCDR及びFWR配列を同定するために使用されるナンバリングシステムを指す。IMGTユニークナンバリングは、任意の抗原受容体、鎖のタイプ、または種における可変ドメインを比較するために定義されている(Lefranc M.-P.,Immunology 5 Today 18,509(1997)/Lefranc M.-P.,The Immunologist,7,132-136(1999)/Lefranc,M.-P.,Pommie,C.,Ruiz,M.,Giudicelli,V.,Foulquier,E.,Truong,L.,ThouveninContet,V.and Lefranc,Dev. Comp. Immunol.,27,55-77(2003))。IMGTユニークナンバリングにおいて、保存アミノ酸は常に同じ位置にあり、例えば、システイン23(1st CYS)、トリプトファン41(CONSERVED-TRP)、疎水アミノ酸89、システイン104(2nd CYS)、フェニルアラニンまたはトリプトファン118(J-PHEまたはJ-TRP)となる。IMGTユニークナンバリングは、フレームワーク領域(FR1-IMGT:位置1~26、FR2-IMGT:位置39~55、FR3-IMGT:66~104、及びFR4-IMGT:118~128)及び相補性決定領域(CDR1-IMGT:27~38、CDR2-IMGT:56~65、及びCDR3-IMGT:105~117)の標準化された境界を提供する。ギャップは占有されていない位置を表すことから、CDR-IMGT長は決定的な情報となる。IMGTユニークナンバリングは、IMGT Colliers de Perlesという名称の2D図式表現(Ruiz,M.and Lefranc,M.-P.,Immunogenetics,53,857-883(2002)/Kaas,Q.and Lefranc,M.-P.,Current Bioinformatics,2,21-30(2007))及びIMGT/3Dstructure-DBにおける3D構造(Kaas,Q.,Ruiz,M.and Lefranc,M.-P.,T cell receptor and MHC structural data. Nucl.Acids. Res.,32,D208-D210(2004))で使用されている。
【0145】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」という用語は、本開示のタンパク質が、代替的な細胞または物質よりも高頻度に、迅速に、長い持続期間で、及び/または高い親和性で、特定の細胞または物質と反応または会合することを意味するように解釈するものとする。また、この定義を読み取ることにより、例えば、第1の抗原に対し特異的に結合するタンパク質は、第2の抗原に対し特異的に結合する場合もあればそうでない場合もあることも理解される。そのため「特異的な結合」は、必ずしも排他的結合や別の抗原の非検出可能な結合を要件とせず、これは「選択的結合」という用語が意味するところである。
【0146】
「形質移入された」及び「形質移入細胞」などは、遺伝子操作を用いて、自らの中に(またはその祖先の中に)PAR4をコードするDNA分子(またはその生物学的に活性の断片もしくはアナログをコードするDNA)が導入された細胞を意味する。このようなDNA分子は「発現向けに位置付けられて」いる。これは、DNA分子が、配列の転写及び翻訳を指示する(すなわち、PAR4タンパク質またはその断片もしくはアナログの産生を推進する)DNA配列の隣に位置付けられていることを意味する。
【0147】
「同一性」という用語及びその文法上の変形形態は、言及された2つ以上の実体が同じであることを意味する。したがって、2つの抗体配列が同一である場合、これらは、少なくとも参照された領域または部分内で、同じアミノ酸配列を有する。2つの核酸配列が同一である場合、これらは、少なくとも参照された領域または部分内で、同じポリヌクレオチド配列を有する。同一性は、配列の定義されたエリア(領域またはドメイン)に対するものである場合もある。ポリヌクレオチドの同一性%は、GAP(Needleman and Wunsch,J.Mol Biol.48:444-453.1970)分析(GCGプログラム)により測定され、ギャップ作成ペナルティー=5及びギャップ延長ペナルティー=0.3とする。別段の記載がない限り、クエリー配列は少なくとも45ヌクレオチド長であり、GAP分析は2つの配列を少なくとも45ヌクレオチドの領域にわたってアラインメントする。好ましくは、クエリー配列は少なくとも100ヌクレオチド長であり、GAP分析は少なくとも100ヌクレオチドの領域にわたって2つの配列をアラインメントする。最も好ましくは、2つの配列はその全長にわたってアラインメントされる。
【0148】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、少なくとも1つの治療的または生物学的に活性の薬剤を含み、患者への投与に好適である任意の組成物を意味する。このような製剤のいずれも当技術分野で周知され容認されている方法によって調製することができる。例えば、Gennaro,A.R.,ed.,Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(2000)を参照。
【0149】
「医薬的に許容される」という表現は、妥当な医学的評価の範囲内で、合理的な利益/リスク比に応じて、過度な毒性、刺激、アレルギー応答、及び/またはその他の問題もしくは合併症を伴うことなく、ヒト及び動物の組織と接触して使用するのに好適な化合物、材料、組成物、及び/または剤形を指すために本明細書で用いられる。
【0150】
本明細書で使用される場合、「治療する」または「治療」という用語は、療法的治療及び予防的または防止的な措置の両方を指し、その目的は、望ましくない生理学的変化または障害(例えば、血栓塞栓症(例えば、急性冠動脈症候群)の進行)を予防または緩徐化(軽減)することである。有益なまたは望ましい臨床的結果としては、以下に限定されないが、症状の軽減、疾患程度の減弱、疾患状態の安定化(すなわち、悪化していないこと)、疾患進行の遅延または緩徐化、疾患状態の改善または緩和、及び軽快(部分的または全体的)が挙げられ、検出可能なものも検出不可能なものも含まれる。「治療」は、治療を受けていない場合に予想される生存期間に比べて生存期間を延長することも意味する場合がある。治療が必要な者としては、状態もしくは障害を既に有する者、ならびに状態もしくは障害を有する傾向にある者、または状態もしくは障害を防止する必要がある者が挙げられる。
【0151】
本明細書で使用される場合、「予防」または「防止」とは、哺乳類、特にヒトにおける無症状の疾患状態に対する防止的治療を指し、臨床的疾患状態が発生する可能性を低減することを目的としている。患者は、一般集団に比べて臨床的疾患状態を患うリスクを増加させることが知られている因子に基づいて防止的療法が選択される。「予防」療法は、(a)一次防止及び(b)二次防止に分類される。一次防止は、臨床的疾患状態をまだ提示していない対象における治療として定義され、他方二次防止は、同じまたは同様の臨床的疾患状態の二次発生を防止することとして定義される。
【0152】
「治療有効量」という用語は、PAR4活性化の1つ以上の症状を、その障害において臨床的に特有なものとして観察及び容認されるレベル未満まで低減または阻害するためのPAR4結合タンパク質または抗体の十分な量を意味するように解釈するものとする。当業者は、このような量は特定の抗体、断片、及び/または特定の対象、及び/または重症度のタイプもしくは障害のレベルに応じて変動することを認識しているであろう。したがって、この用語は、本発明を特定の量に限定するように解釈されるべきではない。
【0153】
本明細書で使用される場合、「PAR4アンタゴニスト療法」という用語は、PAR4アンタゴニストによる対象の治療を意味する。
【0154】
「対象」とは、診断、予後判定、または療法が所望される任意の対象、特に哺乳類対象を意味する。本明細書に使用される場合、用語「対象」は任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」という用語は、全ての脊椎動物、例えば、哺乳類及び非哺乳類、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、クマ、ニワトリ、両生類、爬虫類などを含む。本明細書で使用される場合、「PAR4媒介状態または障害を有する対象」のような表現は、PAR4アンタゴニストの投与から利益を受けるであろう対象、例えば、哺乳類対象を含む。
【0155】
本明細書で使用する場合、結合が「類似の」レベルであるという言及は、抗体が抗原に対し、別の抗原に結合するレベルの約30%または25%または20%以内のレベルで結合することを意味するものと理解されたい。この用語は、ある抗体が抗原に対し、別の抗体が同じ抗原に結合するレベルの約30%または25%または20%以内のレベルで結合することも意味する。
【0156】
本明細書で使用する場合、結合が「実質的に同じレベル」であるという言及は、抗体が抗原に対し、別の抗原に結合するレベルの約15%または10%または5%以内のレベルで結合することを意味するものと理解されたい。この用語は、ある抗体が抗原に対し、別の抗体が同じ抗原に結合するレベルの約5%または4%または3%以内のレベルで結合することも意味する。
【0157】
「競合的に阻害する」という用語は、本開示のタンパク質が、列挙された産生抗体(例えば、5A.RC3)がPAR4またはその断片のトロンビン切断部位に結合するのを低減または防止することを意味するように理解するものとする。上記のことから、当該タンパク質は抗体の結合を完全に阻害する必要はなく、むしろ結合を統計的に有意な量で、例えば、少なくとも約10%、または20%、または30%、または40%、または50%、または60%、または70%、または80%、または90%、または95%低減すれば十分であることが明らかであろう。結合の競合的阻害を測定するための方法は当技術分野で知られており、及び/または本明細書に記載されている。例えば、抗体は、タンパク質の存在下または不在下のいずれかで、PAR4またはその断片に対し露出される。抗体の結合が、タンパク質の不在下よりもタンパク質の存在下で少ない場合、そのタンパク質は抗体の結合を競合的に阻害するものと考えられる。1つの例において、タンパク質及び抗体は、実質的に同時にPAR4に対し露出される。結合の競合的阻害を測定するためのさらなる方法は、当業者には明らかであり、及び/または本明細書に記載されている。1つの例において、タンパク質の抗原結合ドメインは、抗体の結合を競合的に阻害する。
【0158】
2つのエピトープの文脈での「重複」とは、2つのエピトープが十分な数のアミノ酸残基を共有し、それにより一方のエピトープに結合する抗体が他方のエピトープに結合する抗体の結合を競合的に阻害することが可能になることを意味するように解釈するものとする。例えば、エピトープは、少なくとも1個、または2個、または3個、または4個、または5個、または6個、または7個、または8個、または9個、または10個のアミノ酸を共有する。
【0159】
本明細書で使用される場合、「検出可能に結合しない」という用語は、タンパク質(例えば、抗体)が候補抗原に対し、バックグラウンドの10%未満、または8%未満、または6%未満、または5%未満上回るレベルで結合することを意味するように理解するものとする。バックグラウンドは、タンパク質の不在下及び/または陰性対照タンパク質(例えば、アイソタイプ対照抗体)の存在下で検出される結合シグナルのレベル、及び/または陰性対照抗原の存在下で検出される結合のレベルであり得る。結合のレベルは、バイオセンサー分析(例えば、Biacore)を用いて、タンパク質を固定し抗原に接触させて検出される。
【0160】
抗体
誤解を避けるために言及するが、モノクローナル抗体mAb ARC3は、実施例に示されるようなこの抗体の他の名称、例えばMoB5A-RC3と同義である。この抗体をさらにサブクローニングして、派生モノクローナル抗体MoB5-ARC3.F10b.H4bとしている。このサブクローンもmAb ARC3.H4bと呼ばれる。この抗体に対応する配列は、配列番号11~18に見いだされる。
【0161】
機能的に等価の抗体
本開示は、抗体mAb ARC3.H4bの重鎖及び軽鎖可変領域配列における1つ以上のアミノ酸付加、欠失、または置換を伴い、ただしmAb ARC3.H4bの機能を依然として保持する抗PAR4抗体またはその抗原結合断片も企図している。いくつかの例において、PAR4結合タンパク質は、10以下の保存的アミノ酸置換、例えば、9、または8、または7、または6、または5、または4、または3、または2、または1個の保存的アミノ酸置換を含む。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖及び/または疎水性親水性及び/または親水性を有するアミノ酸残基で置き換えられた置換である。疎水性親水性指標は、例えばKyte and Doolittle(1982)に記載されており、親水性指標は、例えばUS4554101に記載されている。
【0162】
このような修飾は、例えば、部位特異的変異誘発を通じて、計画的であってもよく、または、例えば、抗体を発現する宿主内の変異を通じて取得される修飾のように、偶発的であってもよい。
【0163】
変異(改変)ポリペプチドは、当技術分野で知られている任意の技法を用いて調製することができる。例えば、本開示のポリヌクレオチドは、in vitro変異誘発に供してもよい。このようなin vitro変異誘発技法は、ポリヌクレオチドを好適なベクター内でサブクローニングすることと、ベクターを「変異誘発」株、例えば、E.coli XL-1 red(Stratagene)内で形質転換することと、形質転換された細菌を好適な世代数増殖させることとを含む。変異/改変DNAに由来する産物は、本明細書に記載の技法を用いて容易にスクリーニングして、受容体結合及び/または阻害活性を有するかを決定することができる。
【0164】
アミノ酸配列変異体を設計する際、変異部位の位置及び変異の性質は、修飾される特徴(複数可)に依存する。変異のための部位は、例えば、(1)最初に保存的アミノ酸選択物で置換し、次いで達成される結果に応じてより根本的な選択物で置換する、(2)標的残基を欠失させる、または(3)配置された部位に隣接して他の残基を挿入することにより、個別にまたは連続して修飾することができる。
【0165】
アミノ酸配列欠失の範囲は、概して、残基約1~15個、より好ましくは残基約1~10個、典型的には連続した残基約1~5個である。
【0166】
置換変異体は、可変領域を含めた抗体内及び/または免疫グロブリン鎖分子内の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、その位置に異なる残基が挿入される。置換変異誘発における最も関心対象となる部位は、抗原結合に重要であると同定された部位を含む。このような部位、特に、ヒト抗体及び/または免疫グロブリン鎖の少なくとも3つの他の等しく保存された部位の配列内に収まる部位は、好ましくは比較的保存的な方式で置換される。このような保存的置換は、「例示的な置換」という表題で表1に示される。
【0167】
保存的アミノ酸置換も本発明で企図されている。このような置換は、以下の表に示されるアミノ酸置換を意味するものと解釈される。
【0168】
【0169】
本明細書に記載のアミノ酸は、好ましくは「L」異性体形態をとる。ただし、免疫グロブリン結合の所望の機能的特性がポリペプチドによって保持される限り、D異性体内の残基が任意のL-アミノ酸残基に対し置換されてもよい。修飾には、構造的及び機能的アナログ、例えば、合成もしくは非天然アミノ酸またはアミノ酸アナログ及び誘導体化形態を有するペプチド模倣体も含まれる。
【0170】
本開示は、非保存的アミノ酸変化も企図している。例えば、特に関心対象となるのは、荷電アミノ酸を別の荷電アミノ酸及び中性または正に荷電したアミノ酸で置換することである。いくつかの例において、PAR4結合タンパク質は、10個以下、例えば、9個、または8個、または7個、または6個、または5個、または4個、または3個、または2個、または1個の非保存的アミノ酸置換を含む。
【0171】
任意の例に従う本明細書に記載のPAR4結合タンパク質の変異形態は、PAR4に対し特異的に結合する能力を保持する。PAR4への特異的結合を測定するための方法は、本明細書に記載されている。例えば、標識PAR4結合タンパク質を、固定化PAR4、または(例えば、配列番号2に示されるような)PAR4のトロンビン切断部位を含むペプチドに接触させる。洗浄後、結合した標識を検出する。また、標識PAR4結合タンパク質を、固定したPAR4及び関連タンパク質または上記で論じられているようなPAR4の変異形態もしくはPAR4の断片にも接触させ、洗浄後、結合した標識を検出する。PAR4に結合するが、PAR4の関連(例えば、PAR1、PAR2、またはPAR3)もしくは変異タンパク質または断片には結合しない標識が検出された場合、これは、その変異PAR4結合タンパク質がPAR4に対する特異的結合能力を保持することを示す。
【0172】
1つの例において、変異(複数可)は、本開示のPAR4結合タンパク質のFWR内で生じる。別の例において、変異(複数可)は、本開示のPAR4結合タンパク質のCDR内で生じる。
【0173】
抗体生成
抗体を生成するための方法は当技術分野で知られており、及び/またはHarlow and Lane(1988)またはZola(1987)に記載されている。概して、このような方法では、任意選択で任意の好適なまたは所望の担体、アジュバント、または医薬的に許容される賦形剤と共に製剤化されたFnl4タンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープ含有、またはそれを発現し示す細胞(すなわち、免疫原)が、非ヒト動物に、例えば、マウス、ニワトリ、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ウマ、ウシ、ヤギ、またはブタに投与される。免疫原は、鼻腔内、筋肉内、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、または他の既知の経路により投与することができる。
【0174】
ポリクローナル抗体の産生は、免疫動物の血液を免疫化後の様々な時点で試料採取することにより、モニターすることができる。所望の抗体力価を達成するために必要な場合は、1回以上さらに免疫化してもよい。追加免疫及び力価測定のプロセスは、好適な力価が達成されるまで繰り返される。所望のレベルの免疫原性が得られた場合は、免疫動物から採血し、血清を単離及び保管し、及び/または動物をモノクローナル抗体(mAb)の生成に使用する。
【0175】
モノクローナル抗体は、本開示が企図する例示的な抗体である。「モノクローナル抗体」または「mAb」または「MAb」という用語は、同じ抗原(複数可)に対し、例えば、抗原内の同じエピトープに対し結合可能である均質な抗体集団を指す。この用語は、抗体の供給源または抗体を作製する方式に対し限定されるようには意図されていない。
【0176】
mAbの産生については、複数の既知技法のいずれか1つを使用することができ、例えば、US4,196,265、またはHarlow and Lane(1988)Antibodies:A laboratory manual Cold Spring Harbor Laboratory、またはZola(1987)Monoclonal antibodies:A manual of techniquesで例示される手順を使用することができる。
【0177】
例えば、好適な動物は、抗体産生細胞を刺激するのに十分な条件下で、タンパク質またはその免疫原性断片もしくはエピトープまたはタンパク質を発現する細胞の有効量で免疫化される。ウサギ、マウス、及びラットのようなげっ歯類は例示的な動物であり、マウスが最も一般的に使用されている。ヒト免疫グロブリンタンパク質を発現し、ネズミ科動物免疫グロブリンタンパク質を発現しないように遺伝子操作されたマウスも、(例えば、WO2002/066630に記載のようにして)本開示の抗体を生成するために使用することができる。
【0178】
免疫化後、抗体を産生する潜在能力を有する体細胞、特にBリンパ球(B細胞)が、mAb生成プロトコルで使用するために選択される。このような細胞は、脾臓、扁桃腺、もしくはリンパ節の生検から、または末梢血試料から取得することができる。免疫動物からのB細胞は、次いで、不死化骨髄腫細胞の細胞と融合させる。この骨髄腫細胞は、概して、免疫原で免疫化した動物と同じ種に由来する。B細胞及び不死化細胞は、細胞膜の融合を促進する1つまたは複数の薬剤(化学的または電気的)の存在下で複数の細胞タイプの混合物をインキュベートすることによって融合される。センダイウイルスを用いた融合方法は、Kohler and Milstein,(1975);及びKohler and Milstein,(1976)に記載されている。ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、37%(v/v)PEG)を用いた方法は、Gefter et al,(1977)Somatic Cell Genet.3(2):231-6に記載されている。電気的誘導による融合方法を使用することも適切である。
【0179】
ハイブリッドは、組織培地中のヌクレオチドの新規合成をブロックする薬剤を含む選択培地中で培養することによって増幅される。例示的な薬剤は、アミノプテリン、メトトレキセート、及びアザセリンである。
【0180】
増幅したハイブリドーマは、例えば、フローサイトメトリー及び/または免疫組織化学検査及び/または免疫測定法(例えば、放射性免疫測定法、酵素免疫測定法、細胞毒性アッセイ、プラークアッセイ、ドット免疫測定法など)により、抗体特異性及び/または力価についての機能的選択に供される。本開示は、例えば、本明細書で例示されるような、抗体産生細胞のサブクローニングも企図している。
【0181】
代替的に、ABL-MYC技術(NeoClone,Madison WI 53713,USA)を使用して、(例えば、Kumar et al,(1999)Immunol Lett.65(3):153-9に記載のような)mAbを分泌する細胞株を産生する。
【0182】
また、抗体は、ディスプレイライブラリーにより、例えば、ファージディスプレイライブラリー、例えば、US6300064、EP0368684、及び/またはUS5885793に記載のようなものにより、産生または単離することもできる。
【0183】
キメラ抗体及びタンパク質
本開示の抗体またはPAR4結合タンパク質の1つの例はキメラ抗体である。すなわち、PAR4結合タンパク質はキメラタンパク質である。「キメラタンパク質」という用語は、抗原結合ドメインVHまたはVLが、特定の種(例えば、マウスもしくはラットのようなネズミ科動物)に由来するタンパク質内、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属するタンパク質内の対応する配列と同一または相同である一方で、鎖(複数可)の残部が、別の種(例えば、ヒトのような霊長類)に由来するタンパク質内、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属するタンパク質内の対応する配列と同一または相同である、タンパク質を指す。1つの例において、キメラタンパク質は、非ヒト抗体(例えば、ネズミ科動物抗体)からのVH及びVLを含むキメラ抗体であり、抗体の残りの領域はヒト抗体からのものである。このようなキメラタンパク質の産生は当技術分野で知られており、標準的な手段(例えば、US6331415;US5807715;US4816567;及びUS4816397に記載のもの)によって達成することができる。このようなキメラ抗体の産生は当技術分野で知られており、標準的な手段(例えば、Morrison,Science 229:1202(1985);Oi et al,BioTechniques 4:214(1986);Gillies et al,(1989)J.Immunol. Methods 125:191-202;米国特許第5,807,715号;第4,816,567号;及び第4,816,397号に記載のもの)によって達成することができる。さらに、本発明のキメラ抗体のヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG5、IgG6、IgG7、IgG8、IgG9、IgGl0、IgG11、IgG12、IgG13、IgG14、IgG15、IgG16、IgG17、IgG18、またはIgG19定常領域から選択され得ることが企図されている。
【0184】
ヒト化及びヒト抗体/タンパク質
本開示のPAR4結合タンパク質は、ヒト化またはヒトであり得る。
【0185】
「ヒト化タンパク質」という用語は、非ヒト種からの抗体からのヒト類似可変領域(CDRを含む)がヒト抗体からのFR内に移植または挿入されたものを含むタンパク質を指すように理解するものとする(このタイプの抗体は、「CDR移植抗体」とも呼ばれる)。ヒト化タンパク質には、ヒトタンパク質の1つ以上の残基が1つ以上のアミノ酸置換によって修飾されている、及び/またはヒトタンパク質の1つ以上のFR残基が対応する非ヒト残基によって置き換えられている、タンパク質も含まれる。また、ヒト化タンパク質は、ヒト抗体または非ヒト抗体のいずれにも見いだされない残基を含んでもよい。タンパク質の任意のさらなる領域(例えば、Fc領域)はヒトである。ヒト化は、当技術分野で知られている方法、例えば、US5225539、US6054297、US7566771、またはUS5585089を用いて実施することができる。「ヒト化タンパク質」という用語は、例えば、US7732578に記載のスーパーヒト化タンパク質も包含する。
【0186】
1つの例において、ヒト化タンパク質は、本明細書で開示されている重鎖配列内の26と33との間、51と58との間、及び97と110との間、ならびに27と33との間、51と53との間、及び90と97との間の領域を含む(ナンバリングはIMGTナンバリングシステムに従う)。
【0187】
本明細書で使用される場合、「ヒトタンパク質」という用語は、可変抗体領域と、任意選択で、ヒトに(例えば、ヒトの生殖系細胞または体細胞に)見いだされる配列に由来するまたは対応する定常抗体領域とを有するタンパク質を指す。「ヒト」抗体は、ヒト配列によってコードされないアミノ酸残基、例えば、ランダムまたは部位特異的変異によりin vitroで導入される変異(詳細には、タンパク質の少数の残基、例えば、タンパク質の1、2、3、4、または5個の残基の保存的置換または変異を伴う変異)を含むことができる。このような「ヒト抗体」は、実際にはヒト免疫応答の結果として生成される必要はなく、そうではなく、組換え手段(例えば、ファージディスプレイライブラリーのスクリーニング)を用いて、及び/またはヒト抗体定常及び/または可変領域をコードする核酸を含むトランスジェニック動物(例えば、マウス)により、及び/または(例えば、US5565332に記載のように)誘導性選択(guided selection)を用いて、生成することができる。この用語は、このような抗体の親和性成熟形態も包含する。また、ヒトタンパク質には、ヒト抗体からのFRを含むタンパク質、またはヒトFRのコンセンサス配列からの配列を含むFRであって、US6300064及び/またはUS6248516に記載のように1つ以上のCDRがランダムまたはセミランダムである、FRを含むタンパク質が含まれることも考慮されるであろう。
【0188】
選択されたエピトープを認識するヒトタンパク質または抗体は、「誘導性選択」と呼ばれる技法を用いて生成することもできる。このアプローチでは、選択された非ヒトモノクローナル抗体(例えば、マウス抗体)を使用して、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択を誘導する(Jespers LS et al,(1988)Biotechnology 12(9):899-903)。
【0189】
本開示のヒトPAR4結合タンパク質は、ヒト抗体の可変領域を含む。
【0190】
合成ヒト化及び霊長類化タンパク質
本開示のPAR4結合タンパク質は、合成ヒト化タンパク質であってもよい。「合成ヒト化タンパク質」という用語は、WO2007/019620に記載の方法により調製されるタンパク質を指す。合成ヒト化PAR4結合タンパク質は、可変領域が新世界霊長類抗体可変領域からのFRと非新世界霊長類抗体可変領域からのCDRとを含む、抗体の可変領域を含む。例えば、合成ヒト化PAR4結合タンパク質は、可変領域が新世界霊長類抗体可変領域からのFWRとマウス抗体からのCDR(例えば、本明細書に記載のもの)とを含む、抗体の可変領域を含む。1つの例において、合成ヒト化PAR4結合タンパク質は、可変領域の一方または両方が合成ヒト化されているPAR4結合抗体である。
【0191】
本開示のPAR4結合タンパク質は、霊長類化タンパク質であってもよい。「霊長類化タンパク質」は、非ヒト霊長類(例えば、マカク属カニクイザル)の免疫化の後に生成された抗体からの可変領域(複数可)を含む。任意選択で、非ヒト霊長類抗体の可変領域は、ヒト定常領域と連結して霊長類化抗体を産生する。霊長類化抗体を産生するための例示的な方法は、US6113898に記載されている。
【0192】
脱免疫化抗体及びタンパク質
本開示は、脱免疫化された抗体またはPAR4結合タンパク質も企図している。脱免疫化抗体は、1つ以上のエピトープ、例えば、B細胞エピトープまたはT細胞エピトープを除去する(すなわち、変異させる)ことにより、対象が抗体またはタンパク質に対する免疫応答を引き起こす可能性を低減する。脱免疫化抗体及びタンパク質を産生するための方法は当技術分野で知られており、例えば、WOOO/34317、WO2004/108158、及びWO2004/064724に記載されている。
【0193】
好適な変異を導入し、得られたタンパク質を発現させアッセイするための方法は、本明細書の記載に基づけば当業者には明らかであろう。
【0194】
タンパク質を含む抗体可変領域。
単一ドメイン抗体
いくつかの例において、本開示のPAR4結合タンパク質は単一ドメイン抗体である(この名称は、「ドメイン抗体」または「dAb」という用語と互換的に使用される)。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変領域の全てまたは部分を含む、単一のポリペプチド鎖である。あるいくつかの例において、単一ドメイン抗体はヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA;例えば、US6248516;WO90/05144;及び/またはWO2004/058820を参照)。
【0195】
ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ
抗体抗原結合ドメインを含む例示的なPAR4結合タンパク質は、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、及びより高次のタンパク質複合体、例えばWO98/044001及びWO94/007921に記載のものである。
【0196】
例えば、ダイアボディは、2つの会合したポリペプチド鎖を含むタンパク質であり、各ポリペプチド鎖は構造VL-X-VHまたはVH-X-VLを含む(構造中、VLは抗体軽鎖可変領域であり、VHは抗体重鎖可変領域であり、Xは、単一ポリペプチド鎖内のVH及びVLが会合する(もしくはFvを形成する)ことを可能にするために不完全な残基を含むリンカーであるか、または存在せず、一方のポリペプチド鎖のVHは他方のポリペプチド鎖のVLに結合して、抗原結合部位を形成する、すなわち、1つ以上の抗原に対し特異的に結合可能なFv分子を形成する)。VL及びVHは、各ポリペプチド鎖内で同じであってもよく、またはVL及びVHは、二重特異的なダイアボディを形成する(すなわち、異なる特異性を有する2つのFvを含む)ように各ポリペプチド鎖内で異なっていてもよい。
【0197】
1本鎖Fv(scFv)断片
当業者は、scFvが単一ポリペプチド鎖内にVH領域及びVL領域を含むことを認識しているであろう。ポリペプチド鎖はさらに、VHとVLとの間に、scFvが抗原結合に望ましい(すなわち、単一ポリペプチド鎖のVH及びVLが互いに会合してFvを形成するのに望ましい)構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーを含む。例えば、リンカーは、scFvに対しより好ましいリンカーの1つである(Gly4Ser)3と共に12個超のアミノ酸残基を含む。
【0198】
本開示は、単一のシステイン残基がVHのFRまたはVLのFRに導入され、システイン残基がジスルフィド結合により連結して安定したFvをもたらす、ジスルフィド安定化Fv(またはdiFvもしくはdsFv)も企図している(例えば、Brinkmann et at,(1993)Proc Natl Acad Sci USA 90:547-551を参照)。
【0199】
代替的または追加的に、本開示は、2量体scFv、すなわち、非共有または共有結合により、例えばロイシンジッパードメイン(例えば、FosまたはJun由来)により連結した2つのscFv分子を含むタンパク質を提供する(例えば、Kruif and Logtenberg,1996を参照)。代替的に、2つのscFvは、例えば、US20060263367に記載のように、両方のscFvの形成及び抗原への結合を可能にするのに十分な長さのペプチドリンカーによって連結している。
【0200】
scFvの概説については、Ahmad ZA et al.,(2012)Clinical and Developmental Immunology doi:10.1155/2012/980250を参照。
【0201】
ミニボディ
当業者は、ミニボディが、抗体の(CH2ドメイン及び/または(CH3ドメインと融合した抗体のVHドメイン及びVLドメインを含むことを認識しているであろう。任意選択で、ミニボディはVHとVLとの間にヒンジ領域を含み、この立体構造はFlexミニボディと呼ばれることもある。ミニボディは、CH1もCLも含まない。1つの例において、VHドメイン及びVLドメインは、抗体のヒンジ領域及びCH3ドメインと融合している。当該ミニボディの可変領域の少なくとも1つが、本開示の方式でPAR4に結合する。例示的なミニボディ及びその生成方法は、例えば、WO94/09817に記載されている。
【0202】
タンパク質を含むその他の抗体可変領域
本開示はPAR4結合タンパク質を含む他の可変領域も企図しており、例えば以下のものが挙げられる:
(i)US5,731,168に記載の「キー・アンド・ホール(key and hole)」二重特異性タンパク質;
(ii)ヘテロ結合体タンパク質(例えば、US4,676,980に記載のもの);
(iii)化学的クロスリンカーを用いて産生したヘテロ結合体タンパク質(例えば、US4,676,に記載のもの);
(iv)Fab′-SH断片(例えば、Shalaby(1992)j Exp Med 1;175(1):217-25に記載のもの);
(v)1本鎖Fab;または
(vi)Fab3(例えば、EP19930302894に記載のもの)。
【0203】
非抗体ベース抗原結合ドメイン含有タンパク質
免疫グロブリン及び免疫グロブリン断片
本開示の化合物の1つの例は、免疫グロブリンの可変領域を含むタンパク質であり、例えば、T細胞受容体または重鎖免疫グロブリン(例えば、IgNA、ラクダ科動物抗体)である。
【0204】
「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリンドメインを含む任意の抗原結合タンパク質を含むように理解される。例示的な免疫グロブリンは抗体である。「免疫グロブリン」という用語が包含する追加のタンパク質としては、ドメイン抗体、ラクダ科動物抗体、及び軟骨魚類からの抗体(すなわち、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR))が挙げられる。概して、ラクダ科動物抗体及びIgNARはVHを含むがVLが欠如しており、しばしば重鎖免疫グロブリンと呼ばれる。その他の「免疫グロブリン」にはT細胞受容体が含まれる。
【0205】
重鎖免疫グロブリン
重鎖免疫グロブリンは、重鎖を含むが軽鎖を含まない限りにおいて、多くの他の免疫グロブリン形態(例えば、抗体)と構造的に異なる。したがって、このような免疫グロブリンは「重鎖のみの抗体」とも呼ばれる。重鎖免疫グロブリンは、例えば、ラクダ科動物及び軟骨魚類(IgNARとも呼ばれる)に見いだされる。
【0206】
天然の重鎖免疫グロブリン内に存在する可変領域は、従来的な4鎖抗体内に存在する重鎖可変領域(「VHドメイン」と呼ばれる)及び従来的な4鎖抗体内内に存在する軽鎖可変領域(「VLドメイン」と呼ばれる)から区別するため、概してラクダ科動物Igにおける「VHHドメイン」及びIgNARにおけるV-NARと呼ばれる。
【0207】
重鎖免疫グロブリンは、関連する抗原に高親和性及び高特異性で結合するのに軽鎖の存在を要件としない。このことは、単一ドメイン結合断片が、容易に発現し、かつ概して安定し可溶性である重鎖免疫グロブリンに由来し得ることを意味する。ラクダ科動物からの重鎖免疫グロブリン及びその可変領域についての全般的な説明ならびにその産生及び/または単離及び/または使用のための方法は、とりわけ、以下の参考文献:WO94/04678、WO97/49805、及びWO97/49805に見いだされる。
【0208】
軟骨魚類科動物からの重鎖免疫グロブリン及びその可変領域についての全般的な説明ならびにその産生及び/または単離及び/または使用のための方法は、とりわけ、WO2005/118629に見いだされる。
【0209】
V様タンパク質
本開示のPAR4結合タンパク質の1つの例は、T細胞受容体である。T細胞受容体は2つのVドメインを有し、これらは化合して、抗体のFvモジュールに類似した構造となる。Novotny et al,Proc Natl Acad Sci USA 88:8646-8650,1991は、T細胞受容体の2つのVドメイン(アルファ及びベータと称される)がどのように融合し1本鎖ポリペプチドとして発現し得るか、さらに、どのように表面残基を改変して抗体scFvに直接的に類似する疎水性を低減するかについて記載している。2つのV-アルファ及びV-ベータドメインを含む1本鎖T細胞受容体または多量体T細胞受容体の産生について記載しているその他の刊行物としては、WO1999/045110またはWO2011/107595が挙げられる。
【0210】
抗原結合ドメインを含むその他の非抗体タンパク質としては、V様ドメインを有するタンパク質が挙げられ、これらは概して単量体である。このようなV様ドメインを含むタンパク質の例としては、CTLA-4、CD28、及びICOSが挙げられる。このようなV様ドメインを含むタンパク質のさらなる開示は、WO1999/045110に含まれている。
【0211】
アドネクチン
1つの例において、本開示のPAR4結合タンパク質はアドネクチンである。
【0212】
アドネクチンは、ループ領域が抗原結合を付与するように改変されているヒトフィブロネクチンの第10フィブロネクチンIII型(10Fn3)ドメインに基づいている。例えば、10Fn3のβサンドイッチの一方の端部における3つのループは、アドネクチンが抗原を特異的に認識できるように操作することができる。さらなる詳細については、US20080139791またはWO2005/056764を参照。
【0213】
アンチカリン
さらなる例において、本開示のPAR4結合タンパク質はアンチカリンである。アンチカリンは、疎水性小分子(例えば、ステロイド、ビリン、レチノイド、及び脂質)を輸送する細胞外タンパク質のファミリーであるリポカリンに由来する。リポカリンは、円錐状構造の開放端部に複数のループを有する剛性のβシート二次構造を有し、このループは、抗原に結合するように操作することができる。このような操作されたリポカリンはアンチカリンとして知られている。アンチカリンのさらなる説明については、US7250297B1またはUS20070224633を参照。
【0214】
アフィボディ
さらなる例において、本開示のPAR4結合タンパク質はアフィボディである。アフィボディは、Staphylococcus aureusのプロテインAのZドメイン(抗原結合ドメイン)に由来するスキャフォールドであり、このZドメインは抗原に結合するように操作することができる。Zドメインは、およそ58アミノ酸の3本ヘリックス束からなる。ライブラリーは、表面残基のランダム化によって生成されている。さらなる詳細については、EP1641818を参照。
【0215】
アビマー
さらなる例において、本開示のPAR結合タンパク質はアビマーである。アビマーは、Aドメインスキャフォールドファミリーに由来するマルチドメインタンパク質である。およそ35アミノ酸のネイティブドメインは、定義されたジスルフィド結合構造をとる。多様性は、Aドメインのファミリーにより示される天然の変形形態をシャッフルすることにより生成される。さらなる詳細については、WO2002088171を参照。
【0216】
DARPin
さらなる例において、本開示のPAR4結合タンパク質は、設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)である。DARPinは、複合膜タンパク質が細胞骨格に付着するのを媒介するタンパク質のファミリーであるアンキリンに由来する。単一のアンキリンリピートは、2つのaヘリックス及び1つのβターンからなる33残基のモチーフである。DARPinは、各リピートの第1のaヘリックス及びβターン内の残基をランダム化することにより、異なる標的抗原に結合するように操作することができる。モジュールの数を増加させることにより、DARPinの結合界面を増加させることができる(親和性成熟法)。さらなる詳細については、US20040132028を参照。
【0217】
その他の非抗体ポリペプチド
結合ドメインを含むその他の非抗体タンパク質としては、ヒトγクリスタリン及びヒトユビキチン(アフィリン)、ヒトプロテアーゼ阻害物質のクニッツ型ドメイン、Ras結合タンパク質AF-6のPDZドメイン、サソリ毒(カリブドトキシン)、C型レクチンドメイン(テトラネクチン)に基づくものが挙げられる。
【0218】
定常領域
本開示は、可変領域及び定常領域またはそのドメイン(複数可)(例えば、CH2及び/またはCH3)を含むPAR4結合タンパク質を包含する。当業者は、本明細書の開示及び本明細書で論じられている参考文献に基づき、定常領域及び定常ドメインという用語の意味を認識しているであろう。
【0219】
本開示のPAR4結合タンパク質の産生に有用な定常領域配列は、複数の異なる供給源から取得することができる。いくつかの例において、PAR4結合タンパク質の定常領域またはその部分は、ヒト抗体に由来する。さらに、定常ドメインまたはその部分は、IgM、IgG、IgD、IgA、及びIgEを含めた任意の抗体クラス、ならびにIgGl、IgG2、IgG3、及びIgG4を含めた任意の抗体アイソタイプに由来し得る。1つの例において、ヒトアイソタイプIgGlが使用される。
【0220】
様々な定常領域遺伝子配列は、公的にアクセス可能な寄託物の形態で利用可能であり、またはその配列は、公的に利用可能なデータベースから利用可能である。定常領域は、特定のエフェクター機能を有するもの(もしくは特定のエフェクター機能が欠如したもの)、または免疫原性を低減するための特定の修飾を伴うものが選択され得る。
【0221】
1つの例において、本開示のタンパク質は、PAR4を発現する細胞の少なくとも部分的な枯渇、実質的な枯渇、または消失を推進するまたは可能にするエフェクター機能を有するまたは示す。このようなエフェクター機能は、Fc受容体に対する結合親和性の強化、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞媒介食作用(ADCP)、及び/または補体依存性細胞傷害(CDC)であり得る。
【0222】
1つの例において、PAR4結合タンパク質は、エフェクター機能のレベル強化を誘導可能である。
【0223】
1つの例において、定常領域によって誘導されるエフェクター機能のレベルは、IgG1抗体の野生型Fc領域との対比で、またはIgG3抗体の野生型Fc領域との対比で強化されている。
【0224】
別の例において、定常領域は、自らが誘導可能なエフェクター機能のレベルを、修飾を伴わない定常領域に比べて増加させるように修飾される。このような修飾は、アミノ酸レベル及び/または二次構造レベル及び/または三次構造レベルにおけるもの、及び/またはFc領域のグリコシル化に対するものであり得る。
【0225】
当業者は、より大きなエフェクター機能が、複数のやり方で、例えば、より大きなレベルの効果として、より持続的な効果として、またはより高速な効果として明らかにされ得ることを理解するであろう。例示的な定常領域修飾としては、アミノ酸置換、例えば、S239D/I332E(KabatのEUインデックスに従ったナンバリング)、またはS239D/A330L/I332E(KabatのEUインデックスに従ったナンバリング)が挙げられる。
【0226】
Fc領域のエフェクター機能誘導能力を増加させるさらなるアミノ酸置換は、当技術分野で知られており、及び/または例えば、US6737056もしくはUS7317091に記載されている。
【0227】
1つの例において、定常領域のグリコシル化は、エフェクター機能強化の誘導能力を増加させるように改変される。いくつかの例において、本開示に従うFc領域は、Fc領域に(直接的または間接的に)付着するフコースが欠如した、すなわち、Fc領域が「非フコシル化」されている炭水化物構造を含む。このようなバリアントは、ADCC誘導能力が改良されている可能性がある。非フコシル化抗体を産生するための方法は、a-l,6-フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)を発現できない細胞株内でFnl4結合タンパク質を発現させることを含む(例えば、Yumane- Ohnuki et ah,2004に記載の通り)。他の方法は、エフェクター機能強化を誘導可能な抗体を生来的に産生する細胞株の使用を含む(例えば、ウイルスワクチン産生のためのアヒル胚由来幹細胞(WO2008/129058);トリEBX(登録商標)細胞内での組換えタンパク質の産生(WO2008/142124))。
【0228】
PAR4結合タンパク質は、CDCのレベル強化を誘導可能なFc領域も含むことができる。例えば、IgG1及びIgG3のハイブリッドは、CDC活性が強化された抗体を産生する(Natsume et at,2008)。
【0229】
抗体またはその抗原結合断片のエフェクター機能誘導能力を測定するための方法は当技術分野で知られており、及び/または本明細書に記載されている。
【0230】
別の例において、タンパク質は、PAR4結合タンパク質の半減期を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含む。例えば、PAR4結合タンパク質は、新生児Fc領域(FcRn)に対する定常領域の親和性を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含む定常領域を含む。例えば、定常領域は、より低いpH(例えば、約pH6.0)におけるFcRnに対する親和性が増加しており、エンドソーム内のFc/FcRn結合を推進する。1つの例において、定常領域は、約pH6におけるFcRnに対する親和性が約pH7.4における親和性に比べて増加しており、これにより、細胞再利用後の血中へのFc再放出が推進される。このようなアミノ酸置換は、血液からのクリアランスを低減することにより、タンパク質の半減期を延長するのに有用である。
【0231】
例示的なアミノ酸置換としては、T250Q及び/またはM428LまたはT252A、T254S及びT266FまたはM252Y、S254T及びT256EまたはH433K及びN434Fが挙げられる。追加的または代替的なアミノ酸置換は、例えば、US20070135620またはUS7083784に記載されている。本開示の中和PAR4結合タンパク質は、IgG4定常領域または安定化IgG4定常領域を含むことができる。「安定化IgG4定常領域」という用語は、Fabアーム交換、またはFabアーム交換もしくは半抗体の形成を経る傾向、または半抗体を形成する傾向を低減するように修飾されたIgG4定常領域を意味するものと理解されたい。「Fabアーム交換」とは、1つのIgG4重鎖及び付着している軽鎖(半分の分子)が別のIgG4分子からの重軽鎖対と交換される、ヒトIgG4におけるタンパク質修飾の1つのタイプを指す。したがって、IgG4分子は、2つの異なる抗原を認識する2つの異なるFabアームを獲得することができる(その結果、二重特異性分子がもたらされる)。Fabアーム交換はin vivoで天然に生じ、また、精製された血液細胞または還元型グルタチオンのような還元剤によりin vitroで誘導することができる。「半抗体」形態は、IgG4抗体が解離して各々が単一の重鎖と単一の軽鎖とを含む2つの分子を形成したときに、形成される。
【0232】
1つの例において、安定化IgG4定常領域は、Kabatシステムに従うヒンジ領域の位置241にプロリンを含む。この位置は、EUナンバリングシステムに従うヒンジ領域の位置228に対応する。ヒトIgG4において、この残基は概してセリンである。セリンのプロリンに対する置換後、IgG4ヒンジ領域は配列CPPCを含む。この点において、当業者は、「ヒンジ領域」が、抗体の2つのFabアームに移動性を付与する、Fc及びFab領域に連結する抗体重鎖定常領域のプロリンリッチ部分であることを認識するであろう。ヒンジ領域は、重鎖間のジスルフィド結合に関与するシステイン残基を含む。ヒンジ領域は、Kabatナンバリングシステムに従うヒトIgGl1のGlu226からPro243に伸びるものとして定義される。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖間ジスルフィド(S-S)結合を形成する最初及び最後のシステイン残基を同じ位置に入れることにより、IgGl1配列でアラインメントすることができる(例えば、WO2010/080538を参照)。
【0233】
修飾タンパク質
本開示は、本開示の配列に対し少なくとも80%の同一性を有し、かつ本明細書で記載または特許請求されている機能的特徴と同じPAR4結合タンパク質を提供する。
【0234】
1つの例において、本開示のPAR4結合タンパク質は、本明細書で開示されているVL配列(例えば、配列番号11)に対し、少なくとも90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%の同一性を有する配列を含む。
【0235】
別の例において、本開示のPAR4結合タンパク質は、本明細書で開示されているVH(例えば、配列番号12)に対し、少なくとも90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%の同一性を有する配列を含む。
【0236】
本開示は、前述のタンパク質をコードする核酸、または中~高ストリンジェンシー条件下でその核酸とハイブリダイズする核酸も提供する。
【0237】
本開示は、遺伝暗号の縮重の結果、本明細書で例示される配列とは異なる、配列番号11及び配列番号12に示される配列を含むタンパク質をコードする核酸も包含する。
【0238】
核酸またはポリペプチドの同一性%はGAP(Needleman and Wunsch.1970)分析(GCGプログラム)により測定され、ギャップ作成ペナルティー=5及びギャップ延長ペナルティー=0.3とする。クエリー配列は少なくとも50残基長であり、GAP分析は少なくとも50残基の領域にわたって2つの配列をアラインメントする。例えば、クエリー配列は少なくとも100残基長であり、GAP分析は少なくとも100残基の領域にわたって2つの配列をアラインメントする。1つの例において、2つの配列はその全長にわたってアラインメントされる。
【0239】
抗体のグリコシル化パターンは、参照抗体の元のグリコシル化パターンから改変されてもよい。改変とは、抗体に見いだされる1つ以上の炭水化物部分の欠失、及び/または抗体中に存在しない1つ以上のグリコシル化部位の付加を意味する。抗体のグリコシル化は、典型的にはN結合またはO結合のいずれかである。N結合型とは、炭水化物部分のアスパラギン残基の側鎖に対する結合を指す。トリペプチド配列アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(配列中、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分のアスパラギン側鎖に対する酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド内にこれらのトリペプチド配列のうちのいずれかが存在することにより、潜在的グリコシル化部位が創出される。O結合型グリコシル化とは、糖類N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つと、ヒドロキシアミノ酸(最も一般的にはセリンまたはスレオニンであるが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンも使用され得る)との結合を指す。抗体へのグリコシル化部位の付加は、好都合には、(N結合型グリコシル化部位のための)上述のトリペプチド配列を含有するようにアミノ酸配列を変更することによって遂行される。改変は、(O結合型グリコシル化部位のための)元の抗体の配列に1つ以上のセリンまたはスレオニン残基を付加するか、またはそれにより置換することによって行うこともできる。
【0240】
本発明の抗体の修飾グリコフォームは、以下に限定されないが、エフェクター機能の強化もしくは低減、及び/または抗体の半減期の修飾(例えば、WO/2007/010401を参照)を含めた様々な目的に有用であり得る。このような改変は、C1q結合及びCDCの減少もしくは増加、またはFcγR結合及びADCCの減少もしくは増加をもたらし得る。置換は、例えば、重鎖定常領域のアミノ酸残基の1つ以上で行われ得、それによりエフェクター機能の変化が生じ、その一方で修飾抗体に比べて抗原への結合能力が保持される(US5,624,821及びUS5,648,260を参照)。操作されたグリコフォームは、当業者に知られている任意の方法によって生成することができ、例えば、操作されたもしくはバリアント発現株の使用、1つ以上の酵素(例えば、β(l,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTII 1))との共発現、様々な生物内もしくは様々な生物からの細胞株内での抗体もしくはその断片の発現、または抗体もしくは断片の発現後の炭水化物(複数可)の修飾によって生成することができる。操作されたグリコフォームを精製するための方法は当技術分野で知られており、以下のものが挙げられるが、これに限定されない:Umana et al,1999,Nat.Biotechnol 17:176-180;Davies et al.,2007 Biotechnol Bioeng 74:288-294;Shields et al,2002,J Biol Chem 277:26733-26740;Shinkawa et al.,2003,J Biol Chem 278:3466-3473) U.S.Pat.No.6,602,684;米国特許出願第10/277,370号;米国特許出願第10/113,929号;PCT第WO00/61739A1号;PCT第WO01/292246A1号;PCT第WO02/311140Al号;PCT第WO02/30954A1号;Potelligent(登録商標)技術(Biowa,Inc.Princeton,N.J.);GlycoMAb(商標)グリコシル化操作技術(GLYCART biotechnology AG,Zurich,Switzerland)。例えば、WO00061739;EA01229125;US20030115614;Okazaki et al.,2004,JMB,336:1239-49を参照。
【0241】
本明細書の抗体のエフェクター機能に関する修飾は、例えば、抗体の抗原依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)及び/または補体依存性細胞毒性(CDC)を強化するために、望ましいと考えられる。これは、1つ以上のアミノ酸置換を抗体のFc領域内に導入することによって達成することができる。代替的または追加的に、システイン残基(複数可)をFc領域内に導入し、それによりこの領域内で鎖間ジスルフィド結合を形成できるようにしてもよい。このように生成されたホモ2量体抗体は、内部移行能力が改良され、及び/または補体媒介性細胞殺滅や抗体依存性細胞毒性(ADCC)が増加し得る。Caron et al.,J.Exp Med.176:1 191-1 195(1992)及びShopes,B.J.Immunol.148:2918-2922(1992)を参照。抗腫瘍活性が強化されたホモ二量体抗体は、Wolff et al.Cancer Research 53:2560-2565(1993)に記載のようなヘテロ二官能性架橋剤を用いて調製することもできる。代替的に、二重Fc領域を有することにより補体溶解能力及びADCC能力が強化されていると考えられる抗体を操作してもよい。Stevenson et al.Anti-Cancer Drug Design 3:219-230(1989)を参照。
【0242】
抗体の血清半減期を増加させるために、例えば、米国特許第5,739,277号に記載のようなサルベージ受容体結合エピトープを抗体(特に、抗体断片)内に組み込んでもよい。本明細書で使用される場合、「サルベージ受容体結合エピトープ」という用語は、IgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)のin vivo血清半減期を増加させる役割を担うIgG分子のFc領域のエピトープを意味する。D.代替的に、抗体半減期はペグ化によって増加させることができる。
【0243】
親和性成熟
さらなる例において、本開示の既存のPAR4結合タンパク質は、増加した親和性でPAR4に結合可能な抗体を産生するように親和性が成熟している。例えば、VL及び/またはVHをコードする配列を単離し、CDRコード領域(例えば、VL及び/またはVHのCDR3をコードする領域)を1つ以上のアミノ酸置換が導入されるように変異させる。次いで、得られた変異PAR4結合タンパク質において、例えば競合的アッセイで、PAR4に対する結合をスクリーニングする。
【0244】
本開示に従うPAR4結合タンパク質は、可溶性の分泌タンパク質であってもよく、細胞の表面上の融合タンパク質、または粒子(例えば、ファージもしくはその他のウイルス、リボソーム、または胞子)として提示されてもよい。例示的なファージディスプレイ法は、例えば、US5821047;US6248516;及びUS6190908に記載されている。次いで、これらの方法を用いて産生したファージ表示粒子をスクリーニングして、標的抗原(例えば、PAR4)に結合するのに十分な立体構造を有する、表示されたPAR4結合タンパク質を同定する。
【0245】
タンパク質産生
1つの例において、本開示のPAR4結合タンパク質は、細胞株(例えば、本明細書に記載されている及び/または当技術分野で知られているように、例えば、当該タンパク質の産生に十分な条件下でのハイブリドーマ)を培養することにより産生される。
【0246】
組換え発現
組換えタンパク質の場合には、組換えタンパク質をコードする核酸を1つ以上の発現コンストラクト(例えば、発現ベクター(複数可))内に入れて、次いで宿主細胞(例えば、ジスルフィド架橋または結合をもたらし得る細胞、例えば、E.coli細胞、酵母細胞、昆虫細胞、または哺乳類細胞)に形質移入する。例示的な哺乳類細胞としては、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または別の形で免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞が挙げられる。このような目的を達成するための分子クローニング技法は当技術分野で知られており、例えば、AusubelまたはSambrookに記載されている。幅広い種類のクローニング及びin vitro増幅の方法が組換え核酸の構築に好適である。組換え抗体を産生する方法も当技術分野で知られている。US4816567、US7923221、及びUS7022500を参照。
【0247】
本開示のタンパク質をコードする核酸は、単離した後、さらなるクローニング(DNAの増幅)のため、または無細胞系もしくは細胞内で発現させるために、発現コンストラクトまたは複製可能なベクター内に挿入する。例えば、核酸は、プロモーターに対し作用可能に連結している。本明細書で使用される場合、「プロモーター」という用語は、最も広い文脈で解釈するものとし、ゲノム遺伝子の転写制御配列(的確な転写開始に必要とされるTATAボックスまたは開始エレメントを含む)を含み、例えば、発生及び/または外部刺激に応答してあるいは組織特異的方式で核酸の発現を改変する、追加の制御エレメント(例えば、上流活性化配列、転写因子結合部位、エンハンサー、及びサイレンサー)を伴う場合も伴わない場合もある。また、本発明の文脈において「プロモーター」という用語は、作用可能に連結した核酸の発現を付与、活性化、または強化する組換え、合成、もしくは融合の核酸、または誘導体を説明するためにも使用される。例示的なプロモーターは、当該核酸の発現をさらに強化するため及び/または空間的発現及び/または時間的発現を改変するための、1つ以上の特定の制御エレメントのさらなるコピーを含むことができる。
【0248】
本明細書で使用される場合、「~に対し作用可能に連結した」という用語は、核酸の発現がプロモーターによってコントロールされるように、核酸に対するプロモーターの位置を定めることを意味する。
【0249】
無細胞発現系も本開示で企図されている。例えば、本開示のFnl4結合タンパク質をコードする核酸は、好適なプロモーター(例えば、T7プロモーター)に対し作用可能に連結しており、得られた発現コンストラクトは転写及び翻訳に十分な条件に曝露される。in vitro発現または無細胞発現のための典型的な発現ベクターが説明されており、このような発現ベクターとしては、以下に限定されないが、TNT T7及びT3 TNTシステム(Promega)、pEXPl-DEST及びpEXP2-DESTベクター(Invitrogen)が挙げられる。
【0250】
細胞内での発現向けには多くのベクターが利用可能である。概して、ベクター構成要素としては、以下のうちの1つ以上が挙げられるが、これに限定されない:シグナル配列、(例えば、本明細書で提供される情報に由来する)本開示のFnl4結合タンパク質をコードする配列、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列。当業者は、タンパク質の発現に好適な配列を認識しているであろう。例えば、例示的なシグナル配列としては、原核生物分泌シグナル(例えば、pelB、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、もしくは熱安定性エンテロトキシンII)、酵母分泌シグナル(例えば、インベルターゼリーダー、因子リーダー、もしくは酸性ホスファターゼリーダー)、または哺乳類分泌シグナル(例えば、単純ヘルペスgDシグナル)が挙げられる。
【0251】
例示的なプロモーターとしては、原核生物内で活性のプロモーター(例えば、phoAプロモーター、β-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼプロモーター、トリプトファン(trp)プロモーター系、ならびにハイブリッドプロモーター、例えば、tacプロモーター)が挙げられる。
【0252】
哺乳類細胞内で活性の例示的なプロモーターとしては、サイトメガロウイルス最初期プロモーター(CMV-IE)、ヒト伸長因子1-ocプロモーター(EF1)、小核RNAプロモーター(Ula及びUlb)、oc-ミオシン重鎖プロモーター、サルウイルス40プロモーター(SV40)、ラウス肉腫ウイルスプロモーター(RSV)、アデノウイルス主後期プロモーター、βアクチンプロモーター;CMVエンハンサー/βアクチンプロモーターもしくは免疫グロブリンプロモーターまたはその活性断片を含むハイブリッド制御エレメントが挙げられる。有用な哺乳類宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、AUSTRALIAN CELL BANK CRL 1651);ヒト胚腎臓株(293細胞または懸濁培養下での成長のためにサブクローニングされた293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、AUSTRALIAN CELL BANK CCL 10);またはチャイニーズハムスター(CHO)である。
【0253】
酵母細胞(例えば、Pichia pastoris、Saccharomyces cerevisiae、及びS.pombeからなる群より選択される酵母細胞)内での発現に適した典型的なプロモーターとしては、以下に限定されないが、ADH1プロモーター、GAL1プロモーター、GAL4プロモーター、CUPlプロモーター、PH05プロモーター、nmtプロモーター、RPR1プロモーター、またはTEF1プロモーターが挙げられる。
【0254】
単離された核酸分子またはこのような核酸分子を含む遺伝子コンストラクトを細胞内に導入するための手段は、当業者に知られている。所与の細胞に使用する技法は、好結果を収めている既知の技法に依存する。組換えDNAを細胞内に導入するための手段としては、マイクロインジェクション、DEAE-デキストラン媒介の形質移入、例えば、リポフェクタミン(Gibco,MD,USA)及び/またはセルフェクチン(Gibco,MD,USA)の使用によるリポソーム媒介の形質移入、PEG媒介のDNA取込み、エレクトロポレーション、ウイルス形質導入(例えば、レンチウイルスを用いた形質導入)、ならびに微粒子衝撃(例えば、中でも、DNAコーティングされたタングステンまたは金の粒子(Agracetus Inc.,WI,USA)の使用による微粒子衝撃)が挙げられる。
【0255】
本開示のPAR4結合タンパク質の産生に使用される宿主細胞は、使用する細胞タイプに応じて様々な培地で培養され得る。Ham’s F10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、(Sigma)、RPM1-1640(Sigma)、及びダルベッコ修飾イーグル培地((DMEM)、Sigma)のような市販の培地は、哺乳類細胞の培養に好適である。本明細書で論じられる他の細胞タイプを培養するための培地は、当技術分野で知られている。
【0256】
タンパク質の単離
本開示のPAR4結合タンパク質は、単離することも精製することもできる。
【0257】
本開示のPAR4結合タンパク質を精製するための方法は、当技術分野で知られている、及び/または本明細書に記載されている。
【0258】
組換え技法を使用する場合、本開示のPAR4結合タンパク質は、細胞内、ペリプラズム間隙内で産生させても、培地中に直接分泌させてもよい。タンパク質を細胞内で産生させる場合、第1のステップとして、微粒子状デブリである宿主細胞または溶解断片は、例えば、遠心分離または限外濾過により除去される。タンパク質を培地中に分泌させる場合、最初に、このような発現系からの上清を市販のタンパク質濃縮フィルター(例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニット)を使用して濃縮する。タンパク質分解を阻害するためにPMSFのようなプロテアーゼ阻害物質が前述のステップのうちのいずれかに含まれてもよく、外来性夾雑物の成長を防止するために抗生物質が含まれてもよい。
【0259】
細胞から調製されるタンパク質は、例えば、イオン交換、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、親和性クロマトグラフィー(例えば、プロテインA親和性クロマトグラフィーもしくはプロテインGクロマトグラフィー)、または前述のものの任意の組合せを用いて精製することができる。これらの方法は当技術分野で知られており、例えば、W099/57134またはZola(1997)に記載されている。
【0260】
また、当業者は、本開示のPAR4結合タンパク質が、精製または検出を推進するためのタグ、例えば、ポリヒスチジンタグ、例えば、ヘキサヒスチジンタグ、またはインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)タグ、またはサルウイルス5型(V5)タグ、またはFLAGタグ、またはグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグを含むように修飾され得ることも認識しているであろう。例えば、このタグはヘキサ-hisタグである。得られたタンパク質は、次に当技術分野で知られている方法、例えば、親和性精製を用いて精製される。例えば、ヘキサ-hisタグを含むタンパク質は、当該タンパク質を含む試料を、固体または半固体支持体上に固定したヘキサ-hisタグと特異的に結合するニッケル-ニトリロ三酢酸(Ni-NTA)に接触させ、試料を洗浄して非結合タンパク質を除去し、次に結合タンパク質を溶離することにより、精製される。代替的または追加的に、タグに結合するリガンドまたは抗体は、親和性精製法で使用される。
【0261】
結合体
本開示は、任意の例に従う本明細書に記載のPAR4結合タンパク質の結合体も提供する。タンパク質が結合体化し得る化合物の例は、ラジオアイソトープ、検出可能な標識、治療化合物、コロイド、毒素、核酸、ペプチド、タンパク質、対象におけるタンパク質の半減期を増加させる化合物、及びこれらの混合物からなる群より選択される。例示的な治療剤としては、以下に限定されないが、抗血管新生剤、抗新血管形成剤及び/またはその他の血管形成剤、抗増殖剤、アポトーシス促進剤、化学療法剤、または治療核酸が挙げられる。毒素には、細胞に対し有害な(例えば、細胞を殺滅する)任意の薬剤が含まれる。当技術分野で知られている薬物のクラスについての記載、及びそれらの作用機序についてはGoodman et ah,(1990)を参照。免疫グロブリン-免疫毒素結合体の調製に適切なさらなる技法は、例えば、US5194594に示されている。例示的な毒素としては、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンシンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、momordica charantia阻害物質、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害物質、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、及びトリコテセンが挙げられる。例えば、W093/21232を参照。
【0262】
1つの例において、任意の例に従う本明細書に記載のPAR4結合タンパク質は、別のタンパク質に、例えば、免疫修飾物質、または半減期延長タンパク質もしくはペプチド、または特に血清アルブミンに結合する他のタンパク質に結合または連結している。例示的な血清アルブミン結合ペプチドまたはタンパク質は、US20060228364またはUS20080260757に記載されている。
【0263】
別の例において、タンパク質は、細胞事前標的化で利用するために「受容体」(例えば、ストレプトアビジン)と結合体化させてもよく、この場合、結合体を患者に投与し、次いで除去剤を用いて非結合の結合体を血液循環から除去し、次いで治療剤(例えば、放射性ヌクレオチド)と複合体化した「リガンド」(例えば、アビジン)を投与する。
【0264】
本開示のPAR4結合タンパク質は、当技術分野で知られており容易に入手可能なさらなる非タンパク質部分を含むように修飾することができる。例えば、タンパク質の誘導体化に好適な部分は、生理学的に許容されるポリマー、例えば、水溶性ポリマーである。このようなポリマーは、安定性の増加及び/または(例えば、腎臓による)クリアランスの低減及び/または本開示のFnl4結合タンパク質の免疫原性の低減に有用である。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、以下に限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、またはプロプロピレン(propropylene)グリコール(PPG)が挙げられる。
【0265】
1つの例において、任意の例に従う本明細書に記載のPAR4結合タンパク質は、検出及び/または単離を推進するための1つ以上の検出可能なマーカーを含む。例えば、化合物は蛍光標識、例えば、フルオレセイン(FITC)、5,6-カルボキシメチルフルオレセイン、テキサスレッド、ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル(NBD)、クマリン、塩化ダンシル、ローダミン、4′-6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、ならびにシアニン色素Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、及びCy7、フルオレセイン(5-カルボキシフルオセイン-N-ヒドロキシサクシンイミドエステル)、ローダミン(5,6-テトラメチルローダミン)を含む。これらの蛍光物質における吸収及び発光の最大値は、それぞれ以下の通り:FITC(490nm;520nm)、Cy3(554nm;568nm)、Cy3.5(581nm;588nm)、Cy5(652nm;672nm)、Cy5.5(682nm;703nm)、及びCy7(755nm;778nm)。代替的または追加的に、任意の例に従う本明細書に記載のFnl4結合タンパク質は、例えば、蛍光半導体ナノ結晶(例えば、US6,306,610に記載のようなもの)で標識される。
【0266】
代替的または追加的に、PAR4結合タンパク質は、例えば、鉄、鋼、ニッケル、コバルト、希土類材料、ネオジム-鉄-ホウ素、二価鉄-クロム-コバルト、ニッケル-二価鉄、コバルト-白金、またはストロンチウムフェライトのような磁性または常磁性化合物で標識される。
【0267】
タンパク質の固定
1つの例において、PAR4結合タンパク質は、固体マトリックスまたは半固体マトリックス上に固定される。「固定」という用語は、例えば、W099/56126またはWO02/26292に記載のような、タンパク質を特定のマトリックスに固定するための様々な方法及び技法を伴うものと理解されたい。例えば、固定は、タンパク質を安定化して、特に保管中または単一バッチ使用において、生物学的、化学的、または物理的な露出によってタンパク質の活性が低減または有害に修飾されないようにするのに役立ち得る。マトリックス上にタンパク質を固定するための様々な方法が当技術分野で知られており、このような方法としては、架橋、担体との結合、半透性マトリックス内での保持が挙げられる。例示的なマトリックスとしては、多孔質ゲル、酸化アルミニウム、ベントナイト、アガロース、デンプン、ナイロン、またはポリアクリルアミドが挙げられる。
【0268】
本開示の結合タンパク質の活性のアッセイ
結合アッセイ
このようなアッセイの1つの形態は、例えば、Scopes(1994)Protein Purification: principles and practice Springer-Verlagに記載のような抗原結合アッセイである。このような方法は、概して、PAR4結合タンパク質を標識することと、当該タンパク質を固定した抗原またはその断片に、例えば、(例えば、配列番号6に示されるような)ビオチンと融合したPAR4の細胞外部分を含むタンパク質に接触させることとを伴う。洗浄して非特異的結合タンパク質を除去した後、標識の量、そして結果として結合タンパク質が検出される。当然ながら、PAR4結合タンパク質を固定し抗原を標識することができる。パニング型アッセイも使用することができる。本明細書における実施例は、HEK細胞の表面上に発現させることができるflagタグ付きPAR4に基づいた結合アッセイを記載している。トロンビンの存在下でのPAR4結合タンパク質によるPAR4切断の阻害は、フローサイトメトリーによって測定することができる。
【0269】
本発明の、PAR4抗体のエピトープに対する結合を競合的に阻害するPAR4結合タンパク質は、当技術分野で知られている従来的な競合結合アッセイ、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いてスクリーニング及び同定することができる。
【0270】
競合結合アッセイ
本開示の抗体(例えば、mAb ARC3.H4b)の結合を競合的に阻害するPAR4結合タンパク質を測定するためのアッセイは、当業者には明らかであろう。例えば、本開示の抗体を、検出可能な標識、例えば、蛍光標識または放射性標識と複合体化させる。次いで、標識抗体及び試験PAR4結合タンパク質を混合し、抗体またはそのエピトープを含むペプチドのFc領域と融合したPAR4またはその細胞外ドメインに接触させる。次いで、標識抗体のレベルを測定し、PAR4結合タンパク質の不在下で標識抗体をPAR4またはPAR4-Fc領域またはそのエピトープを含むペプチドと接触させたときに測定したレベルと比較する。試験PAR4結合タンパク質の存在下での標識抗体のレベルが、PAR4結合タンパク質の不在下の場合に比べて低減する場合、そのPAR4結合タンパク質は抗体の結合を競合的に阻害する。
【0271】
任意選択で、試験PAR4結合タンパク質を抗体とは異なる標識と複合体化させる。これにより、試験PAR4結合タンパク質のタンパク質またはエピトープに対する結合のレベルを検出できるようになる。
【0272】
別の例において、試験PAR4結合タンパク質をPAR4またはPAR4-Fc領域またはそのエピトープを含むペプチドに結合させ、その後にPAR4またはPAR4-Fc領域またはそのエピトープを含むペプチドを本明細書に記載の抗体に接触させる。PAR4結合タンパク質の存在下での結合抗体の量が、PAR4結合タンパク質の不在下の場合に比べて低減した場合、そのPAR4結合タンパク質が抗体のPAR4に対する結合を競合的に阻害することを示す。また、標識PAR4結合タンパク質を用いて相互アッセイを実施することもでき、最初に抗体をPAR4またはPAR4-Fc領域またはそのエピトープを含むペプチドに結合させる。この場合には、抗体の存在下でのPAR4またはPAR4-Fc領域またはそのエピトープを含むペプチドに結合した標識PAR4結合タンパク質の量が、抗体の非存在下の場合に比べて低減した場合、そのPAR4結合タンパク質が抗体のPAR4に対する結合を競合的に阻害することを示す。
【0273】
エピトープマッピングアッセイ
別の例において、本明細書に記載のPAR4結合タンパク質が結合するエピトープがマッピングされている。エピトープマッピングの方法は、当業者には明らかであろう。例えば、目的エピトープを含むPAR4配列またはその領域にまたがる一連の重複ペプチド、例えば10~15アミノ酸を含むペプチドが産生される。次いで、PAR4結合タンパク質を各ペプチドまたはその組合せに接触させ、当該タンパク質が結合するペプチド(複数可)を決定する。これにより、PAR4結合タンパク質が結合するエピトープを含むペプチド(複数可)を決定することができる。PAR4結合タンパク質が複数の非連続ペプチドに結合する場合、PAR4結合タンパク質は立体構造的エピトープに結合する可能性がある。
【0274】
1つの例において、PAR4のランダムな断片をファージの表面に発現させ、ファージをPAR4結合タンパク質に接触させる。次いで抗体が結合したファージを単離し、ファージ内に含まれるコード核酸により、発現したペプチドのアミノ酸配列を推定することができる。重複ペプチドを有する一連のファージを単離することにより、エピトープに含まれる残基を含むPAR4の領域を含むペプチドが同定される。
【0275】
代替的または追加的に、PAR4内のアミノ酸残基を、例えば、アラニンスキャニング変異誘発によって変異させ、PAR4結合タンパク質の結合を低減または防止する変異を決定する。PAR4結合タンパク質の結合を低減または防止する任意の変異は、PAR4結合タンパク質が結合するエピトープ内に存在する可能性がある。
【0276】
さらなる方法は、PAR4またはその領域を、固定した本開示のPAR4結合タンパク質に結合させることと、得られた複合体をプロテアーゼで消化させることとを伴う。次いで、固定したPAR4結合タンパク質に結合したままのペプチドを単離し、例えば質量分析を用いて分析してペプチドの配列を決定する。
【0277】
さらなる方法は、PAR4またはその領域内の水素を重水素核(deutron)に変換し、得られたタンパク質を、固定した本開示のPAR4結合タンパク質に結合させる。次いで、重水素核を変換して水素に戻し、PAR4またはその領域を単離し、酵素で消化させ、例えば質量分析を用いて分析して、重水素核を含む領域を同定する。このような領域は、本明細書に記載のPAR4結合タンパク質の結合により、水素への変換から保護されているものと考えられる。
【0278】
上記段落では、PAR4に対する言及は、組換えPAR4及びその細胞外ドメインを包含する。
【0279】
親和性アッセイ
任意選択で、PAR4またはそのエピトープ含有ペプチドに対するPAR4結合タンパク質の解離定数(Kd)または会合定数(Ka)または結合定数(KD、すなわち、Ka/Kd)が測定される。PAR4結合タンパク質に対するこれらの定数は、放射標識または蛍光標識PAR4結合アッセイにより測定される1つの例である。このアッセイは、滴定系列の非標識PAR4の存在下、最小濃度の標識PAR4でPAR4結合タンパク質を平衡化する。結合していないPAR4を除去するために洗浄した後、標識の量を測定する。別の例に従えば、係数は、表面プラズモン共鳴アッセイを使用することにより、例えば、固定したPAR4またはその領域と共にBIAcore表面プラズモン共鳴(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用することにより、測定される。
【0280】
タンパク質検出アッセイ
本開示の1つの例は、PAR4またはPAR4を発現する細胞(例えば、血小板)の存在を検出する。タンパク質または細胞の量、レベル、または存在は、当業者に知られている様々な技法のいずれかを用いて、例えば、フローサイトメトリー、免疫組織化学検査、免疫蛍光法、免疫ブロット、ウェスタンブロット、ドットブロット、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、放射性免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間(MALDI-TOF)、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、タンデム質量分析(質量分析、LC MS/MSを含む)、バイオセンサー技術、エバネッセント光ファイバー技術、またはプロテインチップ技術からなる群より選択される技法を用いて測定される。
【0281】
1つの例において、タンパク質の量またはレベルの測定に使用されるアッセイは半定量的アッセイである。別の例において、タンパク質の量またはレベルの測定に使用されるアッセイは定量的アッセイである。
【0282】
例えば、タンパク質は、免疫測定法により、例えば、免疫組織化学検査、免疫蛍光法、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、、蛍光結合免疫吸着測定法(FLISA)、ウェスタンブロッティング、放射性免疫測定法(RIA)、バイオセンサーアッセイ、プロテインチップアッセイ、免疫染色アッセイ(例えば、免疫蛍光法)からなる群より選択されるアッセイを用いて検出される。
【0283】
標準的な固相ELISAまたはFLISA形式は、様々な試料からタンパク質の濃度を測定する上で特に有用である。
【0284】
1つの形態において、ELISAまたはFLISAは、本開示のPAR4結合タンパク質またはPAR4の異なるエピトープに結合するタンパク質を固体マトリックス上に、例えば、膜、ポリスチレンもしくはポリカーボネートマイクロウェル、ポリスチレンもしくはポリカーボネートディップスティック、またはガラス支持体上に固定することを含む。次いで、試料を固定したタンパク質との物理的関係に供し、PAR4は結合または「捕捉」される。次いで、結合したPAR4は、PAR4の異なるエピトープに結合する第2の標識化合物を用いて検出される。代替的に、第2の(検出)抗体に結合する第3の標識抗体を使用してもよい。本明細書に記載のアッセイ形式が高スループット形式、例えば、スクリーニングプロセスの自動化またはマイクロアレイ形式を適用可能であることは、当業者には明らかであろう。さらに、上述のアッセイのバリエーション、例えば、競合的ELISAなども当業者には明らかであろう。
【0285】
代替的な例において、ポリペプチドは、当技術分野で知られている方法、例えば、免疫組織化学検査または免疫蛍光法を用いて、細胞内または細胞上で検出される。免疫蛍光法を用いた方法は、定量的または少なくとも半定量的であるため、例示的である。染色された細胞の蛍光の程度を定量化する方法は当技術分野で知られており、例えば、Cuello(1984)に記載されている。
【0286】
バイオセンサーデバイスは、概して、電流またはインピーダンス測定要素と組み合わせた電極表面を用いて、(例えば、US5567301に記載のような)アッセイ基質と組み合わせてデバイスに一体化される。本開示のPAR4結合タンパク質はバイオセンサーデバイスの表面上に組み込まれ、生物学的試料は当該デバイスに接触される。バイオセンサーデバイスに検出された電流またはインピーダンスの変化は、当該PAR4結合タンパク質に対するタンパク質結合を示す。当技術分野で知られているバイオセンサーのいくつかの形態は、タンパク質相互作用を検出するための表面プラズモン共鳴(SPR)にも依存しており、表面プラズモン共鳴表面における反射の変化は、リガンドまたは抗体に結合するタンパク質を示す(US5485277及びUS5492840)。
【0287】
バイオセンサーは、このようなシステムをマイクロまたはナノスケールに適合させることが容易であるため、高スループット分析で特に使用される。さらに、このようなシステムはいくつかの検出試薬を組み込むように好都合に適合され、単一バイオセンサーユニットにおける診断試薬の多重化が可能になる。これにより、少量の体液中でいくつかのタンパク質またはペプチドを同時に検出することが可能になる。
【0288】
タンパク質のPAR4に対する結合は、本明細書の実施例に記載されているようにフローサイトメトリーを用いて検出することもできる。
【0289】
抗PAR4抗体の生成及び選択
本明細書において有用な抗体の生成及び選択のための代替的な技法としては、リンパ球の(例えば、本明細書に記載の)PAR4タンパク質またはPAR4ペプチドに対するin vitro曝露、及び(例えば、固定または標識されたPAR4タンパク質またはペプチドの使用による)ファージまたは同様のベクターにおける抗体ディスプレイライブラリーの選択が挙げられる。有望なPAR4ポリペプチド結合ドメインを有するポリペプチドをコードする遺伝子は、ファージ(ファージディスプレイ)上またはE.coliのような細菌上に示されるランダムペプチドライブラリーをスクリーニングすることにより取得することができる。ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、複数の方法で、例えば、ランダム変異誘発及びランダムポリヌクレオチド合成により取得することができる。このようなランダムペプチドディスプレイライブラリーは、既知の標的と相互作用するペプチドのスクリーニングに使用することができ、既知の標的は、タンパク質またはポリペプチド(例えば、リガンドもしくは受容体)、生物もしくは合成の巨大分子、または有機もしくは無機の物質であり得る。そのようなランダムペプチドディスプレイライブラリーを創出及びスクリーニングするための技法は当該分野で知られており(Ladner et al.,米国特許第5,223,409号;Ladner et al.,米国特許第4,946,778号;Ladner et al.,米国特許第5,403,484号、及びLadner et al.,米国特許第5,571,698号)、ランダムペプチドディスプレイライブラリー及びこのようなライブラリーをスクリーニングするためのキットは、例えば、Clontech(Palo Alto,Calif.)、Invitrogen Inc.(San Diego,Calif.)、New England Biolabs,Inc.(Beverly,Mass.)、及びPharmacia LKB Biotechnology Inc.(Piscataway,N.J.)から市販されている。ランダムペプチドディスプレイライブラリーは、PAR4に結合するタンパク質を同定するために、本明細書で開示されているPAR4配列を用いてスクリーニングすることができる。PAR4ポリペプチドと相互作用するこのような「結合タンパク質」は、細胞のタグ付け、親和性精製によるホモログポリペプチドの単離に使用することができ、また薬物、毒素、放射性ヌクレオチドなどと直接的または間接的に複合体化させることができる。このような結合タンパク質は、例えば発現ライブラリー及び中和活性をスクリーニングするための分析方法で使用することもできる。また、結合タンパク質は、ポリペプチドの循環レベルを測定するための診断アッセイや、基礎病態または基礎疾患のマーカーとしての可溶性ポリペプチドを検出または定量化するための診断アッセイ向けに使用することもできる。このような結合タンパク質は、PAR4結合及びシグナル伝達をin vitro及びin vivoでブロックするためのPAR4「アンタゴニスト」として作用することもできる。このような抗PAR4結合タンパク質は、プロテアーゼ活性化PAR4に対する細胞応答の阻害に有用であると考えられる。
【0290】
当業者に知られている様々なアッセイを利用して、PAR4タンパク質またはペプチドに特異的に結合する抗体を検出することができる。例示的なアッセイは、Antibodies:A Laboratory Manual,Harlow and Lane(Eds.),Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988に詳細が記載されている。このようなアッセイの代表例としては、同時免疫電気泳動法、放射性免疫測定法、放射性免疫沈降法、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ブロットまたはウェスタンブロットアッセイ、阻害または競合アッセイ、及びサンドイッチアッセイが挙げられる。加えて、抗体は、野生型vs変異型のPAR4タンパク質、ポリペプチド、または断片に対する結合をスクリーニングすることができる。
【0291】
PAR4結合タンパク質の機能的特徴のアッセイ
全てのPAR4バリアントに対するPAR4結合タンパク質の抗血栓活性は、全バリアントの有効性を確証するため、遺伝子型がホモ接合型Ala120もしくはThr120またはヘテロ接合型であると同定された人々からの血液を用いて、ex vivo血小板凝集アッセイで検証することができる。
【0292】
PAR4結合タンパク質の抗血栓薬としての有用性は、既存抗血小板薬経路の阻害物質(アスピリン(50μM)、P2Y12阻害物質2-MeSAMP(50μMまたは100μM))の不在下及び存在下での抗血栓効果を測定することによって検証することができ、またPAR1阻害物質ボラパキサル(100mM)も、PAR4結合タンパク質との抗血栓効果の比較研究のためにex vivo血小板凝集アッセイで使用される。発明者らが、血栓症がこれらの機構とは無関係に生じることを示している場合、高剪断条件(3000s-1)が含まれる(Neeves KB et al.(2008)J Thromb Haemost 6:2193-2201)。
【0293】
追加的または代替的に、マウスin vivo血栓症実験(Lee H et al.(2012)Brit J Pharmacol 166:2188-2197;Mountford JK et al.(2015)Nat Commun 6:6535)がPAR4結合タンパク質の機能性の検証に使用されてもよい。このようなマウス実験で抗PAR4活性に対する陽性対照を確実に含めるには、マウスまたはヒト受容体配列(表2)のいずれかに対応する抗原を使用し上記の概説のようにスクリーニングして、生成される抗体の抗血栓効果を検証することができる。霊長類が、PAR1及びPAR4の組合せのみを発現する血小板を有することが知られている唯一の種であることに留意されたい。マウス血小板はPAR3及びPAR4を発現し、PAR4のみが機能する。そのため、このような研究はin vivoの機構実証に限定されているが、ヒト対象の試験及び非ヒト霊長類の前臨床研究以外においては、PAR4結合タンパク質の抗血栓活性における最も適切なin vivo検証である。麻酔マウスの頚動脈の電解質損傷は、PAR4結合タンパク質のin vivo血栓形成及び安定性に及ぼす効果を検証するために使用することができる(Lee H et al.(2012)Brit J Pharmacol 166:2188-2197;Lee H et al.(2012)Thromb Haemost 107)。血流はドップラーフロープローブを用いて記録する。エンドポイントは、血栓形成(動脈閉塞までの時間)及び安定性(閉塞後の再疎通事象の回数及び程度)、ならびに損傷動脈を通る全血流、及びパラフィン包埋動脈断面のCarstair染色による血栓組織像の徹底的な検証を評価することができる。
【0294】
PAR4活性化は、プロテアーゼ刺激後にホスホイノシチド加水分解を測定することによって研究することができる。本明細書に記載のエピトープタグ付きPAR4アッセイは、PAR4結合タンパク質によるPAR4の切断及び活性化を検証するために使用することもできる。
【0295】
PAR4コンストラクトまたはPAR4多型バリアントを形質移入した哺乳類細胞(例えば、HEK293T細胞)は、PAR4のアンタゴニストの研究に有用なシステムである。PAR4形質移入細胞は受容体に対するリガンドのスクリーニングに使用され、また天然リガンドのアンタゴニストのスクリーニングにも使用される。このアプローチを要約すると、cDNAまたは受容体をコードする遺伝子はその発現に必要な他の遺伝子要素(例えば、転写プロモーター)と組み合わされ、得られた発現ベクターは宿主細胞に挿入される。DNAを発現し機能的受容体を産生する細胞が選択され、様々なスクリーニングシステム内で使用される。
【0296】
機能的PAR4を発現する細胞は、スクリーニングアッセイ内で使用される。様々な好適なアッセイが当技術分野で知られている。このようなアッセイは、標的細胞における生物学的応答の検出に基づいている。対照値を上回る代謝の増加は、PAR4の活性または応答を調節する試験化合物を示す。1つのこのようなアッセイは細胞増殖アッセイである。細胞を試験化合物の存在下または非存在下で培養し、細胞増殖の検出を、例えば、トリチウム標識チミジンの取込みを測定することにより、または3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)の代謝分解に基づく比色分析アッセイにより行う(Mosman,J.Immunol. Meth.65:55-63,1983)。追加のアッセイ方法は、試験化合物が細胞表面上に目的受容体を含む受容体(+)細胞と目的受容体を発現しない受容体(-)細胞とに及ぼす効果を測定することを含む。このような細胞はレポーター遺伝子を発現するように操作することができる。レポーター遺伝子は、受容体連結経路に応答性であるプロモーターエレメントまたは応答エレメントに連結しており、当該アッセイはレポーター遺伝子の転写の活性を検出する。好適な応答エレメントとしては、サイクリックAMP応答エレメント(CRE)、ホルモン応答エレメント(HRE)、インスリン応答要素(IRE)(Nasrin et al.,Proc. Natl. Acad. Sci.USA 87:5273-77,1990)、及び血清応答エレメント(SRE)(Shaw et al.,Cell 56:563-72,1989)が挙げられる。サイクリックAMP応答エレメントは、Roestler et al.,J.Biol.Chem.263(19):9063-66;1988;及びHabener,Molec. Endocrinol.4(8):1087-94;1990で概説されている。ホルモン応答エレメントは、Beato,Cell 56:335-44;1989で概説されている。この点において好ましいプロモーターエレメントは、血清応答エレメント、すなわちSREである(例えば、Shaw et al.,Cell 56:563-72,1989を参照)。好ましいこのようなレポーター遺伝子はルシフェラーゼ遺伝子である(de Wet et al.,Mol. Cell. Biol.7:725,1987)。ルシフェラーゼ遺伝子の発現は、当技術分野で知られている方法を用いて発光により検出される(例えば、Baumgartner et al.,J.Biol.Chem.269:29094-101,1994;Schenborn and Goiffin,Promega Notes 41:11,1993)。ルシフェラーゼ活性アッセイキットは、例えば、Promega Corp.(Madison,Wis)から市販されている。このタイプの標的細胞株は、化学物質、細胞条件培地、真菌ブロス、土壌試料、水試料などのライブラリーのスクリーニングに使用することができる。このタイプのアッセイは、PAR4リガンド結合を直接的にブロックする化合物と、さらに受容体-リガンド結合の後に続く細胞経路のプロセスをブロックする化合物とを検出する。代替形態において、化合物または他の試料は、検出可能な標識(例えば、125 I、ビオチン、西洋ワサビペルオキシダーゼ、FITCなど)でタグ付けされた部分を用いてPAR4結合の直接的ブロックについて試験することができる。このタイプのアッセイ内では、試験試料の活性化PAR4阻害能力は阻害活性の指標であり、これは二次アッセイにより確証することができる。試験試料のPAR4活性刺激能力も、二次アッセイにより測定及び確認することができる。
【0297】
リガンド結合受容体もしくは抗体またはこれらの結合断片を使用するアッセイシステム及び市販のバイオセンサー装置(BIAcore,Pharmacia Biosensor,Piscataway,N.J.)が有利に用いられ得る。このような受容体、抗体、または断片は受容体チップの表面上に固定する。この装置の使用は、Karlsson, J. Immunol. Methods 145:229-40,1991;及びCunningham and Wells,J.Mol. Biol.234:554-63,1993で開示されている。受容体、抗体、または断片は、アミンまたはスルフヒドリル化学を用いて、フローセル内の金フィルムに付着するデキストラン繊維に対し共有結合的に付着させる。試験試料を細胞に通す。リガンドまたはエピトープが試料中に存在する場合、リガンドまたはエピトープはそれぞれ固定した受容体または抗体に結合して媒体の屈折率の変化を引き起こし、これが金フィルムの表面プラズモン共鳴の変化として検出される。このシステムは、オン速度及びオフ速度(これらから結合親和性を計算することができる)の測定と、結合の化学量論の評価とを可能にする。
【0298】
リガンド結合受容体ポリペプチドは、当技術分野で知られている他のアッセイシステムでも使用することができる。このようなシステムとしては、結合親和性の測定のためのStatchard分析(Scatchard,Ann.NY Acad. Sci.51:660-72,1949を参照)及び比色分析アッセイ(Cunningham et al.,Science 253:545-48,1991;Cunningham et al.,Science 245:821-25,1991)が挙げられる。
【0299】
FLIPRアッセイは、本発明のPAR4アンタゴニストの活性を測定するための例示的なin vitroアッセイである。このアッセイでは、PAR4アゴニストによってPAR4発現細胞の細胞内カルシウム動員が誘導され、カルシウム動員がモニターされる。
【0300】
本開示のPAR4結合タンパク質は、ガンマトロンビンにより誘導される血小板凝集阻害能力についてin vitroで試験することができる。ガンマトロンビンは、PAR1ともはや相互作用しないアルファトロンビンのタンパク質分解産物であり、PAR4を選択的に切断及び活性化する(Soslau,G.et al,“Unique pathway of thrombin-induced platelet aggregation mediated by glycoprotein lb”,J. Biol.Chem.,276:21173-21183(2001))。血小板凝集は、96ウェルマイクロプレート凝集アッセイ形式で、または標準的な血小板凝集計を用いてモニターすることができる。凝集アッセイは、PAR4アゴニストペプチド、ADP、またはトロンボキサンアナログU46619によって誘導される血小板凝集を阻害するための化合物の選択性を試験するために使用することができる。
【0301】
もう1つの例は、本明細書の実施例に示されているようなアルファトロンビン誘導血小板凝集アッセイである。アルファトロンビンはPAR1及びPAR4の両方を活性化させる。選択的PAR4アンタゴニストの血小板凝集阻害能力は、標準的な光学的凝集計を用いて測定することができる。
【0302】
もう1つの例は、組織因子誘導血小板凝集アッセイである。このアッセイにおける条件は、血栓形成中の生理的事象を模倣している。このアッセイにおいて、ヒトPRPにおける血小板凝集は、組織因子及びCaCl2を加えることで開始する。外因性凝固カスケードのイニシエーターである組織因子は、ヒト動脈硬化性プラークの場合に非常に高くなる。血液をアテローム性動脈硬化部位の組織因子に曝露することで、トロンビンのロバストな生成が作動し、閉塞性血栓の形成が誘導される。
【0303】
本発明のPAR4結合タンパク質の血栓症防止における有効性は、様々なin vivoアッセイでも測定することができる。本発明のPAR4アンタゴニストの抗血栓剤としての有効性を試験するための血栓症及び止血のモデルを提供し得る例示的な哺乳類としては、以下に限定されないが、モルモット及び霊長類が挙げられる。該当する有効性モデルとしては、以下に限定されないが、電解質損傷頸動脈血栓症、FeCl3誘導頸動脈血栓症、及び動静脈短絡血栓症が挙げられる。腎臓(kidney)出血時間、腎(renal)出血時間、及びその他の出血時間の測定モデルは、出血リスクを評価するために使用することができる。
【0304】
PAR4結合タンパク質は、カニクイザルにおける動脈血栓症のin vivoモデルで試験することができる。PAR4結合タンパク質は、頚動脈の電解質損傷により誘導される血栓形成阻害能力をこのモデルで試験することができる。
【0305】
血小板凝集アッセイ
マイクロプレートベース血小板光透過凝集測定法を使用して、血小板凝集を測定することができる(French et al(2016)Journal of Thrombosis and Haemostasis 14:1642-1654)。
【0306】
この試験(Born GV(1962)Nature 194:927-929)は、糖タンパク質(GP)IIb/IIIa依存的方式でのin vitro血小板間クランプ形成、すなわち、血小板の最も重要な機能である凝集を評価するものである。当該アッセイは、外因性血小板アゴニストを加えた後の、多血小板血漿(PRP)または洗浄血小板の光学的に高密度な試料を通る光透過率の増加を測定することに基づく。アッセイ中、アゴニスト追加後のPRPまたは洗浄血小板調製物は、血小板凝集物が沈殿するためより清澄になる。これは、血漿試料を通る光透過率の増加を決定する。デバイスは、光度計により、この増加の割合及び最大パーセンテージを0%(PRPまたは洗浄血小板の最大光学密度)から100%(自己由来の乏血小板血漿またはタイロードバッファーそれぞれの光学密度なし)まで記録する。このシグナルは、血小板凝集中の光透過率増加に対応するグラフ曲線で自動的に変換される。利用可能な凝集計は、自動設定(100%及び0%)、結果を格納するためのソフトウェア、及び撹拌棒付きの使い捨てキュベットを備えた使用しやすいデバイスである。曲線の傾き、凝集の最大程度(%)、及び潜伏時間(誘導期)は自動測定パラメーターであり、形状の変化ならびに一次及び二次凝集を図式的に見ることができる。PRPまたは洗浄血小板の試料に異なるアゴニストを加えて異なる血小板活性化経路を刺激し、血小板機能のいくつかの特色についての情報を取得する。Bornの血小板凝集測定法は、血小板機能障害の検出及び抗血小板療法のモニターに最も広く用いられている方法論である。
【0307】
PAR4結合タンパク質を投与した後の血小板機能のin vivo分析は、出血時間(BT)を用いて測定することができる(Duke WW et al(1910)JAMA 55:1185-1192)。BTは、血小板が出血を止めるためにin vivo皮膚創傷を閉塞するのに要する時間を記録することにより、血小板の止血栓発生能力を評価する。
【0308】
インピーダンス全血凝集測定法(WBA)は、抗凝固処置した全血(WB)を環境として使用することにより、いかなる試料処理も伴わない血小板機能の評価を可能にする(Mackie IJ,et al.(1984)J Clin Pathol.37:874-878)。当該測定法は、活性化血小板が、WB試料内で互いの間に所定の距離を置いて位置決めされた2つの電極の人工的な表面に、表面受容体を介して付着するという原理に基づいている。血小板凝集は、電極に固定された血小板上での他の血小板の凝集によって生成される電気インピーダンスの増加を検出することにより評価される。したがって、電流強度を弱めることにより電気インピーダンスが増加する。インピーダンスの増加の程度はオーム単位で記録される。
【0309】
光凝集測定法(lumiaggregometry)は、血小板顆粒からのアデニンヌクレオチド放出及び血小板凝集の同時測定を可能にする(Holmsen H,et al.(1966)Anal Biochem.17:456-47)。この方法は、PRP、洗浄血小板(WP)、またはWBにおける発光技法を使用することによる、異なるアゴニストによって活性化血小板から放出されるアデノシン三リン酸(ATP)の評価に基づいている。当該アッセイは、血小板高密度顆粒から放出されたADPがルシフェリン-ルシフェラーゼ試薬と反応するATPに変換されることに基づいている。放出される光はATP濃度に比例しており、光凝集計によって定量化される。
【0310】
さらなる血小板機能試験は、Paniccia R et al(2015)Vasc Health Risk Manag.11:133-148で概説されている。
【0311】
カルシウムシグナル伝達アッセイ
カルシウム流動は、二重色素レシオメトリックマイクロイメージングアッセイにより単離血小板で測定することができる(Nesbitt WS et al.(2012)Methods Mol Biol 788:73-89)。
【0312】
動物モデル
血栓症のin vivo動物モデルは、PAR4活性化または抗血栓効果をin vivoでさらに評価することを含めて、本開示の抗体またはその断片をさらにまたは追加的にスクリーニング、評価、及び/または確認するために、当業者が利用することができる。このような動物モデルとしては、以下に限定されないが、頚動脈の電解質損傷に供するモデルが挙げられ、それにより、血栓形成(動脈閉塞までの時間)と、安定性(閉塞後の再疎通事象の回数及び程度)と、損傷した動脈を通る総血流とが検証される。
【0313】
例示的または好適なマウスモデルはPAR4-/-マウスである(Sambrano GR et al.(2001)Nature 2000 407:258-64;Mao Y et al.(2010)J Cereb Blood Flow Metab.30(5):1044-1052)。
【0314】
医薬組成物
本開示のPAR4結合タンパク質(活性成分と同義)は、予防的治療または療法的治療のために、非経口、局所、経口、もしくは局在的投与、エアロゾル投与、または経皮投与用の医薬組成物に製剤化するのに有用である。医薬組成物は、投与方法に応じて様々な単位剤形で投与され得る。例えば、経口投与に好適な単位剤形としては、粉末、錠剤、ピル、カプセル、及びロゼンジが挙げられる。
【0315】
本開示の医薬組成物は、静脈内投与または皮下投与のような非経口投与に有用である。
【0316】
投与のための組成物は、一般的には、医薬的に許容される担体、例えば、水性担体に溶解した本開示のPAR4結合タンパク質の溶液を含むことになる。様々な水性担体、例えば、緩衝食塩水などを使用することができる。組成物は、必要に応じて生理的条件に近づけるための医薬的に許容される担体、例えば、pH調整剤及び緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含んでもよい。このような製剤における本開示のPAR4結合タンパク質の濃度は広く変動し得、選択する特定の投与様式及び患者のニーズに応じて、主に液体体積、粘度、体重などに基づいて選択される。例示的な担体としては、水、食塩水、リンゲル液、ブドウ糖液、及び5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。混合油及びオレイン酸エチルのような非水性溶媒も使用することができる。リポソームも担体として使用することができる。溶媒は、等張性及び化学的安定性を強化する少量の添加剤、例えば、バッファー及び保存料を含んでもよい。
【0317】
本開示のPAR4結合タンパク質は、非経口投与向けに製剤化することができ、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、またはその他のこのような経路を介した注入(腫瘍もしくは疾患部位内への蠕動投与及び直接的点滴注入(腔内投与)を含む)向けに製剤化することができる。活性成分としての本開示の化合物を含む水性組成物の調製は、当業者に知られているであろう。
【0318】
本開示に従う好適な医薬組成物は、概して、意図される使用に応じて一連の最終濃度をもたらすように、本開示のPAR4結合タンパク質のある量が許容される医薬担体(例えば、無菌水性溶液)と混合されたものを含む。調製の技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th Ed.,Mack Publishing Company,1980により例示されるように、当技術分野で広く知られている。
【0319】
製剤化の際、本開示の化合物は、薬用量の製剤化に適合した方法で、かつ治療的/予防的に有効であるような量で投与される。本開示の化合物の好適な薬用量は、特定の化合物、治療を行う状態、及び/または治療を行う対象に応じて変動する。例えば、最適または有用な薬用量を決定するために最適以下の薬用量で始めて増加方向に薬用量を変更することにより好適な薬用量を決定することは、当業者の技量の範囲内である。
【0320】
例示的な薬用量及び投与のタイミングは、本明細書の開示に基づけば当業者には明らかであろう。PAR4アンタゴニストの好ましい用量は、生物学的活性用量である。生物学的活性用量とは、PAR4の切断及び/またはシグナリングを阻害し、抗血栓効果を有する用量である。望ましくは、PAR4アンタゴニストは、PAR4の活性を未処置対照のレベルより少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、または100%超低減する能力を有する。血小板におけるPAR4のレベルは、例えば、受容体結合アッセイ、血小板凝集、血小板活性化アッセイ(例えば、FACSによるp-セレクチン発現)、ウェスタンブロット、またはELISA分析を含めた当技術分野で知られている任意の方法によって測定される。代替的に、PAR4の生物学的活性は、PAR4により誘発される細胞内シグナリング(例えば、カルシウム動員または他の二次メッセンジャーアッセイ)を評価することによって測定される。
【0321】
いくつかの例において、PAR4化合物の治療有効量は、好ましくは約100mg/kg未満、50mg/kg、10mg/kg、5mg/kg、1mg/kg、または1mg/kg未満である。より好ましい実施形態において、PAR4化合物の治療有効量は5mg/kg未満である。最も好ましい実施形態において、PAR4化合物の治療有効量は1mg/kg未満である。有効用量は、当業者が認識するように、投与経路及び賦形剤の用法に応じて変動する。
【0322】
いくつかの例において、リポソーム及び/またはナノ粒子もPAR4結合タンパク質と共に用いられ得る。リポソームの形成及び使用は当業者に広く知られている。リポソームは水性媒体中に分散したリン脂質から形成することができ、自発的に多重膜同心円状二分子層ベシクル(多重膜ベシクル(MLV)とも称される)を形成する。MLVは、概して25nm~4μmの直径を有し得る。MLVの超音波処理は、200~500オングストロームの範囲の直径を有し中心部に水性溶液を含む小さな一重膜ベシクル(SUV)の形成をもたらす。リン脂質は、水に分散させると、水に対する脂質のモル比に応じてリポソーム以外の様々な構造を形成し得る。低い比におけるリポソームが好ましい構造である。リポソームの物理的特徴は、pH、イオン強度、及び2価カチオンの存在に依存する。リポソームは、イオン性及び極性の物質に対し低い透過性を示し得るが、高温においては相転移を経て透過性が顕著に変化する。相転移は、ゲル状態として知られる密に充填された秩序構造から、流体状態として知られる疎に充填された低秩序構造への変化を伴う。
【0323】
組成物は、単独で投与されてもよく、他の治療、治療薬、または薬剤と組み合わせて、同時または順次のいずれかで投与されてもよい。他の治療、治療薬、または薬剤としては、以下のものが挙げられるがこれに限定されない:
(i)抗凝固剤、例えば、Fxa阻害物質、アピキサバンもしくはリバーロキサバンのようなFXIa阻害物質、またはダビガトランのようなトロンビン阻害物質;
(ii)抗血小板剤、例えば、アスピリンまたはP2Y12アンタゴニスト(例えば、クロピドグレル、チカグレロール、もしくはプラスグレル);
(iii)血管形成剤、例えば、血管新生阻害剤。
【0324】
治療方法
本明細書で論じられているように、本開示のPAR4結合タンパク質は、対象における血栓症または血栓塞栓性障害の治療、防止、または改善に使用することができる。
【0325】
血栓症とは、血管が供給する組織の虚血または梗塞を引き起こし得る、血管内の血栓(thrombus:複数形はthrombi)の形成または存在を指す。
【0326】
血栓塞栓性障害は、血流によって堆積部位に運ばれた血餅(例えば、塞栓形成)または異物により、動脈が突然ブロックされることを特徴とする。「血栓塞栓症」とは、別の血管を塞ぐ起点部位から血流によって運搬された血栓性物質による血管の閉塞を指す。「血栓塞栓性障害」という用語は、「血栓性」及び「塞栓性」障害(上記で定義)の両方を伴う。
【0327】
血栓塞栓性障害には、動脈心血管血栓塞栓性障害、静脈心血管または脳血管血栓塞栓性障害、及び心室または末梢循環における血栓塞栓性障害が含まれる。本明細書で使用される場合、「血栓塞栓性障害」という用語はさらに、以下に限定されないが、不安定狭心症または他の急性冠動脈症候群、心房細動、初回または再発性心筋梗塞、虚血性突然死、一過性脳虚血発作、脳卒中、アテローム性動脈硬化症、末梢閉塞性動脈疾患、静脈血栓症、深部静脈血栓症、血栓性静脈炎、動脈塞栓症、冠動脈血栓症、脳動脈血栓症、脳塞栓症、腎塞栓症、肺塞栓症、及び血栓症を促進する人工表面に血液が曝露される医療用インプラント、デバイス、または手順に起因する血栓症から選択される、特定の障害も含む。医療用インプラントまたはデバイスとしては、以下に限定されないが、人工弁(prosthetic valve)、人工弁(artificial valve)、留置カテーテル、ステント、血液酸素供給器、シャント、血管アクセスポート、心室補助デバイス及び人工心臓または心室、ならびに血管グラフトが挙げられる。手順としては、以下に限定されないが、心肺バイパス、経皮的冠動脈インターベンション、及び血液透析が挙げられる。別の実施形態において、「血栓塞栓性障害」という用語は、急性冠動脈症候群、脳卒中、深部静脈血栓症、及び肺塞栓症を含む。
【0328】
本明細書で使用される場合、「脳卒中」という用語は、総頚動脈(carotid communis)、内頚動脈(carotid interna)、または脳内動脈における閉塞性血栓症から生じる塞栓性脳卒中またはアテローム血栓性脳卒中を指す。
【0329】
キット
本開示は、本発明の検出/診断/予後判定/治療/予防の方法で使用するための、本開示の化合物を含む治療/予防/診断キットも提供する。このようなキットは概して、好適な収容手段で本開示のPAR4結合タンパク質を収容する。キットは、例えば、検出/単離/診断/イメージングまたは併用療法のための、他の化合物も収容することができる。例えば、このようなキットは、一連の抗凝固剤または抗血小板剤のうちのいずれか1つ以上を収容することができる。
【0330】
1つの例において、キットは、状態の治療または防止のためのものである。このようなキットにおいて、PAR4結合タンパク質は、溶液または凍結乾燥形態で、任意選択で再懸濁用の溶液と共に提供され得る。PAR4結合タンパク質は治療化合物と結合体化していてもよく、またはキットは結合体化のための治療化合物を含んでもよい。
【0331】
当業者は、多数の変形形態及び/または変更形態が、広範に記載される本発明の範囲から逸脱することなく、具体的な実施形態に示されるような本発明に対し施され得ることを理解するであろう。そのため、本発明の実施形態はあらゆる点において、例示的であり、制約的ではないとみなすべきである。
【0332】
以下の具体的な実施例は、単に例示として解釈すべきであり、いかなる方法においても本開示の残りの部分を限定するものではないと解釈すべきである。当業者は、さらなる詳細を伴わずに、上記の説明に基づいて本発明を最大限に利用できると考えられる。
【0333】
本発明は、以下の非限定的な実施例でさらに説明される。
【実施例0334】
方法
抗体の生成
HumAbマウス(Regeneron Pharmaceuticals)を、以下の表2に記載のC末端KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)結合体化ペプチドで免疫化することにより、抗PAR4モノクローナル抗体を産生した。免疫化ペプチドは、hPAR4(配列番号2)のN末端トロンビン切断及び活性化部位に対応する。切断部位はRGによって示され、以下のヒトPAR4配列において下線付きで示される通りである。
裸ペプチド(配列番号3)に対しスクリーニングを実施した。
【0335】
マウスの腹腔内に、2週間の間隔を置いて3回、16μgの抗原及びメチル化CpGと合わせた免疫アジュバント(Sigma Aldrichカタログ番号S6322)の組合せで免疫化した。免疫化マウスから血清試料を収集し、抗原に対する反応性をELISAにより1:250及び1:1250の希釈において試験し、免疫化前の試料と比較した。1:250及び1:1250における免疫前と免疫後との血清力価の差は3倍超の増加が求められた。
【0336】
最も高い力価を有するマウスを融合に選択した。
【0337】
免疫化ペプチド
免疫化ペプチド及びSKB標識ペプチド(表2に示される)を、固相合成を用いてAuspep(Melbourne,Australia)により合成した。
【0338】
セリン(S)及びリジン(K)のリンカー(SK)を用いて、ビオチンをC末端でペプチドに付着させた(表2参照)。化学的結合体化によってビオチンをC末端リジン残基に加えることで、表2に示されるようなSKBを生成した。
【0339】
配列GDDSTPSILPAPRGYPGQVC-KLHを有するヒトPAR4キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)ペプチドでマウスを免疫化した。
【0340】
ハイブリドーマの増殖
ハイブリドーマ細胞を生成するため、マウスの脾臓を摘出し、分離して単一細胞懸濁液にし、ポリエチレングリコールを用いてSp2/0-Ag14骨髄腫細胞と融合させた。得られたハイブリドーマ細胞を、20×96ウェル組織培養プレート内のアザセリンヒポキサンチン含有培地で成長させた。
【0341】
ハイブリドーマコロニーを10日間成長させ、その時点でのハイブリドーマコロニーの数(融合効率として表される)を測定し、さらに3日のインキュベート後、抗体上清のアリコートをスクリーニング用に採取した。上清における抗原及び任意のスクリーニング試料に対する反応性を、最初はマイクロアレイにより、次いで任意のIgG陽性クローンのELISAによりアッセイした。
【0342】
次いで、最も応答性の高いELISA陽性クローンを24ウェル組織培養プレート内で3~4日間増殖させ、その時点でそれらを6ウェル組織培養プレートに増殖させた。細胞を1:5(上清ウェル)及び1:25(細胞ウェル)の比で播種した。ひとたび細胞ウェルが80%コンフルエンスに到達したら、細胞を抽出し、10% DMSO中液体窒素で凍結し、上清ウェルからの上清はプールし、-20℃で凍結した。
【0343】
サブクローニング用に選択したクローンを少なくとも2ラウンドの系列希釈に供した。各希釈段階後、細胞を4~5日間成長させ、抗原に対し陽性の抗体を産生する単一コロニーを上清ELISAにより測定し、最上位のクローンをさらなるラウンドのために増殖させた。最終モノクローナル細胞株を6ウェル組織培養プレート内で4~5日間増殖させ、上清を抽出し、細胞と共に凍結した。
【0344】
サブクローン細胞株の上清を市販のアッセイキットで試験して、産生されているモノクローナル抗体のアイソタイプを決定した。
【0345】
マイクロアレイアッセイ
マイクロアレイによるハイブリドーマ上清のスクリーニングを、標準的な技法に従って実施した。
【0346】
モノクローナル抗体のELISAスクリーニング
96ウェルELISAプレートを、50μlの抗原をコーティングバッファー(0.1M炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)(Merck,#1.06329.0500))中4μg/mlの濃度まで希釈したものでコーティングした。プレートを4℃で一晩インキュベートした。
【0347】
次いで、ウェルを自動プレート洗浄器で洗浄した(300μl、1×PBS、3回)。ウェルを200μlのブロッキングバッファー(3% BSA/1×PBS(BSA:(Sigma,#1001647742))で室温で1時間ブロックし、次いで上記のように洗浄した。
【0348】
50μlの未希釈ハイブリドーマ細胞培養上清を適切なウェルに加え、室温で1時間インキュベートし、次いで上記のように洗浄した。二次抗体(アルカリホスファターゼ結合体化AffiniPureヤギ抗マウスIgG(H+L))(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.#115-055-003))を1×PBS(8%塩化ナトリウム(NaCl、Merck #1.06404.5000)、0.2%塩化カリウム(KCl、Merck #1.04936.0500)、1.44%リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4、Merck #1.06586.0500)、0.24%オルトリン酸二水素カリウム(KH2PO4、Merck #1.04873.0500))中で1:1000希釈し、50μlの希釈抗体を各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。ウェルを上記のように洗浄した。基質錠剤一式(1×銀、1×金)を20mlのddH2O中に、室温で6分間サーモミキサー上で激しく振とうすることにより入れた。50μlの基質(SIGMAFASTTMリン酸p-ニトロフェニル(Sigma-Aldrich、N2770-50SET)錠)を各ウェルに加え、室温で20~25分間インキュベートした。50μlの停止溶液(2M水酸化ナトリウム、固体(NaOH)(Merck、Cas#1310-73-2))を各ウェルに加えて反応を停止させた。吸光度は、停止溶液を加えた直後、ELISAリーダーで「RdrOle4」を用いて405nmにて読み取った。
【0349】
ヒト血液試料
過去10年間抗血小板薬物を服用していない健康な成人(21~50歳の男女)からインフォームドコンセントを取得した後、血液を収集した。血液は、肘前静脈から19ゲージ蝶型針を用いて、血小板単離については7分の1体積の酸性クエン酸デキストロース(ACD)(7:1v/v最終濃度)を含むシリンジに、または過去に記載のような全血流実験(Mountford JK et al(2015)Nat Commun 6:6535)については10分の1体積のクエン酸三ナトリウム(0.32%w/v最終濃度)を含むシリンジに採取した。
【0350】
マウス
HumAbマウス(Murphy AJ et al.(2014)Proc Natl Acad Sci USA 111:5153-5158)をRegeneron Pharmaceuticalsから入手した。HumAbマウスは、マウス重可変Ig座位及びκ軽可変Ig座位の3Mbセグメントをヒトの対応物で置き換えることにより、ヒト抗体応答の生成が可能になるように遺伝子操作されている(Murphy AJ et al.(2014)Proc Natl Acad Sci USA 111:5153-5158)。HumAbマウスは、正常な可変セグメント再配置と、体細胞超変異と、クラススイッチングとを示し、モノクローナル抗体の大きな多様性をもたらすロバストな液性応答を示し、Regeneronが使用する、一連の標的に対する完全ヒトモノクローナル抗体を産生するためのプラットフォームである。
【0351】
フローサイトメトリーによるPAR4の検出
ヒトまたはマウスの洗浄済み血小板(5×107/mL)を抗PAR4抗体(0.1mg/ml)と共に37℃で30分間インキュベートし、次いでパラホルムアルデヒド(1%v/v最終濃度)で固定した。次いで、懸濁液を1000×gで2分間遠心分離して血小板ペレットを取得し、次いでこれを、FITC結合体化抗ウサギIgGの1:50希釈物を含む修飾タイロードバッファー(12mM NaHCO3、10mM HEPES pH7.4、137mM NaCl、2.7mM KCl、5.5mM D-グルコース、1mM CaCl2)に再懸濁した。室温で30分後、試料を再び遠心分離し、血小板ペレットを修飾タイロードバッファーに再懸濁し、フローサイトメーター(FACSCalibur,BD Biosciences)を使用することにより分析した。
【0352】
PAR4トロンビン切断アッセイ
1x106 HEK293T細胞(ダルベッコ修飾イーグル培地+10%ウシ胎仔血清中)を、形質移入の24時間前に12ウェルプレートに播種した。コンフルエントになったら、PAR4バリアント(pBJ-FLAG-PAR4-120A-296FまたはpBJ-FLAG-PAR4-120T-296F;Edelstein et al(2014)Blood 124(23):3450-8)のうちの1つからの1μgのDNAに加えて4μLのLipofectamine 2000を製造業者の指示に従って形質移入した。形質移入から48時間後、細胞を採取し、PBSで2回洗浄し、次いで再懸濁して1×106/mLのカウントにした。次いで細胞(50μLアッセイ/0.5x105細胞/条件)を1、10、もしくは100μg/mlの5RC3もしくはサブクローン5A.RC3.F10b.H4b、または100μg/mlのマッチしたアイソタイプ対照(マウスIgG1)のいずれかを用いて37℃で15分間前処置した。次いで細胞を2U/mLのトロンビンで10分間刺激した。4U/mLのヒルジンを加えることにより反応を停止した。次いで、細胞を1回洗浄し、FITC抗FLAG抗体(Sigma、クローンM2)の1:200希釈物を含むPBSで再懸濁し、暗中室温で1時間インキュベートした。次いで、細胞を1%パラホルムアルデヒド(最終濃度)で固定し、FC1/FITC陽性事象の%を測定するためにFACSCaliburフローサイトメーターで読み取った。データを静止試料(100%トロンビン処置なし)に対し正規化した。
【0353】
表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ
表面プラズモン共鳴(SPR)は、標識なしでリアルタイムのタンパク質間相互作用の測定を可能にするバイオセンサー技術である。標準的な技法によりBio-Rad ProteOn XPR36アレイシステムまたはBiacore T200(GE system)を用いてタンパク質及び抗体のSPR結合分析を実施した。
【0354】
5A.RC3の動態を測定する方法
ProteOnは、単回の注入ステップで最大36のタンパク質相互作用を分析するためのマルチチャネルモジュールと相互作用アレイセンサーチップとを備えたSPRバイオセンサーである。分析は、ビオチン化タンパク質及びペプチドの捕捉のためのアルギン酸ポリマーに結合したNeutrAvidinからなる表面を含む、ProteOn NLCバイオセンサーチップを用いて実施した。
【0355】
NLCチップを50mM NaOHで調整し、次いで1M NaClで調整した。いずれも30μl/分の流速で行った。調整は、水平及び垂直の両方向(チャネル)で実施した。25μg/mlの濃度のビオチン化ペプチド(リガンド試料)を垂直チャネルにおいて30μl/分の流速でチップ上に捕捉した(バイオセンサーチップ上にセットアップしたリガンド試料については表1を参照)。分析対象物の注入前にペプチドリガンドの安定な捕捉を確実にするために、ランニングバッファー(1×PBS、0.005% Tween(登録商標)、pH7.4)を垂直チャネル全体に注入した。次いでチップを水平に回転させ、mAb5ARC3.F10b.H4b(検体)の希釈系列を、100μl/分の流速でチャネルA1~A6全体に注入した(試験した分析対象物の濃度については表1を参照)。注:6.25nMのmAb濃度は、通常の読取り値より高い値を示したため、最終分析から除外した。
【0356】
【0357】
精製hPAR4 mAbのhPAR4に対する動態を測定する方法
2つの異なる方法、抗マウスFc捕捉アプローチ、またはProteoOnシステムを用いた上述と類似の方法のいずれかを用いて、Biacore T200でBiacore分析を実施した。
【0358】
抗体捕捉方法
ヤギ抗マウスIgG Fcを伴った製造業者推奨のプロトコルを用いて、標準的なEDC/NHSアミンカップリング化学によりseries S CM5センサーチップを活性化した。抗hPAR4 mAbを1~2ug/mlで2分間、フローセル2(FC2)上で10ul/m分にて捕捉し、フローセル1(FC1)を参照チャネルとして使用した。hPAR4ペプチドの希釈物をランニングバッファー(10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、0.005% Tween(登録商標)20及び0.1% BSA)で、典型的には1000、500、250、125、62.5nMで調製し、FC1及び2の両方に30ul/分で60~100秒間流し、解離を80~120秒間モニターした。バッファー単独のブランク注入も実施した。全ての注入を2連及びランダムな順序で実施した。各捕捉/注入/解離サイクル後、0.1MグリシンpH2.0の30秒注入によりチップを再生した。
【0359】
ストレプトアビジン捕捉方法
製造業者推奨のプロトコルを用いてseries SセンサーチップSAを調整し、FC2上の1ug/ml hPAR4-ビオチン化ペプチド及びFC1上のhPAR1-ビオチン化ペプチド(対照)で固定した。抗hPAR4の希釈物をランニングバッファーで、典型的には10、5、2.5、1.25、6.25、及び0nMで調製し、FC1及び2の両方に100ul/分の流速で60秒間流し、解離を200秒間モニターした。バッファー単独のブランク注入も実施した。全ての注入を2連及びランダムな順序で実施した。各捕捉/注入/解離サイクル後、0.1MグリシンpH2.0の30秒注入によりチップを再生した。
【0360】
血小板凝集アッセイ
血小板凝集は、96ウェルプレート形式において光透過凝集測定法により測定した。ヒト単離血小板(2×108/ml)を、ジメチルスルホキシド(DMSO)(1%v/v)、PAR1アンタゴニストボラパキサル(90nM)、抗PAR4抗体5RC3(20~100μg/ml)、またはボラパキサルと5RC3との組合せにより、37℃で10分間前処置した。血小板をトロンビン(0.1U/ml)で処置し、凝集を37℃で、FLUOstar OPTIMAプレートリーダー(BMG Labtech)内で595nm励起フィルターを用いて50分間の期間分析した(各読取り間に5分の二重軌道振とう期間を伴う10回の読み取りサイクル)。光学密度をブランク(最大値)及び非刺激血小板(最小値)に対し正規化し、最大値%として表現した。
【0361】
全血血栓症アッセイ
クエン酸(3.2%)中に収集したヒト全血を、PE結合体化抗CD9抗体(4μg/mL)及び抗フィブリン抗体(5μg/ml)、ならびにヒルジン(800U/ml)、DMSO(1%v/v)、PAR-1アンタゴニストE5555(1μM)、抗PAR4抗体(0.2mg/ml)、または両方のPAR阻害物質の組合せのうちの1つと共に、37℃で15分間プレインキュベートした。全血を5~7.5mM CaCl2(最終濃度)で再石灰化して凝固を開始し、ウシ1型コラーゲン(250μg/ml)でコーティングしたガラスマイクロスライド(1×0.1mm内径)に0.06ml/分の固定流速で取り出し、600s-1の壁剪断速度を得た。2色共焦点蛍光画像を488及び561nmの励起で記録し、40×水浸対物レンズを通じて収集した。共焦点z-スタックを修正前の2分間継続的に記録し、カルシウム非含有タイロードバッファーを血栓に流し、血栓野全体を包含するz-スタックを10分の期間にわたり記録した。抗CD9-PEを用いて血小板血栓を定義し、血栓野の平均蛍光を用いてフィブリン体積を定量化した。データをヒルジンベースラインに対し正規化し、対照のパーセンテージとして表現した。
【0362】
PAR4 SNPに対するPCRベースSNP遺伝子型判定アッセイ
QIAamp Blood Kit-Miniを製造業者の指示に従って用いて、ヒト全血のバフィーコートからゲノムDNA(gDNA)を抽出した。Taqman SNP遺伝子型判定アッセイ(Life Technologies,Carlsbad,CA,USA)を製造業者の指示に従って用いて、10ng DNAを用いて、DNA試料に対しrs773902の遺伝子型判定を行った。Roche 96ウェルプレートlightcyclerで、以下の熱サイクル条件を用いてPCRを実施した:95℃で15秒、60℃で60秒を40サイクル反復。(Mygo Pro)ソフトウェアを用いたエンドポイント遺伝子型判定分析をアレル間の識別に使用した。465~510nm(「A」アレル)/533~580nm(「T」アレル)に蓄積した相対蛍光シグナルのレシオメトリック分析を使用した。
【0363】
統計的分析
GRAPHPAD PRISM(version 6.0,La Jolla,CA,USA)を用いて統計的分析を実施した。有意性は、対応のない両側スチューデントt検定、または多重比較のためのフィッシャーのLSD検定を伴った一元配置ANOVAのいずれかにより決定されるP<0.05で定義した。
【0364】
抗体の命名法
反対のことが示されない限り、以下の命名法は、下記の表2に示されるように、本明細書で言及されている抗体を指すために使用される。例えば、5A.RC3に対する簡略な言及は、反対のことが示されない限り、モノクローナル抗体サブクローン5A.RC3.F10b.H4bを指す。
【0365】
【0366】
[実施例1 ヒトPAR4に対するアンタゴニストモノクローナル抗体の開発]
発明者らは、ヒトPAR4を標的化するモノクローナル抗体の開発に努めた。Monash Antibody Technology Facility(MATF)で、当該施設の指導教官Prof Mark Sleemanは、Regeneron Pharmaceuticals独自のHuMabマウス(VelocImmune(登録商標))を用いて抗体産生及びスクリーニングを実施し、後にさらなる詳細が記載されるようにPAR4に対する高親和性抗体を産生した。
【0367】
(i)免疫化
ヒトPAR4(hPAR4)のN末端トロンビン切断及び活性化部位のKLH結合体化ペプチドを生成してHumAbマウスの免疫化に使用し、次いで標準的なプロトコルに従って3回の追加免疫を行った。裸hPAR4ペプチド(表3)を用いてELISAにより血清力価を測定した。
【0368】
当該ペプチドを用いて、合計12匹のHumAbマウスに3回の別々の免疫化プログラムを行った。免疫化に使用したペプチドの配列を表3に示す。これらの配列は、いくつかの場合には追加のC末端システインを含んだ(下線で示される通り)。ペプチドを、C末端でキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)と、またはシステイン-リジンを介しビオチン(SKB)と結合体化させた。
【0369】
【0370】
(ii)ハイブリドーマの生成
融合は、融合パートナーとしてのSP2/O Ag14と共に、標準的な融合プロトコルを用いて実施し(Yokoyama,W.Production of monoclonal antibodies. In:Coligan J,Kruisbeek A,Marguiles D,Shevach E M,Strober W., editors. Current Protocols in Immunology. Vol.1.New York,N.Y:John Wiley & Sons;1994.pp.2.5.2-2.5.17.)、20個の96ウェルプレートで平板培養した。細胞を、選択マーカーとしてのHATを含有する培地中で成長させた。
【0371】
ハイブリドーマを、10%ウシ胎児血清と、50μMベータメルカプトエタノールと、1mMピルビン酸ナトリウムとを追加したRPMI-1640培地中で増殖させた。
【0372】
(iii)ハイブリドーマクローンのスクリーニング
発明者らは、数千種のハイブリドーマ上清において、高親和性特異的抗原陽性株をスクリーニングした。モノクローナル抗体は、マウス定常領域に連結したヒトIg可変領域を含む(そのため、このようなキメラ抗体を指すために本明細書では「mAb」と称する)。
【0373】
最初に、ハイブリドーマ上清において、免疫化PAR4ペプチド配列(GDDSTPSILPAPRGYPGQVC-KLH)に対する結合を抗原マイクロアレイによりスクリーニングした。結合は、バックグラウンド(培地単独からのシグナル)を上回る蛍光強度により測定した。脾臓融合当たり上位46種のクローンを、さらなるELISAベースのPAR4抗原に対する結合(ネイティブ及びKLH連結の両方;ネイティブvs KLH連結PAR4ペプチドの結合倍数)のスクリーニングに選択した。KLH連結PAR4ペプチドの3倍超のネイティブPAR4ペプチドに対する結合を示したクローンを、類似したELISAベースの特異性スクリーニング(ネイティブPAR4ペプチドに対する結合vs同等の領域に対応するPAR1のペプチド(SKATNATLDPRSFLLRNP)、PAR2のペプチド(SCSGTIQGTNRSSKGRSL)、及びPAR3のペプチド(SCSGTIQGTNRSSKGRSL)に対する結合;PAR4ペプチドvs PAR1、2、または3ペプチドの結合倍数)に選択した。他のPARペプチドの3倍超のPAR4ペプチドに対する結合を示したクローンを増殖させ、機能的バイオアッセイ(PAR4切断の阻害及びPAR4誘導血小板活性化/凝集の阻害)で試験した(
図2及び12)。
【0374】
結合及び機能の両方を示したクローンをサブクローニング及び再試験のために選択した。サブクローニングの各ラウンド後、クローン内の結合抗体の維持を確証するため、再び、クローンのネイティブPAR4ペプチドに対する結合(培地単独と比較)をELISAにより試験した。
【0375】
【0376】
【0377】
[実施例2 抗PAR4ハイブリドーマクローンはPAR4のトロンビン誘導切断をブロックする]
モノクローナル抗体ハイブリドーマ上清(MoB5ARC3、MoB5BRB4、MoB5BRC6、MoB5BRH3、及びMoB5CRC4)において、N末端FLAGタグを含むヒトPAR4を形質移入したHEK293細胞の表面上に存在するインタクトPAR4を切断する能力についてスクリーニングした。切断をフローサイトメトリーにより定量化し、
図2に示した。
【0378】
形質移入したHEK293細胞を、抗PAR4ポリクローナル抗体(French SL et al.(2016)J Thromb Haemost 14,1642-1654に記載、陽性対照として使用)またはモノクローナル抗体クローンMoB5ARC3、MoB5BRB4、MoB5BRC6、MoB5BRH3、もしくはMoB5CRC4、及び未処置の陰性対照のいずれかと共に、トロンビン(0.1U/ml)の存在下、室温で10分間インキュベートした。トロンビンによるPAR4の切断は、フローサイトメトリーを用いて、PAR4発現HEK293T細胞からのFLAGタグの喪失により測定した。
【0379】
トロンビンによる細胞の処置(2U/mlを10分間)は、総PAR4のうちのおよそ50%の切断をもたらした(陰性対照)。ポリクローナル抗PAR4抗体による前処置は、ほぼ完全にトロンビン誘導切断をブロックすることが見いだされた(陽性対照)(
図2)。5種のハイブリドーマ上清の最初のスクリーニングにより、MoB5ARC3はほぼ完全にPAR4のトロンビン誘導切断をブロックし、他の4種のハイブリドーマ(B5A.RC3、B5.BRB4、B5.BRC6、B5.BRH3、及びB5.CRC4)からの上清に対しては限定的でばらつきのある応答が示された。
【0380】
クローンB5A.RC3は、PAR4のトロンビン誘導切断を少なくとも90%ブロックした。クローンB5.BRB4はトロンビン誘導切断を約60%ブロックし、B5BRC6はトロンビン誘導切断を約50%ブロックし、B5BRH3はトロンビン誘導切断を約65%ブロックし、B5CRC4はトロンビン誘導切断を約50%ブロックした。
【0381】
クローン5A.RC3を標準的プロトコルに従った限界希釈によってさらにサブクローニングし、
図3に示すように、フローサイトメトリーによる測定においてPAR4のトロンビン誘導切断をブロックする能力について試験した。5A.RC3(サブクローンH4b)及び5A.RC3(サブクローンB6b)からの両方のハイブリドーマ上清は、100μl上清において、HEK293T細胞(100μl細胞懸濁液)上のPAR4のトロンビン誘導切断を、90%超という顕著な程度までブロックした。
【0382】
図4は、5A.RC3.H4bサブクローンが、HEK293細胞の表面上に発現したPAR4の切断を用量依存的方式で有効に阻害し、その切断がヒトPAR4受容体のAla120及びThr120バリアントの両方に有効であったことを示している。
【0383】
[実施例3 mAb-5RC3のH4b及びB6bサブクローンの結合特異性]
抗hPARクローンのPAR4に対する特異性を測定するため、上述のようにELISAスクリーニングを実施した。
図5Aは、クローンmAb-5ARC3(5A.RC3)及びmAb-5BRB4(5B.RB4)のhPAR1、hPAR2、hPAR3、及びhPAR4に対する結合特異性の結果を示している。
【0384】
5A.RC3は、PAR1、PAR2、及びPAR3の16倍のヒトPAR4ペプチドに対する選択性を示した。mAb 5B.RB4は4種全てのヒトPARペプチドに同様に結合し、5A.RC3に比べるとPAR4に対する親和性は低かった。
【0385】
発明者らは、Bio-Rad Proteon XPR36を利用して表面プラズモン共鳴(SPR)分析を実施し、5A.RC3.F10b.H4bの結合親和性(会合及び解離の速度)ならびに特異性への洞察を得た。ストレプトアビジンチップを利用して全てのビオチン結合ヒトPARペプチド(表1)を表面上に捕捉し、異なる濃度の精製5A.RC3を通した。クローン5A.RC3.F10b.H4bは、SAチップSPRにより、約0.4nMの解離定数(KD)を有することが観察された(
図5B)。
【0386】
[実施例4 抗PAR4ハイブリドーマmAb-5RC3.F10b.H4b(以下5A.RC3)は両方のヒトPAR4バリアントのトロンビン誘導切断をブロックする]
先行技術のPAR4阻害物質の制約の1つは、PAR4の特定のバリアントに特異的であり、したがって首尾よく阻害できるのは、該当PAR4受容体バリアントを有する者の血小板凝集に過ぎないということである。
【0387】
抗PAR4クローンがトロンビンのPAR4切断に及ぼす効果を阻害し得るかどうかを決定するため、in vitro阻害アッセイを実施した。HEK293T細胞に対し、トロンビン切断部位の上流のFLAGエピトープを含むPAR4-120Ala(A)またはPAR4-120Thr(T)バリアントを一過的に形質移入した。トロンビンによるPAR4の切断は、フローサイトメトリーを用いて、PAR4発現HEK293細胞からのFlagタグの喪失により測定した。
【0388】
細胞を漸増用量のトロンビン(0.1~2U/ml)で刺激し、FITC結合体化抗FLAG抗体を用いてフローサイトメトリーによりトロンビン切断の量をFLAGエピトープの喪失として測定した。
図6Aに示すように、阻害は用量依存的であった。
【0389】
図6Bは、トロンビン刺激の前に形質移入細胞を5A.RC3(100μg/ml)と共にプレインキュベートしたことで、PAR4バリアントに関係なく、同じ程度でほぼ完全なトロンビン切断阻害がもたらされたことを示している。
【0390】
図6Bは、5A.RC3(10μg/ml)のHEK293細胞PAR4切断に対する結果をビヒクル、アイソタイプ対照のいずれかと比較して示しており、トロンビン(0.1U/ml)と共に10分間共インキュベートしている。
【0391】
モノクローナル抗体5A.RC3は、PAR4のAla120及びThr120バリアント両方のトロンビン誘導PAR4切断ならびにヒトPAR4の活性化を顕著に阻害した。この抗hPAR4抗体5A.RC3の機能性は、免疫化ペプチドの添加で元に戻った。
【0392】
[実施例5 血小板凝集の阻害]
抗hPAR4抗体MoB5ARC3.H4b(5A.RC3)が、血小板凝集により観察されるトロンビンのPAR4に及ぼす効果を阻害し得るかどうかを決定するため、ヒト血小板に対するex vivo血小板凝集アッセイを実施した。異なるPAR4バリアントのヒト単離血小板において、PAR4アゴニストに対する応答を評価した。
図7に示すように、3つの異なる遺伝子型(TT、AT、及びAA)を試験した。
【0393】
図7A及びBに示すように、Tアレルの存在は、中用量範囲のPAR4活性化ペプチド(AP)及びトロンビンに応答してのより高い最大凝集に関連していた。PAR4-APは、C末端アミド化ペプチド配列AYPGKF-NH
2を有する選択的PAR4アゴニストである。
【0394】
図7Cは、ボラパキサル(90nm)によるPAR1遮断の存在下でのトロンビン刺激を示している。
【0395】
図7Dは、血小板凝集が5A.RC3により用量依存的方式で阻害されたことを示している。この用量依存的阻害は、全ての遺伝子型にわたり同様に有効であった。
【0396】
図7Eは、5A.RC3サブクローンにおける阻害濃度(IC
50)を示している。
【0397】
[実施例6 MoB5ARC3.F10b.H4b(以下、5A.RC3)はヒト血小板上のPAR4に結合する]
クローン5A.RC3において、in vitroでの単離ヒト血小板に対する結合を試験した。フローサイトメトリーを用いて結合の分析を決定した。単離血小板をマウスIgG1(アイソタイプ対照)または5A.RC3のいずれかと共にインキュベートし、PAR4に対する結合について試験した。血小板上に発現するマーカーであるCD41aを陽性対照として使用した。
図8に示すように、5A.RC3(10μg/ml)は単離血小板中のヒトPAR4に結合する。
【0398】
[実施例7 MoB5ARC3.F10b.H4b(以下、5A.RC3)によって示される単離血小板における凝固促進活性の阻害]
血小板表面ホスファチジルセリン(PS)露出を、アネキシンV結合を測定することにより決定した。ヒト単離血小板(5×107/ml)を指示濃度の5A.RC3で前処置(5分)し、Alexa Fluor 488結合体化アネキシンV(1:100)と共にインキュベートしてからトロンビンで刺激した。刺激後、フローサイトメトリー分析(FACSCalibur,BD Biosciences)向けに修飾タイロードバッファーに再懸濁した。
【0399】
単離ヒト血小板の凝固促進活性を、PAR4-APまたはトロンビン(1U/ml)による刺激に応答してのホスファチジルセリン(PS)露出を測定することにより検証した。アネキシンV陽性細胞のパーセンテージを測定した。血小板を5A.RC3と共に5分間プレインキュベートした。血液を10分間流し、データをリアルタイムで収集した。10分(最終データ点)は簡略性のために示されている。
【0400】
図9は、PAR4-AP刺激(A)またはトロンビン刺激(B)のいずれかに応答してのアネキシンV陽性細胞のパーセンテージを示している。thr120バリアントはPAR4-AP刺激血小板におけるPS露出の増加をもたらした。類似の傾向はトロンビン刺激血小板でも観察された。
【0401】
図9Cは、5A.RC3による前処置(5分)が、ドナー遺伝子型に関係なく、用量依存的方式でトロンビン誘導ホスファチジルセリン露出を阻害したことを示している。
【0402】
[実施例8 MoB5ARC3.F10b.H4b(以下5A. RC3)の抗血栓性効果]
血小板沈着、トロンビン活性、フィブリン体積、及び血栓当たりのフィブリンの比を含めた血栓症パラメーターを、凝固条件下の本明細書に記載のような全血血栓症アッセイにおいて、10分の期間にわたりリアルタイムで測定した。
【0403】
10分エンドポイントにおける血小板沈着(PE結合体化抗CD9)、トロンビン活性(FRETベースのトロンビンプローブ)、フィブリン体積(Dylight650結合体化抗フィブリン抗体)、及びトロンビン当たりのフィブリンの比を、25×レンズ及び2×デジタル倍率を備えたNikon A1rを用いて(体積測定を行えるようにするための)共焦点顕微鏡により
図10Aに示す。
【0404】
直接的なトロンビン阻害物質ヒルジン(800U/mL)は、血小板沈着の継続にもかかわらず、トロンビン活性及びフィブリン体積を消失させた。
図10B~Eは、PAR4遺伝子型全体において上記パラメーターの有意差が観察されなかったことを示している。白抜きのバーで示される5A.RC3(100μg/ml)による前処置は、対照(黒色のバー)に比べて、血小板沈着(F)には影響を及ぼさなかったが、トロンビン活性(G)、トロンビン活性(H)、フィブリン体積(H)、及びトロンビン体積当たりのフィブリンの比(I)に対しては有意に阻害した。
【0405】
[実施例9 追加クローンのさらなるスクリーニング]
結合スクリーニングからヒトPAR4に対する合理的な親和性及び特異性を有すると同定されたクローンを、機能的血小板凝集アッセイによりさらに検証した。
【0406】
PAR1アンタゴニストの存在下のトロンビン誘導血小板凝集(すなわち、PAR4依存的凝集)は、ヒト血小板に結合する30種のモノクローナル抗体上清について示されている。抗体上清をヒト血小板(2×10
8細胞)と1:1の比で混合した。
図11は50分時に達成された最大凝集を示しており、対照のパーセンテージとして表現されている(個別ドナーn=3)。
【0407】
[実施例10 2つの阻害物質クローン及び1つの非阻害物質クローンの配列]
全てIgG1カッパアイソタイプであるモノクローナル抗体のシークエンシングを、Monash UniversityのMonash Antibody Technologies Facilityで行った。
【0408】
(i)5A.RC3サブクローン
重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列を決定した。これを本開示の一部を形成する配列表に示し、また
図12にも示す。この抗体はアンタゴニストであり、IgG2aアイソタイプに属する。
【0409】
相補性決定領域(CDR)の配列を以下に示す。
5A.RC3重鎖CDR:
CDR1:GFTLSNYG(配列番号13)
CDR2:IWYDGSNK(配列番号14)
CDR3:ARESIVEVLPPFDY(配列番号15)
5A.RC3軽鎖CDR:
CDR1:QRVRNNY(配列番号16)
CDR2:GAS(配列番号17)
CDR3:QQYGNSYT(配列番号18)
【0410】
(ii)5F.RF3サブクローン
重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列を決定した。これを本開示の一部を形成する配列表に示し、また
図14にも示す。この抗体はアンタゴニストである。抗体アイソタイプはIgG2bカッパである。
【0411】
相補性決定領域(CDR)の配列を以下に示す。
5F.RF3重鎖CDR:
CDR1:AYTFTNYG(配列番号24)
CDR2:ISPYNGNT(配列番号25)
CDR3:AREYNRSSRGRYYYYGMDV(配列番号26)
5F.RF3軽鎖CDR:
CDR1:QSVSSNY(配列番号27)
CDR2:GAS(配列番号28)
CDR3:QQYGSSPWT(配列番号29)
【0412】
(iii)5H.RD2サブクローン
重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列を決定した。これを本開示の一部を形成する配列表に示し、また
図13にも示す。この抗体はPAR4に結合するが、アンタゴニストとしては機能しなかった。この抗体のアイソタイプはIgG1カッパである。
【0413】
相補性決定領域(CDR)の配列を以下に示す。
5H.RD2重鎖CDR:
CDR1: GFTFFNTW(配列番号34)
CDR2:VKSKNDGGTK(配列番号35)
CDR3:TTDPHYDFWSAY(配列番号36)
5H.RD2軽鎖CDR:
CDR1:QSLVHSDGNT(配列番号37)
CDR2:VKSKNDGGTK(配列番号38)
CDR3:LQATQFMYT(配列番号39)
【0414】
IMGT/V-Questプログラムを用いてCDR及びフレームワーク領域の指定を決定した。
【0415】
[実施例11 2つの異なる表面プラズモン共鳴アッセイ(SPR)による7種の精製モノクローナル抗体クローンの結合動態の測定]
2つの異なる方法を使用して、下の表4に記載されている7種の精製抗hPAR4 mAbの結合動態を測定した。
【0416】
mAb捕捉方法については、1:1結合相互作用をもたらす試みとして低レベルのリガンドmAb及び分析対象物hPAR4を使用した。この方法は、全IgGを用いたにもかかわらず、動態及び親和性KDの測定(Kamat V and Rafique A(2017)Analytical Biochemistry 530:75-86)で首尾よく使用された。ストレプトアビジン捕捉方法については、非常に低レベルの分析対象物(mAb)を用いるにもかかわらず、全抗体をこの分析で使用することにより、1:1超の相互作用が生じ得る。
【0417】
精製mAbにおいて、ELISAによりhPAR4に対する結合を分析し(
図15)、データをELISA陽性:陰性比として表現した。mAbとhPAR4との間の結合相互作用の動態を、表面プラズモン共鳴(SPR;Biacore)を用いて2つの異なる方法:1.抗マウスFc mAb捕捉方法、及び2.ビオチン化ペプチドを捕捉するためのストレプトアビジン(SA)チップにより測定した。Biacore評価ソフトウェアを用いて、ka(オン)速度及びkd(オフ)速度ならびにKDを測定しラングミュアモデルに適合させた。
【0418】
【0419】
[実施例12 抗hPAR4モノクローナル抗体のhPAR4ペプチドに対する結合]
実施例11に記載のELISAスクリーニング方法に類似する方法を使用して、hPAR4ペプチドに結合する精製mAbの反応性を同定した。実験は、ハイブリドーマ上清の代わりにPBSに希釈した精製mAbを用いて完了した。
【0420】
7種の精製hPAR4モノクローナル抗体の反応性をELISAにより分析した(表4参照)。mAbの希釈物をhPAR4ペプチドコーティングウェルと反応させた。結合曲線を
図15に示す。最も強い結合はmAb 5F RF3.A7b.C9(5F.RF3)で観察され、この後に非常に類似する結合曲線を有する3つのmAb、5H RA3.D3b.A2b(5H. RA3)、5A RC3.F10b.H4b(5A.RC3)、5D RH4.G7.E6.C7b.G7(5D.RH4)の結合曲線が続いた。
【0421】
5G RA1.E10.G3(5G.RA1)mAbの反応性はこれよりわずかに低く、mAbのうちhPAR4ペプチドとの反応性が最も小さかったのは5H RF2.A5b.D3.C2(5H.RF2)及び5I RG1.D6.C1b(5I.RG1)であった。このデータは、表4に示されるELISA陽性:陰性比としても表現される。
【0422】
[実施例13 抗hPAR4モノクローナル抗体のヒトPAR4ペプチドに対する特異性]
ストレプトアビジンコーティングプレートのウェル(SuperblockでブロックされたThermo Scientific Pierceストレプトアビジン高結合能コーティングプレート、コード#15500)を洗浄バッファー(0.05% TWEEN(登録商標)20及び0.1%ウシ血清アルブミンを含むPBS)で3回洗浄した。ビオチン化ペプチド(hPAR1~4)を洗浄バッファーで希釈し、ブロックしたストレプトアビジンコーティングウェルに10ug/ml(ウェル当たり100ul)で室温で1時間、穏やかに混合しながら結合させた。ウェルを上記のように3回洗浄し、洗浄バッファー中10ug/mlで調製した精製抗hPAR4 mAbを室温で1時間穏やかに混合しながら結合させた(100ul/ウェル)。プレートを上記のように3回洗浄し、0.3ug/ml(100ul)でアルカリホスファターゼ(AP)と結合体化した抗マウスFcコンジュゲートを上記のように1時間かけてウェルに加えた。ウェルを上記のように3回洗浄し、上清スクリーニングELISAにおいて記載のようにアルカリホスファターゼ基質で発色させた。
【0423】
精製抗hPAR4 mAbをさらに特徴づけるため、mAbのhPAR1、hPAR2、hPAR3、及びhPAR4ビオチン化ペプチドに対する特異性を実施した。結合データは明らかに、7種全ての精製モノクローナル抗体が非常に特異的であり、hPAR4にのみ結合し、hPAR1、hPAR2、及びhPAR3ペプチドとは反応しないことを示している。
【0424】
[実施例14 5種の精製抗hPAR4モノクローナル抗体における結合及び阻害の特徴]
5種の抗PAR4モノクローナル抗体のヒト血小板に対する結合をフローサイトメトリーによって検証した。表5は、1)フローサイトメトリーによるヒト血小板に対する結合(10μg/mlで観察された、アイソタイプ対照の同濃度のものに対する幾何平均蛍光強度[GMFI]として表現される)と、2)0.1U/mlトロンビンに応答したヒト血小板凝集の阻害におけるIC50値とに関する各クローンの結果を示している。
【0425】
【0426】
精製抗hPAR4 mAbのヒト単離血小板に対する濃度依存的結合を
図17に示す。各抗体は、関係するアイソタイプ対照との対比で濃度依存的結合を示した。
【0427】
0.1U/mlトロンビンにより誘導されるヒト血小板凝集の濃度依存的結合を、3種の抗hPAR4 mAbクローン(5A.RC3、5D.RH4、及び5G.RA1)について
図18に示す。試験した最高濃度において各クローンでほぼ最大限の阻害が観察された。
【0428】
[実施例15 2つの抗PAR4クローン(5D.RH4及び5A.RC3)の抗トロンビン効果]
mAb 5A.RC3及びmAb 5D.RH4によるヒト血栓形成の阻害を共焦点顕微鏡によって検証した。ex vivoヒト全血血栓症アッセイにおいて、3分後に形成されたヒト血栓の体積を共焦点顕微鏡により定量化した。血液を100μg/mlのいずれかのmAbで前処置したところ、
図19に示すように合計血栓体積が低減した。
【0429】
[実施例16 精製抗hPAR4 mAbクローンの配列]
全てIgG1カッパアイソタイプであるモノクローナル抗体のシークエンシングを、Monash UniversityのMonash Antibody Technologies Facilityで行った。IMGT/V-Questプログラムを用いてCDR及びフレームワーク領域の指定を決定した。
【0430】
ヒトPAR4に対する精製mAbの可変重鎖の配列を
図20に示す。相補性決定領域(CDR)は、IMGTナンバリングシステムに従って図に示されている。
【0431】
ヒトPAR4に対する精製mAbの可変軽鎖の配列を
図21に示す。相補性決定領域(CDR)は、IMGTナンバリングシステムに従って図に示されている。
【0432】
抗体の相補性決定領域配列を表6に示す。
【0433】
【0434】
【0435】
[実施例17 エピトープマッピング]
抗hPAR4モノクローナル抗体が結合する最小エピトープを決定するため、hPAR4ペプチドに対応する3つの重複ペプチドを下記及び
図22に示すように合成した。
【0436】
トロンビン切断部位の配列RGは下線で示されている。多量体の形成を防止するためにC末端システインを除去した。元のhPAR4ペプチドについては表2を参照(KLH及び裸のペプチド)。
【0437】
実施例11に記載のようなELISAアッセイを用いたスクリーニングを実施して、mAbが、元のペプチド抗原にまたがるより短い重複ペプチドのいずれかにより大きな反応性を示すかを同定した。簡潔に述べると、Nunc maxisorp ELISAプレート上でペプチドを10ug/mlでコーティングバッファー(0.1M炭酸ナトリウムpH8.0)中で一晩コーティングした。PBSで希釈した精製mAbを上清の代わりに使用した。
【0438】
図23に示すように、精製mAb5A.RC3、5G.RA1、5D.RH4、及び5F.RF3は、トロンビン切断部位を含むコアペプチドアミノ酸残基8~15と優先的に反応した。そのため、このことからエピトープが元のhPAR4ペプチドのこの領域内にあることが示される。
【0439】
図23に示すように、精製mAb 5G.RA3はペプチドアミノ酸残基11~20に反応した。この残基もトロンビン切断部位を含むが、このことは、他のmAbと比較して、5G.RA3がわずかに異なるhPAR4のエピトープを認識することを示すものである。
【0440】
当業者は、多数の変形形態及び/または変更形態が、広範に記載される本発明の範囲から逸脱することなく、上述の実施形態に示されるような本発明に対し施され得ることを理解するであろう。そのため、本発明の実施形態はあらゆる点において、例示的であり、制約的ではないとみなすべきである。
抗PAR4組換え抗体もしくは合成抗体もしくはモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であるプロテアーゼ活性化受容体4(PAR4)結合タンパク質であって、トロンビンの存在下で、細胞表面発現ヒトPAR4の切断を50%以上阻害する、前記プロテアーゼ活性化受容体4(PAR4)結合タンパク質。